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2012年5月創作発表8: ロボット物SS総合スレ 67号機 (972)
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ロボット物SS総合スレ 67号機
- 1 :12/03/18 〜 最終レス :12/05/09
- ロボット物のアニメ・漫画・小説・ゲームの二次創作から、
オリジナルのロボット物一次創作まで 何 で も どうぞ。
・当機はSSに限らず、イラストや立体物も受け付けています。
・投下の後、しばらく雑談は控えてください。
・ガンダムやマクロス等の有名作は、該当する専用SSスレが立った場合はそちらへ。もしなければ全部ここでやればいいんじゃあないでしょうか。
・支援のご利用は計画的に。詳しくは投下の際の豆知識を参照してください。 →http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/884.html
・次スレは>>950が立てて下さい。次スレが立つまでは減速を。
・また、容量が470KBを超えた場合は要相談。
・立てられない場合は報告及び相談を。スレ立ての際は必ず宣言を行ってください。でないと、黒歴史が来るぞぉぉぉぉ!!
・とある方が言っておられました。「話題が気に入らないなら、四の五の言わずネタを振れ」雑談のネタが気に入らない時は、新しくネタを振りましょう。
・スルー検定10級実施中です。荒らしは華麗スルーしてください。それが紳士の条件です。
・季節の変わり目ですが、これからもルールを守って、楽しく創作活動に励みましょう。
・70号機までもうすぐ。頑張ろうロボスレ
まとめwiki
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/
ロボット作品投下用アップローダー
http://ux.getuploader.com/sousakurobo/
ロボット作品投下用アップローダー2番艦
http://ux.getuploader.com/sousakurobo2nd/
お絵かき掲示板
http://www2.atpaint.jp/sousakurobo/
ロボット物SS総合スレin避難所27号機目
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1308710652/
ロボット物SS総合スレin避難所28号機 ←new!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1321198338/
前スレ
ロボット物SS総合スレ 66号機
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1325332457/
関連スレ
だから俺達に新作ガンダムを作らせろよ5(ガンダムSS総合スレ)
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280676691/
勇者シリーズSS総合スレ Part4
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1282636520/
- 2 :
- スレ発祥連載作品紹介!(※紹介文には多少の誇張表現も含まれています)
【荒野に生きる(仮) ◆8XPVCvJbvQ】
再生暦164年、コンクリートの荒野が広がる未来――。
獣の耳と尻尾を持つ「ヒューマニマル」の少女達はひたすらに戦う。対鋼獣用人型兵器・ヴァドルを駆って――!!
怪獣VS獣耳っ娘!? 話題騒然のデスマッチ!!
【CR ―Code Revegeon― 古時計屋 ◆klsLRI0upQ】
これは、悪夢に立ち向かうちっぽけなひとりの人間と、「怨嗟の魔王」と呼ばれた機神の物語。
アンノウンの襲撃で家族を失った潤也は、漆黒の鋼機・リベジオンの玉座に身を沈める。反逆と復讐を遂げるために……!
人類震撼! 暗黒のレコードオブウォー!
【瞬転のスプリガン ◆46YdzwwxxU】
スーパーカーから伸びる鋼の腕――神速の挙動と極微の制動を可能とする、エーテル圧式打撃マニピュレータがその正体!
異世界の侵略者・魔族により廃墟と化した街角で、幼いことねは機械仕掛けの拳法家を目撃した。
変形ロボットならではの技が炸裂する、極超音速機動武闘伝!
【パラベラム! ◆1m8GVnU0JM】
Si Vis Pacem, Para Bellum――汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ。
遥か昔に文明がリセットされた世界。黒い機械人形(オートマタ)・リヒターと、彼のマスターとなった少女・遥(19)の神子としての生活が始まった!
軽妙な会話と、動きを魅せるアクションに定評あり? なんだかおかしなキャラ達が紡ぐ、ドタバタ日常コメディ!
「……ねぇリヒター、こんな感じでいいかな?」
<イエス・マイマスター>
【最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ ◆46YdzwwxxU】
ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビドゥビドゥビッドゥドゥビドゥビ!
今日も今日とてロボヶ丘市で激突するのは、変な正義と変な悪!
ハイテンション! 歌うスーパーロボットバトルアクション!
【少女機甲録(仮) ◆kNPkZ2h.ro】
80年ほど前に地球上に出現し、地球上全ての生物を滅ぼさんとする謎の生命体群「ワーム」
異形の敵に立ち向かうは、全長4mのパワードスーツ兵器「機士」
陸上自衛軍第28連隊 第4中隊の少女達は、血と硝煙の匂い漂う世界を生きる!
【人狼機兵マーナガルム ◆CNkSfJe3Zs】
2149年 春。月と地球、並んだ二つの星による戦争は、まだ続いていた。
革命軍の問題児「ラビットソルジャー」パイロット ソマ・ツクヨミは、自軍の罠にはめられ、正体不明の『狼頭』と敵対する。
兎達が支配する戦場で今、精神すらも噛み砕く異形の獣が目覚めようとしていた――――
【鋼鐵の特攻兵―Gun Strike Girles― ◆6LGb3BALUde1】
近未来。人類はBUGと呼ばれる巨大生物との戦争を続けていた。
主人公・御前静を始めとした世界各国から集まった個性的な少女達は、鋼鐵の棺に身を沈めてBUGとの熾烈な戦いに身を投じていく。
戦争という極限状態の中で、少女達は傷付きながらも成長し、互いに支え合い日々を懸命に生き抜く。
やがて少女達の間に芽生えるのは、友情かそれとも――
ハードボイルドミリタリーの皮を被った百合ん百合んな物語。
欝展開はないよ!
【武神鋼臨タケミカヅチ ◆YHSi90Gnr2】
其れは鋼の人型。其れは『神』の力を降ろす為の人造の依代。
剣神はその手に太刀を担い、在らざる戦場(いくさば)を駆け抜ける。
その刃は未来を切り開けるか―
【鋼殻牙龍ドラグリヲ ◆Uu8AeR.Xso】
荒廃した世界を跋扈する、『害獣』と呼ばれる異形の災厄。
人には太刀打ち出来ぬその存在を屠る、暴君竜の如き異形の鋼。その名は「ドラグリヲ」
アルビノの少年「真継雪兎」とゴスロリ姿のナノマシン少女「カルマ」の紡ぐ物語に刮目せよ!
- 3 :
- 【守護機兵Xガードナー シクス ◆wuZfOwaq7U】
CC(コスモセンチュリー)115年。独立を宣言する火星と地球の、人類初の惑星間戦争が行われていた。
少年シュート・ダリューグは独立機動防衛部隊"Xガードナー"に参加するも自分の存在価値に惑う。
戦いを止められるのは薙払う剣か、それとも守護する盾か… あなたの護りたいモノはなんですか?
【秘神幻装ソルディアン ◆tEulldVhj8h6】
因果の日は来たり――世界は異形の怪物アバドンに覆われた。
混迷を極める世界に機械仕掛けの神々は覚醒し、かくして今まさに黙示録が再現される。
測り知れざる過去より続く闘いの行方は、如何に。
【廻るセカイ-Die andere Zukunft- ◆qwqSiWgzPU】
「もう少しで世界が滅びる」世界中にそんな噂が飛び交った。
そして噂の通り、国が、都市が、次々と地図から名前を消していく。人類は滅びを待つだけだった
舞台は架空の都市“揺籃” 特別な一人の少女と、普通の少年のから、それは紡がれていく
「抗う術があるのに、やらないなんて選択肢、オレにはない」
……それは、似通っているようで……違う“セカイ”
【ビューティフル・ワールド the gun with the knight and the rabbit TロG ◆n41r8f8dTs】
未来へと向かっていた隆昭達は、黄金のアストライル・ギアによって次元の狭間へと飲み込まれ、別世界に辿り着く。
隆昭一行、やおよろず、レギアス、そして、神威。様々な人々の思惑がシャッフルされた物語の執着点は、果たして――――
パラべラム×ヴィルティック・シャッフルという二作品による、全く違った世界観が交じ合った物語の行く末を見届けよ。
この物語に、勝者はいない。
【『正義の執行者』 ◆8XPVCvJbvQ】
世間を震撼させたリベンジャーレディの事件から数ヵ月後。
ネットである言葉が頻繁に使用されるようになっていた。
「正義の名の下に」 その言葉と共に、人型兵器による犯罪者を処罰していく所属不明の赤い機体。
奇しくも所有する機体のフォルムが似ていたが為に、姉小路は事件に巻き込まれてしまう。
【eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― ◆5b.OeHcAI2】
ガラクタに覆われた世界の片隅で、少年と少女は一冊の書によって結ばれた。
そのは白く、黒く塗り潰された過去を、未来を、それ以外を呼び覚ます。
迫り来るこの世ならざる怪異、有り得ざる可能性、そしてセカイの果てより来るモノ……
――総てを越え、彼らは何を見るのだろう?
- 4 :
- 【Robochemist! ◆a5iBSiEsUFpN】
物語は、新たな世代へ――
第一作の主人公、ユトとメリッサの娘が織り成す、もう一つの『Diver's shell』!!
DS伝統のポニテを受け継ぐ少女、アルメリアと、愉快な仲間達による色鮮やかな青春グラフィティ!
とくと見よ! 激突する鋼の騎士の勇姿を!
三つ編みもあるよ!
【地球防衛戦線ダイガスト 秋水 ◆3C9TspRFnQ】
異星文明、銀河列強諸国による限定戦争と言う名の侵略戦争の篝火が地球を焦がす。
帝政ツルギスタン軍を前に敗退を繰り返す自衛隊。日本が絶望に暮れたその時――
大江戸先進科学研究所のスーパーロボット、ダイガストが此処に立ち上がる!
――この国を好きではいけないのですか?
【Villetick Jumble 硬質 ◆pOWm4b0gBI】
新たなヴィルティックワールドに鈴木隆昭が帰って来た!
今度は、あの草川大輔も大騒動の渦中と、ヴィルティックに乗っかって大暴れ!
あの人や、この人に、その人! 様々な平行世界から次から次に現れるゲスト達!
まぜこぜカオスな新世界の未来を「カード」で切り開け!
【ロボスレ学園】
ロボット物SS総合スレ、10スレ目突破記念作品!
このスレのキャラクター達が織り成すどこまでもフリーダムな青春(?)グラフィティ! 参加者募集中!
【スーパーロボスレ大戦】
自然発生したクロスオーバー企画。
あの世界とあの世界で刺激的にヤろうぜ!
- 5 :
- http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/265.html
・読者側は、積極的にエールや感想を送ってあげよう! 亀レスでも大感激! 作者はいつまでだって待ってるもんだぞ!
・作者側は、取り敢えずは作品で語れ! 自分のペースでも完結まで誠実に奮励努力せよ!
・半年以上生存報告がないと、作品がテンプレから削られてしまうぞ! 要注意だ!
・テンプレに載る作品は1人1つまで! 上記の他にも作品は沢山あるので、こちらもチェックだ! http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/12.html
・我らスレ住人は、熱意に溢れた新作をいつも待ち望んでいる!次スレの紹介文には、キミのロボットも追加させてみないか!
※紹介文未定作品一覧※
・【機甲闘神Gドラスター ◆uW6wAi1FeE】 ・【英雄騎兵ミッドナイト】 ・【ブリキの騎士 ◆WTKW7E8Ucg】
・【機動修羅バイラム】 ・【都道府県対抗機動兵器決選】 ・【てのひらをたいように ◆1m8GVnU0JM】 ・【パラベラム!〜開拓者達〜 ◆RS4AXEvHJM】
・【壊れた世界の直し方 ◆H48yyfsLb6】【Diver's shell another 『primal Diver's』◆wHsYL8cZCc】
・【TONTO◆LlCp3gHAjlvd】・【グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc】 ・【装甲騎兵ボトムズ 幻聴編】【銀の月が見る夢 ◆CC6hDu/XuQ】
new! ・【鮮血のTank soldier◆A0fDXEX2Bs】【ヒトの塔◆luBen/Wqmc】
紹介文はまだまだ募集中! 作者さんが、自身で考えちゃってもいいのよ!
「自作に関する絵を描いてもいい」という了承を頂いている作者さん一同はこちら↓
・TロG ◆n41r8f8dTs氏 (tueun、ROST GORL、ヴィルテック・シャッフル 他)
・シクス ◆wuZfOwaq7U氏 (守護機兵Xガードナー 他)
・PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM氏 (パラベラム! 他)
・古時計屋 ◆klsLRI0upQ氏 (CR ―Code Revegeon―、ザ・シスターズ、シャドウミラージュ、電瞬月下)
・◆YHSi90Gnr2氏 (武神鋼臨タケミカヅチ、パラベラム! ―運び屋アルフの何ということもない一日―)
・秘神 ◆tEulldVhj8h6氏 (秘神幻装ソルディアン)
・◆Uu8AeR.Xso氏 (鋼殻牙龍ドラグリヲ)
・DS世界観の人 ◆a5iBSiEsUFpN氏 (Diver's shellシリーズ、Robochemist! 他)
・GEARSの中身 ◆B21/XLSjhE氏 (GEARS、GEARS外伝 Berserker)
・◆46YdzwwxxU氏 (瞬転のスプリガン、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ 他)
・|・) ◆5b.OeHcAI2氏 (eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ――)
・◆CNkSfJe3Zs氏 (人狼機兵マーナガルム 他)
・◆uW6wAi1FeE氏 (機甲闘神Gドラスター)
・◆wHsYL8cZCc氏 (カインドマシーン 他)
・バイラム氏 (機動修羅バイラム)
・>>882 ◆MVh6W.SAZtbu氏 (あるツッコミ体質の男の受難、でくのぼうと聖人 他)
・硬質 ◆BfO3GzMb/w(ヒューマン・バトロイド)
ここに名前の無い作者さんの作品を絵にしたい場合は、直接ご本人にお伺いを立ててみたらいかがかと。
―以上がテンプレとなります―
- 6 :
- >>1乙ですだ!
- 7 :
- 俺が!俺たちが!>>1乙だ!
- 8 :
- >>1
乙カレーション666
- 9 :
- 前スレ埋まりましたねー
前スレで投下された各作者さん方、誠に乙です
もう少し余裕が出来たら拝見させて頂き、感想を書きたいと思います
さて……
- 10 :
- 最近自分、ちょっと某天堂のゲームを買いまして
そのゲームでMiiっていう、軽い人形作り?みたいな面白い機能があるんですね
それでSSを書く間際、ちょっとした息抜きにロボスレキャラでMiiを作ってみました
私的には頑張ったつもりですが、ガッカリクオリティと言えばガッカリクオリティなので苦笑いしながら見て頂けると幸いです
まずパラべラムからあの二人を
遥さん
ttp://dl7.getuploader.com/g/sousakurobo/1653/HNI_0024.JPG
とリヒトです
ttp://dl10.getuploader.com/g/sousakurobo/1654/HNI_0025.JPG
遥さんはあの師匠独特のつぶらな瞳を再現しようとしましたが、中々合う眼が見つからず……申し訳無いです師匠
リヒトは何となくあの木の良い兄ちゃん的な感じが出てればいいかなと
次は自作から。ロスガのヒロインを
子供ティマ
ttp://dl8.getuploader.com/g/sousakurobo/1655/HNI_0027.JPG
と大人ティマです
ttp://dl8.getuploader.com/g/sousakurobo/1656/HNI_0026.JPG
正直子供ティマの顔が怖いのは自分もです。初期の初期のアンドロイドらしい冷たさが出て……れば良いな
大人の時に柔和な表情なのは成長してるから、と脳内設定。しかしあんまり変わり映えがしな(ry
この4人のQRコードも合わせてアップしたので、欲しいと思う方はジャンジャンダウンロードして下さい
おまけ
青森さん(この後ろはポニーテールです)
ttp://dl8.getuploader.com/g/sousakurobo/1661/HNI_0028.JPG
師匠(ホントは目を無くして眼鏡だけにしたかったのですが、出来ませんでしたorz)
ttp://dl8.getuploader.com/g/sousakurobo/1662/HNI_0029.JPG
ぶっちゃけ青森さんが一番再現度が高い……悔しい、でも本音
では次はSS投下で。あ、それとこんな感じですがこのキャラをMiiで見たいとかあれば出来る限りチャレンジしてみます
- 11 :
- ここまで老けとらんわー!!!!!wwwwwwwwwww
- 12 :
- 次元断層|ω=▼ノ<ヤァ
どうも、皆様お久しぶりです。
ちょっと最近余裕が無くてSSが書けていないので書き込むのは心苦しいのですが、
一応生きているよ、とだけ報告させてくださいw
拙作は続きがいつ投下できるのか分からないので、テンプレから外してくださって結構です。
これから2スレ分追わせて頂きますので、この辺で。
次元断層|ω=▼ノシ <ではでは、良い創作を
- 13 :
- スイマセン、確認忘れてageてしまいました。
重ね重ね失礼をorz
- 14 :
- ちょっとお伺いしたいのですが、
なろうで更新している作品を、ここに投下するのはOKですか?
- 15 :
- なろうでちゃんとココにも投下したと言わないと盗作疑惑が出て面倒になるから、ちゃんと向こうでも言わないとダメだよ。逆パターンでも問題発生した事例がある。
- 16 :
- 晒し中のタグを入れるってことですよね。
了解しました。ありがとうございます。
- 17 :
- >>1乙だ! 我らにはそれが必要だ!(乱入)
- 18 :
- >>10
ちょ、なんですかこれw
ロリコンよくできてますね。いつかチョーさんが描いてくれた女体化verに近いような気がしますw
>>12
生存報告乙ですよ!
- 19 :
- 埋めに滑り込み損ねたので開き直って今更はる
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2771145.jpg
- 20 :
- かわゆす
- 21 :
- あ、名前入れてな。ひろしとロンメルの個人的な脳内イメージでした。
そんだけ。
- 22 :
- これはマイペースさん凄く喜ぶんじゃないかな……投下乙でした
>>11
これは失礼しましたwwというか882氏のイメージ画を元に作ったんですw
ご本人さんはイケメンだと信じてますのでwダンディなw
>>12
これは偉くお久しぶりですね。凄く久しぶりなので軽く感動してますw
一応次スレになる季節になったら、スレ立てる人に促しておきます。乙でした
>>18
リヒトが少しでもリヒトに見えたのなら幸いですww
それで師匠、師匠に似てますかね、このMiiってw
- 23 :
- >>16です。
64号機に1話を投下して以来、久々の投下になります。
ちなみに、他サイトでも投稿しています。
日が空いている上に、1話はまとめwikiに更新がされていませんが、
再度初めから投下するのもおかしな感じなんで、2話から投下させていただきます。
興味を持っていただいた方は、セカンド・エース でググっていただけると、1話が見れると思いますので、
よろしくお願いします。
- 24 :
- 六文高校は、見冬町のちょうど中心にある小山に位置している。校門へは五十メートル程の坂道を登る必要があり、相当な傾斜があるので学内の運動部には心臓破りの坂として知られていた。
季節は秋暮。気温は多少肌寒くはあるものの、衣替えの済んだ厚手の制服でその坂道を全力疾走すれば汗もかく。
「私の勝ぃ♪」
響子の勝利宣言が終わったぐらいのところで、ようやく甲斐は校門をくぐる事ができた。
霧島家から六文高校までのおおよそ三キロの行程でどちらが先に学校までたどり着けるか、というのも恒例の勝負だった。
甲斐は息を切らしながら倒れるように地面に座り込む。
「いやぁ、甲斐。今日は惜しかった。スーパーきたくらの交差点で瞬獄殺を極められなかったら、負けてたかもしんないな」
甲斐は息を整える必要があり、すぐに言葉を返せなかった。
この勝負はお互いへの妨害を可としている。結果として甲斐は朝の騒動以上に生傷を増やすことになった。
対して響子は、多少息を切らしているものの、軽口が叩ける余裕はあるようだ。
「化物め」
擦れるように呟くと、すかさず頭部に衝撃が走る。殴られた。とても痛い。この女の拳は相変わらず、甲斐の知るどの武道家よりも固くできている。
「だれが化物だ。あぁ?」
引きつった顔で迫られる。
「……」
ジッと響子を見ていると、今度は逆の拳が襲いかかってきた。あまりにも強力な一撃だったので、一瞬頭が無くなったのかと錯覚した。
「ぐおおおおおおぉぉ!」
甲斐は頭を押さえて激痛に悶える。明らかに脳に異常が発生しそうな激突音だったが、周りの登校途中の学生たちにとっては、そんな光景はすでに日常と化しているため、だれも心配して甲斐に駆け寄ったりはしない。
それどころか、一部の女子生徒等は、「響子ちゃん、おっとこ前〜♪」と声援を投げかける始末だった。
「まぁいいや。私の勝ちには変わりがないわけだし。そうだなぁ、何をしてもらおうかなぁ……決めた。帰りに“満腹堂”の絶品饅頭チョコレートパフェを奢ってもらおう」
「わ、分かったよ」
甲斐は激痛に耐えるため、歯を食いしばって答えた。
一回の勝負に負けるたびに響子の命令を一つ聞く。それが、中学一年の夏に交わした約束だった。黙ってその命令を受け入れる事は酷く屈辱だが、約束を破ることは、甲斐のプライドが許さない。
「よし、そんじゃあいつも通りに一緒に帰ろうな」
子供みたいな笑顔を浮かべた後、響子は鞄を肩にかけて校舎の下駄箱に向かっていった。
「相変わらず君たちは仲が良いな」
と、響子の後姿を憎々しげに見ていた甲斐に近づいてきて、冗談にもならない事をサラリと言うのは、武田信二という残念ながら男のクラスメイトだった。きまりの悪い癖毛のボサボサ頭と遺伝的な問題らしく赤い瞳を持っているのが特徴的な少年である。
「おはよう真田君」
「信二か。俺の呼び方は甲斐でいいって言わなかったか」
信二は外国からこの高校に転校してきてから一週間しか経っていないので、どのクラスメイトに対しても敬語だった。しかし、なんだかんだで気が合って今では一緒にいることが多いので、甲斐は信二の事を呼び捨てにしていた。
「それと怖いことを言うんじゃない」
「怖いことって?」
「俺と響子の仲が良さそうとかなんとか言っただろ」
「何か問題なのか?」
「誰が仲良くなどするものか。俺があいつのせいでエラい目に合っていて、日々悩んでいるのを知ってるだろ」
はて、と信二は首をかしげた後、
「ああ、この前聞いたあれか。正直、悩みとは思えない悩みだけど」
甲斐は黙って立ち上がると、信二の傍まで歩いていった。
「えっと……何?」
そんな甲斐を避けるように信二は数歩後ずさった。
「そうだろうよ。女の子と同棲してるお前には、俺の彼女が欲しいという望みはさぞかし滑稽に映るのだろう。そんなに惨めか!? 入学早々十連敗の俺がそんなに面白いか!?」
「はぁ? 何を勘違いしてるんだ。同居しているのは外国に住んでる俺の父親の友達の娘であって、お前が考えてるような事は一切ない。それに二人で暮らしてるわけじゃなくて、父親の友達をいれての三人暮らしだ」
「それでも女の子と同居してることに変わりは無いだろ。畜生。爆発しろ!」
「おいおい、あの霧島家に出入りしてるお前がそれを言うのか」
信二の反論に、傍を通る何人かの男子生徒もこちらに話しかけてこないまでも同意とばかりに何度か頷いていた。
- 25 :
- 学内だけでなく学外にもその人気が及んでいる上に生徒会長を務める長女の霧島文子。
女子を始めとしてファンが多く、長女同様に文武両道な次女の霧島響子。
中学生ながら、雑誌でモデル活動を行っているだけでなく、部活のバスケットボールでは県大会優勝校のキャプテンを務める三女の霧島桜子。
見冬町の霧島美人三姉妹と言えばかなり名が知られている。おそらく町民では、この三姉妹の存在を知らない人の方が少ないのではないだろうか。
そして幸か不幸か、そんな霧島家に出入りしている年頃の男子は空手道場の子供たちを除けば真田甲斐だけだった。
しかし、それは決して甲斐が望んでそうなったわけではない。
「好きで出入りしているわけじゃない」
「どうだかな。美人三姉妹の家に出入りしたくてワザと負けてるんじゃないかとの噂だが」
「ははははは、面白いなその噂」
「俺が言ってるわけじゃない。だから笑いながら殴りかかってくるな。っていうか結構痛いぞ」
甲斐はかなり本気で信二に向かって拳を何度も打ち出しているのだが、信二はそれを片手で難無く捌いている。
一週間、共に学園生活を送ってみて分かったが、信二は運動神経がかなり良い。一年生の中では響子、甲斐に続いて体育の時間では目立っている。
更に頭も良い。
スポーツ抜群、そして頭も良く、顔も良いところまでは甲斐と一緒なのだが、甲斐と違ってとにかく信二はモテた。転校してきてから一週間になるが、すでに何人かの女性からアプローチをかけられているという噂だ。
「なんか殴る力がどんどん強くなってないか」
「そりゃあ、強くしてるからな」
「お前な……」
間に険悪な空気が流れかけた時、甲高い車のクラクションが割り込んできた。
二人が同時に音の方向――校門の方を同時に見ると、乾燥した校庭に土煙を上げながら校内にトラックが入ってきているところだった。
大きなトラックだ。全長十メートルはあるかもしれない。
「何だあれは?」
拳を振りかぶるのを止めて尋ねると、信二がすぐに応じた。
「輸送トラックだろ。SVの」
SV。甲斐がその正体に思い至るのには少々時間が必要だった。
SVとはサーヴァントと呼ばれる人型の建設機械である。全長は五メートルから、それ以上のものまで様々ある。
多くの建設機械と同じく黄色を基調としたカラーリングをされていて、本体の四角い箱のような操縦席から、胴体に比較すると細めの四肢が取り付けられているものが一般的である。
馬力や整備性などにまだまだ問題を残しているものの、二足歩行を生かした悪地での作業や、マニピュレーターによる車両型建設機械では困難な精密作業、人命救助などの分野においてその性能が評価され、
現在では大きな建設現場などに行けば数台は見かけるぐらいに普及していた。
と、先日のニュースで紹介されていた。
もっとも、いくら普及していると言っても、学校で見かけるには不釣り合いなものであることは変わり無い。
「なんでSVがウチの高校に? どこか工事でもあるのか?」
と甲斐が不思議そうに言うと、信二が呆れた様子で答えた。
「来週からSVの操縦は、一部の公立高校の体育の授業に組み込まれる事になったんだよ。この前、先生が言ってただろ」
「へぇ、ウチは工業系の学科があるわけでも無いのにな」
「そうだな」
「にしても、あんな重機の操縦なんて覚えてどうするんだ」
「SVはレスキューや精密動作におけるその有用性が立証され始めている他、一昔前なら、専門の操縦者しか乗れないようなものだったが、現在は操縦性の問題もずいぶん改善されて、
素人でも数か月の講習を受ければある程度は動かせるようになっている。今はまだ、他の建設機器に比べて生産数は少ないが、今後の技術進歩によっては建設だけでなく、軍事兵器としての価値も増えてくると予想されている。つまりだ」
甲斐は、信二の言葉に黙って耳を傾けていた。
「今のうちに多くの若者にSVの操縦を覚えさせておけば、将来国にとっては色々と都合が良いのさ。実際、外国では学校がSVの授業をやるっていうのは珍しくない。日本の導入は遅いぐらいだ。
特に鎖国をしている日本は、国防について外国の協力も得にくいのに」
外国。饒舌に説明されるSVの説明などよりも、甲斐にとって新鮮で興味を引く言葉だった。
鎖国大国日本。
現在、日本は一般市民レベルでの外国とのやり取りができない状態である。
二十一年前。大国同士の対立が激化し第三次世界大戦が勃発した際に、歴史的背景から他国を攻める軍隊を持たない日本は中立を宣言し、時の政治家はそれを各国に認めさせることに成功した。
- 26 :
- さらに日本は戦争の断固反対を訴え、その意思表示の一環として、戦争終結まで日本人の出国と、外国人の入国を禁止とする宣言も発した。
結果として、世界に存在する国の九割は戦争を行っているという状態の中、戦死者を二十年間一人も出していないのは日本だけである。
そのかわり特別な事情があり、かつ国から特別な許可をもらわない限り、一般の日本人は外国に行くことや、インターネットなどを利用して海外とやり取りをすることもできなくなってしまった。
一般市民レベルで海外の様子を知ることができるのはニュースで流される外国の映像や、日本国内で放送される日本語吹き替えのドラマや映画ぐらいである。
「信二。お前の家族は特別な許可をもらって外国に住んでいたと言ったな。外国ってどんなところなんだ」
問いかけると、信二はそのまま黙り込んでしまった。こちらに返す言葉を吟味しているようでもある。
「いや、そんな深刻に考えないでくれよ。ニュースなんかで世界中戦争ばっかしてるっていうのは知ってるんだけどさ。俺も含めてみんな外国なんて行ったことが無いから、外の事にはなんでも興味があるっていうか」
「すまないが、外国に住んでいたといっても、俺の家があったのは日本人ばかり住んでいる日本街で、そこから一歩も出たことが無いんだ」
「へぇ、それじゃあさっきの話は?」
「日本人街に来ていた外国人に聞いたんだ」
「なんだよ。お前が見てきたわけじゃないのか」
「期待させたならすまなかったな」
「いいけどな。そういえば、信二はSVに乗ったことはあるのか? さっきやたら饒舌に話してたけど」
「工事現場でSVのバイトができる基本的な資格は持ってる。もっとも外国のもので、日本じゃ使えないけどな」
「そうかそうか。じゃあ特訓の際はお前に声をかけるとしよう」
「特訓って、SVでも霧島さんと勝負するのか?」
甲斐は当然だとばかりに笑って見せた。
「そんなに嫌がらず付き合ってくれよ。一緒に帰るときにタイヤキでも奢るから」
「まぁ、バイトが無いときは別に構わない」
信二の肩に手を回して校舎に向かって歩き出す。そろそろ予鈴がなる時間だ。遅刻をすれば朝に文子から釘を刺されたのもあるので後が怖い。
○
『生徒の呼び出しをします。1−A霧島響子さん、真田甲斐くん、武田信二くん。放課後に生徒会室に来て下さい。繰り返します。1−A霧島響子さん、真田甲斐くん、武田信二くん。放課後に生徒会室に来て下さい』
「という呼びかけに従って来たんだけど、何か用か文姉ぇ」
一日の授業も終わり、甲斐が帰り支度を整えて響子、信二と共に生徒会室に顔を出すと、すでに教室の奥の席には霧島文子の姿があった。
霧島文子は生徒会長である。
いつもなら彼女を補佐する他の役員がいるはずだが、今日は一人だけのようだ。
「よく来たわね。とりあえず座りなさい、三人とも」
文子の誘導に従って、甲斐は身近な椅子に腰かけた。その隣に響子も座る。
「初めまして。武田信二です」
信二が腰かける前にペコリと頭を下げた。
(そういえば、信二は文子さんと直接こうやって話すのは初めてか)
信二は少々緊張した面持ちだった。おそらく学内では才色兼備で有名な文子と話すことに、少なからず動揺しているのだろう。その気持ちは、甲斐にもよく理解できた。
当の文子は、信二の心情を察したのか温和に微笑んで見せた。堂に入った対応である。というか、おそらくそういう反応をされるのに慣れているのだろう。
「そういえば、あなたとは初対面だったわね。初めまして。私は霧島文子。そこにいる響子の姉で、この学園の生徒会長を務めています」
「霧島先輩の事はもちろん知ってますよ。有名人ですから」
と、信二はどこか恐縮した様子で席についた。
「私もあなたの事は知ってるわ。転校早々学園随一の不良と仲良くなった子だものね」
「信二。お前、そんなのと付き合ってたのか。すぐに縁を切った方がいいぞ」
甲斐が友人の身を案じて言ってやると、文子はその細い指を額に当てて顔を振った。
「嫌味を言ったのだけれど気付かなかった? あなたの事を言ってるのよ“真田君”」
甲斐が反応するには少し間が必要だった。
「えっ、俺ですか?」
「自覚が無いの?」
文子は会長用に設えられたビジネスデスクの引き出しからファイルを取り出し、パラパラとめくる。
「過去、響子との勝負によって校内の器物破損が十三件。怪我をした学生は五人。これは傷害ね。不良少年と呼ばれるには十分な実績だと思うけど」
甲斐は反論できなかった。
- 27 :
- 「ああ、あと一部の女子生徒からセクハラまがいのナンパが酷いので何とかしてほしいという嘆願書も何通か来てるわ」
「何ですかそれは! その嘆願書は一体誰から?」
「見たら、多分死にたくなるわよ」
「……じゃあ、いいです」
「そうしなさい。その方がこの十一人も喜ぶわ」
と、文子は引き出しから更に何通かの封筒を取り出した。ちなみに差出人の名前はこちらからばっちり確認できる。
「全員、知ってる名前だよちくしょぉぉ!」
そこに書かれていたのは、甲斐が一度は体育館裏に呼び出したことのある人たちばかりだった。
あろうことか、彼女たちは甲斐の告白をセクハラとして生徒会に訴えたらしい。酷い話である。セクハラなんて。せいぜいキスを求めたぐらいなのに。
「文姉ぇ。今日は稽古なんだ。甲斐を弄ぶのはそれぐらいにして本題に入ろうぜ」
うずくまって、「みんな俺の純情を踏みにじりやがって」と呟きながら机に涙を溜めている甲斐を横目で見ながら、響子は話を促す。
「そうね。ごめんなさい。本題に入るわ」
文子は手元のファイルを机の引き出しに戻した。甲斐の方からはその引き出しにまだファイルの束がたくさん置いてあるのが見える。元々、甲斐にとって好ましくない情報が書かれたファイルの保管場所である。
何か見えても自分にとってプラスになるとは思えないので、意識してそちらの方に視線を向けないようにした。
「あなたたちを呼び出した理由は、来週から始まるSVの授業についてお願いがあるの」
「お願い?」
響子が不安そうな顔をし始めた。姉からの“お願い”で良い思い出があまり無いからだろう事は、容易に想像できた。
「国からの依頼でね」
「国から?」
話が一気に学外の所まで及んで、三人は首をかしげた。
「学園の優秀な生徒を三年を除いた各学年より一名、土日を使った三日間のSVの研修を受けさせたいって話で。内容も結構ハードになりそうだから、適当な人を送り込むわけにもいかないみたいなの。
二年は特に指定は無かったから私が行こうと思うんだけど、一年生は先方からの希望があってね」
そして文子は、妹を見た。
「響子。あなたをご指名なのよ」
「私を?」
驚く響子の隣で、甲斐は内心では納得しながらも、面白くない心境を味わっていた。
国からの指定。響子の評価は学校を超えて認められているという事なのだろう。全日本空手道大会女子の部にて圧倒的な強さで優勝し、助っ人と称して公式試合には出ないものの、
あらゆるスポーツ競技で強豪と恐れられる相手に勝利を重ね、公立高校の中では優良とされるこの六文高校の学年首位取得者なのだから無理もない。
やはり響子なのだ。皆から求められるのは真田甲斐ではなく。
響子を横目で見ると、彼女は唇を噛んで俯いていた。
「断る」
程なくしてハッキリとした回答を放つ。
響子のこの答えは、甲斐にとって予想できた事だった。
響子はこう見えて目立つ行動というのを嫌う。いや、注目されるのを嫌がるといった方が正しいかもしれない。どうしてもと頼まれる各部活動などの助っ人も練習試合なら参加するが公式試合には頑として出ないし、
クラスで推薦されたミス六文の参加なども断っている。空手の全国大会も優勝後の取材などは全部断っていた。
そのような事例と彼女の性格を、長年響子と付き合ってきた文子も当然知っている。
「そうでしょうね」
と呟いただけで、文子はあっさりと次に移る。
「ちなみに、先方からはもう一人指名があってね」
なんとなく甲斐は予想がついた。
「真田君。あなたなんだけど」
「俺も辞退します」
甲斐は律儀に片手をあげて答えた。もちろん、二番手の指名で乗り気になれないという気持ちが無いといえば嘘になる。しかし、それ以上に、
「俺はSVでも響子と勝負するつもりです。自分だけ優先的に正式な指導を受けられるような講習は受けたくありません」
扱いのなれた友人に特訓に付き合ってもらう程度ならともかく、三日間とは言えプロから講習を受けた後で得るアドバンテージなど気分の良いものではないし、何よりフェアではない。
隣の響子が小さく笑った。
「何だよ響子」
「別にぃ。素直に受けとけばいいのにと思っただけ」
「ほっとけ。俺は俺のやり方でお前に勝つ」
「そうかよ。今度は何を奢ってもらおうかな」
とても楽しそうに言う響子を、甲斐は歯ぎしりしながら睨む事しかできなかった。
文子は、そんな甲斐と響子を交互に見て、
「そうねぇ、まぁ、そう言うわよね。でも、学校から代表生徒を出すのは決定事項なの。だから、武田君にも来てもらったんだけど」
- 28 :
- 次に文子は机から新しいファイルを取り出して中を見る。ファイルのタイトルは“生徒成績表”であり、通常であれば教員しか見ることができないものだ。しかし、文子はお構い無しに、
まるでコンビニで雑誌を立ち読みするぐらいの気軽さで、そのページをめくっていく。
「武田信二君。あなた運動がかなり得意ね。それに、外国でSVの操縦資格も取っている。指名は響子と真田君だけど、あなたでも十分どころか、あなたの方がいいかもなんて思ってね」
手元のファイルを閉じて、文子は信二に体を向けた。
「どう、受けてもらえないかしら?」
信二は困惑した表情で甲斐を見る。
「あ〜言っておくが信二。俺は文子さんにお前がSVの操縦資格を持っているなんて喋ってないからな」
「そうなのか」
「諦めろ。この学園にいる以上、文子さんの前では個人のプライベートなど無いに等しい」
信二は黙り込んで視線を下に落とした。相当悩んでいるようだ。どことなく、断る理由を模索しているようにも見える苦い顔をしている。
文子は無理に答えを促さない。
やがて信二は、
「分かりました」
と観念したのか小さく頷いた。
「ありがとう。助かるわ信二君」
「そうと決まれば、バイトの都合を付けないといけないので、今日はもう失礼します」
「ええ。詳細は追って連絡するわ」
「それでは」
「じゃあな信二」
「ああ、また明日」
信二は甲斐だけでなく響子にも小さく手を振って、生徒会室から退出した。
「さてと、あなた達ももう帰っていいわよ」
短く応じて、甲斐と響子は席を立つ。
文子は机の端に重ねてあった書類を自分の方に引き寄せた。席から動かないところを見ると、まだ何かしらの仕事が残っているようだ。
甲斐は、改めて生徒会室内を見渡し、
「ほかの役員は?」
「今日の生徒会は休みよ。私は雑務が残ってるから休日出勤」
「大変だな文子さん」
その言葉を聞いて、文子は疲れを込めたような息を吐き、
「“甲斐ちゃん”が生徒会役員になってくれれば、私の苦労も減るんだけど」
文子は、甲斐を呼ぶときは通常“甲斐ちゃん”と呼ぶが、学内では“真田君”と呼ぶ。なんでも生徒会長として、そのあたりは分別をつけたいらしい。しかし、今は響子と甲斐しかいないので、その分別は必要ないという事なのだろう。
「あ〜、考えておきます」
甲斐は苦笑して応じた。正直なところ、これ以上やらなければならないことが増えるのは、自分の対響子トレーニング時間も確保できなくなるので遠慮したい。
という考えを、文子は当然見抜いているのだろう。この件について彼女はそれ以上の要望を言わなかった。
「まぁ、いいわ。その分、晩御飯を楽しみにしてるから、ちゃんと茄子を買って帰ってね」
「了解しました」
「ああ、そうだ。夕方五時から始まるサスペンスドラマを録画しておいてくれない? 帰るのが遅くなりそうなの」
「珍しいな文姉ぇ。いつもはキッチリと録画予約してから学校に来るのに」
「私だってド忘れすることもあるわよ」
「今日はどんな内容なんだ?」
「あれ、あなた月9派じゃなかったっけ? 今日はね――」
それから本日のサスペンスドラマの内容について他愛の無い話をし始めた姉妹を尻目に甲斐はチラリと壁に掛けられた時計を確認する。
「分かったよ文子さん。録画しておく」
甲斐は床に置いた鞄を肩にかける。
「じゃあ、さっさと帰るぞ響子。満腹堂に寄るんだろ」
「了解」
- 29 :
- 「満腹堂……」
文子は作業の手をピタリと止めた。
「あの甘味屋の? 二人で行くの?」
「ええ、まぁ」
文子に顔を向けられて、甲斐は小さく頷く。
すると文子は腕を組んで、背もたれに体を預けるとジッとした視線を甲斐に送る。少しムッとしているように見えるのは気のせいだろうか。
「なんですか?」
「別に。じゃあドラマの件だけど。録画はしなくていいわ。ここで見るから」
生徒会室にはテレビが据え付けられている。ちなみに、他の教室は安物の特売品テレビだがこの生徒会室に限って超薄型のハイビジョンテレビである。甲斐は同じ型のテレビが地元の電気屋で二十万以上で売られていたのを見たことがあった。
以前に一度、甲斐は生徒会の予算表を見せてもらった事があるが、そこに“生徒会特別予算”というかなりの額の予算が文子が生徒会長になった代から組まれていた。
改めて見ると、生徒会室は机、テレビだけでなく、その他備品についてはよいものが揃っている。それらは全部文子の代になって導入されたものだ。もっともよくお金があるなと思い、
前にそんな予算を組めた理由を尋ねてみたが、文子はただ静かに微笑むだけで答えてくれなかった。
「なぜですか。別にいいですよ」
「満腹堂に寄って夕飯の買い物をして家に付くと時間的にはギリギリでしょ。今日は稽古の準備もあるだろうし。学内の備品を私用するのは気が引けるけどここで見るわ」
「悪いな文姉ぇ」
「別に、大したことないから構わないわ」
告げるように言い放つと、文子はそのまま手元の作業を再開し、それに没頭し始めた。
甲斐と響子は、それ以上の滞在は邪魔になると判断し、教室を後にした。
- 30 :
- 投下終了です。
ロボットがほとんど出ていませんが、物語が進むにつれて出していく予定です。
よろしくお願いします。
- 31 :
- 投下乙!
- 32 :
- >>19
イィヤッホォォゥ!!
左側はひろしくんかしら?
>>22
はっはっは、残念だったなぁ! あんまりにてないよ!
たぶん!
>>30
投下乙です!
それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
- 33 :
- ロボスレ大戦があるなら放置デモはどんな感じになるんだろ?
- 34 :
- >>30
投下乙です!
すいませんまだ読んでなくて感想はのちほど……
とりあえず遥さんが叫ぶ。
- 35 :
- ガタッ!
- 36 :
- 投下乙オッツ
力作だねースレの幸先良いねー
>>33
男前カットインの遥さんとか
ティファみたいな感じでカットインするシュタムファータァとか
生身で敵機を捌くハクタカとか
面白そうだね
- 37 :
- >>19
イィヤッホォォゥ!! こんな…こんなにうれしい事は無いっ!
とてもカッコいいひろしとかわゆいロンメルを書いて頂き、本当に有難う御座います!!
これはうかうかしていられないwすぐにでも執筆作業に取り掛かりたいと思います。
もちろん、この画像を見つつですw本当に有難う御座いました!
- 38 :
- 皆さん投下乙です
>>33
コラージュの正面顔ドアップなカットイン
次元獣枠で三つ編みを飛ばしてくる師匠
- 39 :
- >>1乙!そして>>30投下乙!
>>38
ツクヨミ先生のカットインも入れなきゃなw
- 40 :
- >>38-39
やめてください しんでしまいます
- 41 :
- とどめにオルトロックのドアップマジキチスマイルをくれてやろう
- 42 :
- 駄目だ、前座がレベル高すぎて一応イケメンなオルトロックじゃインパクトが薄い!
- 43 :
- 忘れがちですけど、オルさんってイケメンなんですよねw
>>38
今更だけど、私が次元獣枠ってどういうことなんですかw
- 44 :
- こんばんわ。左千夫です。
前回投下させていただいた『セカンド・エース』の3話を投下したいと思います。
よろしくお願いします。
- 45 :
- 学校から満腹堂へ向かう途中には子供が集まる駄菓子屋から、夕飯の材料を買い求める主婦などで賑わう商店街があり、その中心には地元の芸術家が設計した噴水がある。
噴水は駅のすぐ近くである事も手伝って人通りが多く、町民からは待ち合わせのスポットとしてよく親しまれていた。
そんな場所で、甲斐はある目的をもって奔走していた。
「お姉さんお姉さん、今ヒマ? 良かったらこの後お茶でも。えっ、だめ? なぁんでさ。そんなこと言わずに。俺と、ってちょっと待ってよ」
無情にも、声をかけた美女は甲斐から離れていく。
「ちぇ〜、駄目か」
仕方ないので次のターゲットを探す。すぐに見つかった。制服姿なので学生だ。活発さを感じさせる校則違反気味のミニスカートと、目元の泣きホクロがポイント高い。
「カーノジョ。ねぇねぇ、良かったら今から俺と――」
踏み出すと同時にむんずと後ろの襟を掴まれる。一瞬息が詰まり、甲斐はグエッと奇怪な声を漏らした。
「やめろ」
振り返ると、非常に気恥ずかしそうにしている響子がいた。一緒に下校しているので傍にいてもなんら不思議ではないが、
「何だよ! 邪魔をするな!」
響子に詰め寄ると、彼女も言い返す。
「泣くな! あと一緒にいる方の身にもなれ!」
「お前にも奢る! しかし、ナンパした女の子にも奢ってもいいだろ!?」
「いいわけあるか馬鹿!」
「何で駄目なんだよ!?」
「じゃあ逆に聞くけど。私がナンパされて、その男も満腹堂につれて連れて行きたいって言ったらどうだ?」
「ふざけんなっ! 何が悲しくて野郎と一緒に甘味屋なんぞいかなならんのだ! それなら、いつも通りお前と二人で行ったほうがマシだ!」
「よし。じゃあ、さっさと行こうか」
そのまま響子は甲斐の手首を掴んで歩き出す。
「いだだだだだっ!?」
純粋な腕力なら甲斐の方が強い。しかし、響子は甲斐の手首の力が抜けるツボを絶妙な角度と女性とは思えない絶大な力で刺激しているため逆らえない。
「響子、分かったから放せ! いや、放して下さい……」
そして甲斐は連行されるような形で満腹堂の暖簾をくぐった。
甘味屋“満腹堂”。外装や内装は、饅頭やおしるこ等の専門店らしく木を基調とした純和風な造りになっている。
その他の特徴的な点として、テーブル席の一つ一つに布で仕切りが施してあり、そこが他人に見られたくないがゆっくりと甘いものを楽しみたい女性を中心に人気が出た。
黙っていると周りからは女性達の談笑が聞こえてくる。おそらく下校途中の女子生徒達だろう。賑わいから察するに席は相変わらず満席に近いようだ。
「いらっしゃいませ」
若い女性の店員に迎えられて、響子は二人であることを告げようとするが、
「あっ、お二人様ですね。いつもありがとうございます」
すでに常連になっているので、勝手に席に促してくれた。
「えっと、絶品饅頭チョコレートパフェの大盛りと抹茶」
それを聞いて、席に付いて食べるどころかメニューを開く前から、甲斐は胸焼けがした。
「太るぞ」
甲斐が言うと、
「別に構わない。というか」
響子はわざとらしく脚を組み、そして視線はこちらに向けたまま、細い首筋を見せつけるかのように顔を斜めにして見せた。ポニーテールの髪型と相まって、白いうなじがよく確認できる。
「食べた分のカロリーはキッチリと消費してるからな。問題ない」
甲斐は、視線をそっと下に向けた。性格とは真反対の慎ましいものを改めて確認し、そして肩をすくめる。
「そうだな。大盛りでいいのか? 頑張って特盛いっとけよ」
響子は微笑みながら応じた。
「それ以上言ったら殴りぞ♪」
「あ、あの……」
店員が困っていたので、甲斐は大福と抹茶を注文した。
○
二十分後。
「ふ〜食った食った」
目の前でリンゴ四個を積み重ねたぐらいのグラスを空にし、お腹を擦って席でくつろぐ響子。
その光景にゲンナリしていた時、甲斐は不穏な空気を察知した。よく耳をすませば、店内で何やら騒いでいるような声もする。
「なんだろうな」
響子も異変に気付いたようで、外の様子を窺おうと仕切りの布をどけた。
「ちょぉーっとぐらいいーじゃねーか」
「こっちは客だよ。もうちょっと愛想を良くしてくれてもいいんじゃねーの?」
店の中では、男の学生達がなにやら女性店員と揉めていた。もっとも、揉めているといっても男達が一方的に絡んでいるといった方が正しいようだ。
「なんだあいつらは。一人の女性に寄ってかかって」
「ナンパだな」
- 46 :
- で、最終的に三つ編みが紅く光ってきて残像を残しつつ移動すると
- 47 :
- 甲斐は一瞬で見抜いた。
「それにしても女性客ばかりのこの店で男四人が固まってると一際目立つな」
不快感を露わにしていく響子に対して、甲斐は抹茶をすすりながら平然としていた。
が、不意に甲斐は驚きを覚えた。
男の学生四人に言い寄られている店員は、いつも応対してくれる少女で、甲斐は何度も顔を合わせたことがあったが、今は手洗い場で化粧直しでもしていた帰りなのかメガネをかけていない。
結論から言えば、メガネを外すと美少女だった。
というわけで、甲斐は早速お近づきになるために声を掛けたいわけだが、それにはあの四人組が邪魔である。
「仕方ないな」
甲斐が抹茶の器を机に置いて立ち上がると、
「おい、それぐらいにしておけよ!」
「って早っ!?」
甲斐が驚くのも当然で、すでに響子は店員を逃がし、その通路を塞ぐように男たちの前に立っていた。
「何だよお前はっ!」
「割って入ってきてなんなんだよ!」
自分より体の大きな男に恫喝されても響子は引かない。むしろ、甲斐としては引くぐらいの可愛げが欲しい所ではあるが。
「喚くな」
そんな甲斐の想いとは逆に、響子は一度地面を強く踏み鳴らし、睨みを利かせた。
一瞬、男たちが言いも言われぬ圧迫に晒されて、沈黙する。その気持ちが甲斐にはよく理解できた。
「ナンパをやるなとは言わないが、時と場所を考えて、節度を持ってやれよ」
「ふ、ふざけんなよ女ぁ!」
詰め寄ろうとした男を、傍にいた仲間が「まぁ、待てよ」と制した。
「よく見たら結構可愛いじゃんよ」
男の一人が言い出すと、他の奴らも改めて響子を見た。甲斐から見ても不細工に見えないその顔立ちを確認して、男たちは全員ニヤニヤとした笑みを漏らし始める。
「ねぇ、君。よかったらこれから俺たちとどっか遊びにいかない? きっと楽しいからさぁ」
男の一人が前に出て、響子の肩に触ろうとした。
響子の瞳が鋭くなり、手の甲に血管が二本浮かんだのを確認できた。あれは、長年付き合ってきているから分かるが、響子が殺人三連パンチを放とうとしたときに出てくる兆候みたいなものである。
平和な町の甘味屋で殺戮ショーを見るのは勘弁なので、仕方なく甲斐は場に割り込んだ。
「響子。付き合ってやれよ」
突然の乱入者に場の視線が集まる。特に響子は、今まさに飛び出そうとした瞬間だったのだろう。突然水をかけられたかのような間の抜けた顔をしていた。
「悪いね君たち。こいつを付き合わせるから勘弁してくれ」
「なんだお前は?」
「俺? 俺はただのこいつの連れさ」
そのまま響子に近づき、肩を掴んで男達に差し出す。
「お、おい甲斐。何を言ってるんだ?」
先ほどまでの毅然とした態度とは違い、困惑した表情を浮かべる響子。甲斐は更にグッと前に押し出した。
「甲斐!」
「なんだ」
「なんで私がこんなやつらと遊びに行かなきゃならないんだ!」
今にも暴れだしそうな響子に、甲斐はそっとささやく。
「騒いだら店に迷惑がかかる。それなのにこんなところで喧嘩をふっかけやがって」
「困ってる女性を見過ごせと言うのか!」
「そんなことは言っていない。俺とて女性の味方を自負している以上、お前がいかなかったら俺が行ってたさ」
「なら――」
「ただ、ここで悶着を起こせばお店にも迷惑がかかる。違うか?」
「そ、それは……」
響子は、モゴモゴとなにやらを呟いてから無言になった。
「つーわけでさっさと責任とって来い、この馬鹿」
何か言い返したそうにこちらを睨む響子。
なぜ響子が不満足な顔をしているのかが甲斐は理解できなかった。元々この店内で男共をぶちのめすつもりだったのだろうから、それなら外でやってこいと言っているだけで、その意図も伝わっている筈だが。
「お前さぁ」
響子は肩にかけられた手を叩くように振り払って、甲斐に向き直る。
「今、自称女性の味方と言っていたよな」
「? それが何か」
「ピンチに晒すのか」
「……はぁ?」
「だから、その……私をピンチに晒すのかと言っている」
自らそのピンチに飛び込んだ奴がちょっと何を言っているのかよく分からないので、甲斐は、ふむ、と頷きしばらく黙考する。
「高度なギャグだな。斬新でもある」
- 48 :
- 告げると、響子は甲斐の足を目一杯踏みつけてきた。
「――!」
「あとで覚えておけよ」
「何をブツブツ話してるんだよ」
男の声を受けて、響子は踵を返し、そちらに向かっていく。
「さぁ、どこえなりとも連れていけ」
と、響子は胸を張って、腕を組みながら言う。なんだかヤケになっているようでもある。
男達は嬉しそうに口元から小さく息を出すように笑った。
「連れは情けないな」
「そうだな。全くな。最低だ」
と、響子が同意すると、男の内の何人かが甲斐に嘲りの視線を向けてきたが、
「俺は平和主義なんだよ。もっとも、あくまで“俺は”だけどな」
と甲斐は軽く流した。それよりも、足が痛くて、応じるだけの気力が沸かなかったというのが正解である。
足をさすりながら響子を見ると目が合った。しかし、彼女はすぐにその不服そうな顔を甲斐から背けてしまった。
「なんだこいつ、訳わかんねぇ」
「単なる強がりだろ。こんな奴は放っておいてさっさと行こうぜ」
笑いながら歩き出す四人と無言の一人を見送ろうとしたとき、入り口の扉が外から開かれた。
響子が戻ってくる前に会計を済ませておこうと思ってすでに財布に手をかけていた甲斐は、その手を止めることになった。
「あ〜疲れた」
「今日の補習は長かったぁ」
「次のテストは頑張りましょう」
入ってきたのは女子高生三人組だった。ここは甘味屋なので、女の子が入ってくること自体珍しくは無いのだが、その身にまとう制服には目を見張るものがあった。
私立桜南女子学園。隣町にあるお嬢様学校で、芸能人を多く受け入れている事で有名である。その影響かオシャレな学生が多く、またその制服を着るのを憧れて受験を希望する女の子も多い。
当然、男子の間ではよく噂になる学園である。
四人の男達も同様だったようで、彼女たちを視界に入れた途端、一斉に軽い口笛を鳴らした。
自分たちに近づいてくる甘味屋に似つかわしくない存在を確認して、三人の少女達の顔が強張った。
「なんですか、あなた達は」
「なんですか、あなた達は。だってよ」
「君たち私立桜南女子学園の子だよね」
「うっひょ〜、マブ。ねぇねぇ、よかったら今から俺たちと遊びにいかない?」
「ちょうど四対四になるしさぁ」
「結構です」
明らかな拒否見て取れるにも関わらず、男たちは諦めない。
「そんなこと言わないでさぁ」
「やめてください」
近寄る男に、身構える少女達。
響子が我慢も限界といった感じで「おい!」と声を出した。しかし、その時にはすでに甲斐は早足で近づいて、男から少女たちに伸ばされた手を捻りあげていた。
「あだだだだ!」
手に込める力を更に強めて、甲斐は少女たちを庇うように立つ。
「汚い手で彼女達に触るんじゃない」
捕えていた相手をドンと押す。解放された男は捻られていた手首を擦り、
「いてぇな! お前。何するんだよ!」
と甲斐に掴みかかった。
突き出された手を甲斐は易々と躱し、その勢いで接近。相手の足を自分の足で固定させ、腕で相手の上半身を掴み地面に投げる。そして、倒れたところにみぞおちを狙って踏みつけた。
男は苦しげなうめき声を漏らし、気を失った。
甲斐は残りの三人の男を見渡す。
「どうだ。このまま黙って出ていかないか? 怪我はしたくないだろ」
女を差し出してきた情けない奴、という認識だった男からの突然の反撃を受けて、呆気に取られていた男達だったが、やがてハッとして、怒り込めて甲斐を睨む。
「何をやってんのか分かってんか!? ああっ!」
「てめぇ! さっきまでビビってたくせに!」
「ビビる?」
甲斐は心底可笑しい気分を味わっていた。
「そんなわけないだろ。こちとらいつも人外と格闘してるんだぜ」
「訳の分からない事を!」
「覚悟はできてんだろうなぁ!」
再び殴りかかられる。甲斐はそれを手でさばき、そのまま腕を相手の首筋に絡ませて顎に掌底を打ち込む。
- 49 :
- 男はその後、フラフラとよろめいてから地面に倒れこんだ。軽い脳震盪を起こしたのだろう。
「こいつ……」
ここにきて、残りの男二人は甲斐がただの素人では無いことに気付き、攻撃を躊躇し始めた。
「ナンパというのはそんな無理やりっぽいのじゃないんだ。あくまで彼女の方からも一緒に楽しい時間を過ごしたいと思わせるものなんだ」
甲斐はしみじみと告げた後、ここで初めて拳を握った。
「それが分からないなら。教えてやろう」
○
男たちに料金を払わせて店から叩きだした後、甲斐は私立桜南女子学園の三人組の前に立った。
「お怪我はありませんか?」
尋ねると、一人の女性が代表して頭を下げた。
「大丈夫です。危ない所を助けていただいてありがとうございました」
「女性が困っていたら後先考えずに助けてしまうのが僕の性分で」
「……私を突き出しただろ」
甲斐の背後から追及するように呟く声が聞こえてくる。
「か弱い女性が困っていたら助けるのが男の務めですから」
呟いた瞬間、背中を有り得ない握力でつねられたが、甲斐は我慢した。
「しかし、君たちみたいな魅力的な女性たちだったらこういう事も日常茶飯事なんだろうね」
「いえ、そんなことはありません」
「こういう事は初めてで、どうして良いのか分かりませんでした」
「本当にびっくりしました」
「では、次にこういう事があったら、周りの人に助けを求めるといいですよ。もっとも、傍に俺がいれば一番に助けに現れますけど」
前髪を掻き上げてニッコリと微笑んでみせる。使い古された仕草ではあるが、少女達の表情を見る限り、そう悪くない印象を与えたようだった。
ちょっと思い切ってみようか、と甲斐は考えた。
「そうだ。これも何かの縁ですし、今から一緒に抹茶でもいかがですか?」
「えっと。それって……ナンパ、ですか?」
少女たちの仕草から不快感は見受けられなかった。
「ごめんね。俺もやっぱり君たちみたいな魅力的な女性たちを目の前にしてしまうとつい、ね。でも無理強いするつもりなんて微塵も無いから。よければ俺のわびしいティータイムに華を添えて欲しいな。もちろん、奢るからさ」
「う〜ん。どうしようか」
一番前にいた少女が他の二人に尋ねると、
「私はいいよ」
「はいは〜い。私も賛成」
と乗り気だった。
「では、よろこんでご一緒させていただきます」
甲斐は心の中で小さくガッツポーズした。
「嬉しいなぁ、それじゃあ店の奥に行こうか」
「甲斐」
呼んだのはさっきからずっと甲斐の背中をつねっている響子だった。
「何だよ響子」
「私は先に帰る。稽古の時間には遅れるなよ」
「分かってるよ」
「なら、いい」
そして響子はようやく甲斐の背中を開放して、店から出ようとした。が、その時、自分が少女たちにジッと見られている事に気が付いた。
「なんだよ。私の顔に何か付いてるか?」
と響子は不機嫌そうに言った。
響子が見知らぬ人にそのような態度を取るのは珍しいが、一暴れできなかったのでフラストレーションが溜まっているのだろうか、と甲斐は勝手に解釈した。
「響子って、もしかして六文高校の霧島響子さんですか?」
「そうだけど」
桜南学園の少女達は、お互いに顔を見合わせてから三人で小さく集まって何やら相談を始めた。小声なため、甲斐からは内容が聞き取れない。
やがて、三人は一斉に甲斐を見た。
「あの、あなたはもしかして真田甲斐さんでしょうか? 六文高校の」
「あれ、俺の事知ってるの?」
肯定すると少女三人はまた顔を見合わせた。そして、少女の中の一人が呆れとも怒りとも取れる表情を浮かべて、
「助けていただいたことには感謝してますけど。でも、馬鹿にしないでください」
そう言い放った。
「……はぁ?」
- 50 :
- 甲斐はその言葉が自分に向けられたものだと理解するのに少し時間がかかった。
しかし、彼女から感じられる先ほどとは違った拒絶のオーラは間違いなく本物だった。
「ほら、帰りましょ」
「ったく何よ。ふざけてるわ」
「ちょっとときめいたのになぁ」
「あれ、君たち。どうしたの? ねぇ、一緒に抹茶を飲むんじゃ――」
結局。三人の少女は強めにドアを開け閉めして店から出て行ってしまった。
響子は甲斐を見る。
「……」
甲斐は固まっていた。
「えっと、甲斐?」
「……なぁ、響子」
やがて固まった甲斐から擦れた声がした。
「俺はあれか? 女性に嫌われるフェロモンでも醸し出してるのか?」
響子はすぐに返答せず、しばらく床を見たり、天井に視線を移したり、腕を組んだりした後、
「まぁ、気にするな」
と甲斐の背中を叩いた。
「気にするわ! 今めちゃくちゃいい雰囲気だったじゃん! なのになんでこうなるの!?」
「泣くなよ甲斐。いいじゃないか。気にしたって原因は分からないんだから」
「何か嬉しそうだなお前!」
「べ、別にぃ」
響子は視線を逸らしてぎこちなく「はっはっはっ」と笑う。
「ほら、元気出せよ。仕方ないから杏仁豆腐奢ってやる」
「300円の杏仁豆腐で俺の心の傷が癒せるものか!」
「あっ、店員さん。杏仁豆腐二つ。会計は先に済ませます」
「ってお前、まだ食べるのかよ」
「あっ、伝票は別々で、ひとつ大盛りにして」
「もちろんお前が大盛りの方で、そっちは俺が奢るんだろうな畜生!」
それでも結局。甲斐はヤケ食いと言わんばかりに大盛り杏仁豆腐を三人前平らげた。
なぜか、甘いはずのそれは少しだけ悲しみの味がした。
- 51 :
- 以上で投下終了です。相変わらず、まだロボットは出てこず、日常パートが続きます。
- 52 :
- 投下乙です&私も投下予告でございます
2時前には爆撃を開始しますです
- 53 :
- {や糞がぁああああ!!!」
[ウォオオオオオ!!!]
地を砕き幾筋も伸びる触手をいなしながら雪兎は怒鳴り、その動きにリンクしたドラグリヲが
林立する廃ビルやガンタワーを蹴って追い縋る触手を回避し宙を駆けつつ咆哮を上げる。
そしてその反動と共に大きく弧を描きながら振り下ろされる超高振動クローが触手に食い込む都度にモニター内を赤い血飛沫が踊った。
『上方40度より1本、下方より3本の追撃を確認』
{分かってる!!」
続いて聞こえてくる鋭い警告音と共に発せられるカルマの忠告に怒鳴り返しながら
休む暇も無く再び襲来する敵に辟易しつつ落ち着いて処理する。
{雑魚がっ!」
強力で数があるもリズムの単調な攻撃である事に気が付いた今、攻撃を喰らう理由など無く
四方から迫る触手を順調に斬り落とし、眼下の街を紅く染めながら有利に戦闘を進めるドラグリヲ。
しかしその一方で雪兎には一つ気掛かりな事があった
{くっ……哀華さん、大丈夫ですか?」
敵の攻撃が僅かに弱まった所でシートの後ろでさっきからずっと黙り込んでいる哀華へと雪兎は声を投げ掛ける。
衝撃吸収シールドの中に収容しているとはいえ所詮は訓練されてもいない一般人の身体
障害物を蹴って方向を変更する都度に戦闘機のGを遥かに超える衝撃が発生するコックピット内で耐えられるか
心配になりそっと背後を向いて様子を伺おうと試みる……が
『…………………………フンッ』
その瞬間シートとシールドの間に容赦無く隔壁が下り、視界を寸断された。
{あぁっ!? いきなり何すんだよ!」
『戦闘中に余所見なんてやめて下さい死にたいのですか? 彼女の事ならば心配は無用です
パニックになって貴方の邪魔をされて貰っては困るので少々眠って頂いているだけですので』
{う……なら別にいいけど……」
抗議の声を上げるも何時も以上に棘のあるカルマの言動と態度に気圧されながら渋々と前を見て戦闘行動を再開する雪兎
何か気の触る事でもやったかと思考を巡らせるが一向に思い当たる節が無く頻りに首を傾げる。
そんな馬鹿の考えなど無視し、カルマは何事も無かったかのように戦況報告を続行する。
『地中に多数の生体熱源を確認、特区及び居住区域にて甚大な被害が発生の模様
尚、都市警備部隊及びケンタルグは都市機能死守の為中枢区域で待機との事です』
{くっ、僕達だけで殺れってのかよ……こんな時だからこそアイツの出番じゃないのか!?」
『心中お察ししますが中枢が陥落してしまえばそれこそこの街は終わりです
大丈夫ですユーザー、貴方なら必ず遣り遂げられます』
{へーへー、そりゃありがたいお言葉だこって」
根拠の無い励ましの言葉に嫌みたらしく言い返しつつ距離の離れた触手にロックオンマーカーを合わせトリガーに指をかける。
装弾した砲弾は気化弾頭、生命体相手ならば跡形残らず焼き尽くせる強力な砲弾が腕の大砲に装填され
撃ち出されるその時を今か今かと待ち構えている。
- 54 :
-
そして程なくその時は訪れた
{消し飛べッ!!」
うねうねと動く目標を完全に捉え、マーカーが真っ赤に染まり射撃を促すと同時に雪兎はトリガーを引き絞り
弾け出た大口径の砲弾が唸りを上げながら獲物の元へと飛翔する。
だがその瞬間、眼下の街並みを吹き飛ばし咆哮と共に現れた紅い影が射線を遮った
{待たんか小僧ぉおおおおおおおおおおおおお!!!}
慌てに慌てた言動を吐きつつ大きく腕と翼を広げる紅、彼は発射された砲弾を厚い胸板で受け止め拡散した爆炎を吸収すると
背後に伸びていた触手を手刀で斬り落とし、勢いそのままにドラグリヲへと食って掛かった。
{馬鹿か貴様は! 何故我が今まで炎を使わなかったのか不思議に思わなかったのか!?}
{ウルセー知るかそんな事! 大体何でいきなり邪魔すんだよアンタのお友達って訳じゃ無いだろうが!!」
首を思い切り掴み問答無用に捩じ切らんとばかりに握り締める紅にコックピットを激しく揺すぶられ
モニターとシートに激しく頭をぶつけながらも雪兎は負けじと悪態を付く
すると紅は苦々しく表情を変え、思い切り握り締めていた首を離しドラグリヲの鼻先を軽く指でツツキながら言った。
{一回やって酷い目に遭ったから親切に忠告してやっておるのだ戯け}
{ん……? 酷い目に遭っただと!? おいおっさん……アンタこれが何なのか知っているのか?」
思わぬ返答に雪兎は真顔になって問い返す。
いくら千切りにしても湧いて出てくるグロテスクな敵、それらの対処法を知っているのであれば願ってもない事だと
今度は逆に自分から紅へと掴みかかっていくが、伸ばしたクローは敢え無く宙を切りそれを避けた本人はドラグリヲの頭上を
高らかに舞うと大きく翼を広げ背中を向けつつ言い捨て、昇る月の方角へと針路を定める。
{ついて来な、但しくれぐれも余計な事はしてくれるなよ。
機嫌を損ねてシャーベットにされても我は責任を持てんからな}
そう言うが早いが全身の鱗の合間から細い炎を吹き、大量の触手のヘイトを一身に集めそれらを引き連れながら地平の彼方へと
凄まじい速度で飛び去って行った。
{シャーベットって事はあの鬼嫁のとこかよ……、出来れば行きたくは無いけど行くしかないよなぁ……」
その紅く輝く背中を睨むように見つめながら雪兎は悲しげにボヤキ、ドラグリヲの背に負われた“鉄屑”のアイドリングを開始する
すると今まで黙り込んでいたカルマが心配する様に声を掛けてきた
『ユーザー、一体何の妄言を抜かしているのです?
まさかあれと意思疎通が出来るなんて世迷い事言いませんよね……』
{残念ながらお前の言う通りさ、アイツの言う事が僕には手に取るように分かる」
『えっ……?』
困惑し沈黙するカルマの返答を待たず、雪兎は足場にしていた廃ビルを思い切り蹴飛ばして離陸すると
鉄屑の出力を最大にして煌々と燃える紅い光を追い始める。
{兎に角、今は奴の言う事に従わせて貰うさ
宛もない消耗戦を続けるよりもコッチの方が精神的にも楽だしな」
青白い炎の尾を引き、一直線に夜空を駆け抜ける銀色の竜の中で雪兎は
懐疑的な表情を浮かべるカルマのホログラムに向かって苦笑いをしながら呟く。
しかしその態度とは裏腹に心の中では僅かな動揺を見せていた
何故ならばあの触手の垂れ流した赤い血をドラグリヲが浴びた瞬間、胸を締め付ける様な何かが雪兎を襲っていたからである
まるで琥珀や常磐を屠った後、訳の分からない幻覚に苛まれた時と同じように
{またか……畜生……!」
その違和感を必死に振り払い、顔に出さないようにしつつ雪兎はひたすら前を見据えた。
自分が生きている事を否定しない為に、自分達がただ生きていく為に
- 55 :
-
{ふふっ、随分と穢らしい物を這わせようとするのだな……
眠りっぱなしだった癖に一体何処でそんな悪知恵を仕入れたのやら……}
時を同じくして、死角から襲いかかって来た大量の触手を纏めて氷晶結界の中に封じ込め
氷柱の天辺から一歩も動く事無く敵を制圧していた藍は微笑みを浮かべ静かに巨大な害獣を見つめ続けていた
まるで腕白な我が子と戯れる母親の様に慈愛に満ちた表情を浮かべながら佇んでいる。
しかし背後から轟音と共に迫って来た気配を感じ取るとその笑顔を隠し、咄嗟にその方角へと向き直った
{気配が2つ? この気配……この前の雑魚掃除に混じっていた輩か……}
馬鹿な主人が招かれざる客まで連れてきたと、内心唾を吐き捨てながら容赦無く零下の結界を張り巡らせ
間合いに入った瞬間即死させようと上空に無数の氷の槍を召喚し、待ち受ける。
{まてまてまてまてまてぇええええ!!!}
だが、藍が結界を展開し終える寸前に炎の弾丸と化し突っ込んできた紅が既の所でそれを留めた
天に踊る氷の槍が紅の後を追って来た触手の群れを串刺しに、凍らせ、砕け散る。
{何も竦む事はない、ちょっくら人足を調達してきただけの話だ
この間見つけた我等の同類をな……それに其奴が我等に対して牙を剥こうとは夢にも思わんだろうよ
我等に対して矛を向けるような奴はキ印か自殺志願者か己を測れぬ間抜けしかおらん}
{…………}
紅の癪に障る様な物言いに内心ムッとしながらも、藍は後方から遅れて着地してきたドラグリヲへ視線を向け
その外見から直ぐ様それが人造のものであると悟ると同時に、主人が以前見せたかった同族と語ったものが人間であった事に落胆すると
ドラグリヲの鼻先まで素早く顔を近付け唸るような低い声で脅した。
{おい人間、妾は無駄な殺生は好まぬし無駄に争おうとも思わぬ
しかしな……余計な事をしたら死体ごとこの世から消滅すると思え}
凍える様な吐息をコックピットを覆う装甲に吹き掛けて何時でも殺せる事を知らしめ
メインカメラをゾッとするような目付きで睨み、凄みを効かせる……が一向に返事が無い
{どうした、縮こまって声も出ないか?」
大したことは無い所詮は人間だと早合点し、冷笑を浴びせる藍
しかしハッチの中から漏れてきた呻き声を聞いた瞬間、その整った面構えを呆けた様に弛緩させた
{やめてやめてさぶいさぶいさぶい死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
密閉されたコックピットの内部にまで侵入して来た凄まじい冷気により全身凍傷寸前にまで追い込まれ
鼻水と涙を垂れ流しながら僅かに暖風を吹き上げる空調に命懸けでへばりつき命乞いをする雪兎。
その空気を読まない駄目っぷりに藍は真剣に応答する事さえ億劫に感じ
再び氷柱の上に舞い降りると紅に向かってクドクドと文句を垂れた。
{こんな貧弱な間抜けが我等の同類? 何を考えているのですあなたは……こんなの面白くもないダダ滑りのジョークです}
{そう言ってくれるなよ、今回ばかりはコイツの助力が必要なのだからな}
そんな藍を宥めつつ紅は棒立ちになったドラグリヲへ静静と歩み寄ると、コックピットを覆う冷えた装甲に軽く触れ
内部に熱を送り込み、寒さに凍える雪兎を態々暖めてやった
霜の降りたモニターを結露した雫が流れ、幾筋もの水滴が床を濡らす。
- 56 :
-
漸く人心地つけて少しホッとする雪兎、しかし直ぐ様その言葉に疑問を感じ訝しげに首を傾げながら紅の厳つい顔を見上げた。
{助力って……そんな事する必要無いだろ? 大体何でトドメを刺さないんだ?
アンタ達の力にかかればこんな動きの鈍そうな木偶の坊なんてただの的だろうに……」
{お前は我々の力を買い被り過ぎているようだな、我等とて全能ではない
それに彼女に限っては我々だからこそことが出来ないのだ}
{……どういう事だよそりゃ?」
予期せぬ返答に雪兎は驚きを隠せず、目を剥きながら紅に再び尋ねる
すると紅の代わりに頭上から冷たい口調の返答が落ちてきた。
{彼女は些細な熱エネルギーと極少量の物質を吸収する事で爆発的な成長を遂げる能力を持っている上に
生命維持に重要な器官が狙われると周囲に存在する物質をほぼタイムラグ無しで喰らい尽くして戦闘形態に移行する
厄介な備えまで設けている。
故に我等の力では彼女の命を奪う事は出来ない、我等が出来る事と言えば成長要因からなるだけ遠ざける事
そして彼女の細胞が活性化する事を妨げ、それでも育ってしまった血肉を削り取ることだけだ……}
{そんな……じゃあどうしようも無いじゃないか!」
今までチート染みた力を持った化け物は見てきたものの、その群を抜く糞能力っぷりにただただ呆れ果て
諦めの混じった口調で嘆く雪兎。
しかし紅はその不安を察しそれを拭う様に笑ってみせると、ドラグリヲの肩をしっかりと叩いてやりながら励ました。
{安心しろ、殺意さえ持たなければ彼女は態々目覚めて我等を喰おうとはせん
それに中枢神経から寸断された部位は成長能力を失い無力化される
その様は貴様も見ている筈だ}
先程凍らされた挙句砕け散った触手の肉片を指し示め、自信を込めて語る。
{……ハァ、さいですか」
その声の音色と僅かに響く心音から少なくとも嘘を付いていないことを察し
雪兎は内心安堵しながらも面倒臭げに首を鳴らしつつ、再び尋ねた。
{なら良いんだけど、で具体的に何をすればいいんだ?
期待するのは勝手だけども、コイツに出来る仕事なんて戦闘と破壊工作位しか……」
{其れ位出来るなら十分だ、今回はこいつのダイエットのお手伝いをして貰うだけだからな}
「……は? ダイエットだぁ!?」
- 57 :
- かくして藍主導の元による、強制解剖ダイエット作戦が決行された。
藍が凍った巨大害獣の表皮に刻んだ工程表通りに二人はただ黙々と掘削作業を進めていく
時は既に草木も眠る丑三つ時、夜の静寂にビルの解体現場の如き騒音が地平の果てまで響いて消える。
{キツいなこれは……」
そんな中、久しぶりの単純な肉体労働に雪兎の全身の筋肉と精神が悲鳴を上げていた
衝撃を吸収する凄まじい肉厚の柔軟な身体に鋼鉄を凌駕する硬度の氷が合わさった天然の鎧を
発生する熱を少しでも防ぐ為に振動及び発熱機能を停止させたクローで懸命に突き続けるが一向に突き破る事が出来ない。
作業効率を高める為にバーサークモードを起動するも氷の内部にヒビを入れる程度の成果しか上げられなかった上に
過剰に体力だけを削られる結果となり、雪兎は肩で息をしながらドラグリヲに膝を付かせた
{畜生!」
ヤケになって滅茶苦茶に爪を突き込むが一向に氷が削れる気配が無く、徐々に苛立ちを隠せないようになる
すると自らの仕事をいち早く終わらせ小休止していた紅がドラグリヲの背後に舞い降り、励ます様に背を叩いた
{おいおい、こんな早くバテてたら後々まで持たねぇぜ
日が昇るまでの間、どれだけ肉を削れるかで勝負が決まるからな
この穴に叩き込めるサイズまで削れれば我等の勝ち、出来なければ彼女の目覚めと共に我等は喰われて終わる}
{そんな事は分かってるよ、でもいくら何でも硬すぎる
トーチカをバターナイフ一本で破壊しろって言ってるようなもんだ……」
人の気も知らないで他人事のように語る紅を尻目に深呼吸を繰り返し体力回復を図る雪兎
そんな情けない姿を見兼ねてか紅は徐に眼前の氷壁に爪を立てると、まるで硝子を砕くかの様に容易く粉砕して見せた。
{な……何ぃ!?」
{氷の目を狙いな、そうすりゃ一撃で砕ける}
氷の凹凸の間の結合の弱い部分を拳で的確に射抜いていく様を見せ付け、あとは自分で何とかしろとばかりに自分の持ち場へと戻っていく紅。
{そんな方法があるなら最初に言っといてくれよ全く……」
その背中を睨みながら雪兎はドラグリヲの躯を起こし憎々しげに声を荒らげつつ
ゆっくりと腕を引くと、今までの恨み辛みを篭めた全身全霊の突きを紅の付けたマーキング跡に叩き付けた。
刹那、先程までの苦行が嘘の様に頑強だった肉壁はあっさりと砕け散り
凍り付いた血液が赤い輝きを散らしながら霜の下りた地へと突き刺さる
{抜けた……! これなら……!!」
ようやく手応えありと疲れた顔に笑みを取り戻しながら、先程までの遅れを取り替えさんとばかりに雪兎は作業を再開した
本来ならばシールドマシンでも使わなければ掘れないような硬い氷の岩盤を水を掻き分ける様な勢いで猛然と突き進む。
一度コツさえ掴んでしまえば考えるよりも大した事は無く、その腕の一振り一振りが氷の下の肉壁に突き刺さる事に肉の繊維が飛び
跳ねた赤い氷の破片が月の光を拡散して眩い光を放ちつつ装甲の合間へと入り込んでいくがそんな事に気をやる暇も無しと判断したのか
雪兎は黙ってただひたすら爪を振るい続ける。
- 58 :
-
やがて時が過ぎ東の空が白み始めた夜明け前、長過ぎる苦行が漸く終わりを迎えた。
頭と身体を支え切れる程度の肉を残して地面に横たわる巨大害獣の隣に高く高く積み上げられたクズ肉の山が
ツガイがそれ程にまで恐れた成長力の強さを物語る。
{よくやってくれたな、ここまで削れれば後50年位は安泰だろう}
ほぼ脊椎と脳だけの存在となった害獣を穴の底へと安置し、戻って来た紅が褒める様にドラグリヲの頭をガシガシと撫でる
しかし雪兎は頭を撫でられたことによる鬱陶しさよりも、紅の発した言葉にゲンナリとしていた。
{50年程度って……これで終わりじゃないのかよ」
{当たり前よコイツを殺せた訳では無いからな、あくまでもこれは応急処置にしか過ぎぬ
一応コイツを殺せる奴を知ってはいるが……ソイツの所在も分からない以上これが限度だ}
{そうかい……でも50年後って言ったら僕はもう関係無いだろうな
歳を取ってこんな化け物動かしてたら身体が持たないし
その頃は後進に仕事を譲ってのんびり余生を送ってるんじゃあないかなぁ」
面倒臭そうに鼻の頭を掻く紅の横で、雪兎はポジティブに思い直し未来に思いを馳せながら穏やかに語る
シートの裏で眠り続ける哀華と共に歩む未来を想像しながら。
しかしその遠い未来の夢物語も紅が何気なく発した言葉により木っ端微塵に打ち砕かれた
{何を寝惚けたことを抜かしておるのだ、我等の同類たる貴様があの木っ端共と同じ様な老け方を出来るとでも本気で思っているのか?}
{えっ……? どういう事だよそれ……」
思わず真顔になり真剣なトーンで紅へと詰め寄ろうとする雪兎、しかしそれに続く言葉も行動も
誰も手出し出来なかった筈の巨大害獣の体内から突然轟いた爆裂音により遮られ
二匹と一人の間に流れていた比較的和やかな空気を吹き飛ばし、一転して奈落の底へと突き落とした。
{馬鹿な……、何時だ? 何時仕込まれた!?}
顔面を蒼白にして藍はその場から直ぐ様飛び立ち
紅も一瞬判断に遅れたドラグリヲの躯を担ぎ、直ぐ様その場から飛び退く。
その瞬間、二匹と一人が居た場所が脈動する肉に喰らい尽くされそのまま害獣の身体の一部となり
周辺の物質を吸収して瞬く間に巨大に成長した化け物が再び地表に顕現した
気味の悪い粘液を垂れ流しながら不気味に蠢く大量の触手を伴い、自らも得体の知れない粘液を爛れた皮膚から漏らしながら
地表に身体を横たわらせる。
皮膚から大量の気泡を吹き、全長の大半を占める程に巨大な顎を動かして緩慢な呼吸を繰り返すそれはただ只管に醜かった。
- 59 :
-
{そんな……僕達は何もしていない筈なのに……」
{言われずとも分かっておるし下手人の検討は付いておる! あの道化めフザけた真似を!!}
地面に降ろされ言い訳するように呟く雪兎の言葉を遮りつつ、藍は苦々しげに顔を歪ませ直ぐ様氷点下の結界を展開し
害獣の成長を少しでも食い止めようと試みる。
しかし既に大量のエネルギーを体内に取り込み進化した害獣には効果が薄く、大きく張り巡らされた
氷晶壁をぶち破って伸びてきた触手が二匹と一人を隙あらば喰らおうと暴れ狂った。
{くっ……道化だと? 誰だよ其奴は!?」
{無駄話をする余裕など無い! 共に地獄の釜の底に落ちたくなければ
彼女の注意を可能な限り逸らしていろ!!!}
藍の言葉に疑問を抱き、尋ねるも一蹴され触手のヘイトを一方的に押し付けられる雪兎
{ちぃ……! 何だってんだよ畜生!!」
その理不尽な行為に怒りを顕にするも、怒鳴る暇など無いと直ぐ様思い直し
回避運動に移ろうとドラグリヲの躯を屈ませる
{……!?」
しかしドラグリヲの装甲に潜り込んでいた赤い氷の欠片が溶けた瞬間、その動きは唐突に停止した。
激しい運動を繰り返すうちに内部深く入り込んでいた血液の欠片、そこから溶け出た血潮から解析されたDNAデータの詳細が
コックピットの四方を囲むモニターを瞬く間に埋め尽くしていく。
『最優先殺害対象確認…………ブラックリスト照会……該当データ在リ。
開発コード暴食=c…、無限成長素子搭載型試験運用個体赤錆≠ニ確認
殺戮モード再起動、交戦開始』
琥珀や常磐と戦った時と同じ様な反応と報告、それに静かに耳を傾けながら雪兎は牙を噛み締めるように呟いた
{やっぱりコイツも彼奴等と一緒なのか?」
思わずその場に棒立ちとなり自問を繰り返す。
だがそれは戦場においては余りに軽率で間抜けな行動であった
{馬鹿野郎、死にてぇのか!!!}
{!?」
耳元に突如響いた紅の痛烈な叱咤が直ぐ様雪兎を現実へと引き戻したが、時既に遅く
巨大な触手に絡み取られ害獣の目の前へと引き摺り出されてしまった。
{しまった!?」
どうにか逃れようと雪兎は機体を思い切り藻掻かせるが想像以上の筋力を持ち尚且つ潤滑性の高い粘液の膜に覆われた
触手に刃が立たずそのまま口元近くまで連行され大いに焦る。
- 60 :
- しかし当の害獣はドラグリヲを口の中に直ぐ様ねじ込む様な事は何故かしなかった
{おじさん、だあれ? あおいきらきらのひととあかいきらきらのひとのおともだち?}
つぶらな瞳をキラキラと輝かせ、その醜い獣“赤錆”はドラグリヲの顔をじっと見つめながら尋ねる
まるで新しい友達を見つけて遊びに誘おうと夢中になる子供のように
{!」
考えもしなかった展開に一瞬戸惑う雪兎、しかし直ぐ様立ち直って思考を巡らせると
目の前の怪物の機嫌を損ねぬよう優しく返答し、自らも尋ねた
{……僕は雪兎、ここの近くの街にお邪魔しているただの兵隊さんさ
ところで君は……一体何者なんだい?」
次第に緩んでいく触手から滑り降り、束縛から抜け出すも直ぐに逃げずに彼女と話を続ける。
そのまま赤錆の気を惹き、藍が結界を完成させるまでの間話し相手になる事、が今出来る最善の策だと
咄嗟に悟ったからであった。
そんな狡い考えがあると露知らず、赤錆は喜んで話を続けようとする。
{わたしは……あれ? おなまえなんだったっけ? おじさん、わたしのおなまえわかる?}
{……いいや、ゴメンよ分からないな」
{そっかー、でもなんでだろうね、おかしいよね、おじさんにはおなまえがあるのにね}
{ふふっ……そうだね」
その見てくれとは裏腹に幼い精神を宿す赤錆の無邪気さに雪兎は思わず笑顔を零し
御社で哀華に頼まれた際に子供達の面倒を見た時の事を思い出していた。
そして尚も会話は続く
まるで寝る前の子供が親にお話をせがむように、赤錆は雪兎の言葉を欲していた。
{ねぇ、おじさんはへいたいさんなんでしょ? なんでそんなこわいおしごとをするようになったの?}
{さぁ何でだろうね、僕にもよく分からないんだ
ただ僕には偶々皆を守れる資格があったから……僕はそれを受け入れたに過ぎない」
{……こわくないの?}
{戦う事が怖くない人間なんて誰一人居ないよ、例えそれが命に別状があろうとなかろうとね」
怖怖と尋ねる赤錆に雪兎は優しく答えてやる。
すると今度は赤錆が思い立ったかのように横たえた身体を起こし、その鼻先をドラグリヲに近づけた。
{ねぇ、おじさんもいっしょになろう? そうすればなにもこわくないよ。
みんないっしょだから、ぜんぜんこわくないよ}
{……“みんな”?」
{うん、みんな。わたしのなかにはみんながいるの}
訳も分からず雪兎が問い返すと、赤錆は自らの身体全てを見せ付けるように立ち上がった
明けかけの太陽が彼女の進化直前の身体を朧気に照らし出す。
{!!!」
そして漸く雪兎は彼女の語る事が理解出来た、否理解せざるを得なかった
彼女の体表をよく見ると、それが別の生き物のパーツの集合体である事に気が付いたからである。
今まで喰われてきた生命体の手足や頭を模した形状のグロテスクな凹凸が彼女の自覚の無い罪の重さを物語り
無垢故の底知れない怖さ、無邪気故の残酷さが雪兎の本能からの恐怖を呼び覚ます
{そんな……こんな事って……」
思わず言葉を濁し、目を逸らして黙り込む雪兎。
その反応を見るや否や、赤錆は対応を一変させた
顎肉の中に埋まっていた臼歯の様に頑強な歯を剥き出しにし、地鳴りのするようながらがら声で咆哮を上げる。
{やっぱり……おじさんもそうなんだね、わたしをそうやっていじめるんだね?
まただ、またそうやってわたしをきたいさせてからなかせてわらうんだね?}
悲しみに満ちた彼女の言葉、しかし雪兎は直ぐ様その言葉を否定し今にも暴れだそうとする赤錆の足元に駆け寄って叫んだ
{違う! そうじゃない!こんな事を繰り返しても、君がまた寂しい思いをするだけなんだ!!
命ない抜け殻だけいくら纏っても、心や思いも一緒になった訳じゃないんだぞ!!!」
声を涸らして必死に、先程まで抱いていた小狡い考えも忘れ必死に叫び続ける。
しかし興奮し切ってしまった彼女にその言葉が届く事は無く、背後から雪兎を救わんと轟音を立てて飛んで来る紅の気配がすると共に
彼女はその巨大な大顎を目一杯に開くと悲しげなトーンで言い切った。
{い た だ き ま す}……と
鋼殻牙龍ドラグリヲ 第二十七話 “赤錆”
- 61 :
- 投下完了、お休みなさい
- 62 :
- 投下ラッシュに会わせて一レスお借りします。
- 63 :
- 「時にウサギ様。あなたいくつ?」
「少シ話ガアルカラ、飛ブゾ」
「え?」
ヒトの塔の幕間「とっても大事なレディのお歳」
「先生。二つ質問があります」
「良いから言いたまえ馬鹿」
「まずここはドコ?」
星空に見えてなんだかロマンティック。
「ここは魔術空間の一つで、私なんかの呪いやら薬やらを使う魔術師が【憩いの庵】と呼ぶコミュニケーションを目的とした場所。多分ロビンや私たちが今いる世界では回線空間と呼ばれるわ」
「マジュツクウカン?」
「そ。昔むかしの魔術師たちが丹精込めて築き上げた現実と隣接するどこか。時間の概念はないからネバーランドとも言える場所ね」
「なるほど。で、質問二つ目。僕のとなりで眠りこけてるこのおっぱ、女の子は?」
「ニーナ、という子らしいこと以外は分からない。多分何かの拍子で迷い込んでいるんじゃないかしら」
「……はっ!ごはん!」
ビックリした。いきなり起きるとは。
「……すぴー」
「寝言かよ」
「で、私の年なんだけど。ちゃんと17歳よ」
「……え?そこそこの付き合いじゃないですか僕たち」
「その秘密が魔術空間なの。ここに肉体は入れないけど、魂と精神は肉体を覚えているから、肉体を求める」
「ほうほう」
このくらいならそこいらのファンタジーでもやっている。
「そうすると魔術空間内に「本来の体ではない肉体」というのが生まれるわけ。本当の肉体の年は変わらないままね」
「それ結局老けてません?」
「それは違う。ビル、きみでも夜寝る時に夢は見るでしょ?」
「うわ久しぶりに名前呼ばれた。まあ、時々はそりゃ夢くらい」
「その時にとてもリアルで、橋から落っこちたりして『あ、夢だったのか』ってならない?」
「あー。あるかも」
「魔術空間や、魔術空間を通過した先もそれといっしょ。記憶は持ったまま別の世界の夢を見ている」
「ビックリな再生速度でリアルな映画を見てるってこと?」
「分かりやすく言うとね。だから私たちみたいな年季入った勉強をした魔術師は、殺されてもあまり死んだりしない」
「たとえそれが現実でも夢にできてしまうから?」
「そういうこと。死ぬことは怖くないんだよ、ビル」
絶対嘘だ。例え偽りの肉体でも、失ってしまえばそれが本当かどうか魂に区別はつかないみたいな口ぶりだった。
魂か精神かどっちかが壊れてもおかしくないってことだ。
「わかった、シルヴィア。僕は生きるよ。生きて元の世界にもどる」
渇いた笑いをするウサギ様。ジョークだと思ったのかな。
「だいじょうぶ。私の尊敬する人たちは四桁くらいの年数の記憶を持っているのが普通だから。そうそう間違いも起きないわ」
ただし、とつけたす。
「魔術空間の中で地獄を見るような鍛練をするんだけど」
もしウサギ様の尊敬する魔術師たちに会ったら言ってやろう。
「この年増」と。
- 64 :
- 次回予告。
今回から「次回予告」を挟んでみようと思います。不評ならやめます。
一週間後くらいに完成している三話を投下するつもりです。
「三話まで完成してるのにこれ意味ないじゃない」ですか?
次回予告もある意味ロボのロマンじゃないですか?
予告など する気ないまま また次回。
秘湯第三話「そして空は朱(あけ)に染まりて」
単にコレを考える時間が一番楽しい。
- 65 :
- 大量投下ラッシュだと……!こんなに嬉しいことは無いッ!
皆さん投下乙です!それではゆっくり読ませてもらいますね!
- 66 :
- お二方、投下乙です!
それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
- 67 :
- うぐわ! リロードしてなかったしにたい!
>>64
投下乙です!
それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
- 68 :
- ではこの投下ラッシュに乗じて私も投下。
- 69 :
- 「はははははッ! 君はやはり私に相応しい相手だッ!さあ、もっと君との戦いを堪能させてもらうぞ!」
男は切り落とした戦車に手の生えたような『タンクマキナ』の右腕を拾い投げつける。
『タンクマキナ』はそれを主砲で破壊したが、右腕のマシンガンの弾薬に引火し、辺りを爆炎が覆う。
そして、その爆炎を掻き消しながら突っ込んで行く。
<悪いが、テメェと死ぬか生きるかの戦いを続ける気は更々無ェンだよ!>
赤い、飛び散った血の様なペイントの『タンクマキナ』が左肩の上の箱の様な物体……恐らくはミサイルポッドを開き、
ミサイルを放とうとする。
だが、それすら男には“見えていた”。開いた瞬間素早く頭部のバルカンを放ちミサイルポッド共々爆散させ、高熱切断ブレード
を振りかざし、男は吠える。
「君が何と言おうとも、私は諦めない!あの日、付けられなかった決着、忘れたとは言わさんぞッ!」
避け損ねた『タンクマキナ』の胴体に深い切り傷を付け、マシンガンの追撃を躱しながら大きく機体を踏み込ませる。
『掃討の堕天使』レジル・シェイドは高熱切断ブレードを振り上げ叫んだ。
「その首……貰ったあああああああッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
だが。
それさえも『タンクマキナ』は軽々と躱して見せる。追撃のマシンガンを振り払い一度退くレジル。
「やはり、一筋縄では行かないようだな」
レジルは不敵に笑った。その笑いはとある“武士道”を名乗る男の笑いにソックリだった。
「鮮血のTank soldier」
第四話『私は君を果てしないほど求めているッ!』
あまりに無茶な動きをする為に体はとっくの昔に悲鳴を上げて限界を迎えていた。
何も、体が『ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』と言う訳ではないが。
機体は右腕を肘の辺りからごっそり持っていかれ、胴体にも切り傷ができている。
右腕はその後、切り落とされたうえ、相手に投げられ、持ち主に破壊されると言う悲惨な運命を辿っている。合掌。
そんな状況に陥っているのは赤毛の少年、ひろしである。特に意味はないが、死にそうなので合掌。
ひろしはHEN☆TAIから息つく暇のない程の怒涛の攻撃を耐えていた。ここで『ロンメル……これが終わったら結婚しよう』
と言っていたらまさしく合掌フラグである。合掌。
時折、コックピットの壁やモニターに顔面をぶつけ鼻血の出ていたひろしは鼻血をぬぐうとチラリ、とモニターの時計を見る。ちなみにしつこいようだが
このまま行けばやがて出血多量で合掌である。合掌。
時計はその時、午後の1時24分をモニターに映し出していた。
ひろしは『コロッセオ』のルールを思い出す。
(……試合開始から30分を過ぎても勝負が決まらなかった場合、その試合は無効となる。別に勝とうだなんて最初から思っちゃ
いない。あくまで、生きてデータを持ち帰るのが目的だ……!)
始まったのが1時だから残り6分。
「ハッ、上等!」
ひろしは逃げの姿勢から一転、攻めの姿勢へと転じる。
主砲を乱れ撃ち、マシンガンを乱射し、ミサイルポッドを開き全弾を撃ち尽くす。通常の兵士であればあっと言う間に合掌となるだろうが、
レジルはその殆どを時には迎撃し、避け、装甲の厚い部分で受け止めて戦闘を続行する。
<フハハハハハハハハッ! 私は君を果てしないほど求めているッ!なぜ応えない!>
- 70 :
- 爆発的な推進力で突っ込んできたレジルが高熱切断ブレードで『タンクマキナ』の主砲を斜めに切断せしめる。
「ところがぎっちょんッ!」
意味不明な言葉を発しつつ、切断された主砲を突き刺す為に敵機に突進するひろし。
<何ッ!?>
流石のレジルも予想外の攻撃に一瞬判断が遅れ、右腕のコントロールを失ってしまう。
更に、ひろしは砲塔を振り回して敵機を壁にぶつけ、そこへマシンガンを乱射する。もうもうと上がる煙から素早く離れようとしたひろしに
煙を突き抜けレジルが襲い掛かる。
<まだだッ! たかが利き腕をやられただけだッ!>
不要となった右腕をパージし、そのまま投げつけるレジル。
<―――もらった!>
右腕を頭部のバルカンで破壊し、その爆発を目くらましに使うレジル。ひろしが敵機を確認した時には既に敵機は左腕で高熱切断ブレード
を持ち、大きく振りかぶっていた。
ガン! と音が鳴りコックピットを衝撃が貫く。そして断続的に起こる小爆発がコックピット内でひろしを襲った。
「ガッ……!ァ嗚呼ああああああああああああああああああああああ!?」
と、急にひろしは右肩に強烈な痛みを感じ恐る恐る肩に手を遣る。そこには、大きな尖った金属片が彼の赤いパイロットスーツをさらに
赤く染め上げていた。
<さあ……終わりにしよう! 私の勝ちだ!『返り血の戦車兵』ッ!>
左腕に握った高熱切断ブレードを真っ直ぐに突き出し、フルスロットルで突っ込むレジル。
一方、ひろしはとめどなく血のあふれ続ける肩を握ったままぴくりとも動かない。
<うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!>
「く、はっ。はは、血だ。血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ―――――」
接近したレジルとの距離、およそ10m。
ひろしは右腕で操縦桿を握るとそのまま前に押し出した。
「俺の、好きな――――真っ赤な血だ」
次の瞬間、レジルの視界から『タンクマキナ』が消えた。いや、消えたようにみえた。
<変形か。小細工は通用せん!>
レジルはそのまま高熱切断ブレードを下に突き刺す。だが。
<手ごたえがない……まさかッ!?>
と、レジルは不意に後ろからの攻撃を受ける。慌てて後ろを振り向かせるが既に『タンクマキナ』の尖った主砲が機体のスカートアーマーを
貫いていた。
<あ、圧倒されただと……!この私がッ!>
そして貫いたまま機体が振り回されそのまま地面に叩きつけられる。
<ま、まだだああああああッ!>
起き上がりながら高熱切断ブレードを振り上げるレジル。だが、その剣は『タンクマキナ』に届く事は無かった。
何故なら、残った唯一の左腕が深々と高熱切断ブレードに突き刺されていたからである。そしてそのまま左腕を捻り高熱切断ブレード
をボキリ、とへし折られたレジルはとっさに後ろへ下がって追撃を逃れる。
その時。
『ここでバトル終了おおおおおおっ! アツいバトルに思わず引き分けの事をみんな忘れていたかぁ?』
大きなマイク越しの声が会場いっぱいに広がる。そう。
「ヘッ……終わったか……」
<……そうか、君は最初からこれを狙って!……まあいい、また必ず近い内に会う事になるハズだ。その時を待っているよ>
残念そうなレジルの通信が切れ、ひろしはゆっくりとシートに身を委ねる。
直後、ひろしの意識は暗闇に沈んでいった……
- 71 :
- 「……!ろ……し、……ひ……ろし!」
誰かが自分を呼んでいる声でひろしは目が覚めた。
目を覚ますと涙目になったロンメルとルーデルが自分の上半身に顔を載せて必死に名前を呼んでいた。
「……大丈夫だ」
「「ひろしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!!!!!!」」
二人がド凄い声を上げながらひろしに抱きつく。どすこい声ではない。どすこい声というのがイマイチ分からないが恐らく『どすこい』
であろう。
ちなみにヘイヘはひろしの寝かせられていた看護室の隅っこで、いつまで経っても起きないひろしに対する不安を
暴力と言う形でぶつけられたユークリッドの残骸の上で本を読んでいた。
ベッドから起き上がった瞬間、やはり右肩に激痛が走る。
「クッ……、さすがにまだ痛む……な」
それを慌ててロンメルとルーデルが支えてベッドへ戻す。
「まだ起きちゃダメだよぉ!」
「おい……お前ら、すぐにここを出るぞっ……、ロウズが俺達を消しにくるッ!」
「どうして? ここは安全だよ、地下で暴れればどうなるかだって―――」
分かってるはず、とロンメルが言いかけた瞬間突然の揺れが『コロッセオ』を襲った。
『大変だッ! 格納庫に収容されてるGEAとパイロットの一部がいきなり建物を破壊し始めた!はやく逃げ……うわっ!』
更にドアの外でドタバタと音がして、誰かの叫び声がした瞬間パァン! と銃声が鳴り響く。
そして看護室のドアが派手に開かれ、武装した男達が3人程部屋に入ってきた。その中のリーダーらしき男がひろしを見据えた。
「『返り血の戦車兵』及びその私兵だな。我々ロウズは貴様らを消去するためやってきた」
「見ればわかるってンだよォ……えぇ? サイクラノーシュの亡霊共が」
ベッドから身を起こしたひろしがロウズの兵に向かって挑発する。
「……フン、強がりはその辺にしておけ。最後に言いたいことはあるか?」
ガチャリ、と兵隊が自動小銃をひろしに向ける。ひろしは兵を睨みつけるロンメルらを後ろに下がらせながら言った。
「そうだなァ……横を向いた方がいいと思うぜ?」
「そうか……そんな子供騙しが通y」
パン、パンと乾いた銃声が2度鳴り響く。横を見ると、一緒に来た兵士が眉間を撃ち貫かれて倒れ伏していた。合掌。
そしてその兵士の死体の奥、直線上にいたのは――――
「……どこがいいか選ばせてあげる。1、頭。2、頭。3、頭」
ページに焦げたような穴がぽっかりとあいた本越しに拳銃を構えてヘイヘが尋ねる。
「……じゃあ頭で」
そしてリーダーの兵士は眉間に銃弾を撃ち込まれ、死亡した。合掌。
スックと立ち上がり、椅子にしていたユークリッドを思いっきり蹴り起こさせるヘイヘ。
「……ひろし、持って行って……」
そういうと、ヘイヘは拳銃を持ち一人ドアの外へ出ていく。
「災難だなァ、ロウズの連中。俺達が出る頃には全員ヘッドショットされてンぜ」
「災難だよ。全く。みんなからボコボコにされた挙句椅子にされ最終的には荷物持ちか……」
ドアを開け、外へ出るとそこは眉間に穴の開いた人形達の墓場だった。合掌。
「こんなん怪我人に見せんなよ……」
すたすたと歩くヘイヘは穴の開いた本を投げ捨てると懐からまた新たな本を取り出していた。
その本は、アガサ・クリスティー著、『そして誰もいなくなった』だったという。
- 72 :
- なんか面倒な事に巻き込まれ、ロウズとの、そしてレジルとの戦いはより激化していく。
そして、誰も居なくなるのか。それともが地球上を支配するのか。
次回、『U.N.オーエンは彼女なのか?』
じゃなく『ずっと私のターンだッ!』
ゆっくりまっていてね!
- 73 :
- 投下終わり。合唱。
- 74 :
- なんという投下ラッシュ……!
>>73
投下乙です!
それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
- 75 :
- おや、復活してますね……昨夜の鯖不調はなんだったんでしょうか……。
- 76 :
- くそ、投下ラッシュ過ぎて作品があんまり読めてない…
感想は必ず書くから!
- 77 :
- >>73
投下乙です。
合掌ゲーwwww
- 78 :
- ダレモイナイ、ハルカサンニセクハラスルナライマノウチ……。
- 79 :
- 留守にしてる間に投下ラッシュとな。ゆっくり読ませてもらうぜメーン!
>>78
いたって平常運行じゃねーかw
- 80 :
- 大変だ! 師匠がジョインジョインされた姿で発見された!
- 81 :
- じゃあ大丈夫ですね。
- 82 :
- どうせお湯かけたら生き返るだろw
- 83 :
- 人を増えるワカメみたいに……!
- 84 :
- \/
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| |
| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| |_ / \ _| |
|__/ / \ \__|
| ∧ ∧ |
⊂| ∩ |⊃
| ∠__________ |
\ \ / /
\ \ / /
\ \ / /
\___\/__/
 ̄ ̄
でかくてスイマセン。
- 85 :
- そのワカメじゃねぇからw
- 86 :
- なんと……ではこれか
/⌒ヽ
/ .i! ヽ
( .|| )
) .|| ( いいからダシとれよ
( .|| )
) .|| (
ヽ || ノ
ヽ||/
||
- 87 :
- 惜しいね、それは昆布だよ!
- 88 :
- これでどうだ!
_)) / / / / ,.< l | ヽ \ \ /
彳 | | l l |/ \ 、 ゝ l V | 、\ \ /_
| | | l Vrf==ミ.ヽ\` \ l V l } /\/ \
| | | 、 l リ ィ心\ヽ\__, l/ ' /∨ |
| | | トl 、__廴fソ ハ i  ̄ / //=/ / /\
∧ | |ーゝ.\  ̄`` ∠. ィァ≦Zz.ノ ィ / /\
∧\\ `\ , ´心ハ} ´iア // / //
__∧ ヽヽ { 弋_fソ_/ // /ヽx/
|∧ ∧∧ 〉 ` ー=彡 / / ∨
ヘ || | | ,_ ⌒ ∠ノ , ' / / /
〈∧ヘ.| | | {ニニ_ 、_ / / ./ ' /
V〉 ヽ |_| ゝ ` `ミ _ 、_ / _ ´_ ´ //
=\ \\\ 丶、 `ン` / / / .∠/
- 89 :
- …ハム?
確かに金華ハムは出汁が取れるが。
>>72
既に書いてあったら申し訳無いのだけれども、タンクマキナの外見ってどんな感じなんだろう?
ガンヘッド?ヒルドルブ?ドシュカ?
- 90 :
- そういえば、コトブキヤがキット化しますねー<ガンヘッド
- 91 :
- >>89
感じ的にはゲルズゲーとかザクタンクとビルドルブを足して二で割った感じですねー。
具体的に言えばビルドルブとかガンヘッドと違って上半身が完全にあることですかね。
変形は陸戦強襲型ガンタンクみたいに全高を低くする程度のものです。
まあ要するに変形して主砲が一門のガンタンクと思えば簡単ですw
- 92 :
- 二週間……二週間ってなんだっけ……
- 93 :
- あきらめないことさ!
- 94 :
- おねーちゃん!
- 95 :
- 明日って今さ!
- 96 :
- あしたか!?
- 97 :
- だまれ小僧!
- 98 :
- 僕はエヴァに乗らないって決めたんだ!
- 99 :
- 仏像ロボという電波を受信した
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