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2013年01月創作発表26: オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd Part2 (325)
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オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd Part2
- 1 :2011/08/09 〜 最終レス :2013/01/06
- オリジナルキャラてバトルロワイアルをするというスレです。
様々な人々の感情が交錯し、一つの物語を作る。
それが、バトルロワイアル。
まとめwiki
http://www10.atwiki.jp/orirowa2nd_ver2/
前スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283567387/
- 2 :
- 状況まとめ
【出場枠】
○愛沢優莉/○藍葉水萌/○板垣退助/○猪目道司/○イリアム・ツェーン/○イロハ/○オーヴァー/○カイン・シュタイン/○片嶌俊介/
○加山圓/○琥珀愛子/○逆井運河/○椎名祢音/○宍岡琢磨/○篠田勇/○白井慶一/○田崎紀夫/○トーマス・A・エジソン/○葉桜加奈子/○花緒璃乃/
○ファンガール・J/○フィクション/○フランツ・O・ブリュデリッヒ/○フランドール・オクティル/○魔王/○真琴真奈美/○御木魚師/○溝呂木桐子
28/30
【一話死亡枠】
●聖澤めぐる/●劉厳/●二階堂永遠/●橘蓮霧
【予約一覧】
>>540
◆BUgCrmZ/Lk氏:イリアム・ツェーン、葉桜 加奈子、フィクション 〜2011/08/11(木) 22:03:00.30
>>543
◆4mUKylJw5c氏:龍造寺さくら、安田智美 〜2011/08/12(金)12:16:11.03
- 3 :
- 前スレが容量オーバーだったので立てました
投下途中の方、気づかれましたら続きをどうぞ
- 4 :
- 投下乙です
時間表記の件(テンプレで明記する?ってやつ)など、テンプレについても一度話し合った方がいいかもしれませんね
それでは続きを投下させて頂きます
- 5 :
- 支援
- 6 :
-
しかしここで異変が生じた。
旋回し再び攻撃しようと考えたところで、少女達が崖から身を投げたのだ。
罠か、もしくは逃走の算段でもあっての行為なのか――
分からないが、とにかく追いかける気力はなかった。
下手においかけて、途中で変身が解除されでもしたら目も当てられない。
今はとにかく休憩しよう。
変身というカードのアドバンテージを活かすためにも。
手に入った武器とスキルカードを使いこなすためにも。
……しかし一人だと休憩がなかなか取れないのではないかということに気がついた。
常に気を張らねばいけない。
ましてやこちらの武器はダイバーズナイフ一本。
あまり悠々とは休めないだろう。
ならば、いっそ同盟も視野に入れるか。
途中で裏切られる恐れはあるが、少なくとも放送までは同盟を組んでくれるだろう。
もっと言えば、誰かと対決するまでは、割と安全だと言える。
切り捨てるタイミングではないからだ。
もしくは、力の強い善人に保護してもらうか。
演技をすれば何とかなるはずである。
一応、まだ硝煙の匂い一つ付いてないし。
そして、やはり期を見て裏切る。
こっちの場合、利害がはっきりしている同盟と違い、相手の善意などという不確かな物に頼らざるを得ないので、出来ることなら避けたいが――
まあとにかく、誰かに会ったら考えよう。
そう思いながら、もう少し安全そうな休息場所を求めて重い足を動かし始めた。
そして、ふと思い立ち崖を覗き込む。
罠にしては時間が経ったし、逃げたのならどの道手遅れだろうから、問題ないと判断してのことだ。
本当ならずっと待っていた可能性もあったのだが――そこまで頭が回らなかった。
ただ、誰かを騙して保護される際、正体を知った者が生きているか死んでいるか知っておきたかったのだ。
「…………いいな」
ぼそりと、呟く。
海面には、二枚のスカーフが仲良く漂っていた。
それはまるで生前の姉妹のようで。
自分はもう愛しい人とあんな風には寄り添えない。
そのことに胸をチリチリと痛めながらも、崖を背に一層重くなった足を動かし始めた。
【一日目・黎明/B−3 山岳】
【椎名祢音】
【状態】疲労(極大)
【装備】ダイバーズナイフ
【スキル】『変身』
【所持品】基本支給品×2、不明支給品×0〜2(確認済み、武器はなし)、不明スキルカード×1
【思考】
1:片嶌俊介以外全員R
2:しばらく休む。場合によっては同盟の結成や保護対象として演技をすることも視野に。
- 7 :
-
☆ ★ ☆ ★ ☆
好きなものが違ったから、いつも一緒には居られなかったね。
それでも二人、彼氏と長続きしなくて、イベント事ではいつも一緒に居たよね。
お父さんもお母さんも必死に働いていたから、いつも二人ぼっちだった。
だけど寂しくはなかったんだよ。
……ねえ。何でだか分かる?
私ね、ずうっとずうっと思っていたことがあるんだ。
だけど、決して言えなかった。
だって、小っ恥ずかしいじゃない。
母の日とか父の日みたいに、姉妹に対して日頃のお礼を言える日があればもっと普段から言えたのにね。
最期だから、言うよ。
一度だけ、もう二度と言わないから。
あんな怖いこと、本当に出来た理由。
最期まで、笑顔を保てた理由。
貴女が傍に居てくれた――それが、理由なんだよ。
今回も、普段でも。
貴女の存在、結構大きかったんだよ。
本当に、ありがとう。
貴女が居てくれて本当によかった。
万事で私をすぐに追い抜く、生意気だけどいつも笑顔で周囲を照らしてくれる、私の大切な妹。
ずっとずっと大好きだよ――――
いつでも私を見守ってくれる、クールに見えて可愛い所も持っている、私の優しいお姉ちゃん。
- 8 :
- 以上で投下終了です。
変身の能力が強すぎる等、問題がありましたらお気軽にどうぞ。
- 9 :
- あと、白井の状態表を変更します。疲労のこと忘れてた……
【白井慶一】
【状態】健康、襟元が血濡れ
を
【白井慶一】
【状態】やや疲労(ハイになっていて忘れている程度)、襟元が血濡れ
に変更します。
個人的に、Wikiにはスキルカードのまとめも欲しいかなあと思ったり。
前スレ落ちたら見直せないですし。
- 10 :
- 投下乙!
一色姉妹切ねぇ…泣きそう
変身する度に疲労困憊するリスクがデカイので十分バランスは取れてるかな
- 11 :
- イリアム・ツェーン、葉桜 加奈子、フィクション投下します
- 12 :
- 私に支給された参加者候補名簿に載っていた名はそれはもう多種多様なものだった。
一国の女王や著名な企業家に軍人や研究者、果ては犯罪者や殺し屋などの裏社会の人間まで網羅しており統一性などありはしない。
強いて言うなら日本人が多いのが気になるところか。あと魔王ってなんだ。
知った名は、個人的な知り合いを含めても約3分の1と言ったところだ。
その中でも厄介なのはやはり裏社会の人間。
状況にかかわらず、襲い掛かってきそうな劉厳のような戦闘狂や快楽殺人者。
そして何より危険なのはプロの殺し屋だろう。
素人殺人鬼が相手ならば襲われたところで後れを取るつもりはないが、玄人相手となるとそうもいかない。
この名簿にある裏のプロは知る限り5人。
まず、未空澄鈴とリリヤ・ハリラのコンビ。
実戦担当の未空澄鈴と後方支援担当のリリヤ・ハリラ。
警護から暗殺まで一通りこなす武闘派で、割と運河みたく何でも屋に近い。
単体であれば何とかならないこともない相手だが、連携を取られると厄介な相手だ。
だが、良くも悪くもプロフェッショナルである二人が、無意味に殺し合いに応じる可能性は低い。
乗るとしても状況に確証を持ってからだろう。
次に、香港マフィアの用心棒。王凰。
一時期失踪していたらしいが、その辺の詳細は不明だ。
中国武道の達人で、いわゆる戦闘狂。
弱者に手を出すタイプではないが、未空リリヤと違い積極的に戦闘行為に応じる危険性は高い。
一対一の格闘では勝ち目はないので、できればRたくはない。要注意。
そして、過剰殺人者オーヴァー。
この名簿に載っている中で、もっともRたくない相手だ。
昔の仕事で一度だけ、奴の仕事が行われた後を検証したことがあるが、あれは人間の所業ではなかった。
屋敷は一面血塗れ、子供もペットも一切の隔てなく肉片と化していた。
現場後を見ただけで分かる、あれは目撃者の始末などという次元ではなく、目についたものすべてRキリングマシンだ。どう考えてもイカれてる。
彼が参加者候補どまりであることを祈るばかりだ。
最後に、フィクションだが。
残念ながら、かつていたとされている暗殺者ということ以外、彼に関してはほとんど情報がない。
言い訳するわけではないが、私の諜報能力がどうこうという話じゃない。
裏稼業に生きる者なら誰でもその名は知ってる。だが彼が何者であるかは誰も知らない。
一度も目撃されたことなく、髪の毛一本すら証拠を残したことがない。あまりの痕跡のなさに、人物像すらつかめない。
奴は幽霊だ、宇宙人説なんて暴論が警察や諜報部のあたりで真面目に飛び出す始末だ。今となっては笑えない話だが。
偶然起こった事故や、誰かが成し遂げた完全犯罪を我々が勝手に一人の犯行と断定し、フィクションという架空の暗殺者を作り上げたのではないかというモノすらいるくらいだ。
完璧すぎるまでの仕事の痕跡だけが彼がいたという証拠である。
要するに、フィクションとは実在を証明しただけで称賛されるUMAみたいな存在である。
「――――それで、ボクに何か用かい?」
そんなUMAみたいな存在が、今、私の目の前に立っている。
なぜこうなったのか、時は少しさかのぼる。
■■■■■■■■
- 13 :
-
行動を開始した直後、私はこちらに近づく人の気配を感じた。
慌てて茂みに身を隠すと、気配を殺し様子を窺った。
「…………です」
風に乗って僅かに声が聞こえる。
話し声だろうか?
だが、それはおかしい、感じられる気配も足音も一人分だけだ。
ならば、独り言だろうか?
「それから……になって…………で」
とぎれとぎれながら、言葉の内容が耳に入ってくる。
少し距離が遠いか。
そっと聞き耳を立てる。姑息などと言うなかれ。
盗み聞きも立派な情報取集の一つだ。
「……なんです……フィクションさん……」
フィクションさん?
予期せず聞こえた不穏な単語に思わずギョッとする。
いや単語としては不穏でもなんでもないのだけれど、名簿に目を通した直後ということもあり、この状況では驚くに値するものだった。
様子を確認するため、そっと茂みから顔をだした。
そこにいたのは制服を着た少女と和服姿の男の二人組だった。
先ほどの声は少女のモノだ。
つまりあの男がフィクションと呼ばれた男という事か。
あれがフィクションなのか?
あれが、あのフィクションか?
遠目から見る限り達人のような凄みや、殺人者特有の狂気といったある種の恐ろしさは感じられない。
というより、あの男からは何も感じない。
気配すらない。
本当に、何もない。
…………試してみるか?
あれが本物かどうか。
本来ならば関わるべきではない。
このまま身を隠してやり過ごすのが正解だ。
だが、正体不明の暗殺者の正体を明かせるかもしれない。
その好奇心に元諜報員の血が騒ぐ。
そっと足元から小指の爪くらいの大きさの小石を拾い上げる。
これなら当たったとしても大事には至らない。
これをぶつけてどう対処するかを見る。
まあ本物のフィクションかどうかの判断までは至らないとしても、少なくとも素人か玄人かの判別はできるだろう。
- 14 :
-
茂みに身を隠しながら、男に狙いを定める。
確実に当てれる距離まで三歩。
外さぬようしっかりと狙いを定める。
残り、二歩、一歩。
距離が近づく。
後、半歩。
「あ、加奈子ちゃん。ストップ」
だが、唐突に男が足を止めた。
「…………っ!?」
予想外の動きに思わず反射的に体が動いてしまった。
勢いよく放たれた石礫は狙いを逸れ、男を掠める事すら無かった。
やられた。
気付かれていたのか。
どう対処するとか、躱すとか躱さないとか以前の問題だ。
外させられた。
「いやまぁそんなに落ち込むほどでもないさ。
攻撃に意識の行くまではうまく隠れてたと思うよ?」
明後日の方向を向きながら、何でもないような声で男が声を上げた。
それは明らかに私に向けられた言葉だ。どう考えてもバレている。
これ以上隠れても無駄だろうと観念し、素直に茂みから姿を出した。
「……私もまだまだということですね」
ひとまず両腕を上げて降参の意を示す。
好奇心猫をR。
彼が本物だというのならこの場で殺されてももおかしくはない。
何せ相手は冷徹で冷酷な伝説の暗殺者なのだから。
どう切り抜けたものか、と思案するが、意外にも相手は対して気にする風もなくこちらを見据える。
濁っても澄んでもいない、ただ底が見えないほど深い青い瞳。
「それで、ボクに何か用かい?」
■■■■■■■■
- 15 :
-
「先ほどは失礼しました。私はイリアム・ツェーンと申します」
改めて二人の間に姿を見せて頭を下げる。
男の正体の見極めはまだ保留だ。
先ほどの件から男が素人ではないのは確かだが、それがフィクションであるということと=という訳ではない。
「私は葉桜加奈子です。よろしくおねがいします」
そう言って、男の横にいた少女がペコリと可愛らしく頭を下げた。
その様子を観察する。
どこからどう見てもただの女子高生だ。
伝説の暗殺者の相棒としてはどう考えても不釣り合い。
私の疑惑に満ちた視線に気づいたのか、男の方が答える。
「協力者だよ、脱出のためのね」
協力者ねぇ。
いったいどんな思惑があるのか。
「脱出のための協力者ということは、あなたは脱出を考えているのですか?」
「当然。こんなところに長居する趣味はないんでね。
さっさと終わらせて、いつも通り家に帰って寝るとするさ」
……本当だろうか?
平和的解決を望んでいるという話は、なんの力もなさそうな女子高生を連れていることから、多少信憑性のある話だが。
終わらせるにしてもあるかどうかも分からない脱出方法を探すよりもフィクションなら”正攻法”の方が早いだろう。
それもそう信じさせるための策かもしれない。
いや、あのフィクションがそんな回りくどい事をする必要があるか?
ちらりと視点を女子高生の方に向ける。
- 16 :
-
「加奈子さん、あなたは彼とはもともとのお知り合いか何かですか?」
「いえ、私もさっきであったばかりですよ?」
「では、彼の名はどうやって知ったのですか?」
「どうって…………普通に名乗られましたけど?」
何故そんなことを聞くのか、といった顔の少女。
その線は薄いと思ってはいたが、既知である可能性は消えたか。
というより、この加奈子という少女。
動きの素人くささといい、これまでの反応といい。
フィクションの事なんて何も知らない完全な一般人で間違いない。
仮にこの男がフィクションを騙る偽物だとしても、こんな相手を騙す必要があるだろうか?
虎の威を借るにも虎の存在をしらなければ借りたところで意味がない。
というか、本物だったとしても正体不明の暗殺者が普通に名乗るなよ。
ため息をついて、男に向き直る。
「単刀直入に訪ねましょう。
あなたが"あの"フィクションなのですか?」
「さぁ? 君が言うのがどのフィクションかは知らないが、そう呼ばれていたこともあるね」
何ともつかみどころのない、はっきりとしない回答だ。
フィクションの模倣犯など星の数ほどいる。彼もその一人である可能性は否定できない。
だが、今のところここにフィクションがいるということを知っているのは、名簿を配られた私だけ。
この場で、その名を名乗る人物がいるという一致は偶然として片づけていいものではない。
もしかしたら本名フィクションさんなんて奇特な名前の人である可能性もあるだろう。
だが、この男は、反応からしてフィクションを識っている。
「それで、ボクが君の言うフィクションだった場合、どうしようっていうんだい?」
試すような声。
まあ、確かに知的好奇心が先行してその後はあまり考えていなかった、というのが正直なところなのだが。
伝説の暗殺者が目の前にいたら何をするか。
考えるまでもない。暗殺者にお願いすることなんて一つだろう。
「そうですね。ここはひとつお仕事でもお願いしましょうか」
■■■■■■■■
- 17 :
-
「仕事の話ねぇ。まあ今は臨時開店R、話くらいは聞くけど。
加奈子ちゃんも待たせてるんだし、出来れば早く済ませてほしいかな」
内容が内容なだけに場所を変え、加奈子さんには少し外してもらった上で話を切り出す。
もちろん周囲の安全は確認したうえで、何かあってもどうにかなる場所に待機してもらった上でだ。
「劉厳という男をご存知ですか?」
「名前くらいは。確か指名手配中の格闘家だっけ?」
「ええ。では、その劉もこの場に参加者として呼ばれてることはご存知ですか?」
「初耳だね。で、その劉を始末しろと?」
「いいえ。ターゲットは劉ではありません。
というより劉はもう死亡しています、つい先程すぐそこの広場で殺されました」
「へぇ」
「偶然ですが私はその現場を目撃したのですが。
その下手人、殺してくれません?」
あえてストレートに告げてみる。
相手の反応を伺ってみるが、表情に変化はない。
つまらなさ気というか、どこか興味なさ気な顔のままだ。
「なんでその男を? 別に君は劉と親しかったってわけでもないんだろ?」
「身の安全のためですね。相手は人間とは思えない化け物でしたから
はっきりって私ではどう逆立ちしても勝てる相手ではさそうですし」
「そんな化け物を殺せって? 無茶を言うね」
「ええ、ですからあなたに依頼するんです。
私の知る限り、あの化け物に匹敵できそうなのはあなただけですから」
これはホント。
運河は……まぁ化け物退治の役に立つとは思えないし。
あの化け物相手だと他の殺し屋連中でも勝ち目は薄い。
というか、王凰やオーヴァーなんかとは直接交渉自体したくない。
「知る限り、か。
まるでほかの参加者が誰なのか知っているような口ぶりだね」
流石に目ざとい。
まあここで変に勘ぐられても面倒だし、隠すようなことでもないか。
「ええ。私の支給品に参加者候補の名簿がありましたので。
その中でもあなたの名前は少し抜けてる」
「なるほど、それは随分と過大評価だねぇ。ボク割と喧嘩弱いよ?」
「ご謙遜を。あなたほど高名な暗殺者はいないでしょうに」
私の世辞のような言葉に男は僅かに眉をしかめた。
「それ、あんまり嬉しくない評価だなぁ。名前が売れるなんて三流の証だし」
「あなたの場合は例外でしょう?」
「いや、どんな理由であれ名前が売れちゃったのは割とショックだったんだぜ?
そんなつもりもなかったしね」
『フィクション』の場合名前の売れ方が他の三流とは理由が違う。
一度や二度ならまだしも、不可能犯罪に近い行為を繰り返されれば弥が上にも話題になる。
ほとんど都市伝説の扱いに近い。
- 18 :
-
「まぁそれでも依頼したいっていうんなら別にいいけど、自分で言うのもなんなんだけど、ボクは結構高いよ?」
「ええ、構いませんよ。ここから脱出できたらいくらでもお支払いしましょう」
「脱出したらってことは、つまり君がこの場で死んだらご破算ということだ。酷いね。
それに生憎、前金制なんだ。それじゃ依頼は受けれない」
「……わざわざ前払いにしなくとも、あなた相手に支払いを渋る命知らずはいないでしょう?」
「そうでもないさ、取立ても面倒だしね」
そういう問題なのだろうか?
ともかく本人的には大真面目っぽいので、譲る気はなさそうだ。
「けど、この場で私に支払えるものなんてありませんよ?
大抵のものは没収されてますし。まさか体で払えとでも?」
「それはいいね。ちょうど手は欲しい所だったんだ、キミは何が出来るんだい?」
つまり、私が使えるかどうか。有能さを示せということか。
彼の目的、脱出につながる成果を。
少し思案し、バックの中からあるものを取り出す。
「それは?」
「劉の首輪です」
どうやってとったのか、なんてくだらないことは互いに言わない。
わかりきったことだ。
「で? それをキミが解析すると。出来るのかい?」
「ええ、情報収集と解析が私の専門分野ですから」
機械工学は専門外だけど、それは言わない。
専門家を探しだすのも予定のうちだ。
「ふーん。まあいいや。前払い分としてはそれでいいよ。
依頼を受けてやってもいい。ただし幾つか条件がある」
「条件?」
「まずひとつ、仕事をするにも道具がなければ話にならない。
とりあえず君の持ってる武器を全部渡してもらおうか」
「武器って……私にこの戦場を素手で行けと?」
「ああ、情報収集が専門なんだろ?
だったら武器なんてなくてもいいんじゃない?」
酷い。
この人酷い。
カツアゲかよ。
「……せめて護身用の武器くらい持っておきたいんですが。
私が死んだらあなたにとっても不利益でしょう?」
「そう? 別にどっちでもいいんだけど、正直あまり期待もしてないし」
……正直過ぎるだろこの人。
いや、単純に私に対する期待感の現れか。
信頼されていない。
初対面なのだから当然と言えば当然なのだが、舐められてるのは癪だが仕方あるまい。
- 19 :
-
「わかりました。劉厳の支給品は回収してありますので、こちらは差し上げます。
落としどころしてはこれでいいでしょう?」
「まぁそうだね。それでいいよ。
あ、地図とか食料とかの日用品はいらないから」
意外と細かい。
しぶしぶながら荷から支給品を見繕う。
「あぁそうそう。君の支給品の参加者候補の名簿。
それももらっていいかい?」
「……ええ、それはかまいませんが?
私はもう確認しましたし中身はだいたい覚えてますから」
「ああ、ありがとう」
幾つかの支給品とともに参加者名簿を手渡す。
「次の条件だけど、依頼を受けたとしても、行動の優先順位としてはボクの目的を優先させてもらう。
もちろん脱出の手掛かりを探しながら索敵はするが、索敵のための索敵はしない。かまわないかい?」
「ええ、それで構いません」
状況が例外的すぎるため、ある程度の妥協は必要だろう。
この場においては彼も巻き込まれた側だ。
この条件は仕方ないところだろう。
「じゃあ最後の条件、というか大前提なんだけど。
実際相手を見て倒せないと思ったら、依頼からは手を引かせてもらうよ」
「ちょっと待ってください……それって、総合すると。
索敵もしなければ見つけても勝ち目がなければ戦わない、ってことですか?
それじゃ依頼を受けたって言わないんじゃないですか?」
というか、そんな話はない。
一つ一つの条件はともかく、積み重なると流石にない。
- 20 :
-
「うーん。そうだなぁ。キミはムサシ・ミヤモトを知っているかい?
生涯無敗の剣豪なんだけど。何故彼が負けなかったか知っているかい?」
いきなり何の話だ?
「さぁ? 単純に強かったからじゃないですか?」
「違うね。それもあるけど、負ける相手と戦わなかったからさ」
……なるほど。
そういう話か。
「つまり、あなたも同じだと?」
「まあ、そんなところ。それがヘイホーってものだろう?
ボクはできない依頼は受けないんだ。その是非を確かめもせず依頼を受けるなんて結構特例なんだぜ?」
特例。
特例ねえ。
「それに、君の条件だって似たようなもんだろう?」
む。確かに。
私が首輪を外すすべを手に入れられる保証はない。
曖昧な報酬に曖昧な報酬。
なるほど、これはイーブンなのだろうが、すでに支給品を渡してしまった分こっちが不利か。
渡してしまった以上、断っても得がない。契約が成立してから渡すべきだったなクソ。
そこまで相手の思惑通りなんだろうが、食えない男だ。
「そうですか…………そうですね。わかりました。その条件を呑みましょう。
ちなみに聞いていいですか?」
「なんだい?」
「コレまで依頼を断った経験は?」
「ん? そうだなぁ、そういえばないね。ま、たまたまさ」
本当に、食えない男だ。
■■■■■■■■
- 21 :
-
「とりあえず、成果にかかわらず、正午に一度落ち合おうか。
場所はそうだなぁ、なるべく人目に付かない方がいいかな」
「でしたら教会はどうです?
市街から外れてますし、別段人が集まるような施設でもないですし」
「そうだね、そうしようか」
と、言うわけで、ある程度の情報交換の後、合流場所を決めてフィクションとはそのまま分かれた。
合流場所に現れてない場合は、まあそういう事なので言うまでもないことだ。
そしてしばらく行って完全に姿が見えなくなったところで息をついた。
「はぁー、緊張したぁー」
エージェントの顔を取っ払い緊張を解いたと同時に、どっと汗が出た。
途中まで訝しんでいたが、しばらく話してて分かった。
アレは、本物だ。
私だって普段の美少女イリアム・ツェーンちゃんとスーパーエージェントイリアム・ツェーンの顔くらいTPOに応じて使い分けてる。
けど、あいつにはそれがない。
あまりにも感情のぶれがなさすぎる。
多分あいつは、あの調子で人も殺せる。
表面はまともだが、根っこの部分で壊れてる。
「まったく、化け物だらけね…………この島は」
かと思えば葉桜加奈子のような一般人もいる。
本当に、選考基準が謎だ。
しかし、我ながらよくぞ度胸とハッタリだけであの交渉を切り抜けたものだ。
報酬はいくらでも払うといったものの、あんなもんもちろん嘘である。
というより、目下就活中の私に金なんてない。
だが、あの場ではあの回答で正しい。
化け物は化け物同士潰し合ってくれればいい。
相討ちになれば支払もせずに済んでさらにベストだ。
- 22 :
-
問題なのはフィクションが依頼を達成し、互いに無事に脱出できた場合にどうするかだが。
無事に脱出できてる時点で最悪とはいえない。
今後を考えられるだけ現状よりましだ。
うまくいかなかったらいかなかったでそれはそれだ。
フィクションが死んだところで私にはなんの痛手でもない。
殺し屋なんてそんなもの。
後腐れなくて結構だ。
渡した支給品の方も劉のモノをまるまる渡したっていうのは嘘で、使いやすいモノは確保してあるわけだし。
例えばこのM36レディ・スミス。女性向けの護身銃だ。
こんな豆鉄砲があの化け物を倒す役に立つとも思えないし、私が持っておくという判断は悪くない。
つまりどう転んでも損はない。
もっとも、取引がなくとも私は首輪を解除するために動くだろうし。
依頼がなくとも見の危険が迫れば彼はあの男をRだろうが。
彼の意識が少しでもそちらを向いて、少しでも早く危険要素を排除してくれるよう動いてくれれば御の字だ。
ちょっとした保険というより、伝説の暗殺者に依頼してみたという思い出依頼である。
どちらにせよとりあえず、私の動きに変わりはない。
首輪解除のために技術者を探して、後ついでに運河も探す。
ああそうだ、あのフィクションに会えたこと、運河に会えたら自慢するとしよう。
【一日目・黎明/C-5草原】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】なし
【所持品】基本支給品×2、不明スキルカード(確認済)、不明支給品0〜1、首輪×1
【思考】
1.参加させられてるであろう逆井運河を探す
2.首輪を解析できる技術者を探す
3.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
※参加者候補の名前は記憶しています
■■■■■■■■
- 23 :
-
「結局、イリアムさんと何の話をしてたんですか?」
「ま、大した話じゃないさ」
10分ほど二人で話した後、戻ってきたのはフィクションさんだけだった。
イリアムさんはそのまま行ってしまったそうだ。
「なんだかお互い知ってる風でしたけど、イリアムさんとお知り合いだったんですか?」
「いや、初対面だよ。少なくともボクは彼女のことなんて知らなかったし」
いつものことながら含みのある言い方だ。
相手を知らないが、相手は自分のことを知っているかもしれない。ということだろうか?
「……ひょっとしてフィクションさんって有名人?」
「ハハハ。いやいや、まさか。
それより加奈子ちゃん、面白いモノも手に入れたんだけど」
そういってフィクションさんが取り出したのは一枚の紙切れ。
「? なんですかそれ?」
「参加者候補の名簿らしいよ。
快く彼女に譲ってもらったものなんだけど、後で一緒に見ようか」
【一日目・黎明/C-5草原】
【葉桜加奈子】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
基本:日常に帰る
1.フィクションと協力して脱出方法を探す
【フィクション】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード(確認済)、候補者名簿、不明支給品1〜3
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.とりあえず町に行って情報収集
2.板垣退助が見つかったら殺せそうならR
3.正午に教会でイリアムと落ち合う
※板垣退助の外見的特徴を把握しています
- 24 :
- 投下終了です
- 25 :
- 投下乙です!
一色姉妹、仲が良くて可愛いなぁ。
そしてねおんちゃんもかわいすぐる。崖を覗き込んだ辺りがぐっときた。
展開によっては、俊介はこの時点で生きていない可能性もあるわけで
それがなおさら切ない。ただ、タイトルが見当たらないのですが…
そしてフィクションが板垣退助と対決するかもしれない…
板垣はヨグスよりも強そうな印象があったけど、
フィクションもかなり手ごわそうで…
対決の行方が今から楽しみです。
- 26 :
- 遅れましたが、投下します。
- 27 :
-
前略、お父さん、お母さん。
元気にしてますか?
私、さくらは元気です。
一時はどうなるかと思った法英高校での生活は、充実しているものになっています。
優しくていい友達に囲まれて私は文武ともに日々の成長を感じているところです。
あ、そうそう。
私、生徒会長になったんだよ!
詳しくは知らないけど、私が特待生だからって理由だなんだとか。
お陰で中々休めない事もしばしば。
けれど、お母さんたちの為にバイトは続けるつもりだし、こっちで一所懸命、私なりにやってくつもりです。
お父さん、お母さん。
私、頑張って二人に安心して暮らせる様に頑張るからね。
だから、こんな娘だけど、これからも支えてください。
それじゃあ、お父さん、お母さん。
今日も行ってきます。
龍造寺 さくら
◇◆◇◆◇◆◇◆
- 28 :
-
「お父さん…お母さん…」
私は手に握られた手紙を見ながら、そう呟く。
昨日の夜に書いた、お父さんとお母さん宛の手紙。
次の日の朝、ポストに投函して、二人に何気ない生活の報告をしようと、安心しきっていた夜。
けれど、そんな朝は私に来なかった。
来たのは、ヨグスという人が私たちに殺し合いを強制的にさせようということ。
その殺し合いに私はたまたま巻き込まれた、ということ。
そして、私は今、この『殺し合いの参加者』としてここに居ること………。
そういえば、法英高校独特の白を基調としたブレザーと『生徒会長』と書いている腕章まで丁寧につけられているらしい。
…わざわざ丁寧に、なにしてくれたんだ、と思っちゃう自分がいたりもする。
さて。
もう一度、手紙を見る。
何故か目覚めた時から私が握っていたこの手紙。
あのヨグスさんが私に意図的に持たせたかどうかは分からないけれど、私にとっては、唯一『日常』を感じれるモノ。
- 29 :
- すいません、遅れました
けど、そんな『日常』は手紙以外私から奪われ、『非日常』が私には与えられた。
理不尽な、迷惑な『非日常』。
私からすれば、無用のもの。
「…とりあえず、これからどうするか考えなきゃ」
私に与えられた多くの無用なもの。
その内の1つがこのリュックサック。
この中には役に立つものが色々入ってるとかなんとか。
試しに中を見ると地図とか、コンパスとか。
それと、コッペパンとか、食べるものが色々。
「コッペパン…小学校の給食以来だなぁ…」
当時の私の家の経済事情は、今よりも厳しかった。
今はまだ毎日食べるものに困るもので済んでいたけれど、昔は住むものさえ、着るものさえどうしようもなくて、給食費なんて払えなかったもん…
それで何度、クラスから苛められて、お母さんたちが泣いて私に謝ったか…
(…お母さん、お父さん。二人はまったく悪くないよ)
私は苛められてお父さんやお母さんが泣くのは見たくなかった。
だから、必死に勉強して今の法英に特待生として入った。
お父さん、お母さん。
二人とも心から喜んでくれた。
それが嬉しかった。
それから、私を馬鹿にする人は居なくなったし、昔に比べればお父さんは職を見つけたし、それでなんとか最低限の生活は出来る様になったからいいんだよね。
- 30 :
- 「帰りたいよ…」
お母さんと、お父さんと。私と。
またいつか、裕福な訳じゃないけど、幸せに溢れる生活に戻りたい。
早く、ここから抜け出したいのに。
―――今の私には、どうにも出来やしない。
私は強くない。
だから、これっぽっちも戦える手段を持っていない。
せめて何か武器を…と思ったものの、出てきたのはビデオカメラ。それと、SDカード。
完全に外れをわたされたんじゃないか。
普通だったら、飛びついてまで欲しい物なのに、今はこのやる気の無さと無力感で手が伸びない。
…私は…
私は結局、なんの為に殺し合いに呼ばれたんだろう。
漫画はあまり読んだ事は無いけれど、私はすぐ殺される、1コマだけしか出てこない役目なのかな。
…運無さすぎるよ、私。
「…あれ?」
と、私はそこであるカードが視界に入った。
見た目は至って普通のカード。
けれど、これは確か…
- 31 :
- (最初言われた、スキルカード…)
効果は期待出来ない。
ハッタリかもしれない…。
でも、こんな不運な私に、残された希望はこれしかない。
…でもせめて、『落とし穴を作る』とか、『相手が不運』になるとか、そんなんがいいなー。なんて思ったりもした。
そう思いつつ。私はカードに書かれた文字をフツーに読み上げた。
「…えーと、『ある魔法少女の魔法能力』?なにこれ、やっぱ外れ―――」
そう言いかけた時、私の体が光に包まれた。
今まで体験した事の無い、眩しい光。
私はおもわず、反射的に目を瞑る。
…数十秒程、続いた光。
収まった頃合いを見て、私はその瞼を開いた。
- 32 :
- 「うー…なんだんだっだろう…さっきの光…」
訳が分からない。
使ったら必ず光るのだろうか。
…まぁ、私からしたら、『ある魔法少女の魔法能力』なんて名前、ちょっと期待はしてたんだけど。
「どんな能力か分からないし、やっぱ…外れかぁ」
空を見上げ、両腕を空へと伸ばす。
気がついたら真っ暗。
夜なのかな?時間の感覚さえ分からないからどうだろう。
私の目に写るのは、空で光る星達と、青色のフリル付きの袖だけ。
それ以外は、なにも…?
「青色のフリル?」
私の制服に、ワンポイントながら水色は使われている。
けど、こんな濃い青色は使われてなかったハズ。
それにフリル?フリルはスカートだけだし…
なにより、法英高校は、普通の白色の袖…。
- 33 :
- 少し止まる。
空から両腕へと視線を下ろして行く。
両腕の袖は、可愛らしい青色を中心とした、何処か爽やかな、けれどそれを感じさせない程度の派手な柄。
腕章は見当たらない。
一先ずそれが肩まで続き、さらに下に目をやる。
胴体。
お姫様みたいなまた青を中心としたまたドレスのような可愛らしい服。
けれど動きやすい様に、全体的にスッキリとした感じ。
ちなみに制服は白。デザインは人気があるとは聞いたけど、ここまでかわらしくはない。
でもスカートは動きやすさを求めたのか膝より上、いやこれ見えるんじゃないかってくらい短く、かつハイソックスを履かされている。
…うちの学校は膝上は禁止なのに。
「…信じられない」
その姿は、端から見たら完璧にお姫様。
『魔法少女』と言われても納得出来る風貌だった。
魔法少女。
漫画の中の様な…女の子の憧れを、今私は体験しているんだ。
「…ん…なに?」
そんな私に、次は頭の中に文字が流れ込んで来た。
どうやら、この魔法能力の説明らしい。
「近接戦闘…?双剣…?魔法…?」
何やら次々と入ってくるので、私の頭はパンク気味。
けど、なんか嘘臭い。
いくらなんでも…魔法なんて…
- 34 :
- 「…一先ず、何処か落ち着いた、建物に入ってから考えよ…」
説明に戸惑い、いまいち状況が掴めない私。
落ち着かせる意味合いを込めて、荷物の中に入っていただろう地図を開こうとした時。
「めぐるーーー!」
「え?ちょっ!」
やけに大きな声。
それと同時に押し倒される私。
下はコンクリート。
…背中が痛いよ。
でも、いきなり何!?
「えっ?えっ?」
あわあわと焦る私を尻目に仰向けの私にまたがっている、声の主が分かる。
年は私と同じくらい。けど、その風貌は最近の女子高生、といった感じ。
化粧はしてないけど、活発で綺麗な印象。
同じ女子高生とは思えない、綺麗な人。
その綺麗な人。私は知らない人だ。
つまり、他人。
(どうして私に…てか、めぐるって?)
考える私を見ず、女の人は大きく息を吸って、口を開いた。
- 35 :
- 「いやー、アタシも驚いたよ!目ぇ覚ましたら殺し合いだもん!マジ困ったよ〜でね、アタシそこいらどうしようもなくうろうろしてたらさ、アンタが居たんだ!嬉しくてさ!つい飛び乗っちゃった!ごめんね!お詫びになんか奢るからさ!許して!」
「あの…」
「あっ!その前にこの殺し合いぶっ潰さないと…でもアタシ、なんか魔法使えなくなっててさ〜、前衛後衛出来ないみたいなんだよね〜。あっ、もしかしたらあのスキルなんちゃらに取られてるかも…めぐる、アンタは…その姿を見ると、大丈夫みたいね。あーんしんあーんしん」
「えっと…」
「スキルにされた時は大丈夫。アタシ、他人の能力取れるスキルになってるからさ!だから誰かに取られてたら、アタシが奪う。それでカンペキ!それでいつものサイキョーコンビが戻って万事休す!…いや、万事解決…まぁ別にいいや!いいよね!別に!うん!」
「…」
「同じ学校の知り合いはいるっちゃいるけど、正直アタシ一人で大丈夫かな〜て思ったけど、めぐるがいるなら心強い!じゃあ、とっととあの馬鹿をぶちのめしに…」
「あの!」
沈黙。
綺麗な女の人は、これでもかと言わんばかりに早口で私に言い寄ってきた。
ついでに今のやり取りは一分おそらく無い。
最近の女子高生って、早口がトレンドなのかな?
…どうでもいいか。とりあえず、伝えないと。
「あの…私…龍造寺です…」
「えっ?」
「龍造寺さくら…龍を造る寺で、平仮名のさくらと書いて龍造寺さくらです…」
「…」
またしても、沈黙が訪れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
- 36 :
- 「いやー、悪かったね!ごめん!この通り!許して!」
ぱちん、と顔の前で手を合わし、私に謝る女の人。
さっきまで嬉しそうだった顔は、何処か申し訳なさそうになっている。
私は「いや、べつに構わないので…」と返した。
すると、また女の人はぱぁぁ、と明るくなって、私に話しかける。
「ほんと!?ありがとね!あっ、自己紹介、まだだったね!私、安田智美!安田財閥の安田に、智美は…うーん…いい例えが見つからないからいいや」
「智美ちゃん…」
女の人、いや、智美ちゃんは明るい調子を取り戻して、何処か嬉しそう。
見た目は普通の女の子。でも、さっき言ってためぐるという人が疑問に残る。
「あの…よかったらで良いんだけど…1つ、いい?」
「ん?なになに?おねーさんに何でも聞いてみなさくら!」
「…めぐるって?」
「…あー」
『めぐる』と聞いた智美ちゃんは、今度は嬉しそうな顔を普通の顔に戻す。
普通の顔はさっきのはしゃぎっぷりを感じさせない、綺麗な顔立ち。
ファッション雑誌の読書モデルになってそうな、ありふれた、親しみのある可愛さだった。
智美はちゃんはその長い茶髪をバツが悪そうに髪を掻きながら私に返した。
- 37 :
- 「…信じられないなら、そう言って」
「うん」
「……アタシ、魔法少女なの。一応、今は能力が取られちゃってるから、『仮』だけどね。あっ、めぐるは同じ魔法少女仲間なのよ」
やっぱり。
そうじゃないと、こんな服装の人に抱きついたりしない。
あ、って事は…
「めぐるって人も、この殺し合いに…」
「居るかも、ね。それはそれで困るけど」
「…」
真剣な顔立ちになる智美ちゃん。
今は、何処か落ち着いた、さっきの女の子とは違う、『戦う少女』の姿。
「めぐるはね…体が弱くて…その魔法能力で生き延びてるもんだったの…」
「…」
「それまで病院にしか居なかったから、友達、アタシだけでね…アタシとめぐるは、毎日闘いながら、楽しくやってた…」
「そうなんだ…」
「それが…どうしてこんな…」
「…」
「あはは…暗くなっちゃったね。じゃ、これからどーしようか…」
「智美ちゃん」
智美ちゃんを呼ぶ私。
今の智美ちゃんは、普通の女の子。
私より、めぐるって女の子の方が、この能力は使えると思う。
だから―――
「能力は、めぐるちゃんと会った時に渡す」
「…」
「それまでは、私が魔法少女になるよ。智美ちゃんが能力を取り戻して、めぐるちゃんと会って、二人がこの殺し合いを止めるまで…」
「…でも!魔法少女は…そう簡単に…」
「智美ちゃん、私。決めたよ!それが、ここで私がやるべき事なんだよ!」
- 38 :
- 「さくら…じゃあ、私がめぐるの能力を…」
「それだと、智美ちゃんの能力は?」
「…」
智美ちゃんは強い、と思う。
戦える自信は無いけれど、私が希望を持つ唯一の道はそれだと思うから。
智美ちゃんに下がらせるのは嫌だ。
私だって、とんでもない事を言ったと思う。
怖いに決まってる。喧嘩なんて、ろくにした事無い私が闘うなんて…
お父さんとお母さんの下に帰る為に進むべき道はこれなんだって。
神様が言ってるみたいなら。
「…分かった。ケド、無理すんなよ」
「うん」
「アタシ…拳銃渡されてるらしいから…いざって時はアタシがなんとかする…」
「うん!」
「いい、さくら…めぐる見つけるまで、死なないでよ」
「智美ちゃんもね」
「…ははは」
智美ちゃんは、バツの悪い顔で、私に笑った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
- 39 :
- …ふざけんな。
魔法少女なんて、これっぽっちも夢がある事じゃない。
あの妖精は、めぐるの魔力を吸い取る為に契約したんだ。
元々病弱なめぐるは、魔法能力を取られたなら、前よりもっと弱ってるはず…。
…めぐる。
頼むからさ。
その服は、さくらが着ている白の魔法服は、アンタが一番似合ってるんだよ。
さくらはこんな事言ってるけど、さくらも守らなきゃならない。
その場の感情に任せた言葉なんて、すぐに揺らぐ。
それは…アタシが一番分かる。
めぐるの前にそう主人公気取って死んでいった奴等が居たから…
ねえ、めぐる。
死なないでよ。
さくらも死なせない。
アタシも、アンタを早く見つけて死なせない。
その為だったら、私はなんだってする。
殺し合いに乗る奴が居たら、さくらの代わりに私がR。
だから、待ってろ、めぐる―――――――!
- 40 :
- 投下終了です
タイトルは『魔法少女になりました!』
タイトルはエロ漫画より
- 41 :
- >>40
志村〜状態表、状態表!
魔法少女コンビに期待したいところだけど
めぐるちゃんはもう死んじゃってるけどどうなることやら
そして全参加者決定
○愛沢優莉/○藍葉水萌/○板垣退助/●一色亜矢/●一色麻矢/○猪目道司/○イリアム・ツェーン/○イロハ/
○オーヴァー/○カイン・シュタイン/○片嶌俊介/○加山圓/○琥珀愛子/○逆井運河/○椎名祢音/○宍岡琢磨/
○篠田勇/○白井慶一/○田崎紀夫/●橘蓮霧/○トーマス・A・エジソン/●二階堂永遠/○葉桜加奈子/
○花緒璃乃/●聖澤めぐる/○ファンガール・J/○フィクション/○フランツ・O・ブリュデリッヒ/
○フランドール・オクティル/○魔王/○真琴真奈美/○御木魚師/○溝呂木桐子/○安田智美/●劉厳/○龍造寺さくら
30/36
- 42 :
- 投下乙です。感想は後日ゆっくりと……
タイトル付け忘れていました、申し訳ありません。
タイトルは『片手だけつないで』でお願いします。
- 43 :
-
うわうわうわ。状態表を忘れていた。
【一日目・深夜/D-2】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】小型拳銃
【スキル】
【所持品】基本支給品、
【思考】
基本:めぐるととっとと会って、早くこの殺し合いをぶっ潰す
1.さくらに無理はさせない
2.めぐるを早いとこ見つける
3.歯向かう奴は倒す
※どの小型拳銃は不明。残弾も不明ですので、後の書き手様に任せまする。
【龍造寺さくら】
【状態】健康
【装備】無し
【スキル】『ある魔法少女の魔法能力』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3
【思考】
基本:魔法少女の代役を果たす
1. 聖澤めぐるに会い次第、能力を渡す
2. 生きて帰る。
※能力の使い方を理解していません。
- 44 :
- ああ、現在位置はD-2か…。
意外と近くに、めぐるは居ますよ……!
- 45 :
- 参加者が出揃ったので現在地と職業まとめ、高校二年多ッ
http://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0090.jpg
【大学生】
琥珀愛子:??大学
田崎紀夫:??大学
トーマス・A・エジソン:??大学
【高校生:三年生】
白井慶一:??高校
橘蓮霧:??高校
【高校生:二年生】
龍造寺さくら:法英高校、生徒会長
加山圓:秋月高校
葉桜加奈子:秋月高校
片嶌俊介:??高校
篠田勇:??高校
安田智美:??高校
一色亜矢:??高校
一色麻矢:??高校
【高校生:一年生】
藍葉水萌:元??高校
【高校生:学年不明】
二階堂永遠:??高校
【中学生】
聖澤めぐる:??中学三年生
ファンガール・J:??中学二年生
【小学生】
椎名祢音:??小学校
イロハ:??
【王族・騎士】
フランドール・オクティル:王女
カイン・シュタイン:騎士
フランツ・O・ブリュデリッヒ:騎士
【社会人】
愛沢優莉:看護師
花緒璃乃:R嬢
溝呂木桐子:ホステス
猪目道司:バー経営者
真琴真奈美:刑事
御木魚師:R
逆井運河:なんでも屋
板垣退助:総理大臣
【無職】
イリアム・ツェーン:元エージェント
フィクション:元殺し屋
宍岡琢磨:元証券会社
【その他】
魔王:魔王
オーヴァー:殺し屋
劉厳:格闘家
- 46 :
- バラエテイに富んでいる…ようでいて、意外と若年、青少年世代が多いのね。
ていうか総理大臣だけ色んな意味でアレ。
- 47 :
- 祢音ちゃんの新規イラスト。次は誰を描こうかな…。
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0390120-1313167683.jpg
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0390119-1313167683.jpg
- 48 :
- >>47
おお、素晴らしい。
小学生は最高だぜ!
同じロリ枠のイロハちゃん希望しておくw
- 49 :
- >>48
そんなに欲しいか? このいやしんぼさんめ!
http://iup.2ch-library.com/i/i0390208-1313175698.jpg
- 50 :
- のwwwwりwwwwおwwww
- 51 :
- のりおwwwwwww祢音ちゃんの次にそれはやめてwwwwww伏兵すぎwwwwww
一文で分かる!生存者30名!
【キャラ一覧】
愛沢優莉…ガチレズってレベルじゃねーぞ!相手いねーし!
藍葉水萌…勇者の汚い方
板垣退助…自由は死すとも、板垣死なず!
猪目道司…マジキチ中年親父。道司さんはめぐるにひどいことしたよね。
イリアム・ツェーン…現在無職。ハローワークに行かせてやって。
イロハ…無口な方のロリ。加山君は健全です
オーヴァー…唯一、真面目なマーダー
カイン・シュタイン…汚いな流石騎士汚い
片嶌俊介…片嶌「やっぱり小学生は最高だぜ!」ロリコンめ!
加山圓…貴重な真面目な人…よかった…!真面目がいて…!
琥珀愛子…性能高杉だろうこのシスター(自称)…
逆井運河…Mr.アンラッキー。でもMr.ラッキー
椎名祢音…唯一のロリ奉仕マーダー。R。祢音ペロペロby片嶌
宍岡琢磨…宍岡「Rとアハーンなんて羨ましい!R!」あれ、違う?
篠田勇…綺麗な方の勇者
白井慶一…慶一「テトリス俺めっちゃ強いよ!あれ、違う?」
田崎紀夫…皆大好きのりおくん!趣味?秘密。
トーマス・A・エジソン…発明王と同姓同名の発明王。(・A・)デンキガホシイ!
葉桜加奈子…加山R。RじゃなくてR
花緒璃乃…彼女にまともな人を会わせてあげて…
ファンガール・J…清々しい程の厨二…嫌いじゃないわ!
フィクション…え?いたの?分かんなかアッー
フランツ・O・ブリュデリッヒ…・O・←顔文字みたいだよね(・O・)キシドーヲツラヌク
フランドール・オクティル…頑張れお嬢様。負けるなお嬢様。
魔王…魔王様マジ生活的。着いていきたい…
真琴真奈美…まなみん「ゴキUZEEEEEE!…でも、守ってあげてもいいかな」
御木魚師…ゴキ「あー、まなみん服従させたいなぁ…そして、こう…グヘグヘ」
溝呂木桐子…32才って実はこんなかじゃ老けてる方じゃ〈この説明は粛清されました〉
安田智美…魔法少女さとみ☆ヤスダ。もうなにも怖くない。
龍造寺さくら…カードキャプターさ○らですね、分かります
死んだ奴らはまた後日
- 52 :
- >>24
おお、イリアムさん頑張ってる!
フィクションは板垣相手に撤退を選ばず戦えるのか……
戦ったらとんでもないことになりそうだw
>>43
さくらちゃんええ子や……
目当てのめぐるは死んでるわけだが、魔法少女コンビは果たしてどうなるやら……
そしてこのロワでは肉弾バトルな暗殺者やらが跋扈してるが、魔法は活躍できるのか!?
>>47
祢音ちゃんえろいよ祢音ちゃん(;´Д`)ハァハァ
>>49
おwwwwwまwwwwwwwえwwwwwwwww
お呼びびじゃねえよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>45>>51
まとめGJ!
個性派揃いながら、結構共通点持った奴らが集まってるってかんじだなー。
- 53 :
- 片嶌俊介、宍岡琢磨、愛沢優莉、オーヴァーの4人を予約します
- 54 :
- 片嶌オワタwww
- 55 :
- 片嶌「三対一か…まったく、ハードな闘いになりそうだな。」
- 56 :
- (勿論性的な意味でね)
- 57 :
- 片嶌が三人を手篭めにする展開か、胸熱
- 58 :
- 祢音「誰にでも激しいんだね…」
- 59 :
- それじゃあ片嶌ハーレムはっじまるよー
- 60 :
- 「待たせたな」
衣服を整えた片嶌俊介は宍岡琢磨に向き直った。
その間も片嶌に突きつけられた銃口は一時も外されることはなかった。
「本当にやるつもりか…………?」
「当たり前だ」
返す言葉に迷いはない。
二人の間に取り交わされた一つの賭け。
宍岡の銃弾を放ち、片嶌が生き残ったら片嶌の勝ち。片嶌が死んだら宍岡の勝ち。
たったそれだけのシンプルな賭けだ。
「そんなことよりも、何か使えるモノはあったのか?」
着替えを待つとともに宍岡は片嶌に十分な時間を与えてやった。
その間に支給品の確認は済んでいるはずだ。
宍岡が全力で攻め、片嶌が死力を尽くし守る。
宍岡にとってそうでなくては意味がない。
「では行くぞ――――ゲームスタートだ!!」
開始を告げると同時に、宍岡は躊躇うことなく引き金を引いた。
対する片嶌はそれよりも一瞬早く。
「――――スキルカード【ブレーキ】!」
己のスキルカードを発動させた。
片嶌を中心に空間が展開する。
空間に囚われた弾丸が勢いをなくし空中で静止する。
カランという音をたて、弾丸が地面に落ちて床を転がる。
それを見て、片嶌は安堵したように息を吐き。
それを見た、宍岡は口の端を吊り上げた。
「――――面白い」
そう言って、宍岡は再度銃口を片嶌に向け直した。
「なっ!? 防いだじゃないか!」
「一発だけとは言っていない!」
タン、タンとリズムよく放たれた弾丸は2発。
片嶌はこれを横っ飛びで回避した。
日頃の練習の成果か、その跳躍力は並ではない。
そこに容赦なく迫る追撃の弾丸。
その数は先ほどと同じく2発。
片嶌は跳びぬいた勢いのまま横に転がり、机を盾にしてその影に隠れた。
「ふん。それで隠れたつもりか?
――――スキル【魔弾の射手】」
宍岡がそう宣言した瞬間、弾丸が青い光を帯びた。
銃弾が放たれると同時に空気の壁を破る炸裂音が響く。
音速を超えた弾丸は、壁となるはずの机を豆腐のように貫き、片嶌の脇下を掠めた。
- 61 :
- 「どうした! さっきのスキルを使って止めてみせろ!!」
宍岡が叫ぶ。
その挑発に片嶌は乗らない。
いや、乗りたくても乗れない。
【ブレーキ】は発動までに能力十数秒のインターバルが必要となる。
回復まであと数秒。
だが、相手の武器がスキルによってライフルの如き威力となった今、机ごと打ち抜かれるのがオチだ。
(……2……1……0ッ)
内心でスキルの回復を確認した片嶌は、意を決し机の影から飛び出した。
それを迎え撃つ、宍岡。
スキル【ブレーキ】。
宍岡もその名から大体のスキル効果は想像できる。
銃弾の勢いにブレーキをかけられるのならば、攻撃を当てるのは不可能だ。
だが、その防御は絶対ではないと宍岡は見ている。
発動から停止までの僅かなタイムラグがあるはずだ。
ならば、その隙を【魔弾の射手】にて強引に貫く――――!
「――――【ブレーキ】!!」
「【魔弾の射手】――――!!」
宣言ととともに互いのスキルが発動し、正確に片嶌の頭部に弾丸が放たれる。
舞う鮮血。
正確に片嶌に放たれた弾丸はその頭部を貫き――――否。
放たれた弾丸は、片嶌の眼前で静止し、額の皮を破り紙一重で静止した。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
その成果を確認するよりも早く片嶌が宍岡を制圧せんと飛びかかる。
全身のバネを使って、拳銃を持つ右腕に両腕を伸ばす。
だが、
「――――甘い」
宍岡は左腕で伸ばされた両腕を掴むと、一本背負いの勢いで片嶌を投げ飛ばした。
そして、そのまま流れるような体術で片嶌の上に馬乗りになると、額に銃口を突きつける。
スキルも意味を成さないゼロ距離。
笑わない男と呼ばれた宍岡が楽しげにニィと口の端を吊り上げて言った。
「弾切れだ」
■ ◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
「いいのかよ、こんなところで使いきって」
「安心しろ、予備の弾ならある」
「…………まさか、それで続けるとか言わないよな」
片嶌の言葉を宍岡はふん、と鼻で笑う。
先ほどの攻防。
宍岡の攻撃を凌げたのは片嶌の力ではなく、スキルの力だ。
だが、そのスキルを偶然引き当て、使いこなしたのは紛れもなく片嶌の力だ。
宍岡はそれを認める。
「いや――――お前の勝ちだ」
そして初めて人間に向けて引き金を引いた瞬間の興奮と、想像やシュミュレーションとは違う思い通りに事が運ばない歯がゆさ。
それはまさしく宍岡の望むモノだった。
- 62 :
- 宍岡にとって、目的など善でも悪でもどちらでも構わない。
これ以降もあの興奮が味わえるのならば、この男の目的の先にそれがあるのならば、宍岡としては言うことはない。
「約束通り、お前の目的に付き合ってやるよ」
そう言って宍岡は手を伸ばした。
あまりにも予想外に素直な行動に、それが握手を求めているのだと片嶌が気づくのが少し遅れるのも仕方のない事だった。
「あ、ああ。よろしく頼む」
片嶌の認識が追いつき、それを受け入れようと手を伸ばす。
その刹那、片嶌は背後でガラスの割れる音を聞いた。
同時に目の前から響くスコンという軽い音。
見れば、宍岡の額からナイフが生えていた。
いや違う、生えたのではない。
どこかからナイフが投擲され宍岡の頭部に突き刺さったのだ。
宍岡の体がゆっくりと後ろに倒れる。
とっさにナイフの飛んできた方向を見れば、そこには凄まじい勢いで迫り来る襲撃者の影が。
息つく暇もなく襲撃者は窓ガラスを突き破り、破片をまき散らしながら机の上に着地した。
その姿を見た瞬間、片嶌の全身を言いようのない悪寒が奔った。
と同時に、片嶌は是も非もなく全力でその場を飛びのいた。
瞬間、それまで片嶌がいた場所を紫電が貫いた。
「がは…………ッ!」
壁に強かに背を打ち咳き込む。
着地など考えている余裕はなかった。
いや、そうでなければすでに死んでいた。
「ハァ…………」
そんな片嶌の様子を見ながら楽しげに息を吐いた襲撃者の口元が釣り上がる。
ヒビ割れた亀裂のような歪んだ笑み。
そこから放たれるのは、さっきまでのやり取りがお遊びに感じられるほどの、圧倒的な殺意。
片嶌はチラリとその足元に転がる宍岡の体を見た。
もう、動きはしない。
脳裏に浮かぶのは確実な死の予感。
「……なんで、こんなこと」
襲撃者は答えない。
宍岡は、人を殺してみたかったなどという男だ。
確かにまともな男ではなかった。
だが、己のルールに沿って負けを認めれる男だった。
少なくとも言葉は通じた。
だが、目の前の男には説得や取引など無意味だ。
まるで野生の獣に襲われたよう。
言語など通用しない。
この場を切り抜けるには、生き残るためには自分の力で何とかするしかないのだ。
机の上に乗ったまま、襲撃者が剣を振るう。
瞬間、穂先より雷光が走り、片嶌の肩口を打った。
- 63 :
- 「がぁ……………ッ!?」
まるで強力なスタンガンでも食らったよう。
電流が全身を駆け巡るような感覚に片嶌の動きが止まる。
この隙に相手が距離を詰めればそれで終わり。
もともと二人の間には接近戦ならば一瞬で決着がつくほどの実力差がある。
だが、襲撃者はそれをしない。
襲撃者が警戒しているのはただ一点、片嶌のスキルである。
放たれる雷光を【ブレーキ】で防ぐことは不可能である。
片嶌が弾丸を防げたのは、あくまで引き金を引かれるタイミングに合わせてスキルを発動させていたからに過ぎない。
弾丸が放たれてからスキルを発動していたのでは、とっくの昔に彼は風通しの良い頭になっていただろう。
だが、この雷鳴の場合は違う。
雷撃を放つのに必要なアクションは刀を振るう事だけ。
放たれる一撃は音速を超える雷速。
剣の軌道をなぞるように放たれる攻撃を回避するには【剣技】のスキルを持つ相手の攻撃を避けるだけの技量が必要となる。
宍岡ならまだしも、片嶌はそんな技量は持ち合わせていない。
だが、接近する動きに対してなら対応は可能だ。
トドメを刺そうと近づいてくる相手に対して【ブレーキ】を使えば、相手の動きを止めその隙に逃げることだって可能だろう。
それ故に、襲撃者は迂闊に近づく真似はせず遠距離から確実に仕留める算段を取った。
そして、その慎重さは片嶌にとって幸運であった。
相手がジワリジワリと追い詰めるつもりならば、その隙に反撃の一手を打つことができる。
宍岡との戦いの切り札としてポケットに忍ばせておいた切り札を取り出す。
本来の支給品の数を知らない片嶌にはあずかり知ることのできない話なのだが、それは椎名祢音が彼に残した支給品であった。
パチン、と雷鳴が弾ける。
それを合図にするように片嶌はそれを目の前に投げつけ、同時に宣言した。
「――――――――【ブレーキ】!」
■ ◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
片嶌がオーヴァーに投げつけたのは閃光弾だった。
投擲されたモノが閃光弾であると瞬時に判別したオーヴァーは、咄嗟に両目を手で覆った。
だが、その程度で閃光弾の光は遮断しきれなかった。
視界が白に染まり、閃光が目を潰す。
光の晴れたころには既に片嶌は逃げ仰せた後だった。
だがそれはおかしい。
あの状況で閃光弾を使えばその被害は片嶌にも及んでいるはずである。
目を焼かれた状況で動くことなどできない。
だというのに、片嶌が逃げる事が出来たのは何故か?
スキル【ブレーキ】は自らに向かう物理現象を停止させる能力だ。
それは光とて例外ではない。
そして、何より重要なのは、制止するのは自らに向かうモノに限定されるという事。
つまり、相手に向かう光は停止しない。
その応用によっては、その範囲にいながら自らは閃光弾の威力を味わうことなく一方的に相手にその被害をもたらすことが可能なのだ。
- 64 :
-
「……………ちっ」
オーヴァーが舌を打つ。
目を細めてあたりを見渡してみる。
完全に見えないという訳ではないが、物体の輪郭が朧気に判別がつく程度まで視力が落ちている。
すぐに快復するとは思うが、ひとまずオーヴァーは逃げ出した片嶌を追うのを諦め、冷静に快復を待つことにした。
【一日目・黎明/E-2学校】
【オーヴァー】
【状態】視界不良
【装備】サンダーソード
【スキル】『剣技』『平賀源内のエレキテル』『雷剣士』
【所持品】基本支給品
【思考】
1.視力が戻るまで待機
2.この場にいる全てを皆殺し
3.最後にヨグスもR
【宍岡琢磨 死亡】
※宍岡琢磨の支給品はその場に放置されています
※サバイバルナイフは宍岡琢磨の額に刺さっています
※スキルカード【魔弾の射手】は宍岡琢磨の死体の上にあります
■ ◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
愛沢優莉は一部の欠けた奇妙な閃光を見た。
光が放たれているのは確か地図で言うところの学校のある方角だ。
何事かと視線を向ければ、そこには必死の形相で走りくる男が一人。
男は優莉の姿を確認したかと思うと、僅かに進路を変更し駆け寄ってきた。
「……はぁ……はぁ……はぁ……っ!
殺人鬼がいるんだ! ここにいちゃ危ない! 逃げよう!」
そういうや否や男は優莉の手を取って走り出だした。
優莉は有無を言わせぬ急展開にあっけにとられ、引かれるままに駈け出してしまった。
手を引く男、片嶌からすれば、いつ追いついてくるとも知れない殺人者の恐怖に冷静な判断を下せる余裕はなく。
ただ偶然出会った目の前の女を殺人鬼の脅威から逃がしたいという純粋な親切心だった。
自らが手を引く女もまた殺人者であることも知らず、片嶌は走る。
そして彼の受難は続く。
- 65 :
- 【一日目・黎明/F-2橋の手前】
【片嶌俊介】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)
【装備】なし
【スキル】『ブレーキ』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)閃光弾×2
【思考】
1.この場から離れる
2.弥音を探す
【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】『病の呪い』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
0.え? なに?
1.殺し合いに乗る
2.F-4病院を目指す
【備考】
※ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。
- 66 :
- 投下終了
片嶌ハーレムといったな、あれは嘘だ
- 67 :
- 投下乙!
ああ宍岡…片嶌生き延びやがったww
元が一般人でも工夫次第で対抗できるのがいいな
新スキルゲットでオーヴァーがますます強くなられたようだが…
なんか危ない娘と組んじゃった片嶌の明日はどこへ
- 68 :
- 投下乙!
流石ロリコンの名前は伊達じゃないな…
オーヴァーさんはいつまで魔改造されるのか…
そしてついに30人の内から死者が…
宍岡さん南無南無。
- 69 :
- うへへ。
ちょっと時間が出来たので少しばかり手間掛けた片蔦ハーレムの支援絵でも先に投下してやれ、と思っていたら、SSの方が先に投下されてしまった、ってな寸法でさぁ。
http://uproda.2ch-library.com/416922X1k/lib416922.jpg
しっしーは長生きできるキャラでもなかった感あるけど、もはやこれは狂気の差。
しかしこの男、つい先程までRとナニしていた変質者とは思えないイケメンぶりである。
- 70 :
- Not Found…
- 71 :
- 失礼、テムレイ。
ちょとミスったので改めて。
http://uproda.2ch-library.com/416926kOL/lib416926.jpg
- 72 :
- おお、GJ!これはすごい!
誰とは言わんがジョジョキャラにしか見えないお方が……w
- 73 :
- うおおお…超恰好いい…GJ!
とりあえずイロハちゃん置いときますね
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0393717-1313511731.jpg
- 74 :
- あんたら凄いな、速度もはええw
R!R!
- 75 :
- >>71
>>73
四人ともかっこいい! 宍岡さんは完全にジョジョww
そしてイロハちゃんかわいい! ペロペロ
>しかしこの男、つい先程までRとナニしていた変質者とは思えないイケメンぶりである。
まあなんだかんだでまっとうな主人公属性もってるのこいつと篠田くんと加山くんくらいだかなぁ
片嶌はロリコンだけどw
- 76 :
- 初期スキルカード
作ってて気づいたけど安田智美のスキルカードが抜けるね
多分作中描写からブレインイーターだと思うけど
愛沢優莉【病の呪い】
藍葉水萌
板垣退助
一色亜矢
一色麻矢
猪目道司【未来予知】
イリアム・ツェーン
イロハ
オーヴァー【平賀源内のエレキテル】
カイン・シュタイン【その歌をもて速やかに殺れ】
片嶌俊介【ブレーキ】
加山圓【五感強化】
琥珀愛子【復讐するは我にあり】
逆井運河【二分の一!】
椎名祢音【変身】
宍岡琢磨【魔弾の射手】
篠田勇
白井慶一【<<]]巻き戻し】
田崎紀夫
橘蓮霧【剣技】
トーマス・A・エジソン
二階堂永遠【ネクロマンサー】
葉桜加奈子
花緒璃乃【光あれ!】
聖澤めぐる
ファンガール・J
フィクション【ブラックアウト】
フランツ・O・ブリュデリッヒ
フランドール・オクティル
魔王
真琴真奈美
御木魚師【パブリックエネミー】
溝呂木桐子
安田智美【ブレインイーター】?
劉厳
龍造寺さくら【ある魔法少女の魔法能力(めぐる)】
- 77 :
- 未登場スキル一覧
【●REC】
【FaceBook】
【GPS】
【ある魔法少女の魔法能力(智美)】
【エターナルフォースブリザード】
【エネルギードレイン】
【ゴッドハンド】
【シュレーディンガーの猫】
【ハニートラップ】
【マッチセラー】
【ものまね】
【加速装置】
【我が胎の愛すべき蠱】
【給仕募集】
【血流操作】
【剣豪】
【航海術】
【高速思考】
【骨葬の儀式】
【殺人読本】
【自己再生】
【自動蘇生】
【赦されざる者】
【守護神の虫唄】
【重力操作】
【植物操作(プラントオペレート)】
【神の声】
【追憶の書庫】
【痛いの痛いの飛んでいけ】
【飽食の晩餐】
【密毒】
【落とし穴】
【霊媒】
- 78 :
- そういやよぐっさんはメンバー確定したらお知らせするって言ってたけど、名簿はいつ配られるんだろう
やっぱり第一放送のタイミング?
- 79 :
- もう確定しているといえば確定してるけど、タイミングとしては区切りの方がいいかもね
- 80 :
- 藍葉水萌、篠田勇、魔王を予約予約。
- 81 :
- 魔王様の運命やいかに?
↓魔法少女に変身した龍造寺さくら。
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0398152-1313931249.jpg
- 82 :
- なんというプリキュア
そして相変わらず無駄にエロいっすw
- 83 :
- さくらカワイスギワロタ
いづも乙です!
予約ですが、どうも筆が進まないので破棄します。
また機会があれば、予約させてください。
- 84 :
- ファンガール・J、田崎紀夫、猪目道司の三名を予約します
- 85 :
- ではでは↑の予約投下します
- 86 :
-
退屈だ。
そう思いながら、私は一人何もない空間で寝転ぶ。
何もないというのは正確ではないし寝転ぶというのも正確ではないか。
ここはとある少女の意識の中。
私は意識の海を漂うクラゲのようなものだ。
意識の海には全てがあり何もない。
肉体など存在しなければ、当然寝転がるなどという行為もできない。
それが私二階堂永遠という存在だ。
この会場の人間すべてをゾンビにしてやるのが私の夢であり役割なのだが。
まだまだゲームは序盤。
死体が増えるまでやることがないというのが正直なところだ。
そうだな、退屈しのぎに本でも読もうか。
意識の海にずらりと並ぶ、記憶という名の彼女の本を。
■■■■■■■■
未来人か。
なるほどなかなかに面白い。
もっとも彼女からしてみればその自覚はなく、自分が未来人なのではなく周りが過去人なのだろうけど。
だけれど未来と言っても世界は思いのほか劇的な変化はなく、現代と対して代わり映えしない。
技術水準は向上し、世界は惑星を飛びだし宇宙へと向かっているようだが、変なチューブを走る車もないし、人々はギンギラな全身タイツも来ていない。
なんとも夢のない話だ。
彼女は未来の生活水準からみてもそれなりに裕福な家庭に育ってきたようだ。
そのせいか欲しいモノを欲しいままに与えられ、ずいぶんと甘やかされて育ったみたいだねぇ。
その中でも興味を持ったのはヲタク文化か。いい趣味だ。
彼女の時代ではすでに衰退した文化なようだから、読み漁っているのはヲタク文化が最も発展した現代の資料が主なようだね。
両親が歴史文学を調査する職に就いていたこともあり、資料確保には事欠かない環境だったようだしね。
だが、その一方で学園生活では、その奇特な言動のせいで周囲から浮いていたようだね。
人間が外れたものに冷たく容赦ないのはいつの世も変わらないということか。悲しいねぇ。
もっとも、本人は気にしてないようだけれど。
いや、正確には気にしていないふりをしていただけか。
読み漁った冒険世界に意識をやって、本当の自分は別にいるという設定を創り。
だから、こんな馬鹿な奴らと付き合う必要はない、そう思い込んでいるようだ。
だからと言ってわざわざトイレで昼食をとる必要はないと思うのだけど、よくよくわからないね。
彼女のパーソナリティとしてはこんなところか。
おっと、少し熱中しすぎたか。
いつの間にか、彼女は二人組の男と接触したようだ。
脂ののった太った男が田崎紀夫。小柄な中肉中背の男が猪目道司だったか。
確か田崎はごく普通の大学生だが、猪目の方は連続殺人犯だったはずだ。
ふむ。友好的な顔をして二人一緒に並んでるあたり、なるほど、猪目はそういう道を選んだか。
なかなか面白い展開だ。
- 87 :
- 「それ何のコスっすか? オッドアイとかマジパネェ、マジパネェっすよ!」
「ふふふ。この漆黒の力を秘めた我が衣に目をつけるとは、なかなか見どころがあるじゃないの」
見れば、興奮気味な田崎と彼女が会話を弾ませていた。
まあ、田崎からすればコスプレ女子中学生ってだけで崇めるに値する存在なのだろうけど、このノリで迫れば普通の女の子はドン引いちゃうだろうね。
そうでなくとも、いわゆる思春期の女の子というのは田崎のような典型的なヲタクは嫌いそうなものだが。
しかし彼女は田崎に同類の臭いを感じ、いわゆる同志に出会えたことに彼女は内心でかなり喜んでいるようだ。
未来ではそういう趣味は希少なようだからね、その手の仲間に出会えたのは初めての経験なのだろう。
表には出さなようにしているみたいだけどその喜びは割とバレバレだ、まったくかわいいものだ。
しかし、私が言うのもなんだが、彼女はいささか警戒心が足りないな。
彼女の心理的には、いつも妄想していた状況が現実になっている興奮状態が半分、殺し合いという恐怖を誤魔化すための虚勢が半分と言ったところか。
どちらにせよ周囲に対する注意力が足りなさすぎる。
ほらほら、キミが田崎と盛り上がってる最中で、猪目がキミの肢体を見ながら下卑た笑いをしているよ。
「盛り上がってるところに水を差してわるいんだが。
状況が状況だ、話を戻していいかい?
というより既に死者も出ている。つい先ほど俺たちも少女の死体を見たところだ。
間違いなく危険人物がいるヤバイな状況だ。
こんなところで単独行動は危険だ、なるべく集団行動をとった方がいいと思って俺と彼は行動を共にしているんだが。
どうだい、キミも俺たちと一緒に行動しないかい?」
危険人物がいる、か。
よく言う。
大したタヌキだ。十中八九君が殺したんだろうに。
それにしても、女の子の死体か。
興味をそそられるね。
今はどうしようもないけど。
「ふん。時空の使者であるこの私の下僕として共に行きたいというのならば、考えてやらなくもないわ!」
「ありがとうございます!」
いやはや、テンション高いね二人とも。
猪目は二人のやり取りを見て若干引いているけども。
まあ正常な反応だ。
一番の異常者であるこの男が正常というのも皮肉な話だけど。
- 88 :
-
「……そ、そうかい。まあなんにせよよろしくな。お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんじゃないわ。私はファンガール・Jよ!」
やれやれ。
まんまと話の流れは猪目のペースだね。
彼女は変な興奮状態になってろくに判断力が働いてないみたいだし。
まあ、初めて趣味を共有できる人間が現れたのだから、普段の彼女の生活を思えば分らないでもない、かな?
まあ、私としては彼女に死なれたところでスキルカードに戻って次の所有者を待つだけなのだけど。
少しだけお節介を焼いておこうか。
私としても、憑りつくならむさい男よりは女子中学生の方がいいしね。
まあ、今の状態の私にできる事なんて、無意識に介入する程度なのだけど。
少しだけ彼女の意識に介入する。
これで彼女はなんとなく猪目に対して受け入れがたい感情を抱くようになったはずだ。
まあ、なんとなくはなんとなくに過ぎないので、明確な意思には逆らうほどの強制力はないけれど、今私ができるのはこの程度。
後は彼女次第かな。
ま、どう転ぼうと構わないけれど、せいぜい退屈させないで欲しいね。
【一日目・黎明/C-7林】
【ファンガール・J】
【状態】健康
【装備】S&W M10(5/6)
【スキル】『ネクロマンサー』(浸食率11%)
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、果物ナイフ、予備弾薬(48/48)
【思考】
1.とりあえず田崎達と行動する
※猪目がなんとなく気に食いません
【田崎紀夫】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.ファンちゃんマジパネェktkr!
【猪目道司】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】『未来予知』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品2〜4
【思考】
1.生き残って自由になる。
2.ファンガールをどうするか?
- 89 :
- 投下終了です
誰かほかに書いてる人はいんのかね〜
- 90 :
- 投下GJ!
早速二階堂さん視点かー、その発想はなかったw
電波とバカと異常者なはずが一番の常識人パーティーか、愛子さん達を彷彿とさせるなw
しかしあっちと違ってこっちの異常者は内に牙をむく可能性があるから、これからどうなることやら……
書きたいけどネタが出ない……
ネタはあるけど書かれたばかりのロリコンだし、あいつばっか進めてもなぁという気持ちがあるのだよ……
- 91 :
- 投下乙!
浸食率低いと何も出来なくてニート状態な二階堂さんマジ可愛い
何気にファンガールと紀夫がいい感じだぞw
ロリコンは…別に進めてもいんじゃね?ネタになるし
- 92 :
- サルベージ
- 93 :
- とりあえずさくらペロペロ
- 94 :
- 一週間待って書いてる人いないっぽいんで
篠田勇、魔王、板垣退助、藍葉水萌、真琴真奈美、御木魚師、トーマス・A・エジソン、葉桜加奈子、フィクション、加山圓、イロハ
を予約します
まあ、顔見世程度の登場の人も多い(というか殆ど)のであんまり期待しないでね
- 95 :
- キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
期待しています
- 96 :
- 私生活が忙しくって描きたくてもなかなか時間取れない。
がんばてくださーい。
- 97 :
- 遅ればせながら投下します
- 98 :
- 「…………そんな」
ポツリと葉桜加奈子が戸惑いの声を漏らした。
その原因はフィクションが手に入れた参加者候補名簿を見たことに起因する。
「知り合いでもいたのかい?」
「はい……えっと友達と、学校のクラスメイトや先輩が何人か」
そこには彼女の通う秋月高校の生徒の名前が多くあった。
そして、なにより彼女を戸惑わせたのは無鉄砲で無茶ばかりする幼馴染の名前である。
「…………何人か?
加奈子ちゃん。その学校の人間が何人いるのか具体的にわかるかい?」
加奈子の心情を知ってか知らずか、フィクションは加奈子の心配とは別の質問を投げかけた。
「……えっと、私の知らない人もいるかもしれないですけど、知ってる人だけなら秋月の生徒は八人いますけど」
「ふーん。八人、ね」
ふむ、とフィクションは加奈子から得た情報を吟味する。
七十名弱のうち八人が同じ高校から選ばれている。
比率としては全体の1割程度だが、先ほど出会ったイリアム・ツェーンやフィクション自身のように候補は日本だけでなく世界中から選ばれているとなると、その数はさすがに異常だ。
「それよりも、フィクションさんはどうだったんですか?」
「ん? どうって?」
と、フィクションが思案しているところに、今度は加奈子が問いかけた。
「その……お知り合いの名前とかなかったんですか?」
「ああ、二人ほどあったね」
あまりにも平然と答えるフィクションに少しだけ加奈子は戸惑いを見せた。
「心配じゃないんですか?」
「そうだねぇ。まあ一人は放っておいても心配いらないだろうけど。
イロハちゃんの方は危ないかもね。心配と言えば心配かな」
イロハちゃんという親しげな呼び方。
これまでのフィクションにない感情めいたものを感じられたように加奈子は思えた。
「そのイロハちゃんってひょっとして、ご家族ですか? 娘さんとか妹さん?」
加奈子からすれば、何でもないような問いだった。
だが、フィクションはこれまで見せたこともないような、ひどく驚いたような表情を見せた。
- 99 :
-
「家族? …………家族か。まあそうなるのかな?」
考えたこともなかったな、と誰に言うでもなく小さくつぶやいた。
その呟きの意味は加奈子には、いや、きっと彼にも理解できないものだった。
「ま、なんにせよあくまで候補だから、気にし過ぎてもしょうがないさ。
一応、行動目標には含めておこうか。とはいえ、この広い会場で特定人物を探すのは骨が折れそうだけど。
なにか人探しに便利な道具でもあればいいんだけどね」
「そういえばこんなのが私の支給品にあったんですけど…………望遠鏡か何かだと思うんですが」
そう言って加奈子が取り出したのは筒状の棒のようなものだった。
「ああ、それはライフルのスコープだね。
それが支給品なら多分、他のパーツもあるはずだね」
「これですか? よくわからなかったんでそのまま放置しちゃってたんですけど」
そういって加奈子はケースにしまわれたバラバラのパーツを取り出した。
「ま、ライフルを隠して運ぶばないといけないような職業じゃない限りは使う機会もないし実用性も低いからね。
知らなくてもしょうがないさ。貸してみてもらっていいかな?」
「あ、はい。いいですよ」
フィクションは加奈子から受け取ったパーツをまるでパズルを組み立てるようにスラスラと組みたててゆいった。
銃を扱う姿が似合う外見ではない、それどころか、和服にライフルなどミスマッチもいいところだ。
だというのにライフルを扱う姿は自然体、違和感など感じられない。
違和感があるはずなのに違和感を感じないことに違和感を感じる。そんな奇妙な光景だった。
「これで完成だよ。はい加奈子ちゃん」
「い、いえ、いいですよ! そんな…………銃なんて」
慌てて両手を振って、手渡されようとした完成したライフルの受け取りを拒否する加奈子。
「いやいや、撃つ以外にも結構便利なんだよ、ちょっと重いけどこうしてスコープを覗けば望遠鏡代わりになるし」
そういってフィクションはスコープを覗きこみ。
次の瞬間、躊躇いもなくその引き金を引いた。
■■■■■■■■
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