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2013年05月家ゲーRPG225: テイルズ オブ バトルロワイアル Part18 (509) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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テイルズ オブ バトルロワイアル Part18


1 :2010/12/18 〜 最終レス :2013/05/09
テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、ナムコ及びバンダイナムコゲームス等とは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。
詳しい説明は>>2以降。
【過去スレ】
テイルズ オブ バトルロワイアル
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230
テイルズ オブ バトルロワイアル Part2
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132857754/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part3
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1137053297/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part4
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1138107750
テイルズ オブ バトルロワイアル Part5
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1140905943
テイルズ オブ バトルロワイアル Part6
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1147343274
テイルズ オブ バトルロワイアル Part7
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1152448443/
テイルズオブバトルロワイアル Part8
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1160729276/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part9
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1171859709/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part10
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1188467446/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part11
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1192004197/l50
テイルズ オブ バトルロワイアル Part12
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1197700092/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part13
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1204565246/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part14
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1213507180/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part15
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1224925862/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part16
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1231916923/
テイルズ オブ バトルロワイアル Part17
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1286810498/
【関連スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part12
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1283236233/

【したらば避難所】
〔PC〕http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
〔携帯〕http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/
【まとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html

2 :
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。
----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。
----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。 
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。
----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。      
 四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。

3 :
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。
----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
*マウリッツのソウガとの融合、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
 シャーリィやマウリッツも爪術は全て使用OK。
----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要になので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。
 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェスターの屠龍のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェスターの弓術やモーゼスの爪術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。
 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。
----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。治癒功なども同じ。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。治癒功などに関しては制限を受けない格闘系なので問題なく使える。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。
----時間停止魔法について----
 ミントのタイムストップ、ミトスのイノセント・ゼロなどの時間停止魔法は通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。
----TPの自然回復----
 ロワ会場内では、競技の円滑化のために、休息によってTPがかなりの速度で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。

4 :
----その他----
*秘奥義はよっぽどのピンチのときのみ一度だけ使用可能。使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 ただし、基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。
*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、
 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
 断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
*またTOLキャラのクライマックスモードも一人一回の秘奥義扱いとする。

【参加者一覧】 ※アナザールート版
TOP(ファンタジア)  :1/10名→○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :1/8名→●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン
                  ●マリアン・フュステル/○グリッド
TOD2(デスティニー2) :1/6名→○カイル・デュナミス/●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :2/6名→●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/○キール・ツァイベル/○メルディ/●ヒアデス/●カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :1/11名→●ロイド・アーヴィング/○コレット・ブルーネル/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
             ●ユアン/●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :2/5名→○ヴェイグ・リュングベル/○ティトレイ・クロウ/●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :0/8名→●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー
                  ●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :0/1名→●プリムラ・ロッソ
●=死亡 ○=生存 合計8/55
禁止エリア
現在までのもの
B4 E7 G1 H6 F8 B7 G5 B2 A3 E4 D1 C8 F5 D4 C5 B3
21:00…E1 0:00…C3 3:00…F2 6:00…H3

【地図】
〔PC〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/858.jpg
〔携帯〕http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/11769.jpg

5 :
【書き手の心得】
1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)

〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)

6 :
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
※基本的なロワスレ用語集
 マーダー:ゲームに乗って『積極的』に殺人を犯す人物。
 ステルスマーダー:ゲームに乗ってない振りをして仲間になり、隙を突く謀略系マーダー。
 扇動マーダー:自らは手を下さず他者の間に不協和音を振りまく。ステルスマーダーの派生系。
 ジョーカー:ゲームの円滑的進行のために主催者側が用意、もしくは参加者の中からスカウトしたマーダー。
 リピーター:前回のロワに参加していたという設定の人。
 配給品:ゲーム開始時に主催者側から参加者に配られる基本的な配給品。地図や食料など。
 支給品:強力な武器から使えない物までその差は大きい。   
      またデフォルトで武器を持っているキャラはまず没収される。
 放送:主催者側から毎日定時に行われるアナウンス。  
     その間に死んだ参加者や禁止エリアの発表など、ゲーム中に参加者が得られる唯一の情報源。
 禁止エリア:立ち入ると首輪が爆発する主催者側が定めた区域。     
         生存者の減少、時間の経過と共に拡大していくケースが多い。
 主催者:文字通りゲームの主催者。二次ロワの場合、強力な力を持つ場合が多い。
 首輪:首輪ではない場合もある。これがあるから皆逆らえない
 恋愛:死亡フラグ。
 見せしめ:お約束。最初のルール説明の時に主催者に反抗して殺される人。
 拡声器:お約束。主に脱出の為に仲間を募るのに使われるが、大抵はマーダーを呼び寄せて失敗する。

7 :
【参加者一覧】 ※アナザールート版
TOP(ファンタジア)  :1/10名→○クレス・アルベイン/●ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/●アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ●デミテル/●ダオス/●エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :0/7名→●スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/●リオン・マグナス/●マリー・エージェント/●マイティ・コングマン/●ジョニー・シデン
                  ●マリアン・フュステル
TOD2(デスティニー2) :0/5名→●リアラ/●ロニ・デュナミス/●ジューダス/●ハロルド・ベルセリオス/●バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :0/4名→●リッド・ハーシェル/●ファラ・エルステッド/●ヒアデス/●カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :0/10名→●ロイド・アーヴィング/●ジーニアス・セイジ/●クラトス・アウリオン/●藤林しいな/●ゼロス・ワイルダー
             ●ユアン/●マグニス/●ミトス/●マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :0/3名→●サレ/●トーマ/●ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :0/8名→●セネル・クーリッジ/●シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/●ジェイ/●ミミー
                  ●マウリッツ/●ソロン/●カッシェル
TOF(ファンダム)   :0/1名→●プリムラ・ロッソ
●=死亡 ○=生存 合計1/48 【優勝:クレス・アルベイン】
禁止エリア
現在までのもの
B4 E7 G1 H6 F8 B7 G5 B2 A3 E4 D1 C8 F5 D4 C5 B3
21:00…E1
00:00…C3
03:00…F2
06:00…H3

8 :
以上、テンプレ終了です。
前スレのリロードをしていなかったので、一箇所ミスしています。
そこについては、お手数をかけますが次スレで修正いただければと思います。

9 :
世界日報(統一教会の新聞)と自民党の見解が同じな件
http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/main.html
2010年12月17日性描写規制/遅きに失した都条例改正
http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh101217.htm
2010年11月29日児童ポルノ規制/子供保護の観点で厳しく
2010年9月19日ネット有害情報/罰則規定を設け厳しく対応を

「マンガ規制条例」の裏に蠢く「警察利権」
竹花豊、青少年・治安対策本部、倉田潤、桜井美香
週刊朝日2010年12月24日号
http://megalodon.jp/2010-1217-1154-21/www.seospy.net/src/up2683.jpg
http://megalodon.jp/2010-1217-1151-29/www.seospy.net/src/up2682.jpg

石原慎太郎が画策するマンガ規制条例可決の愚
苦情は月2・5件 被害実態もない 
戦前の言論規制は「エログロ」から
この条例案の陣頭指揮をとる、都青少年・治安対策本部についても、
「出版物の規制を、警察庁の出向者が加わった部署が担うのはおかしい。
かつて、青少年条例は生活文化局の所管でした。
少なくとも、治安組織から条例の所管を外し、別の部局に配置換えすべきです」(長岡氏)
ちなみに、現在、都青少年・治安対策本部長を務める倉田潤氏は、
06年に公職選挙法違反の架空調書をデッチあげた志布志事件(03年)が発覚した際に、
鹿児島県警本部長を務め「自白の強要はなかった」と県議会で答弁していた人物だ。
戦前、治安維持法下による言論規制は、漫画本などの「エログロ・ナンセンス」の取り締まりから始まった。
週刊朝日2010.12.17
http://megalodon.jp/2010-1207-0912-46/www.seospy.net/src/up2550.jpg
http://megalodon.jp/2010-1207-0907-10/www.seospy.net/src/up2548.jpg

10 :
改めて新スレ立てていただきありがとうございました。
それではいささか急ではありますが11時から投下を始めたいと思います。
お気づきの方でお手隙でおれば、支援いただければ幸いです。

11 :
O.参加者を配置する8×8の盤を「会場」、王を配置する1×1の盤を「本拠地(真)」と以後便宜的に定義する。
第六戦noticeより
1.「会場」と「本拠地」の二つの盤は連続的に隣接していない。
(1)式より
2.特殊移動を除き、駒を「本拠地」に移動させることはできない。
(2)式より
3.この特殊移動を「転移」と定義する。
第六戦noticeより
4.駒を盤の外側へ移動させる場合は“絶対に”「本拠地(真)」を通らなければならない。

(3)(4)式より
5.駒を「会場」の外へ移動させる場合は「会場」より「転移」を行い「本拠地(真)」へ移動しなければならない。


第一戦及び第六戦noticeより
6.王を除く全ての駒の初期配置は「会場」のCD45の2×2マスである。
第一戦及び第六戦noticeより
7.この4マスはその構成が「本拠地(真)」と相似している。
(7)式より
8.この4マスを「本拠地(偽)」と定義する。
(6)(8)式より
9.王を除く全ての駒の初期配置は「本拠地(偽)」である。
主催情報より
10.王を除く全ての駒は初期配置以前に「本拠地(真)」を見たことは無い。
ここで第六戦noticeより
11.「転移」による移動を行う場合「現在位置」と「転移先位置」の2マスを確定させなければならない。
よって(9)(10)(11)式より
12.王を除く全ての駒が「現在位置:会場」より「転移先位置:本拠地」へ「転移」しようとした場合
   「本拠地(真)」の位置を知らない駒の「転移先位置」は自動的に「本拠地(偽)」になる。
(12)式より
13.「本拠地(真)」に一度でも配置されていない駒は「本拠地(真)」に「転移」できない。
(5)(13)式より
14.「本拠地(真)」に一度でも配置されていない駒は「会場」の外へ移動できない。

故に
15.【「本拠地(真)」に一度でも配置されていない王を除く全ての駒は「脱出」出来ない。】/ QED

「つまり――――――――――どういうことなんでしょうか……」
サイグローグはそういって、白煙と共に暗い天井へとぼそり呟いた。

12 :
「とまあ、そんなことも最初は思いましたがね……この紋章を頂いた時は……
 ……盤上の駒は、誰一人として脱出不可能……まあ、こんな面倒な手順を踏まずとも……平たく言ってしまえば、
 【本拠地を通らなければ脱出できない】【本拠地に入ったことの無い駒は本拠地を知らない】【本拠地を知らなければ会場から本拠地には入れない】
 この3つの組み合わせというだけなのですがね…………」
そう呟くサイグローグは煙管を左手で弄び、薄暗い部屋の中に紫煙をくゆらせている。
本来の絶望側プレイヤーであるベルセリオスが構築した55の駒を閉じ込める鉄檻を眺めながら、道化は溜息をついた。
1つ1つは簡単に抜けることができるのに、3つ同時には絶対に抜けられない悪魔の監獄。
超技術フィールドでも膨大な監視でもない、たった3つの公式の組み合わせによって構成された王を守る論理の城塞。
エンブレムを手にし主催側の情報を知った今だからこそ、ジャッジでもあるサイグローグはその檻の強固さを実感する。
ベルセリオスは本気で駒を閉じ込めるつもりだったのだ。王に反抗はおろか、あの盤上から出してやる気さえない。
執念さえ感じるほどの完璧主義には、サイグローグでさえ『何もそこまでしなくてもいいのに』という想いを禁じえない。
水の一滴さえ漏らさないこの城壁は、一体王を何から守る為のものなのか。一体何を逃がさないようにするためのものなのか。
道化すらそう疑問を抱きたくなるほど、このシンプルな迷宮は完璧だった。
 
「私が見る限りでも、抜け穴のない……さながら出口無きラビリンス―――――――――――――――だったはずなのですが」
そう。完璧“だった”。つい先ほどまで―――“更なる迷宮が現れるまでは”。
サイグローグが視線を下げると、紫煙の向こうに見慣れた盤があった。
8×8の、何度見たかもわからない世界、唯一今までと違うのは“そこに駒が一つしか残っていない”ということだけ。
「少しはしゃぎ過ぎてしまいましたか……完全に虚を突かれてしまいました……いやはや、喰えないカミサマです……」
サイグローグが王を動かして放送の一手を行っている間に、全てが変わり、そして終わってしまった。
一体何が起こったのか、何故こうなったのか、こんなの有り得るのか。
様々な“謎”が盤上を蠢き、王と法を司るサイグローグでさえその全容を見渡すことができなくなっている。
「真逆、放送に被せてくるとは思いもしませんでした……
 例えるならば私がツモ山からじゃんぱいを掴んで捨て牌を切るまでに7枚全部をすり替えられたようなもの……
 いやはや、とんだギャンブラーがいたものです……」
迷宮封印<パズルブース>。それが人間の作り上げた絶対の檻に対する、女神の答えだった。
いや、これは最早答えとは呼べないだろう。むしろその真逆……“謎”の極致だ。
『この密室からは絶対に脱出できません。どうやれば脱出できるでしょう?』という問いに対し
『私は脱出しました。さて、どうやって脱出したでしょう?』と応じたのだから。
「場所が場所ならば『質問を質問で返すなあーっ!!』と怒っても良いのでしょうが……神様は学校を出ていないでしょうしねえ……」
サイグローグは煙を目いっぱいに吸い込んで、三度大きな溜息と共に白煙を吐く。
これではまるでトンチだ。屏風の中の虎を捕まえさせるはずが、逆に屏風に消えた虎を探す羽目になっている。
絶望側が用意した謎を更に大きな謎で覆い隠すとは。放送という絶望手によって隠された神の一手―――――それは正しく“神隠し”だった。
「という訳でグリューネ様……私、とんと分かりませぬ……そろそろ、答えを教えて頂けませんでしょうか……?」

13 :


14 :


15 :
そう言ってサイグローグが顔を上げ、盤面から視線を対面へと移す。
そこには、女神はいなかった。代わりに存在感を発揮しているのは、女神が要るべき場所に屹立する一体の像だった。
木目と金属の意匠によって組み上げられた、両腕で自らの胸を抱きしめる聖母マリアの彫像。
聖母が抱擁せしは、咎を持った罪人。その茨の腕に抱かれた罪人は感激のあまり絶叫と自ら血液と共に罪を洗い流す。
故に人はそれをこう呼ぶ。アイゼルネ・ユングフラウ――――――鉄のR<アイアンメイデン>と。
「鉄のRといっても、実際は木で出来ているモノが殆どなんですが……その中でも随分と出来の良い品です……通販で買った甲斐がありました……」
何処から持ちだしたのか、何時の間に運び込んだのか。そんなことさえも馬鹿らしくなるほど中世の拷問具はその存在を誇示していた。
通販での謳い文句は縁結び・恋愛運上昇の御守りだといったか。だが、そんな華やいだ効能など消し飛んでしまうほど、その像は赤く染まっていた。
サイグローグが指を弾くと、ガシンとRが震え、聖母の瞳や扉の隙間からじわりと紅い汁が血涙の如く漏れ出す。
像の股下を大きく濡らす血の池は、とてもではないが1回や2回で出来るものではない。既にRは10回以上涙を流している。
例えRの中が二重扉になっていようが、そもそも棘が付いていなかろうが道化にとっては関係無かった。
閉ざされている限り、アイアンメイデンの中がどうなっているかなど誰にも分からない。ならばそこから血が出ようが何が出ようが矛盾など存在しない。
2つの力を備え、天に最も近い場所に座すサイグローグにとって、閉ざされた鉄のRの内側を弄ぶことなど造作もないのだから。
だが、サイグローグが相対する存在もまた天に座す女神だ。
鉄のRが恥じらう様にゆっくりと開かれると、そこからグリューネが現れる。
拷問具から出てきたにも関わらずその立ち居振る舞いは一流のモデルの如く優雅で、
先ほどまでメイデンから噴出していた血は一体何だったのかという疑問さえ蕩けてしまう。
「何度問われようとも同じです。私が示したモノが全て。それ以上を答える義務はありません」
そう言ってグリューネは拷問具の中で少しだけ乱れた銀の髪をその手で中空に梳き、どさりと椅子に座る。
普通ならば不調法であるはずの仕草さえ華美に映るその美しさに誰もが思うだろう。
たかが鉄のRごときに、この神なる美貌を傷付けることが出来るはずがないと。
サイグローグは知ってか知らずか、女神の美しさから視界を掌で覆うようにして仮面を擦る。
女神に言われずとも、道化にもそれが無駄な問いであることは重々承知していた。
アイアンメイデンに閉じ込める前にも、サイグローグは既にこれと同等な“質問”を女神に繰り返していたのだ。
額のティアラに電気を流した。深い井戸に落とし水を流したetcetc。
およそ考え付く痛みを伴う心無い拷問を幾千幾万と、休む間もなく与え続けたのだ。
その中には当然“女”神にしか通用しないモノや、一目見ればお肉を暫く食べられなくなるモノもあったが、
その全てを克明に記すことさえも憚られる程、その毒に塗れた拷問は悲惨に過ぎた。
「……CERO:Z解放をご購入頂ければ全て公開したのですが……ええ……ま・こ・と……残念無念です……」
煙管を回しながらサイグローグは冗談めかすが、道化にとってこの状況は冗談ほどには笑えるものではない。
普通のプレイヤーならばそれだけで泣き叫びながら、どうか止めてくれと答えを吐露しただろう。
だが女神は決して折れなかった。決して口を開くこと無く、その全てをそよ風の如く流しきったのだ。
アイアンメイデンの前には、拷問のプロを呼んでまで女神の口を割らせようとさえしていたが、それさえも効果が無かった。
ちなみにそのプロがどうなったかと言えば、自慢のドリルで女神を喘がせるよりも前に、
女神の器の大きさに自信を喪失して白化してしまったのでサイグローグが速やかに片付けてしまった。
中年が石コロ遊びに興ずる彫像など、何処に置こうが部屋の景観を損なってしまうのだから。
「まあ、別の意味で十二分に愉しませていただきましたから良しと致しましょう……
 しかし、本当に教えて頂けませんでしょうか……? 一体この一手、如何なる思惑で打たれたのですか……?」
「どうしました、道化。貴方らしくない愚かな問いです……それこそ、答えるとでも?」

16 :
道化のくたびれた様な問いかけに、女神は口元を手の甲で押さえ苦笑する。サイグローグもまた、煙管を噛みながら苦虫を潰す様にして笑んだ。
自分の打った一手について「こう打てば貴方はこう打つので、後何手でチェックメイトにできます」などと喋るプレイヤーがいるだろうか。当然反語だ。
その思惑を推測し、自分の戦略の中で愉しむこと。それもまたこの戦いの愉悦の一つなのだから。
もっとも、神の放ったこの一手は推測するどころの話で無かったのも事実ではある。
「何を悩むことがありますか? 私の一手が不服であれば、強制破棄で砕いてしまえばいいでしょう?」
「……クククク、グリューネ様も存外陰湿でいらっしゃる……それが出来れば労苦はありません……」
女神の挑発にサイグローグは自分の額を小突きながら項垂れた。
矛盾を見つけ出してこの一手を破壊してしまう――――確かにそれは最も確実な対応法なのだ。
サイグローグの力ならば僅かな矛盾の一つでもあれば、そこから鎖を撃ち込み粉々のバラバラに砕いてしまえるだろう。
“だが、矛盾があるかどうかも分からないモノ”を一体どうやって砕けというのか。
糠に釘、水に刀、暖簾に腕押し、カニに武器。最後の一つは若干意味合いが異なるが、つまりはそういうことだ。
(得られた駒の情報は飛び飛びの音声だけ……これだけではどうとでも解釈できてしまう……)
これだけの大掛かりな駒の消失、探せば矛盾はあるかもしれない。だが、それを立証することがあまりに困難なのだ。
曖昧過ぎて逆に矛盾を見いだせない。それを見つけ出せなければ、崩しようがない。
ベルセリオスの論理の檻を剛の極みとするならば、グリューネのそれは柔の極み。
人間は神を檻に閉じ込めたが、神は煙か光となってひゅるりと網目から逃げおおせたのだ。
(さらに押し込んで問い詰めても良いのですが…………これ以上は墓穴ですね……)
ならば、この謎の正当性を問い詰めるという手もある。『これでは私が手を進められない。この謎は本当に解けるのですか? 解けなければ矛盾です』と。
だが、サイグローグはそうしなかった。プレイヤーとしての経験は浅くとも、ここまでの戦いを見続けてきた経験がその一手に死の匂いを嗅ぎ取っている。
恐らく、否、間違い無く“グリューネはそれをこそ待っている”。
もしサイグローグがうっかりそれを問うたならば、女神は満面の笑みでこう答えるだろう。
『解けます。では、解けぬ貴方の代わりに今から答えを見せましょう』と。
そうして、悠々と種明かしと共に駒を更に進めるのだ――――――恐らく、チェックメイトまで一気に。
つまりは事実上の絶望側のパスだ。答えを持つグリューネだけが延々と手を進め、その答えを盤上にて示すだろう。
それが矛盾あるものであったならばまだ救いがあるが、もし矛盾が無かったら……恐らく、その時にはサイグローグの逃げ場は無くなっている。
(グリューネ様のあの自信……一か八か、運否天賦に賭けるには少々分が悪いですか……)
人間を観察することを趣味とするサイグローグは、神とは言えどグリューネというプレイヤーをある程度見極めていた。
グリューネというプレイヤーを一言で表すならば『絆が伝説を紡ぎだすバトルロワイアル』だ。
意味や想いなど、一つ一つは弱くか細い糸を紡いで強大な縁とし、圧倒的な火力で攻守ともに圧倒するスタイルを得意とする。
一度陣形が完成すればそれは七色の伝説となる。そうなってしまえば、彼女の奇跡の前に防御も攻撃も全く無意味だ。
ベルセリオスとの戦いからみても、女神が全力で放つ奇跡は多少の矛盾ではビクともしないだろう。
謎が解けずにパスを続けるということは、彼女が奇跡を構築するのを指を食わえて見逃し続けるということだ。
逃げ場無しの状況であのタイムストップ級のクライマックスコンボを食らったならば、サイグローグとて肉片が残るかどうか。
「……おや……もしかして私……かなり窮地ですか……?」

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さも今気付いたかのように白々しく、サイグローグは煙管の灰を落とした。
つまり、サイグローグはこの神の一手を壊すことは出来ないし、かといって解けないからと見逃すことも出来ない。
こうして思考するだけでも、彼女に奇跡を生み出す時間を与えてしまっている。
向かい合わざるを得ないのだ、この神が構築した迷宮の謎へと。
「全く……絶望…………王を操る側が『こうさつ』に挑む羽目に陥るとは…………では、参りますよ……」
サイグローグが煙管を虚空に片付けて盤をコツンと指で叩くと、一枚の羊皮紙が現出した。
道化はそこに、何処からか出した羽ペンに黒インクを吸わせ、洒脱な文体で自分の名前を書き記した。
「代行者サイグローグの名に於いて……オーダー発令…………“全軍集結しなさい”……」
その時だ、何処からともなく金属音が鳴り響いたのは。
重厚な白銀の鎧兜と腰に佩いた剣の擦れる音。無数の蹄鉄が地面を撃ち鳴らす音。
それは即ち、戦争音楽。戦士達がその命の価値を今一度問い質す直前の、開戦前のプレリュード。
序章が鳴りやむと、そこには錚々たる演奏者達がいた。彼らは己の楽団の御旗を立ててその出自を隠すことはしない。
魔科学を追及せし北部軍事王国軍――――――――――――――魔導砲2門以下、参軍。
神の眼を封印せし神殿を擁する世界最強の王国軍―――――――――――――七将軍旗下、参陣。
鏡面世界唯一の王国軍、賢王に統治された雪下の王国軍、繁栄世界教会騎士団、推参。
獣王に統治されし王国正規軍、七聖連合宗主国近衛軍、参戦。
ヘイズル神聖王国軍、フレスヴェルグ国家騎士団、ニーズホッグ新帝国軍、直参。
これだけでも半分も数え切れぬほどの軍団“群”が、サイグローグの背後に荒海の如く波打つ。
法を――――そして王を守る秩序の力が、部屋の間取りなど吹き飛ばしてしまうほどに集結していた。
その中から、白馬に乗った一人の騎士が躍り出る。真白き正義の甲冑を輝かせた、あの法の守護騎士だ。
「王の代行として……貴方にこの“群団”の全権を委任します……法の守り手としての務めを果たしなさい……」
横に並んだ騎士――――新任騎士団長にサイグローグは視線を合わせること無く機械的な命令を発する。
目で伝える必要などない。そこに騎士団がいて、そこに王を脅かす反逆者が隠れている。ならば果たすべき任務はたった1ツ。
「Order is only one……“生死不問<デッドオアアライブ>”……謎のヴェールに隠れた卑しき犯罪者7名を――――」
評議会の命令に呼応するように、騎士団長が剣を天に掲げる。それに従う様に、無数の兵士達が槍と剣を力強く構える。
兎にも角にも、消えてしまった7つの駒の存在を再び盤上に確定させなければ話にならない。
存在を確定させてしまえば、どのようにでも対処できる。
隠れているならば、見つけ出すまで。隠れることができる場所を、創りだすまで。彼らが隠れた場所を、棺桶とするまで。
迷宮ごと、焼き払ってしまえ。
「―――――見つけだして処刑せよ……!」


21 :
 

22 :


23 :
世界が、ひねくれ切ったアルカナルインが爆発した。
そう思えるほどの怒号と無数の足音が織り混ざった地鳴りが、一直線に迸る。
目指すは女神、そしてその奥に隠れた身元不明の7人の容疑者へと。
「考察提示……7つの駒はやはり直接盤の外側へ抜けだした可能性があります」
「反論します。絶望側代行に、ベルセリオスの組み上げた檻の絶対性を確認。“会場の駒は盤外に出る際、絶対に本拠地を通ります”!」
「絶望代行、及び判定者として回答……この檻に関するベルセリオス様の絶対を保障します……“会場の駒は盤外に出る際、絶対に本拠地を通る”……」
サイグローグが提示した一手が一軍の一斉突撃と化し、女神の喉元へ突き抜ける。
だが即座にグリューネが右手で空を横一文字に切ると、地面から真っ赤な溶岩が噴出して騎士の鎧や骨ごと溶解させていく。
女神の神術に対し、サイグローグは法律書を読み上げるように判定をその被害報告と共に告げた。
「ならば、本拠地に到達後にどこかへ隠れた……もしくは到達後、即座に脱出した可能性があります……」
「否定します。絶望側代行に放送時の王の状態を確認。王は本拠地に存在する駒の生体反応を確認していました。そこに抜けはありますか!?
 “参加者が本拠地に存在していならば、王はその生体反応を確認できます!!”」
「絶望代行回答、反論を保障します……“王は本拠地の生体反応を確認できます”
 ……判定者より追加補足……“本拠地内に限定して、王の観測エリアに死角はありません”……」
再び放たれた左翼からの弓矢の雨嵐を、グリューネが放った蒼き輝きが掻き消してしまう。
そして跳ね返った矢の一本一本が放った本人めがけて戻り、その喉や心臓を突き刺していく。
やはりベルセリオスが組み上げた密室は有効に機能している。密室から出る扉は1つ、そしてその扉は常に王の監視下にあったのだ。
「王が“天才”にアンデット化の処置を施していた事実を提示……7駒全てアンデットになった可能性……死体ならば生体反応は確認できません……」
「否認します。判定者に法の効果を確認。“死亡確認無き死者の存在を禁ずる”!!」
「判定者回答……法の効力を認めます……“生者は死を確認しなければ死者にはなれず、死者でなければアンデットにはなれない”……」
だが、更に死角を潰そうと騎士団は右翼から更に重装騎兵二個師団、突撃猟兵四個旅団を投入。
錐行陣で突撃し、前線の死体を蹄鉄でブチブチブチブチとミンチにしながら女神の脇腹を抉りにかかる。
しかし、女神の防壁は未だ機能を続け、氷壁と化した防御の前に騎兵は全て凍死してしまった。
だが戦果報告を紡ぐサイグローグは満足気に笑んだ。これでいい、これであの7駒全てを“会場に閉じ込めた”のだから。
その事実に比べれば、たかが三軍壊滅など必要経費でしかない。所詮は盤外の駒だ。換えは幾らでも効く。
たった一人、たった一人が女神に一太刀入れればいい。それで女神の持つ一手は消滅する。
「駒が全ての首輪を外した・壊した可能性を提示します……生死判定は首輪によるもの…………外してしまえば反応が無くなる可能性がある……!」
「却下します。例え王がそれを認識できなくとも“私達は認識が可能です”!」
「プレイヤーによる否定有効……例え王が知らなくとも、私達は認識できる……首輪の有無は、この謎に影響しない……」
死体の山以上に積み重なっていく痛みと怖れとそれを忘れる為の怒りの断末魔が空間を満たすが、サイグローグの報告にとっては何の阻害にもならない。
無理矢理の脱出・本拠地での潜伏説をほぼ完全に抹消された……否、“本当の意味で7駒を会場に閉じ込めた”騎士団はついに砲撃と共に大攻勢へと転ずる。
この戦争の中で恐らくは最重要となるであろう要衝――会場潜伏説を抑えようと、無数の兵士達が命を散らせていく。
一体何が彼らを戦いへと駆り出しているのだろうか。
それさえも瑣末なことと踏みつぶしながら、騎士たちは謎へと突き進んでいく。
謎に覆い隠された謎を暴き、その答えをR為に。

24 :
この戦いは、プレイヤーによって生み出された全ての可能性が真実となる資格を持つ。
そして今グリューネは自らが創りだした謎によって自分の持つ一手―――――7駒を王から逃がす1つの可能性を守っている。
だが、それと同等の一手をサイグローグが提示できれば“どちらを真実と選ぶかはプレイヤーの判断だ”。
だからこそサイグローグはこの騎士たちと同じく無数に存在する可能性を、1つでも多く届かせようと雨霰に降り注がせ、
グリューネはその全てを神の一撃で押し流し、サイグローグの放つ騎士たちを鏖殺し尽くす。
相手の持つ可能性を嘘と殺害する為に、自分の持つ可能性を真実と創生するために。
盤上に於ける真実を探す『考察』ではない『こうさつ』。
真実の創り合い、可能性の殺し合い――――――――――――それこそが、彼らの本当の『考殺』に他ならない。
「会場がバテンカイトスである説を用います……! 精神世界であるが故に……駒は全てデータ的存在であり……削除によって消えた可能性が……!!」
「本気で有り得ると思っているのですか!? 絶望側代行に確認。“データであろうとなかろうと、消えた痕跡を王は確認していない”!!」
「絶望代行回答……どちらにせよ痕跡は確認できません……“存在が生身であるかそうでないかはこの謎に影響しない”……!!」
ほぼ全ての兵力を潰され窮地にあるはずのサイグローグが腹の中で笑んだ。
騎士団の殆どを殺しているのが女神の力ではなく、ベルセリオスの密室の硬さであり、
自分が絶対に通れない壁にぶつかってRと騎士たちに命じていると理解していながらもなお嗤っていた。
駒は脱出していない。本拠地にも行っていない――――――つまり、まだ会場内だ。兵力の半分を殺して確認した。
そして状況から見て首輪は恐らくまだ解除されていない、更に、データや精神的な存在である可能性も潰した……
それを、更に半分の死体の山で塞いで潰した。ならばこれで終わりだ。
サイグローグが再び王の紋章と法の書を重ね合わせ、守護の光を生み出す。
逃げ場を全て死体で塞がれたグリューネの持つ謎の答えを――――希望の輝きを消し去る、真実の光を!
「ならばこれでチェックです!……宣言・主催者行動<光竜滅牙槍>ッッ……!! 
 【7駒の消失を王が確認……非常事態による特例を発令……“現時点で参加者7名の首輪爆破措置を行いました”】……ッ!!」
生きた意味もろとも木っ端微塵に吹き飛んでいく兵士達、死に行く理由も木っ端微塵に吹き飛ばしていく神術。
その嵐中を辛うじて駆け抜けた法の守護騎士が剣に天の光を収束させ、眩い程の光の龍を女神に向けて穿ち抜いた。
会場の中にいるならば、7駒が何処に隠れていようがこれで死ぬ。首輪によって殺せぬ駒など存在できない。
死ななければ、会場の何処にも存在しない。“会場内から出られないのに、居ない”――――論理破綻だ。法の光の前に女神の迷宮は破壊される。
避けなければ必殺。しかし避けることは許されない光の一撃が女神を狙い穿つ。
駒が消えたからと言って首輪即爆破など、無粋極まりないものだろう。
だが道化にとっては知ったことではない。グリューネが尻込みして7駒の居場所を教えれば爆破を止めればいい。
言わないのであれば……この一手が空気を読んでなかろうが、会場内のどこに隠れていようが、殺してしまえば問題は無い。
どちらにしても希望は潰えて、これにて終了――――――
「無駄です―――――判定者に結果判定要請。王はその死を確認できましたか!?
 “存在しない駒の首輪を爆破を確認することは何人にもできません”!!」
だが、女神の奇跡は容易くなかった。
女神が正面ににかざした右手から蒼き障壁が生み出され、法に輝く光の龍槍を完全に防いでいた。
生死さえ謎のまま。矛盾も真実も覆い隠す闇の底に、光は届かなかった。
そして、空いた左手より振り抜かれた悪魔の槍が一直線に突き進み、守護騎士の鎧を貫いて射抜く。
「くっ……判定……通しです……“王による爆破指示は確かに行われましたが、首輪の爆破を確認できません”…………」
サイグローグによって述べられた結果に盤上が静まりかえる。
爆破すれば問答無用で死亡を確定させる王の首輪も、存在しない人間をRことはできない。法に従う無辜の民を斬ることはできない。
剣を以て切り拓くことが出来なかった騎士はガクリと膝をつき、その動きを静止した。
全ては決した。団長につき従う様に、その背後に可能性を失った騎士たちの骸が、海のように横たわっている。
法の光であろうが、謎の持つ闇を全て照らすことはできなかったのだと。


25 :
 

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28 :
「これでも、届かないというのですか……」
倒れ伏す夥しいほど堆く積まれた騎死の墓標を横目に、サイグローグは口元を押さえて唸りを堪えた。
無論、全てを賭してその王命を遂行しようとした忠臣達に対する労いなどではない。
盤外へ逃げ出した訳ではない。死体で密閉した。
本拠地に隠れ留まっている訳でもない。死骸で封鎖した。
首輪をはずした訳でもない。死蝋で塗り固めた。
不正に消失した訳でもない。死者で閉じ込めた。
生きて出ること叶わぬ死の密室。なのに、その中で殺そうとしても―――――――――――その生死すら確認できない。
額を指で小突きながらサイグローグは頭を捻るが、この謎に対し打開策を見いだせない。
あまりに酷い論理破綻のように見えるのに、何が矛盾が分からないから通さざるを得ないとは何たる皮肉か。
道化は更なる抜け穴を探そうと考えるが、その可能性を一向に見つけられない。
考え得る可能性は全て叩き壊されてしまった。しかも、女神の力ではなくベルセリオスの檻の硬さによって。
ベルセリオスの絶対の檻がなまじ強力過ぎるが故に、可能性を消してしまうのだ。
可能性を考察するサイグローグの姿は、まるで密室に閉じ込められたのが道化の方であり、
懸命に檻から逃げ出す為に存在しない抜け穴を探しているかのようだった。
難易度UNKWOUN所ではない難易度GODの迷宮。ここに、出題者と回答者の立場は完全に逆転していた。
「どうしましたサイグローグ……貴方が次の手を進めぬというのであれば、私が先に手を進めさせていただきますが……?」
グリューネが気力と自信に満ちた声でサイグローグに甘い言葉を紡ぐ。
謎という最強の楯で駒を守りながら、一方的に王まで駒を進めていく心算であることは疑いようもなかった。
(さて…………どうしましょうかね……)
女神の魅惑的な睦言にサイグローグは煙管を銜えて煙を肺に充たし、状況を整理する。
(この状況で私が取ることのできる戦略は2つ……1つは謎を解くことを諦め、この結果を受け入れること……つまり狂剣優勝で戦いを終わらせること……)
7駒が消えてしまった以上は仕方が無い。とりあえず与えられた結果を唯唯諾諾と受け入れて、この戦いを終わらせてしまうこと。
優勝者が決定してしまったのだから、その結果を以て終わらせることも1つの方法ではある。
元よりサイグローグは雇われプレイヤーであるからして、ちゃっちゃっと手仕舞いにしてしまうのもアリではある。
(ですが……これは不可能です……48人のバトルロワイアルでいいならこれで終わらせられるでしょうが……
 “私が代行しているのは55人のバトルロワイアル”……7駒足りない状況では終わらせられません……)
だが悲しいかな雇われプレイヤー。雇用主の指示には従わなければならない。
恐らくグリューネもそこを読んだ上でこの謎を仕掛けている――――――55より減っては不味いということを。
もっとも、グリューネとて本当に7駒に消えられても困るはずなのだから、おあいこだが。
(となればもう1つは、この謎を考え続けること……これも良策とは言えません……それならいっそグリューネ様の回答提示を待った方が早い……)
ここまで考えて可能性が見つからなかったのだ。これ以上時間を費やした所で正解が見つかるとも思えない。
直にグリューネが揚々と彼女自身の持つ可能性――――『正解』を示しに来る。そうなっては手遅れだ。
それまでにサイグローグが正解を見つけそこに矛盾を見出すか、新たな可能性を提示できない限り、
唯一の可能性であるグリューネの奇跡――――『正解』は無二の真実として確定する。
(建前上にはどうとでも取れる謎であるが故に通しになる、しかしその実あり得る解答……可能性は極めて限られている……)
ベルセリオスの創った密室を逆に利用した謎、それが解けるまで道化はパスを強いられ続けて反撃の機会さえ奪われる。
(つまるところ……謎を解けぬ私にはこの七駒に触れることはできない……触れられるとすれば王の喉元に剣を突き付けられた後……
 私に王を守る術は無く…………この戦い、既にしてチェックメイト――――――――遅かれ早かれ終了ということですか……)
女神の放った強烈な手を前に、サイグローグはただ指を銜えて黙り続けるしかないのだ。それは、なんとも。

(―――――――――――――――“面白く、無いですね”……)

29 :
  

30 :


31 :
サイグローグが机を指で叩きながら黙考する姿を見て、グリューネは自分の一手が道化に通じていることを確信した。
煙も吹かさず、お喋りもせずに考え続けるのは、本気で謎に窮している証だ。
あの道化にはこの謎は解けない。少なくとも、解けるまでに今しばらくの時間はかかるはずだ。
後はその間に手を進めて、全ての“準備”を完成させれば――――――――――――――
「ミニゲームというものが……ございますね……」
その時放たれたサイグローグの言葉を理解するのに、女神ほどの存在でも幾分の時間を必要とした。
負けを認めての諦めか、もがき続ける悪態か。
そのどちらかが出てくると思っていた女神は、まさか無関係な言葉が出てくるとは思いもしなかったのだ。
「かけっこや……鬼ごっこ……ダンスに……スシにウェイトレス……おじさんもいましたし……夢の中にもあります……」
サイグローグは肺に溜めた煙を口からリングにして何個か吐き出し、それが消えるまでぼーっと見上げながら言葉をつづけた。
「得てして……やらなくても良いのですが……物語を全て愉しむとなれば……ついつい挑戦したくなるもの……
 物語を十全に愉しむための……さながら素材のうまみを引き出す香辛料のようなものですか……」
一体何のことを言っているのだろうか。そう思う一方で、グリューネはその道化の言葉から耳を離すことができなくなっていた。
顔を天井に向けながらも、そこ言葉そのものに目があるかのようにサイグローグの意識は盤上から反れていない。
「ですが……強過ぎるスパイスは時として……舌を痺れさえ……料理そのものの風味を殺してしまう……
 料理を純粋に愉しむ為には……むしろ邪魔な存在となってしまう…………」
ねめつける爬虫類の如き視線。いつも通りの気色悪さのはずの気配に、グリューネは今までよりも少しだけ多く唾を飲み込んだ。
盤を見るサイグローグの意識が、僅かに変わったような雰囲気を覚えたのだ。
「故に私はこう思うのです……料理にスパイスをかけるかどうかは……御客様が選べるようでなくてはならないと……
 “それを振りかけないという選択肢があってこそ……スパイスは料理を彩ることができる”のではないかと……」
絶体絶命のはずのサイグローグが呟いたのは、完全敗北の宣言ではなく唯のモノローグだった。
不可視の剣を突き付けたはずのグリューネは、道化の口から出てきた命乞い以外の言葉に眉をひそめる。
「どういう、意味ですか?」
「いえいえ……感服いたしましたということですよ……このサイグローグ……グリューネ様の迷宮……解くことができませんでした……」
それはサイグローグの素直な言葉だった。存在自体が捻くれ捩じれ曲がったこの道化の言葉の中では一番素直だっただろう。
女神の思惑通り、全ては終わる。終わってしまう。永遠に遊べるおもちゃなど存在しない。
「このサイグローグ……本心を申せば……出来ることならばこの遊戯……
 8つの駒で……出来る限り永く永く遊びたかったのですが……この神の一手の前では最早それも叶いませぬ……
 ならばどうして永遠に続けたいなどと我儘を申せましょうか…………終わらぬ物語など無い………しからば……御仕舞でございます……」
そう言ったサイグローグは仮面の奥の瞳を瞼で閉じ、そのまま煙管から煙を吸った。
永く永く味を確かめるように、まるで最後の一服を愉しむように。
グリューネは少しだけ急く様にして言葉を紡ぐ。素直な言葉のはずなのに、小さな針の筵を羽織るような痛みに包まれて。
「認めるのですね? ならばこのゲーム、終了を―――――――」
女神がそう言い切る寸前だった。道化の煙管がガンと盤へと縦に撃ちつけられ、突き刺さったのは。
「ええ、御仕舞ですよ―――――――――――――こんなミニゲーム……下らない“考察ごっこ”はね…………ッ!!」
「なッ!?」
グリューネはまだサイグローグというプレイヤーを理解し切れていなかったのかもしれない。
それを見たグリューネの驚愕を前に道化の口元が喜悦にへし曲がる。
その笑顔は陰鬱な嘲笑であり、狂悦の破顔一笑だった。
サイグローグにとってこの戦いは“自分がどれだけ愉しめるか”でしかないのだ。
それだけが道化の心であり、その心にのみ隷属する。
だから嗤い続ける。だからおどけ続ける。だからアソビツヅケル。
もう終わらせるしかない? 結構、だったら終わる間際まで遊び尽くすだけだ。
全力で、徹底的に―――――――――“盤をブチ壊してでも”。

32 :
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

『――――――クククク、ハーッハッハッハハハァッ!! あったぞッ! そうか、その手があったわあアァァァッッッ!!』
帳が完全に降り立ち、かつて惨劇を見下ろし続けたあの双月が浮かぶ夜空にミクトランの嘲笑が満たされる。
理解出来ぬものへの恐怖に充たされたあの絶叫、その後の異常な放送事故より幾秒経った後か、
腹の底から、腸をねじり切ってしまうのではと心配してしまうほどの爆笑が闇夜を斬り裂いて放たれた。
座る者の居なくなった野外のウッドチェアに座ったクレスは魔王の外套、その残骸を口で切りながらそれを聞いていた。
『イッ、ヒヒッ、ヒャーヒャヒャヒャ……あ、ああー、済まん、済まん……少々手違いがあった……忘れてほしい……ん? んンん〜〜〜??』
腹を抱えながら背を屈めて息を整えているのが手に取るような笑いから落ち着いたミクトランが、突如ワザとらしく何かに気付いたような声を出す。
『今しがた、新たなる死者の情報が入った。本来ならば次回放送にて伝えるべきだが、特例だ。静聴して聞くが良い』
机に置いたランタンの軟い明りに照らされた、クレスの手がそこで止まった。
『グリッド! キール=ツァイベル! メルディ! カイル=デュナミス! コレット=ブルーネル!』
魔剣の刀身を握っていたクレスの手に力が籠り、掌の生命線につうと血が流れる。
その刀身を魔王の外套で覆っていなければ骨にまで達していただろう。
『ヴェイグ=リュングベル、ティトレイ=クロウ―――――――――――――7名の死亡をたった今確認したッ!』
自らの血に滲んだ手で、クレスは自分の額を擦った。真白い新しきバンダナがその拭った場所だけ紅く染まる。
『以上計14名の死亡確認を宣言するッ! 確かに、確りとッ!!』 
クレスは目を閉じて内側から湧き上がる物を堪えるようにして扉の向こう側に消えた彼女達を思い出す。
大丈夫だ。きっと、無事のはずだ。“これはきっと嘘をなのだと”。
『ここに計54名の死亡を確認したァ……よって、よってこの天上王ミクトランが宣言するゥッ!』
あの時に僕に出来たことは全てした。ここに残った自分が彼女達に対して出来ることは2つしかない。
1つは、祈ること。彼女達の命を、彼らの未来を、それが光り輝いていることを。
『勝者、クレス=アルベイン。彼の者の勝利を以ってッ、ここに、今此処に! バトルロワイアルの終結を宣言するッ!!』
ミクトランの狂気に近い叫びの中で、クレスは押し黙ったまま静かに佇んでいた。
そのクレスの意思を代弁するかのように、クレスの傍で大地に突き刺さった2本の斧が持ち主から放たれる何かに震えていた。
カタカタと小刻みに笑う金属が突き刺さった大地は、闇の中で“何の輝きも見せなかった”。
『ついては優勝者クレス=アルベイン! 開始時の説明通り、貴様に報奨を授けよう。
 即ち! 貴様の“願いを叶え”ッ!! “元の世界へと帰してやろう”ではないかッッッ!!!』
灯りで焙るように俯いていたクレスの顔が僅かに持ちあがる。
優勝者の願い。久しく聞いていなかった言葉に可笑しみを感じたのだった。
なにせ、一番最初は全員を殺してその願いで全員を生き返そうなどとも考えていたのだから。
永く久しく忘れていたもの。それをまさか、今になって手にするとは。
『今より1時間! たった1時間だけD4の禁止エリアを解除する! 
 それまでの間にそこを通過し、D5山岳の河口へと来い!! 貴様の首輪の反応によって“扉が開くようにしておく”。
 首輪を外すのはその中で行う。いいな? 万一にでも首輪が機能していないなどあれば扉に入れんぞ!?』
魔王の布を巻き終えた魔剣を肩から足へかけて、クレスは力無く笑顔の出来そこないを作った。
あの時の決意は、最早遥かな過去。過去から今に至るまでに積み重なり過ぎたモノの前にもう思いだせなくなってしまった。
『さあ、魔剣を携え我が下へ来るが良い優勝者! 
 全ての屍を乗り越えた2%以下の奇跡よ、その奇跡に見合う対価をこの天上王ミクトランが与えようぞッ!!』
今此処にいる僕の願いは、今此処に残る僕に出来ることは――――――――たった1つ。
王の高らかな通告を聞きながら、勝者は双月の夜空を見上げた。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――


33 :
 

34 :
  

35 :


36 :
「これは、一体…………?」
内から湧き上がる驚愕に身体を震わせながらグリューネはそれだけを辛うじて呟いた。
希望側が提示した『7つの駒の消失』の謎に対し道化が提示した応手は、およそ女神の思惑を超えていた。
いきなりの7人死亡の宣告、そして優勝者クレスに対する王の優勝宣言―――つまり、名実ともにバトルロワイアルの終わりだ。
だが、謎を仕掛けた側であるグリューネの驚きはそこではなかった。
7駒を“隠した”グリューネは7つの駒がまだ無事であることを知っている。“王では殺せないのだ”。
王が無理矢理優勝者を決めて、バトルロワイアルを終わらせようとしたと考えれば王が嘘を吐くのは理解できる。
問題は王の優勝者への対応が『第六戦と変わっている』ことだ。
第六戦にて唯一の生存者であった氷剣は魔法陣によって転送され真実の本拠地に辿り着いた。
優勝者が決定したと認めるならば、同じ手法にて同じ結果が出てこなければおかしい。
禁止エリア解除、そして会場の中心への誘い。変化した結末。
そして何より、永遠に遊び続けようとする道化が放ったこの一手、如何なる意味か。
「クククク……“諦めて”してしまえば……分かることもいくつかあります…………
 まず……“まだ7駒は脱出していません”……脱出したというなら、そう示せば良いだけのことですから……」
王の駒を動かしたサイグローグは王を握ったまま、クスクスと笑っていた。
今までよりも僅かに冥く、脂ぎった笑顔だった。
匂いさえ漂う嫌気を放ちながら、サイグローグは言われてみれば当たり前の事実を告げた。
脱出できるならわざわざ隠すなどというクッションを置く必要は無い。それを隠すということはまだ脱出できていないと言っているに等しい。
「ならば何故隠すのか……敵を知り己を知れば百戦危うからずや……グリューネ様の立場になって考えれば分かるというもの……」
サイグローグはそう言って煙管の中に火種を投じ、更なる煙をプカプカと浮かべた。
煙に濁ったその瞳は最早盤面を視ること無く、ただグリューネの瞳の奥だけを見つめ続けている。
「隠すということは、今触られては困るということ……“つまり、まだグリューネ様の奇跡は完成していない”のでしょう……?
 二手や三手では済まぬ、本当の神なる奇跡……この謎は、その時を稼ぐ為の布石……」
この謎がグリューネの、希望側の時間稼ぎであることは明々白々だ。
ベルセリオスの絶対の檻を破る奇跡を創るとなればそれ相応の絆を紡がなければならない。
この神楯はその為のもの。全ての絶対を破る神剣を鍛える為の守りなのだ。
「ならば……まだ遊ぶ時間はあります……時間があるならば……私は遊ぶだけ……
 『謎に包まれし七駒に手は出せない…………?』……結構でございますとも…………
 ええ、逆に……チェス盤をひっくり返して考えれば良いだけ…………」
普通のプレイヤーならば、血眼になって7駒を探し続けるだろう。
あるかどうかも分からぬ正解を求め、トライアンドエラーを繰り返すだろう。
だが、サイグローグは普通ではない。白と黒では分けることのできない異端のプレイヤーなのだ。
「8つの駒で遊べないなら―――――――――――――“1つの駒で8駒分遊び尽くせば良いだけ”でございます……!!」
だからこそ躊躇い無く“捨てる”。触ることの出来ない玩具など必要無い。
触れる玩具で、目いっぱいに遊べば良いだけだと嗤うことができるのだ。

37 :
   

38 :
 

39 :


40 :
「それがこの謎の答えとなるとでも!?」
激昂するグリューネの詰問に、サイグローグは間断無く応じた。
正解以外では絶対に破ること叶わぬ女神の謎、それをどうやって破るというのか。
「なりますよ……では、謎に対する返答を正式に行いましょう……この消失事件……十中八九“魔剣が関わっています”……
 ……『ならば、それに関わった魔剣の担い手に7駒を“もう一度この世界に戻させれば良いだけ”』でございます…………!!」
ならばどうするか。決まっている。神なる楯を破るは魔王の剣が相場だ。
2人の天使が落ちた――――否、女神が殺したことで、3人の時空剣士による精霊王の縛りも解けている。その力をこの局面で利用しない手は無い。
サイグローグが構築した混沌から、何がどういう心の経過を経てこの結果に至ったかは分からないが“魔剣の力は絶対に関わっている”。
「……何故、魔剣が関わっていると確信できるのです。放送中に王が聞いたたったあれだけの会話から考察可能だと?」
「グリューネ様は実に正直な御方です……駄目ですよ……“あんな露骨に2人だけ殺しては”……魔剣解放狙いが透けているではないですか……」
「っ……ですが、放送前、彼らは一触即発の状態でした。打ち合わせて協力する暇などなかった! どうやって7駒全員で魔剣で脱出すると!?」
「そんなことは知った事ではございません……過程がどうであろうと、それしか答えが無いのですから……
 “とにかく魔剣を使った”……私にとってはそれで十二分でございます……」
息を呑むグリューネを見ながらサイグローグは満足げに微笑んだ。
盤上で展開した謎を見ず、グリューネの差し筋からの逆算だけで道化は正解以外の全てを掌握する。
駒は所詮駒。敵対するはプレイヤー。チェス盤をひっくり返せば駒など見ずとも手は読める。
「魔剣にて閉ざされた謎ならば……魔剣にて開くは道理……魔剣を用いて、もう一度7駒を会場へと呼び戻す……
 これならば『7駒が何処に消えた』という謎を回避できる……これが私の答えです……私はこの謎を―――――――“解きません”……」
エターナルソードが答えを知っている。ならばエターナルソードに答えさせればよい。
それが道化師の答えだった。自分が解く必要は無い。解きたくもないモノを、態々解く必要などないのだ。
道化の提示した解答に、グリューネは唖然としたまま立ち尽くしていた。
そんな女神を見ながら眼筋を歪めたサイグローグは煙を燻らせながら慰めを紡ぐ。
「ククク……申し訳ありませんグリューネ様……恐らくはこの謎……相当の自信を以て構築なされたのでしょうが……
 わざわざ“こんな下らないモノ”に真正面から向き合うほど……このサイグローグ……酔狂ではございませぬ……」
「下らない……と……?」
「ええ、下りませんとも…………全ての可能性が真実となるこの戦いに置いて……唯一の正解など存在しない……
 そんな戦いの中で“謎を問う”ことがどれほど無意味なことか……考えれば分かるというもの……」
それは至極当然のことだ。確かにグリューネは謎という宝箱に7駒という宝石を入れて閉じた。
宝箱に閉じる以上、グリューネは宝箱を閉じる鍵を……正解を最低1つ持っていなければならない。そうでなければ論理破綻になるから。
だが“それは絶対に鍵を使って宝箱を開けなければいけないということではない”のだ。
針金を使ったピッキングも、宝箱そのものを壊すのも、空間を捩じって中身だけ取り出すという方法もある。
それらは鍵を使って開けるよりも無作法でとてもスマートではないが、宝箱の中身を得る手段として“矛盾してはいない”。
「謎への応手など……この程度の屑手で十分……矛盾が無ければそれでいい……
 ……これは殺し合い…………誰が生き残るか、誰が死ぬか……それこそがメインディシュ………
 料理を愉しむに……煩く入る音楽も…………煌びやかな演出も必要無い……
 無理矢理かけられた香辛料など以ての外……料理はただ旨ければそれでいい……」
そう、宝箱に入れたからと言って鍵で開けられるとは限らないように―――
―――謎を創ったからと言って、その答えが出題者の望むものとなるとは限らない。
矛盾さえなければ、正解である必要などないのだ。
「私が楽しみたいのは『バトルロワイアル』でございまして――――ミステリや謎解きがしたければバトルブックの裏にでもお書き下さいませ……ッ!!」
故に、謎を問うことに意味は無い。唯一の真実が存在しないバトルロワイアルに、本当の謎<ミステリィ>など存在しないのだから。


41 :
    

42 :


43 :
謎を踏み躙るその一言にかける言葉を見失ったグリューネに、サイグローグはおやおやと肩をすくめながら嗤う。
「どうしました……? 何やら御気分が優れぬご様子……まるで……期待していた答えが返ってこなかったと憤懣やるかたなしかの表情……
 もしや……期待していました……? ……グリューネ様の用意した正解に沿って戦いが進むものだと……思いこんでいました……?」
唇を震わせながらも返す言葉を探して息詰まる女神の表情は、溺れた者のそれだった。
サイグローグの惚けたような物言いは、明後日の方を向きながらも全てグリューネの頭上に星と当たる。
「これ見よがしに散りばめられたヒント……もったいぶった言い回し……
 まるで生娘が初めての夜を男から誘ってくれるのを待っているかのよう……
 付き合ってくれると思ったのでしょう……? サインに気付いてくれると……
 伝わって当り前だと…………相手も望んでいるのだと“決めつけていた”でしょう…?」
ああ、それは哀れにも笑える喜劇。
『あ、あんたのことなんかコレッポッチも好きじゃないんだかね、本当なんだから!』と言えば『好き』というサインと思いこんでしまうなんて。
なぜ素直に『お前は俺のことが嫌いなんだな』と考えてはいけないのだろうか。裏の意味までいちいち考えてやなければいけないというのか。
「素直に一撃で7駒を王の元まで運びきってしまえば良かったものを……わざわざ謎で覆い隠すから……こうやって壊されるのです……
 実に無意味……これ即ち徒労の極みでございます……それともまさか……この私が……そんな遊びに付き合うと……本当に思っていたのですか……?」
奥床しさなんて何の役にも立たない。思いは伝わらなくて当り前なんだから。
だから道化は謳う。素直な気持ちを、誰もが誤解しないように、分かりやすい言葉で――――――真実で。
「エロやらしく胸を揺らせば誰もがホイホイついていくと思ったら大間違いでございますよ…………せくしぃねえさん<アフロディーテ>様……ッ!!」
「サイグロォォォォォォォ――――――グウゥゥゥゥゥッッ!!!!!!」
グリューネが激昂と絶叫と共に右手を天高く突き上げる。
美しき女神らしからぬその振る舞いは、グリューネという神から最も縁遠いもののはずだった。
だが、それを取り繕うことなくグリューネはその突き上げた右手に可能な限り全ての神力を集約する。
女神の慧眼にも、今自らに噴出した衝動の正体は分からなかった。
その神性を堕としめる罵詈か、女としての何かを弄るような雑言か。あるいは、自らさえも自覚せぬ内側の隙間を道化に抉られた痛みか。
先ほどまでの拷問などとは比較すらできない痛みに苦しみながら、グリューネは力を具現する。
自分の知らない逆鱗に触れられたグリューネの怒りを代弁するかのように、彼女の前方に巨大な力の塊が形作られる。
「貴方だけは……貴方だけはッ!!」
眼の前の存在が受け入れられない。希望を、心を嘲笑うこの道化を“許せない”。
星の光を集めたかと思うほどに光輝く神の大きな掌が、怒りに震えるグリューネの心を示す様に顕現した。
「そこまで滅びの本懐を遂げたければ……叶えてあげます――――――――ゴッドプレスッ!!」

44 :
 

45 :
 

46 :
突き出した右腕をサイグローグへ振り下し、グリューネの最大神術が発射される。
常の天空からの一撃ではなく、水平撃ちで撃ち出されても尚、その威力は神のそれだった。
許せない。認められない。受け入れられない。呼吸をするたびに希望を、光を穢す眼前の存在を許容できない。
女神の中のありとあらゆる拒絶の意思が、大神術に力を与える。
幾千幾万の言葉よりも力ある神撃。道化の一手ごとプレイヤーを確実に潰す程の威力がサイグローグへ直進する。
だが、サイグローグは一歩も動かなかった。動けなかった、ではない。“動く気が無かった”。
全てを滅しかねぬ暴力の前に一歩も退かぬその姿は、サイグローグでなければ勇者のそれだっただろう。
だが、先ほどまでと一切変わらず卑しい微笑を浮かべ続けるサイグローグはペラペラと百科全書を読んでいるだけだった。
グリューネの怒りの眼線さえも見ること無く、残り数枚で終わる本の文章を追い続ける。
「……クククク……怖いですねえ……私の貧弱な肉体では、触れれば一瞬で消し飛んでしまいそうです……
 そこまで気に障りましたか……若干誇張して申したのですが……案外……図星でしたァ……?」
そう言いながらも、サイグローグの視線は本から外れていなかった。
残り2頁で終わるそれを、急く様にに読み続ける。まるでもう読めなくなるかのように。
「しかし……これも私の心の素直な有様でございます……『己が心に従い、己の思うさまを貫く』……烏は実に良いことを言っておりました……
 こんなただ操作が面倒なミニゲームを無理矢理させられるなんて……私……死んでも嫌でございますから……」
「それが遺言か、道化よ……ならばその口ごと……永遠に閉ざしてあげますッ!!」
残り1頁。サイグローグの正面には巌の壁の如く神の掌が迫りくる。
その巨きな手に似合わぬ神速で迫る一撃は、最早アラウンドステップでも避けようがない。CC+3されるよりも早く戦闘不能になるだろう。
「マモレナカッタ……は嫌ですね……“貴方”は……騎士崩れとは違うでしょう……?」
全てを読み終えたサイグローグが本を閉じる。僅かに目を瞑るその仕草は、一見神の威光の前に罪を懺悔するようにも見えた。
だが、浮かび上がるその歪んだ確信から紡がれた言葉が全てを台無しにする。法よ、貴方に問う。“私に罪がありや”?
「“零条違反”―――――――――緊急宣言・その魂に誓いし正義を貫け<エナジーコート>……ッ!!」
“汝に罪無し”。守れ騎士よ、その命を以て。


47 :


48 :
しえん!!!!

49 :
「!?」
グリューネの驚愕、その視線の先にはゴッドプレスの着弾衝撃波があった。
だが、それはサイグローグではない。女神からサイグローグを覆う様にしてその一歩手前にたった、守護騎士の姿があった。
胸に開いた鎧のヒビから血を流しながらも、己が精神を引き換えに究極の護りを構築するスキルを尽くしてゴッドプレスを防いでいる。
「莫迦な、何故貴方がッ!?」
既に発動し切ったグリューネにゴッドブレスを止める術は無く、ただその懐疑だけを口にする。
その駒がどういう存在であるかを知らぬグリューネではない。
サイグローグに隷属させられているとはいえ、その本質は強きを挫き弱きを救う守護者のはずだ。
「サイグローグ! 今直ぐ退かせなさいッ! 酷使し尽くした騎士をまだ楯として使うなど、恥を知りなさい!」
使役者であるサイグローグにグリューネは退かせるよう叫ぶが、道化は聞こえていないかのように
「どちらのことを言っているのですやら……私は止めませんよ……“この駒では貴方に勝てなさそうですから”……
 もっとも……もともと私が操っている訳ではありませんので……どうしても止めたければ直接騎士に言ってください……」
「くッ……何故、何故貴方はサイグローグに従うのです!? どうしてそこまで――――」
どうして逃げないのか。どうしてあんな邪悪の塊を守るというのか。しかも、何故私から守るというのか。
想いの全てを踏み躙る道化を守り、それを排しようという私を阻むというのか。正義は私に、希望にこそあるはずなのに。
だが、グリューネの問いは最後まで紡がれることは無かった。
悪魔の槍を穿たれながらも輝きを失わぬ蒼き瞳が、命果つる間際にあっても誇りを捨てぬ獅子の如き金色のたてがみが、
血に塗れてもその光を示し続ける真白き鎧が、騎士を包む何もかもが誓いを体現していた。
騎士は自らの意思で、今この死地に立っている。グリューネを敵と見つめている。
守るべきモノを、阻むべきモノを見極めて、その切っ先を向けるべき方向を定めている。
彼だけではない。彼の後ろにあった幾千幾万の死せる騎士たちも皆同じ思いだったのだろう。
その願いが、砕けぬ規律が、神の一撃をここに防いでいる。
「何故……なのです…………」
グリューネはただそう呟くしかなかった。
精神力が尽きようとしているのか、鎧のあらゆる所にに亀裂が走り、楯と剣は砕けて消えた。
それでも尚神の力に立ちはだかる騎士の誓いの護りに、謎によって構成された神の楯と同等、いや、それ以上の硬ささえ錯覚する。
これほどの力が、何故神を阻むのか。その気高さが私に牙をむくのか。
答えを求めて吐露した問いではない。だが、騎士は自らを圧Rる神の力の中で、僅かに口を開いた。
グリューネはその口元を見続ける。どうしても知りたかった。今自分を苦しめているこの力の正体を。
邪悪たるサイグローグを守るという魂の誓い。命を賭けてでも退けぬ意味。守るべき味方と倒すべき敵を分ける境界。
“法とは、一体何なのか”。
ブチン。
だが、その願いは叶わなかった。得られた音は、とても言葉とは言えない肉に拉げる音。
答えはない。肉さえ消滅するほど全ての魂を果たし尽くし、義務を全うした鎧の残骸だけが残っただけだった。

50 :
 

51 :
支援

52 :
  

53 :
「クククク……【私の一手は全て通し】ですよ?……お忘れになりましたか……?」
茶番劇の頃合いを見計らったようにサイグローグは項垂れるグリューネに声をかける。
その手に持った法の書は、その角からチリチリと燃え上がり中のページもハードカバーも焼き尽くしている。
法は役目を果たした。その力と引き換えに、サイグローグは埃1つ付けること無くブラックスーツを着こなしている。
その一手を殺そうとしても、プレイヤーごと潰そうとしても、何度やろうとも同じこと。
法を司るサイグローグを傷付けることなど、絶対に出来るはずが無いのだ。
「さて……グリューネ様の我儘で大分時間を使ってしまいました……
 そろそろ次の料理を食べましょうか……早くしないと冷めてしまいますよ……?」
そう言いながらニタニタと先ほどまで紅茶を入れていたティーポットを取り出し、新緑の茶葉を淹れる。
そんな鼻につく優雅さを前にグリューネは歯を軋らせた。こうなった以上、サイグローグはもう謎に見向きもしないだろう。
つまり隠した7駒を動かすことに関して障害は無くなった。だが、サイグローグが剣士に狙いをつけた以上安心はできない。
魔剣を用いた何らかの方法で無理矢理、7駒を取り返しに来ないとも限らない。
可能性がある限り、グリューネは道化の一手に応じなければならない。
銀の髪を強く指で梳きながらグリューネは思考した。
グリューネの最善は剣士をC3に固定したまま7駒を急ぎ王の元まで運ぶことだ。
わざわざ敵の誘いに乗る必要は無い。どんな厄介な相手がD5で待ち受けているとも―――――――――
「……待ちなさい……次の料理? この盤上には最早駒は1つです。材料がありません。まさか――――――」
「漸く気付かれましたか……? その通りです……このサイグローグ……何も無償でグリューネ様にお付き合い頂こうとは思っておりません……
 我が夜会に相応しき…………相応の“お土産”は御用意させていただきました……」
顔を上げたグリューネにサイグローグは嫌らしい笑みを満面に浮かべる。
7駒が隠れた以上、盤上に駒は剣士一つしかない。一人では踊ることはできない。“新たな踊り手が現れなければ”。

「出すというのですよ……このサイグローグが……絶望側代行として――――――――『主催戦力』を……ッ!!」

サイグローグが王の紋章を掲げると、煙管で開けた盤の中央がドクンドクンと心臓の如く鳴動する。
「居たのですか、主催戦力が!?」
「これはこれは異なことを……誰が“い”ないなどと言いましたか……? “い”ますよ……中央に……しっかりと……ククククク……!」
盤の中央。それはこの島の中で唯一といっていい程異端の場所だった。
村にも、町にも、教会にも、ありとあらゆる施設に主催に至れるような手掛かりもヒントも無かった。
その中で唯一疑いが向けられているのがこの山岳地帯だ。

54 :
4円

55 :


56 :
駒を欺いた偽本拠地のトラップは山の北に隣接した湖の底。
会場内で首輪を精密に運用する為の施設が中央にあるという学士や天才のかつての推測。
ジョーカーたる客員剣士の初期配置もこの中央。
海神が傷を癒す為に使った洞窟の奥の岩室の存在。
唯一の疑惑、それは最早1つの真実だ。“ここが王の心臓に最も近い場所なのだと”。
ましてや、それを王の使役する駒にて守ろうと云うのだから、最早疑う理由さえ無い。
「つまり……貴方の狙いは……」
「ご賢察でございます……私は王の力を用いて魔剣を奪い、貴方の隠した真実を壊す……
 貴方は魔剣を用いて……王の真実を暴く機会を得る……今更チマチマした考察や小技のやり取りなど面白くありません……
 王の真実と魔剣を賭けての……零距離での殴り合いと参ろうではありませんか……」
サイグローグは諸手を開いてグリューネを誘う。自らの心臓を晒す代わりに、お前の心臓を奪える距離まで近づけと。
遊びを徹底的に追及する、グリューネとは全く違う形のリスク度外視の一手。
ベルセリオスならば絶対に最後まで出し渋ったであろうそれさえも餌に、サイグローグは誘っているのだ。
グリューネは口に手を当ててサイグローグの申し入れを吐き出さないように堪えた。
互いの心臓を貪り合うというおぞましき誘い、しかし、無碍にするにはあまりに惜し過ぎる誘い。
ベルセリオスは徹底して王を表側に引き出そうとはしなかった。
常に盤上の駒を巧みに操り、直接操作を最小限にして全ての流れを掌握してきた。
故にこちらは王に対する全貌を未だ掴み切れず、その不確定情報というヴェールが王を守り続けている。
ともすれば脱出不能ロジックよりも厄介な障壁であり、7駒が王に辿り着いても破れるかは五分五分であったのだ。
だがサイグローグはその守りの力を棄て、攻めに転じようと言っているのだ。
7駒を王に送り込む前に、王の情報を得られれば得られるほど、この後の情勢は有利に傾く。
(受けるべきか……どの道、この後剣士には可能な限り会場を破壊してもらう予定であったことを考えれば……)
あくまでもグリューネの王攻めの本命は不可思議の中に隠した7駒だ。剣士の戦いは直接7駒に影響はしない。
言ってみればこれはグリューネにとってはサブイベントに過ぎない。
行う必要はないが、クリアすれば相応のモノを得ることができる。それはグリューネの王の攻略に大きく寄与する。
ましてや使用する駒は“あの”剣士だ。既に会場破壊を想定して装備の再編は済ませてある。
サイグローグの駒がなんであれ、決して引けを取ることはないだろう。
(それに……万が一……万が一サイグローグに魔剣を利用される事態になれば……“その時は”……)

57 :
 

58 :
  

59 :
しえん

60 :
グリューネはそこまで考えた時だった。グリューネの鼻の頭に熱く湿った何かがかかり、思わず飛びのいてしまう。
顔を下げて視野を広げたさきにあったのは、香り高い湯気を浮かべた緑茶だった。
それを持ったサイグローグはグリューネの驚き顔を堪能した後に言った。
「どうぞグリューネ様……茶柱がたっていますよ……? 運気が向いている証拠でございます……」
「貴方は、要らないのですか?」
「私は結構でございます……出涸らしの……ポットに残った最後のひとしずくで十分でございますよ……」
いけしゃあしゃあとのたまうサイグローグの顔を見て、グリューネは1つの決定を下した。
なによりも、この道化が許せなかった。法の名の下に無法を繰り返し、正義に燃えた騎士たちを無為にRその残虐が。
そうまでして心臓を晒すというのなら、我が手に握った魔剣を欲すると云うのならば―――――――
「あえて貴方の誘いに乗ってあげましょう。後悔しても知りませんよ、道化」
「両者合意を確認しました……それでは始めましょうか……どうぞお手柔らかに……クククク……」
グリューネはサイグローグの差し出した緑茶を奪い、酒を煽る様に飲み干す。
その軽薄な笑みも、この瞬間までだ。覚悟せよサイグローグ。
ベルセリオスのゲームを砕く前に、その心臓に魔剣を突き立ててくれようぞ。
「こう見えて私の拳もけっこうお喋りでございまして……色々分かるかもしれませんよ……ただし―――」
 
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――Next SubEvent Start


61 :


62 :
  

63 :
夜空を劈く王の叫びが途絶え、夜が本来持つ静寂が辺りを包みきった頃だった。
夜を僅かに遮る椅子の軋みが夜の村に響く。灯りに照らされたクレスが立ち上がった音だった。
ここの中央に来る前にもう一度拾ったガイアグリーヴァ、そしてティトレイから渡されたオーガアクスを両方纏めて片手に握る。
もうひとつ餞別に得たメンタルバンクルが手首にフィットしていることを確認して、魔王の布に覆われた魔剣を背に背負う。
武器を幾つも持って灯に映るその影は、まるで何処かに戦争に行くかのような有様だった。
だが、その例えは決して誤謬ではない。クレスは今から戦いに行くのだ。
王が招いている。来いと、報奨を授けんと待ち構えている。
無論、これが罠であるということは分かっている。だが、それでもそれがクレスにとって褒美であることは間違っていなかった。
「……すまない。僕は、君が命を賭けて護ったコレット……ちゃんを、君の代わりに守ってあげることも出来ない」
灯りを消す前に西の方を向いて、クレスはそう一言つぶやいた。既に暗夜で見ることはできないが、その方向には1つの土山ががある。
命を賭けて選んだ男の死体が。自分が作った死が埋葬されていると確信していた。
彼は、一人の少女を守り通した。それに引き換え、自分は何一つ守ることが出来ないまま、こうして優勝してしまっている。
この汚れた掌は、何も守ることができない。最後の最後に、自分を救ってくれた人達とさえ離れて、こうして独り立っている。
「だけど……出来ることはするよ……僕にしか、出来ないことを……」
出来ることは、戦うこと。クレス=アルベインとして、剣として、戦いぬくことだけ。
ミクトランが待っていると云うのであれば、丁度良い。恐らく配下の敵もいるかもしれない。なお良い。
それを自分が倒せば、壊せば、ティトレイやコレット達に向かう脅威はその分だけ減る。
そう、倒すのだ。それが、クレスに残された最後の願い。それしか最早願えぬ、歪な剣。
灯りを消すと、世界が本当の闇を取り戻す。その中で、クレスの瞳孔だけが闇色に輝いた。
D4まで一時間。走っていかねば間に合うまいが、この程度の距離なら鍛錬の内だ。
「―――――――――全てを斬って終わらせる。それだけが、僕の望みだ」
そう言って、闇に剣が駆け出した。
世界の中心に、全ての終わりをもたらす為に。
剣を以て真実を切り裂け。そして至れ、本当の終着駅に。

<――――――――――――――――――――――――――――――――――――片道切符代わりにその爪、剥がせていただきますが……ッ!!>


【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10% TP25% 第四放送を聞いていない 疲労
   善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 戦闘狂 殺人狂
  (※上記4つは現在ミントの法術により一時的に沈静化。どの状態も客観的な自覚あり。時間経過によって再発する可能性があります)
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 オーガアクス ガイアグリーヴァ メンタルバンクル
    ホーリィスタッフ サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる。
第一行動方針:島の中央・山岳地帯に向かう
第一行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:C3村・中央広場→D4経由で中央山岳地帯地下へ

64 :
支援

65 :
四塩

66 :
  

67 :


68 :
投下終了です。急な投下でありながら多大な支援を戴き、誠にありがとうございました。

69 :
    

70 :
投下乙!
そして知らぬ間に現れて白化したストリーガウさんに合掌w

71 :
サイグローネが投げたー!?
これはひどいw だが言っていることはご最も
ミニゲームは必ずしもやらないでいいからこそミニゲーム
その点では絶対やらないといけなかったLのパズルブースはテンポ悪くしていたからなあ
他にも細部に施されたネタが実に効いていたぜ……
そしてお前はほんとに何やってんだ、ふれん(仮)w
しかしこれは当分の間は全てがクレスにかかっているということか
グー姉さんの会場破壊や主催戦力ともども気になるぜ

72 :
執筆お疲れ様でした。
直前の感想とかぶってしまいますが、ミニゲームとの形容には納得だw
前話の「パズルブース」宣言といい、今回の「絆が伝説を〜」といい、シリーズ原作
からシンプルに、かつ、きっちり出してくるネタがたまりませんね。
そして主催戦力……そうね、決まってなかったってことは決めていいんですよね。
チェス盤返すのはメチャクチャな打ち手であれども、決まってなかったことを書いていく
のが物語ることでもあるので、ひとしきり笑ったあと、ちょっとしんみりしてました……w
このSSでしんみりするのか! かもしれませんが、会場にひとり立つクレスの背中にも
しんみりするものがあるなあ。ちょっと早めのクリスマスプレゼント、楽しませていただきました!

73 :
>>10
了解しました。
お待ちしています!

74 :
>>73
昨日の話だぜ?w

75 :
しまったリロードをし忘れていた…申し訳ない
支援できませんでしたが投下乙です!
じっくり読ませていただきます

76 :
投下乙!
やべぇ。無茶苦茶続きが見たい!

77 :
投下乙!
通販で買ったアイアンメイデンに拷問のプロ、ミッドガルドやセインガルドの軍に、
チェス盤をひっくりかえしてチラ裏してろ……
サイグロのネタの数半端ねえwグリッドお前の役どころ取られてるぞw

78 :
投下します

79 :
剣は、鋼と火と水によって精錬される。
思えば、僕の人生はずっとその繰り返しだった。
心を鍛え、磨き、さらに身体を鍛え、傷無く磨き、そして技を鍛える。ずっとその繰り返し。
そうやって鍛えられるものだと思っていた。
第四教練を治め、いつかは奥義さえ伝承されるものだと思っていた。いつかは。
今は村外れの森のイノシシにさえ手こずっていても、いつかは楽に倒せるものだろうと思っていた。いつかは。
ユークリッド騎士団の元団長でもあった父ミゲール。
その父の師でもあり、まだ子供であるはずの僕にさえ剣術の髄を教えてくれた師匠トリスタン。
どこまでも慈しみ、愛してくれた母マリア。
村一番の剣術道場の跡取りとして村の人たちは僕に良くしてくれて。
年相応に気兼ねなく語り合える親友がいて。その横には僕に手作りのぬいぐるみをくれる彼の妹がいて。
何もかもがあった。僕を満たし得る素材が僕の周りにあった。
その中でゆっくりと、しかし真っ直ぐな白刃を鍛えていくのだと思っていた。
僕はそうやって形成されるのだと信じていた。
でも、僕はまだ知らなかった。
この十余年、磨いてきたのは鉄だけだった。“まだ剣ではなかったのだ”。
火を入れ水を与え、鎚で打って鍛冶は成る。何もかもを凌駕するほどの高温と冷たい水だけが、真の剣を鍛える。
アセリア暦4304年、一本の剣を鍛えた。
心に点いた業火と、全てを濡らした凍る驟雨で。
その剣の色を、僕はきっと知っていたのに。


80 :
闇に包まれた夜の山を、双月の灯りだけが照らしている。
月光を表面の半分で受け止める山岳は雪も無いのに白く輝き、自らが世界の中心であることを誇示しているかのようだった。
月のもつ神秘を一身に受けた無名の山のその姿は霊峰ファロースの如き神性を発揮し、見る者全てを近付き難くする結界を形成している。
荘厳と静寂に形作られたこの領域に入るのは、稚児か余程の不心得者だけだろう。
そんな場所に、無粋が響く。神域を泥足で踏み荒らすかのような足音と刃鳴りが煩く夜を阻害する。
やれ不埒者よ姿を現せとばかりに月が煌々と辺りを照らすと、不自然な影が草原にあった。
薄汚れた髪に巻かれた不細工な白ハチマキに、追い剥ぎでもしてきたのかと怪しむほどに汚れの無い黄色の外套。不埒者ではなく浮浪者の類であったか。
その者を辛うじて不埒者にとどめていたのは、その背に負った薄汚れた布に包まれた剣であった。
片手に握った剛斧二つも異常ではあったが、鞘にも納めず背中に背負ったそれはあまりに歪だった。
背負われた長身の剣は柄まで全部、血塗れの襤褸切れに包まれている。
鞘が無かったにしても、あのような巻き方では一度破けば二度と使い物になるまいに。
鞘を買う金もないというのか。それとも、一度抜けば納める必要が無いのか。
そのように見当違いに案じているかのような月を、不埒者は横目で見つめていた。
決して届かぬ星を掴むような若々しさなど微塵も無く“ああ、届いたのか”と気付くような無感動さで。
その視線に月光の輝きが僅かに揺らいだような気がした。天より見下ろすはずの月が、地に這う穢れを畏れている。
だが、その穢れに包まれた剣を背負った不埒者は直ぐに視線を山に向けなおし、歩みを進める。
その道程を月は煌々と照らしていた。石コロ1つ余さず示し、どうか蹴躓くことなく、速やかに失せてくれと懇願する。
河の口の奥に不埒者が入り、完全にその気配が消えた時、再び月が爛々と生気に満ちて輝きだす。
生きている喜びを噛みしめるかのような躍動ある月光は感謝の現れだった。
あの眼は、間合いを測る剣士の其れ。“あと一歩踏み込めば、月まで届いた”だろうから。
そんな月の怯えなど知る由もなく、剣士は消えて失せた。もう月灯りが生きた人間を照らすことは二度と無い。

ぴちゃぴちゃと垂れる雫でさえ姦しい。そう思いたくなるほど、この石室の暗闇は静寂に過ぎた。
クレスはジリジリと仄かに燃えるランタンを掲げながら、その静寂の中で立ち止まる。
D4から東に走り、突き当たった川から沿って山を目指し、源泉を目指した道程、その終着点だった。
進むにつれてどんどんと狭く細くなっていく道を突き進んできたが、クレスの体躯で入れるのはここまでだ。
クレスは暫く川に埋まっていく道を見ながらしばし考え、溜息をつく。
これ以上先となると、泳ぎに達者な小さな女の子かいっそ人魚でもなければ進めないだろう。
仮にそんな稀有な人物がいたとしても、進める距離が僅かに伸びるだけだ。
潜った先に新たな道が無いとも限らないが、源流だけあって流れが激しい。水の中で武器を流してしまえば間抜け以外の何ものでもない。
ランタンがじりじりと岩室を炙る中、クレスは鼻をひくつかせた。
誰かが、ここにいたのだろう。流水によって完全に冷え切ったクレスが眼を細めて確信する。
この薄明かりの中でも見つかる痕跡がある訳ではない。強いて言うならば“匂い”。
人体を破壊することへの快楽と、未来での殺戮を夢見て眠るような“陽気”が源泉の口にこびりついている。
クレスは鼻を覆い、頬を不快と僅かに歪める。その匂いにではない。そんな僅かな匂いさえ理解できてしまった自分への不快だった。
不快に耐えかねたように、クレスのランタンを置いて空いた手が魔剣へと伸びる。
ここが終点とは思えないが、これ以上先に進めないのも事実。されども道があるとも思えず。ならばいっそ山ごと――――

81 :
そうクレスが決“断”しようとしたとき、山が鳴り響いた。
命惜しさに我が子を供物を差し出す様に、クレスの正面、源泉の隣の岩壁がゆっくりと開いていく。
あまりに紋切り型の隠し扉を前に、クレスは僅かに鼻を鳴らした。どうやら間違いなくここは敵の腹の中らしい。
手近な小石を拾い、扉の向こうの闇へ投げてみれば残響音は遥か奥へと抜けていく。
まだまだ先は長く、察するに地下へと進む道か。ならばこれから入るのは地獄か、虎口か、はたまた墓場か。
<アセリア暦4304年。地下の墓地に棺あり。
 黒き禍の騎士、この封を解きて魔王が蘇るだろう。若き騎士は己が無力の果てに、莫逆の友を失うだろう>
クレスは自分の喉元、その奥が冷え切ったように乾いたのを感じた。
嚥下する唾が粘膜に吸い込まれ、脳よりももっと身近な場所で古傷が呻く。
だが、その疼きを2回の呼吸で治めたクレスは、二本の斧をとランタンを掴み直しその扉へと歩を進める。
虎の顎であろうが、悪鬼の胃の中であろうが、クレス=アルベインにとっては問題ではなかった。
此の扉をくぐった先、何であろうと、何があろうと。
――――――――――――――――――――――Encount!!
瞬間、クレスの眼前に大太刀が出現する。既に十分な加速を得たその刃は、触れれば骨はともかく肉ならば確実に切断するだろう。
だがクレスは鍛錬を積んできた者特有の反射神経故か、間一髪で飛び退いてその殺傷範囲から逃れる。
左のランタンは邪魔と即座に地面に落とし、2本の斧を左右に振り分けて下がり、突如現れた敵を見やる。
上半身だけの体躯、無機的な鋼の肌、厳つい程に先鋭化した肩鎧―――――――虹色の輝槍。
敵の全体を見ようとしたところに、クレスの視界が輝く光で埋めつくされる。
上空より降り注ぐ光、その光源を確かめようとクレスが見上げると、虹色の美しい刃が5本も落下していた。
クレスは驚愕する暇さえ無いとばかりに左で防ごうとオーガアクスに力を込めるが、思考がその行動に急ブレーキをかける。
あれは唯の武具にあらず、魔力によって形作られたもの。恐らく物理的な防御では不足する。
そう判断したクレスはすぐさまオーガアクスを手放し、更に身を軽くして術の着弾点より退避する。
身代わりとばかりに残されたオーガアクスに虹槍が降り注ぎ、その眩むほどの光が空洞を満たしてクレスの眼前に広がる者たちの輪郭を明らかにした。
それは機械なのだろうか。それとも生命なのだろうか。それさえ断じられぬ程、彼らは曖昧だった。
上半身だけの鎧が浮遊している。一番素直な形容をするならばそれが最適だろう。
1つの鎧は武者のように尖り、その骨だけの様な腕に大きな剣を握っている。恐らくは前衛型か。
1つの鎧は魔術師のローブのように丸みを帯びており、腕をその中に隠している。先の術はこいつらのものか。
いずれも、どう見積もっても人間とは思えない異形。だが、機械というには余りに骨や生命を連想させる。
クレスが戸惑うのも無理からぬ話だった。
生命と機械が明確に区別されたアセリアには存在せぬ、機械工学と生体工学のハイブリッド。
神の眼の持つ膨大なエネルギーと天上の科学力の結晶たるダイクロフトのモンスター。
近接前衛型モンスター――――ヘルマスター。
術撃後衛型モンスター――――ウィザード。
いずれも精霊とヒトが交わりしアセリアとは根本から文化や思想が異なる、紛れ無き科学的異世界の魔物だ。
他にもナイチンゲールや、唯一クレスの記憶とフィットするバジリスクキング等がその奥に身を潜めている。

82 :
プリズムフラッシャの虹光が消え、岩室に暗闇がリロードされる。
唯一の光源であるランタンが地面で赤々と前衛のモンスターの表面だけを僅かに照らしている。
クレスが悪過ぎる視界状況の中で闇のその先を見据えると、冥府より逆流するかのような敵意が迸っている。
目視で確認した以外にも、まだまだ奥に何かが存在することは疑いようも無かった。
は、とクレスは背後から微かに聞こえた擦過音に気付き、半身になって背後を確認する。
しかし時は既に遅く、そこにあったのは無骨に紅く照らされた巨岩の壁が完全に通路を密閉する瞬間だった。
キィン、と耳障りな電子音が一斉に響く。そして前方の機械は剣を鳴らし、後方の機械は詠唱の光を放ち始める。
置かれた状況が理解できたのならば、早々にRと言わんばかりの攻撃開始の合図だった。
眼の前の、そして更に奥の敵意。それらを前に、クレスは戦闘へと意識を向けて背後に手を回す。
だが、その手は途中で止まり、僅かに逡巡したあとにガイアグリーヴァを構え直した。
状況は理解している。退路は断たれた。残されたのは星麗しき蒼空へ通ずる天道ではなく、冥底へと通ずる四万由旬の獄道のみ。
わざわざ“蓋を斬る”つもりもない。逃げる気など毛頭なし。もとより、この心に帰路など無いのだから。
詠唱が光り輝く、剣が近付く、石化攻撃が待ち構える。
クレスはオーガアクスの位置と状態を確認し、まだ使用可能であることを確認しながら意識を敵へと向ける。
深呼吸一回。それで全ての回路を戦闘用に切り替える。
「行くぞ!!」
前衛突撃、後衛晶術発射、そして剣士は剛斧を握り敵前衛へと走り抜ける。
盤上で行われる最後の戦い。その始まりは、あまりにオーソドックスな通常戦闘だった。


【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10% TP25% 第四放送を聞いていない 疲労
   善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 戦闘狂 殺人狂
  (※上記4つは現在ミントの法術により一時的に沈静化。どの状態も客観的な自覚あり。時間経過によって再発する可能性があります)
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 ガイアグリーヴァ メンタルバンクル
    ホーリィスタッフ サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:眼前の敵を排除
第二行動方針:奥底へ進もう……
第三行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯・開かれた石室の向こう
*石室へ戻る道は閉ざされました
*オーガアクスはクレスの近くに落ちています 
【エンカウント(敵に近い←1・2・3・4・5→敵に遠い)】
・ナイチンゲール×2【待機位置4、AI設定:術(プリズムフラッシャ)を優先して使え】
・ウィザード×3【待機位置5、AI設定:術(バーンストライク・スプラッシュ・エンシェントノヴァ・インブレイスエンド)のみ使え】
・ヘルマスター×3【待機位置1、AI設定:近くの敵を狙え】
・バジリスクキング×2【待機位置1、AI設定:近くの敵を狙え(通常攻撃時確率で石化異常)】

83 :
投下終了しました。

84 :
 

85 :
反射的に支援したら、すでに投下が終わってただと……w
それはそれとして、執筆お疲れ様でした。
クレスの半生を描く文章、非常に雰囲気が美しいなあ。『剣』として生きてきた、
あるいは生かされてしまった彼の道行きや奥深さがよく伝わります。
主催戦力との遭遇から戦闘への流れも、システム的な用語を出しつつ綺麗に
整えられているところがゲームの二次創作らしくて良いなぁと思ったり。
敵の出典に合わせて、D2ベースの敵AIも面白い。パズリックな面白さは本編の
シャーリィ戦あたりから楽しんでいましたが、今回はどう繋がれていくものか。
コンパクトにまとまったなかに、気になるところがポロポロと出てくるお話、GJでした!

86 :
投下乙!
月明かりの中を駆けるクレスからなんともいえない哀愁を感じました。
「クレス」として剣を振るう彼ははたしてどこにたどり着くのか。
次回も期待してお待ちしています。

87 :
投下乙!文章がめっちゃきれいや…
にしても呼びつけておいてR気マンマンなミクトランひでーなw

88 :
新年明けましておめでとうございます。それでは今年の投下を、始めさせていただきます。

89 :
一対一の真剣勝負、そこには技術の持つ粋の全てが収められている。
同等の武器、同等の能力を持った2人の技術が拮抗する時、その勝敗を分かつのは非常に微小な要素となる。
それは練度であったり、一瞬の取捨選択であったり、はたまた2人が歩んできた過去の積み重なりであったりする。
無粋な横槍、手助けなど、周囲から一切の不純物を取り除いた完全な相対の中でのみ、
普段は小さ過ぎて形に出来ない、彼らが研鑽練磨してきたものの持つ“見事”を勝利と敗北の狭間に、垣間見ることができるのだ。
故に、真剣勝負は何よりも美しい。勝者にも敗者にもその美しさがある。
ならば、実戦は美しくないということだろうか。
一対多は当り前。横槍不意打ち飛び道具に虚言、罠。休憩や回復も完備。反則も無く審判は端から不在。
そもそも相手は勝手知ったる人間でさえ無く、四足多腕有翼人外化生上等。相手にとってこちらは敵ではなく餌。
生き残った方が勝ちで、どれだけ崇高な志があろうがRば土塊と成り果てて潰える。
大雑把で曖昧。真剣勝負が国お抱えの宮廷画家の名画ならば、実戦はさながら新米画家が仲間の顔に塗りたくったへのへのもへじか。
そんなものに、美しさなどあるのだろうか。あるのだ。
確かに、真剣勝負が持つ一種の気高さ、あるいは騎士道や武士道が持つ崇高さというべきものは無い。
そう言った微細な様式美が呼吸できるほど、戦場は美術館やサロンほど緩慢な場所ではない。
だが、レトリックな様式美を全て廃したその先にもう一つの美が存在する。
勝つ為に、極限までリスクを排除する。
生きる為に、最短最小最大効率で勝利を得る道筋を見つけ出す。
欲するものの為に、考え得る限りの策を編み、実行する。
死なぬ為に、華美な色気出さず、基本を丁寧に忠実に実行する。
望む為に、全てを見極め、全てを支配する。
一切の手段を選らばず、真の最善たる手段を選ぶ。
この酷過ぎる矛盾すらも許容する実戦の真―――――――合理という名の機能美だ。
ロッククライマーが僅かな岩場を見つけて登っていくように、苛烈な環境であるほど、そこからの活路は細く薄い。
しかし、その活路は確かに活きる路であり、これ以上ないというほどの理の輝きを放つのだ。
千年の研鑽を経た宝石には無い、蛇足を付加される前の純粋なる原石の光の“美事”なるや。
故に、実戦は何よりも美しい。敗者には辿り着けぬ生き残ったという結果にもまた、真の美しさがある。
クレス=アルベインが身を投じた戦いの備えた美とは、まさにそれだった。


90 :
支援

91 :
 

92 :
 

93 :
ドドドォンと炎弾が3発着弾し、燃え焼けた大地の底からジュワァと水蒸気を纏った水流が立ち昇る。
けたたましく放たれる術撃を前にクレスは疾駆していた。的を絞らせること無いよう、常に全力で走り続けている。
一度でも巻き込まれれば、圧殺されてそのまま終了だ。それほど今のクレスの肉体は損耗し切っていた。
いかにミント、そしてマーテルの起こした奇跡により呪いを封じ込めたとはいえ、その肉体までも一新された訳ではない。
ロイドと銀髪の剣士、二人の腕利き剣士を同時に相手取り、
雷を駆使し翻弄した『コングマンだと思い込んでいた』両剣士を相手に最終奥義を放ち、
挙句の果てに本来ならば勝負自体が有り得ない晶霊術師キール――確か一度前にも見たような気がする――によって心臓にかなりの電圧を叩き込まれた。
如何に村に入るまでは休息を行っていたとはいえ、生半可な剣士ならばこの内2つも重なれば剣を握れない身体になっていただろう。
こうして戦いの形になっているだけ、クレスの積み重ねた鍛錬が勝ち得た幸福に他ならない。
だが損傷状況は予断を許さず、特に心臓は常に爆弾を抱えているも同義だ。数の上で既に劣勢、長引かせれば更に分は悪くなるだろう。
しかし、それでもクレスは一太刀すら振うことなく走り続けていた。
岩室ほど狭くは無くとも、お世辞にも広いとは言えない空洞内を、進行方向を壁と敵で塞がれないことだけを徹底して、走り続けていた。
近付いては剣を向けてくるヘルマスター達に返しの刃を向けることも無く、更に退いて逃げていた。
だが、クレスの行動は理に適っている。斧は威力が高いが故に、その重量も生半ではない。一太刀振うだけで大きな隙を生むことになる。
例えその刃がヘルマスターを1体両断できたとしても、待っているのはバーンストライクとスプラッシュの挟み撃ちだけだ。
故に、中途半端な攻撃さえも気安く放出はできない。しかし、それほどの重斧を以て走り続ければ待っているのは疲労だけだ。
このままでは自滅する。なのに攻めること無く走り続けるクレスは一体何を待っているのか。
その時だった。直近の晶術二つを走り抜けたクレスが、ヘルマスターらの位置を見て飛翔したのは。
「鳳凰天駆!」
跳躍の最頂点に達したクレスが焔を纏い、さながら火鳥の如くウィザード達を強襲する。
嘴の如く正面に突き立てられた炎の斧に、縦に3体並んでいたうち一番手前のウィザードが腹のど真ん中を穿たれる。
前衛後衛完璧に整えられた布陣を前に、真正面から前衛と斬り結ぶ馬鹿者は居ない。いるとしたら墓の中だ。
守るべき味方の後衛がないのであれば、わざわざ敵前衛の足を止める必要などない。
たった一人戦場に立つ剣士が真っ先に潰すべきは後衛だ。攻撃術の雨霰の中ではまともに剣を掲げることさえできないのだから。
クレスは詠唱直後の間隙を狙い、アルベインの強襲技を以て前陣をすり抜け後衛を喰い破った。
斧に突き刺さったモンスターを見ながら、クレスはその手ごたえを感じた。
やはり後衛型故か、脆い。この業物の斧であれば一刀で十分に裂ける。ならば―――――残りも倒す。

94 :
  

95 :
クレスの視線が突き刺さったモンスターの更に奥に移る。
そこには接敵を許して慌てふためくようなウィザードと、その後方で早く早くと急くように詠唱を輝かせるウィザードがいた。
他2体が詠唱を終えているにも関わらず、まだ詠唱している。
モンスターが唱えているのがエクスプロ―ドのような上級術だと断じるのに時間はかからなかった。
突き刺したモンスターを振り落としている暇はない。クレスはエンシェントノヴァを唱えようとするウィザードの“更に奥”を見ながら斧を振う。
「虎牙破斬!」
通常の斬撃を放つことなく、上下二段の連撃を放つ。急務であるのは詠唱している方の破壊であるが、唯の斬りでは奥のウィザードに届かない。
槍や剣と異なり突きによる攻撃を想定していない斧では、秋沙雨のように間合いの離れた相手を穿てない。
だからこそ、クレスは虎の二連で前方のウィザードを“押した”。斬られたモンスターはたたらを踏むようによろよろと下がるが、
背中が後ろの同型にぶつかってしまう。なぜお前も下がらないのかと後ろを向いたが、理由は明白だった。
詠唱中のウィザードの後ろには洞窟の湿り滴る壁があった。後方に存在し過ぎた為に、彼らには退くべき背後が無かったのだ。
更に言えば、彼らを守るべき前衛は未だ遥か遠く。クレスの手によって、限界まで距離をあけられてしまった故に。
「獅子閃空破!!」
それを最初から確認し、壁と自分で彼らを挟みこめるように強襲したクレスの赤い一閃が放たれる。
虎牙破斬の着地によって込められた足への力をRことなく放出された威力が、既に穿たれた1体含めて3体を纏めて壁へと縫いつける。
既に詠唱は潰されていたが、クレスの拳は止まらない。空いた右の掌に込められた獅子の一撃が、刃に残った残骸を掃うかのように壁に押し潰した。
彼らは最も不幸だった。彼らはクレスにとって一番恐るべき存在であったが故に、真っ先に呪われてしまったのだ。
撃破の余韻に浸る間もなく、クレスは身体ごと後方を振り向く。そこには中衛に位置し、詠唱を進めていたナイチンゲールが2体いた。
周囲を取り巻く法陣の色は白。一番最初の光属性の槍は、あちらのものだったか。クレスは詠唱者を誤っていたことに舌打ちした。
「魔神剣!」
だが、それ以上に悔む時間は無い。クレスは走るよりもまず先に斧で地面を逆上げに払い地面から衝撃波を飛ばす。
剣よりも重い斧故か、以前に見せた無色無拍の神撃ではない白色の衝撃。だがそれでも、ナイチンゲールのうち1体の詠唱を妨害するのには十分な速さだった。
被弾を免れたもう一体が、急ぎ虹槍を黒い天井から降らせる。しかし、槍にて貫くべきクレスの姿はもうない。
魔神剣を放った後、直ぐに“前方に回避した”クレスはそのままの速度で斧を2体を纏めて両断するべく横に薙ぐ。
1体はその断面から醜い機械の部分を晒しながら倒れ落ち、もう1体は断絶された1体が楯となり、辛うじて機体が二つに分かれることを避けた。
だが、この状況においては余命が2秒延びたというだけでしかない。
クレスの剛斧が、手負いの機械を今切断するべく、斧を振り上げ――――――――――――なかった。
「!!」
クレスは咄嗟に身を屈め、ガイアグリーヴァの刃の部分で楯と覆った。
直後、2体のバジリスクの牙がその刃に噛みつく。その牙にクレスは掠り傷でさえ触れる訳にはいかなかった。
後一歩で最後の後衛を破壊できる。その魅力を封じ込め、迷わず防御に専心する。
仲間が一切いない今のクレスにとって石化は死と同義だ。相討ちすら許されない今の状況では僅かな欲さえ命取りになる。
渇望するべきは、死なぬこと。倒れないこと。袋小路に追いやられないこと。勝つことは至上ではない。
その実戦における絶対律を忠実に守り、クレスはバジリスクの石化をギリギリで防ぐが、その表情は苦みきっている。
楯越しにでも軋む身体は、それほどに弱り切っている証。
バジリスクの背後から聞こえる金属音の群れは、引きつけておいた前衛が戻ってきた証。
時間がかかり過ぎた。万全ならばまだ短縮できた5秒が、この危機を招いている。

96 :
「獅子戦吼!」
クレスは半ば強引な獅子戦吼で斧に噛みつくバジリスクを弾き飛ばす。
無理な姿勢で放たれたそれは威力は全くと言っていい程なかったが、僅かに間合いさえ開けられれば十分だった。
「鳳凰天翔脚!!」
その間隙を見逃さず、地面に倒れたナイチンゲールを蹴り上げて炎で斬りつつ、バジリスクから更に距離を空ける。
何とか後衛の壊滅という最低条件を達したが、それで終わりになれば苦労はしない。
クレスは魔神剣を数度放ち牽制するが、漸く到着したヘルマスターがバジリスクの前面に立ち、自ら食らうことで楯となっていた。
5体一丸となって進む隊列は、壮観であり狡猾だった。バジリスクを強引に狙えばヘルマスターに止められて、バジリスクの牙にかかってしまう。
鳳凰天駆で背後を取ったとしても、攻撃に転じる前にヘルマスターが再び楯となるだろう。
そもそも、絶対に石化出来ない今、バジリスクキングの間合いに入ることさえできないのだ。
だが、遠距離の雄である魔神剣は前衛の楯を突破できない。この状況を破るには、魔神剣程に遠く、魔神剣よりも威力ある攻撃しかない。
クレスはじりじりと後退しながら一瞬だけ、背後の剣を見た。
黒にまで固まってしまった血塗れの襤褸切れに包まれた剣。その歪な剣を握ろうと僅かに手が緩む。
だが、何かを振りほどく様にして掌の肉に食い込むほどぎゅうとその手を握り締める。
その決意が形になったか、クレスはハッと何かに気付き、二度と迷うことなく敵の隊列へと駆け出した。
血迷ったか。ヘルマスターは眼前の愚か者を撫で斬りにすべく剣を振りかざし、バジリスクキングはその愚か者の面を永久に飾っておくために牙を顕わにする。
だが、クレスは血迷ったのでなければ諦念し万歳突撃をしたのでもなかった。
「紅蓮剣!!」
跳躍、そして投げられた斧が紅き焔を纏いながら回転して落ちていく。
アルベイン流剣術において、間合い外からの攻撃は魔神剣だけではない。
互いの間合いよりも遥かに遠い位置より放たれた燃える飛び道具は回転を携え恐るべき威力で隊列のど真ん中を狙い落とす。
バジリスクキングを守る様に真中に配置されたヘルマスターが高熱の斧によって飴のように軟く斬られ、
2匹並んだバジリスクキングは、寸分違わず2匹の間に着弾した轟斧によって爆裂する。
木っ端微塵といってもいい程の威力。これほどの奥義を持ちながら、何故使わなかったのか。
その答えを示すべく、残った2体のヘルマスターが仲間を悼むことなくクレスの着地地点へと急行する。
龍と共に空を駆けるドラゴンライダーの備える二段ジャンプや、スカイキャンセルといった小器用な技は、王道そのものの剣術たるアルベイン流には存在しない。
故に、一度中空を舞えば後は唯地面に落ちるのみ。ましてや、今クレスの手元には武器が存在しないのだから。
それこそが紅蓮剣の最大の弱点。間合い外からの高威力と引き換えの、着地し剣を得るまでの圧倒的な隙である。
助走をつけながらの紅蓮剣のため、クレスの身体は放物線を描く様に宙を泳ぐ。
その放物線は綺麗な弧を描き、それ故に着地点を推測するのは容易だった。
着地する間際のクレスに接敵し、2体のモンスターは今度こそと高らかに剣を振り上げた。
武器を、ガイアグリーヴァを持たぬクレスをR為――――“オーガアクスを持った”クレスを攻撃せんと――――!?
「!?」
混乱を示すような乱雑なノイズがヘルマスター達に走る。
何故クレスがバジリスクキングを潰すすためとはいえ、貴重な武器を手放したのかを一瞬で理解する。
しかし、もう遅い。
振り下ろされた刃は斧もヒトも無く、無意味に大地を裂いた。その情けない姿を雷光が遍く照らす。
「襲爪雷斬!」
迸る雷光がオーガアクスを輝かせ、そしてヘルマスターの1体を貫く。
残るは剣を地面に刺してしまい抜けずにもがく哀れな機械と、その頭上より斧を掲げる剣士が一人。勝敗を問う必要などなかった。
雷刃一閃。雷の速度で振り下ろされた刃が、最後の1体を金属の塊へと還す。
計10体。あれだけ賑やかだった洞窟が、再び静まりかえる。生き残ろうが、死のうが、唯一の勝者しかいない戦場には静寂しかない。
「僕、の……勝ちだ!」

97 :
だからこそ、クレスは斧を掲げそう言った。自分に言い聞かせるように、この勝利は“僕”だけで得たものなのだと示す為に。
だが、その叫びに言葉を返す者は無く、ただ洞窟だけが空しく残響する。
生き残る為に、死なぬ為に、技の全てを尽くして敵を屠る。そこに一切の無駄は無く、全ての不純物を排した純粋は何よりも美しい。
だが、その美しさは冷たく乾いていた。その美しさを共有するモノがいなければ、美しさにも技術にもなんの意味があるのだろうか。
そう、独り。勝利しても、独り。
その空しさに押し潰されるかのように、クレスの膝が重力に沿って折れる。
辛うじてオーガアクスを杖にして上体まで伏せることを拒むが、その損傷は誰が見ても明らかだっただろう。
この戦闘だけでつけられた傷は僅かであれど、既に瀕死一歩手前の位置に立つクレスにとっては何が致命になってもおかしくはないのだ。
既にコレットを助ける為に割って入った時でさえ、相当な無理がかかっていたのだから。
「集、気法…」
乱れる呼吸を無理にでも整え、クレスは人間が本来持つ治癒能力を活性化させる。
この島では焼け石に水の処置であるのは最早言うまでもないことではあったが、今この場では若干状況が異なっていた。
ティトレイから譲り受けたメンタルバンクルから、装備した腕を通じてクレスに光が伝播している。
その効果は敵を倒すごとにTP+5%。斬り捨てた敵は10体だから、そのTP回復量は実質全体の半分となる。
本来ならば3時間から5時間休憩しなければ回復できないものが、たった5分足らずで得られたのだ。
参加者一人を倒すだけでも苦労する島の上では扱いにくいアクセサリだったが、この様な機械を壊すだけで回復できるならば、メンタルシンボル等よりも役に立つ。
じわじわとした回復を待っていられない自分にとって最高の餞別を渡してくれたティトレイに、クレスは力無く笑った。
そして立ちあがり、クレスは少し離れた場所のガイアグリーヴァを拾い直す。
歪なものとはいえ笑い顔をまだつくれるだけの活力を得たが、その対価として得られた精神力の殆どは幾重の集気法によって失われてしまった。
そしてお世辞にもその得られた活力は、失った精神力と帳尻が合わないものだ。
乱発は出来ない。だが、再び剣を握ることが出来る、それだけでクレスにとっては十分な回復だった。
ガイアグリーヴァを拾い直したクレスが目を細めて更なる奥を睨むと、ぼう、と岩肌と水の湿りがおぼろげに映る。
どうやら闇に眼が慣れてきたらしいのか、クレスはランタンを拾うことなく奥へと踵を向ける。
ここから先は、ランタンで片手を潰す余裕さえなくなるだろう。
唯一の光を手放し、クレスは更に奥へと向かう。深く深く、更なる闇のその深淵へと。

―――――――――――――――――――――――――――――Cless Win !  Go To Next Stage!!

【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP20%@集気法をTP40%分使用 TP20% 第四放送を聞いていない 疲労
   善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 戦闘狂 殺人狂
  (※上記4つは現在ミントの法術により一時的に沈静化。どの状態も客観的な自覚あり。時間経過によって再発する可能性があります)
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 
所持品:???@ダオスのマントで覆われた魔剣 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル
    ホーリィスタッフ サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@若干血に汚れている
基本行動方針:「クレス」として剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:奥底へ進もう……
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯・開かれた石室の向こう→さらに奥へ

【Notice】
新しいチャットが出現しました
Select:『大地の味がする』

98 :
投下終了です。名前が長すぎたため簡略しましたが、正式なタイトルは
『End of the Game −蒼天層・ここでグミを使うような奴のお帰りはあちら−』
になります。
末尾にも書きましたが、次回投下はスキットとなります。
それでは今年一年も、よろしくお願い申し上げます。

99 :
【Notice】
新しいチャットが出現しました
Select:『大地の味がする』

【Notice】
新しいスキットが出現しました
Select:『大地の味がする』
でした。すいません。

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