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2012年2月エロパロ307: 立場だけの交換・変化 4交換目 (856)
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立場だけの交換・変化 4交換目
- 1 :11/07/16 〜 最終レス :12/02/10
- いわゆる人格が入れ替わる「入れ替え」や性別が変化するTSではなく、
「肉体や人格はそのまま、突然別の立場に変化する」系統の小説や雑談などをするスレです
たとえば成人会社員と女子小学生の立場が交換されたり、
AV女優と女子高生の立場が交換されたり、
ペットと飼い主の立場が交換されたりと、
周囲は立場の交換に気づいていたりいなかったり
交換や変化の内容はさまざまです
本スレから旧スレの立場に変化したスレ
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303052766/
- 2 :
- おつおつ
今更だけど本スレから旧スレに立場交換ってセンスが好きだわ
- 3 :
- スレ立て乙です。
今回もいろいろなssが来てくれるといいなぁ。
- 4 :
- スレ立て乙!
- 5 :
- #予定を変更。4話は三分割になります。今回は中編です。
『泳げ、チハヤちゃん!!』
4話・中編)
旺盛な食欲を見せて給食を平らげたあとは、食休みもそこそこに体育館に向かう、ちはや達。
この暑い季節なのに、ミニバスケをやろうという元気さは小学生ならではだろう。男女混合チームだが、この年頃に限れば男女の体格差は極めて接近している。特にちはやの場合、160センチと12歳にしてはかなりの長身なので、むしろポイントゲッターになりうる。
実際、タッパがあってスポーツ万能なちはや、一見淑やかなお嬢様風ながら同じく運動能力に優れたククル、運動神経は平均程度だが、ふたりとパスなどの意思疎通が完璧な秋枝が揃っていれば、男子相手でも勝つことは難しくない。
他のチームメイトの男の子ふたりも男の意地にかけて頑張ってくれたので、変則的な5分ハーフ×2の試合が終わった時は、ダブルスコア近い点差をつけて、ちはやのチームが大勝利していた。
(あぁ……やっぱり小学生ってサイコー!)
次のチームにコートを譲り、友人ふたりとスポーツドリンクを回し飲みしながら、ハイになった気分でそんなコトを考えるちはや。
別に「ロリコン紳士」的な意味で言ってるわけではない。
本来の立場──高校1年の男子「武内千剣破」として、色々他人には吐露しづらい不満が溜まっていたが故の反動とも言える感想だ。
たとえば部活。千剣破は確かに運動全般が得意だが、どちらかと言うと球技系を好む傾向がある。
とくに中学時代はバレーをしていたため、高校でも同じくバレー部に入ろうとしたのだが……2週間足らずで半幽霊部員と化した。160センチ代前半の彼では、どうしても男子高校バレーでは限界があると実感させられたからだ。
また、これは中学以来思っていることなのだが、男女間の「壁」のようなものが、千剣破はあまり好きではなかった。
無論、ある程度成長した男女に差異が生まれ、いつまでもベタベタしていられないことは、わかる。わかるが……それにしても、千剣破から見て、クラスメイト達の男女のコミュニケーションの断絶はどうにも歯がゆかった。
もっとも、この辺は個人差と言うか、学校ごとの校風やクラスのカラーの問題でもあるだろう。男子生徒と女子生徒がもっと和気藹藹としているところも少なくはないはずだ。
ただ、不運なのは、ジェンダー意識に比較的無頓着な千剣破が、そういう線引きの明確なクラスにばかり当たってしまったことだろう。
そのため、最近の彼は、「昔(こどものころ)は良かった」的な一種の「懐古厨」じみた心境に陥っていたのだ。
- 6 :
- だからこそ、ミナが持ちだした「兄妹間の立場入れ替え」などと言う突拍子もない提案に真っ先に飛び付いたのだ。
そして……幸か不幸か「ちはや」は、水泳以外の部分も含めて、今の立場にひどく満足感を得てしまっていた──心の底で無意識に「戻りたくないな」とチラリと考えてしまうほどに。
そのことが後々大きな意味を持ってくるのだが……この時の「彼女」にはそれを知るはずもなかった。
昼休みのあとの眠い5、6時間目を根性で乗り切り(あまり成績が良くないちはやだが、馬鹿正直な性格から居眠りやサボリとは無縁だった)、迎えた放課後。
「ち、ちはやちゃん! ダメだよ、まだ帰っちゃ」
さて帰ろうかとランドセルを手にしたちはやを、秋絵が慌てて止める。
「ん? なんかあったっけ?」
「あったっけって……今日は月曜日だから、課外クラブの日だよ?」
秋絵に言われた台詞をちはやは脳内で検証し、僅かなタイムラグののち、かおるから受け継いだ記憶からその事を「思い出した」。
「…………あ! そっか、クラブがあるの忘れてた」
桜庭小では、5・6年生に週1回、時間外のクラブ活動を励行している。自由参加という建前ではあるが、ほとんどの生徒はそれなりに「クラブ」の時間を楽しみにしていた。
仲良し3人組に関して言うと、趣味の領域とも言えるコレについては別々のクラブに所属している。
ククルは茶道部(本人いわく「テニスのための精神修養にもなりますし」とのこと)、秋絵は演劇部(秋の文化祭公演でヒロイン役に大抜擢されたらしい)。
そしてちはやは、「千剣破」と同じバレー部だ。もっともこれは、本来の立場でかおるが兄から色々聞いていて興味を持って選んだのだから、とりたてて不思議な話ではないが。
(なるほどー、だから今日の体育は水泳なのに、スポーツバッグの中に体操服もあったのかー)
友人ふたりと別れて、体育館横の女子更衣室に急ぐちはや。
ひとりになったことで「千剣破」としての自覚も微妙に復活しているが、4時間目の水泳で既に利用していたせいか、更衣室に入ることに存外抵抗感は少なかった。
「ちはやん、おっそーい!」
「ゴメンゴメン、さおりん。や〜、今日クラブあるの忘れて帰りかけちゃったんだよね」
別のクラスの友人で、同じくバレー部に所属する藍原沙織に明るく謝りつつ、手早く体操服に着替え……ようとして、一瞬ピタッと手が止まる。
- 7 :
- 「ん? どしたの、ちはやん?」
「あ、うん。なんでもないなんでもない」
誤魔化し笑いしながら、ちはやは、モソモソと着替える。
(こ、これ確かにスパッツだけどさぁ……)
そう、桜庭小学校の女子の体操服は黒のスパッツであった──ただし、その形状を3つから選べるのがミソ。標準的な五分丈やショートパンツに近い三分丈はまだいいとして……。
(零分丈って……ほとんどブルマーじゃないかーー!)
極力平静を装って着替えながらも、心の中で真っ赤になっている。男である「千剣破」としても、女の子の「ちはや」としてもこのボトムは恥ずかし過ぎた。
もっとも、本来の持ち主であるはずのかおるは極力手足の肌を出す方が好きなタチなので、殆ど着る者のいないコレを選んだのだろう。
妹(今は「兄」だが)の嗜好を恨みながらも、特に意識しなければ自然にソレを履けてしまう今の自分に、ちはやはしばし肩を落としたものの、不思議そうな目で自分を見ている沙織に気づいて、意識を切り替える。
「──今日のクラブは5年生との紅白戦だよね。がんばろ、さおりん!」
「あったりまえよ! 五年坊にお姉様との格の違いを見せてあげないとね!!」
ヒートアップしてる沙織と激励し合いつつ、体育館に向かうちはやの頭からは今の格好に対する羞恥心は既になかった。
せっかく身長に対するハンデなく──いや、むしろ有利な立場で思い切り好きなバレーが出来るのだ。つまらない雑念如きに煩わされていてはもったいない!
そんな風に試合に集中したおかげだろうか。
週1で練習しているとは思えない息の合ったチームプレイとテクニックで、ちはや達6年生の紅組チームは、5年生の白組をほとんど完封に近い形で下す。
(さすがに下級生相手におとなげなかったかなぁ……ううん、ダメだよ、ちはや。ここは最上級生として、心をオニにして勝負のキビしさを教えてあげないと!)
そんな風に考えているちはやは、完全に自分の本来の立場を忘れている。
その後、後輩達にスパイクやレシーブのお手本を見せたり、沙織たちとコンビネーションの実演をしてみせる様子は、完全に「気さくで頼りになる6年生のお姉さん」そのものだった。
まぁ、あとで、更衣室で私服に着替えている最中に、再び自分を取り戻して自己嫌悪に陥るハメになったのだが。
-後編につづく-
──────────────────
#以上。残る後編は、馨くん側の概況と、放課後、家に帰ったふたりの様子を描写する予定です。
- 8 :
- 乙!
- 9 :
- 「勇者の妹」から「魔王の女奴隷」に立場が変わるというのはどうですか?
- 10 :
- >9
自分的には、「勇者の苦労性の妹」と「魔王のワガママ娘」の方がいいかなぁ。
華やかな兄の名声の陰で、縁の下の力持ち的女僧侶の妹は、財政管理その他で苦労してたり(兄は脳筋なバトルマニアなので)。
酒場で愚痴ってたところを「良かったら代わってあげましょうか」と踊り子風の少女に囁かれて、つい頷いてしまったところ、翌朝目が覚めると見知らぬ、どう見ても魔族の城の豪華な寝室で目覚めるとか。
無論、昨日の踊り子は人間に化けた魔族の姫。躾の厳しい父(魔王)の束縛を嫌って、適当な相手と立場を入れ替える機会をうかがっていたところ、冒険者一行の一員である妹に白羽の矢が立った。
仕方なく魔王の娘のフリをしての暮らし始める勇者の妹だったが……とか。
ダークエロにしてもコメディにしてもいけそうですね。
#ところで、ちはやちゃんの続きを投下させていただきます。コレで4話はようやく終了。
『泳げ、チハヤちゃん!!』
4話・後編)
さて、ドキドキワクワクと言うかオロオロアタフタと言うべきか、戸惑いと好奇に満ちた「妹」ちはやの女子小学生ライフに比べると、「兄」である馨の高校生活は、平穏かつ平凡と形容して然るべき代物だった。
もっとも、本人としてはそれに不満を抱いていたわけではない。むしろ逆だ。
「オーッス、武内!」
「ん? あぁ、長谷っちか。おはよ」
通学路の途中でクラスメイトにして悪友とも言うべき立場の友人、長谷部友成と遭遇し、軽く朝の挨拶を交わす。
彼は、武内家にもたまに遊びに来るので、「かおる」としても見知った存在だが、その年上の少年と「同級生」として接するというのは、なかなか興味深い体験だった。
そのままポツポツ会話を交わしつつ、学校へ向かうふたり。
ごくありふれた男子高校生の登校風景ではあるが、馨は内心軽く感動していた。
(これこれ、こーいうサラッとした関係がいいよなぁ)
たとえば、これが「かおる」としての友人ふたり──秋絵とククルなら、遭った途端に、秋絵が飛び付いてくるだろうし、ククルも含めて色々学校に着くまでのべつく暇もなくおしゃべりしないといけないだろう。
無論ふたりは大事な友達だし、親友とさえ言っても良いと思っているが、それでも女の子同士の過剰にベタベタした関係は、かおるはどうも苦手だったのだ。
- 11 :
- しかも、このふたりなどはまだまだマシな方で、クラスの大半は「かおる」であった時の馨の目から見ても、あまりに子供っぽく、それに合わせてつきあうのは少々苦痛だった。
もっとも、聡明なかおるは、空気が読める子だったので、あからさまに不満を漏らすようなことはしなかったが……。
そこへいくと、今の馨としての交友関係は、さすがに高校生だけあって、それなりに割り切りがしっかりしていて、「彼」の嗜好と一致していた。
(女の子もガキっぽくないし……)
チラと自分(本当は兄の千剣破)と比較的仲が良い、女子のグループに視線を向ける。
艶やかな黒髪をポニーテイルに結った凛々しい剣道娘、桐生院菜緒。
その親友で、対称的にほんわかしたイメージの小柄な少女、真田乃梨子。
菜緒とは違った意味で怜悧な印象のある眼鏡っ子にしてクラス委員の、舘川燐。
彼女達3人と、馨と友成ともうひとりのツレを加えた6人で、夏休みに海水浴に行くことが決まっている……らしい。無論、千剣破からもらった知識だし、実際は「兄」が行くことになるのだろう。
千剣破は、3人のリーダー格の菜緒に気があるようだが……。
(どう考えても相手にされそうにないけどなぁ)
素の状態でもある意味千剣破よりしっかりしているうえ、今は立場交換で理性&知性がブーストされている馨に言わせれば、あの兄ではせいぜい「弟分扱い」がよいところだろう。
馨としては、むしろ保護欲をそそるタイプの乃梨子の方がお似合いな気がする。あるいは、落ち着きのない兄に、文句を言いつつ構ってくれそうな燐のほうが、まだしもか。
もっとも、そんな色恋沙汰の事ばかり考えていたわけではない。
むしろ、それ以外の気楽な男子高校生としての生活を、馨は堪能していたと言ってよいだろう。
退屈なはずの授業時間さえ、読書好きな馨にとっては新鮮でおもしろく感じられたし、学食の混雑は、給食しか知らない「彼」の目からは非常に興味深い。
「もうひとりのツレ」である古賀龍司が、2時間目から来たのにも驚かされたが、友成の反応からすると、よくあることのようだ。
放課後、3人でゲーセンに寄って遊ぶのも、昨日までは寄り道せずに真っ直ぐ帰ることが日課だった元小学生にとっては、とても刺激的な体験だった。
(くそぅ……ちぃちゃんはズルいや)
自分達は、趣味嗜好の合う仲良し兄妹だと思っていたし、実際そうだろう。
でも、「兄」は自分が知らないこんな楽しい時間を、今まで満喫していたのだ!
それが理不尽な憤りであると理解していながらも、馨はそう感じてしまう自分の心を止めることはできなかった。
* * *
- 12 :
- 「ただいま」
「あ、兄さん、お帰り〜」
馨が家に帰ると、ひと足早く「妹」のちはやが帰宅しており、居間のソファに寝転がりながらアイスキャンデーを舐めつつ、何かの漫画を読んでいた。
ある意味、武内家の兄妹のいつもの光景と言えないこともない──もっとも、今は「兄&妹」が逆転しているワケだが。
「あ、馨兄さんの本棚から、『ぷりずむ☆コート』のマンガ借りてるよ〜」
「それは別にいいけど(本来は、僕のじゃないし)……ちぃちゃん」
「ん〜?」
生返事する「妹」に、馨は溜め息をつく。
「……パンツ、見えてるよ?」
──ババッ!!
という擬音が聞こえそうな勢いで起き上がり、真っ赤になってスカートの裾を押さえるちはや。
「に、に、に、兄さんのえっち!」
「いや、妹のお子様パンツ見たからって別段どうってことはないし。それより、スカート履いてる時は、もう少し気をつけた方がいいと思う」
「小六の女の子」としても基礎知識はあっても、さすがにこういうトコロは甘いなぁ……と、考えて、ふと眉を寄せる馨。
「………」
「え? ど、どうかしたの、馨兄さん?」
急に立ち尽くして黙り込んでしまった馨を気遣ったのか、ちはやが、ソファから立ち上がって顔を覗き込んできた。
襟元くらいの長さで綺麗に揃えられたショートカットがサラリと揺れ、シンプルな星型の飾りのついたヘアクリップで留めた右の前髪の下から、心配そうな瞳がのぞいている。
(これは……誰だ?
あ、いや、もちろん、ちはやだよな。ちょっとボーイッシュだけど、僕の可愛い妹の小学六年生の女の子……)
──いや、ちょっと待て。
そもそも自分に妹なんていただろうか? むしろ、自分の方こそがいも……。
- 13 :
- 『ほぅほぅ、やはり汝の方が、自覚を取り戻すのが早いのぅ』
「ナミ!」「あ、ナミちゃんだ」
いきなり過ぎる「神様」の登場にも、この「兄妹」は既に慣れたもののようだ。
「さっきの感覚って……」
『うむ、カオルよ。今なら「自分」のことがハッキリわかるであろ』
確かにわかる。自分の名前は、武内かおる。本来は小学六年生の女の子で、現在はナミの神通力(ちから)で、兄と立場を入れ替えている状態だ。
しかし……。
「ふぇ!? どうしたの、ふたりとも?」
目の前でオロオロしている「少女」を見ても、馨の頭の中では、ソレがあの「兄」とどうしても結びつかなかった。
いや、顔は確かに兄の千剣破のものなのだが、あどけない表情や、さりげなく自分に甘えてくる仕草は、下手したらいつもの自分以上に「妹」そのものという感じなのだ。
「どういうことなの、ナミ?」
『自我の確固たる汝に比べて、チハヤは比較的流されやすい性格をしているからの。状況に対する適応能力が高いとも言えるが……』
要するに、現在の立場に染まりまくってるということなのだろう。
『なに、心配はいらぬ。我らが一同に会すれば、間もなく本来の自覚が戻るように仕掛けてあるでな』
ナミの言葉通り、それから僅か1分足らずで、ちはやも「千剣破」としての意識を取り戻したのだが……さっきまでの自分の言動を思い返して軽く凹んでしまったことは言うまでもない。
『それで、どうする? このまま入れ替えを続けるかえ?』
台所で夕飯の支度をしている母を慮って、場所を馨(本来は千剣破)の部屋に移して、話を続ける三人(ふたりと1柱?)。
「え? 今更止められるの?」
意外そうな声をあげるちはや。
- 14 :
- 『うむ。我としてもこの術を実際に使うのは初めて故「かかり」を甘くしてある。実際にれ替わってみたうえで、もし汝らが止めたいと言うなら、この場で強制的に術を解くことは不可能ではない』
ナミの言葉に、ちはやと馨は顔を見合わせた。
確かに、今日半日、戸惑ったり恥ずかしかったりしたことは皆無ではない。
けれど……。
「──ちぃちゃん、水泳の方はどう? 天迫先生に教わればうまくなれそう?」
本来の目的である「カナヅチの脱却」が可能かどうかを、馨が問う。
「う、うん、たぶん。今日だけでバタ足ができるようになったし……」
この調子なら、あと2、3回の授業で何とか25メートル位は普通に泳げるようになるかもしれない。
「そっか……うん、じゃあ、僕は続けるのに賛成するよ。高校生活も面白いしね。ちぃちゃんに異論がなければ、しばらくこのままでいいんじゃない?」
理路整然とした馨の発言につられるように、ちはやも頷く。
「ぼくも……このまま、やってみたいかな。さっき言ったとおり、たぶんあと少しで泳げるようになると思うし……」
『ふむ。両者とも「継続」と言うことで異論はないようじゃな。なれば!』
馨の勉強机の上に仁王立ちになったナミは、いつもの大幣を高々と振り上げる。
『かけまくもかしこき すくなひこなのみかみ……』
呪文のような祝詞を唱えつつシャランシャランと大幣を左右に振ると、そこんら溢れた光の粒が、ちはや達の身体へと降り注ぐ。
お風呂に浸かった時のような、少し熱いが、決して不快ではない感覚が心身に浸透してくるのを、ふたりは感じる。
『……かしこみかしこみもまをす』
程なく、ナミの祝詞が終わる。
「どう、なったの?」
おそるおそる、ちはやが聞いてみる。
- 15 :
- 『なに、先程言ったとおり、かかりが甘かった部分を補強して完全なものにしたのじゃ。
ふたりの立場を戻すには、チハヤが「キチンと泳げるようになる」ことが絶対条件じゃ。それが満たされぬ限り、もはや術者である我にもこの術は解けぬ』
改めてそう宣言されると、自分達が大それたコトを決断してしまったのではないかという焦燥に、ふたりは駆られる。
『なに、悪いことばかりではないぞ。まず、これまでのようにこの家を中心とした一定範囲のみならず、日本全国どこへ行っても、お主らは「兄・馨」と「妹・ちはや」として万人に認識される。
また、現在の如く我ら三人が揃って顔を合わせなければ、ふとした弾みに本来の自覚が戻って決まり悪く思うようなこともなくなるはずじゃ』
ま、違う性、違う立場を疑似的とは言え体験できるなぞ、神魔の介入でもない限り滅多にできぬ希少な経験ゆえ、せいぜい楽しむがよい。
そう締めくくるナミの言葉に、「兄妹」は大きく頷いたのだった。
-つづく-
──────────────────
#以上でようやく4話終了。戻るチャンスがあったのに、ふたりは戻りませんでした。はたしてその事が吉と出るか凶と出るか……って、まぁ、プロローグから予想はつくワケですが。
#次回、5話では、ちはやのスクールライフ、そして週末のお出かけを描く予定。もしかしたらお出かけ編は6話にずれ込むかもしれませんが。
- 16 :
- >>15
乙!
ちはやちゃんかわいいです。
続き楽しみに待ってます。
- 17 :
- 泳げの作者さん乙です
元兄の方染まりすぎで立場交換の醍醐味がなくなりかけてる気が…w
- 18 :
- 作者です。>17の言い分は誠にごもっともなのですが、多少意図的なものです。
私がこれまでに書いた「女子高生・渡良瀬和己」「次期当主はメイドさん!?」「要12歳、職業・女子高生」が、すべて女性側からの意志で、立場入替が起こりました。
対して本作では、入替に積極的なのは男性である千剣破のほうです。そのため、前3作のような無意識のストッパーが働かず、流されてしまうという理屈。
今後、小六の女の子に馴染んでいるちはやちゃんを神視点から「おーおー、めんこくなりよってからにw」と生暖かい目でニヤニヤ見守っていただけると幸い。
また、4話の最後に仕込みました通り、どれほど馴染んでも、逆にあの3人(兄妹+ナミ)が揃うとリセットがかかる(我に返る)ので、ある意味残酷な仕様かも。
- 19 :
- >泳げ、チハヤちゃん!!4話 中編 後編
GJ!面白いですとっても。
0分丈スパッツってあったんですね。
1分丈は制服でスカート短くした時とか下に履くので知っていましたが、スポーツとかで使うんですね。
露出好きならいっその事ランニングパンツの様にローレグタイプにしても良いかも。
そして脚ぐりの食い込みとかが気になり恥ずかしがるチハやんを見たいですw
これからもチハやんに萌えつつ展開に期待しています^^
>>1
今更ですがスレ立て乙です^^
- 20 :
- 隊長! SSが……SSが読みたいであります!
- 21 :
- 前スレの>>620誰かSSにしてくれないか
- 22 :
- それを言ったら断然3交換目の490のSSを希望する
実習生を男で、514の意見も入れて周りから恥ずかしい格好と羞恥を煽られたり
入れ替わった幼女に慰められたり
518の意見も入れてお漏らしして入れ替わった幼女にオムツあてられるのもやって欲しい
- 23 :
- >>21-22
他人が書くのを待ってるより自分で書いてみては?
- 24 :
- ここでただ求めてる奴らは、文才がないんじゃなくて、
面倒だから書いてないだけのように思えるがな
一回試しに(投下せんでもいいから)書いてみ?色々捗るから
あと、>>22の話なら恥辱庵さんに頼んだほうがいいんでねーの?
- 25 :
- 別にあれが見たいとかこれが見たいって書き込むぐらいいいだろ
あまり過剰反応すんなや
どうもここの書き手はナイーブ過ぎる
ここではスルー力を発揮するのが平和だなし
- 26 :
- 過剰反応はお前の方なんでねーの?
何で書き手を叩き始めたのか本気で意味が分からんw
とりあえず、クレクレ君は見てて見苦しいのは確かだと思うぞ
書き手でなくても嫌な気分になるわ
- 27 :
- あ〜、なんか自分の書き込みがキッカケで荒れたなら申し訳ない。
チハヤの5話が書き悩んでいるのと、自分以外の作品が見たいと言う思いで、
ついはしたなく求めてしまいました。
や、でも、色々なシチュがあることは重要だと思うのですよ。
- 28 :
- #というわけで、SS投下。スランプに入ったのか、かなり難産でした。プロットを消化しつつ、指摘あった部分にも言及しようとしたのですが……ふたたび前後編に分割するハメに。
---------------------------------
『泳げ、チハヤちゃん!!』
5話・前編)
ナミにより術の補完がされた日の翌朝。家族の前に姿を現したちはやの様子は、どこか微妙におかしかった。
たとえば朝食の席でも、「ごくあたりまえの小六女子」らしい可愛らしい表情を見せていたかと思うと、いきなり口を押さえてアタフタしたり……。
食後に歯を磨きながら鏡を覗いていたかと思うと、躊躇いつつ、前髪をまとめた髪留めを外したり……。もっとも、未練がましくそれをスカートのポケットに入れたりしていたが。
「──いってきまーす……」
家を出る時の挨拶も、いつも元気なこの家の子にしては、どこか力がない。
そんな「妹」の様子を、ふたつの影がこっそり物陰から覗いている。
「……アレってやっぱり、気にしてるのかなぁ?」
『で、あろうな』
言うまでもなく「兄」(本来は妹)の馨と、ナミこと須久那御守である。
『おおかた、昨日は勢いで了解したものの、ひと晩眠って目が覚めると、自分が完全に別人になってしまったように感じて、不安になったのじゃろう』
ちはやの不審な言動の理由は、ナミにはお通しであった。
実際まさにその通りで、今朝目覚めたちはやは、「武内家の小学6年生の娘で、兄・馨の妹」という立場に完全に馴染み、それに即した行動をとれるようになっていた。
それでいて、昨日の朝のように、ナミによる立場入れ替えの事実を忘れていたワケではない。そういう術がかけられていることを知識として理解しつつ、それにこだわることなく、ごく自然に「12歳の少女」として振る舞える──いや、振る舞ってしまう。
自分が本来は「武内千剣破」であることがわかっていても、とくに意識していないと「ちはや」らしい言葉づかいや仕草をしているのだ。なまじ「自分は本来、高校生の男である」という記憶があるだけに、かえって動揺しているらしい。
- 29 :
- 『やれやれ、せっかくボロ出さぬように術を強化してやったと言うに、コレではむしろ逆効果か』
「うーん、あんな調子で秋絵ちゃんたちに心配かけないといいけど」
馨も本来は自分のいるべき立場だけあって、人間関係を心配しているようだ。
「念のため聞くけど……この術、「立場」を交換してるだけじゃないよね?」
『うむ。さすがに汝は聡明だな。その通り。立場交換と知識の一部交換に加えて、汝らの現在の立場にふさわしい言動を実行できる術も補助で加えておるよ。昨日の強化は主に、その部分に関わるものじゃ』
「こんな複雑な術を使える神(もの)はそうそうおらぬぞ」と、ナミが小さい身体で胸を張る。
「現在の立場にふさわしい言動、かぁ。ねぇ、その判断の根拠はどうなってるのかな?」
『それはもちろん汝らの……って、そうか。しまった!』
得意げだったナミの様子が一転し、いきなり表情が硬くなった。
「何か不都合でも?」
さすがに、馨の顔も険しくなる。
『あー、その……じゃな』
ナミの説明を要約すると、この術は、「現在の立場にふさわしい」という基準を設けるために、無意識に本人の魂にその状態をシミュレートさせているらしい。
ちはやを例にとって言えば、「武内千剣破の魂」に、彼が思い描くところの「12歳の女の子らしい言葉づかいや行動、嗜好、さらには思考形態」までをイメージさせ、それに従って「武内ちはやの身体」は行動しているのだ。
『それにより、自らの立場と言動、"いめーじ"のズレを防ぐ効果があるのじゃが……』
「が?」
『言い換えれば、それは脳内、正確には魂内で常に「女の子らしい自分」が"しむれーしぉん"されておるということ。その影響力は"てれび"や映画の比ではない』
あえて例えるなら、体感型RPGで常時ネカマプレイしているようなものだろうか。
「は、はは……事が終わった時、ちぃちゃんの漢らしさが多大なダメージを受けてないといいね」
馨としても乾いた笑いを漏らすしかない。
思春期の女の子じみた乙女ちっくさを垣間見せる男子高校生──想像すると、とてつもなくシュールだ。
『しかし……同じ術に掛かっていると言うに、汝は別段変ってるようには見えぬの?』
ふと、ナミは気になっていた点を馨に訊く。
「ああ……僕は、ほら、元々自分が女だって意識が薄いからね。たとえるなら、−1が+1になったって、実質的な差はあまりないでしょ」
『ふむ、成程。その理屈で言えば、なんだかんだ言って彼奴も"ぷらす10"くらいの「男度」はあったのかもしれぬな』
その「+10」がベクトルを真逆に変え「−10」に変じれば、絶対値で言えば20の差異があることになる。その差(ギャップ)の大きさもまた、ちはやを戸惑わせているのかもしれなかった。
* * *
- 30 :
- さて、馨の心配は実にもっともで、登校時から昼休みまで、いまひとつ覇気に欠けるちはやは、親友ふたりを筆頭に周囲の人間何人かを戸惑い、心配させることになった。
昼休みの給食の時間も、本人はごく自然に振る舞っているつもりらしいが、少しでも「彼女」を知る者から見れば、明らかにギクシャクしている。
「いつも通り」好物をお代わりしようとして、なぜか恥ずかしくなって躊躇い、それでもお代わりしたはいいが、健啖なはずの「彼女」が全部食べ切れずに残してしまったり……。
秋絵やククルと談笑していた最中、服装を可愛いと褒められ、はにかんだ笑みを浮かべたのち、ふと面喰ったように黙り込み、ぎこちなく「ま、ママが無理矢理着ろって言うから」と言い訳してみたり……。
(明らかに……)(おかしいですわね)
親友ふたりがアイコンタクトしているのにも気づかないで、ポーッとグラウンドで三角ベースしている男子を眺めていたりする。
無論、秋絵たちも「何か悩みでもあるのか?」「それとも身体の調子が悪いのか?」と聞いてみたのだが、「だいじょうぶ、ぼくはいつも元気げんき!」とははぐらかされてしまった。
だが、クラスのムードメーカーと言っても過言ではない「武内ちはや」の異状に気づいていたのは、友人達だけではなかった。
* * *
放課後、ちはやは担任である星乃に面談室へと呼び出されていた。
「なんだろ? ようやっと家に帰れると思ったのに」
小学校にいる事自体が嫌なワケではない。無味乾燥は言い過ぎでも、どうも潤いに欠ける高校での生活に比べて、授業の楽しさや親密な友達関係など、むしろとても充実していると言っても過言ではなかった。
だからこそ、そんな(少し大げさに言えば)「キラキラした毎日」に慣れてしまったら、元の高校生に戻った時、ギャップでいっそう辛くなる──そう思って、ちはやは必で慣れてしまわないように自制しているのだ。
とは言え、教師の呼び出しをブッチできるほど、フリーダムな性格でもないちはやは、素直に面談室に向かっていた。
「しつれいしまーす!」
あえて元気に声をあげてから、部屋に入る。
「ああ、待っていたわ、武内さん」
天迫星乃は、いつも通り優しい笑顔でちはやを迎えてくれた。
- 31 :
- しかし……。
「ごめんなさい。変なことを訊くようだけど……貴女、本当に武内さん?」
しばしの雑談の後、本題に入った星乃の言葉は鋭くちはやの小さな胸を抉った。
「──じ、実は……」
「ごく普通の12歳の女の子」にしては、あまりに複雑な悩みを抱えていたちはやの心は、どうやら限界だったようだ。
豆腐メンタルと言うなかれ。「16歳の男子高校生」のままならば、ちはやとて、この程度のストレスに潰れることはなかっただろう。
しかし、ナミの術の影響で、思考形態が徐々に「思春期の女の子」に染まり始めている「彼女」にとって、秘密をひとり(馨達もいるが、あくまで学校では)で抱え込むのは大きな負担になっていた。
気が付けば、ちとはやは、明確に口止めさせていたわけでないのをいいことに、星乃に現在の状況に関して洗いざらい話してしまっていた。
「はは……おかしいですよね。高校生の男のクセに、妹に──小学6年生の女の子の立場にあこがれるなんて」
泣きベソをかきながら自嘲するちはやを、けれど星乃は暖かく受け止めてくれた。
「ううん、ちっとも変なコトじゃないわ、武内さん」
背丈は小柄ながら豊満な星乃の胸に抱きしめられたちはやが感じたのは、けれど決して欲情の類いではなく、安らぎとも憧憬とも言える感情だった。
(あぁ……やっぱり、星乃先生ってお姉ちゃんみたい)
近所の幼馴染や同世代の親戚の中でも「千剣破」はいちばん年上であり、姉的存在に甘えると言う経験がなかったぶん、コレは効いた。
ようやく落ち着いたちはやに、星乃はこの秘密は守ること、「彼」を決して軽蔑していないこと、可能な限りちはやの小学生生活をサポートすることを告げた。
「ありがとう、先生……でも、どうして、そんなに親切にしてくれるんですか?」
如何に他人からは女の子としか認識できないとは言え、中味が男であることに間違いはないのだ。ちはやの言うことを「子供の戯言」と信じてないワケでもなさそうだし……。
「うーん、そうねぇ。ひとつには、先生も武内さんの気持ちが何となくわかるから、かしら。ねぇ武内さん、先生も昔は男の子だったって言ったら、信じる?」
「まさか!?」
目を見開くちはやに、星乃は曖昧に微笑むだけ。実際、かつて星乃が男性であったのは事実だが、ここではその詳細は省く。
「それともうひとつは……武内さんは、先生の大切な教え子だもの。力になってあげるのは当然でしょ?」
「グスッ……せんせぇ〜!」
我が子を慈しむ母親のような、慈愛に満ちた笑顔を向けられて、再びちはやの涙腺が決壊した。もっとも、今度は悲しみではなく喜びからではあったが。
* * *
- 32 :
- 「ただいま〜!」
今朝の出がけとはうって代わって、明るい様子で帰宅したちはやを見て、「妹」が心配で寄り道もせずに帰って来ていた馨(及び隠れて見ているナミ)は目を丸くした。
「何があったんだろ? 秋絵ちゃんたちの御蔭かな?」
『さての。しかし、少なくとも今のチハヤにうじうじ悩んでいる様子はない。"気"を見れば一目瞭然ゆえ』
一応、「兄」として馨がそれとなく聞いてみたところ、事情が担任の先生にバレたが、内緒にしたうえ、水泳の件など手伝ってくれるということになったらしい。
「そういうわけだから、馨兄さん。しばらく兄さんの立場を、ぼくに貸しておいてください」
神妙な顔で頭を下げられては、馨としても嫌とは言えない。元より、馨自身は現在の高校生生活になんら不満はないのだ。
鷹揚に頷いて、「まぁ、水泳のこととか色々頑張れ」とポンポンと頭を軽く叩くように撫でてから、馨は自室(本来の千剣破の部屋)にとって返して、座卓の前にあぐらをかいて座りこむ。
『そんなことがあったとはな』
宙にポムッと姿を現したナミが、テーブルの上に舞い降りる。
「まぁ、ホッちゃん……天迫先生なら納得かな。ん、どうしたの、ナミ、難しい顔して」
『──いや、何でもない。気にするな。そうか……第三者に術の件が知られたか』
ナミの表情は絶対「何でもある」ことを物語っていたが、エアリード能力の高い馨は深くは追及しなかった。この小さな守り神様は、本当に必要ならば教えてくれるだろう。
『チハヤの件はともかく、カオル。汝の方は問題ないのか? 水練の授業なぞは、どうしておる?』
「どうって……普通に泳いでるけど」
『──男の海水ぱんつを履いてか?』
「そりゃそうだよ。今の僕は男子高校生なんだし」
いくら貧乳、いやほぼ無乳とは言え、本来は花も恥じらう年頃の娘が、上半身裸で泳ぐのはどうかと思うナミだったが、当の本人はまったく気にしてないらしい。
(なんだかんだで此奴も、元に戻ったら色々問題が発生しそうよな)
7分の善意と3分の悪戯心で自分から持ちかけた話とは言え、兄妹ふたりの人生に大きな波乱をもたらしそうな気配を察知して、さすがに少なからず反省せざるを得ない武内家の守り神なのであった。
-5話後編につづく-
──────────────────
#以上。うーん、やはり駆け足気味。三人称視点だと主人公の心情描写が薄くなるのが自分の欠点かなぁ。次回後編で物語が急展開。まぁ、前スレでのダイジェストを読んだ方は先刻ご承知でしょうが。6話がエピローグになる予定です。
- 33 :
- >泳げ、チハヤちゃん!!5話 前編
GJです!悩むチハやんも可愛いです。
気にしな過ぎる妹の馨もカッコイイです^^
続きが楽しみです。
SSは自分も書かないととは思っているのですが、
実は別なスレ向けのをずっと書いていまして続きものはおろか、
立場交換ものを書いていないです^^;
SSを欲しておられたのにすいませんm(_ _)m
- 34 :
- 泳げチハヤちゃん楽しく読んでいます。
頑張って下さい。
- 35 :
- >>24
立場の幼女化とオムツ+陵辱は十月兎の方がお勧め
無料じゃないけどな
- 36 :
- 有料だからこそ要求をある程度汲んでくれたりもするよな
- 37 :
- ttp://www.ichijinsha.co.jp/iris/
来月新刊の「姫神の誤算 少年に憂鬱のドレス、少女に騎士の剣」が立場交換っぽい
- 38 :
- >>37
立場交換と言っても倒錯感は無さそうだな
ただ女の子が騎士として頑張っていく活劇ものって感じの話しになりそうだ
- 39 :
- 泳げチハヤちゃんの作者乙
うちのマンションにも神様居ないかな
同じマンションのお姉さんと立場交換してもらいたい
そして俺の立場になったお姉さんと付き合う
- 40 :
- >>39
セックルはどうするんだ
- 41 :
- 俺「なんだ爺さん!?俺の部屋に?」
神様「ワシはここの土地神じゃ、この建物を建てると行きお社を屋上に移されてからはこの建物の守護をしておる」
俺「神様!?」
神様「いかにも。お主同じ建物に住む娘を好いておるの」
俺「お姉さんの事か?ああ大好きだぜ」
神様「好いておるからと言って、あまりまとわりつく様な事をするでない。娘が迷惑しておるぞ」
俺「ええっ!?」
神様「人を好きになる事は良い事じゃが、もう少し相手の身になるのじゃ」
俺「そんな、俺はただお姉さんの事が好きなだけなのに」
神様「じゃったら少しばかり判ってもらおうかの。ほいさ〜」
※ ※ ※
俺「ん?ここはどこだ?俺の部屋じゃない」
神様「なに、ちょいと神力をな」
俺「ここはお姉さんの部屋? しかも俺が着ているのはお姉さんの服!?」
神様「おまえさんと娘の立場を入れ替えたんじゃ。自分のしている事を身をもって体験すると良いじゃろ」
お姉さんな俺「なに?じゃあ、俺はお姉さんになっているのか?」
神様「そうじゃ、立場だけで身体は変わっておらんがな」
お姉さんな俺「なんと!俺がお姉さん?ならばやる事は一つ!」
神様「ん?何をするのじゃ?」
お姉さんな俺「俺なお姉さんに告白して付き合うのだ!お姉さんに告白されて俺が断るはずが無い!」
神様「なんじゃと!? おい、待つのじゃ…。 行ってしもうたわい。まったく何と言うやつなんじゃ」
#ちょっとインスピレーション、朝から書いている場合じゃないのに^^;
- 42 :
- >>41
ワロタw ぜひ、続きが読みたいです。
私も方も後編を。今回はちょっと短めです。
---------------------------------
『泳げ、チハヤちゃん!!』
5話後編)
「ちはや」が桜庭小学校に通うようになって3日目の水曜日。
星乃のカウンセリングを受けたおかげか、前日の不審な様子が嘘のように、ちはやは(矛盾するようだが)落ち着きと元気を取り戻していた。
昨日の「兄」との話し合いで、少なくとも今週いっぱいは今の状態を続けることになったためか、「現状」を肯定的に受け止め、楽しむ覚悟ができたようだ。
その証拠に、今日は淡いクリーム色のジョーゼット地のブラウスの襟元にブルーの紐タイを蝶結びにして、かなり思い切ったミニの白いプリーツスカートとニーソックスを履いている。
さらに髪の毛にも、いつもの子供っぽい髪留めではなく、紐タイとお揃いの細めの青いリボンをカチューシャのようにして結んでいる。
背が高く、また精神年齢や顔立ちも(当然のことながら)「12歳」としては大人びているため、そんな格好をしていると中学生くらいの美少女に見えた。
「へぇ、いい感じだね。可愛いと思うよ、ちぃちゃん」
「えへ、ありがと、馨兄さん」
「兄」の馨に褒められても、少しはにかんだように微笑むが、昨日までのようにアタフタはしていない。どうやら本気で腹をくくったようだ。もともと、今回の立場交換は「彼女」のためのものなので、ある意味当然とも言えるが。
「それにしても、エラく気合い入れてオシャレしてるね」
「うん。放課後、ククルちゃんの家にお呼ばれしてるから……」
「兄妹」の会話が弾んでいる様子を、姿を消して見ていた守り神ナミも、これならひと安心か、と胸を撫で下ろしていた。
* * *
- 43 :
- 「はーい、そう、そんな感じ。巧いわよ、武内さん」
今日の5時間目は、ちはやにとって2度目の水泳の授業だった。
幸いにして「彼女」の事情を知った担任の星乃は、極端なエコひいきにならない程度にちはやのことを気に掛け、熱心に指導してくれている。
おかげでちはやは、今回の授業で平泳ぎの基本と息継ぎについて何とかものにすることができた。
「さすが、去年一度泳げるようになってたから、覚え直すのも早いね、ちはやちゃん!」
「ちはやさんは運動神抜群ですからね」
「ニハハ、ふたりとも褒めすぎだって」
キャッキャと談笑しながら水着から着替える3人。開き直った強みか、すでにちはやもその光景に自分が混じっていて何ら違和感を覚えている様子がないのは、感心するべきなのかどうか……。
そして、6時間目の国語の授業ののち、帰りのホームルームを経て、無事に放課後となった。
朝、出がけに家族に報告しておいた通り、今日の放課後は、ちはやは秋枝とともにククルの家に遊びに行くことになっていたのだが……。
「ふわぁ〜」
ポカンと口を開けて、田川邸の玄関──正確には門扉から、邸内を眺めるちはや。
「どうかされましたか、ちはやさん?」
「いやその……なんべん来ても、おっきくてきれいなお屋敷だなぁと思って」
無論、「武内ちはや」がこの屋敷に来たのは初めてだが、千剣破としてはかおるから何度か遊びに行った話を聞いている。と、なると「ちはや」もここに来たことがあると考えるべきだろう。
「あはは、ちはやちゃん、いっつもおんなじコト言ってるね」
秋枝の言葉を聞く限り、どうやら正解だったようだ。
それに、「彼女」自身も、どういうワケか何となく見覚えがあるような気がしていた。
「だって、ホントに広いんだもん。ウチとは大ちがいだよ〜」
「ウフフ……おほめにあずかり、光栄です。わたくしは、ちはやさんの所のような日本家屋もステキだと思いますけど。
さ、お茶の用意もできているそうですので、まいりましょう」
ククルに促されて、ちはやたちも歩みを進める。
- 44 :
- 田川家は、門から本館の玄関まで歩いて優に2分あまり。そして、玄関からククルの部屋までも同じくらいかかる白亜の洋式豪邸なのだ。
23区内ではないとは言え、首都圏にある個人の家とはとても思えぬ広さで、確かに小学生ならずとも感心したくなるだろう。
もっとも、両親の方針なのか、ククルの部屋自体は畳換算18畳程度で、それほど非常識な広さではない(日本の住宅事情からすれば十分広いが)。壁紙やカーテン、調度類の装飾なども、上質ではあるが普通のローティーンの女の子らしいものだ。
一流シェフの手で作られたスコーンをお茶受けに、顔馴染みのククル付きメイドさんが淹れてくれた紅茶を飲みながらおしゃべりする3人。
最初こそ、いかにもな「お屋敷」オーラに圧倒されていたちはやも、ククルや秋枝が平然としているのに加えて、メイドの泰葉さんほか邸内で会う人たちが皆、彼女らに好意的なので、すぐに慣れてくつろいでいた。
学校でいつも一緒にいるとは言え、そこは年頃の女の子「3人」。学校のこと、友達のこと、最近のテレビ番組のこと、マンガ雑誌のこと、ファッションのこと……と、いくらでも話題は尽きない。
夕方になり、ククルの両親が顔を娘の部屋に顔を出す。
父親の孝司氏は、某国立大学の名誉教授かつベストセラー本を何冊も出している著名な考古学者であり、母親のシャミー女史は、大手アパレル会社のオーナー会長だ。
ふたりとも多忙極まりないはずなのだが、可愛い愛娘のためにも朝夕のご飯は必ず共にする子煩悩(おやばか)さんであり、かつ夫婦仲も非常に良い。
また、秋枝やちはやとも既に何度か顔を合わせたことのある顔馴染みだ(無論、本当は「ちはや」ではなく「かおる」と、だが)。
「お邪魔してます、おじさま、おばさま」
ちはやなりに、精一杯おとなっぽく挨拶したつもりだったが、傍から見ればちょっと背伸び気味でおしゃまな女の子そのものだった。
「あら、今日のちはやちゃんは、何だかちょっと淑やかさんね。可愛いわ〜」
それでも、ファッション関連の仕事をしてるだけのことはあって、ククルママは今日のちはやの服装の違いに目ざとく気づいたようだ。
「やぁ、君たち。いつも、ククルと仲良くしてくれてありがとう」
髪に銀色なものが混じり始めているものの、ダンディなククルパパ(晩婚なうえ、ククルは遅くにできた子なのだ)の言葉に、慌ててふたりは頭を下げる。
「そ、そんな。あたしたちこそ、いつもククルちゃんにはお世話になってます」
秋枝の言葉に、ちはやもうんうんと大きく頷く。
「せっかくだから夕飯を一緒に」というククルの両親の誘いを受けたふたりは、それぞれの家に電話で連絡を入れる。
「あ、馨兄さん? うん、ぼく。今、ククルちゃんの家なんだけど……そう。晩ごはん、お呼ばれしようかなぁって。お母さんたちに、そう伝えてもらえる? わ、わかってるよぉ」
「もぅ、子供扱いしてぇ」とプリプリしながら電話を切るちはや。電話先の馨に「田川さんのお宅にご迷惑かけないようにね」と苦笑しつつ釘を刺されたのだ。
──このあたり、完全に「兄」と「妹」が板についているが、大丈夫なのだろうか?
- 45 :
- 秋枝の方も連絡がついたらしく、早速5人での晩餐が始まった。
テーブルマナー類に関しては、仮に千剣破のままでも詳しくないが、傍らに給仕についたメイドさんがさりげなく耳打ちしてくれたので、ふたりとも何とか無難にやり過ごせた。
「ちはやちゃん、背が高くてスマートだし、良かったら今度ウチのティーン向けファッションのモデルをしてくれないかしら?」
食後のお茶を飲みながら、ちはやを勧誘するククルママ。先刻、褒められてはにかむちはやを見て、いつもと違う(かおるではないから当り前なのだが)印象を感じたらしい。
「かおる」なら、その手のことに興味が皆無なため、アッサリ断ったろう。しかし……。
「えっと……ぼくみたいなシロウトに、モデルさんなんて務まりませんよ」
ちはやは、躊躇いつつも内心満更ではなさそうだ。
実は「彼女」、千剣破であるときには、(幼い頃を除き)容姿を褒められた経験がほとんどなかった。背が低く、中性的で男らしさに欠けるタイプ(しかし美形というほどではない)なので、それも無理はない。
しかし、いまの立場になってからは(お世辞もあるだろうが)明らかに「綺麗」「可愛い」「かっこいい」などと称賛される機会が多くなっている。無論それは「小六の女の子として」の話なんのだが、それでも褒められ慣れてないちはやの心を浮き立たせるのには十分だった。
「大丈夫よ〜。初めはみんな素人なんだし、何だったらおばさんも付き添ってあげるから」
手ごたえあり、と見てとったククルママは、ここぞとばかりに押してくる。
もとより、娘のククルやその幼馴染である秋枝は、彼女に乞われて時々モデルをしているので、「ちはやちゃんも一緒にやりましょう(やろ〜よ〜)」と援護射撃してくる。
結局、ちはやは「今度の日曜に、試しに身内だけの撮影会に参加する」ことを了承させられてしまったのだった。
-6話につづく-
──────────────────
#色々構成考えた挙句、結局、効果的なところで切ると案外短めかつ、あまり内容がなくなってしまいました。衝撃の事実は6話に持ち越し。
- 46 :
- チハヤの人、乙!
しかし、このちぃちゃんって...
・千剣破
明るい元気キャラ。でもちょっと子どもっぽくて空気読めない。フツーの友達ならアリか?
↓
・ちはや
男)おい、武内って、ちょっとイイ感じじゃね?
女)ちはやちゃん、カッコいい! 素敵!
さらに、バレー部のエースアタッカーで、今度はティーンズ服のモデルまで...
もう、戻るメリットなくね?
- 47 :
- >>40
立場逆転状態でのセックスってどうなるんだろうな
男のちんこは完全にクリトリス化、一応ちんこから小便は出るけど立場逆転の力であらぬ方向に逸れたり肛門のあたりまで垂れてきてぐしょぐしょに濡れるから立ちションは不可能
玉袋は小陰唇の役割を果たし、金玉と肛門の間には一見何も無いけど指やらちんこやら突っ込むとズブズブとめり込んでいってまんことして機能する
胸も女のおっぱいのように敏感になるし、身体能力も女並み、挙句の果てには生理や出産まで出来るように
逆に女の方はクリトリスがちんことして機能するようになって口やまんこに突っ込んだりするときは本物のちんこのぐらいの大きさになったように感じる
小便や精液はクリトリスの下の尿道口から出るけど立場逆転補正でクリトリスが向いてる方向に見えないちんこがあるかのように
まっすぐ飛んでくようになって勢いが弱まっても股間は殆ど濡れなくなって立ちションや顔射ができるようになる
まんこは穴が開いているように見えるがそれ以上奥には突っ込めないようになっていて気持ちよくもならない。小陰唇は金玉として機能し、蹴られると男特有の痛みが
おっぱいは何も感じなくなってただの脂肪の塊という認識、運動の邪魔にもならないし、身体能力も男並みになる
ここまでやれば矛盾はないはず、女の子と立場逆転して思う存分犯されたい
- 48 :
- おお続きキター!
泳げチハヤちゃんの作者乙
素晴らしき女児生活だ
このまま成長して女性として大人になった方が良さそうだな
- 49 :
- >>41
俺の妄想がネタになっとるw
実に残念な事に俺んとこのマンション、社とか無いから出て来てくれそうもないな
>>40
そこまでは考えなかったわ
体位と腰を振る方が入れ替わるぐらいで普通に出来るんじゃないかと
47みたいにすごい発想はなかったわ
- 50 :
- >>47
これは、いい妄想w
前スレの「日常な非日常へ」とかって、そんな感じのネタだったよね。
男が、魂入れ替わりとか明確な女体化の過程を経ず、神の目
(あるいは本人の目)から見ると、未だ男性の範疇の肉体なのに、
いつのまにか社会的立場のみならず、女性的な日常生活(排尿、
月経、さらに性交や出産まで)を経験する話とか、萌えるな!
- 51 :
- >>47
もんのすごい俺得
- 52 :
- >>47
これで読みたい(チラッ
- 53 :
- >泳げ、チハヤちゃん!!5話 後編
GJです^^
チハやん読モとかすごい、女の子の憧れですよ。
ニコプチとかJSガールみたいに今は小学生向けのファッション誌人気あるし
チハやん女の子としてのサクセスストーリーを駆け上がれそう。
- 54 :
- #47にインスパイアされた小ネタ...というか妄想です。
『令嬲(レイジョウ)志願』
編み物をする手を休め、ふと時計を見ると、もうすぐ夫が接待ゴルフから帰って来る時間だった。
いけない。今日は家政婦の市川さんがお休みの日なので、私が晩御飯を作らなければならないのだ。
私は、キッチンに入ると手早く夕食の支度を始めた。
週に5日は、実家から派遣された家政婦さんが掃除と食事の支度をしてくれるものの、「新婚ほやほやの新妻として、たまには旦那様のお世話をしてあげるべき」という母の意見で、土日だけは私が家の中のことをする決まりになっている。
私自身、歴史ある旧家の娘として女のたしなみ全般を、おもに母親から厳しく伝授されているため、別段、これくらいのことは苦にならない。
父に買ってもらった新居は広いので、掃除だけは多少大変だが、その気になれば家政婦さんがいなくても、私ひとりで切り盛りできるし──そもそも半月ほど前までは、そうしていたのだ。
だが、ひとり娘に甘い父は、私の妊娠が知れた途端、過保護に気を回し、実家の古株で私とも面識がある市原さんを、私達の元に派遣することを決めた。
そのことで、父と母の間でひと悶着あったらしいが、いろいろ考えて私は父の申し出を受け入れることにした。
妊娠4ヵ月目でまだほとんどお腹の目立たない今は、とりたてて変わりはないが、妊婦はお腹が大きくなるにつれて、動くのが大変になると言う話を、ひとづてに聞いていたからだ。
そのぶん空いた時間は、今日のように赤ちゃんのための服を編んだり仕立てたり、胎教によいとされる音楽鑑賞や読書などをしてノンビリ過ごさせてもらっている。
焼き鮭と小松菜の浸し、ひじきとお揚げと人参の炒め物に、豆腐とわかめの味噌汁という、いかにも和風な夕食が8分通り完成したところで、夫から連絡が入った。ちょうどあと30分ほどで帰宅できるらしい。
「早く帰って来てくれるのはうれしいけど、休日で混んでいるだろうから、クルマの運転は気をつけてね、あなた」と注意を促してから、私は電話を切った。
あとは仕上げだけなので、夫が帰ってからで十分だろう。
私は、手を洗うと、軽く化粧を直すべく寝室へと入った。
- 55 :
- ドレッサーの前のスツールに腰掛け、鏡を覗き込む。
そこには、絶世の美人というには程遠いが、お世辞込みで近所では「美人若奥様」と言われている程度には整った容貌の、淡い色のワンピースを着た20代前半くらいの若い女性──にしか見えない人物が映っている。
緩く三つ編みにして胸の前に垂らしている長い髪をなんとなく弄びながら、私は、クスリと笑みを漏らした。
そう、「若い女性にしか見えない」、だ。言い換えると「若い女性ではない」のだ。
「実はとっくに30を過ぎた年増なのか?」 いや、そちらではない。私は先日誕生日を迎えたばかりの正真正銘23歳だ。
つまり──私の本来の性別は「男」なのだ。
「男が妊娠するはずがない」? 確かにその通り。発達した現代医学でも、外形的にはともかく、本当の意味で、男性を完全に女性に変えることは未だできない。
かといって、想像妊娠というワケでもない。今はまだそれほど目立たないものの、私のお腹には確かに夫との愛の結晶たる胎児が息づいているのだ。病院でレントゲンその他でしっかり確認してもらったのだから間違いない。
──どういうことなのか、私が男だというのはやはり嘘ではないのか?
混乱される方も多いかもしれない。
それでは、ちょうど夫が帰って来るまで多少時間もあることだし、思い出話につきあっていただこう。
かつての私は、平凡なサラリーマン夫婦の家庭に生まれ育った、いかにも「中流庶民」と言う言葉が似合うごく普通の少年だった。
あえて人と違う点があるとすれば、同じ町内に由緒正しい旧家の血を引くというお金持ちの一家が住んでいたこと、そしてそこの娘さんと同い年の幼馴染だったことくらいだ。
断わっておくが、私とその娘は単なる幼馴染で、決して恋人とかそういう甘酸っぱい関係ではなかった。
もっとも、友人としての仲は決して悪くなく、高校生になっても未だ男女の垣根を超えた友誼を結んでいたというのは、私たちの年頃にしては珍しいかもしれない。
あれは高校2年の夏休み──確か8月に入ったばかりの頃。涼を求めて学校の図書室(校内で一番エアコンがよく効いているのだ)に入り浸り、宿題をダラダラ片付けていた私は、バッタリ彼女と鉢合わせしたのだ。
その時の何気ない雑談の中で、彼女に許婚なる存在がいて、しかもそれが私と同じ部活で、色々世話になっている先輩であることを知った。
ただ、彼女は親同士が決めたその婚約に納得いってないようで、イチャモンじみた方向で先輩の欠点をあげつらっていた。
それに対して、その先輩を尊敬していた私は、先輩の良さを力説し、弁護し、自分が女なら迷わず先輩みたいな男性を恋人に選ぶとまで言った──言ってしまった。
- 56 :
- その時、彼女の瞳に、何かおもしろい悪戯を思いついたかのような光が浮かんだのを見て、遅まきながら私は、自分が地雷を踏んでしまったことに気づいたが、手遅れだった。
そうそう、言い忘れていたが、彼女はその大和撫子然とした外見に反して、性格の方き随分と個性的で我の強い(もっと言えば我がままで強引な)少女だ。
彼女がカバンから取り出した「立場を入れ替える魔法の首飾り」とやらを強引に付けさせられ、何やら呪文のようなものを一緒に唱えさせられたかと思うと、次の瞬間、私は意識を失い、図書室の自習スペースの机に崩れ落ちた。
そして、次に私が意識を取り戻したのは、閉館時間を告げる司書に、起こされた時のことだった。身体に違和感を覚えて見下ろすと、私は我が校の女子の夏服である白い半袖のセーラー服を着ていたのだ。
しかも、司書の女性は私に彼女の名前で呼びかけてくるではないか!
そのままおっかなビックリ校内を歩いても、誰も見咎めないばかりか、明らかに見覚えのない後輩の女子が、私を「彼女」として話しかけてくる。
ふと顔の横に長い髪が垂れさがっているのに気付き、もしかして身体が入れ替わったのか……と、女子トイレの鏡を覗いてみたところ、軽いナチュラルメイクで多少女らしい印象になっているものの、そこに映っていたのはまぎれもなく私自身の顔だった。
念のため、個室に入ってスカートの下を確かめてみたものの、可愛らしいショーツの中には、確かに慣れ親しんだスティックとボールの存在が確認できた。
どうやらこの首飾りは「本物」だったらしい。本当に私達の「立場」だけを入れ替えてしまったのだ!
「私」になっているはずの彼女が見つからなかったため、仕方なく私は「彼女」として彼女の家に帰った。幸い、中学の頃までは何度か遊びに来たことがあるので、おおよその間取りや勝手は分かっている。
私は何とか彼女になりすますことができた。
もっとも、「旧家のお嬢様」の生活ははたから想像するほど楽なものではなかった。
一週間のうち、月水金土は茶道、華道、日舞にピアノのレッスンで埋まる。それ以外でも、火曜と木曜は彼女の母親による「良家の子女のたしなみ(別名・花嫁修業)」の指導があり、本当に休めるのは日曜だけという有り様だ。
首飾りの効果なのか、それらの習い事関連の知識は、いざその場になるとスラスラと頭に沸いて来たため、かろうじてボロを出さずに済んだ。
「私」になってるはずの彼女は何故かなかなかつかまらず、結局私は夏休みの残りを彼女として過ごすことになったのだった。
そして迎えた二学期。学校が始まればクラスメイトでもあることだし、彼女を捕まえられると安堵していた私だが、担任から「私(=彼女)」が学校を長期休学して海外放浪の旅に出たことを知らされ、頭を抱えるハメになった。
──結局、私はそのまま彼女として高校を卒業し、著名な女子大へと進学することになった。
許婚である先輩とも、先輩が高校を卒業する前後から、「まずは恋人から」ということで交際を始めていた。彼女の意向を無視してよいか多少悩んだものの、好き勝手やってるのはお互い様なので、開き直ることにした。
- 57 :
- そうして、若い女性としての暮らしに完全に馴染んだころ──立場交換から1年くらい経った時期だったろうか、私の身体が徐々に変化を始めたのだ。
まず、陰茎(ペニス)が完全に委縮した。もともと巨根というワケではなかったものの、毎日少しずつ縮み始め、ひと月ほどで通常時は親指の第一関節くらいまでの細さと長さになってしまった。しかも、一応剥けていたはずの包皮が根元から半分以上を覆っている。
これではまるっきり陰核(クリトリス)だ。
尿は一応この「クリトリスもどき」の先端から出ているのだが、まるっきり勢いなく垂れ、会陰部まで流れてくるため、立って小用を足すことはもはや不可能だろう。
次に変化したのは睾丸だった。
武術家の中には、「コツカケ」と言って腹筋を巧みに操作し睾丸を腹の奥に引っ込める技術があるらしい。私はその手の修行など一度もしたこともないのに、ある朝気が付けば睾丸が体内に引っ込んでしまっていたのだ。
しかも、通常これには多大な痛みが伴うらしいのだが、私の場合、まったく苦痛がない。マンガなどでは「上がった」睾丸をピョンピョン跳んで戻す光景が見られるが、私の場合飛んだり跳ねたりしても、一向に降りて来ない。
結局、一度そうなって以来、私は股間にふたつの球体がぶら下がる感覚を二度と感じていないし、そろそろその感覚さえ忘れかけている。
睾丸が体内に上がるのと同時に、陰嚢もしぼみ始めた。ただ、完全に平らになったわけではなく、緩やかな隆起と弾力は残っている──まるで女性器のように。
いや、機能的にはまさに女性器そのものと言ってよいだろう。なぜなら、何も孔などないはずの私のソコに指先や男性器をあてがうと、なぜかズブズブとめり込み、それら棒状のものを小陰唇の如く柔らかく締めつけるのだから。
さらに(これは想い起こせば入れ替わった当初からなのだが)、どれだけ快楽に喘いでも射精することはなくなり、代わりに先走りがまるで愛液のように滴り、「挿入」時の助けとなっている。
男性としての性感は失ったものの、俗にいう「ドライオーガズム」を先輩との「性交」で感じるようになったので、私個人としてはなんら不満はない。
下半身と平行して、胸部も変化した。乳腺が発達して、いわゆる乳房が徐々に出来てきた。乳首も大きく敏感になり、今では私の身体で一番感じるスポットと言っても過言ではないだろう。
とは言え、大学を卒業した段階でさえ、どう贔屓目に見ても「貧乳」と呼ばれて然るべき小ささだったが、妊娠が判明した前後から少しずつ大きくなり始めている。てっきり、「揉まれると大きくなる」という俗説かのおかげかと、思っていたのだが……。
ま、まぁ、それはさておき。
肌や体毛、髪質なども完全に変化し、遺伝子的にはともかく外見的には、もはや私が女性以外の何者にも見えなくなった頃──忘れもしない高校3年のクリスマスイブに、あの首飾りが呆気なく私の首から外れた。
メンタリティーまで女性化していた私は、一瞬パニックに陥った。まさか、今になって元に戻るなんて!
戻りたくない! 真剣に願った私は、気が付けば恋人である先輩の腕に抱かれていた。
そう。ちょうどその日は先輩とデートの待ち合わせをしていたのだ。
私は震える声で彼に「私のことがわかるのか?」と聞いた。
彼はキョトンとした顔で、「彼女」の……そして、今は私のものとなった名前を呼んでくれたのだ!!
そのおかげで、私は完全に自分が「彼女」として世界に認められたことを確信できた。
- 58 :
- ──その日、私は初めて彼に「抱かれ」、「貫かれ」たのだった。
その後、交際は順調に進展し、私が大学を卒業すると同時に籍を入れ、同年六月に華燭の典を挙げて私は彼の元に嫁ぎ、いまはこうやって「若奥様」なんぞしてる……というわけだ。
元「彼女」な「私」とは、大学時代に一度だけ顔を合わしたことがある。ちゃっかり美人な白人女性と結婚しているという「私」の方も、どうやら身体の事情は似たようなものらしい。
クリトリスがペニスとして機能するようになり、性的に興奮すると「本物」同様十数センチぐらいの大きさに膨張する。
尿はクリトリスの下の尿道口から出るのだが、私とは逆に、まるでクリトリスに添うように勢いよく噴き出すので、男子トイレでごくふつうに立ちションできるらしい。同様の理屈で、愛液もまるで精液の如く「射精」するのだとか。
膣口は確かに存在するのに、ギュッと堅く閉まっていてその奥には何も入らず、触っても特に気持ちよくならないそうだ。
おもしろいことに、大小の陰唇が肥大化して疑似的に陰嚢として機能しているらしく、蹴られたりするとものなら男特有のあの痛みを感じるのだとか。
乳房まわりも何も感じなくなってただの脂肪の塊……というか、そもそも筋肉にとって代わられ、隆起らしい隆起はもはや存在しないらしい。
聞けば、身体能力も同年代の男並みなのだとか。私が、女の子として暮らすうちたに、いつの間にか「女の子」としての腕力しかなくなったのと対照的だ。
「ねえ、後悔はしてない?」
と聞いたのは、どちらからだったろうか。明確に覚えていないが、それに対する答えはキハッキリ覚えている。
「「ううん、全然」」
異口同音に、そう答えたのだ。
「ただいま〜!」
あら、愛しの旦那様がお帰りのようだ。
では、私のお話はこのヘンで。
-おわり-
-----------------------------------------
#まさにそのまんま!ですが、妄想のタネにでもなれば幸いです。
- 59 :
- 乙!できれば体の変化無くて身体機能だけが逆転したほうがそれっぽかったかも
- 60 :
- 新しい人おつ!
>>59
体の変化の有無は書く人の好みでいいんじゃないか?
細かいとこ突き詰めたら、子供が産める体になってるってことは
女性並みにホルモンが回ってるわけで、そうなると体もある程度変化するだろうよ
まあフィクションだからその辺は裁量に任せるけど
- 61 :
- >>59
それは、「自分でも書いてみよう」という宣言と受け取ってもよろしいか。
- 62 :
- >>50
投下してもいいんだぜ?
- 63 :
- >>59でしたorz
- 64 :
- ミスキャスト2見つけた http://web.archive.org/web/20110730152951/http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/1610/miscast2.html
- 65 :
- >>64
見れない
- 66 :
- #なんとなく「令嬲志願」とネタがかぶり気味だけど、6話イキまーす!
『泳げ、チハヤちゃん!!』
6話)
後から考えてみれば、前日の晩、確かに「それ」の予兆はあった。
しかし、本人は元より他の「当事者」2名もそれに気づかなかったのも、ある意味、無理のない話と言えるだろう。
まさに、いわゆる「想定外」の事態だったのだから。
* * *
その夜。
田川邸お抱えドライバーの運転するベンツで自宅に送り届らけられたちはやは、いささか興奮気味だった。
「すごいよね〜、庭にプールとテニスコートもあるんだもん」
「ハイハイ」
当然そんなことは先刻承知なのだが、馨は苦笑しつつも優しく「妹」の話を聞いている。どう考えても千剣破より大人な対応なのだが──コレでいいのか?
「あ! そ、それでね、馨兄さん。そのぅ……もし明日25メートルちゃんと泳げても、元に戻るのは日曜の夜でもいい、かな?」
日曜日にククルの家で撮影会があるのだと聞いて、多少渋い表情になる馨。
撮影会そのものはちはやが行くとしても、元に戻ったらその「ちはや」がしたことは「かおる」がしたという形に置き換わるのだ。
可愛い服などにあまり興味のない馨にとっては恥ずかしいばかりで益のない話だが、それでも馨は最終的には承諾した。せっかく「妹」が楽しみにしているのに、それに水を差すような真似は「兄」としてしたくなかったからだ──つくづく大人な判断である。
はしゃぎ過ぎたせいか、少し気づかれしている風にも見えるちはやに一番風呂を譲り、自室に戻った馨は、やれやれと困ったような、けれど同時に慈しむような複雑な表情を浮かべている。
- 67 :
- 「元気になってくれたのはいいけど……ちぃちゃん、すっかり女の子してるなぁ」
天真爛漫で、「兄」として見るぶんには微笑ましい限りなのだが、自分があの立場にいた時は、もう少し分別くさかったような気がする。
『まぁ、そのヘンは汝らの性格の差よ。正直我も、お主が兄な方が性格的には合っておる気はせんでもないが』
ポムッと現れた守り神様も、ちょっと困ったような顔をしていた。
「一応参考までに聞いておきたいんだけど……僕らがこのまま元に戻らないと、何か問題あるのかな?」
『カオル、汝まさか……』
「いや、あくまで仮定の話だよ」
アルカイックな笑みからは、「彼」の本心はいまいち窺えない。
『ふむ。あると言えば無論ある。なにしろ人ひとり、いやふたりの運命をある意味捻じ曲げるのだからな。しかし、本人達が心底同意しているなら、見方によってはさして大きな問題はないと言えないこともない』
その真意をはかりかねつつ、ナミはそう答えた。
「──ふーん」
それっきり、ふたり(ひとりと一柱)の会話は途切れた。
* * *
翌朝のちはやは、少し体調が優れないようだった。
とは言え、以前のように立場交換に伴うストレスで不調だった時とは異なる。どうやら昨晩、遅くまで親友ふたりとメールでやりとりしていたようなのだ。
「パケホーダイだから電話代は気にしなくていいけど……あまり夜更かししてちゃダメだよ、ちぃちゃん。今日も水泳の授業あるんでしょ?」
「あ、うん。ごめんね、兄さん」
もっとも、多少の寝不足程度でどうにかなるほどヤワな身体は、兄妹ふたりともしてないはずだが。
「あの、たぶん、だいじょうぶだとは思うんだけど……もし、さ。もし、うまく泳げなかったら……」
今週の体育の授業は今日で終わりだ。次の機会は来週の月曜の4時間目になる。
「いや、僕は別に構わないんだけどね。ただ、再来週は期末試験だよ。ギリギリになって戻るのはヤバいんじゃない?」
「うッ……そう言えばそういうモノもあったんだっけ」
座学が苦手なちはやは、その単語を聞いてゲンナリした。
「こうなったら、いっそ期末試験までこのままで……」という悪魔の囁きを、頭をフルフルと左右に振って振り払う。
- 68 :
- 「──そうだよね。さすがに、そこまで馨兄さんにメイワクかけるのも悪いし、がんばるよ」
心なしか元気なくトボトボと学校に向かう「妹」を見て、「朝から脅し過ぎたかなぁ」と馨は頭をかくのだった。
馨に言われたことが心の奥に引っかかっていたから──という理由も無いわけではないが、それを別にしても、今日のちはやはどうやら本気で体調が悪いようだ。
「あの、天迫先生、ちはやさん、具合が悪いみたいなのですけれど……」
2時間目が始まったあたりで、蒼い顔をしているちはやを見かねた隣席のククルが、手を挙げて教壇の星乃にそのことを告げる。
ハッとした星乃がよく見てみれば、確かにちはやの顔は苦痛に歪み、額からは暑さのせいではない汗がにじんでいる。
慌ててクラスの子達に自習を告げると、星乃は小柄な体に似合わぬパワフルさを発揮し、ちはやを背負って保健室へと向かう。
「大丈夫、武内さん?」
「すみません、あんまりだいじょうぶじゃないかも。あの、おトイレに……」
蚊の鳴くようなに声で返事するちはやのリクエストに応えて、そのまま女子トイレまでちはやを送り届けた星乃だったが……。
「──う、うわぁあああ!」
個室から聞こえて来たちはやの叫びに、ドンドンドンと扉を叩く。
「どうしたの、武内さん!? 痛いの? 苦しいの?」
「せせせせ、せんせぇ! ちちち、ちが……」
扉の向こうのちはやは、尋常でなく動転しているようだ。
それでも辛抱強く声をかけて話を聞き、状況を把握した星乃は、足早に保健室へ向かい、目当てのものを見つけると、すぐさまとって返す。
「武内さん、恥ずかしいとは思うけど、ドアを開けてくれる? キチンと適切な処置をしないといけないから」
「──わ、わかりました」
一瞬の躊躇いの後、ちはやは個室のドアの鍵を開いた。
- 69 :
- 恥ずかしそうなちはやの表情に気付かないフリをした星乃は、スカートをまくりショーツを下ろした「彼女」の下半身に視線を向け、予想が当たっていたことを知る。
「やっぱり、ね」
持って来たモノで、てきぱき「処置」すると、星乃はちはやを促してトイレから出て、そのまま保健室へと送り届ける。
運がいいのか悪いのか、養護教諭は留守にしているようだ。
「せ、先生、やっぱり、ぼく、病気なんでしょうか?」
ベッドに横たわり、心配そうに尋ねるちはやの問いに、星乃は緩やかに首を横に振った。
「いいえ、そういうワケではないわ」
「でも、あんなに……」
「武内さん、「生理」とか「月経」って言葉は知ってるかしら」
「はい、保健の授業で……え?」
まさかという顔になる表情になったちはやに、星乃は視線で肯定の意を示す。
「「おめでとう」と言っていいのかわからないけど……武内さん、どうやらあなたの身体は今日、初潮を迎えたみたいね」
──その日、武内ちはやは、生まれて始めて体育の授業を休み、4時間目まで保健室で過ごすことになったのだった。
* * *
「あれ、母さん、今日何かお祝い事?」
夕食の席で出されたご飯が赤飯だったことに、ちょっとした疑問を覚える馨。
「ふふふ……内緒よ。ね、ちぃちゃん」
意味ありげに笑う母のウィンクを受けて、真っ赤になるちはや。
それだけで理解したのか、なんとも言えない感慨深げな顔をしている父と異なり、馨はわかっていないようだ。
「??? ま、美味しいからいいけどね」
- 70 :
- 「それにしても、ちぃちゃん、やっぱり具合悪いのかな?」
何故かいつもよりおとなしく、また小食だった「妹」の様子に首を傾げながら馨は「自室」に戻った。
『汝にしては珍しく勘が悪いの。いや、今の「兄」という立場上やむをえぬことか』
卓上に姿を見せたナミが、肩をすくめる。
「え、ナミは何があったかわかってるの?」
『無論。チハヤからするほのかな血の匂いと格段に強まった陰の気、そして何よりあの恥じらいの表情を見れば、おのずと答えはひとつじゃろうて』
「?」
はてなマークを浮かべたままの馨に溜め息をつき、ナミはより直截的な表現に切り替える。
『つまりじゃ。チハヤは今、間違いなく月のモノを迎えておるのじゃろう』
「つきのもの……って、もしかして、生理のことォ!?」
さすがにここまで言えば、現在、「男子高校生」としてのメンタリティを持つ馨にも通じたようだ。
泡を食った馨は、部屋を飛び出して「ちはやの部屋」に押しかけ、真偽を確かめる。
ちはやは、頬を染めつつ、馨の疑問を肯定した。
「そ、そうなんだ……ちぃちゃんが生理にねぇ」
「も、もぅ……はずかしいから、ハッキリ言わないでよ、兄さん」
「あ! ご、ごめん」
実は、長身の割に第二次性徴が遅れ気味だった「かおる」は、いまだ生理を迎えていなかった。そのため、ソレに関する机上の知識はあっても、どうにも実感が伴わないのだ。
「その……やっぱりお腹とか痛いの?」
「うん。なんて言うか、オヘソの下の方にズ〜ンと重たいものが入ってるみたいな……って、説明させないでよ!」
耳まで真っ赤になって、ちはやはアワアワしている。
- 71 :
- 「じゃ、じゃあ、ナプキンとかも……」
チラとちはやのスカートに視線を走らせる馨。
「だーかーらー、聞かないでってば! 兄さん、デリカシーないよ!!」
「ごめん」
反射的に謝りながらも、馨は複雑な気分になった。
先程も述べたが、「かおる」は未だ初経を迎えていない。しかしながら、現在、ナミの術によって、「兄」と「妹」の立場を入れ替えているせいで、本来は兄であるはずの「妹」ちはやの方が、先に「女の子の日」を迎えてしまうという奇妙な逆転現象が発生したのだ。
ちはやに先を越されて悔しい……という気分も確かに皆無ではない。
だがそれ以上に、「妹」が自分の知らない「女としての第一歩」を踏み出したと考えると、何かこう背筋がゾクゾクがくるような興奮を内心覚えずにいられなかったのだ。
(あ、あれ?)
ふと、馨は自らの下半身に違和感を覚えた。
ショートパンツの下、ブリーフに包まれた自らの股間で、何かが堅く尖っているような感覚がするのだ。
(まさか!?)
早口でちはやに再度謝意を示すと、馨はそそくさと「自室」に戻り、おそるおそるパンツの中を覗いてみる。
「う、うわっ、何これ」
そこには、小さいながらも思い切り充血し、ピンと尖って自己主張している陰核の姿があった。
「コレって……もしかして勃起ってヤツ?」
男子高校生ともなれば、友人達との会話でそのテの猥談ネタには事欠かない。その性格上、馨は比較的そういう話に巻き込まれにくいタチだが、知識が皆無というわけでもなかった。
ゴクリと唾を飲み込むと、ベッドに腰掛け、うろ覚えの友人からの情報を元に、そっとソレを触ってみる馨。
「ッ!!」
(うはぁ! 何コレ……気持ちイイっ!!)
かろうじて声をあげることは押さえたが、その未知なる快感は馨を強く魅了した。
女の子の「かおる」が自慰未経験だったこともあってか、馨はたちまち「初めてのオナニー」の虜になる。
普段理性的な「彼」とは思えぬほど……いや、いつも理性で押さえているからこそ、腹の底に色々「溜まって」いたのかもしれない。
その夜、馨は、思春期の少年の欲望を表すのによく用いられる「サルみたいに」という言葉通りに、ひたすら自らのソレを弄り回して快楽を得る行為に没頭したのだった。
- 72 :
- ──翌朝、「生理」中の「妹」ちはやはともかく、「兄」である馨まで寝不足気味な目をして食卓に現れたため、両親は揃って首を傾げることになった。
-7話につづく-
──────────────────
#当初の予定(日曜イベント)は消化できず。7話でソレをやって、8話がエピローグになりそうデス。
#ちなみに、ちはやちゃんの場合、経血は睾丸の付け根下部の会陰部あたりから、ジクジクと滲み出ている感じ。じつは、ここ数日の情緒不安定も初潮の予兆だったり。
- 73 :
- >>72
乙
馨のアソコはどんだけ大きくなってるんだw
- 74 :
- ここんところチハヤさんしか書いてないなw
- 75 :
- >ここんところチハヤさんしか書いてないなw
いや、季節がら、この話は今のうちに完結させときたいなーと思って(8話完結予定)。
終わったら、次は「替え玉お断り」……にしようかと思ったのですが、話の傾向が似てるのでしばらくお休み。
他の方の投稿を待ちます。
- 76 :
- このスレに他に書き手なんていないだろ
勿体振らずに書いてくれよ
- 77 :
- >このスレに他に書き手なんていないだろ
あやまれ! 「ゆあゆう」「お屋敷」の書き手や前スレ351さんにあやまれ!!
──いや、マジで自分ひとり書き手とか勘弁してつかぁさい。ていうか、他者のSS(ねんりょう)ないと、ホント自分も書けなくなるんでプリーズ。
- 78 :
- それは正直スマンかった。
ちょっとした言葉のあやだ
こんなに頻繁に投下してくれるの泳ぐ人ぐらいだからな
ゆあゆうとかの書き手は別なスレに行った様だしな
このスレは泳ぐ人で支えられてる様なものだと感じたまでだ
やる気が出なくなるみたいな事とか言ってるんで一言
ここ見てるやつは結構いるんだぜ
なぜ乙やGJをしないかと言うとそれは見てるだけのやつが多いからだな
俺がしないのは最後まで見てからする主義だから
そう言う事だ
頑張れ
- 79 :
- >>64
今は見れるな
見れるうちにコピーしといたほうがいいか
- 80 :
- 乙やGJしないけど読んでます
チハヤの人いつも乙です
お屋敷の人の続きもそろそろ読みたいです
- 81 :
- 俺は日常書いた人の新作を期待しています
- 82 :
- クレクレ房ですまないが、俺はつかさの話しの続きが見たい
続くと言ったままで気になる
- 83 :
- >『令嬲(レイジョウ)志願』
GJです^^
女性としての生活を余儀なくされるのは、このスレお約束の美味しい展開ですね。
尊敬する先輩に心惹かれる主人公の彼、尊敬が愛に代わる時、そう妄想すると素敵ですw
>泳げ、チハヤちゃん!!6話
こちらもGJです^^
馴染み過ぎちゃって、チハやんかおるの代わりに初潮を迎えるなんてとんだハプニングですね。
そして精通を迎えた馨が、そこまでするとはw
精通って全員が夢精でする訳じゃないんですね。
- 84 :
- #いよいよ最終章。物語も大詰め……と言いつつ、なんだかんだでまったり気分!? いえいえ、事態は急展開します。
『泳げ、チハヤちゃん!!』
7話)
「武内ちはや」が初潮を、「武内馨」が精通(なぜかアソコから出た液体なのに白っぽかった)を迎えたことによる影響は、本人達は元より周囲にも幾つもの波紋を投げかけた。
まず、週末に予定されていた田川邸での撮影会はちはやの体調を考慮して延期となった。
「ごめんね、ククルちゃん。せっかくセッティングしてくれてた、おばさまにも謝っておいてもらえるかな」
「いいんですよ。それよりちはやさんのお身体の方が大事ですもの。初めての時は長引くものですし」
申し訳なさそうなちはやの言葉に、お嬢様育ちなククルはおっとり答える。
「まぁまぁ、「アレ」なら仕方ないよ。それにしても、ちはやちゃんに「来て」なかったのは、ちょっと意外かな」
秋枝の言葉に真っ赤になるちはや。
「えっと……う、うん。あの、ふたりは、もう?」
「ええ、わたしは昨年の秋ごろだったでしょうか」
「あたしは、今年の春先からかな〜。わかんないコトがあったら何でも聞いてね!」
ちょっと得意げに「女の子の日の先輩」として胸を叩く秋枝の様子が微笑ましい。
「あはは。うん、そうだね。何か困ったことがあったら教えて」
そして担任の天迫星乃は、これまで以上にちはやのことを気にかけてくれるようになった。
「あの……ありがたいですけど、どうして?」
先生がえこひいきしたら、マズいですよね? と首を傾げるちはやに、星乃は苦笑する。
「ええ、確かにそうなんだけどね。ま、先生も身に覚えがあるから……」
「?」
「前に言ったでしょ。先生、元男だったって。でも、高校時代に女の子に「なって」る時に生理が来て、男に戻れなくなっちゃったのよ」
ある事情から特殊な生体スキンスーツで女子に変装していたところ、それが皮膚と一体化し、細胞レベルで浸食されてしまったらしい。
「え、えーと、ぼくはすぐに元の立場にもどるつもりなんですけど……」
そもそも体自体は変わってないはずですし、と付け加えるちはやに、意味深な視線を投げる星乃。
「そうね。戻れるといいわね」
「は?」
「先生も、当初は別に女の子になるつもりは毛頭無かったんだけど……世の中にはハプニングとかアクシデントってものがあるからね〜」
「ふ、不安になるようなコト言わないでくださいぃ!」
「あら、ゴメンなさい」
うるうると涙目になるちはやを尻目に、星乃はコロコロと楽しそうに笑う。
「大丈夫。女の子もね、慣れると楽しいものよ」
「──それは、まぁ、わかりますけど」
両肩に手を置いて優しく諭す星乃の言葉に、ちはやも、ついポロリと本音を漏らしてしまう。
(あらあら……コレは、もしかしたらもしかするかもしれないわね)
無論、それをあえて指摘しないのが、「大人の優しさ」というヤツであった。
- 85 :
- 武内家に関して言うなら、母親がそれまで以上にちはやに家事の手伝いをさせようとするようになった。
以前の「かおる」はそんな母の言葉を柳に風と受け流していたのだが、そこまで要領の良くないちはやの場合は、なんやかんやで結局手伝わされるケースが多かった。
しかし、災い転じて福と言うべきか。
「それでね、ボウルはよく洗ってから、乾いたふきんでよく拭いておくの」
「なんでー?」
「余分な油分や水分があると、ちゃんと固まったメレンゲにならないからね」
「へぇ〜」
「それで、卵白を泡立てるときは、泡立て器だけを動かすのじゃなくて、空いている手でボールも動かしてみてね。空気を含ませるの」
「こ、こう、かな、お母さん?」
「ええ、そんな感じ。上手よ、ちはやちゃん。ここまで来たら、まずはお砂糖を半分入れて、さらに泡だててみて」
「はーい」
「そうそう、いい感じ。そこまできたら残りの砂糖と、レモン汁も入れて、さらに混ぜ合わせて……」
「んしょ、んしょ……」
「はい、そこまで! うん、上出来よ。ほら、ちはやちゃん」
母親が指先でひとすくいしたメレンゲをちはやの前に差し出す。「彼女」は躊躇いなくそれを口にした。
「あ、美味し」
シンプルながらまろやかな甘みとほのかなレモンの酸味のおかげで優しい味がした。
「ふふふ、このままでも十分食べられるけど、せっかくだからオープンで焼いてクッキーにしましょ。搾り袋に入れて、オーブンの天板にちょこっとずつ並べてみて……そうそう。あとはこれをオーブンで焼けば完成よ」
「わーい、早く焼けないかなぁ(ワクワク!)」
本来の千剣破は「貴方作る人、僕食べる人」を地でいくグータラだったが、母親に褒められおだてられつつ励む内に、「ちはや」としては少なくともお菓子作りに関してはそれなりの興味を示すようになったようだ。
逆に父親の方は、以前にも増して娘に甘くなった。「ちはやもレディ予備軍として、おしゃれにも気を使わないといけないだろうから」と、いきなりお小遣いを3000円アップしてくれたくらいだ。
「──だからって、そのアップ分をおやつにして食べちゃうのはナシだぞ?」
「ぶぅ〜、お父さんヒドい! ぼく、そんなことしないもん!!」
おやつは自家製で賄うようになったので、まぁ確かに買い食いはしてないワケだが。
- 86 :
- 一方、バレー部幽霊部員で半帰宅部のため、「妹」に比べて劇的な変化には乏しかった馨のスクールライフも、とある破天荒な先輩との出会いから新たな色彩が加わろうとしていた。
「"バードマン研究所"? なんです、ソレ?」
「HAHAHA! 武内くん、キミは鳥人間コンテストというのを聞いたことはないかい?」
「えぇーっと、確か某テレビが主催している人力飛行機の大会でしたっけ。
──ああ、なるほど、だから「バードマン」なのか。察するに人力飛行機を作ろうとしている同好会ってトコですか?」
「うむッ! 察しが良くて助かる」
「はぁ、それで日輪先輩……でしたか。その同好会の方が僕に何か?」
「無論、スカウッツだ! 武内くん、キミはまさに我が研究所が求める理想の人材なのだよ」
最初はふんふんと聞き流していた馨だが、人力飛行機の操縦者としては「小柄で軽量だが、運動能力はべら棒に高い人間が最適」と説明され、熱心に勧誘されるにつれて、少しずつ心を動かされる。
バードマン研究所(バー研)は、さながら某春風高校の如くフリーダムな部活の多い都蘭栖高校においても、トップクラスに変人の集うサークルであったが、それは同時に「退屈とは無縁な毎日」をも意味する。
気がつけば馨は、意外にメカ好きな友成やフリーダムさなら負けていない龍司ら悪友とともに、いつの間にか放課後、バー研に顔を出すようになっていた。
「──当分は、助っ人ってことで、お手伝いさせていただきます」
さすがに、本来この場にいるべき妹(正しくは兄)の千剣破の意志を無視して入部したりはしなかったものの、どうやら馨もまた「高校生らしい(?)青春」に邁進するようになったようだ。
* * *
さて、そんな幾つかの変化が発生しつつも、表面的にはしごく平穏に「兄妹」ふたりの日常は流れている。
翌週の月曜にはちはやの生理も終わり復調していたが、残念ながら雨のため、体育はプールではなく体育館で行われた。
跳び箱やマット、平均台といった器械体操の基礎だが、柔軟性と敏捷性、そして体のバネに優れたちはやは大活躍。クラスの女子の憧憬と、男子の約半数の羨望と興味を集める(ちなみに、残り半分は素直に認められない意地っ張り達だ)。
6-Bにおける「武内ちはや」の株は、もはやストップ高だ。
水曜日のプールの授業で、無事に25メートル泳ぎきったことで、ナミからの「課題」もクリアーできた。
もっとも、先週から延期されたククルの家での「撮影会」が土曜にあるうえ、翌週月曜からトラ高の期末試験があるため、結局ふたりが元の立場に戻るのは、桜庭小が夏休みに入る7月下旬まで持ち越されることとなった。
- 87 :
- 「はぁ……やっぱり。こうなるんじゃないかと思ったんだよね」
水曜日の夜、ちはやから「課題達成」の報告と一緒に撮影会の件も聞かされた馨は、あきらめたような呆れたような溜め息をつく。
「うぅ……ごめんなさい、馨兄さん」
縮こまるちはや。
客観的に見れば、初潮を迎えたこと自体には「彼女」に非はない。
そもそも、いくら「立場交換」したからと言って、(他人から見える姿はともかく)身体そのものは元のまま、れっきとした男のコなのだ。それなのに、まさかその状態で月経が始まるとは、術をかけたナミにとっても想定外だったのだから。
しかし、ククルの家でククルママの押しに負けて撮影会に同意した件は、完全にちはやの責任だろう。
無論、初対面の大人の女性の強引な勧誘を断りきれないのは無理もないとも言えるかもしれないが、その反面、「可愛い格好してモデルをすること」に対して、ちはやがまるで興味がなかったと言えば嘘になる。その分、拒絶の言葉に真剣味が足りなかったのも事実だ。
よりによって学生にとって一番憂鬱な行事である定期試験を、「兄(本来は妹)」に押し付けてしまったことに、ちはやは強い罪悪感を覚えていた。
「まぁ、いいさ。僕としても、自分の今の学力がどれほどのものか知りたい気持ちはあるからね」
その結果自体では、今後の身の振り方も考えないといけないし……という言葉は、馨はあえて口にしなかった。
『話はまとまったかえ?』
「あ」「ナミちゃん」
兄妹の会話が一段落したと見て、小さな守り神様も姿を見せる。
『まずは、チハヤ、我の課した課題を達成したことは褒めてつかわそう。これで汝らが元の立場に戻るための条件は満たされたことになる』
「えっとね、ナミちゃん。そのことなんだけど……」
『よいよい、先刻の話は聞いておった』
鷹揚に頷いたのち、ふとナミは首を傾げる。
『それにしても……チハヤよ。汝が本来は「兄」であることは、きちんと自覚しておるのか?』
この三者が顔を合わせれば、本来の立場の自覚が促されるよう、以前条件付けしたはず(だからこそ、ナミはあれからちはやの前に現れなかった)だが、「彼女」の様子は「普段」と変わりなく見える。
「へ? あ、うん。そりゃ、もちろんわかってるよ。さっきも元に戻る時期の事、馨兄さんと相談してたんだから」
ちはやの答えは理にかなっているようで、どこかズレていた。
(我は、知識ではなく「意識」の問題として問うたのじゃが……まぁ、よい)
ココで下手なことを指摘して狼狽させても、せっかくうまくいっている日常を壊すだけだろう……と、ナミはあえて指摘しなかった。
あとになって考えると、その判断がその後の流れを確定させたのだが……「神」とは言え、しょせんは一家系の守り神でしかない須久那御守にその事を予見しろというのは無茶かもしれない。
いや、あるいは「そう」することこそが、この「兄妹」の幸せに繋がると、守護者としての本能で予感していたのかもしれないが。
- 88 :
- 後半部も書けているのですが、いったん切ります。
日付が変わる頃に続きを投下予定
- 89 :
- >>88
じゃあ全裸で待機しとく
- 90 :
- * * *
「ウフフ〜、ようやく、ちはやちゃんがモデルになることを了解してくれて、おばさん、うれしいわ♪」
アパレルメーカーのオーナーと言うより、むしろそのブランドの専属モデルと言ったほうがしっくりくるような美女(ククルの母)に、笑顔で手を握られて苦笑いするちはや。
「えーと、お手柔らかにお願いします……タハハ」
困ったように親友ふたりに視線を向けるが、ふたりともニコニコと無邪気(を装った人の悪いそう)な笑みを浮かべるばかりだった。
土曜日の午後、学校が終わると同時にククルの迎えに来たキャデラックに、ちはやと秋枝も同乗して、田川邸に来ていた。
軽くサンドイッチを摘まんだのち、ちはや達は撮影を行う部屋に案内される。
ちはやとしては「身内だけの気楽な撮影会」という話だったので、てっきりククルの母が用意した何着かの服に3人が着替えて、和気あいあいとおしゃべりしつつ、その様子を適当に写真に撮られるだけだと思っていたのだが……。
確かに、そこは田川邸の一角であり、同席しているのは「彼女」と秋枝を除けばこの屋敷に住む者・働く者ばかりだ。それは認める。
しかし……まさか自宅の地下に撮影スタジオがあって、さらに執事がプロカメラマン顔負けの撮影の腕を持ち、そのまま十分TV局のスタイリストやメイクさんが務まる技量を持つメイドさんまでいるとは思わなかったのだ!
職業柄、確かにスタジオくらいはあってもおかしくないが、それ向きの人材まで揃えているとは……おそるべし!
まぁ、ここまで来たらグダグダ言ってても仕方ないので、ククルのママ──シャミー女史の指示に、ちはやは大人しく従うことにした。
「まずは、ちはやちゃんのいつものイメージに近いカッコからいきましょう」
そう言って渡されたのは、半袖の部分が分離して肩がむき出しの若草色のワンピース。スカートの部分が思い切り短いが、下にドロワーズっぽいオリーブグリーンのかぼちゃパンツを合わせているので、飛び跳ねても問題ない。
素足にシンプルなレザーのロングブーツを履き、エクステを付けて髪型をサイドポニーに仕上げているので、活発そうではあるが普段のちはやとは少し印象が異なる。
「今度は、ちょっと可愛らしい方向ね」
ピンクのノースリーブにミディ丈の萌黄色のスカートというローティーンの女の子としてはやや地味めな服装だが、その上に七分袖の白いジャケットを羽織るととたんに途端に華やいだ雰囲気になる。
足元は白タイツとオーキッシュブラウンのレディスモカシン。襟にかかる髪の裾を内巻き気味にブローして、頭には薄桃色のボンネットを被ると、どこかヨーロッパの民族衣装を着た娘さんにも見える装いに仕上がった。
「せっかく背が高いんだし、もう少しオトナっぽくしてみましょうか」
白を主体にベージュとモスグリーンを配したふんわりした長袖のワンピース。スカートの裾はくるぶし近くまであり、パッと見は「ハチクロ」のはぐちゃん風。
薄手の黒いハーフストッキングとカーキ色のローファーを履き、エクステでロングにした髪を、黄色いアイリスの花を模した髪飾りふたつでツインテールにまとめると、鏡の中から一見15歳くらいの美少女がちはやを見つめ返している。
- 91 :
- 「うんうん、イイ感じ。じゃあ、今度はちょっと小悪魔路線に変更ね」
小学生にはちょっと早過ぎると思われる黒のストラップレスのミニドレスも、ちはやの背丈と顔立ちなら、さほど無理なく着こなせるようだ。
ほとんど剥き出しの肩と背中は、真紅のハーフコートとショールで隠し、足元は、いかにもゴスロリ衣装に合いそうな黒の厚底靴。
ダークブラウンのロングウィッグを、あえて奔放に背中までなびかせたまま、額に宝玉のハマったサークレットを付け、どこから見つけてきたのか乗馬用の鞭を手にポーズをとると、さながら「魔王のひとり娘」といった趣きだ。
「いいわいいわ〜、じゃあ、せっかくだから真逆のスタイルも試さないとね」
白のフリルをふんだんにあしらったライトパープルのクラシカルなコルセット付きドレスを着せられる。スカート部はパニエのおかげでフワリと広がりつつ、裾は鈴蘭のようにややすぼまり気味のデザインに仕上げられていた。
僅かに見える足にはチェリーレッドのハイヒールを履いて、鮮やかなブロンドのカツラを三つ編みにしてからアップにし、銀のティアラを載せると、まるでお伽噺から飛び出して来たプリンセスそのものだった。
各衣装に合わせて、メイク係のメイドさんがお化粧やアクセもアレンジしてくれる点など、アイドルの写真集の撮影さながらだ。
スタジオの壁の1面がまるごとスクリーンになっていて、背景も草原風、浜辺風、古城の一室風など自在に変更できるとあっては、もはや笑うしかない。
「ふわぁ〜、ステキですわ、ちはやさん」
「ちはやちゃん、カワイイよー」
ちはやとしても、親友ふたりの称賛が嬉しくないわけではなかったが……。
「最後のコレって、むしろコスプレじゃないかなぁ?」
お姫様風ドレス姿のちはやの呟きを聞きつけたシャミーが反論する。
「あら、でも、ちはやちゃん、実際にそういうドレスを着て出掛けるパーティーもあるのよ? ねぇ、ククル」
「ええ、わたくしも、少しデザインは違いますけど、似たようなドレスは持ってますわ」
「ねぇ〜♪」と母娘が揃って頷き合う様子に、「うわ、ぶるじょあだ」とコテコテの庶民であるちはやと秋枝は苦笑いする。
もっとも、ちはや自身、鏡に映る姿を見ていると、そこにいるレディがほかならぬ自分だとはとても思えないのだが……。
- 92 :
- ふと気づくと、シャミーの元にククルと秋枝が集まって何やら内緒話をしている。
「──おもしろそうね♪ いいわ、すぐに用意してらっしゃい」
いつもニコやかなシャミーが、より一層の笑みを浮かべて娘とその友人に向かって頷きかけ、ちはやにいったん休憩を告げる。
スツールに腰掛け、メイドさんから渡された冷たいレモネネードのグラスに口をつけながら、「何だろ?」と首を傾げるちはやだったが、その疑問はすぐに氷塊した。
いったん姿を消していた秋枝とククルが戻って来たからだ──しかも、片や秋枝は田川邸の使用人服とは異なるクラシカルな深緑色のメイドさん姿、片やククルは「ベルバラ」あたりで出てきそうな華麗な剣士の衣装に着替えて。
「も、もしかして……」
チラリと視線を向けても、この場を仕切るシャミーはニッコリ微笑むばかり。
──もちろん、ちはやが「宮廷ドラマ風アドリブ寸劇」に付き合わされたことは言うまでもない。
その後も、ロリータ色の強いピンクのネグリジェや丈が思い切り短く随所をレースで飾られたアレンジ浴衣など、何種類もの衣装を着せ替えられ、写真をしこたま撮られたのち、ようやく「第一回ちはやちゃん撮影会」はお開きとなった。
「だ、第一回って、またつぎがあるの!?」
「わたしたちとしては、あると嬉しいわ。ね、ククル、秋枝ちゃん?」
「……勘弁してください」
大きく頷く親友達を見て、orzな姿勢でガックリうなだれるちはや。
「安心して。ちはやちゃんの写真は、勝手に雑誌やwebに掲載したりしないわ。仮に載せるときも、ちゃんと事前に許可はとるから。ね?」
一般公開される恐れがないのは確かに朗報だが、それ以前の問題だ。ここで下手なコトを言うと、絶対馨に怒られるだろう。
「でも、なんだかんだ言って、ちはやちゃんも結構ノってたじゃん」
「そ、それは……」
確かに、周囲の雰囲気にアテられて、いつの間にかノリノリでポーズとったりファインダーに微笑みかけたりといった真似をしていたので、ちはやとしても強く秋枝に反論できなかった。
- 93 :
- 元の私服に戻って遅めの午後のお茶と談笑を楽しんだのち、今回の訪問はお開きとなった。
帰る間際にククルの母からふたりに「今日つきあってもらったお礼」と言うことで、駅前のホテルに併設されたレジャー施設の無料利用券を多めに貰ったので、
早速明日の日曜に3人で行ってみることにする。
「小学生だけだと心配」ということで、ククル付きメイドの睦月さんが付き添ってくれることになった。
家に帰って、ちはやは家族にそのことを告げた。両親は理解してくれたものの、「兄」の馨から「人が私試験勉強で苦しんでる時に! モゲロ!!」という視線が飛んで来たのは無理もなかろう。
結局、「夏休みに千剣破が友人達と海に行く際、かおるたちも同行させる」という条件で、何とか機嫌を直してもらった。
『ふむ。水遊びか……しかし、チハヤよ。汝に水難の相が出ておるぞ?』
「えぇ〜、ヤダなぁ。もしかしてプールでおぼれたりするの?」
せっかく泳げるようになったのにィ……と、しおれるちはや。
その様子は、まるっきり、元気印な小六の女の子そのものだ──このコ、自分が本当は16歳の男子だという自覚は残っているのだろうか?
『よし、チハヤよ。我もつきあってやろう』
「え? ナミってウチの家から離れられるの?」
『我は家そのものではなく武内家の血筋にくくられているのだ。汝やカオルの行く場所に同行するなら、なんら問題ない』
「……で、本音は?」
『たまには我も水辺でのんびり羽を伸ばしたい……って、こりゃ、何わ言わせるか、カオル!』
「ははは、ごめんごめん。でも、まぁ、ナミには色々お世話になってるし、そのくらいはいいと思うけど」
「うん、そーだよ!」
「あいにく、僕は試験勉強で同行できないから、ちぃちゃんの面倒見るのを、お願いしていいかな?」
『ふ、ふんッ! カオルがそこまでに言うなら、一緒に行ってやらぬでもない』
と、ツンデレ風味なナミの言葉で、その場はうまくまとまったのだった。
そして、翌朝早くに「誰か」に起こされたちはやは、眠い目をこすりながらベッドの上に起き上がり、起こしに来た人物を見て硬直する。
「もしかして……な、ナミぃ!?」
「うむ、言うまでもなかろう」
いや、ちゃんと答えてほしかった。なぜなら、目の前のいる今のナミは、ちはやより心持ち背が高く、18歳前後のごく普通の少女に見える姿をしていたからだ。
「ナミって人間の姿にもなれたんだ……」
「この程度、お茶の子さいさいよ。姿を隠して見守ることも考えたが、それではとっさの対処に遅れる可能性があるからの」
「え、でもお父さん達は……」
「案ずるな。認識を歪めて、我は「夏休みだからこの家に遊びに来ている親戚の娘」ということにしてある。コレで堂々と付き添いができるであろう?」
- 94 :
- その後のナミの対応は鮮やかなものだった。
武内家の両親とごく自然に会話をこなすのはもちろん、リムジンで迎えに来た田川家の使用人たちにも礼儀正しく「ちはやの年上のイトコ・御久那美果」として対応し、信用を得る。とくに、ククルからは「美果お姉さま」と懐かれたようだ。
秋枝はすでにクルマに乗っていたので、リムジンは一路ホテルへと向かった。
ホテル・バビロンの、プールを中心とするレジャー施設は、おおむね満足のいくものであったと言ってもよいだろう。
プール自体が広く新しいうえ、高級ホテルに属する場所だけあって人の数はさほど多くなく、また周囲にはデッキチェアなどの休息場所も多めに設けられている。
「まぁ、ちはやさん、大人っぽいですね〜」
「いやいや、ぼくなんか全然。ククルちゃんこそセクシーだよ」
ちはやはヘソ出しキャミソール風のトップとデニムのホットパンツ風ボトムを組み合わせたタンキニ、ククルの方は、かなり布面積を冒険した紫色のビキニだ。
「ぼくは全然胸ないからビキニは無理なんだよね。羨ましいなぁ」
そう言って、ククルの12歳とは思えぬ豊かな胸の膨らみに羨望の視線を向けるちはやからは、もはや自分が本当は男であるという自覚はカケラも見られない──いろいろと手遅れかも。
「ゴメーン、遅くなったぁ」
やや遅れて更衣室から出て来た秋枝を見たふたりは異口同音に呟く。
「「あら、かわいい」」
秋枝の水着は、ピンクの地に白の水玉の入ったワンピース(スカート付き)という子どもっぽい……もとい、誠に小学生らしい可愛らしい代物だった。
「あたしがフツーなの! 12歳なのにモデル体型とか、ぷち巨乳とかの方が、規格外なんだから〜!」
プリプリ怒りながら地の文にツッコむ秋枝を、まぁまぁとふたりがなだめる。
シンプルな黒のワンピース水着の睦月はともかく、ナミ……じゃなくて美果が、場違いな格好(海女さん姿とか潜水服とか)で来ないか密かに心配していたちはやだが、ごく普通の白のビキニ(パレオ付き)だったため、ひと安心。
(心配するな。伊達に毎日神棚からてれびは見ておらん!)
小声で囁く美果(ナミ)に、それもそうかと、ちはやも納得する──が、神様がそんなに俗っぽくていいのだろうか?
3人娘たちは、水のかけっこをしたり、無事泳げるようになったちはやの腕前を見るべく25メートル競泳したり、浮輪やエアマットで水に浮かんでのんびりしたりと、夏の休日を思い切り堪能した。
ナミが言及していた「水難」も、「更衣室に向かう途中で、プールサイドを通る時に起きた地震で足を滑らせてプールに落ちる」という、笑い話レベルで済んだ。
当然びしょびしょになったが、足がつって溺れたりケガしたりすることを思えば安い代償だ。
- 95 :
- 午後3時過ぎ。着替えてリムジンに乗……ろうとしたところで、不意に美果の顔が青ざめ、小声でちはやに囁きかける。
(すまぬ。どうやら、我はしくじったらしい)
「え?」と聞き返す前に、美果は「買う物があるから」と駅前商店街へと消えて行った。
狐につままれたような思いのまま、それでもリムジンで自宅まで送ってもらったちはやだったが、家の前に赤いクルマ──消防車が止まっていることにギョッとする。
慌てて家に掛け込むちはや。
家にいた両親の説明によれば、どうやら小さなボヤが起こったらしい。幸い発見が早かったため、すぐに消し止められたのでたいした被害はなかったのだが……。
「エッ、神棚が?」
「そうなのよ。どうも買い物に行く前、ロウソクを消し忘れていたのが出火の原因みたいで……」
-8話につづく-
──────────────────
#ようやっとココまで来ました! 次回が最終回。しかし、今回も前後編に二分割するべきだったかも。
#前スレの「あらすじ」読んでたら気付いた人がいるかもしれませんが、実は本作の馨(つまり千剣破)は、「替え玉お断り」の日輪勝貴と同じ高校に通っていたり。
もっとも、この話の「日輪先輩」は高校2年になっているので、この時点で既に妹の香月と入れ替わっているワケですがw
- 96 :
- #ボヤを消したのは2階の自室で昼寝していた馨。夢の中でナミに叩き起こされ、消火器で消し止めたので、大事には至らず(ただし神棚は無残な姿に)。消防車は近所の人の通報で来ました。
#エピローグ、と言うには少々ハンパかも。
---------------------------------
『泳げ、チハヤちゃん!!』
最終話)
混乱するちはやにも、美果──ナミが突然別行動をとったのは、神棚が焼失したことが原因だろうとは察せられた。
あのあと、落ち着いたところで「兄」の馨とふたりで話し合ったのだが、馨いわく、神棚がなくなったことで須久那御守が現世に顕現・干渉する力を失ったのではないか、とのこと。
「そ、それじゃあ、ぼくらに掛っているこの術は……」
「さて、ね。可能性としては3つ程考えられるかな。
ひとつは、「術者がいなくなったことで、間もなく解ける」。もっとも、こうしてナミが消えてから数時間経つけど、僕らの身長に変化がないことからして、その可能性は低そうだね。
ふたつ目は、「術者がいなくなったことで、緩やかに効力を失って、徐々に解ける」。確かにありそうな話だけど、具体的にどれくらいの時間がかかるかわからないから厄介だね。認識が人によってバラバラになっても困るし。
そしてみっつ目は──」
「「解除するひとがいなくなったから解けない」?」
「Exactry(そのとおり)!」
馨は、やれやれと肩をすくめ、ちはやの頭は一瞬真っ白になった。
3つの仮説のどれが一番真実に近いのかは、その晩すぐに答えが出た。
悶々としつつも疲れから眠りについたちはやの夢の中で、ナミが声だけで話し掛けてきたのだ。
昼間ちはや達と別れた直後に、ナミは天界にいる本体・少彦名尊(スクナビコナ)の元に呼び戻され、きつい叱責を受けたらしい。
いわく、「端くれとは言え神の一員が、興味本位でヒョイヒョイ出歩いて、挙句に自分の「家」であり「社」とも言える場所を守り損ねるとは何事か!」……とのこと。
当面は、人間界で言う座敷牢のような場所に缶詰になって謹慎。また、謹慎が解けても「社」である神棚が作り直されるまではコチラに戻って来れない。
『謹慎期間に自体も不明じゃが、少なくとも1年より短いということはないだろうの』
- 97 :
- 「そうなんだ……あの、それでぼくらに掛った術なんだけど」
『ふむ。あの術は、本来は術者である我が「解けよ!」と念じるだけで、簡単に解けるはずじゃ──本来なら、な』
「え!?」
『我も事前に注意しておかなんだから非はあるが……。チハヤよ、汝は学校の師に術のことを明かしてしまったのであったな?』
「!」
『おまけに、あれ以来、本来の「千剣破」としての自覚を持つこともなく、女子としての暮らしに馴染み、流されておったであろう』
「う……」
『おかげで、世界の認識の一部がズレて術が定着──いや固定化されてしまっておる。この状態で以前の状態に戻すには、新たに逆の術を掛け直すしかないのだが……』
「が?」
『先刻から言うておるとおり、我は当分動けぬ。気の毒じゃが、汝らの立場は当分──あるいは一生そのままじゃ』
* * *
翌朝早くに目を覚ましたちはやは、兄を起こしてナミから教えられた内容を馨に告げる。
「なるほど……」
しばし腕組みして考え込んでいた馨だが、1分と経たないうちに「ま、仕方ないよね」とアッサリ思考を放棄する。
「ちょ、兄さん!?」
「いや、だってこんなオカルトがらみの事柄、僕らの手に負えないだろ? そもそも、まがりなりにも神様の掛けた術なんだし」
確かにそこらの巫女さんやお坊さん、霊能者などにどうにか出来るかは大いに疑問だ。
「う……で、でも、馨兄さんはソレでいいの?」
「何が?」
「何がって……これからとうぶん、ヘタしたら一生、男の人として生きないといけないんだよ!?」
「いや、僕は、それほど気にしてないけどね」
- 98 :
- 「…………へ?」
ちはやは一瞬目が点になったが、気を取り直して幾分真面目に問いかける。
「馨兄さんは──ううん、かおるは、それで本当にいいの?」
「ああ、もちろん。知っての通り、もともと「ボク」は女の子らしい振る舞いや習慣があんまり好きじゃなかったからね。だからこそ、「お兄ちゃん」の提案に乗ってみたんだ」
それは、ちはや──いや、千剣破も理解していた。
「無論、僕だって、最初はずっとこのままでいようなんて思って無かったよ? 適当に何日か男子高校生気分を味わったら、また元に戻って、秋枝ちゃんやククルちゃん達とおとなはしく小学生生活を送るのが筋だ、って考えてた。
──でも、ダメだね。一度「自由」と「解放」という名の蜜の味を知ってしまったら、自分から進んで、窮屈な檻に戻りたいなんて思えなくなる」
アルカイックな笑みを浮かべる馨の姿が、なぜか異様に大きさと迫力をもって、ほぼ同じ体格のはずのちはやの目に映った。
「そんな……」
「おや、キミだって同じ気持ちなんじゃないかい、ちぃちゃん?」
熱に浮かされたような目で己が瞳を覗き込まれて、ちはやは居心地悪げにたじろぐ。まるで、自らの心の奥底の封じた欲望を見透かされたような気がしたのだ。
「ほ、ぼくは……」
「悩むことはないよ。そもそも、ナミちゃんが戻って来てくれなければ元に戻ることはできないんだ。それまで最低でも一年以上かかるんだよ? なら、今の立場を受け入れて楽しく暮らすことに、何も不都合はないと思うけどね」
「…………」
「なに、神棚を修繕して、ナミが帰って来るまでの話さ。彼女が戻って来たら、僕らふたりが元の立場に戻りたいと願えば、すぐに戻してくれるはずさ」
まるで地獄のメフィストフェレスが乗り移ったかの如き弁舌で、馨は「妹」の心を巧みに望む方向へと誘導する。
「そう……そうだよね。ナミが帰って来たら、戻してもらえばいいんだもんね」
それにちはやが簡単に乗ってしまうのは、「彼女」の単純(すなお)さ故か、あるいは潜在的にはすでに同じ気持ちだからか。
かくして、武内家の兄と妹は、条件付きながら半永久的に取り換えたその立場を享受することとなったのだった。
* * *
武内家のボヤ騒ぎからおよそ1年の時が流れ、季節は再び夏を迎えていた。
最低一年(そしておそらくそれ以上の期間)は戻れないという事実を受け入れた武内ちはやは、少しずつだが女の子らしい仕草や趣味を身に着けていくよう努力しだした。
さらに、受験勉強にも力を入れ始めメキメキと学力を上げていく。元高校生とはいえ、中高時代の学習知識の大半は兄の馨に譲り渡しているため、テストの点が上がったのは、まぎれもなくちはやの努力の賜物だ。
年末を迎える頃には、担任の天迫星乃から、都内の名門校・星河丘学園の受験を勧められるまでになり、受験の結果、親友の田川ククルともども見事に合格。桜庭小学校を卒業後、晴れて中等部に通うようになっていた。
残念ながら紅緒秋枝とは学校が別れてしまったが、今でも休日などは互いの家に仲良く遊びに行くなど三人の友誼は続いている。
- 99 :
- 一方、武内馨の方は特に変わった様子もなく、マイペースに男子高校生生活をエンジョイしている……と思ったら、いつの間にか彼女を作っていた。
相手は、もちろんかつて千剣破が憧れていた桐生院菜緒……ではなく、「いいんちょ」こと舘川燐だ。
馨、長谷部友成、古賀龍司の「三馬鹿トリオ」の暴走を見逃せず、あれこれ世話を焼いてるうちに、(3人の中では)比較的常識人の馨と行動を共にすることが多くなり、そのままくっついてしまったらしい。
日輪勝貴率いるバードマン研究所にも正式に入部し、人力飛行機の製作を手伝いつつ、「正パイロット候補」として足腰のトレーニングにも励んでいる。今年は、ようやく実用に耐えうるマシンが完成したため、大会への参加も決まっており、日に日にテンションが高まるばかりだ。
そして……肝心の神棚だが、つい先日、梅雨明けの頃にようやく再建された。もっとも、まだナミの謹慎は解けていなようで、再建がなった日の晩のちはやの夢に、「まだ2、3年かかりそう」と連絡してきた。
今でさえ、ほとんど昔の立場を思い出すことは皆無に等しいのに、その頃になれば、ふたりとも完全に戻る気はなくなっているだろう。あるいは、それを見越して、ナミはワザと帰って来ないのかもしれなかった。
『すぐ傍で見守れなくなったのは残念じゃが──後悔はしておらぬよ。我が代々見守りし武内の血筋、その中でも稀有な、我を友と遇する者らを望むように生きさせてやることができたのじゃからな』
「ちはや〜、田川さんのクルマが、もういらっしゃってるわよー」
「はーい、今行くぅー!」
パタパタと制服のスカートを翻しつつ、ククルの家のリムジンに乗り込むちはや。「ちはやさんの家は通り道ですし、せっかくなので一緒にいきましょう」というククルの提案に甘えて、朝は送りのクルマに同乗させてもらっているのだ。
(ちなみに、帰りの時間は部活などで不定なので、ククル共々電車で帰っている)
「ごめん、お待たせ、ククルちゃん」
「いえいえ、道路も混んでいないようですし、まだ時間はありますから。それでは、鷲尾さん、出してください」
リムジンが滑るようにスタートし、学園に着くまでの1時間足らず、ふたりの少女は車内でおしゃべりを楽しむ。
「そう言えば、母がそろそろ秋物のモデルをちはやさんにして欲しいと申しておりましたけど」
「え〜、モデルならククルちゃんでも十分じゃない?」
「わたくしは見ての通り、あまり背丈がありませんので。ちはやさんなら、ハイティーン向けの衣装も十分着こなせるでしょう?」
「それって、喜んでいいコトなの? でも、おばさまには色々お世話になってるからなぁ……う゛ー、わかった。今度の土曜日にお邪魔するって言っといて」
「はい、承りました」
優しい守り神様の残した「加護」のもと、武内ちはやは、今日も素敵なJCライフを満喫するのだった。
-おわり-
────────────
#以上、終盤駆け足気味ですが、「泳げ、チハヤちゃん!!」終了でございます。
#最後まで目を通してくださった皆さんありがとうございます。
#これを機に私は、しばらくこのスレへの投下を控え、不義理してる別スレの方を回ってきます。近々、ククルちゃんの両親の昔話あたりを人外スレに投下する予定。
#無論、しばらくしたら帰って来る所存。それまでこのスレが栄えていますよーに。
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