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2012年2月エロパロ444: 勝負に負けて犯される (106)
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勝負に負けて犯される
- 1 :10/10/20 〜 最終レス :12/01/26
- 男のロマンだと思う
- 2 :
- 男が勝負に負けて犯されるのか?
- 3 :
- カードバトルに負けて髪ツンツンの二重人格男に精神的に犯される
- 4 :
- 男が勝負に負けて犯されるだったら俺得
- 5 :
- >>3
それ遊戯王の闇マリクVS舞。
犯されるのは男でも女でもOK。
- 6 :
- 犯されるのは女じゃね?
- 7 :
- プライドの高い男格闘家が女格闘家に負ける
↓
男格闘家悔しいはずなのに勃起
↓
勃起してるところを女格闘家に見つかってしまい・・・
- 8 :
- スーパーリアル麻雀スレと聞いて
- 9 :
- >>7
イイ!
- 10 :
- ワンピース
ロビン「フフ、その程度で世界の剣豪たちと渡り合おうつもりなの?」
ゾロ「くっ・・・!!」
- 11 :
- ロビン「私が一回もイってないのに何回射精するつもり?
そんなに孕ませたいのかしら」ゾロ「く……」
- 12 :
- ゾロはバロックワークスに勧誘されたのを断ったと言ってるがホントはロビンに完膚無きまでにやられて門前払いをくらったんだろうな
- 13 :
- カブトボーグで勝負だ!
- 14 :
- 女が男を倒すスレでいいんじゃ…未だに粘着がいるの?
- 15 :
- 女であるロビンに関節技で負けるゾロ・・・そりゃ屈辱だわな
- 16 :
- 以前にもあったよ、勝負に負けて犯されるスレ。
- 17 :
- >>12
もう少しロビンがゾロをボコる理由が必要だな
何かいいのがないかね
- 18 :
- このスレって確か女負けだぞ
- 19 :
- どっちでもいいんじゃねーの?
- 20 :
- ドローだと話が始まらないしなw
…いや、漁夫の利エロパロ開始か…
- 21 :
- 禁書が思い浮かんだ
- 22 :
- 野球拳するなら同級生としましょうね
- 23 :
- 武侠小説でそんなのあったな……
- 24 :
- 変身ヒロインものとかファンタジー系が思い浮かんだ
- 25 :
- それらはそれぞれ専用スレがある
- 26 :
- とりあえず男が負けて犯されるなら、最低でもお尻の穴か、相手が(美少女アンドロイドとか
ではない)無機質な機械かじゃないと、、、、負け得な気がする。
- 27 :
- 臭野しけ、参上!!
- 28 :
- 前スレはラビィアとかで盛り上がってた
- 29 :
- なぜかローカルにログが残ってたから読んでみたが、最近この領域にたどり着いた
******勝負に負けて犯される********
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1010252417/
54 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:02/05/04 13:43 ID:sKpdbBEO
3D格闘+エロという触れ込みの「バトルレイパー」買ってみたんだが・・・
違う。惜しいが俺の望んでいた「勝負に負けて犯される」とは違う!
「勝負に負けて動けなくなった結果、犯される」のではハァハァできん! つうか、ただのレイープじゃんか!
「勝負に負ければ犯られるという条件で戦って、負けて犯される」のがいいんだYO!
必になってスマソ。
65 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:02/05/16 15:12 ID:o9i1vt4v
>>62
脱衣麻雀は「脱ぎさえすればあとは適当でいい」みたいな安易な作りで、ハァハァできんのよ。
嫌々であっても負けた以上拒否は許されない羞恥と屈辱、
それでいて責任は全て負けた方にあるという、いわば合法的(wなところが
勝負物のキモだと思ってるんだが、もしかして俺は少数派ですか?
- 30 :
- http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1292320280/l50
M男ならこっちに来いだぜ
- 31 :
- >>29
それはわかるわ
負けたら犯されるから必に戦い
結局負けて犯されるのがいいんだよな
- 32 :
- ショタっ子拳士がお姉さんに金的蹴りで負けた挙句
「男の機能が損なわれていないか」という名目で
お姉さんに絞りまくられるのはスレ違いですか。
- 33 :
- いいスレだw
- 34 :
- 保守
- 35 :
- 保守
- 36 :
- ほ
- 37 :
- 捕手
- 38 :
- 気の強い女が抵抗できなくなって悔しげに睨み付けるとか最高!
- 39 :
- ほしゅ
- 40 :
- このスレを保守したら
水遁対象になりますのでご注意を
- 41 :
- ここで言う勝負ってのは、格闘とか決闘みたいな肉体的苦痛を伴うものでも、
ゲームとかでもどっちでも可なんだよな?
わりと惹かれるシチュだけど、勝負に負けた直後とかじゃなく、
直前の勝負もきっちり描写しなきゃとなると、長くなるから書きにくいなあ
- 42 :
- 主人公が負けてヒロインが犯されるのもあり?
- 43 :
- それは寝とられのほうがいいかも
- 44 :
- >>42
それなんて闘神都市
- 45 :
- 逆レイプでも良いかも
- 46 :
- 良いテーマだと思うんだけどな^
- 47 :
- 保守
- 48 :
- 最初から負ける事が決まっているようなテーマだから、
三回勝負にして、一回目負け→エロ→二回目かろうじて勝ち→三回目は……?
みたいなのがいいけど、やっぱり長いかな。
- 49 :
- ほ
- 50 :
- 上で三回勝負がいいと書き込んだ者だけど、それで書いたら本当に長くなっちゃったんだ(´・ω・`)
だから三日間に分けて投下します。あと、ショタ要素はあるけど数字板要素はありません。
今回、濡れ場は2〜4、20〜23辺りです。では(・∀・)つ旦
**
教卓の上で二人の女の子が踊っている。
背丈は15cmもないだろう。片方はほっそりとした腰と控え目な胸、もう一人はむちむちした太腿にはち切れそうな胸の持ち主だ。
何も知らない人が見たら、頭がおかしくなって妄想を見ていると思いかねない光景だった。
何しろ、少女たちの髪の色はミントグリーンとパステルピンクでさえあるのだから。
でも多分、現代の日本で、十年以上無人島に島流しにあって全ての情報から遮断されていた人くらいだろう。
緑の髪と薄い胸の少女が派手に転び、その腹の上にピンクの髪と豊かな胸の少女が馬乗りになる。
二人はただ踊っていた訳ではない。
緑髪の少女は手に不似合いな大きさの斧を握り、ピンク髪の少女は右手に持つダガーを振り上げている。
彼女達は踊っているのではない。
互いに武器を取って、攻防を繰り返していたのだ。
その決着が今、着こうとしている。
ピンク髪の少女の攻撃を、緑髪の少女は避ける術がない。
だがその時、緑髪の少女が纏うドレスが弾け飛んだ。
白いドレスは花びらのように散り、ピンク髪の少女に纏わり付く。
はじけとんだドレスはピンク髪の少女に触れると溶け、飴のようにまとわりつく。
身動きとれずにもがくピンク髪だが、緑髪はその隙を逃さなかった。
手にした斧を、ピンク髪の脇腹めがけて振り切る。
通常の人間だったら、大量の血と臓物が弾けてもおかしくない場面だが、そうはならなかたった。
代わりにきらきら輝く粒子が傷口から噴き出す。
“カーリー、ライフ0。ラウンド1、ニブスの勝利です”
無機質な機械音声が告げると、教卓を囲む男子生徒たちが歓声を上げる。
女子生徒たちは無関心そうに彼らを眺めているが、教室の男子のほとんどはそこに集っていた。
僕、牧野 久人と、その後ろで爆睡している五十鈴 陸をのぞいては。
教卓の上では、緑髪の“ニブス”と呼ばれた少女と、
斧で脇腹を殴られた少女“カーリー”が立ち上がっている。
人間なら明らかに致命傷だが、彼女たちは傷ついたりしない。
彼女たちは人間ではなく、精巧に造られた人形”人造妖精”なのだから。
- 51 :
- “人造妖精 バトル・イン・ネバーランド”
この遊戯は、十年で、何かの冗談のように世界中に広まってしまった。
始めはマニア同士が遊ぶ高価な玩具だったのが、値下げと大量生産を繰り返し、
今はその辺の小学生ですら持っているようになってしまったのだ。
かといって質が下がった訳ではなく、当初はただ動くだけのフィギュアだったのが、
今やホログラムによって人間とほぼ変わらない肉体を持っているようにさえ見える。
でも、個人的には、人造妖精は当初のままで良かったんじゃないかと思っている。
固い、無機質なプラスチックの身体のままが。
なぜなら……
“ラウンド2の前に、情報浸食を行いますか?”
機械音声に男子たちが歓声を上げた。
「行います」「受諾します」
二人の男子生徒が機械音声に返答する。
今戦っていた人造妖精のマスターたち、大柄な苅部と小柄な瀬戸内だ。
この二人が教室の中心だった。
苅部が腕っ節で瀬戸内を守り、瀬戸内が頭脳と資金力と苅部をフォローする鉄壁のコンビだ。
その上、彼らは人造妖精という“娯楽”をもって教室に君臨している。
「おい、もっとちゃんと教卓囲め」
「音声オフにしろよ」
「なー、後で聞かせてくれんの?」
「大丈夫。全部録画してるから」
笑いを含んだクラスメイトの声に吐き気がする。何でみんな平気なんだろう。
その上、彼らは女子生徒の目は意識して教卓は隠したものの、僕の席からは丸見えだった。
カーリーとニブスが、向かい合って立っている。
カーリーはわずかに震えていた。
艶やかなピンクの髪と豊満な肉体に似合わない、おどおどした態度だ。
うつむいていて顔は見えないが、
きっとホログラムで“グラフィックパターン:ダメージ小”か
“グラフィックパターン:拘束時”を表示しているだろう。
カーリーはゆるゆると手を動かし、装甲を外し始める。
胸甲を外すと、インナーに包まれた大きな胸が弾んだ。
男子生徒たちが歓声を上げる。
「これって大きすぎね?」
「着やせだろjk」
- 52 :
- カーリーはインナーの裾に手をかけた所で動きを止めた。
フリーズでもしたように、動きが引きつれる。
「おいおい」
「おっせえよ」
罵声を上げる男子たちに手を振って謝るのは瀬戸内だ。
「ごめんごめん。新しいAI入れたんだけど、ちょっとモーションが長かったみたい。
悪い苅部、手伝って」
「おう」
そう答えた苅部はコントローラを操作する。
それまで棒立ちだったニブスが、おもむろにカーリーの前に立ち、インナーをまくり上げる。
「ーーーー」
カーリーは大きく口を開けて叫ぶが、その声が届くのは苅部と瀬戸内だけだ。
「うるせえな。声の音量下げようぜ」
コントローラに接続されたイヤホンをいじりながら、苅部が悪態をつく。
そうしている間にも、ニブスは淡々とカーリーの衣服をはぎ取っていた。
手首をくくられ、身をよじるカーリーの腰をとらえて、ホットパンツを引きずりおろす。
下からあらわれたパンツに男子生徒がどっと沸いた。
「クマさんパンツwww」
「ミスマッチすぐるだろ」
「瀬戸内病院いけwww」
男子生徒の嘲笑にも瀬戸内は悪びれず笑顔を返すだけだった。
本来、恥いるべきはそんな衣服をあてがった瀬戸内なのに、
その嘲笑をすべてカーリーが引き受けているようだ。
その彼女の最後の衣服を、ニブスが引き裂く。
歓声半分、非難半分。
その非難も「テンポ早すぎ。もうちょっとじらせ」なんて身勝手なものだ。
「うっせーな。文句言うなよ」苅部は口をとがらせながら、また手元を操作する。
カーリーは、背後に回ったニブスによって大きく太股を広げられた。
いやいやと首を振るカーリーを無視して、ニブスは局部に指を突き入れる。
「ーーーー」
カーリーはまた声にならない叫び声を上げた。
首を仰け反らせてもがいても、ニブスは容赦なく責めを続ける。
僕の席からは細かい様子までは見えないが、男子生徒たちのざわめきで大体のところは解ってしまった。
「すげえグチョグチョ」
「ねえ、これってヌチョ音もしてるの?」
「グラフィック細けー」
「つーか乳首も立ってるよね?」
- 53 :
- 本来なら、人造妖精に局部を表示するグラフィックなんて無い。
だがどこかの趣味人が“被ダメージ時のグラフィック変化”をいじれるパッチを配布してしまった為に、
いまや本来モザイクをかけられるような映像がどこの人造妖精にも表示されるようになってしまった。
ご丁寧にこの効果をウィルスに仕込んで拡めた者までおり、
おかげで“小学生が買ったばかりの人造妖精をいじりまわしたら教育上好ましくない様子になった”
とPTAに槍玉を上げられる大問題に発展してしまった。
開発元はこの効果を防ぐアップデートを行ったが、結局はイタチごっことなる。
こうして、教室内で“教育上好ましからざる遊戯”が常に行われるようになってしまった訳だ。
そして今、カーリーは背後からニブスに腰を突き上げられ、悶絶していた。
ニブスの股間には男性器が出現しており、それがカーリーの局部にねじこまれている。
これらは全て映像による作りものであるはずだが、目の前でうねり動いていると、とてもそうは思えなかった。
人造妖精の身体はプラスチックで出来ているので、
ぶつかり合う音はカチカチという、シャーペンのノックのような音だ。
きっと、イヤホンをつけている苅部たちにはもっと肉と肉がぶつかり合うような音に変換されているのだろう。
人造妖精たちが行為を始めると、野次っていた男子生徒たちは音量を下げ、
ぼそぼそと声を交わすだけになった。
「匂いまですれば完璧なのにな」
「いや、それだと臭さ過ぎね?」
「つーかニブスたんのちんぽ太すぎ、萎えるわ」
「いや、そこがいいんだろ」
「ていうか、あのちんぽどっから出したの?」
「あーあれ、兄貴の妖精が持ってるわ。今度コピーしようか?」
「前回の触手の方が好みだな」
「それはカーリーたんが責めになるまで待たないと」
男子生徒たちのざわめきと教卓の上のカチカチ音が耐えられなくなり、僕は席を立った。
椅子の音が教室に響く。
- 54 :
- 「なんだよ。牧野も興味あんの?」
男子生徒の一人が声をかけてきた。
彼らの顔を見ると気圧されてしまう。
みんな脂ぎった情欲と冷酷さを合わせ持つ笑顔を浮かべている。
こんな遊びが流行る前は普通に話したり遊んだりしていたのに、今は見えない壁が出来てしまったようだ。
「牧野ちゃんはお子さまだからなー。まだ早いって」
「いつもむっつりだけど、今日は見んの?」
「興味なんてないよ」
思った以上に強くなった口調に、僕自身たじろいでいた。
「本当は興味ある癖に」けけけと瀬戸内が笑う。
「俺、見ちゃったもんね。お前が先週の日曜、“フェアリーサークル”にいるとこ」
周囲の男子がどっと笑う。
「なんだよ、やっぱりむっつりじゃん」
「牧野ってマニア? 俺、店にまで入れねーよ」
僕は言葉に詰まり震えるだけだった。
“フェアリーサークル”は人造妖精のパーツ・グッズを扱う大手チェーンで、いかがわしい店でもなんでもない。
だけど、それを主張したところで焼け石に水だと解っていた。
「僕は“情報浸食”には興味ない」
そう言い捨てて、僕は教室を出る。
戸をくぐる前に、教室の最後列で居眠りを続ける五十鈴くんをちらりと見た。
高い背を丸め、机にかじりついているため、短く刈られた金髪しか見えない。
五十鈴くんは、髪の色や、鋭い目つき、顔に真一文字に走る傷跡で、クラスでは浮いた存在だ。
細面で、傷が無ければ女性的とも言える顔立ちだが“教師を一人退職に追い込んだ”とか
“だから髪の色や授業のサボりを注意をされないのだ”とか“顔の傷は暴走族と戦った跡だ”とか
“親はやくざで、ベンツで送り迎えされている”とかいう噂まであった。
僕自身も、すぐ後の席の五十鈴くんと話したのは数えるほどしかない。
それも、プリントの受け渡しや、落ちた消しゴムを拾ったりという程度だ。
間近で接する五十鈴くんは別に凶暴な不良という訳ではなく、
体育以外の授業はおおむね真面目に受け、成績も悪くない。
僕は噂ほど五十鈴くんが悪人という訳でもないだろうと考えてはいたが、
彼の、常に不機嫌そうな顔に恐れを捨てる事は出来なかった。
そして、僕は彼に嫉妬していた。
自分の考えを貫き通せる態度と立場にだ。
不良風を吹かせる苅部や瀬戸内も、五十鈴くんには近付かずにいる。
もし、僕が彼だったら、あんな馬鹿馬鹿しい遊びをすぐに止めさせる事が出来るのに。
僕はそんな事を考えながら、静寂に包まれた廊下を歩いていた。
- 55 :
- あんな事を言われた放課後に“フェアリーサークル”に足を運ぶのが、とても気が重かった。
だけど、今日は予約していたパーツが届く日だ。
それも、自分の分だけではなく、叔父さんに頼まれたものも受け取らなくてはならない。
僕はちょっとこっけいなくらい周囲に目を配り、店に飛び込んだ。
店内は僕と同じくらいの学生でにぎわっていて、女の子も結構多い。
ファッション性の高いデザインなので、女性ファンも多いのだ。
ただ、例のパッチと“情報浸食”ルールが逆風になってしまっている。
本来“情報浸食”はあんな非道徳的な遊戯ではない。
各ラウンド間に、敗者は次のラウンドで使用するライフを減らす代わりに勝者の使用スキルを奪う事が出来るというルールだ。
相手の得意スキルを奪って一発逆転を狙えるルールで、あのパッチが出回るまでは僕もよく利用していた。
だけど一年ほど前に、あれが出回ってしまってから、人造妖精のファン層はすっかり様変わりしてしまった。
嫌気がさして、止める人も増えている、なんていう話もきく。
僕も、その一人かもしれない。
確かにその前から、僕は人造妖精をやっている事をクラスメイトには打ち明けられずにいた。
でもそれはリアルでバトルする自信がなかったからであって、
決して人造妖精を恥ずかしいものと感じていたからではなかったのだ。
これからこのゲームはどうなってしまうんだろう。
憂鬱を隠して僕は店員さんに声をかける。
もう顔見知りになった店員さんと世間話をしてパーツを受け取ると、試着をしてみるかと誘われた。
店にあるバトルフィールドは個人用とは処理速度が段違いだ。
久しぶりに綺麗な画面で“うちの子”を見てみるのも悪くない、そう思って鞄を探る僕は凍り付いた。
ない。
鞄に入れておいた僕の人造妖精が、ない。
念のため鞄の中身を全て取り出しても、影も形も見あたらなかった。
- 56 :
- 挨拶もそこそこに店を出て、叔父さんの部屋についた時も僕の頭の中は真っ白だった。
出迎えてくれた叔父さんに熱い紅茶を出してもらって、やっと整理する事が出来る。
僕の話を聞き、叔父さんは深い溜息をついた。
「それ、先生とかに言って何とかしてもらった方がいいよ。
だって久人くんの人造妖精を盗んだのって、間違いなくそいつらじゃない」
「言えないよ」
人造妖精を持ってくるのは校則違反だ。
だから非は僕にもある。
証拠もないし、クラスメイトはみんな瀬戸内たちの味方をするだろう。
今でさえ教室では微妙な立場なのに、騒ぎを起こしたら間違いなく最底辺に墜ちる。
そうなったとき、自分の身に何が起こるのか恐ろしかった。
「まったく、ガキが人造妖精やるなっての。
いや、久人に人造妖精を教え込んだ僕が言う事じゃないけどさ」
叔父さんはそう言って肩をすくめる。
叔父さんは最初期からの人造妖精プレイヤーで、僕が始めたのは叔父さんの影響だった。
叔父さんのお下がりのパーツやコスチュームを組み、叔父さんやその友達とバトルして腕を磨いてきたのだ。
叔父さんは代わりの人造妖精を買ってあげようか、なんて言ってくれたが断った。
叔父さんは同好の士である僕にはやたら甘く、今までもかなりレアアイテムを融通してもらっている。
これ以上甘える訳にはいかない。
それに、新しい人造妖精を手に入れたら、“あの子”はもう返ってこないのだと認めるようで怖かった。
これはちょっとした嫌がらせで、明日になったら机の上に放置されているかも知れない。
そんな甘い夢を見ながら、眠りに付く。
翌日になっても、もちろん都合のいい出来事など起こる訳もなかった。
クラスメイト達は遠巻きに僕を好奇の目で眺めるだけだ。
特に瀬戸内と苅部は露骨ににやにやしていたが、僕は何も言う事が出来なかった。
彼らに、僕の人造妖精が陵辱されている、そう解っているのに。
沸騰しそうな頭で考える。
人造妖精は高度なAIが積まれている訳じゃない。
痛みだって屈辱だって感じない。
それこそ、本当に性器に挿入されている訳ですらない。
そのように見えるグラフィックが表示されているだけだ。
- 57 :
- そう言いきかせても、全く冷静になれなかった。
僕の人造妖精“タイガーリリー”は、幼稚園くらいの頃に買ってもらったものだ。
以来、パーツやコスチュームはいくつも交換したけれど、主幹データやメインボディはその頃のままに使い続けていた。
型式が古いので公式試合には出せないが、叔父さんや叔父さんの友達と遊ぶときは、いつもあの子だ。
その子を、あいつらの好きにされている。
結局、苅部と瀬戸内を尾行して、他のクラスメイトと別れるのを待つ自分は本当に情けなかった。
彼らはいつもクラスメイトに囲まれていて、二人だけになる機会がなかなかない。
移動教室の合間に声をかけようとした時、二人の前に立ちはだかったのは五十鈴くんだった。
「な、なんだよ、五十鈴」
「なんか、用? 五十鈴くん」
ぴりぴりした空気だ。
力自慢の苅部も、五十鈴くんに対しては分が悪い。
だが一方、瀬戸内の方は五十鈴くんに挑発的な態度を崩さなかった。
「話がある。昨日お前たちがやった事についてだ」
「昨日? 何かあったっけ?」
「おまえらが牧野から盗んだものの事だよ」
「何それ? 意味わかんないんだけど」
五十鈴くんの恫喝にも瀬戸内はしらっとした笑顔のままだ。
「昨日、牧野が出てった後、かばんの中身をぶちまけてたじゃないか」
「あー、あれね。でも、すぐに元に戻したじゃないか。
五十鈴くんだって覚えてるだろう、君が片づけさせたんだからさ」
「ああ。でもその時言ってたな。牧野の人造妖精がレアものだとか。
それからずっと、牧野の机のまわりうろうろしてたのも、見てたんだぞ」
「何だよ。証拠なんてないじゃない。
それに牧野だって何も言ってこないし。
盗んだとか、五十鈴くんが一人で騒いでいるだけじゃん」
「牧野の様子がおかしいのなんて、見ればわかるだろ。
それに、あいつがおまえらに言ってこれる訳ないじゃないか」
- 58 :
- 五十鈴くんにまで解るくらい挙動不審だったのか、と僕はショックを受ける。
同時にとても意外だった。
教室の事には我関せずの態度を貫いているように見えた五十鈴くんが、関係のない僕の為に
動いてくれている。
「瀬戸内くん」
僕は、彼らの前に震える足で踏み出した。
「昨日、僕の鞄、ひっくり返したの?
そのとき、僕の人造妖精をとったの?」
僕が出てきた事に五十鈴くんはたじろいだが、瀬戸内と苅部はさして動じた様子ではなかった。
「ああ、ごめんごめん。転んで鞄の中身こぼしちゃってさあ。
でも、盗んだなんて誤解だよ。
気になるならクラスの奴にきけばいいじゃん」
「つーか人造妖精持ってくるなんて校則違反だし。
やっぱり牧野ってむっつりなのな」
「おい、いいかげんにしろよ」
五十鈴くんが声を荒らげても、二人はげらげら笑うだけだ。
「別に先生に言いつけてもいいけどさあ、これで締め付けが厳しくなったら、みんな牧野を恨むんじゃないかなあ」
「それに俺らマジでお前の人造妖精持ってねえし。
カタクソーサクされても無ぇもんは無ぇから」
彼らはそんな事を言い捨てて去っていき、瀬戸内に至ってはご丁寧にこう付け加えさえした。
「それにしても、五十鈴くんってそんなに牧野の事好きなの?
牧野、尻に気をつけた方がいいんじゃない?」
真っ赤になっている五十鈴くんを見て、僕は本当に申し訳ない気持ちになった。
「……なんか、本当ごめんね。嫌な思いさせて」
「……牧野が謝るのは変だろ。全部あいつらが悪いんじゃないか」
五十鈴くんは頭をがりがり掻いてから口を開いた。
「あいつらの家、家宅捜索するしかないのかなあ」
「い、いや、そんなの無理だよ。それに……」
あれだけ自信たっぷりだったのだ。他に隠し場所があるとか、最悪捨てたり売ったりしてしまったのかもしれない。
それにしても
- 59 :
- 「あのさ……ありがとう。
関係ないのに、ここまでしてくれて」
そう言うと五十鈴くんはさっきと同じような赤い顔になる。
「一応、言うけど、俺はホモじゃないからな」
「それはそうだろうけど」そんな中傷、本気にする訳ないじゃないか。
「俺は、その、ちょっとお前の事を尊敬してるんだ」
まさかそんな事を言われるとは思わなかったので、僕は目が点になる。
「あんなやらしくて酷い事に興味ないってはっきり言えるのは、すごいと思ったんだ。
俺は、そういう事が言えなくて寝たふりしてたのに。
自分が情けなくて」
「五十鈴くんが?」
「俺、体がでかいから勘違いされるけど、別に強い訳でもなんでもないし、
髪の色だっておばあちゃんがイギリス人だからだし、顔の傷だって……喧嘩のせいじゃない」
そう言って溜息をつく。
「噂の半分でも本当なら、こんな時なんとか出来てたのに」
「……ごめん」
「何で謝るんだ?」
「僕、噂を信じていた訳じゃないけど、五十鈴くんの事怖い人かなって誤解してたから」
そう言うと、五十鈴くんはまた赤い顔をしてもごもご言い、移動教室に遅れると言って走っていってしまった。
それから一週間は、比較的静かに過ぎた。
黒板に僕と五十鈴くんが出来てると書かれたり、クラスメイト達がこそこそ言った位だ。
そんな事も二、三日で、すぐ教室の中は静かになる。
そして、12月最後の登校日、
僕がそろそろリリーの事をあきらめて、気持ちを切り替えようと思っていた頃の事。
「牧野クン、チョットいいかナ?」
そう声をかけてきたのは、英語科のウェンディ先生だ。
ウェンディ先生はイギリス出身だが、日本語も堪能だし授業も面白い。
出るところが出たスタイルに明るいブラウンの髪、という華やかな容姿もあって、男子には大人気だった。
「はい、大丈夫です。何か、お手伝いですか?」
そう言うと、ウェンディ先生はわずかに眉を寄せる。
「ンー……チョット、牧野クンにお話したい事があるノ。生徒指導室まで来てくれる?」
- 60 :
- 生徒指導室の机の前でにこにこと微笑むウェンディ先生を見て、僕は何となしに嫌な予感がした。
これは、これから嫌な話をするけどリラックスしてくださいね、という表情だ。
目を合わせ辛くて、机の前で組まれた小さな手に視線を向けてしまう。
ピンクのマニキュアを塗られた爪が美しい。
「単刀直入に言いマス。これは牧野クンの人造妖精ですか?」
ウェンディ先生が差し出した携帯には、僕の人造妖精”タイガーリリー”が映っている。
「はい! えっ……どうして?」
そう訊くと、ウェンディ先生は眉を寄せる。
「このドールは、瀬戸内くんから没収したものデス。
学校に持ってきてはいけませんよ、と注意したら、牧野クンのものだと」
これは……瀬戸内に罪をなすりつけられた、という事だろうか?
それでも、リリーが返ってくるなら、反省文だって、停学だって構わない。
「牧野クン、あなたは瀬戸内クンとトラブルがあるようですね。
この、人造妖精が原因で」
気がつけば、僕は話すつもりが無かった瀬戸内との問題や、
クラスでのあの遊戯の事をすらすら話してしまっていた。
ウェンディ先生はとても言葉たくみで、要所要所に差し込まれた問いかけは、
隠す事なく全てを明らかにしてしまう。
僕はウェンディ先生への評価を改めなければならないと内心で舌を巻いていた。
青い瞳は同情に満ち、言葉は柔らかかったが、
その内側にあるものはとても鋭く、断固として自分が得ようとするものを掴みとる。
- 61 :
- 「……ソウ、牧野クンはそんなに前から人造妖精で遊んでいたのですね。
確かに、この娘からは大事にされている様子が伝わってキマス」
「はい。でも、僕は瀬戸内たちみたいな遊び方がしたいんじゃありません。
あんな、酷いことが出来るなんて……僕には信じられないです」
「君たちの年頃はsexへの興味が芽生えますから、
それに引きずられるのも無理ないですけど……チョット食傷ですね」
「え?」
言葉の意味が解らず声を上げた僕に先生は「何でもありまセン」と言って笑う。
何かの言い間違えだろうか。
「この事は担任の先生と相談します。
牧野クンは確かに校則違反デスが、この件では被害者デスシネ、人造妖精はお返しします」
「本当ですか!」
「もう学校へ持ってきてはイケマセンよ」
そう言ってウェンディ先生は鞄を取り出し、困ったような顔になる。
「Sorry、ごめんなさい。
あなたの人造妖精、私の家に置いて来ちゃったみたいデス」
- 62 :
- 校門前でウェンディ先生を待ちながら、僕は自分の気持ちを落ち着けようとしていた。
自宅にリリーを忘れてきてしまったという先生は、
次の登校日は年明けになってしまうし、せっかくだから自分の家に取りに来ないかと言ってくれた。
“何故先生の家に?”と訊くと、先生はぺろりと舌を出して
“あんまり可愛いからチョット遊んでみたくなったのデス。もちろん変な事はしてイませんよ”
なんて言う。
ウェンディ先生の家にお邪魔するなんて全男子生徒の夢なのに、僕の頭の中はどこかすっきりしなかった。
ウェンディ先生と五十鈴くんが来たのはほぼ同時だった。
「牧野! 良かった、まだいたか、さっきそこで……」
「あら牧野クン、五十鈴サンとお約束デスか?」
ウェンディ先生を見ると五十鈴くんは何故か警戒するような表情を浮かべる。
「牧野クンをご招待する所だったのデスよ。
良かったら五十鈴サンも、どうデスか?」
「家がもうチョット遠かったら、もっとお喋りできたんデスけど」と言いつつ、ウェンディ先生はマンションの地下に車を入れる。
彼女について上がったエントランスは天井が高く、ホテルのロビーじゃないかと錯覚するような雰囲気だった。
エレベーターのボタンを押し、しばし待つ。
ズボンの尻ポケットに、何かが押し込まれてきたのはその時だ。
驚いて声をあげようとした僕を、五十鈴くんが制する。
「どうしたのデスか?」
「何でもないです。ちょっと足踏んじゃっただけで」
そう五十鈴くんがごまかしている隙に、僕はポケットの中身を改めた。
中に入っているのはメモ一枚だ。
“ウェンディは、せとうちとつながっている”
書かれているのは、その一文だけだった。
- 63 :
- エレベーターが、ゆっくりと降りてくる。
「乗らないのデスか? 牧野クン」
先生が振り返り、にっこりと微笑んだ。
いつもと同じ、華やかで明るい笑顔。
「……乗ります。五十鈴くん、ごめんね。
ここで帰っていいよ」
口を開くまでの数瞬、頭をフル回転させて考えた。
きっと、五十鈴くんの言う事は事実だ。
生活指導でもないウェンディ先生が瀬戸内から人造妖精を没収したのは、考えてみれば不自然だし、
五十鈴くんがここまで来て僕に伝えようとしてくれた事なのだ、根拠のない事ではないのだろう。
だが、リリーがウェンディ先生の手の中にあるのもまた事実なのだ。
引き下がる事は出来ない。
「……いいよ。俺も行く」
「五十鈴くん!」
「せっかくの先生とのお茶じゃないか。
俺がお邪魔してもいいんだろう、先生?」
五十鈴くんのどすのきいた口調にもウェンディ先生の笑顔は全く崩れない。
僕は彼女が悪い事など何も企んでいる訳ではなく、
ただ生徒とお茶会をしようとしているだけなのではないかと信じそうになる。
「もちろんよ。cuteな子は何人いても大歓迎だもの」
先生の部屋はマンションの最上階だった。
綺麗すぎて生活感のない部屋に、紅茶のいい匂いが広がる。
「二人トモ、紅茶お嫌いデスか?」
そう首を傾げるウェンディ先生を前に、僕は何と言ったらいいか解らず固まる。
口を開いたのは五十鈴くんの方だった。
「俺がついて来たのは、牧野が教室を出てから耳に入った事が原因です」
五十鈴くんもソファの上でがちがちに固まっている。でも背筋はぴんと伸ばし、まっすぐに先生を見据えていた。
「牧野が出ていった後、瀬戸内と苅部がこそこそ笑っていました。
これで先生が始末をつけてくれる、牧野がどんな風になるか楽しみだ」
先生の顔はやれやれという程度の驚きしか浮かべていなかった。
「本当に瀬戸内クン達は困った子ね。
トラブルは起こす、口は軽い、すぐ人に頼る、一度みっちりお仕置きしてアゲた方がいいのカシラ」
「じゃあ」
「認めマス。瀬戸内クン達に人造妖精を教えたのも、例のパッチ入りの人造妖精を貸してあげたのも、私」
先生の口調は開き直ったものでさえ無かった。
生徒の答えが正解だと認めるかのような平静さだ。
- 64 :
- 「なんで、なんでそんな酷い事、平気で出来るんですか!」
僕が上げた声が、天井の高い先生の部屋に響く。
「データのため」
先生のぱっちりと澄んだ瞳が怖かった。
「思春期の男の子に、自分の自由に出来る対象を渡しタラどうなるのかデータが欲しくて。
でも、駄目デスね。
あの子達、イマジネーションが足りまセン。
人造妖精を使い捨てのオナホ程度にしか思ってナイ。
これでは、商品になる面白いデータは採れまセン」
「商品?」
「ええ」
先生はにっこり微笑む。
「商品価値は色々デス。
世の中には人造妖精が映っているだけの映像でもお金を出す人たち、沢山います。
それが“子供が操作している”人造妖精で、情報浸食している場面があったら尚更。
中の子たちはあんな悪ガキなのにネ。
あの子たち、自分がペドフィリア達のアイドルになってるって解ってないノ。
オカシいでしょう?」
「なんだよそれ……」
五十鈴くんは吐き気をこらえるような顔をしていた。
僕だって吐きそうな気分だ。
「……先生、僕たちがこの事を」
「警察に言いますか? それとも教育委員会?」
先生の笑顔は崩れない。
「証拠なんて出ない、って顔だな」
五十鈴くんの言葉に先生は頷き、一つ付け加えた。
「それに、牧野クンの大事な人造妖精は、二度と帰ってきまセン」
「……先生は、僕に何をさせたいんですか?」
僕の問いに、先生はこぼれるような笑みを見せる。
「ヤッパリ牧野クンは頭がいいデスね。
最初から、君と組むべきだったデス」
- 65 :
- そう言って、ノートパソコンを取り出し、画面を表示する。
「何だ? これ」
五十鈴くんは首を傾げたが、僕にはすぐに解った。
「リリーの公式ユーザーID、ですね」
「ハイ、現在、君の”タイガーリリー”は私がユーザーという事になっていマス。
仮に君が警察やに訴え出ても、この証拠は大きな影響を与えるデしょうね」
そう言って、先生は指を振る。
「もちろん、私はコレを君に譲ってもいいと思ってマス。
君が、私に興味深いデータを提供してくれるなら」
十五分後
僕は別室の寝台に横たわっていた。
目はヘッドマウントモニタに覆われ、耳はヘッドフォンで塞がれている。
“聞こえマスか?”
「はい」
ヘッドフォンから流れる先生の声に返事をする。
“画面を映しマス。見えますか?”
僕は目の前で閃いた光に目をぱちぱちさせた。
そこに映ったのは、僕の人造妖精“タイガーリリー”だ。
なびく黄金色の髪、柔らかな頬、わずかに透ける純白のドレス。
並の家庭用バトルフィールドでは望むべくもない解像度だった。
こんなに美しい彼女を見たのは、
一年前に“フェアリーサークル”本店バトルフィールドを使わせてもらって以来だ。
「すごく、綺麗だ」思わず口に出してしまう。
“商売デスからね。バトルフィールドにはお金かけてます”
自慢げに言うのが腹立たしい。
「それで、勝負をすれば、リリーを返してくれるんですね?」
“モチロン。三回勝負、各勝負間に情報浸食を行い、それら全てデータを採らせていただきます。
仮に、その勝負全て君が勝てバ、何の問題もありません。
また、もし君が負けても、君の顔も声も個人情報も、表に出る事はありまセン。
私が興味あるのは、情報浸食の際の、君のモーションだけ、デス”
- 66 :
- 僕は今、黒い全身タイツのようなものを着せられている。
この服にはびっしりセンサーが仕込まれており、僕のささいな動きにも反応し、
それに応じた触感を返すのだと言う。
“あなたのクラスの人たちが楽しんでイた人造妖精のモーション、
アレ、どうやって作っていると思いマスか?
昔はプログラマが手作業で、ここを攻められたらこう返す、と打ってマシタ。
でも、手間もかかりすぎるし、やっぱり不自然ネ。
だから今はほとんど、モーションアクター、いやアクトレスの仕事デス”
「それは……情報浸食の……ああいう時の動きも?」
“Yes、お金をもらって自分のセクシャルな動きを売る女の子、
売らざるを得ない女の子が世界中に沢山イマス。
君にやってもらうのも、そういう事デス。
ああ、君が男の子ナノハ、大した問題ではありまセンよ。
この業界は常に女の子の人材、不足していますからネ。
そういう問題はクリアされていますヨ”
そういう問題をどうクリアしたのか、気にはなったが考えない事をした。
目の前の勝負を終わらせる。
それに全部勝てば、知る必要なんて、ない。
僕はリリーのステータスをチェックした。
僕が持っていた時と変化はないようだ。
両手のブレードナックルも、青い宝石のついた指輪、腰に巻かれたバラの棘を模したベルトも、
実は強力なアイテムだ。
僕の負けを狙っているなら解除されていてもおかしくないのだが、
向こうはこれ以上の人造妖精を用意しているのだろうか。
“バトル開始します。プレイヤー01 タイガーリリー 、プレイヤー02 ナナ”
僕のタイガーリリーの前には、濃紺のボンテージを身につけた人造妖精、ナナが立っている。
顔のほとんどをマスクで覆われていて、見えるのは青い口紅の塗られたぽってりとした唇だけだ。
- 67 :
- 僕はちょっと警戒するが、そう考える間もなく、リリーはナナに疾駆する。
リリーの一番の武器はそのスピードだ。
リリーのブレードナックルは棒立ちになっていたナナの脇腹をたやすく切り裂いた。
ナナの脇腹からライフの光が吹き出すと同時に、紫の煙が刀身にまとわりつく。
<剣封じの呪い>だ。
一定時間、このブレードナックルは使えない。
ナナが身体をゆらりと動かすと、傷口がきらきら光りながら塞がっていく。
だがそのスピードは速いとは言えない。
おそらく回復効果があるアイテムを装備しているのだろうが、回復しきる前に畳みかければいいだけだ。
僕はブレードナックルを捨て、両手を構える。
両手の袖のフリルが轟と音を立て、一気に三倍くらいの大きさに膨れ上がる。
フリルを構成するのは無数の小さな白い花々で、両手に花束を持っているようにも見える姿だ。
<セイクリッド・グローブ>
リリーが持つ技の中で、最もダメージが大きい技である。
何故この技を最初から使わないのかと言えば、使った後の隙が大きいからだ。
だが、ナナの装備を見た印象では、持久戦に持ち込む意図が見て取れる。
戦いを長引かせるのは危険だ。
- 68 :
- リリーは無数の白い花びらを散らし、ナナの頭上から拳を撃ち下ろした。
だが、すぐにおかしい事に気づく。
ナナの姿がゼリーのように溶け崩れた。
分身だった、と気付いた時にはナナはリリーの背後に迫っていた。
その身体を黒い魔法円が取り巻いている。
強化の補助魔法だ。
ナナは視認できない程の早さでリリーの腕を取ろうとする。
避けられたのは運が良かったからとしか言いようがない。
それでもリリーの爪がかすった腕からライフの光が噴き出した。
がくん、と腕がダメージでひきつる。
その隙を見逃される訳がなかった。
ナナのボンテージが無数の黒揚羽に変わり、リリーに襲いかかる。
ナナのボンテージに仕込まれた技<シャドウダンサー>だ。
本来さほど強い技ではないのだが、強化魔法によって威力は段違いに上がっている。
黒揚羽の羽は剃刀のように鋭く、リリーはあっという間にずたずたになった。
黒揚羽の嵐が過ぎた後には、ぼろぼろになったドレスを申し訳程度に纏うリリーと、
裸の身体を黒揚羽の群で隠すナナが残される。
露出度は同程度だが、残りライフは天と地程の差だ。
どうする。どうしたらいい。
退いて回復するべきだ。それは解っている。
だが、その余裕があるだろうか?
それに、もし負けたら……
ナナの強化魔法は攻撃力を上げるものであって、防御力を上げるものではない。
それに、分身を使ってくるという事は、リリーの攻撃を受けきる防御力はない、という事だ。
ここは、もう一度、賭ける。
後になって考えれば、色々な手が思い付くのだ。
剣封じの呪いが解けるまで防戦して逃げ続ければとか、
こちらも防御力を上げる魔法円を展開しておけばとか。
だが、頭に血が上った状態では、その策にたどり着けない。
まして、負けた場合のペナルティに気を取られた状態では。
“タイガーリリー、ライフ0。ラウンド1、ナナの勝利となります”
- 69 :
- へたりこんだまま動けないリリー=僕の前に、ゆっくりとナナが歩み寄ってくる。
“ラウンド2開始前に、情報浸食が行われます”
無機質なアナウンスと同時に、ナナは僕の胸に手をかけた。
今僕の視点は完全にリリーと同期している。
僕の眼下には紗に包まれた双丘が、自分のもののように揺れていた。
ナナの爪が服ごしに胸を撫で上げる感触に、僕は思わず声を上げてしまう。
自分の胸を現実に触られているとしか思えなかった。
狼狽して周囲を見回しても、モニタに映るリリーの視界以外見られるものはない。
“ちゃんと感じてるみたいデスね”
くすくす笑い混じりの声が耳元で響く。
“ただ触るだけじゃなくて、こういうのも出来マスよ”
ナナの手がリリーの胸を鷲掴む。
水風船のような乳房に指がめり込み、僕は叫び声を上げた。
なんだこれ。
本当に自分の胸をぎゅうっと引っ張られたような痛みと、自分の胸に柔らかな肉の塊があって、
それに圧迫されるような感じ。
“本当におっぱいが生えたみたいデしょう?”
「べ、別に! そんなこと、ない」
僕の返事が強がりだと解っているとでも言うように、ヘッドフォンからはくすくす笑いが漏れてきた。
“ジャア、乱暴にしても、平気デスね”
その言葉と同時にナナはリリーのドレスの胸元を引きちぎった。
ぶるん、と大きく揺れてリリーの乳房がまろび出る。
この胸は自分の胸じゃないし、リリーが現実に辱められている訳でもない。
なのに恥ずかしくて痛ましくて見ていられない。
“目を閉じてはいけまセン。まっすぐに、見て”
モニタ越しの僕の表情などお見通しなのだろうか。
先生の声は今までで一番冷たい感じがした。
“今度目を閉じたら、このゲームはオシマイです。
私もリリーも、二度と君の前には現れまセン”
「み、見ます、見ますから!」
涙がにじんだ視界には呆れるほど大きな乳房があり、薄いピンク色の乳首がつんと上を向いている。
“綺麗な、カワイイおっぱいデス。
清純に、大事にされた乳首と、いやらしく揉みがいのある大きさ、とても、君らしいデスね”
「僕……らしい?」
“ハイ”
- 70 :
- ナナがまた僕の胸をつかんだ。
でも、今度はそれほど強くはなく、ぺったりと胸に貼り付くような感じだ。
“牧野クン、君はトテモ真面目で、思いやりのある男の子デス。
人を傷つけたいと考えた事もナイでしょう”
先生の言葉と共にナナの両手がゆっくりと動き始める。
胸を揉むと言うより、やわやわと動かすという風だ。
もっと乱暴に扱われる思っていたので、少し拍子抜けする。
“デモ、それは本当の君デスか?”
「え?」
くすくす笑いながらナナは僕の胸から手を離した。
「あっ……」
“何デスか?”
「な、なんでも」
手が離れる時、糸を引くように粘ついたような気がした。
もちろん、錯覚だ。
でも、手が離れても胸がじんじんと、熱くしこるような奇妙な感覚が去ってくれない。
僕のとまどいを無視して、ナナは僕の、いやリリーの服を脱がせ始めた。
両肩がゆっくりと剥き出しにされていく。
“牧野クンは、どんなこと、考えマスか?
リリーの服を着替えさせるとき”
「ふぇ? ど、どんなって」
質問が不意打ちだったので頭がまとまらない。
“こんなにカワイイ女の子を裸にするのは、どんな気持ち?”
ナナの指が肩を滑り降りて、僕はびくりと震える。
「な、なにも。なにも、かんがえたり、しない」
“そうデスか。ジャア”
ナナの指が、乳首をぎゅっと摘む。
僕は自分の上げた叫び声が高い事に衝撃を受けた。
なんで
痛いのに
恥ずかしいのに
“君の大事なリリーが、他人に汚されたときは、どんな気持ち?”
- 71 :
- ナナはそのまま僕の乳首を弄んだ。
抵抗したいのに、中途半端に脱がされた袖に邪魔されて腕が動かない。
くりくりとしごき立てられた乳首は瞬く間に赤く腫れ上がる。
“君の乳首、おチンチンと同じ位の固さになっちゃいマシタね”
「やっ、そんなはず、そんなはずない」
そう口走りながらも、僕はその言葉が当てずっぽうではない事が解っていた。
自分の血が身体の中心にむけて、どくどくと集まっていくのが感じられる。
“ねえ、おっぱいを触られる時、考えマシタ?
リリーも盗まれている間、毎日こんな事をされたのかなあって”
ナナがちろりと乳輪を舌でなぞり、僕は声を上げてしまう。
その声はもう隠しようがないほど、高い。
“毎日、あいつらの汚い指でおっぱいをもみあげられて、
恥ずかしい下着を着せられて、
自分からおしりを振っておねだりをさせられたり、
股が裂けるほど大きく押し拡げられて、
ずぼずぼと何本も挿れられて、
あいつらの汚いちんぽに身体をこすりつけてご奉仕させられていたかもしれないって、
本当に、少しも考えませんデシタか?”
わからない
目の前で閃いたリリーの痴態が、今起きている事なのか、かつて行われた事なのか、自分が妄想した事なのか
わかるのは、
今自分がナナに乳首をこねられ、おっぱいを吸い上げられて、みっともない声と涎を垂れ流している、という事だけだ。
ナナが身体を離しても、僕は身体の痙攣を抑える事が出来なかった。
へたりこんだまま、腰をびくびく突き上げ、荒い息を吐き出し続ける。
こんなに、くるしいのに
こんなに、はずかしいのに
まだ情報浸食は始まってもいない。
なんでこんな勝負受けちゃったんだろう・
五十鈴くんは止めてくれたのに
そうだ、五十鈴くん
もし、もし見られてたら、どうしよう
勝負は見ないでくれ、先に帰ってくれと頼んだけど、もし、見てたら
- 72 :
- “もう、泣かないでクダサイ。どうして、欲しいデスか?”
「ろう……ろうして?」
もう舌も回らない。
“ここで、全部止めて、勝負も、リリーも全てなかった事にしてしまいマスか?”
先生の声は授業の時と同じ、優しくてとても、とても甘い声だった。
その声にゆだねてしまいたい。
全部、なかった事にしたい。
だけど
僕は自分の、いやリリーの身体を見下ろした。
剥き出しになった胸
汗でぺったりと身体に貼り付き、透けているドレス
長いスカートは切り裂かれて、太股が丸見えだ
これが全部、無かった事になる。
僕の苦痛だけじゃなく、僕のせいで傷つき苦しんだリリーが全て、無かった事に
「……続けて、ください。
情報浸食、してください」
囁くような声しか出なかったが、ヘッドフォンの向こうからは、ほうというような溜息が流れた。
“いいんデスか?”
「はい」
僕は精一杯声を張り上げようとしたが、押しつぶされたような声になってしまった。
「僕は、この戦いに、勝って、リリーを取り戻しますから」
“……Good!”
耳に流れ込む言葉のイントネーションは、確かにネイティブのものだった。
“では、しちゃいマスか、情報浸食を”
(次回につづく)
- 73 :
- 連投すいません。長くてすいません。
今回は中編になります。
濡れ場は1〜5、9〜14辺り。ショタ要素はあるけど数字板的要素はありません。
**
「ひゃっ」
太股を伝う冷たい感触に、僕は悲鳴を上げてしまった。
リリーのスカートの下に、冷たくて、ぬるぬるしたものが水のように流れこんでくる。
「やっ、やだ、なに、これ」
“スカートをめくって、見てみたらいいデスよ。君の手の動きに連動してめくれるようになってマスから”
僕が手を動かすと、モニタの中のリリーのスカートが持ち上げられる。
よく考えれば、スカートをまくり上げるって相当恥ずかしい事なんじゃないか、
という考えは、画面を見た事で消し飛んでしまった。
「ひ、ひぃいやぁぁっ、なに、なにこれ?」
“……そんなに駄目デスか?”
「や、やだ、なにこれ、やだ、とってとってっ」
“本当に女の子みたいデスよ、って聞いてないデスね”
頭の隅では情けないと思ってはいる。
思ってはいるのだが
「だ、だめ、僕、ぬるぬるしたの、駄目なんです、あ、あっち、いけ」
リリーの太股には、青黒いぬらぬらした光沢を持つ軟体生物が無数に貼り付いていた。
彼らがにゅるにゅるとリリーの身体の中心に向かって這い上ってくる。
これが現実なら、こんな悲鳴を上げたりしないで我慢できる、と思うのだが、
今無数の虫に身体に貼り付かれている状況では、
繊細な白いレースの下着からリリーの黄金色の柔毛がのぞいている事すらどうでもよくなってしまう。
“あー……牧野クン、落ち着いて。続けてもいいデスか?”
「はあ、はい」
続けるって何をだっけ、と呆けそうになる頭を振る。
太股に今もぬとぬと貼り付いているものの事は考えないようにする。
“ジャア仕切り直しで、情報浸食、しても、いいデスか?”
気づけば、ナナは僕と、いやリリーと顔が触れるほど近くにいる。
その身体にまとうボンテージは、あの青黒い虫の群に変わっていた。
「はい……情報浸食、して、ください」
悲鳴をのどの奥に押し込めて答える僕にナナは笑う。
“もっと、別の言葉にシましょうか”
「べ、別の?」
“僕の、恥ずかしいところを、ぬるぬるべとべとしたもので一杯にしてください、トカ”
- 74 :
- その言葉と同時に、僕の身体全体がぬるぬるした感触に覆われた。
「ひっ、いや、やっ、だめ」
モニタの向こうでは、白い太股が青黒い粘液に覆いつくされている。
絶え間なく蠢いている事をのぞけば、黒ストッキングを穿いたような姿だ。
ナナは僕の背後にまわり、再び乳を弄び始めている。
「や、やめ、胸、やめて、くだ、さい、
なん、なんで、じょーほう、しんしょく、だけ、すれば、いい、のに」
“私、責任感じているんデスよ。マサカこんなに触手系が駄目とは思わなくて”
「へ、ふぇ? あっ、あ、や、ちくび、さわん、ないでぇっ」
“怖い痛いだけじゃ私の流儀に反しマスからね。ちゃあんと、気持ちよくなってクダサイ”
「や、やだ、やだぁっっ」
生理的不快感と、胸からもたらされる性的快感が滝のように流れ込んで頭がパンクしそうだ。
気持ち悪いのに気持ちいいというのがまた気持ち悪く、吐き気がしそうなのに、
体温はどんどん上がっていく。
最初は嫌悪感しかなかったはずの虫の動きも、太股をじくじくととろけさせる熱に変わってしまった。
「なん、で、やだ、きもち、わるい、のに」
“男の子は気持ちいいの、隠せないから可哀想デスね。
おちんちん、すごくビクビクしてマスよ”
先生の声と同時に、ナナが首筋を噛む。
自分の上げた声が高く、情けなさで泣きそうだ。
“じゃあ、そろそろ、もう一度、おねだりしてもらいマショウか”
「ふぇ?」
“もし、この後、君が情報浸食して、とおねだりしたら、私はそれに応えマス。
直ちに、ナナの使用スキルの一つをリリーに譲渡シ、Round2を開始します”
今更、何を、言っているのだろう。
疑問がゆるゆると、嫌な形を結ぶ。
“でももし、君が、それ以外の事を希望するなら、そういうおねだりを私にしなくてはいけまセン。
どうしますか?”
- 75 :
- 肩越しにナナは僕をのぞき込んでいた。
あれほど僕を悩ませた太股の虫たちも動きを止め、乳房の形が変わるほど蠢いていた手も身体から離れている。
寒い。
ほとんど裸になった身体がひりひりして、震える。
なのに、熱い。
身体の中心がずきずきして、転がり回りたい位に。
「僕っ、は、ぁ」
声がかすれて、恥ずかしさでまた涙がにじんだ。
「き」
ぎゅっと目を閉じてから、また警告されるかもしれないと慌てて開く。
「きもち、よく、して、
ぼくに、いやらしい、こと、してください。
ぬ、ぬるぬるべとべとしたので、ぼくに、はずかしいことを、して、くだ、さい」
“……よく言えマシタね”
耳に当たる声は驚くほど柔らかで優しかった。
“よい子の牧野クンに足りなかったのは唯一つ、正直さデス。
自分が本当に欲しいもの、欲しい事を言える力デス。
君がそれを手に入れる事が出来て、先生は本当に嬉しく思ってマスよ”
それらの言葉の意味を理解出来たのは、後になってからだった。
僕はその時、自分の身体に起きている変化に怯え悶え、それどころでは無かったからだ。
「や、やだ、なに、はいってくる、くるぅっ、なん、おんなのこ、じゃないのにぃっ」
僕の視界では、リリーの股を大きく割った黒い虫が蠢いている。
初めて間近で見た女性器を、ぬめぬめした線虫の群が押し拡き、侵入しようとしているのだ。
それはあくまで映像であり、男性である僕が見ても何も感じないはずだった。
だけど今、僕は身体の中に何かが侵入してくる感覚と、それに伴う快感にがくがくと腰を揺らしている。
“すごいデしょう?
肛門の感覚と陰茎の感覚をミックスして、脳のある部位を刺激する事によって、
疑似的に女性器の感覚を再現してるんデス。
やり過ぎると脳障害が残る問題だけは、まだクリア出来てないデスけどね”
- 76 :
- もちろん、そんな言葉は理解出来なかった。
ただ嬌声と涎を垂れ流して、あれほど気色悪く思っていた蟲にもっともっとと腰を振る事しか出来ない。
“気持ちいいデスか?”
そんな問いにも、何も考えずに答えてしまう。
「気持ち、きもちいいっ、で、す、
あっ、ああっ、きもちい、きもちいすぎて、い、いいっ、いた、いだいぃっっ」
“前から思ってマシタ。
女の子の初めては痛いのに、男の子の初めては痛くないのは、ずるいなあって。
ダカラ、このマシンでプレイするときは、男の子もちょっと痛くしてマス。
でも、本当の女の子よりは痛くないんデスから、我慢、デスよ”
「いだいぃ、いだぁ、あっ、ふとくて、ぎちぎちに、ぎちぎちになるうっ、はいんないぃ、ぞんなのっ」
痛い痛いと言いながらも、僕は口が緩んで涎を止められない事が解っていた。
画面の中の女陰はだらだらと愛液を垂れ流しているが、
おそらく現実の僕の性器も、先走り液で同様になっているはずだ。
だが、現実ならすぐに射精して終わるはずの快感は、いつまでもいつまでも僕の身体を動かし続ける。
「お、おねがぁい、おねが、いぃっ、です、いがぜて、いがぜで、ぐださいぃっ、
じゃ、じゃぜいざせて、くだ、さいぃ」
顔中から、いや、身体中から汁を流して哀願する僕の後ろから、先生のくすくす笑いが聞こえる。
“もう、牧野クンたら。はしたないデスよ。
今の君は、女の子デス。そんな事言ってはイケマセン”
じゃあ、なんて言えばいいのか、という事しか僕の頭にはない。
女の子って、射精しないんだっけ?
代わりに何をするって言うの?
「おね、おねがぁいっ、めぢゃぐじゃに、めぢゃぐぢゃにじていいがらぁっ、だざぜて、だじたいぃぃっ」
“いいんデスか?”
先生の言葉と共に、ナナが乳首をつねりあげる。
乱暴さを感じる仕草とは裏腹に、声は柔らかく優しい。
その声のまま、ほうっと溜息をついて囁きかける。
“見られてますよ、今の君。五十鈴サンに”
その言葉が頭に届くまで、しばらくかかった。
見られている?
誰が、誰に?
僕が?
男なのに、こんな気持ちの悪いものを悦んで受け入れて腰を振って、
涎も馬鹿みたいな声も垂れ流している僕が、
見られている
五十鈴くんに
- 77 :
- 「ひぃぃぃっっ、いぃっ、いやあぁぁっっ、やっ、やあっ、みないで、みないでぇっっ」
僕の情けない悲鳴など無かったように、蟲もナナの両手も動き続ける。
「や、やめでぇ、う、うごがさないでぇっ」
“どうしてデスか? イきたいんデしょう?”
「や、やだぁぁっ、やめっ、やめでっ」
“そうデスか? さっきよりずっと硬く激しくなっているのは君の方デスよ”
そんなはずない、という言葉は口の中で崩れ、意味をなさない嬌声になる。
見られている
見られてしまう
きっと軽蔑される
気持ち悪いと思われる
“最後はちゃんと、おちんちんの方でイかせてあげマスね。”
初めて亀頭にぐりんと刺激が与えられ、僕は高い声で鳴く。
首を横にぶんぶん振っても、張り付いた無数の蟲たちも、
力強くしごきあげる冷たい指も動きを止める事はない。
もう、意味のある言葉は言えず、頭の中に形作る事も出来なかった。
ただ快感を貪るだけの機械のようになって、身体を動かし続けるだけだ。
でも、一つだけ
「ごめんなざいごめんなざいごめんなざいぃっぅ、いやあぁっ、ごめんなざいいぃっ」
壊れてしまったみたいに、謝り続けていた。
誰かに。
身体の底から、全ての白濁液を吐き出し終わるまで。
- 78 :
- “……クン、牧野くーん”
遠くから声がする。
目の前がちかちかする。
マスクを付けた女の子がのぞき込んでいる。誰だったっけ。
ぱっと目の前の女の子がいなくなって、世界は闇に包まれる。
同時に、さっきのはヘッドマウントディスプレイで、それを外されたのだという事に気付いた。
代わりに僕の目の上に、ほかほかした濡れタオルが置かれる。
“牧野クン、起きてますか?”
「えっ、ああ、はい」
先生の声は居眠りをした生徒を起こす時とまるで変わらない。
だが意識が冴えるにつれ、僕の心は沈みこんでいった。
さっき僕は、負けた。
勝負に負けたというだけじゃなく、あらゆる意味で、負けた。
そして、全てを失った。
「ひゃっ」
顔にぺたんと当たる、冷たいものの感触に悲鳴を上げる。
ごしごしと冷たいタオルで、顔を乱暴に拭かれる。
“どうしマシタ?”
「どうって……その、自分で拭きます、から」
ヘッドフォンからはまたくすくす笑いが漏れてくる。
触れるくらい近くにいるのに、マイクで会話するというのも妙な話だ。
“いいじゃないデスか。それぐらい。
それとも、もっと別の事、して欲しいデスか?”
僕の顔を拭く手がぴくりと止まり、僕は案外先生の手は大きいんだなと、下らない事を考えた。
「……やめてください。そういう事言うの」
“Sorry”
さして申し訳なく思っていない風に先生は返す。
「いいから、もう、触らないでください」
顔に当たる手を払いのける。
“はいはい。でもしばらく濡れタオルは目に乗せておいた方がいいデスよ。
あのディスプレイ、目の負担が大きいデスから”
そう言いながら、僕の頭はゆっくりと起こされ、また沈む。
膝枕をされていたのだと気付くと、顔が真っ赤になる思いだった。
僕の涎だらけの顔を先生はさぞにやにやしながら眺めていたのだろう。
“じゃあ十分ほど休憩したら、Round2、開始してもOKですか?”
「……ええ。大丈夫です」
僕の背後で扉が開き、人の出ていく気配がある。
もし
ここで
僕が先生を押し倒したらどうなるんだろう
僕はふかふかしたベッドの上で、益体もない事を考える。
扉が閉まってからも、僕の頭の中ではその考えが渦巻き続けていた。
- 79 :
- “プレイヤー01 タイガーリリー 、プレイヤー02 ナナ”
機械音声のアナウンスが響く。
ディスプレイの中のリリーは先ほどのあられもない姿はみじんも感じさせない、端正なドレス姿だ。
ナナの方もぴっちりとボンテージに身を包んでいる。
“ラウンド2開始前に、情報浸食によるスキル譲渡処理を行います。
タイガーリリー、ナナのスキルの内一つを選択してください”
モニタにナナの所持スキル一覧が映し出される。
もっとも、それは前回のバトルで使用されたものだけだ。
ラウンド2の為に隠し玉が用意されている可能性も、当然ある。
だけど、僕は迷わずに一つ選んだ。
「<分身>を選びます」
“了解しました。ナナのスキル<分身>はリリーに譲渡されます。
では、ラウンド2 開始”
次の瞬間、花びらと共にナナが宙を舞った。
更にもう一撃、打ち上げる。
落ちてきた所を横殴りにもう一撃。
大量の白い花びらの中に青黒いナナの身体が横たわる。
<セイクリッド・グローブ>が最も綺麗に決まった形だ。
リリーの拳には<剣封じの呪い>が巻き付いたが、
ほぼ使い捨ての<セイクリッド・グローブ>なら呪われても大した問題じゃない。
それでも僕は油断せず、グローブの代わりに武器を<水霊の指輪>にチェンジする。
攻撃力は低いが、防御力が格段にアップする装備だ。
ナナはよろよろと立ち上がり、右手をリリーに向けて放つ。
もっとも飛ぶのは手ではなく、腕に巻き付く<噛みつきリザード>だ。
虹色の大トカゲが鋭い歯で、リリーの肉をこそげとる。
だが、それが悪あがきであるはナナの方も解っていただろう。
次に僕が放った<水霊の指輪>の魔法の一撃で、ナナは沈む。
“ナナ、ライフ0。ラウンド2、タイガーリリーの勝利となります”
- 80 :
- あまりにあっけない結末に、僕は一気に身体の力が抜けてしまった。
ナナは攻撃も防御も余り高くない。
それを<分身>と補助魔法で補っていたのだ。
“ラウンド3開始前に、情報浸食を行いますか?”
僕はそのアナウンスの意味を考え、口を開いた。
「僕が、勝利したら、情報浸食を、してもいいんですよね?」
“モチロン。私は、情報浸食を受諾しマス”
いたずらっぽく笑う声と裏腹に、目の前のナナは少し慄いたようだった。
後になって考えてみると胸が悪くなるようだが、僕の背を押したのは、その慄きだった。
「情報浸食を、行います」
目の前のナナがびくりと身体を震わせる。
“念の為、確認しますケド……”
「じゃあ、言い直します。
僕はあなたで気持ちよくなりたい。
あなたにいやらしい事をしたい。
あなたをレイプしてぐちゃぐちゃにしてやりたい。
これで、どうですか?」
自分がこんなに、冷たくて乾いた声が出せるなんて思ってもみなかった。
“……本当に、正直になれましたね、牧野クン。
私、君がここまで成長するとは思ってマセンでした。脱帽デス。
でも、今君が出来るのは私とではなく、目の前のナナとデスけど、構いませんか?”
先生の声は低く、どこか恐る恐るという色が感じられる。
僕は目の前のナナを見た。
濃紺のボンテージに包まれた身体は、力無く白い花びらの中に座り込んでいる。
腰は子供のように細く、胸もほんの僅かな膨らみしかない。
マスクに隠れた顔の中で、唇だけが細かく震えている。
「……構いません」
“……Good!”
ナナはこわばった唇を動かし、微笑む。
“今は、好きなだけ、愉しんでクダサイ”
- 81 :
- 僕はナナを前にして、正直に言えば途方に暮れていた。
たとえば、目の前にいるのが現実のウェンディ先生ならば、僕はためらわなかったと思う。
押し倒して、白いブラウスを引き裂き、豊かな胸を揉み絞っていただろう。
だが、ナナの身体は儚さを感じるほど細い上に、
そもそもボンテージスーツをどうやって脱がせたらいいのか分からないという有様だ。
濃紺のボンテージはてらてらと輝き、身体の線を浮き彫りにしているが、素肌はほとんど見えない。
身体の中心線にまっすぐに入った切れ目から、白い肌がのぞく。
切れ目を綴じるのは、細い紐だけだ。
「この、紐から解けばいいのかな」
声を出すと、ナナはゆっくりと手を胸の前に持ち上げる。
「……今更、嫌だって言っても、駄目ですから」
そう言うとナナは慌てたように首を横に振り、胸元に指を入れて押し広げる。
滑らかなスーツに皺が寄り、指一本ほどしかなかった切れ目が三本程度に広がった。
そのまま、しばらくナナは同じポーズをとり、やがて力尽きたように手を離すと、また同じ事を始める。
「もしかして、自分で脱げないんですか?」
そう問いかけると、こくんと頷いた。
途方に暮れた様子が案外愛らしいのが腹立たしい。
「僕が脱がせてもいいですよね」
返事を聞かずに胸元に指を挿し入れる。
引っ張ってみるが、紐は丈夫で千切れそうにない。
持ち上げた布地の間から、薄い胸とピンク色の乳首が見えた。
よく考えたら、人の服を脱がせて胸を見るなんて初めてだ。
さっきまで、リリーの胸をげっぷが出る程見ていたから感覚が麻痺していたが、
今、僕は女の身体をいくらでも見たり触ったり出来る、という事だ。
そのまま、胸元に指を滑らせる。
“んうっ”
ナナの押しした声に思わずどきりとする。
その声が漏れる唇は、僕のすぐ目の前にある。
唐突に、もしこのままキスをしたらどうなるんだろうという考えが浮かんだ。
ナナの熱い息や、甘い体臭がむせかえるほど感じられる。
頭を振って、その考えを払い落とした。
キスだって?
こんな、人をさんざん弄んで、変態そのものみたいな格好した女と?
そんなの、絶対ありえない。
ファーストキスをそんな女に捧げるなんてごめんだ。
- 82 :
- 乱暴に乳首をつねり上げる。
“んんんぅっ”
ナナはびくっと跳び上がるように身体を強張らせる。
「声、出していいんですよ」
ぶんぶんと首を横に振られた。
人にはあれほど恥ずかしい声を出させておいて、と猛烈に腹立たしくなってくる。
「声、出してください」
乳首を親指でぶちゅっと潰す。
「出して」
乳輪を軽く引っかく。
「出せ」
硬い乳房を鷲掴みにして、ごりごり潰す。
「恥ずかしい声出せ! 僕みたいに! いやらしい声だせよ!」
“んうっ、んんううっ、んーっ”
荒い息をついて、手の動きを止める。
ナナも大きく胸で息をして、唇の端から涎を垂らしていた。
それでも、あくまで声は出さない気らしい。
マイクの向こうでハンカチでも噛んでいるのだろうか。
乳房に真っ赤な掌の跡と引っかき傷がついているのに気付き、気分が悪くなった。
「声、出さないのが、悪いんです」
ナナは俯いたままだ。
「……出させますから」
僕はやっと存在を思い出したブレードナックルを取り出し、胸元の紐をぶつり、と切る。
「声、出したくなくても、出るような事、しますから」
つるりとした材質のスーツを脱がしていると、なんだか果物の皮でも剥いているような気になってきた。
青黒い皮の下に、薄桃色に上気した、汗でぬめる肉体が息づいている。
ナナは抵抗もせず、なすがままになっているが、時折身体を震わせ声をかみしていた。
「感じてるんですか?」
返事は無い。でも、へその周りをそうっと撫でると身体がびくりと跳ねる。
認めるのは不快だが、僕はまだまだ女を気持ちよくさせる技能が足りないのだ。
さっきみたいに、ただ乱暴にするだけでは、あの女を屈服させられない。
だから、僕はあの女がした事からも学ばなくてはいけない。
あの女にされたように、どうしようもない快感を流し込んで、
体中をぐちゃぐちゃにしてやらなければならないのだ。
- 83 :
- ナナの赤くなった胸に顔を近づけた。
一見、男の子のような薄い胸だが、その上に柔らかな脂肪が添えられている事を僕はもう知っている。
舌を伸ばすと、ぴちゃっと何かに当たった。
ビニールのような素材だ。
たぶん、現実に僕が横たわっているベッドの上に敷かれていたものだろう。
だが、ナナの反応は強烈だった。
“んんうっ”
まるで、現実に舌が触れたかのように悶える。
これは面白い。
たぶん顔を近づける=舐めるという事になっているのだろう。
そのまま、自分がつけた引っかき傷に舌を這わせてみる。
“んぁっ、んんぅ、んーんー”
僕は大きく跳ねて逃れようとするナナの身体を押さえつける。
身体の下で、小さな白い花がぷちぷちと潰れた。
れろん、と汗にぬれた乳房を舐め回す。
おそらく今舌に感じている味は自分の汗だろうが、そんな事はどうでもいい。
自分の身体の下で、汗と唾液でべちゃべちゃになったナナが悶えている事の方が大事だ。
乳首を口に含むと、本当に突起が口内に感じられる事にびっくりした。
科学の力ってすごい。
若干ビニール素材を感じるが、形も大きさも乳首そのものだ。
柔らかく、噛む。
“んうっ、んんんう、んぁうぅっ”
声の質が、ちょっと変わったかもしれない。
押しした声の向こうに、ちょっと甘い、鼻を鳴らす色が見える。
「おっぱい、舐められるの気持ちいいんですか?」
そう問いかけると、ナナは首をふるふると横に振る。
ちぇっ、まだまだだ。
「じゃあ、おっぱい、ちゅうちゅう吸ってあげますね」
“んんうっ”
抗議の意味をこめた言葉だったのかも知れないが、もちろん意味は解らなかったので無視する。
れろんと舌で乳首を包み込んだ。
口に生キャラメルを含んだような、甘い気分になる。
こんな女で、しかも小さなおっぱいなのに、
ちゅうちゅうとすすっていると、自分の胸もちくちくとむず痒い気持ちだ。
無意識に自分の乳首をいじっていた事に気づき、無性に腹立たしくなった。
- 84 :
- 「乳首、すごく硬くなってますよ」
そう口に出したのは、事実でもあるが八つ当たりの為だ。
「僕のより、ずっと硬い。ほら」
自分の胸と、ナナの胸をぴったり合わせる。
男の僕の方がリリーの肉体をまとっているので胸が大きくて、変な感じ。
ナナの胸板の上に、むにゅむにゅと柔肉をこねあげる。
「ほ、ほら、僕、より、あなたの方が、ずっと、乳首もかちかちだし、
体温も、たかくて、や、やらしくなってる。
あなたの、ほうが、ぼくより、ずっとずっといやらしい、にんげん、なんだから!」
そう言いながらも、僕は自分の中が硬く、尖っていく事に気付いていた。
触れ合う乳首が尖り、彼女の下腹に刺さるペニスが硬く硬くなっていく。
ナナもそれに気付いているのか、下半身をよじって逃げようとする。
僕は慌ててナナの腰を押さえつけた。
「いまさら、にげるんですか」
ナナは首を振り、口を開いた。
“いあう”
相変わらず布を噛んでいるような声だったが、ようやく意味のある言葉が出て少し驚く。
ナナはゆるゆると足を開いた。
下半身はほとんどスーツに覆われているが、秘所だけはスーツの切れ目のせいで丸見えだ。
毛のないつるんとした土手からは、赤い果実のような器官がべたべたと汁を流している。
“ふきにひて、いい”
「……好きにしていいって、言ってるんですか?」
ナナはこくりと頷く。
殊勝な態度を示されるのも腹が立つ。
まるで、僕が悪い事をしているみたいじゃないか。
「言われなくても、好きにします」
“んううぅっっうっっっ”
僕は指を彼女の中に突き立てる。
なにこれ
すごい、ぬるぬるして
さっきの蟲みたいだけど、指にすごく絡みついてきて、抜けないんじゃないかと不安になる。
これが、女の子の?
- 85 :
- 僕は初めて触る女の子のものに夢中になる。
どこまで指が入るんだろう。
すごく狭くてきついのに、これにちゃんとペニスとか入るんだろうか。
すごくべたべたする汁が出てきたけど、これが愛液とかいう奴なのかな。
それともおしっこだったりして。
さっきから、すごく腰をがくがくさせて、んーんー鼻声を鳴らしているけど、
ここを触られるの、そんなに気持ちいいのかな。
指でそんなに気持ちいいのなら
“んんんうっ、うーっ、あ、あああああぁぁっ、だめぇぇっ”
言わせた。ついに言わせた。
思わずガッツポーズをするが、そのまま僕は彼女の股間に舌を這わせる。
“あっぁあっ、だめ、それ、だめ、そこ、だ、だだめ”
舌が当たるのはビニール素材で、指の時みたいに奥まで入らないし、ぬるぬるした感触もない。
ちょっと惜しい気もするが、本当にあんな場所に顔をつける勇気はないので、丁度良かったかもしれない。
「好きにしていいって、言ったじゃないですか」
ちょんちょんと、秘裂の上の方を舌で突く。
返事はない。
甲高い声で鳴き、びくんびくんと跳ねるだけだ。
「ちゃんと、しゃべってくださいよ」
そう言いながらも、僕は彼女自身を指で押し拡げる。
「ぼくにも、いわせたじゃないですか。
いやらしいことしろ、っていわせたじゃないですか」
ナナはゆっくりと半身をおこし、マスク越しに僕を見つめた。
もちろん、瞳は見えない。
だが、マスクの向こうに、まっすぐな瞳があるようで、いたたまれない気持ちになる。
ナナは唇を震わせた。
何度かどもったあと、それを口にする。
“わたしに、い、いやらしいことを、してください。
わたしで、きもちよくなって、
わたしの、わた、わたしの、お、おおまんこのなかに、しゃせい、してください”
彼女はかすれた声で、それを言い切った。
「じゃ、じゃあ、する、そっちが、してくれって、言ったんだから!」
そう言いながらスカートをたくし上げる自分は、世界一情けなくて醜いと思った。
- 86 :
- リリーのスカートを押し上げる逸物は、残念ながら現実の僕のものよりも、ずっとずっと”ご立派”だった。
赤黒く、太く、もちろん皮なんて被ってなくて、血管がびきびき走っている。
馬鹿にされた気分で心底腹が立つが、反面これがナナの中に入るのか不安になる。
とりあえず、とナナの足の付け根にそれを押しつける。
「あ」
“んぅっ”
同時に声を上げてしまった。
気持ちいい。手でする時と全然違う。
そのまま、ぐりぐり押しつけてみる。
「あっ、ああっ、なに、なにこれ」
“んっ、んんっ、うっ、んぅぅっ”
相手より僕の声が大きいのも腹が立つ。
僕も声を抑えられるようなハンカチか何か用意しておけばよかった。
表面だけでこんなに気持ちいいなんて、本当に入れたらどうなってしまうんだろう?
「じゃ、じゃあ、入れるから」
わざわざ、そう口に出してナナの腰をつかむ。
なんか、これは、やばい。
さっさと射精して、済ませてしまった方がいいかもしれない。
だって
だって、こんなに気持ちいいなら
「あっ、あっ、せまっ、はいん、ない」
ペニスをぎちぎちと握り締められるようで、痛くて、熱くて
「せまい、よ、も、もっと、ひろげ、て」
無数の虫に包まれているみたいで、痒くて、ペニスだけじゃなく、身体全部にその感覚が広がって
「あづっ、き、きもちいいよぉっ、すごく、ずごく、き、きもぢ、よずきてっ」
頭がおかしくなってしまう。
さっきと同じ、いや、さっきよりも、もっと気持ちいい事しか考えられなくなってしまう。
腰を押しつけて、ずぼずぼ相手に穴を開ける事しか考えられなくなってしまう。
自分の身体の下に、細い骨格を持つものを押しつぶして。
僕は
壊してしまう。
めちゃくちゃにして、しまう。
「あっ、あーっあああああぁっっ、
きもちいいい、きもぢいぃよおっ、おまんごめぢゃぐぢゃにするの、ずごいきもぢいぃぃ、
いだい? いだいだろぉぉっ、
ぼくにされるの、ずごいいだくて、ざいてぇいだろおぉっっ」
僕の身体の下で、ずっと、あえぎ声を上げて髪を振り乱していたナナは、
そのとき、首を横に振った。
“ごめん、なさい”
彼女の言葉の意味を考える前に、僕は彼女の膣内に、びゅくびゅくと射精をしていた。
- 87 :
- ナナは仰向けに横たわり、胸を上下させている。
腹も、太股もべったりと白濁液がこびりつき、飛沫は胸にまで届いていた。
小さく開いた口からは荒い息と、糸になった涎がこぼれている。
時折、細かく身体を震わせた。
僕は、それを見下ろしている。
僕は、この娘をレイプしたのだ。
手で拭っても、白濁液は広がるだけで綺麗になる訳もない。
ナナはなされるままで、僕に視線も向けなかった。
僕はゆっくりと、彼女を抱き上げる。
軽い。
当たり前だ。
こんなに胸も薄くて、手足も細いのだから。
スーツを着せかけてみたが、中心の紐を切ってしまったスーツはだらしなく崩れ、身体を隠す事も出来ない。
「……ごめん」
僕の腕の中で、彼女は少し慄いた。
「いまさら、こんなこと言っても、許してもらえないけど、ごめん。ごめんなさい」
ナナはぼんやりと僕の顔を見つめている。
「ナナは、ウェンディ先生じゃ、ないんでしょう?」
“……ばれちゃいマシタ?”
応じた声はまったく悪びれておらず、改めて意が沸いてきた。
ナナから電源が切れたかのように、くたっと力が抜ける。
僕はそれをそっと、花びらの上に横たえた。
“いつから気付いてマシタ? 最初からじゃないデスよね?”
「気付いたのは、つい、さっきです。何となくおかしいとは思っていたけど」
そう、そもそも先生が僕にこんなに好きにさせる訳がない。
僕とセックスするにしても、主導権はいつのまにか先生のものになっているだろう。
「それに、声を出さなかったのは、先生の声じゃないのをごまかす為、ですよね」
押しした声やあえぎ声だったから気付かなかったが、後になって思い返せば、明らかに違う声だった。
それに、英語訛りだって無かったのだ。
- 88 :
- “ンー、じゃあ、牧野クンに質問。
ナナが私じゃないとして、何故謝ったのですか?
自己満足デスか?”
「……そうかもしれません」
僕は、横たわるナナを眺める。
髪の毛に、小さな花びらがこびりつく彼女を。
「僕は、自分が思っていたよりずっと、最低な人間です。
腹が立ったらすぐやり返したくなるし、いやらしい事もしたくなるし、
それを隠して良い子の振りをするような。
ナナの事だって、よく考えれば気づくような事だったのに、気づかずに滅茶苦茶にして。
ナナがただのプログラムでも、酷い事をした自分が許せない。
あんなに、綺麗事を言っていた自分が、先生や瀬戸内たちと同じような事をしたのが、
苦しくて、我慢できない」
耳に届く笑みは酷く優しかった。
“じゃあ、君タチに、最後の課題です。
この後、Round3で、会いマショウ”
君タチ?
言葉の意味を考える前に、画面がぶつりと切り替わる。
画面は乱れている。
手持ちカメラのようで、ぐるぐる回る画面に何が映っているのかよく解らない。
ようやく安定したとき、画面にはソファに座り、頭を抱えている人影が映っていた。
五十鈴くんだ。
“何で、話したんですか”
押しした声に、胸が潰れるような思いがする。
正直に言えば、忘れていた。
僕は、彼を思い出す事すら出来なかったのだ。
復讐心と、欲情に煽られて。
“何の事デスか?”
応じる先生の声は近い。
どうやらカメラは先生の服に仕込まれているらしい。
“俺が、見てる、なんて。あんな事言わなきゃ”
“言わなかったラ、また牧野クンと普通のお友達になれマシタか?”
僕は、五十鈴くんの顔を見るのが辛く、目を閉じた。
もう、彼と普通の友達になる事は、二度とないだろう。
目を閉じても、音声は耳に流し込まれる。
“あなたの時はどうデシタか? 五十鈴サン。
あなたがレイプ未遂にあって、顔と心を傷つけられた後、初めて学校に行った時はどうデシタか?
クラスメイトたちは本当はみんな、あなたの過去を知っていて、陰で噂されている、とは思いマセンでしたか?
牧野クンが、あのときのあなたと同じ事を考えるとは、思いマセンか?”
- 89 :
- 愕然として目を開くと、画面の向こうの五十鈴くんも同じように目を見開いていた。
“知っていたんですか”
“教職員は全て知らされてイマスよ。あなたのトラウマに触れないよう。
そして、あなたの、女性である事を捨てて男性として生きたいという意向をサポートする為に。
ねえ、Miss 五十鈴”
僕は画面の中の五十鈴くんをまじまじと見た。
そんな馬鹿な、と思う反面、頭の中には色々な事が浮かび上がってくる。
体育の授業だけはいつもさぼっていた事や、それについて教師に注意された事は一度も無かった事。
背は高く、筋肉はついているけど細い。
顔は細面で、横一文字についた傷が無ければ女性的な印象さえある。
女の子じゃないか。
今、画面の中にいるのは、背が高くて、髪の毛が短くて、泣いている女の子だ。
“なんで、こんな酷い事をするんですか?”
涙声で俯く五十鈴くんの頭を、先生が撫でる。
“俺や、牧野の事、おもちゃだとでも思っているんですか!”
“あなたも、牧野クンも、大切な生徒だと思ってマスよ”
先生の声はあくまで優しかった。
“だから、もっと伸びて欲しい、もっと強くなって欲しい、そう思ってマス”
五十鈴くんが先生の手を振り払い、立ち上がる。
“帰りマスか?”
“……牧野を、連れて帰ります。あんたの遊びには、もう付き合わせない”
マイクが軽く上下する。先生が溜息をついたのだ。
“牧野クンに、なんて言うつもりデスか?”
画面の中で、五十鈴くんが固まる。
“彼が、あなたの言葉に従うデショウカ?
あなたもさっき見たデショウ。彼はこのゲーム、続行するつもりデスよ”
“それでも……”
五十鈴くんは反論しようとし、口を開けたまま言葉を捜す。
だが、そのまえに先生は畳み掛けた。
“牧野クンに、君のスゴク恥ずかしいところ見たけど、それを無かった事にして帰ろうって、言うつもりデスか?”
- 90 :
- 泣いている。
頭を抱え込み、喉を振り絞るようにして、五十鈴くんが泣いている。
泣く事なんてないと、言いたかった。
僕は、五十鈴くんに泣いてもらうような価値のない、ちっぽけな人間なのだと。
そう声をかけたくても、画面の中には届かない。
“こう、考えたことは、ありマセンカ?”
先生の声は、今までに無く低く、静かだった。
“身の上に降りかかった不幸は、ただ黙ってやり過ごすダケでは取り返す事は出来ナイ。
戦わなければ、失ったものは決して取り返せナイ。
あなたも、そう考えて男の子として生きようと思ったのではナイですか?”
先生の手が、涙を流す五十鈴くんの頬に当てられる。
“牧野クンも、きっとそうデショウ。
この屈辱は戦って勝つ事でしか、取り返せマセン。
私は彼を全力で迎え撃つツモリです”
人差し指が流れる涙を拭った。
“そして、私が勝ったら、マタ同じ事をするデショウね”
“そんなの駄目だ!”
“仕方アリマセンヨ”
五十鈴くんの叫びにも、先生は淡々と返す。
“牧野クンはそれを望んでイマス。
仮に負けて、何のペナルティもなかったら、その方が残酷とは思いマセンか?
何もなかったら、先ほどの犠牲は全て意味がない事になってしまいマス。
でも、正直役得とは思ってマスよ。
可愛いデスものね、牧野クン。
あなたも、そう思っているデショウ?”
五十鈴くんの顔は、僕の目の前にあった。
現実だったら、息の匂いさえ届くような距離。
その視界の中で、五十鈴くんの顔が真っ赤に染まり、歪む。
“違う”
画面が、先生のくすくす笑いで揺れた。
“じゃあ、何故今までここに残っているのデスか?
牧野クンの為に泣いたり、私から護ろうとしているのデスか?”
五十鈴くんはわずかに俯く。
“そ、それは、牧野は、友達だから、こんな目に、合わせたくない”
“友達、デスか?”
先生の指が、その顔を正面に向けた。
“じゃあ五十鈴サンはお友達のいやらしいところを見て欲情してしまうような、酷い人デスね”
- 91 :
- “違う! ちがうちがうちがう! 牧野の、牧野のことなんか、別にそんなふうに思ってなくて、
あいつはいい奴だし、男だけどいやらしい事とかしなくて、やさしいし、そんなこと、
そんなこと全然考えてない!”
涙を流す五十鈴くんの顔を、先生の指が上向きに固定する。
カメラに、向けているのだ。
“んー、別に、いいじゃないデスか。牧野クンのこと、好きなんデショウ?
女の子が、男の子の事好きになるの、自然な事デス。
好きだって、言えばいいじゃないデスか?”
“そんなこと……言えるわけない”
先生の指が、そっと五十鈴くんの唇を撫でる。
“どうして? 私から言ってあげマショウか?
五十鈴サンは牧野クンの事が大好きで、
牧野クンのいやらしい声を聴いて太腿をもじもじサセていたって”
“やめて!”
「やめろ!」
奇しくも僕と五十鈴くんの声は重なった。
だが、画面はそのまま流れていく。
“おねがいだから、おねがいだから牧野にはいわないで。
『わたし』のこと、牧野には黙っていて”
先生の指が五十鈴くんの唇を割る。
その唇がつややかで、どきりとした。
“こうすると、本当に女の子デスね”
ほう、と漏れた溜息が自分のものなのか先生のものなのか、一瞬解らなかった。
“何故、牧野クンに好きだと言えないんデスか?
彼の事を最もよく知っていて、彼の事を最も深く思っているノニ?”
僕は思わず手を伸ばす。
伸ばしたところで、僕の手は涙を流す五十鈴くんの頬に届く訳もない。
歯を食いしばるように泣く彼女の涙も、叫び声も止められない。
“言ったって、好きになってもらえるわけないじゃないか!
あいつにとって、わたしは男で、気持ち悪いとしか思われるわけないのに!
身体だって無駄にでかいし、顔に傷だってあるし”
何でだ。何で僕みたいな、どうしようもない奴の事好きになっちゃったんだ。
五十鈴くんは綺麗だ。
僕みたいな鈍感な意気地なしではない、ちゃんとした人が、いずれは彼女の前に現れたはずなのに。
“どうせ、わたしは、あいつの人形みたいに、綺麗じゃない!”
彼女に、こんな事を言わせるような男なんて、千回ねばいい。
本当に、心から、そう思うのに。
- 92 :
- 画面がしばらく暗くなった。
カメラ自体は作動している。
カメラが付いている先生の身体に、五十鈴くんが顔を埋めているのだ。
“ちょっと悪ノリし過ぎマシタネ、ゴメンナサイ”
すすり泣きが、僕の耳を塞ぐ。
“大丈夫デスよ。牧野クンには言いマセン。これは、あなたと牧野クンの問題デスから”
“……本当に?”
“エエ、信じてくだサイ”
嘘だ。こんなにすらっと、嘘をつけるような人なのに、何故か相対していると信じ込まされてしまう。
“では、そろそろRound2の準備に入りマスから”
先生が身体を離すと、泣き腫らした顔の五十鈴くんが映る。
“また、牧野と、そういうことを、するんですね”
“そういうルールデスから”
カメラが、ゆっくりと上下する。
先生が息をついたのだろう。
何故だろう、すごく、嫌な予感がする。
“ねえ、五十鈴サン”
嫌だ。この先を、聞きたくない。
“私、思ったのデスけど”
やめてくれ。もう
“次の情報侵食、私の代わりにやってみマスか?”
僕の絶望の叫びが届くはずもなく、五十鈴くんは顔を赤らめて頷いた。
(次回につづく)
- 93 :
- 連投して本当にすいません。
今回で完結です。
**
真っ暗だった。
目を開けても閉じても変わらない闇。
喉が痛い。鼻がぐずぐずする。
口を開けると、また沸き上がってくる嗚咽を飲み込んだ。
そのまま、ぎゅっと身体を丸める。
眠ってしまいたい。
そして、全てを忘れたい。
だが、僕の前でまた、ディスプレイが灯る。
映し出されるのは、先ほどと同じ光景。
僕が彼女を、レイプした場面だ。
立ち尽くす僕の前で、彼女は眠るように横たわっている。
髪に絡んだ白い花も、下半身を染める白濁も、前のままだ。
かがみこんで、触れようとした手を止める。
触る資格なんて、ない。
触ったところで、彼女を綺麗に出来る訳でも、傷を癒せる訳でもないのだ。
「なん、で、だよ」
こんな、みっともない泣き言しか言えない。
「ぼくなんか、すきになっても、なんにもいいこと、ないじゃないか。
こんな、こんな、ひどいことしか、できないような、そんなやつ、なんで」
僕のわめき声が、美しいフィールドに響く。応える者は、ない。
「ぼくのこと、きらいになれよ!
ころせよ!
さいていだって、いえよ!
け、けいさつに、うったえても、いい、
どうせ、どうせ、なにをしても、つぐなえないんだから!」
先生は、最初から、僕たちがこうなる事を見越していたのだろうか。
僕がこうして喚き、のたうち回るところを見るのが目的だったのだろうか。
だとしたら尚更、自分が許せない。
あのとき、無理にでも五十鈴くんを帰していれば、彼女だけでも救うことが出来たのに。
「……先生は、これ以上、僕に何をさせたいんですか?」
その問いかけへの答えのように、アナウンスが響きわたった。
“プレイヤー01 タイガーリリー 、プレイヤー02 ナナ
ラウンド3開始前に、情報浸食によるスキル譲渡処理を行います。
ナナ、タイガーリリーのスキルの内一つを選択してください”
- 94 :
- 目の前に、汚れも傷もない、滑らかなボンテージスーツに身を包んだナナが立つ。
“デハ<分身>を”
“了解しました。タイガーリリーのスキル<分身>はナナに譲渡されます”
唐突に先生の声が耳に飛び込み、そのままラウンド2で取得したスキルがナナに戻っていく。
“では、ラウンド3 開始”
アナウンスされた後も、僕はその場から動けなかった。
戦う?
何故?
何のために?
こんな遊びに、一体、何の意味があるって言うんだ?
“牧野クン、動かないんデスか?”
先生の問いにも、僕は答えなかった。
こんな事、意味なんてない。
どう動いても先生を楽しませるんなら、何もしない方がましだ。
いっそ退屈させて、怒らせてもいいかも知れない。
動いたのはナナの方だった。
ゆらりと、体をひきずるような動きで僕=リリーに近づいてくる。
僕は尚も、動かない。構えもとらない。
このまま、嬲りしにされるなら、それはそれでいい。
ナナの方も反撃など考えもしないように、無防備だ。
そのまま、僕の正面に立つ。
ナナは、ゆっくり右手を持ち上げて、振りかぶる。
僕はその手を避けようとも思わず、ただナナを眺めていた。
すらりとした長身。小さな卵型の顔。
こうして見ると、髪の長さをのぞけばナナは五十鈴くんによく似ている。
これから、ナナに倒されるけれど、現実に、五十鈴くんに同じことをされればいいのに、と考えてしまった。
僕を罵り、殴ったり蹴ったりして、最後にしてくれればいい。
もちろん、都合のいい妄想だ。
五十鈴くんを人犯にする訳にはいかないし、もう僕なんか顔を見るのも嫌だろう。
- 95 :
- だが、ナナの右手はなかなか撃ち下ろされない。
ぷるぷると空中で震えている。
これは何か大魔法を詠唱しているのだろうか、と僕が首を傾げ始めた頃、ナナは右手を下ろしてしまった。
そのまま、棒立ちになる。
「……先生?」
これはカウンター待ち、なのだろうか?
だったら尚更応じるなんて嫌だ、と僕も何もせず立ち尽くす。
普通ならどちらが先に仕掛けるか、息詰まる攻防というところなのだろうが、僕の方はそんな気は全くなかった。
いい加減、僕に飽きて攻撃してくればいい。
みっともない泥試合にしかならないんだから、もう、諦めろ。
ぼんやりしていた僕に攻撃がクリーンヒットするのは必然だった。
予想外だったのは、それが頭に星が散るほど痛かったことだ。
「え? え、なに?」
痛い。視界がぐるぐるする、というかディスプレイがずれてる。
ディスプレイの向こうでは、ナナは棒立ちのままだ。何のモーションも取っていない。
じゃあ、これはゲームの痛みではなく
「へ、え、あ?」
口の中に、血の味が流れこんでくる。
現実だ。
現実に、僕は
「ひゃっ、ちょっ」
鼻をつままれて悲鳴を上げた。
大きな、冷たい手が僕の顔を触っている。
これは、ラウンド1が終わった後、僕の顔を拭ってくれた手だ。
僕はふと、思い出す。
生徒指導室に呼び出された、あの、遠い時間を。
机の前で組んでいたウェンディ先生の手。
細くて小さい、子供みたいな手だった。
この手とは、違う。
鼻から垂れる血を拭いながら気付いた。
僕のスーツはセンサーが埋め込まれ、情報浸食の際は、それに応じた箇所が反応していた。
画面内で何かを掴めば、掴んだ感覚を手に返す事が出来る。
だが、センサーのついていない顔や口、舌は別だ。
たとえば、乳首を舐めたところで、舌に乳首の感覚を伝える事は出来ない。
つまり、現実に、僕のすぐ側に、居たのだ。
- 96 :
- 「……五十鈴、くん」
じゃなかった
「五十鈴、さん?」
大きな手が僕の手首を握り、強引に動かす。
ぶん、と振り回されて、柔らかい何かに当たった。
指を伸ばす。
細い鼻に、柔らかな頬に、小さな唇に、指が当たる。
「あの……」
今、当たったのは五十鈴くん、じゃない五十鈴さんの顔だった。
痛くなかっただろうか、見えないから加減も出来なかった。
「い、痛くない? 大丈夫?」
あんな事しておいて大丈夫もないものだ、と思いながらも、声をかけてしまう。
ヘッドフォンに阻まれ、自分の声が遠い。
返ってきた声も、とても、小さかった。
「……これで、あいこ、だから」
「あいこ?」
「俺が、牧野をなぐって、牧野が、俺をなぐったから、あいこ」
「あ、あいこなんかじゃないよ!
僕が、ひどいこと、したのに、
こんなの、全然あいこじゃない!」
僕の叫び声に、手の向こうの五十鈴さんの頬が震える。
「あ、あいこ、だよ。
俺、が、あんな、ばかなこと、したから。
あの、あのね」
五十鈴さんの声が少し高くなる。
違う。いつもの低い声は作り声で、これが五十鈴さんの本当の声なのだ。
「わたし、先生に嫉妬した。
牧野と、ああいうことがしたかった。
ここで、先生のふりでもしなきゃ、牧野とそういうことをする機会は二度とないって、
そう、思ってしまった。
牧野で、いやらしいこと、考えた。
ごめん、ごめんね、牧野」
「そんなの、五十鈴、さんが謝ることじゃないよ!
僕が、悪いんじゃないか!
僕が、五十鈴さん、を」
僕は言葉につまる。
また、ぺたっと大きな手が、僕の頬に当てられる。
「痛かった」
僕の手の中の頬が、すごく熱くなる。
「それに、すごく恥ずかしかった。
牧野でも、そういうこと考えるんだなって解って悲しかった。
自分が正直に言えば良かったのに、牧野にこんなことをさせた自分が情けなくて、泣きたくなった」
僕の両頬が、五十鈴さんの両手に包み込まれる。
「だから、あんなやつ、やっつけて。
勝って、こんなこと何でもないって、証明して」
- 97 :
- “モウ、リアルファイトは厳禁デスよ、五十鈴サン。操作方法も教えてアゲたのに……”
僕の顔から両手が離れると同時に、ヘッドフォンから先生の声が飛び込んでくる。
“Round3、やっぱり私が操作した方が良さそうデスね。
牧野クン、仕切り直しシてもいいデスか?”
「……ええ。勝負を、再開しましょう」
先ほどのぎこちない動きとは別人のように、ナナが僕から飛び離れる。
いや、現実に別人だ。
先生が操るナナは一分の隙も感じさせずに構えた。
僕はブレードナックルの代わりに<ローズウィップ>を装備。ナナは動きを見せないが、何かしらの呪文を展開しているだろう。
そのまま、ウィップを大きく振るう。
薙ぎ払われたナナの身体がゼリーのように溶け崩れる。分身だった訳だ。
ウィップの攻撃範囲外に、ナナ本体が姿を表す。
僕が狙っていたのは、その隙だった。
もう一度<ローズウィップ>を振るう。
しかし、今度はウィップに込められた魔法<ブラッディブロッサム>を発動させる為だ。
薄いピンクの花が、スタジアム一面に飛び散る。
ナナの身体に、愛らしいピンクの花が舞い降りた。
そのまま、身体に突き刺さり紅い花となる。
- 98 :
- <ブラッディブロッサム>は対象の身体に寄生し、そのライフを吸い取る。
吸い取ったライフは魔法の使用者、つまり僕のものになる。
吸い取るライフは微量だが、
“アー、これはムカつきマスねー”
ナナの身体から、ふわりと紅い花びらが散る。
それは風に流されるかのように、僕の元に届く。
僕の目の前のナナからは、紅い花びらは流れていない。
流れてくるのは、その背後からだ。
「仕掛けて、こないんですか?
僕、このまま防御魔法重ねがけしちゃおうかな」
これでもう、分身は意味をなさない。
出来た隙に、一回防御魔法をかける事も出来た。
さて、次はどう出るか。
“このままって言うのもムカつくので、悪あがきシマスよ”
ナナの手から放たれた氷結魔法を、<ローズウィップ>で受ける。
結構痛い。ウィップもあと一、二撃が限界だろう。
その予想通り、振るったウィップはナナの魔法によって凍り、砕け散る。
すかさず武器を<水霊の指輪>にチェンジ。
襲いかかる氷結魔法のダメージは、若干緩和される。
だが、次にナナが撃ってきたのは<ポイズンスライム>だった。
青黒い軟体生物がリリーの身体に絡みつく。
見た目も最悪だが、それ以上にまずいのはこの毒によってライフが削られていく事と
動きが阻害される事だ。
- 99 :
- “私だけライフ削られるのも嫌デスしね。牧野クンもじわじわ苦しんでクダサイ”
ナナの手から放たれた<噛みつきリザード>が、スライムに囚われたリリーの首筋からライフの光をほとばしらせる。
僕は武器をブレードナックルにチェンジして、リザードを叩き落とし、ナナの脇腹を薙いだ。
画面が、互いに噴き出すライフの光で輝く。
ナナのスーツが、黒揚羽の群に姿を変えた。
<シャドウダンサー>だ。補助魔法をかけていた余裕は無いはずだが、今の僕のライフで受けるのは危ういだろう。
だから、こちらも攻めていく。
両手に白い花束。
三度目の<セイクリッドグローブ>だ。
紅い花びらが、ナナの胸から流れて、僕の胸に触れた。
それと同時に、僕はダッシュする。
黒揚羽の群と、白い花嵐が交錯した。
拳がナナに当たった瞬間、僕の身体から力が抜ける。
<ポイズンスライム>によるライフ喪失だ。
残ったライフは、1。
先ほど、ナナからもたらされた<ブラッディブロッサム>からの吸収分だ。
そして、また、紅い花びらが僕の胸に届く。
“ナナ、ライフ0。ラウンド03、タイガーリリーの勝利。
つきまして今回のバトル、2勝1敗でタイガーリリーの勝利になります”
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