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2013年07月ニュー速VIP+169: 勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」 (261) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」


1 :2013/07/04 〜 最終レス :2013/07/16
魔王「私が勇者になる……だと?」【3】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1370104139/
の、続きです

2 :
王「良く来た、勇者達よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」
剣士「は……」
魔法使い「は、はい!」
僧侶「……はい」
王「魔王が力をつけだして久しい。以前勇者と呼ばれた者が旅立ってからも同じく、じゃ」
剣士「聞いております。勇者と呼ばれた若者が……帰る事は無かったと」
魔法使い「魔王は大変好戦的で、この人の世を支配せんと、恐怖を振りまこうとしていると」
僧侶「そして……その凶悪な爪が、今正に振り下ろされんとしていると」
王「今日そなた達ををここへ呼んだのは……分かるな?」
剣士「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます」
魔法使い「旅立ちを許して頂いた名誉にかけて、必ず……!」
僧侶「今度こそ、本当の勇者、と呼ばれる為に!」
剣士「世界の平和の為に!」
王「うむ……頼んだぞ、選ばれし者達よ!」

3 :
王「……勇者一行以下、全て下がれ!」
王「街の者に伝えよ……誉れある若かりし者の出立に光あれ、と!」
剣士「……」
魔法使い「……」
僧侶「……」
王「…… ……と、言う訳で、だ」
剣士「こういうパフォーマンス、必要だったんですかね、王様」
王「そういう事言うな、剣士。何事も形から、と言うだろう?」
魔法使い「なぁにが、『頼んだぞ、選ばれし者達よ!』だよ……恰好つけやがって」
僧侶「まあまあ、そう言うお年頃なんだって、王様もさ」
王「お前らなあああああ!」
剣士「うわ、外でわーわー言ってる……」
僧侶「そりゃそうだろ……勇気と未来ある勇者一行様方が」
僧侶「王様のお部屋で念入りに打ち合わせ、とでも思ってんだろ」
魔法使い「門からでりゃ、俺ら英雄扱いだなー!」
魔法使い「可愛い子から『魔法使い様!行かないで!』とかさ」
剣士「そこはあれだろう。『待ってますから……必ず帰って来て!』だろ」
僧侶「いっそ、『私も連れてって!』はどうだ?」
王「黙れ!この糞ガキども! ……全く」

4 :
王「だいたい、何が英雄、だ。そんなもん、魔王を倒してからだろうが!」
魔法使い「大丈夫だって。俺らならやれるって王様だって思ったから」
魔法使い「いきなり『お前ら旅立て』とか言ってきたんだろうが?」
王「本当に……お前達の脳天気さには呆れるわ……」
剣士「そうそう。あの『〜〜じゃ』とか言う、王様口調?やめた方が良いよ」
剣士「どうせ御伽噺の王様でも真似してるんだろうけどね」クスクス
僧侶「うん。全く似合わネェ。大体そんな歳じゃネェじゃん、お前さ」クスクス
王「う、うううううう、煩いわ!」
魔法使い「……ちょっと前まで、一緒に暴れ回ってたくせになぁ」
王「あーのーなー、お前に剣教えたのは俺だろう、剣士!」
剣士「感謝はしてるって。アンタ、俺の兄貴みたいなもんだしさ」
僧侶「みんなの兄貴、だろ。まあ……アンタが前王様の息子って知った時は驚いたな」
魔法使い「まだ寝込んでるんだろ?急に王位継がなくちゃ、とか言い出した時だって」
王「……誰も信じてくれなかったな」
僧侶「酔っ払ってたからナァ……ついでに一緒に朝まで飲んだじゃネェか」
剣士「戴冠式、二日酔いで出て、こっぴどく怒られたんだよな」
王「お前達が無理矢理飲ませたんだろうが!」
王「……忘れろよそんな事は。さっさと……」
僧侶「……そこで待ってろよ。さっさと魔王の首、取って帰ってくるからさ」
剣士「そうそう。俺たちは勇者様御一行だ」
剣士「……その名に恥じぬ様、きっちり魔王の首を持って帰って参ります」
剣士「……って、か」ハハ
王「全く……」フゥ

5 :
魔法使い「ちゃんと病気の前王様、見てやれよ?」
魔法使い「……こっちは安心しとけ。俺たちなら大丈夫だからさ」
僧侶「そうそう。さくっと行って、さくっと帰ってくるしさ」
王「……これを持って行け。少しだけどな」
剣士「ん……? ……お、おい、これ!」
王「この国は小さな島国だからな。大した餞別も用意出来ん」
王「だったら、金の方が良いだろう」
僧侶「……少し、って結構な大金じゃネェかよ」
魔法使い「これで装備整えていけ、て奴?」
王「際限なく飲み食いすんなよ……頼むから」
剣士「しかし……これ、流石に多くないか?」
王「構わん。なんせ勇者ご一行様だからな」ハァ
僧侶「……嫌味にしか聞こえネェんだけど」
王「外に船も準備してある。ここから真っ直ぐ、北上すれば」
王「最果ての大陸の端に着くと言う。一応……地図も渡しておこう」
剣士「至れり尽くせりだな」
王「…… ……」ハァ
魔法使い「どうした?また二日酔いか?」
僧侶「お前が飲ませすぎるからだろ、魔法使い」
王「俺は酒は弱いんだよ……」
剣士「ありがとな、兄貴」
王「……一応王様って呼べ」
僧侶「本来なら、アンタも一緒に行く筈だったのにな」
王「そりゃ無理だ……それに、お前達はまあ……本当に強くなったよ」
王「俺を剣の師だ、兄貴だ……って、言ってくれるのは嬉しいけどな」
剣士「王様……」
王「俺は『勇者』じゃない。そんな器じゃない」
王「……そりゃ、お前達だ」
僧侶「…… ……なんだよ、改まって」

6 :
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

7 :
王「ほら、もうそろそろ行け。さっさと行け」シッシ
王「……頭痛いんだよ。俺は寝たいの!」
剣士「困った王様だよ、全く」
魔法使い「良し……行くか!」
王「おい」
僧侶「ん?」
王「いくら勇者ご一行様だとか言われても、強いと言っても」
王「お前達はまだ若い。未来もある」
王「……魔王は、強い。世界を滅ぼそうと出来る位に」
剣士「……」
王「敵わないと思えば、迷わず逃げろ」
王「……命あってこそだ。忘れるなよ」
魔法使い「……」
王「誰もお前達を責めない。倒せば確かに、本物の『勇者』として」
王「褒め、讃えられ、誰もがお前達に尊敬の眼差しを向けるだろう。だがな」
僧侶「……」
王「死んだら、そこから先は何も無いんだ。終わりなんだ」
王「帰ってくる所は、此処だけじゃない。お前達は何処にでも行けるんだ」
王「……それだけは、忘れるな」
剣士「何だよ……改まって」
魔法使い「そ、そうだよ……気持ち悪い」
僧侶「心配すんな。大丈夫だって」
王「……釘指しとかないと、お前ら暴走しそうで怖いもん」
王「…… ……もう行け。頼んだぞ、勇者達」
剣士「……ああ」
魔法使い「任せとけ!」
僧侶「待ってろよ。必ず、帰ってくるからな!」
王「…… ……期待してる、よ」
パタン

8 :
王「…… ……」
王「すまん、剣士、魔法使い……僧侶」
王「……すまん。頼むから……生きてくれ、希望の勇者達……ッ!」
……
………
…………
剣士「……スゲェ熱狂だったなぁ」
魔法使い「おい、あの赤い髪の可愛い子見たか?」
魔法使い「俺にしがみついて泣いてんの!」
僧侶「おい!お前ら手伝えよ!船ってどうやって動かすんだよ!」
剣士「ん?ああ……変わるよ……っと」
魔法使い「……お、すげぇ、進んだ」
僧侶「できるなら俺に任せてないで、最初っからやれよ剣士!」
剣士「俺がやるって張り切ってたのお前だろう、僧侶」
魔法使い「すげえな、ドンドン島が小さくなってく……」
剣士「帰った時の熱狂は、今日の非じゃないだろうな」
魔法使い「ひゃっほーぅ! 可愛い子、よりどりみどり!」
僧侶「お前は女の事しか頭にネェのかよ、魔法使い…… ……ん?」
剣士「どうした?」
僧侶「…… ……ありゃ、何だ?」
魔法使い「あ?」
僧侶「剣士、舵任せるぞ……おい、魔法使いあれ見ろ……北のそ……ら……!?」
魔法使い「何だよ珍しい鳥でも飛んでたか?」ヒョイ
魔法使い「……ッ な、ん ……ッ 火、の球……!?」
剣士「おい、どうした!?」
僧侶「剣士、スピード挙げろ!進め……ッ」
グラグラ、グラグラ……!
剣士「な、何だ……!?」
魔法使い「近づいてくる!」
僧侶「風……ッ 衝撃波か……!!」

9 :
魔法使い「……ッ やばい、でかい!!」
僧侶「……ッ 全速力だ、この海域を離れないと……!!」
僧侶「剣士!!どっち向いてんだ、前見ろ、前!!」
剣士「……島に向かってないか、あれ」
魔法使い「!!」
僧侶「戻ったって間に合わん!間に合ったところで……!!」
剣士「しかし……ッ !!」
魔法使い「糞、どけ、剣士!」ドン!
剣士「……ッ 何するんだ!」ドタ!
魔法使い「離れるんだ!逃げるんだよ!俺たちまで巻き込まれちまうだろ!?」
剣士「や、やめろ、魔法使い……ッ 島が、島の人達が……ッ」
僧侶「もう遅い……ッ 早くしろ、魔法使い!」
魔法使い「これ以上早くならねぇよ!畜生!」
剣士「戻れ、戻れー!!見殺しにする気か!! ……王……ッ兄貴が!」
僧侶「……ッ 糞ッ」
ズ、ズ…… ゴゴゴゴ……ッ
剣士「な、 ん……の、音……ッ !!」
グラグラグラ
魔法使い「う、うわあああああああああああああ!」
僧侶「く、そ……舵、が……ッ」
僧侶「あああああああああああああああ!」
剣士「兄貴、あに……ッ !! うわあああああああああああああああああ!」
……
………
…………

10 :
僧侶「……ッ く、しゅんッ!!」
僧侶「……!!」
僧侶「冷た……ッ」ガバ!
僧侶(……生きて、る。びしょびしょ……ああ、そうだ、船の上……船……!!)
僧侶「魔法使い、剣士!」キョロキョロ
魔法使い「……よう。気がついたか」
僧侶「魔法使い……生きて、たか……」ホウ
僧侶「!! 剣士は……ッ!?」
魔法使い「……」ス……
僧侶(あっち……?船の……先、あ……)
剣士「…… ……」
魔法使い「一番最初に気がついたみたいだな。お前のそれ、あいつのマントだよ」
僧侶「あ……」
魔法使い「……話しかけても無駄だぜ。ああやって島の方見たまんま」
魔法使い「一っ言も喋らネェ……そっとしておいてやれよ」
僧侶「…… ……!!」
僧侶「ひ、火の玉は、島は……ッ!?」
魔法使い「黒煙、見えるだろ」
僧侶「…… ……」
魔法使い「多分、あれだ……そんで、多分……海の底、だ」
僧侶「……そ、こ」
魔法使い「……人も、家も、街も、城も……島毎全部、海の底だよ!!畜生!!」ガンッ
僧侶「…… ……」
魔法使い「黒煙と……熱された海からの熱で近づけネェな、多分」
僧侶「船は、動くのか」
魔法使い「無理じゃね? ……結構な衝撃だったろ」
魔法使い「海に落ちなかっただけ、船が壊れなかっただけ」
魔法使い「……俺たちは強運だ。流石『勇者様御一行』だぜ」
僧侶「魔法使い……」

11 :
剣士「…… ……兄貴は、知ってたんだろうか」
僧侶「え?」
剣士「魔王を倒せ。勇者になれる……俺たちならやれるって」
剣士「ずっと前から、色んな人達に言われてた」
僧侶「……」
魔法使い「その『俺たち』の中には、兄貴だって入ってたんだぜ」
剣士「解ってる……俺たちは阿呆みたいに、その気になってた」
剣士「酔った兄貴が、何時か四人で旅立とうとか言ってただろ」
僧侶「……『俺たちならやれる』」
剣士「ああ……」
魔法使い「あの日、兄貴が珍しくへこんでるから何かと思ったんだよな」
僧侶「悪い、俺、魔王倒せないや……だっけ」
剣士「楽しく飲んでた俺たちの傍まで来て、座りもせず突っ立ってたよな」
魔法使い「座らせて無理矢理飲ませて、口割らせたんだよな」
僧侶「実は王様の息子でした。親父は病気で寝込んじまって」
僧侶「明日から俺が王様なんだ……だったか」
剣士「呂律回ってなかったが、そんな感じだったな」
魔法使い「何とちくるってんだって、俺がさらに飲ませたんだよな」
僧侶「そしたら、本当に次の日から玉座に座ってたよな」
剣士「驚いたよ。何で……そんな急だったのか」
僧侶「今でもわかんねぇよ、そんなの」
魔法使い「……まさか、一人急に欠けるなんて思わなかったからな」
剣士「……勇者になるのは俺じゃ無い。兄貴だ」
剣士「なのに……あいつは……」
魔法使い「俺じゃ勇者になれない。なるとしたらお前だ、剣士」
僧侶「……そのしゃべり方、そっくりだな」クック
剣士「魔法使いと僧侶と、魔王を倒す旅に出ろ」
剣士「……お前達なら、勇者になれる」
魔法使い「俺の方が似てるよ」
剣士「……チッ」
僧侶「急がせた、のかな。旅立ち」
剣士「…… ……」

12 :
近いうちにっていってたけど次の日とは!
嬉しいけど無理はしないでぬ

13 :
僧侶「考えられるよな。大金与えて、あんな茶番までやってさ」
魔法使い「金なんて……何の役に立つんだよ……ッ」
剣士「思い出せよ、魔法使い。兄貴の言葉……」
魔法使い「え?」
剣士「『死んだら、そこから先は何も無いんだ。終わりなんだ』」
僧侶「『帰ってくる所は、此処だけじゃない。お前達は何処にでも行けるんだ』」
魔法使い「……だ、だからって、このまま俺たちだけでどっか行って」
魔法使い「のんびり暮らす為の資金にって、渡した訳じゃネェだろ!?」
僧侶「どういう風にも取れる、ってこった」
剣士「……それも一つの選択肢、だな」
魔法使い「お、おい……」
剣士「何も……そうしようって行ってる訳じゃない」
剣士「……確かに、普通の顔をしてどっかの街で何もせず生活していく事はできる」
僧侶「帰る所は……もう、無いからな」
魔法使い「……」
剣士「……」
僧侶「……」
魔法使い「だからって……だからって!!与えられた金で、悠々と何食わぬ顔して」
魔法使い「何も知らない振りして、過ごせって言うのか!?」
魔法使い「そんな選択肢、与えられたって拒否するしかネェだろ!?」
剣士「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「お前……お前ら、悔しくないのかよ!?」
魔法使い「あんな……目の前で、あっちゅーまに消し飛ばされたんだぜ!?」
魔法使い「俺らの……家族も、家も……俺らの世界、全部!!」

14 :
>>12
ありがとー!
仕事無いと暇でなぁwww
無理しない程度にのんびりやるよー

15 :
ちょっとおかいものー

16 :
え、じゃあ俺も

17 :
ただいまー
昼ご飯まで再開ー

18 :
剣士「……美しい島だったな」
魔法使い「……ッ おい、剣士……!!」
剣士「兄貴は、家族同然だった。剣の稽古つけてもらって、強くなって」
剣士「お前達とあって、馬鹿みたいな事やって騒いで……」
僧侶「……本当、あの人酒弱かったよな。なのに、俺らに付き合って飲んでさ」
剣士「何回介抱してやったかわかんないよな」
魔法使い「おいって!!」
僧侶「結構年上なのに可愛いとこあったよな」
剣士「…… ……あんな、糞でかい火の玉、軽々と北の果てから」
剣士「あんな、小さな島に綺麗にぶち当てて、しかも島毎沈めちまうような」
剣士「……信じられない力の持ち主だ。魔王ってのは」
僧侶「それを……たかだか糞ガキ三人、雁首揃えて殺して下さいって行く様なモンだ」
魔法使い「僧侶!!」
剣士「……だからって、黙ってられるか、ての」
魔法使い「……え?」
僧侶「……小さくてさ、美しいだけしか、取り柄のない島だったよな」
僧侶「それでも……俺たちにとって、あれが世界そのものだったんだ」
剣士「このまま俺たちが怖じ気づいて、尻尾巻いて逃げ出したら」
剣士「魔王の思うつぼだろうが……ッ」
魔法使い「剣士、僧侶……ッ」
魔法使い「そうだ……そうだぜ、俺たちだけじゃ無い!」
魔法使い「放っておけば、被害は全世界に広がるんだ」
魔法使い「魔族共が、好き勝手して良い世界じゃない」
魔法使い「……俺たちの世界なんだ……ッ」

19 :
剣士「……だが、生半可な覚悟じゃ倒せないぞ」
剣士「兄貴が居たら……否、あいつが居たって……!」
魔法使い「その兄貴の為にも……俺らがやらずに、誰がやるんだよ!」
魔法使い「……ッ放っておけるか……!!」
僧侶「ま……そうなるわな」
魔法使い「……ッ おう!」
僧侶「しかし……船、動くか?」
剣士「無理だな……目立った損傷は無いが……衝撃で随分やられたっぽい」
魔法使い「おい、お前風起こしてどうにかならねぇのかよ」
僧侶「無茶言うなよ!」
剣士「潮に流されて行って……どこに着くやら」
魔法使い「言う程離れてないよな……」
魔法使い「なあ、本当に無理なのかよ、僧侶」
僧侶「お前なぁ、いくら俺が緑の加護受けてるからって……」
剣士「……まあ、やってみても良いんじゃネェの」
僧侶「……出来なくても文句いうなよ」
魔法使い「補助魔法のつもりでさ……良し、俺も後押ししてやるよ」
僧侶「あーほーかー!お前炎使いでしょうが!」
僧侶「んなもんで炙ったら大火事だわ!」
剣士「……」クックック
僧侶「笑い事じゃねええええええ!」
魔法使い「…… ……おい」
僧侶「あ?」
剣士「何だよ」
魔法使い「陸が見える」
剣士「え……」
僧侶「……泳いで行くにしても、死ぬぞあの距離」
魔法使い「潮の流れはどうだ」

20 :
剣士「流石にわかんねぇって」
魔法使い「……近づいていかねぇかな」
僧侶「……風、よ……ッ」
シーン……
剣士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「笑いを堪えたけったいな顔すんな。いっそ笑え」
剣士「しかし、まあ……何時穴が開くかも解らんしな」
魔法使い「もし少しでも近づきそうなら、泳ぐか……」
僧侶「せめてつっこめ!!」
ススス……
僧侶「……ん?」
剣士「進んでる……な」
魔法使い「でかした!僧侶!」
僧侶「……い、いや、俺のアレかどうか……」
グラグラグラ……
僧侶「おい、何かやばくネェか」
剣士「ぐんぐん進んでる、ぞ?」
魔法使い「おー!すげぇすげぇ!まじで泳いでいけるんじゃね!?」
僧侶「……もう少し……もう少し……ッ」
魔法使い「近くなってきたぞ!やったな僧侶!お前すげぇよ!」
剣士「良し、頃合い見て、飛び込……む……ッ て、おい!」
僧侶「なんだよ?」
剣士「下見ろ、下! ……ッ 岩礁だ!」
僧侶「げ……ッ」
グラグラ、ガクガク…… ガリガリガリ……ッ
魔法使い「うわ、やば……ッ」
剣士「……ッ 浸水してるぞ!船底に穴が……ッ」
僧侶「う、旨く岩避けて飛び込め!ぶつかる……ッ」
魔法使い「ごちゃごちゃ言ってんな!来い!」グイッ

21 :
剣士「うわ……ッ」ドボンッ
僧侶「おわああああああああああああああああ!」ザバン!
魔法使い「……ッ」ザバーン!
ガリガリ……ッ バキバキバキ……ッ!!
ドォ………ン!
ザバ……ッ ザザ…… ン、ザザ…… ……
剣士「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
剣士「……何で生きてるんだろうな、俺たち」
僧侶「『勇者様御一行』だから……じゃ、ね?」
魔法使い「ちょっとばかし、神様信じてもいい気になるね、こりゃ」
剣士「……陸地はすぐそこだ。泳ぐぞ」
剣士「風邪引いちまうよ、このままじゃ」
魔法使い「ああ……」
僧侶「怪我確認して、火を起こせる所探そう。どこか痛かったらすぐ言えよ」
ザバザバ……
……
………
…………
パチパチ……
僧侶「へっくしょん!」ズズ……
剣士「ここ、何処なんだかな……」
魔法使い「腹減ったぁ……」
剣士「贅沢言うな、魔法使い。取りあえず火に当たれるだけ幸せだろう」

22 :
おひるごはーん

23 :
僧侶「鬱蒼とした森の外れ……魔物に襲われるにはもってこい」
魔法使い「やめろよ、バカタレ!」
剣士「騒ぐなって……それこそ…… ……」
僧侶「どした?」
剣士「何か聞こえないか」
ガサガサ……ガサガサ……
魔法使い「……お前はあれか。予言師か何かか」
僧侶「褒めても何もでネェよ……おい、寄ってくんな」
剣士「騒ぐなって! ……おい、詠唱準備しとけよ」チャキ
ガサガサ……ガサ
少年「…… ……うわ!?」
剣士「……ッ !!」
僧侶「……ひ、と?」
魔法使い「何だ……ガキじゃネェか」フゥ
少年「お兄さん達……もしかして……あの、瓦礫に乗って来た人達?」
僧侶「……瓦礫に乗れる程器用じゃネェよ俺ら」
少年「……」ジロジロ
剣士「驚かせてすまんかった……君は?」
少年「凄い大きな音が聞こえて、振動がしたんだ」
少年「また魔王が何かしたのかと思って……」
魔法使い「また!?」
僧侶「魔王……って、言ったか?」
少年「…… ……」
剣士「俺たちは怪しい者じゃ……って、言ったって信じない、よな」
少年「ここら辺は魔物も強いよ。そんな所で野宿してたら、死んじゃうと思うけど」
魔法使い「そんな場所でお前さんは何やってんだよ」
少年「……この岬から奥に入ったところに、小さな村があるんだ」
少年「僕はそこから来た。さっきも言っただろ?凄い音がしたから」
少年「……見に来たんだよ」
僧侶「お前……一人で、か?」
少年「僕は強いから大丈夫だよ」
剣士「…… ……」

24 :
僧侶「そう睨んでやるな、剣士」
少年「……着いて来なよ。お姉ちゃんが、生存者が居たら拾ってこいって言ってた」
魔法使い「お姉さん!」
剣士「おい!」
少年「こっちだよ」スタスタ
剣士「……どうする?」
魔法使い「行くしかないっしょ」スタスタ
僧侶「お、おいこら、火消してけって……てか、お前は本当に……!」
剣士「色に惑わされて身を滅ぼすタイプだよな、こいつ」スタスタ
僧侶「お前も行くのかよ結局!」
剣士「野垂れ死ぬよりマシだ……相手は、人だ。言葉も通じない魔物じゃない」
僧侶「……糞ッ」スタスタ
少年「お兄さん達、人間だよね?」
魔法使い「どうやったら魔物に見えるんだよ」
少年「……魔族は、人と違わない姿をしてる奴らも多いよ」
剣士「そうなのか?」
少年「特に力の強い奴らはね……ああ、そうだ。名前教えてよ」
少年「僕は少年」
魔法使い「魔法使いだ」
剣士「俺は剣士。そっちは……」
僧侶「……僧侶」
少年「陽が落ちる前に。急ごう」スタスタ
魔法使い「……なぁんか、無愛想なガキだなぁ」
僧侶「聞こえるって……」
剣士「今の俺らには救世主だろ……取りあえず、助かったって言って良いんじゃないのか」
少年「あれだ。あの山の上」
僧侶「…… ……遠ッ」
少年「回り道してるからね」
魔法使い「何でだよ、態々……」
少年「さっきの十字路、左に曲がれば真っ直ぐ上るだけだけど」
少年「魔物が多いんだ。こっちに行けば滝がある」
少年「音と水に怯えて、魔物はあんまり出ない」

25 :
少年「結果的に、回り道した方が時間短縮になるんだよ」
少年「疲労困憊っぽいし……戦いたかった?」
剣士「……」
魔法使い「……」
僧侶「……お気遣いありがとよ」
少年「僕一人でも大丈夫だけど……庇いながら戦うのは面倒臭いしね」
剣士(この糞ガキ……ッ)
魔法使い(お姉さんが美人だったら……許す!)
僧侶(我慢、我慢……ッ)
少年「道が悪くなるから、喋って舌噛まない様にね」
……
………
…………
剣士「つ…… ッ」ハアハア
魔法使い「……つ、い……た……」ハア……
僧侶「…… ……」グッタリ
少年「……体力無いね」
タタタ……
姉「少年!」
少年「ただいま、お姉ちゃん」
姉「この人達が……生存者?」
少年「うん……三人だけだったよ」
剣士「……君が、お姉さん、か」
魔法使い(確かに美人だけど……こりゃまた、気の強そうな……)
僧侶(水……水……ッ)
姉「何があったのか、詳しく聞かせて貰いたいところだけど……」
姉「お疲れでしょう。ひとまず私達の家へ。お食事とお酒をご用意致しますわ」
剣士「あ、ああ……ありがとうございます……でも、良いんですか」
剣士「見ず知らずの……俺たちに」
姉「困った時はお互い様、です。ご遠慮なさらずに、どうぞ?」
少年「喋ってる水色の瞳の人が剣士。赤い瞳の人が魔法使い」
少年「……地面に潰れてる、緑の瞳の人が僧侶、だってさ」
姉「青の剣士様に、赤い魔法使い様。緑の僧侶様、ですね」
姉「湯の準備もついでにして参ります……少年、連れてきて頂戴ね」
少年「うん…… 大丈夫、歩ける?僧侶さん」
僧侶「……俺、だけ……随分な、紹介、だ……な……」
魔法使い「……ほら、肩貸してやるよ」グイ
剣士「こっちも掴まれ」グイ
少年「……仕方無いと思うんだけど」ハァ

26 :
……
………
…………
僧侶「い……ッ き、かえったー!!!」ハァ
魔法使い「風呂で泳ぐなガキか!」
剣士「……生きてて良かった」
魔法使い「大袈裟だなぁお前らは……」
僧侶「…… ……しかし、ここは何処なんだかな」
剣士「ついでにあいつら何者だ、だな」
魔法使い「まあ……命の恩人にゃ違いネェわな」
僧侶「手、出すなよ、魔法使い……」
魔法使い「阿呆か!んな事しねぇよ」
剣士「いーや、お前はわからん」
魔法使い「……煩ェ ……つか、ありゃ駄目だろ」
剣士「ん?」
魔法使い「もう忘れたのか?……『また魔王が何かしたのかと思った』」
僧侶「……」
剣士「……」
魔法使い「なァんか、匂うよな、あの二人……」
剣士「妙な呼び方、してたな」
僧侶「俺も気になった。青に、赤に、緑……」
魔法使い「加護の事じゃネェの?」
僧侶「だろうと思う、が……態々強調する事でもネェだろ?」
剣士「あの姉弟は茶色の瞳だったな、二人とも」
魔法使い「……雷、かな。妥当なところだと」
僧侶「雷使いか……別に珍しい属性じゃネェだろ」
剣士「ま、本人に聞けば一番早いだろ」ザバ
魔法使い「飯と酒の旨いアテになりゃ良いけどな」ザバン
僧侶「……口つける気か?二人とも」ザバー
剣士「お前は最後な、僧侶」
魔法使い「俺たちの様子がおかしかったら、回復してくれよ」
僧侶「……そうなるのね、結局」ハァ

27 :
……
………
…………
姉「お疲れ様でした。ご馳走とは言いがたいですが……どうぞ、お座り下さい」
剣士「いやいやいや、コレは……」
魔法使い「旨そう」ヒュウ
僧侶「ご遠慮なく……と、言いたいですが、何故?」
姉「先ほども申しました。困った時は……です」
少年「頂きます」モグモグ
剣士「……頂きます」
魔法使い「いっただっきまーす」
僧侶「……いくつか、お聞きしたい事があるんですが」
姉「ええ、どうぞ?」
僧侶「少年が……『また魔王が何かしたかと思った』と」
僧侶「……どういう、意味です?」

28 :
おむかえー

29 :
姉「……貴方達は、船でいらした、のですよね?」
僧侶「…… ……ええ、そうです」
姉「弟が言っていました。海岸になにやら、瓦礫の様な物が見える、と」
僧侶「……」
姉「あの衝撃と音は、船が岩礁に乗り上げたか何かした音……なのでしょう」
姉「船はバランスを崩し横転したか何かで大破。そして……」
僧侶「失礼、質問には答えて頂けないのでしょうかね」
魔法使い「……お前も食えよ、僧侶。旨いぞ」
僧侶(……二人とも、大丈夫そう、だが…… しかし……)
少年「変な物は入れてないから大丈夫だよ」
少年「……ついでに、質問には僕が答えるよ」
剣士「君が?」
少年「お兄さん達に、また魔王が……って言ったのは僕だからね」
少年「10日程前かな。魔王が、一つの島を沈めたらしい」
剣士「!」
魔法使い「!!」
僧侶「……らしい、てのは何だ」
姉「ここは小さな村ですが、船で少し行った山の奥に……やはり小さいですが」
姉「街があります。北の街、と言う」
姉「そこは、最果ての地に一番近い街と言われています」
魔法使い「最果てに……近い!?」
少年「そう。僕たちは船で、そこまで食料の調達なんかに行くんだ」
少年「……村、とか言ってるけど、此処は僕たち一族しか住んでない」
剣士「…… ……それ、はどういう意味だ。一族?」
姉「勘違いなさらぬ様……私達は、人間ですよ」
僧侶「その……北の街とアンタら一族とやら、どう関係が……」
少年「今からちゃんと話してあげるよ。ちょっと待って」
少年「……丁度、10日程、前。さっき言った魔王が、て奴ね」
少年「ここいら一体の人…… ……ううん、あれほどの威力だ」
少年「多分、世界中の殆どの人が見ただろうね」
剣士「…… ……巨大な火の玉、か」
僧侶「剣士!」

30 :
10日もたってんの?

31 :
少年「やっぱり、お兄さん達も見た?」
姉「……空を切り裂いて燃やさんばかりの火の玉は、轟音を立て」
姉「大海のどこかへと飛来し、そして落ちた……と」
姉「食料調達へでた一族の者が聞いたのです」
魔法使い「……それがどうして『島を沈めた』て話になるんだよ」
少年「北の街から南へと行商に出たって人が戻ってきてたんだ」
少年「海に大渦が出来た、てね」
剣士「大渦……」
少年「そう。だから、島が沈んだからじゃないか、て噂」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
剣士「…… ……」
姉「そして、あの衝撃と轟音……」
少年「『また』て考えたって、おかしく何か無いだろう?」
少年「ずっと前に、どこかの島が魔王に滅ぼされた、とか」
少年「色んな噂は知ってる筈だよ」
魔法使い「そりゃそうだ。魔王が人間を滅ぼそうとしてるってのは」
魔法使い「……知らない人間の方が少ないだろうよ」
剣士「……じゃあ、此処は、最果ての地に近い、んだな」
少年「最果ての地に一番近いと言われる、北の街に近い場所、が」
少年「正解だよ。此処は小さな島だ。北の街まで、小さな船でも時間はそんなに」
少年「かからないよ」
僧侶「……一族、てのは?」
姉「私達の祖先は、最果ての地の住民であったと言われています」
剣士「!」
魔法使い「な、に……!?」
僧侶「…… ……さっき、アンタ、自分たちは人間だと言ったな」
姉「はい」
僧侶「最果ての地とやらは、魔族の住む土地だと言われている」
僧侶「……矛盾してるぞ」
姉「ですから、私達は……『選ばれた人間』なのです」
魔法使い「…… ……は?」

32 :
姉「最果ての地、魔族のみ住まうを許された禁断の地に」
姉「唯一、居住を許された選ばれた人間達……それが、私達の祖先です」
少年「……ま、正確に言うと『そう信じてる』てのが着くけどね」
姉「少年!」
剣士「…… ……」
姉「魔族と人間の争いが激化した頃、祖先の何人かが戦火を逃れ」
姉「此処へ移り住んだ……そう、言われています」
魔法使い「……証拠はある訳?」ハァ
姉「私達は皆、『優れた加護』を持っている。それを証拠として何と言いましょうか」
剣士「優れた加護……?」
姉「そうです。優れた加護は、それ故に持つ属性の干渉を受けません」
僧侶「……アンタらは雷の加護を持っているんだよな。雷を浴びても」
僧侶「平気、と言いたいのか」
姉「勿論です。自然の物は別ですが、魔法である限りは……決して」
剣士「……それは、まあ、良い。良いんだが……何故だ?」
姉「はい?」
剣士「戦火を逃れ、て、言うのだよ。許されて住んでたのなら」
剣士「お前達……その一族、てのは」
剣士「逃げる必要等無かったんじゃ無いのか?」
少年「いくら特別であっても、人は人……魔族と、決して相容れないのさ」
少年「だから、僕たちは僕たちだけで、僕たちの王国を作る」
少年「……そういう訳、らしいよ?」
僧侶「…… ……こんな、山奥の小さな集落で、か」
姉「近親婚も多かったと聞きます。私と弟の親も、異母姉弟でした」
魔法使い「……まじかよ」
姉「他者の血を入れなくては、私達は繁栄できないのですよ」
少年「だから、生存者が居ないか、見に行ったのさ」
剣士「!」
魔法使い「!」
僧侶「……ちょ、ちょっと待てよ。外部の血を入れる為!?」
僧侶「冗談じゃネェ、俺たちは……!」
魔法使い「僧侶!」

33 :
少年「さっきも言った通り、近親婚を繰り返すとね」
少年「出生率そのものが悪くなる……産まれてきても、病弱ですぐ死んでしまう」
僧侶「おいおいおいおい、矛盾してるだろ。お前らその……何だっけ?」
剣士「『選ばれた一族』」
僧侶「そう、それだ!それなんだろ!?」
魔法使い「そうだよ。誰でも良いなら、血が薄まるじゃネェか」
姉「普通の人間の中にも、稀に優れた加護を持つ者が産まれるのです」
姉「そういう者を探して、私達は……仲間を増やします」
剣士「…… ……」
姉「単刀直入にお伺い致します。貴方達の中で、優れた加護を持つ方は?」
剣士「俺は魔法は使えない」
少年「残念には変わりないけど、優れた加護かそうじゃ無いかは解らないからね」
少年「剣士さん、貴方は海の魔物……水属性の魔物の魔法で怪我を負う?」
剣士「当たり前だろう!」
少年「……」ハァ
魔法使い「俺も残念だな。美人なお姉さんのお相手は是非お願いしたいが……」
魔法使い「自分の魔法で火傷した事もあるんでね」
姉「……貴方は?僧侶様」
僧侶「二人に同じく、だよ」
姉「…… ……そうですか、残念です」カタン
魔法使い「……?」
姉「明日、北の街までお送り致しましょう。今日はゆっくり、お休みになってください」
姉「少年……後は頼んだわよ」
少年「はいはい……だからそう、うまくいくはず無いって言っただろ」
姉「お黙り!」
スタスタ、パタン

34 :
僧侶「…… ……言葉が出ネェな」
剣士「全くだ」ハァ
少年「全く、お姉ちゃんにも困った物だよ」
魔法使い「……もし、俺らの中で優れた加護とやらを持ってたら」
魔法使い「どうなってたんだよ」
少年「想像したら解るでしょう」
僧侶「選ぶ権利ってのがだな」
少年「ある訳ないでしょ……『選ばれた人間』に逆らうなんて頭がイカレてる」
剣士「な……!」
少年「……て、言うよ。一族の人達はね」
魔法使い「イカレてやがるのは、どっちだ……」
少年「仕方無い。所謂……普通の人間、てのは劣等種、て奴だから」
僧侶「『劣等種』?」
少年「そう。僕たちは僕たちだけが特別。僕たちだけが全て」
少年「……選ばれた自分達が、何故魔族如きに許しを得る真似をしなくちゃならない」
少年「……て、ね」
剣士「お前も、そう思っているのか?」
少年「…… ……さてね」カタン
少年「さっさと寝て、さっさと起きて、さっさと出て行きなよ」
少年「多分、お姉ちゃん……明日からはお兄さん達の事見えても居ないよ」
魔法使い「極端だな」
剣士「送って貰えるだけありがたいって言うべきだ、ここは」
少年「船は準備しておくよ。じゃあね……お休み」
パタン
僧侶「……色んな人間が居るもんだ」ハァ
魔法使い「しかし……おかしく無いか?」
剣士「何がだよ」
魔法使い「…… ……10日前」
僧侶「それは俺も思った……が……」
剣士「気を失って、それぐらい彷徨っていたんじゃないのか」
僧侶「……死なないか、それ」

35 :
こいつらの文明て全然発達しないなあ

36 :
剣士「…… ……そう、か」
魔法使い「精々2、3日だぜ、納得できるのは」
僧侶「帰ろうとする気を削ぐ、為?」
剣士「まあ……考えられなくは無い、な」
僧侶「……だが、現実だ」
剣士「……」
魔法使い「だな…… 2日だろうが、一週間だろうが」
剣士「……俺たちの島は、もう……無いんだ」
魔法使い「…… ……」
僧侶「さっさと寝ちまおうぜ。明日にゃ放り出される、んだろ」
剣士「あの、少年ってガキは……」
魔法使い「あン?」
剣士「いや……姉に比べれば、まだまともそうに見えた、んだけどな」
僧侶「どっちもどっちさ…… ……お休み」
魔法使い「……ああ。お休み」
剣士「…… ……」
……
………
…………
少年「ほら、見えてきた。あれが北の街だよ」
剣士「近い、つってももう日暮れだぞ」
少年「まあ、半日……だね」
魔法使い「折角布団でゆっくり眠れると思ったのに……」ファア
僧侶「顎外れるぞお前……たたき起こされたから俺も眠いっての」
剣士「……おい、少年」
少年「何?あと半刻程で着くよ」
剣士「そうじゃない……お前達、ずっとあの村に居るのか?」
少年「さあね……人口が増えれば、どこかに移動するんじゃ無い」
魔法使い「ほっとけよ、剣士……」
剣士「……口ぶりからすれば、腕に自信はあるんだろう」
剣士「そういう一族なんだろう?それを……魔王討伐に向けようとは思わないのか?」
少年「そんな事してどうするのさ。僕たちが僕たちだけの王国を作れば」
少年「……僕たちの祖先を蔑んだ魔族も、足下にひれ伏すかもしれないのに?」
僧侶「そりゃ……嘘だな」
少年「…… ……」
魔法使い「僧侶?」

37 :
僧侶「対等な関係が結べれば、さらなる力をつける事ができる……の方が」
僧侶「正解に近いんじゃネェの」
剣士「……全滅されても困る、か」
少年「良くわかんないな、僕には」
魔法使い「……そうかよ」
剣士「…… ……」ハァ
僧侶「魔族も、魔王も利用するとか考えてるならやめておいた方が良いと思うぞ」
少年「…… ……」
魔法使い「そうそう。魔王は俺たちが……」
剣士「魔法使い」
少年「……倒す、とでも言いたいの?無理だよ」
少年「たかだか、劣等種のお兄さん達には」
僧侶「優れた人間である、自分達でも無理なのに?」
少年「……ッ 無理じゃない!何れ、一族が増えらた……!」
剣士「言い出したのが俺じゃ言いにくいが……やめとけ、僧侶」
少年「…… ……ッ ほら、さっさと降りて。着いたよ」
魔法使い「え、ちょ、入り江までつけてくれないの!?」
少年「足着くだろ。これ以上入っていくと、出る時面倒なんだよ」
剣士「……一晩の休息、恩に着るよ」
少年「……フン」
魔法使い「やれやれ……お前が期限損ねるからだぞ、僧侶」
僧侶「俺の所為!?」
少年「…… ……見てろ。僕は……そのうち王になってやるからな!」
魔法使い「捨て台詞吐いて行っちゃったなぁ」
剣士「……姉よりマシかと思ったが、同じ様なモンだったな」
僧侶「斜に構えたがるお年頃、ってね……さて」
僧侶「……北の街、とやらに着いたは良いが、どーすっかね」
剣士「あっちに船がある……あれ、借りられないか」
魔法使い「魔王倒しに行くから貸して下さい、って言うのか」

38 :
僧侶「案外、アリじゃね?」
魔法使い「え?」
僧侶「あの……火の玉は結構な人間が目撃してんだろ」
僧侶「素直に話して、あの島の出身です的な話すりゃ」
剣士「…… ……あり、かな」
魔法使い「えええええ、マジで!?」
僧侶「ついでに有り金全部置いてきゃ良いさ」
魔法使い「おいおいおいおい、戻って来た時どーすんだよ!」
魔法使い「俺ら一文無し!?」
剣士「そん時ゃ、まさしく英雄サマだ」
剣士「……どうにでもなるよ、金なんて」
魔法使い「あ……そっか……」
僧侶「生きて帰れたら、な」
剣士「死んだらどっちにしろ、金なんていらないさ」
魔法使い「……ご尤も」
剣士「良し、僧侶、任せた」
僧侶「えええええええええええええ!?」
魔法使い「口から出任せ、一番得意だろ」
僧侶「出任せじゃねぇだろ!」
魔法使い「俺らはその間に情報収集すっかね」
剣士「だな」
僧侶「まじかよ……お前ら」
剣士「船の持ち主……あの裏の家、かな」
魔法使い「良し、行ってこい!」バン!
僧侶「いってええええええええ!!」
僧侶「……くそったれぇ」ブツブツ……スタスタ
……
………
…………
僧侶「と、言う訳でして、ね」
町長「は、はあ……そりゃ、こんな大金積まれちゃ……」
町長「しかも、魔王を倒しに行くというのでしたら、船ぐらい差し上げますが……」
僧侶「本当ですが!」
町長「はあ……コレだけあれば、もう一隻船が買えますからね」
町長「しかし……その……大丈夫なのですか、三人で、と言うのは……」

39 :
僧侶「……まあ、やるだけやってみますよ」
町長「そうですか……解りました。では、帰られるまで、お金はお預かり致します」
僧侶「え、いえいえ、差し上げますって」
町長「いえ、あの、差し出がましいのですが……」チラ
僧侶「はい?」
町長「その……そちらの、腰に差していらっしゃるの……地図、ですよね?」
僧侶「え?あ……コレですか?」ガサ
町長「は、はい!よろしければ、そちらを頂けませんか」
僧侶「へ?」
町長「私は、その……地図を集めていまして」
僧侶「いやいやいや、これ、何処にでも売ってる地図ですよ!?」
町長「古い物はあるのですが、現行の物が今、中々手に入らないのですよ」
町長「魔王の城を目指された人も何人も知っています。大体、此処に寄られるのでね」
僧侶「はあ……」
町長「帰って来た者はおりませんが、大体こうやって皆お金を積まれて」
町長「船を貸してくれ、もしくは売ってくれと言うのです」
町長「土地柄、航行は盛んですので……それは構わないのですけどね」
僧侶(人の良さそうな顔して、結構がめついなぁ、この親父……)
僧侶(帰って来ないから、お金はありがたく頂戴したって暴露してる様なモンじゃねぇか)
僧侶「まあ……どうぞ。こんなモンで良ければ」
町長「ありがとうございます!どうぞ、船はご自由にお使い下さい!」
僧侶「いえいえ……此方こそありがとうございます」
僧侶(まあ……結果オーライ、かな)
……
………
…………
剣士「……しっかしぼろい船だな」
魔法使い「文句言わない、言わない。生きて帰りゃ金も戻ってくるし」
僧侶「地図なんか集めてどーすんだかな」
剣士「コレクターって奴は、良くわかんないモンに価値を見いだしてこそ、なんじゃないのか」
僧侶「そういうモンかね……」

40 :
剣士「……あの大陸、か」
僧侶「……」
魔法使い「とうとう乗り込む……か」
剣士「……気合い、入れとけよ。多分、魔物の強さも桁外れだ」
魔法使い「だ、な」
僧侶「良し……そこだ、止めろ」
剣士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
剣士「降りろ……行くぞ」
魔法使い「おう」
僧侶「……ああ」
剣士「空が……真っ黒だな」
魔法使い「紫、だろ……黒に近いけど」
僧侶「…… ……あっちだ。屋根みたいなのが見える」スタスタ
剣士「僧侶、殿を行け……魔法使い、間に入れ」
魔法使い「あいよ……つか、妙に静か……じゃ、ね?」
僧侶「……風の音しかしないな」
剣士「! ……見ろ、街だ!」
僧侶「……ッ ……街、は街だが……」
魔法使い「気配はしないな…… ……あれ、十字架か?」
剣士「折れてる奴か……みたいだな」
僧侶「魔物達の街に、十字架? ……不似合いだな」
剣士「そろっと抜けよう……気は抜くなよ」
……
………
…………
僧侶「城門だな」
魔法使い「ああ……そうだな」
剣士「此処まで……魔物にすら会わない、てのは……どういうことだ」
僧侶「でかいなぁ……」
魔法使い「ああ、でかいな」
剣士「漫才みたいな会話してないで、聞けよ!」

41 :
僧侶「でかい声出すなよ……聞いてるよ」
魔法使い「どう考えても罠……だわな」
剣士「……どうする?」
僧侶「今更それ、聞く?」
魔法使い「答える迄もネェわな」
剣士「良し……開けるぞ!」
ギィィイイ…… ……ッ
魔法使い「……広ッ」
僧侶「へえ、結構良い趣味してんなぁ」
剣士「お前らな……」
魔法使い「……で、此処にも気配無し、と」
剣士「どこから何が飛び出してくるかわかんないぞ」
僧侶「あの階段の上の扉……から行ってみるか」コツコツ
コツコツ……コツコツ……キィ
??「ようこそ、お客人」
剣士「!」
魔法使い「ど、何処だ!?」
僧侶「……ッ」
??「何だ……私を探していたのでは無いのか」
剣士(漆黒の髪、赤い目……真っ赤な、剣……!)
魔法使い(こ……ッ この、魔力……は……ッ!!)
僧侶(何で……ッ 何も、何も感じなかった……!!しかし、こいつは……!!)
僧侶「ま……おう…… ……?」

42 :
魔王「いかにも、私が魔王だ……勇者達よ」
魔法使い「う…… ……ッ うわああああああああああああああああッ!!」
剣士「魔法使い!?」
魔法使い「ほ、炎よ……ッ」ボオゥ……ッ
魔王「……ふむ。手荒いなあ」ス…… バチン!
シュウウゥ……
剣士「!」
剣士(あ……あんなに、簡単に……ッ)
僧侶「は……じ、いた……ッ」
魔法使い「あ、 ……あ、あああ。あああああああああああああ!」ボウッ
剣士「うわあああああああああああ!!」ダダダ……ッ ブゥン!!
僧侶「ちょ、ま……ッ ……う、うわあああああ!?」
魔王「……気持ちは解らなくも無いが……何を言っても、通じない、か」ブゥン
魔王「……はぁッ」
ザシュ……ッ ガキィィン……ッ
剣士「うわああああああああああああああああ!」ドン!
魔法使い「ぎゃああああああああ!!」バン!ズルズルズル…… ドサッ
僧侶「ああああああああああ……ッ あ、アァアアア!」ブン……ッドン!
魔王「……力加減がどうにも旨く行かんな」チラ
魔王「なあ、人間よ……こんな所で、無駄に命を散らす必要は無い」
魔王「死にたくは無いだろう……『生きたいか』」
剣士「ふ……ッ ざ、ける、な……ッ」
剣士「ま、おう……の、なさ……け、で ……ッ いき、てどうしろ……と……!」
魔法使い「お、前……を、たお ……な、きゃ……ッ し、ん……も、しにきれ ……る、か!」
僧侶「…… …… ……」
魔王「強情だな……まあ、そりゃそうだろうが」フゥ
剣士「ば……け、もの…… め……ッ!!」
魔法使い「おれ、た……ち、のせか……こわ ……し、やがっ ……て!!」ゲホッ
剣士「皆 ……を、かえせ ……!!しま、を……ッ」
剣士「親 ……を ……兄、 ……を、かえ ……ッ」ゴボゴボ……ゴフッ
魔王「……喋るな、と言っても無駄、かな」
魔王「……そこの。お前は?」
僧侶「…… …… ……」
剣士「おれ ……た、ちの ……しあわ ……う ……ッけん ……など!」
僧侶「…… …… ……」
魔法使い「ん、り ……など、おま ……に、な……!!」
魔王「『生きたいか』」

43 :
僧侶(生きる……死ぬ……死ぬ、のか?俺は……)
僧侶(こんな、所…… で ……死ぬ、終わる……?)
僧侶「 ……だ」
魔王「ん?」
僧侶「い、や ……だ しに……く、な……ッ しぬ、の……は ……や、だ!!」
魔王「ふむ……ならば生きろ。強い意思を持ち、己が手を取るが良い……人の子よ」
僧侶「…… …… ……」
魔王「無理か……仕方無いな」フウ。スタスタ……ギュ
魔王「……生きろ。輝かしい、人の子よ」グッ
僧侶(……ッ 何だ?何か…… ……流れ、込んで…… ……ッ)
僧侶「うわあああああああああああああああああああああああ!!」ガタガタガタ
魔王「……ほう」
僧侶「ああ。ああああああ。 ……あああああああああああああああッ!!」ハアハア
僧侶「うわああああああああああああああ!!」ダダダ……ッ ゴオオオウ……ッ
魔王「あっはっはっはっは!元気があって何よりだな!」ドン!
僧侶「ぐ、う……ッ」ブウン……ドン!
僧侶「あ、ああ……ッ あ……」ズルズルズル……ベチャ
僧侶「あ…… ……アァ」ゲホゲホゲホッ
魔王「ふむ。落ち着いたか?」
僧侶「え…… ……お、れ……」ズキッ
僧侶「ぐ……ッ」
魔王「悪いなぁ、まだ余り力の加減が解って居なくてな」
魔王「お前、回復魔法は使えるか?城には回復できる奴なんか居ないから」
魔王「……出来ないなら、まあ、精のつく物ぐらい食わしてやるが」
僧侶「う、うぅ……う、ぅ……」パァ……
魔王「お……良かった良かった」
僧侶「良い事……ある、か……ッ」
魔王「生きたいと願ったのはお前だろう?」

44 :
僧侶「!」
僧侶(生きたい……そうだ、俺、死にたくない……って……!!)
僧侶「剣士!魔法使い……!」
魔王「…… ……」
僧侶「……あ、ァ」ヘタヘタ
魔王「気分はどうだ」
僧侶「ふ……ッ ふざけるな!どうして俺だけ助けた!?どうして二人を……!!」
僧侶「どうして、島を……!!」
魔王「……」ハァ
魔王「話をしようとしたら、先に仕掛けて来たのはお前の仲間の方だ」
魔王「……まあ、力の加減が出来なかった事は素直に謝ろう。すまんかった」
僧侶「…… ……ッ」
魔王「島の事も謝らねばならんな……しかし、アレは私の仕業では無い」
僧侶「お前……ッ この期に及んで……ッ」
魔王「……が、前『魔王』の仕業である事には違い無い」
魔王「悪かった。アレは……非常に好戦的な輩でな」
魔王「もう少し……私があいつをRのが早ければ…… ……すまなかった」ス……
僧侶「……な、何の真似……だ……!」
魔王「ん?土下座、と言うのはこうやってするんじゃ無いのか」
僧侶「は!?」
魔王「人に対して、誠心誠意わびる時には、こうして土下座、とやらをするのだろう」
僧侶「な……!!」
魔王「取りあえず……二人の亡骸を弔ってやらんか。そして……」
魔王「私の話を聞いて欲しい。人の子だった者よ」
僧侶「……ちょ、ちょい待て、今……なんつった?」
魔王「『私の話を聞いて欲しい。人の子だった者よ』……もう一回言うか?」
僧侶「……もう良い。その、人の子だった者……て、何だよ」
魔王「お前は、生きたいと願ったでは無いか」
僧侶「……ッ そ、そうだ!どうして……どうして、俺だけ助けた!?」
僧侶「魔法使いは、剣士……は……!」

45 :
魔王「さっきもそれ、聞かれたな」
魔王「……で、私も提案したんだがな。まあ良い……おい、そっちの奴、持てるか?」
僧侶「は!?」
魔王「弔ってやろう……庭へ行き、浄化する」ヒョイ
魔王「着いて来い」スタスタ
僧侶「あ、ちょ……ッ」
僧侶「…… ……魔法使い……」グイ……ッスタスタ
僧侶「お、おい!待てよ!」
魔王「走れるぐらい回復したか……ふむ、成功、かな」
僧侶「え?あ……」
僧侶(そうだ、俺……死にかけ、た筈だ)
僧侶(魔王に……命を、救われた……!?しかも、何だ……この)
僧侶(溢れんばかりの……魔力……体力……)
魔王「……此処で良いか。花を燃やすと怒られるしな」トン
僧侶「お、おい……!」
魔王「傍においてやれ」
僧侶「何するんだよ!」
魔王「弔うのだと言っているだろう。このままでは……余りにも不憫だろう?」
僧侶「……ど、どうやって……」
魔王「炎で燃やすのだ。器は土に還り、魂は空へ孵る……そして、全ての柵から解き放たれ」
魔王「……浄化される」
僧侶「浄化……」
魔王「火をつけるぞ。良いか?」
僧侶「…… ……」
魔王「…… ……」ボウ……ッ
パチ、パチ……ッ

46 :
僧侶「…… ……」ポロポロ
魔王「泣いているのか」
僧侶「…… ……何で、俺だけ助けた」
魔王「この二人は、生きたいか、との問いに」
魔王「否、と答えた。お前は応とした……だからだ」
僧侶「……」
魔王「人と言うのは解らんな。お前が強いのか弱いのか」
魔王「この二人が強いのか弱いのか……私には、解らん」
僧侶「俺は……強くなんかネェ。敵……魔王のお前に」
僧侶「助けてくれ、だなんて…… ……」
魔王「素直さは強さでは無いのか?」
僧侶「……弱いから、無様な命乞いでも平気で出来たんだろうよ」
魔王「ふむ……しかし、お前もう人では無いしなぁ」
僧侶「……は!?」
魔王「さっきも言ったが、魔族は回復魔法等と言う、器用な物は使えないのだ」
魔王「書物によれば、強くも弱くもある人である者の特権だと書かれていたがな」
僧侶「書物? ……いや、ちょっと待て」
僧侶「俺が人じゃ無いってどういうことだ!?」
魔王「お前、人の話聞いていたか?」
魔王「だから、魔族である私に、回復など出来んのだ、って」
僧侶「じゃ、じゃあ……俺は、何だって言うんだよ!」
魔王「……魔族?」
僧侶「首を傾げるな!いっこも可愛くねぇ!」
魔王「いや、それも書物にあってな」
僧侶「何だよ!人を魔に変える方法とか書いた本でも読んだってのか!」
魔王「凄いなお前。正解だ」
僧侶「……マジかよ」
僧侶「ちょ、じゃ……じゃあ、俺、魔族になったって事!?」

47 :
魔王「いやあ……こんなに旨く行くとはなぁ……」
僧侶「お、お前なあああああ!」
魔王「しかし、願いは叶っただろう?」
魔王「人としてのお前は死んだが、魔族として生き返った」
僧侶「……ッ」
魔王「強い意思がなければ、成功しないそうだ」
魔王「……私も、やっと魔王になったという実感が持てたよ」
僧侶「! そ、そうだ!お前……ッさっきの話は何なんだ!」
僧侶「前魔王がどうとか……!」
魔王「ん?ああ……言葉の通りなのだがな」
魔王「先代……まあ、親父だな」
魔王「親父は随分と好戦的でな……島を沈めたのも、親父の仕業だ」
僧侶「そんな、そんな話……ッ」
魔王「やはり……信じられないか?」
僧侶「…… ……」
魔王「……まあ、良い。聞くだけ聞くが良い」
魔王「親父が言うには、『王』と言うのは都合が悪いそうだ」
魔王「私がまだ子供だった頃、一つ……王の居た街を滅ぼしたとも言っていた」
魔王「そうして……お前達の居た、島だ」
魔王「『親切にも宣戦布告してやったのに、あの王は態々勇者達の旅立ちを早め』」
魔王「『私に、魔王に逆らった。焼くだけにしようと思ったが、見せしめだ』」
魔王「『……島毎、沈めてやったわ』 ……とな」
僧侶「……殺した、とか言ってたな。その、前魔王を……」
魔王「ああ。代々魔王と言うのは世襲制でな」
僧侶「……だい、だい?」
魔王「そうだ。魔王の子が魔王になるのだ……そして、交代の儀式は親殺し」
僧侶「!?」
魔王「そして先ほど……見たであろう。あの魔王の剣と魔王としての力を」
魔王「受け継いでゆくのだ」
僧侶「…… ……あっさり、言うなよ」
魔王「何故そんな顔をする?」

48 :
魔王「お前達人間に取って、あの魔王は害悪以外の何物でもなかろう?」
僧侶「……俺は、もう人間じゃねぇんだろ」
魔王「ふむ……そうだったな」
僧侶「だが、お前が居るじゃないか。新たな……魔王、が」
魔王「まあ……確かにそうだ。だが……別に私は人を滅ぼそう等思わんよ」
僧侶「何……?」
魔王「……終わったな」
僧侶「あ…… ……」
魔王「安心しろ。二人は……もう、苦しまん」
僧侶「……」
魔王「で……お前、どうするんだ?」
僧侶「へ?」
魔王「いや、此処に居たければ居て良いけど」
僧侶「は!?」
魔王「…… ……」
僧侶「お、おいおいおい、放り出す気か!?」
魔王「だから、居たければ居て良いって」
僧侶「……俺、人間じゃなくなったんだろう」
僧侶「何処で、どうしろって言うんだよ……」
魔王「ふむ……私としては此処に居てくれれば助かるが」
僧侶「……?」
魔王「先代の腰巾着共は、過激な奴が多かったのでな」
魔王「ついでに殆ど殺してしまったんだ」
僧侶「…… ……は、はあ」
魔王「残しておいても、私には従わんだろうしな」
僧侶「……やっぱ、アンタ間違い無く魔王なんだな」
魔王「ん?」
僧侶「いや……何でもネェよ」
魔王「魔王の交代の儀式を知る者は少ないからな」
魔王「私が親父を殺したと言えば従うだろうが……あまり意味が無いしなぁ」
僧侶「……? 何故だ?」
魔王「私の思想は、親父とは正反対、だからだな」
僧侶「正反対……?」
魔王「まあ、良い……お前、行くところが無いのなら」
魔王「私の『側近』にならないか」
僧侶「……は!?」

49 :
僧侶「『側近』!?俺が!?魔王の!?」
魔王「ふむ……まあ、厭なら無理強いはせんが」
僧侶「な、何だよ……断ったらRとか言わないだろうな」
魔王「阿呆。そんな事はせんわ。好きにすると良い」
僧侶「い、いや、だから……放り出されても、ね?」
魔王「煮え切らん奴だな。どうしたいかはっきり言え」
僧侶「……帰る場所なんか、だから、ネェって!」
魔王「まあ、そうだなぁ。何百年……もっとか。見かけも変わらないだろうしな」
僧侶「……まじで」
魔王「人の地を転々とするのも、面倒だろう」
僧侶「そりゃ、まあ……つか」
僧侶「……魔王を倒すって目標も……無くなった、しな」
僧侶「行きたい所も……」
魔王「ふむ。ならば遠慮せず、此処に居れば良い」
魔王「お前の名は今から側近、だ。良いな?」
側近「へ? ……つか、新しい名前とか意味あるのかよ」
魔王「意味があるかどうかは解らんが、新しい生のスタートとしてのけじめとして」
魔王「必要な事だと思うからな……気に入らんか?」
側近「い、いや……良いよ、それで」
魔王「ふむ」
側近「……解ったよ。どうせ行くところも、行ける所もない」
側近「この城に住んで、お前の傍に居てやるよ……魔王様」
魔王「うむ」
側近「嬉しそうにニコニコすんなよ……」
魔王「しかし、お前……僧侶だったんだよな」
側近「あ?ああ……まあ」
魔王「良し。属性は……緑か。風の攻撃魔法を教えてやろう」
側近「は!?無理無理無理!」
魔王「魔法なんて言う物は、要は使い方だ。それに、お前」
魔王「さっき暴走した時に、風の魔法を使おうとしてたぞ?」
側近「ぼう……そう? ……あ!」
魔王「なんと無く覚えてるか?」

50 :
側近「そ、うだ……お前……!笑いながら俺の事吹っ飛ばしやがったな……!」
魔王「何だ、覚えてるのか……そう、あの時だな」
魔王「お前はきっと素質があるよ。私がみっちり鍛えてやろう」
側近「じょ、冗談じゃねぇ!」
魔王「私の側近として走り回って貰うのだからな、回復や補助だけじゃ」
魔王「何の役にも立たん」
側近「……まじで言ってんの」
魔王「当然だ」
側近「…… ……さよですか」ハァ
魔王「取りあえず、私の右腕達を紹介しようか」
側近「右腕?」
魔王「まあ、友人であり頼れる部下だ」
魔王「魔導将軍と、鴉部隊長」
側近「……将軍に隊長、っすか」
魔王「何を言う。お前は側近だろう、私の」
側近「……前言撤回して良いか」
魔王「残念だな。もう遅い」ハハハ
……
………
…………
側近「……ん」
勇者「側近!もう昼だ!」
側近「……俺、目見えないから、ずっと夜……」
勇者「……蹴るぞ」
側近「ご免なさい、起きます起きます……よいしょ」
勇者「さっき、倉庫に手紙置きに行ったら女剣士に会ったよ」
側近「おう……なんて?」
勇者「午後から王子と一緒に来るってさ」
側近「ん?王子も?」
勇者「ああ。誕生日なんだってさ、弟王子の」
側近「そうか……幾つになったんだ?」
勇者「俺?14歳」
側近「阿呆。弟王子だ」
勇者「ああ、なんだそっちかえっと……12歳って言ってたかな」
側近「へぇ……」

51 :
側近(夢……か。これまた、懐かしい夢みたもんだ……)
勇者「近い内に誕生パーティーするらしくてさ」
側近「ふぅん……」
側近(俺が……前魔王様に魔族にされた頃……)
勇者「それで…… ……」
側近(……ジジィの方の魔導将軍と、鴉のババァが……)
勇者「…… ……」
側近(懐かしいな……)
勇者「側近!!」ユサユサ
側近「起きてる起きてる、聞いてる聞いてる……揺らすなって」
勇者「俺たちも招待してくれるとか言ってたぞ」
側近「……えー」
勇者「えー、って」
側近「お前は良いけど……いや、良くないか……」
勇者「何でだよ」
側近「何時も言ってるだろ?お前は、魔王を倒す運命を持った……」
勇者「王様が是非にって言ってたんだって!」ユサユサ
側近「……だから、揺らすなって……」ガクガク
側近「解った解った、とにかく女剣士が来たらちゃんと聞くから、話すから」
勇者「絶対だぜ!」
側近「はいはい……とりあえず、飯にするか……」
勇者「疲れてるんだと思って待っててやったのに、それかよ……」
側近「悪かったって……ご高齢なんだから、大事にしてくれよ」
勇者「……じゃあ雑炊でも作ってやろうか、おじいちゃん」
側近「そんな歳よりじゃネェよ!」
側近(……しかし、見えないからわかんねぇけど)
側近(不自然に見えない程度に老けて行ってる、て行ってたな)
側近(……でも、まだ……生きてる)
コンコン
勇者「あ……はい!」
側近「どなたですか」
女剣士「王国騎士団、騎士団長の女剣士です」
女剣士「ご面会願えますか」
勇者「……は、はい」
側近「解ってると思うが、笑うなよ」

52 :
勇者「大丈夫だよ……」スタスタ、カチャ
女剣士「ごきげんよう、勇者様。お変わりありませんか」
勇者「はい……大丈夫です」
女剣士「側近殿、入ってもよろしいでしょうか」
側近「ええ、どうぞ」
女剣士「騎士二人は少し離れて、待て! ……王子様、どうぞ」
王子「失礼します……勇者様、お久しぶりです」
勇者「これは王子様……態々ご足労頂き、恐縮です」
女剣士「何人も近づけるな。良いな!」
騎士「はッ」
パタン
勇者「……」
女剣士「……」
王子「……」
側近「……」
プッ……クスクスクス
側近「女剣士が一番笑えるな……」
女剣士「煩いな、側近!」
勇者「王子!久しぶりだな!」
王子「おう! ……お母様が煩いからな、中々来れないんだ」
側近「弟王子は元気か?」
王子「うん……一緒には来れなかったけどね」
側近「まだ体調悪いのか?」

53 :
お風呂とご飯!

54 :
いてら!

55 :
いいぞ
また火がついたw

56 :
おはよう!
おむかえまでー

57 :
王子「熱は下がったみたいだけどね」
王子「来たがってたけど……お母様が、駄目だって」
側近「盗賊、しっかり母親してるよなぁ……」
勇者「女剣士!さっきの話……」
女剣士「ん?ああ……話してないのか?」
側近「誕生パーティがどうとか?」
側近「……しかし、俺らが公の場に出ていくのはな」
女剣士「まあ、王様からの発表の場、だと思ってくれ」
側近「発表?」
王子「……」ニヤニヤ
勇者「あ!お前……何か知ってるな!王子!」
王子「まだ内緒だよ」
勇者「教えろよ!」
女剣士「あんまり大きい声を出すな」
側近「……仕方無いな」
勇者「行って良いの!?」
側近「お召し、とありゃ行かない訳にもいかんだろ」
女剣士「目深に被れるローブをちゃんと用意する」
側近「……」ハァ
女剣士「そう深く考えなくて良いよ、側近」
女剣士「勇者の存在は周知だ。この場所を知るのは騎士団の人間に限られるしな」
側近「まあ、そうだが……」
女剣士「まあ、伝える事は以上、だ……勇者」
勇者「ん?」
女剣士「アタシが剣を教えだして随分経つ。素振りも欠かしていないな?」
勇者「勿論! でも……週一回しか教えに来てくれないんだもんなぁ」
側近「仕方無いだろう。女剣士にだって仕事があるんだから」
王子「俺も強くなったぜ、勇者」
女剣士「そこで、だ……王子と、手合わせしてみるか?」
勇者「え!?良いの!?」
剣士「負けないぞ!」
女剣士「では二人とも、庭の方へ出ろ。騎士に見張らせておくから」
女剣士「まずは素振り200回だ!」
王子「はい!」
勇者「は、はい!」
女剣士「側近、少し待っててくれ。すぐに戻る」
側近「おう」
女剣士「各自剣を持って行け!」
王子「はい!」
勇者「はい!」
パタン

58 :
勇者「え!?良いの!?」
剣士「負けないぞ!」

勇者「え!?良いの!?」
王子「負けないぞ!」
訂正orz

59 :
側近(発表……発表、ね)
側近(何を企んでるんだかなぁ……)
パタン
女剣士「手短に言うよ、側近」
女剣士「……待たすと煩いからな、あの二人」
側近「ああ……俺も聞きたい事がある」
女剣士「パーティーは明日だ、朝迎えに来る」
側近「随分急だな」
女剣士「日を与えると、アンタは悩むだろう?」
側近「……盗賊の奴」クック
女剣士「明日はその侭、城に泊まると良い。部屋の準備はしてある」
側近「え?」
女剣士「見張りには騎士が交代でつくし……久々に酒でも飲もう、と」
女剣士「『王様からの命令』だ」クスクス
側近「そりゃ断れないなぁ……職権乱用、て伝えとけ」クス
女剣士「……洞窟が見つかった」
側近「!」
女剣士「アタシも同行するが、勇者と王子を連れて行こうと思う」
側近「……マジかよ」
女剣士「鍛冶師が、地図を側近に返しておけと預かったんだが……」
側近「返されてもなぁ……俺にはもう必要無いしな」
女剣士「…… ……そう、か」
側近「王国預かりって事にでもしといてくれよ」
女剣士「……聞きたい事、てのは何だ?」
側近「俺は……老けた、か?」
女剣士「それは……知り合った頃から?それとも……」
側近「この国へ来てから、かな」
女剣士「……そうだな。人が見て不自然で無い程度に」
側近「そうか……お前、幾つになったっけ」
女剣士「もう、30を超えたよ」
側近「お前と比べて、どうだ?」
女剣士「……もう少し、上と言われても違和感は無いな」
側近「そうか……なら、良い。安心した」
女剣士「…… ……」

60 :
側近「話は……終わりか?」
女剣士「ああ……二人を見てこよう」
女剣士「食料などは途中の倉庫にいつも通り入れてあるからな」
側近「ああ。勇者に取りに行かせるよ」
女剣士「一緒に行くか?」
側近「え?」
女剣士「庭、だよ」
側近「俺が行っても…… ……いや」
側近「そうだな。行くよ」
女剣士「ん……ほら、手」
側近「おう」ギュ
女剣士「…… ……」
側近「照れるなよ」
女剣士「ち、違うわ、阿呆!」
ガチャ
女剣士「良し、素振りは終わったか!」
勇者「はい! ……あ、側近」
王子「199.200……! ……ッはい!」
女剣士「勇者、スピードを競えとは言っていない」
女剣士「息を合わす事も大事だ」
勇者「は、はい!」
女剣士「……騎士、側近様を頼む」
騎士「はッ ……どうぞ、お手を」
側近「ああ、ありがとう」
女剣士「では向かい合い距離を取れ」
勇者「はい!」
王子「はい!」
女剣士「手加減は無用!急所への攻撃は禁止……始め!」

61 :
側近(打ち合う音が聞こえる……勇者も、王子も大きくなったな)
側近(洞窟が見つかった、か……まあ、盗賊の事だ)
側近(明日の発表とやら、その事なんだろうが……地図、持ってきて正解だったな)
側近(…… ……そういえば、あの古い地図)
側近(もしかしたら、俺が……兄貴に貰った奴かもしれないんだな)
側近(俺にくれたのは、女剣士の親父だし……何の因果か)ハァ
騎士「側近様、ご気分でも?」
側近「ああ、いや……大丈夫だ」
騎士「なら、よろしいのですが」
側近「……今、どうなって……」
ガキィン!
騎士「あ……ッ」
女剣士「そこまで! ……勝者、王子!」
王子「よっしゃぁ!」
勇者「く、くそ……ッ」
側近「……負けちゃったか」
女剣士「……王子様、お見事です。勇者様も検討されましたよ」
王子「……ッ ありがとうございました!」
勇者「ありがとうございました……」ハァ
側近(勇者はスタミナ不足……かな)
側近(王子は城で……女剣士に鍛えられてるんだろうしなぁ)
女剣士「……では、明朝お迎えに上がります。騎士、側近様を……」
側近「大丈夫だ、勇者がいる」
勇者「……ああ」
王子「女剣士!勝ったよ、俺!」
女剣士「お見事でした……が、驕りません様、王子様」
王子「……ッ はい!」
側近「お疲れ、勇者」ギュ

62 :
勇者「くそ……」
側近「悔しいか?」
勇者「当然だ……!俺は、魔王を倒さなきゃいけないのに……!」
女剣士「では、失礼致します。行くぞ!」
騎士「はッ」
王子「勇者……様。又、明日」
勇者「……はい。お気をつけて」
スタスタ…… ……
側近「さっき、女剣士にも言われただろう?」
勇者「……?」
側近「お前は勇者だ。世界を守り、魔王を倒す光の子」
勇者「…… ……」
側近「目の前にある物を壊すだけの強さを求めて良い訳じゃない」
側近「守る物がある方が強くなれる」
勇者「守る物……」
側近「……そう。力を合わせる、とか。何かを守る、とかな」
勇者「あ……息を合わせる、て……奴、か」
側近「そう。圧倒的な力があれば、一人でも良いけど」
側近「……そうじゃ無いなら、必要だろ?」
側近「仲間を守る。世界を守る……ま、色々な」
勇者「……うん」
側近「魔王は……信じられない位強いよ」
側近「規格外だからな、アレは」
勇者「側近は……魔王を知ってるのか」
側近「…… ……世界滅ぼすとか、噂されてるだろ」
勇者「ああ……うん……」
側近「到底勝てない様な相手でも、仲間が居て、個々に守りたい大事な物があって」
側近「力を合わせれば、勝てるかもしれない」
側近「……俺は、お前にはそういう強さを身につけて欲しいよ」
勇者「……うん!」
側近「良し……で、だ」
勇者「ん?」
側近「腹減ったから、飯つくって?」
勇者「…… ……おう」

63 :
……
………
…………
魔王「…… ……ん。側近」
側近「ん!?」パチ
魔王「起きたか」
側近「うわああああああああ、近い、近い!」ドン!
魔王「お……っと…… ……お前な、主を突き飛ばす奴が居るか」
側近「寝室に忍び込むな!寝起きに野郎の顔ドアップで見せられる身になれ!」
側近「……最悪な目覚めだ。何だよ……」
魔王「ちょっと聞いてくれよ」
側近「……ん?窓の外、暗い……おい!まだ夜じゃネェか!」
魔王「……鴉が……裸で私の上に乗ってたんだよ……」
側近「……目に見えてしょんぼりしないでくれる、気持ち悪い……」
側近「良いじゃないか、良い女じゃん、アレ」
側近「……ちょっと羽生えてるけど」
魔王「私の趣味じゃ無い……」
側近「何、据え膳食っちゃった訳?」
魔王「下品だね、お前は……やってないわ」
側近「んじゃ別にいいじゃねぇか」
魔王「吃驚して突き飛ばして逃げてきてしまったんだ」
魔王「……だから、ここで寝かしてくれ」
側近「はぁ!?」
魔王「……怖くて戻れん」モゾモゾ
側近「ちょ、潜り込んでくんな!おい、魔王様!聞いてんのか!」
魔王「おやすみー」
側近「こらあああああああああああ!」
……
………
…………
鴉「おや、おはよう側近……なんだ、アンタ眠れなかったのかい?」
側近「あ?」
鴉「目の下にクマ……台無しだよ」
側近「いい男が、って定型文が抜けてるぜ」
鴉「必要だったかい?」
側近「…… ……つか、誰の所為だと……」ブツブツ

64 :
スタスタスタ
魔導将軍「鴉、こんな所にいたのか」
鴉「ああ、魔導将軍……どうした?」
魔導将軍「例の大陸の狼共だがな……」
鴉「ああ……あれか。じゃあね、側近」
魔導将軍「側近、この間はお疲れだったな」
鴉「え?」
側近「ああ……アレね」ゲンナリ
側近「思い出したくもない……」
魔導将軍「魔王様に連れられて、生き残りの部隊を殲滅に行ったのだろう」
鴉「ああ!あれアンタだったのかい!」
側近「魔王様は俺の後ろで笑ってただけだがな!」
魔導将軍「あの程度、訓練に丁度良いと思ったんだろう」
魔導将軍「……大活躍だったそうじゃないか?」
側近「……だから、魔王様がなんもしてくんねーから……」
鴉「良いじゃないか、風の魔法使いこなせる様になったんなら」
鴉「魔王様もご安心だろうて」クスクス
側近「スパルタも良いところだぜ……魔物の群れの中に放りこまれたんだからな」
魔導将軍「側近たるもの、魔王様を守れるぐらいじゃないとな」
側近「……あいつは人間と魔族の共存を望んでるんじゃないのか?」
鴉「……そうだねぇ」
魔導将軍「……」
側近「……なんだよ」
鴉「いや……アタシらはね、魔王様の部下だからね」
魔導将軍「魔王様がお決めになられた事ならば、勿論、従うつもりだ」
側近「腹ん中は違う、って顔してやがんぜ、二人とも」
鴉「アンタはどうなんだい、側近」
側近「俺? なんで、俺……」
魔導将軍「お前、元人間だろう。率直に……どう思うのだ?」
側近「…… ……正直に言えば、どうでも良い」
鴉「……」
側近「魔王様の決めた事なら、ってのはアンタ達に同意。だがな……」
魔導将軍「だが?」

65 :
側近「平穏無事、が一番だとは思うぜ。いくら俺が今……魔族だからって」
側近「人間を意味も無くぶち殺してやろうなんて思わネェもん」
魔導将軍「ふむ」
側近「共存して、うまくやってけるならそれが一番だろうが」
側近「……そう、旨くはいかんだろ。簡単には、な」
鴉「…… ……そうだねぇ」
側近「魔王様は、俺にその橋渡し役になって欲しい、みたいな事言ってたけどな」
魔導将軍「それは……」
側近「あ、いっとくけど断ったからな」
鴉「え!?」
側近「時至れば、命令ならば聞いてやる……が、今はそんな時期じゃネェだろ」
側近「……先代の爪痕は深い」
魔導将軍「そう……だな」
魔導将軍「お世継ぎの件も考えねばならんしなぁ」
側近「……魔王の子は魔王、ね」
鴉「そんな、カエルみたいにお言いでないよ……」
側近「つか、アンタら何か用事あったんじゃねぇの」
側近「こんなところで油売ってて良いのかよ」
鴉「ああ、そうだった……行こうか、魔導将軍」
魔導将軍「側近、お前、それとなく魔王様に聞いておいてくれ」
側近「あん?」
魔導将軍「お世継ぎの件だ」
側近「えええええええええええええええええ」
鴉「そうそう。さっさと決めないと、アタシが襲っちまうよ、てね?」クスクス
側近(今更……)
鴉「……何だい、その顔」
側近「何でもねぇよ!じゃあな!」スタスタ
側近(アブねえアブねえ……逃げるが勝ち!)
側近(……ん?)
側近(庭に、誰か…… ……魔王様か)
側近(ん、あっちは…… ……見た事、ネェな)

66 :
魔王「ん……側近!」
側近「おう…… ……えーと、こんにちは?」
??「こんにちは」ニコ
側近(美少女!黒髪に青い瞳……清楚……良いねぇ)
魔王「これは后と言う……丁度良かった、側近」
側近「何だよ」
魔王「私はこれから、鴉と魔導将軍と会議でな」
魔王「后に城の中を案内してやってくれないか」
側近「あ、ああ……別に構わないけど」
后「側近、て言うのね。宜しくお願いします」
側近(……鴉も、見た目だけは綺麗だけど、どっちかって言うと)
側近(肉食動物系……鴉なのに)
側近(癒されるなぁ……)
魔王「では、頼むな、側近」スタスタ
側近「ええ、と……后さん。じゃあ、まず……」
后「あ、側近、見て!蝶々!」
側近「え? ……ああ、本当だ」
后「……取ってくれる?」
側近「ん?ああ、良いよ……」タタタ
后「…… ……」ニッ
側近「よ……、と……ッ」グラッ
側近「!? うわあああああ!?」バタン!
后「あはははは!引っかかった!」クスクス
側近「……へ?」
側近(……あ、草……結んで……)
側近(……ッ 前言撤回!)

67 :
……
………
…………
側近「…… ……」ムクリ
勇者(すうすう)
側近「……夢見悪いなぁ」ガックリ
側近(勇者は、まだ寝てる、か……今、何時だ?)スタスタ
側近(にい、さん……窓は、ここか)シャッ
側近(……小鳥の声が聞こえる。早朝、かな)
側近(目、覚めちまったな……)
勇者「……ん、側近?」
側近「悪い、起こしたか……まだ早いだろう」
勇者「カーテン開けたら眩しいって……良いよ、起きる」
側近「興奮して眠れなかったのか? ……ガキだな」ハハ
勇者「そんなんじゃ無い……女剣士は、朝来るんだろう?」
側近「流石にまだ来ないだろうけどな」
勇者「……あー……飯作るわ。ちょっと早いけど、良いだろう」
側近「おう、悪いな…… ……勇者」
勇者「ん?」
側近「光の剣、持って行けよ」
勇者「え!?」
側近「……城に泊まるつもりだからな。置きっぱなしは不用心」
勇者「あ、ああ……そういう事か……お泊まりか、そっか」
側近「嬉しそうだな」
勇者「そりゃね。このベッドよりふかふかだろうしさ」
側近「……コレも王様が揃えてくれた奴だぜ」
勇者「気分だよ気分!」
側近「……お前、14だって言ってたな」
勇者「ん?ああ……そうだよ」
側近「大きくなったなぁ……」
勇者「やめろよ……なんか恥ずかしい」
勇者「改まって何だ」
側近「……いや」
勇者「ほら、飯食えよ!」

68 :
側近(照れてやんの)プ
勇者「……何笑ってんだよ」
側近「いやいや……」
勇者「弟王子に会うのも久しぶりだな」
側近「そうだなぁ……ああ、そうだ」
側近「女剣士がローブ持ってくるって言ってたから」
側近「ちゃんと被っておけよ。脱ぐなよ」
勇者「大丈夫だって」
側近「……そっか。もう14歳か」
勇者「さっきから何なんだよ」
側近「……勇者」
勇者「だから……」
側近「お前、16になったらこの街を出ろ」
勇者「……え?」
側近「昨日もちらっと話しただろう。自分で仲間を見つけ」
側近「守りたい物を見つけ……そして」
側近「……魔王を、倒せ」
勇者「…… ……」
側近「ずっと話してきたはずだ。お前は……」
勇者「『光に導かれし運命の子』」
側近「……そうだ」
勇者「わかってる……勇者は、魔王を倒す」
側近「…… ……」
勇者「大丈夫だ、側近。俺は、魔王を倒す。この美しい世界を守る為に」
勇者「産まれた……勇者だ」
側近「……拒否権の無い選択をさせてすまん」
勇者「小さい頃からすり込んできたくせに、何言ってんだよ、今更」
側近「魔王……は、強い。だが……」
勇者「……心配するな。俺は勇者だ」
側近「心強い台詞だ……だが、驕るなよ」
勇者「……うん」
コンコン

69 :
側近「来た……かな。はい」
女剣士「勇者様、側近様、失礼致します」カチャ
女剣士「……お迎えに上がりました。どうぞ、このローブを……」
勇者「……ありがとう」
側近「勇者、ちゃんと持ったな?」
勇者「ああ」
女剣士「では、行きましょう。王様方がお待ちです」
……
………
…………
ザワザワ……
勇者「凄い人だな……」
側近「ちゃんとフード被っとけよ」
勇者「大丈夫だ……女剣士は何処に行ったんだ?」
側近「し……ッ ここは大広間、だったな?」
勇者「うん」
側近「……人はどれぐらいいるんだ」
勇者「わかんないよ、一杯……王様は何処から……」
カチャ
盗賊「静まれ! ……待たせたな、皆の者!」
シーン……
勇者「王様だ……!階段の上だ!」
側近「小さい声で!」
盗賊「今日は我が弟王子の為に集まって貰って恐縮致す」
盗賊「生まれつき身体の弱い弟王子も、今日で晴れて12の誕生日を迎える事となった」
盗賊「始まりの街、始まりの大陸に住む全ての者が」
盗賊「今日という日を、街中で祝ってくれると言うのは、母として本当にありがたい」
盗賊「今から丸二日、飲むも食うも自由!無礼講にて楽しんで貰いたい!」
ワアアアアアアアアアアアア!
盗賊「……の、前に。話しておきたい事がある……悪いが、少し時間をくれ」
盗賊「……入れ」
スタスタ……
勇者「あ……鍛冶師様、女剣士……王子と、弟王子が出て来た」

70 :
盗賊「まず、一つ目!」
盗賊「……弟王子も無事、この日まで育った」
盗賊「これをもって、我が国の時期王の座につく者を、弟王子と定める事とする!」
側近「何!?」
勇者「側近、シッ……!」
盗賊「これは王子のたっての願いでもある。同時に、王子を正式に」
盗賊「我が王国騎士団の一員と認める!」
鍛冶師「これだけは心にとめて置いて欲しい」
鍛冶師「王子といえど、騎士団の一騎士に変わりは無い」
鍛冶師「規律通り、目上の者への態度、言葉遣い、全て従うのが道理」
鍛冶師「一騎士として以上も以下の扱いもしない様、お願いするよ」
鍛冶師「王子、良いな?」
王子「はい!宜しくお願い致します!」
勇者「あいつ……ッ内緒、て……これか……!」
盗賊「二つ目!」
盗賊「……勇者様、こちらへ」
勇者「!」
ザワザワ……
ユウシャサマ?ユウシャサマ、キテルノ?
鍛冶師「側近様もご一緒に、どうぞ?」
側近「……勇者、ローブを取れ。それから……手を」
勇者「あ、ああ……」ギュ
キンノカミ……キンノヒトミ……アノコダ……
ユウシャ……ユウシャサマダ……!!
ユウシャサマ、ユウシャサマ!!
側近「盗賊……お前……」
盗賊「悪い様にはしねぇよ?」ニッ
勇者「王様……あの……」
盗賊「久しぶりだな、勇者。光の剣は持ってるか?」
勇者「あ、ああ……」
盗賊「良し……高く掲げて。繰り返して……」

71 :
勇者「……えッ!?そんな事言うの!?」
鍛冶師「大丈夫大丈夫」
女剣士「静まれ!」
シーン……
勇者「え、えっと……『私は、光に導かれし運命の子、勇者だ!』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒す! ……この、光の剣に誓って!』」
ワアアアアアアアアアアアアア!
盗賊「……上出来」ニッ
盗賊「静かに…… しかし、見たとおり、この光の剣は」
盗賊「ボロボロだ……魔王との戦いの凄まじさを物語るが如く!」
側近(……出任せを……いや、出任せでもないか……うーん……)
勇者「き、き、き……ッ きんちょ、した……ッ」
女剣士「深呼吸しな、お疲れさん」
側近「静かにしなさい君達……」ハァ
盗賊「騎士団は南の島に、稀少な鉱石とやらが眠る洞窟を発見した」
盗賊「が、岩礁に囲まれた小さな島の洞窟には、恐ろしい三つ頭の化け物が」
盗賊「居ると言う……そこで」
盗賊「近々、勇者様と我が騎士団で、この洞窟へと向かう事にした!」
鍛冶師「僕の元で鍛冶を学んでいる者も、忙しくなるだろうから」
鍛冶師「そのつもりでね」
側近「……お前、そんな事やってたの」
鍛冶師「魔法剣に触れるチャンス、僕が手放すと思った?」
側近「…… ……」
女剣士「騎士の中で我こそはと思う者!志願する者は三日以内に」
女剣士「志願書を出す様に!中から精鋭を選んで10人、連れて行く!」
女剣士「……王子、お前も行きたければ、私に勝てるぐらいに、強くなれ!」
王子「…… ……はい!」
盗賊「三つ目!最後だ」
盗賊「これに伴い、騎士では無い者、この島の者で無い者に向けて」
盗賊「冒険者登録書を作る事にした。身元の明らかな者であれば」
盗賊「誰でも利用できる様するつもりだ」
ワアアアアアアアアアアアアアア!
鍛冶師「……さて、と。長くなったけれど」

72 :
鍛冶師「今日は楽しんで、飲んで食べて。騒いで」
鍛冶師「良い日を過ごしてくれ。あ、でも……もめ事は勘弁ね?」
ワアアアアアアアアアアア!
ユウシャサマ!ユウシャサマ!
オトウトオウジサマ!オメデトウゴザイマス!
ユウシャサマ、バンザイ!
ジキコクオウ、バンザーイ!
……
………
…………
側近「……もう、食えない」グタ
盗賊「小食だなぁ、側近は……」
鍛冶師「盗賊は二人産んでから、よく食べる様になったよね」
鍛冶師「……僕ももう、満腹」
盗賊「女剣士と、子供達は?」
鍛冶師「寝かしてくるって出て行ったキリだね」
側近「……しかしまぁ、とんでもない企みしてやがったな、お前は」
盗賊「この国に来た時に言ってただろ」
盗賊「……どんどん利用しろ、ってな」
側近「お前もだよ、鍛冶師……」
鍛冶師「さっき言った通り、さ」
側近「チャンスは手放さない、か……」
盗賊「……久しぶりだな。こうやって……話すの」
側近「そう、だな……最後、かもなぁ」
鍛冶師「何言ってんの」
側近「……16になったら、勇者は旅に出させる」
盗賊「伝えたのか」
側近「ああ、今朝な」
盗賊「…… ……そうか」
鍛冶師「君はどうするんだ、側近」
鍛冶師「この城で良ければ、部屋は用意するよ」
盗賊「そうだな。その目じゃ勇者がいなきゃ辛いだろう」

73 :
側近「いや……俺は、魔王様の城へ戻る」
盗賊「……」
鍛冶師「……そう、か」
盗賊「なら、船の手配をさせるよ」
側近「いや……ああ、そう……か」
側近「……転移で戻ろうかと思ったんだがな」
盗賊「お前、それは……!」
側近「流石に、もう無理かもな」
鍛冶師「…… ……」
側近「必要そうならば、頼むよ。そういえば……船長は元気にしてる、のかな?」
盗賊「一回だけ来たな……まだ、勇者が小さい頃だ」
鍛冶師「とびきり上等な布を仕入れた帰りだとか言ってたかな」
側近「使用人ちゃんか……」
盗賊「たまには顔出せよ、とは言っておいたんだがな」
側近「……娼婦ちゃんが居るからなぁ」
鍛冶師「…… ……あそこは、相変わらず綺麗だよ」
側近「そっか……」
側近「……いや、しかし吃驚したぞ」
盗賊「ん? ……ああ」
鍛冶師「土下座されたからなぁ……」
側近「土下座!」
盗賊「ああ……王位は弟王子に譲る。だから僕を騎士団に入れてくれ、ってな」
盗賊「憧れなんだそうだ。女剣士が、さ」
側近「へぇ……まあ、望んだ事するのが、一番良いんだろうけどな」
鍛冶師「なあ、側近」
側近「ん?」
鍛冶師「旅立たせる、ってさ……どうするんだよ」
側近「ああ……丁度良いから、登録所とやらを利用させるかなぁ」
盗賊「まあ、それも勇者の望むとおりに、だ」
側近「…… ……そうだな」
カチャ
女剣士「やっと寝た!」

74 :
盗賊「おう、お疲れ」
女剣士「あの二人、興奮しちまって寝ねぇんだよな」
側近「まあ、仕方無いさ。まだまだ子供だ」
鍛冶師「……その子供を、旅立たせようってんだから、ねぇ」
側近「俺が前魔王様んとこに行ったのもそんなもんだったかな」
盗賊「……随分、時間が経ったんだな」
鍛冶師「そうだよ……もう、側近達がこの街に来て……10年以上だ」
側近「色々あったな。色々……変わったし」
女剣士「…… ……」
盗賊「良し。アタシもそろそろ休むかな。弟王子、放っておけないし」
鍛冶師「そうだね、僕も……女剣士、後宜しくね」
側近「……なぁんか態とらしいねぇ」
盗賊「気のせいだよ。じゃあな」
鍛冶師「おやすみなさい」
カチャ、パタン
女剣士「…… ……」
側近「緊張してんのか?」
女剣士「流石に……そんな事ないさ」
女剣士「アンタが……色々、とか、さ。何か……寂しい事言うから」
側近「さっき、盗賊達には言ったんだけどな」
女剣士「16になったら旅に出す、か? ……勇者に聞いた」
側近「そうか……」
女剣士「良いと思うよ。アタシ達のお膳立て無しで」
女剣士「自分達の手で、道を切り開いて行かなきゃいけないんだ、あの子は」
側近「……ありがとう」
女剣士「側近は……魔王の城に戻るんだろう?」
側近「え?」
女剣士「……そんな気が、して」
側近「ああ……そのつもりだ」
女剣士「そうか…… ……」
側近「……お前、結婚しないの?」
側近「モテるらしいじゃないか。強くて、怖くて美しい女剣士様、てな」
女剣士「お前以外に言われてもなぁ」ハハ
側近「…… ……悪かったな」
女剣士「お前が……悪い訳じゃ無いさ」
女剣士「……こればっかりは仕方無い」
側近「…… ……ああ」
女剣士「傍で、お前と勇者を守れた。アタシはそれで幸せだ」
側近「洞窟には、何時発つんだ」
女剣士「もう暫く先だな。人員の選出もしないといけないしな」
側近「……俺も、行く」
女剣士「え!?」
側近「勘違いすんな、俺は流石にもう戦えないし……手を出すつもりはない」
側近「ま、回復要員だな」
女剣士「……そうか。助かる」

75 :
側近「勇者の回復魔法も、まあ役に立つっちゃ立つけど」
側近「あいつはスタミナと魔力がなぁ」
女剣士「……もう少し、こっちに通わす事は可能か?」
側近「ん?」
女剣士「ああして、街の人達に顔も見せた事だしな」
女剣士「アタシが通って行くにも限界はある。王子と一緒なら」
女剣士「お互いにライバル視してるし、伸びるんじゃないかと思ってな」
側近「ああ、成る程な……そうだな、良いんじゃないか?」
側近「明日にでも、俺から話しておくよ」
女剣士「ああ、頼む…… ……」
側近「…… ……女剣士?」
女剣士「……これで。良かった……んだよな」
側近「…… ……」
女剣士「……部屋まで、送る。もう、休んで、側近」ギュ
側近「……ああ」
……
………
…………
王子「……行った?」
勇者「行った、な」
王子「寝れないよな」
勇者「ああ……良し」ガバ
王子「なあ、もう一回見せてくれよ」
勇者「ん?ああ……何回目だよ」
王子「……綺麗、だな」

76 :
おひるごはーん

77 :
金色のチンゲが数本

78 :
勇者「……光の剣、か」
王子「でもこれ……刃が欠けてるんだよな」
勇者「何でだかは俺も知らないんだ」
勇者「……俺の剣だって、側近はずっと言ってたけど」
勇者「魔法剣だって言うけど、これじゃ……何も出来ない」
王子「だよな……洞窟、行けると良いな……いや」
王子「絶対、行くからな!」
勇者「おう!」
王子「明日から、特訓だ……ッ」
勇者「良いよな、お前は。毎日女剣士に鍛えて貰えて」
王子「勇者もお願いしてみれば良いじゃないか」
勇者「側近が駄目って言うよ、多分……」
王子「俺も一緒に頼んでやるよ!」
勇者「……うん!」
王子「でさ、一緒に洞窟行って……」
王子「絶対、お前の剣、治そうぜ」
王子「お父様は腕の良い鍛冶師だ。大丈夫だ!」
勇者「そう、だな。そうだよな!」
勇者「それで……俺は、絶対に魔王を倒す」
勇者「この国も、全部……守ってやるから」
王子「俺は、騎士団に入っちゃったからついて行けないけど」
王子「お前が魔王を倒しに行ってる間は、この国、俺が守るからさ」
勇者「ああ。約束な!」ガシ
王子「約束だ!」ガシ
……
………
…………
側近「あれ……魔導将軍?」
魔導将軍「……ああ、側近か」フラフラ
側近「どうしたんだよ、お前……フラフラじゃないか」
側近「大丈夫か!?」
魔導将軍「……そっくりその侭返す。何でお前はずぶ濡れなんだ」

79 :
側近「……扉開けたらバケツが振ってきたんだよ」
魔導将軍「そうか……私は、鴉の酒に付き合わされただけだ」
側近「后様、妊娠したって喜んでたからなぁ……」
魔導将軍「悪戯も収まれば良いがな……」
側近「で、魔王様は?」
魔導将軍「寝ていらっしゃるだろう、もう」
側近「もう!?」
魔導将軍「后様の傍から離れないからな」
側近「……何時悪戯仕掛ける暇があるんだ、あの女は……ッ」
魔導将軍「大人しそうな顔して、いやはや……」
側近「しかし、なぁ……鴉のやけ酒も連日だな、ここんとこ」
魔導将軍「案外純情な女だぞ、あれは」
側近「……あれが?」
魔導将軍「……まあ」
側近「裸で、魔王様の上に乗る様な、女が?」
魔導将軍「…… ……忘れてやれって」
側近「無理だ!その所為で俺、魔王様と寝る羽目になったんだぞ!?」
魔導将軍「…… ……お世継ぎが産まれれば、落ち着いてくれると思いたいがな」
側近「本当に、それ、願うよまじで……」
魔導将軍「……」
側近「……」
魔導将軍「……湯でも浴びて、休むとする」スタスタ
側近「おう。俺も……」スタスタ
側近(本気……ねぇ?愛……アイ、ね)
側近(魔王様もあの女の何が良いんだかなぁ……まあ、そりゃ見た目は可愛いけど)ツルッ
側近「……おわッ ……ぶ、ねええええ!」
側近「……なんだ、これ……うわ、酒くさッ」キョロキョロ
側近「あ……ッ 鴉!コラ!」
鴉「あー?」
側近「…… ……目、座ってるし」ハァ

80 :
鴉「コレが、飲まず、にぃ……やってられるかあああああああ!」
側近「ウルセェ……ちょ、酒瓶振り回すな!」
側近「ああ、もう……水と拭くもの持って来るから!そこ動くなよ!」タタタ
鴉「…… ……」ヒック
鴉「魔王さまぁ……」グビ
鴉「…… ……」
タタタ
側近「よ、いしょ……っと」フキフキ
側近「ほら……ああああ、もう。瓶を煽るなって……ほら、飲め、水」
鴉「いらなぁい……」
側近「明日二日酔いでRるぞ、お前……」
鴉「……なーんで、さぁ、后様なのかねぇ」
側近「俺が聞きたいよ……」
鴉「でもさ、アタシ、さぁ……后様、好きなんだよねぇ……困った事に……」
側近「……」
鴉「お世継ぎ、かぁ……おめでたい、けど、サァ……」
側近「好きならさぁ、酒振りまきながら飲むのやめろって」
側近「后様が滑って転んだら、どーすんだ?」
鴉「…… ……御免」
側近「ん」
鴉「……狼将軍、知ってるぅ?」
側近「あの大男か……ああ」
鴉「今日もまた、怒鳴り込んで来てさぁ?」
側近「まだ諦めてないのか……」
鴉「娘を娶れ!側室で良いから!だってー」
鴉「側室だったら、アタシが居るっての!」
側近「おいおいおいおい……」
鴉「……でも、さ。后様しか目にない魔王様だから、アタシ……」
鴉「前より、魔王様が好きなんだよねぇ……」

81 :
側近「さっっっっっぱりわかんねぇ」
鴉「……ねぇ。アタシも……わかんない……」スゥ
側近「おい、鴉? ……寝やがった」
側近「……」ハァ
側近(愛だの、恋だの……ああ、面倒臭い)ズルズルズル
鴉「……うぅん」ゴン
側近「あ…… ……」
鴉「…… ……」
側近「……しゃあねぇな」ダキ
側近「ええっと……鴉の部屋は……」スタスタ
……
………
…………
使用人「ふぅ……出来た」
使い魔「使用人様、何を作ってるんですか?」
使用人「前の魔王様のマントは、勇者様に渡してしまったので」
使用人「……あんまり、上手に出来ませんでしたけど」
使い魔「充分だと思いますよ……余り、どうします?」
使用人「どこかへしまって置いて下さい。また、何かに使います」
コンコン
使用人「はい?」
使い魔「使用人様、沖の方に船が見えます」
使用人「船長さんですね……今回は早かったですね」
使い魔「馬車の用意を致しましょうか?」
使用人「ええ、お願いします。後、ローブを持ってきて下さい」
使い魔「はい」

82 :
使用人(随分……大きくなったんだろうな、娘ちゃん)
使用人(本当なら、城へお招きしたいけれど……)
使用人(…… ……贅沢は、言えない)
使い魔「使用人様、準備が出来ました」
使用人「……ローブを此方へ」
使い魔「はい」
使用人「では……行きましょうか。お願い致しますね」
……
………
…………
船長「よう、久しぶりだな」
使用人「何時もすみません、船長さん」
船長「ほらよ、上等な布……何回目だ?」
使用人「10回目、ですかね……もう、10年です」
船長「まだ作ってんのか、カーテン……」
使用人「この前のは魔王様のマントを作りましたよ」
使用人「城中のカーテン、作っちゃいましたからね」
船長「……他に何か、やる事ないのか」
使用人「庭もお花で一杯になってしまいましたからね……」
船長「魔王は……どうだ?」
使用人「何も……ずっと、眠られて居ますよ」
船長「そうか……」
使用人「娘ちゃん、大きくなったでしょうね」
船長「ああ……もうすぐ、15になる」
使用人「そうですか……魔法使いさんは?」
船長「あいつも元気にしてるよ」
使用人「やはり、まだ船に……?」
船長「ああ……死んだら、女海賊と同じように、水葬にしてくれ、ってな」
船長「……最近はそんな事ばっかいってら」
船長「だからジジィ呼ばわりされんだよ。俺より若いのにな」

83 :
使用人「船長さんも……白髪、増えましたね」
船長「一年に一回ぐらいだからなぁ、此処に来るのも……」
使用人「勇者様は……」
船長「それも、変わりないさ。一度……お前さんが、一番最初に」
船長「布を頼んだ時に始まりの城に寄ったきりだ。会ってネェ」
使用人「そうですか……」
船長「だが、そろそろ……娘も15歳だ。勇者も同じぐらいだろう」
船長「噂話は耳に入ってくるしな……一度、寄ろうと思ってる」
使用人「そうですか……」
船長「……悪いな。無理言って」
使用人「何が、です?」
船長「顔、隠してくれ、なんてさ」
使用人「……いいえ。娘ちゃんの事とか、考えれば当然です」
船長「しかしまぁ、お前さんはやっぱり……変わらない、んだな」
船長「声も……その侭だ」
使用人「……立たせっぱなし、も気が引けます」
使用人「手短に、お聞かせ願えますか、その……噂話」
船長「ああ……そうだな。あんまり船も待たせられネェ」

84 :
おむかえー!

85 :
頼むから、ハッピーエンドにしてほしい

86 :
これが始まりの物語だとしたらどう足掻いてもハッピーエンドにはならないよな
面白いんだけどいつも基本鬱エンドだし…
たまにはみんな幸せにしてやってくれよBBA…

87 :
美しい世界を守るって意味ではハッピーエンドな気がするけど…
魔王側近船長は犠牲になるんだろうなぁ

88 :
トゥルーエンドじゃなくていいからハッピーエンド見せてほしいw

89 :
かまってちゃんじゃなかったら最高なんだが

90 :
飯やお迎え報告をかまってちゃんだと思うのは2chに脳みそ毒されすぎじゃね?

91 :
だいたい飯やお迎えだって、「ご飯(だから更新止まるよ)」「お迎え(だから更新止まるよ)」
って意味で言ってるだけだしな
>>89はこれで「ちと休みます」とかだと「理由言えよ」ってなるんじゃねーの?

92 :
書けない日でもわざわざ報告くれるって
すっごいありがたいんだけどなぁ。

93 :
いやまて>>89は俺のことを言っているのかもしれない

94 :
何も言わずに行けってことでしょ
BBAとか、どーでもいいといえばどーでもいいしな

95 :
おはよう!夕方だけどwww
少しだけどのんびりー

96 :
船長「……やっぱり、魔石の流通はもう頭打ちだな」
使用人「以前から仰っていたとおり、ですか」
船長「ああ。ここ5.6年……制作すらしてないんじゃないかな」
使用人「そうですか……」
船長「港街が出来た当初はな……良い収入源になったんだろうが」
船長「未だに需要があるのは、魔除けの石ぐらいのもんみたいだな」
船長「とは言っても……もう、神父さんも亡くなって随分立つ」
船長「あの教会にはまだ女神官が居るし、頑張って作ってるみたいだが……」
使用人「そちらも以前言っていましたね。とんでもない高額になっていると」
船長「ああ……質はな。正直……神父さんの足下に及ばネェ。どれもこれも」
船長「数こそ出来てはいるが……」
使用人「……他で、充分に生活が賄えるのならば、仕方無いでしょう」
船長「まあ、な……復活の見込みはネェな」
使用人「……些か、寂しい気はします、が」
船長「後、どこの街へ行っても勇者の話題で持ちきりだ」
使用人「え?」
船長「丁度一年ぐらい前か……俺が此処へ来た後すぐぐらいだったと思うが」
船長「盗賊が、街に冒険者なんとかって、施設?を作ったらしい」
使用人「施設?」
船長「ああ。そこで冒険者として登録して置けば、勇者の目にもとまるかも、ってな」
船長「……ま、目で見た訳じゃ無い。詳しくはわからんが」
船長「後……お前は、知ってたよな。あの……南の島、だ」
使用人「側近様が貰った古い地図に載っていたあれですね」
使用人「魔法の鉱石がどうとか……」
船長「ああ……あの島に、騎士団を派遣したらしいぜ」
使用人「騎士団……女剣士さんが騎士団長に就任された、と言う……あれですか」
使用人「では、国から……ですか?」
船長「噂では、な……俺も詳しくは解らん。だが」
船長「……確認も兼ねて、これから始まりの街へ行ってこようと思う」
使用人「そうですか……」
船長「また、一年後ぐらいになっちまうがな」
使用人「構いませんよ。私は……時間に縛られる身では無いですし」
船長「……勇者の剣、だろうな」
使用人「それしか考えられないでしょう。鍛冶師さんもいらっしゃいますし、ね」
船長「あいつは……その話題になると目の色が変わるからな」
使用人「頼もしい限りですよ」
使用人「……私は、命があると言うだけで何もできません」
船長「……そんな事はないさ」

97 :
使用人「もし……勇者の剣の修理が叶っていれば」
使用人「それこそ、世界は……その話で持ちきりなのでしょうね」
船長「箝口令が敷かれていなければ、だが……そうだろうな」
船長「インキュバスの野郎が流した、魔王の進攻の話にプラスして」
船長「勇者の存在が明らかになったんだ」
船長「……旅立ちを心待ちにしていると言う奴も多い」
使用人「旅立ち……ですか」
船長「ああ……『中身』が『器』をR、だったか?」
使用人「…… ……」
船長「今のところそんなもんだな。今度戻って来れる時には」
船長「もう少しマシな話をしてやれると思うぜ」
使用人「……ありがとうございます」
船長「また何かあれば、鳥を寄越せよ」
使用人「ええ、遠慮無く……それでは、お気をつけて」
船長「おう……元気で、な」スタスタ
使用人「…… ……」クル……スタスタ
使い魔「戻られますか?」
使用人「ええ。戻ったら……全員を連れて庭に避難してください」
使い魔「やはり……試されるのですか」
使用人「私の力で何処まで出来るか解りませんが……」
使用人「折角、船長さんに布を届けて頂いたのです」
使い魔「…… ……出します」
カラカラ……
使用人(書庫にあった本……古い、魔導書)
使用人(防護の術等……私に出来るか解らない。だけど……)
使用人(私にも……何か、出来る事があるはず……!!)

98 :
使用人(一年に一回の定期便。10年も掛かってしまった)
使用人(……否、まだ10年と言うべきだろうか)
使用人(部屋中に、極上の絹で織られた布を広げ)
使用人(風の壁を張るイメージで……)ブツブツ
使い魔「…… ……使用人様?」
使用人(何度も、イメージトレーニングした。大丈夫な筈……)
使い魔「…… ……」フゥ
使用人(風の防壁……側近様が、居れば。否……全盛の頃のお力であられれば)
使用人(力を借りられただろう……だけど)
使用人(まだ城に居たとしたら、これすら、必要無かっただろう)
使用人「……魔王様は、私が、守ります」
使用人「例え……それが勇者様と、敵対する事であっても……!」
使用人(否……敵対、しなければならない)
使用人(確実に、『器』を倒す為……!)
使用人「……魔王様の、望みは……全て、私の望みです」
使用人「……ッ 魔王様……!!」
使用人(……これが『寂しい』と言う感情なんだろうか)
使用人(一年に一度。昔の知人と話す……これ、が)
使用人(寂寥感……)
使い魔「使用人様、到着しますよ」
使用人「……ありがとうございます。馬車を止めたら、その侭皆を連れて避難してください」
使い魔「し、しかし……本当に大丈夫なのですか」
使用人「……大丈夫です。私は、魔王様を残してRませんから」スタスタ
使用人「…… ……」スタスタ…… ……カチャ
使用人(玉座の間……中心は、此処)ブツブツ
使用人「……『風よ。広がりて防壁と為せ。美しき織物に宿り、生より生み出されたそれに絡まりて』」
使用人「『守れ! ……風よ!』」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
使用人「……ッ グッ」
使用人(立って、いられない……ッ ……し、っぱい……し……!?)
シュゥウン……
使用人「…… ……」
使用人(……収まった……成功した?)

99 :
使用人「…… ……」
使用人(変化が解らない……けれど)
使用人「…… ……」サワサワ
使用人(カーテン、はカーテン、か……)
使用人「……魔力を消費しただけ、で無ければ良いですが」ハァ
使用人「…… ……」
使用人(……魔王様にも、変わりない……ですよね)ホッ
使い魔「あ、あの……使用人様……」タタタ
使用人「あ……! 庭に出なさいと言ったでしょう……!」
使い魔「……大丈夫です。皆、使用人様を心配していましたし……」
使い魔「成功、された……ん、ですよね?」
使用人「だと……良いんですけど」
使い魔「そうですか…… 良かったです」
使用人「何かあったらどうするんですか……もう……」
使い魔「僕たちでも、使用人様の盾ぐらいにはなれますから」
使用人「そんな……!」
使い魔「ご無事で、良かったです」
使い魔「……魔王様を大事に思われる使用人様の事、皆……大好きですから」
使用人「あ……ありがとう、ございます……」
使い魔「……ご無事で良かったです。では、食事の準備をして参りますね」スタスタ
使用人「……」
使用人(……寂しいとか、思ってご免なさい)
……
………
…………
盗賊「船長! ……お前、又太ったな!」
船長「……開口一番それかよ、王様よ」ハァ
鍛冶師「まあ、立派なお腹に違いは無いよね」

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