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薔薇乙女の奇妙な冒険5


1 :2012/12/12 〜 最終レス :2013/01/31
前スレ http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1341584000/
まとめ http://slpy.blog65.fc2.com/?tag=%A5%ED%A1%BC%A5%BC%A5%F3%A5%E1%A5%A4%A5%C7%A5%F3
     /  {    \                        /   /  /ヽ
     ヽ  ヽ    ヾー 、__                _,. -‐ '   /  / /
      \  \   \  ` ー-- 、___,. -ー '"     _/ ./  /
        \  `ヽ、 ヽ、                 ,. - '  /   /
         \   ` ー-`_ー-- 、_     _,._-ー '_ ,. - '´    /ヽ、
           !ヽ,       ̄` ー--- ̄- ̄-─ ' "´       /  ヽ、
           |  ` - 、                     ,. ヾ、    |
           | ,. - 、! ` - 、__           _,. -ー' ´  \\   !
           ソ   ヾ      `ヾ ' ー--丶 ̄ヾ`' - 、.   /   ヽヽ |
          /     ト       l      \ \  `'フ,ィ7´7 ̄ ̄ ヽ!
         /     !ヽ     ̄ヾ ̄ ' ─- 、\ \  イ:ン, !、ヽ   '
         /     / \      ヽィ'〒.'.:テヽ  ` ー-ゝ `´ l ヾ`ヽ、
   / `ヽ/       ∧、  \\    \:.:'''.:ノ      ヽ  /   \ `
_,. r'     ヽ    /‐-ヽ、  \\   `゙\"´       /
  ヽ      !   ∠     ` ー-ヾ、\   ヾ、   r_‐',イ、|-、.  まさか僕の決め顔で容量落ちとはね
   ヽ      t'"ヽ >´ ̄ `ヽ    `ー\   ヽ -- ー'  ヾ、ノ ヽ、
    ヽ    ノ / ´       !      r ヽ  ヽ-r─-- 、_.ヽ`ソ \
、   /ヽ - '"ノ゙     _ ,. -‐'       ! | \ \戈、`- 、 `ヽ、__ \_
 ヽ '"    /     / ,> ヽ        ! |  ` ヾヽ、`ヽ、 \ l ヽ  ヾ、
      ´   _,. -"   ヽ ヽ       ヽ`ヽ、 | | >、 \_ノ !<、
         /       }  ヽ        ヽ、ヽノ ! `7`ヽ、 / -'

2 :
前スレのURL間違えた正しくはこっち
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1348487869/
主な登場人物
水銀燈
強い賢い美しいと三拍子揃った頼れる長女。しかし二言目には憎まれ口を叩く困ったちゃん。
自己嫌悪することもあれば自惚れたり、冷静かと思えば猪突猛進の気もあり、忙しい娘。
金糸雀
賢い馬鹿。やる時はやる子。やればできる子。しかしダメな時は何もかもダメ。
欲望には弱いがナイスな次女。
翠星石
人見知りするくせに相手を自分より格下だと判断するや否や急に態度がでかくなる。
しかも薔薇乙女の中で三女という結構な地位にいるので大概の相手を格下と見なす。
蒼星石
薔薇乙女一の常識人。薀蓄大好き。マスター大好き。でも空気は読まない。
今のところ、マスターを結菱一葉と桜田ジュンの並立制にしている。
真紅
薔薇乙女一の問題児。特に下ネタを躊躇せず使う。最近オッサン化が著しい。。
趣味の釣りが嵩じてnのフィールド(記憶の海)に第五真紅丸という漁船を有している。
雛苺
可愛い馬鹿。純粋な馬鹿。翠星石、真紅とともに桜田家の三馬鹿と呼ばれる。
今のところ、マスターを柏葉巴と桜田ジュンの並立制にしている。
雪華綺晶
姉達のものを何でも欲しがる癖がある末っ子。趣味は悉く陰湿。
幽霊みたいな側面もあり、浮いたり壁抜けができる反面、お経や清めの塩を受けると蒸発する。
ブサ綺晶
雪華綺晶子飼いの傀儡人形。一応は操り糸で操作されているらしいが、自律型も存在する。
大きさも何種類かあり、ガンプラBB戦士みたいなサイズから雛苺サイズまである。
薔薇水晶
槐メイデン。しかしその経緯はラプラスの魔と雪華綺晶に唆された槐が作ったもの。
自身とお父様に対する誇りと、はたして自分は生まれてきてよかったのかという迷いを常に持つ。

3 :
主な登場人物
桜田ジュン
三馬鹿の面倒を見る苦労人。
桜田のり
三馬鹿に加えジュンのことも見守る真の苦労人。
柏葉巴
ジュンのことは嫌いではないが、もっと自信を持ってほしいと思っている。
柿崎めぐ
ジュンのことはどうでもいいが、からかうと面白いと思っている。
草笛みつ
金糸雀を溺愛しているが、あまりに金糸雀がアホの子の時はついていけないこともある。
結菱一葉
最近、将棋が趣味。
結菱二葉
最近、将棋している兄の背後であれこれ囁くのが趣味。
オディール・フォッセー
エセ外人臭の抜けないフランス人。薔薇屋敷で住み込みのメイドをしている。
鳥海皆人
桜田ジュンに憧れる同級生。だが傍目には彼が桜田ジュンに劣る要素は一つもない。

自称ローゼンの弟子。ローゼンを越えたいという執着心に雪華綺晶が目をつける。
彼女とラプラスの魔の協力の下、薔薇水晶を作成しアリスゲームを撹乱した。
その頃のことはそれなりに反省し、今では娘を溺愛するとぼけたオッサン。
ラプラスの魔
雪華綺晶とつるむ事もあるが、基本的には裏方でなんやかんやと企んでいる。
ボス猫
桜田家の近所一帯を支配するボス的存在な猫。雛苺の友達。
ビッグジュン
隣の世界のもう一人のジュン。たまに人手が足りない時に真紅にむりやり連れてこられる。

4 :
主ではない登場人物
nのフィールドの四大集団
庭師連盟、東果重工、ネクロポリタン美術館、渡し守の集い。
メメントリオン
主に記憶の海に生息するクリオネ型の妖怪。呪いを消化(浄化)する掃除屋でありスカベンジャーな存在。
ヤドカリのように他の物体を鎧として身に纏う。鎧となる対象は船や学校などさまざま。
野薔薇
ローゼンメイデンを模して作られた出来損ない達。nのフィールドの各所に潜む。
製作者、制作年代はバラバラであるが、その多くが孤独と狂気に蝕まれている。
薔薇水晶も広義ではこのカテゴリーに属する。
ロゼリオン
野薔薇がメメントリオンを捕食し融合した状態。
体内のメメントリオンを利用し、さらに他者を食べることでその能力を取り込むことも出来る。
オズレ
現在、存在が確認されている唯一のロゼリオン。
超低速度ではあるが、粉々になっても復元できる完全な再生能力を持つ。
レイキ
庭師連盟を抜けた女性庭師。オズレの製作者。

5 :
【桜田ジュンの懊悩『蒼の魔術師』】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1348487869/469- の続きから

6 :
§薔薇屋敷前の路上
蒼星石「さて、ここに取り出だしたりまするは
     今の今まで僕が被っていた何の変哲もない帽子」ポフポフ
ジュン「真紅には、いやらしい帽子だと言われたことあるけどな」
オディール「しかし本当に今から蒼星石の言ったとおりになるのでスか」
蒼星石「それはまあ、当たるも八卦、当たらぬも八卦だね。コホン……
     天に蒼星、地に血脈、人の絆を以って空を無とせよ!
     目にもの見せるは薔薇乙女最終魔術! 不思議で大きな四次元ハット!」ボワン
オディール「ワオ!? 蒼星石の帽子が巨大化したでスよ」
ジュン「!!」

7 :
§薔薇屋敷内
      ┌──┐      ┌──┐      ┌──┐
      i二ニニ二i     i二ニニ二i     i二ニニ二i ばびゅーん

真紅「ッ!? そ、蒼星石の帽子が突然私達の頭の上に現れた!?
    何の前触れもなく! それに三つも!?」
翠星石「あ、あの帽子の中と蒼星石の手元の帽子の中は繋がっているです!!
     つまり、帽子に飲み込まれたらジエンドですよ!!」
雛苺「えええっ!?」
真紅「に、逃げなくちゃ!!」
翠星石「もう遅いですぅ!!」

8 :
§薔薇屋敷前・路上
蒼星石「♪何が出るかな ♪何が出るかな ♪テレレテッテ〜 ♪テレテテン」

翠星石「ぎゃっ!?」ボテッ
真紅「ふっ!?」ボトッ
雛苺「んっ!?」ドサッ

オディール「Oh! 大きな帽子の中から見事に三人が出てきまシたよ!」
蒼星石「今だジュン君! 早く三人を縛りあげて」
ジュン「おうっ!!」

9 :
ジュン「全く他所様に迷惑かけまくりやがって! 反省しろ!!」
翠星石「ええい! 縄をほどけですぅ!!」じたばた
真紅「なんという窮屈!!」じたばた
雛苺「苦しいのよ〜っ!」じたばた
ジュン「しかし凄かったな今の。どういう技なんだ蒼星石?」
蒼星石「nのフィールドと現世を移動する時の応用だよ。
     ラプラスの魔がジッパーでよくやるアレ」
ジュン「ああ、アレか」
蒼星石「今回は現世同士の空間を繋がなくちゃだから、かなり難しい。
     僕の場合、愛用の帽子を媒介に使うことで
     視認できる範囲の物を何とかワープさせることができる」
真紅「そ、蒼星石にそんなスゴ技があっただなんて」
蒼星石「まあ、隠し芸レベルだよ。翠星石以外には見せたこともない」
雛苺「うゆゆ……だから翠星石だけ慌てていたのよね」
蒼星石「あまり実戦的な魔術でもないしね。
     ワープさせたいもののある場所と、ワープ先の場所が
     僕の頭の中でかなり明確にイメージもされてなきゃ成功しない」
オディール「蒼星石が住み慣れた薔薇屋敷でだからこそ成功したというわけでスか」
ジュン「もし失敗してたら?」
蒼星石「翠星石達はnのフィールドのどこか、9秒前の白とかにふっ飛ばされていたかもね」
翠星石「そんな危険な手品をやってくるとは思わんかったですよ蒼星石!!」
真紅「実の姉妹である私達を何だと思ってるの!!」
雛苺「蒼星石はヒナの事が可愛くないのよ!?」
ジュン「ええい、盗人猛々しい!!」
オディール「貴女達のせいで一葉さんは倒れたのでスよ!?」
一葉「いや、違うよフォッセー君」ひょこっ
オディール「いいえ、違いませ……て、ウォワオ!? 一葉さんッッ!?」
一葉「凄いリアクションだね、君」
ジュン「欧米か」

10 :
オディール「な、何故ここに?」
一葉「いや、医者が『もういいよ』って言うから予定より早く退院しただけだ」
蒼星石「マスター! 体はもう何ともないんですか!?」
一葉「ああ。しかし、何か勘違いをしているようだな皆」
ジュン「心労で倒れたとオディールさんから聞いていたのですが、違うんですか?」
一葉「違う違う。持病の『くるぶしつやつや病』だよ」
オディール「Oh! なぁんだ、そうだったのでスか〜」
ジュン「……くるぶしつやつや病って何? 蒼星石?」
蒼星石「マスターが患っている108の病の一つ。その名の通り
     くるぶしがツヤツヤになり、フローリングで胡坐をかくと
     滑りだして止まらなくなるという恐ろしい病気だ」
ジュン「ああ、そう……」

11 :
真紅「と言うことは私達は何も悪くないのだわ!」
翠星石「そうです! そうですぅ!」
雛苺「エンジョイなのよ!」
翠星石「それを言うなら冤罪ですチビ苺」
真紅「謝罪と賠償を要求するのだわ!!」
ジュン「くっ! しかし、それを抜きにしてもかなりの迷惑を」
一葉「とは言え、確かに翠星石達の言うとおりでもある……」
蒼星石「マスターっ!?」
翠星石「ほら見ろですぅ! おじじはちゃァんと分かってくれているですよ!」
雛苺「おじいちゃん大好きなのー!」
オディール「そんな……一葉さん! お人よしすぎます!
       雛苺達はまた同じことをやりまスよ! 心の中で貴方を笑っている!」
一葉「待ちなさいフォッセー君。まだ私の話は途中だ」
オディール「?」
真紅「!?」

12 :
一葉「確かに翠星石達の言うとおりでもある……が、これは何かな?
    門扉の所に掲げられていた看板なのだが」
翠星石「げぇっ!? それは真紅の手書きの『売家』看板!?」
オディール「そ、そうでス! これはズバリ酷いでしょう!!」
真紅「し、知らないだわ! きっと近所の悪ガキのイタズラよ!!」
ジュン「今、翠星石が真紅の手書きだと言ったじゃないか」
真紅「くっ!? こ、このお喋りクソ乙女!!」
翠星石「なんですとーっ!? 真紅が調子に乗って
     『屋敷を売っちゃいましょう』とか言いだすからいけないのですぅ!」
雛苺「ヒナは最初から反対だったのよーーっ!」
真紅「あ、コラ!? 雛苺! 貴女ここまできて自分だけいい子ぶる気!?」
翠星石「卑怯ですよチビ苺!!」
雛苺「だってだってーーーー!」
翠星石「だってもクソもねえです!」ワーワー
雛苺「うぇええん! 真紅と翠星石と一緒だといつもこうなるのよ!」ピーピー
真紅「何よ私が悪いって言うの!? いい度胸じゃない!」ギャーギャー
オディール「な、なんという醜い争い」
蒼星石「これは酷いね」
一葉「……桜田君」
ジュン「はい」
一葉「悪いが、蒼星石とのトレードの件は無かった事にさせてもらえるか」
ジュン「はい。ほん〜〜〜っとに申し訳ありませんでした」

桜田ジュンの懊悩『蒼の魔術師』 終

13 :

三馬鹿のクズさに拍車がかかった
呪いの人形ってレベルじゃねーぞ!

14 :

蒼星石で容量落ちとは流石だぜ

15 :
>>13-14
いつもありがとうございます。蒼星石は本当にできる子。

16 :
【真紅、サンタになる。】

17 :
雛苺「♪じんぐるべーる! ♪じんぐるべーる ♪すっずが〜なる〜っ」
真紅「……」しらけ〜っ
翠星石「……」しら〜っ
雛苺「うにゅにゅ? どうしたの真紅に翠星石? もうすぐクリスマスなのよ!
    いい子にはサンタさんがプレゼントをくれるのよ!? 楽しみじゃないの〜?」
真紅「クリスマスぅ〜〜!?」
翠星石「サンタだぁ〜〜!?」
雛苺「うっ!? 二人とも顔が悪いのよ!?」
真紅「いつまでも子供みたいなことを言ってるんじゃないわよ雛苺」
翠星石「そうですそうですぅ! チビ苺が思っているサンタだなんて実在しねーです。
     かろうじて実在しているのは北欧サンタ協会に認定書をもらったオッサンとかです」
雛苺「ふ、二人とも薔薇乙女のくせに夢がないのよ!」
真紅「夢でお腹は膨れないし、アリスにもなれないのだわ」
翠星石「まったくですぅ」

18 :
ジュン「……どうして、そんなにやさぐれてしまってるんだ真紅と翠星石は。
     雛苺ほど浮かれろとは言わないが、もう少し素直にと言うか何と言うか」
真紅「もう、私達は騙されないのだわ」
翠星石「そうです、そうですぅ! 翠星石達は
     この伝統行事とやらに何度も騙されてきたのですよ!」
真紅「バレンタインデーはお菓子屋の陰謀だし!
    七夕で短冊に願い事を書いても、それが叶う気配は一向に無いし!」
雛苺「そ、そう言われればそうなの!! 真紅の言うとおりよ!」
翠星石「どうせ、今年もチビ人間がしょぼいプレゼントで
     純真な翠星石達を煙に巻くつもりですぅ」
ジュン「なんと、ねじ曲がった発想……。そんなひねくれた子のところには
     桜田サンタさんですら来ないぞ! プレゼント無しだ! 真紅と翠星石は!」
真紅「どうせ、桜田サンタごときには私や翠星石の一番欲しいものを
    プレゼントすることなどできやしないのだわ」
翠星石「全くですぅ。こればっかりは望んでも到底、手に入らないものですからね」
ジュン「うっ……! (そ、そうだった、コイツらの一番の願いは
     ローゼンに会うこと。それなのに……僕が無神経にも……)」
真紅「……」
ジュン「わ、悪かったよ。真紅達の気持ちも考えずにクリスマスを押しつけて……」
真紅「分かればよろしい」
ジュン「そうだよな。お父様に会うってのは、いくらサンタさんでも叶えてくれない」
真紅「は?」
翠星石「何をずれたことを言ってるですかチビ人間」
ジュン「え? だってお前らが一番欲しいプレゼントは
     アリスになってお父様に会うこと……のはずじゃあ?」
真紅「馬鹿ね。それは私達が自らの力で成し得てこそ意味があるのだわ」
翠星石「サンタに、そんなもんプレゼントされても達成感がねーですよ、達成感が」
雛苺「うぃ! 他人にヒナ達の家庭の問題を解決してもらおうとは思わないのよ!!」
ジュン「じゃ、じゃあお前らが欲しいプレゼントって一体?」
真紅「ビリヤードよ」
ジュン「……びりやーど?」

19 :
翠星石「はぁ、やれやれ。チビ人間はビリヤードも知らねーですか。
     これだから長々と引きこもっていて常識の無い社会不適合者は」
真紅「ビリヤードとは、布(ラシャ)を張ったテーブル上で
    棒(キュー)を用いて、静止している球を撞くスポーツで……」
ジュン「いや、知ってる! 知ってるってばそれは!
     それにビリヤードぐらいなら、桜田サンタでも用意できるってば!」
真紅「え、ホント!?」
翠星石「マジですか!? 桜田サンタもといチビ人間すげーです!」
ジュン「で、何が欲しいんだ? マイキューか? マイボールか?」
真紅「ビリヤード全部よ」
ジュン「全……部……?」
翠星石「ですからぁ、ビリヤード台から何から全てですよ」
真紅「いやはや、桜田サンタのお財布事情から言って
    遊戯室を増築してまでビリヤード場を整備してくれるとは思わなかったのだわ」
翠星石「言ってみるもんですね」
雛苺「なんだかんだでジュンはお金持ってるのよ!」
ジュン「……ちょっと待て、つまり駅前の貸しビリヤード場とかで
     遊ぶ時に使うマイキュー等が欲しいんじゃなくて
     そういったビリヤード場そのもの一式が欲しいってことか。この家に?」
真紅「イエス ユー キャン」
翠星石「最初からそう言ってるじゃねーですか」
雛苺「うゆゆ? 何か勘違いしてたのよジュン?」
ジュン「やかましい!! 誰だってクリスマスのプレゼントに
     ビリヤード室そのものをねだられるとは想像もせんわ!!
     んなもん、ホイホイと用意できるのはロアビィ・ロイぐらいだ!!」
翠星石「でも、蒼星石は去年のクリスマスプレゼントで
     おじじにビリヤードを頼んで、空き部屋を改築してもらってたですよ」
ジュン「結菱さんと一緒にすんな!
     と言うか薔薇屋敷にあるんだったら、そこでやればいいだろ!」
真紅「先日、薔薇屋敷で暴れ過ぎて蒼星石に出禁にされました(※)」えっへん
※桜田ジュンの懊悩『蒼の魔術師』 http://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-4689.html参照
ジュン「威張って言うようなことか。知人の家に出禁くらうって相当だぞ。
     じゃあ仕方ない、駅前の貸しビリヤード場へ行け」
翠星石「そっちも、とうの昔に出禁ですぅ」
雛苺「うぃ! キューを使ってフェンシングごっこしてたらつまみだされたの」

20 :
真紅「だから作りなさいジュン! この家に! ビリヤード場を!!」
ジュン「無茶言うな」
翠星石「そんな! 桜田サンタは嘘をついたですか!」
雛苺「ひどいのー! ヒナ達の! 乙女の純情をもてあそんだのよ〜っ!!」
ジュン「……」
真紅「これがジュンのやり方よ。口だけで女を泣かせる魔少年なのだわ!」
雛苺「ビリヤード場、ヒナも欲しかったの〜〜〜! うぇえええええん!」
翠星石「まあ、これでチビ苺もようやく目が覚めたですよね。
     所詮、チビ人間にも限界というものがあるのですぅよ。
     ここは翠星石達も不死屋のクリスマス特製うにゅ〜等で手を打つです。
     しおらしい願いで済ませとかないと、家計にも響いて日々の生活レベルが下がるです」
真紅「何気に最近の夕飯のおかずが以前より一つ減っているのだわ」
翠星石「嗚呼、家計を気にしてクリスマスプレゼントを遠慮するだなんて
     翠星石達はなんと気の利いた女の子! 薔薇乙女の鑑ですぅ」
雛苺「ぐすっ……、分かったのよ。ヒナもクリスマスは我慢するの」
ジュン「大体の発言は間違っちゃいないが、お前達のその態度がホントにムカつく」

21 :
§数日後・駅前通り
真紅「やれやれ、本当に町はクリスマス一色ね。不愉快なのだわ」
翠星石「仕方ねーですよ。今日はクリスマスイブです」
雛苺「うぃ。今日と明日だけの辛抱なのよ真紅」
翠星石「そんなことより、さっさとお使いを済ませようぜですぅ」
雛苺「お釣りでお菓子を買っていいって、のりに言われてるのよ」
真紅「分かってる。だからわざわざ、のりがいつも買い物に行っている
    スーパーじゃなくて、遠くの業務用スーパーにまで足を伸ばしたのだわ」
翠星石「ボス猿はまだ知らねーですが、こっちで買い物した方が少し安上がりなのですよね」
雛苺「つまり、お釣りが沢山もらえるの」
真紅「流石よね、私ら」

22 :
§買い物帰り
真紅「ふぅ、クリスマス&歳末セールで、さらにお安く買い物ができたのだわ」
翠星石「こういうことならクリスマスも悪くねーですね」
雛苺「お釣りでお菓子をたくさん買っちゃったのよ〜〜」
真紅「ある程度、外でお菓子を食べてから帰るわよ。
    あんまり沢山お菓子を持ち返ると、のりやジュンに不審がられる」
翠星石「分かってるですってば。じゃあ、公園にでも寄るですか」
雛苺「わぁい」

23 :
§公園
真紅「さ、ここでお菓子を半分ぐらい食べて……」
雛苺「絵へ経、どれから食べようかな〜っと」ガサガサ
翠星石「ひっひっひ。よりどりみどりですぅ」

幼児A「あ! サンタさんだ〜〜〜っ!!」トテテ
幼児B「ホントだ! サンタさんがいる〜っ」トテテ
幼児C「プレゼント配ってるの? 僕達にもちょうだ〜い!」
翠星石「!? な、なんですか! このクソチビどもは!!」
雛苺「公園で遊んでいたお子様たちが集まってきたのよ!?」
幼児D「お菓子? ねぇ、それお菓子!? プレゼントぉ!?」
幼児E「わーい! わーい!」
真紅「な、何を勝手なこと言ってるの!? 私達はサンタじゃないのだわ!
    まったく、どこをどう見ればサンタだと……!?」
幼児F「えぇ〜、だって真っ赤な服を着てるじゃんか〜」
幼児G「そうだ、そうだ。それにモミの木もいるじゃないか!」
真紅「赤い服!?」
翠星石「モミの木ってのは翠星石のことですか!?」
雛苺「じゃ、じゃあヒナは……!?」
幼児H「ピンクのトナカイさん〜〜!」
雛苺「ヒナはトナカイじゃないのよ!?」

24 :
幼児A「プレゼントー! プレゼントー!」
幼児G「ちょうだい! ちょうだ〜い!」
幼児E「サンタさん! ちょうだーい!」
真紅「や、やかましい物乞いどもね! 私はサンタじゃないのだわ!
    真紅よ! 誇り高きローゼンメイデン第5ドール真紅!」
幼児H「し……んく? サンタさんじゃないのぉ……」ショボン
真紅「……そ、そうよ」
幼児B「し、真紅ってまさか、あの……? 真紅さん!?」
翠星石「ん? どうやら真紅の事を知っているガキもいるみたいですよ」
真紅「流石は真紅ちゃんなのだわ。アニメ化するからには
    幼年層における知名度も抜群でないと……」
幼児B「ま、間違いねぇ! お兄ちゃんが言ってた!
     ブタ二匹までなら素手で殺せる真紅さんだーーーーっ!!」
幼児C「ええ〜〜っ!?」
幼児D「あ、あの噂の赤い悪魔の真紅さん!?」
幼児F「ほ、本当に!?」
真紅「あ、あら?」
翠星石「なんだか風向きがすげー怪しいですよ」
真紅「ちょ、ちょっと貴方! 勝手なこと言わないで頂戴!!
    お兄ちゃんとやらに何をフきこまれたか知らないけど、この私を悪魔だなんて」
幼児B「うわーん、だって昔お兄ちゃんが言ってたもん〜〜〜っ!
     この公園でカンチョー大会勝手に開催して、観客にヒールプレイを野次られたら
     逆切れして、リングに子供達を呼び寄せて、次々に殴り飛ばしたって〜〜!!
     僕のお兄ちゃん! 殴られたって言ってたもん〜〜〜っ!!」
真紅「……」
翠星石「……うわぁ、ガチですね。何一つ誤りの無い正確な情報が伝達されているですぅ」
雛苺「まさか、今頃になってあの時の黒歴史が蒸し返されるとは思わなかったの」
※SIMPLEアリスゲーム THEカンチョー http://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-2246.html参照

25 :
幼児F「ええ!? サンタさんじゃないの!? 悪魔なの!?」
幼児A「ど、どうして悪魔がサンタさんの格好しているんだよ!?」
幼児H「食べる気だ! 僕達の事をだましておびき寄せて、食べる気なんだ〜〜〜!」
真紅「ッッ!?」
幼児J「うわ〜〜〜ん! 怖いよ〜〜! 食べられたくないよ〜〜っ」
幼児E「えーんえんえんえん! えーんえんえんえん!!」
幼児G「びぇええええええええ!!」
翠星石「げげげっ! ガキどもが一斉に泣き始めたです!?」
雛苺「どどど、どうすればいいのよ!?」
真紅「み、みんな泣きやみなさい! ち、違うから!
    私は悪魔でもないし! みんなを食べたりもしないのだわ!!」
幼児D「ぐずっ。本当に……?」
幼児B「じゃあ、やっぱりサンタさん?」
真紅「そ、そう! あまり騒ぎになっても困るから敢えて違うこと言ったけど
    私は本当はサンタさんなのだわ! だ、だからお菓子をみんなにあげる!」
翠星石「真紅!?」
雛苺「真紅ゥ!?」
真紅「ここはこうするしかない……。二人とも我慢して頂戴」

26 :
幼児A「ありがとうサンタのお姉ちゃん!」
幼児H「もらっちゃった! もらっちゃたぁ! サンタさんからお菓子もらっちゃったぁ」
雛苺「あっという間にみんな泣きやんじゃったのよ」
翠星石「現金な奴らですぅ。翠星石達のお菓子が全部取られたですよ」
幼児G「えへへ〜、モミの木さんとトナカイさんもありがとう〜〜」
翠星石「分ぁかった、分かったですよ。もう、さっさとお家に帰れですチビども」
真紅「あ、それと今日の事はちゃんと家に帰ったら親兄弟はもちろん
    三等親ぐらいにまで電話して伝えるのよ。
    優しい真紅サンタ様からお菓子を恵んでもらえたって」
幼児C「うん! 分かったよサンタさん!」
雛苺「真紅がちゃっかり自分のイメージを修正しようとしているのよ」
翠星石「こいつも抜け目のないドールですね」

27 :
§帰宅後・桜田家
ジュン「そうかそうか、そいつは災難だったな三人とも」プクク
翠星石「笑いごっちゃねーですよチビ人間!」
雛苺「ヒナはトナカイじゃないって何回言っても分かってもらえなかったのよ」
真紅「……」
ジュン「? どうした真紅?」
真紅「私は……恥ずかしい」
ジュン「ん〜? まあ、そりゃそうだろうな。
     なんてったって赤い悪魔よばわりだもんな。
     しかし、今日のサンタ活動で少しはイメージが回復……」
真紅「そういうことじゃあないのだわ」
ジュン「え?」
真紅「あの子供達の顔の無垢なこと」
ジュン「真にピュアな心の子供の笑顔が、自分の薄汚れたローザミスティカに堪えたか?」
真紅「そういうことでもない。あの子供達のサンタに頼りきった態度。
    自分は何の対価も払わず、お菓子をねだる恥知らずぶり……」
ジュン「し、真紅?」
翠星石「真紅……?」
真紅「まさに餓鬼と呼ぶにふさわしい。この国の言い習わしは素晴らしいのだわ」
ジュン「あの……? 真紅さん?」
真紅「数日前までの私もあんな風だったと思うと恥ずかしくて仕方ないのだわ!
    顔からローズテイルが出そう!!」
雛苺「反省しているのよね真紅」
ジュン「ちょっとずれてるけど、まあ、いいか」

28 :
翠星石「そんなに落ち込んだり、気に病む必要は無いですよ真紅。
     今日のことを明日への糧とすればいいだけですぅ、それがドールの特権です」
真紅「それだけじゃあない。他にも私は気付いたことがある」
雛苺「気付いたこと?」
ジュン「何だ?」
真紅「過去の過ちに気付き、反省した私は言うならば覚醒真紅ちゃん」
ジュン「へ〜、それで?」
翠星石「何に覚醒したと言うのですか? 花京院みたいにグラサンでもかけるですか?」
ジュン「花京院のアレは覚醒とは違うだろ翠星石」
真紅「……つまり、既に私は何かに餓え、求める立場ではなく
    既に他者に対して何かを与えるという高尚な存在……
    お父様の高みに近づいた存在になっていたのだわ!! だからサンタとも間違えられた!」
ジュン「え? 何その論理?」
真紅「ふ、ふふふ。スッキリしたわ。頭の中の靄が晴れたよう」
ジュン「いや、ま〜だ特濃のミルクみたいな靄が渦巻いていると思うぞ」
翠星石「チーズになってるかもしれねぇですね」
真紅「ふ、覚醒者にしかこの気分は分かるまい」
ジュン「何を世迷言を言ってんだか」
真紅「せいぜい、この真紅ちゃんを馬鹿にするがいいのだわ。
    しかし、それも今の内。どうせすぐに、この覚醒真紅様の素晴らしさに気付くはず」
ジュン「はいはい」

29 :
§その日の夜
ジュン「ぐーぐー」
雛苺@鞄「すぴーすぴぴー」
翠星石@鞄「くかーー」
真紅「ふふん、みんないい気分で眠っちゃって。
    好都合なのだわ、始めるわよホーリエ」
ホーリエ「……」ふわふわ
真紅「? 何よ、あなた? シャンパンで酔っぱらってるの?
    まったく、しょうがない子ねぇ。
    今日のクリスマスパーティでは浮かれすぎないようにと言っておいたはずよ」
ホーリエ「……」ふよふよ
真紅「分かった。もう一回説明するわよ? 今から、各人の夢の世界に入って
    その人が本当に欲しいものを調査してそれをプレゼントして回るのだわ」
ホーリエ「……?」
真紅「ええ、現実世界での物質的なプレゼントではない。
    精神世界での深層意識層における金言的なプレゼント。
    だからこそ、彼らの本当に欲しいものが分かるし、用意もできる。
    そして、それらは皆の心の奥底にいつまでも宝物として残る」
ホーリエ「……」ふわふわ
真紅「そして皆はこの覚醒真紅様の愛と勇気と心強さの素晴らしさに
    感謝感激し、ひれ伏すことになる。どう? この計画? 完璧でしょ?」
ホーリエ「……」
真紅「それじゃ行くわよ。ホーリエ、まずは手近なこの家の人達から……」

30 :
§桜田ジュンの夢
美少女達『♪〜〜 ♪♪〜〜〜』
ジュン「いいぞ〜! そこ! もっと可愛くターンする!!」
美少女達『♪♪〜〜』
ジュン「わきが甘い!! しっかりきちりメリハリつけて!」
真紅「……何この夢。女の子達はべらかして踊らせて歌わせて。随分とゲスいのだわ」
ジュン「し、真紅……!? な、なんで
     この僕の最もプライベートな夢の空間に!?」
真紅「今日のクリスマス会の際に、ジュンの飲み物にシャンパンを混ぜといたのだわ。
    アルコールで脳の意識レベルの働きが落ちている。だからこういう、えげつない欲望も
    がっつり夢として顕在化するし、ホーリエと私も容易にこの階層にやって来れた」
ホーリエ「……」ふわふわ
美少女達『♪〜〜 ♪♪〜〜〜』
真紅「それにしても……もう一度言うけど
    とてつもなく下劣な夢ね。 何コレ? 喜び組?」
ジュン「ち、違う! これはファッションショーだ!」
美少女達『♪♪〜〜』
真紅「ひゃっひょんひょ〜?」
ジュン「なんだ、その発音。いいか、この子達のドレスは僕のデザインだ!
     そして彼女達がアイドルグループのように歌って踊りながら
     服をアピールする! どうだ!? 斬新だろう!?」
真紅「ああ、うん、そうね。はいはい斬新斬新」
ジュン「真面目に聞いとらんなコイツ」

31 :
真紅「誰がどんな内容の夢を見ようとそれは自由。
    覚醒真紅様といえども、いちゃもんを付けるわけにはいかないのだわ」
ジュン「そうですか、そりゃどうも。だったら何しに来たんだよお前」
真紅「クリスマスプレゼントを配っているの」
ジュン「ぷれぜんとぉ〜? 真紅が?」
真紅「そのとおり。これからジュンにもプレゼントを上げるから、ありがたく受け取りなさい」
ジュン「何をくれるんだ?」
真紅「そうね、真紅ちゃんがジュンのために一肌脱いで
    ジュンの学校の女子全員に今のジュンと同じ夢を見せるのだわ。
    ベルセルクの光の鷹の夢みたいに。もちろん女子達はダンサー役に置き換えて」
ジュン「なんばしよっとですか」
真紅「え? ファッションショーだかショーパブだか知らないけど
    女の子集めなくちゃ実現不可能でしょ? これ」
ジュン「いやいやいや、だからってこんな夢を学校の女子にぃ!?」
真紅「ダイジョブダイジョブ。夢だから、ジュンがそれほど恥ずかしがる必要はない。
    みんな、せいぜい『うわ、なんかキモイ夢見た』で収まるわ」
ジュン「それって夢見せる効果も意味も無いじゃん」
真紅「百人に一人位はジュンの夢に賛同してくれるかも、なのだわ。
    そしてそれは深層意識に残り、将来のジュンが呼びかけた時に
    『あ、これって夢で見たのと同じ! ひょっとして運命!? スイーツ!』
    ってな感じで、ホイホイ乗っかって来るかもしれない」
ジュン「お願いだからやめてください」
真紅「遠慮しなくていいってば。今日は聖夜。真紅サンタのプレゼントは無償の愛。
    明日の学校を楽しみにしてなさい。きっと女子達の噂の中心になるのだわ。
    それが良い意味でか、悪い意味でかは分からないけど」
ジュン「絶対に悪い方に転ぶから、やめて!」
真紅「どうして、そうネガティブなのよジュン! やってみなくちゃ分からないでしょ!
    引っ込み思案じゃ、そのうち誰も相手してくれなくなるわよ!」
ジュン「いや、この夢が知れ渡ってもそうなる……」
真紅「これ以上の異論反論は認めません。真紅サンタは忙しいのだわ。チャオ」
ジュン「お、おい!?」
真紅「心配しないで! やることはちゃんとやっとくから! ホーリエが」
ジュン「ソレをやめろと言ってるんだよぉォオオオオオオオオオ!」

32 :
§のりの夢
父親「大きくなったな〜、のり!」
のり「何言ってるのよパパ! ジュン君の方がもっと大きくなったんだから」
母親「長いこと放っておいてごめんなさいね。これからはずっと一緒だから」
ジュン「わ〜い! やった〜〜!」


真紅「あ、これはダメだ。真紅ちゃんが入ってはいけない空気がする」
ホーリエ「……?」
真紅「ここは退散よホーリエ。覚醒真紅様は空気を読む術にも長けているの。
    今回は敢えて何もせずに、家族水入らずの楽しい夢を見せ続けてあげるのがプレゼント」
ホーリエ「……」
真紅「手抜きでも屁理屈でもないのだわ。じゃ、次行くわよ、次」

33 :
§翠星石の夢
薔薇乙女達『ジャンケン……ポンッ!!』
翠星石「いよっしゃーーーーー! 翠星石の勝ちですぅ!! 翠星石がアリスです!!」
真紅「こぉら!」ドカッ
翠星石「げぶはぁっ!? し、真紅!? な、何故、抵抗を!?
     もう面倒クセーからジャンケンでアリスを決めることになったはずですよ!?」
真紅「目を覚ましなさい。いや、目を覚まされても困る。ともかく
    私は貴女の夢が作り出した真紅ではなくてよ。正真正銘のオリジナル覚醒真紅様」
翠星石「ぬぅ!? そのイカレた物言いは確かにマジの真紅ですね。
     何をしに翠星石の夢にやってきたですか!?」
真紅「愛を求めるのではなく愛を与える立場となった真紅サンタが
    愛に飢えた恵まれないドールどもにクリスマスプレゼントを配っているの」
翠星石「ほほぅ、プレゼントですか? それはいい心がけですね。
     翠星石はもらえるものは風邪以外なら何でももらうですよ」
真紅「はい、それじゃこれを上げる。この間、nのフィールドで拾ったのだわ」ドサッ
翠星石「? なんですコレ?」
真紅「昔の駄菓子屋やゲーム屋の前に置かれていたジャンケンマシーンよ。
    じゃんけんぽん! あいこでしょ!! ズコー!! ……ていうヤツ」
翠星石「知らねぇですよそんなの」
真紅「じゃあ今、知りなさい。そしてこれで好きなだけジャンケンをしなさい」
翠星石「いや、翠星石はそれほどジャンケンに夢中なわけでも……」
真紅「そうそう。100円玉入れなきゃ動かないけど、そこは自分でなんとかしてね」
翠星石「えええっ!?」
真紅「チャオ!」

34 :
§雛苺と巴とオディールの夢
真紅「さて、初めてのサンタ活動だけども、なかなか順調に進んでいるのだわ。
    ひょっとして、これが私の天職なのかもね」
雛苺「あ、真紅〜! 真紅も遊びに来たのよ?」
巴「こんばんわ真紅ちゃん」
オディール「ボンソワール! 真紅!」
真紅「むむ、これは雛苺と巴とオディールの夢の複合体?」
雛苺「んーん、ヒナの夢の中へ巴とオディールに来てもらったのよ」
真紅「また無理やり呼びこんだんじゃないでしょうね雛苺?」
雛苺「そ、そんなことないのよ! ねー? トモエ!? オディール!?」
巴「……ええ、そうよ」
オディール「いえ、雛苺が突然……」
雛苺「ノン! 言っちゃダメよオディール〜〜!」がばちょ
真紅「やれやれ。でもまぁ、今夜は大目に見てあげる雛苺」
雛苺「え? 本当!?」
真紅「ええ、それがこの真紅サンタの今夜のプレゼントよ」
ホーリエ「……!」
真紅「え? 何? のりに続いて、また手抜き?
    そんなことないってば。あ、そうそう、トモエ?」
巴「?」
真紅「この後で、ジュンのせいで変な夢を見るだろうけど
    彼に悪気はないのだわ。彼の趣味が気持ち悪いだけだから」
巴「う、うん……」
真紅「ではでは、真紅サンタはクールに去るのだわ!」
オディール「アデュー」
雛苺「バイバイなのよ真紅」

35 :
§水銀燈の夢(廃墟の街)
真紅「……いつものことだけど薄汚れてぐちゃぐちゃしたフィールドねぇ」
水銀燈「土足で人の夢に入り込んで、文句垂れるとはいい度胸じゃないの真紅」
真紅「こんなガラクタだらけの変わり映えしない夢をいつも見てるの? 貴女?
    廃墟マニア? 森ガールの次に廃墟ガールでも流行らせたいの?
    こんな所をまたアニメにされてみなさい、片付けのできない女だと思われるわよ」
水銀燈「アンタ、ケンカ売りに来たの?」
真紅「どうしてもケンカが欲しいというのなら無償で提供するけど。
    ま、話は最後まで聞きなさい。今夜の真紅ちゃんはサンタなのだわ」
水銀燈「そんなの私の知ったことじゃない」
真紅「知ったことにしてくれれば、貴女にもプレゼントあげる。望みは何でもOK」
水銀燈「……何でも?」
真紅「ええ、何でも。さあ言ってごらんなさい」
水銀燈「じゃあ、真紅のローザミスティカが欲しい」
真紅「パス」

36 :
水銀燈「パスってどういう事よアンタ!!」くわっ
真紅「ぼ、暴力反対! 真紅サンタは三回までパスが認められているのだわ!!」
水銀燈「ああもう、ホントにもうアンタは人をいらつかせるのが得意ねぇ!!」
真紅「水銀燈がカリカリしすぎなのよ。ちゃんとR酸菌摂ってるぅ(笑)」
水銀燈「その言い回しや返しの一つ一つがイライラする。
     もう何も要らないから、さっさと私の前から消えて頂戴」
真紅「それじゃあ、言葉に甘えさせてもらおうかしら。
    真紅サンタは他人の望みを迅速に叶えるのだわ。次もつかえていることだし」
水銀燈「次? 次ってまだ他の人の夢を巡る気?」
真紅「ええ」
水銀燈「ひょっとして、めぐのとこも?」
真紅「ピンポーン。次は柿崎めぐです」
水銀燈「……私も行く」
真紅「え? 何で?」
水銀燈「アンタ一人だけ行かせたらめぐの夢で悪さするに決まってる」
真紅「そんなことしないのだわだわ。それに真紅サンタはみんなの愛と希望の
    運び手よ? 貴女みたいな凶運と堕落の象徴は連れ歩けないのだわ」
水銀燈「真紅サンタは私の望みを迅速に叶えてくれるんでしょ?」
真紅「むむ……。仕方ないわね」

37 :
§柿崎めぐの夢
雪華綺晶「……私は白い悪魔のマスター」ぼそぼそ
めぐ「私ハ白イ悪魔ノますたー」ぶつぶつ
雪華綺晶「私、お父様大好きよ」ぼそぼそ
めぐ「私、オ父様大好キヨ」ぶつぶつ

紅&銀「洗脳されてるーーーっ!?」ガビーン

雪華綺晶「はっ!? 黒薔薇のお姉様に紅薔薇のお姉様まで!?
       ど、どうしてここに!?」
水銀燈「そりゃ、こっちの台詞よ末妹!! アンタ!
     私のマスターにまた変なチョッカイかけて!!」
雪華綺晶「こ、これはその……違います! 違うのですわ!」
水銀燈「何がどう違うってのよ!?」
雪華綺晶「ご、ごめんなさーい!」ピューッ
水銀燈「コラ! 逃げるな! 待ちなさい!!」ダダダッ

38 :
真紅「……二人ともどこかへ行ってしまったのだわ」
めぐ「あ、あれ真紅ちゃん? わ、私……?」
真紅「災難だったわね柿崎めぐ。無防備な精神である
    夢の中で洗脳をしようだなんて、恐ろしい悪鬼の所業だわ」
ホーリエ「……」
めぐ「いま、白い悪魔さんと黒い天使さんがいたような」
真紅「……気のせいよ。それはそうと、何か欲しいものある?」
めぐ「……?」
真紅「無いようね。じゃ、一つだけ忠告。これからジュンのせいで
    夢がさらに不快な内容に変わるかもだけど、まあ我慢して踊って頂戴」
めぐ「え? え?」
真紅「ではでは、アディオスアミーゴ」しゅたっ

39 :
§草笛みつと金糸雀の夢
みつ「あーん! 素敵ーー! 聖夜をカナと同じ夢で
    過ごせるなんて、みっちゃん大感激よーーーーー!!」スリスリスリ
金糸雀「ほあああああああああっ! いつもより早い、まさちゅーせっちゅかしら!?」

真紅「……これはまた、私が間に入りづらい夢ねぇ」
ホーリエ「!」
真紅「分かってるわよ。いい加減、まともなサンタ業をやるのだわ」

みつ「あら? 真紅ちゃんがいるわよ」
金糸雀「え? あ、ホントかしら。真紅、何の用?」
真紅「用って言うか何と言うか、真紅サンタのプレゼント配達よ」
みつ「真紅ちゃん、サンタやってるんだ〜」
金糸雀「カナ達にプレゼントくれるのかしら?」
真紅「そういうことね」
みつ「私にも? なになに? 何をくれるの! みっちゃん期待しちゃーう!」
真紅「その人が一番欲しいものをリサーチした上で、渡しているのだわ。
    だから、ひとまず欲しいものを言ってみなさい」
みつ「うーん、急にそう言われると難しいわね」

40 :
真紅「彼氏とか欲しくない? 草笛みつ」
みつ「ちょっ!? い、いきなり何を言うのよ! 真紅ちゃん!
    わ、私だって年頃なんだから彼氏の一人や二人ぐらい……」
真紅「じゃあ何でイブの夜に夢の中で人形と戯れているの?」
みつ「ぐはぁっ!」
金糸雀「ちょ、ちょっと真紅!?」
真紅「素直になるといいのだわ。男が欲しいと言えば
    ジュンか鳥海皆人あたりを裸にひん剥いて連れて来てあげる」
みつ「いやいやいや! わ、私そんな年下趣味じゃないから! ホント!!」
真紅「ああ、そう。人生で最大のチャンスを棒に振ったわね草笛みつ」
みつ「!」
金糸雀「ほ、本当に真紅は本気の本気なのかしら?
     サンタとして最大限可能なプレゼントを?」
真紅「最初からそう言ってるじゃない」
金糸雀「なら真紅、今日は大人しく帰ってかしら」
真紅「え? いいの? 帰っても? 本当に?
    真紅サンタの出血大サービスは今夜だけなのよ? マジで」
金糸雀「カナにはみっちゃんがいれば他には何も要らないかしら!
     いつでもみっちゃんさえいれば、それだけで聖なる夜なの!」
みつ「カ、カナ〜!! 私もよ! 私もカナさえいれば他には何も要らない!!」
金糸雀「みっちゃん!」だきっ
みつ「カナ!」ひしっ
真紅「……何、この茶番?」

41 :
§槐と薔薇水晶の夢
槐「薔薇水晶……」
薔薇水晶「お父様」
槐「薔薇水晶〜〜」
薔薇水晶「お父様……」
槐「薔薇水晶うううんん!」
薔薇水晶「お父様ぁぁ」

真紅「……ひたすらお互いを見つめ合って名前を呼んでいるのだわ」
ホーリエ「……!」
真紅「そうね。ジョンレノンとオノヨーコで、こんな感じのCDあったわね。
    あの二人も、これでキャラソングCDの新盤でも出せばいいのに……
    新アニメに出番があればの話だけどッ!」
ホーリエ「!?」
真紅「いけないいけない。愛と勇気の真紅サンタともあろう者が
    ちょっとブラック真紅ちゃんになりかけていたのだわ。
    ここは落ち着いて落ち着いて。深呼吸、深呼吸」
ホーリエ「!」
真紅「え? 無理よ無理無理。ここまで近付いても、あの二人は私達に気付いてないのよ。
    真紅サンタがプレゼント放り込む隙だなんて、1ピコメートルも無いのだわ」
ホーリエ「……」
真紅「それに仮に私に気付いてもらえたとしても
    雛苺や金糸雀の時のようになるのは目に見えている。
    これだけ他所様に追い返されるサンタも珍しいと言えば珍しい」
ホーリエ「……」
真紅「でも、真紅ちゃん負けない! きっと真紅サンタを
    必要としている人がいるはず! 行くわよ! ホーリエ!!」

42 :
§鳥海皆人の夢
雪華綺晶「僕は桜田ジュン。僕はお父様」
鳥海「僕ハ桜田じゅん。僕ハオ父様」
雪華綺晶「君は僕のお人形。僕は君のお人形」
鳥海「君ハ僕ノオ人形。僕ハ君ノオ人形」

真紅「また洗脳されてるーーーーッ!?」がびーん

雪華綺晶「っ!? 紅薔薇のお姉様!?」

水銀燈「見つけたわよ雪華綺晶!! ここでもまた性懲りも無く!!」ばばーん

真紅「す、水銀燈まで登場!?」
雪華綺晶「くっ! よく私を追って来られましたわね黒薔薇のお姉様」
水銀燈「アンタのその汚らわしいゲロ以下の匂いがプンプンしてんのよ!!」
雪華綺晶「ここはまた逃げるが勝ちですわね」ドロン
水銀燈「あっ! コラ! 絶対に逃がさないわよ!!」シュバーッ

43 :
真紅「……何が何だか分からない内に
    また白薔薇と水銀燈に夢をひっかきまわされてしまったのだわ」
鳥海「う、うぅん……」
真紅「可哀そうに、こんなにうなされて。良し、こういう場合には……」
ホーリエ「……」
真紅「昔の〜ジュ〜ン〜の〜オルゴール〜〜〜ぅ」テレレテッテテー
ホーリエ「……」
真紅「え? ドラえもんのモノマネが似てない? 馬鹿ね。
    今のは別にドラえもんの台詞を真似たわけじゃなくてよ」
ホーリエ「……」
鳥海「うううぅ……」
真紅「鳥海皆人……、桜田ジュンに憧れる少年よ。このジュンの思い入れのある
    オルゴールの複製品(レプリカ)で偽りでもいいから安らかな夢を見るのだわ。
    これが真紅サンタにできる精一杯の愛情と思いやり……」
オルゴール「♪〜♪〜♪♪♪〜〜〜」
真紅「中身の曲は聞くだけで死にたくなるドナドナだけどね」
ホーリエ「ッ!?」
オルゴール「♪〜♪〜♪♪♪〜〜〜」
鳥海「う、うあああ、うああああああっ!」
真紅「ふふ、夢の中でまた夢を見るだなんて体験はそうそうできない。
    こんなにハッスルして、どんないい夢を見ているのかしら?」
オルゴール「♪〜♪〜♪♪♪〜〜〜」
鳥海「ぐあああ! や、やめろっ! やめろーーーっ! 俺を売らないで〜〜〜!」
ホーリエ「……」
真紅「大丈夫。うなされているのは最初だけよホーリエ。ドラマや映画でもそう
    最初の苦境を乗り越えてこそカタルシスが得られる。それでもって
    ドーパミンとかがドッパドパよ。その辺も考えてのドナドナをチョイスしたわけ」
オルゴール「♪〜♪〜♪♪♪〜〜〜」
鳥海「い、痛い! 痛いぃぃぃいいいいい!! 俺の腕が! 足がぁァアアアア!?」
ホーリエ「……」
真紅「そろそろ、彼の夢の内容でこの領域も更新される。
    楽しい夢に部外者がいちゃいけないのだわ。行きましょホーリエ」

44 :
§結菱一葉と蒼星石の夢
一葉「王手」パチッ
二葉「あ! ま、待った! 兄さん!」
一葉「またか二葉」
蒼星石「これで15回目の『待った』ですよ二葉さん」
二葉「い、いちいち数えないでくれよ蒼星石」
真紅「グーテンターク! 真紅サンタの御到着よ!」
二葉「よし、それじゃもうひと勝負! 最初から!」
一葉「ずっと蒼星石に時間読み上げばかりさせるのも気が引けるのだが」
蒼星石「いや、僕は何ともないですよ。勝負を横から見てるだけでも楽しいですし」
真紅「さあ! ホーリーナイトのエンジェル真紅ちゃんが特別に
    プレゼントしてあげるのだわ! 三人とも光栄に思うが良いのだわだわ!」
二葉「じゃあ回り将棋しよう! 回り将棋! 戦争ありで!」
一葉「ふむ、それなら蒼星石も一緒にできるな」
真紅「ちょっと!! 無視しないで頂戴!!」
ホーリエ「!」
蒼星石「あれ? ホーリエも一緒に居るってことは……君、本当に本物の真紅?」
真紅「そうに決まってるでしょ!」
一葉「なんだ、そうだったのか。悪かったな、無視をしてしまって」
二葉「夢の世界にいると雪華綺晶があの手この手でチョッカイをかけてくるもんだから……」
蒼星石「よく分かんないのが来たら取り敢えず無視することにしてたんだ」
真紅「ああそう、白薔薇ったらあちこちで悪さしているわね」
蒼星石「で、何の用? サンタごっこしに来たの?」
真紅「ごっこじゃないのだわ。本当にマジのサンタよ。
    なんだったらサンタ協会に申請して登録もするのだわ」
二葉「そりゃ御立派」
真紅「分かればよろしい。では皆の衆、なんなりとこの真紅サンタに望みを言いなさい」
二葉「急に言われてもな、心の準備ってものがねぇ」
一葉「私もクリスマスプレゼントとは縁遠くなって随分と経つしな」

45 :
真紅「大いに悩んでもらって結構よ。今夜はここでラストだし」
蒼星石「皆の夢を荒らして回ってきたってこと?」
真紅「そんなことしてないわよ」
二葉「あ、そうだ! 真紅! 兄さんにお嫁さんとか用意してあげられないかな?」
真紅「嫁? 空気嫁じゃなくてリアルの?」
二葉「あ、ああ」
一葉「何を言い出す二葉!」
二葉「いいじゃん。熟年結婚とか珍しいものじゃないんだから、覚悟を決めて
    結婚しろって何度も言ってるだろー? その度にRが無いとか何とか言っちゃって」
蒼星石「……」
一葉「からかうな二葉」
二葉「いやいや、僕はいたってマジメだよ。兄さんの青春はまだまだこれから。
    正妻が嫌なら、妾の一人や二人、余裕で養える財だってあるんだし」
真紅「!」
一葉「今はもう、妾をとるような時代でもないぞ二葉」
真紅「うーむ、お嫁さんか……」
一葉「そんな真面目に悩まんでくれんでいいよ。二葉の冗談なのだから」
真紅「戸籍とか無くてもいいのなら、この私が……」
蒼星石「ちょっと真紅! 何言ってんの!?」
二葉「真紅が兄さんの嫁に? じゃあ義姉さんってことになるの?」
真紅「そうなるわね」
一葉「おいおいおい、『そうなるわね』じゃないだろ」
蒼星石「そ、そうだよ真紅!! 僕達は人形だよ!?」
     .ィ/~~~' 、  
    、_/ /  ̄`ヽ}  
    ,》@ i(从_从))  
    ||ヽ|| $ω$ノ||  愛さえあれば問題無いのだわ
    || 〈.iミ''介ミi〉||  
    ≦ ノ,ノハヽ、≧  
    テ ` -tッァ-' テ  
蒼星石「あ、目がドルマークになってる」
二葉「こりゃダメだな。兄さん、真紅を妻にしたら、もれなく毒盛られるよ」
一葉「そもそも誰とも結婚するつもりなどないと、さっきから……」

46 :
二葉「じゃあ、こうしようよ真紅サンタ」
真紅「どうするのよ?」
二葉「これから回り将棋をするから君が四人目のプレーヤーになってくれ」
一葉「そうだな。三人よりも四人の方が楽しかろう」
蒼星石「僕達のところが最後だとも言ってたし、ゲームに付き合う時間は充分あるんだよね」
真紅「ええ、勿論よ。全く、遊び相手が欲しいだなんて
    貴方達が一番、子供っぽい願いだわ」
二葉「お? 他の人達のプレゼントはどんな感じだったの?」
一葉「私も興味ある」
蒼星石「僕も」
真紅「こんな感じだったわ↓」

ジュン:ファッションショーの野望のために同窓の女子全員に夢を共有化
のり:いい夢を見ていたので邪魔せずに撤退
翠星石:ジャンケンマシーンをプレゼント
雛苺、巴、オディール:雛苺の世界を見て見ぬフリ
水銀燈:うやむや
雪華綺晶:逃げられた
めぐ:特に無し
金糸雀、みつ:二人の時間が大切だからと追い出された
薔薇水晶、槐:アウトオブ眼中
鳥海皆人:聞くだけで死にたくなるドナドナオルゴール

真紅「どう? 百点満点とはいかなくとも、初サンタでこの成績はかなり頑張った」
一葉「真紅……」
蒼星石「君……、これは」
二葉「びっくりするほどダメダメな結果じゃないか」
真紅「え?」

真紅、サンタになる。 完

47 :
乙乙
毎週この文量書けるのはすごいなあ
そして予想通り真紅のサンタは悲惨な結果に・・・

48 :

nフィーならサンタくらいいそうだけどな

49 :

nフィーから現実世界に出てるから当日にサンタはいないのさ
だから赤い悪魔が幅を利かす

50 :
真紅ちゃんアニメで看板張れるか意識しすぎやが

51 :
>>47-50
感想サンクスです。真紅サンタが皆にも夢を届けますように。

52 :
【薔薇乙女のうた『王樹の夢』】
前回までのあらすじ
真紅の誓い『さよなら青島副船長』 ttp://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-4684.html
深緑の庭師レイキからの要請を受け
薔薇乙女達は王樹を人に戻すべく、夢の攻性防壁へと侵入することとなった。

53 :
§nのフィールド・野薔薇の墓
ラプラス「ここにいましたか薔薇水晶。他の薔薇乙女達は既に王樹の夢に入りましたよ?」
薔薇水晶「……」
ラプラス「お父様や雪華綺晶を待たせてまで、ここでやるべきことが?
      野薔薇の墓と言えば聞こえはいいかもしれませんが
      実質、貴女が野薔薇を摘む度に、水晶の剣を一つずつ地に突き刺しただけの場所。
      野薔薇達の躯が眠っているわけでもなければ所縁の土地でもない」
薔薇水晶「そのとおりです」
ラプラス「貴女がただ物思いにふけるために拵えた場所。
      とは言え、これだけ水晶の剣が揃い並ぶと壮観ですね。
      数を数えてみてもよろしいでしょうか?」
薔薇水晶「……お好きに」
ラプラス「冗談ですよ。最初の質問に戻ります。ここで何を? 
      祈り……ですか? それとも懺悔?」
薔薇水晶「誓いです。もう二度と、間違いはしない……と」
ラプラス「できない約束はするものではありませんよ薔薇水晶」
薔薇水晶「できる、できないの問題ではない」
ラプラス「『全てを識る者』の二つ名にかけて言いましょう薔薇水晶。
      貴女はこれからも何度も間違いを犯します」
薔薇水晶「……」
ラプラス「今まで何度の選択を誤りました? その度に誓ったはずです。
      次こそは、今度こそは必ず……と。残念ながら貴女の今の気持ちも誓いも
      未来への繰り返しの途中に過ぎません」
薔薇水晶「未来へと続くものであれば、希望はあると思います」
ラプラス「甘い毒ですね」

54 :
ラプラス「貴女の過ちを数えましょうか。ここの水晶の剣の数に勝るとも劣らない」
薔薇水晶「……」
ラプラス「貴女の失敗その一。ローゼンメイデンを一度は壊滅状態に追い込みながらも
      最後の最後で貴女は自らが新たな存在に進化することを拒否し
      ローザミスティカを全て放棄。アリスを捨てた」
薔薇水晶「進化? あれはただの崩壊でした。
       ローザミスティカを解放していなければ私は死んでいた。
       結局は雪華綺晶の企てた実験だったのでしょう?
       ローザミスティカが一所に集まれば、どうなるか見てみたい……と」
ラプラス「アリスになるということはそういうことですよ。一度死んでください。
      そうすれば槐ではなく、真のお父様ローゼンの寵愛も受けられた。
      貴女がローゼンの寵愛を受けること、これに勝る槐先生の喜びは無いはず」
薔薇水晶「……」
ラプラス「土壇場になって貴女は、孤高の存在となることに恐れを抱いた。
      独りぼっちのアリスになることを恐れた。
      だからですかね、野薔薇に対して必要以上に親身になってしまう」

55 :
野薔薇とはローゼンメイデンを模倣して作られた人形達のこと。
ローゼンとローゼンメイデンのネームバリューにより
その後追いを行った錬金術師達は多かった。
しかし、ローゼンメイデン程の人形が誕生することはほぼ皆無であり
作られた人形の多くが廃棄され、あるいは暴走し、その一部がnのフィールドで野生化した。
これらを総称して野薔薇。
作られた時代もバラバラなら、製作者も異なる。生まれながらの敗残兵達。
彼女達に野薔薇の通称を付けたのはラプラスの魔であり
これは『野犬』に倣ったネーミングである。
野薔薇が危険な理由はいくつかあるが、その最たるものは『人の生命力を奪う』こと。
ローゼンメイデンがそうであるように、野薔薇も通常は人間の生命力を糧とする。
野犬が人間社会の『味』を覚えているように、野薔薇も人間の味を覚えている。
槐と薔薇水晶は人間が好きである。
故に薔薇水晶は動力源として人間の生命力を必ずしも要とはしない。
ただし、現状では止むを得ず槐をミーディアムとして動力を得ている。
槐が薔薇水晶を作った背景には
人間嫌いになったローゼンが作った、人の命を奪う悪いローゼンメイデンを倒すためという面もある。
勿論、槐がローゼンの真意を理解できていないところもあった。
そしてアリスゲーム崩し失敗以降は槐もこの考えをかなり改めている。
薔薇水晶も戦いを通じてローゼンメイデンの心情に触れ、変わった。
それでも野犬同様に獰猛な野薔薇に対しては厳格であろうとしていた。
彼女達は狂い、暴走した人形。心を無くし、機械的に人間の生命を吸う魔物。
そんな野薔薇の討伐は元々ラプラスの魔から持ちかけられた依頼であった。
それを受けたのは薔薇水晶の意思でそうしたことだった。
ただ、お父様である槐は、あまりそれを薦めはしなかった。
ラプラスの魔から依頼されるがままに薔薇水晶は数体の野薔薇を摘んだ。
しかし、薔薇水晶はラプラスの魔に野薔薇は見つからなかったと報告し続けた。
野薔薇への小さな同情心。ラプラスの魔への小さな反抗心。
狂った人形、人の生命を吸う魔物とはいえ、その出生や来歴は自分に近い。
生命散らせた後は静かに眠らせてあげることで、薔薇水晶は小さな満足感を得ていた。
薔薇水晶は野薔薇を害獣と同レベルに見なして狩っていたが
その後に彼女達の冥福を祈らずにはいられなかったのだ。それが自分のエゴだとしても。
ある日、転機が訪れる。ラプラスの魔の小細工により
槐がローゼンメイデンに再び危害を加えようとしているのではとの疑いがかけられる。
抜き差しならない状況にラプラスの魔が提示した解決策
『野薔薇を一応の犯人に仕立て上げる』を実行し
薔薇水晶はついに野薔薇の存在を明るみにしてしまうことになる。

ラプラス「貴女の失敗その二。野薔薇を倒した後、貴女はその骸を地に葬るようになった」
薔薇水晶「土から生まれた人形、その骸を地に返すだけのことが失敗?」
ラプラス「結果としてです。貴女だって分かっているでしょう。
      その行為が、意図せずともロゼリオン第一号の誕生に繋がってしまったことを」
薔薇水晶「……」
ラプラス「そのせいで、野薔薇が東果重工により大乱獲されました。200以上のね」

56 :
野薔薇を表舞台に上げて以降は急展開だった。
竹林の野薔薇に続き、廃学校の三輪の野薔薇、ロゼリオンそして新ロゼリオン。
野薔薇の中には人間を糧とせずに生きていこうとしている者もいた。自分と同じように。
奇妙な友情が生まれた。最早、小さな同情ではない。
未だ人間を糧とすることを止めないローゼンメイデンに対する反感も燻った。

薔薇水晶『何故、そうまでしてローゼンメイデンに挑もうとするので?』
オズマ『私達は蛍だ、光らない蛍。そしてローゼンメイデンは光そのもの』
オズミ『欲しい……光、温かい光』
オズム『例えこの身を焦がすことになろうとも』
オズメ『飛んで火にいるなんとやらってか』
オズモ『正直、長生きにも飽いたところです。
     閃光のように派手に散りたいと考えないこともない』
薔薇水晶『気持ちは分からなくもありません』
オズレ『……』
オズマ『無論、勝てればそれに越したことは無いがな』

57 :
C

58 :
ラプラス「貴女の失敗その三。ロゼリオンの蜂起に同調した貴女は
      自らのその矛先を雪華綺晶に向けた。個人的な恨みから」
薔薇水晶「……」
ラプラス「守りたいものがあったなら、それを守ることに専念すべきだったのです。
      なのに貴女はロゼリオンを守ることよりも
      ローゼンメイデンを、雪華綺晶を攻めることを選んでしまった」
薔薇水晶「……」
ラプラス「攻めるか守るか二つに一つ。二兎を追うものは一兎をも得ず。
      結局、雪華綺晶を討つ事は叶わず貴女は友のロゼリオンを全て失った」
薔薇水晶「オズレがまだ残っています」
ラプラス「彼女をまだ友だと? 確かにロゼリオンではありますが
      彼女は元々、レイキの野薔薇。オズマ達を、貴女をも騙していた」
薔薇水晶「……」
ラプラス「なるほど、彼女に対する心の整理をつけるためにこの場に?
      それで、どのような結論に? また土壇場で雪華綺晶に牙を剥きますか?」
薔薇水晶「いえ、自分でも笑ってしまう結論です。
       もう一度オズレと会わなければ、それは分からない」
ラプラス「保留……ですか。予言しましょう薔薇水晶。きっと、それも『過ち』となりますよ」
薔薇水晶「……お父様や雪華綺晶の元へ戻ります。時間が無かったのですよね」
ラプラス「それもそうですが実は、時間はかかってでも
      貴女の心がぶれない様になればそれでいいとのお考えです。槐先生も雪華綺晶も」
薔薇水晶「……」
ラプラス「失礼。これは二人から薔薇水晶には言わないようにと釘を刺されていましたのに。
      どうにも私はおしゃべりで困ってしまいます」

59 :
§王樹の夢・第四階層
オズレ「……マザー、薔薇水晶がようやく復帰。第七班が行動を始めたようです」
レイキ「意外と早かったな。もう少し難しい年頃の娘に見えたが」
蒼星石「薔薇水晶は強い子ですよ、レイキ」
レイキ「だと、いいけどね」
オズレ「それと、もう一つ。今の通信で雪華綺晶との『糸電話』が切れました。
     以降の連絡は不可能となりました」
レイキ「充分だ。念のためオズレに付けた雪華綺晶の糸。
     短時間とは言え、機能していてくれたことの方が奇跡」
蒼星石「いいのかい? この程度の事を奇跡と言って?
     これから僕達は王樹を、君の母親を人間に戻すという大奇跡を起こさなくちゃいけない」
レイキ「……王樹の夢については一応の調査を済ませてある。
     全部で七つの階層だが、それぞれの階層には直接侵入できる。
     だから私達を七つの班に分け、同時に攻略を始めた」
蒼星石「第四班は僕と貴女とオズレ」
レイキ「王樹攻略の要となる班だな。何しろこの階層のボスは『イチジク』。
     王樹となる前に母が食した植物は全部で七種。
     それぞれの植物に応じたボスが母の心の欠片を守っている」
オズレ「そしてイチジクこそが王樹のベース。つまり、王樹の中で最も濃い性質。
     故にボスも強力であると思われます」
蒼星石「そのことに異論は無いですし、他の班構成にも納得はしています。
     皆はきっとレイキさんの考え通りに、心の欠片を回収してくれるはずだ」
レイキ「では、これから起きるのは奇跡じゃなくて、当然の結果……よね? 蒼星石」
蒼星石「いいえ、庭師として言わせてもらうなら、この庭仕事はきっと失敗する」
レイキ「蒼の庭師らしくない、弱気な発言ね」
蒼星石「レイキさんだって分かっているはずです。
     砕けた心の欠片を集めただけでそれが元通りになるとでも?」
オズレ「……」

60 :
レイキ「また砕けるのがオチでしょうね。そもそも砕けるべくして砕けたのだから」
蒼星石「だったら」
レイキ「そこでオズレの出番よ。王樹と化した母の体を
     オズレの超再生能力で人に戻す。体が戻れば、心も砕けずに済む」
蒼星石「超再生能力はスピードが遅いはずです。
     本当にこの王樹を人に戻せるほどのパワーが?」
レイキ「ある。スピードを犠牲にしている代わりにパワーは充分にね。
     具体的には、オズレに母の心の欠片全てと
     王樹と混ざってしまった母の肉体を、一部分だけでも切り離し食べさせる」
オズレ「私はマザーの母に生まれ変わるのです」
蒼星石「……それでもうまく行くとは思えない。
     心が砕けなくとも、体が砕ける可能性だってある」
レイキ「かつて薔薇乙女のローザミスティカをかき集めた薔薇水晶のように?」
蒼星石「!?」
レイキ「何で知っているのか? その答えは雪華綺晶が教えてくれたから。
     あれは雪華綺晶の実験よ。あの結果を見て雪華綺晶は方針を転換した。
     先ずはローザミスティカではなく、体。強い体が無くては強い心を宿せない」
オズレ「……」
レイキ「今回は違うわよ。元々母の心だったものを、母の体に戻すだけ。
     きっと上手く行く。ま、仮に上手くいかなかったとしても……」
蒼星石「?」
レイキ「愛する者を得るのは最上だが、失うのはその次にいいってね」

61 :
§王樹の夢・第一階層・第一班(水銀燈、柿崎めぐ)
めぐ「罠だらけの不思議な迷宮を突破してボスを倒してお宝ゲット! か。
   なんだかゲームみたいよね水銀燈」
水銀燈「喋りながら歩いていると、また鉄球とか矢とか飛んでくるスイッチ踏むわよ、めぐ」
めぐ「その時はまた水銀燈が守ってくれるんでしょ?」
水銀燈「あんまり私を頼りにしないで。いつまでも一緒に居られるとも限らないのに」
めぐ「いつまでも一緒よ。だって私は水銀燈より先に死ぬんだもの。
   水銀燈が私を殺してくれるんでしょ? そして私は死んでも水銀燈と一緒なの」
水銀燈「……まぁた、アンタは真顔でそーゆーこと言う」
めぐ「いつだって本気よ、私は」

???「どこでも一緒。死んでも一緒……か。我々なら叶えてやれんでもないぞ、その願い」
めぐ「だ、誰の声!?」
水銀燈「どうやらボスのお出ましのようね。さあ、姿を見せなさい!」
???「いいとも。あんまり乾燥したところは嫌いなのだが」
めぐ「地面の下から……何か出てくる!?」

白く小さな樹「久しいな水銀燈。毒水の壺を湛えた薔薇乙女よ」

めぐ「な、何? 樹? 樹が喋ってる?」
水銀燈「正確には樹じゃない……、これは菌糸の塊。キノコみたいなものよ。
     ワタハミ(※)でしょアンタ? どうしてアンタがここにいる!?」
めぐ「わたはみ?」
※薔薇乙女のうた『ある野薔薇とワタハミの樹』 ttp://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-4024.html 参照

62 :
ワタハミ「我々は私であり、私は我々である」
めぐ「? ??」
水銀燈「ちっ! そうだった。こいつらは群体。何らかの方法で
     全ての個体同士の情報を共有している……ということは此岸島のワタハミとは違う」
ワタハミ「そう。私は違うが……我々は同じだ」
水銀燈「レイキの母はワタハミを食べていたのね」
ワタハミ「そうだ。子供の死体に取り付き、操作する能力。
      あの女庭師はそれに注目し、我々の私を食らった。
      有能な庭師が増やせるのなら、ゾンビやマタンゴでもかまわなかったのだろう」
めぐ「……」
ワタハミ「提案がある。そこの黒髪の少女。貴様は今、死んでも水銀燈と一緒だと言ったな」
めぐ「え、ええ」
ワタハミ「では今ここでR。私が菌糸をお前の死体に宿らせてやる。
      そうすればお前は死して尚、水銀燈とともに居られる。
      お前達が探している『王樹の心の欠片』も明け渡そう」
めぐ「!?」
水銀燈「ワタハミ!」
ワタハミ「此岸島の崩壊により我々は危機に瀕している。我々の私が最後のワタハミだ。
      我々は増えなくてはならない。しかし、私では王樹の夢から出ることはできない。
      黒髪の少女、私に体を貸せ。そうすれば病も老いも無い永遠をくれてやる」
水銀燈「ダメよ! めぐ! 死んだらそこで全てお終いよ!
     こいつに体を乗っ取られるだけ!! 私もそんなゾンビに興味は無い!」
めぐ「……」
ワタハミ「水銀燈はこう言っているが、お前のことを大層気に入っている。
      我々の私が彼女の心に触れたこともあるのでな」
水銀燈「……!」
ワタハミ「なんなら私の菌糸を使って、この少女の心をお前の体に移してみるか水銀燈?
      今度は多分、上手く行くぞ」

63 :
めぐ「本当に、死んでも水銀燈と一緒に居られるようにしてくれるの?」
水銀燈「めぐ!?」
ワタハミ「ああ、そうだ。ギブアンドテイクだ」
めぐ「でも断る」
ワタハミ「……何故?」
めぐ「私は綺麗に死んで水銀燈と一つになりたいのよ。
   アンタみたいなおぞましいキノコ、不純物を繋ぎなんかにしたくない」
水銀燈「めぐ……」
ワタハミ「是非も無し……か。交渉相手を間違えたようだ」
水銀燈「アンタの間違いは、そもそも私の前に姿を現した事よ。
     覚悟はできてんでしょうね。これからアンタを燃やして心の欠片を奪い取る」
ワタハミ「待て」
水銀燈「何よ命乞い? らしくもないわね」
ワタハミ「そうじゃあない。心の欠片まで燃えてしまうぞ」
水銀燈「そんな見え透いた嘘……」
ワタハミ「だから先に渡してやる。ほら、これだ。拾え」コロン
めぐ「え……!? ど、どうして」
ワタハミ「要らないのだよ。黒髪の少女、お前の言うところの『不純物』だ。
      この心は、私にとって、我々にとって」
水銀燈「……」
ワタハミ「しかし、私が生きている限りはこの心の欠片を『守らされて』しまう。
      それを終わらせてくれ。私も我々のようにあの傷だらけの野薔薇のもとへ逝きたい」
水銀燈「あのジャンクの心の方は、随分とアンタに馴染んでいたようね」
ワタハミ「そうだ。お前達がそうであるように。『死んでも一緒に居たい』」
めぐ「……」
ワタハミ「もういいだろう、私を焼け。早くしないと心の欠片がまた私の中に戻る」
水銀燈「分かった。せめて苦しまないように一瞬で焼いてあげる」
ワタハミ「……苦しみなど元より無い」

第一階層BOSS ワタハミ
水銀燈の火羽根により焼却
王樹の心の欠片をGET

64 :
§王樹の夢・第二階層・第二班(金糸雀、草笛みつ)
金糸雀「無効共鳴奏法! ドレイクハウリング!!」♪〜♪♪〜〜
みつ「カ、カナ!?」
金糸雀「みっちゃん! 今の内かしら! 早くマンドレイクを引っこ抜いて!!」♪〜
みつ「本当に大丈夫なのよね。カナを疑うわけじゃあないけど
    マンドレイク、別名マンドラゴラ。これを引き抜く時の断末魔を聞いたら……」
金糸雀「大丈夫よ、みっちゃん! このカナのドレイクハウリング奏法は
     魔楽器ドレイクハウリング(※)を解析して得られた技術かしら!」
※金糸雀と使えないバイオリン ttp://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-2992.html 参照
みつ「私達の会話はそのままに、マンドレイクの金切り声だけ
    中和して打ち消してくれる……のよね」
金糸雀「そのとおり! 三回目の説明は無しよ!
     カナは演奏で手がふさがってるから!」
みつ「わ、分かった! 女、草笛みつ○○歳! 覚悟決めました!」
   
金糸雀「ファイトかしら! この荒野に生えまくっている大量のマンドレイク!
     こいつらのどれかが心の欠片を持っているはずよ!」
みつ「いくわよ! 地元じゃ、イモ掘り姫と言われた
    私の抜き抜きテクニック! 見せつけてあげるわマンドレイクども〜〜」

第二階層BOSS マンドレイク
草笛みつがひたすら引っこ抜き続け48本目で心の欠片をGET
ただしマンドレイクは貴重でもあるため
欲望の塊と化した金糸雀と草笛みつが
群生しているマンドレイクをその後も暫く収穫し続けた。

65 :
C

66 :
§王樹の夢・第三階層・第三班(翠星石・結菱一葉・結菱二葉)
翠星石「……」むっすー
一葉「そう、むくれるな翠星石。ジュン君のパートナーが真紅になったからとは言え」
二葉「僕らだって本当は蒼星石と一緒が良かったんだから」
翠星石「す、翠星石はそんなに心の狭ぇ女じゃねーですよ!」
一葉「そうか、ならいいのだが。さっきから随分と鼻息が荒いように見えたのでな」
翠星石「おじじはもう、自分の加齢臭のせいで気付かなくなっているかもですが
     ヤングおじじ! そっちは気付かないのですか? この『臭い』に」
二葉「臭い? そう言われれば若干R臭いような……?
    やだ、兄さん。ひょっとして漏らした? もう、そんな年?」
一葉「違う」
翠星石「……あのレイキってヤロー
     すかした庭師っぽくて好きになれねぇですが実力は確かなようですね。
     ちゃんと各階層のボスの傾向と対策を考えた上で班を構成していたようです」
二葉「物をじらした言い方は君らしくないぞ翠星石」
一葉「……私にも少しずつだが臭ってきた。これは、まさか……?」
翠星石「そう! ラブレシアです!! 何処か近くに生えているはずです」
二葉「らぶれしあ?」
翠星石「見た目はラフレシアそっくりですが
     ブドウ科植物にではなく人間や人形の頭に寄生する植物です!」
一葉「それも恋する乙女に寄生する。ついた渾名が、恋する天花ラブレシア」
二葉「詳しいね」
一葉「翠星石が寄生されたことがあるからな(※)。
    それにしてもレイキの母がラブレシアを食べていたとは」
※翠星石と恋する天花 ttp://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-3670.html 参照

67 :
翠星石「あの時は完全に、してやられたですが
     薔薇乙女には二度同じ技は通用しないですよ!
     こんな再生怪人みたいなボスは、どこに隠れていようと翠星石の敵じゃ……」
ラブレシアA「……」ボコッ
ラブレシアB「……」スボッ
ラブレシアC「……」ドバッ
ラブレシアD「……」バオッ
ラブレシアE「……」ガボッ
一葉「!? 迷宮の壁や天井! そこらじゅうから生えて来たぞ!」
翠星石「あ、あら……? だ、団体さんでご登場ですか?」
二葉「再生怪人はたくさん出るからね〜」
一葉「この迷宮それ自体がレイキの母の頭の中でもある。
    頭部に寄生するラブレシアが何処から出てきてもおかしくはなかった……か」
翠星石「状況分析している場合ですか、おじじ!」
二葉「慌ててるけど、ラブレシアってそんなに危険な植物なの?
    確かに、出てきたことによって臭いはさらにひどくなったけど」
一葉「この臭いはな二葉、引火性のガスの匂いだ。
    成熟したラブレシアはガスを使って種をロケットのように飛ばす」
二葉「ええ!?」
一葉「しかし安心しろ。静電気などを発生させなければ爆発しない」
翠星石「他にも火気は厳禁ですよ! タバコとか、もっての他ですからね」
一葉「私も二葉もタバコは吸わんよ」
ラブレシアA「……」グググ
翠星石「?」
一葉「ラブレシアが花をこっちに向けたぞ?」
二葉「まさか……!?」
ラブレシアA「……」バッグォーン
翠星石「ば、馬鹿な! 爆発! 種を飛ばしたですぅ」
一葉「避けろ翠星石!!」
翠星石「間に合わな……」
二葉「くっ! させるかっ!!」ガバッ

68 :
翠星石「ふ、二葉っ!?」
二葉「……大丈夫か翠星石?」
翠星石「大丈夫です! 二葉が翠星石を押してくれたおかげで! で、でも!」
一葉「二葉! お前! 下半身が吹っ飛んで……!」
二葉「あー……平気。幽霊だから。普通は足が無いもんでしょ、霊って」
一葉「馬鹿を言うな。腰から下が無くなってるんだぞ」
翠星石「二葉……!」
二葉「だから平気だって。吹っ飛んだ部分さえ集まれば元に戻れる、スト様みたいに。
    今、バラバラにちぎれた下半身に集合を掛けているところだ。
    けど、もう一発食らうと本格的にヤバいかな。元に戻れなくなる……かも」
翠星石「くっ……」ダダダッ
一葉「翠星石! どこへ行く!」
二葉「僕達から離れるな! 狙い撃ちされるぞ!」
一葉「! 逆か、私達の方に種が飛んで来ないように……。
    ラブレシアの狙いは女性優先だ」
二葉「翠星石……!」
翠星石「迂闊だったです。火気も静電気も無ければラブレシアは爆発しない。
     しかし、ここは……! レイキの母の脳内が肥大化したも同然の領域」スタタタ
一葉「神経電流……か。迷宮と化したここでもそれが健在しているとは。
    さらに、ここのラブレシアはその微弱な電流でも引火する……」

69 :
翠星石「ですがピンチの後こそチャンスありですぅ!
     ラブレシアは種を一度に一つしか作れないです!
     ここの全てのラブレシアの種を凌ぎきれば……
     あとはゆっくりと心の欠片をラブレシア達の中から探すだけ」
ラブレシアF「……」ズドッ
ラブレシアG「……」ゴボッ
ラブレシアH「……」ダバッ
二葉「す、翠星石の行く手を阻むように新たなラブレシアが!?」
一葉「まだこんなにラブレシアがいたのか!」
翠星石「こりゃもう避けるだなんだのって言うレベルじゃねーですね! スィドリーム!!」
スィドリーム「!」しゃきーん
翠星石「イメージが悪いので使いたくない技ですが、やるですよ!」
スィドリーム「!!」
ラブレシア達「……」ドババババッ
一葉「ラブレシアから翠星石めがけての一斉発射!?」
二葉「全周囲からの種大砲だと!? 翠星石ーーーーィ!」

70 :
翠星石「う……く……」
一葉「翠星石!」
二葉「や、やった! ボロボロのようだが、身切れたところとかは無い!
    間一髪、種大砲の雨あられを避け切ったのか!」
一葉「違う、翠星石の足元のあの種の落ち方は……防いだんだ」
翠星石「おじじ……の言う通りです。庭師の如雨露で
     世界樹の蔓を緊急召喚して、翠星石の周りに張り巡らせたです。
     思っていたよりもかなり素早く出てきてくれて、助かった……ですよ」
二葉「植物の蔓で、植物の種を防いだのか。流石は世界樹、頑丈なものだ」
翠星石「そういうわけでもねーです。ちゃんと世界樹の蔓を計算して編まないと
     ラブレシアの種を受け止めるほどの強度は出ねーです」
一葉「強度?」
翠星石「蜘蛛の巣ですよ。蜘蛛の巣の形に蔓を編み込んで、なんとか種の威力を
     殺せたのです。白薔薇の技に似ているですから、使いたくなかったのですが」
一葉「ふ、安心しろ。桜田君に見られたわけでもあるまい」
翠星石「おじじ達にだって、見られたくはなかったですよ……、くっ!」グラリ
一葉「翠星石!? どうした?」
翠星石「それに衝撃まで完全に防げたわけではないですからね。翠星石も結構ギリギリです。
     けど、おじじ……、もう種は飛んでこねーですから後は任せた……ですよ。
     翠星石は、ちょっと寝る……です」
一葉「わ、分かった! 安心しろ! 立派だったぞ翠星石!」
翠星石「……zZZ」
二葉「寝ちゃったね。本当に力を使い切ったようだ」
一葉「弟どころか、こんな小さな娘にまで深手を負わせて、私はダメな男だな」
二葉「兄さん、それは……兄さんは生身で、ただの老人だから」
一葉「分かってる。ダメな男でも、老人でも……お前達は私のために身を痛めてくれた。
    その心意気に報いるだけのことはする。お前も体が繋がるまで寝ていろ二葉。
    どれだけ時間がかかっても、探しものは私が見つける」
二葉「……じゃ、お言葉に甘えるよ。翠星石の手前、カッコつけたけど
    実は僕、喋るだけでも結構しんどかったりして」
一葉「バカものが」

第三階層BOSS ラブレシア
種乱射により猛威を奮うも翠星石がこれを無力化
その後、結菱一葉による気合の捜索で心の欠片が発見される。
結菱二葉と翠星石は負傷と疲労のため休息が必要。

71 :
§王樹の夢・第六階層・第六班(雛苺、柏葉巴、オディール・フォッセー)
雛苺「苺わだちっ!!」ズバーッ
ゾンビローズ「KUUUAAAAAAAAAAAッ!!」ブチブチブチ
巴「ダメ! 雛苺の苺わだちでもあの花のオバケの動きを止められない!」
オディール「なんということでシょう。手も足も出ないとはまさにこのことでス」
巴「相手が地面から生えていて、飛び道具も無いから
  近付かなければ、どうということはないんだけど……」
雛苺「近付かないと、心の欠片は探せないのよ」
オディール「ええ、あのゾンビローズが隠し持っているに違いないはずでスが」
ゾンビローズ「KYEEEEEッ!」うねうね
巴「ダンシングフラワーみたいに揺れているわね」
オディール「ゾンビローズ。いわゆる人食い植物(マンイーター)でス。
       雪華綺晶がよく召喚する人食い薔薇の原種でもありまス」
雛苺「雪華綺晶の薔薇は飼い主の言うことをよく聞くけど、この子はワイルドなのよ……」
ゾンビローズ「……SYAAAAAAA」
オディール「いくら叩いても、踏みつけても死なず枯れず、ゾンビのように
       強い生命力を持つ薔薇……というのが、これの名の由来でもあるようでス」
巴「ゾンビなら聖水に弱いとか、ヘッドショットで一発だとか
  相応の弱点があってもいいはずなんだけど……」
オディール「そういう話を雪華綺晶から聞いたことはありまセん。
       しかし、レイキなる庭師はこの班構成で『いける』とも言っていた」
雛苺「うにゅにゅ……でもでも、ヒナ達にできることは限られちゃってるのよね。
    水銀燈や真紅なら火を使えるから、ゾンビローズを燃やせたのよ」
オディール「逆に火を使ってはいけないということかもしれまセん。
       余計に暴れたり、逆に火に反応して凶暴化する種もいるそうでスし」
ゾンビローズ「……」くねくね
巴「あれ以上に凶悪に暴れられたら、もう手の施しようがないわ」

72 :
オディール「しばらくは相手の様子をルッキングするしかなさそうでスね」
巴「ええ、観察してみましょう。それで何か解決の糸口が分かるかも」
雛苺「ひょっとしたら、今ので暴れ疲れちゃって、寝ちゃうかもしれないのよね」
巴「まさか、相手は植物よ。そりゃ、明るい時の方が元気ではあるんだろうけど……。
  しかも相手はゾンビの名を持つ薔薇。闇が好きだったりするかも」
オディール「! ひょっとして……」
雛苺「どうしたのよ? オディール」
オディール「雪華綺晶は人食い薔薇を大人しくさせる時は何か布を被せていた。
       特別な布で薔薇の力をダウンさせているのかと思っていまシたが」
巴「ゾンビローズは……闇に弱い?」
オディール「トライする価値はあるかと」
雛苺「けど、どうやってぇ?
    あんな大きなゾンビローズさんに被せる布なんて無いのよ」
巴「雛苺、あなたの苺わだちよ。苺わだちで、あの薔薇も私達も含む周囲を
  全てドーム状に覆い尽くすの。そうすれば内側は真っ暗になる」
オディール「あとはベリーベルの微かな光を頼りに
       元気をなくしたゾンビローズに近づき、レイキの母の心の欠片を探す」
雛苺「な、なるほどなのよー!」

第六階層BOSS ゾンビローズ
オディールと巴の予測通り光を遮断することで鎮静化
心の欠片も無事にGET

73 :
§王樹の夢・第五階層・第五班(真紅、桜田ジュン、鳥海皆人、アレニエ)
タケノコ「ハーハッハッハッハ! よくぞここまでたどり着いたな!
      我こそはタケノコ魔人タケノッコーン!!
      この王樹内最大最強のガーディアンである俺様が……」
鳥海「何このテンション高いタケノコ」
ジュン「しかも、めちゃくちゃ偉そう。これがこの階層のボス?」
真紅「皆人! ジュン! 侮ってはいけない! こいつは伝説の魔人タケノッコーンよ!」
アレニエ「たけのっこーん?」
真紅「蒼星石の永遠のライバルとも言われる伝説の植物妖魔!
    春先になると野山の地面から急に出てきて、木こりさん達を驚かせる厄介者!」
ジュン「へー」
タケノコ「あ、そこのお前、俺の事をウザくて面倒くさい奴だと思ったろ?」
ジュン「違うのか?」
真紅「木こりさんから苦情が出る度に蒼星石が懲らしめていたそうよ」
タケノコ「そのとーり! 多くの同胞が蒼星石のせいで茹でられ、アクも抜かれ
      美味しく食べられてしまった! この恨み晴らさでおくべきか!!」
鳥海「て言うか、お前がここに居るってことは
    お前もレイキの母親に食べられてしまったってことじゃないのか?」
タケノコ「うっ! ええい小賢しいガキめ! 余計なことに気付きおって!
      先ずは貴様からタケノコで針串刺しの刑にしてやるわーっ!」
鳥海「!?」
アレニエ「危ない! お父様!」グサーッ
真紅「アレニエ!?」
ジュン「な、なんてことだ! アレニエが鳥海を庇って
     地面から突然伸びてきた竹に刺された!!」
アレニエ「ううう……御無事デ? お父様……?」
鳥海「ああ、お前のお陰だ! アレニエ」

74 :
タケノコ「ぬっふっふふふぅ。俺がこのタケノコだけと思って油断したなぁ。
      地面の中に潜む無数の若竹全てが俺なのだ!」
鳥海「何? 沢山いるのか? 卑怯なヤツだな」
タケノコ「卑怯もラッキョウもあるかい! 今はガラクタに助けられたようだが
      次こそボウズ! テメーを串刺しにしてやるぜーっ!」
鳥海「やれやれ、お前のアクを抜くのは大変そうだな」
タケノコ「うだら! 何カッコつけてやがんだー!」
鳥海「アレニエ、ジュディカとマデュリンに代われ」
アレニエ「もう変わり始めていマス。お父様、時間稼ぎヲありがとうございまシタ」めきょめきょ
ジュン「?」
真紅「竹に貫かれたはずのアレニエが……!?」
マデュリン「あー、痛かっタ」パカッ
ジュディカ「ところで『あー痛かった』って『会いたかった』て聞こえまセンか、お父様?」
タケノコ「!? バカな! 一体が二体に分裂して、若竹から逃れた!?」
ジュン「ど、どうなってんだ? 鳥海、これ?」
鳥海「ああ、やっぱり三体とも完全な別個体として再生させるのは難しくて。
    結局こういう中庸案に落ち着いた」
真紅「アレニエが分割してジュディカとマデュリンになるってこと?」
鳥海「そう。ジュディカとマデュリンが合体すれば、中間体を経てアレニエに戻る。
    もちろん、分離と合体はある程度のインターバルを置かなきゃ繰り返せないが……」
タケノコ「なんてインチキ!」
鳥海「お前が言うな」
タケノコ「くっ!!」
ジュディカ「お父様を苛める不束者メ! 許しませんヨ」
マデュリン「ソレを言うなら不届き者ヨ。ジュディカ」
タケノコ「ちぐしょー! タケノコ魔人の意地を見せたらーっ!!」ドバオッ
ジュディカ「かかってきなサイ!」

75 :
ジュン「いやー、なんだか凄いなー。鳥海も、アレニエ達も」
真紅「ジュン、うかうかしてると主人公の座を奪われるのじゃなくて?
    あっちの方がルックスもイケメンだし」
ジュン「真紅こそ。アレニエの方がギミック多いし、素直だ。
     お前って、殴る蹴る、薔薇の花を飛ばすぐらいしか芸がないだろうが」
真紅「じゃあ、そのフルコースをジュンにお見舞いしようかしら?」
ジュン「見舞うならタケノッコーンにしてくれ。
     このままだと、真紅の活躍無しにタケノコ魔人が退治されそうだぞ?」
真紅「なんですって? それは困る! 私も乱闘に加わらなくては!」
ジュン「そうそう、頑張れ頑張れー」

76 :
タケノコ「くらえ! 魔人奥義! クロス・タケノコ・ハリケーン・スペシャル!!
      飛び交う無数の鋭いタケノコだ!! かわせるかーーーっ!!」
ジュディカ「♪当たらナイ ♪当たらナイ」ひょいひょい
マデュリン「♪当たらないっタラ当たらない」くねくね
ジュン「綺麗に避けられるもんだな」
鳥海「ジュディカとマデュリンに別れると、体も半分になって
    空洞も多くなるし、スピードも上がる。その分パワーは落ちるが」
ジュン「なるほどなるほど。それに比べて真紅は……」
真紅「オラオラオラオラオラオラアラオラオラ」ずどどどどどど
タケンコ「ば、バカな! 俺のC・T・H・Sを全て拳で迎撃するとは……!」
ジュン「はぁ……」
鳥海「よし、ジュン。アレの相手はジュディカ達に任せて俺らは心の欠片を探そう」
ジュン「? あのタケノコ野郎を倒せばポロっと出てくるんじゃないのか?」
鳥海「かもしれないけど、俺ならそんな大事なものを守っている
    タケノコは戦闘では使わないね。どこかに隠す」
ジュン「そうか、あいつ地面の中とかにたくさんタケノコを隠してるんだったよな」
鳥海「そういうこと。きっと、どこか別の場所に心の欠片を守っている竹があるはず。
    魔人はバトルで一杯一杯みたいだし、探し物は俺達でなんとかできるはずだ」
ジュン「行動派だよなぁ……お前」
鳥海「ジュンほどじゃないさ」

第五階層BOSS タケノコ魔人タケノッコーン
真紅達により焼かれて美味しくいただかれてしまう
鳥海皆人とジュンがやや離れたところに生えていた竹の
フシが光っていたのに気付き、そこを切ると中から王樹の欠片を発見。

77 :
マウス・ピースとそっくりだけど良い奴だったタケノッコーンさんがこんなところで食われていただなんて…

78 :
タケノッコーンさんは本当はいい魔人なんですけど
今回出てきたのとかは同種族別タケノコということでご容赦を
あと、地味に間が空いて申し訳ない

79 :
§第七階層・第七班(雪華綺晶・薔薇水晶・槐)
薔薇水晶「そんな……、『コレ』がこの階層の……ボス!?」
雪華綺晶「ですわね」
槐「やはり、『コレ』か」
薔薇水晶「庭師とあろうものが……『コレ』を食すなど……」
雪華綺晶「そうでしょうか? 私がレイキの母の立場であったなら
       いの一番に摂取していましたよ、この……『世界樹』を」
槐「世界樹の一部まで取り込んでいたのか」
薔薇水晶「……どうすればいいのです?
       倒さなくてはいけないのですか? 世界樹を?」
雪華綺晶「薔薇水晶、貴女は蒼星石から庭師のいろはを教わっているはずです」
薔薇水晶「……庭師にとって世界樹は侵すべからず」
雪華綺晶「なるほど」
世界樹「……」
槐「しかし、この世界樹、うんともすんとも言わないな。僕達がここまで近付いても」
雪華綺晶「レイキの母に取り込まれたのに、王樹の心の欠片の守護者となっていない?」
薔薇水晶「心の欠片が、世界樹の内部にあるのは間違いないのでしょう?」
世界樹「……」ピククッ
槐「ッ!?」
雪華綺晶「世界樹が!?」
薔薇水晶「動い……?」
世界樹「……」ズアオッ
薔薇水晶「? ?? 私達の方ではなく、明後日の方向……
       天井に枝を伸ばして突き刺した? な、何故……?」

80 :
雪華綺晶「……スィドリームの水の匂いがしましたわ」
薔薇水晶「?」
槐「翠星石だ。翠星石が、おそらく第三階層のボスとのバトルで
  世界樹の助けを借りたんだろう」
薔薇水晶「それに、この私達の目の前の世界樹が応えた?」
槐「ああ。そして、ということは、だ。つまり、この世界樹
  一部だけだろうと、夢の中だろうと王樹の完全な支配下にあるわけではないようだ」
雪華綺晶「王樹の支配下であるならば、異物であり侵入者である
       翠のお姉様に力を貸すわけがありませんからね」
薔薇水晶「……」
雪華綺晶「そして、このことが逆に心の欠片探しを難しくさせる」
槐「他の階層はボスが心の欠片の隠し場所の手がかりになっているはずだが」
薔薇水晶「この世界樹は手がかりにならない……というわけですか」
槐「……」
雪華綺晶「しかし、これしか手がかりにできそうなものがないのも事実。
       薔薇水晶、力をお借りしたのですが? よろしいですか」
薔薇水晶「ここまで来たのです。よろしくないわけなどありません。
       私にできることであれば、何でも」
雪華綺晶「色良いお返事、頼もしい限り。
       では、これより、この世界樹の意識に潜りこみたいと思います」
槐「できるのか?」
雪華綺晶「やってみなくては分からない……と言ったところですわね。
       nのフィールドの中の王樹の夢の中で、さらに世界樹の意識内に潜る。
       ただでさえ難しい多重の夢意識層への侵入。
       さらには相手は株分けされているとは言え、世界樹」
薔薇水晶「危険が大きすぎるのでは?」
雪華綺晶「確かに危険です。よって、薔薇水晶、貴方には私の命綱を握ってもらいます」
薔薇水晶「?」
雪華綺晶「これを」シュルル
薔薇水晶「これは?」
雪華綺晶「『糸』です。オカルティストなどはシルバーコードとも呼びます。
       私はもっぱらこれで人間やブサ綺晶達を操ったり、通信に使うのですが
       今回は先ほど言った通りに命綱として使います」
槐「随分と、原始的な方法だな」
雪華綺晶「普遍的無意識内では単純なやり方が有効な方法でもありますわ。
       ミノタウロスの迷宮しかり、そしてこの先に広がる世界樹の迷宮も」

81 :
薔薇水晶「私は『糸』をどうすれば良いので?」
雪華綺晶「握ったまま決して離さないでください。世界樹はアストラルを養分とすることも
       知られています。命綱を失くしたらアストラル体である私は世界樹に飲まれてしまう」
薔薇水晶「……」
雪華綺晶「アストラル体であるからこそ世界樹の意識内部にも深く入れるのですが……
       長所と短所は表裏一体、ままならぬものです」
薔薇水晶「何故、私にそんな大切な命綱を託すのです?
       私が……途中でわざと糸を手放したりしないとは……?」
雪華綺晶「思いません」
薔薇水晶「……」
雪華綺晶「信じていますよ薔薇水晶。では行ってきます」トプン

82 :
槐「行ったか。気まぐれで何を考えているのか分かりづらいが
  恐ろしく決断の速い……そして正確な奴だ、雪華綺晶は。
  自信が無さそうな素振りもしていたが、ま、心配はあるまい」
薔薇水晶「……私がこの命綱を保持できるかどうかの心配もですか?」
槐「こだわるね」
薔薇水晶「……」
槐「雪華綺晶は君にとって、いつかは越えなくちゃけない壁だよ。
  そういう意味じゃ他の薔薇乙女や、この僕も同じだけど……」
薔薇水晶「お父様も……ですか?」
槐「そうだ。子供ってのは親を越えていくものなんだよ。
  ただ、悲しいかな普通の人間は、子供が親を越える前に親が子供を下回る」
薔薇水晶「?」
槐「老いだ。だから子供は終始、悩むことになる。
  自分は本当に親を越えることができたのか……てね」
薔薇水晶「……」
槐「君の場合は、こうはならない。時間は君の味方にならない。
  何が何でも実力で越えなくちゃいけない。
  そしてその壁をこんなつまらない方法で壊したくはないはずだ、君は」
薔薇水晶「……」
槐「有体に言えば生きる目的。これをしっかり意識できている人は多くないよ。
  僕だってよく分かってない」
薔薇水晶「お父様には、ローゼンを追いかけるという目標が」
槐「どうだろうねぇ、なんかもう僕には無理っぽい気もするしなぁ。
  知れば知るほど、彼との差が大きい事が分かってくる」
薔薇水晶「お父様……っ!」
槐「薔薇水晶が出来て、僕はもう満ち足りている。
  ローゼンが目標な事には変わりないが、明日死んでも心残りはない」
薔薇水晶「そんなことを……言わないでください」
槐「褒めたつもりなんだけどな、君を」

83 :
薔薇水晶「私にはまだまだお父様が必要です。
       お父様がいなくなったら私は生きていけない……」
槐「可愛い事を言ってくれるが……、僕は君の横顔が一番好きだ」
薔薇水晶「?」
槐「二番目に好きなのは君の真顔。君の目に映る僕の顔が見えるのが好きだった。
  君が僕のことを見つめてくれているのが愛おしかった」
薔薇水晶「……」
槐「でも、いつからか君の横顔の方が好きになった。
  僕ではなく、別の何かを見据えている真っ直ぐな君の横顔が。
  あ、もちろん眼帯側の横顔じゃない方ね」
薔薇水晶「……お父様が何を言っているのか、私には……分かりません」
槐「遺言だよ」
薔薇水晶「!?」
槐「ああ、大丈夫大丈夫。別に寿命が近いとかそういうわけじゃないけど
  僕は腐っても錬金術師だ。ベッドの上でRるとは思ってない」
薔薇水晶「……」
槐「サヨナラの一言もなく、あっさり死んじゃうこともあるかもしれない。
  こういうことは、言える機会に言っておくべきだと思うだけさ」
薔薇水晶「お父様」

84 :
雪華綺晶「ただいま戻りました」ヒョコッ
薔薇水晶「ッ!?」
槐「やあ、お帰り。早かったじゃないか」
雪華綺晶「そうですか? 結構、時間を食ったと思いますが……」
薔薇水晶「……」
槐「糸を手放すタイミングを失っちゃったね、薔薇水晶」
薔薇水晶「……お父様の意地悪」
雪華綺晶「?」
槐「で、この階層の心の欠片の在り処は分かったのか雪華綺晶?」
雪華綺晶「はい、一応はこの世界樹も王樹から心の欠片を託されていました。
       しかしこの世界樹はそれを受け取っただけ、守りはしていません」
薔薇水晶「……」
雪華綺晶「結論を言いますと、世界樹の小枝に挟まっています。
       場所も既にはっきりしている、それを回収するだけで私達は任務完了です」
槐「えらく簡単だったな」
薔薇水晶「はい、世界樹が相手だと分かった時は途方に暮れかけましたよ」
雪華綺晶「私の世界樹へのダイブ、地味に命懸けだったのですが……」
薔薇水晶「貴女ならやってくれると信じていました、雪華綺晶」
雪華綺晶「……? 私が世界樹の夢意識に潜航中に
       何かいいことでもあったのですか薔薇水晶? 上機嫌ですわね」
薔薇水晶「フフ、秘密です」
雪華綺晶「……どういうことです、槐?」
槐「僕に聞かれても分からないよ」

第七階層BOSS 世界樹の一部
世界樹はただそこに立っているだけだった
世界樹の記憶を辿り、雪華綺晶が王樹の心の欠片の場所を発見し回収。

85 :
§第四階層・第四班(蒼星石・レイキ・オズレ)
レイキ「少し肝を冷やす場面もあったが、庭師が植物に敗北するわけがない」
イチジク「……」ボロロッ
オズレ「見事です。蒼星石とマザーが組めばまさに敵なしです」
レイキ「深緑の庭師と蒼の庭師だからね」
蒼星石「その渾名、好きじゃなかったんじゃないですか?」
レイキ「今は好きさ。この緑の髪は、私が母の娘である証拠なのだから。
     当時はただのコンプレックスでしかなかった。
     身を隠すために顔は変えても、この髪色までは変えたくなかったものだ。
     結局、薬で黒くせざるを得なかったが」
オズレ「……見つけました。心の欠片です」
レイキ「よし、きっと私達が最後よ。他の心の欠片も既に回収されているはず……だけど」
蒼星石「だけど?」
レイキ「その心の欠片、見せてくれるかオズレ?」
オズレ「どうぞ、マザー」

86 :
§心の欠片の記憶
男性庭師「……やるしかないのか」
女性庭師「庭師を増やすためには、他に方法がないから」
男性庭師「ないことはないだろう! お前! 本当にそれで満足して……」
女性庭師「私は樹になるの。nのフィールドで生きる庭師にとって
       これほど嬉しいことがあるかしら」
男性庭師「お腹の子供まで連れていくのか、お前の……その欲望のために」
女性庭師「ごめんね、できればアナタも連れていきたかったんだけど」
男性庭師「謝るなよ! 俺よりも……謝らなきゃいけない奴は」
女性庭師「……生まれてくる子供達の事、よろしく」
男性庭師「……」
女性庭師「そして庭師連盟も。あれも大事な私達の子供」
男性庭師「分かったよ。俺が庭師連盟を守る。
       お前が……こんな手段を使ってでもやったように、俺がどんな事をしても」
女性庭師「ありがとう。頼もしいパパね」

87 :
§王樹の夢・第四階層
蒼星石「これは……」
レイキ「なんだ、こういうことだったのか」
オズレ「……?」
レイキ「私達にはちゃんと人間の父親がいた。しかも、こいつは……」
蒼星石「レイキ」
レイキ「先代か先々代だかの庭師連盟の盟主。
     私やカズキ達の里親になった男。私に王樹の不妊処置をさせた男。
     今じゃあ庭師連盟の老害とさえ呼ばれている男」
オズレ「マザー……」
レイキ「結局、私だけが視野の狭い女の子だったというわけね。
     強力な庭師が無制限に生まれてくれば連盟は組織として成り立たなくなる。
     理性ではそれが分かる。でも感情がそれを許せなかった」
水銀燈「しかし、もうその感情も今、萎えてしまった」
蒼星石「!? 水銀燈」
水銀燈「遅いから手こずってるんじゃあないかと思って様子を見にきたんだけど……」
めぐ「ごめんなさいレイキ。私達も心の欠片の中身を見ちゃったの」
レイキ「構わないよ。むしろ、ありがたい」

88 :
みつ「それでどうするのレイキ? きっとだけど……
    あなたのお母さんは人間に戻ることを望んでいないと思う」
金糸雀「心をバラバラの欠片にしたのも、きっと自分の意思でかしら」
蒼星石「みっちゃんさん……金糸雀」
みつ「はぁい蒼星石くん。ちょっと遅れたけど、私達も心の欠片持ってきたわ」
蒼星石「……背負ってるパンパンの風呂敷の方は何なんです?」
みつ「あ! これ? まあ、ちょっとなんて言うか……お土産……みたいな?」
金糸雀「こ、これぐらいの役得は認めてくれてもいいんじゃないかしら?」
レイキ「マンドレイクか。好きにして構わないよ。
     ただ、王樹の夢を出た瞬間に風化するだろうけど」
金糸雀「えっ!?」
みつ「そ、そんな〜……」

89 :
翠星石「ただレイキの気持ちも……分かるですよ」フラフラ
一葉「お、おい翠星石! もう歩いても!?」
翠星石「大丈夫です。おじじの背にいつまでも乗ってるけにもいかねーですからね」
蒼星石「翠星石、その怪我は!?」
翠星石「こんなの、かすり傷ですよ」
二葉「ガッツあるね翠星石」
翠星石「ですから、この先はレイキに任せるです。ほら、おじじ……」
一葉「うむ。レイキさん、これを。君の母親の心の欠片だ」
レイキ「……ありがとう」

90 :
真紅「王樹を人の形に戻すのか、それともこのままにするのか」
ジュディカ「私は戻した方がいいと思いマス」
マデュリン「なんでよジュディカ? このままの方がいいワヨ」
鳥海「……お前達は一旦、アレニエに戻った方がよさそうだな」
ジュン「レイキさん、これ……心の欠片。少し青竹くさくなっちゃってるけど」
レイキ「感謝する」

91 :
巴「みんな、見たようですね。レイキさんお母様の心を」
雛苺「……zzZ」
オディール「私はやめとこうと言いまシたよ! プライバシー侵害でス」
真紅「雛苺、寝ちゃっているようだけど?」
巴「うん、かなりたくさんの苺わだちを出したから疲れたんだと思う」
雛苺「むにゃむにゃ、まだまだ食べられるのよ……」
ジュン「充分、元気なようにも見えるが。柏葉の胸の中で、いい気なもんだ」
オディール「? ジュンボーイも寝たいのでスか? マドモアゼル巴の胸で?」
ジュン「違いますよ! なんでそうなるんです!?」
オディール「てへっ」
巴「……」

92 :
雪華綺晶「時計の針を巻き戻すのか、それともこのまま時の流れるに任せるか?
       貴女の判断はどちらです? レイキ?」
レイキ「雪華綺晶」
槐「僕達が一番最後に合流か。しかしこれで全員勢揃い。いよいよ大詰めだ」
薔薇水晶「どうぞ、レイキ。心の欠片を受け取ってください」
レイキ「……」
オズレ「ありがとう薔薇水晶」
薔薇水晶「オズレ、私は貴女にまだ言わなくてはならないことが」
オズレ「分かっています。しかし今は、マザーの話を先に」
薔薇水晶「?」
レイキ「……皆さん、この度は協力していただき感謝の言葉もありません。
     けれど、もう一度言わせてください。ありがとう」
めぐ「……レイキさん」
レイキ「母を人に戻すことだけど、やめておこうと思います」
蒼星石「!」
薔薇水晶「!」
レイキ「蒼星石にも言われたがリスクが高過ぎると感じる。
     それに母は、必ずしも人に戻りたがっているわけではなかった。
     この心の欠片でも、私が知りたかった母の真意は充分に分かりました」
翠星石「翠星石達の頑張り損ってことですね」
真紅「王樹が崩壊しようものなら、元も子もないわよ翠星石」
翠星石「分かってるですってば、レイキの判断は正しいですよ」

93 :
レイキ「……トキに伝えてほしいことがある」
蒼星石「え? トキって……弟さんのトキ?」
レイキ「そうだ」
ジュン「何でまた急に、トキの話を?」
レイキ「……」
一葉「自ら会って話すわけにはいかんのか」
レイキ「それは難しいだろうな」
二葉「自分の口で話した方がいいともうけど、姉弟なんだろ?」
レイキ「すまないが、頼みます」
二葉「そう言われちゃあな……」
レイキ「……庭師の剣は持ち手を選ぶ。それを持てるようになった
     トキは充分に一人前だ。いつまでも兄達の後を追うことなく
     そろそろ自分だけの庭師道を探し始めてもいい時期。自信を持つように、と」
みつ「今の話をトキ君に伝えればいいのね」
レイキ「次にクキ。彼は実力で言えば兄弟上位レベルなのだが
     メンタルが非常に弱い。一度パニくるとそこらの子供と同じになる。
     本人も克服しようとしているが、まあ気にするなと伝えてくれ。
     しっかりしているクキなど気持ちが悪い」
薔薇水晶「レイキ……?」
雛苺「……zzZ」
レイキ「ヤキには……嫌がらずに普通に牛Rを飲めば背が伸びると言っておいて。
     庭師だからと変な草や漢方ばかりをあてにするんじゃないわよってね」
金糸雀「……」
レイキ「ナナキ……、十一人の中で女の子は私とアイツだけだったが
     女らしい事を教えてやれなくて悪かった……。
     あの子には……口紅より先に鉈を持たせてしまった」
翠星石「でも、そのおかげか知らないですけど、ナナキの鉈捌きは凄かったですよ」
レイキ「ロキには、もう少し素直に皆と話をするように。
     ゴキには、いい加減に髪を切っとけと。
     シキには、Gardenの推敲ちゃんとしろと言ってくれ
     アレな、ゲーメストとまでは言わんが誤字が多い」
一葉「君も読んでいたのか、Gardenを」
レイキ「ええ、『ライトブルーの少女』のファンなんです」
蒼星石「!」
レイキ「ミキ、口は悪くともお前が優しい男だということは分かっている。
     ニキ、お前がいるから私もカズキも無茶ができた」

94 :
レイキ「そしてカズキには何も気にするな、と。
     アイツが正しくて私が間違っていた。ただただ……すまない」
薔薇水晶「レイキ、貴女さっきから……ひょっとして!?」
レイキ「……皆に、世界樹の加護がありますように」
薔薇水晶「レイキ?」
レイキ「……」
薔薇水晶「レイキ!?」
レイキ「……」
雪華綺晶「死んでいます……わね」
槐「やはり、遺言か」
ジュン「え!?」
巴「ど、どうして急に!?」
オズレ「急ではありません。マザーにはもともと死期が迫っていました。
     今回の件で、緊張の糸と共に体の中の決定的な何かも切れたのでしょう」
蒼星石「……カズキさんに刺された傷が深かったのか」
オズレ「はい。庭師の剣の前の所持者カズキにより、マザーが連盟離反の際に受けた一撃。
     かろうじて死は免れたものの、ダメージは深く根付いていたのです」
翠星石「な、なんてバカヤローなんですか!
     いきなり好き勝手やって、翠星石達を巻き込んで!
     満足したら、自分だけ死んじゃったというのですか!?」
みつ「落ち着いて……翠星石ちゃん」
翠星石「う、く……」
蒼星石「悲しめばいいのか、怒ればいいのか分からない。僕も同じ気持ちだよ翠星石。
     けれども、レイキさんの身体の事が分かっていたとしても
     僕達には救う手立ては無かった」
レイキ「……」スウウウ
鳥海「レイキさんの髪が!?」
薔薇水晶「黒から……深い緑色に。それに顔も変わって……いや、戻ったのですか? これは」
レイキ「……」
蒼星石「うん。レイキさんの素顔だ。死んで……ようやく元に戻ってくれた」
真紅「心の欠片の記憶の中のレイキの母にそっくりね」
オディール「ウィ……」

95 :
水銀燈「母は戻らず、娘は戻る……か。ま、勝手者の末路なんてこんなもの」
オズレ「ご迷惑をおかけしました」
薔薇水晶「オズレ……貴女はこれからどうするつもりなのです」
オズレ「ここに居ます。ずっと、ここに。マザーと、王樹(グランマザー)と共に。
     本来の心の守護者である植物達をほとんど駆除してしまいました。
     これからは私が、ここで二人の眠りを守り続けます」
薔薇水晶「オズレ……」
オズレ「そんな顔をしないでください薔薇水晶。
     私と貴女は友達でも何でもない。ただ、私が一方的に利用……」
薔薇水晶「それでも私は友達だと思っています」
オズレ「……」
薔薇水晶「騙されていたことに腹が立ちました。貴女を憎みました。
       それでも貴女は……私の友達」
オズレ「困ったな。決意が鈍りそうです」
薔薇水晶「オズレ……!」
水銀燈「薔薇水晶、オズレは自らの責務を果たそうとしている。
     創造主から与えられた使命。そして創造主と共にあり続ける」
薔薇水晶「水銀燈!?」
オズレ「水銀燈の言う通りです。だから、これ以上私の決意を鈍らせないで薔薇水晶。
     これでいい。幸せとはこういうことです」

96 :
オズレ「……ロゼリオンとは何なのか? 考えたことがありますか薔薇水晶?
     そして薔薇乙女の皆さん?」
真紅「え?」
金糸雀「……野薔薇とメメントリオンの融合体、よね」
オズレ「そう、最初のロゼリオンは野薔薇の死体にメメントリオンが宿っただけのものだった。
     けれども第二世代のロゼリオンは、生きた野薔薇が生きたロゼリオンを
     体内に取り込み、混ざり合うことで生まれた」
翠星石「そのとおりですが、それが何だと言うのです?
     何でここで突然、ロゼリオンの講釈を……?」
オズレ「第一世代は『ローゼン食い』の意味からロゼリオンと名づけられ
     第二世代は野薔薇の名を返上し『薔薇の祝福を受ける者』という意味で
     敢えて自らロゼリオンを名乗った」
雪華綺晶「……」
オズレ「野薔薇だけでもダメだった。メメントリオンだけでもダメだった。
     か弱くて死にそうだった両者が混ざり、生き伸びる力を手に入れた。
     私も、ロゼリオン化しなければマザーの役に立てなかった」
薔薇水晶「オズレ」
オズレ「混ざり合うものロゼリオン。その最期の力で以って
     私はマザーの夢と王樹の夢、そして私自身を一つにまとめます」
鳥海「一つに……」
オズレ「この王樹の夢世界から脱出を、皆さん」
薔薇水晶「……何か、最後に貴女のために出来ることはないのですかオズレ」
オズレ「……祝福してください」
水銀燈「?」
オズレ「薔薇乙女の祝福を、私達に。それで私は真にロゼリオンとなる。
     言葉でなくとも、動作や思いだけでも充分に伝わります」
金糸雀「分かったわ」
翠星石「祝うだけなら……タダですしね」
蒼星石「ああ、君は立派にやり遂げた」
雪華綺晶「……」
真紅「……」
水銀燈「……」
雛苺「ムニャムニャ……おめでとう……なの」
オズレ「ありがとう、皆さん。さようなら、皆さん」

97 :
§大体終わって桜田ジュンの部屋
ジュン「庭師連盟、大丈夫なのかなー、これから……」
蒼星石「ジュン君が心配するほどの事じゃないさ。
     元々、連盟にとってはレイキさんは死んだはずの人物」
翠星石「そうです。遺言だってちゃんと十人兄弟に届けたですし
     あとは彼らの心の問題だけですぅ」
雛苺「でもでも、オージュが消えて無くなっちゃったのよ!」
真紅「世界樹とゾンビローズ以外の守護植物を攻性防壁内で倒したからね。
    特に王樹のベースだったイチジクを失ったのが大きい」
蒼星石「けれども王樹が生えていた場所は、一面のノバラに覆われていた。
     御神木であるオージュを失って、連盟は少しゴタゴタするかもだが
     そもそも御神木であるということが、オージュの来歴を誤魔化すための方便だったし
     今度は、あのノバラ咲き乱れる園を神域にでも指定するんじゃないかな」
ジュン「むむむ……」
真紅「要は時間で解決できる問題ってことよジュン」
雛苺「うゆゆ、ヒナにはよく分からないの」
翠星石「……オズレは、ちゃんと使命を果たしたのですね」
ジュン「そして今も果たし続けている、か。けど連盟も黒庭師だ魔女だと蔑んでおいて
     死後は神域扱いか。レイキさんの事を公表はしないにしても」
蒼星石「歴史ってそういうものだよ、ジュン君。
     それにレイキさんが多くの庭師を殺してしまったことも事実」
ジュン「うーん……」

98 :
§nのフィールド・野薔薇の墓
ラプラス「地に供えられた水晶の剣が一つ増えましたね」
薔薇水晶「……」
ラプラス「私の予言は外れましたか?」
薔薇水晶「いえ、当たっていました。やはり、今回も私の過ちだったのでしょう。
       オズレを……友を失った」
ラプラス「……」
薔薇水晶「けれども後悔はない。納得できる過ちでした」
ラプラス「ブラボー。開き直りでも、中々そうは言えるものではありませんよ」
薔薇水晶「……混ざり合うものロゼリオン、これからも現れるのでしょうか?」
ラプラス「その答えはイエスでもありノーでもありますね」
薔薇水晶「?」
ラプラス「野薔薇とメメントリオン、この両者はまだnのフィールド内に
      一定数が存在しています。偶発的あるいは必然的に
      今後もロゼリオンの条件を満たすものは生まれるでしょう」
薔薇水晶「……」
ラプラス「しかし、オズレのように薔薇の祝福を得られ
      真のロゼリオンになれるかは当人の頑張り次第。
      混ざり合っただけではロゼリオンのスタート地点に立っただけです」
薔薇水晶「厳しい……道のりですね」
ラプラス「とんでもない。普通のことですよ。よく言うじゃないですか
      人間は生まれながらに人間ではない
      人間になる権利を持って生まれてきただけだ……と」
薔薇水晶「……」
ラプラス「薔薇乙女とて生まれながらにアリスではない。
      アリスになる権利を持って生まれてきた」
薔薇水晶「……」
ラプラス「貴女は生まれた時から薔薇水晶でしたか?」
薔薇水晶「違うと……思います。昔の私と今の私は」
ラプラス「でしょう? だから、そういうことです」

薔薇乙女のうた『王樹の夢』 終

99 :

相変わらずこのシリーズは美しい話だな

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