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2013年02月ニュー速VIP+14: 勇者「拒否権はないんだな」 (596)
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勇者「拒否権はないんだな」
- 1 :2013/02/04 〜 最終レス :2013/02/12
- 国王の間
王「良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」
勇者「は……」
王「魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ」
勇者「はい」
王「今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?」
勇者「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!」
王「うむ……頼んだぞ、選ばれし者よ!」
- 2 :
- 勇者宅
母「おかえりなさい、私の可愛い勇者……王様に失礼は無かった?」
勇者「ただいま母さん……そんな事しないよ」
母「ふふ、そうね……私の可愛い子」
母「……」
勇者「そんなに、寂しそうな顔をしないで。俺にはこの……勇者の印がある。必ず……生きて戻るから」
母「ええ……」
勇者「王様から支度金ももらったし、街で装備を調えたら……行くよ」
母「そう……そうね。くれぐれも無理はしないで……」ギュ
勇者「ああ……ありがとう、母さん……ふ、痛いって……」ギュ…
母「……これを、もって行きなさい」シュル
勇者「……これは?」
- 3 :
- 母「私の宝物……貴方のお父様がくれた、ペンダントよ」
勇者「え……でも……」
母「貸すだけ。帰ってきたら……返してね?大事なものだから。でも……きっと貴方を守ってくれる」
勇者「……わかった。じゃあ暫く借りるね」
母「つけてあげる……良く似合うわ。心配ないと思うけど、なくさないでね?」
勇者「大丈夫さ。絶対……なくさない」
母「……もう、行きなさい」
勇者「ああ……行ってきます!」
カチャ。バタン……
母「……さようなら、私の勇者きっと、もう……」
母「……」
母「……貴方、貴方の息子は大きくなりました」
母「ごめんね、勇者……」
母「……」
母「私の役目も、終わりね……」
- 4 :
- 16年前
??「…… ……」ウロウロ
??「……落ち着けよ、鬱陶しい」ウロウロ
??「だ、黙れよ側近!これが落ち着いてられるか!」ウロウロ
側近「お前がそこで動き回ったって、すぐに出てくる訳じゃないだろ……ったく」ウロウロ
??「じゃあお前も落ち着けよ」ウロウロ
側近「うっせぇな!これが落ち着いてられるか!」ウロウロ
??「うわ理不尽」
おぎゃー!
??・側近「「産まれた!」」
- 5 :
- 使用人「側近様、魔王様!お生まれになりました!可愛い男の子です!」
魔王「そ、そうか……でかした!でかしたぞ后!」
側近「で、后様は?」
使用人「母子共に健康ですよ」ニコ
使用人「さ、どうぞお二人とも……魔王様、だっこして上げて下さいな」
后「あ、魔王……ふふ、産まれたよ」
魔王「ああ……頑張ったな」
側近「うわ、お前そっくり……もうちょっと后様に似れば良かったのに……」
后「……」
魔王「……どうした?」
后「魔王、手……」
- 6 :
- 魔王「手? ……なんだ、つなぎたいのか」ぎゅ
后「や、うん、嬉しいけどそうじゃ無くて……赤ちゃんの手、右の手の平……見て?」
魔王「小さいな、潰しそうだ……っと…… ……嗚呼、やっぱりか」
側近「…………」
后「魔王と同じだね」
魔王「ああ、そうだな……そうか……そう、か……」
后「……一ヶ月」
魔王「……ああ」
后「一ヶ月したら、出て行くね」
- 7 :
- R
- 8 :
- 側近「そりゃ、早すぎないか」
后「……それでもぎりぎりだよ」
魔王「そうだな……ぎりぎりだ」
側近「……ッ くそ、すまん! ……分かってたはず、なんだが」
后「もしかしたらって思ったけど……やっぱり、駄目だったね」
魔王「仕方あるまい……おい側近、俺は一ヶ月、后とチビと部屋に篭もる」
側近「は!? ……ああ、はいはいはい!その間は俺に執務丸投げね!」
后「ごめんね、側近」
側近「謝るなよ、后様 ……こいつが仕事するとか言ったって、どうせ俺がふん縛って后様の部屋に放りこむだけだし」
魔王「何ソレ酷い」
側近「……覚悟はできてるっての」
魔王「で……チビの名前は?」
后「……あれしかないでしょ」
側近「あれしかないな」
魔王「そうか……そうだな。よし!チビ、今日からお前の名前は………!」
- 9 :
- 見てる
- 10 :
- 始まりの街
勇者「さて、最低限の武器防具も揃えたし」
勇者「酒場で仲間を募れとか王様に言われたが……」
勇者「……いくら勇者とは言え、レベル1の俺に着いてきてくれる奴なんかいるのかね」
酒場
勇者「すみませーん」
「おぉ、あれは…」「勇者だ」「勇者!?」「来たか!」「勇者様!!!」
ざわざわ、ざわざわ
勇者「!?」
「勇者様!俺を是非貴方のお供に!」「私を!」「私だ!」
バタン!
ユウシャサマーオレトイッショニーワタシトー
ドンドン!!
オスナー!
ユウシャサマー!
勇者「……一人旅じゃ駄目ですかね」
- 11 :
- 勇者「いや、いくらなんでも……なんだよ、これ……」
バタン!
勇者「!?」ビクッ
??「勇者様」
勇者「は、はい……」
??「ふふ……大丈夫です、私はここの事務員です」
勇者「あ、はぁ……」
事務員「とりあえず、皆様には落ち着くように言いましたから安心して下さい」
勇者「あ。はい……すみません」
事務員「勇者様の旅立ちは王様が声高に宣言されましたからね……引いちゃう気持ちは分かりますが、許してあげて下さい」
勇者「い、いつのまに……」
事務員「数日前ですよ。今日のこの日まで、皆我慢していたんです世界の平和を、希望を……担う勇者様のお役に立ちたいと思っているんですよ、皆様」
勇者「……はい」
事務員「どうぞ、奥の部屋へ。それと……16歳のお誕生日、おめでとうございます」
勇者「あ……ありがとうございます」
- 12 :
- まだちょっとしか書いてないけど、バイト行ってくる
続きは夜からがんばります!
行き当たりばったりだから遅いけど……
- 13 :
- R
- 14 :
- >>12
いってら
気長に待つわ
- 15 :
- しえん
- 16 :
- ほ
- 17 :
- 1です。
職場からもしもしです。
帰るまでに一レス位は書けるかなと。
- 18 :
- ほしゅ
- 19 :
- 事務員「どうぞ、おかけ下さい」
勇者「あ、どうも……」
事務員「さて……」
勇者「……」
ドケ、ユウシャサマヲミセロウワナニスルジャマダ
ザワザワヒソヒソ
勇者(……魔物より怖いかも)
事務員「皆様浮き足立っておられるだけですから」
勇者「はぁ……」
事務員「人員に希望はございますか?」
勇者「あ、えーと……俺、まだレベル1なんで…」
事務員「ふむ……回復役は必要でしょうね」
勇者「ですねぇ……」
ソウリョ!ソウリョ!ワタシ!ダマレコムスメ!
ギャーギャー、ギャーギャー!
勇者「……回復、て僧侶以外出来ないんですか?」
- 20 :
- 事務員「まぁ、その道のエキスパートですから」
勇者「はぁ……」
事務員「あまり深く考えず、直感で選んで大丈夫だとは思いますよ?」
勇者「そう言うもん、ですか」
事務員「希望を聞いてからこう言うのもなんですがね」
事務員「ここに登録されてる僧侶だけでも相当な数です。才能もレベルも、性格だってまちまちです」
事務員「ただ、皆様勇者様に着いていきたい、役に立ちたい、一緒に魔王を倒したいという……」
事務員「志は同じですよ」
勇者「あ……」
事務員「貴方は希望の光ですから、勇者様」
- 21 :
- 事務員を仲間にしようぜ
- 22 :
- 直感で選んじゃうのかwww
- 23 :
- しえん
- 24 :
- 支援あげ
- 25 :
- ただいま。やっとこPC
勇者「……」
事務員「期待は重いですか?」
勇者「……いえ、俺は勇者ですから」
事務員「そうですね……世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者。汝の名は勇者……」
勇者「……?」
事務員「気にしないで下さい。古い吟遊詩人の……詩の一説です」
事務員「話を戻します。直感で選べ、と言うのは、勿論冗談では無いんですが……」
事務員「ご希望ならば、私が適当な人材をチョイスしますよ?」
勇者「……いえ、俺が選びます……選ばせてもらいます」
勇者「多分、誰を選んでも、きっと光は射すんです。俺は……勇者ですから」
事務員「……」
勇者「そうする運命を……誰でも無い俺が握っている、んです……よね?」
事務員「……流石、勇者様ですね」ニコ
勇者「なるほど……直感。そう言う意味では正解ですね」
事務員「では、まずは僧侶でよろしいですか?」
- 26 :
- 勇者「はい。後……もう一人前衛が欲しいな」
事務員「戦士、武闘家……ですね」
勇者「……では、戦士で。後、やっぱり……魔法使い、ですかね」
事務員「了承しました。では、名簿をお渡しします。それぞれ一覧にしてあります」
勇者「…………」ペラペラ
事務員「気になる方が居られましたら、この部屋へお呼びしますので……決定は一度、会ってからをお勧めしますよ。文字だけでは分かりかねますから」
勇者「そうですね……では、レベルが1の彼と……こちらと……」
事務員「(ほう……)お言葉ですが、即戦力にはなりませんよ?勇者様もまだレベル1。最初は……心強い方の方がよろしいのでは?」
勇者「いえ……良いんです。確かに未知数ですが……」
勇者「一緒に高め合って、光をつかみ取りたい」
事務員「(……ニッ)」
- 27 :
- 事務員「……では、この方達をお呼びします。最初はどなたから?」
勇者「全員一辺にお願いします」
事務員「……ふむ」
勇者「俺の直感……信じます」
事務員「分かりました。ではこちらの部屋では手狭ですね。酒場の方へと集めますので少々お時間よろしいですか」
勇者「お願いします」
15分後
ザワザワ…
ダレダ、ダレヲヨブンダロウ
オレダワタシダダマレオレダ…
事務員「勇者様、準備が整いました……どうぞ」
キィ…
シーン……
ざわざわざわ……
勇者(選ばなかった人には申し訳ないが……)チラチラ
勇者(壁にもたれてる彼……良い体つきだな。しなやかな良い筋肉だ)
勇者(魔法使いは……あれだな目の奥に何か宿してる感じだ。年若い娘だが……ちりちりと魔力の波動を感じる)
勇者(僧侶は……あいつか。ちょっと気が弱そうだけど……)
勇者「では……貴方と、貴女と……貴女に。お願いできますか」
戦士「……ああ」
魔法使い「いい目、してますね勇者様」
僧侶「わ、わわわわ、私、ですか……!?」
勇者「はい。お名前を伺っても?」ニコ
- 28 :
- 戦士「戦士だ」
勇者「うん……宜しく」
戦士「ああ」
勇者(寡黙そうだが……近くで見るとやはり良い身体だな。握手も力強かった。面構えも良い)
魔法使い「魔法使いよ……宜しく」
勇者「こちらこそ……君は、炎に特化してる様だね」
魔法使い「……!」
勇者「違った?」
魔法使い「いいえ……正解よ。流石ね」ニッ
勇者(情熱的な色……当たったか。自身に満ちあふれてる感じだな。期待できそうだ)
勇者(そして美人だ)
僧侶「あ、あの……私なんかでよろしいのでしょうか……?僧侶、と申します……あ、あの……」
勇者「そんなに緊張しないで……」クス
僧侶「あ、はい……あの、すみませ……あ、じゃなくて。お願いします!」
勇者(ふむ……普通に見えるが……神の加護、か?握手から伝わるこの安らぐ感じ……)
勇者(そして可愛い)
勇者「改めて、勇者です。宜しく」
- 29 :
- では、飯とお風呂を済ましてきます
夜戻ります
- 30 :
- おつ
- 31 :
- 支援
- 32 :
- しえーん
- 33 :
- ご飯まで少しだけ
勇者「では、お世話になりました」
事務員「貴方達の行く道に光あらんことを」ニコ
事務員(まだ小さな光……小さな背。でも……あの子達ならきっと)
事務員(古の腐った縁を……腐ったこの世界の不条理を……)
事務員(光で、照らしてくれる)
事務員「さて、私も行きますか……ああ、いけないその前に、あの子起こさなきゃ……」
旅籠
勇者「さて、とりあえず食事にしようか。ここの飯は旨いよ」
戦士「暢気だな。魔王を倒す旅にでようと言う勇者が……街から出る前に食事だと?」
勇者「今の俺たちの力量を知ることは大事だろ、戦士。自己紹介もかねて、な」
魔法使い「そうよ、腹が減っては戦は出来ぬ。私、グラタンと赤ワイン」
勇者「流石に酒は駄目だろ、まだ正午前だ」
魔法使い「けーち」
僧侶「あ、あの、私もお酒はどうかと……あ、えっと、ミートソースのパスタと、ピッツァマルゲリータと……プリン」
勇者「良く食うね、僧侶……でもプリンは後ね?」
僧侶「……はい」ムゥ
戦士「……カレー。甘口」
勇者「えっ」
魔法使い「えっ」
僧侶「えっ」
戦士「………」ムス
- 34 :
- 戦士可愛い
- 35 :
- 支援
- 36 :
- ここは戦士がプリンだろ…
- 37 :
- しぇん
- 38 :
- しえん
- 39 :
- >>6までしか読んでないけど勇者は魔王の子供で、その魔王も実は勇者だったのか
これ面白いな支援
- 40 :
- 気がついたらうとうとしてました
危ない危ない
勇者「じゃあ改めて……自己紹介と行こうか。お腹もふくれたしね」
魔法使い「ああ、お腹いっぱい……コーヒーもらって良い?」
勇者「あ、じゃあ俺も。僧侶は……プリン?」
僧侶「は、はい!それとチーズケーキとバナナジュースも良いですか?」
戦士「腹壊すぞ……俺はイチゴのパフェ」
勇者「えっ」
僧侶「えっ」シマッタソレモタベタイカモ…
魔法使い「ぷっ」ツイカスレバ、ソウリョ
戦士「……」ムス
勇者「ええと……良いかな?」
オマタセシマシター
勇者「じゃあ、俺から……勇者、レベル1。獲物はこれ」シャキン
僧侶「それは……光の剣!?」
魔法使い「……失礼な言い方だけど、すごいレア物持ってるわね。あら?でもこれ……」
戦士「……ぼろぼろだな」
- 41 :
- 勇者「ああ。親父の形見らしい……親父は、先代、元勇者と言う」
勇者「母の話によると、元勇者も、元々勇者も……まあ、要するに代々語り継がれて来たって奴だ」
戦士「魔王を倒した剣か?」
勇者「どうだかな。確かに相当使い込んであるんだろうが」
魔法使い「私は剣とかには詳しくないけど……これ、新しい傷じゃ無いんでしょう?」
僧侶「そのようですね……光の残照は感じます……が、とても少ないです」
戦士「歴戦の勇者が震ってこそ……真価を発揮する代物か?」
勇者「どうだかな……って言うより、そんなの分かるのか?僧侶……」
僧侶「……微かに力、光は確かに感じますけど……正直、それほど威力があるようには見えませんね」
魔法使い「ねぇ、勇者と戦士は……魔法について詳しいの?」
勇者「ん? ……恥ずかしながら、それほど。俺は……初期の回復魔法ぐらいしか」
戦士「俺にはさっぱりだ」
魔法使い「ふうん……まあ、そうよね、まあ良いわ」
勇者「なんだよ、ハッキリ言えよ」
魔法使い「後で説明するわ。とりあえず自己紹介、しちゃいましょ」
- 42 :
- 勇者「ああ……まあ、とにかく形見でもあるし……僧侶が言うようになんかしらの力は感じるんだけどな」
勇者「とりあえず、鉄の剣よりは軽くて扱いやすいんだ。手になじむというか」
勇者「で、まぁ……俺もまだレベルは1だ。七光りに頼るぐらいが丁度良いって訳だ」
戦士「成る程な」
勇者「で、さっきも言ったけど、魔法については初期の回復魔法が使えるぐらい」
勇者「多少の魔力があるのはわかってるが、当然ながら本職さんの足下にも及ばない」
勇者「これぐらい、かな」
戦士「では、次は俺だな」
戦士「戦士だ。俺もレベルは1。登録所の事務員も言っていたが、王のお触れを聞いて登録したばかりだ」
戦士「実戦経験は……乏しい。無いに等しい。まさか、自分が選ばれるとは正直思っていなかった」
戦士「だが……それなりに鍛錬は積んできたつもりだ。勇者の光の剣ほどでは無いが、俺の獲物も使い込んである」
戦士「この国の騎士だった父から譲り受けた鋼の剣……当分、新調しなくても大丈夫だろう」
勇者「……良く研がれてるな。良い剣だ」
戦士「ああ」
僧侶「あの……勇者様の光の剣は、手入れしないのですか?」
勇者「……鍛えられる鍛冶屋が存在しないらしい」
僧侶「……え?」
- 43 :
- 魔法使い「魔法剣の扱いはとてもデリケートで難しいのよ」
魔法使い「知識として存在は知ってても、どうにも出来ない場合が多いの」
魔法使い「鍛冶の知識と、魔法の知識、確かな技術……」
魔法使い「それ以上の何かを知り、持っている者にしか……できないの」
勇者「……詳しいな」
魔法使い「自己紹介ついでにその辺も話すわね」
魔法使い「私の両親は共に大魔導師とまでは行かないけど……まあ、二人とも結構良い魔法使いだったのよ」
魔法使い「勿論、私の師でもあるわ。家には膨大な量の魔法関係の本があったから、知識はかなりの物だと自負してる」
魔法使い「まあ……私のレベルも1だからね。胸を張って言えないのが……ちょっと恥ずかしいけど」
僧侶「凄い……」
魔法使い「あら、興味ある?」
僧侶「も、勿論です……!」
魔法使い「ふふ、そうよね……機会があれば家にいらっしゃい。ここからはだいぶん、遠いけどね」
僧侶「は……はい…ッ!!」きらきら
魔法使い「で、さっき勇者様に言い当てられた通り、炎の魔法が得意よ」
魔法使い「講釈は後にして……さ、次どうぞ?」
- 44 :
- 僧侶「あ、私は僧侶……癒やしの魔法を専門にしています」
僧侶「この町に来るまでは教会に遣えていました……レベルは皆様と同じ、1です」
僧侶「一応回復専門ですが……弓は得意です」
魔法使い「……意外」
僧侶「そ、そうですか……?」
戦士「その細腕で……?」
僧侶「あ、その……勇者様ほどではありませんが……」
僧侶「これを、つかいます」ス…
勇者「随分と細いな……それにちょっとしつれ……うわ、軽ッ」
僧侶「これは、エルフの弓です……その、あの……私、孤児でして」
僧侶「神父様に拾われた時に、その……私の傍に置いてあったと……」
魔法使い「ああ、成る程……」
僧侶「……?なにか……?」
魔法使い「……ううん、なんでも。心優しいエルフからの贈り物なのかな、って」
- 45 :
- 僧侶「ロマンチック、ですね。でも……もしかしたら、形見とかそう言うのかも知れないし」
僧侶「大事にしたくて……練習したんです」
勇者「……なんか、暴露させちゃってごめん」
僧侶「いいえ。お気になさらず……これから一緒に旅をする仲間ですから」ニコ
魔法使い「一通り終わったし……良いかしら?」
戦士「なんだ?」
魔法使い「さっきの魔法の話、ね。ちょっと長くなるけど良いかしら?」
勇者「ああ、構わない。知識が増えるのはマイナスにはならない」
魔法使い「じゃあ……まず最初に。魔法には属性があるのはわかるわよね?」
勇者「炎とか、水とかだろ?」
魔法使い「そう。そして人……人だけじゃ無いわね、魔物も、生きとし生けるモノ全てにあるのよ」
戦士「……?」
魔法使い「まだ何も難しい話してないわよ。眉間に皺寄せないでよね」クスクス
戦士「……チョコパフェ。糖分が不足すると頭が回らん」ムス
勇者「まだ食うの!?」
僧侶「あ、私ジャンボパフェ!」
勇者「……その細身の身体の何処に入るんだ」
- 46 :
- 魔法使い「さっき、勇者様が私を見て炎に特化する……要するに、私の属性は、火。炎」
勇者「俺は魔法に詳しいわけでは無いからな……何となくイメージって言うか……直感?」
僧侶「正しいですよ、勇者様。ちなみに私は水です」
勇者「水……」
僧侶「そうです。水を見ると何を思い浮かべますか?優しい、とか……癒される、とか……」
勇者「確かに、そう言うイメージは持ちやすいな」
魔法使い「そう。人にイメージを関連づけるのに何が一番早いか分かる?」
勇者「う、ううん……と」
魔法使い「初対面、話していない。勿論、人となりも分からない、となれば?」
勇者「外見……」
魔法使い「まぁ……そうね。及第点。表情とか、態度からも感じ取れるわよね」
戦士「堂々としていれば強そうに見え、怯えていれば弱々しくみえると言う事か」
魔法使い「そうそう。そういうのもあるけど……一番簡単なのは色だと思わない?」
勇者「色……」
魔法使い「勇者様は、じっと私の瞳をのぞき込んでいた。どうして?」
勇者「……意思の強そうな女の人に見えた。恥ずかしいけど……情熱的な印象をうけたな」
魔法使い「ふふ、嬉しいわね。そう……私の瞳は赤。炎の色は?」
勇者「……! 赤」
- 47 :
- ふむふむ
- 48 :
- はよっはよっ
- 49 :
- おもろい
- 50 :
- おはよう
昨日は寝てしまた……
勇者「僧侶は……蒼、戦士は……翠か。て、事は……?」
魔法使い「僧侶は水の加護、癒やしの力。戦士は大地の加護」
戦士「大地?」
僧侶「そうです。とても力強い大地の加護を受けてらっしゃいます。大陸を渡る風や、緑の芽吹き。母なる大地が死に絶えた場所ではどちらも死んでしまう……とても、暖かい力です」
戦士「………」ムス
僧侶「……ど、どうなさいました?」アセ
魔法使い「あはは、照れなくても良いのに」
勇者・僧侶(照れてる顔なのかっ)
魔法使い「100%瞳の色で判断できるわけじゃ無いんだけど……貴女には分かるのね、僧侶」
僧侶「はい……分かる、と言うより……感じます。そして勇者様は……金の双眸をお持ちです。間違いなく、輝く光の加護を」
勇者「へぇ……」
僧侶「……人の肉体は、闇と光、両方で形成されていると言われています」
勇者「ん?それは……どういうこと?」
- 51 :
- 僧侶「光と闇の獣。汝の名は人間」
魔法使い「…………」
勇者「獣?」
僧侶「はい。現し身、所謂肉体は闇で。精神は光で。だから、人はとても弱く、強くもなれる」
勇者「………???」
戦士「……プリン・ア・ラモード」
勇者(もう糖分消費したのかよ)
僧侶(……流石に恥ずかしい)ケドタベタイドウシヨウ
魔法使い「コーヒーお変わりね」
勇者「ええと……?属性が二つある、って事?」
魔法使い「そうじゃ無いわ。んー…説明が難しいわね」
魔法使い「たとえ話と思えば良いわ」
魔法使い「人はどちらにもなれる。選び取ることが出来る」
魔法使い「闇を選べば悪になれる。光を選べば善になる」
勇者「あ……なんとなくわかりやすいかも」
- 52 :
- 魔法使い「人は唯一、種族を捨てられる生き物なのよ」
勇者「……?」
魔法使い「人は闇の手を取り契約することで、魔物に転じることが出来る唯一の種なの」
勇者「……何?」
魔法使い「魔物やエルフ、所謂人以外の種族は、生まれついたそれから転じることは出来ないの。人間にはなれない」
僧侶「人は、とても強くとても弱い。だけど、無限の可能性を秘めているのです。故に、光と闇の獣と呼ばれるのです」
戦士「そんな話は聞いたことが無い」
魔法使い「……でしょうね。私もはっきりとは知らないわ。古書でかじった程度」
僧侶「古い……おとぎ話の本を神父様が持っていらしたのです。偉そうに話してしまいましたが、神話の一説なのかもしれません。でも……」
魔法使い「言い得て妙、て感じかしらね?」
僧侶「そう、ですね……」
魔法使い「まあ、でもちょっと脱線したわね」
僧侶「ア……すみません」
- 53 :
- おはよう
今日も楽しみにしてる
- 54 :
- 勇者「いや……難しいけど、知ってて損は無い話だし……単純に興味がある」
魔法使い「ええと……話を戻しましょ。勇者様の属性は光」
勇者「うん」
魔法使い「さっきの光と闇の話はいったん忘れてね」
魔法使い「光の属性って言うのは、勇者しか持ち得ないものなの」
勇者「そうなのか?」
魔法使い「ええ、きっとレベルが上がれば光属性の魔法を使えるようになると思うけど」
魔法使い「どんなに優れた魔法使いや僧侶でも、光の呪文だけは行使できないのよ」
僧侶「回復魔法、と言えば誤解されがちですが……癒やしの力に長けて居るのは一般的には水や緑の加護なのです」
僧侶「加護、と言うのは契約と思って下されば良いかと」
戦士「俺に魔法の力は無いぞ」
魔法使い「命は産まれる時に、精霊と契約すると言われるわ。ソレが属性として体内に残留して加護となるのよ」
- 55 :
- 魔法使い「戦士の場合は優れた筋肉とか、その力。大地の守護を受けていればそれは強靱。魔法は使えなくても充分に恵まれてるでしょ?」
戦士「ふむ」
魔法使い「勇者様は光の精霊と唯一契約できる、選ばれた人間って事。……世界に一人しか存在できないのはその所為なのよ」
勇者「ああ……それは知っている」
勇者「勇者が存在するのは、魔王を倒すためだ」
僧侶「…………」
勇者「俺の使命だからな」
魔法使い「……そうね。だから、頑張らなくちゃね」
戦士「その通りだ」
僧侶「はい」
僧侶(今は……まだ)
魔法使い(話すべきじゃ無いわね)
勇者「さて……じゃあそろそろ」
戦士「ああ、行くか?」
僧侶「行きましょう」
魔法使い「旅の始まりね」
- 56 :
- その頃
??「勇者は世界に一人しか存在できない」
??「勇者が産まれると言う事は、魔王もまた、産まれると言う事」
??「希望と絶望」
??「光と闇」
??「表裏一体」
??「腐った世界の腐った不条理」
??「運命の子は、まだ限りなく遠くて、果てしなく近いよ」
??「今はまだ……ね」
旅籠
勇者「……いきなり路銀が0に近いってどういうこと」
魔法使い「食べ過ぎなのよあんた達……今夜の私の酒代無いじゃ無い!」
戦士「………」ムス
僧侶「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
- 57 :
- 勇者「と、とりあえず……レベルアップを兼ねて隣の町を目指そうか」
戦士「無理は禁物だな。今夜は……野営か」
魔法使い「そうなるわね……森が近くにあったはずよね?」
僧侶「森の中で野営ですか……危なくありませんか?」
戦士「俺がいる。守ってやる」
魔法使い(レベル1だけどね……)
僧侶「そ、そうですね!勇者様もいらっしゃいますし!」
勇者「とりあえず、この川沿いを進もう。森に突き当たる」
……
………
僧侶「美しい流れですね」テクテク
魔法使い「一見平和に見えるわね」
戦士「油断するなよ」
魔法使い「そうよ、僧侶……あ、そんなにのぞき込むとあぶな……」
僧侶「大丈夫ですよ……きゃっ」
ばっしゃーん!
- 58 :
- 僧侶「吃驚した……」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………」
僧侶「あれ、どうしたんですか」
勇者「おい、なんで濡れてないんだ」
僧侶「え?あれ……ほんとだ冷たくない……!!」ズズズ……
ズルズルズル……
魔法使い「!!僧侶、後ろ!!」
水の中から、モンスターが現れた
僧侶「……ッ(しまった、弓が…ッ)」
魔法使い「頭下げて! ……ッ炎の手よ、その拳で焼き尽くせッ」
勇者「……ッ」
ジュウウ……ギャアア……ッ
モンスターは霧になり、消え失せた
ばしゃあああんッ
僧侶「きゃッ ……冷たいッ」
戦士「……どうなってるんだ?」
勇者「話は後だ……僧侶、ほら捕まって」
僧侶「あ、あぁ……すみません……」
魔法使い(この子……まさか……)
- 59 :
- 勇者「なるべく隊列を崩さず、水辺から遠いところを歩こう……引きずり込まれる訳には……」
戦士「勇者、先頭を行け。殿は俺が」
魔法使い「僧侶、大丈夫?ほら、こっち」
僧侶「あ、はい……すみません……くしゅんッ」
勇者「ゆっくり進もう。日が陰れば野営の準備だ。森の中で安全そうな場所を探すんだ」
………
…………
森の中
勇者「流石に……実戦は……違うな」
勇者(距離にすれば……大して始まりの街から離れていない)
勇者(しかし……疲労感が半端ない)
戦士「レベルも少しは上がった。僧侶と魔法使いを休ませないとな」
戦士(無理をさせる訳にはいかんだろうな……この辺でストップか)
戦士(魔法力とやら、無限ではないのだろうし)
魔法使い「そうね……次、モンスターの群れに襲われたら……やばいかな」
魔法使い(MPが切れるほど消費したのは初めてだわ)
魔法使い(これが……戦い)
僧侶「うぅ、足が痛い……」
僧侶(それに、寒い……火に当たりたい)
僧侶(でも、足を引っ張るわけには……ッ)
勇者「良し、今日はここまでにしよう。戦士、野営の準備を」
戦士「分かった。魔法使いと僧侶は休んでろ」
魔法使い「……ありがと」
僧侶「す、すみません……」
- 60 :
- ……
………
僧侶「あ、あの、私達も何かお手伝いを……」
魔法使い「無理しちゃ駄目よ、私達体力無いんだから……」
僧侶「あぅ……でも……」
魔法使い「私達の仕事は、MPを回復させること。足を引っ張らないこと」
僧侶「……はい」シュン
魔法使い「ねえ僧侶、貴女……」
僧侶「はい……?」
勇者「良し、火が付いた。二人とも、こっちへ」
魔法使い「いえ、良いわ」
僧侶「……? あ、ハイ、行きましょう魔法使いさん」
- 61 :
- パチパチパチ……
僧侶「暖かい……」
魔法使い「ここ……そんなに離れてないわよね」
勇者「……」
戦士「焦って命を落とす方が愚かだ。俺たちの力はまだまだ未熟だ」
戦士「勇者の判断は正しい……それに、ここは良い場所だ」
魔法使い「そうね……美しい森だわ」
僧侶「……安心しました」
勇者「ん?」
僧侶「戦士さんが良いと言うのなら、大地の愛に満ちあふれて居るんですよ。安全……かどうかはわかりませんけど、安心できる場所です」
魔法使い「……」
勇者「ああ、成る程。戦士には大地の加護があるから分かるのか……」
戦士「……」ムス
勇者「(あ。照れた)」
魔法使い「(照れたわね)」
僧侶「(戦士さん可愛い)」
- 62 :
- 勇者「準備してきた非常食で今日は……凌げるが問題は明日からだな」
勇者「(明日の夜には目的の街につけるか……?焦りは禁物。いや、しかし……)」
戦士「それも問題無いだろう」
勇者「?」
戦士「……生きるための殺生の権利は誰にでも等しい」
僧侶「………」ビク
戦士「幸い、豊かな森だ。狩猟に出れば良い」
勇者「狩りか、しかし……」
戦士「得意なのだろう、弓」
僧侶「はい……仰りたいことは、わかります」
勇者「ああ……」
魔法使い「モンスターは倒すのに、動物は殺せないと?」
僧侶「……ッ」
勇者「魔法使い、よせ」
魔法使い「……」
戦士「僧侶」
僧侶「はい……いえ、はい。大丈夫です……」
勇者「……じゃあ、明日の朝、戦士と僧侶に狩りに行ってもらおうか」
勇者「その間に俺と魔法使いで片付けとか済まそうか」
魔法使い「……」
勇者「じゃあ、今日はもう休もう。とりあえず俺が見張るから、三人は休んでくれ」
- 63 :
- 勇者(三人は……休んだか。寝息が聞こえる……それだけ、森が静かだって事か)
勇者(それほど街から離れていないのに……光が遠い。寂しい物だ)
勇者(レベルも少しは上がった……無理ができる程俺たちは強くない)
勇者(焦るな。俺は……勇者だ)
勇者(大丈夫だ。しかし……)
勇者(魔法使い……僧侶が川に落ちてからどうにも様子がおかしかった)
勇者(僧侶が……水に濡れていないのを見て……顔が青くなってた)
勇者(随分苛々してた様だったが……)
勇者(街に着いたら、ゆっくり話そう)
- 64 :
- 魔法使い(……眠れない。初めての実戦で興奮してる)
魔法使い(それだけ……じゃない。僧侶、あの子……)
魔法使い(魔物がいたから……その後は……)
魔法使い(……ッ 嫉妬してる!?この私が…!?)
魔法使い(落ち着くのよ、魔法使い。私は、炎の担い手!)
魔法使い(……私だって…ッ)
魔法使い(勇者は、今日は聞いてこなかった。心配そうに……私を見てた)
魔法使い(気付かれた……かな)
魔法使い(休まなきゃ。ちゃんと休んで……聞かれたら、冷静に説明するのよ)
魔法使い(冷静に……ッ)
- 65 :
- 僧侶(弱肉強食……わかってます)
僧侶(生きるためには、食べなくてはいけない)
僧侶(……神よ、お許し下さい)
僧侶(私だけじゃ無い。勇者様、魔法使いさん、戦士さん……)
僧侶(みんなが生きて、強くなって……)
僧侶(魔王を倒す……)
僧侶(勇者様……ああ、お願いするの、忘れた)
僧侶(神父様のお話が本当なら……いいえ、神父様は……嘘など)
僧侶(神様……人の子に与える試練とは、かくも厳しい物なのですか…?)
僧侶(……私達を、おまも……り……く、だ……)スウスウ
- 66 :
- 戦士(まだ腕がしびれているな)
戦士(……命を屠ると言う事は、重いんだな)
戦士(狩りは頻繁に行ってきた。食べるために仕方ない。命の摂理……)
戦士(人に害をなすから、R。食べるためでも無く。自分を、仲間を守るため)
戦士(そんな俺が……大地の加護を受ける、か)
戦士(……)
戦士(皮肉な物だ)
戦士(魔法だの、加護だの、精霊だの……)
戦士(良く解らん。わからん、が……)
戦士(世界とはそう言うものなのだろう)
戦士(……休むか。勇者とかわってやらねばな)
- 67 :
- 森の上空
??「悩みなさい、思いなさい」
??「それが生きると言う事」
??「……なんてね」
??「ああ、時間食っちゃった。あの子……無事だったかな?」
??「久しぶりに元の姿に戻ったら……なんか変な感じ」
??「さて、戻らないと」
??「勇者君、頑張るのよ?君なら、きっと……」
??「ちょっと……楽しかったな、人間ごっこ」
??「人間ごっこ、か……皮肉ねぇ」
??「あの事務員の女の子にはかわいそうな事しちゃったけど……」
??「まぁ、生きてるし大丈夫でしょ」
??「……生きてる、か」
??「やっぱり、皮肉ね」
バッサバッサバッサ………
そして、夜は更ける―――
- 68 :
- 朝
戦士「起きたか」
僧侶「はい…おはようございます」
戦士「では行くか……大丈夫か」
僧侶「……はい」
戦士「……む」
僧侶「あ………」
ピピピ……チチチ……
戦士「………」
僧侶(鳥が……戦士さんの肩に)
戦士「食うには小さいな」
僧侶「……」ビクッ
戦士「僧侶」
僧侶「は……ハイ」
戦士「生きるためだ。無駄な殺生はしない」
僧侶「はい……」
戦士「必要な分を、必要なだけ。屠った命は、無駄にしない」
僧侶「……」
戦士「感謝を込めて、全部食う。それが……礼儀だ」
僧侶「……!はい」
戦士「そう言いながら、俺たちは無益にモンスターの命を奪う」
僧侶「……戦士さん、それは」
戦士「聞いてくれ」
僧侶「……」
戦士「守るためだ」
僧侶「……」
戦士「生きるためだ。命の重さに差違は無い」
僧侶「ハイ」
戦士「矛盾してるが……それが、生きると言う事なのだと思う」
僧侶「……ハイ」
戦士「……すまん。言い訳だ。自分を正当化しているだけだ」
僧侶「いいえ……貴方が、惨い方で無いのは、わかります」
- 69 :
- 僧侶「それは……動物たちが教えてくれます。その手に剣を持ち、命を屠ろうとも」
僧侶「心優しく、強くいらっしゃる……誠に、大地の加護を受けるに相応しい……素敵な方だと思います」
戦士「……」
僧侶「行きましょう、戦士さん。私達が生きるために」
戦士「……ありがとう」ニッ
僧侶(どきッ)
僧侶(笑顔……優しいんですね)
僧侶(戦士さん……)
- 70 :
- 勇者「おはよう、魔法使い」
魔法使い「……おはよう」
勇者「よく眠れ……なかったみたいだね」
魔法使い「……ごめんなさい」
勇者「なんで謝るの……ああ、火起こすの手伝ってくれる?」
魔法使い「ええ……」
魔法使い「旅、始まったばかりなのに……管理もできないなんてね、身体の」ボッ
勇者「ありがとう……どちらかと言うと心だろう?」
魔法使い「!」
勇者「僧侶が川に落ちて濡れていなかったことと、関係ある? ……よね」
魔法使い「……優れた加護を受ける者はね、干渉を受けないの」
勇者「?」
魔法使い「私が炎の優れた加護を持っているとすれば、私の身体は如何なる炎にも焼かれることは無いの」
勇者「あ……じゃあ、僧侶は……あれ、でも……」
魔法使い「自然の物は別。ああ……言い方が悪かったわね」
魔法使い「自然の力で産まれた炎……たとえば、こうして道具で起こした火。暖かさを感じるわ。身を暖めてくれる。指に触れれば火傷する」
魔法使い「優れた炎の加護を受けた魔物に炎の魔法が効かなくても、その屍肉を火であぶれば食べられるようになる」
勇者「……たとえがちょっとえぐいな。わかりやすいけど」
勇者「魔法の炎で焼かれることは無い、って事だな」
魔法使い「……そうね」
- 71 :
- 勇者「僧侶の水の加護、が……そういうことか」
勇者(最初、落ちたとき……濡れていなかったのは水の魔物の干渉の範囲。曰く、優れた加護を持つ僧侶は……)
勇者(その水の干渉を受けず、濡れなかった)
勇者(その後、自然の水に戻ったときには……冷たさも感じてた。ずぶ濡れになってた)
勇者「……成る程」
魔法使い「理解したみたいね」
勇者「理屈は分かった。まあ……目の前で見たしな」
魔法使い「あの子の身体は、水の干渉を受けない……優れた癒し手になるわ。流石勇者様ね」
勇者「……君は?」
魔法使い「残酷ね、聞くの?」
勇者「……すまない」
魔法使い「……炎よ」ボッ
勇者「!?」
魔法使い「よく見て……ッ ぐ…ッ」ジュウ…ッ
勇者「おい、やめろ……ッ」
魔法使い「……言葉にさせないで頂戴ッ」
勇者(威力は押さえたんだろうが……魔法使いの腕に火傷の跡が)
勇者(………)
勇者「気持ちは分かるが……馬鹿野郎」
魔法使い「……」
勇者「回復するぞ」パァッ
魔法使い「……ごめんなさい。でも…ッ」
勇者「鍛錬……とか、レベルがあがれば……」
魔法使い「素質の問題よ。契約だもの」
魔法使い「……本当、残酷ね、勇者様は」
勇者「すまん……が、自棄にはなるな。俺の直感を信じろ、魔法使い」
魔法使い「……え?」
- 72 :
- 勇者がえらい男前や…w
支援
- 73 :
- 勇者「自信に満ちた目をしてた。情熱的な何かを宿す目」
魔法使い「……」
勇者「羨み、怨んで曇らさないでくれ」
魔法使い「……」
勇者「簡単に、すっきり解決とはいかんだろうが……」
勇者「認める強さも、君にはあると思う……あって欲しい」
魔法使い「……!」
魔法使い「認める、強さ」
勇者「プライドが許さないとか言うなよ?」
魔法使い「そ…ッ そんなちっぽけなプライド持ち合わせてないわよ!」
勇者「あははは、そりゃ失礼」
魔法使い(……勇者は、やはり勇者なのね)
魔法使い(笑顔が……眩しい)
戦士「帰ったぞ」
僧侶「ただいまです」
魔法使い「…ッ」ビク
勇者「おお、ごくろ……て、え……」
僧侶「熊さん、仕留めちゃいました」
戦士「勇者、解体するの手伝え」ドサッ
勇者(デケェ…何日分だよ……)
僧侶「お腹いっぱいになりますねぇ」フフ
魔法使い(……僧侶、恐ろしい子)
- 74 :
- ちょっと休憩します
需要があれば簡単なスペック書きますが
いらないですかね
不要なら続けますねー
ちょっとおやつ漁ってコーヒー入れてきます
- 75 :
- 魔王城
??「ただ〜いまぁ〜!側近〜!」ダキッ
側近「のわ、なんだなんだ……ッ」ダキッ
??「ただいま、ってば」
側近「お、おぅ、お帰り……て、早いな……あいつは?」
??「貴方に早く会いたくて、ダーリン♪」ホッペニチュー
??「……無事に旅立ったわよ。仲間も申し分なし」
側近「そ、か」
??「浮かない顔ね」
側近「お前が言うか、泣きそうな顔して」
??「……」ギュ
側近「……心配すんな。大丈夫だ今度こそ……」ギュ。ナデナデ
??「そうね……あの子なら」
側近「で、お前なんでそんな格好してんの。誘ってんですか」
??「あ、やっぱそそる?事務員ちゃんの制服、そのまま着て来ちゃった♪」ムナモトチラッ
側近「背中破れてんぞ」オウフ、セクシー
??「だってー羽出さなきゃ飛べないし」モットミル?
側近「そりゃそーだろうが、だからって」ミタイデスオネガイシマス
??「……人間の服、久しぶりだったからねぇ」ザンネン、キガエチャイマス、マホウデ、エイッ
側近「堪能したか、魔導将軍」アアアアアア、モッタイナイ
魔導将軍「うん……なんか寂しいね。嬉しいはずなのに」
- 76 :
- 側近「……だな」
魔導将軍「魔王様は?」
側近「……そろそろ、やばいな」
魔導将軍「そっか……」
側近「最後かもな」
魔導将軍「……ん」
側近「今日は……一緒に寝るぞ」
魔導将軍「いやんえっち♪」
側近「……多分、明日はもう」
魔導将軍「……」ギュ
側近「喜べよ、魔導将軍……俺たちは喜ばなきゃいけねぇだろ?」
側近「泣くな、喜ぶんだ……喜ばなきゃいけねぇんだ!」
魔導将軍「分かってる。わかってるよ……!でも、側近…ッ」
側近「……祈ってやれ。運命の子の為に」
魔導将軍「この、腐った世の中に、光を……ッ」ウワアアアアアン
- 77 :
- この先何が待ってるんだ…
純粋に楽しんでいますよ
- 78 :
- 楽しいです
- 79 :
- 飯食ってきました
数ヶ月後
勇者「街だ。街が見えた!」
魔法使い「酒!酒!お風呂!」
僧侶「ごはん……おやつ……」
戦士「……俺も、おやつ」
町長「おぉ、これは勇者様!ようこそいらっしゃいました!」
勇者「あぁ、町長、か……とりあえず、宿、どこ……」
魔法使い「風呂、先だってば…いや、酒……」
僧侶「ご飯、ごはん……うぅぅう」
戦士「糖分が足りん……」
町長「え、あ、あの……」テイウカコイツラクサイ
町長「ゆ、勇者様御一行を宿へ案内しろッ湯を沸かし、宴の用意だ!」ツライタビダッタンダロウガ……ホントウニクサインデスケド
……
………
…………
女湯
魔法使い「生き返るー!!」チャポーン
僧侶「魔法使いさん、早く出ましょう……お腹すいて、死んじゃう」グゥ
男湯
戦士「……至福」カポーン
勇者「戦士、先に身体洗えよ!匂いが……ッ」オユニヨゴレガッ
- 80 :
- ……
………
…………
勇者「では、一月ぶりの街での宴に」
戦士「温かい風呂に」
魔法使い「美味しい食事に」
僧侶「暖かいベッドに」
「「「「乾杯!」」」」
勇者「……いや、しかし参ったな」モグモグ
戦士「ゾンビとだけはもう戦わん」ムシャムシャ
魔法使い「だから下がれって言ったのに……魔法の詠唱中に飛び出していく戦士が悪い」ノウキンメ
僧侶「で、でもまさか切ったら爆発するとは……」センシサンノセイジャナイデス
勇者「腐敗ガスが飛散、まさに悲惨」ドヤ
戦士「剣が汚れた」ウマイコトイッタツモリカ?
魔法使い「しかも道に迷うとか」チズミナサイヨ
僧侶「あれは魔法使いさんの所為ですよ」イキナリニゲダスンダモノ
魔法使い「だ、誰だって混乱するわよ、あんな汚物頭から被ったら…」アンタモサケンデタデショ
- 81 :
- なんかちょっと前にたった勇者「 ってスレに似てる気がするけど同じ人?
- 82 :
- >>81
違います。
内容は確認してないので分からないですけど
この手のSSのスレを立てるのは初めてです
- 83 :
- 勇者「まぁまぁ、無事に着いたし匂いも取れたし」ウマカッタ。コーヒー
魔法使い「結果オーライ?暢気ねぇ」ワタシワイン
僧侶「良いじゃありませんか、久しぶりに布団で休めるんですし」パフェー、フタツー、イチゴトチョコ
戦士「ところで……ここから先は?」サケハダメダトイッタダロ、アホ
勇者「うん……それなんだけど」
勇者「さっき、町長に北の塔に行ってくれないかと頼まれた」
魔法使い「北? ……この町って、大陸の最北端じゃない、塔なんて……」
勇者「……船で渡るんだ」
僧侶「船、ですか……」
勇者「ああ、用意はしてくれるらしい。古いとはいってたけどね」
戦士「理由は?」
勇者「黒い影の目撃が増えてる。今のところ害は無いが、大きな翼を持っているらしい」
僧侶「魔物……ですかね」
- 84 :
- 魔法使い「害が無いとは言え……放っておけない、わね」
勇者「聞いた以上ね」
勇者「多数のコウモリを伴って飛来するらしい。住民が怯えてる」
戦士「そこに現れた光の勇者様にすがる以上の安心は無いな」
僧侶「コウモリ……というと、サキュバスの使いですかね、一般的には」
僧侶「魔王の居城も………北の果て、最果ての地」
勇者「ここは魔王の城から近くは無い。が……」
魔法使い「遠くも無い」
戦士「レベルは……もう少し上げておいた方が良いだろうな」
勇者「うん……丁度良いだろう」
魔法使い「たかが、数ヶ月前は……四人そろってピイピイ言ってたのにねぇ」
- 85 :
- 勇者「……俺たちは確かに強くなった。だけど満足するレベルってのはどこだ?」
僧侶「分かりませんね……己の限界を感じられるまで、でしょうか」
戦士「レベル上限まで言ったところで、それは安心とイコールじゃ無い」
魔法使い「どこまで行っても不確定な物よ、満足なんて。諦めない限りね」
勇者「安心は……魔王を倒したときに実感する物だと、俺は思う。世界に平和をもたらすこと」
勇者「一つ、皆に質問したい……が、答えは今言わないで欲しい」
戦士「……?」
勇者「俺も、俺なりに考えたんだ。だけど……正解があるのか否か、答えが一つなのかすら分からない」
- 86 :
- ふむ
- 87 :
- 勇者「この旅の間、皆には色々な事を教えてもらった」
勇者「街から街へ。色々な経験をし、知識を増やした」
勇者「そして……原点が分からなくなった」
僧侶「原点……」
勇者「始まりは……どこだ?」
魔法使い「無謀な問いね……」
勇者「……僧侶、覚えてるか?」
僧侶「はい……?」
勇者「初めて野営をした次の日。俺に勇者の印を見せてほしいと言ったときの、話だ」
僧侶「勿論、です」
……
………
…………
- 88 :
- 僧侶「勇者様、一つお願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
勇者「うん……?何かな」
僧侶「勇者の印を……お見せ戴けないかと」
勇者「ああ……別に良いけど」
僧侶(右手の手のひらに……光る、剣の印)
僧侶「とても……強い力を感じます。混じり気なしの光、そのもの」
勇者「……前に、君と魔法使いが言ってたよね。なんだっけ……光の属性は勇者だけ、だとか」
僧侶「はい……あのとき、説明しようかと思ったのですが……」
僧侶「勇者様は、勇者が世界に一人しか存在しないこと。そして、その選ばれし勇者だけが光を使役できることは……」
勇者「俺は…恥ずかしながら、属性だとか、加護だとかそういうのは知らなかった」
勇者「勇者が世界に一人だと言う事は知ってた。それは親父……元勇者が死んだって事だからね」
僧侶「はい……」
勇者「先に一つ、聞きたい。勇者は……勇者からしか産まれないのか?」
僧侶「はい、と確かに応えることはできません。今の勇者様のケース以外を確かにこの目で見たわけではないので……」
- 89 :
- お気に入りに登録した
楽しみにしてるしえん
- 90 :
- 勇者「そうか……」
僧侶「ですが、勇者が産まれると言う事は、魔王もまた……産まれると言う事なのです」
勇者「!?」
僧侶「それが新たな誕生なのか、復活なのかは分かりません」
僧侶「勇者と言う存在がある限り、魔王もあるのです。逆も……然りでしょう」
勇者「もし、もし……俺が死んだら…?」
僧侶「何年か、何十年か、何百年か……いつかまた、勇者様がお生まれになるのでしょうね」
勇者「……じゃあ、Rないな」
僧侶「勇者様…?」
勇者「俺が魔王を倒して、終わりにしなきゃいけない」
僧侶「……はい、しかし」
勇者「魔王はまた、復活する?」
僧侶「………」
- 91 :
- 勇者「俺の親父は強かった……らしい。母曰く、だが」
僧侶「……存じております。お話の上で、ですが」
勇者「ああ。倒しきれなくて復活したとすれば……俺は、親父以上に強くならなければいけない」
勇者「俺がしくじると、時代の勇者に迷惑がかかる」
僧侶「……強く、なりましょう、勇者様」
勇者「ああ……そうだな」
僧侶「まだ、魔王に目立った動きはありません。しかし……」
勇者「魔物を野放しにするわけにも行かないからな」
僧侶「はい。人の子の身に、時間は無限ではありません。でも……」
勇者「焦らず、確実に。だが迅速に」
僧侶「はい。平和をもたらしましょう」
- 92 :
- ……
………
…………
魔法使い(そんな話をしてたのね)
戦士「……」ムゥ
僧侶「戦士さん…どうしたのですか?」
戦士「その話は……おかしく無いか?」
勇者「そう……あのときは気がつかなかった。否、深く考えなかった」
魔法使い「………」
僧侶「………」
勇者「僧侶も何も言わなかった」
勇者「多分……僧侶も魔法使いも、博識だ。気付いていたんだろう」
勇者「戦士が、今言ったとおりだ」
勇者「時間が合わないんだよ」
- 93 :
- 勇者「俺は、勇者の印を持って生まれたと母が言ってた。て、事は」
勇者「親父は遅くても俺が腹の中に居る間に死んでたことになる」
勇者「だが、産まれたときからこの印がある、と言う事は……」
魔法使い「魔王が存在する故に、勇者が産まれるのだとしたら」
魔法使い「既に魔王は復活、ないし産まれていた」
勇者「……そうだ。俺は、確かに16歳だ。親父は……人間だ。元勇者だ」
勇者「俺は、母から何時も聞かされていた。親父は元勇者。前魔王を倒したのだと」
- 94 :
- 戦士「……勇者が産まれたから、魔王が産まれると言うのは?」
僧侶「それも時間が合いません。勇者様は……人間です」
僧侶「まだ、16歳です」
僧侶「魔王が復活したのは……何時ですか?」
戦士「……王が出したお触れの内容だ。魔王が復活して…既に」
魔法使い「50年は軽く超えた。私達は、勇者のお父様が先代の勇者だとは知らなかった」
僧侶「勇者の血を引く者しか、勇者になれないとしたら」
- 95 :
- 僧侶「何時、貴方のお父様とお母様は、貴方を授かったのでしょうか、勇者様」
魔法使い「僧侶……!?」
僧侶「これは私の勝手な妄想です。あり得ない話です。ですが……」
僧侶「50年前。勇者様が授かり、前勇者様が天に召された」
僧侶「そして、お母様が貴方を連れて、時を超えていらした」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………あり得ないと言い切れないわね。説明は付く」
魔法使い「でも、そんな事を認めてしまうと、何でもこじつけられるわよ」
魔法使い「お腹の中で50年、暖めてた、とかね」
僧侶「そう、ですね……」
- 96 :
- 戦士「……王は知っていたのか?」
勇者「え?」
戦士「お前の父が前勇者だと言う事を、だ」
戦士「知らねば、あのお触れには納得がいく」
戦士「たとえば、お前の母が勇者の印を授かった息子を連れて、16年前にあの国に来た」
戦士「王国は無条件で手厚く保護するだろう。確かな印を持っているのだから」
魔法使い「お触れの説明は付くけど、勇者様の出生の謎の解決にはなってないわよ、戦士」
僧侶「……知らぬ事は恥ではありませんよ、皆様」
勇者「は?」
僧侶「わからないなら、聞きに行けば良いんです。北の塔に出向いた後」
僧侶「レベルアップを兼ねて、私達の街に戻りましょう?」
僧侶「船も貸して戴けるんですし、距離的に陸を行くより近いです」
魔法使い「……はぁ、まあそうだけど」
- 97 :
- 僧侶「北の塔を攻略後、魔王の城に出向くなら」
僧侶「その前に世界を見て回りましょう」
僧侶「……もしかしたら、魔王と勇者様のその……不思議な出生の秘密を」
勇者「解く鍵が見つかるかもしれない、か……」
魔法使い「ふむ」
戦士「……時間があるか?」
僧侶「大丈夫です。多分……」
魔法使い(僧侶……多分、まだ何か隠してるわね)
魔法使い(……後で問い詰めてみるか)
- 98 :
- 勇者「………良し。答えを今出さないで欲しいと言ったのは俺だ」
勇者「今日はゆっくり休んで、明日、北の塔に出発しよう」
勇者「午前中に道具や装備の補充、準備を整えてくれ」
勇者「北の塔にも……答えの欠片が落ちているかもしれないな」
魔法使い「そうね……とりあえず目の前の問題から片付けましょうか」
僧侶「……はい」
戦士「俺はもう少し、鍛錬をしてくる」ガタッ
勇者「俺は………部屋へ戻るよ」ガタン
魔法使い(……今しか無いわね)
魔法使い「僧侶、ちょっと良い?」
僧侶「はい……お部屋で、良いですよね」
魔法使い(……分かってるみたいね)
- 99 :
- 僧侶と魔法使いの部屋
魔法使い「貴女……何か知ってるわよね?」
僧侶「そうですね……多分、魔法使いさんより、少しだけ」
魔法使い「……教えて貰えるのかしら」
僧侶「全部、お教えします……が、勇者様と戦士さんには…」
魔法使い「黙っておけと?」
僧侶「はい……それから、時間を下さい」
魔法使い「は!?」
僧侶「今、全てを告げるわけには。ですが……少しだけ」
魔法使い「なんなのよ、それ……」
僧侶「……私、幾つに見えます?」
魔法使い「アンタ……何言って」
僧侶「知りたく、ないんですか?」
魔法使い「…ッ ……勇者様と同じぐらい、か…もう少し下。見た目は、ね」
僧侶「ですよね。やはり、気がついていらっしゃいましたか?」
魔法使い「………人じゃ無いでしょ、貴女」
僧侶「………はい」
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