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2012年6月文芸書籍サロン48: 【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part67【変な女】 (439)
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【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part67【変な女】
- 1 :12/05/22 〜 最終レス :12/06/30
- !. :./: : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : ,'.:.! \:ヽ : :.、:.:.:!:.:.:.ヽ
l: . .!. : : . : : . : : : :.!: : : : : : : : : : :,':./ _ゝ‐-: :|、:.!:.:.:.:.ヽ
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. !: . .! : : : ヘ: : ,x '´: : ト、ヽ . :.:.:!レ ー斗匕て',ラ゙:.:.:.:!., ヽ.:.:.:}
. l. . :.',: : : : :.X: :.ヘ-、:.::fヽ \_,' "ヘっ_..::.ノ.! :.:.:.:k' /:.:.:.i
!. : : ',: ヽ:.´.:ヽ、:.ヘ xz≠ミk ゝ- ´ ! :.:.:.:.Y.:.:.:...ヘ
l. : : : ヽ: ヽ、:.\X〈!ら::..:;.ぅ |:.:.:.:.:.i.:.:.:.:.|.:ヽ
. ',. : : : : ` -`_t xz、 ヘヒr- ´ 、 |. :.:.:.:.:.!.:.:.:.:ト、.:ヽ
. ', : : : : : :.:.:.:.iヘしヽ , ,.l :./:l./:.ィ:ハ.} ー`
', : : : ヽ :.:.:.ヽ ニ > ー "´ イi:.////ソ リ
i : : : : ヽ: .:.:.::.:.:.:..:.:.ヽ、 _ / リ/iイ'
. }: : :.ト: :、ヽ:.:\.:.:.:.:..:.:.:.:.、ニ ― t - ' メ
| : :.ヽヽ:.ー 、_ヽ_Zー‐ ̄ー` i ' ,
l: ハ:トヘ  ̄ j ` - _
// ゙ー / ` - y`ーv、__
/ <: :/: : : : : 入
/レ ' __ r ' ´ ̄ <´: :/: : : : : : : :.i
_ ,ヘ: :.ラ ` Σ: / . . : : : : : : :ヽ
,´: : : :ヽ::} _ ― :.: ̄i . : : ヽ
,' : : : : : : y _ - ―..- ‐  ̄ ..::..... { . . : : i
・前スレ
【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part66【変な女】
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1331631232/
・佐々木とくっくっ避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/8130/
・佐々木とくっくっ避難所(携帯用)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/movie/8130/
・佐々木SSの保管庫
Part1-10まで ttp://blog.goo.ne.jp/sasaki_ss
Part11以降 ttp://www10.atwiki.jp/sasaki_ss/
・涼宮ハルヒシリーズに登場するキャラクター、佐々木を愛でるスレです
佐々木 = 例の変な女
自称「キョンの親友」、中学時代はキョンの自転車に二人乗りで週二回、塾に行く間柄
キョンとは学校内でつるむ回数がクラスメイトの誰よりも多かった
キョンは否定するも傍からみるとどう考えても...
古泉曰く「十人中八人が一見して目を惹かれる、実に魅力的な女性」
恐るべきことに名実共にハルヒと対になる神的存在であることが明らかに!?
・次スレは>>970が立ててくれたまえ。立てられない時は遠慮せずに言うといい。
このスレの住人は快くキミの代役に名乗り出てくれるだろう、くっくっ
・このスレは基本sage進行だ、間違えてageるならまだしも
意図的にageるような行為は慎んでくれたまえ。
- 2 :
- ・リンクを貼るときは直リンは禁止してくれると僕も助かるよ。
・スレタイは佐々木とくっつくではないのであしからず。
・荒らし、それに反応する人への対応は無視するのが一番と昔から決まっているんだ。
・キャラクターを貶めるような書き込みは、荒らし行為なので謹んでくれ。
・どうしてもそういった発言がしたい時は、専用のスレッドを立てて、そこで行うといい。
・妙な書き込みが多数あるときは、書き込み日時の右にあるIDを確認すれば、
同一人物による荒らしかどうかの判断の基準にできるだろう。
・次スレは立候補した人が責任を持って立ててくれたまえ。
ただし、無理な場合はその所信表明を行い、次なる立候補者を集うべきだね。
・次スレへの誘導リンクが貼られるまでは今まで通り書き込みは控えるのが最良の手立てと僕は思う。
あと、SS保管庫の中の人からこんなコメントをいただいている。
判断はみんなに任せるよ。くれぐれもこれで争うことの無いようにしてくれたまえ。
201 wiki [ sage ] 2007/08/26(日) 09:33:29 ID:lc10YmQU
どーもwikiの中の人です。
タイトルにSSってつける件ですが、個人的にはなくても無問題です。
SSかどうかはみればわかるし。
今までどおりでOK。
それよりも、SSにはタイトル(名前欄でも文中でも)と長編なら通し番号をつけてもらえるとありがたいです。
あと、未完成ならそれがわかるようにしてもらえるとなおよし。
. , -‐- 、. , -‐-ー .、
. ,'. / ト、 ヽ ヽヾ
i. ((从ソ 从〉,ハハバゝ
. l. (|┳ ┳i!i| ─ ─i!
.. ,ハNiヘ'' ー.''ノiハ、. - ノ’
. 〈ヾ/゙ノi /〈にづ┓___
_.ノUUZゝぐ___,/__||卅]
~,'(_,(ソ__//゙> .> /ヾ⌒ヾ
(--(ニ二__(ン゙/.(--○<)
. ゞ/__彡' ¨゚¨ ゞ/__彡'
- 3 :
- 前スレが>>947で容量オーバーに達したので新スレ。
- 4 :
- 1乙
赤紫バニーの佐々木さんと黒バニーのハルヒを並べたい
- 5 :
- >>1乙
- 6 :
- >>1乙
くーちゃんネタの続き投下してくれることを望みますm(__)m
- 7 :
- 今日は九曜日
- 8 :
- >>1乙
すげー、容量オーバーしたとはな。
- 9 :
- http://toro.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1331631232/944
__
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-‐ '´ ̄ ̄`ヽ
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/ / / .ィ ./ヽ.Y l .', ヽ
,' ! -/7'Y /|' "´ヽ|. !!i '
! !.トノ リ `ヽ ! !ノ、i !
,'' l l l ▽lllllllllllll▽ l丿 ! リ
!;!l|ヘ!!!! 、_,、_,ililililililj l丿i/
|/⌒l,、 __, イァト|/| |
./ /|___|/ ヽ
|| l 彡,
- 10 :
- >>1おつ
- 11 :
- SS投下すんのは結構だが容量くらい注意しとけよカス
- 12 :
- キョンはいつ佐々木さんに指輪贈るのかな
- 13 :
- しかし容量なんてどこで確認すればいいんだ?
- 14 :
- 携帯では、べっかんこ経由なら見れるね
- 15 :
- 下の方に容量書いている場合があるんだっけ?
- 16 :
- 場合がある、じゃなくていつも書いてるよ
さっき見たら今スレは8KB、前スレは501KBだった
- 17 :
- 佐々木さんは花澤さんがいいな
ISのシャルでの演技は素晴らしい
- 18 :
- >>1乙
前スレのアレなAAを削除してもらったら容量減るかな?
- 19 :
- スレが突然書き込まれなくなってどういう事かと思ったら容量の関係だったのか…
- 20 :
- 今からAA削除しても容量減らないと思われる
- 21 :
- 今日はよく晴れました、お風呂入ったら手の甲が日焼けでひりひりしますですよ佐々木さん
- 22 :
- 佐々木かわいいよ佐々木
- 23 :
- 容量って言うと画面下の方の「掲示板に戻る」の上辺りだな
容量オーバーとかAAスレくらいでしか見ないから全く意識してなかったわ
↓
>>9 KB [ 2ちゃんねる 3億PV/日をささえる レンタルサーバー \877/2TB/100Mbps]
- 24 :
- そりゃあれだけAAがあってSSも改行だらけなら容量オーバーにもなるよ
それに薀蓄話も多くて一人あたりのレスって他より多いんじゃないかな?
それにしてもこれで容量オーバーで書き込み出来なくなったのは二回目か
キャラスレとしては珍しいんじゃない?
また劣化君が騒ぎ出さなければいいがな…
- 25 :
- 佐々木はいらない子
- 26 :
- SS投下してくれる人はありがたい
幸せな佐々木さんはいくらでも見たい読みたい
- 27 :
- 佐々木かわいいよ佐々木
- 28 :
- 雨降ってきたよ佐々木さん
- 29 :
- >>1乙
- 30 :
- 前スレラストの分は>>1のPart11以降 ttp://www10.atwiki.jp/sasaki_ss/に。
『じゃあ、僕はこれから塾に行かなきゃいけないんでね。話が出来て、嬉しかったよ、キョン』
『じゃあな、親友! また同窓会で会おうぜ』
全ての選択が終わった後。呼びかけを背に受け、彼女は正反対に歩く。すいすいと綺麗な姿勢で。
さよならも言わず、想い人と正反対に。
そうして遠ざかったところで、あたしは彼女を抱きとめた。
「離して橘さん」
「佐々木さん」
姿勢だけじゃない、彼女は綺麗だ。
その、いつもとちっとも変わらない佐々木さんの綺麗な微笑みが、何故か目に痛かった。
だからあたしは意を決するのだ。
「泣いてもいいんですよ」
「何のことかしら」
ほんの少しだけ裏返った声。自分でも気付いたのか、それっきり沈黙した。沈黙が痛い。
肩を貸し、なんとか喫茶店へと連れ込むので精一杯だった。
「ホットを二つ」
奥まった席に座らせる。
佐々木さんはただ黙って座っている。これ以上何も言うつもりはない、と纏った空気が言っていた。細い肩が言っていた。
『やっぱりあたしには、佐々木さんが相応しいと感じるのです』
細い肩。あたしは、こんな細い肩にすべてを背負わそうとしていた。
いや、彼女ならきっと耐えてくれたと今でも信じられる。改めて信じられる。だって彼女はこんなにも強いのだから。
不満を感じた時、その世界を壊してしまおうとする神様。
そんな「今の神様」より相応しいと思えた。だって、彼女はどんな事だってただ静かに受け止める。
今改めて思う。
例えば、彼女が彼に泣きつかなかったようにだ。
例えばあたし達「組織」が不満を感じている裏で「機関」が躍進しているように、「不満」の裏には満たされている者がいる。
不満を否定するって事は、どこかで満たされている人を否定することかもしれないでしょう?
彼女は誰もエコヒイキしない、彼女は自分自身さえエコヒイキしない。
ただ静かにあり続ける彼女こそ、神様らしいと思えるのです。
けれど順番が違った。あたし達がすべきは、時間がかかってもいい、まず彼女を止まり木に休ませる事だったのです。
だって彼女はこんなにも弱いのですから。
彼女は自制心が強い? そんなの仮面です。
恋愛なんて精神病と吹きつつも、異性に告白されたら動揺してしまうくらい普通で、
それをきっかけに思い人に飛び込もうとするくらい普通で、思い人の電話を待って眠れぬ夜を過ごすような
思い余って家へ押しかけるような、彼に選んでもらえないと承知の上で強がるような、センチメンタルな気持ちをどこにも隠せないような
普通の少女なんだって、あたしはようやく知ったのです。
- 31 :
- 超能力者だから? そんなの関係ありません。
あたしだって普通だから、普通の女の子だから、見てれば解る。解ってしまう。
むしろ「超能力者」ってフィルターはあたしの視界を邪魔していたんだって、ようやく解ったくらいです。
彼女は自分を律せるから? 人格者だから? そんな彼女の演技や仮面に騙されてた奴は誰?
あたしです。バカじゃないですか? 彼女は小難しいだけのただの少女だったのに。
そんな子にあたしは何を背負わそうとしていたのでしょうか。
ああそうです。
中学時代、あれほど想って来た彼に何故告白しなかったんです?
関係を壊すのが嫌? 違う。関係を壊さない為に「友人」で留めたというのなら、卒業後も連絡を取り続けたはずでしょ?
けれど彼女は関係をそのまま断ち、綺麗な思い出にしてしまった。
それで十分な思いだったから?
違う、今回の事件、いつも彼女の対面に座ってきたあたしは知っている。
彼女本人より、隣に居た彼より知っている。彼女が、どれだけ幸せそうに笑っていたのか知っているんです。
過去の思い出じゃない、演技じゃない、彼女は誰より彼を好きなんだって。
なのに彼女は何故素直に本心を打ち明けなかった? 彼の鈍感さをきっと誰よりも知ってるのに。
涼宮さんは無意識に彼に惹かれている。彼女は自覚している。
でも自覚という最大の利点を彼女は自分で潰した。
『僕は自分自身にあまり興味がないし、もともと大抵の欲求に希薄なタチだし、御輿に乗ったり担ぎ上げられたりなんて
ごめんこうむりたい。騎馬戦だって後ろの下の方が好ましい。他人に迷惑をかけない人生を送れたら
それが一番いいと思っているんだ。僕が最も嫌っているのは自己顕示欲の強い人間と
そんな人を見てつい嫌ってしまう自分の心だ』
『僕がこの世に異議を唱えるような不満はあまりないんだ。率直に言って僕はあきらめている。
不条理な矛盾だらけの世界を作り上げたのは時の積み重ねだ。ちっぽけな誰かが作り変えられるものだと思わない』
彼女は最初から「諦めていた」?
いつもいつも、自分を低く見積もってしまうから。
彼女はいつも夢に向かっている。自分自身の夢というものを持っている。それは素晴らしい事です。
けれど、その為には他の楽しみなんてモラトリアム、ごまかしの猶予期間だと、「夢の為に諦めてしまえる人」だから。
だから彼女の閉鎖空間は明るくて、敵がいなくて、そして痛いほどに静かなのではないでしょうか。
前向きな夢があり、その為に他のものを諦めてしまえる、前向きで明るくて哀しくて寂しい人。
ちょっと変わった価値観をもっているだけの普通の少女だったんだって。
全てが終わって、ようやくあたしにも解った。
あたしだって普通なのだから。
- 32 :
- 彼女は決して「自分を選んで」なんて言わなかった。
例え選ばれないって知ってても、彼自身の気持ちにノイズを与えるような事は言わなかった。素直になってほしかったから。
そうやって自分を律せる癖に、それでも喜びも好意も寂しさも口や態度に表れてしまうような
理性の権化を気取ってるだけの普通の少女だったんだ。
けど、そうして夢の為だと諦めて、彼の為だと諦めて、あなたは何回諦めるの?
あたしは橘京子。佐々木さん付きの超能力者。彼女の内面世界に入れる者、彼女の内面の形を知れる者。
なのに、あたしは彼女の内面をこれっぽっちも理解していなかった。
あたしはバカだ。そして彼女も…………
「佐々木さん」
「……何かしら?」
平静を取り戻した風を装い、コーヒーを傾ける佐々木さんに言ってやった。
「あなた、バカですね」
口の端から垂れたコーヒーを静かに拭い、彼女は韜晦する。
「……急に何を」
「何で彼の事、諦めたんですか」
「諦めたのは神の力とやらでしょう? 橘さんがそれを残念がるのは解るけれど」
残念、そんな韜晦は無駄ですよ。強い味方が付いてますから。
「知らなかったんですか? 神の力と、彼への好意は不可分なんですよ」
あたし達の組織には推測段階に過ぎなかったんですけどね。
けれど古泉さんから色々聞きました。
「彼は一般人よ。そんな力は無いわ」
「ええ。彼は無力な一般人です。でも鍵であるのは否定しないでしょう?」
組織、そして古泉さんに聞いた話を思い出す。
「一般人の彼が鍵になれたんです、ホントは誰だって鍵になれるんです、そうですよ、とっても簡単な事なんです」
鍵を決める条件なんて、とっても簡単な事なんです。
「涼宮さんも一年前に彼に、心を惹かれたから」
その思いが彼を鍵にした。
「だから彼は鍵なんです。無力な一般人であっても、彼は鍵なんですよ」
彼を選んで「鍵」を得たから、高校時代の涼宮さんは幸せになれた。それが中学時代との大きな違い。
中学時代の涼宮さんは「神人でストレスを解消する」ことしか出来なかった。
願望の実現なんて出来なかった、望みが叶えられなくて憂鬱だった。
けれど「鍵」を得たから、高校時代の涼宮さんはようやく願望を叶えられるようになった。
鍵は、力を願望につなげる為の鍵なんです。
大それた望みさえ叶えられる鍵、だから彼を得た涼宮さんは一年前に世界を改変寸前まで追いやり、そして土壇場でひっくり返した。
感情こそが鍵を選ぶ。その彼をあなたも選んでいたのだ。
二人の神が選んだ、ただ一つの鍵。それが彼。
今回だってそう、彼が涼宮さんを選んだからこそ「神人」は彼女を助けたんじゃないですか?
でなければ、宙吊りにされた涼宮さんを、最初から「神人」が助ければよかっただけの話ですもの。
涼宮さんの生死が掛かった状況で、古泉さんがあれほど余裕ぶっていたのだってそうですよ。
藤原さんを殴るより、よっぽど先にすべきことがあったはずでしょ?
あれほど愛おしい団長様なのだもの。
なのに彼に選ばせたのは何故?
きっとそれは信頼。彼は必ず涼宮さんを選ぶはずだと。
そうよ『涼宮さんを彼が選べば、彼女は絶対に助かる』と確信があるから余裕ぶっていたんでしょ?
彼女達の好意が彼を鍵にし、鍵の好意が「力」に形を与えて引き出す。きっとそれが舞台装置のカラクリの一つ。
- 33 :
- 「言われるまでもありませんよね。あなた自身も解っているんでしょ」
だから、彼に何も言われなかったくせに『選ばれなかった』なんて哀しげなんでしょう?
「私は悲しくなんかないわ。彼には最適のアドバイスをした」
あたしは鼻先で笑ってやる。
「あんなセンチメンタルな別れをしておいて何言ってんです。バレバレなんですよ」
ホント、解り易い子だ。なんであんなに神聖視してたんだろう。
こんなに普通で可愛い子なのに。
「涼宮さんは無自覚、あなたには自覚がある。これは神の力、好意、どっちにも当てはまるんですね。なら何で」
畳み掛ける。
「なんでストレートに『好きだ』って言わなかったんです。最高の武器なのに」
バカなんですか佐々木さん。
「勘違いしないで橘さん。私はちゃんと思いを口にしたわ、今言える事を最大限の形にした。それで満足よ」
「本当に満足してるんですか?」
「……キョンは」
珍しく言い淀む。
「キョンは私にとって世界で唯一の人よ。それだけ」
あの別れの時、彼は『判じ物なら間に合っているぜ』と言い放った。
でもあれは彼なりの優しさなんだと思う。佐々木さんは、判じ物、言葉のパズルで、思いを言葉に仕切れない人だから。
だから『回りくどい話はいい。お前の本音を言ってみろ』って背中を押してくれたのだと。
彼女は精一杯の勇気を払ったんだ。
あなたは私にとって世界で唯一の人です、と。
けど告白なんかじゃない、誤解しないで欲しいと言った。彼女は「告白」なんかしなかった。好きだなんて言わなかった。
『イヤだなあ。まるで告白しているみたいじゃないか。誤解されるのは僕の本意ではないのだけれどね』
『誰も誤解などしないさ』
そうして彼は素直に受け止めた。けど彼は気付いているのかしら、どこまで気付いているのかしら…………。
「それ以上言ってどうするの? 好意と鍵が直結するなら尚更。それで得をするのは誰?」
敵意のこもった目線が届く。いつもの仮面じゃない生の感情の視線。
「あなた達は彼の敵よ。それに彼は今の非日常を楽しんでいるわ」
「なら佐々木さんが非日常を作ればいいじゃないですか」
「私には無理よ。涼宮さんみたいには」
「涼宮さんに勝てないからですか?」
繰り返す。
「涼宮さんには勝てないから、あなたは友達のままで良いと思ったんですか?」
テーブルを叩く。なんて理解力の足りない人だろう。
「バカじゃないですか!」
んん、もう!
ああ顔が熱い、こらえて食いしばる奥歯が痛い、きっと頬は変に張ってむくんで涙はぼろぼろ流れてる。
きっと佐々木さん以外も見てる、なんてみっともない、こんなのあたしらしくない
けれど言いたい、こんなになるほど感情が溢れて仕方ないんだ。
あんなセンチメンタルな別れ、あたしは耐えられない。
- 34 :
- 「佐々木さん、貴女は彼女に負けてません! 負けないくらいに綺麗じゃないですか!」
対面に座ってたあたしは知ってる。あなたは誰より幸せそうだった、それを諦めてまで彼の幸せを願えるような人だから
だから、あなたには幸せになってほしい。あなたの心は絶対に負けていないのだから。
見かけだけの話じゃない。心だって想いだって絶対負けてない!
「なのに何で諦めちゃうんですか!」
自信がなさすぎなんですよ!
夢の為? 彼の為? あなたが本当に諦めた理由は何? 何にしたってあたしは言いたい。
理屈で固めてごまかさないで、あなたの望みを言ってみて、と。
「き、か……彼は、綺麗、いや、キョンは涼宮さんの方が好きだもの……」
真っ赤な佐々木さんてレアですよね。こう見えて意外に褒められ慣れしてないんでしょうか。
まあそりゃそうでしょう。でなけりゃ告白一つで動揺なんてしないでしょうし。
「……それ以前に、彼は私の事を女とさえ見ていないわ」
「まあその辺は否定しませんけど」
赤くなったり青くなったり大変ですね佐々木さん。
「でもだからって何なんです」
佐々木さんは敗因があるじゃないですか。敗因を自覚してるなら改善できるじゃないですか。
女と見ていない? そんなの貴女が作ってる枠を、被ってる仮面をとっぱらえばすぐじゃないですか。
素のあなたは普通のちょっと臆病な女の子じゃないですか。
庇護欲たっぷりの彼ならイチコロじゃないですか。
「バッカなんじゃないですか?」
音高く座りなおし、ホットのコーヒーに敢えてストローを突っ込み、音高く吸ってやる。
意味はないけど、なんとなくそんな気分。
ああそうだバカなんですよ。
あなたもあたしも。
「ほら行きましょう。今からだって遅くないです」
俯いた彼女の手を取る。
そうだ。こうやって手を取ってあげるべきだったんだ。
彼女は「夢の為」「彼の為」って諦めてしまう子、自制心が強い子だから。誰かが手を取ってあげるべきだったんだ。
彼もバカだ。バカキョンさんだ。彼女は出来た子だけど、臆病な子なんだって気付いてあげてよ。
涼宮さんの手を取ったように、彼女の手も取ってあげてよ。
親友だなんて呼ぶくらいなら尚更よバーカ!
「素の私を見せろですって?」
彼女は眦を決して、あたしの手を振り払った。
「そんな弱い私なんて見せたくない。彼に頼りたいだなんてフェアじゃないわ」
「なに甘い事、恋はルール無用です! 見せたっていいじゃないですか。好きなんでしょう?」
「好きだから頼りたくないのよ。それにキョンだって望んでいない」
「何をです?」
「そうよ『理性的にありたい』って私の望みを、彼は誰より知ってくれているからよ」
強がるように笑っていた。彼は私を理解しているんだって、得意げに。
だからあたしは言い返すのだ。
- 35 :
- 「はん。そんな風に彼を信じられるんですか? いつもの鈍感だったんじゃないですか?」
「きっと知ってるわ。彼は私の望みを知ってるって信じてる」
「ならあたしは軽蔑しますよ」
また睨まれた。
「そこまで解って、あなたがホントは感情的で弱いと解って、それでもあなたを放り出すような人、そんな人ならね!」
そんなの信頼じゃない、鈍感よりも更に酷い、怠惰で無情なクソ野郎ですよ!
適当なモブとでもくっついてお幸せにってんですか?
「支えるだけが友達じゃないわ」
「へえ、折れそうな人をたった一人で放り出すのが友達なんですか?」
「一人じゃない」
今度は睨んでない、ただまっすぐな目。
「あなたがいるでしょ。橘さん」
「……それズルいです。佐々木さん」
「知らないわよ」
沈黙。それから、佐々木さんはぽつりと言った。
「……涼宮さんだって心から甘えてる訳じゃないわ。強いもの。だから私が素顔になるのはフェアじゃない」
彼は涼宮さんの弱いところをただ悟って、支えてやってるだけ、ですか。
ああもうこの自制心の権化は。
「……なら……えーともっと程よく素直なあなたをというか……」
「出来たらとっくにやってるわ……」
そりゃそうです。
「それにね」
「さっきも言った問題が解決されていないわね。私が彼を奪うというのは神から鍵を奪うという事。
橘さんはつまるところ私を神にしたいだけなんじゃないの?」
「そんなのもうどうでもいいです!」
勢い込んで言ってから、追って理屈を思い出す。
「そもそもですね、そんな感情的な話だと解ったら神様なんて無理です。あたしがさせません」
あたし達の組織は『佐々木さんなら何もしない』から神様に望んだのですから。
けどあなたに望みを叶えさせたい、だからあたしは神様なんて要らない。
そんなエコヒイキな神様なんているべきじゃないんです。
そんなの、ええと、そうです卑怯じゃないですか。
自分の思いを力に任せるだなんて卑怯です。
- 36 :
- 「あたし達は、あなたが『何も欲しがらない人』だと思ったから神様になって欲しかったのです。何もしない神様に。
けれど、本当のあなたはとても感情的な人でした。だから神様になって欲しくないのです。
そして感情的な人だから、あたしは幸せになって欲しいのです」
どうです? 矛盾して無いでしょう?
「思い切り矛盾してるわよ?」
ふふっと佐々木さんは笑声を発した。
「私の幸せがキョンであるから、キョンを得て欲しいというのでしょう? キョンを得るのが神様の条件なんでしょう?」
「え、ああ、……そういえばそうです」
何かぐるぐるしてきました。
いえ何となく解った気がします。
あけっぴろげ気味な涼宮さんの「超能力者」である古泉さんがああであるように
心を隠すのが得意な佐々木さんの「超能力者」だからこそ、あたしは佐々木さんの心が解らなかったのかもしれない。
彼と再会し、あなたの心の鎧が綻びたからこそ、あたしは迷走していたのかもしれない。
ボロボロの今だからこそ、あたしはあなたに近いのかもしれない……。
「けれど、ええと、そうです。本音は本音です」
「なら良かった」
ほぐれるように微笑む。
……ホント、なんで彼はああなんでしょう。
こんな素敵な笑顔なのに。中学時代に見慣れすぎたとかそんなノリですか? それとも……。
「実際問題、神の力とやらは私にとっては障害にしかならないわね」
「言い切りましたね」
「ええ」
にっこりと笑う。
「彼は今の非日常を楽しんでるわ。エンターテイメント症候群って知ってるかしら?」
「ええと確かアリストテレスが」
「くく、私の造語よ。彼はね、非日常が大好きな変人、とびっきりの変な奴なのよ」
どこか自慢そうに笑う。いやきっと自慢なんだろうな、無自覚だろうけど。
「そんな非日常なんてきっと作れない。それに今の私にそんな余裕はないわ、だから私は力不足」
「じゅ、受験でしたら組織を再興、いえなんとかして……」
「それじゃ神の力と同じことよ」
んん。シャットアウト。
「私はしがない凡人だけど、自分の力だけでやり遂げたいと思っているわ。その為にズルしちゃ意味が無いの」
勉強の為に勉強をする日々、けれどそうやって自分を高めるのが嫌いな訳じゃない。
それは彼女の夢の為の日々でもあるのだから。
「だから神の力も『要らない』。私は私の自力で何事も成し遂げたいから」
小さな声で付け足す。もし、自覚して力を得たなら、きっと私は無意識に頼ってしまうから、
そんなに私は自分を信じられはしないから、と。
「涼宮さんは無自覚に上手く使っているというけれど、私は無理。ましてや自覚を持ってちゃ無理よ」
願いが何でも叶うと自覚した上で「何も願わない」なんて無理なのだ、と。
「まあ、そうですよね」
「あら失礼ね」
我ながら前と百八十度違う事を言ってしまったが、彼女は笑っていた。
んんもう、ホント、なんでこんな娘を「神様」だなんて思っちゃったのかしらね。
- 37 :
- そういえば彼との別れの際、彼女は語っていた。
あの「僕」、変人演技にしたって、いまは誰も注目してなんかくれないと。
そう、そういう意図の行為でも「あった」なら、ホントは彼女は目立ちたがりで構って貰いたがりなのかもしれない。
けど、意図しての事じゃない。あれは周囲と距離を作るための行為でもあったのだしね。
それでも「私はここにいる」と構って貰いたがっていたとするなら……。
あれなにこのバカ可愛い生き物。
やっぱり彼女は涼宮さんとよく似ているようにさえ思えてしまう。
ひねくれて矛盾した行為の一つ一つがよく似ている。
ただ少し仮面が頑丈なだけだ。
彼もあたしも私達の組織も、皆々「しっかりした自制心を持つ老成した思考の女」という彼女の仮面に騙されてたのだ。
でも結局、そのせいで彼は「こいつは俺が居なくても大丈夫」だって思っているだろうし
あたし達だって「この人なら神様になってくれる」なんて思ってしまったのだ。
なんて傍迷惑な娘だろう………………いや迷惑なのはあたし達か。
「私は非日常の中にはいけない。涼宮さんにも勝てない。彼に女とさえ見られていない。詰んでるわね」
佐々木さんは寂しげに続ける。
「私は涼宮さんみたいにはなれない」
「でも佐々木さんは佐々木さんじゃないですか」
「……そうね」
「だから、そうね。無理が来たんだと思う。ああやって『僕』を演じていた事も含めてね。
わたしはわたしで、他の何者も演じられない、他の何者にもなれないのよ」
「だからって諦めるんですか」
「さあ?」
そらっとぼけられる。
「癪じゃないですか? あなたは『神の力』なんて舞台装置や『僕』なんて自制心に振り回されただけですよ」
あなたは負けてません。思いの強さも。ゲームルールが滅茶苦茶不利だっただけです!
鈍感なあの人相手に、たった二週間でなんとかしようだなんて。
「諦めることも未来に向かうには必要な事よ」
「そうやって中学時代に踏んだ轍を、二回も踏むつもりなんですか。バカじゃないの?」
きっと二回どころじゃない。彼女はそんな後悔を数え切れぬほど味わってきているんじゃないだろうか。
なのにまた諦める? そんな簡単に振り切れるなら一年前に終わっているわ。
誰か偉い人も言ってたはずだ。
『若い頃はやって失敗したことで後悔するが、年取るとやらなかったことを後悔する』って。
佐々木さんほどの人が知らないはずなんてないはずよ。
閉鎖空間を思い出す。
あの安定しきった内面世界、彼女には「変化する」という気概が欠けているのじゃないかしら。
「ならどうすればいい?」
「そんなの自分で考えてください」
彼の時もそうだ。彼女は大事な選択を他人任せにする……と思ったら笑っていた。
「そうね。だから私は新しい事を覚えていこうと思う」
- 38 :
- 「私とキョンは道を違えてしまった。けど彼を忘れてしまいたい訳じゃない。
いや違う、忘れないのよ。同じ時期に必死で覚えた受験テクニックを忘れても、彼を忘れなかったようにね。
どんなに新しい事を覚えたって、きっともう彼を忘れることなんてない。
だから、だから私は反対の道にだって進める」
くすくすと笑う。
「私は私の夢に向かうわ。それに今の私はダメだって思い知ったもの。だから新しい事を覚えていこうと思う。
もっと素敵な私に変えて行こうと思う。新しい事を覚えてね」
閉鎖空間を思い出す。あの安定しきった内面世界は涼宮さんと衝突して砕けてしまった。
「自分の問題は自分で解決しようと思う。問題は山積みだもの」
「悠長ですね。今度こそ涼宮さんとくっついちゃうかもしれませんよ?」
「ええ。くっついちゃうでしょうね。煽ってきたもの」
言ってくくくと偽悪的に笑う。
「キョンには素直になってほしい。私みたいな後悔を抱えて欲しくない。これも混じりけなしの私の願い」
彼は楽しむべきなのだ。「今を楽しむ事」を彼は選んだのだから、と。
「……そうね、だから本当に諦めた。木曜日に電話した時、もう結果は解ったから」
「そんな、そんなのないですよ」
「いえ諦めたの。だから私は『親友』を止めた」
彼女は彼を『親友』と呼んでいた。中学時代には一度もそんな呼び方しなかったはずなのに。
でも再会してから、彼女は一貫して彼を親友と呼び続けた。
それがとても大事な絆だと言うように。
けれど金曜日にタクシーに乗ろうとした時、そういえば彼女は一度も彼を『親友』と呼ばなかった……。
「ご明察。あれは私のエゴだから」
ぽつりと言った。
「あれは私の醜い独占欲よ。聞かなかったことにして欲しかったくらいに醜い呼び名。情けないわ」
「そんな事ないです。彼とあんなに親しい人なんて他には」
「一年前ならね。でも今はどうかしら?」
けれど彼女はくすくすと笑う。
「でもね、去り際に彼は呼んでくれたのよ。親友、ってね」
「ホント、バカなのよ。キョンも私も。せっかく抑えてたつもりだったのにさ」
初めてぽろぽろと涙がこぼれた。
「あんなセンチメンタルな別れなんて、するつもりはなかったのにね」
堪えられないくらい嬉しそうに、涙をぽろぽろと流していた。
彼の特別になれたのが、とても嬉しかったから。
「ねえ佐々木さん。けど友達、親友、恋人、男だ女だ神だの鍵だの僕だの責任だの、格好付けは一旦脇に置きましょう」
言葉の飾りはどうでもいいのよ。大事なのはもっとシンプルなもの。
そう、今回の事件であたしが奔走したように。
- 39 :
- あたしは今回の事件で「世界の為に」と奔走した。
佐々木さん、彼、涼宮さん、宇宙人に未来人を介して「世界の為に」という壮大な自己表現しようとした。
そう、きっとあたしは言いたかったんだ。「あたしはここに居る」と言いたかったんだ。ううん。言葉の飾りをとっぱらおう。
あなた達だけじゃない、あたしはここにいるのだと、憧れの古泉さんに言いたかったんだ。
今度は佐々木さんに聞いてやろう。とても根本的な望みを。
「佐々木さん、あなたはどこにいたい?」
「私は」
言い淀む。
「私は、彼の傍がいい」
きっと彼女に浮かんだのは、彼と過ごした給食時間。
彼と二人きりの自転車じゃない、クラスメイトのど真ん中で、彼を独り占めにして良かった時間。
彼に悪友が居たって、彼女よりもっと可愛い娘が居たって、彼は彼女と一緒だった。
その時、彼女が本当に望んでいた、たった一つのシンプルな望み。
それでいいのだ。望みが無い人間なんていないのだから。
でも彼女は望みを伝えなかった。それは「彼の選択」のノイズになってしまうから。
彼に選択肢だけ提示して、彼女の望みは伝えなかった。
藤原さんも、古泉さんさえ『お前の選択に意味などない』と彼に言い続けた。先回りして選択肢を潰そうとした。
佐々木さんはどこまでも『キミの選択が大事なのだ』と言い続けた。
佐々木さんだけが『彼の物語』をどこまでも尊重した。
きっと誰もが結末は知っていた。
放っておけば、彼が『現在』を『涼宮ハルヒ』を選ぶなんて誰もが知っていた。
だから古泉さんはどこまでも彼の背中を押した、藤原さんはどこまでも立ちはだかろうとした。
佐々木さんはどこまでも隣に立って、彼を元気付けていた。どんな結末か知ってても、それでも彼に寄りかかろうとはしなかった。
『佐々木に苦労させるくらいなら、俺はこの場で出来る限りの抵抗を見せてやるぞ!』
ああそうだ、だから彼は佐々木さんを選ばなかった。
そうして自分に重荷をかけようとしない人に、好きこのんで「世界を左右できる力」なんて重荷を課す恩知らずはいません。
藤原さんがてぐすね引いて力を使わせようとしている、あたし達が神様として崇めようとしている、九曜さんが解析しようとしている
そんな針のむしろの上に、彼女を座らせようとなんか決してしない。
彼は涼宮さんが「無意識」でも周囲に監視されていることを知っている。
あまつさえ「自覚した神様」なんて、どんな針のむしろに座らされるやら解ったものじゃないんです。
そうです。単に涼宮さんが大事なだけなら、彼女が殺されかけた時点で、さっさと佐々木さんに力を移せばよかったはずなのに。
「……けど、あんまりです」
あたしは不意に腹が立ってきた。
誰より「自分の望み」に臆病な彼女に、こんな舞台を用意したのは誰だろう?
彼女が彼女であろうとするほど、彼女は彼女の望みから遠ざかる。そんな格好つけた舞台だなんて。
神様? いや涼宮さんでは決してない。彼女はバカだ。けど誰より真っ直ぐで素直なバカだ。敵がいれば彼女は直接戦うだろう。
むしろ彼女なら、追いかけて佐々木さんに膝かっくんでもするだろう。
一人で格好つけた退場なんか許さないわよ、と。
- 40 :
- なら一体誰だろう、誰か知っているなら教えて欲しい。そしたらもう一度仲間を呼び出そう。
もう一回ワゴン車を買って、そいつのところに乗り込んでやろう。
……けどいま大事なのは彼女の事だ。
「どうするんです?」
「そうね、さよならなんて言ってあげない事にしたわ」
涙を拭いて、佐々木さんはくくくと笑う。
「私はまたいつか会いたいと思った。いつか私は素直になりたいから。
キョンと涼宮さんの想いが通じてあっても、そこで『非日常』という物語が終わりを告げてしまったとしても
彼も私も人生はまだまだ始まったばかり、青春時代すら始まったばかりでしかない。
人生と言う物語は続く。だから諦めなければ終わりじゃないのよ」
朗らかに、やけくそ気味にすら思えるほどに笑っている。
まるで涼宮さんが乗り移ったかのように。
彼女は韜晦と諦観の仮面を外し、けれど朗らかに笑っていた。
夢と希望の両立を決めた、とても良い笑顔で。
きっと世界中の誰よりも素敵な笑顔で。
「そうね。だからそれでも良いのよ。仮に彼らが強く結びついていたとしても。
中学時代の私は想いを形にすら出来なかった。けれど、今の私は想いをなんとか言葉に出来た。
一歩一歩進めばいい。神の力だなんて舞台装置が終わったら、私はただの女として張り合って見たいわ。
私だって悲しむ為に生きている訳じゃない、喜ぶ為に生きているつもりだから」
「復讐するは我にありですね!」
あれ違ったかしら?
「私は大学に入ったら思い切り遊んでやろうって思いは捨ててないわ。だから未来に取っておく」
今はその為の準備期間って事ですか?
「そうね。それに彼の非日常も長くは続かないわ」
くくくと今度は意地悪く笑う。そう、彼女は笑っている方が彼女らしい。
「私と彼と涼宮さんが望んだから今回の事件が終わったように。きっと彼の非日常も長くは続かないわ。
きっと涼宮さんは日常の方へ向かっているから。でなきゃ宇宙人や未来人達だって
こんな短い準備期間で大騒ぎしないわ、そうは思わない?」
「そういえば」
藤原さんと対峙した際、古泉さんも似たような事を言っていた気がする。
彼女の力はいずれ無くなる。だからエイリアンは大騒ぎしていると。
「ふふ、いずれにせよ彼らには当分会えないわね。
今は彼らの物語で、私は解り易い敵役か、空気を賑わすだけの役割にしかなれないもの。
だから今は、中学時代の私がやりたいと思ったことを貫き通したいと思う。でなければ中学時代の決意が無駄になるもの」
- 41 :
- 「けど、彼も今度は私を忘れないだろうから。長く会えないなら『新しい私』とギャップを感じてもらいましょう。
身体的にも精神的にも、思い切りデジタルな変化を感じてもらいましょう。
次に会う時、全く違う私になっていましょう。だから」
「だから今はもう、会えないわ」
「……本当に面倒な性分ですね」
けど彼女はそんな人だ。
彼女は甘い言葉になんて決して乗らない人なんだ。
例えそれが「神様にしてあげます」って言葉でも、それが「素直になりたい」って自分の望みであっても。
一笑に付してしまって、自分で問題を解決しようとする人だ。
そんなとっても頑固で素敵な人なんだ。
乗り出してばんばん肩を叩き、それからぐっと拳を固めてみせる。
「けど何が起きてもこれからは大丈夫ですよ。なんたってあたしがついていますもの!」
「ふふ、期待しているわ。じゃ」
立ち上がる。
「そろそろ行きましょう。塾を休んでしまった分、自分で補習をしないとね」
「お付き合いしますよ」
「あら出来るの?」
「やってみせます」
正直に言おう、あたしは考えが足りない。
けれど、佐々木さんだって行動力と言うものが足りないわ。二人三脚には向いているんじゃないかしら?
今回、あたしは問いかけた。
ぐいっと両手を差し出して『どうしたいの』って、問いかけた。まるで少女漫画のワンシーンのように。
鉄面皮で臆病な彼女に問いかけて、望みを引っ張り出してやりたかった。
『彼には素直になってほしい。素直になれなかった後悔なんて私だけで沢山だから』
本音の彼女は呟く。彼を諦めてでも貫いたのはその思いだから。
でもそれは本当にあなたの本音?
『……あの人の隣がいい』
彼女は行動、声、態度、全てでそれを叫んでた。
- 42 :
- 捕手
- 43 :
- 『……あの人の隣がいい』
彼女は行動、声、態度、言葉以外の全てで叫んでた。
『なら行けばいいじゃない。叩けよさらば開かれん!』
あたしは少女漫画のように言ってやる。あなたは素直になれば言いと。
けれど彼女は変人だから、笑ってこう切り返すのだ。
『だめよ。自分の力を信じちゃいけない』って笑うのだ。
『現実は感情じゃ変えられない。今、叩いたって開かれない。問題を解決してから挑みましょう』と
自分は問題盛りだくさん。扉を閉ざしているのは期間限定の舞台装置。なら今は、自分の問題を解決しましょう。と
理性の仮面で言ってのけるのだ。
彼女は強い人だから。
現実は感情じゃ変えられない。けれど理性だけで生きていくにはあたし達はセンチメンタル過ぎる。
諦観を捨てて、未来を見据えて、ちょっとだけ図太くなった彼女は笑う。
夢、本音、仮面を無理やり矛盾させない結論に至る。
過去への想いじゃない。彼女は、今、まさに彼を好きなのだから。
解決策がない訳じゃない。彼女は敗因を知っているから、だから諦めることなんてない。
夢の為にすべてを諦めるよりも、ほんのちょっとだけ貪欲になってみましょう。
あたし達はまだ人生のとば口にしかいないのだから。
「そうそう佐々木さん」
「何かしら」
「そうやって彼から好意を奪い取りたいって言う感情、なんて言うか知ってますよね」
「…………恋、かしらね」
なら彼女は『恋』すら知らなかったのね。
諦めてばかりだったのだから。
けれど
「んん、なら今回の事件みたいに、彼の為なら自分は何かを失ってもいいって感情、そっちはご存知ですか?」
返事は待たない。彼女はきっと言わないから、代わりにあたしが言ってやる。
両方合わせて、ようやく一つの感情になるんだって。
「それはね、愛って言うんですよ」
――だから、いつか絶対に伝えるべきだとあたしは思うのです――――――(終わり)
■実際問題
「でも実際問題、どこまで彼は気付いてらっしゃるんでしょうね?」
「さてね。けれど気付いているとしたほうが話は通るわ」
「そんなものですかね?」
ていうか、もし彼があの電話で佐々木さんの好意に気付いたなら、涼宮さんの好意にも気付いたって事で。
「あらそれが何か問題かしら?」
「知ってて言ってるでしょ」
よしんば気付いてないならまだいいですよ。佐々木さんだってある意味救われます。
けど気付いて、それでも涼宮さんに向き合わないなら。彼はちょっとモラトリアムすぎやしませんか?
「さてね? 事情だって考えられるわ」
「でも実際問題、彼の鈍感さって半端じゃないですよ?」
「……それは誰より知ってるつもりよ」
目を反らされたので、ついでに言ってやる事にした。
- 44 :
- 「だってホラ再会の時だってです、せっかく佐々木さんがあんなにオンナノコに決めてたのにですねえ」
「橘さん?」
「だってそうでしょ」
ニマニマと笑ってやる。
「自分を僕だの性差を感じさせないだのって娘の格好じゃなかったですよ。うふふ」
「何のことだかさっぱりだわ」
鎖骨まるだしのミニスカばっちりな格好して何言ってんです佐々木さん。
あんなのそこらの男なら、十人中九人が惚れちゃうレベルですって。あ、残り一人は勿論ホモか親友です。
身体的成長どうこうも思わせぶりじゃないですか? うふふふ。
ホント、言葉とそれ以外が反比例なんですよ。
あ、また目をそらした。
「ねね、今度一緒にショップに行きましょうよ。佐々木さんならもっと似合うのありますって」
「だからね橘さん、私はそんなのより今は勉強をね…………」
ワイワイやりながらあたし達は歩いていく。
そうね、今はこれでいい。
彼女の望みだもの。
今はあたしが止まり木になろう。
けれど、いずれは彼に代わってもらいたいところね。
友達、親友、恋人? たまに「男女と見ると、恋愛関係と考えるなんて……」なんて綺麗事を言う人もいるけれど
それすらも「男と女」に拘った、言葉の飾りでしかないと思う。
誰だって、一番好きな人の、一番近いところにいたいものでしょ。
むしろ「男」と「女」であるのは、現代社会の仕組み上、とても幸運な事ではないのかしら?
)終わり
我ながら長い。佐々木さん的に現状で橘さん相手に動揺するタイミングがあるなら驚愕の別れのシーン直後くらいだろうかと
- 45 :
- おは佐々木さん
>>30
>前スレラストの分は>>1のPart11以降 ttp://www10.atwiki.jp/sasaki_ss/に。
了解っす!
今は時間ないからSSは夕方にゆっくり読ませて頂きます
- 46 :
- >>44
乙です
- 47 :
- 佐々木はいらない子
- 48 :
- >>44乙
こういうの見ると、ほんと驚愕読まなくて良かったと思う
間違いなく破ってちぎって焼き捨ててるだろうから
- 49 :
- http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1337863636/l100
「幸福の科学」 って何故あんなにも佐々木小次郎を敵視しているの?
- 50 :
- 佐々木さんこんばんは
- 51 :
- おやすみなさい佐々木さん
- 52 :
- 佐々木さん、おはようございます
- 53 :
- どっかで佐々木さん小次郎対武蔵ハルヒのフィギュアなんかが出そうな気しないまでもない
立会人:細川キョン
- 54 :
- 佐々木小二郎と涼宮張飛だよ
- 55 :
- そこは佐々木関羽だろ
- 56 :
- . , -‐- 、. , -‐-ー .、
. ,'. / ト、 ヽ ヽヾ
i. ((从ソ 从〉,ハハバゝ
. l. (|┳ ┳i!i| ─ ─i!
.. ,ハNiヘ'' ー.''ノiハ、. - ノ’
. 〈ヾ/゙ノi /〈にづ┓___
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~,'(_,(ソ__//゙> .> /ヾ⌒ヾ
(--(ニ二__(ン゙/.(--○<)
. ゞ/__彡' ¨゚¨ ゞ/__彡'
- 57 :
- 小次郎は武蔵だけじゃなく、武蔵の弟子や立ち合い人達が示し合わせて集団でボコったって話を聞くが、実際はどうなんだろう
- 58 :
- >>56
.lニl i|ヽ
..l|i_|__|> ヽl|
(__), ー
(_____)`ー
(__) -
(___) __,.--
| | l|i ̄
・ .| | ;
.゚;・li|;|;。; ・
. 〃;゚; ;;゚;ヽヾ, -‐-ー .、
. ,'. / ト、 ヽ ヽヾ
i. ((从ソ 从〉,ハハバゝ
. l. (|○:::○i!i| ─ ─i!
.. ,ハNiヘ:::ー:::ノiハ、. - ノ’
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. ゞ/__彡' ¨゚¨ ゞ/__彡'
- 59 :
- >>57
凄い話だな
- 60 :
- 佐々木さん今晩は
- 61 :
- 「やれやれ、暑い日が続くね」
「歩き飲みは行儀が悪いぞ、佐々木」
自販機から缶を取り出した佐々木へと言ってやる。多分に羨ましさ交じりに。
しかしその声音を聞き分けたのか、こいつはニヤリと笑って見せた。
「くく、一口欲しいのなら言いたまえよ」
「俺はただマナーを指摘しただけだぜ」
相変わらず無駄に鋭い奴だ、そう思いながら自転車を押す。
薄暗い塾の帰り道、佐々木と俺はいつものようにバス停を目指して二人で歩いていた。
ああそうだ塾だ。塾にさえ入れられなければな。
「察するに、塾に入れられたことで小遣い削減でもされたってとこかい?」
「何のことやらうさぎさんってな」
こいつ心の声でも読めるのか。
「くく、そういう事にしておこう」
言いながらやけに大きな動作で缶を振る。
「なんだコーヒーか?」
「まあそうだね」
小さな口を缶にあて、すぼめながら飲む。
ちゅるちゅるという吸い音がやけに音高く響いた。
「マナー悪いぞ佐々木」
「くく、飲料が飲料なので勘弁してくれ」
意味不明な事を言いつつ、軽く飲み口を親指でさすると「どうだい?」という顔でこちらに差し出してくる。
おうありがとよ。くれるならありがたく頂いてやろう。
「ん? なんだこりゃ」
くにゃりとした感触があたる。
「くく、なに、コーヒーゼリーという奴さ」
指差す先、缶を見るとまさにその通りだった。
「その味を缶コーヒーという媒体で再現したというわけだ」
「面白い事をするもんだな」
好奇心の強い佐々木らしいチョイスと言うべきか。
なかなか面白いな。
「口の中をごく柔らかい感触が跳ね回る感覚、なかなか面白いと思わないかい」
「おう。こりゃなかなかだ」
やや吸い口を強くして飲むと口の中でゼリーが暴れる。
とろり、くにゃりとした感触が心地良い。
- 62 :
- 「くっくっく、そういえばだが」
「何だ? 改まって」
「いやね」
くすくすと楽しげに笑い、こちらを覗きこんでくる。
「強く口をすぼめ、口内に粘膜を引き寄せる。いわゆる大人のキスとはこんな感触なのかな?」
思わずゼリーを勢いよく飲み込むと、喉の中でカンテンが暴れた。
「した事ねえから知らねえよ」
「くっくっ、そうかい」
佐々木は笑いながら缶を取り返し、わざとなのかこちらを覗きこみながら音を立てて吸い込む。
いつもの偽悪的な笑みが一層邪悪に見えるぞこの野郎。
「おやおや。青春映画ならここで『なら試してみるか?』とでも言うんじゃないのかい?」
「俺もお前もそんなキャラじゃないだろ」
「くく、違いないね」
そう佐々木が笑ったところでバスが来た。
つうかもうバス停か。
「最後の一口はキミに進呈しよう。じゃあねキョン」
言って俺の手に缶を押し付けると、ひらひらと手を振って別れる。
排気ガスを噴出して走り去るバスを目で追いながら、俺は残った甘ったるいゼリーコーヒーを思い切り吸い込むと
傍らの空き缶捨てに放り込み、自転車にまたがり走り出す。
ああ、確かに気持ちいいな。
「そういればアレは間接キスだったな」と思い至ったのは、それからたっぷり一分後の事だった。
)終わり
ゼリーの缶コーヒーは人によっては別に珍しいものでもないけれど
ぶっちゃけコカコーラの自販機にない以上、やっぱり缶ジュースじゃ珍しいものの部類に入るよね
- 63 :
- ハルヒ登場人物でポーカーやったら佐々木さんは何位くらい?
ながもんとえみりんには絶対勝てなそうだけど、人類では1、2を争いそう
- 64 :
- 乙
- 65 :
- >>62乙乙
このキョンはおそらくちょっとだけ耳が赤くなってるなw
自販機のゼリーといえば、コーヒーゼリーよりファンタのふるふるシェイカーを思い出すなあ
あれ美味しかった
- 66 :
- 佐々木さんおはよう
- 67 :
- >>62
乙。関係ないけど果肉入りゼリー缶もあるわな。
>>63
長門は場合によっては手加減してくれるかもしれない。
個人的は喜緑さんと鶴屋さんにはかなわないと思う。
逆にみくる、古泉、谷口あたりなら手堅く勝てそう。
ハルヒに対してはお互いの精神状態で結果が左右される。
国木田には油断してたら負けてしまう程度。
キョンは肝心なときに勝てないと想像。
- 68 :
- >>62
おつです
- 69 :
- >>67
ポーカー、一発勝負じゃなくチップの奪い合いならハルヒにはけっこう勝てそうな気がしてきた
強い手の時だけ大賭けしてきそうだからその時だく即降り、ブラフで削ってけば勝てるかも
喜緑さん鶴屋さんは確かに無理ゲぽいw
- 70 :
- , -‐- 、、
. 〃 ; ヽヾ.
ハミ((メノリ从))
| i(| ┃ ┃ |!|
| トリ、'' ヮ''ノl'!| ファイアーなのです!
. レ゙ {つ旦O リ
. とく_/__l_j>
- 71 :
- 佐々木はいらない子
- 72 :
- 佐々木さん今晩は
- 73 :
- 佐々木さんを早くアニメでみたい
声は花澤さん。バニー巨大フィギュアに、ハルヒとの対比フィギュアなどなど欲しい
- 74 :
- >>70
, -‐- 、、
. 〃 ; ヽヾ.
ハミ((メノリ从))
| i(| -:::::ニニニ||=====l
| トリ、i!ーi!ノl'!|
. レ゙ {つ旦O リ
. とく_/__l_j>
- 75 :
- もう朝なのにまだまだ眠いです佐々木さん……。
- 76 :
- 佐々木は失敗キャラ
- 77 :
- くっくっ
- 78 :
- くっくっくっ
- 79 :
- 佐々木かわいいよ佐々木
- 80 :
- . , -‐- 、. , -‐-ー .、
. ,'. / ト、 ヽ ヽヾ
i. ((从ソ 从〉,ハハバゝ
. l. (|┳ ┳i!i| ─ ─i!
.. ,ハNiヘ'' ー.''ノiハ、. - ノ’
. 〈ヾ/゙ノi /〈にづ┓___
_.ノUUZゝぐ___,/__||卅]
~,'(_,(ソ__//゙> .> /ヾ⌒ヾ
(--(ニ二__(ン゙/.(--○<)
. ゞ/__彡' ¨゚¨ ゞ/__彡'
- 81 :
- 佐々木さん今晩は
- 82 :
- 「ところでキョン、リヤカーはあるのに何故フロントカーはないのだろう」
「そりゃ引っ張る方がラクだからじゃないか?」
実際に引いてみたらなんか解る気がするぞ、直進だって曲がるのだって大変だろう。
「くく、やはり経験に勝るものはないね」
「出来れば得たくなかった経験だがな」
リヤカーを引っ張りながら軽口を叩き合う。
九月とはいえまだ気温が高い。夏服だってのにとっくに汗でびっしょりだ。
「ちなみにリヤカーの起源とは、いわゆるサイドカーにあるという説が強いらしい」
「サイドって言うとバイクの横についてるアレだっけか?」
「そうだね」
リヤカー後部から佐々木のくが始まった。
というか関係あるのかそれ?
「要するに荷台さ。それに日本古来の大八車が融合したらしいね」
バイクの積載力を増やすべくサイドカーが考案され、更にそのサイドカーをヒントに、当時として高価なバイクを使うのではなく
安価な自転車でも引ける荷台を考案、その際に大八車が取り入れられてリヤカーが誕生した、と。
サイドカー由来だから自転車牽引用であり、そして大八車も取り入れられているから
「そう。こうやって人が引っ張るタイプもあるのさ」
中学の授業、奉仕活動の一環として、俺達の班は廃品回収の手伝いをすることになった。
そこで二人一組をつくりゴミをリヤカーで運んでいる訳だが、受験で忙しい三年にまで奉仕活動の授業をやらせる辺り
ウチの中学は進学校とは縁の遠い代物なのだと断言できるな。
せめて三年だけでも除外してくれればいいんだが。
「まったくだ。しかし先生方にも思惑があるのだろうさ」
「どんな解釈すればいいんだよ」
「うん、たとえばの話だが」
リヤカーの後ろから数瞬の間。
俺が主力として牽引し、後ろから佐々木が補助として押す格好なんでな。
「それこそ高校で進学校にでも進んでしまえばこんな授業などないだろうし、あるにしても格段に減るだろうからね」
「平凡な中学は中学なりに、経験だけでも積ませときたいってか」
「かもしれないね」
進学校、か。
「なあ佐々木」
「そうだね」
俺の言葉の半ばほどで、佐々木が一人で頷く気配がする。
「進学校に進む以上、僕はもう当分こんな経験をする事はないのかもしれないね」
「そうだな」
少し前、あの、にわか雨の振った日の翌日だったか。
佐々木は進路を市外の進学校に決めた。俺は平凡に北高だ。こいつとこうして過ごすのも、そう先が長い話ではないと確定した。
「くく、まあこの経験もまた稀有な経験じゃないか。キミだってそう慣れている訳ではないようだし」
「当たり前だ。リヤカーを引くなんざ俺だって初めてだ」
俺の思考を遮るように佐々木が笑い、俺は軽口を返した。
それがお気に召したらしく、なおも笑声が届く。
- 83 :
- 「くく、ねえキョン」
「なんだ佐々木」
「僕は」
珍しく躊躇う気配がする。
「そう、僕はキミの役に立てているかい?」
「言うまでもねえし、そもそもこんなもんは一人で引っ張るのが定石だ。補助がついてるだけでもありがたいってもんさ」
「そうかい?」
なお躊躇う気配がする。
なんでこんなんに迷うのかね。
「それにな、一人でやるより、こうしてお前とバカ話でもやりながらの方が気が楽ってもんだしな」
「そうか。そうかな……おっともう少しだよキョン」
「おう」
俺のダメ押しに納得したのか、後ろからリヤカーを押す力を強めつつ、佐々木は俺にはっぱをかける。
しかしそれがいけなかった。
「いや待て! そこだ、そこだよキョン!」
「なに!?」
火事場に大八車を引っ張る江戸っ子の如く加速したのがいけなかった。
あいにくと目的地はもう傍だったのだ。
「おお!?」
「きゃっ……」
急停止した結果、積んでいたガラクタが崩れて佐々木が右手を痛めてしまい
受験生だというのにいらん苦労をかけることになってしまった。
俺の苦い思い出の一つだ。
高校二年の今でも、もしかしたらたまに夢にでも見ているかもしれないくらいにな。
まあ俺はビューティフルなドリーム以外、起きればさっぱり消えてしまうタイプだから実際のところは判らんが。
「こんなところか。こんな感じでただグダグダやってただけだぞ?」
そう話を締めくくろうとしたところ
「ちなみにこの話には後日談があってね」
「ああそうそう……っておい」
と割り込んだ声があった。
「おいこら国木田。なんでお前がSOS団の部室にいるんだ」
「いやちょっと用事があってね。それより皆が聞きたそうにしているよ? せっかくだからアレも話したらどうだい?」
いつもの飄々とした調子で続ける国木田。だがな。
「断固として断る」
「それでね」
「おいコラ!」
- 84 :
- その後、秀吉の一夜城の逸話もかくやという勢いで荷を片付けたキョンは、嫌がる僕をリヤカーに乗せて学校にとって返してね。
急いで保健室に行かなければならなかったのも確かだが、いやアレは恥ずかしかったな。
振り落とされまいと必死でしがみついていたのをよく覚えているよ。
ま、得がたい経験だったのも確かだけどね。
くっくっく。
「っておい佐々木!?」
「やぁ親友。実はちょっと用事があってね」
ひょいと国木田の後ろから現れた人影が続けたっていうか、佐々木よ何故お前がここにいる!?
つうかぺらぺらと余計な事を語るな親友!
幸い、右手を軽くねんざしただけだったそうなのだが、一時的とはいえ聞き手を使えなくなった責任を取らされたキョンは
翌日の学校で丸一日佐々木さんの右手の代わりをすることになってね。
「それこそ授業中から給食時間まで。ぴったり机を合わせてさ」
「おい国木田! お前は別のクラスだったのになんでそんなに詳しく知ってんだよ!?」
「いいからちょっと黙ってなさいキョン! 古泉くん?」
「お任せを」
さるぐつわを噛ませられた俺の前でこれに留まらず次から次へと中学時代の俺のアレなエピソードが語られることになり
国木田と佐々木が「SOS団特別外部協力者」という形で外部協力者に登録されたのはまた別の話。
しかし国木田、なんでまた佐々木を部室に連れてくるような事態になったんだ?
「別に? 偶然校門でうろうろしてるところを見かけたものだからね」
それから国木田は「心境の変化かな」と呟くと、秘密めかしてた笑みで付け加えた。
「困難に挑むと決めた者同士、ちょっとした親近感もあるしね」
)終わり
安心と信頼の昔話オチ。
- 85 :
- 乙
- 86 :
- 乙!
ちくしょークラスの奴らに交じって冷やかしたいぞこれは
顔全体真っ赤なキョンと耳だけ赤い佐々木さん見てニヨニヨしたい〜
- 87 :
- >>80,56,2
. ”; , -‐- 、. , -‐-ー .、
. ∵,'. / ト、 ヽ. ヽヾ
・・・i. ((从ソ.*.从〉,ハハバゝ
. ∴l. (|l(。)(゚)i!i| ─ ─i!
.. ・” ,ハNiヘ'' ー.''ノiハ、. 一 ノ’
. 〈ヾ/゙ノi /〈にづ┓___
_.ノUUZゝぐ___,/__||卅]
~,'(_,(ソ__//゙> .> /ヾ⌒ヾ
(--(ニ二__(ン゙/.(--○<)
. ゞ/__彡' ¨゚¨ ゞ/__彡'
- 88 :
- 佐々木さんおはよう
- 89 :
- >>84
乙。国木田の暴露ネタは安定してんな。国木田の困難はアレのことだな。
佐々木さんの決意次第では確かに共闘もあり得るかもだがどんなもんやろう。
- 90 :
- 佐々木かわいいよ佐々木
- 91 :
- 佐々木さんは将来鶴屋さんの優秀なブレーンとして辣腕奮いそう
- 92 :
- ____
ィ´:::::::::::::::::ヽ
f::::(::::i::L.i_i_i__l)
j::::::ヽ::| ゚−゚ノ::|
/::::::::|:ノ`天')ν、 佐々木ーーーーーーー小次郎ーーーーー
j::::::::::(,,ノ、_ハ.ゝ)::i
^―--(_ノ ヽ)一
- 93 :
- 佐々木さんと鶴屋さんが交流して、そこに妹ちゃんが混じるようなことあったら、
確実に佐々木さんに新たな呼称が定着するだろうな…。
- 94 :
- >>93
萌える展開だ
- 95 :
- さ、ささにゃん…
- 96 :
- 佐々木ワン
- 97 :
- 佐々木?
誰?それ?
- 98 :
- >>92
____
ィ´:::::::::::::::::ヽ
f::::(::::i::L.i_i_i__l)
. j::::::ヽ::| ゚−゚ノ::|._
. /::::::::|:ノ 。)。)つ(:::::(
. j::::::::::(,,ノ、(i).ゝ)::i.):::::)
^―--(_ノ ヽ)一 . ̄
- 99 :
- おや、久しぶりだね九曜さん。どうかしたのかい?
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