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2012年3月創作発表209: 【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】 (175) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】


1 :
ボーイズラブ・やおい関連作品を総合的に扱うスレです。
一次でも二次でも、小説からイラスト・漫画まで、なんでもどうぞ。
 ここは全年齢板です!
−どんな時でも腐女子、腐男子の心を忘れずにきましょう−
◇前スレ◇
【腐】やおい・お耽美・ボーイズラブ【BL】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1229760468/
◇お約束◇
・投下の際は、最初に属性や作品傾向等を記入しましょう。
 (ショタ、青年、学園もの、社会人もの等)
・雑談も大歓迎です! だが、しかし! 作品が投下された直後の雑談は控えてください。
・苦手だなと思った作品はあえて読まない、批評しない!
・感想、アドバイスには作者さんへの配慮を忘れずに。
・荒らしにはをスルーを徹底しましょう!

2 :
あ、テンプレ、少しミスった!
「荒らしにはを」って、何だよ……最初っからすいません……orz

3 :
アッー!

4 :
早速保守!
目指すは即死回避!

5 :
や ら な い か

6 :
      ハ,,ハ
     ( ゚ω゚ )  お断りします
    /    \
  ((⊂  )   ノ\つ))
     (_⌒ヽ
      ヽ ヘ }
 ε≡Ξ ノノ `J

7 :
\   / .::::::::::::::::::::::::;;:;;::,ッ、::::::   )  く   ホ  す
  \ l  ,ッィrj,rf'"'"'"    lミ::::::: く   れ  モ  ま
     Y           ,!ミ::::::: ヽ  な  以  な
`ヽ、  |           くミ:::::::: ノ   い  外  い
     |、__  ャー--_ニゞ `i::::,rく   か  は
``''ー- ゝ、'l   ゙̄´彑,ヾ   }::;! ,ヘ.)  !  帰
      ゙ソ   """"´`     〉 L_      っ
      /          i  ,  /|    て    r
≡=- 〈´ ,,.._        i  't-'゙ | ,へ     ,r┘
,、yx=''" `ー{゙ _, -、    ;  l   レ'  ヽr、⌒ヽ'
        ゙、`--─゙      /!         `、
  _,,、-     ゙、 ー''    / ;           `、
-''"_,,、-''"    ゙、    /;;' ,'  /         、\
-''"    /   `ー─''ぐ;;;;' ,'  ノ      
   //    /     ヾ_、=ニ゙

8 :
                              ,、、--‐.'∠,__
            __,,,、-‐‐───-- 、、,   ,,、‐'":::::::::::::::::::::Z゙´
        _,、-'''''"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽf゙:::::::::::::::::::::::::∠´,,_
     、ゞr ...:::::,、/:::://:::/i::::::::N:::::::..... ::::: :: :::::::::::::::,、-'''゙ ̄
   /'"/.::::/ /::::/ /:::/  l:::::| l:::::::: ::: ::::: ::::::::∠ --───-- 、
  /  , ::::/  /|:::/  |::i ,、r '|゙:|  |:::::ハ::::: :: .: :. : ::/            \
    /::::::/,_.  |/   、f'゙ .,,,,、、リ、、 .|::::| |::::::::..:: ..:::::|         何    |
    //|/i  ゙゙゙'ヽ   ‘゙';;;;;;;;;;;;;゙l   |:::| |::::::::::..:::::::.|   好    で    |
   / /,,、-‐ =i''    ゙'、 , ,..ノ   |/ .||r-- 、:::::|   き     そ     |
    / ,';;;;;;;;;ノ              .|:|゙ヽゝ、ヽ::|   な.    ん   │
  . ,'   ゙ "´               |::| (ii l |::|    ん    な   │
   i                    |::|  )i:lソ |::l.    で     に   │
  . i      、-‐ ''''' ‐ ,       |::|  ト |::|ノ:∠   す     ホ   |
  /,.、   ,"         ヽ     .|::|__,,、-''|::|::::/|    か.    モ  │
  /:/  \  !,,     _ ,,、 '     i::ノ:::::::::::::|:::|" |         が  /
 /::/  //ヘ、  ̄           ン'::::::::::::ノ|::::|  ヽ,______ /

9 :
            \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
         ../::::::::::::::::::::::::、::::::::::::::::::::::::::::::
い  女  ホ ヽ:::::::::::::::::::::::::ヽ、,:::::::::::::::::::::::::
ま  子   モ   〉∧i i゙i .|l, 、ヽ斗l' ヽ::::::::::::::
せ  な  が  /`トl、{.ヽ.l!、 イ℃)ヽ,i::::::::::::
ん   ん   嫌  >! (℃}`ヽ ヽ!"´´ ヽ l,:::::::::::
!!!!  か  い  l 、 "///  ////// u |:::::::::
       な   i /// ヽ  ._....-- 、.  !::::::::
        v-"!、u . .r‐''''"゛     l .il:::::::::
.、., i=@.、 ,,/ヽl::::::::`-..、'!、      /・/ l::::::::
    ! ./ `'".!::::::::::::::::::::`''!-ii=--;;'''".ノ  |:::::::::
   ″   !:::::::::::::::::::::::::::::::::`"''ァ'"゛'., ー''│:::::
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  iヽ,∧/i,7::::::::::::::::::::::::::::/ / ,l'l     ,,i'!:::::::
┌, ‐''''ヽr‐┐:::::::::::::::/ __ /ノ |, \,  ./ |::::::
. /  、  ゙ッ.l:::::::::,i'"/./゛.--ィ_.ゝ/i"\ |::::::
.|  .''"   .l /:::::://○iラ"、.フ゛ i' .l′ 'l::::::

10 :
アッーというまに即死回避成功。

11 :
スレ復活記念&即死回避記念ということで、王道の英国寄宿学校モノ。
これから10レス程投下します。

12 :
「神様」
僕は、自分一人しか居なくなった、この部屋で、ただ、その一言だけを口にした。
どうして僕は、奴を好きになってしまったのだろう。
今、考えても、もう、そのきっかけなど思い出せないのだけれど。
 此処は英国内に数有る寄宿学校でも最も特殊な学校の1つだ。
 この学園は、生徒の数も少なく、世間にあまり知られた存在ではない。
だが、此処で学ぶ生徒は、世界でも屈指の名門財閥や王族の子弟に限られている。
 おまけに、此処は男子校だから、此処で学ぶのは、必然的に世界の名だたる名門財閥や企業、果ては、国家
の後継者になることを目された者ばかり、ということになる。
 皆、この学園に、世間一般で言うところの学問のみだけでなく、帝王学を学ぶために、籍を置いているのだ。
 まあ、そんな学園に籍を置いている僕自身も、当然、それなりの家柄に属してはいるのだけれど。
 そんな中でも、僕、ヴィットーレ・ディ・イエッリと、奴、リオン・ライオット・ヴァン・トーガは、少し
毛色が違う。
 僕らは、ある意味、金で買われて、この学園に籍を置いているのだ。
 そう、僕らの家よりも更に世界に名だたる名家 − 世界でも5本の指に入る位の実業家の後継者として、そ
の地位を継ぐ立場に在る者 − ミカエル・レアン・ダイ・ク − 彼の為の専属シークレットサービスとして、
法外な金を積まれて雇われているからだ。

13 :
 僕は小さな頃から、自分が誰か − 世界に名だたる者の側近となるべく、育てられているのだということを
自覚はしていた。
 それは、僕の実家、イタリアのイエッリ家が、代々、そういう稼業を生業にしてきたからなのだけれども。
 僕自身の一見、16,7歳の少年らしく、華奢にさえ見える身体つきや、プラチナというよりは、シルバー
に近い、短く整えられた髪と、アイスブルーの瞳を備えた容姿……年齢よりも若干……いや、ほんの少しだが、
確実に16歳という実年齢よりも1歳程度は、幼く見えるこの姿からは、そんなことを推測する奴はまず居な
いと思うが……僕自身が、既にどこかの小国の大統領付きSPを軽く凌ぐ程の護衛としての能力と、名門大学
出身の一流企業の役員クラスに匹敵する程の知力と判断力を兼ね備えた、スペシャルハイクラスのSPなのだ。
 奴、トーガにしたって、それは同じだ。

14 :
 更に、僕等の護衛対象たるミカエルに至っては、彼の持つその英知は、僕やトーガを軽く凌ぐものだ。
おまけに、彼、ミカエルの風になびき、波打つようなプラチナゴールドの髪と、蒼天の空を思わせる深みを
帯びたブルーアイズに彩られている、その誰の人目をも引かずにはおかない、類まれなる端正な容姿は、正に
宗教画の天使のようだった。
 何においても、並はずれた力量を持つ彼にとっては、今さら、この学園での寮生活を送る必要など、本来な
ら無かった。
 まあ、それでも、彼が普通の学園生活を送りたいと願った、その望みを叶えるために、僕等の雇い主でもあ
る、ミカエルの父上は、彼が本来籍を置く必要など、全く無い、この学園への入学を許可したのだけれども。
 そのお陰で、僕等は今、自分達が置かれている身の上を考慮すれば、本来なら送ることなど出来ない、僕等
にとっては、これでも最大限に普通の生活に近い、この学園での生活を送っている。

15 :
「……全く、なんでこうなったんだか……」
僕は一人きりになった学生寮の自室で、ベッドの上に座ったまま、更に盛大に溜息をついた。
僕と居室を共にしているトーガは、18歳で、一応、僕の先輩にあたる。
この学園では、入学してから1、2年の間は、先輩と居室を共にするのが習わしだったので、その前までは、
ミカエルと奴が同室だったのだが、今では、奴と僕が居室を共にしている状況にあった。
 そのために、僕がこの学園に入学してきてから、ミカエルはこの隣の部屋に、ルームメイトの居ないままで、
実質、特例に近い形になってしまってはいるが、一人での生活を送っている。
 僕等の主、ミカエルは、1年間の期限付きとはいえ、その生活が気に入ったらしく、このところ、いたく上
機嫌だ。

16 :
問題は、僕自身の方だ。
なんで、よりによって、同室の……奴を……トーガを好きだとか、意識するようになっちゃったのか、自分
でも、自分のこの気持ちの意味が解らない。
 僕はそう思いながら、この部屋の天井を見上げてから、再び大きな溜息をついた。
 トーガは、一昔前に、何処かの国で流行った、少女向けのアニメーションに登場する王子様みたいな、スカ
イブルーの澄んだ瞳と、ストレートのプラチナブロンドの長い髪を後ろで一束に結った、その人目を引く容姿
の割には、僕なんかよりも断然、大人の男という形容詞が相応しい体躯をしている。
 ミカエルには、負けるものの、トーガは、かなり流麗な容姿をしてはいる。
が、奴は、どこから、どう見ても男だ。
 おまけに、腕っ節も僕よりも遥かに強く、僕自身が弱い訳では、決してないが……僕は奴に勝ったことが、
一度も無い。

17 :
 「あいつが……俺に対して、過剰な介抱をするからだ……」
 僕は小声でそう言いながら、制服を着たその姿のまま、今まで座っていたトーガのベッドへと身を投げ出し
た。
 確かにあの時、俺は……不覚にも40℃近い熱を出していて……不覚にも寒いとか言って、震えていたし、
意識も朦朧としていたけど……朝まで、添い寝をして欲しいなんて、頼んだ覚えは無い! 全く無い!!
 そんなことを思いながら、僕は無意識に、自らの身体を横たえていたトーガのベッドを自分の拳で思い切り
強く叩いていた。
 僕がトーガのベッドを思い切り叩き終えた、その次の瞬間、いや、叩き終えたとほぼ同時に、この部屋のド
アを開ける音がした。
 全くもって、またも、有るまじき不覚を取ったとしか言いようが無いが、僕はその瞬間まで、ドアの外に人
が立っていたことに気付いていなかったのだ。
 僕はそのドアが開く音がしたのと同時に、瞬時にベッドから身体を起こして、ドアの方へと振り返った。
そして、そのドアの先に立っていたのは、もちろん、トーガである。
 奴は、僕のそんな様子を目に留めて、したり顔で微笑むと、僕に対して少々意地の悪い言葉を投げかける。

18 :
「おや、ヴィー、俺のベッドで、何をしてるの? ひょっとして、俺の温もりが恋しくなった?」
「ばっ、何言ってんの! 僕がそんなもの恋しがる訳ないだろう! 少し疲れてただけだ!!」
自分でも馬鹿だとは思うが、咄嗟の事だった所為もあったのか、僕はトーガのその言葉に対して、少々、過
剰に反応していた気がする。
僕がこういう過剰な反応をすると、いつもトーガから舐めた真似をされるのだと、常日頃から解っているの
にも拘わらずに、だ。
 案の定、トーガは、にっこりと微笑みながら、この部屋のドアを閉めると、僕が座っていたベッドの端へと
やってきた。
それから、トーガは自らもベッドの端へと腰を掛けると、奴とは反対に、ベッドから立ち去ろうとしていた
僕の手をやや強引に引いた。
僕はトーガの強い腕の力の所為で、自らの手を引かれて、あっけなくバランスを崩し、再びベッドへと座り
込んだ。
トーガはそれから更に、僕の手をぐっと引き込むと、自らの元に僕を引き寄せるようにして力を入れる。

19 :
「っあ! 馬鹿、トーガっ! 何しやがる!」
トーガにこんな風にされて、僕が声を上げるのも最近では、毎度のことだ。
いつも悔しいとは思うが、僕よりも圧倒的に力の強いトーガに対して、上手いこと抵抗する術が今のところ
見つからない。
 トーガは僕の手首を握ったそのままの姿勢で、ほんの少しの間、僕をじっと見つめるようにした後、まるで
いつもの決められた儀式をするかのように、僕の唇へと、軽いキスを贈る。
それから、ほんの一瞬の、その口付けを解いた後に、今、僕の手首を握っているのとは、逆側の腕を伸ばして、僕の背中へと手を廻し、更に強く僕を抱きしめるようにして、引き寄せた。
 そして、トーガは僕を抱きしめながら、僕の耳元で、いつもの言葉を、まるで、祈るかのうように、囁くよ
うして呟く。

20 :
「ヴィー、愛している。 頼むから……いつまでも俺の親友でいてくれ……」
「トーガ……解ったから……もう、解ってるから……さっさと、この腕を解きやがれ!!」
 こうして僕は毎回、精一杯の強がりを言ってから、トーガの腕を振り解く。
そう、これも、もう、毎回のことだ。
 恐らく、トーガが本気になれば、僕が奴の腕を振りほどくことなど、出来はしないだろう。
 そう、多分、これは、お互いがお互いのことを理解した上での儀式なのだ。
 この先へと、その一線を越える、情愛を伴う、あの行為さえしなければ、
僕とトーガは、唯一無二の親友のままでいられる。

21 :
それだけは、確かなのだ。
 それは、互いに解っている。
 トーガ、多分、俺の方が、本気で貴方を愛しているよ……
僕はそう思いながら、自分自身の、この鼓動の速さが、唯一無二の、目の前にいる親友に、届かないように
と願う。
そして、これも、いつものことだが、少し勢いをつけてから、その大切な、僕自身を、暖かな心地良さにも
似た優しい気持ちへと、導いてくれる、大切な親友の強い腕を振り解くのだ。
―― 君との関係の永遠を祈りながら ――
【END】

22 :
BLものは初めて書いたんですが、やっぱ、難しいですね。
機会があればまた投下したいです。どうぞよろしく。

23 :
乙乙!
ディーがツンデレ可愛くて、すごくツボですw
続きができたら、ぜひまた投下してね

24 :
あ、名前が違ってたよ… ヴィー だったね
でも、本当に楽しく読ませてもらいました
続きに期待w

25 :
思いつきで書いてみたので投下してみる

26 :
「おかえり」
部屋に戻ってきたばかりの僕に、君は声をかけた。
「で、こんな夜中に何処に行っていたんだ?」
その君の優しい声を聞いただけで、僕の背中に熱いものがはしる。
そう、言える訳がない。
君が欲しくて―昂るこの気持ちを抑えるために、夜風にあたりに行っていたなんて。
「ちょっとね、月があんまり綺麗だったから。夜風にあたってきただけだよ」
僕は、精一杯の笑顔で、君に答える。
「……ふうん」

27 :
君は、そう言うと、いつものように、ふわりと包み込むように優しく僕を抱きしめた。
それは、この部屋に戻って来た時に、いつもお互いにしている、他愛も無い挨拶なのだけれど。
君に抱きしめられる―だだ、それだけで、僕の身体の深い処がまた、余計な熱を帯び始める。
「どうでも良いけど……無理はするなよ」
君は、僕を抱きしめたまま、そう言った。
「うん、そうだね……ありがとう」
僕は、やっとの思いで君にそう答える。
君への想いを封じたままで。
*fin*

28 :
この板が細々とでも存続していってくれると良いかなーと思います
どうぞよろしく

29 :
>>28
おぉっ、投下だ! 乙です、乙です!
なんか切なくて、ちょいエロなところに萌えたw

30 :
レスありがとー!
調子に乗って再び投下してみる
今度は相手側Sideということで

31 :
「おかえり」
そう言った俺の言葉に、君は真夜中の散歩から帰宅したところを不意に見つけられた子猫のように、ほんの少しの不安と驚きが入り混じったような瞳で俺を見上げる。
「で、こんな夜中に何処に行っていたんだ?」
「ちょっとね、月があんまり綺麗だったから。夜風にあたってきただけだよ」
俺からの問いかけに、君はいつものように、精一杯の強がりで、そう答える。
俺は、そんな君を見つめながら―
この理性という感情を失くすような真似は決してしないことを、自らに言い聞かせる。

32 :
そして、俺は、いつものように、ふわりと君を抱きしめる。
それは、君に触れられる数少ない機会の一つだから。
君を抱きしめる―
だだ、それだけで、いつも必死に抑えている、あの熱い感情が、俺の中で更なる熱を再び帯び始める。
「どうでも良いけど……無理はするなよ」
俺は、君を抱きしめたまま精一杯の理性をかき集めて、そう言った。
「うん、そうだな……ありがとう」
君の小さな声を聞きながら、俺は、やっとの思いで耐える。
君を奪いたいという、この熱情を封じたままで。
*fin*

33 :
読んでくれてありがとう
あ、最後のセリフが違ってた
「うん、そうだね……ありがとう」でした
今度はちゃんとしたSSも書けるようになりたいなぁ

34 :
男の娘×ムキマッチョ

35 :
確かに……
ボクっ娘×心配症の兄っていう、シチュを妄想して
不覚にも萌えてしまったw
スレ違いだけど、そういうのも美味しいよね

36 :
あんまり需要が無さそうだけど、書いちゃったので、投下
・ファンタジーもの
・竜騎士×少年
・萌え成分少なし
・全年齢板の許容範囲に止めてはいますが、残酷描写少々、慰みもの描写もごく微小にあり
そんなの全然OKだぜ! って方はどうぞ

37 :
「下衆な真似はするな」
その短い言葉とともに、一瞬にしてその男の首は飛んだ。
この蒼い空の上空から、男の背後へと、今、瞬く間に降下してきた、一人の竜騎士の剣によって、首を撥ね
られたのだ。
その瞬間、小さな少年を抱きしめていた、貴族と思しきその男の身体は、血飛沫を上げながら、仰向けに
仰け反るようにして倒れていった。
「う……うあぁあぁあ!!」
少年を抱きしめていた、その貴族の男の取り巻きとして、一緒に連れ立って来ていた数人の男達も、竜騎
士の青年の尋常ならざる怒りを帯びた瞳の気迫に押され、勝ち目などないことを瞬時に悟って、その場から
逃げ出していく。

38 :
「済まない、大丈夫か」
竜騎士の青年は、その場に両膝をついたまま、茫然としていた、金色の髪の小さな少年に歩み寄ると、そ
の背中へとふわりと外套をかけた。
それから、その少年の傍らに片膝をついて座ると、あまりに凄惨な光景を目の前にして、碧い瞳を見開いた
まま、その場から動けなくなっていた、少年の整った面ざしの前へと、自らの手をかざし、その瞳を覆うよう
にして、視界を遮ってから言った。
「済まなかった、これは、もう、お前が見なくても良いものだから」
「っ、あぁあぁあ……」
金髪碧眼の少年は、その竜騎士の声を聞くと、彼の腕にしがみつくようにしながら、泣いていた。
無理も無い。恐らくこの少年は、これまでに耐えがたい、屈辱と凌辱にまみれた日々を送ってきたのだろう。
竜騎士の腕の中で泣いていた、その少年は、衣服を何も身につけていなかった。
その身体に身につけていたのは、首元にある頑丈な首輪と、そこからつながれて、彼の胸元の辺りにまで
下がっている鎖だけだ。

39 :
ここは、とある貴族の宮殿の片隅に位置する小さな―それでも、世間一般の常識からすれば、かなり広大
な箱庭のように整備された庭園の一角だった。
竜騎士の青年は、先の戦で大きな功績を上げたこの貴族の宮殿に、警備と視察を兼ねて訪れるように、と
いう主君からの命を受けて、この地を訪れていたのだ。
彼は、先程、この箱庭の上空で自らが騎乗していた飛竜の翼の合間から、偶然見かけたその光景を目に
した瞬間、自らの内側に湧き上がる激しい怒りのために、我を忘れていた。
それは、ある意味、自分が幾度となく行った、他人の命を狩るという行為よりも、酷いものだったからだ。

40 :
彼が上空から偶然見かけた少年には、首輪と、それをつなぐ鎖以外には身に纏うものは一切無かった。
そして、その少年の小さな背中には、取り囲まれた数人の男達から、度々、大きな暴力を受けていること
が、この上空から見ても明らかに解る程の傷跡がいくつも見て取れた。
更に―少年が縋りつくように懇願していた、一際立派な服を着ていた貴族の男は、少年を優しく抱きしめな
がらも、その顔に、誰が見ても背筋が凍りつく程に、残忍としか言いようの無い、笑みを浮かべていた。
そんな様子を上空からほんの少し、目にしただけで、この少年が、それまでに受けてきた仕打ちを理解する
には、充分だった。
こんな年端もいかない、小さな子供が―ある意味、貴族として最高の趣向を凝らしたこの庭園―そう、箱庭
の中で、慰みものとして、飼育されるようにして、囲われているのだ。
こんなにもひどい真似を許しておける筈など、絶対にない。
そう思った瞬間に、青年の心は、ただ純粋な怒りだに満ちていた。

41 :
その自らの気持ちに呼応させるように、青年は自らが騎乗している飛竜に対して、その場所へと一気に降
下するように、手綱をさばきながら、素早く指示を出した。
そうして、騎乗していた飛竜が下降体制に入ったのと同時に、その飛竜の背中から、自らの身体を乗り出
すようにすると、庭園に向かって、しなやかな身のこなしで、飛び降りる。
彼は、飛竜よりも早い速度で地上へと真っ直ぐに降下し、一足早く庭園に到着すると、それと同時に貴族
の男の首を何の躊躇い無く、自らの剣で一気に撥ねていた。
彼は、先程の自らのこの行いが、今、自分の手元で泣いている、この華奢で、可憐な雰囲気さえ合わせ持
つ少年に対して、更なる衝撃を与える結果となってしまったことを、改めて詫びるために、少年の身体の向
きを変えるようにして、抱き抱え直してから、再び声をかけた。
「本当に済まなかった、私は、レオン・デュランダール。 ガリアの竜騎士だ。
君に危害を加えていた奴らはもう居ないから、安心していい」

42 :
「……りゅう……きし……」
少年は、そう名乗った青年の腕の中で、涙に泣きぬれたその顔のまま、見上げるようにして、自らに微笑み
かけてくれた青年の顔を見つめていた。
その青年は、改めて見ると、青年というにはまだ早い、17、8歳位の年頃の少年だった。
彼は、短く整えられた銀色の髪と、蒼い空を映したような精悍な眼差しの瞳が印象的な、竜騎士として相応
しい人目を引く、美しい容姿をしていた。
だがそれは、今年13歳になる、自分のこの痩せた身体とは、異なるなんと逞しい体躯だろうか。
金髪碧眼の少年は、そう思いながら、レオンと名乗ったその少年をぼんやりと見つめていた。
彼は、騎士としてはそれ程筋骨隆々とした身体付きだった訳ではないが、それでも、細く、華奢な自分の身
体を易々と抱きあげていたのだ。

43 :
「……レ……オン……」
「うん、そうだよ、私は、レオンって、いうんだ。君の名前は?」
「僕は……ディア・マリ・スイール」
金髪の少年は、自らに残っている気力を振り絞るようにして、レオンにそう告げた。
レオンは、その声を聞いて、自らの腕の中の金髪の少年に向かって再び微笑みかけると、先程、レオンが
着地した後に、ほんの少し遅れて、この庭園に到着していた大きな飛竜の鞍の上へと少年を運び上げた。
「ディア、悪いけれど、少し先を急ぐよ。このまま此処にいる訳には、いかないからね」
レオンはそう言うと、ふわりと跳ぶようにして、飛竜の上へと、自らも軽やかに騎乗すると、先に騎乗させて
いたディア華奢な身体を優しく包み込むように支えてから、手元の手綱を引いた。

44 :
「フェイ、頼むよ、急いでここを出よう」
自らが最も信頼するパートナーである飛竜の名を呼び、レオンがいつものように軽く手綱を引くと、その合図
に従って、フェイと呼ばれた飛竜は、二人を乗せたまま、大きな翼を拡げ、瞬く間に空へと浮かびあがった。
そして、辺りを流れる風の気流に乗ってくるりと旋回すると、フェイは主であるレオンの命に従い、帰路を辿
り始める。
その大きな飛竜の上で、二人は、それぞれに廻る想いを馳せていた。
ディアは、自分とは対照的な逞しさを兼ね備えた、この銀色の髪の美しい、蒼く強いまなざしを持つ少年
が、今までの地獄のような日々から、その勇敢な行いで、救いだしてくれたことに、心から感謝していた。
それと同時に―まだ所々で、途切れていきそうになる自らの意識の中で、彼の名前をもう一度思い出そうと
していた。

45 :
― レオン・デュランダール ―
そしてそれが―恐らくは、自らが王子として、つい1年程前まで暮らしていた小さな国と、その国を治めてい
た父である国王を滅ぼした強大な力を持つ、隣国の皇太子の名であったことを、自らの記憶から消し去ろう
と努めていた。
一方のレオンも、今は立場の違いから、滅多に会うことも叶わなくなった、大切な親友―エル・ユーグ・ディ
アスの面ざしに似た、この少年の名前―それが、自らと自分自身の父王の手によって、滅亡に追いやられ
た小国の王子と同じものであることに気付いていた。
その小国の王を打ち取ったのは、レオンが初めて上げた、誇るべき武勲だったのだから、忘れる筈など無
かった。

46 :
― ディア・マリ・スイール ―
その際に、戦火を逃れながらも、行方が知れなくなっていた、その小国の唯一人の王子は、まだ年端がい
かない年齢ながらも、金髪碧眼の整った容姿を兼ね備えた、大変聡明な少年だったと聞いている。
レオンは、自らの脳裏によぎったその記憶を振り切るように、思い直す。
自分は、あの場面に遭遇していたら、例えそれが誰であれ、あの酷い境遇から救い出すために、その相手に
立ち向かっていっただろう。

47 :
だから、何をどう考えても同じだ。
今は、ただ、彼、ディアの身の上をしっかりと救うことだけを考えるべきなのだと―。
二人の少年のそれぞれの想いの交錯は、今、ここから始まったばかりだ。
そして、それこそが、これから始まる大きな変革の兆しへとつながっていくのだ。
その出来事は、また別の物語として語り継がれていく―。
-END-

48 :
とあるSSにインスパイアされて、主人公の性別を変えて書いたらこんな風に
結局あんまり二人が幸せになっていない気もしますが、まあ、幸せになってほしいものです

49 :
>>48
投下乙です!!
すごくしっかりしたSSが投下されていてびっくりしたw
少年×少年ということで、ここに投下してくれたのかな?
ちょっと勿体ない気もするので、勇気を持ってageてみるw
また気が向いたら投下してくださいな

50 :
駈け出しの社会人のお兄さん×男娼の少年という組み合わせでこれから投下
後半、少しだけえっちいかも

51 :
「ああ、貴方が今日、俺を買った人なのか。 じゃ、とっとと初めようか。
俺、今日は、終わったら、ここに泊らないで、家に帰りたい気分なんだ」
俺の目の前に立っていた少年は、そう言って微笑むと、自らが着ていたTシャツを何の躊躇いも無いかの
ように、あっさりと脱ぎ始めた。
そして、そのTシャツを、この部屋のでかいベッドの上に、脱ぎ棄てるようにして放り投げた。
既に上半身に何も身につけてはいない、その少年の艶やかな肢体は、同性の俺からみても、端正で、美し
いという形容詞のほかに思いつく言葉は無かった。
17,8歳位の少年にとっては、理想的とも言える彼の肉体は、しなやかかつ、程良い筋肉を備えた大型の
美しい猫科の獣を思わせる雰囲気を漂わせていた。
また、少年の短く整えられたプラチナブロンドの髪と、少しばかり怜悧な印象を与えているアイスブルーの瞳
の整った面立ちは、正に美少年と呼ぶに相応しい容姿だと思った。

52 :
「ちょっと、待ってくれ! 俺は、君を呼んだ覚えなんかないんだ!」
俺はその少年に慌てながら声をかけた。後で思うと、その時の俺の様子は、きっと滑稽だったに違いない。
だが、海外出張で訪れたその宿泊先で、仕事を終えて自らの泊っている部屋に帰ってきたら、見ず知らず
の美少年がいて、しかもいきなり服を脱ぎ始めたら、きっと誰だって驚くと思う。
そう、俺と彼が出会ったのは、正にそういう状況だったのだ。
俺は今年、25歳になったばかりだが、父の稼業を継ぐ立場にあるため、今回、通訳として、この海外での
商談に同行していた。
仕事柄、宿泊していたホテルのランクは、いつもの通り、申し分のないものだ。
それに、専門用語が飛び交う中で通訳をこなしたり、相手先や周りの連中に気を遣ったりと、それなりに多
忙なスケジュールを終えて、これからようやく一息つけると思いながら、宿泊先のこの部屋に帰ってきた矢
先の出来事だったのだから、驚くなと言われても無理がある。

53 :
「えっ、あんたが今夜の俺の相手じゃないの?」
少年の方も俺のその言葉に驚いたように、上半身裸のままで、俺を見つめていた。
彼はそれから、ジーパンのポケットに片手を突っ込んで携帯を取り出すと、何処からかのメールらしき画面
を確認してから俺に言った。
「ああ、ミスター、申し訳ない、確かに俺の相手は、貴方じゃなかったみたいだ。
どうやら、連絡ミスみたいだね。俺の代わりにはもう、他の奴が行ってるってさ」
彼は俺に対して、少し申し訳無さそうな表情で微笑んだ。
それから、ついさっき、自らが脱ぎ捨てたTシャツを拾って、手早く着ると、彼はこの部屋から早々に立ち去
ろうとしていた。
彼はベッドルームの扉の前に立っていた俺とすれ違うようにして、外の廊下へと、つながる扉の方へと足早
に歩いていく。

54 :
「待てよ!」
彼が俺とすれ違ったその瞬間、俺は、彼の片方の肩を掴むようにして、呼び止めていた。
後から思い返しても、その時、どうして彼を呼び止めたのか、明確な理由は思い出せない。
とにかく、彼をそのまま帰すのは嫌だったからだとしか言いようが無い。
彼が俺に肩を掴まれて振り向いた瞬間、彼のアイスブルーの瞳と、俺の黒い瞳の視線が間近で重なり合う
よう至近距離の中で、お互いを見つめ合うような格好になった。
「……何?」
そんな状況にも関わらず、彼は冷静にアイスブルーの瞳で射るように、俺を見つめながらそう言った。
「君は……自らの身体を売る仕事をしているのか」
「そうだよ」
後から思えば、誰もが呆れたくなるような俺のその質問に対して、彼は自らの瞳に宿る強い意思と誇りを崩
すことなく、端的にそう答えた。

55 :
「……なんでそんな……」
彼のそのあっさりとした返答に、俺は思わず小さな声で、母国語でそうつぶやいた。
彼のような容姿と身なりもそれなりに整った少年が、そんなことを生業にしているとは、にわかには信じがた
かったからだ。
そうなのだ。彼は、ホテルのコンシェルジュがこの部屋に通しただけあって、ラフな格好をしてはいたが、決し
て、薄汚れた身なりなどでは無かった。
「なんでって、決まってるだろう。 
俺と、俺にとって、大切なものを守りたいからだよ。 俺は、この場所でこうして生きていく為に、してるんだ。
あんたこそ、何の為に働いてるんだ?」
ほんの少しの間だが、驚きを隠せないと言った表情をしていた俺に対して、彼は射るような視線で俺を見つ
めたまま、そう言った。
彼は、俺が小さな声でつぶやいていた、その言葉の意図を読み取っていたようだった。
いかにもヤングエグゼクティブらしいといった感じに見せるために丁度良いといった位には、仕立ての良いビ
ジネススーツを着てはいるものの、黒髪黒目で年齢よりも幾分幼く見える、良家のご令息といった風貌の俺
に対し、彼は、少し意地の悪い問いかけをしている子供のような表情で、ほん一瞬だけ、微笑んだ。
それから、自ら肩に乗ったままになっていた、俺の手を振り払うようにして退けると、再び廊下へとつながる
扉の方へと歩いていこうとする。

56 :
「おい、待てよ!」
「何だよ!」
彼は、今度は、彼の片手を取るようにして、引きとめようとしていた俺の手を振り払うようにして、俺の方へと
振り返った。
「俺が……俺が、今夜、君を買うって言ったら、君はここに、このまま居るのか」
彼は、俺が馬鹿正直な気持ちで言ったその言葉に対して、一瞬驚いたような表情をしていた。
だが、彼は、その場で短く息を吸い込みながら、一呼吸置くと、先程と同じように冷静な表情を取り戻し、俺
に対して、挑むような視線を投げかけたまま言った。
「そうだよ。ただし、俺を一晩買うには、
あんたが今、泊まっているこの部屋の代金の倍は、積んでもらわないとならないけどね」

57 :
「いいよ、君を買おう。 とりあえず、これは手付け金だ」
俺は、彼の挑むような視線を受け止めながら、自分のスーツの内ポケットに入れたままにしていた、札入れ
に入っている札束―その場に持ち合わせていた現金の全てに等しい額を彼の手元へと差し出した。
彼は再び驚いたような表情で、その札束を見つめてから、俺の顔へと再び視線を上げた。
「あんた……本気なのか? ……いいよ、分かった。あんたに買われてやるよ、来な!」
俺をほんの暫くの間、見つめてから、彼はそう言うと、手元に差し出された札束を受け取ることも無く、きび
すを返すように、この部屋のベッドルームへと向かって歩いて行った。
彼が俺の側を通り過ぎていく、その様子を振り返るようにして、俺はベッドルームへと足を向けた。
そこには、先程と同じく、俺が一人で寝るには、少し寂しく感じる位に立派な大きさのクイーンサイズのベッド
がある。
そして、そのベッド端には、そこ座りながら、先程と同じように射るような視線で俺を見る少年の姿があった。

58 :
「あんたは、俺を買ったんだ。俺を好きにしていい」
少年は、自らの側に立ち止って、そのまま一歩も動かずにいた俺を見上げて、先程よりも熱を帯びた、ほん
の少しだけ、潤んでいるかのようにも見える瞳で俺を見つめながら、そう言った。
恐らく少年は、今まで毎晩のようにして、数多くの男達から受けてきた、あの行為を、これから俺がすぐにで
も施し始めるのだと思っていたのだろう。
だが、彼の瞳が潤んでいるその理由は、その先に在る快楽を期待してのものなどでは決して無く、自らの誇
りを犠牲にしてまでも、大切なものを護るのだと言っていた、その決意と覚悟の表れのようだと、俺は思って
いた。
「金はいいのか?」
「あんたを信用して後払いにしてやるよ。さあ、俺を抱くといい」
俺の問いかけ対して、彼はそう言うと、俺の腰の辺りに手を伸ばし、俺の身体を自らの方へと手繰り寄せる
ように引き寄せる。
それから、彼は俺の腕を取って、そのまま自らの身体の方へと引いた。

59 :
それは、恐らく、俺がベッドの上へと倒れ込み、彼の上へと、そのまま覆い被さるような体勢になるようにと、
仕向けていく為の所作なのだろう。
彼は同時に、もう片方の手を俺の頬へとあてて、そのまま顎の辺りをなぞるようにした後で、俺の胸元のネ
クタイを軽く引きながら、彼自身の身体をベッドに預けるように、ゆっくりと後ろへと倒してゆく。
彼が自分自身の身体を後ろに倒していくのに合わせて、彼にネクタイを引っ張られたままの俺は、自然と彼
に覆い被さるような姿勢になっていった。
俺の身体の動きにタイミングを合わせるようにして、自らの身体をゆっくりと後ろへと倒してゆくその様は、本
当に小慣れた男娼の仕草のように見えたが、よく見ると、俺のネクタイに添えられたその指先は、少し震え
ていた。
「なあ、無理してそんなことしなくていいよ。それより、君の名前を教えてくれないか」
俺は自らの片方の手を優しく添えるようにして、彼の震える手首に添えると、その腕をシーツの上へと降ろ
しながら、そう言った。
彼は、抵抗するでもなく、無言のままで、暫くその体勢のまま、俺の顔を見つめていた。
まあ、体躯では、かろうじて俺の方が勝っていたから、あまり抵抗する気になれなかったのかもしれないが。

60 :
「マリア」
小さな声でそう言った彼の言葉を聞いて、俺は彼に問いかけるように、再びその言葉を繰り返した。
「……マリア?」
「俺の男娼としての渾名だよ、お兄さん」
彼は、俺を見上げるようにして、見つめたまま、小さく微笑みながらそう言った。
その言葉を聞いて、今度は、俺の方が一瞬無言になった。
男娼にして、慈悲深き聖母の名を渾名に戴くだなんて、滑稽な話だとは思うが、この少年が、その美しい容
姿と躯で、数多くの男達に対して、これまでにもずっと、慈悲にも勝る快楽を与えてきたのだと考えれば、逆
にこれ程相応しい渾名は、無いようにも思えた。
「俺の名前は、それで呼んでくれればいいよ。で、あんたの名前は何ていうの?」
「俺は、聖人って言うんだ」
「ふうん、マサト、貴方は日本人なんだろ?」

61 :
彼のその言葉に俺は、再び驚いて、彼を見つめた。
「どうしてそんなこと、解るんだ」
「こんなことをやっていても、昼間はそれなりの教育を受けてるんだよ。お兄さん」
俺に組み敷かれたその体勢のまま、彼はにっこりと笑いながら言った。
「なあ、マリア、君の本名を教えてくれないか」
「それは俺が、貴方を本当に気に入ったら教えてやるよ、お兄さん。 
さ、早く本気で俺を抱いてくれないかな。
俺はね、今日は早めに仕事を終わらせて、一度家に帰りたいんだ。 
兄さん、あんたは割と綺麗な顔立ちと身なりをしているし、俺の仕事の中では、これは楽な方だから。
あんたは、俺に対して、何か気兼ねしてるようだけど、俺を抱くのに躊躇う必要なんか全く無いんだよ」

62 :
彼の本当の名前を聞こうとしたことが、よほど気に食わなかったのか、彼は俺を再び挑発的な鋭い視線で
見つめてそう言った。
それに対して、俺の方も彼を挑発するような口ぶりで返事を返す。
「それは無理だな……俺は、今夜、君に、ここに居てもらうっていう条件で、君を買ったつもりなんだよ。
だから、今夜は君を家に返すつもりは無いな」
「……何、馬鹿なこと言って……」
彼は俺のその言葉に驚いたような、半ば呆れたような表情を見せた。
ただ、彼は、俺の言葉を聞いて、少し苛々した気分になったらしく、俺のネクタイを先程よりも少し、強め引っ
張り、俺の顔を自らの顔の前へと寄せるようにする。
彼が相変わらず俺に組み敷かれている状況には変わりはないので、俺達は、再び互いを強く見つめ合うよ
うな格好になった。
彼の瞳からの強い視線に構うことなく、俺は真っ直ぐに彼を見つめながら、話を続けた。

63 :
「それに、俺は、君を抱くつもりは無いんだ。 君も俺に抱かれたいなんて、本気で思っていないだろう?
俺が君を一生涯、買い取るから。君が心無く誰かに抱かれる事なんて、もう無くなるんだ。俺は、本気だよ」
「……えっ……!」
その驚きを現わす小さな声を発した瞬間、彼は、俺のネクタイを引っ張っていた手の力を自然と抜いた。
彼は、本気で驚きを隠せないといった表情で俺を見つめている。
俺の言葉を冗談だとでも受け取ったのだろうか?
でも、その時、口にしていた俺の言葉に、嘘偽りは全く無かった。
そうなのだ。俺には彼を抱く気など元から全く無かった。
ただ、先程、初めて彼の姿を目にしてから、無意識のうちに、彼を何とかこの境遇から救い出したいと思っ
ていただけだ。
「……っ! そんなの……嘘だ!!」

64 :
彼は、俺を真下から見上げた、その姿勢のまま、信じられないといった表情で、声を上げた。
無理もない。
きっと、今までにも、客である男達と身体を重ねる度に、甘い睦言を囁かれてきたのだ。
そして、それが現実になることなど、絶対に無いと、自らに言い聞かせてきたのだろうから。
今、急に俺の言葉を信じろと言うのには無理がある。
それでも、俺は自分の言葉が嘘偽りでは無いことを信じて欲しかった。
俺は、もう一度、自らの正直な気持ちを心の底から込めるようにして、彼にその言葉を告げる。
「俺は、本気だよ」
「嘘だ……嘘だよ……こんなの嫌だ……」
俺のその短い言葉を聞いた後、彼の瞳からは、自然と涙が零れ落ち始めていた。
それは、きっと無意識に零れ落ちたものなのだろう。
彼は、その涙を拭う事なく、俺を見上げるようにして見つめながら、泣いていた。
こんな風に優しくされてから、その掌を返されるような事があるのなら、
それは、心が悲鳴を上げる程に痛い。
だから自分に構うなと。
彼の瞳は、俺にそう告げているように思えた。

65 :
俺は、自らの下に組み敷いたままの少年の乱れた金色の髪を額から除けるようにしてそっと撫でた。
「……っ」
たったそれだけのことで、少年の背中は、ほんの少し怯えるように、震えて撥ねた。
俺は、そんな彼を見つめながら、自らの指で、その目尻から零れる涙を掬う。
その場で安心しろと言っても無理なのは、十分に解っていたが、少しでも彼に安心して欲しかった。
「どうして? 嘘じゃないから。君はもう、泣かなくて良いんだ。頼むから……もう泣くな」
そう言った俺は、自らの心に従うように、彼の整った曲線を描く額へと、そのまま、そっと口付けていた。
その俺の口付けに、彼の背中が再び小さく震えて撥ねた。
「……や……マサト……頼むから……俺にそんなに風に優しくしないで……」
彼は、俺からの視線を避けるようにしながら横を向くと、未だに涙に泣き濡れた横顔を俺に晒しながら、小さ
な、その場から消え入りそうな声でそう言った。

66 :
「俺が君を気に入ってしていることだから、もう、気にするな」
「……っ、あ……」
俺は、彼に対して言葉さえならない、この自分自身の内側から強く湧き上がってくるかのような、情熱的とさ
え言える親愛の情にも似た気持ちを行動で示したくて、彼のしなやかな躯を抱えるようにして抱きしめた。
それから、俺は、自分の身体と彼の身体の隙間が無くなるかのように、互いの身体を重ね合わせ、先程よ
りも強く抱きしめるようにしてから、彼の額へともう一度、口付けを贈った。
先程、彼を本気で抱く気など全く無いと言っていた筈で、事実そんな風な気持ちは全く無かった筈なのに、
今、俺は、彼に対して何故だかそうせずにはいられなかった。
そんな俺の気持ちを見透かしたのか、俺の腕の中にいた少年は自らの両腕を俺の首筋の辺りへとまわし
て、今度は、彼、自らが俺を強く抱くようにして、そのしなやかな身体を俺の方へと寄せた。
「……頼む……から……俺を抱いて……」
彼は俺の耳元で、まるで小さな子供が大切な願い事をするように囁いた。
小さな声に魅かれるようにして、俺が再び彼を見つめると、そこには、その瞳に真摯な光を宿す、少年の姿
が在った。
そして俺は、彼の真摯な蒼い瞳を見つめながら―その柔らかな唇へと口付けた。
【END】

67 :
−The Sequel−
その夜、結局、俺は、そのまま彼を抱くことになった。
あの出来事からは、もう既に何年かが経ったが、今も変わらず聖母は俺の傍で微笑んでいる。

68 :
投下終了
後半だだ甘な気もしますが、楽しんでいただければ良いかなと

69 :
あと、今までの作品を創作発表板@wikiの保管庫に収録してくださった方がいるようなので、
一応、ご案内
【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】
作品まとめページ
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/898.html
収録してくださった方、乙でした。
これからもどうぞよろしくお願いします。

70 :
>>68 
おぉ! 投下乙です!!
読み応えのあるSSが続けて投下されるとは嬉しい限りだw
一見すると少年の方が強気で、大人っぽいとこが好きだなw
またの投下をお待ちしてます!
まとめページの方にも収録してきました
ご報告まで

71 :
>>68
乙です!
ここのところ定期的に投下があってなんか嬉しいなw

72 :
>>11の続きを6レス程投下
前回とは逆の相手方視点でちょっと短めのお話です。

73 :
 ずっと。
 弟分のように思っていたのだ。
 それが何時から、それ以上の感情を伴って見るようになったのか、はっきりとは覚えていない。
 だが、一見冷たそうに見える、プラチナシルバーの短く整えられた髪とアイスブルーの瞳の同室の少年−
ヴィットーレ・ディ・イエッリ−彼がその容姿に似合わぬ、屈託のない笑顔で微笑む度に、魅かれていって
いた気はする。
 あいつは、そういう意味では、本当に天然なのだ。自分の何気ない表情や仕草が一体どれ程の人々を惹
きつけているのかなんて、全く自覚していないのだろう。

74 :
「……んっ、あぁっ……トォガ……や、ぁ……」
 これだよ。
 奴は先程も俺の隣のベッドで、こんなにも悩ましげな寝言をあげて、俺の名を呼びやがった。
 その日、元々眠りの浅かった俺は、その声に呼び覚まされるように、目をあけた。
 そして、それは、俺が眠り初めてから、まだ余り時間が経っていないうちの出来事だったので、ある意味当
然のように、まだ辺りは暗く、夜の闇に包まれたままだった。
 今は、ちょうど、真夜中を少し過ぎた位の時間帯のようだ。
 
 全くどんな夢を見てるんだか……。
 俺はそう思いながら、自分自身の長くて、鬱陶しい長い髪をかきあげながら、ベッドから上半身を起こし
て、奴が眠るベッドの方へと振り返る。

75 :
 あー、案の定、ブランケットが奴の身体の上に掛ってないよ……俺にブランケットを引き剥がされた夢でも
見てるんだろうか、こいつは……
 奴のそんな姿を見た俺は、ため息をつきながら、自分のベッドから静かに立ち上がって、奴のベッドの傍
へと歩いて行き、その一見華奢に見える奴の身体へと、そっとブランケットをかけてやる。
 「……んう……やぁ……ん……あぁっ、トーガぁ……」
 俺がブランケットをかけて、奴の顔を覗き込むようにした瞬間、見ているこちらの方が切なくなるような、ま
るで、情事に喘ぐ美少年といった風な表情をしながら、奴は小さな声で、そう呟いた。
 もちろん、それも寝言だし、表情だって、寝苦しさ故のものだろう。
 俺は、多少、呆れるような気持ちを伴いながら、再びため息をついた。

76 :
 それから、再び、奴の整った顔へと自らの顔を寄せて、奴の額へと軽くキスをしてから、その場を離れる
と、近くの窓をほんの少しだけ開けて、冷たい夜の空気が入るようにした。
 窓を開けた途端に、少しずつ入って来る秋の気配を伴った、穏やかな風が、俺の長いプラチナゴールド
の髪を掬っていく。
 奴の所為で、ほんの少しだけ熱を帯び始めていた自分の身体とっても、その冷たい風は心地良かった。
 ここは、全寮制の男子校の寮棟の一室なので、今、俺が、気分を変るために外に行きたくとも、基本的
にこの部屋の外に出ていくことは難しい。
 この真夜中の時間帯でも、シャワー室やラウンジなど、自室以外の場所も寮内であれば、基本的出入り
自由なのだが、こんな真夜中なには、それこそ、世間一般で言う、不謹慎な逢瀬を重ねている生徒も幾人
かはいるということを識ってはいるので、そういう輩に遭遇したくないだけの話だが。
 世間一般では、そんな色恋を絡めた逢瀬を男同士で、なんて、不謹慎だと思うのだろうが、そういう性的
な代償行為を欲する傾向が強い年頃にある若者−しかも男だけを集めて長いこと寮生活を送るなかで、そ
うなるなと言われも、決して自己擁護する訳ではないが、少し無理があると思う。

77 :
 全く、俺が同室じゃなかったら、お前なんか、すぐにそういう輩に手を付けられていたと思うぞ。
 俺は、そう思いながら、先程とは変わって、もう既に、安らかな寝息を立て始めていたヴィーの方へと振り
返った。
 まあ、こいつは、見た目よりも相当強いので、そう簡単には、手籠にされたりはしないと思うけど。
 本当に……どうしてこんな奴を好きになっちゃったんだか……。
 それこそ天使のような微笑みを浮かべて眠る奴を見ながら俺は、そう独りごちた。
 
 俺は外の空気を入れるために、少しだけ開けていた窓を閉めると、自分のベッドへと戻って、腰を下ろし
てから、ベッドサイドテーブルに置きっぱなしにしていたミネラルウォータを一口飲んだ。
 それから、手近に置いてあった携帯音楽プレーヤーを手にして、イヤホンを耳にすると、お気に入りの曲を
かけながら、横になる。
 もちろん、奴の悩ましい声をこれ以上、聞かなくても済むようにするためだ。

78 :
 「まあ、何にせよ、俺が護れるうちは、必ず、お前を護ってやるよ」
 今は静かな寝息を立てているであろう、本来の護衛対象ではない、その少年の背中に向かって、俺は小
さな声でそう告げた。
 それは、唯一人、俺のみが知る、奴への告白になるのだろう。
【END】

79 :
セリフだけは、ちょっと頑張ってみましたw
しかし、相手方の方が以外と冷静で書くのが難しかったよ……

80 :
>>79
続きキター!!
ヴィーが可愛いw 可愛いよ、ヴィットーレ!!
投下乙でした!
またの投下を楽しみにしてるよw

81 :
    ___
   ,;f     ヽ
  i:         i
  |         |
  |        |  ///;ト,
  |    ^  ^ ) ////゙l゙l;
  (.  >ノ(、_, )ヽ、} l   .i .! |
  ,,∧ヽ !-=ニ=- | │   | .|
/\..\\`ニニ´ !, {   .ノ.ノ
/  \ \ ̄ ̄ ̄../   / .
ttp://minus-k.com/nejitsu/loader/up73565.jpg

82 :
思い付きで投下
ひたすら暗くてごめん
短いくせに鬱属性高いです

83 :
「ああぁあぁぁあ!!」
ただ、叫ぶことしかできない
君が一体何をしたと言うのだ
互いが同じ性だという
ただ、それだけで
僕が君を
君が僕を
互いに心通わせ
互いに愛おしく思い
ただ、一度、愛しあったという
ただ、それだけで

84 :
永遠に君に会えなくなるなんて
君を永遠に失うなんて
この怒りと哀しみを
抱えたまま、僕は何処へ
何処へ
僕は、今、ただ、泣き叫ぶ
君の面影を求めて
−end−

85 :
SSにするにはあまりにも悲惨になっちゃったので、
とりあえずネタとして晒そうかと
本当にすみません……

86 :
四谷シモーヌのオウムネタ(青山弁護士・早川×上祐マイトレーヤ)を
上祐本人に見せる企画をニュースサイトがやってるw
ttp://www.tanteifile.com/diary/2010/10/11_01/
動画もあるwwwやたら出版社にこだわる上祐wwwwwww
ttp://www.youtube.com/watch?v=EOmURXkBGZo
確かに同人誌じゃないから本人に見せるのはアリっちゃーアリなのかね?w
シモーヌの同人は昔からアレなんでまーいーとして
こんなトンデモ本を商業出版した太田出版がトチ狂ってるよなwww

87 :
かわいい
http://live.nicovideo.jp/watch/lv29476900

88 :
>>85
投下乙です!
このスレは、シリアスでもばっちり受け止めるから大丈夫!
SSもぜひぜひ投下しちゃってくださいw

89 :
>>73の続き?を投下
今度は、護衛対象の御方に新たな同室の友人ができてからのお話です。
おい、話がちょっと先に進みすぎだろっ!とは思いますがご容赦ください。

90 :
「ごめん……俺は……君のことが好きなんだ……」
 僕の隣に座っていた少年は、その瞳から不意に涙を零しながらそう言った。
 彼は何時から、僕に対して、そんな気持ちを傾けてくれていたのだろうか。
 今、この瞬間まで、僕はその想いに全くと言って良い程、気付いていなかった。
 それでも、彼が今までずっと、その想いを伏せたままで、僕に対しても、誰に対しても、分け隔て無く、そ
れこそ、常に普通の友人と一緒にいる時と何ら変わりが無いかのように、接してくれていたことを思うと、胸
が痛くて、張り裂けそうになった。
 自分がその時、どんな表情をしていたのか、良くは覚えていない。
 ただ、僕は、つい先程、彼が僕にしてくれたのと同じように、彼の頬にそっと手を添えると、彼に対して、自
らキスを贈っていた。
「ミカ……エル……僕も……君が好きだよ」
 僕は彼の唇へと短くキスをした後で、やっとの思いで、自らの気持ちを小さな声で彼に伝えていた。
 そうなのだ。
 僕の方こそ、まるで宗教画の天使のようだと形容するに相応しい容姿を持つ、この金髪碧眼の少年の
笑顔に出会ってから、もうずっと、普通の友人に対する想い以上に好きだという感情を抱いてきたのだ。
 それは、当然、僕が一方的に持っている感情だし、決して恋愛感情にまでは至らないものだと、自らに言
い聞かせてきた、いわば叶わぬ想いだと思っていたものなのに。

91 :
 僕が小さな声でようやく口にした、その言葉を聞いてから、彼は、一瞬、驚いたような表情のままで、僕を
見つめていた。
 それから、彼は、ほんの少しだけ蒼みがかった色を残す僕の黒い瞳に視線を合わせるようにして、相対
する僕の表情と、その言葉には嘘偽りが無いのだということを認識すると、本当にほっとしたような表情を
見せた。
 そして、僕が好きだと言ったその言葉よりも、嬉しい事なんて、他には無いのだとでも言いたげな表情で、
僕に向かって、いつものように屈託のない笑顔で微笑んだ。
 僕は、彼のその優しい笑顔に対して、どう振舞って良いのか解らなくなった。
 おまけに、彼とそのまま目線を合わせているのが、気恥ずかしくなった僕は、不意に自らの瞳を閉じた。
「……っ!」
 それを見計らっていたかのように、彼は先程、初めて僕に対してキスをした時と同じように、僕の頬へとそ
っと手を添える。
 僕は、彼の暖かな掌が僕の頬へと触れたれだけで、その場から全くと言っていい程、動くことができなくな
っていた。
 そして、僕がその場から動くことができないと思っていた、その瞬間、上手くタイミングを合せるようにし
て、彼は僕の唇へと優しく口付けた。
「……っあ!!」
 僕は瞳を閉じたまま、抵抗らしい抵抗をみせることも無く、彼の口付けをそのまま受け入れていた。
その口付けは、徐々に、先程の軽く触れ合うようなキスとは異なる、大人同士の熱を帯びた抱擁へと繋
がる、互いの吐息さえも深く交わるものへと変わっていく。

92 :
「……ん、あぁっ!!」
 彼が僕の唇を一度、解放した瞬間、僕は自分でも恥ずかしくなるような、小さな悲鳴にも似た声をあげな
がら、無意識のうちに彼の肩へとしがみつくと、自らの身体を彼の方に預けていた。
 僕のそんな様子に構う事無く、彼は僕の制服のネクタイを緩めると、シャツのボタンを2つ程外し、その所
為で露わになった僕の首筋へとキスを降ろす。
「……ふ、あぁっ!!」
 生まれて初めてそんなことをされた僕は、訳も解らず再び小さな声を上げた。
 だた、彼の唇が触れる度に、触れられたその部分が熱い。
 まるで、熱に浮かされるような感覚が僕の中へと注ぎ込まれていくように熱い。
 「……く、あぁっ!! ……んっ!!」
 彼の舌先がほんの少し触れてから、今までとは異なる、甘く噛まれるようなキスを首筋に施された僕は、
たったそれだけのことなのに、また声をあげていた。
 その時僕は、本当に―自分でも自分の事をどう制したら良いのか、全くと言っていい程、解らなくなって
いたのだと思う。
 後ろで一束に束ねていた僕の真っ直ぐで長い黒髪が邪魔になったようで、彼は、自らの手で僕の髪を梳
くようにして、反対側の肩へと寄せた。
 それから、彼は再び僕の首筋へと丁寧にキスを施してから、そこから更に下の胸元へと唇を移動させて
いく。

93 :
「……っあ!! ……っ、や……ミカ……エル……」
 そこまできて、僕はようやく、彼の行為を拒む言葉を必死になって口にしていた。
 ここは、この場所は、寮棟の僕等の自室ではない。
 今、この自習室には、僕等二人しかいないのは、解っている。
 それでも、不意に誰かがこの部屋の外を通るかもしれなくて、なおかつ、こんな有様を見咎められるかも
しれない状況の中で、これ以上の行為に及ぶなんて、絶対に無理だ。絶対に嫌だ。
 僕は、そう思いながら、もう殆ど力の入らなくなっていた自らの腕で、必死に彼の肩を押し戻す。
「……お願い……だから」
 僕のその声に、彼は、はっとしたように、顔を上げると、僕を真っ直ぐに見つめた。
 彼でもこんな風に我を忘れることがあるんだな……。
 などど、僕は急に呑気なことを思いながら、彼と顔を合わせたまま、その場でぼんやりと彼を見つめてい
た。

94 :
「……済まなかった。俺は一人で先に部屋に戻るよ。
 アカリ、本当に申し訳ないんだけど、
 俺よりも少し後で、部屋に帰って来るようにしてくれるかな? その……本当にごめん、待ってるから」
 つい先程までの行為を思い返した所為か、彼は顔を真っ赤にしながら、僕にそう告げた。
「……あ、うん、解った。僕は後から行くようにするよ」
 その言葉に合わせるように、僕は、彼に返事を返しながら、乱れた制服の襟元を直す。
 彼は、僕が制服の乱れを直し終えたのを見ると、ほっとしたように、ため息をつき、申し訳なさそうな表情
で僕の額へと軽くキスをした。
 それから、彼は先程、この部屋に来た時に脱いでから、反対側の椅子に掛けたままにしていた、制服の
ブレザーを手にすると、ふわりとそれを羽織りながら、そのまま自習室を出ていった。

95 :
 自習室を後にしていく彼の後ろ姿を見送り、部屋の扉を再び閉めた後で、この部屋に一人きりになった
僕は、ようやく、少しあたふたしていた気持ちから解放された所為か、無意識のうちに大きなため息をつい
ていた。
 その時僕は、はたと気付いた。
 僕と彼は、今、二人で、寮の同じ部屋で、過ごしている訳で……
 その部屋で僕を待っているって、ことはその、えっと……その……
 ……これから僕は一体、どんな表情をして、あの部屋に帰れば良いっていうんだぁ!!
 嬉しいような、泣きたいような、複雑な気持ちになりながら、僕は再び大きなため息をついた。

96 :
―― 一方、それから遅れること数分後の寮棟内では ――
 彼―ミカエル・レアン・ダイ・クと僕―海堂 朱里の部屋の前で、プラチナシルバーの髪とアイスブルーの
瞳の少年―ヴィットーレ・ディ・イエッリが僕等の帰りを待っていた。
 ヴィットーレは、廊下の向こう側から唯一人で帰ってきた、彼の護衛対象でもある、主 ― ミカエルの姿
を目に留めると、彼の表情から何かに気付いたように、微笑んだ。
 それから、ミカエルの方へと歩いていき、互いがすれ違うようになったその瞬間、その相手に向かって軽く
声をかける。

97 :
「ミカ、一度だけだ、一度だけは、見逃してやるよ」
「煩いよ、君は」
 二人は、すれ違い様に互いの拳で軽く肩を小突き合うとそのまま反対の方向へと歩いていった。
 結局、僕はその後で、そのまま自習室へと迎えに来たヴィットーレに連れられて、寮の自室へと戻った
が、その間、二人の間でそんなやり取りがあったということは、もちろん全く知らなかった。
 そして―寮の自室に戻ったその日の晩に、僕とミカエルの間でどんな約束が交わされたのかは、ここでは
秘密にしておきたいと思う。
【END】

98 :
ぎりぎりのところを狙ったはずなのに、なんだか詰めが甘い気が……
>>80
ヴィットーレを気に入ってくださってありがとう! 感謝です!

99 :
>>89
おぉ! 3作目の投下乙です!
護衛対象の御方が意外と積極的で、しかも攻めとは……
こちらのカプの今後も楽しみだなw

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