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2012年3月ニュー速VIP106: さやか「一緒にこの世界を守ろう」 (153)
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ナカムラジオ (183)
俺がデッドスペースを実況するスレ (800)
P「ん?誰のファイルだ、これ・・・?」 (141)
高岡さんがフジ韓流ゴリ押し批判したら干されたのでウジテレビ凸 (298)
【ゆるゆり】船見結衣ちゃん応援スレ (212)
さやか「一緒にこの世界を守ろう」
- 1 :12/04/01
- 「おらおらぁっ、死にてーヤツからかかってこい!」
杏子が楽しそうに魔獣の群れに突っ込んでいく。
「滅びの鎮魂歌を――奏でましょう?」
その両脇に火線が走り、使い魔が次々とマミによって撃ち落とされる。
「やあああああっ!」
杏子の縛り上げた魔獣をさやかが吼えながら斬り捨てた。
「終わりね」
逃げだそうとした使い魔を弓矢で射抜いたほむらは髪を払った。
結界が色を失い溶け消えていく。
- 2 :12/04/01
- 「うん、かなりいい感じだね。みんなお疲れ様!」
ひとり魔法少女姿でないまどかが笑った。
ここは改編された世界。
すべての魔女がまどかに封印され、魔法少女の希望がエネルギーとして振り撒かれる世界。
祈りが絶望で終わらない世界。
この世界で5人の魔法少女は、戦い続ける。
- 3 :12/04/01
- ──────お尻──……
- 4 :12/04/01
- 1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
5. ファーランド サーガ1、2
6. MinDeaD BlooD
7. WAR OF GENESIS シヴァンシミター、クリムゾンクルセイド
SS誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
マミ「あなた誰なの?」
QB「確かに “この僕” は、三時間ほど前まで君のそばにいたのとは別の個体だよそちらは暁美ほむらに撃ちされた」
まどか「わたしの願いでマミさんのそばにいた子を蘇生すれば、ほむらちゃんのこと許してあげられませんか?」
こんな感じの旧QB蘇生キュゥマミ魔法少女全員生存ワルプルギス撃破誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304834183/1
- 5 :12/04/01
- とりあえず様子見
- 6 :12/04/01
- 「いやーさやかちゃん大活躍の巻! だったね!」
5人は魔獣退治後、マミの部屋で遅い夕食をとっていた。
「静かに食えよな阿呆さやか。マナー違反だぞ」
「あんたにマナー云々とかぜったい言われたくないんだけど。バカ杏子」
「はいはい二人の仲がいいのはわかったから食卓で武器を出さないで」
「「仲いい!? こいつと!?」」
お互いを指差してから、同時にそっぽを向く。
「「こっちから願い下げだっての!」」
「あはは……」
「まったくもう」
- 7 :12/04/01
- マミさんの厨二病が悪化している
- 8 :12/04/01
- 「――戦闘時にはもっと広く視界を保つようにしなさい。美樹さやか」
「はーい。ほむらは厳しいなー」
「あと体捌きがなってねーよ、前も言ったろ。強引に行き過ぎなんだよ」
「う゛っ……それは、次回の課題ということで……」
「ふたりとも、一度になんでもできるわけじゃないよ。まずは慣れて、それから意識するようにしていこう」
「ええ。まどかの言うとおりね」
「暁美さん、切り替え早すぎよ」
「おーっまどかぁ我が嫁よ!」
「さやかちゃん、次もがんばろうね」
- 9 :12/04/01
- 「あのさー」
杏子がぽいと言葉を投げ入れた。
みながそちらを向く。
「さやかの訓練がいるんじゃないかと思うんだよな」
「訓練? あたしの?」
「それは、実戦ばかりでは危険だということかな、杏子ちゃん」
「危険つーか、えーと……、ばらつきが大きすぎるんだよな状況の。うん。ある程度、自分の型っつーか流れみてーなのを持っとくべきだと思う」
「確かにそれが理想的な習熟方法かもしれないわね。私や佐倉さんは実戦で否応なく経験を積んだけれど、可能ならそういった方法を取るべきかもしれない」
「訓練ってどんなの? 腕立て伏せ1000回とか? うさぎ跳びで風見野までとか?」
「そんなことしてどうなるのよ。まったくもって愚かね美樹さやか」
「はい! ほむら鬼教官!」
「誰が鬼教官よ!」
- 10 :12/04/01
- なんか前見た気がする
- 11 :12/04/01
- ほむほむ
- 12 :12/04/01
- 「アタシらそれぞれについて特訓すりゃいい。教え方もばらばらだろうし」
「それはいいね、杏子ちゃん。そうしよう」
「ええ。まどかの言うとおりね」
「そればっかりね暁美さん」
「じゃー決まりだな。さっそく明日から始めような、さやか!」
「ぅえー? あんたからなの?」
「あー? なんか文句あんのか」
「あら、美樹さやかは鬼教官の地獄のようなしごきを期待してるのかしら」
「ごめんなさい勘弁してください」
- 13 :12/04/01
- 「じゃあはじめは、私とやりましょうか。美樹さん」
「よしきたマミさん! さやかちゃん、がんばっちゃいますからねーっ」
「んだよそれは」
「がんばってね、さやかちゃん」
「次はアタシだかんな!」
「私がとどめというわけね」
「怖い言い方するの辞めて!?」
- 14 :12/04/01
- ほむほむは間違い無く軍隊式
- 15 :12/04/01
- tes
- 16 :12/04/01
- さやさや
- 17 :12/04/01
- 帰宅してから、まどかは自室で日記を書いていた。
「あーさっぱりしたー」
風呂上がりの杏子が入ってきて、ぽすんとベッドに腰掛けた。
「杏子ちゃん、湯冷めするまえにパジャマ着たほうがいいよ」
杏子は諸事情から鹿目家に養子縁組され、法的にはまどかの姉となっている。
まどかの部屋にふとんを敷いて寝ているのである。
「あー、りょーかいー」
わしわしと髪をタオルで掻きながら下着姿の杏子はおざなりに返事。
- 18 :12/04/01
- なんで改変世界なのにまどっちいるん?
- 19 :12/04/01
- 「あのさー」
「ん?」
「前にさ、まどかに封印された呪いが滲みだしたものが魔獣だって、言ってたろ?」
「うん。……ん?」
まどかは杏子のいいたいことに気付いたようだった。
「杏子ちゃん。もしかして、だから特訓なんて言い出したの?」
まどかのほうを向いて杏子は強く頷いた。
「さやかは強くならなきゃなんねー。あいつがされちまう前に」
「……わかった。わたしも考えるよ」
まどかはじっと中空を見つめた。
- 20 :12/04/01
- 翌夕、さやかは学校からマミの家へと向かった。
「おじゃましまーす」
「いらっしゃい。準備できてるわよ」
「わーい、ってマミさんその姿は!?」
「これぞレッスン・スタイル、『迷える子羊を導きし人の子』よ!」
マミは白のブラウスに薄灰色のタイトスカートという出で立ちである。
くい、と縁のないメガネを指で摘んだマミはにっこり笑った。
「似合ってます、さすがマミさん!」
さやか(というかエロすぎです)
- 21 :12/04/01
- 「よかったねマミ。昨晩、一生懸命変身魔法をカスタマイズした甲斐があったじゃないか」
「キュゥべえ! それ言わないでよ!」
「いたんだあんた。ってマミさん、それ魔法なんですか!?」
「え、えへへ。実はそうなの。コスチュームにバリエーションがあるのもいいでしょう?
ほかにも、ウィザード・スタイル、プリンセス・スタイル、クラシカル・スタイルなんかがあるの」
「す、すごいですね」
「せっかくだから実際に美樹さんに見てもらいましょうか! まずはアイド――」
「ごっごめんなさいマミさん、先に特訓しましょう!」
「あっ、そ、そうね!」
嬉々として話していたマミはさやかに遮られて我に帰った。
- 22 :12/04/01
- まみまみ
- 23 :12/04/01
- これ書いてるのマミさんだろ
- 24 :12/04/01
- 「――さて。では、講義を始めるわね」
胸元から、おそらく魔法によって指し棒を取り出し、ピッと白板に向けた。
「魔法少女の戦い方は、次のようになっていると、私は考えているわ。
すなわち、相手への攻撃、相手の攻撃への対処、そしてその間を繋ぐ準備――そうね、装填とでもいいましょうか。
戦いは、このみっつの行動から成り立っているの」
「ふむふむ」
マミは筆記体でActionと書かれた円を指した。
「これらの行動にはいくつか選択肢があるわ。攻撃なら、様子見するような小手先の攻撃、とどめを刺すような大火力の一撃、広範囲への攻撃、みたいな感じね」
「なるほど」
「じゃあ美樹さん。攻撃への対処にはどんな選択肢があるでしょうか?」
「はい! 防御と、回避です!」
「そのとおりね。正解よ、美樹さん」
「よっしゃあっ」
- 25 :12/04/01
- 唾さえ付けずとも治るんだから回避も防御も要らんでしょうよ
- 26 :12/04/01
- さやさや
- 27 :12/04/01
- 「基本はそのふたつとして、あとは相や阻害なんかがあるわね。そして、いちばん大事なのが、装填よ」
マミは白板にLoadと書いた。
「大事なのは攻撃じゃないんですか?」
「もちろん攻撃も大事だけれど、この装填が上手なひとは、戦うのが上手い、つまり強い、ということなの」
「そうなんですか」
「具体的な話にしましょうか。まず私が魔獣と接敵する、私はマスケット銃を一丁取り出して構える」
実際に銃を出してマミは構えてみせた。
「これが装填。で、撃つ。これが攻撃」
さやかは相槌を打った。
「相手の攻撃を避ける。これが対処。次に装填」
マミが再び銃を手に取って構える。
「そして攻撃。どうかしら、なにか気付くところはある?」
- 28 :12/04/01
- ううん、とさやかは少し考えてから答えた。
「なんか、実際のマミさんの戦い方と比べると、テンポ悪いというか……」
「そのとおり! さすがね美樹さん。
今の例でいえば、まずたくさん銃を呼び出しておいて、撃ちながらもう一本を構える、というふうにすれば途切れなく攻撃を行えるわ」
「あ、それはたしかにマミさんのイメージかもです!」
「なんだか手前味噌な言い方になるけれど……、これが装填を工夫して上手に戦うということね」
「なるほど! 装填が大事ということがわかりました!」
「攻撃から攻撃へと、あるいは対処から攻撃へと、いかに素早く的確に繋げるか。
これを考えるのが装填を工夫するということで、上手に戦えるようになるということ」
マミは一息いれて笑った。
「私は、そう思うわ」
「マミさん教えるの上手ですね! わかりやすかったです」
「ふふっ、ありがとう。それじゃあ実践編ということで、パトロールにいきましょうか」
「了解です!」
- 29 :12/04/01
- でもさやかちゃんの技名ってマミさんリスペクなんだよなwwかわいい
- 30 :12/04/01
- まみまみさやさや
- 31 :12/04/01
- 小雨のなか、さやかはほむらと帰っていた。
「狭いわ美樹さやか」
ほむらの握る傘ではふたりははいりきらないのである。
「もうちょっと、もうちょっとそっち行ってよほむら! あたしもう肩濡れてるから!」
「興味ないわ。あと、すぐそばでやかましいのよ」
「優しさが足りない!」
「静かにしなさい美樹さやか。だいたいどうして傘を持ってこないの。どれだけ貴方は愚かなの」
「傘を忘れたくらいで説教やめて!? あっ、そーれーとーもー? 美少女さやかちゃんと相合い傘して、照れてるのかなー?」
「今すぐしてあげるわ。美樹さやか……!」
「ぎゃーっへるぷみーっ!」
ほむらが一挙動で盾から引き抜いた拳銃を突き付けられ喚くさやか。
- 32 :12/04/01
- 「なんつって傘パクっ!」
ほむらから傘を奪い取って、さやかは走り出した。
「ちょ、返しなさい! さやか! ――家はそっちじゃないわよ!」
…
帰宅したほむらはタオルで髪と服を雑に拭いた。
「……まったく、なんて愚かな、無駄に走って、とんでもない阿呆ね……」
「ぶつぶつ言ってないでタオルちょーだい。ほむら」
「すごく図々しい!? あぁもう、ちょっと待ちなさいよ」
ほむらが新しくタオルを取り出そうとすると、
「え? これでいいよ」
さやかはほむらの手からタオルを取って自分をぱたぱたと拭いた。
「………」
- 33 :12/04/01
- さやさや
- 34 :12/04/01
- 「はい、あんがと。つーかあたし、けっこう濡れたなー。ほむらハンガーある?」
「あるけど……、もしかして脱ぐの?」
「……なんか言い方やらしいな! ほむらのえっち」
「なっなにを、私はそんな……!」
「はいはいわかったからさっさと貸してよ」
「本当に図々しい!」
…
「さて、と」
ちゃぶ台を挟んでふたりは腰を下ろした。
ほむらは室内着で、さやかはほむらの私服を借りている。
「あれ? ほむらは変身しないの?」
「なんのことか知らないけれど、そういうのは巴マミだけよ」
「いやわかってんじゃん」
- 35 :12/04/01
- ほむほむ
- 36 :12/04/01
- 「当然の推測よ。どうせマミのことだからレッスン・スタイルとかいってたのでしょう」
「見抜いていらっしゃる……!」
「そんなことはどうでもいいのよ。巴マミからはどんなことを聞いたの」
さやかはマミの講義を要約した。
「実践編では考えながら戦ってたらひどいことになったんだけどね! てへっ」
「その気持ち悪い顔と仕種をやめなさい美樹さやか」
「ひどいよ!」
「ともかく、講義については特にいうことはないわね。まあ、私もそもそも巴マミの後輩なのだから、意見がなくて当然なのだけれど」
「そういえばそうだったね。なんで巴さんって呼ばないの? 前はそう呼んでたんでしょ」
さやかを一瞥するほむら。
- 37 :12/04/01
- 「………。けじめ、みたいなものかしら」
「照れてるんでしょ」
「なっ、そ、そんなんじゃないわよ。ばか」
「ほむらはさー、もうちょっと肩のちから抜いてもいいんだよ?」
「なにを……」
「あんたさ、あたしらに悪いと思ってるでしょ。まだなんか遠慮してる」
「そんな、ことは」
ほむらはちゃぶ台に視線を落とした。
「隠しきれるもんじゃないって、そういうの。忘れろなんて言えないけどさ。
あたしが知ってるのはあたしが知ってるほむらだけなんだから、ううん、なんていうかなぁ」
さやかは宙に視線をさ迷わせて言葉を探す。
- 38 :12/04/01
- さやさや
- 39 :12/04/01
- そして、見つけた! というふうに前に戻した。
ほむらも顔をあげる。
「あたしはほむらが好きだから!」
「はッ!?」
ほむらは盛大に動揺した。
「あんたのこと、キライになったりしないから、安心してよ。だから、あたしのこと好きになっていいんだよ?」
「な……」
「もちろんみんなもね!」
「………」
- 40 :12/04/01
- さやさやほむほむ
- 41 :12/04/01
- 「どしたの?」
「……ばかさやか」
「なんだとうっ!? せっかくひとが素直に喋ってんのに! ばかほむら!」
「……ありがとう。さやか」
「えっ?」
「さぁそれじゃ、講義を始めるわよ!」
「いきなりやる気でたねオイ!」
「対魔獣戦における戦闘教義と、戦略戦術についてよ――」
- 42 :12/04/01
- ほむほむ
- 43 :12/04/01
- 公園で子供らと遊んでいた杏子はさやかから連絡を受けて学校へと移動した。
「よう」
「あ、杏子ちゃん」「はやいなー」「こんにちは」
「じゃ、さっそくさやかは借りてくな」
「さやかさん、なんの稽古かしりませんけど、がんばってくださいね」
「おうともさ! 仁美もね」
「ええ。それでは失礼します。ごきげんよう」
「さやかちゃん、杏子ちゃん。あんまり遅くなっちゃだめだよ」
「そりゃさやか次第だな」「それは杏子次第でしょ」
まどかは微笑んで、踵を返した。
- 44 :12/04/01
- ぶらぶらと歩き出した杏子に並んださやかが問い掛けた。
「どこ行くのさ」
「へへ。とっておきの場所、見つけたんだ」
楽しそうに笑いながら杏子は棒アイスをかじった。
「ん? 喰うかい?」
「いやいらんよ。寒いよ」
軟弱だな、と杏子はまた笑った。
「なに、前はバイトだったんだっけ」
「ああ。もうひとりのバイトが熱だしてな、おやっさんに駆り出された」
「なーんかあんたもすっかり馴染んでるんだねー」
「んあ? そうか?」
「まどかんとこでも特に問題ないみたいだし、……恭介とも仲いいし……」
- 45 :12/04/01
- あんあん!
- 46 :12/04/01
- 「あー? なんだって?」
「なっなんでもない! ほら、早くしないと日が暮れちゃうよっ」
「なんだよ、ヘンなやつだな」
杏子が特訓場所に選んだのは陸橋下の工事現場だった。
工事はながらくストップしている。
「こんなところでなにすんの?」
怪訝そうなさやかに杏子は口の端を吊り上げた。
「決まってんだろ――」
変身し、槍を握る杏子。
「――つまんねーから、簡単にやられるなよ、さやか!」
「ちょっ、いきなりすぎ!」
- 47 :12/04/01
- あんあんさやさや
- 48 :12/04/01
- 「暁美さん、そのボウルとってくれるかしら」
「ええ」
放課後、マミとほむらはマミの家でお菓子を作っていた。
「ふふっ」
しゃかしゃかとクリームを泡立てながらマミが笑う。
「なによ巴マミ。気持ち悪いわよ」
「いえ……。暁美さんとこんなふうにお菓子作りするなんて、最初に会ったときには思いもしなかったなって」
「なっ……。そ、それは……」
「あの頃は私も大人げなかったわ。寂しくて、辛くて、でも虚勢をはって……」
「………」
- 49 :12/04/01
- 「でも今は幸せだわ! 背中を預ける仲間がいて、一緒に過ごせる友達がいる」
子供みたいに笑うマミ。
「もう何も怖くないわ!」
「……私も幸せです、巴さん」
俯いてほむらが小さく呟く。
「え?」
「わっ私も、その……、いやでは、ないわ」
「ふふ。それはよかったわ」
頬を赤く染めながら、ほむらは相好を崩した。
- 50 :12/04/01
- まみまみ
- 51 :12/04/01
- ――ぴんぽーん
「あら。鹿目さん着いたみたいね。暁美さん、出てもらえるかしら」
「ええ」
ぱたぱたと玄関に赴くほむら。
それから、無造作に覗き窓に目をあてた。
その目が大きく見開かれる。
「まどか!」
レンズの向こうで、まどかが血だまりの上に倒れていた。
- 52 :12/04/01
- ほ……む……?
- 53 :12/04/01
- えええええええええええええ?
- 54 :12/04/01
- 「まどか!」
悲痛な声で名を呼びながらほむらが扉を開く。
まどかに駆け寄ろうと飛び出したほむらはなにかにぶつかって止まった。
「な……」
ほむらの目の前にいたのは魔獣。
目鼻のない仮面に黒装束を身につけた少女の姿をしている。
その魔獣の握った片刃の剣が、深々とほむらの腹に突き刺さっていた。
「あ……う……」
ぶわ、とほむらの顔に汗が浮かぶ。
魔獣が剣を手放して離れた。
膝を折り、横向けに倒れたほむらはまどかへ震える手を伸ばす。
- 55 :12/04/01
- 「ま……どか……っ」
まどかへ近付こうと這いずるほむら。
床と服が血で汚れる。
「まど……か……、まどか……っ」
痛みもさっぱり感じないのに、目がかすむ。
まどかへと伸ばした手がなにも掴めないまま、意識が朦朧としていく。
「暁美さん?」
出てきたマミの目の前で、魔獣が影に沈んで姿を消した。
「――暁美さんッ!」
マミの叫びを最後に、ほむらは気を失った。
- 56 :12/04/01
- ほむぅ……
- 57 :12/04/01
- マミの部屋は重い空気に満たされていた。
マミ、さやか、杏子が座り込んでいる。
まどかとほむらは応急処置され、寝かされている。
さやかが目をさまさないまどかの髪を撫でた。
「うん。魔獣の仕業だね、これは」
ほむらに寄り添うように分析していたキュウべぇが誰にいうともなく告げた。
「んなこたわかってんだ! なんで二人は目を覚まさないんだよ!」
勢いよく立ち上がった杏子を見上げるキュウべぇ。
「おそらく、暁美ほむらに刺さっていたという武器のせいだね」
「どういうことかしら。キュウべぇ」
- 58 :12/04/01
- 「あのね、もう消えちゃったけど、あの武器は使い魔なんだと思う。その使い魔がまどかとほむらを浸蝕しているから、二人は目覚めないんだ。
正確には魂と肉体のリンクが切断されているというべきかな。どうやら【断ち切る】ことに特化した魔獣のようだね。その原理は僕にも不明だけれど――」
「どーすりゃいいんだよ!」
キュウべぇの言葉を遮って、杏子が火を吐いた。
「さやかもなんか言ってやれよ! ……さやか?」
さやかはゆっくりと顔を上げた。
杏子とマミが息を呑む。
「……絶対、ゆるさない……!」
ふたりが見たこともないさやかの表情は、ひとつの感情をはっきりと表していた。
それは、はっきりと、憎悪。
- 59 :12/04/01
- さやさや
- 60 :12/04/01
- 魔獣の気配を察知してマミ宅を飛び出していった三人に置いていかれた形のキュウべぇは意識を取り戻さない二人を一瞥した。
「やれやれ。今、魔法少女に絶望されると困るんだよね。祈りのエネルギーが取り出せないじゃないか」
ゆっくりと伏せるキュウべぇ。
そして呟く。
「ねえ。まどか、ほむら。魔法少女は電気羊の夢を見るのかい?」
- 61 :12/04/01
- ほ
- 62 :12/04/01
- 「だああああああっ!」
咆哮とともにさやかが巨大な魔獣を両断。
すぐさま跳びあがって、長く伸びた魔獣の腕を回避する。
空中に作り出された魔法陣を蹴って宙を駆けるさやか。
「さやか! あぶねえっ」
杏子が叫ぶのと同時に、さやかの目前にいた使い魔が爆ぜた。
「ぅあっ!」
動きの止まったさやかに魚のような犬のような使い魔が襲い掛かる。
「美樹さん!」
マミがリボンを走らせて助けようとする。
しかしその前に、
「あああああああっ!」
さやかが使い魔を切り刻んだ。
そのまま魔獣に突貫し、まっぷたつにする。
- 63 :12/04/01
- さやさや
- 64 :12/04/01
- 「はぁっ、はぁっ……!」
荒い息をつくさやかの傷が修復されていく。
「お、おいさやか」
「……いなかったね。剣つかうやつ」
変身を解くさやか。
「美樹さん。気持ちはわかるけれど、ムリしちゃだめよ」
杏子とマミもそうした。
結界が消える。
「はやく、みつけなきゃ、まどかと、ほむらの、ために」
呼吸のあいまに言葉をはさむさやか。
「落ち着けバカ。焦ったって、見つかるわけじゃねーだろ」
さやかは俯いた。
- 65 :12/04/01
- さやさや
- 66 :12/04/01
- 「……ったら、……のよ……」
「あ?」
ばっとさやかが頭を上げる。
「見つからなかったら、どうすんのよ……っ!」
その瞳からぼろぼろと大粒の涙が零れた。
「美樹さん……」
「見つからなかったらどうしよう。ひっく。ふたりが目を覚まさなかったらどうしよう」
さやかは両手で顔をおおってしゃがみこんだ。
「いやだよぅ……そんなの……」
「………っ」
杏子はどうしたらいいかわからなくて、それでもさやかを放っておけなくて、膝をついてゆっくりと抱きしめた。
幼いころに父にこうしてもらうと安心したことを思い出しながら。
「だいじょうぶ。きっとだいじょうぶだから」
- 67 :12/04/01
- 「大丈夫? 美樹さん」
しばらくして泣き止んださやかは立ち上がった。
「はい……、すみません。パニクっちゃって」
「いいのよ。不安なのは私も一緒だもの。佐倉さん?」
杏子はまだしゃがんだままである。
「もちょっと、待って……」
嗚咽まじりに答えた杏子の頭をさやかが撫でる。
「それじゃあいったん戻りましょうか」
三人はそうした。
- 68 :12/04/01
- まみまみ
- 69 :12/04/01
- さやさや
- 70 :12/04/01
- 杏子がリビングに戻ってくると、マミがカップをさしだした。
「はい、ココアよ」
「おっサンキュー」
「親御さん、いいって?」
「ああ。まどかは寝ちまったってごまかしといた。週末でよかったな。とりあえずこれで二日もつ」
まどかは杏子といっしょにマミの家に泊まるということにしたのだ。
まどかとほむらは別室に移されている。
「さやかは?」
「お風呂はいってるわ。佐倉さんも入る?」
「はぁ!? んなわけねーだろ! な、なんでアタシがさやかと風呂に……」
「うふふ。美樹さんといっしょだなんて言ってないわよ?」
「だッ、この、マミぃ!」
- 71 :12/04/01
- あんあん!
- 72 :12/04/01
- まみまみ
- 73 :12/04/01
- 「ずいぶん元気だね」
「さ、さやか」
「お風呂でHP全回復! さやかちゃん完全復活!」
「あーじゃあアタシはいってくるわ」
「そうね。……美樹さん、ちょっと手伝ってくれるかしら」
「はい! マミさん」
…
「ムリしやがって。あのバカ……」
シャワーを浴びる杏子の頬を水がながれていった。
- 74 :12/04/01
- さやさや
- 75 :12/04/01
- 「――さて、少し整理しましょうか」
軽い夕食を摂りながら、マミが話し出した。
「鹿目さんと暁美さんは魔獣に襲われた。ふたりはソウルジェムに異常はないけど、目を覚まさない」
「その原因がもぐもぐ使い魔によるもぐもぐ浸蝕だったな」
「ええ。襲った魔獣は剣を使う。仮面をつけた魔獣だったわ」
「仮面の。ふうん」
「あんにゃろーか。で、あいつをブッ倒せばもぐもぐ使い魔も消えてふたりはもぐもぐ起きるってわけだな」
「杏子あんた食べながらしゃべるのやめなさいよ」
「うるへーなあ」
「問題は特定の魔獣をどうやって探すか、よね。ううん、難題ね」
「………」
「とにかく手当たり次第に――」
「それじゃこっちが先に体力を失ってしまうわ。でも、たしかに受け身のままじゃ難しいわね……なにかこちらからアプローチできれば」
- 76 :12/04/01
- まみまみ
- 77 :12/04/01
- 支援
- 78 :12/04/01
- 「――その必要はないね」
だしぬけにキュウべぇがぬるりと別室から現れた。
「キュウべぇ! あなたそこにいたの?」
「おい、今のどういう意味だよ」
「あんた、なんか方法があるっていうの?」
「ほむらに残っていた魔力を分析した結果、ふたりを襲った魔獣の詳細が判明した。その魔獣の原型は、」
キュウべぇがさやかを見据える。
「――おい、てめえっ」
「――美樹さやか。君だよ」
- 79 :12/04/01
- 「え……」「キュウべぇ!?」
「だからね、ふたりを襲ったのは、美樹さやか、君の魔獣なんだよ」
「あたしの、魔獣……?」
「てめえッ」
怒鳴った杏子の槍が白い獣を貫いて絶命させた。
「魔獣というのは魔女を反転させた存在、というのが僕の立てた仮説さ。
鹿目まどかの願いによって彼女のなかに封印された魔女が、自らの対称性を備えた存在を作り出すことによってそれから逃れようとした結果なんだよ。
まどかの願いが適用されるのは魔女だけだからね」
だが窓枠に座っていた二体目が滔々と説明を続ける。
「魔女と魔法少女の魂は共通している。そして魔女と魔獣は鏡写しになった同一の存在だ。
つまり魔獣も魔法少女から生まれるということで、今回の魔獣はさやかが生み出したものだってことさ」
「え、えっ? どういう、こと?」
- 80 :12/04/01
- きゅっ……ぷい……?
- 81 :12/04/01
- むむ…
- 82 :12/04/01
- 「やめろおっ! さやか、聞くなッ」
杏子が槍を振り回すが、キュウべぇはそれをするすると避けてテーブルに飛び乗った。
さやかを正面からのぞきこむ。
「キュウべぇ! だめよ!」
「まだわからないかい? じゃあもっと簡単に言おうか。まどかとほむらを傷付けたのは、君なんだよ」
「あたしが、ふたりを……? うそ……」
愕然とするさやか。
「もう黙れ!」
風を切る槍の穂先から逃れて、キュウべぇは物陰へと逃げ込む。
「ふたりの目を覚ましたければ、さやか、君が君自身を倒さなければならない」
そう言い残して、キュウべぇは姿を消した。
「……クソっ!」
杏子が槍をジェムに戻す。
- 83 :12/04/01
- 「そうだったんだ……」
涸れ果てた声で呟くさやか。
「まどかとほむらを傷付けたのは、あたしだったんだ……」
「違うわ! 美樹さん、それは違う!」
マミがさやかに駆け寄る。
「魔女も魔獣も、けして貴女自身なんかじゃないわ! だって、貴女はふたりを傷付けようなんて、そんなこと望まないでしょう!」
ゆらりと顔をあげたさやかは濁った瞳でマミを見た。
「わかんないですよ。あたし、最初に会ったとき杏子をそうとしたんですもん」
「やめろさやか! あれはそんなんじゃねーだろ!」
「あたしにはそういう一面があるってことじゃん。それが魔獣になって、ふたりを……」
ふら、とさやかが立ち上がる。
「美樹さん!」「さやか!」
「――ついてこないで」
泣きそうな声でさやかは拒絶して、部屋を出ていった。
- 84 :12/04/01
- うわぁ…
- 85 :12/04/01
- さやさや……
- 86 :12/04/01
- さや
- 87 :12/04/01
- 漂白された空間にまどかは浮かんでいた。
「ここは……」
なにもない。
なんの音もしない。
「ああ、そっか」
ここは因果律から隔絶した、概念の世界なのだ。
まどかの願いが作り出した、すべての魔法少女を救うという、概念の。
ふ、とひとつの光景がディスプレイのようにまどかの目の前に表示される。
「これは……、さやかちゃん?」
マミの部屋を飛び出したさやかが目元を拭いながら走っていく。
『サイテーだ、あたし……もう救いようがないよ……!』
隣に経緯が表示される。
「そんな……。あれをキュウべぇに明かされるなんて……」
反対側に、今後有り得る未来が幾通りも展開されていく。
- 88 :12/04/01
- まどかが目を通す前に、類似した表示が統合され、最終的には両手の指に余る数が残った。
そのなかでもっとも起こりうる確率の高い未来の光景を、まどかは見た。
「うそ……!」
黄昏れの古戦場で、さやかが自分自身の魔獣の剣に貫かれている。
抱き合っているように見えるほど、魔獣の剣は制服姿のさやかの腹に深く突き込まれていた。
足元には砕け散ったソウルジェム。
さやかの手からサーベルが落ちる。
「いや、いや! さやかちゃん!」
まどかは次の未来を参照するが、やはりさやかは魔獣に突き刺されている。
さやかが喀血し、魔獣の仮面にかかる。
『やっぱり、あたしはだめだなぁ……まどか、ほむら、ごめん……』
力無く自嘲し、さやかは絶命した。
次の未来ではさやかは魔獣と差し違えていた。
次も、その次も、どれもすべて結末は同じ。
最後の未来でもさやかは腹を貫かれて、だらりと魔獣に寄り掛かっている。
- 89 :12/04/01
- まどまど
- 90 :12/04/01
- さやさや……
- 91 :12/04/01
- 「いやだよ! さやかちゃんを助けなきゃ!」
だが、まどかはなにをすることもできない。
ここは因果から切り離されている。お互いに干渉は不可能なのだ。
ごぼ……
「な、なに……?」
まどかの足元、なにもないところから真っ暗な闇が滲み、広がる。
闇はぶわりと震えたかと思うと、人の形をとった。
かぱりと口が開く。
口のなかは不吉なまでに赤い。
《……たすけてあげようか》
その口から発せられた可憐な声に、まどかは背筋を震わせた。
「あなた、……魔女なの」
- 92 :12/04/01
- 《わたしはあなた》
闇のシルエットは小さな少女である。
ふわりと膨らんだスカートが揺れた。
どうやら笑ったらしい。
《あらゆる魔女をその身に宿し、それらを封じる力を持ち、因果律からほとんど切り離されている――》
闇は小首を傾げた。
《そんな存在をなんと呼ぶの? あなたは人にして人でない。人の域に収まらない『部分』、それがわたし》
まどかは厳しい顔をしていたが、軽く深呼吸をして肩の力を抜いた。
「魔女と魔獣と魔法少女と概念のわたし、かぁ……」
まどかはふふっと笑った。
「あなたになにができるの? 未来を変えられるの?」
闇も口を半月状に歪めた。
《世界の条理なんか、覆してしまえばいい。何度だって。わたしのちからで》
- 93 :12/04/02
- まどまど?
- 94 :12/04/02
- 「改編には大きな代償が必要だよ。世界に歪みが生じて、そしてそれは破滅を導く」
《なにを怖れているの? さやかちゃんを救うために、わたしにできることをするだけだよ》
「信じようよ」
まどかは強く頷いた。
「どんな未来だって、きっと変えられる。ひとの願いが奇跡を引き起こすんだって、わたし、信じてる」
《後悔するかもしれないよ? さやかちゃんを見しにしようとしてるんだよ?》
「決断するって、そういうことでしょ? 失うかもしれなくても、希望のために信じて決めるってことでしょ?」
闇は押し黙った。
「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、わたし、そんなのは違うって、何度でも言い返せるよ。きっといつまでも、言い張れる」
《……大きな希望を抱けば、そのぶんだけ絶望も深く、冥くなる。あなたの見た未来は変わったりしない。
さやかちゃんの死によって、あなたは絶望し、すべてを滅ぼそうとするよ》
今度はまどかが唇を引き結んだ。
- 95 :12/04/02
- さやさや
- 96 :12/04/02
- 《そもそもさやかちゃんが魔獣を倒せなければ、あなたはここに縛り付けられたままだよ。分が悪すぎる賭けだね》
ねっとりと闇がにやつく。
まどかは少し眉をひそめた。
《あなたがちからを使わないというなら、わたしはかまわないよ。ここですべてを見ているといい。すでに定められた、結末まで》
闇がほろほろとほどけるように消えていく。
《あなたが絶望するときに、また会おうね》
にやにや笑いだけが取り残されたように浮かんでいたが、それもほどなく溶けて消えた。
まどかは現在の表示に目を向けた。
「さやかちゃん。わたし、信じてるからね……」
- 97 :12/04/02
- まどまど
- 98 :12/04/02
- 行くあてもなく走っていたさやかは、川べりのベンチに座り込んだ。
背中をまるめ、両手で顔を覆う。
もういやだ、という声にならない呟き。
しばらくの間、川の流れる音だけがしていた。
「――さやか?」
呼ばれてはっと顔を上げる。
ベンチから少し離れたところに恭介が立っていた。
「恭介……」
怪訝そうな表情をしていた恭介だが、松葉杖をついて歩み寄る。
「やぁさやか、奇遇だね。隣、いいかい?」
黙ったままこくりと頷くさやか。
恭介はベンチに腰をおろして一息ついた。
「僕はよくここに来るんだ。リハビリにね。それにここって、なんだか懐かしくないかい」
空を見上げて恭介は笑った。
陽が傾きだしている。
- 99 :12/04/02
- 「子供の頃、さやかはおばさんに叱られたらいつも公園のベンチで泣いてたよね。上級生とケンカしても木から落ちても泣かなかったのにさ。
子供の頃はどうしてあんなに親に叱られると悲しくなってしまうんだろうね」
さやかは視線を落とした。
「自分が、」
「ん?」
「自分が、悪い子になっちゃうのが、いやで、」
そのときの気持ちを思い出すような切れ切れのせりふ。
「きらわれたく、なくて。だから……」
「さやか。なにがあったんだい」
なんでもない調子で恭介が問い掛ける。
さやかはゆるゆると恭介を見た。
彼は変わらず空を見上げている。
さやかはまたうなだれた。
「あたし、サイテーだよ……今だって恭介に慰めてほしくてこんなこと言ってる……」
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