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2012年3月FF・ドラクエ198: 【魅惑の青】ククール×ゼシカ13【情熱の赤】 (732)
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【魅惑の青】ククール×ゼシカ13【情熱の赤】
- 1 :
- ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃カップル萌えスレでこれだけは守れ!
┃1.常時sage進行を原則としろ。この板は最下層でも落ちないから安心だ。
┃2.煽り荒らしは当然放置な。特に他カプ萌え派を装い抗争を誘う連中には完全無視を貫け。
┃3.他スレで萌えキャラが貶されていても一切構うなよ。相手にしたら負けだ。
┃4.SS投稿してくれるときはなるたけトリップをつけろ。トリップくらい知っとけ。
┃5.エロいSSや画像のうpは……俺的には大歓迎だが注意書きくらいつけてくれな。
┃ なんだったら>>2にある隠れ屋の方をどんどん利用してくれ。
┃ 21禁以上の大人なエロ、それにグロ汚物系は相応の板へ投下しろ。
┃ ,'^y'⌒⌒ヾヽ.〃彡ミヽ.
┃ ))!#八~゙リ(,〈(((/(~ヾ). / 守らねー奴にはSHTバイキルトミラクルムーン&双竜打ちだ。
┗ (.(ヾ(! ゚ヮ゚ノ!) ヾ巛.゚ー゚ノ" / ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
'゙ /ヽ、)ノ)σ/~'i':=:!゙)つ ゼシカ センセイト ククッル... フタリノ
|~ ̄) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ∧ ∧ ∧ ∧ カンケイワ?
| ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| (゚ ) (゚ )
| | | =====⊂ ヽ==⊂ ヽ======
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||──( ノ〜─( ノ〜─||
|| ┏━━━━━━━━┓ ||
前スレ
【ハニー】ククール×ゼシカ12【バニー】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ff/1295003952/
- 2 :
- ,'^y'⌒⌒ヾヽ.〃彡ミヽ.
))!#八~゙リ(,〈(((/(~ヾ》
(.(ヾ(!゚ n゚ノ!) ヾ巛^ヮ゚ノ"
'゙ /ヽ、)ノ)づく"'i':=:゙i!}つ
U曰ニ〈 〈._,」"Yヾl.
// ,!@ i†=|=|ノ
ん、_!__!,ゝ. |ー |-|.
[まとめサイト]
ttp://www.geocities.jp/kukule_jessica/(リンク切れ)
[まとめwiki]
ttp://www20.atwiki.jp/kkjs/pages/1.html
[ククゼシお絵かき掲示板]
ttp://fox.oekakist.com/kkjs/
[ククゼシ専用ろだ]
ttp://www12.uploader.jp/home/kj/
[ククゼシの隠れ屋]※年齢制限があります。
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12376/#1
鳥山イラスト
ククール
ttp://www.dqshrine.com/dq/dq8/dq8-a07.jpg
ttp://www.dqshrine.com/dq/dq8/dq8-a08.jpg
ゼシカ
ttp://www.dqshrine.com/dq/dq8/dq8-a05.jpg
ttp://www.dqshrine.com/dq/dq8/dq8-a06.jpg
- 3 :
- [過去スレ]
DQ8 ククール×ゼシカでカプばな〜
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101739628/
【カリスマ】ククール×ゼシカ2【お色気】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1110809484/
【ハニー】ククール×ゼシカ 3【……バカ!】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1115903844/
【君を守るよ】ククール×ゼシカ 4【はいはい】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1124707443/
【みわくの眼差し】ククール×ゼシカ 5【愛のムチ】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137087783/
【復活】ククール×ゼシカを推すスレ (実質6)
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1170726769/
ククール×ゼシカを推すスレPart6 (実質7)
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1208614535/
【水風船】ククール×ゼシカ8【うぬぼれ屋さん】
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1224590198/
【落ち込むなよ】ククール×ゼシカ9【うん…】
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1240289126/
【ブラコン】ククール×ゼシカ10【カップル】
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1254749122/
【不良騎士】ククール×ゼシカ11【強気お嬢】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ff/1275725593/
関連スレ
【DQ8】ゼシカ総合スレ PART20
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ff/1309502639/
- 4 :
- 前スレ容量越えで書き込めなくなったのかw
>>1乙!
前スレ>>886-887も乙
ゼシカの乙女っぷりかわええw
- 5 :
- >>1乙!迅速な対応ありがとう!!
焦ったww容量越え早いなーSSが多かったから?
前スレ>>887
え、何この可愛いコwwwwww
ククールにモロにシンクロして身悶えてしまった…
もう早く押し倒せ
「これが男の力だってわかっただろ…不用意に男の体に触るな。お前は無防備すぎるんだよ…!」
とか言って泣かせてしまえばいい
そして「やっぱりククールは…男の人なんだ…」とか跡の残る手首を見ながら呟いて頂きたい
- 6 :
- >>5
ククールドSwwwwww
でもまぁ確かにそんな調子で色んな男に同じ様にされても困るしなー
そこを嫌われ役を買ってでもゼシカにわからせる…
そういう手段を選ぶのもククールらしいといえばらしい
あ…あれ涙が……
- 7 :
- 前スレ書き込めなくてびっくりしたw
前スレ>>887
天然ゼシカが可愛すぎて悶えてしまうww
これは是非ククさん視点で見たい!
ゼシカが制服をこっそり着てる所を目撃して欲しいwww
- 8 :
- これは>>1乙じゃなくて
ただの髪型なんだから…!
.,'^y'⌒⌒,r―一、 〃'⌒iミヽ.
))!#八~゙リ:}'゙¨7::/ (〈((~)リ))|i 素直じゃないなハニー
(.(ヾ!*゚ -゚ノ .〈::::'--'} I゚ヮ゚*川.、,r―一、 ゼシカの>>1乙なら
'゙/ヽ、)ノ)  ̄ ̄ .'゙¨7::/ ちゃんと届いてるから安心しろな
〈::::'--'}
>>5
そんなSSを前に読んだ気がするw
やっぱりククゼシはそういう王道パターンが恐ろしいくらいに似合うカプですよねw
- 9 :
- 毎回思うけど>>8このAA作った人GJすぎる
でもゼシカは
「ただ抱きついたり身体を触っただけなのに、ククールにはあんな怖い顔するほど鬱陶しかったんだ…
私ばっかりはしゃいで、浮付いて…バカみたい…」
とかって傷付いちゃって
そこでようやく自分がククを好きなんだって気付けばいい
でもウザがられてると勘違いしてるからククに対してすごいビクビクするようになったらいい
- 10 :
- いつも勝気で直情型で小生意気な感じだったゼシカが
途端にククに対してのみちょっと小動物のようにビクつくようになったら
(ビクつきながらも態度は一応強気であろうとする)
ククはククで結構ショックを受けそうだけど
真相が分かった途端 ゼシカ可愛すぎるだろオイ!!! ってなりそうw
- 11 :
- ケガしててもかたくなに隠して、ホントは気付いてたククが
業を煮やして治療のために無理やり手とかガッと掴んだらめっちゃ怯えた目されたりしてw
「そんな顔すんなよ…もう何もしねぇよ」ってククさん苦しげに呟いて己の所業を後悔してもしきれず
でもゼシカは「本当は私に触れるのも不愉快なくせに、どうして優しくするのよ…」
とか全く勘違いしたところでビクビクしちゃってたり
でもビクビクゼシカにゴロゴロするククさんも大好物w
- 12 :
- _, ,_
:.ξ(;゚д゚)ξ:. な、
:.レV):. 何よククール!!
:.<<:.
ビク
ビク
- 13 :
- 前スレで職人さんが投下してたゼシカオタクのククだったら、
びくつくゼシカを見て(何この小動物みたいな愛らしい生き物!うおおおお萌え!)ってなりそうな気がするw
- 14 :
- >>12
やっばいめちゃめちゃ可愛いwwww壁際までジリジリ追い詰めて半泣きにさせてから
抱えて持って帰りたいww
ククには渡せないw
- 15 :
- ゼシカを壁際までじりじり追い詰めて楽しんでいるちょいSなククの様子が…
- 16 :
- ビクビクゼシカもジリジリククもでてこないSSですが投下いたします
オリキャラ出てくるんで苦手な方は暫くスルーで御願します。ゴメンナサイ
- 17 :
- 最後にビンタのひとつでも喰らわせてやればよかったかな、
クラリスはそう思いながらドアを見つめていた。
「………できないくせにね〜。。」
溜め息交じりに呟き、掌で空を切ってみる。それはビンタの要領で。
その手にはまだ僅かな温もりが残っていた。
頬には触れず、ただ彼の背中を押しただけの自分の手を見る。
次の瞬間、フッと外の気配がなくなったのを感じた。
ククールは行ってしまった。
それがわかった途端、クラリスはその場に座り込んだ。
「………・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ」
クラリスの頬を知らず涙がつたっていた。
クラリスの働くバーにククールが現れたのは一か月前。
端正な顔立ちと洗練された身のこなし、適度なリップサービスに徹底したレディファースト…
ククールはすぐにバニー達に取り囲まれた。
「ククールは何をしてる人なの〜?」
「何に見える?」
「そうね〜、、、お城の戦士…にしては綺麗すぎるし、旅の武道家!って感じじゃないし…」
「でも魔法は使えそうだよね〜」
「じゃあ僧侶とか?!」
「えーこんなにお酒飲む僧侶ぉ〜?」
「うーん、、でも服装は僧侶っぽいんだよね〜・・・ホラ、どこだっけ、あの有名な…」
「わかった!聖堂騎士団!」
「そうそう!でもさ、あそこってたしか、トップの人が居なくなってグダグダになったんじゃー・・・?」
「それ聞いたことある!カリスマ団長が行方をくらましたとかなんとか………って、あれ?ククールは??」
マルチェロを探し始めて一年強
何の手がかりもないまま始めたこの旅は、人の噂だけを頼りに町から町へと渡り歩くものだった。
新しい町に着いたらまずは酒場へ、というのはエイト達と旅してきた頃からの習慣だ。
(もっともククールにとっては観光であれ、人探しであれ、そこは非常に敷居の低い場所ではあるのだが)
その日もククールは情報収集を兼ねてバーを訪れた。
バニー達との会話からマルチェロらしき人物を探るがなかなか手応えは得られない。
(今日もダメか………まぁ気長にいくか…)
そう考えた時、ふとククールの思考が止まった。
『何よ?ジロジロ見ないでくれる?』
ツンツンしているのは髪だけじゃあないんだな、そう目の前を跳ねるツインテールを見て笑いながら言った。
『赤毛の女の子ってどーして皆こう気が強いのかね?ま、激しい女性も嫌いじゃないけど』
『決めつけないでよ!それに私はアンタみたいなタイプだーっい嫌い!』
『おおー怖い怖い。』
そういうと赤毛はずんずんと歩みを早めて…
- 18 :
- 「どうかした?」
遠ざかるはずの赤毛が、目の前にあった。
「いや…、綺麗な髪だな、と思って」
咄嗟に、ククールはそう言った。本心だった。
「ありがとう。…でもあんまりね、本当は好きじゃないんだ、あたし。」
赤い毛先をほんの少し摘まみながら、バニーは言う。
「何故?」
「もっとこう…柔らかい栗毛に憧れるのよね」
「君も気が強い?」
「……?ふふ。どうかしら」
「似合ってるよ」
「そう?あなたみたいな人に言われると嬉しいわ」
にっこり笑って彼女はその場を離れた。
その後姿を、揺れる赤毛を、ククールはただ眺めていた。
旅の仲間と会うことはなかった。
晴れて聖堂騎士団を脱退した弟はそれでも兄の呪縛から離れることはできなかった。
怠惰な日々が続いた。破るべき規律のない生活はどこか虚しかった。
これは己の問題だ、そう悟った時、ククールはドニを後にした。
生きているかさえもわからない、たった一人の肉親を探すことは、同時に過去の自分とも向き合う作業だった。
(見つかったところでどうすんだ…)
孤独とは親しいはずのククールだったが、永い間故郷を離れての一人旅は、彼にセンチメンタリズムをもたらした。
「今日も浮かない顔してるのね」
ククールは顔をあげた。赤毛のバニーが彼を覗き込む。
「やぁ」
「おかわり?」
「あぁ」
「待ってて」
クラリスはククールにグラスを差し出した。
「君だけ、まだ名前を聞いてなかったな」
「クラリスよ」
「よろしく。俺は…」
「ククール、でしょ。みんな知ってるわ」
クラリスがウインクした。
ククールは少しだけ、気が紛れた気がした。
- 19 :
- 他のバニーとクラリスの違いは、仕事に対する姿勢だった。
勿論バニー達は皆よく働くのだが、隙あらばククールの傍へやってくる。
ただ、クラリスだけは客を選ぶことなく務めていた。
それでククールと会話するのが遅れたのかもしれない。
いつしかククールはクラリスを目で追うことが増えていた。
「兄を、探してるんだ」
ククールが自分の事を話すのはきっととてもめずらしいことに違いない、
クラリスはそう思いながらもつとめて冷静に相槌を打った。
「そうだったの」
「最後に会ったのが一年前だ。それきりどこにいるのか分からない。なにか知っていることがあれば教えてほしい」
ククールは、本能的にクラリスを信頼できると感じ、マルチェロのことを話し始めた。
クラリスは、ククールがおそらくこの町で自分だけに打ち明けてくれることを嬉しく思った。
クラリスは頭の良い女性だった。
職業柄、たくさんの人を見てきている。
(本気になっちゃダメ)
そう決めて、今まで接してきたつもりだった。
たとえ、最近綺麗になった、と客に言われようとも。
傍から見れば、バニー仲間達が妬くほど、ククールとの距離が縮まっていても。
(ダメよ、クラリス。だって彼には………)
ククールはクラリスといると心地よかった。
適度な距離感。
テンポいい受け答え。
そして………歩くたび揺れる赤毛。
何故こうも彼女に魅かれるのか。
どこか懐かしいこの感覚はどこから湧いてくるのか。
ククールにはわかっていた。だがそれを認めるのを、彼自身が拒んでいた。
(…今の俺じゃあダメだ…あいつに会わせる顔がねぇ…)
そんなある日のことだった。
- 20 :
- ククールは1人、バーで飲んでいた。
その日の彼はいさささか興奮気味だった。
兄マルチェロに関する有力な情報を得たからだ。
それが事実ならば兄は生きている、そう思うとククールの胸の奥を得も知れぬ感情が湧き起こる。
世界を平和に導いた伝説の勇者と共に闘ったカリスマ騎士だが、こと兄に関してはあの日のまま前進できないでいた。
(兄貴・・・・・・)
怒りと安堵・・・いや、もっと複雑な想いがククールの胸中を駆け巡る。
「ククール!」
仕事を終えたクラリスが隣に座るのが慣習になっていた頃だった。
「オツカレ」
いつもと違う様子を察し、クラリスはわざと明るい声を張り上げた。
「今日は疲れたぁ〜 さ、カンパーイ♪」
「ご苦労さん、乾杯」
そういって二人はグラスを重ねる。
「めずらしいわね。グラスを重ねるのって嫌いじゃなかったっけ?」
クラリスはいつだって敏感だ。それは職業病か、それとも・・・
「・・・祝いさ」
ククールはそう言って、再びグラスの中の赤い液体を眺めた。
先ほど得た情報を反復する。
間違いない。マルチェロは生きている。
確信に変わった瞬間、一気に酔いが廻るのを感じた。
「これじゃあまるで残業ね」
軽く笑いながらクラリスはククールの肩をとる。
介抱はクラリスの専門分野だ。
マスターは黙ってグラスを磨いている。
『兄貴の情報が聞けた。たぶん生きている』
そう話したククールは、どこか怯えているようにも見えた。
「会いに行けば?」ククールがクラリスにそう言ってほしいのは目に見えていた。
事実彼は後押しを欲しいていた。
だが、その背を押せば、二度と胸を見ることはないであろうことも、聡明な彼女には判っていた。
何度も並んで飲み明かした夜が、一気に思い出へと移行していく。
それらは、珍しく酔い潰れて薄く寝息を立てている彼の寝顔を見ている程に、彼女の胸に刻まれていった。
「兄・・・・・・・貴・・・・・・・・無・・事で・・・・・・・・・」
美しい銀髪を撫でる。なんて愛おしいのだろう。なんて愛してしまったのだろう。
寝言で呟く彼を慈しむ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ゼシ・・・・・・・・・・カ・・・・・・・・・やっ・・・・・・・・・と・・・」
初めて聞くその単語が人名だとわかるのに、そう時間はかからなかった。
- 21 :
- クラリスにとって、最も恐れていた日がやってきた。
行き別れた兄を探している、そんな事情は理解していた。
それよりも、クラリスの胸を痛めたのは赤毛だ。
そう、赤毛の彼女。
クラリスはわかっていた。ククールの心の奥底に居る想い人の事を。
「・・・・・・・・”君も”気が強いのか、って聞いたのよ」ねぇー?マスター、と憂いを帯びた表情で笑った後、
クラリスはよいしょ、とククールを抱きかかえた。
好色男を気取る彼が見せた隙をベテランバニーは見逃さなかった。
「だから、、、ハナから私の負け、、」
おぼつかない足取りが、一瞬止まったような気がしたのは幻覚か。
宿に着いた。
「ククール、ついたわよ。今夜は随分飲みすぎたわね?
明日はやいんでしょ、行く前に・・・・顔見せてよね」
ベッドに横たわるのを見届けたあと、お休み、と後ろ手でドアを閉めた。
翌朝。
頭痛とともに目覚めたククールは、床に光るネックレスに気がついた。これはたしか、、、
「クラリス・・・」
昨夜は飲みすぎた。何せマルチェロを知っているという人物に会えたのだ。そしてそれはガセネタではないらしい。
急速に安堵が胸に広がった。そして俺は愛しい女の事を思い出したんだ・・・・・・・・・・・・・・・
こうしてはいられない。会うべき人に、会わなければ。
身支度を整え、ククールはクラリスの家へ向かった。
「おはよう。眠れた?」
クラリスはいつだって穏やかだ。その燃えるような熱情は赤毛だけなのか?
「おはよう。昨日はゴメン俺・・・・」
「酔ってたもんねぇ。あんなククール初めてみちゃった」
「悪りぃ・・・」
「あら謝ってくれるんだ。だったらお詫びに・・・・」
「いいぜ?!ハグ?それともキス?」
そういって腰に廻ってきた手をクラリスはピシャリと叩いた。
「そういうことはね、本命とだけするの」
一瞬の瞳の動きを、男は、女は、見逃さなかった。
「ちぇー」
そういってククールはクラリスの首に手を廻し、ネックレスをつけてやった。
クラリスも抵抗はしなかった。
「いろいろ・・・・サンキューな」
「うん・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
そういって、ククールは扉の前に立った。しばらくの静寂を打ち破るように、クラリスがそっと背中を押した。
- 22 :
- すいません、以上です。
ククゼシ感が、分かる人だけわかる、みたいな仕様になっててすいません。
基本クク→ゼシです。そこは絶対で。
そしてゼシ→ククでもあります。はい、コイツイラはハッピーエンドですから。
とにかく新スレ早々駄文すんませんしたー
- 23 :
- 素敵な雰囲気でしたー!GJ!大人なククさんですねぇ…こういうククさんも大好きだ
なんだかんだと甘えたで不器用な彼は、色んな人に頼って支えられて背中押されるくらいが
丁度いいんだと思いますwククもゼシカも抱えてるものは小さくないしね…
うんうん、うじうじしちゃうよね!って肩を叩きたくなるw
はーED後はククゼシの妄想の宝庫ですなぁ。むしろED語が本番くらいのw
- 24 :
- >>22さん
筆者ですありがとうございます
フルボッコ覚悟で書きましたありがとうございます
曖昧なニュアンスを汲取っていただけて感謝
>>ククも(ゼシも)周りに支えられてんですよ。本人たちが気づいてる以上にw
- 25 :
- >>うれしくてあり得ないアンカーミス汗
- 26 :
- >>21
SSgjです!
新スレでさっそくの作品投下嬉しいw
クク→ゼシでもあり、ゼシ→ククでもあるっていいですよねw
二人の関係性本当たまらんです
- 27 :
- 2人ともサバサバしてるわりにはいざという時にポキッと心折れそうな
弱い面も持ってる気がするからなぁ
やっぱり弟・妹だからかな
エイトやヤンガスには感じない不安定さがある。そしてそこがいい
2人で補完しあってる感じがしていい
- 28 :
- どちらも強い面と弱い面とあって
だからこそお互いを支え合えるという感じがするw
- 29 :
- 光と影が絶妙なバランスである二人だと思う
お互いお互いを引っ張ったり照らしたりできる部分もあれば、
相手に助けられたり支えられたりする部分もある…
姉っぽくなったり妹っぽくなったり兄っぽくなったり弟っぽくなったりと
そんなのを繰り返している二人って感じがする
- 30 :
- ゼシカが何も苦労していなかったら逆にククを支えるのは無理だったろうな
幼くして父を亡くしていて誰よりも大好きだった兄を失う苦しみを味わった後だからこそ
ククにとってただ眩しいだけの存在とならずに理解し合えたり支えてあげられる部分もある
ただの勝気なナイスバディ美女ってだけだったらククにとってゼシカは見目麗しいレディってだけで終わっていただろうし、
ゼシカの方も私の理想はサーベルト兄さん!で終わっていたと思う
- 31 :
- 最初に出会ったリーザス塔で兄の魂に泣き崩れるゼシカに、
あの時すでにククールが仲間だったら間違いなくあの瞬間に恋に堕ちてたと思われる
そしてゼシカはゼシカでオディロ院長が亡くなったあとのククさんに
「ケーハク男」だけじゃない何かしらの気持ちを抱いたんだろうなーと思う
実際切なすぎるよねククもゼシカも…
- 32 :
- まあ色々波乱な人生を歩んでいる二人だからこそ
最終的には幸せすぎるいちゃいちゃバカップル化してほしいんだよねw
- 33 :
- くっつく前はシリアスモードが多そうな二人なだけにくっついた後は反動でバカップルに…
- 34 :
- 旅中はむしろツンだったのにくっついたあとは人目もはばからずゼシカラブになるククさんが好きだ
んで旅中にククの心を開きたくて近づくのに何度も拒絶されていたゼシカは
その変わりように今度は一気にツン全開になる
- 35 :
- でもそれでククに冷たくされると思いっきりショックを受けうなだれるゼシカ
- 36 :
- あ、それ好物
- 37 :
- 今規制激しいみたいだけどククゼシスレのみんな平気ー?
- 38 :
- >>36
ククール何やってんだ
>>37
平気じゃなかったら書き込めないからよくわからんね
- 39 :
- 今日はハニィの日
つまりククにとってのゼシカの日
- 40 :
- 昨日はバニーの日でもあったんだな…
つまりゼシカの日…
- 41 :
- >>34-35
どっちがツンな時はどっちかがデレで、どっちかがデレの時はどっちかがツンの
噛み合っていないのになんかラブラブな二人って事ですかw
- 42 :
- ククにデレモード全開のゼシカに対してククがちょっと冷たかったりしても
それはそれで萌えそうだなぁとふと思った
- 43 :
- 無防備にデレデレ擦り寄ってくるゼシカに
ゼシカが自分を兄扱いしているとしか思えず
可愛いと内心デレつつも素直に好意を受け取る事ができないククさんとか
- 44 :
- 既出かもしれんが、トゥモローだっけか
「涙の数だけ強くなれるよ」ってやつ
あれの歌詞を思い出してて思ったんだが
「泣いてもいいよ付き合うからカッコつけないで」ってのがなんかゼシっぽいなぁって感じた
- 45 :
- ククの格好つけた部分にきゃーきゃー騒ぐレディが今まで多かった中、
格好つけたククには全く靡かないで、格好悪い部分を見て逆に受け止めてくれる子って
ククにとってかなり新鮮だったろうなあ
- 46 :
- ククの格好悪い部分や意外にも不器用なところにゼシカは母性本能擽られ
ゼシカの無防備で無邪気でたまにしゅんと落ち込んだりするところにククは父性本能を擽られるわけですね
- 47 :
- 末期になるとククを見ただけでときめくゼシカ
ゼシカを見ただけでとろけるククール
- 48 :
- >>47
やっぱりククさんはスライム属性なのねぇ…と思った
しかし末期過ぎるwww
お互いを見ただけで動悸息切れで動けなくなるククゼシ
指先が触れあっただけで身体がしびれちゃって戦闘にならないククゼシ
エイトに気づかれると怒られるので必死でなんにもないフリをするけど
目があっただけでキュ…ンとかしちゃって点描が飛び交う二人だけの世界に
- 49 :
- ククールって真っ赤な服なのに何故か青のイメージなのよね
銀髪+白い肌+青い目の寒色系が揃ってるからかしら?
- 50 :
- 瞳の色だと思う
アイスブルーの一見冷めた眼差しなククールと、
赤い燃える炎のような眼差しのゼシカという感じがする
服の色で合わせてクク→赤、ゼシカ→紫でもいいけどねw
- 51 :
- ゼシカとククのカラーリングいいなあ
最初からセットにするつもりでデザインされた二人に見えるw
- 52 :
- 二人が並んでいるだけでもう絵になりすぎるからなあw
キャラのタイプ的にも主人公とミーティア、ヤンガスとゲルダ、ククールとゼシカというペアではっきり分けられている気がする
- 53 :
- なんでパッケ絵にククールいないんだよ…
- 54 :
- パッケージにククールがいない理由を考えてみた
まず、ククールが参入する前であるというのが一つ。
馬車を後ろから押しているというのがもう一つ。
崖を転がり落ちているというのが一つ。
三人と馬車よりも一足先に進んでいるというのが一つ。
デザイン的にククールを入れるとすると
ヤンガスの隣辺り……まるでゼシカと仲たがいしているように見えてしまう。
ゼシカの隣(ゼシカのデザインは現行のまま)……まるでゼシカとククールが仲間割れしているように見える
ゼシカの隣(ゼシカの立ち方も変更)・・・・・・ゼシカとククールがいちゃこらしてまるで恋愛ゲームに見えてしまい本来の客層に売れなくなる
- 55 :
- >崖を転がり落ちてる
なにそのガンダムWの五飛みたいな扱い
- 56 :
- パッケ絵ゼシカがムチを構えて後ろを凝視してるのは
ククが通りすがりの女の子をナンパしてるからだと妄想してたのに…
今パッケ見たら何気にトロデ王も慌てたような表情で後ろ向いてるw
- 57 :
- ククが他の女をナンパしに行って、
(あんたその口で昨日は「俺はゼシカ一筋だよv」とか言ってたわよね〜?!)ビキビキ…
みたいになっているゼシカのパケだったのか…!
- 58 :
- パケ撮りでもナンパするのかヤツはw
ククはある意味主役級だもんね
- 59 :
- ある意味ククとゼシカは主人公とヒロインしているよねw
どっちも人生背景もキャラも濃いから二人を主役のストーリー展開だけでもゲーム一本分できそう
- 60 :
- ビキビキとなってるゼシカを見て内心喜んでるククさんかw
- 61 :
- 操作キャラがゼシカ:街にナンパしに行ったククールを見つけ出してSHTバイキルト双竜打ち
操作キャラがククール:ゼシカに捕まらないように街でナンパする
- 62 :
- あとちょっとで9月04日(クーゼシ)の日だし
>>61のゲームをククゼシ記念として出してほしいわw
- 63 :
- 主ミが相思相愛だけども障害がある、って王道テンプレ
ヤンゲルは幼なじみでクサレ縁的なこれまた王道
おいしい、おいしすぎるよククゼシー
- 64 :
- 姫と従者の障害だらけの恋(のちに従者が王子様と判明、障害を乗り越え結婚)
幼なじみで腐れ縁で敵同士の恋(幼い頃のチューあり、幼い頃の約束あり、現在はライバル関係)
モテ騎士と堅物お嬢のツンデレ恋(印象最悪から始まる素直になれない思春期男女の典型)
わっふーーDQ[ってなんのゲームだったっけーヤッホーイ
- 65 :
- >>64
ラブゲに決まってるやん
恋敵のチャゴス王子の恋愛成就を助けるようなふりをしながら実は後からぎゃふんと言わせる
ラプソーンと添い遂げようとするも願いかなわず旅半ばにして潰える悲劇の男ドルマゲス
チェルスと町娘の間に芽生えるほのかな愛情
血がつながっているかどうかも不明なフォーグとユッケが仲直り
こうして見るとラブゲだよやっぱり…
- 66 :
- 確かにDQ[は、
@登場人物たちの恋模様
A『兄』を巡る因果
B悪の復活
の3つが柱だったように感じる…
それまでのDQに比べたらあり得ないほどの恋愛推しだったしあながちハズレでもない気がする
しかしドルさんはデブソーンと添い遂げたかったのね…衝撃の事実だわw
- 67 :
- >ラプソーンと添い遂げようとするも願いかなわず旅半ばにして潰える悲劇の男ドルマゲス
ワロタwwドルが一気に悲劇キャラにwww
- 68 :
- べ、別にアンタのために賢者の末裔を襲ったんじゃないんだからね!
- 69 :
- 誰も得しないツンデレのためにされたサーベルトとオディロ院長に謝れw
いたストやってたらMッパ…マルチェロが出てきて
マル「ククール、こんな所に来てまで私の邪魔をするとはな」
クク「……別にあんたの邪魔をするつもりなんてないさ」
ゼシ「そうよ!ククールは私たちみんなのジャマをするつもりなんだから!」
ヤン「……姉ちゃん、それフォローになってないでがすよ…」
なんていう非常にニヨニヨする会話があったんだがw
全面的にククをかばうのは恥ずかしいけど何か言い返してやりたくてそんな風に言ったゼシカとか
そんなゼシカに呆気にとられたあとプッと吹きだしちゃって一気に気が晴れるククさんとか
そんで「な、何笑ってんのよ!こんな奴にいつまでも構う必要ないでしょ!さっさと行くわよ!」「ハイハイ」
とか言って存在を忘れられるヤンガスとマルとか。あらゆる想像が広がりましたごちそうさまです
- 70 :
- ドルマゲスがツンデレとは新しいwwww
>>69
なにそれ
ゼシカはククに絶対惚れている気がしてならないw
- 71 :
- 確かククが株で大儲けした時だっけか
他の女子キャラが「ククールってすごいのね」とか褒めてる中、ゼシカだけ
「……カッコよくなんてないから変なポーズとるのやめなさい」と
熟年夫婦ならではのとてつもなく冷めたセリフを言っててマジ吹いた覚えがあるw
お前ら…w
- 72 :
- そういう何気ないツッコミがククゼシの仲の良さとか絆みたいなものを感じさせてくれるよねw
もーククゼシ可愛い本当可愛い
- 73 :
- 前スレの>>709あたりでありました、
「告白よりも先に身体の関係になっちゃってお互い自己嫌悪してるククゼシ」
が個人的にどうしても忘れられない萌えを残していかれまして、ククゼシの日に間に合うように
かなり突貫工事ではありますが書いてしまいました。
隠れ屋向きではありませんがやるこたやってます。苦手な方はご注意ください…
*****
とある酒場で。
「お前、そろそろ彼氏とか作らねーの?」
「何よいきなり失礼ね。アンタこそいい加減腰落ち着けたらどうなの?
いつまでたってもフラフラして、ホント女と見れば誰でもいいんだから」
「仕方ねーじゃん女の方から寄ってくるんだからよ。応えられる限り応えるのは、色男の使命だろ?」
「じゃあその中からいい人でも見つけなさいよ。より取り見取りなんでしょ」
「お前こそそろそろ男の一人でも見つけろよ。もういい年なんだから行き遅れ…ぐげっ」
「わ・た・し・だっ・て・ね!!!選ぼうと思えばいつでも選びたい放題よ!!!
サーベルト兄さん以上に素敵な人が現れたら、今すぐにでも結婚してやるわ!!!」
「あっそー楽しみにしてるわ。そんな理想像そのままの男いるわけないと断言するけどな」
「いるわよ!!!」
「はーいはい」
「いるもん!!!」
「そーですねー」
「何よククールのバカ―!!!!」
「うわっ、店の中でメラはやめろ!!!!」
デリカシーのカケラもない会話とケンカが日常茶飯事の関係。
通りすがった人は、彼らをどんな関係だと思うだろうか。
いやに似合いの2人だとは思うかもしれないが、この会話ではあくまで友達未満のはずだ。
口が裂けても恋人関係だとは言えないだろう。
実際ククールとゼシカは恋人同士ではない。
下手に年月を重ねた恋人よりお互いのことを深く知り得ているが、
2人きりでも甘い愛の囁きの一つも交わさない、色気など皆無な間柄だ。
確かにそうだった。
偶然と故意が重なり、2人が後戻りできなくなった、あの夜までは。
**
―――― 一度目は、酒の勢い。
世界を救う旅が終わったあと、ゼシカは故郷に戻り、ククールは1人、旅に出た。
ルーラ使いは便利なもので、どんな遠方まで出向いても、ククールは気まぐれに、
元・旅の仲間に顔を見せに戻ってきた。
みんなで顔を揃えることもあれば、ゼシカだけに会いに来ることも。
そのたびにお互いの近況や昔話を時間が許すまで語り尽くして、酒を飲み、大いに笑い合った。
- 74 :
-
そんな逢瀬を繰り返して、一体何度目のことだっただろう。
かなり久しぶりの再会で、2人ともひどく上機嫌だった。
ククールの泊っている宿屋の一室で、入手した上等の酒を酌み交わしてずいぶん長い間語り合っていた。
くだらない話を酒の肴に、どちらかがボケると片方がツッコミを入れ、大笑いの繰り返し。
お互い離れがたいのは明白で、解散のきっかけを何度も引き延ばしながらだらだらと過ごしていた。
果たして何がきっかけだったのか、もうどちらも覚えていない。
ただ気が付いた時には口付けを交わしていて、お互いの驚いた丸い目が間近にあって。
そこで離れず、再び顔を近づけたのはククールもゼシカもお互い様だった。
それがはじめてのキスだったとは思えないほど、まるで昔から想い合っていた恋人同士のように、
何かに取り憑かれたかのように我を忘れて互いの身体を掻き抱き、服を脱ぎ、肌に触れ…
そのまま冷たい床にもつれこんで、何度も酒の味のする舌を絡め、夢中でキスをしていた。
どこまでが酔狂で、どこまでが正気だったのか。
少なくとも、ククールとゼシカの2人とも、この夜の出来事をハッキリと思い出すことができる。
記憶がなくなるほどの泥酔は、していなかった。
だからこの夜の行動の全ては、間違いなく自分達の意思による。
でも、飲んでいたのだ。とてもたくさん飲んでいたのだ。
誰に問われるわけもないのに、酒に責任を押し付けられて良かったとお互い密かに思った。
ともかくこの夜、2人ははじめて身体を交わした。
テーブルを挟んで酒を飲んでいたはずの2人は、翌朝裸でベッドの上にいた。
その時の気まずさと絶望感といったら、言葉にできないほどだった。
*
――――二度目は、確信犯。
次に会った時、お互い何事もなかったように繕うのに必死で、それならば早々に帰ればいいのに
それでもやっぱり離れがたくて、なんだかんだと理由を付け、ズルズルと時間を過ごしていた。
その日の逢瀬はリーザス村のゼシカの部屋で、母のアローザは数人の使いを伴って外出していた。
迫るタイムリミットの内訳は、要するにアローザの帰宅時間だった。
夕闇が迫る頃、一瞬訪れた沈黙を破ってククールが「じゃあそろそろ」と立ち上がった時。
ゼシカが小さな声で、でもハッキリとした意図をもって引きとめた。
「―――お酒、飲まない?」
交易相手の行商がたくさん珍しい品々を持ってきてくれたので、せっかくだから少し、と。
ククールもきっと気に入る上等のものばかりだから、と。
もしまだ時間があるのなら、と。
言い募る最後の声は消えかけ、ゼシカは俯いて胸元でぎゅっと手を握りしめていた。
そして迷う間もなくククールは反射的に頷いてしまった。
それが二度目の共犯。
その夜の行為を酒のせいにするには、2人が飲んだ量はあまりに少なかった。
それでも“恋人同士”ではない2人には、自分に対する理由が、言い訳が、必要だった。
時間がないのはわかっているのに性急に終わらすことはできなくて、
まだ慣れないゼシカを、ククールはこれ以上ないほど丁寧に抱いた。
そしてアローザが戻る前に、逃げるように屋敷を立ち去ったのだった。
*
- 75 :
-
――――3度目は、未遂。
その日は最初から、2人の間には確信に近い何かが芽生えていた。
いつものように話していても、笑い合っていても、ほんの刹那によぎる沈黙と
交差する視線は、確実に以前にはなかった秘密めいた空気をまとっていた。
それは二度目の時にはなかった、「覚悟」とでもいうべきもの。
ある意味での開き直りのような意思が、日常会話に興じる2人の間に、ずっと潜んでいた。
宿の一室で、日も沈んだ頃。
ゼシカがもう帰らなければと腰を上げた、その瞬間にククールの手はもうゼシカを捕えていた。
むしろこの瞬間を待っていたのではないかと思うほど、その行動はあまりに素早く。
ククールの手はゼシカの腕と腰を抱き込み、あっという間に彼女を壁に押し付け、
その口唇を抗う間もなく奪っていた。
ゼシカに許されたのは目を見張ることだけ。
開かされたその中に入り込んでくる彼の舌は、余裕なくゼシカの口腔を貪った。
久方ぶりの口付けは、途方もなく甘くて。
抵抗することなど考えもつかないほどの恍惚の中で、ゼシカは唐突に重要なことを思い出し、
慌ててククールの身体を押し返した。
「まっ…、ちょ、まって」
「なんだよ」
今さら。と呟かれた言葉に眉を寄せて視線を逸らし、ゼシカはポツリと言い落とす。
「―――今日、あの日なの」
今度はククールが目を見張る番で、居心地の悪い沈黙のあと、呆けたように頷いた。
「………………あ、あぁ」
身体に回されていた手がぎごちなく離され、ククールは口元を手で覆い、あさっての方に視線を彷徨わせた。
ゼシカは頬を赤くし、俯いたまま小さく返す。
「……ごめんね」
「………………いや」
謝る必要なんてないはずだった。
“恋人同士”ではないのだから、久方ぶりの逢瀬に口付けしかできないことを、詫びる必要はどこにもない。
だけれどゼシカは謝った。そしてククールはそれを受諾した。
どうしようもなくばつの悪い雰囲気のまま、その日は別れた。
ククールはいかにもがっついていた自分を恥じ、ゼシカは期待していた自分と、残念に思っている自分を恥じた。
*
――――4度目は、予定調和。
ゼシカの家の応接間で、いつものように色々なことを話しながらアルバート家お抱え
シェフの料理を食べたあと、食後のお茶を用意しているゼシカの背中が、ふと緊張した。
「……ねぇ、ククール」
「ん?」
陶器の触れ合う音がわずかに聞こえるだけの静かな空間に、ゼシカは震える声を絞り出した。
「――……今日は、だいじょうぶ、だから」
主語の一つもないその言葉は、まるで合言葉のようで。
この一言のためにメイドも給仕も下げさせ2人きりにしたことを、彼は気付いたに違いない。
ゼシカは頑なに背を向けたまま、手許まで震えるのをこらえて、ぎゅっと目を閉じた。
お願いだから“何が?”なんて聞かないで、と祈っていたゼシカは、
突然背後から抱きしめてきた長い腕に、引きつけのように身体を震わせた。
- 76 :
- 「……ゼシカ」
鼓膜を舐めるような低い声が、ゼシカの背筋に電流を走らせる。
声だけではなく、彼の口唇がゼシカの耳をじかに這っていた。
陶器がガチャンと大きな音を立てる。
「――ック、ククール…ッ!!」
身体をくの字に曲げ、腰に回された腕に手を当てたゼシカは、
耳元の彼の顔を振り返る勇気はとてもなく、それでも必死で身を捩じって抵抗を示した。
「わかってる」
また、聞いたこともないような低音の囁き。
背後から首筋に口付けながら。
「今日は駄目だろ…アローザさんいるし」
「……っん…」
一見ひどく落ち着いて聞こえるククールの言葉に、コクリとつばを飲み込みながら、なんとかゼシカが頷く。
「…………どうしたい?」
お前も『そう』考えてたんだろ?と言外に追及されて、ゼシカは目眩を覚えた。
自分から「大丈夫」だと宣言した身で、もう恥じらう為の逃げ場などどこにもないのだと悟る。
「……連れて行って」
「どこへ」
「ククールの好きな場所でいいから」
ククールの瞳が愛おしそうに眇められ、すぐに熱い口付けに意識を奪われた。
「失礼します、お嬢様、ククール様。コック長がご夕食はどうなさるのかと…」
それから数時間のち、訪れたメイドがノックのあと控え目に声をかけたが、返事はない。
「…………お嬢様……?」
そっと開けられる扉。
部屋には誰もおらず、淹れられることなく放置されたお茶の道具だけが取り残されていた。
*
それからあと、会うたびにそうすることが当たり前のようになっていって。
何度同じことを繰り返したか、もうわからない。
そのうち自分への言い訳もしなくなっていた。
罪悪感だけが常に心の片隅に少しだけ残っていて、でもそんなものは自らを戒める鎖にはならなくて。
刹那の幸福感と快楽のためなら、罪悪感など視えないフリをするのは余りに簡単だった。
これが、溺れるということなのかとククールは思った。
果たして自分はゼシカに溺れているのか、彼女の身体に溺れているのか。
どちらでもいい。
ゼシカに会えるのなら。ゼシカに触れられるのなら。ゼシカがオレを拒まないでいてくれるから。
それでいい、と、結論付けた。
オレはゼシカが好きだ。それでいい、と、自分勝手に結論付けた。
*
それは来るべくして訪れた、限界の合図。
「ゼシカおねえちゃん、お仕事終わった?ねぇねぇ、この前の魔法の続きおしえてよー!」
「あら。おうちのお手伝いは終わったの?」
「だいじょうぶ!」
「えー本当に?しょうがないなぁ」
無邪気にはしゃぐ子供たちを無碍にすることなどできず、ゼシカは苦笑した。
キャーキャーと騒ぎながら先を行くその子達のあとを追って、村の入り口の方へと歩く。
ふと、顔を上げた。
子供たちが通り過ぎて行った大きなアーチ型の門の陰に、長身の影が見えた。
「…よぉ」
「………ククール」
- 77 :
-
はにかむような笑み。2ヶ月と2週間ぶり。
2人は言葉もなく、寄り添って村の外へと歩きだした。
「……すっごく久々ね」
「あぁ」
「どうしてたの?」
「相変わらずあっちこっちフラフラと。…いや、ちゃんと探してるぜ?」
「わかってるわよ。まだ手掛かりはないの?」
「んーまぁ、それなりに。今は一つ一つあたってるとこ」
「私の方でも情報は集めてるから。何かわかったらまた教えるわ」
「あぁ、サンキュ」
西と東の大陸を結ぶ交易拠点を治めるアルバート家の情報網は、その気になればものすごい
威力を発揮する。それに頼っても、未だにマルチェロの行方は知れないままだった。
村から少し離れた大きな木の木陰に入り、肩を並べた。
抜けるような晴天のもと、遠くの方で子供たちの笑い声が聞こえた。
ククールはチラリと横目でゼシカを見る。
今日は赤い髪をおろしハーフアップにまとめ、白いリボンでくくっている。
同じく白いワンピースはゼシカの華奢な肩や腕をあらわにし、なお且つ張りのある胸も強調するような、
肌のラインに沿った、清楚でありながらどこか艶っぽいものだ。
伏せられたまつ毛も、赤く柔らかそうな口唇も、色っぽい。
共に旅をしていた頃より、ゼシカは本当の意味で色気をまとってきたように思う。
健康的なだけではない憂いを帯びた雰囲気が、時折彼女をひどく大人びて見せる。
無邪気だった少女をそんな風にしたのは自分のせいなのだろうかと思うたび、
ククールはチクリと胸を痛め、同時に胸騒ぎのような、沸き立つような、背徳的な興奮を覚える。
キスがしたい。
そう思った次の瞬間にククールの身体は動いていた。
「…!クク―――っん」
彼女の顔に手を添えこちらを向かせ、かがみこんでその口唇を奪った。
奥まった木々の中とはいえ、誰が通りかかるかもわからないこんな場所で、抵抗されることはわかっている。
なのでククールは最初から、ゼシカを木の幹に押し付けその両手首をがっしりと掴み、
生半可な抵抗は効かないような態勢にしたうえで、いっそう口付けを深くした。
何度も何度も角度を変えて優しく咥内を甘噛みし、舌が溶けあうほどの長くて甘い口付けを繰り返す。
ゼシカの強張った力がわずかにゆるみ、潤んだ瞳が切なげに細められる。
会いたかったのは自分だけではないのだと、ククールは確信すると共に安堵した。
今日はこのあと一緒にいられるのだろうか。期待と不安がよぎる。
いつも前触れなく現れるククールに、それでも出来る限り共に過ごす時間を作ってくれるゼシカ。
少しでも長く一緒にいたい。そして、もっと強く抱き合いたい。
彼女に触れるのが久々過ぎて制御ができない、と頭のどこかで冷静に判断する。
ククールが感情のままにゼシカを抱く腕に力を込めると、ゼシカは夢から覚めたように
突然もがいて口唇を離し、ククールの胸に手を置いて押し返した。
「……っは、はぁ、はぁ…クク…」
頬を染めて息を乱して、くすぶっている感情など筒抜けなのにまだ抵抗するのが気に喰わない。
ククールはムッと不機嫌になって、余計に彼女に顔を近づけた。
「…ちょ、ちょっと」
「逃げるなよ…」
「…ッン…」
- 78 :
- 左右に振られる顔を追って、もう一度無理やりに口付ける。
しかし即座に渾身の力で身体を押されて、ククールは口唇を離さざるを得なくなる。
「だっ、だめ、だめよ…ククール」
「何が駄目なんだよ」
「私……」
その時、遠くから「ゼシカお嬢様」と呼ぶ声。ついで、「奥様がー…」という声がかすかに届く。
ククールは反射的にゼシカの身体から手を離した。ゼシカも身体を固まらせ、
声の聞こえた方向を見つめている。
息すらはばかられるような沈黙。
ゼシカはしばらく自分を呼ぶ声に耳を傾けていたが、そのうち俯いて動かなくなった。
中途半端な距離が気まずく、ククールは咄嗟に離れた自分の小心さに呆れ、苛立った。
そしてガシガシと頭をかき、しばらくして諦めたように大きなため息をつく。
「……ゼシカ」
とりあえず呼んでみる。反応はない。
「ゼシカ、いいのか?」
帰らなくて。とは言えなかった。
「……お前、このあと用事あるんだろ」
「…っ」
「だったらオレに遠慮するなよ。オレはまた来るからさ」
ゼシカは目を見開いたまま眉を寄せ、また下を向いて小さく首を横に振った。
「……だめ……」
「…………じゃあオレと一緒に来るか?」
黙り込むゼシカに、またため息。
どうするべきかなんて2人ともイヤというほどわかっていて、本当は選択肢なんてない。
ククールが腹を括って、ゼシカにまた今度と告げようとした時だった。
「―――お嬢様ぁー奥様がお呼びですよー」
先刻よりもかなり近い距離で声が聞こえ、2人同時にビクリと身体を跳ねさせた。
同時にサクサクと草を踏み分ける音。徐々に近づいてくる声。
ククールがゼシカの知り合いなのは村の誰もが知っていることで、
ここに自分達が2人きりでいてもそれほど不自然なことではないはずだ。
にも関わらず、ククールは無駄にバクバクと心臓を動かしていた。
まるで姫君を攫おうとしている不埒者のような後ろめたい思いで。
その時、身体にドシリと衝撃があり、身体をよろめかせたククールが
自分の身体を見下ろすと、胸にゼシカが抱きついていた。
「―――お、おいゼシカ、呼んで…」
「ルーラして」
「は?」
何を言われたか理解しそこねたククールを、ゼシカは強いまなざしで睨み上げて叫んだ。
「早くルーラして!!」
「……っ」
刹那。
白い閃光がまたたき移動魔法が発動すると、たちまち2人の姿は光の中に消えた。
*****
すみません、続きます。心より身体が先行しちゃったツケは、むしろここからが修羅場…!
すみません1人で興奮してキモくてすみません。お仲間がいることを願います…
- 79 :
- 仲間ならいまっせw ノシ
SS投下の奇跡をリアルタイムで味わえて感動中ですw
- 80 :
- 何ですかこの萌えSS…
職人様GJすぎるwwww
続きめちゃくちゃ楽しみに待ってます!!!
- 81 :
- 誰かククゼシでのエロ画像下さいな。前にゼシカ専門見たんだがククール以外に犯されるネタしか無くてブチギレた。
- 82 :
- >>78
やばい萌え死ぬ…
続き全裸待機してます!
GJ!
>>81
>>2にあるククゼシの隠れ屋という板お勧め
このスレ発生の板でククゼシ専用のエロ掲示板ですw
- 83 :
- 時空がうねるような久しぶりの感覚に酔いそうになりながら、足が地に着いたのを感じて
ゼシカがそっと目を開けると、そこは見渡す限りの絶景の高台だった。
「…ここって…」
「願いの丘…か?」
「この場所ってルーラで来れたっけ…?」
「いや…咄嗟に2人きりになれる場所って念じたら勝手に」
ククールも半ば呆然としたが、ハッとしてゼシカを振り返り、
「お前…っ、いいのかよアローザさん呼んでただろ」
「いいの」
「……」
いいわけないだろうと思うが、眉を寄せた頑ななゼシカの表情は変わらない。
複雑な面持ちで彼女を見ていたが、また大きなため息をついて諦めたような顔をした。
そろそろ夕暮れ時。大きな夕陽が、海にその円を少しだけ浸し始めている。
とりあえず座るかと言ってからゼシカの白いワンピースに目を向け、
崩れた瓦礫の上に自分の着ていた上着をかけた。ゼシカも大人しくその上に腰かける。
「…で?」
その隣に座り、ククールは軽く首を傾げた。ゼシカは膝に置いた手をきゅっと握っている。
「……話があるの」
「みたいだな」
「……わたし」
そこから一向に言葉が続かない。話しにくい内容であることは雰囲気で重々わかっているので、
ククールは急かすこともなく沈みゆく夕陽を見ながらぼんやりと待った。
もう少ししたら完全に陽が落ちて、真っ暗になってしまう。
今夜はまだ月は細いから明りにはならないだろう。暗くなる前にゼシカを帰さないと。
話ってなんだろう。あぁ、そろそろ潮時なんだろうか。別れ話でも来るんだろうか。
意味のない自虐めいた思考に、クク―ルは自嘲の笑みをこぼした。
別れ話ってなんだよ。別に、オレ達は…
「…ククール」
思い出したようにポツリと名を呟かれ、振り返った途端目の前にゼシカの顔があった。
そしてふわりと柔らかい感触が口唇に舞い降りる。
多分はじめての、ゼシカからのキス。
ぎごちなく顔を傾け、頬に優しく添えられた白い指。
ククールが無意識にその身体を抱きしめようとするが、口唇はすぐに離されてしまった。
反射的に追いかけたククールの身体は、俯いたゼシカに押し返される。さっきと同じだ。
「……ねぇ」
2人の目の前で、夕陽が海に沈んでゆく。
ゼシカはククールの胸に手を置いたまま、消え入るような声で言った。
「ねぇ、私たち、―――恋人同士じゃないよね?」
言葉の意味を理解した瞬間、ククールの身体が固まる。
頭が真っ白になり、同時にイヤな汗が吹き出す。
たった今まで当たり前のように彼女を抱きしめようとしていた指先が、1ミリも動かせなくなった。
「…それなのに、どうしてこんなことしてるのかな」
ゼシカはゆっくりと言葉を紡いでいく。俯いた顔からは、感情は読み取れない。
「どうしてキスするのかな」
「………」
「いけないことなんじゃないのかな…」
「…っゼシカ」
「わたし」
耐えきれずククールが彼女の肩を掴む。ゼシカはそこで顔を上げ、悲壮な表情で告げた。
「わたし今度お見合いするの」
*
- 84 :
-
考えたことがないとは言わない。
ゼシカがアルバート家の一人娘であること。
共に旅をしていた時から、婚約者などという存在がいたこと。
自分の旅が終りの見えない旅であること。
…想いを伝えあったこともないこと。
それを承知で身体を重ねてしまったこと。
お互いがそのことに後ろめたさを感じているくせに、
断絶する勇気もないままズルズルとここまで関係を続けて来てしまっていること。
口に出すのは怖くて、知らないフリを続けてきたツケがここに来ていよいよ回ってきた。
本当はもっと早く訪れるべきだった。こんな機会が来ることをずっと恐れていた。
曖昧なまま放置していた選択肢を、お互いに選ぶ時が来たのかもしれない。
あぁ、聞きたくない。死んでも聞きたくない話だ。でももう耳を塞いではいけない。
心の奥で諦観めいた自分がそう囁くのを、ククールは感じた。
「…東の大陸の貿易商の長男で、私も何度か顔を合わせたことがある人なの。
すごく優しくて素敵な人で貿易に関する知識もすごくしっかりしていて、
お母さんも時々相談しにいったりするくらいなの。あちらも代々続いてるおうちで、
昔から私と縁談を、っていう話はあったわ。最近になって急に――…」
俯き、淡々と、でも何かに追い立てられるようにそこまで説明し、ゼシカは言葉を詰まらせた。
「……。……お母さんと私だけじゃ、そろそろ交易を取り仕切るのが大変になってきてるの。
…………取り仕切るのはともかく、事業の拡大や取引先との交渉は、これ以上の発展は難しい
って、自分達でもよくわかってきて…。もちろんリーザスやポルトリンクのみんなが
助けてはくれるけど、そもそもお母さんも私も家業に関して、本当は素人同然なのよ。
昔はお父さんが、つい最近まではずっと兄さんが色々なことを指揮してくれていたから…。
……お母さんはここ数年すごく頑張ってうちを支えてきてくれたけど、
もうそろそろ自分の役目は終わりなんじゃないか、って…。…それで、……お見合いを」
最後はゆっくりと、ククールの胸から手を引いて、ゼシカは黙った。
何も悪くない。ゼシカが心を痛めることは何一つない。悪いのは全部オレだ。
小さく震えるゼシカの肩を抱きしめようとして、やはり指先は寸前で固まってしまう。
逃げ出したい。真っ先にそう考えた自分に、ククールは心底嫌気がさした。
ゼシカは多分待っている。不安に押しつぶされそうなのを堪えて、ククールの返事を。
それなのにククールの心は機能を停止したかのように動かず、言葉一つ出てこない。
言葉が出ないわけではなくて、今、声を発するわけにはいかなかった。
自分がどれほど最低なことを口にするか、わかっていたからだ。
どう足掻いても、ゼシカを傷つける言葉しか出てこない。
自分が逃げたい時相手を傷つけて『逃げさせる』のが、いつの間にか身に付けていた自己保身の術だった。
何も答えないククールに、ゼシカは今にも泣きそうな顔を上げる。
何か言って、と、その目が訴えていた。
ククールが目の前の問題から逃げ出そうとする時、ゼシカはいつもそう言ってククールを問い詰めた。
旅をしていた頃から、いつだってゼシカはそうだった。
まっすぐに相手の目を見て、いつも本当の心を伝え合おうと必死になってくれる。
「……オレは…………」
漏れ出た呟きは情けない響きを伴って、声にはならなかった。
- 85 :
- しばらくして、再び哀しげに目を伏せたゼシカが、声を絞り出すように話し出す。
「……………私、確かめたかったの。次にククールに会ったら、そうしなきゃってずっと思ってた」
「……」
「私は、ククールを待っていていいの?」
――リーザス村で、気まぐれにしか訪れないあなたを。
「どんな想いで、ククールを待てばいいの?」
――ただの仲間なら、こんな気持ちにはならなかった。
「私はククールをどんな風に好きでいればいいの…?」
――仲間として、親友として、男として、女として?
どれが正しくて、どれが間違いで、何がいけないことなのか、もうわからない。
ただハッキリしているのは、自分の気持ちだけ。
「……ククールを縛るつもりはないの。貴方に気なんか使ってほしくない」
哀しげな瞳で、ただ、と呟く。
「ただ、確かめなきゃいけないと思う」
ゼシカの真っ直ぐな瞳が、ククールを捉えた。
ククールは眉をしかめて、握りしめた拳に力を込めた。
駄目だゼシカ。確かめてしまったらオレ達は、もうどこにも動けなくなるぞ。
そう思っているのに、声がのどに張り付いて何も言えない。
「ククールは私が好き?」
熱にまみれた交わりのあと、天井を見上げながら何度その問いを飲み込んだだろう。
幾度となく身体を交わして、どうして今さらそんなことを確かめなくてはならないんだろう。
オレは、ゼシカになんてひどいことを確かめさせているんだろう。
心の中で自責の言葉がグルグル回る。その問いに対する答えはどうしたって口には出せない。
血の気を無くして押し黙るククールを哀しげに見上げて、ゼシカは目を伏せる。
「私は…好きよ。それは何回も確かめた、私の本当の気持ち。私はククールが、好き…」
まるで罪を告白しているように、辛そうに伏せられたまつ毛が震える。
「…でもね、……もしもククールが、私と…」
声が一瞬、ひどく濁った。
「……私と、キス、するのも、…それ以上、するのも、……わたし、の」
ククールの目の前で、小さなゼシカの身体が崩れ落ちていくような気がする。
「…わたしの、からだだけが、…っす、すき、っ、なら」
反射的にククールは振り返り、怒りにまかせて一瞬のうちにゼシカを腕の中に閉じ込めた。
ゼシカは濡れた瞳を見開いたあと、声を押しして泣き始めた。
彼女を痛いほどに抱きしめながら、ククールも泣き出しそうな声でバカが、と呟いた。
咄嗟に沸き上がったククールの怒り、苛立ちはゼシカに対するものでは決してない。
彼女にそんなことを言わせてしまった、自分に対するまぎれもない嫌悪だった。
自分が、見知らぬフリをし、放置し、自分勝手に結論付けて済ませていた本当はあまりにも
重要な2人の間の問題を、ゼシカは1人で抱え込み、ずっとずっと悩んでいたのだ。
愛情の確認もせず、恋人ですらない男に身体を許し続けることに、
ゼシカが悩まないはずはないと、わかりきっていたくせに。
一緒にいるだけで楽しかった。最初は本当に、それだけでよかった。
だけど一度知ってしまったら、何もなかった頃にはもう戻れなかった。
- 86 :
- >>78までの感想を書こうとしていたら、SSリアルタイムキタ━(゚∀゚)━!
最高に萌えます、職人さんありがとー!
- 87 :
-
中途半端な自分が、なんの答えも出さないまま彼女をこの腕に抱き続けるためには、
彼女の立場も、オレの立場も、彼女の気持ちも、オレの気持ちも、
何もかもを曖昧なままにしておけばいいと。
何もかもを『確かめ』なければ、『答え』を求められることもないと。
卑怯で臆病なオレは、心のどこかでそんな風に狡猾に目論んでいたのだ。
オレは、ゼシカを無責任に抱けるこのポジションを、どうしても自分から手放せなかった。
彼女の好意に甘えていた。頼っていた、すがっていた、逃げていた。
身体が目当てだと言ってしまえればどんなに簡単だろう。でももう自分に嘘は付けない。
自分の脆い心を守ること以上に、ゼシカを守ることの方が大切になってしまった。
もう彼女を傷つけたくない。ならば自分が傷付く覚悟を持つべきだ。
「……オレが悪かった」
「…ッ」
ゼシカが腕の中で弱々しく首を振る。
「ごめんな…」
「…っあ、あやまらないで…っ」
声を詰まらせながら、彼女は口唇を噛みしめた顔を上げる。
「それで終わりにしないで」
そう言って、また大粒の涙を流した。
その言葉の意味が痛いほどわかって、ククールは何も言葉で返せなかった。
ついさっきまで、まさにそうしてしまえればいいと考えていたのだから。
「オレが悪い」と認め、全てを放置したままそれで終わりにしてしまえば、
この事態から簡単に逃げ出せるじゃないかと、心のどこかで思っていた。
そしてそれこそが一番ゼシカを傷つけるやり方だとわかっていたはずだ。
でも、だからこそ今のこの言葉はその時のそれとは違う。
彼女を傷つける為に謝罪したわけじゃない。
ククールは泣き歪んでも愛しくてたまらない彼女の顔を両手でそっと包み、持ち上げた。
「終わりになんかしねぇよ。本当にオレが悪かったんだ」
「…っ、ねぇ、おねがい……こたえてよ…」
透明な雫が、白い頬をとめどなく滑り落ちて行く。
ククールは眉をひそめてそれを手の平で拭いながら、誓うように応えた。
「…好きだ。オレも、ゼシカが好きだ。オレも何度も自分に確かめた。
身体だけとか言わないでくれ…お前が好きだから、抱きたいんだ。身体ごと好きなんだよ。
ゼシカが好きだ。これだけは絶対に変わらない、オレの本当の気持ちだ」
ゼシカの瞳が大きく見開かれ、そして再びクシャリと歪んだ。
ひっくひっくと押しすように泣いていた声が、せきを切ったように溢れだす。
声を上げて胸に顔をうずめたゼシカを、ククールは宝物を抱きしめるように両手で包み、
もう一度ごめんな、と呟いた。
*
「…なぁゼシカ…」
「…なに?」
「今さらだけどさ…」
ゼシカが泣きやむまでずっと抱き合っていた。
黙ってゼシカの髪の毛を優しく梳いていたククールは言いにくそうに口ごもった。
「……見合い、しないでほしい」
本当に今さらだけど。
ククールが言い訳がましくそう言うと、ゼシカも困ったように眉をひそめた。
「……私だって、したくないわよ。でも」
「オレが話すから」
「…なに、を?」
「アローザさんに」
- 88 :
- ゼシカが目を丸くする。
「お母さんに?」
「あぁ」
「なにを?」
「……ゼシカとのこと」
「もっとハッキリ言ってよ」
「だから、オレと、ゼシカのこと」
「私とアンタの何よ」
「あーもうだから、……オレが、ゼシカを、貰いたいってこと…」
ゼシカはククールの胸から顔を上げて、驚いた顔でじっと彼を見た。
「…………ホントに?」
その視線から目を逸らして、ククールは曖昧に頷く。
「ねぇ、ククール」
「…なんだよ」
「もしかして今のって」
「だぁーーっっ!!!もう!!!!!!」
突然奇声を発して、ククールはクルリとゼシカに背中を向け両手で顔を覆ってうなだれてしまう。
「わかってるから言うな!聞くな!あークッソ、やっちまった…マジで勘弁してくれ…」
「ちょ、なによいきなり!」
「なんだコレうわーもう…カッコわりぃ……」
1人で赤面してうだうだ呟く彼の背中に、ゼシカは飛びつかんばかりにしがみつく。
「なんの話よ!ちょっと、こっち向きなさいってば!」
「やめろって触んな、あぁーもー…」
「ねぇちょっと、さっきのって、プロポ」
「だぁあああああ!!!!!!だから言うなって!!!!!!」
「なんでよ!!!!」
「言・う・な!!!!」
根負けしたククールが振り返り、眉を吊り上げたゼシカと無言の攻防。
「…なによバカ」
拗ねるゼシカに、ククールはまた視線を逸らして顔を手で隠してしまう。
「悪い。でも、マジ、ちょっと…なかったことにしてほしい」
「はあぁ!?」
「いやいや違う、待て、そういう意味じゃなくて…」
はあっ、と一息、決意を込めて振り返り。
「……リベンジ希望」
「…何言ってんの?」
「こんなカッコわりぃのはカリスマの美学に反する」
「さっきからカッコ悪いって、なんのこと…」
「もう一度だけ言うぞ」
「へ…」
ふいに両の手でしっかりと腕を掴まれ、深碧の瞳に見据えられたゼシカは息を飲んだ。
久しく発揮されなかったカリスマスキルが、全精力を傾けてこちらに向けられている。
うろたえ、頬を染める間もなく告げられた、その言葉。
「――――ゼシカはオレが嫁に貰う。他の男には渡さない」
「…!」
一瞬の間のあと、ゼシカは音が出そうな勢いで顔を上気させた。
さっきまでグダグダと情けない姿を晒していたのは誰なのか忘れそうになるくらいの
卑怯なまでの真剣なまなざしは、ひたむきにゼシカだけを捕え、その『本気』を伝えてくる。
ゼシカは逃げることもできず目を泳がせ、そのうち肩に入っていた力を抜いて、へたりとうなだれた。
「……バカ……」
それは肯定なのか否定なのか。受諾なのか拒否なのか。
ククールが顔を覗きこもうとすると、ゼシカの方からククールにしがみつき、
胸に顔を埋めてもう一度バカ、と呟いた。
「……なんでバカ?」
「………カッコよすぎ……」
「それは良かった」
- 89 :
- リベンジ成功、とご満悦のククールに、ゼシカが言えるのは悔し紛れの「バカ」だけだ。
得意満面のククールが、確信犯の顔で覗きこむ。
「で、それはイエスだと受け取っていいわけ?」
「…っ当たり前でしょっ…!」
胸を小さなこぶしで叩く。恥ずかしくて顔なんか絶対見られない。
ククールは愛しいその攻撃を甘んじて受けとめつつ、幸せそうに笑った。
ぽかぽかと、次第にその手が止まり、ククールの胸にしがみつく頃、ゼシカがポツリと呟く。
「……ねぇ、本当に?」
「本当だよ」
「…無理、してない?」」
「無理?」
ゼシカは顔を上げないまま、小さな声で話す。
「…私は、貴方を縛る気はないって言ったはずよ。もし私のせいで、ククールが
何かしらの無理をしてるなら、…自分じゃなく私を優先して、何かをしようとしてくれるなら、
…それは嫌なの。そんなのは必要ないのよ」
ゼシカらしい強さと、優しさと、賢さ。そして不安に揺らぐ瞳に、ククールは眉をひそめる。
「無理なんかしてねぇよ…本当に」
「でも、ククールにはやりたいことがあるでしょ。それと私のことは、両立なんかできないわ」
ゼシカの置かれている状況、そしてククールの置かれている状況を鑑みれば、仕方がない。
自分は身分も役職も捨て、風来坊となった身だ。目的はあるがそれは終わりの見えない終点。
そんな男がプロポーズなどと、よく言えたものだとククールは思う。
だけど。
「ごめんな…お前にそんな風に考えさせたのはオレのせいなんだよな…ごめん」
肩と腰に回した手に力をこめ、最大限まで強く抱きしめる。
「ゼシカ。話すよ。オレが考えてたこと全部」
考えようとして、何度も放置してきた一つの結論を。
「もう…アイツを探すのはやめる」
腕の中でゼシカが驚いて顔を上げる。
「ちょっと、それって」
「違う、別に今回のことがあったからじゃない。本当はここ最近ずっと考えてたことで、
でもずっと決めかねてたんだ。…今日やっと決心がついたよ。ケリをつけないと、な」
*****
読んで下さってありがとうございます。
本当にすみません、まだもうちょっと終わりません。身体先行のツケは大きいです…
いいからイチャイチャしろ!
- 90 :
- GJ!
やっと気持ちを確認しあえて良かったね
これから大ボス戦かW
ククは本気になったら商才ありそうだよね
荒々しい連中の中でも腕も立つしね。理想的な元締めでしょう。
魔力もかなりあるし、賢者の血をひく家柄にはアローザさん、いい買い物ですよ?
気持ちを確認しあえてからの幸せなアレの詳細をぜひとも隠れ家で!
お待ちしておりますWWW
- 91 :
- 今日はクーゼシデーなので記念に1枚絵を描いてみました。
趣味丸出しですが…。
SS…待ち遠しい(*´Д`*)
内面と対面した二人↓
ttp://u12.getuploader.com/kj/download/174/%E3%81%8F%E3%83%BC%E3%81%9C%E3%81%97%E8%A8%98%E5%BF%B5.jpg
- 92 :
- クーゼシデーおめ!!
>>89
まだ続きがあるとか最高なんですけどwwww
ククは格好よくゼシカは可愛くでたまりませんwww
最高のSSを読めて感動しました…!
>>91
上手すぎ可愛すぎGJすぎwwwww
天使悪魔なククゼシも大集合ですねwww
ゼシカオタクなククとククオタクなゼシカ?みたいなのもww
最高のクーゼシデーをありがとう!!
- 93 :
- >>91
相変わらずなんというクオリティ…プロですか!?ククゼシのプロですねわかります
天使と悪魔ゼシちゃんが本家ククにキュンッってしてるのが可愛すぎて悶えるw
特に天使ちゃんの可愛さは異常。てか大魔王が…ww最高すぎるGJですありがとうー!!
*****
あの日、ゴルドで。
身体に、心に、身分に名誉に栄光に、己の築き上げてきた全てに計り知れない傷を受け、
姿を消したククールのたった一人の肉親。
世界を救う偉業を成し遂げたあと、ククールは彼の存在を放ったまま、自分の人生を再開させることは
出来なかった。言いたいこともやり返してやりたいこともたくさんありすぎて
もう一度会ったところでどうしたいのか自分でもよくわからなかったが、とにかく
あの男ともう一度会わなければと思った。それは強迫観念にも近い焦りだった。
エイトとミーティア姫がサヴェッラでなんとかまとまったあと、
ククールは兄――マルチェロを探す旅に出た。といっても元々目的の無い1人旅がしたいと
ずっと思っていたので、マルチェロのことは世界行脚をするうえでの、動機の一つだった。
世界中の土地をもう一度1人で回って、その中でマルチェロの情報を聞きかじりながらの、
修道院に縛られていた自分を本当の意味で開放する旅だった。
今では、あの赤い制服はもう着ない。
自分が自分として生きていく上で確かなものを見出す為に、それは非常に意義のある旅となった。
そして気が付けば、2年。
その旅の中で、マルチェロに関する有力な情報はほとんど得られなかった。
「よく考えたらさ…アイツだぜ?あのプライドだけは神鳥の巣より高い男がだ。
ちょっと探して回っただけで簡単にしっぽを掴まれるようなへまはしねぇと思うわけよ」
「……あんたね…そんな今さら」
「いやまぁそうなんだけど。で、その世界一高いプライドをあそこまでバッキバキに粉砕されて、さ。
そのうえでも、まだ、生きてかなきゃならねぇと」
「そうね…」
「アイツ、オレに似て頭いいじゃん?絶対オレの思考回路読めると思うんだよな。
オレが、あのまま自分を放っておかないだろうって。オレが探して回るだろうって、間違いなく勘付く。
んで、あんなボロボロの姿を最後にして、もう一度オレの顔なんか死んでも見たくないと思うわけよ」
「……まぁ、そうでしょうね」
「だとしたら、アイツは徹底的に隠れる。それこそ団長様の明晰な頭脳を駆使して、
何が何でもオレに見つからないようにする。オレ正直、アイツが本気で頭使って姿消したら、
ぜってぇ見つけられない自信がある」
「何情けないことを偉そうに断言してるのよ」
「勝てねぇよ、多分今のオレじゃ」
ククールは苦笑してゼシカを抱く腕を緩め、彼女の顔を見た。それはひどくサッパリした笑顔で。
「どこまでいっても、どうしたって、アイツはオレの兄貴だからさ」
- 94 :
- 「…それで、簡単にあきらめるの?」
言外に男らしくないと、非難のまなざし。
「いや。今は、って言っただろ。正直アイツを探す旅っていうのも、口実の一つに過ぎない
ところがあったんだ。本当は最初からわかってたのかもしれねぇ。今は無駄かもしれないって。
それでもオレには、どうしても1人で旅に出る必要があったんだよ。…全部を置いてでも」
ククールの長い指の関節が、柔らかいゼシカの頬を撫でる。
収穫は大きかった。
仲間と、ゼシカと出会って、自分と向き合い、人と真剣に向き合うことを思い出し。
肩書きも任務もしがらみも無くし、1人旅に出て、空っぽの状態でもう一度触れた世界は、
ククールにとって信じられないくらいに面白く、魅力的だった。
濃密で、刺激的で、興味深い2年間を思うまま、気ままに過ごし。
いつしか自分の帰る場所が、リーザス村…いや、『ゼシカ』になっていることに気付いた。
「…今はオレも中途半端でいい加減な男で。
アイツはアイツで、多分今、必死で生きてる。…そう願う。だから、今はまだ、会う時じゃないんだ」
「今、は?」
「あぁ。いつか、必ず会える時が来る。それは何年後か、何十年後かわからないけど。
その時がきたら、今度こそオレは死ぬ気でアイツを探し出す。そして本気で、アイツと向き合う」
本気の決意が、ゼシカの瞳をしっかりと見据える。
「その時に、オレの隣にはお前がいてほしいんだ」
言い終えて、あぁそうか、とククールは自分の言葉に納得した。
その為の旅だったんだ、と。
ゼシカの頬が赤らみ、怒ったような、拗ねたような顔になる。
バカ、もう、ずるい、とかブツブツ呟いていたが、そのうち下を向いて黙りこみ、しばらくして
「……わかったわよ」
と、ふてくされたような声が聞こえた。
ゼシカにすれば腑に落ちない部分もあるのだろう。それでも、こんな風に言われれば許すしかない。
ククールはありがとう、と囁いて、もう一度ゼシカを抱きしめた。
「……お母さんに、話してくれるの?」
「勝てる気はしないけど」
「バカッ」
「いやもう、玉砕覚悟で特攻する」
軽口ながら本気の恐怖を滲ませるククールに、ゼシカはしょうがないわね、と苦笑する。
少し背伸びをして、ククールの首筋にそっと口付けながら、耳元に囁く。
「しっかり攫ってよね…」
…異常に艶っぽい囁きに、ククールは沈黙した。
実はさっきからずーっと抱き合っている。当然ゼシカの柔らかい身体がククールに押し付けられている。
ついでに会うのは2ヵ月と2週間ぶりだ。腰に回した指先が、生地の薄いワンピースの
背中や腰のラインをゆっくりと上下に辿っても、ゼシカは何も言わない。
脇から胸の膨らみに近いところまで指を這わせピタリと止まり、ククールは決死の思いでその指をもぎ離した。
「……ゼシカ。もう帰るぞ」
「どうして?」
「どうしてって…真っ暗になっちまったじゃねぇか。さすがにこれ以上は、もう…」
言葉の途中でふわりと口唇を奪われ、ククールは息を飲んだ。
「やだ」
「………ワガママ言うな」
「いーやーだ」
- 95 :
- いたずら気にクスクス笑うゼシカにククールは頬を染め、悔しさを堪えて眉を吊り上げる。
「駄目だっつったら駄目。今日はお前を家まで送り届ける。そしてまた今度ちゃんと…」
またゼシカが背伸びするのを視界の端に捉え咄嗟に身を引いたが、
動揺しまくりの今の状況ではあまりに反応が鈍かった。
また小さな口唇がククールの口唇に重なり、尖らせて何度もチュッと音を立てては離れてを繰り返す。
力でならいくらでもそれを引き離すことはできたが、所詮自分も同じ穴の狢だ。
『それを 引き離すなんて とんでもない!』 と、心のどこかで叫ぶ声。
背伸びでは足りず座っていた岩の上に乗り上げ膝立ちでククールを見下ろす体勢になり、
ゼシカの顔が改めて、ゆっくりと、ククールに覆いかぶさっていく。
直前にからまったお互いの視線は、熱く濡れていた。
「ん…」
ククールの両頬を挟んで口付けていたゼシカの腰がグイと強く引き寄せられ、
ゼシカは前のめりになり思わず彼の首に腕を回した。必然的にいっそう深くなるキス。
「…っん、んぅ…ク、…んふ…っ」
軽やかなカーブを描く赤い髪に添えられていた長い指が白いうなじを撫で、
背筋を引っ掻くように爪を立てて下から上に辿っていく。そこにあるのはワンピースのファスナーだ。
指が、迷うように、焦らすように、そこを往復する間も、キスはどんどん2人の熱を高めた。
溢れた透明な雫がお互いの口唇から漏れ出た時、ククールの方から無理やり口唇を離した。
「……っあぁ、クソッ」
シャツの袖で乱暴に濡れた口元を拭いながら、
「駄目だっつってんのに…」
「…ダメじゃないよ」
「……頼むから、少しは協力してくれ」
懲りずに顔を近づけてくるゼシカに、手の平を突き出して制止する。
「オレにはまだラスボス戦が残ってるんだよ…」
「はぁ?」
「これから…、……嫁にくれっていう相手を、朝帰りなんかさせられねぇだろ」
嫁入り前の一人娘を真昼間から無断で連れ出したうえ朝帰りさせた挙げ句に、
どのツラ下げてそんな無謀なセリフが言えるというのか。恐ろしすぎて冷や汗が出る。
ゼシカはきょとんとククールの弱り切った顔を眺めていたが、そのうち小さく吹き出した。
「…バカね」
「そりゃ、お前はいいだろうけどよ…」
「大丈夫よ。朝帰りなんて今まで何度もさせてるじゃない。
それこそ私がダメだって言っても、聞かなかったのはアンタの方でしょ」
「…ぅ」
「そのたびにお母さんが何も言わなかったとでも思ってるの?」
「うぅ…」
それには唸るしかないククールだ。
確かにそんなこともあった。一度や二度で数えられないほどには、やらかした。
それでもゼシカはいつも、最後に笑って手を振ってくれたから、深く考えなかったけれど…
「…アローザさん、怒ってたのか?」
「最初の何回かはね。嫁入り前の娘が、とか心配かけて、とか、まぁ定型文のようなお小言よ。
でも、『誰といたのか』とは、結局一度も聞かれなかったわ」
「……へ?」
どういうことかわかる?と、ゼシカがククールを見上げる。
- 96 :
- 「そしてそういうお小言すら、そのうちなくなっていった。私が朝帰りしても急に姿を消しても、
帰ってくるたびにいちいち捕まえて怒られることもなくなったわ。
スル―っていうか、もう諦めたっていうか…暗黙の了解みたいになってたわね」
「なんだよそれ…逆に怖いんだけど」
「私も最初は怒ってるのかってビクビクしてたんだけど、メイド長に相談したらね、
『奥様もゼシカ様を大人だとお認めになったんじゃないですか』って言われたわ」
いつの頃からか、ふいに姿を消すことが増えた娘
誰かに一言二言の言伝を残して。もしくはそれすらもなく、隠れるようにいなくなっている
そんな時は村の誰かが必ず1人の青年の来訪を見ていて
その人物を知らないわけではない
かといって無条件に安心できるほどの親睦もなく
かといって大した懸念やわだかまりがあるわけでもなく
娘は、何日もいなくなるだとか、悪い噂や良くないものに関わっている風でもない
なんだかんだと、必ず翌朝方には衣服も乱さずきちんと送り届けられ、帰ってくる娘のことを
母親は、様々な思いで見守ってきたのだろう。
年頃の娘だからこそ、もう自分で自分の行動に責任を持てるようになった、ということ。
ククールはなるほど、と言いつつ、複雑な心境で引きつった笑みを浮かべた。
「まぁなんとなくわかるけど…」
「そして、『同時にククールさんのことも信用なさってるからでしょうね』って」
そう言ってゼシカがいたずら気に笑うと、ククールはなぜか真っ青になった。
「えっ、なんでだよ、いつそんな、…っていうか会ったことなんて」
「面識あるでしょ、何度も」
「そりゃ、旅の間に何回かお前んち行ってたし…で、でも挨拶したくらいだろ」
特に旅の終盤、母や村のみんなに顔を見せに行くというゼシカをルーラで送りがてら、
ククールもアルバート家にあがり、何回かお茶を出してもらったりしていた。
ただそれだけだ。信用をなくすような真似はしていないが、信用を得る行為をした覚えもない。
「うん。それだけでね、みんなわかっちゃってたみたいよ。いろいろ」
「色々?」
「そ。いろいろ」
怯えたように汗をかくククールに対し、ゼシカは曖昧に小さく笑って彼の首に腕を回した。
「…だからね、お母さんもちゃんと知ってるの。私たちのこと。ククールが旅に出てることも。
お見合いの件だって、決して無理に押し進めようとしてるわけじゃないのよ。
何度も言ってくれたわ、私がどうしたいのか、私自身で決めなさいって…」
反射的にゼシカの細い腰に手を回しながら、ククールは戸惑う。
「…でもよ…」
「だから、いいの」
- 97 :
- ゼシカから押し付けられた丸い2つの膨らみが、ククールの胸に抑えられて柔らかく形を変える。
清楚な白いワンピースの胸元から溢れんばかりのそれに、ククールは視線を奪われ硬直した。
冷静にと努めつつ頬を赤らめながら、頭痛のしてきたこめかみに指を当てる。
「…お前…なんでそんな、今日に限ってやたらと積極的なんだよ…」
「嬉しいのよ」
「…何が」
「ククールが好きって言ってくれたから」
自分で言いながら照れたように笑い、それを隠すように頬に口付けてくるゼシカに、
ククールは色々な意味で絶句した。もう、何を言ってもこっちの負けのような気がして。
「…ここじゃ、イヤ?」
そして彼女がそんな風に上目づかいでたずねてくるのも、ククールが勝てないのをわかっている証拠で。
「…………嫌とかいう問題じゃなくてよ…」
「イシュマウリに見られちゃうかもね」
楽しそうに笑うゼシカは、先ほどの意趣返しとばかりに、男であれば無条件で抗いがたいお色気スキルを
惜しげもなくその全身から発動させている。…とククールが信じるのは自分への言い訳かもしれない。
「…それじゃあ、ククが今泊ってる所に連れて行って…?」
そう言ってククールの顔を覗きこみ、小首を傾げてゼシカはせがんだ。
理性を捨てる、最初のキスを。
「………あぁ……もう…」
頭に血が昇る感覚に、目眩を感じてククールは目を細める。
「本当に知らねぇからな…!」
「大丈夫」
ゼシカは艶やかに微笑み、口唇が合わさる直前で、吐息のように囁いた。
「―――朝帰りは、今日で最後にするから」
翌日、HP・MP共に満タンとなったククールが、ラプソーンなど足もとにも及ばないほどの
最大最強のラスボスに挑んだ話の顛末は、のちのちまでリーザス地方の伝説となった。
…とかならないとか。
*****
長々とお付き合い頂きありがとうございました。Mさんのくだりとかマジ蛇足
ククさんがあまりにもブラk…お兄ちゃんっ子なもので…
ククゼシの日に乾杯!ククゼシスレに感謝!
- 98 :
- ぎゃーーーーーーーーー
神職人がいっぺんに2人も降臨している!!!!!!!
ここは天国ですか?!
クーゼシ天国…!
SSもイラストもクオリティ高すぎるw
ククゼシの日に素晴らしい作品をありがとうございます、職人様方!
- 99 :
- >>91
プロの絵師さんですか?!
上手すぎ可愛すぎw
保存させて頂きました!
>>93-97
萌え死ぬかと思った…
すれ違いまくった後に気持ちが通じ合ったククゼシって最高だわやっぱ
つーかラプソーンが足元にも及ばないラスボスwww
さすが賢者の血を引くお方だw
- 100read 1read
1read 100read
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