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2013年01月エロパロ142: 少女・女性が化物に捕食されちゃうスレ6 (449) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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少女・女性が化物に捕食されちゃうスレ6


1 :2011/11/05 〜 最終レス :2012/12/30
オレは女の子(女性)が化け物に捕まって、いろいろ弄繰り回された後に食べられちゃうよー
てなシーンにすごく萌えるわけですが・・・
皆さん、こんなの好きな人いませんかね??
話を書いてみたり、そういうサイトを教えあいませんか?

※SS投下の際の諸注意
 ・元の作品:オリジナル/パロディ(キャラ・世界観のみの場合含む)
 ・捕食方法:噛みつき・丸呑み・体液吸出・咀嚼・溶解吸収etc...
 ・他注釈 :特に凄惨な表現を含むなど、注意が必要と思われる場合
以上を冒頭に明記することを推奨します
男性が捕食されるシチュエーションはNGではありませんが、
このスレでは
『女の子(女性)が化け物によって(嬲られ犯された末に)捕食される』
がメインです
 ・ラミア、リリス、サキュバスなどに捕食要素を追加して男女両方を襲う
 ・男女混成のチームを丸ごと、あるいは順に捕食していく
などの工夫で男性が捕食される状況を含むものはOKです
 ・ヒトが人魚、妖精などを(嬲る、犯す)食うのは変化系としてOKです
 ・単にヒトがヒトを食う(ただのカニバリズム)ものはスレ違いです

初代  ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1125051013/
その2 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147338907/
その3 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1182796046/
その4 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1217963873/
その5 ttp://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1263460373/l50
関連スレ
◆女性に捕食されるスレ◆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1213114446/

その3スレ>>804氏が作ったWiki (補完等、協力お願いします!)
http://www11.atwiki.jp/hosyoku/

2 :
お、よかった立てられた
6年以上続くこのスレのんびりこっそり楽しんで行きましょう。

3 :
即回避

4 :
支援

5 :
私怨

6 :
支援

7 :
ロリで捕食読みたい

8 :
30まで伸ばしておきたいんだ

9 :
保守

10 :
少女たちが恐怖にまみれながら捕食される展開もいいけど
少女達が自分の意思で自ら食べられに行くって展開もいいものだよね?

11 :
ミ・д・ミ

12 :
今忙しいけどそのうち書くよ

13 :
ほほ

14 :
油断すると落ちる

15 :
落ちればいいよ。

16 :
ご協力あざす

17 :
土曜!

18 :
釣り餌にされて魚に食われるとか。

19 :
みんなは、少女がさっくり食べられるのと
じっくり食べられるのどっちが好み?

20 :
苦悶の表情みたいからじっくりかな
ヒロインピンチ好きだし

21 :
じっくりだね
釣り餌もいいなあ
サメとかタコとかその他の海のモンスターとか

22 :


23 :


24 :
ッハ!

25 :
新スレが落ちないように、一年半ぐらい前に書きかけだったのを最後まで書きました。
最初から貼りますね。
俺は人間からは魔獣と呼ばれる存在だ。
人間たちは俺たちのことを、野蛮で文化のかけらも無い存在だと
思ってるようだが、実はそんなことは無いんだぜ。
俺には友達だっているし、趣味のグルメだって楽しむ。
魔獣の生活は思っている以上に充実しているんだぜ。
そうそう、今日は虎獣人のやつに食事に招待されたんだ。
俺はいわゆる狼獣人と呼ばれる種族だな。
どうだい、種族が違えど俺たちは仲良くやっているんだぜ。
同種族でしあう人間がよくぞ俺たちのことを
野蛮などといっていられるもんだ。
まあそんなことはいいんだ。どうやら奴は今回は特別の
ご馳走を用意してくれてるらしい。俺はわくわくしながら
あえて3日飯を抜いてきたんだ。空腹は最大の調味料だというだろう?
せっかく用意してくれたご馳走、美味しく食べなくちゃな。
ということで、俺は天気のいい月夜の晩、あいつの家にでかけたんだ。
虎のやつの家は気持ちのいい洞窟の中にある。
カビと泥の香りに包まれた、ところどころに白骨の散らばった
なかなかおしゃれな家だ。
おおいたいた。相変わらず元気そうだ。こいつはグルメ仲間で
いい食材があったらお互い分けたり美味しく食べる方法を
話し合ったりしてる。いい関係だ。
「おお、よく来たな。まあ座ってくれよ」
虎の家の食卓は洞窟の広い部屋にある、特別なホールだ。やはりこだわってるな。
ジビカリゴケで明るく、真ん中には大きな岩のテーブルが置いてある。
「わざわざ呼んでくれてありがとうな。ご馳走を分けてくれて嬉しいぜ」
「ご馳走は二人で食べてこそ美味しいだろう?お前がこの前もって着てくれた
 火竜の尾もなかなかの珍味だった」
一つのご馳走をわざわざ呼んでまで分け合う。俺たち仲が良いだろう?
だからこそいろんな美味しいものを味わうことができるんだ。協力って奴だね。
「早速だけど食事にしてくれよ。俺はもう3日飯を抜いているんでぺこぺこなんだ。」
「奇遇だな、俺もそうしてるんだ。早速つれてくるから待っててくれよ」
つれて来るということは、生きているというわけだ。やはり生きたまま食うのが
最高だね。

26 :
そう言って虎のやつが奥から連れてきたのは、ニンゲンの少女だった。
「あう… あう…」と言葉にならない声を上げながら涙目でおびえる姿、そそるねえ。
いいね。俺もニンゲンの肉は大好物だ。しかも女で子供となるとまさに最高級だ。
「どうだい美味そうだろ。貴族の馬車を襲ったときに捕まえたんだ」
そのニンゲンは貴族という奴なのだろう。よく手入れされた長い亜麻色の髪がさらさらと綺麗で、
労働をしていない手足がやわらかくすべすべなままだ。
そして一番の特徴は、まだ胸が膨らみかけるかどうかという歳に見えるのに、乳房はよく発達して
大人のニンゲンでもめったなことじゃ見ないだろうという肉付きになっている。
おそらく、虎の魔術で育てたのだろう。虎のやつは見た目と違い意外とそういう魔術の
使える変わったやつなのだ。
ご馳走をテーブルに正座させ、それを向かい合ってはさむ形で座る。
本当に美味そうな娘だ。ニンゲンの子供は美味いのだが食べるところが少ない。
せいぜい食べ応えのあるのは柔らかい尻肉だが、それでも満足とまでは行かない。
だからといってただ太らせたのでは味が落ちてしまうのだ。
だからこそ魔術で育てるというこの考えだったのだろう。
尻にもよく脂の乗った大人の女みたいにぷりっとしてるし、
メスの頭より大きくなった乳肉も十分にかぶりつけるほどの
大きさがある。おお、見ているだけで涎が零れてきた。
零れた涎が石のテーブルにぽたぽたと染みを作る。向かい側のあいつも同じのようだ。

------
その日は町に買い物に行く帰りの馬車。少女は街での買い物の帰りだった。
突然従者はされ、馬車の扉はこじ開けられた。そこには2メートルを超える恐ろしい二本足の
虎がいた。魔獣がこの世に居ることは聞いていたけれど、まさかこんな街の近くで
襲われるなんて…!
それも狙いは金品でもなく、その少女の体そのものであったのだ。
洞窟の奥に閉じ込められ、日に日に膨らんでいく自分の体を見て、少女は魔物の目的に
絶望し戦慄するしかなかったのだ。
そして今食卓に乗せられ、左右にはさんだ魔獣が自分を見て涎をたらしている。
その事実に足は固まり、体は震え、涙が溢れ声も言葉にならなかった。
「ひ、ひっく パ…パパに言えば お金とか なんでも用意してくれるから…」
「なんでもしますから…!え、えっぐお願いですこ、さないで 食べないで…」
------

27 :
そうだなあ、お前が食料以上の価値が有るっていうんなら考えてやらなくもないぞ」
虎の奴が心にもないことを言う。いじわるなやつだとは思ったが余興も面白いな。
「そうだな、踊りを見せてみろ」
そう虎のやつが命令すると、ニンゲンはふるえる脚で食卓の上で踊りだす。
貴族の嗜みというやつなのか?胸は重そうだし裸だがその踊りには何処か上品ってやつだ。
だがそんなものを見たって面白くもなんともねえ。
「そんな上品に踊ったっておもしろくもねえ、オラっもっと腰を突き出せ!胸をゆらせ!」
そんな下品な踊りなど踊ったことないだろう、ニンゲンは無理やり
半泣きになりながらくねくねと動く。
上半身が激しく動く度、たっぷりとした乳肉が左右にプルンプルンと揺れ、
その肌のはりと肉の柔らかさを主張する。
脚を開いて動けばしみの無い綺麗な肌と
むちむちとむしゃぶりつきたくなるような内ももを見せつける。
小さいながらも脂の乗った尻を鼻先で振りまわす。うひょお、齧り付きてえ。
なるほど、虎の奴、肉自身に食欲を煽らせるなんて面白い事を考えやがる。
もしかしたら自分の魔術の出来をアピールさせたかったのかもしれないが、
その効果はてきめんだ。俺も眺めているうちに思わず目の前で揺れる美味そうな肉に
涎がついついたれてきてしまった。
「座れ!」
虎の一声にびくっとすると、「ごめんなさい…ごめんなさい…」と小さい声でつぶやきながら
へなへなと食卓の上に座る。
俺と虎のやつが同時に舌なめずりをする。言葉をかわさずとも、最初に食べるところは
決まったようだ。
俺は片手でその乳房を掴むと、改めて柔らかさを確認する。
程よい肌のハリに爪を立てたら気持ちよさそうだが、そこは我慢して口に咥える。
まだ牙は立てずにむしゃぶりつく。むちむちとした若い肌から、
激しく踊ったせいだろう、舌にわずかに汗の味がしみる。
俺の口は結構大きい方だと思っていたのだが、それでもこの乳は口に入り切らない。
乳の大きい、大人の人間の女も何回か食ったことがあるが、それでもここまでは大きくはなかった。
「あ…あ…あぅ…」人間がなにか喋ろうとするがもう言葉にならない。
目の前の同じ様に口に乳を含んだ虎のやつと目が合う。
にまあっとヤツの目が笑ったその時、俺たちは一緒に顎に力を込めた。

28 :
鋭い牙に柔らかい肉球が形を変え、限界まで潰れると、あっという間に牙の形に
肉はかじり取られた。
俺は乳首まわりを、虎のやつは横からかじりとっている。
ぐちゃぐちゃと音を立てながら口の中の肉を咀嚼する。
美味い。今まで食べたことのない旨さに正直驚いた。
人間の子供は美味いのだが食べる所が少ないし、脂の乗ってる部分も多くない。
これだけ肉付きのいい若い肉は魔術だからこそ出せる味だろう。
舌の上でとろける旨味脂が、空腹な胃に染み渡るととても幸せだ。
俺は夢中になって残りの乳肉にむしゃぶりつく。
目の前の虎も美味そうに、ぐちゃぐちゃと下品な音を立てながら、口を血と脂に
まみれさせながら夢中でかじりついている。
悲鳴は聞こえたかは覚えていない。
大きな肉玉も、二人がかりで食ったもんだからあっという間になくなってしまった。
胸が平らになった人間の娘が泣きながら放心している。
胸骨まで見えているんだがあまり血を失ってるようには見えない。
これも虎の魔術だろうか。痛みも抑えているのかどうかはわからねえ。
「も、もうたべない…で…」
「そうだなあ、じゃあ尻をこっちに向けろ」
どう見てもそれは食ってくれと言わんばかりの行為だが、
今の人間の娘には逆らうという選択肢はない。
「は、はぃ…」
娘は四つん這いになると尻をこっちに向ける。
さすがに尻は人間の歳相応レベルと大差はないが、
それでもなかなか脂がのって肉々しい。
尻肉の真ん中にある性器もぷりっと膨らんでいて、
舌触りがよさそうだ。毛もなく、爪の先で柔らかい肉餅を広げると
内蔵のようなピンク色がなんとも食欲をそそる。
「これも半分ずつだぞ」
「わかってるって、」
このままでは食べにくいので、二人で足首を掴み
脚をひろげさせる。
あぁ〜…などとニンゲンが声にならない叫びを上げる。
さすがに尻だとお互いの顔がくっついてしまうので、
先に虎の方から片方の尻にかぶりついた。ぷるんと震え綺麗な形をした肉が抉り取られる。
続いて俺も食いつく。柔らかいので
顎の力だけで食いちぎることができる。
咀嚼すると、先ほどの乳肉と違ってほどよい顎への抵抗がある。
程良くついた木目やかな筋肉が肉の旨味を出したと思えば
たっぷりとジューシーな肉汁が口の中に広がる。
ああうめえ。こいつはたまらねえ旨さだ。

29 :
隣の虎はもう尻肉を堪能し終えたようで、脚を味わおうと根元から引き抜きにかかっていた。
「よう虎、お前は乳と尻どっちが美味かったよお」
「甲乙付けがたいぜ。どっちもいい旨さがある。だがこの洗練された乳房の脂肪の甘みと
 肉の柔らかさはニンゲンのメスならではだな」
「そうか。俺はこの尻も素晴らしい。こんな丸くてでっぷりとした肉の形だなんて
 まるで俺達に食ってくれと言わんばかりだ。見た目の旨さも味も最高さ」
ぼきりと脚をもいだ虎が、フライドチキンにかぶり付くように太腿に牙を立てる。
「この脚も美味いぜ。むちむちと牙を押し返す食感がとてもいい」
むしゃりと虎が太腿から大きな肉の塊を食いちぎると、大腿骨が顕になった。
その頃にはニンゲンは生きているのかんでいるのかはわからないが大人しくなっていた。
その後俺たちは脚の肉も平らげ、デザートに性器周りの肉も半分こして食べた。
下腹部のつるりとした肉はまるで刺身のように味わい深かったし、
まるで餅のような大陰唇の肉は舌の上で震えるような弾力があって、十分に舌触りを
楽しんでから楽しく噛み潰した。
ここらで俺達も満腹になったので、
残った上半身の肉と内蔵もろもろは明日食うことにする。
内蔵はまた違った旨みがあるから、今度は俺の魔術で料理してみるのもいいな。
「うまかったなあ虎よ。お前の魔術の使い方は最高だぜ。こんな肉を食える俺は幸せだ。」
「おお、またいろんな人間を捕まえてこようぜ。」

------
…翌日、狼のやつは魔術でニンゲンの残りを素晴らしい料理にしてくれた。
これがあるから狼のやつを呼ぶ価値があるってものだ。
二人で満足すると、再度の食事を約束し、狼は帰っていった。
「実はもう一匹捕まえてきてるんだがな…」
狼のやつには黙ってたが、ニンゲンのクルマにはもう一人美味そうな奴が乗っていた。
まだ毛も生えていないオスガキだ。あのメスガキと姉弟か双子かだったのだろうか。
狼奴はどういうわけか人間のオスの肉は嫌うんだ。
このオスもじっくりと魔術での改造を終わらせてある。
「雌獅子の奴がたしかオスガキが好物だとか言っていたな…
 あいつも確か面白い魔術を使えるらしい。こんどはヤツを食事に誘ってみるか」
次の食事会も楽しみだぜ。

唐突な終わり方ですみませんが勢いで書いて見ました。目標の30レスに微妙に届かなかったので
もし気に入ったら感想でも描いてくださいな

30 :
いいっすね
好きですよ こういう素直な作品b

31 :


32 :


33 :
ここはほとんどオリジナルものばかりだけど
版権もので見たい作品とかシチュエーションとか妄想とかないの

34 :
あるにはある。
しかし書いた所で実際にそのネタが投下されはしないから、言うだけ虚しくなるだけだ。

35 :
ゆるゆりの京子で
ただシチュエーションも全く思いつかないし全く結びつかない!

36 :
まず何に食われたいかからだな

37 :
グロも好きだけど、魔人ブウやセルでソフトなのも読んでみたい

38 :
肉って言う奴がいるはず

39 :
前スレの597の続編を書いてみたらスレが落ちてたのでそのままになってたやつを

うっすらと視界に光が戻る。
ぼんやりとした意識が少しずつ戻っていく
…あれ?あたし…食べられて…
香織は、どうしたわけか誰もが動きを止めた学校の中で人を食べる怪物と遭遇した。
そして、香織は美香とともに逃げまどい、最後には捕まって食べられた。

…じゃあ、食べられてんだ今のあたしは?
そう思いつつ体に違和感を感じながら身を起こすと、目に飛び込んだのは巨大な長い爪をもった手だった。
「あ、目が覚めた。」
声のした方に顔を向け、香織は軽い悲鳴を上げた。
そこにいたのは自分を食べた怪物だったからだ。
「いや…こ…来ないで」
香織は必に手を振り回すが、その手はそれまでの香織のものではなかった。
「落ち着きなさいよ。その手で気づかないの?今のあなたの姿を見せてあげる」
そういって怪物は大きな鏡を香織に見せた。
そこに映っていた香織の姿は、目の前の怪物と同じ姿だった。
「な、何?どういうこと?これ、あたし?」
気が動転したまま必に言葉を紡ぐ香織に隣にいた怪物が声をかける
「あたしも驚いたわよ。だって、食べられたと思ったらこんな姿になってたんですから」
香織は取り留めの付かない思考から戻れないでいた
「あ…あなたは?」
怪物は、香織がうすうす感じていた通りの答えを返した
「あたしは美香よ。ちょっと姿は変わっちゃったけど。」

40 :
それから香織は美香と周囲にいた怪物たちから話を聞いた。
どうやら自分たちがいるのは時が止まった世界であるらしい。
しかし、たまに時を止めた世界の中で動ける人間が現れる。
そんな人もいずれは動きを止めてしまうのだが、そうなると止まった時の中にも元の世界にも戻れない状態になり、
行き場を失った魂が形を持つようになったのが目の前の怪物たち、そして香織や美香の今の姿だということらしい。
「じゃあ、みんな元は人間だったの?」
「そうよ。ちなみにあたしはみのり。あの娘は志穂」
そういって指差す怪物たちは到底そんな名前だったとは思えない姿だった。
「…ま、すぐには信じられないでしょうけど、今のあなたの姿が何よりの証拠よ。」
そういわれると納得するしかない。
「それで、あたしたちはこれからどうなるの?」
「どうもしないわ。あたしたちと同じように過ごすだけよ。それよりそろそろお腹すいてない?」
そういわれたら妙な空腹感があることに気付く。
「じゃあ、これから食事に行きましょう。どこかいいところ知ってる?」
みのりが顔を向ける。
「食事って…」
「もちろんあたしたちの食事は人間の肉よ。特に男女は関係ないの。でも、せっかくだから綺麗な女の子を食べたいじゃない」
香織と美香は顔を見合わせる。
やがて怪物たちが集まってきて、どこの娘を食べるかの話をした挙句、一つの場所が決まり、飛び立っていった。
その後を香織や美香がついていく。
誰に教わったわけでもないのに自然に空を飛べることを驚きながら。

41 :
やがて、怪物たちは美香たちのいた女子高にほど近い学校に降り立つ。
香織の表情に曇ったものがあった。
「じゃ、これからいつも通り各自解散してあの娘たちをいただきましょう」
みのりがそういうのをきっかけに怪物たちが校門から娘たちを食べていく。
「あの…あたしたちも…ですか?」
美香がおずおずと尋ねる。
怪物になった今の姿にはなんとか馴染めた二人だが、今すぐ目の前の人間を食べろと言われても抵抗があった
「そうよ。好きなのを選んで食べちゃいなさい。早い者勝ちだからね」
目の前で談笑している娘から制服をはぎ取りながらみのりは答えた
「あなたたちもあたしたちと同じ体なんだからお腹すいてるはずよ。でも、普通の人間の食事はこの世界にはろくにないし、
あったとしても今のあたしたちの体は受け付けないわ。」
みのりは裸身になった娘を見せつけた。
「その代り、ほら。人間の裸身がとてもおいしそうに見えない?食べたくならない?」
ごくり…
ふたり唾をのむ。
少し前まで自分たちの体でも合った人間の女性の裸身がそこにあった。
中学校だったらしく人間だったころの香織や美香より体つきは幼かった。
みのりは見せつけるようにその裸身を首からかぶりつく。

42 :
噛み千切られた胴体から立ち上る女性のにおいを感じる。
食べたい…しかし…
二人は懸命に食べたい衝動を理性で押さえていた。
まだ人間の女の子だった記憶も怪物に食べられた記憶も新しい二人にとって
今の衝動に負けたら何かが壊れていきそうな気がしていたからだ。
校庭ではすでにあちこちで食いちぎられた女生徒の手足が散らばっていた。
美香の目の前に誰かの下半身が飛び込んできた。
スカートもショーツも引きちぎられて、大きく股を広げた状態で転がってきていた。
それをみて美香の心の何かが壊れた。
「もう…我慢できない…」
それだけを言って美香は放り出された娘の股間にむしゃぶりついた。
初めて食べる女の子の性器と尻の肉の味。
口の中でコリコリとたしかな歯ごたえを感じさせてくれる女陰と膣、そして、まろやかな味わいと柔らかさの尻の肉、
かむたびに広がる若い女性の芳香。
美香は取りつかれたように初めての女の子の味を楽しんでいた。
それをみた香織は後ずさりして走り去っていった。

嫌だ…嫌だ…
あたしは…怪物なんかなじゃない…
そう必で繰り返しながら走っていった。
香織は、そのまま一つの教室に向かって走っていった。
それをみたみのりはあきれたような溜息をつきながら他の娘を物色し始めた。


43 :
香織は教室を探し回って、そこに目当ての人がいないのを確認していた。
すでにあちこちに食い散らされた娘の肉片が転がっていた。
それを食べたい衝動と闘いながら学校内をさがしまわり、更衣室を開けた途端、そこに探し求めていた娘がいた。
「詩織…」
そこにいたのは怪物にわしづかみにされたまま服を引きちぎられて半裸になった妹の姿だった。
「どうしたの?この娘がどうしたの?」
香織は必に訴えた
「お願い、その娘は食べないで。あたしの妹なんです」
しかし、怪物の答えはすげなかった
「と、いわれてもねぇ。この世界じゃ早い者勝ちだし。食べずに残すなんてもったいなくてできないわ。」
そういってから続ける
「そうね、あなたが食べるなら譲ってあげてもいいわ。あなたここに来て初めての食事なんだし」
香織は言葉に詰まった。
「嫌なら食べちゃうわよ。どうする?」
大きく口を開ける怪物。
あの怪物に食べられるのか、それとも…
「あたしが食べます!」
香織はそれだけを言って、妹を引っさらった。
「そう?じゃあ、どうぞ。初めての食事ね。」
香織は目の前の半裸の妹を目の前に生唾をのんだ。
勢いで言っちゃった…
しかし、もう後戻りはできそうになかった。
怪物は香織を面白そうな顔で見ている。
今から…あたし…食べるんだ…詩織を…

44 :
「ごめんなさい…」
そうつぶやくと詩織の足にかぶりつく。
予想より抵抗なく詩織の足は胴体から噛み千切られた
口の中でポロポロにちぎれる足の肉から広がる味わいに自我が消えそうな感覚を覚える。
柔らかいけど、しっかりと詩織の足は香織の牙を受け止めていた。
口の中に広がる味は、今まで経験したことのないものだった。
これが…詩織の味なんだ。
もっと…もっと食べたい。
そう思った。
香織は足を食べつくすと露わになっていた胸にかぶりつき、肋骨についた肉をこそげとり、乳房とともに咀嚼する。
太腿とは違った女の肉の味わいに香織は恍惚とした。
詩織の肉…美味しい。

半ば麻痺した感覚のまま、香織は無我夢中になって詩織をむさぼった
すでに足はもぎ取られ、胸は内臓が見えるほどまで抉られた詩織。
しかし、その顔は平常と変わらないまま姉の変わり果てた姿を見ている。
それに耐えられずに目を下にそらすとスカートから除く股間が見えた。
ゴクリ…

45 :
生唾をのみこむと、香織は詩織のスカートとショーツをはぎ取ると、誘われるように詩織の股間にかぶりついた。
口の中でコリコリと歯ごたえを残しながら噛み切られる陰唇と陰核。
噛むほどに女性の香りが口の中に広がる膣と子宮。
弾力と甘みを伝える尻肉。
あたし、今詩織を食べているんだ。
その実感と不思議な幸福感が心を満たしていた

すると、声が聞こえてきた。
「ねえねえ、この学校にも調理場があったわよ。みんなもここで焼いて食べない?」

変わり果てた香織は、その声に導かれるように妹の残骸を抱きかかえて調理場へ向かった。
細い二の腕に、くびれた無駄のないお腹。
香織は腕の中で姉によって無残に食いちぎられた妹を見下ろしながら、それらが焼かれた時の味を想像して喉をならしていた。
焦げ目をつけながらも肉のうまみが残る二の腕、じゅうじゅう肉汁を垂れ流すお腹。
その中で凝縮したうまみを残しているであろう内臓の味わい。
それらの味を想像しながらうっとりした表情で香織は調理場へ向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
ひとまずこの辺で。
後、前スレ632の続編も書きたいところなので期待せずに。

46 :
素晴らしいね。こんなジャンルだけどいろんなアプローチの仕方があるんだなあ。
続編も期待してます

47 :
先日こんなの書いてみたんだけど、このスレ的にはアリ?
アリならまた書いて今度はここに投下しようと思う。
ttp://novel18.syosetu.com/n2624y/
……なろう民でごめん。

48 :
>>47
久しぶりの丸呑み系だね
もちろんOKだから是非とも次回作があれば投下してください

49 :
>>47
超GJです!
機会があれば是非、また投下してください!

50 :
>>47-48
ありがとー
ちょっとクリスマスを絡めたネタを思い付いたから近々書いてみるよ。
容量次第では>>47のサイトに挙げる事になるかもだけど。

51 :
安価ミス。
>>48-49

52 :
愛液を吸い尽くすしてから捕食するとはなんて変態なんだ
だがそれがいいGJ

53 :
第0話 【クリスマス・イヴ】


 少女は走っていた。延々と続く長い廊下をただひたすらに。
 まるで病院のそれように綺麗な廊下は、床、壁、天井――……全て真っ白に塗られて酷く風景だった。扉も一切見当た
らない。定期的に天井に取り付けられた蛍光灯の光はまだ続いている。出口など見えやせず、遠くに見えるのは水平線の
み。そもそも出口などあるのだろうか。いや、そもそもこんな空間がこの地球上に存在するのだろうか。山々をつなぐト
ンネルをはじめとする屋外ならまだしも、ここは屋内なのだ。都会の地下に何キロメートルも直線状の廊下が存在する事
など、とても信じられなかった。
 信じられなくとも、今少女が走っているのは紛れもなく事実。いくら走ったかは分からないが、両足と心臓が悲鳴を上
げている事から何分も全速力で駆けている事が分かる。少女は全速力で走らなければならなかった。少しでも足を止めれ
ば背後から迫ってくる化け物に玩ばれてされるだけだと、少女は知っていたからだ。
 苦しさ、怖さ、哀しさ、辛さ。それらが複雑に交じり合って目から涙と化して現れる。涙は頬を伝う事なく横に流れ
て少女の髪を濡らした。
 少女の親友は、彼女の目の前で化け物にされた。初めて聞いた人間の断末魔は耳の鼓膜にこびり付いているかのよ
うに彼女の耳に幾度となく繰り返される。
 あっという間だった。二人で仲良くこの廊下を歩いていた時、突然頭上から降ってきた化け物が襲い掛かったのだ。
鬼のような姿をした化け物だ。体長は悠に三メートルはあっただろうか。それは少女の親友を背中から床に力強く押さ
えつけると、尋常ではない力で軽々と肩から両腕を捥ぎ取った。聞いた事のない親友の悲鳴と血飛沫に少女は、目の前
で何が起こっているのか理解できずに目を丸くし、がたがたと震える。化け物はそんな少女を嘲笑うように親友の頭を
持って身体を持ち上げた。両肩から血を噴水のように噴出しながらぶらぶらと揺れる姿は、まさに羽を捥がれた蝶のよ
うだった。
 化け物は絶え間なく涎が垂れ続けている口を開いた。そして親友の乳房に喰らい付いた。絶叫が響き渡る。次の瞬間
には豊かに膨らんだ二つの乳房は化け物の口の中だった。ぐちゃぐちゃと柔らかな肉を噛み潰す音がやけに大きく聞こ
えた。少女はただ声を失い、見ている事しかできなかった。
 親友の身体がぼたりと床に落とされる。乳房があった箇所は鮮血が溢れ、その奥には生々しい赤黒い肉が見える。親
友はこんな状態でもまだ息があった。それに気付いた少女は親友の名前を叫ぼうとする。だが、やはり声は出なかった。
代わりにチョロロ……と水が流れるような音を立てた。少女はあまりの恐ろしさと光景に失禁したのだ。床に黄金色の
液体が水溜りを形成していく。
 最期の瞬間、少女と親友は目が合った。親友の――否、かつて親友だった者の目から既に生気が消えていた。そう、彼
女はもう助からない。まだ化け物は彼女の身体の上に覆い被さっているのだから。
 化け物の口が親友だった者の頭を咥え込むと、高い位置からスイカを落としたような、鈍い音がした。床に突っ伏し
た親友の頭は、そこにある筈の頭はなかった。
 骨と血肉を噛み砕く音を盛大に立てながら、化け物は少女を睨んだ。その目が訴えている事は当然、決まっている。
 次ハオ前ノ番ダ――それに気付いた時、少女はようやく立ち上がると一目散に逃げ出した。濡れたパンツが足を動かす
度に擦れる感触が気持ち悪かったが、それを気にしている余裕などない。
 逃げなければ喰われる。逃げなければされる。だが、少女は分かっていなかった。
 逃げても逃げなくても、待ち受ける結末は無情にも変わりはしないという事実に。

54 :
 ――走り出してから時計の分針が何回動いたのだろう。少女はまだ走る事をやめなかった。相変わらず前は無限回廊の
ように同じ景色が広がっているだけだ。背後から化け物が追ってくるような気配は感じられなかったが、少女は振り返
る勇気がなかった。彼女はただ信じる。この先にきっと出口があって、安全な場所へ逃げられるのだ、と。
 当然、それは適わなかった。カチリ、と何かスイッチが押されたような音がした瞬間、少女が走っていた床が落とし
穴のように開いたのだ。何もない廊下に掴めるような物は何一つない。少女は咄嗟に手を伸ばしたのだが、その手が握
る事ができたのは空気だけだった。
「――いやぁぁぁっ!!?」
 少女は、墜落を覚悟した。にたくないという強い気持ちの反面、それでねるのであればと心の何処かで安堵
した。親友のように長い激痛に苛まれてぬよりも、一瞬の激痛でぬ方が楽なのは明らかだったからだ。
 暗い闇に落ちて行く身体。遠ざかって行く蛍光灯の光。やがて落とし穴のように開いた床が閉じた時、少女の視界は
真っ暗に染まった。それに併せて、少女は生きる事を諦めて目を閉じた。
 その穴はさほど深くなかった。少女の身体は何か柔らかいクッションの上に落ちたため、痛みは殆どなかった。
 え……私、生きてるの――と少女はゆっくりと目を開いた。そこは薄暗い照明があったため、周りの景色を見る事がで
きた。床一面、緑一色だった。サッカーボール程の太さの、長い長い緑色の管。それらが複雑に絡まっているような床
だった。その床は何故か生暖かかった。そう、まるで生物のように。
 少女は立ち上がろうとした。だが立ち上がれなかった。立ち上がろうとして踏ん張った足が管に挟まれ、抜けなくな
ったからだ。足をそこから引き抜こうとしたところで、少女の目の前に赤い大きな花の蕾がぬっと姿を現した。まるで
生物のように動く蕾だった。そして気付いた。床の緑色の管は、この植物の茎だという事に。
「ひ、ぃ……っ!?」
 少女が金切り声を上げたのは他でもない、蕾が開いたからだ。赤い花弁が開いたその奥にあったのは雄蕊や雌蕊の類
ではなく、大きな人間の口だったのだ。その口から舌が伸び、少女の頬を舐め上げた。あまりの気持ち悪さにぞくりと
背中に悪寒が走る。全身の鳥肌が立つ。
 花は――否、食人花の動きが急に活発になる。少女を味見した後、彼女を取り囲むように多くの蕾が姿を現した。上
から、下から、横から――……四方全てからだ。それぞれ異臭を放つ口を開きながら、久しぶりの食事に喉を鳴らす。
「いっ、痛いっ! やめて、離してぇっ!」
 触手のような食人花のゴルフボールほどの小さな茎が何本も少女の身体に絡み付くと、易々と少女の身体を持ち上
げた。彼女は必に身をよじってそれから逃れようとするのだが、それは徒労に終わる。首、両手、腰、両足と拘束さ
れると成す術がない。それでも彼女は身体が動く限り抵抗を続けようとしていた。身体が揺れる度に、古くなったロー
プを引っ張るかのようなギッ、ギィという音を立てる。
「ぎっ!? あ、が……がっ、ぁぐっ、か……っ!?」
 そんな少女を煩わしく思ったのか、食人花は彼女の首に巻き付けた茎に力を入れた。絞め上がる少女の細く華奢な首。
衝撃が直接脳に伝わり、頭の中で首の骨がミシミシと悲鳴を上げる音が響く。呼吸ができないと分かっていても、それ
でも少女の口は開閉を繰り返し空気を少しでも肺に送ろうとする。だが食人花は少女をそうしてすつもりなどなかった。ただ少し弱らせるだけで良かったのだ。そう、抵抗する気力が失われる程に。
「がはっ、はぁっ、がっ、はっ、はっ、げほっ、ひはっ!」
 首に巻き付いた茎が力を弱めると少女は息苦しさから解放される。激しい咳の合間合間に呼吸を繰り返す。そうして
いる間にも食人花は動きを止めない。少女の後ろ――お尻の方に徐に姿を表したのは小さな蕾。花弁を開くと他のそれと
同様に人間の口がある。それは再び花弁を閉じると、更に伸びて少女のスカートの中に潜り込んだ。濡れたパンツの上
から薄っすらと透けて見える割れ目に先端部を擦りつけ始める。

55 :
「やぁっ! やっ、やめて……っ、何する――……っ!!?」
 『何するつもり』と最後まで言い終える事なく、それ以降は絶叫に変わった。スカートの中の蕾はパンツを突き破っ
て少女の膣の中に侵入したのだ。
「あああああっ!! 痛いっ、痛いぃぃぃっ!!」
 じわりと蕾の茎を破瓜の血が伝う。初めての上、全く濡れていない少女の膣に無理矢理侵入したのだ。少女を襲うの
は激痛のみ。そこに快楽などある筈もなかった。膣の中で激しく暴れる蕾。少女は激しい苦痛を訴えて涙を流す。流れ
た涙はただ頬を伝い、やがて落ちて弾ける。
 処女喪失だけで終わるのであればまだ少女は救われただろう。だが、彼女を襲っているのは食人花なのだ。それだけ
で済む筈がなかった。
 生唾を呑んで待ち続けていた他の花達が一斉に動く。それぞれ大口を開けて、二の腕、脹脛、太股に噛み付いた。
「ぎゃあっ!!」
 花達は噛み付いた程度では終わらない。その顎の力は鮫や鰐を遥かに凌ぐのだろう。
 ――ブチッ、ミヂッ、ミヂヂ……ッ、グチャッ、バキッ。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!! ぎひぃっ、ひっ、ぅぁああっ、がぁぁあ゛あ゛あ゛っ!!!」
 半円状にぱっくりと穴が開いた脹脛、噛み千切られた右腕と左足。血が勢い良く吹き出した後は、心臓の鼓動に合わ
せて血が吹き出される。身体の付け根と花の口から飛び出たそれらの断面から白い骨が見えた。二匹の花はわざわざそ
れらを咥えたまま少女の目の前にやって来ると、彼女を嘲笑うかのようにバキボキと盛大に音を立てながら噛み砕き始
めた。かつて自分の物だったそれらが目の前で壊され、消えていく光景に少女は何を思ったのだろう。いや、そもそも
何も思えなかったかもしれない。
 右腕と左足が完全に口に食べられ、噛み砕かれたそれらが食人花の茎を通る頃、少女は激痛のあまり気を失っていた。
そのままぬ事ができれば幸せだった。だが食人花はそうさせない。何しろ、まだ食べられる箇所はいくらでも残って
いるのだから。
 少女の膣内を貪っていた蕾がゆっくりと引き抜かれる。蕾は血で真っ赤に染まっていた。自己防衛のためだろうか、
血とは別のねっとりとした白い液体も付着している。少女の愛液に相違ないだろう。蕾は花弁を閉じたまま器用に長い
下を出すと、花弁の外面に付着したそれらを丁寧に舐め取った。少し綺麗になったその蕾が向かった先は、少女の腹部
だった。蕾は花弁を尖らせ、そして勢いを付けて彼女の腹部に襲い掛かった。
「――がふっ!!?」
 ドスッ、と鈍い音がした。そして少女もその音と別の激痛に失っていた意識を戻してしまった。
 蕾は、少女の腹部に深々と突き刺さっていた。外面は茎が直接突き刺さっているように見える。つまり、蕾の部分は
完全に身体の中に入っていたのだ。
 傷付いた臓器から血が溢れ、逃げ道のない血は胃や食道を逆流して少女の口から次々と飛び出す。

56 :
 ――ズズッ、ズズズズズッ。
 何かを吸うような音が響く。少女は恐る恐る腹部に突き刺さった茎を見た。茎が心臓のようにドクン、ドクンと脈
打ち、それに呼応して赤い液体や肉片が茎の中を流れているのが見えた。腹部の中の蕾が彼女の血と臓器を吸い上げ
ているのだ。
 言葉では決して表せない感覚に、少女の口からはもう悲鳴が出る事はなかった。漏れるのはただ、嗚咽のような掠れた声。
「あ……ぐ…………ぁ……ぅぁ……ぎ、ぁ……が……ぁぁ……っ!」
 拷問とはこのような事を指すのだろうか。少女はまさに生き地獄を味わわされていた。ねるものなら早くにた
かった。早く解放されたかった。何故身体がこんな事になって意識を保てているのか不思議で仕方がなかった。
 ――そして、少女が待ち望んだ終わりの時がやって来る。
 床に蠢いていた太い茎が動いた。道を開けているかのように一箇所に茎が来ないよう動いている。やがて茎の下から
姿を現したのは、ラフレシアよりも遥かに大きな蕾だった。蕾の大きさだけでも直径で一メートルはあるだろう。そう、
少女の身体を喰らった蕾よりも遥かに大きいそれは、花弁を開くと中も大きかった。花弁が徐に開かれたそこには、
まさに巨人の口があったのだ。
 茎に拘束された少女の身体が大口の真上へと移動させられる。これからどうなるのか、容易に察する事ができた。
 拘束から解き放たれた少女の身体。大口へと真っ逆さまに落ちて行く僅かな時間の中、少女は笑っていた。
 あはは、これ……夢だよね……目を覚ましたらベッドの上だよね。怖い夢を見たーってベッドの上でちょっとの間
震えてから、お洒落して出掛けないと……せっかくのデートなのに遅刻したらカレに怒られちゃうもん……
なんたって、今日は一年に一度の――……。


 ――ゴキン、バリ、バキ……ボキッ、グチャッ…………ゴクン。


 これは、クリスマスイヴの夜の出来事。
 七人の少女達がここに足を運ぶ二十五時間前の出来事だった。

57 :
プロローグ 【クリスマス】


 十二月二十五日――クリスマスの夜。水城ミナは初めての恋人と一夜を明かす筈だった。
 降り注ぐ雪が街灯の光に照らされて輝きを放ち、吹き荒れる風が街路樹の並木を揺らす。空は雲一つない快晴で、都
会の街中でも満月と星がはっきりと見る事ができた。街は一面クリスマスの雰囲気が漂い、様々な色のイルミネーショ
ンの光や、サンタクロースの衣装やトナカイのきぐるみを身に纏った者が道行く人に声を掛けている景色は、クリスマ
スならではだろう。そして、仲良く手をつないで歩く多くのカップルの姿も。
 ミナはそんなカップルの姿を見る度、知らず知らずに内に溜息を吐いていた。腰まで伸ばした長い髪に雪が付着して
は溶けて消えていく。今日という日のためにアルバイトで稼いだお金で購入した淡い青色のワンピースは彼女の今の心
情を表しているかのように見える。首に巻いている同じく青いマフラーは彼女の涙で濡れていた。
 ほんの一時間にも満たない電話口からの冷たい言葉の矢が、それらを見る度に心に突き刺さるのだ。子供のようにわ
んわんと大声で泣いた後もまだ、心の痛みは治まる気配がない。それどころかこうして街を歩くだけで酷くなっていく
気がした。
 別れよう、俺達――付き合っていた男はそれだけ言って電話を切った。本来であれば今日の十九時に馴染みのレストラ
ンで待ち合わせし、二人で会う筈だった。ミナがレストランで一人約束の時間から十分、二十分と待ちぼうけした後の
電話がそれだ。男が別れようとした理由は電話口から聞こえてきた別の女の声から容易に察する事ができた。男は浮気
していて、恐らくミナよりも浮気相手の方をとったのだろう、と。
 悔しかった。哀しかった。そんなミナの呼び掛けに集まったのが、彼女の二人の友人達だった。
「ミンミン、元気出しなよー……」
 心配そうな眼差しでミナの顔を覗き込んだのは一番の親友である鳴海マオだ。とてもではないがミナと同じ高校三年
生とは思えない程の小柄な身体で、まだ幼さの残る顔立ちをしている。寒くないのだろうか、子供は風の子と言わんば
かりにスカートを短くし、上は制服以外コートも着ていない。冬の夜に出歩くには見るからに寒い格好だ。この集まり
の中で唯一学校の制服を着ているのは単純に、つい先程まで学校で部活動に励んでいたからだ。親友からの電話の涙声
を放っておけなかった彼女は、先に部活を抜け出して真っ直ぐに彼女の元へとやって来たのだ。
 『ミンミン』というのは水城ミナという名前からマオが彼女に付けたあだ名だ。マオは親しい友人は皆そうしてあだ
名で呼んでいる。例えば、ミナの後ろを歩いている眼鏡を掛けた大人しそうな少女――志摩シノは『しーちゃん』だ。最
初は『ミンミン』に倣うように志摩シノという名前から『シーシー』と呼んでいたが、シノが「おしっこみたいな呼び
方やめて」と懇願するものだから『しーちゃん』に落ち着いた。
 シノはこの中では一番物静かで心優しい少女だった。そして内気でもある。そのため目を真っ赤に腫らせたミナの姿
を見ても声を掛ける事さえできなかった。不用意な言葉は反って相手の心を傷付けてしまう事もある。それを知ってい
た彼女は結局良い言葉を見つけられないまま今に至っていた。時折何か声を掛けようとミナの後ろで口を開くものの、
喉まで出掛かってもそれが言葉になる事はなかった。

58 :

「ほらぁミンミン! そんな酷い男の子の事なんて忘れて、今日は女の子同士で楽しくはっちゃけよーよ! 女子会み
たいな感じでさ! 何たってクリスマスだもん! 無礼講だよ、ぶれーこー!」
 無礼講の意味を知ってか知らずか、マオは子供のように無邪気な笑顔を作る。
「……ん、そう……だね。うん……うん! 改めてゴメンね二人とも、急に呼び出したりしちゃって……」
「全然平気だよ。私の方こそゴメンね、気の利いた言葉の一つ掛けてあげられなくて……こんな時、どんな風に声を掛
ければいいのか分からないから……」
 ようやく暗い顔を上げたミナに、シノが申し訳なさそうに肩を竦める。このまま誰も喋れなければ再び空気が暗く淀
んでしまうのだが、そうさせないのがマオだ。彼女はシノの背後へ素早く移動すると背中を押し、ミナの隣へと押し
やった。二人の間からちょこんと顔を出したマオがシノの顔を見上げながらぷくっと頬を膨らませる。
「もー、しーちゃんも暗いよぉ! こっからしんみりさせるような発言はNGだかんね! 言った人はお尻ペンペン
の刑だよ!」
 ――パパンッ!
「ひゃあっ!?」
「きゃんっ!?」
 まるでゲーム開始の合図であるかのように、マオは二人のお尻を両手で強く叩く。街中の喧騒に混じって乾いた音が
響いた。二人は不意打ちに飛び上がって驚き、両手でお尻を押さえてマオを睨み付ける。二人から同時に痛みと恥ずか
しさを訴えるような冷たい視線を送られるとさすがの彼女も縮こまり、途端に子犬のように怯えた瞳になった。こうし
て見ると本当に小学生くらいの子供に見える。
 そんな姿が可笑しくて、ミナはプッと吹き出した。シノもクスクスと笑い始めると、マオもまた笑う。
 三人が集まってからミナが初めて笑顔を見せた。マオとシノは笑いながらもホッと胸を撫で下ろした。いつも元気一
杯な元のミナに戻った、と。無論、それはまだ上っ面だけかもしれない。誰しも失恋で生じた心の傷というのは、そう
簡単には癒されないものだ。だがそれでも二人は喜んでいた。自分達が来た事で少しでもその痛みを和らげる事ができ
たのなら、と。
 ミナが二人を呼び出したのは単純に一人でいる事が辛かったからだ。だから集まってから何処へ行くか、何をするか
など一切考えていなかった。それを知ったマオはとりあえず三人の中で先頭に立ち、あっちへこっちへと足を運ばせた。
街全体がイルミネーションに包まれているかのように、色取り取りの美しい光は彼女達の心を虜にさせる。同じ光でも
位置と角度を変えるだけでまた違った魅力になるものだ。丘の上の公園に行っては街を見下ろし、地元で最も高い木の
下に立っては木を見上げる。全てが目に焼き付く程の光景だった。いつも何気なく見ているのと、こうして見ようと思
って見ているのとでは全く違って見えた。まるで別物を見ているかのような感覚だった。
「――あ、ミナちゃん! それにマオちゃん、シノちゃんも! おーい!」
 舞い落ちる雪の量が多くなった頃、適当な飲食店で時間を潰そうとうろうろしていた三人に突然声が掛かった。少し
離れたところからの声だ。ミナが周りを見回しても声の主は見当たらなかったが、それもその筈、声の主は歩道橋の上
にいたのだ。
 上を見上げたミナはその姿に気付く。歩道橋の上で大きく手を振る一人の少女――氷川レイカだ。彼女の背後にはあと
三人、ミナが知っている少女の姿もある。良くこの人込みの中、それも歩道橋の上からミナ達に気付いたものだ。
 レイカはすぐに歩道橋を降りてミナ達の所へやって来ると、そのままミナに抱き付いた。女というのは女同士であれ
ば周囲の視線も気にせずに恥ずかしい行動をとる事がある。素で女の子に抱き付く女の子など、見る人から見れば“そ
っちの人”に見えてしまうものだ。レイカの後から来た少女達も周りの視線を気にしている。

59 :
「やっほー、ミナちゃん! こんなところで奇遇だね!」
「ちょ、ちょっとレイカ先輩……恥ずかしいですって!」
 ミナは頬を赤く染めながら身体をよじって抵抗するが、それでもレイカは離れなかった。レイカの大きな胸が自分の
控え目な胸に密着すると比較されているようで何とも言えない気分になる。そして大きなマシュマロのような柔らかな
感触がミナの胸の鼓動を高鳴らせる。
 『先輩』から分かるように、レイカはミナ達よりも一つ年上ではあるものの、同じクラスのクラスメートだった。彼
女は優等生にも関わらず留年したのだ。さすがにその理由は面と向かって聞けるような代物ではないが、出席日数が足
りなかったから、という噂が可能性として濃厚だった。何故そんなに欠席したのか、というのもまた謎である。見るか
らに健康そうなレイカが病気や怪我をしている姿など想像できなかった。
「ミンミンからはーなーれーてぇぇぇーっ」
「お姉様から離れてください、水城さん……しますよ?」
 抱擁している二人の間に割って入ったのはマオと、レイカを実の姉以上に慕っている少女――柊ユリだ。長い髪をツイ
ンテールに束ねている。ミナはレイカに抱きつかれているだけにも関わらず、ユリの怒りの矛先は彼女に向けられて
いた。鋭い視線には言葉通り本当に気が混じっているかのようで、どれ程ユリがレイカを慕っているのか良く分かる。
否、慕っているどころの感情ではないのかもしれない。ユリはミナ達とはクラスが別だが、学校で休み時間になる度に
レイカに会いに顔を出すものだから、すっかり顔馴染みになっていた。
「んもう、分かったわよぉ……」
 渋々とレイカはミナを離すと、彼女はようやくミナの目が真っ赤に腫れている事に気付いた。
「ミナちゃん、どうしたの? その目は」
「い、いえ、ちょっと……」
「……そう。上手く言えないけど、元気出してね」
 目が腫れている理由など、病気を除けば一つしかない。そしてそれをわざわざ詮索する程、レイカは野暮ではなか
った。レイカの言葉はマオの言う“しんみりさせるような発言”に該当しているのだが、さすがにそんなルールを知ら
ない彼女のお尻を唐突に叩く事はできず、繰り出そうとした手を渋々と元の位置に戻した。ちなみにユリはそんなマオ
のちょっとした動きさえ見逃さない。レイカに手を出そうとするのであれば動いていたところだ。

60 :
「――ねぇねぇ、早く行かないと終わっちゃうよ?」
 二つの同じ声が同じタイミングで同じ台詞を発する。声を出したのはレイカとユリの後ろに立つ二人の少女――早瀬
サエと早瀬エミ――いつも仲良しの双子の姉妹だ。二人とも同じ容姿、髪型の上、服もお揃いで着ようとするものだか
ら、他人からすればどちらがどちらであるかなかなか見分けが付かない。今日はレイカ達と遊ぶ事もあって、さすがに
カチューシャの色を変えて区別ができるようにしてあった。サエは赤色のカチューシャ、エミは白色のカチューシャ
だ。それを覚えるのもまた一苦労でもある。いっその事、名札でも作って身に着けてくれればと周囲の人間が思う事も
あった。
 サエとエミに言われてレイカは腕時計を確認した。デジタルの液晶に四つの数字が並んでいる。時刻は既に二十時
四十五分、招待状によるとイベントの受付終了は二十一時までとなっているため、彼女達の言うように確かに時間が
なかった。
「そうね、急ぎましょうか。あ、ミナちゃん達も来る? この招待状一枚で何人でも参加OKだって。ただし二十歳
以下の女の子に限られてるんだけど、私達皆高校生だから問題ないしね」
「何かあるんですか?」
 レイカの言葉にシノが首を傾げる。二十歳以下の女の子限定、という部分に妙な違和感を覚えたものの、クリスマス
の夜に行われるイベントであればつまらないものではない筈だ。年頃の女の子が興味を持たないのは反っておかしいだ
ろう。シノだけでなく、ミナとマオもレイカの次の言葉を待ち望んでいた。マオは特に興味津々で大きな目をきらきら
と輝かせている。
「時間がないから会場に向かいながら説明するわね、ついて来て」
 レイカの手に握られた黒い封筒に包まれた一枚の招待状。見るからに怪しいその紙切れに書かれていた事を要約す
ると、参加費無料でちょっとしたゲームを行い、優勝者には夢のようなクリスマスプレゼントが贈られる、というも
のだ。ゲームにしろクリスマスプレゼントにしろ、具体的な事は何一つ書かれていなかった。
 この招待状を受け取ったのはユリだった。学校が終わり、帰路の途中だった彼女に声を掛けたのは“黒いサンタクロ
ース”。イメージのサンタクロースと全く同じ衣装ではあるものの、赤色の部分が全て黒色だったというのだ。当然、
ユリは無視しようとしたが無理矢理この招待状が入った封筒だけ渡された。帰宅してから中を読み、相談しようと思っ
てレイカに電話したのが始まりだった。
 とりあえず行ってみましょ――とレイカは笑いながら、ユリの他にサエとエミを呼び出した。もし怪しい勧誘やイベント
だった時、逃げるにしろ抗うにしろ人数はなるべく多い方が良いと判断したからだ。彼女がミナ達を誘ったのも同じ理由
だった。
 道中、ミナはレイカから話を聞きながら『行かない方が良い』と強く思った。何が何でも怪し過ぎるのだ。だがレイカ
はそれに聞く耳を持たず、会場へと迷う事なく足を進める。ユリ、サエ、エミも同じだった。ミナは一人何度足を止めよ
うと思った事だろう。だが、足が止まる事はなかった。レイカ達をこのまま放っておく訳にはいかなかったからだ。レイ
カの言う通り確かに何かあった時、一人でも人数は多い方が良い。
 行くべきか行かざるべきか、無理にでも止めるべきか止めざるべきか。
 心の中で繰り広げられる葛藤も虚しく、彼女達七人はやがて会場である建物に辿り着いてしまった。
 その先に待ち受ける惨劇を知る由もなく――……。

61 :
47だけど、とりあえず0話とプロローグ書いてみた。
捕食するモンスターの希望があればどぞ。
採用できるかどうかとシチュエーションは俺が決めるけどね。

62 :
素敵な力作と新しいシリーズにときめかずにはいかない
今後が楽しみです
希望するモンスターは恐竜を今まで見たことなかったのでラプトルで

63 :
便器に潜むザ・グリードのそれに似た触手状のモンスターとか。

64 :
第1話 【志摩シノ】


 そのイベントの会場とやらは、地元で最も大きなコンサートホールだった。普段は演奏会や講演会、
上映会などが開催されており、時折子供向けのイベントも催される事から、ミナをはじめとする七人
全員が幼少の頃に少なくとも一度は訪れた事があった。特にシノはジャンルを問わず音楽が好きだった
ため、高校生となった今でも尚、毎月のようにこのコンサートホールに通っていた。ポップス、ロック、
パンク、オペラ、クラシック、ジャズ、ブルース、それらに加えて更に演歌や雅楽――……プロが演奏、
歌唱するそれらはどれも素晴らしく、彼女にとって入館料以上の価値があったものだ。コンサートホール
に入り浸っているような彼女でさえ、そんなイベントが催される事は知らなかった。
 コンサートホールの前はいつもと変わらない人の流れだった。何かイベントがあろうとなかろうと、
興味がない人はやはり興味がないものだ。七人は暫くコンサートホールの入口で立ち竦んでいた。何故
ならば、コンサートホールはまるで閉館しているかのように真っ暗で、中に人がいるような気配が感じ
られなかったからだ。そして彼女達以外に誰もコンサートホールの前で立ち止まろうとせず、ましてや
入ろうとする人など誰一人いなかった。
 レイカは再び招待状を見た。何度読み返しても日時と場所は合っている。雪は徐々に吹雪いてきて
おり、長時間外にいる彼女達の衣服には大量の白い粒が付着していた。彼女達が立っている場所には
屋根があるものの、とにかく風が冷たく、寒い。一人薄着をしているマオは頬を熟した林檎色に染めて
何度も両手を擦り合わせている。季節相応の衣服を着ているミナ達もこの寒さには耐え兼ねていた。
何処でも良いからとにかく何処かで温まりたかった。
 気温は氷点下を下回っている。こんなに寒く、雪が降るのはこの街では久しぶりだった。屋内で
クリスマスの夜を楽しんでいる者にとって窓から見える雪は幻想的だろうが、特にこの時間に働いている
者にとってはホワイトクリスマスなどと騒いでいるどころではないだろう。下手をすれば交通機関も
滞りそうなのだ。帰路を心配する者が殆どだろう。
 それはミナ達も同じだった。七人とも同じ市内に住んでいるとはいえ、帰路はそれぞれ電車かバス
なのだ。天気予報でもこんなに雪が降るとは言っていなかった。テレビで笑顔を見せていた天気予報士に
罵詈雑言の一つでも浴びせても罰は当たらないだろうが、それよりもこれからどうするかが大事だ。
いつまでもコンサートホールの前で足を止めている場合ではない。
 イベントが嘘なら、それでもいい。ううん、その方が良かった――とミナは心の中でホッと胸を撫で
下ろした。だが納得しないのがレイカだ。ミナ達やサエ達をわざわざ誘い、ここまで一緒に足を運んで
くれたのに申し訳ないと思っているのだろう。
 透明のガラスの向こう側には暗闇が広がっているだけで、人の気配さえ感じられない。それでも
レイカはコンサートホールの正面入口に手を掛けた。
 鍵は掛かっていなかった。レイカが扉の取っ手を押すと、扉は呆気なく開いたのだ。外の冷たい風が
僅かに開いた扉から中に入り込み、ヒュゥと音を立てる。逆に中からは暖かい空気が漏れ、彼女の前髪を
小さく揺らした。

65 :
保守ついでに冒頭部分投下。
>>62-63
リクありがと、書いてみる。

66 :
「……開いた」
 レイカは少しだけ扉を開けた手をそのままに、後ろを振り返った。残りの六人は何処か不安そうな
眼差しで彼女を見つめている。もし本当にイベントが嘘だったとしても、鍵が開いていたからと言って
勝手に中に入っては不法侵入で警察沙汰になってしまう恐れがあったからだ。そもそもマオは学校の
制服のままなのだ。彼女はさほど気にしていないが、何かあった場合に厄介な事態になる事は目に
見えている。
 数秒の間、再生していたビデオを停止したかのように七人はその位置のまま動かなかった。だが、
特にレイカは動かざるを得なくなる。突然、彼女が手を掛けていた扉が内側から開かれたのだ。同時に、
子供特有の甲高い声がする。
「――参加希望の人?」
「きゃっ!?」
 驚いて思わず飛び跳ねるレイカ。驚いたのはミナ達も同じだった。開いた扉の向こう側には誰もいない
ように見えたのだ。だが、視線をもっと下げたところに人がいた。
 少女――否、幼女と呼ぶべき子供だった。年は十にも満たないだろう。扉の取っ手に手を伸ばしてやっと
届く程の身長だ。綺麗な黒い着物を身に纏い、頭も黒いリボンで髪を束ねている。まるで葬儀にでも
参加するかのように上から下まで真っ黒だ。格好もそうだが何より印象的だったのが、その女の子の目だ。
瞳の色がそれぞれ異なっているのだ。右の瞳は日本人らしい茶色に対し、左の瞳は青色だった。
かといって外国人とのハーフのような顔立ちではなく、逆に日本人らしい顔立ちだった。
 二つの色の瞳がレイカを見上げている。穢れを知らないような純粋無垢な眼差しで見つめられると、
レイカは何処かこそばゆいような気持ちになったが、それよりも今は言葉を返す方が先決だ。
「あの……この招待状を見て来たんだけど……」
「うん、そうみたいだね。参加希望なんでしょ? それじゃ中に入って。もうイベントは始まってるよ」
 女の子は礼儀正しく自ら扉を開ける。間には立たずにちゃんと人が通れる道を作り、女の子が扉を
閉めたのは七人全員がコンサートホールに入ってからだ。中は相変わらず暗かったが、非常口の案内や
常夜灯の小さな光で何とか周囲の様子は伺えた。肝試しでもあるまいし、一人でこんな場所にいるのは
不気味で仕方がないだろう。女の子はここでずっと、一人外の様子を伺っていたのだろうか。
「とりあえずホールに案内するね。他の参加者はもうそこにはいないけど、そこで簡単なルール説明するから」
 小さな手の平でも収まるサイズの懐中電灯を片手に、女の子は前を歩きながらはきはきとした口調で
言う。何処か楽しそうだ。
 こんな子供がどうして――とミナ達は余計に催されるイベントとやらが不安になるのだが、ここまで
来て尻込みする訳にもいかず、女の子の後ろについて歩く。もしかしたら出てきたのが年端もいかない
女の子で良かったのかもしれない。女の子でなく強面の大男に出て来られた時には、即座に“アブナイ
コト”だと危険を感じて逃げようとしたところで、果たして何人捕まった事だろうか。
 ――否、あるいはそう思わせないように、逃げられないように、女の子を受付兼案内人としているの
かもしれない。
「あ、私はクルミって言うの。ここ暗くてゴメンネ。あんまり公にできないイベントだからって、
外からは閉まっているように見せてるの。あ、ここ階段だから足元に気をつけてね」

67 :
 定期的に取り付けられた足元を照らす常夜灯のおかげで誰も躓く事はなかった。短い階段を上った
ところで、女の子――クルミは立ち止まった。ここがホールの入口なのだ。中には多くの客席、そして
広いステージがある事は全員知っていた。
 大きく重い扉がクルミの手によって開かれると、ステージの眩しい光が彼女達を包み込む。暗い場所に
いた時間は短かったため、目が慣れるのはあっという間だった。
 ――不気味な光景が広がっていた。ステージは華やかな光で包まれ、客席の照明は落とされている。
何かステージの上で催し物が行われているのかと思いきや、ステージの上には誰もおらず、上からいくつ
ものスクリーンが吊られているだけだった。イベントの内容を知らないミナ達は別にそれをさほど不気味
な光景とは思わなかった。丁度イベントの幕間なのかもしれないと考えれば不気味でも何でもないのだ。
 不気味だったのは、客席に座っている人間だった。格好はそれぞれ至って普通だ。仕事帰りだと思わ
れるサラリーマン風の男がいれば、豪華な宝石を全身に取り巻いた女もいる。老若男女、客席が埋まる
程の人数――……一人一人が仮面を付けて素顔を隠していたのだ。中には有名なスプラッター映画の
人鬼と同じホッケーマスクを付けている者もいる。
 仮装パーティ、という訳ではどうやらなさそうだ。招待状にはそんな事は何一つ謳っていなければ、
クルミもまたミナ達に告げなかったのだから。では、客席にいる多くの人間は一体何なのだろうか。
 答えは、少なくともクルミの言葉から簡単に見出せるものではなさそうだ。
「――この人達はこのイベントに協賛してくれた人であって、ただの見物人だよ。お姉ちゃん達が参加
するイベントには直接関係ないから、気にしなくていいよ。ヘンだよねー、別に指定したワケじゃない
のに皆ヘンなお面被っちゃって」
 そう言ってクルミはクスクスと笑う。
「それじゃ、イベントのルールを説明するね。お姉ちゃん達には鬼ごっこをしてもらうわ」
「鬼ごっこ……?」
 ミナは首を傾げる。“鬼ごっこ”という単語を聞く事自体が久方振りだ。最後にそうやって友人達
と遊んだのは小学生の頃以来だろうか。高校生になってそんな遊びをする事になるとは思っても
みなかった。
 クルミは続ける。
「そ、鬼ごっこ。鬼に捕まったらゲームオーバーで、一定時間逃げ切った人が勝ち。だから別に優勝者
は一人だけってワケじゃないから、安心してね。上手くいけば全員勝つ事もできるよ。スタートは
――……そうね、今が丁度九時だから九時五分にしよっか。時間はたったの一時間。一時間鬼から
逃げ切るだけ。ね、簡単なルールでしょ?」

68 :
 確かにそれを聞く限りは簡単なルールではある。もちろん質問はいくらでもあった。マオ、
サエとエミ、レイカが次々にクルミに質問を重ねていく。
「鬼って? マオ達の誰かが鬼じゃなくて?」
「うん、鬼は別にいるよ。姿格好は――……ううん、一目で鬼だって分かる筈だよ」
「どんな場所でやるの? そのステージの上だけ、ってワケじゃないよね?」
「実は鬼ごっこ専用の会場があるの。ステージの裏から入れる地下……ちょっとした迷路になってる
んだけど、あちこちに監視カメラがあるから道に迷っても大丈夫だよ、時間になったら係の人が迎えに
行くから」
「具体的に勝てば何がもらえるの? 夢のようなって招待状には書いてあるけど」
「お姉ちゃん達が欲しいモノ……本当に何でも。ただし、お金で解決できるモノだけだよ。不老不
とか、そーゆーのはダメだからね。協賛してくれた人がこ〜んなにいるんだもん、現金で何億だって
ポンと出せるよ」
 何億、というクルミの口からさりげなく出た単語にゴクリと喉を鳴らす音がいくつかミナの耳に届く。
彼女が周囲に目を配ると、既にやる気満々といった表情で目を輝かせる顔ばかりだった。恐らく自分と
同じ目ような目をしていたのはシノだけだ。
 世の中に、おいしい話、などはない。ミナはそれを知っているつもりだった。おいしい話には必ず
裏がある。
 参加費無料で鬼ごっこ、一時間逃げ切るだけで望みのモノが手に入る――……クルミの口からは
デメリットが一切話されていない。例えば、その鬼とやらに捕まってしまった場合、どうなるのか。
例えばその鬼とやらが男だった場合、問答無用でその場で身包みを引っぺがされ、犯されてしまうのか。
これがそういった類のアダルトビデオの撮影であるならば、それでも何とか納得できない事もなかった。
だがそうだとしても報酬があまりにも良過ぎるのだ。当然ミナはアダルトビデオに出演した事がないため
何とも言えなかったが、想像するにどんなに高くても百万円そこそこではないだろうか。無論、それも
また彼女達の同意があってこその話だ。何も聞かされずに事後に示談金を渡されたところで、それは
単なる卑劣な犯罪行為に過ぎないのだ。
 今ならまだ引き返せるかもしれない。いや、引き返せるとしたら今しかないのだ。何故こんなあからさまに
怪しい話を真に受けられるのか、彼女はマオ達を信じられないといった目で見た。マオ達はミナのそんな
視線にさえ気付かない。まるで暗示や催眠術の類に掛かってしまっているかのようだった。
 シノはそっとミナに歩み寄ると、そっと彼女の手を握った。二人の手はこの寒さのせいで冷たかった。
いくらコンサートホールの中は暖かくとも、体温が戻るには時間が掛かる。それでも冷たさの向こう側に
互いの暖かさと温もりと鼓動が確認できた。二つの手は、不安に揺れる心を露呈しているかのように握り
合っていた。
 ミナとシノは同時に口を開こうとした。「やめよう」とただ一言提案するために。だが、それを
見計らったようなタイミングでクルミが二人の言葉を紡ぐ。

69 :
「――あ。あと一分で開始だよ。分かると思うけど、スタートが遅れるだけ不利になるから、今すぐ
行った方がいいと思うよ、お姉ちゃん達」
「えっ、マジで!? ミンミン、しーちゃん、早く行こっ!!」
 マオがミナの手を引っ張り走り出す。ミナのもう片方の手はシノとつながったままだ。連なるように
シノの身体も引っ張られる訳だが、彼女の足はその場から動かなかった。代わりにミナとつないでいた
手を離す。
 シノの手の感覚が手から抜けた瞬間、ミナもまた立ち止まった。そしてマオも立ち止まらざるを
得なくなる。
「どったの、しーちゃん?」
「……ごめんなさい、私……ここに残るね」
「シノちゃん……」
 恐怖と不安に満ち溢れ、震える声でシノが言う。楽天家のマオはただ首を傾げるだけだが、ミナは
シノの心の内が手に取るように分かった。
 シノと同じ考えだったミナも、できるのなら彼女と共にここに残りたかった。いや、全員を引き止めて
このコンサートホールを後にしたかった。だがどうやらそれは適いそうにない。マオがやる気満々だからだ。
こうなったマオを止める手段をミナ達は知らない。誰が何を言っても聞かないのだ。レイカ達も同様の
目の色をしている。
 マオを一人行かせるのか、それともシノを一人残すのか。その選択肢を選ぶ権利はミナに与えられていなかった。
「んー、しょうがないなぁ……。 それじゃしーちゃん、留守番ヨロシク! 行こっ、ミンミン!」
「う、うん……ゴメンね、シノちゃん。すぐ戻って来るから」
「私なら大丈夫だよ…………無事を祈ってるから」
 ボソリとシノが最後に呟いた言葉はクルミの耳にしか届かなかった。クルミはその呟きに微笑を
浮かべる。同時に、青色の瞳が妖しい輝きを放った。
 マオがミナを引っ張るように駆け出すと、後を追うかのようにレイカとユリ、そしてサエとエミが
駆け出した。客席の人間と同じように仮面を被った者がわざわざステージへと導く矢印の書かれた看板を
持っているのだから、これ以上クルミの案内など必要ない。
 六人の背中が小さくなっていき、やがて消える。シノは自分の左胸の上に手を当てた。心臓の鼓動が
嫌に大きい。不安と恐怖、そして嫌な予感がそうさせているのだ。同時にこれから自分はどうなるのかと
怖くなった。客席で何事もなく六人が戻って来るまで待たせてもらえるのか、それとも――……。

70 :
とここまで投下してみたものの、ここに投下するには長くなり過ぎるか。
容量使い過ぎるし、これ以上はやっぱり完成した後にURL晒した方がいいかな?
文字数にして五万文字は悠に越えそうなんだが。

71 :
投下乙、そしてGJです!
自分としては、仮に他の所にUPするとしても、
完成してからよりは、できている分を順次読んでみたいのですが…

72 :
あんまり長く過ぎるのもよくないから、URLだけ乗せて投下はしない方がいいと思いますよ。

73 :
数年単位での連載を快く受け入れるこのスレですから
五万字なんて余裕だと思いますよ
ゆっくり投下していけばいいよ

74 :
>>71-73
返信ありがとうございます。
長くなりすぎないよう気を付けながら、引き続きこちらに投下してきますね。

75 :
「ねぇ、お姉ちゃんはどうして行かなかったの?」
 不意にクルミが口を開いた。気付けばクルミはシノの真正面に立ち、彼女の顔を覗き込むように見上げていた。
気のせいだろうか、青い瞳がやや紫色がかっているように見える。
「走るの、苦手だから……かな」
 クルミの前で本心を晒す事を躊躇ったシノは、適当に茶を濁す。それもまた本心の一つに相違ないが、クルミが
それを怪しむか否かは別の問題だ。元より怪しまれたからと言って何をされる訳ではないが、正直に本心を告げるのは
得策ではないと思ったのだ。
 鬼ごっこは意外と激しい運動だ。追い掛けられっ放しだと走りっ放しになる。逆も然りだ。言葉通り運動が苦手な
彼女は七人の中で最も早く鬼とやらに捕まる変な自信があった。いずれにしろ十中八九、彼女は自分が参加するだけ
無駄であると思っていた。
 シノはクルミに負けじとばかりに色の異なる二つの瞳を覗き込んだ。
「教えて。鬼に捕まったらどうなるの?」
「それはヒミツ――……と言いたいとこだけど、お姉ちゃんは不参加だし、丁度いいから教えてあげる。説明してより
見てもらった方が早いかな。ステージのスクリーンを見ててね。お姉ちゃん達より前の参加者の最期の様子を放映するから」
「最期の様子……?」
 クルミは言うや否や、颯爽とステージに向かって階段を駆け下りると、ぴょん、と飛び跳ねてステージの上に
降り立った。途端、ステージ上の明かりが消えて代わりに左右からの強いスポットライトの光が小さな身体を包み
込む。今まで気付かなかったが、ステージの上にはちょこんと一つのスタンドマイクが置いてあった。高さは予め
クルミの背丈に合わせていたようだ。
 このイベント内で、クルミは一体どんな役割なのだろうか。司会も行っているのだろうか。そもそもこんなに
小さな女の子に、こんな時間に働かせて良いのだろうか――などとシノが思っている間に、スピーカから大音量で
クルミの声が聞こえてきた。
『皆、お待たせ! 映像の編集に手間取っちゃってたみたい……遅くなってゴメンね。それじゃあお待ちかね、
第三グループの映像を公開するよ! スクリーンに注目宜しくぅ!』
 途端、シノにとって聞きなれた音がホール中に響き渡る。ステージの幕が上がり、コンサートなどの開始を告げる
音だ。彼女の胸の高鳴りはいつもの期待や楽しみから来るものではなく、今日に限っては不安から来るものだ。
 シノは生唾を呑み込み、一応の覚悟を以ってスクリーンを見た。鬼に捕まった者の末路。クルミの言葉からやはり
罰ゲームか、あるいはそれ以上の行為が行われるのだと想像できる。今すぐにでもミナ達を連れ戻していきたい衝動
よりもまず、スクリーンにどんな映像が映し出されるのか気になった。その映像を見てみない事には単なる彼女の
思い過ごしという可能性も否定できないのだ。
 最も可能性の高い、どんなにいやらしい映像が飛び出すのかと思った瞬間、スピーカから耳を劈くような女の悲鳴
が響き渡った。
 ――シノの予想通りなら、どんなに可愛かっただろうか。
 正面のスクリーンに映し出されたのは、必の表情で逃げまとう女の子の姿。年はシノ達とさほど変わらない
見た目だ。いや、実際には中学生くらいだろうか。年頃の女の子は化粧を施すため、実年齢より大人っぽく見える事が多い。
 女の子が逃げているのは、背後から追ってくる一匹の犬だった。犬、と表現するには程遠い姿をしている。胴体が
一つに対し、首が三つあるのだ。それぞれが狼のように鋭い目つきと牙をしている。現実に存在する筈のない、地獄
の番犬――ケルベロスに相違ないだろう。
 人間の足が獣の俊敏な足に敵う筈がない。ケルベロスはあっという間に女の子に追いつくと、全体重を掛けて女の
子の華奢な身体に圧し掛かった。走っていた勢いも相俟って、女の子は顔面を強打し、顔を上げた時には涙と鼻血で
顔がぐしゃぐしゃだった。それでもケルベロスの体重から逃れようともがくが、当然徒労に終わる。
 三つの口から涎が垂れ、女の子の背中を濡らす。そして次の瞬間には女の子の身体に喰らいついていた。言葉にな
らない絶叫と共に首、背中、腕の血肉が食い千切られる。人体模型そのままの筋肉の繊維がケルベロスの口の中に消
えていく。
 一分もしない内に、女の子の声は一切聞こえなくなった。スピーカから聞こえてくるのはケルベロスが肉を噛み砕
く音と、獣の唸り声。女の子は激しく血を噴出させながら、そのまま息絶えていた。ケルベロスの両足の下にあるの
はもう人間ではない。ただの血肉――餌だ。

76 :
 出来の悪いB級映画を見ているような気分だった。いや、シノは本当にスクリーンに映し出される映像が作り物
だと思っていた。ありえないのだ。ケルベロスという存在も、飛び散る生々しい血飛沫も、本当に辛く苦しそうに
喘ぐ声も、そしてこれが前の参加者の末路であるという事も。
 ウソ、だよね……こんな……こんなのって――とシノは大きく両目を見開き、両手で口を覆った。
 映し出された映像はもちろん、これだけではない。スクリーンはいくつもあるのだ。正面スクリーンに映し出さ
れたクライマックスのシーンが終わったところで、次々と映し出される。
 水槽の中に閉じ込められた女の子が呼吸できずに事切れる寸前、巨大な鮫に腰から上を一口で噛み千切られる映像。
 巨大な蟷螂がまるで蝶を捕食しているかのように女の子の腸を貪る映像。
 巨大な蛙に頭から女の子が頭から丸呑みされる映像。
 ――様々な化け物が女の子を次々と捕食していく。全身を大口に含んで咀嚼するモノ、内蔵だけ貪るモノ、噛み砕く
事もせず全身を丸呑みにするモノ。
 ホールの熱気が上がっていく。客席の人間が興奮しているのだ。多くの男が股間を膨らませ、中には逸物を取り出
して擦りだしている者もいる。女でも乳房と股間に手を伸ばしている者もいた。繰り広げられる惨劇に興奮し、自慰
行為に耽っているのだ。
 それに気付いたシノは全てを理解してしまった。今日、このコンサートホールは化け物のための餌場だという事。
イベントというおいしい話に集まってきた若い女の子が餌だという事。客席の協賛者とやらは恐らく、少なくとも
一般的ではない性癖を持つ者だという事。鬼に捕まるというのは、化け物に捕まるという事。それはレイプされるので
はなく、化け物に食いされるという事。
 そして、シノ達もまた、化け物にとって餌でしかないという事。
 第六感が警鐘を鳴らす。ここにいては危険だと。だがシノの足はあまりの光景に動く事を拒んでいた。立ち竦んだ
まま、引き続き映し出される映像に嘔吐感さえ込み上げ始めていた。どの映像の人間の中身が丸見えなのだ。骨も
臓物も、その全てが。医学に興味があれば別かもしれないが、普通の少女にとってはグロテスクな光景でしかない。
『――昨日、今日と二日間に渡って行われたこのイベントも今年はこの七人で最後。だけど、その内の一人はまだこの
ホールにいるの。だからせっかくだし――……』
 ステージの上のクルミがシノの姿を捉える。
『クルミがここで……食べちゃってもいいよね?』
 ホール内の人間の全ての視線がシノに突き刺さると、ぞくりと背筋に悪寒が走った。彼女は思わず後退りをする。
ここからでもステージの上のクルミの目がはっきりと見えた。初めて会った時に見たような純真無垢な目は何処へ
やら、獲物を睨み付けるような恐ろしい目をしている。
 蠢く影。スポットライトによって照らされてできたクルミの影が形を変えていく。うねうねとタコの触手のように
動き始める。改めて分かる。クルミもまた、化け物だという事を。
 いっ、いや……来ないで――シノは顔を引き攣らせながら踵を返した。ホールに閉じ込められたかと思っていたが、
大きな扉はすんなりと開いた。振り返る事もせずに彼女はホールを飛び出し、入って来た出口へと急いだ。
 こんな時にでもある程度の冷静さを備えているのは流石だ。シノは走りながら胸のポケットから携帯電話を取り出
し、着信履歴から水城ミナの名前を見付けて通話ボタンを押す。今すぐ引き返すように伝えるためだ。もしかしたら
既に手遅れになっているかもしれない。それでも彼女は電話を掛けずにはいられなかった。

77 :
 携帯電話はコール音さえしなかった。当然だ、シノの携帯電話の電波状態は圏外となっていたのだから。彼女は
混乱する。いつもコンサートホールに来た時は普通に通じるのにどうして、と。やがて彼女は憤りをぶつけるかのよ
うに携帯電話を投げ棄てると、入って来た正面入口にぶつかるように縋り付いた。ガラスの向こう側にはさっきと変
わらない光景が広がっている。
 扉には鍵が掛かっていなかった。何度も取っ手の下にある鍵が外れている事を確認しながら何度も押しては引いて
を繰り返すもビクともしない。電子ロックでも掛けられているのだろうか。だとすれば制御室に赴かなければ開く事
はないだろう。シノは即座に行動を切り替えた。
「――助けて下さいっ!! すみません、誰かっ! 誰か助けて下さいっ!!!」
 内側から激しくガラスを叩いて外を歩く人々に訴えるも、まるで見向きもしなかった。いくらこのコンサートホー
ルが真っ暗だからと言っても、街灯の明かりに照らされてシノの姿は充分に見える筈だ。当然、ガラスを叩く音も張
り上げる彼女の声も聞こえる筈だ。だが道行く人は全く反応を示さない。
 コンサートホールの出入り口はもちろんここだけではない。少し足を伸ばせばあと二、三箇所ある。シノはそちら
の方へと足を走らせようと思ったが、すぐにその足は止まる。背後から気配を感じたのだ。今までに感じた事のない
禍々しい気配に、シノの全身に鳥肌が立つ。
「無駄だよ、お姉ちゃん。ここに入った時点でお姉ちゃん達の末路は決まってるの。今更何処にも逃げ道なんてないんだよ」
 クルミの声が聞こえてきた。思わず振り返るも、そこには誰もいない。あるのは闇と、常夜灯によって照らされて
できた自分自身の影。その影がシノが動いていないのにも関わらず、形を変えていく。一秒にも満たない間にその影
は少女の影になった。背丈、格好からクルミのものに違いない。
 その影に波紋が生まれる。まるで池に小石を投げ入れたかのように。
 影から徐に小さな手が姿を表す。焼け焦げたような黒い手だ。両手が出たところで、それらは地面をつき、力を込
め始めた。手が何をしようとしているのか、シノには分かった。影の中から身体を這い出させようとしているのだ。
「きゃああああっ!!」
 やがて影の中からクルミの頭が見えたところで、シノは悲鳴を上げながらその場から逃げ出した。逃げ道がないの
であれば、隠れるだけだ。クルミが影から出てくるのであれば、影ができない場所へ。即ち闇の中へ。
 隠れるに打ってつけの場所をシノは知っていた。この状況でその場所が最も有効的かどうかは分からなかったが、
ずっと動かずにいるよりはマシだ。背後から「無駄なのに」とクルミの声が聞こえてきた。それでもシノは僅かな
可能性に縋るように、女子トイレの中へと駆け込んだ。

78 :
 女子トイレの中は真っ暗だ。そしてシノは最も奥にある個室の便器が壊れていて、そのまま修理される事なく現在
は物置として使われている事を知っていた。真っ直ぐに奥の個室に足を走らせると、その扉を開こうとした。だが開
かない。外側から南京錠で鍵が掛けられているのだ。それはシノにとっても好都合だった。南京錠が掛けられたまま
だと、まさか中に彼女が隠れているとは思わないだろうからだ。
 シノは隣の個室に入ると、洋式の便器の上に足を掛け、上から奥の個室に入ろうとした。個室と個室を分かつ壁は
上だけ人が一人通れるような隙間が開いているのだ。公衆のトイレの個室は全てこのような造りになっている。彼女
は必の表情で勢いを付けて壁に乗り掛かると、頭から奥の個室へと身体を押しやった。彼女は運動音痴の自分でも
上手くいった事に驚いた。壁に両手を付いて体重を支えたまま、できるだけ音を立てずに奥の個室に着地する。
 奥の個室の中央には他の個室と同様に洋式の便器が置いてある。その周りには掃除用具のモップやバケツなどが置
いてあった。用を足す訳ではないが、シノは便器の蓋を開けてそこに腰を下ろし、便器の上で体育座りをして両膝の
間に顔を埋めた。上と同様に、壁は下も隙間がある。そこから覗き込まれた時に足が見えないようにするためだ。化
け物のクルミの前にそれは悪足掻きに過ぎないのかもしれない。それでも彼女は、そうする事で隠れ切る事ができる
のではないかと可能性に賭けた。
 シノが息を潜めると、辺りは静寂に包まれた。何の音もしない。これなら誰かが女子トイレに入って来てもすぐに
分かる。
 どうして私がこんな目に――とシノの目に涙が浮かぶ。ミナと一緒になってレイカ達を止めれば良かったと後悔して
も後の祭りだ。時計の針は元に戻らない。現実を直視するしかないのだ。こんな状況になってもミナ達の安否を気に
掛け、こうなった原因を作ったレイカ達を恨む事はしなかった。
 行くのか、行かないのか。選べる選択肢はちゃんとあったのだ。言い出せなかったとは言え、一緒にここに来てし
まった以上は自己責任でしかない。他人に責任を押し付けるのは滑稽だ。そしてそうしたところでこの状況に光が差
す訳ではない。
 ぴたん、と目から零れた涙が眼鏡の上に弾けた。視界に水滴が映る。
 ――丁度その時、足音が聞こえてきた。誰かが女子トイレに入って来たのだ。シノは思わず身体を震わせる。この小
さな歩幅の足音はクルミに間違いない。
 シノは息を止めた。僅かな呼吸の音で気付かれるかもしれない。代わりに時折口を開閉させて、音を立てないよう
食べるようにして空気を口の中に含む。
 ――カツン、カツン、カツン。
 固い床に足音が反射して小さく響く。それは空気を伝ってシノの耳にはっきりと聞こえてきた。
 ――カツン。


79 :
 足音は真っ直ぐに奥の個室へとやって来て立ち止まった。扉の向こう側には何の気配も感じられない。
 バクバクとシノの心臓が激しい鼓動を繰り返す。緊張の果てに額から冷や汗が吹き出し、頬を伝う。
 その状態のまま、一分が経過した頃、やがて足音が再び聞こえてきた。シノのいる個室から遠ざかって行く。彼女
は固まったままだった。引き続き便器の上で体育座りして、完全に足音が消えるのをひたすら待つ。僅かでも音を立
てて気付かれてしまえば終わりだ。確実にされる。否、クルミの言葉通りでは食べられる。スクリーンで見た女の
子と同じように。
 足音が完全に消えて更に一分程が経過した後、シノはようやく重い息を吐いた。一度探しに来た女子トイレにもう
探しに来る事はないだろう。だが、いつまでも個室に隠れている訳にはいかない。可能であればミナ達の後を追い、
間に合うのであれば一緒に逃げたいところだ。この化け物の巣窟から。
 シノは顔を両膝から離し、そっと上に向けた。
 ――顔を上げるべきではなかった。心臓が破裂するくらいの衝撃が走る。
「っ!!?」
 顔を上げた視線の先で、クルミと目があった。クルミの顔が個室の扉と天井の間にあり、覗き込むようにシノを
ずっと見下ろしていたのだ。一体何時からそこにいたのだろう。足音は女子トイレから出て行ったというのに。
 クルミは残念そうな表情を浮かべながら、それでもクスクスと笑った。
「あ〜あ、クルミが食べたかったのに。うふふっ、まぁいいや。ここはミーちゃんのテリトリー。ミーちゃんに
たっぷり可愛がってもらってね、お姉ちゃん」
 “ミーちゃん”という名前にシノは思わず猫を連想するが、猫のように可愛らしい動物である筈がない。シノは
驚愕の表情を浮かべてクルミを見ている事しかできなかったが、すぐにそれも終わりを迎えた。
 突如として地震が起き、シノの身体が揺れる。否、揺れているのは彼女が座っている便器だ。排水口の奥から衝撃
が伝わってくる。それも徐々に大きくなってきていた。
 何カ、イル――とシノが慌てて便器から離れようとした時には、もう遅い。
 シノが便器から立ち上がった瞬間、便器の奥から管のようなモノ――触手が伸び、彼女の身体に巻き付いた。一本
だけではない、次から次へと触手が伸びては彼女の身体に巻き付き、強い力で締め上げる。
「や、だぁ……っ! 何コレ、助けてぇ! 気持ち悪いぃ……っ!!」
 生暖かく、生臭い臭いの放つ触手がシノの首にも巻き付く。触手はそのまま軽々と彼女の身体を宙へと持ち上げた。
彼女はそれでも扉の取っ手に手を伸ばし、抗おうとした。扉の鍵は外から掛かっていて開く事はないと分かっていて
も、本能がそうさせるのだ。
 一際大きな音が便器から聞こえてきた。恐る恐るシノがそちらへ視線を向けると、まさに化け物と呼ぶべき存在が
顔を出していた。
 巨大な、ミミズ。いや、ワームと呼ぶべきか。“ミーちゃん”という愛称は“ミミズ”から来ているのだろうが、
そんなに可愛らしい愛称で呼べるような存在ではない。触手はワームの口の奥から飛び出していた。触手が口内に戻
ろうとすればたちまちシノの身体も引き寄せられ、その大口に呑まれてしまうだろう。
「ミーちゃんは女の子が大好きなの。だからすぐに丸呑みにしないで、じっくりと味見するんだ」
 クルミは口元に微笑を浮かべたまま、見守るような温かい眼差しで一人と一匹を見ていた。持ち上げられたシノの
顔は丁度クルミの真ん前だ。シノは恐怖に顔を引き攣らせながらも、クルミに懇願する。
「クルミちゃん、お願いだから助けて! 私にできる事なら何でもするからぁっ!!」
「ダ〜メ♪ クルミが何言ってもミーちゃんは聞いてくれないの。だってここはクルミの管轄外なんだもん。言う事
を聞くのは一人だけ……」
 そう言ってクルミは自らの体重を支えていた手を伸ばし、シノの眼鏡を取った。シノは近眼だ。眼鏡がなければ
ろくに物が見えず、途端にクルミの顔がぼやけて見えるようになる。
 クルミはシノの眼鏡を掛けて遊び始める。度が合わない眼鏡を掛けると全ての物がぼやけて見えるのだ。恐らく
眼鏡を掛けた事がなかったのだろう、頻りに眼鏡を掛けては外し、変わる視界を楽しんでいる。こうして見ると本当に
年相応の幼女のようだ。ただし、そう見えるだけだ。少なくともクルミもまたワームのように普通の人間ではないの
だから。

80 :
 ワームの口から触手ではない何かが伸びる。赤黒い色をして、奇妙な突起物が大量にある長いモノ――ワームの舌だ。
クルミの言うように、味見をするために伸ばしたのだろう。舌は真っ直ぐにシノの口へと向かう。
 同時に触手の動きも変わった。シノの身体に巻き付くのをそのままに、先端が乳房や臀部へと伸びていく。一方は
服の上から素肌へと潜り込んで直に乳房を締め付け、もう一方は同じく服の中に潜り込んでパンツの上から割れ目を
擦り始めた。生暖かくぬるぬるとした感触がこれ以上にない気持ち悪さだ。例えるならアナコンダに巻き付かれるよ
うなものだろうか。だがそれよりも遥かに気持ちが悪く、おぞましい事は確かだ。
「やめてぇぇぇっ!!!」
 触手が服の中で暴れ出すと、彼女が着ていた服は瞬く間に破れ、ただの布切れを化した。布切れはひらひらと宙を
舞い、やがて床へと落ちて行く。彼女は丸裸の状態となった。形の良い乳房とムチムチした臀部が白昼の下に晒される。
 年相応の張りのある柔肌が触手によって形を変えていく。乳房を貪る触手は執拗に乳房に巻き付いたり、乳頭を弾
いたりと忙しなく動いている。臀部を貪る触手はシノの身体の中に入るタイミングを見計らっているらしく、引き続き
パンツの上から割れ目を擦り上げていた。彼女の中では恥部を嬲られる快楽よりも恐怖が先立っているのだろう、
パンツはまだ濡れている様子はない。
 ワームは更に舌を伸ばし、シノの顔の前までやって来た。彼女の目はクルミをずっと見つめており、それに気付か
ない。やがて舌は悲鳴を上げるために開かれている彼女の口に、一気に舌を突き入れた。
「――んぶっ、んんんんんーっ!!?」
「あ〜あ、キスされちゃった。ねぇ、お姉ちゃんのファーストキス? 初めてキスする気分ってどう?」
 クルミがケラケラと笑うが、シノに彼女の相手をする余裕などなかった。
 臭い。それが第一印象だった。口の中のワームの舌は所狭しとばかりに暴れており、動く度にその臭いが喉から
鼻に抜けていく。異常なまでに生臭かった。あまりの臭いに胃の中のものが込み上げて来そうになるが、舌はそれを
許さない。舌は更にシノの口内の奥へと進み、食道まで進むと、舌先からにゅるりと小さなホースのようなものを
出した。一瞬だけ大きく膨らんだそのホースから、やがて大量の白濁液を排出する。少々粘り気のあるそれはまるで
精液を彷彿させるが、生憎シノに精液を口に含んだ経験などなかった。
 ホースから吐き出された白濁液は食道を転がるように落ち、胃へと到達していく。胃の中が真っ白に色を変えていく。
 胃の中に直接異物を送られる感触に、シノはついに白濁液もろとも嘔吐しようとした。だが食道にいる舌は下から
吐瀉物が込み上げて来ようとも動く事はなかった。逆に食道いっぱいいっぱいの大きさの舌が出口を遮り、食道まで
込みあがった吐瀉物は成す術もなく胃の中へと押し戻される。
 嘔吐したくても嘔吐できない、更にワームの舌が口を塞いでいるため息苦しい。苦しさからシノの目から次々と
涙が毀れていく。

81 :
「んぐっ、んん………ふぅ、ん……ぅぅんんん……っ!!」
 ワームの舌の奥から聞こえてくるややくぐもった嗚咽。声を上げて泣き喚きたかった。子供の容姿をしたクルミの
前だからと言って遠慮する必要など何処にもない。この苦しさを僅かでも和らげてくれるのであれば、シノはそうし
たかった。
 ふと、苦しさと気持ち悪さと、そして嘔吐感が全身から消えた。口の中にワームの舌が未だに入っているというの
に、慣れてしまったのだろうか、何も感じなくなっていた。いや、違う。シノの目はとろんとうっとりとしたような
ものに変わっていた。それが意味するのはつまり、彼女は快楽を感じているという事だ。不思議な事にあれだけ痛く
気持ち悪いだけだった乳房と股間を貪る触手が気持ち良く感じている。薄地のパンツに濡れた染みが広がっていく。
 な、何? どうしたの、私? 何で……痛いのに、気持ち悪いのにぃ……何でこんなので気持ち良くなってるの――
とシノは思考を巡らせようとするが、思考を巡らせたところで身体は正直だ。頃合を見計らったかのようにワームが
彼女の口内から舌を引き抜くと、彼女の口から出たのは嬌声だった。
「んはぁっ、あっ、あぁああっ、んっ、ふ、はぁっ、あぁん……っ!!」
 嬌声に混じって飛び出したのは白濁液の混じった大量の唾液。壁や床はもちろんの事、クルミの頬にも付着する。
クルミは頬に付着したそれを人差指と親指で挟むように拭い取ると、そのまま美味しそうに指ごと頬張った。指に
付着したそれを舌先で丁寧に舐め上げるピチャピチャという音に混じって、別のところからも同様に音が聞こえてくる。
 ――シノの恥部だ。膣から溢れ出た愛液に濡れた下着が触手に擦られる事で音がしているのだ。
「うわぁ、いやらしい音だね……お姉ちゃん、そんなに気持ちイイ?」
 まだ指を舌で舐めているクルミが口を開く。
 ワームがシノの胃の中に無理矢理注入した白濁液こそが媚薬のような作用がある事を、わざわざ当人に告げる理由
はない。白濁液はあっという間に全身に行き届き、シノの神経を蕩けさせていた。全身が性感帯にでもなったようだ
が、やはり最も敏感な箇所は変わらずに恥部だ。パンツの上からでも頻繁にヒクヒクと収縮を繰り返しているのが分かる。
「きっ、聞かないでぇっ! あっ、ぁああっ! うふぅ……っ、あんっ、あっ、あっ、あっ!」
 シノの口から次々と自然に嬌声が漏れる。クルミと言葉を交わすのも億劫になる程に。
 ワームは徐に舌を自らの口内へと引っ込めると、更に激しく触手を動かし始めた。乳房を揉みしだきながらそして、
割れ目を弄っていた触手がついにパンツをずらして彼女の膣口へと侵入する。触手の先端が膣口を広げた瞬間、シノの
身体が大きく仰け反った。
「いぎいぃぃぃっ!! ひぃっ、はぁっ、あぁっ、はっ、はぁああああっ!!」
 シノの身体中を電流に似た衝撃が駆け巡る。初めてだと言うのに痛みなど欠片などなかった。身体を蝕んでいる
媚薬がそうさせるのだ。得られるのは快楽のみ。否、もしかしたら痛覚でさえも彼女は快楽と錯覚しているのかもしれない。
 触手は一気に膣の最深部――子宮口へと到達する。まるで触手に掻き出されたかのように、僅かに開いた膣の隙間
からピュピュッと愛液が迸る。激しく収縮を繰り返す膣。そうやって圧迫されるのが心地良かったのだろうか、
触手は暫くの間動かずにいたが、やがて膣内で暴れ始めた。まるでドリルのように膣の中を出たり入ったりしながら
先端部は膣壁を満遍なく激しく嬲り出していく。
「ひぁあああっ!! はぁっ! やっ、め……ぇ……ぁあああっ、あっ、あっ、あひゃぁあっ!!」
「……やっぱりお姉ちゃんもこうなっちゃうんだ。大人しそうな顔して……インラン女なんだね」
「ちがっ、ちが――あああっ!! ひっ、あぁああんっ、はぁんっ、はぁっ、あぁっ!」


82 :
 否定しようにも嬌声が先立って言葉を発する事ができないシノ。クルミはそれを充分に知っている上で発言した
のだ。彼女はもう悪戯っぽく笑うだけで、これ以上シノを見ながら何かを言う事はなかった。眼鏡越しに歪んで見え
るシノの身体はまるで宙に浮いた操り人形のようで、逃れられやしないのに頻繁に動いていた。暫く見ていても飽き
ない光景だ。
 ワームはよほどシノの身体を気に入ったのだろう、何分も何分も彼女を弄ぶ。揉まれ続ける乳房は同じ形状に留ま
る事はなく、膣口はずっと拡がりっ放しだ。
 シノもまた、完全に快楽に溺れていた。初めての絶頂は頭を真っ白にするものだったが、今となってはもう頭は
真っ白になりっ放しだ。絶頂状態が続いているかのようで、彼女はもう何も考えられなくなっていた。だらしなく
口から涎が垂れ、彼女の身体を拘束している触手が動く度に床に音を立てて垂れる。
 シノはおかしくなってしまいそうだった。否、既におかしくなっていた。何故ならば彼女の口からは時折荒い吐息
が漏れるだけで、嬌声が漏れる事はなくなっていた。絶頂し過ぎて麻痺してしまったのだろうか、それとも壊れてし
まったのだろうか。
 ワームは人間で言う“首を傾げる”ような素振りを見せた後、シノの膣に入り浸っていた触手を引き抜いた。同時
に膣口から飛び出したのは白濁液ではない。快楽によって膣内に溜まりに溜まった愛液が、出口ができた事により飛
び出したのだ。尿のように勢い良くワームの開かれた口に向けて放物線を描く。
「ぁ……っ、はぁ……ふぁ……ぁぁ……っ」
 シノの全身がガクガクと痙攣する。まだまともな脳の神経の一部が身体を正常に機能させようと試みるが、生憎
身体が満足に動く事はなかった。
 もう、らめぇ……もうイカせないでぇ……ひんじゃうぅ――というのは心の嘆きであって声になる事はない。
 ワームはもう少しシノの身体を楽しもうとして、再び口内から舌を伸ばした。伸ばした先は彼女の口でなく、膣だ。
触手より一回り大きなそれで膣を弄ろうとしているようだ。ワームは徐にそれを伸ばして先端部を膣口に密着させる
と、間髪入れずに突き入れる。
 ――だが、シノの身体は無反応だった。先程まで響かせていた嬌声も、もうしない。
 ワームは何度も舌を出し入れするが、それは同じだった。シノの反応をつまらないと思ったのだろう、ワームは
最後とばかりに再び先端部からホースを出すと、白濁液を噴出した。白濁液は子宮口から直接子宮に注がれ、入り切らなかったそれが膣内に溢れる。

83 :
 否定しようにも嬌声が先立って言葉を発する事ができないシノ。クルミはそれを充分に知っている上で発言した
のだ。彼女はもう悪戯っぽく笑うだけで、これ以上シノを見ながら何かを言う事はなかった。眼鏡越しに歪んで見え
るシノの身体はまるで宙に浮いた操り人形のようで、逃れられやしないのに頻繁に動いていた。暫く見ていても飽き
ない光景だ。
 ワームはよほどシノの身体を気に入ったのだろう、何分も何分も彼女を弄ぶ。揉まれ続ける乳房は同じ形状に留ま
る事はなく、膣口はずっと拡がりっ放しだ。
 シノもまた、完全に快楽に溺れていた。初めての絶頂は頭を真っ白にするものだったが、今となってはもう頭は
真っ白になりっ放しだ。絶頂状態が続いているかのようで、彼女はもう何も考えられなくなっていた。だらしなく
口から涎が垂れ、彼女の身体を拘束している触手が動く度に床に音を立てて垂れる。
 シノはおかしくなってしまいそうだった。否、既におかしくなっていた。何故ならば彼女の口からは時折荒い吐息
が漏れるだけで、嬌声が漏れる事はなくなっていた。絶頂し過ぎて麻痺してしまったのだろうか、それとも壊れてし
まったのだろうか。
 ワームは人間で言う“首を傾げる”ような素振りを見せた後、シノの膣に入り浸っていた触手を引き抜いた。同時
に膣口から飛び出したのは白濁液ではない。快楽によって膣内に溜まりに溜まった愛液が、出口ができた事により飛
び出したのだ。尿のように勢い良くワームの開かれた口に向けて放物線を描く。
「ぁ……っ、はぁ……ふぁ……ぁぁ……っ」
 シノの全身がガクガクと痙攣する。まだまともな脳の神経の一部が身体を正常に機能させようと試みるが、生憎
身体が満足に動く事はなかった。
 もう、らめぇ……もうイカせないでぇ……ひんじゃうぅ――というのは心の嘆きであって声になる事はない。
 ワームはもう少しシノの身体を楽しもうとして、再び口内から舌を伸ばした。伸ばした先は彼女の口でなく、膣だ。
触手より一回り大きなそれで膣を弄ろうとしているようだ。ワームは徐にそれを伸ばして先端部を膣口に密着させる
と、間髪入れずに突き入れる。
 ――だが、シノの身体は無反応だった。先程まで響かせていた嬌声も、もうしない。
 ワームは何度も舌を出し入れするが、それは同じだった。シノの反応をつまらないと思ったのだろう、ワームは
最後とばかりに再び先端部からホースを出すと、白濁液を噴出した。白濁液は子宮口から直接子宮に注がれ、入り切らなかったそれが膣内に溢れる。

84 :
 ――ブビッ、ブビビッ。
 白濁液の噴出を終えたワームの舌が膣から出ると、まるで放屁のような音と共に膣から白濁液が勢い良く噴出した。
 シノにもう感覚はなかった。宙でぐったりとしたまま、まだ身体が痙攣している。壊れてしまった操り人形――……
その例えが適切だろうか。
 ――壊れてしまった玩具に、もう用はない。ワームは口を更に大きく開き、口内から飛び出している触手を引っ込め
ようとする。もちろん、触手はシノの身体に巻き付いたままだ。ゆっくり、ゆっくりとシノの身体がワームの口に近
付いていく。
 クルミは声に出さず、「ばいばい」と口だけを動かし、シノに向かって手を振った。当然、シノがそれを知る由も
ない。
 触手によって「く」の字に折り曲げられたシノの身体。ついに臀部がワームの口内に収まると、ワームは彼女を拘
束していた触手を一気に口内へと戻した。シノの身体を縛るのはただワームの口だけだ。今動けば、あるいは助かる
見込みがあったのかもしれない。無論、彼女にその気力があればの話だ。
 シノはもう動く気力さえ、否、思考を巡らせる気力さえ残っていなかった。
 ワームは口を天井へと向けた。口を更に開くだけで、シノの身体が重力に引かれるままに勝手に口の中へと入って
いく。運動が苦手な彼女はそう身体が柔らかくはない。「く」の字からなかなか上手く折り畳めない彼女の身体を煩
わしく思ったのか、ワームは彼女を咥える口に力を入れた。メキッ、という小さく嫌な音が響くと共に、シノの身体
は綺麗に折り畳まれる。
 沈んでいくシノの身体。もう足以外は完全に口の中に収まっており、彼女の視界は暗闇が広がっているだけだった。
 
 あぁ、そういえば今、夜だっけ……通りで暗くて、眠いワケね……。何処だろう、ココ……あったかくて、何か、
気持ちイイ……キモチ、イイヨ――。
 ゴクリ、と喉を鳴らす音が聞こえたと同時に、シノの意識は完全に闇に呑み込まれた。もう彼女に助かる見込みは
ない。彼女はこの先、長い時間を掛けてワームに消化されるのだ。ただし、それは別に生きたままでなくても良い。
呑み込んでしまえばまだ獲物が生きていようがんでいようが、ワームにとってどちらでも構わないのだ。
 ワームは便器の中へと長い胴体を戻そうとする。獲物を含んだまま居場所としている下水へと返ろうとしたのだ。
当然、シノの身体が引っ掛かって小さな排水口を通らない。だからと言ってワームはせっかく呑み込んだ獲物を吐き
出そうとはしなかった。
 ワームがとった行動は、酷く強引な手段だった。シノの身体ごと、無理矢理そのまま排水口を通ろうとしたのだ。
ワームが排水口へと戻ろうとする度、ガン、ガンと激しい音が立つ。言うなればシノの身体が便器にぶつけられてい
るのだ。
 ガン、ガン、ガン。その音は徐々に大きくなっていく。振動が地震のようにコンサートホール全体を揺らす。
 十回程繰り返した頃だろうか、一層大きな音が響き渡ったかと思えば、ワームの姿は個室の中にはなかった。
 大きな音に混じって、踏み潰された蛙のようなくぐもった悲鳴が聞こえたのは恐らく、気のせいではない。
「――……お粗末様でした」
 その様子をじっと静かに見守っていたクルミは、掛けていたシノの眼鏡を便器の中へと投げ捨て、ひょいと床へと
降り立った。まるで何事もなかったかのようにクルミはステージへと戻るために歩き出す。そろそろ他の参加者達も
食べられた頃だろうかと、鼻歌混じりに想像しながら。
 シノがここにいたという証拠。便器の中に沈む一つの眼鏡は、やがて誰にも気付かれる事なく下水へと流れていった。

85 :
ごめん、間違えて>>83連投してしまった
今回は冒頭部分もあったから長くなったけど、次のキャラからはもっと短くなるハズ

86 :
地獄からの招待状の方、まだリク受け付けてたら人型の意思のある化け物に凌辱されたあとに生きたまま太股や胸を食べられて、最後に性器と子宮を食べられちゃうようなの書いて欲しいです!
もうまとまっちゃってるならスルーの方向で

87 :
新展開素晴らしい!俺もそのショー見に行きたいよ。
続き楽しみにしております。
捕食モンスターはコックボアっていうジャンルもあるらしいから
牙や歯の生えたちんこ(独立機動)あんていかがでしょう

88 :
>>86
了解、それじゃユリでそれを書いてみる。
>>87
調べてみたけど、それって独立して動くんならワームとどう違うの?
ほぼ実物大の男性器(サオのみ)に口を生やしたものでいい?
今思いついたシチュは、卵か何かが女体に侵入して子宮内で成長、その後出産、
出産したそれらに母体が口や膣を犯された挙句に捕食って感じだけど。

89 :
87だけど思いつきで言ってみただけだから深く考えなくてもええよ
難しかったら書いても書かなくてもええよ

90 :
じみに続いてるけどたまに落ちるよなこのスレ

91 :
即したのは5スレ目だけだよ

92 :
落ちないように書けてるところ投下するかな

93 :
第2話 【早瀬エミ】


 ステージの裏から地下に降りた瞬間、前を走っていた筈のミナとマオ、そしてレイカとユリの姿が跡形もなく消えた。
階段を降りてすぐに気付き、サエとエミは同時に足を止める。階段を降りた先は一本の長い廊下。廊下の奥には扉が
見えるが、そこに辿り着くには果たして徒歩で何分掛かるだろうか。その場から見える扉というのも、比較的視力の
良い二人でやっと見える程度の大きさだ。目算で一キロメートル程離れているような気がした。
 二人はきょろきょろと周りを見回すも、見えるのは白い壁だけだ。奥にある扉以外に、壁に扉は一つも見当たらない。
前を走っていた四人は一体何処へ消えたのだろう。ここに至るまでは本当に一本道だったのだ。四人もまたこの
廊下に来ている筈なのだが、姿はない。まるで神隠しにでも遭ったかのように。
「あ、あれ? 他の皆は?」
「さ、さぁ……」
 サエが問い掛けるもエミが答えられる筈がない。二人して首をそれぞれ別の方向に首を傾げている光景は、まるで
間に鏡でも置いてあるかのようだ。唯一違うのはカチューシャの色のみ。双子とは言え、それ以外は姿格好も含め
全く同じだ。
 鬼とやらは二人が入って来た道から出てくるのだろうか。捕まらないようにするためには、予めできるだけ離れた
位置にいる方が良いに決まっている。二人はどうするか相談する間もなく、「鬼が来たら走ろう」と言葉にせずとも
通じ合い、揃って歩き出した。最初から走っても疲れるだけだ。鬼とやらが後ろからやって来ない可能性も否定でき
ない以上、悪い判断ではない。もしかしたら奥の扉の向こう側で待機しているかもしれないのだ。
 いずれにしろ、二人は「所詮ゲームでしょ」と笑い合うだけで、深く考える事をしなかった。そう、確かに鬼ごっ
こというゲームでしかない。だが二人はまだ知らない。このゲームは勝つか負けるかの二択ではなく、生きるかぬ
かの二択だという事を。
 二人は暫く黙って長い廊下を歩いていた。響くのは二つの足音だけで、静かなものだ。そんな静けさを煩わしく思
ったのか、二人は同時に口を開く。

94 :
「ねぇ」
 同時に口を開かれては互いに遠慮して次の言葉が出てこない。ここまで思考回路も含めて瓜二つの双子も珍しい
だろう。言動や行動、考え方、そして容姿。全てに至って同じなのだ。例えば学校のテストでも全く同じ箇所を間違
った同じ点数という事もままあった。学校では誰でも知っているような人気者で、特に多くの男子から人気があった
が、誰も彼女達に想いを伝える者はいなかった。当然だ、サエとエミの内のどちらが好き、という想いではなかった
からだ。どちらでも良い、あるいはどちらもが良い、という想いの告げ方にしかならず、玉砕するのは目に見えて明
らかだ。男子にとってサエとエミは双子で、いつも一緒だから良いのだろう。
 サエが事実上の姉であるが、今となってはどちらが姉でも妹でも関係ない。幼少の頃から二人とも互いの名前を呼
び捨てで呼び合っている。二人の親もまた、姉だから、妹だからと言って二人を区別や贔屓する事なく育てていた。
結果として親でさえなかなか二人の区別ができなくなっているのは滑稽で、呼び間違えられる度に二人は笑って呆れた
ものだ。
 唯一、二人を完全に区別する事ができたのはレイカだった。どういう訳か彼女だけは二人を呼び間違える事なく、
的確に話をするのだ。初めて会った時から戸惑う素振りさえ見た事がない。学校では名札を見れば分かるが、プライ
ベートで遊ぶ時でも関係なかった。二人が意図したように全く同じ格好をしていたのにも関わらず、だ。別に二人は
騙そうとしていた訳ではなかったが、一度彼女に聞いた事があった。「どうして分かるの」と。返って来た答えはある
意味でシンプル、そしてある意味で複雑怪奇なもので、「二人は似てるけど、やっぱりサエちゃんはサエちゃんで、
エミちゃんはエミちゃんだから」という事だった。そう言ってクスクスと笑うレイカを前に、二人して頭にクエスチ
ョンマークを浮かべたのも記憶に新しい。
 多分、エミも同じ事を考えてるんだろうな――とサエはエミの目を覗き込み、微笑んだ。
「この鬼ごっこに勝ったら、エミは何をもらうの?」
「うーん、勝った時に考えるかなぁ」
 やはり同じ事を考えていた。せっかくの機会だから高価な物が欲しいところだが、具体的に思い浮かぶ物は何一つ
ない。宝石やブランド物、有名な絵画――……二人はどれも自分達には似合わないと思っていた。金銭も毎月親から
貰う小遣いで不便していない。思い浮かぶのはせいぜい将来の事を考えて、現金を貰って貯金するか、あるいは親に
新しい自動車でも贈る事ぐらいだろうか。
 いずれにしろ、勝つ前から勝った時の事を考えても仕方がない。負けたら何も貰えないのだ。
 ふと、エミはようやく負けた時――即ち鬼とやらに捕まった場合、どうなるのか何も聞いていない事を思い出した。
「ねぇサエ、この鬼ごっこって鬼に捕まったらどうなるのかな?」
「どう、って……ただのゲームでしょ? 普通の鬼ごっこだったら鬼を交代するけど、ホールまで強制送還とかじゃないの?」
「そ、そうだよね、別に罰ゲームがあるとかじゃないよね」
「そんなのがあるとは聞いてないよねぇ……もしあったら詐欺よ、詐欺! 訴えてやるんだから!」

95 :
 そう言ってサエは笑うが、一体誰を訴えるというのだろうか。自分達を誘ったレイカ達だろうか、それとも説明し
なかったクルミだろうか。あるいは客席に座っていた協賛者全員だろうか。この場合、訴えるのであればイベントの
主催者になるのだろうが、主催者が誰であるか知る由もない。招待状には知っての通り何も書いていなかったのだ。
 考えを巡らせると余計な疑問しか出て来ない。恐らく考えたところで見出せる事のできない答えなのだ、考えるだ
け無駄だ。二人は自然と早足になる。心の中で「罰ゲームなんかない」と言い聞かせながらも、もしもの事を考える
と不安になったのだ。
 奥に見える扉が随分と大きく見えるようになった。二人は長い廊下の中腹に当たる箇所まで歩いて来ていた。休憩
するように二人は足を止め、恐る恐る後ろを振り返った。誰も――否、何もいない。入って来た階段もまた随分と小さ
く見えるようになっていた。周りを見回しても相変わらず何もなかった。こんな風景な廊下にする必要などあった
のだろうか。
 一本の短い糸。エミは丁度それを踏み付ける形で足を止めていた。白い廊下の上に落ちていたそれに気付く由もな
かった。いや、仮に気付いていたところでそれを避けようとは思わなかっただろう。少なくとも見た目はただの毛な
のだから。
 糸はもそもそと独りでに動き出す。エミの靴に挟まれていたが僅かに開いた空間から抜け出し、靴の上へと出た。
糸は動きを止める事なく、彼女の足に張り付いて上へと上り始めた。エミはまだその存在に気付かない。素足を上ら
れているというのに、その感覚が全くなかったのだ。糸は念の為、サエに見付からないように彼女の角から――脹脛
の方から上っている。
 糸が臀部にまで到達した頃だろうか、二人は歩き出した。糸は既にエミのスカートの中、白いパンツの真下にいた。
糸はまるで振り落とされないようにするかのようにパンツの中に潜り込むと、顕微鏡でしか見えない大きさの小さな
歯を立てた。糸――否、それは小さな小さなミミズのような虫。虫は歯をエミのお尻に押し当てると、皮膚に小さな穴
を開け、その穴から全身をエミの中へと侵入させた。
「――痛っ!?」
 ビクン、とエミの身体が飛び跳ねた。同時に両手で痛みが走ったお尻を押さえるも、そこに何か異物があるような
感触はない。彼女はそのまま大胆にもスカートの後ろを捲り上げ、直にお尻を触った。やはり何もない。恐る恐るお
尻に触れた指を眼前に持って来るが、血は付着していなかった。

96 :
「どうしたの、エミ? お尻がどうかした?」
「きゃっ! ちょ、ちょっとサエ!?」
 サエは更に大胆だった。突然声を上げたエミの背後に回ると、両手でパンツの端を持って膝辺りまでずり下ろし、
そしてスカートを捲り上げたのだ。ぷるんとした形の良いお尻が露になる。まじまじとエミのお尻を凝視するサエ。
何も変わったところはない。
「いっ、いくら双子でも恥ずかしいって、サエ! 息がお尻に当たってくすぐったい……っ!」
「な〜んにもなってないよ? 心配なら痛かったところを舐めてあげよっか?」
「いいよそんなのぉっ! は、早く元に戻して!」
「はいはい、今戻すね」
 サエは素早くパンツを上げ、スカートを持っていた手を離した。あっという間に元通りになるが、エミはやはり痛
みを感じたお尻に違和感を感じていた。あの痛みはまるで家庭科の時間に待針を誤って手に刺してしまったそれに似
ていた。だが針や棘が刺さったのであれば血が出ている筈の上、サエに直に見てもらっても何もなかったという事
は、やはり気のせいだったのだろうか。いや、そんな筈はない。
 エミは暫く気恥ずかしさに顔を赤くしながらも、やがて引き続きサエと並んで歩き出した。そうしている間にも
お尻から侵入した小さな虫は動きを止めない。誰にも気付かれないまま、エミの中のとある場所へと神経を掻い潜り
ながら進行していった。
 更に十分程歩いた頃には、エミは先程の痛みの事などすっかり忘れてしまっていた。代わりに下腹部に違和感を覚
え始めた。違和感が痛みへ、そして激痛へと変わっていくのにさほど時間は掛からなかった。自然と額に脂汗が浮き
出し、息遣いが荒くなる。隣のサエが気付かない筈がない。
「エミ、具合悪いの?」
「……お腹、痛い……っ」
「え〜っ、困ったなぁ、ここにトイレなんかなさそうだし――……」
「ト、トイレじゃないと思う、この痛み、は……うっ、く……はぁっ、はっ、つ……ぅっ!」
 エミが手で押さえている場所に気付いた時、サエはハッとして自分の下腹部にも手を当てた。下腹部を押さえて痛
みを訴えるとしたら、周期的に訪れる“あの日”しかない。サエとエミはこれまで“あの日”さえも全く同じ周期
だった。だから自分にも訪れると思ったのだが、それは違う。前回“あの日”が来てから、まだ二週間も経っていな
いのだ。エミだけ周期が早くなる筈がない。また、こんなに激しく痛みを訴えるのを見るのも初めてだった。

97 :
「ちょ、ちょっとエミ! しっかりしてよ!」
 とうとう痛みに耐え切れなくなったエミはその場に蹲った。頬や足を伝う脂汗の量から尋常ではない事態だという
事が分かる。鬼ごっこをそっちのけで今すぐにでも救急車を呼びたくなったサエは、何をすれば良いのか思考を巡ら
せる。ここはコンサートホールの地下で、進むにしろ戻るにしろどちらも距離がある。動けないエミを背負って歩く
には時間が掛かり過ぎる。ふと、サエの頭の中にホールで聞いたクルミの言葉が過ぎった。
 ――あちこちに監視カメラがあるから道に迷っても大丈夫だよ。
 サエは慌てて改めて辺りを見回した。監視カメラらしき物は何処にも見当たらない。いや、単純にイベント参加者
に見えないように工夫がしてあるだけで、本当にあちこちにあるのかもしれない。そのカメラにマイクが装着されて
いるかどうかは疑問だったが、彼女はすぐに何もない廊下の天井に向かって、人差指と人差指で“×”を作りながら叫んだ。
「すみません! 私達ここでゲームをやめます! エミの具合が悪いんです! だから迎えに来て下さいっ!!」
 そう叫んだ後、サエの耳に聞こえてきたのは更に激しさを増した背後からのエミの嗚咽だけだった。聞くに堪え
ない、本当に苦しくて辛そうな声だ。鬼ごっこどころではない。サエは一人で鬼ごっこを続けたいとは微塵も思わな
かった。ゲームよりもプレゼントよりも遥かに大事なのは、自分の分身とも言えるエミの身体だ。
 サエは視線をエミへと戻した。エミは仰向けに倒れていて、両手で下腹部を押さえながら悶絶していた。とても周
期的に訪れる生理による痛みだとは思えなかった。彼女の身体の中で“ナニカ”が起きているのだ。
 異変はサエが見守る中で始まった。エミの下腹部がまるで妊婦のように膨れ上がり始めたのだ。見る見る内に大き
くなっていくエミの下腹部。異常な光景にサエは目を丸くし、腰が抜けてぺたんと床に尻餅を付いた。下腹部は着て
いた衣服から飛び出す。直で見ると肌がパンパンに膨れ上がっており、中にサッカーボールでも入っているかのようだった。
 下腹部の膨張は止まった。代わりに膨張した下腹部の内側から“ナニカ”が蠢いているのが外からでも見えた。
「なっ、何コレ……怖い、怖いよぉっ!!」

98 :
ここまで
続きはまた書けたら

99 :
あ、ちなみに分かると思うけど87のアイデアね
思い付きで書いてるから、趣向が違ってたらごめん
でもこういうの好きな人って結構いると思うんだ

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