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2013年17アニキャラ総合39: あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part321 (311) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part321


1 :2013/07/21 〜 最終レス :2013/09/21
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part320
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1368032834/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!


     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。


.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

2 :
1>>乙
ルイズとサイトでオーバーレイ! ZEXALを召喚

3 :
ゼロの使い魔って平民でも突然魔法の力が発現したりしないの

4 :
>>3
原作ではそういった描写はない。
先祖にメイジを持つ平民がそれを知らずにいたら、素質を持った平民がいる可能性はあるかもしれないが突然魔法を使えるようになるというのはない。
理由は、魔法を使うのに絶対必要な杖は、持ち主の専用となるためにまず契約をおこなって、それから時間をかけてなじませていかないと魔法を使えないという設定があるため。

5 :
ゼロ魔の魔法って錬金だけ便利であとは弱いといわれることが多い

6 :
家族が優秀な魔法使いなのに、魔法が使えなくて人生が悲惨なルイズ
母親が優秀な超能力者だったために破滅に追い込まれるも、自分が更に優秀な超能力者だったため破滅する貞子
井戸の中に落とされた貞子をルイズが召喚して助け出すのもありだよな!

7 :
貞子召喚はまとめにあったよね。貞子は救われるがルイズは…
…まぁホラー物で全員ハッピーってのはありえないだろうからしょうがないんだろうけど。

8 :
まとめにあったのか……
見つけられなかった

9 :
こんばんは。テレビだったら1クールのシメになる13話が完成したので、投下します。
開始は22:55から。

10 :
支援します
伝説宇宙怪獣登場
ダッタライイナー

11 :
ウルトラマンゼロの使い魔
第十三話「ミラーナイト参上!」
分身宇宙人ガッツ星人
極悪宇宙人テンペラー星人
暗殺宇宙人ナックル星人 登場
 他世界宇宙、マルチバースというものをご存じだろうか。我々が暮らす星、地球が宇宙に存在するのは常識だが、
その宇宙も一つだけではない。宇宙に地球以外の星が数多にあるように、宇宙も無数に存在する。
この多数の宇宙を内包する超空間がマルチバースと呼ばれている。
 本来なら滅多なことがない限り干渉し合うことのない別宇宙だが、ある時、未だ謎の多い怪獣墓場から
違う宇宙へと迷い込んだ存在が現れた。その存在――邪悪なM78星雲人、ベリアルは別宇宙、アナザースペースを
たちまち蹂躙し、巨大帝国を築き上げて恐怖で支配した。ベリアルの力はアナザースペースに生きる者の力を
超越していたため、外来種が在来種を駆逐してしまうように、その侵略は歯止めが掛からなかったのだ。
 アナザースペース最盛の惑星、エスメラルダを乗っ取り、皇帝を自称するようになったベリアルは、
自分が宇宙間を漂流する羽目になった最大の原因、故郷M78星雲に復讐をするため、エスメラルダに存在する
莫大なエネルギーを秘めたエメラル鉱石を悪用して宇宙の壁を越える侵略兵器を造り出し、元いた宇宙へと送った。
そしてその侵略兵器の襲来により、別宇宙での事態を察したM78星雲の光の国は、一人の若き勇敢な戦士を
アナザースペースへ旅立たせた。これが、ウルトラマンゼロとアナザースペースに生きる者たちとの出逢いである。
 ゼロは恐ろしいほどに力を強めてしまったベリアルとその軍団に何度も苦戦しながらも、
結果的にはその悪しき野望を粉砕した。しかしベリアル軍団が全滅した訳ではなく、
アナザースペースには悪の種が残っていた。そのためゼロはアナザースペースの平和を護るため、
故郷の宇宙のものとは違う新たな宇宙警備隊を結成した。
 その新宇宙警備隊、ウルティメイトフォースゼロを構成する5人のメンバーの一人が、
元よりエスメラルダを守護していた巨人の戦士。鏡面世界に存在する鏡の星の二次元人と
エスメラルダ人のハーフであり、たった今ゼロを救うためにアルビオンに降り立った鏡の騎士、
ミラーナイトである!
 唐突にニューカッスル城前に出現してナックル星人、ガッツ星人、テンペラー星人の三大宇宙人を退けた
ミラーナイトの姿に、ルイズたちも侵略者たちも釘づけになっていた。
「な、何だあの巨人は!? 怪人どもを攻撃したが……僕たちの味方なのか!?」
「ルイズが嵌めてる指輪から出てきたように見えたんだけど……それにしても、ほれぼれするほど美しい姿ね……」
 ミラーナイトの素性を知る由もないギーシュが騒ぎ、キュルケはその麗しき容姿に見とれていた。
そんな中、宇宙人たちの会話の内容が聞こえていたルイズは、呆然としながらつぶやく。
「あれが、あの人が、ミラーナイト……ゼロの言ってた、仲間……!」
 一方、ナックル星人たち宇宙人連合は、ミラーナイトの存在におののいていた。
『ミラーナイト……ウルティメイトフォースゼロだとぉ!?』
『何ということだ。ウルトラマンゼロにこんな仲間がいたとは……! しかも、このタイミングで現れるとは……!』
 宇宙人連合がやってきたのは、ウルトラの星が存在するM78ワールド。彼らがアナザースペースの住人である
ミラーナイトやウルティメイトフォースゼロのことを知らないのは、当然であった。
 そして当のミラーナイトは、息も絶え絶えの状態で倒れ伏しているゼロに手を貸して、助け起こした。
『ミラーナイト……! 助かったぜ……!』
『随分探しましたよ。遅くなって申し訳ありません。今、エネルギーを分け与えます』
 ミラーナイトが右手をゼロのカラータイマーにかざすと、手の平からエネルギーが放出され、
カラータイマーに吸い込まれた。そのお陰で今にも消えそうだったカラータイマーが青色に戻り、
ダメージはまだ残りながらもゼロに活力が戻った。

12 :
『いよっしゃぁッ! こうなったからには、さっきまでのようには行かないぜ、汚ねぇ侵略者ども!』
『もちろん、私もともに戦います。さあ、どこからでも掛かってくるといい、卑怯者たちめ!』
 そうして、朝陽が完全に昇り切った時には、ゼロとミラーナイトの二大戦士が並び立って堂々と侵略者と対峙した。
 ゼロに加勢したミラーナイトに敵愾心を向けたのは、テンペラー星人だ。
『フハハハ! 面白い! 元々死にかけの奴をいたぶるのは趣味ではないのだ! ウルトラマンゼロの仲間とやら、
このテンペラー星人が仕留めてくれるわぁッ!』
 テンペラー星人が足音を踏み鳴らして突進してくると、ミラーナイトはゼロから離れて
一対一の勝負へ持ち込むことにした。
『奴はテンペラーに任せるとしよう。我々は予定通りウルトラマンゼロを討つ! エネルギーが回復したとはいえ、
さっきまで死にかけだったのだ。このまま押し切るぞ!』
『了解した! このガッツ星人の真の力を見せつけてくれよう!』
『へッ! 来やがれ!』
 ナックル星人とガッツ星人は依然とゼロを狙う。ゼロは下唇をぬぐうと、二人の敵を同時に迎え撃つことになった。
 ゼロとミラーナイトが宇宙人とぶつかり合う間に、キュルケが改めてルイズに『レビテーション』を掛けて引き寄せた。
「ほらルイズ、モタモタしてないで、下がるわよ。ここにいたんじゃ、流れ弾で吹っ飛ばされるわよ」
「で、でも、ゼロが戦ってるのに!」
 自分の言うことに従おうとしないルイズに、キュルケは呆れたように息を吐いた。
「何言ってるのよ。あんたや私たちがあの戦いに割り込んで、何が出来るっていうの? 文字通り、
足手纏いになるのがオチだわ」
 キュルケの言う通りだとルイズは分かったので、悔しく思いながらも、ぐっと言葉を呑み込んだ。
「ほら、分かったら避難するわよ。歩くくらいのことは、自分でしてよね」
「……」
 ルイズは無言で、キュルケに従って後退する。彼女の様子が気に掛かったキュルケだが、
ボヤボヤしていたら本当に危険なので、さっさと退避していった。
(ゼロ……どうか、頑張って……)
 そしてルイズは、ゼロが無事に逆転勝利することを祈ることしか出来ずに、キュルケの後についていった。
『せいッ! はッ!』
 ミラーナイトはテンペラー星人に肉薄し、その身体にチョップやキックを入れる。しかし、
対するテンペラー星人は丸でびくともしない。
『何だぁ!? それが攻撃のつもりか! 片腹痛いわぁッ!』
『ぐッ!?』
 テンペラー星人がミラーナイトの顎を殴り飛ばす。弓なりに宙を舞うミラーナイトだが、
空中で身体を反らすと両手の甲よりミラーナイフを放つ。
『ふんッ! こんなもの効かぬわッ!』
 だが連射した光刃も、テンペラー星人の肉体に軽々と受け止められる。
『シルバークロス!』
 着地したミラーナイトはクロスした両腕を振るい、十字の巨大な光刃を発射した。彼の十八番である
強力な必殺技、シルバークロスだ。
『ぬるいわぁぁッ!』
 だがこれも、テンペラー星人の肉体を突き破ることが出来ず、粉々に砕け散ってしまった。
『むッ……!』
『ぐはははははははは! 脆弱! これが貴様の全力か!? とんだ期待外れだなぁ!』
 テンペラー星人の身体に傷も負わすことが出来ないミラーナイトを、テンペラー星人が見下して嘲笑する。

13 :
しえん

14 :
 ミラーナイトは鏡に関わる、他の者には真似することの出来ないような特殊な能力を持っている。
しかしそのためか、本人の基礎的な攻撃力は優れているとは言えないのだ。その上テンペラー星人は
宇宙きっての武闘派種族。地球で最初に記録された個体は、スーパーパワーを誇るウルトラマンタロウの
必殺技が直撃しても何ともなかったほどの防御力を見せつけたのだ。
『わしに手傷を負わせられないのでは、貴様には到底勝ち目などないッ! とっとと引っ込んでもらおうかぁ!!』
『くッ!』
 吠えたテンペラー星人が両手よりビームウィップを伸ばし、それの乱打を見舞ってくる。
ミラーナイトは鏡のバリアー、ディフェンスミラーでその攻撃を防ぐしかなかった。
 また、ミラーナイトによってエネルギーが回復したウルトラマンゼロも、ガッツ星人とナックル星人に
二人掛かりで攻撃されてまた窮地に陥っていた。
『食らえッ!』
『ぐああッ! くッ!』
 ガッツ星人のアイビームを食らって、苦しむゼロ。素早くゼロスラッガーを飛ばして反撃するが、
ガッツ星人は分身してかわした上に背後へ回り込む。
『くそ……! ちょこまか動き回る上に増えやがって……! どれが本物だ……?』
 ゼロはガッツ星人の分身と高速移動を駆使した幻惑戦法に惑わされていた。そして逡巡していると、
ナックル星人が飛び掛かってくる。
『隙ありぃッ!』
『ぐお!?』
 背後からヤクザキックを食らって倒れかける。すぐに後ろ蹴りを打つが、その時にはナックル星人は下がっており、
代わりに正面からガッツ星人の分身からの破壊光線が飛んでくる。
『ぐああああ!』
 手が出せずに追い詰められるゼロを、ナックル星人とガッツ星人が嗤う。
『クハハハハハハ! 先ほどは焦らされたが、何のことはない。貴様の戦闘データは握っているのだ! 
エネルギーが回復した程度では、こちらの優位は崩れん!』
『貴様の父親、ウルトラセブンが結局は破れなかった、我がガッツ星人の分身戦法! これがある以上、
貴様に勝機など微塵もないのだぁ!』
 両者とも既に勝った気になって豪語する。だが、それに対してゼロは、
『ふッ……!』
 冷笑を見せた。
『ん!? 何がおかしい!?』
『こいつ、とうとうおかしくなったか!?』
 想定外の反応に硬直したガッツ星人とナックル星人に、ゼロは下唇をぬぐいながら言ってのける。
『戦闘データを握った……何を勘違いしてやがる。俺がいつ全ての力をお前らに見せたと言ったんだ?』
『何!? まさか……!』
『俺の底は、ブラックホールよりも深いんだぜ! はぁぁぁッ!』
 ゼロが掛け声を上げると、ウルティメイトブレスレットと全身が青く光り輝き、たちまち青い体色へと変身した!
『ルナミラクルゼロ!』
 変身を完了したゼロが、自身のことをそう宣言した。
「あの姿は!」
 離れた場所から戦いの行く末を見守っていたルイズは、ゼロの変身を目の当たりにして、
アルビオンに到着するまでの空路で目にしたストロングコロナゼロを思い出した。
しかし、今のゼロの姿はあの時のものとも違う。

15 :
「まだ能力を隠し持ってたのね……」
 ゼロの変身に勝機を見出しながらも、ルイズは同時に、いくつも力を持っているゼロのことを激しく羨んだ。
(わたしには、見てるだけしか出来ないのに……)
 それでも戦いから目を離さずに、ゼロたちの命運を見届けることに決めた。
『食らえぇぇぇぇぇぇぇ!』
 ミラーナイトとの戦いを続けているテンペラー星人は、最大の攻撃であるウルトラ兄弟必殺光線を発射した。
破壊光線にもなる強力な光線技だが、ミラーナイトは軽やかに跳躍し、テンペラー星人の頭上を跳び越えて
背後に回った。
『ちぃッ! すばしっこさだけは一人前だな!』
『はぁぁッ!』
 テンペラー星人が毒づいて振り返ったのと同時に、ミラーナイトが十字型の鏡を大量に作り出し、
それでテンペラー星人の周囲を取り囲んだ。
『何ぃ!? 鏡だとぉ!?』
『シルバー……クロスッ!』
 そしてミラーナイトは、開いている上部からシルバークロスを投げ込み、テンペラー星人にぶつけさせた。
『ぬぅんッ!? 馬鹿が! 効かないというのが分からんのか!』
 その一撃はテンペラー星人の身体に弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。……と思いきや、
周りの鏡に反射されてテンペラー星人へと戻ってきた。
『何!?』
 戻ってきたシルバークロスはまた弾かれるが、360度を覆っている鏡に反射されて、再びテンペラー星人へ戻ってくる。
それを何度も繰り返し、様々な方向からテンペラー星人に激突する。
『ふんッ! 下らん小細工をしおって!』
 テンペラー星人は縦横無尽に飛び回るシルバークロスを捉えられないが、所詮ダメージは受けないと考えて、
身をかがめて受け続ける。ミラーナイトはその様子を上から覗き込んで、シルバークロスを目で追う。
『ククク……そろそろ反撃と行こうか……!』
 しばらく受け続けた後に、シルバークロスの速度が弱まってきたと判断して背を伸ばすテンペラー星人。
そしてウルトラ兄弟必殺光線の発射準備に入ったその時、
『ぐはぁッ!?』
 背後から飛んできたシルバークロスが、肩に突き刺さって前面へと貫通した。
『馬鹿な……何故ぇ……!?』
 ミラーナイトの攻撃は自分には全く通用しなかったはず。それなのにどうして……。
その理由を薄れゆく意識の中で考えたテンペラー星人は、一つだけ可能性に行き着いた。
『まさか、同じ場所に……正確にぃ……!』
 シルバークロスは縦横無尽に飛び回っていると見せかけて、その実テンペラー星人の肉体の一箇所にのみ
集中して当たり続けていたのだ。したたり続ける水滴がいつかは石に穴を開けるように、わずかな傷しか与えられない
小さな攻撃も連続すればどんな鎧も貫く。
 これは、かつてミラーナイトの出身地である宇宙で戦った、テンペラー星人と同じように
鋼の強度の肉体であらゆる攻撃をはね返した強敵アイアロンを破ったのと同じ戦法である。
ミラーナイトは鏡の能力だけでなく、敵の虚を突いてそのまま打ち崩すトリッキーな戦い方と
それをなし遂げる抜きん出た技巧と頭脳も持ち味としているのだ。
『脆弱なのはお前の方だ!』
 ミラーナイトが言い渡すと、バッタリと倒れたテンペラー星人は跡形もなく爆散した。
 ガッツ星人とナックル星人は、ハルケギニアでは今まで見せたことのなかった変身を遂に見せたゼロに、
驚愕を禁じえなかった。
『ル、ルナミラクルゼロだとぉ!?』
『おのれ……! まだ能力を秘めていたのか……!』
 普段とは異なり、どこか冷静で神秘的な雰囲気を醸し出しつつたたずむゼロを前に動揺していた
ガッツ星人だが、すぐに気を取り直す。
『ふんッ! こけおどしだ! たとえどんな姿になろうと、我が分身戦法は破れはしないわぁッ!』

16 :
 自らに言い聞かせるように叫ぶと、ゼロを取り囲む全ての分身から光線を発射する。
 しかしゼロは、ガッツ星人並みの滑るような高速移動を行い、光線を全て回避した。
『な、何だとぉ!?』
『速いッ! 速すぎる!』
 ガッツ星人もナックル星人もゼロの動きを目で追うことが出来ず、先ほどまでとは真逆に翻弄される。
『……はッ!?』
 ナックル星人が気づいた時には、自身のすぐ横にゼロがいて手の平を差し向けていた。
『レボリウムスマッシュ!』
『うがぁぁぁー!?』
 手の平から発せられた衝撃波によって、ナックル星人が弧を描いて吹き飛ばされた。
『ナックル! おのれぇッ!』
 ガッツ星人は更に分身を作り出し、ゼロに対抗しようとする。そうするとゼロは、ガッツ星人の動きを
集中して観察し、分身の一つに腕を向ける。
「セアッ!」
 その腕からパルス状の光線が発射され、ガッツ星人に当たるとその身体を麻痺させる。
同時に分身が全て消え去った。
『がぁッ!? な、何だとぅ!?』
 ガッツ星人は絶対の自信を持つ分身能力が破られたことに激しく狼狽する。しかし、分身が破られたのは
歴史上これが初めてではない。ウルトラマンメビウスもメビュームピンガーという光線技でガッツ星人の分身を攻略している。
今の攻撃はそれと同等の技なのだ。
 そしてゼロはふた振りのゼロスラッガーを飛ばすと、それがゼロの前で円を描くように動きつつ六枚に増えた!
『ミラクルゼロスラッガー!』
 増殖したゼロスラッガーは、身動きの取れないでいるガッツ星人を瞬く間に切り裂く!
『ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 ガッツ星人は断末魔を上げ、完全に爆死した。
『ガッツ!! ち、ちくしょうがぁ……!』
 ガッツ星人が倒されたことでうろたえるナックル星人。ちょうどその時にテンペラー星人も倒され、
ミラーナイトがゼロの隣に着地する。
『なッ、くッ……! お、覚えてろッ! このままじゃすまさんぞぉ!』
 最早勝ち目はなくなったことを悟ったナックル星人は、背を向けるとなりふり構わずに
アルビオンの奥地へ向けて逃走していった。
『待て! ……ぐッ!』
 追いかけようとしたゼロだが、一歩踏み出すとカラータイマーが再び鳴り出して倒れかける。
そのためミラーナイトが咄嗟に支えた。
『ゼロ、今の状態での深追いは危険です。悔しいですが、今回のところはあなたが助かっただけよしとしましょう。
今のあなたの命は、あなただけのものではないようですし』
『そうだな……その通りだ。すまねぇ』
 ミラーナイトは、ゼロが才人と一体化していることを早くも見抜いていた。冷静さを取り戻したゼロは、
ミラーナイトの忠告に感謝する。
『私がいない間のことは、後ほど伺います。だから今は、あの可愛らしいお嬢さん方の下へと戻ってはどうでしょうか?』
『ああ、そうするぜ。……ありがとな、ミラーナイト』
『あなたのためでしたら、これくらい』
 最後にそう言葉を交わした二人は、空に飛び上がってニューカッスルを後にした。
 ゼロとミラーナイトが立ち去った後で、キュルケやギーシュがほっと息を吐いた。
「はぁ〜……一時はもうダメかと思ったけど、ゼロが助かってほんと良かったわぁ。あの急に出てきた
緑色の巨人って、やっぱりゼロの仲間なのかしら?」
「そうに違いないだろうね。ただ、敵が一人だけ逃げていったのが気に掛かるが……」
「いいじゃない、あんな図体だけデカい臆病者のことなんか。寄ってたかってゼロをいたぶってたくせに、
一人になった途端にすごい勢いで逃げていったわよ」

17 :
 キュルケがナックル星人の無様な姿を思い出して笑いつつ、ルイズとの三人で元いた礼拝堂の前まで戻っていく。
するとちょうどその時、才人がフラフラとおぼつかない足取りで姿を現した。
「! サイト!」
 ルイズたちは慌てて駆け寄り、ギーシュが才人を支える。
「ダーリン! もう、どこ行ってたの! どこにも姿がなくて心配だったのよ!」
「君、ひどく衰弱してるじゃないか! もしやさっきのウチュウ人にやれれたのかい!?」
「ま、まぁ、そんなとこかな……けど、ゼロに助けられたから、心配しなくても……」
「あぁもう、しゃべらなくていいよ。今は安静にしていたまえ」
 途切れ途切れに語る才人をギーシュが制止した時、遠くから軍隊の鬨の声が聞こえてきた。
「! いけない、貴族派の兵隊だわ! 宇宙人がいなくなったから、改めてニューカッスルを攻めるつもりね! 
早く脱出しないと!」
 ルイズの台詞に、キュルケが聞き返す。
「何が何だかよく分からないんだけど……ワルド子爵はどこ行っちゃったの?」
「ワルドは……詳しいことは後で説明するわ。任務は一応達成したから、早く逃げましょう。
サイトも休ませないと」
「分かったわ。早く戻らないと、待たせてるタバサに悪いしね」
 キュルケとギーシュ、才人がヴェルダンデの開けた穴に潜ろうとするが、ルイズだけは
彼らに少しの間待ってもらい、斃れたウェールズの下へ向かう。
 この時には、ウェールズは完全に事切れていた。
「皇太子……お守り出来なくて、申し訳ございません」
 ルイズはひと言謝り黙祷を捧げてから、せめてアンリエッタに形見を持っていこうと、
指に嵌まっている風のルビーを外して懐にしまった。
「ルイズ、早く!」
 キュルケの急かす声で、ルイズは最後に一礼した後、キュルケたちに続いて礼拝堂から脱出した。
 ヴェルダンデの掘った穴はアルビオン大陸の真下に通じており、ルイズたちは帰りを待っていた
シルフィードに受け止めると、すぐに魔法学院に向けて羽ばたいた。
「サイト……」
 ルイズはシルフィードの尻尾の付け根の辺りで、体力の限界が来て気を失った才人の頭を膝に乗せている。
他の三人は、シルフィードの背びれを背もたれにして前の方に腰掛けていた。
「娘っ子、妙に相棒に優しいじゃねえか。膝枕までしてよ」
「うるさいわね……わたしだって、労をねぎらうくらいのことはするわよ」
 才人に代わってルイズが背負っているデルフリンガーがからかうと、ルイズは小さく言い返した。
普段なら少しからかわれただけで大袈裟なほどに反応するのだが、今は彼女の心の中に様々な思いが駆け巡っていて、
そんな気分にならなかった。
 たった半日にも満たない時間の中で、たくさんのことがあった。まさかのワルドの裏切り。
かつて心から憧れた人の背信は、非常にショックだった。そして才人のお陰で一時は無事に
助けられたと思ったウェールズの死。アンリエッタに何と言えばいいのか……。極めつけは、
無敵の存在と信じていたウルトラマンゼロの窮地だ。あの時は、心が絶望で塗り尽くされかけた。
 何よりルイズにとってショックだったのは、自分が何の力にもなれなかったことだった。
ゼロは結局、ミラーナイトという彼の仲間が救った。自分は、今回も見ていただけ。
才人も必死になってワルドと戦ったのに、自分は護られてばかりだ。
(サイト……)
 ルイズは膝の上の才人の顔を、その中のゼロを見つめる。その顔を見ていると、妙な胸の高鳴りを覚えるのだが、
今はそれ以上に無力感が湧き上がってくる。悔しい思いは「ゼロのルイズ」と呼ばれる度に味わってきたが、
今この瞬間に感じる辛さはそれとは比べものにならないほど大きかった。
(わたしに出来ることは、何一つないっていうの? 本当に『ゼロ』のルイズでしかないの? 
……嫌。わたしにも何か出来ることが欲しい。……サイトとゼロのために……力が、欲しい……)
 ルイズは人生で一番、力の渇望を覚えていた。すると、彼女の指に嵌まる『水のルビー』が、
キラリと、ミラーナイトが出現した際の光とはまた違う輝き方をした。

18 :
以上で終了です。
>>10
申し訳ありませんが、某新羅の登場の予定は現在のところ、全くありません……。
期待に応えられずすみません。
次回は一旦本筋から外れた、幕間というか、小話のようなものの予定です。


>「俺の底は、ブラックホールよりも深いんだぜ!」

19 :

シラリーとコダラーのコンビは反則。グレートよく勝てたよ

20 :
最近また規制が強くなったなあ。PCから書けん

21 :
>>19
伝説深海怪獣、伝説宇宙怪獣
厨二的な肩書きだけどそこがいい

22 :
ウルゼロの人、投下お疲れ様でした
皆さん今晩は。無重力巫女の人です。
特に何もなければ、21時45分から投下を開始したいと思います。

23 :
 彼女は失ってしまった。心から良かったと叫べるほどの゛幸福゛を。
 あの狭い箱庭のような世界で限られた自由しか与えられず、常に血の匂いを漂わせていた彼女が唯一欲していたもの。
 それと触れ合う時だけ心の底から自由だと思い、血生臭い自分を一時の間だけ忘れさせてくれるような、そんな存在を求めていた。
 しかしそれは、彼女に戦う事を強いらせた者からなし崩し的に手渡された、胡散臭い゛幸福゛であった。
 一度はそれに抵抗を示してしまい距離を取ろうとしたが、結局のところ彼女自身がそれを快く受け入れてしまう。
 何故なら、憎い相手から受け取った゛幸福゛は戦う事しかできなかった彼女にとって、唯一の生きがいとなっていたのだから。
 常に自分の傍に居続け、喜怒哀楽を共にしてくれる゛幸福゛に、彼女は生き続けていて良かったとその時思った。
 日頃から無口であり、時に戦うことあれば生まれた時から持つ力で、獲物を食い散らす獣と化していた彼女。
 そのような者が人らしい幸せを享受できるほどに、その゛幸福゛には大きな力があったのである。
 しかし、その時の彼女には知る由も無かった。
 彼女に戦いを強いらせ゛幸福゛を授けた者が、二人を「教師」と「生徒」という関係で見ていた事。
 時が来れば彼女と共に笑う゛幸福゛を、第二の゛彼女゛へと仕立て上げる残酷な事実すらも知らずに、
 彼女は゛幸福゛をゆっくりと育て上げていった。すべてを知るその時まで。 
 そして、全てが手遅れとなってしまった時に真実を知った彼女は、その世界から消え去った。
 最初からその世界に存在せず、傍にいた゛幸福゛すら幼少時の幻覚だったのだと思ってしまうほどに…
 
 腰まで伸びた黒髪を持つ女が、川辺に佇んでいる。
 身じろぎ一つすることなくまるで時が止まったかのように、その場で静止していた。
 川のせせらぎと夜空を隠す木々の葉が擦れる音が、水で濡れた耳に入ってくる。
 自然が奏でる癒しの音を聞きながらも紅白の巫女服を身に纏う彼女は、ふと辺りを見回す。
 赤と青の月が照らす川岸には、今この場ではあまりにも不気味としか言いようがない光景が広がっていた。
 葉と葉が擦れる音を奏でる樹木には赤い血しぶきがこびりつき、艶めかしく赤色に輝いている。
 水の精霊が奏でるハープの音色を思わせる綺麗な川のせせらぎを聞く岸辺には、子供ほどの大きさしかない人影が横たわっている。
 しかし月明かりに照らされる頭は人のそれではなく、動物や人を群れで襲い食い殺してしまう山犬と酷似していた。
 体も良く見れば茶色の体毛に覆われ、犬のそれと同じような尻尾も生えている。
 握力を失った手にはそれぞれ剣や槍に斧といった獲物が握られ、少なくともある程度の知能があったのだとわかる。
 人々は奴らのような犬頭の亜人を、コボルドという名前で呼んでいた。
 本来なら旅人を襲って殺しては身ぐるみとその肉を剥ぎ、時に誘拐すら行う彼らは川岸で事切れている。
 その頭に相応しい犬歯が覗いている口からは血を流しているが、不思議な事に目立った外傷は見られない。
 目を見開き、驚愕に満ち溢れた顔で死んでいる様は、まるで唐突な発作で死んだかのようだ
 一匹だけではなく、何匹も同じ死にざまを見つめる女の眼差しは、氷の様に冷たい雰囲気を放っている。
 まるで亜人を単なる畜生としか見てないかのように、彼女はコボルドの死体を見つめていた。

24 :
 静寂さと自然の音が見事に調和した空間に、不釣り合いな肉片と返り血でもって台無しにした者は誰なのか?
 この場にいる女はそれを知っていた。知っていたからこそ、その場を動こうとはしなかい。
 何故ならば、この殺戮から逃れたコボルドがたった一匹、彼女の目の前にいたのだから。
 先程まで生きていた仲間たちと共に女を襲い、そしてボロ雑巾も同然となった犬頭の亜人が。
 そのコボルドは、目の前の人間に向かって地を這っていた。
 右の手足を失った亜人の這いずる姿は、まるで死に瀕した芋虫のようである。
 爆発で吹き飛んだかのような傷口からは今も血が流れ、水を吸って元気に育つ川辺の草を真っ赤に染めていく。
 人間ならば出血多量で死んでもおかしくはないが、コボルドの様な亜人たちに人の常識は通用しない。
 彼らは時として人を武器や牙でRことは勿論、一部の者たちはこの地に眠る精霊の力を借りる事もできる。
 最も彼の様な普通のコボルドとその仲間゛だった゛者たちは腕っぷしと人より少し上程度の体力があるだけで、トロル鬼やオーク鬼の様な怪力は持っていない。
 頭も翼竜人や吸血鬼の様に賢いとは言えず、ましてやエルフの持つ崇高さすらなかった。
 それでも彼らは、コボルドとしての生を誇りに思って生き続け、今日まで戦ってきたのである。
 しかしその誇りを抱いたまま、今まで屠ってきた人間の一人に倒されるという覚悟まで背負ってはいなかった。

「…聞きたいことがあるの。言葉が通じるかどうか知らないけど」
 戦う意思を失うことなく自分の方へ這ってくるコボルドへ向けて、女は喋った。
 二十代後半を思わせる低音と高音が程よく混じった声に、亜人はその場で這いずるのを止める。
 少なくとも人語が分かるのかしら?彼女は疑問に思いつつ、今聞きたいことをその場で勝手に喋り出す。
「どうして、私に襲い掛かってきたのかしら?アンタたちの事はおろか、自分が誰なのかすら知らないというのに」
 疲労の色が少しだけ見える表情を浮かべた女の言葉には。この場で起きた惨劇の犯人が誰なのかを物語っている。
 そう…この綺麗な場所を血に飢えた亜人たちの屍で汚したのは、彼女自身であった。
 ◆
 今から数分程前に目を覚ました彼女は何もせずに水辺で佇んでいた所を、コボルド達に襲われたのだ。
 死にかけているリーダー格を含めて五体、皆が皆それなりの経験と場数を踏んだ戦士たちであった。
 だが…その戦士たちが彼女と戦った結果は、綺麗な水場を自らの血肉で染め上げてしまうだけに終わった。
 これまでどおり人間を八つ裂きにしようとした亜人達も、まさかこうなるとは思っていなかっただろう。
 何せ一目見ただけでも、この地方では珍しい身なりをした長い黒髪が特徴の人間の女だ。しかも杖の様なものは持っていない。
 相手がメイジで無ければ恐れるに足らずという意思でもって、彼女に襲い掛かったのである。それが間違いだとも知らずに。
 その後の数分間で、犬頭の亜人たちは一匹、また一匹とただの肉塊へと変えられた。彼女が唯一持っていた゛武器゛によって。
 それは剣や鎚も槍でも無く、弓矢やここ最近見るようになった゛銃゛ではなく、ましてやあの魔法を打ち出す゛杖゛でもない。
 自分たちが見つけた獲物の武器は、その体から出るとは思えぬ強力な力を宿した゛拳と脚゛だったのだ。
 
 青い光を纏い、目にも止まらぬ速さで繰り出される拳は跳びかかった同胞の胸を貫いた。
 同じように発光する足には丈夫なブーツを履いており、それで蹴飛ばされた同胞は気づく間もなく一瞬で事切れる。
 突撃した同胞が一気に二体もやられた事に狼狽えた一体が、近づいてきた彼女のチョップで脳天を打たれて死んだ。
 四体目はすぐさま自分たちが押されているという事に気づいたが、その直後に頭を横から蹴られ、周囲に脳漿をまき散らす。

25 :
 そして最後に残ったリーダー格があまりの展開に驚愕しつつも、無意識に手に持った斧を前へと突き出した。
 せめて次の攻撃を防いでカウンターを繰り出そうとした彼の考えに対し、目の前にいた女が地面を蹴って距離を詰めてきた。
 来るなら来い!覚悟を決めたリーダー格のコボルドであったが、突如として右の手足から激痛を感じると共に、その体が後ろへと吹き飛んでいく。
  一体何が…そう思うのも仕方ないとしか言いようがないだろう。
 何せ黒髪の女は彼に接近した直後、青く光る左手のチョップでもって亜人の右手足を粉砕したのだから。
 まるで林檎を素手で砕いたかの様にコボルドの手足゛だったもの゛が空中へ四散し、塵芥と化して周囲に散らばっていく。
 
 そして自分がどうしようも無い状況に立たされたという事をコボルドが自覚した時、戦いは終わっていた。
 否、それを第三者が何も知らずに見ればこんな事を言うだろう―――ちがう、あれは単なる゛虐殺゛だったと。
 ◆
 戦いが終わってから、彼女はこんな疑問を抱いていた。
 何故自分が襲われたのか、そもそもこの犬頭の怪物たちは何なんのだという事。
 そもそも自分は誰なのか、どうしてこんな人気のない所にいたのかという謎を抱えて、コボルド達と戦っていたのである。
  もしかすれば、あの犬頭達は何かを知っているのかもしれない…。
 そんな考えでもって、致命傷を負い一匹だけ生き残ったコボルドに話しかけたのである。
 しかし…少し小突けば死ぬような体で受け答えできるのか、そもそも人間の言葉を解するかどうかも良くわからない。
 仮に意思疎通ができたとしても、自分の事を知っているのかもしれないという可能性は、もはや゛賭け゛以外の何物でもない。
 それでもやってみなければ分からないという意思での問いかけは、亜人の口を動かさせる事に成功した。
「ウグ…ル…ルル…――――知ラ、ナイ…俺タチモオ前ノ事、全ク知ラナイ…」
 片言ながらも喋る事ができたコボルドを女以外の人間が見ていれば、さぞ驚いていただろう。
 コボルドは基本人の言葉は分かるが喋る事ができず、意思の疎通がほぼ不可能と言われてきたからだ。
 もしもこのコボルドを人目の付かない場所に隔離し、亜人の研究家に見せてやれば泣いて喜ぶに違いない。
 だが黒髪の女にとって゛人語を喋れるコボルド゛ということ自体にさして関心はなかった。
 大事なのはただ一つ、それは目の前の亜人が゛こちらの質問に答えてくれる゛という事だけである。
 そして、先程コボルドが返した言葉で確信し、得ることができた。
 この怪物と意思疎通が可能なのだという事と、賭けに失敗したという落胆せざるを得ない事実を。
「あっ、そう…アンタが私の事を知らない、というのならそれはそれで良いわ」
 あまり期待はしていなかったし。少し残念そうな声でそう返すと、露出させた両肩を竦めて見せる。
 服と別離した白い袖はよく目にする人間の服とは印象が違い、コボルドの目が自然とそちらへ動く。
 それを気にもしない女は初夏の風は少し肌寒いと思っていた時、亜人が再びその口を開けた。
「デモ…俺タチガオ前ヲ襲ッタ事…何モオカシイコトジャナイ」
 コボルドの口から出たその言葉に、女の目が鋭い光を見せた。
 黒みがかった赤色の瞳でもって、瀕死の亜人をそのまま殺さんとばかりに睨みつけている。
 しかし体はボロボロでも亜人としてのプライドを残しているコボルドは、それに怖気づくことなく喋り続ける。
「オ前タチ人間、イツモ…平気デ生キ物殺ス…食ベル為ニ…毛皮ヤ角ヲ取ルタメニ…」
 ソシテ、単ナル娯楽ノ為ニ――――最後にそう付け加えてから、亜人は一度深呼吸をした。

26 :
 口を開けて息を吸い、吐き出すたびにヒュウゥ…ヒュウゥ…という背筋を震わせてしまうような不快な音が周囲に響き渡る。
 息苦しい事がすぐに分かる呼吸の様子を見つめながら、黒髪の女は喋り出す。
「それと私を襲った事に、何の関係があるっていうのよ?」
「ゥウ…――人間ハイツモ、一方的ニ殺シテイク…俺、ソレガ許セナイ…」 
「…だから、人間である私を襲ったって事よね?森を荒らす様な連中の仲間は、死んで当然だという一方的な考えで」
 ため息を混ぜてそんな言葉をくれてやった彼女であるが、不思議な事にコボルドは返事をよこさない。
 今まで地面を見ていた顔を彼女の方へ向けて、闇夜の中で茶色に光る両目で見つめている。
 一体どうしたのかと思った時だ。地面に這いつくばる亜人が一言だけ、こんな事を呟いた。
「ニンゲン…?オマエヤッパリ…ニンゲン…ナノカ?」
 質問するかのような言い方に、流石の彼女も目を丸くした。
 まるで単なる銅像が「俺は人間だ」と叫んだ瞬間を目撃したかのような、信じられないという思いに満ちた様な言い方。
 人間である筈の彼女はそんな風に言われて驚いたのだが、そこから落ち着く暇もなくコボルドは言葉を続けていく。
「最初ニオマエ見ツケタ時…俺タチオマエガ人間ナノカ不思議ニ思ッタ…」
「不思議に…それってどういう意味よ」
 目を丸くしたまま動揺を隠せぬ巫女の追及に、コボルドは怪我を忘れたように喋り始める。
「俺タチノ様ナ種族ハ…マズニオイト気配デ…相手ガ何、ナノカ…ワカル。人間ナラ…スグニワカル。
 ケド…オ前ノ体カラ滲ム、匂イト気配ハ…トテモ人間トハ思エナカッタ……」
 もう残された時間が僅かなのか、喋る合間の呼吸の回数が増えていく。
 だけど亜人は喋り続ける。まるで自分を見下ろす女に何かを伝えようとしているかのように。
 女は女で微動だにする事無くただ目を丸くして、自分が人間なのか疑問を覚えた奴の話を黙って聞いていた。
 そして…その命も風前の灯火同然となったコボルドは、本当に言いたかったことをようやっと口に出し始める。
「アレ、最初…ニ感ジ、タ時…俺、身震イ、シタ…。デモソ、ノ姿見タ時、スゴク…驚イタ。
 オマエ、人…間ナノニ何デ体ノ中ニ血生臭イ溜マッテル?何デ自分デ…気ヅカナイ?
 良ク、イル…人間、ハソンナ…匂イ出サ、ナイ………オシ、エロ…オマエ――――――ニンゲ…ンジャ」
 ――――――――ニンゲンジャ、ナインダロ?
 
 それを最期の一言にしたかったコボルドはしかし、その言葉を口に出せなかった。
 いや、正確にいえばそれを発言する前に止められた…と言えば正しいのだろうか? 
 体力はあとほんの少し残っていただろうし、喋ろうと思えば簡単に喋れた筈だ。
 けどそれでも言う事が出来なかったのかと言えば、たしかにそれを言う事はできなかったであろう。
 何故なら最期の一言を口から出す前に、コボルドの頭は踏み潰されたのだから。
 赤い目を真ん丸と見開き、その顔に動揺を隠し切れぬ巫女のブーツによって…

27 :
 街の靴屋でもそうそうお目に掛かれない様な実用性に優れる黒いソレの下には、見るも怖ろしい肉片が散乱していた。
 紅い肉片がこびりついた茶色の毛と辺りに散らばった汚れた犬歯に…川の方へと転がっていてく一個の眼球。
 まるで持ち主の魂が宿ったかのような黄色の球体はそのまま川へと入り、流れに乗って何処へと流れていく。
 もう片方の眼球は、頭を踏み抜いた女の足元でその動きを止めた。まるで持ち主を殺した相手を睨みつけるように。
 先程まで生きていた命を自らの手で紡いだ黒髪の巫女は横殴りに吹く夜風に当たりながらも、ゆっくりと思い出していた。
 それは急所を潰されて息絶えた亜人の口から放たれた、自分に関する言葉の数々である。
「人間…だったのか?…体の中から…血生臭い匂い…」
 まるで録音したテープを巻き戻し、再生するかのように生前のコボルドが口にした言葉を喋りなおす。
 相手の頭を踏み潰した足を動かせぬまま、彼女は一人呟きながら左手で自分の胸に触れた。
 白いサラシと黒のアンダーウェア、そして赤い上着越しに感じられるのは控えめに見えて少し大きな感触と僅かな温もりだけ。
 そこから上下左右に動かし力を入れようとも、亜人の言ったような゛血生臭い゛匂いなど漂ってこない。
「まぁ当たり前なんだろうけど…さぁ――――ん?アレ…っえっ?」
 我ながら阿呆な事をしていたと軽く恥じつつ手を下ろした時、彼女はある事に気が付いた。
 最初はその゛気づいたこと゛にキョトンとした表情を浮かべたが、次第にその顔色が悪くなっていく。
 先程と同じように目が見開いていき、胸に当てていた左手で口元を隠した彼女の額からは、ゆっくりと冷や汗が出てくる。
 取り返しのつかない事をしたのに後々気づいた人間が浮かべる様な表情を見せる女は、自分が何をしたのか今になって気が付いた。

 どうして、死ぬ寸前のヤツをわざわざ念入りに殺したの?
 
 しかしその事を問いただす言葉は、彼女自信の口ではなく―――彼女の頭上から聞こえてきた。
 少なくとも彼女の少ない記憶には覚えのない、低く太い女の声が、血肉に塗れた川辺に響き渡る。
「はっ――――…なっ…!?」
 突然の事に多少驚いた彼女はその場で振り向いて顔を上げ、そして驚愕した。
 こちらを見下ろす低い声の正体を見れば、きっと誰もが彼女と同じ反応を見せたであろう。
 彼女から一メイルほど離れた場所に、黒い服を纏った見知らぬ長身の女が佇んでいたのだ。
 いつの間にかいた相手に驚きを隠せなかった彼女であったが、それと同時に相手が゛長身゛という単語では表現できぬほど大きい事に気づく。
 幾ら世界広しと言えども、八尺もの背丈を持つ人間などいる筈もないのだから。
 八尺の女はその体に相応しい位に伸ばした黒髪の所為で、どんな顔をしているのかまでは分からない。
 だけどそれを見上げる彼女はあの低い声の主がコイツなのだと知っていた為、少なくとも美人ではないだろうと予想していた。
「何よ、コイツ…一体いつの間に」
 突如現れた八尺の女に狼狽える事を隠せぬ彼女は、問いかけるような独り言を口から漏らす。
 無理も無い。何せ自分よりも数倍ほどの身長を持つ人間を前にしているのだから。
 周囲が暗い事もあって全体像が不鮮明すぎる八尺の女は、何も言わずに佇んでいるというのもより一層不気味さを増している。
 理由もわからずにして起こった異常事態にどう対処すればいいのかと女が考えようとした時、再びあの低い声が聞こえてきた。
「――――の巫女だから?使命だから?鬱陶しいから?……それとも―――――」
 
 「それとも…」という所でふと喋るのをやめた相手の言葉の一つに、彼女はキョトンとした表情を浮かべる。
 巫女って言葉は…何かしら?他とは違い、明らかに何かの意味がありそうな単語に、彼女は疑問を感じた。

28 :
「――――…っ!」
 その『何か』が気になって質問しようとした直前、八尺の女が唐突な動きを見せた。
 文字通り八尺もの長さがある体の丁度真ん中部分が、音を立てずに折れ曲がったのである。
 まるで細い切り枝を片手で折った時のように、アッサリと行われた行為に驚かぬ人はいないであろう。
 その内の一人である彼女もまた例外でないようで、口を小さく開けて放心寸前にまで驚かされた。
 ましてや、折れ曲がった八尺の女の顔が丁度彼女のすぐ上にまで近づいてきたのだから余計に驚いたであろう。
 だがしかし、自分の体が折れた八尺の女はさも平気そうな様子で彼女のすぐ頭上で口を開き…囁いた。
「私たちをRのが―――とっても、楽しいから?」
 その言葉が聞こえた瞬間、彼女は見た。醜く傷ついた女の顔を。
 まるで金槌を何度も叩きつけられたかのように腫れあがって紫色の腫物となり、顔を大きく見せている。
 口の端から流れ落ちる一筋の血はどす黒く、体液ではなく瘴気を吸収した毒の水にも見えた。
 目を背けたくなるモノという言葉は、きっとこういうモノを目にしたときに使えばいいのだろうか?
 そんなどうでもいいことを考えている彼女の事など見ず知らず、醜悪な面を向ける女が口を開く。
 まるで決壊した水門から土砂交じりの水があふれ出すようにして、黒に近い血がこぼれてくる。
「私だッて生きてテいタい――デもおマえは殺しタ」
 そんな事を言ってきた時、彼女はある事に気が付く。
 口から大量の血を吐き出しながら喋る女の眼窩には、本来あるはずの目玉が無かったのである。
 ぽっかりと空いた二つの暗く小さな穴は不気味であり、まるで亡者を引きずり込む地獄へ直結しているかのようだ。
 取れた眼球はどこへ行ったのかという疑問など湧いてこず、彼女は何も言えずに八尺の女の前にいる。
 ただただ息を呑み赤い目を見開くその顔には戦慄に満ちた表情が浮かび、これからどうなるのかという不安を抱いていた。
「オまエはもう引キカエせナい。ズっとずットオまエは誰カを傷つケなガラ生きテいク」
 潰れた蛙の様な声で喋る度に痣だらけの顔が溶けていく中で、八尺の女は窪みしかない眼窩で目の前の相手を睨み続ける。
 コボルドと対面していたときの態度は何処へやら。今の彼女はまるで壁の隅で縮こまる軍用犬であった。
 彼女は恐かった。目の前にいる得体の知れない女が、自分が忘れてしまった事を知っているようで。
 同時にそれを口にし続けられ、自分が忘れていた事を思い出してしまう事の方が、何よりも怖かった。
 知ってしまえば、何をしてしまうのかわからない。きっと良くない事が起こる気がする。
 そうなる確証は無い。しかし本能が訴えているのだ。聞き続けるな、何としてもヤツの口を黙らせろ、…と。
「ソうシておマえハ血ノ道ヲ作リ続け、怨嗟ト憎悪に満チた私タちがそノ道を通っテいク…おマエを、ずっト呪イ続けルたメに」
 酷く崩れていく八尺の女を前に、首を横に振りながら彼女は後ろへ後退り始める。
 その顔を見れば逃げようとしているかのように見えるだろうが、実際はそうでない。
 だらんと下げていた左手の拳にゆっくりと力を込めて、攻撃に移ろうとしているのであった。
 後ろへ下がるのは距離を取るためであり、彼女自信ここから逃げようという気など微塵も無かった。
 コボルド達を倒したという事もある。顔を狙えば一発で黙らせることができる。
 そんな自身を抱きながら、彼女は心の中で拒絶の意思を述べる。自らが忘れてしまった゛何か゛へ…
 もう聞きたくないし、知りたくも無くなった…だから、私の目の前から消えてくれ――――
 そんな事を心の中で思い立ながらも、彼女は思う。
 先程まで知りたかった事実をアッサリと拒否する事は、いささか可笑しいものがある。
 それでも彼女は拳を振り上げた。嫌な事全てから目を背けるようにして、青く光る゛キョウキ゛で殴り掛かろとした。

「貴女は昔からその調子ね。口下手だからすぐに拳が出る。それが貴女の良くない癖よ?」

29 :
 その瞬間であった。自分の真後ろから、何処かで聞いたことのある別の女の声が聞こえてきたのは。
 硝子で作られたベルが奏でる音の様に透き通った声色に、彼女はある種の゛懐かしさ゛というものを感じてしまう。
 目の前いるおぞましい相手をすぐ殺そうとしたのにも関わらず、振り上げた拳が頭上でピタリと止まる。
 そして、拳を包む青い光が消えたと同時に彼女はソレを下ろしてから、後ろを振り向く。
「けれど貴女はハクレイの巫女。時にはその力でもって、聞き分けのない連中を捻るのも仕事なの」
 そこにいたのは…白い導師服を身に纏う、微笑を浮かべる金髪の女性だ。
 腰まで伸ばした髪に青い前掛け、そして夜中だというのに差している導師服とお似合いの真っ白な日傘。
 まるで絵画の中からと飛び出してきたかのような絶世の美女が、いつの間にか後ろに立っていた。
 振り返った彼女がその姿を目にして驚き、同時にどこか゛懐かしいモノ゛を感じ取った瞬間、目の前を暗闇が包んでいくのに気が付く。
 あぁ―――意識が落ちているのか。
 それに気が付いた瞬間、彼女は深い眠りについた。
 

 晴れた日の夜風は、どの季節でも体に良いものだ。ピンクのブロンドを持つ彼女はそんな事を思う。
 ちょっとした事故で馬車が止まった時はどうしようかと思ったが、思わぬ幸に巡り会えたのは奇跡と言って良い。
 もう半年したら少しだけ切ってみようかと考えている髪を撫でていると何を思ったのか、窓からひょっこりと顔を出してみる。
 馬車に取り付けられたカンテラの下で見る林道は何処となく不気味であるが、怖いとは思わない。
 彼女自身気の抜けた性格の持ち主という事もあるのだが、何よりも傍に数人の従者たちがいるのも理由としては大きい。
 遠出の護衛としてついてきた彼らは、王宮勤務の魔法衛士たちとよく似た姿をしている。
 その姿に負けぬくらいに凛々しく忠誠心溢れた彼らは、彼女の乗る馬車の周りに集まっていた。
 理由は一つ。それは道の真ん中で立ち往生している馬車を、なんとか動かそうとしている最中であった。
 今から数分前に、とある場所を目指していた彼女の乗った馬車が、突如大きな揺れと共に止まったのである。
 何事かと思い車輪を調べてみたところ、どうやら林道の真ん中にできた窪みに右後ろの車輪が嵌ってしまったらしい。
 馬車を動かしているのは人型のゴーレムだという事もあって、護衛達が窪みから車輪を出す事となった。
「良し、私の合図で二人が車輪を浮かして…私と残りの三人で馬車を前に押す。分かったか?」
 護衛部隊のリーダーである太い眉が目立つメイジがそう言うと、他の五人のメイジは無言で頷く。
 主人であるピンクブロンドの女性を守るために訓練を積んだ彼らは、王宮の魔法衛士隊と戦っても引けを取りはしないだろう。
 引き締まった表情と、不用意に近づいてきた相手を斬り殺さんばかりの緊張感を体から出している彼らには、それ程の自負があった。
 そんな時、窓から顔を出して様子を見ていたピンクブロンドの女性がその顔に微笑みを浮かべて言った。
「ごめんなさいね。本当なら私たちが馬車から降りた方がもっと軽くなるのに…」
 敬愛する主からそんな言葉を頂いた六人の内、太眉の隊長が慌てた感じですぐに返事をする。
 まるで神話に出てくる女神が浮かべるような優しげな笑みを見れば、誰もが口を開いてしまうだろう。
「えッ…!あっ、いえ、そんな、私は貴女様からのお気遣いだけで充分であります故!」
「そう?でも無理はしないでくださいね。貴方達の歳なら人生これからっていう時期なんだし」
 隊長格のお礼を聞いて女性はそう答えたが、その言葉には何か違和感の様なものがある。
 外見は隊長格やほかの護衛達よりも年若いだろうに、まるで自らの死期を悟った老人だ。

30 :
「それじゃあ、申し訳ないけどお願いね」
 彼女はそれだけ言うと頭を引っ込め、座り心地の良い馬車のシートに腰を下ろす。
 それを見て向かい側にいた眼鏡を掛けた侍女が、申し訳なさそうに口を開いて言う。
「主様…言いにくいのですが、あのような弱気の言葉を吐かれては、また体調が悪くなってしまいますよ?」
 主治医殿もそう言っていたではありませんか。最後にそう付け加えて、侍女は主と慕う女性に苦言を告げる。
 人付き合いが好きなピンクブロンドの主はその言葉に軽く微笑みと共に、言い返してきた。
「ふふふ…心配ご無用、私はそう簡単に死にはしないわ。逆にこういう事は軽いジョークで言うのが良いのよ」
 主治医殿がそう言っていたわ。先程侍女が口に出した事を真似た様な言葉を付け加え、主はカラカラと笑う。
 その雰囲気と元気に笑う姿と表情だけを見れば、彼女を知らぬ人間は思いもしないであろう。
 絵画の中から出てきた女神のような美貌の持ち主が、複雑な重病を患っていると…
 それから数分も経たぬうちに、馬車は再び走れるようになっていた。
 主と侍女の乗る御車台を引っ張る馬たちを離してから御車台そのものを魔法を浮かせる。
 後は窪みから離れた場所で下ろし、再び馬たちを御車台を引かせる…という作業は、思いのほか短い時間で済んだのだ。
「良し、これでもう大丈夫だな」
 窪みに嵌っていた車輪に異常が無い事を確認した隊長格は、覇気のある声で一人呟く。
 他の護衛達は後ろに待機させている馬に跨っており、窪み自体も土を被せて塞いである。
 自分たちだけではなく、後からここを通る人たちの事も考えての事であった。
 窪みがあった場所は何回か踏んで安全を確認した後、隊長格は手に持った地図を見る。
 場所のカンテラを頼りにこの土地の事を調べた後、彼は馬車の中にいる主へと声を掛けた。
 
「カトレア様。この先を行けば宿のある村に着くそうです。今夜はもう遅い故、そこで一旦足を止めましょう」
 狼の遠吠えが何処からか響く森の中、カトレアと呼ばれたピンクブロンドの主はゆっくりと頷く。
 地図を見れば自分が行きたい場所とはまだまだ離れている。しかし、それもまた長旅の醍醐味と言えよう。
「どんな事でも一歩…また一歩と、ゆっくり楽しみながら進む事が肝心なんだと…私は思うのよ」
 例え目的地が遠くともね。そんな一言を呟き、カトレアは微笑んだ。

 深夜の闇には、不気味な何かを感じてしまう。
 そんな事を最初に思ったのが五つの頃で、今からもう七十年近く経っても変わらない。
 気を抜けば窓越しにみる森の中から何か現れるのではないかという妄想を、抱き続けている。
 たかが妄想と若者や町から来る人々は言うかもしれないが、それを妄想と言い切る証明は無い。
 どんなに否定しようとも、世界は不思議に満ちているのだ。それが目に見えぬものだとしても。
「いや、目に見えるモノの方がいいのかも知れん。不可視のモノに怯え続けるよりかは…」
 老人は胸中で見らしていた言葉を呟いてから、コップの底に残っていた水を勢いよく飲み干す。
 木々に囲まれた家の中から見る森というのは木季節に関わらず不気味なもので、常に嫌な妄想を抱かせてくれる。
 ここから少し離れた所には他の人たちも住んでいて賑やかなのだが、今更あの土地に新居は作れはしないだろう。
 最も、ずっと昔の先祖から引き継いできたこの土地を手放す事など、彼はこれっぽっちも考えてはいない。

31 :
 不気味ではあるがそれなりに住みやすい場所だし、何より静かな土地だというのも気に入っている理由だ。
「こんな場所、俺が死んだあとは若い連中が入ってくるんだろうなぁ…」
 老人が孤独死した、魔の土地として…ため息交じりに呟き、テーブルにコップを置いてカンテラの灯りを消した。

 今年で七十五、六という年齢に入った彼は、とても老いた者とは思えぬ体躯の持ち主であった。
 無論、若かりし頃と比べれば大分劣ったと彼自身も自覚するが、山で仕事をするには十分の体力は残っている。
 街で見かけるような同年代の老人たちと比べれば驚くことに、彼の体は四十代後半くらいの若さと力を保っていた。 
 それだけあれば木を伐採するための斧や鉈を片手で持てるし、丸太を背負って家と山を一日に何回も往復できる。
 文明圏で暮らす人々が想像するよりも、山というのは過酷な場所だ。
 老人の体が年齢不相応な力を保持し続けているのは努力ではなく、ここで生きていく為の照明であった。
 
 家の灯りを消し、何回も補強したドアの鍵が閉まってるがどうか確認してから、彼は寝室へと足を運ぶ。
 何回も踏み続けた廊下の床が軋む音を上げ、暗闇に包まれた家の中に外の不気味さを持ち込んでくる。
 台所とリビングに玄関がある今からこの廊下はそれ程長くは無く、三十秒もあれば奥にある裏口へとたどり着ける。
 その間にあるのは彼の寝室と、ワケあって掃除したばかりの物置部屋へと続くドアがあるだけ。
 本当なら寝室に入ってベッドに潜り込みたいところだが、その前にある物置部屋に行く必要があった。
 別にその部屋に寝室のかぎが置いてあるワケではない。ただ、つい最近ここに回い込んできた゛少女゛の様子を見る為である。
「ん……明りが?」
 廊下を歩き始めて十秒もしない内に、彼は物置部屋へと続くドアの下から小さな光が漏れている事に気づく。
 ぼんやりとドアの下を照らすそれを見てしまえば安堵感よりも、更なる不安を感じてしまうだろう。
 少しだけ臆病な老人がその明りに気が付き、一瞬だけ足を止めてしまったのもそれが原因だ。
 しかし、彼は小さなため息をつくと再び足を動かし、ついでそのまま物置部屋のドアをゆっくりと開けた。
 その先には、古びたソファに腰かけて窓の外を見やる幼い少女がいた。
「ニナ…まだ起きてたのか?」
 寝てなきゃ駄目だろう。叱るとは言えぬ声色で呼びかけると、ニナと呼ばれた少女が老人の方へと顔を向ける。
 あどけなさが色濃く残るぬいぐるみの様に愛らしい顔に、キョトンとした表情が浮かぶ。
 ベッド代わりのソファに膝を乗せて夜空を見上げる体は年相応でまだまだ人として未発達だ。
 世の中にはそういうのを好む男性が数多く存在するが、幸いな事だが老人にそのような嗜好は無い。
 それよりも今の彼が気にしている事は、まだここに住み始めてから間もないこの子が未だ起きている事だった。
「子供はもうとっくの前に寝てないと体があんまり育たたんぞ、知らんかったのか?」
 今みたいに夜更かししてたら、全然大きななれんぞ。一人呟きながらも老人はソファの下にあるカンテラの灯りを消した。
 文明の光は呆気なく消えたが、それを待っていたかのようにニナと呼ばれた少女が言った。
「さっきね、二ナの事を窓から迎えに来てくれる黒い人の夢を見たの。不思議でしょう?」
 アタシ、何も覚えてないのにね。楽しそうに喋る彼女の頭を、老人はそうかそうかと返しながら撫でる。

 この世界には不思議な事などいくらでもあるが、それと同じか…あるいはそれ以上に色々な事柄で満ちている。
 幸せな事、優しい事、美しい事、悲しい事、血生臭い事、怖い事、忘れてしまいたい事、そして―――――残酷な事。
 七十年も生きてきた老人は思いつく限りの事柄を経験してきたし、どんな人間でもいずれは体験せねばならない事だと思っている。
 しかし始祖ブリミルよ、これは残酷ではないだろうか?こんな小さな子に、親も帰る場所も忘れさせるなんていう…残酷な事は。
 村の医者に記憶喪失だと告げられた少女の頭を撫でながら、彼は心の中で毒づいた。

32 :
以上で、66話の投下は終わりです。
今回はルイズや霊夢たちとは距離を置いた番外編的な話で、もう少しだけ続きます。
それでは皆さん、まだ来月末にお会いしましょう。

33 :
無重力巫女さんおつん

34 :
乙乙

シドニアの騎士アニメ化が決まったんだしBLAME!はまだか
それともBLAME!アニメ化再開まで再開しないのか
もう長手and継守召喚でもいいぞ

35 :
超ヒロインクロニクルにルイズ、ティファニアに続いてシエスタも参戦
どうやらティーポットをひっくり返して攻撃するようだが、シュールというか、どんな層を狙って作ってるのだろうか

36 :
>>34
継守がきたらハルケの重力下じゃ常時四つん這いになっちまう!
>>35
虚無に並んでメイドがポット投げつけるってそりゃいったい……

37 :
発表当初からマジンガーもガンダムもいないスパロボと言われていたがゲームバランスもめちゃくちゃだな
製作スタッフの投げやりというかやる気のなさが伝わってくるようだ
戦闘メンバーなら真っ先にキュルケやタバサがくるのが普通だろうに
ボスがワルドやヨルムンでシエスタの攻撃で倒したら原作Rなんてもんじゃないぞ

38 :
ボスボロット(ボス)でナイチンゲール(シャア)を倒すようなもんか
……いや、やったけどさw

39 :
一人用のポッドを投げつけるゲームならおもしろそうだ

40 :
こんばんは。今回は宣言通り、本編から外れた小話を投下します。
開始は23:50から。

41 :
ウルトラマンゼロの使い魔
幕間「ウルティメイトフォースゼロの旅立ち」
帝国機兵レギオノイド(β)
友好珍獣ピグモン 登場
 未だ正体の知れない邪悪な何者かの影響によって、怪獣と侵略者の脅威に見舞われるようになったハルケギニア。
それを護りに、遠くの別宇宙からはるばるやってきた光の戦士、ウルトラマンゼロ。そしてアルビオン大陸の戦いで、
彼の仲間である鏡の騎士、ミラーナイトがハルケギニアの地に降り立った。そう、ハルケギニアにやってきたのは
ゼロだけでない。彼が結成した、惑星エスメラルダの存在するアナザースペースを守護する宇宙警備隊、
ウルティメイトフォースゼロの面々も一緒であったのだ。
 それではここで余談として、ウルティメイトフォースゼロがハルケギニアに来訪する直前のことを語ろう。
『……へッ。久々に団体のお出ましだな』
 アナザースペースの一画の小惑星群。その小惑星の一つの上に仁王立ちしているのは、
我らがヒーロー、ウルトラマンゼロ。
 そして周囲の小惑星群の上に大勢で陣を張っているのは、両腕がガンポッドになっている
量産型の戦闘ロボット。かつてアナザースペースを震撼させた悪の帝国を築いたベリアルが、
侵略用の兵士として造らせていたレギオノイドの、宇宙戦用タイプだ。
 ベリアルの大帝国は、ゼロたちの活躍により既に滅んだ。しかし、その軍団が全滅した訳ではなかった。
今ゼロを取り囲んでいるような残党がしぶとく生き残っていて、ベリアルの怨念に突き動かされるかのように
各所で被害を出し続けているのだ。ウルティメイトフォースゼロは主に、その残党を片づけることで
アナザースペースの平和を取り戻す活動をしている。
『ハッ。毎度毎度数頼みの戦いしかしねぇな、こいつら。量産型だからって学習能力が全くない連中だぜ』
 さて、その残党に囲まれているゼロなのだが、孤立無援の状況とは裏腹に彼には肩をすくめる余裕すらあった。
 それに反応したかどうかは定かではないが、レギオノイドの群れはギギギと駆動音を鳴らしつつ、
ゼロに向けてガンポッドより光線の雨を降り注がせた!
『ハァッ!』
 だがゼロは命中の直前で、上へ向けて飛び上がって全弾を回避した。そしてすかさず
ゼロスラッガーを両方とも投げ飛ばす。
『ゼアッ!』
 超高速で、複雑な軌道を描くゼロスラッガーは、レギオノイドを次々と切り裂いて爆散させる。
『シャッ!』
 更に額のランプからエメリウムスラッシュを放ち、これもレギオノイドたちを纏めて吹き飛ばした。
『ゼアアァァァァァァッ!』
 とどめのワイドゼロショットを周囲に振り撒き、残った機体を全て爆破する。
 ウルトラマンゼロは、すさまじい力を持った強敵との激闘をくぐり抜けてきた歴戦の戦士。
たとえ束になって掛かってこようとも、今更量産型のロボット兵士などに後れを取ったりはしないのだ。
『こいつでフィニッシュだッ!』
 ワイドゼロショットが最後の一機を爆破すると、目に見える範囲でレギオノイドはいなくなる。
念のために辺りを探っても、伏兵の気配は感じられなかった。
『よし、この辺に潜んでる奴らは全員片づけたみたいだな。……最近はベリアル帝国の残党も
めっきり見かけなくなったな。ま、もう随分な数を倒したんだし、残り少ないんだろうな』
 周囲の状況と最近のアナザースペースの環境をそう判断したゼロは、今回のパトロールをこれで終了し、
ウルティメイトフォースゼロの基地へ帰投することにした。

42 :
 アナザースペースに浮かぶ、一見すると緑色の結晶の芸術品と見間違えるような、巨大な建築物。
それがウルティメイトフォースゼロの本拠地、マイティベースだ。惑星エスメラルダの技術協力により
築かれたもので、外観や内装はウルトラの星の宇宙警備隊本部を参考にしている。
『……よっと! 今帰ったぜ』
「キュイッ! キュイッ!」
 マイティベースに帰還したゼロは、40m級の巨体からすると豆粒のような大きさの赤い生命体に出迎えられた。
『おッ、ピグモン! 留守番ご苦労!』
「キュウッ!」
 その生き物は、友好珍獣ピグモン。地球では多々良島で初めて存在が観測された、攻撃性を持たない小型の怪獣だ。
元々は死んだ怪獣たちの魂が漂う怪獣墓場で、バット星人の誤算により蘇生された個体なのだが、紆余曲折あって
このマイティベースにやってきてゼロたちと同居している。ちなみに名前をつけようとしたことがあったが、
「ピーちゃん」だの「モロボシくん」だのいい名前が思い浮かばず、結局はみんなが好きに呼ぶようになっていた。
『ピグモン、みんなは帰ってるか?』
「キュウ」
 ゼロの質問にピグモンがうなずくと、そのすぐ後にゼロの側に、彼と同等の背丈の赤い巨人が飛び出てきた。
『おーうゼロぉ! 随分と遅かったじゃねぇか』
『グレンファイヤー!』
 しゃべりながら赤い巨人が髪をかき上げるような仕草をすると、彼の炎を象った頭部から
本物の炎が一瞬燃え上がった。
 この巨人は、炎の戦士グレンファイヤー。肩書きと今の行動から見て取れる通り、熱く燃える
炎の力を宿した男である。性格も誰よりも活発な熱血漢だが、お調子者な一面もある。
『今日は久しぶりに集団の相手をしててな』
『なーるほどねぇ。けどそれにしたって時間掛けすぎだぜ? 俺もベリアルの残したオモチャを
纏めてぶっ飛ばしてたが、帰ったのは誰よりも早かったぜ!』
 ゼロに対して豪語したグレンファイヤーだが、それに異を唱える者がこの場に現れた。
『グレンファイヤー、虚偽の報告は良くない』
『んなッ!?』
 グレンファイヤーを諌めたのは、腰部のバックル型の部品と赤と銀がコントラストをなす
配色が目を引く巨大ロボット。その名もジャンナインである。
 ウルティメイトフォースゼロの中では、ジャンナインだけは初期メンバーではない。
ビートスター事件の際に、最初は敵としてゼロたちと戦ったが、後に仲間となった。
そしてその機体の基礎部分には、エスメラルダのロボットであるジャンボットから解析された
技術が使われたため、ジャンボットの弟と見なされている。
『本日の活動で君は、敵との交戦記録が存在しない。よって今の発言は明らかな誤りだ。
訂正を行うべきだと判断する』
 淡々と語るジャンナインに、興を削がれたグレンファイヤーはため息を吐く。
『あのねぇナイン……今のは会話を盛り上げるためのジョークって奴だよ。分かる? 
それにマジになられても困るぜ』
 やれやれと首を振るグレンファイヤーだが、ジャンナインは立ちすくんでいる。
『理解不能。ジョークというものが、適切な報告よりも優先すべきものとは考えられない』
 その言葉に、グレンファイヤーは更に深いため息を吐いた。
『相変わらず堅苦しい奴だなぁお前……。頭固いとこまで兄貴に似るんじゃないよ全く……』
『無礼者! その言葉、私への侮辱と受け取るぞ!』
 グレンファイヤーのひと言で、声を荒げる者が現れた。ジャンナインと同じ巨大ロボットであり、
彼が上で触れたジャンボットだ。
『それに今回の件は貴様の方が悪いのだ! 任務の報告は正確に! 虚偽を挟むなど以ての外だ』

43 :
 ジャンボットに叱られるグレンファイヤーだが、まるで反省の色が見えなかった。
『は〜あ。また始まったよ。これだから焼き鳥は』
『無礼者! 私の名前はジャンボットだと、何度言えば覚えるのだ!』
 グレンファイヤーは宇宙船ジャンバードへの変形機能を持つジャンボットが、ジャンバードとなっている時に
初めて出会ったので、そのために「焼き鳥」というあだ名をつけている。しかしジャンボットはそれを気に入っておらず、
呼ばれる度に憤慨するというのが既に定番のやり取りになっている。
『全く、二人ともいつもいつも飽きませんね……』
 ギャアギャア騒ぐグレンファイヤーとジャンボットの様子に、最後に場にやってきた
緑色の巨人が呆れ返った。ミラーナイトだ。
 リーダーのウルトラマンゼロを始めとして、グレンファイヤー、ジャンナイン、ジャンボット、ミラーナイト。
以上の五人が、アナザースペースの平和を守るウルティメイトフォースゼロのメンバーである。
 さて、マイティベースに住まう者たちがそろったところで、グレンファイヤーがこんなことを話題に出す。
『しっかしホント、最近めっきりとベリアル軍の残党どもを見なくなったよなぁ。今日ゼロが倒したので、
もう全部倒したんじゃねぇか?』
『そう判断するのは早計だろう。……とはいえ、残党の頭数も有限。私たちがこれまで倒してきた数を合計すると、
もう推測されるベリアル軍の生き残りの総計に迫っている。全滅間際というのはあながち間違いではないだろう』
 その意見にはジャンボットも同意する。
『だろぉ? そんで俺たちは交戦の回数が減ってきてる訳だが……それが毎日のように続くと、
暇でしょうがねぇよな〜』
『いけませんよ、グレン。私たちが暇なのが、平和の証拠なのですから。喜びこそすれ、
残念がるものではありません』
 ミラーナイトが咎めると、ゼロがピグモンの相手をしつつ相槌を打った。
『その通りだ。俺たちが倒すべき奴がいるということは、一時のエメラナたちやピグモンのような
思いをする人が出てくるってことだ。そんなのはない方がいいに決まってる』
「キュウッキュウッ!」
『まぁそうなんだけどよ〜。けど、こうも実戦が少ないと、腕と勘がなまっちまうぜ』
『有機生命体は不便だな。能力の維持に、定期的な鍛錬と経験が必要なのだから』
 グレンファイヤーの意見に、ジャンナインがロボットならではの感想を述べた。
 そんな風にウルティメイトフォース内で話し合っていると、突然誰のものでもない声が外から響いてきた。
『ふむ。どうやら話を聞く限りでは、これから頼む任務を支障なく引き受けてくれそうだな』
『! その声は……!』
 ゼロが真っ先に反応し、マイティベースの出入り口へ振り返る。その彼の目に、赤いマントを羽織った、
ゼロの面影を持つ紅蓮の巨人の姿が映る。
『親父!!』
『ゼロ、元気でやっているようで何よりだ』
 その巨人は、地球人ならば知らない者のいないほど有名だ。そしてウルトラマンゼロの父親でもある。
名前は、ウルトラセブン!
『おぉ!? ゼロの親父さんじゃねぇか! ひっさしぶりだなぁ〜!』
『しかし、どうしてこちらの宇宙に?』
 セブンの登場にはグレンファイヤーたちも驚きを隠せない。そしてジャンボットの疑問は、
ゼロも感じていた。
『親父、一体何の用でこっちに? 任務って言ったが……』
 と尋ねると、セブンは早速その件について話し出した。
『そうだ。実はウルティメイトフォースゼロの諸君に、ぜひとも頼みたい用件があるのだ。
それというのは、別の宇宙の防衛』
『別の宇宙だって!?』
 ゼロたちが驚愕していると、セブンは詳しく説明する。

44 :
『実は先日、宇宙と宇宙の狭間で大規模な次元震が観測された。それだけなら何の問題もなかったのだが、
その震動に乗じて、大いなる邪悪の気配が我々の宇宙から別の次元の宇宙へと移動した痕跡が発見されたのだ』
『大いなる邪悪だって!? そいつの正体は!』
『残念ながら、そこまでは特定できなかった。しかし、このまま放っておいたら、そいつが
侵入した先の宇宙の生命が滅ぼされてしまう恐れがある』
『そうだな……見過ごせねぇぜ』
 セブンの言葉で、ゼロは因縁のベリアルやビートスター、バット星人のことを思い出した。
彼らは移動先の宇宙に抵抗するだけの力がなかったのをいいことに、多くの悲劇を起こした。
それを繰り返してはならない。
『それが明らかになった以上、すぐにでも我らウルトラ戦士が派遣されるところだが、一つ問題があった。
向かう先の宇宙の情報が得られないことだ。もしその宇宙にディファレーター光線がなければ、
我らウルトラ戦士はまともに活動できない。そうなっては派遣する意味がない。……しかしゼロ、
お前ならばその問題は解消できる』
『ああ、そうだな。俺にはこのウルティメイトイージスがあるからな』
 ゼロはうなずきながら、左腕のウルティメイトブレスレットを見つめた。
 実はアナザースペースが、そのウルトラ戦士のエネルギー源となるディファレーター光線の存在しない宇宙なのだ。
初めてやってきた際のゼロもそのために変身回数と活動時間が限られて苦しんだものだが、
神秘のアイテム・ウルティメイトブレスレットを入手してからは、それが光エネルギーを変換して
ゼロの力にしてくれるので、問題なく活動が出来るようになった。
『そして他のウルティメイトフォースゼロの面子は、ウルトラ一族じゃないから、エネルギーの心配はない。
つまり俺たちがその任務に打ってつけって訳だな?』
『呑み込みが早くて助かる。ウルティメイトフォースゼロには、別の宇宙の調査と悪の魔の手の排除を依頼したい。
やってくれるか?』
『当たり前だぜ! なぁお前ら!』
 ゼロが聞くと、ミラーナイトたちは当然の如くうなずいた。
『ええ。悪の手が及んでいることを聞かされて、黙っている訳にはいきません』
『ちょうど暇を持て余してたしな! そういうのを待ってたんだぜ!』
『別の宇宙のことでも、平和を守るのは姫様の願い。了解した!』
 しかし、ここでジャンボットが次のように言う。
『しかし、全員という訳にもいかないな。ベリアル軍の残党が全滅した訳ではないし、
我らの不在を狙って他の悪しき者どもも活動する恐れがある。誰か一人くらいは残らなければ……』
 それについては、ジャンナインが名乗り出た。
『ならばその役目は、僕が引き受けよう』
『何ぃ? ナインが? おいおい大丈夫なのかよ』
『僕は宇宙最強のロボットとして造られた。僕の戦闘力なら、留守を守る程度は造作もない』
 グレンファイヤーが異を唱えると、ジャンナインは自信過剰なほどに自負した。が、グレンファイヤーは肩をすくめる。
『そういうこと言ってるんじゃないんだよ。お前は常識に疎いだろ? だから一人だけで
何か問題を起こさないかって心配してるの!』
『常識についてグレンに心配されたらおしまいですね』
『え? ミラーちゃん、それどういう意味?』
 ミラーナイトがさりげなく毒を吐いていると、ゼロがジャンナインを支持した。
『俺は大丈夫だと思うぜ。ジャンナインも、もう立派に平和と命を愛する心を持ってる。
それがあれば、多少のことなら何の問題もないはずだ』
『そーかぁ? ……まぁお前がリーダーな訳だし、そう思うんだったら従うけどよ』
 そういう訳で、ジャンナインをアナザースペースの守護に残し、ゼロたちは別の宇宙へ旅立つこととなった。
それが決まった後で、ふとゼロが問いかける。
『ところで親父、わざわざそれを伝えるためだけにこっちに来たのか? それだけなら、
テレパシーを使うだけで十分だったんじゃないか?』
 光の国があるM78スペースとアナザースペースは、ウルトラマンゼロというつながりが出来たことで
距離が縮んだが、それでも別の宇宙間は両者の技術をもってしても移動に大変な労力が必要となる。
故によほどのことでなければ、人の行き来はない。それを気にしていると、セブンはこう答えた。

45 :
『ゼロ、私からお前に渡すものがあるのだ。だからこちらに来る許可をもらった』
『渡すものだって? 親父からはブレスレットとかもらったが、まだ何かあるのか』
 セブンが差し出したのは、指先に念力で固定されている小箱。その中身は、三色のカプセルだ。
『カプセル怪獣。もしウルトラマンに変身できないような事態に陥った時には、必ず力になってくれる。
私も地球に滞在した時には、何度も世話になった。今回の任務はどれだけの期間が必要になるか分からないから、
持っておいた方がいいと判断した』
『カプセル怪獣、か……。へへッ、親父は相変わらず心配性だな。けど、ありがたく借りておくぜ』
 ゼロははにかみながらカプセル怪獣を受け取る。すると、セブンがピグモンのことを見下ろす。
「キュウッ! キュウッ!」
『それがお前の守った命か……。ゼロ、立派なウルトラ戦士として成長したんだな。お前はもう一人じゃない。
たとえこれから何が待ち受けていようと、必ず乗り越えられると信じている!』
『ああ! 俺にはこんなに大切な仲間がいるんだ! 当たり前だぜ!』
 セブンの信頼に、ゼロは固くうなずいて応えた。
『では、任務を頼む。成功と幸運を祈っているぞ』
 セブンが挨拶を残してからM78スペースへの帰路に着いた後で、ゼロたちも別の宇宙へと
旅立つ準備に取り掛かっていた。
『向かう先の位置情報は、これだけか……。ちょっと不安だが、まぁ何とかなるだろ』
『頼むぜゼロぉ。お前が迷子になったら、俺たちも一緒に迷子になるんだからな』
『グレン、ゼロを信じるんです』
『ではナイン、私たちが不在の間、宇宙の平和とマイティベース、ピグモンのことと頼んだぞ』
『任せてくれ、兄さん。武運を祈る』
 マイティベースの外で話し合うと、いよいよゼロたち四人が出発をする。
『それじゃあ行くぜ! はぁッ!』
 ゼロが掛け声を上げると、ウルティメイトブレスレットが強く輝き、形を変えて銀色の鎧となり、
ゼロの身体に装着した。
 これがブレスレットの本来の姿、ウルティメイトイージス。そしてそれを装着したゼロは
ウルティメイトゼロと呼ばれるようになり、単体での次元宇宙の移動が可能となる。
ミラーナイトたちも同時に連れていくことが出来る。
『よぉし行くぜッ! 遅れるなよ! ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤー!』
『ええ! ナイン、行ってきますよ!』
『私からも、お前の武運を祈ってる!』
『ひゃっほーい! ウルティメイトフォースゼロ、出動だぁー!』
 ゼロとミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーがジャンナインに見送られて宇宙間の旅に出た。
四人はあっという間に光速を超え、アナザースペースの端へ到達すると、ウルティメイトイージスの力で
宇宙の壁を乗り越える。
『えーっと、目的地の方角は……こっちか……。いや、ちょっとズレてるな……』
『おいゼロ、ホントに大丈夫なのか? 何か不安になるようなことが聞こえてくるんだが』
『ちょっと黙っててくれ。今集中してるんだ』
 セブンから受け取った、わずかなデータだけから目的地の座標を計算しているゼロは、
最後尾から尋ねたグレンファイヤーに言い返した。
 それから大分の時間を、宇宙間移動に費やす。どれだけ行けども似たような景色が続くので、
グレンファイヤーはすっかり飽き飽きしていた。
『なぁ〜まだ到着しないのかよ? 随分遠いなぁオイ』
『ええい、お前という奴は、少しは我慢が出来ないのか!』
 ゼロに代わってジャンボットが咎めると、その後でゼロが答える。

46 :
『計算上だと、後少しのはずだ。もうちょっとの辛抱……うおッ!?』
 その瞬間に、突如として四人を激しい磁気嵐と次元震が襲った。ゼロたちは身体が大いに揺さぶられる。
『こ、これは……次元嵐! 何とも運の悪い……!』
 ミラーナイトが思わず吐き捨てる。宇宙と宇宙の境、次元の狭間は、平穏な時ばかりではない。
時々このような災害規模の現象が発生することもある。もっとも広大すぎる超空間で遭遇することは
稀なことなので、ミラーナイトの言う通り、運が悪いとしか言いようがなかった。
 次元嵐の勢いはゼロたちでも抗うのが困難なほどであり、ゼロは必死に力を振り絞って前に進む。
だが後ろに続く、ウルティメイトイージス並みのパワーを持たない三人は彼以上に苦しんでおり、
特に最後尾で加護が一番少ないグレンファイヤーは首がガクガク揺れていた。
『お……おわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!?』
 そして遂に、グレンファイヤーが嵐に吹き飛ばされ、ゼロの後尾から外れてしまう。
『グレンファイヤー! ぬッ……うおおおおおおッ!』
『ジャンボット!』
 振り返ったジャンボットも、気がそれたのが災いして嵐に流される。
『何てこった……ハッ! ミラーナイト!』
 ゼロが気づけば、ミラーナイトまでが腕一本だけでゼロのコースにしがみついているありさまになっていた。
咄嗟に助けようとするゼロだが、ミラーナイト本人から止められる。
『いけませんゼロ! ここで余計な労力を使えば、たどり着く前にエネルギー切れを起こしてしまうかもしれません!』
『け……けど……』
『大丈夫です……あなたが無事にたどり着ければ、私たちもそれに引っ張られて到着することは出来ます。
逆に、あなたがたどり着けなければ私たちにも道はありません。あなたが今すべきことは、全力で
私たちのたどる道を作ることです!』
 説得したミラーナイトは、もう数秒もこらえていられない状態になっていた。
『頼みましたよ、ゼロ。私たちの道を……!』
『ミラーナイトぉ!!』
 その言葉を最後にミラーナイトが吹き飛ばされ、すぐに嵐に呑まれて見えなくなった。
『くそぉ……! すまねぇみんな……! 絶対にお前らが続く道を完成させるからな……!』
 一気に一人になってしまったゼロだが、仲間たちの無事を信じて、前へと突き進み続けた。
その甲斐あり、ウルティメイトイージスのエネルギー残量がギリギリというところで光明が見えてくる。
『やった! あそこだ! これでもう大丈夫……うおぉ何だぁ!?』
 遂に目的地を発見したゼロだが、その瞬間にいきなり身体が前に引っ張られ出した。
嵐の影響によるものではないのは明白だが、だからと言って力の正体は皆目見当がつかない。
『な、何が起きてるんだ!? 幸いこのまま到着は出来そうだが……』
 ウルティメイトイージスのパワーがもうないので抵抗することは出来ないが、力の方向は目的地を向いているので、
特に問題はなさそうだ……と考えたのもつかの間、ゼロは信じられないものを目にすることになる。
『な、何ぃぃぃぃぃ!?』
 何と、宇宙と宇宙の間の超空間に、自分と同じように目的地へ向けて飛んでいる、というか
飛ばされている少年の姿がはっきりと見えたのだ。
『こんなところに人間が!? って、このままじゃぶつかる! 何とか回避を!』
 その少年との直撃コースにあることを察知したゼロが身をよじろうとしたが、
『うおおぉぉぉぉぉぉ間に合わねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
 結局、ゼロの巨体は小さな少年と正面衝突してしまった。それと同時に、ゼロと少年は超空間を抜けた。
 こうして、ウルトラマンゼロと少年、平賀才人はハルケギニアのある宇宙で衝撃的な出会いを果たしたのだった。

47 :
以上で終了します。
次回は本編に戻りますが、先に予告すると、
三巻の内容ではなくアニオリ準拠のエピソードになる予定です。

48 :
>>39
そのシエスタの祖父はサイヤ人か

49 :
ギーシュ「君のせいで二人のレディが傷ついた。どう責任をとってくれるんだい」
シエスタ「ギーシュ・ド・グラモン、まずお前から血祭りにあげてやる」

50 :
>>49
こんな展開の作品昔みたな
まとめみてたら続き気になる作品がいっぱいあるわ
再開しないかなあ

51 :
金髪が逆立って白目むいたシエスタか

52 :
かなり前のだけどルイズが浦安鉄筋家族のねぎま姉ちゃんを召還し、目が合ったギーシュを追いかける話が面白かったな

53 :
ルイズがアクシズを召還して地球滅亡

54 :
ルイズがグモリー彗星を召喚してハルケギニアがデデーン

55 :
「サイボーグ0009(009=島村ジョーを召喚)」「ピノキオの大冒険(キカイダー=ジローを召喚)」「STEALTH&Aegis(無人ステルス戦闘機ExtremeDeepInvader=エディを召喚)」「KNIGHT-ZERO(KITTを召喚)」の続きが読みたいです

56 :
無限の住人読み終わったんで誰か万次さん召喚してくれたら嬉しいデス

57 :
ディーキンさんそろそろ来てほしいわぁ
最近投下も減った気がするしこのまま過疎って行きそうな気もするな

58 :
投下したいが不安で仕方ない

59 :
じゃあしないほうがいいよ

60 :
パパーダはまだか。DMC勢は大体いい所でエタる

61 :
ギャグ漫画のキャラも大丈夫かな?

62 :
他の誰かに書けって言いだすんならともかく、自分で書く分にはたいていおk

63 :
ウルゼロの人は次はアニオリか
定番だと品評会とモット伯だけど、品評会にゼロが出られるはずはないしモット伯も人間相手にウルトラマンが手を出せるわけもない
もっとも怪獣や宇宙人がらみなら話は別だが
二期終盤の雪山の話で、遭難して凍死しかかったところをウーに助けられる。話がつながらんな
もしかしてOVAの魅惑の砂浜か?ちょうどウルトラQに大ダコも出たし。うーんわからんな

64 :
るろうにとディーキンとアセルス待ってます

65 :
ルイズがキュアエースを召還

66 :
ルイズがシンフォギアから響さんを召喚!
いつもの流れで決闘へ!
「君のせいで二人の女性が泣いてしまった! どうしてくれるんだ!」
「ごめんねギーシュくん。良かれと思ってやったことなのに。私ってばほんと呪われてるね。ぐすん」
「え?あ?」
「なーかしたなーかした」
「ギーシュめ。女の子を三人も泣かしやがって。許 ざ ん !!」
「先生にいってやろー」
たまには違う流れになるのもありです!

67 :
>許 ざ ん !!
あー、これは藤原召喚ですわ

68 :
え? てつをじゃないのか?

69 :
>>49
ブロリー召喚は胸熱だな

VSフーケ戦
ブロリー「また一匹ムシケラが死にに来たか」
VSワルド戦
ブロリー「しょせん、クズはクズなのだぁ」
VS7万戦
ブロリー「お前たちが戦う意思を見せなければ、俺はこの星を破壊しつくすだけだぁ」

パラガス「よーく見ろ、地獄へ行ってもこんなおもしろい殺戮ショーは見られんぞ」
ルイズ「もうダメだわ。おしまいだわぁ」
パラガス「さあ、死の恐怖を味わいながら、ブロリーに八つ裂きにされるがいい。俺は、避難だぁ」
ブロリー「どこへ行くんだぁ?」
パラガス「お、お前といっしょに、ひ、避難する準備だぁ」
ブロリー「一人用のポッドでかぁ?」
パラガス「うぅっふはっはっはーはーはー、あーう」
\\デデーン//
タバサ「この始末☆はてさてこの先、どうなりますことやら」

70 :
進撃の巨人からサシャを召喚したら飯をやるだけで神様扱いだから時々食堂で飯を盗む点さえ目を瞑れば従順になってくれる筈。
ミカサはエレン無しじゃ腑抜けるだろうけどアルミンなら外の世界に行けてそれなりに満足して生きていけるだろうな。

71 :
>>69
ブロリーよりも遥かに強くて魅力的なキャラが召喚されたらブロリーの作者が発狂するオマケ付きですねわかります

72 :
>>70
進撃の世界の状況が状況だけに、例え誰が召喚されようと(紆余曲折はあるにせよ)最終的にはハルケギニアに留まる事を良しとせず
全員が全員向こうの世界に戻ろうとするのがオチだと思う
特にミカサなんかはむしろ腑抜けるどころか完全にルイズガン無視で何が何でも向こうの世界、と言うかエレンの元に戻る事以外何一つ
考えなくなるのは間違いない

73 :
あいつら立体機動無でも跳躍力だとか大概人外だからやりやすそうではあるな

74 :
>>72
ミカサはエレン命とはいえ、一般市民の避難を妨害してるのに激昂したこともある
元の世界に戻るのが第一とは思うが、状況次第では協力するだろう
アルミンやジャンなら戻るついでに巨人戦に役立ちそうな知識やアイテム探しもしそう
進撃キャラでハルゲニア世界に来てそのまま居着いてくれそうなのは
現状だとアニくらいかな
ルイズに従うかは展開次第だが戦闘力は申し分ないし

75 :
初めまして>>61です。もし予約がない様でしたら、22時40分に序章ですが投下させて頂きます。
召還されるのは、浦安鉄筋家族から垣ママこと花園勇花でタイトルは『人類種、最強の使い魔』です。

76 :
『人類種、最強の使い魔』
第1発目 人類種、最強の主婦

「わっははははははぁぁぁ!」
木々が生い茂る山の中を、一人の人間が笑い声をあげ空高く跳躍しながら移動する。
黒いシャツとズボン、腰に巻いたエプロンを身の纏い。そして―――――獅子の如く逆立つ髪と筋骨隆々の肉体、そして周囲を歪ませるオーラを漂わせ野獣も泣いて逃げ出すほどの恐ろしい笑みを浮かべた『女性』は、5メートルはあろう巨大な袋を背負いながら走り続けていた。
彼女の名前は花園勇花。浦安市在住の市民にして―――人類種、最強の【主婦】である。
彼女は己を高める為に普段、行なっている山籠もりから一人で帰る最中であった。
本来なら息子である花園垣(ガキ)も山籠もりに連れていくのだが、今回は垣が学校のテストに全力で挑んだ為に医者も驚愕するほどの高熱を起こし、病院に入院した為、仕方なく勇花一人で山籠もりに行く事になった。
無論、己が住んでいる家を
「山籠もりから逃げ帰っても我が家は無し」
という意味で徹底的に破壊し尽くした後で。
途中、山に住んでいた凶暴な熊を威圧して己の肩を揉ませたり、巨大な大木を背負いながら山を走ったりし、流れる滝を素手で登ったりして山籠りの数日間を過ごした勇花は。
愛する息子に飯をたらふく食わせるために、山で手に入れた食材を詰め込んだ袋を背負いながら走っていたのであった。
しかし学校のテスト如きで熱を起こすとは、あの青二才もまだまだだぜ
私が帰って来たら徹底的に鍛え直してやらないといけねぇな
まぁ――その前に腹一杯手料理を喰わせてやるか
全く手のかかるガキだ、だからこそ可愛いんだけどな
勇花は息子の垣の事を考えながらえふっ、えふっ、と妙な笑い声を出し再び空高く跳躍する。
そして地面へと着地する寸前。
「!?」
丁度、勇花の真下の辺りに白く輝く鏡が現われたのである。彼女が気が付いた時にはすでに足の爪先が鏡に触れてしまっていた。
「ピクルゥゥゥゥゥゥ!」
何が起こったのか分からぬままに、勇花は雄叫びをあげながら背中の袋と共に鏡の中へと吸い込まれたのであった…。

77 :
今回はここまでです。次回は垣ママがルイズ達と対峙する所を書きたいと思います。

78 :
塩漬けわろた

79 :
ちょっと書いてみたけど思ったより時間と体力使うな。凝ると資料集め始めてしまうし。

80 :
そういえば安価形式の作品は無いな

81 :
ここはちゃんと小説形式になってないSSには厳しいからね。
まおゆうとかとのクロスならしょうがないだろうけど。

82 :
皆さんお久しぶりです。
予約がなければ8:50から投下はじめます。

83 :
 第十二話
 最強の雷! 陸上自衛隊決戦兵器出撃 (後編)
 
 再生怪獣 サラマンドラ 登場!
 
 
「くふふ、こんなチャチな武器で、このヨルムンガントに挑もうなんて、とんだ物笑いだったわねぇ。あなたたち?」
「くっくそぉ、離せっ! ぼくはお前みたいな女は好みじゃないぞ」
「おのれっ、わたしとしたことが不覚をとった。やめろっ、わたしはいい、こいつらに手を出すんじゃない!」
 ガリア軍の攻撃によって戦場と化し、煙をたなびかせるロマリアの森に絶叫が響き渡った。
 木々がなぎ倒された森の中に傲然と立ち誇る十体のヨルムンガント。その手には、首だけが動くありさまでギーシュとミシェルが
人形のように握られ、周りには、うめき声をあげて倒れ伏す水精霊騎士隊と銃士隊が、死屍累々たる無残な惨状をさらしている。
「ち、ちくしょう……ギーシュ、すまない」
 倒れた木の下敷きにされたレイナールが、首だけをなんとか上に向け、曇ったレンズごしに捕らえられたギーシュを見上げた。
 仲間たちは皆倒され、誰も助けることはできない。かすむ視線の中には、なんのダメージを受けていないガリアの騎士人形が
十体ずらりとならび、その頭越しにはロマリアを目指すガリアの大艦隊が悠然と浮かんでいる。
「完敗だ……」
 なにもできなかったと、悔し涙が浮かんできた。水精霊騎士隊、銃士隊ともに、もう戦える人間はひとりも残っていない。
 怪獣にさえ手を出さなければ、その考えは甘かった。ガリアの新兵器、巨大騎士人形ヨルムンガント、ハルケギニアで
もっとも魔法技術の進んだガリア王国の技術に、エルフの技術を加えて作られたそれは、浅はかな予測を打ち砕く怪物だった。
二十五メイルもの体格を持ちながら、スピード、パワーともに人間のそれと遜色はなく、さらに秘められた特殊な機能は
エルフの学者であるルクシャナの予想をも大きく上回り、彼女にすら身を隠すことを余儀なくさせていた。
「ハァ、ハァ……蛮人が、まさかここまでのものを作り上げるなんてね。わたしとしたことが、いつのまにか自惚れていたようね。
相手を甘く見て目を曇らせたあげくにこの様なんて、反省しなきゃ、いけないわ、ね」
 ルクシャナもまた、ひどい手傷を負わされていた。彼女は戦士ではないが、それでも並の人間の術者以上の先住魔法を
駆使することができるのに勝負にならなかった。今、かろうじてできることは気配を消滅させて、残った力で自分と、どうにか
救った数人の仲間の治癒を試みることだけだった。
「こんなことなら、もう少し魔法の練習もしておくんだったわね……悪いわねアリィー、結婚式は来世にお預けになるかもしれないわ」
 口出しがうるさいからと、ルクシャナは無理矢理置いてきた婚約者の顔を思い浮かべた。後悔先に立たず、いや、あとひとり
ふたりエルフの戦士がいても結果は同じであったろう。生まれつき強い力を持つ自分たちエルフと違う、人間の武器への
執着が生み出す破壊力を、計算に入れていなかった。
 そして、勝ち誇る笑みを浮かべてヨルムンガントの肩に立つシェフィールド。彼女は、紫にルージュを塗った口元を歪めて、
さらし者も同然にヨルムンガントの手の中でもがくふたりを見下ろして言った。
「うふふ、元気がいいわね。ロマリア軍もあらかた蹴散らして、退屈していたところに手向かってきた馬鹿たちがいたから
どんなものかと思ったら、女子供の寄せ集めとはね。あまりに若いのばかりだから驚いてしまったわ」
「ぶ、侮辱は許さないぞ侮辱は! ぼくたちは、誇り高きトリステインの水せ、ぐわぁぁっ!」
「それはご立派なことね。けど、少しは今の身の程をわきまえることをおすすめするわよ。今のあなたたちは、私のきまぐれに
命を文字通りに握られているの。このヨルムンガントの力なら、人間ごとき握りつぶすのはたやすいこと。吠え立てるよりも
命乞いをするほうが懸命ではなくて?」
「ば、馬鹿にするな。貴族が、そんな簡単に誇りを捨てると……うぉあぁぁっ!」
 ギーシュの虚勢も、ヨルムンガントがほんの少し握る手に力を込めるだけで悲鳴に変わった。全身の関節が無茶な力を
加えられたがための不快な音を立て、口からは内臓を圧迫された空気が唾液と共に吹き出していく。その凄惨なありさまに、
地面に倒れてまだ意識を保っていた彼の仲間は必死に呼びかけた。

84 :
しえん

85 :
「よせギーシュ、相手を刺激するんじゃないっ!」
 あの女は人の命をなんとも思ってはいない、うかつに勘にさわることを言えば殺される。しかし、骨が折れる寸前のところで
加減をさせるシェフィールドは、苦しむさまを楽しむ笑い声をあげて、仲間たちに見せ付けるようにヨルムンガントの手を
左右に振ってみせた。
「やめろっ! そいつはまだ半人前なんだ。指揮官はわたしだ、やるならわたしをやれ!」
 見かねたミシェルが身代わりになろうと呼びかけた。だが、シェフィールドはせせら笑って言う。
「だめよ、私はこの国のすべての人とものを消し去るように命じられているの。それに、どうせRなら若い子から順のほうが
より全員を苦しめられるでしょう? うふふふ」
 この悪魔めという言葉が喉から出かけて、ミシェルは歯を食いしばって飲み込んだ。この女を相手にそれを言っても
逆効果だということがわかっているからだ。
 シェフィールドは、ギーシュを気絶するかしないかギリギリのところで握る力を緩めると、周辺で倒れている水精霊騎士隊や
銃士隊にも、「逃げようとしたらこのふたりの命はないよ。いえ、それ以前にぷちりと踏み潰してあげるわよ」と前置きして、
焼け焦げたヨルムンガントの周りの地面を見下ろして、さらにせせら笑った。
「くふふふ、しかしさっきは楽しませてもらったわ。このヨルムンガントに、少人数で地雷を仕掛けにくるとは正直意外だったわ。
さすがにヨルムンガントとはいえ足の裏に装甲は張っていないからね。馬鹿正直に正面から向かってくるばかりのロマリア軍よりは
気が利いていたとほめてあげるわ……けど、少々この私をなめていたようね。うふふふ」
 悔しさ、怒り、絶望感が少年たちと銃士たちのあいだを駆け巡った。
 
 どうして、こうなってしまったのか。決して油断したつもりはない。自分たちの力を過信したつもりもない。
 が、事態は敗北を通り越して最悪の状況となってしまった。
 発端は、そう……自分たちは、ロマリアの民衆を戦火から逃すための時間を稼ぐ目的で、地雷を用意して敵の巨大騎士人形へと
忍び寄った。直接戦えるような相手ではないし、森に姿を隠しながら近づいて、地雷を設置したらそのまま逃げれば比較的に
安全だと判断したからだ。
「来たな、ガリアの化け物どもめ。ちくしょう、人を虫けらみたいに踏み潰しやがって、今から目にものみせてやるからな」
 ギムリが意気込み、声が大きいぞとレイナールにたしなめられていたときは、まだ余裕があった。銃士隊の訓練で、
気配を消して敵に近づく鍛錬は積んでいたし、もしなにかあった場合は後ろで相手を観察しているルクシャナが助けに
入ってくれるという安心感もあった。
 だが、その目論見はまったく通用しなかった。
 可能な限り息を潜め、使える者は『サイレント』の魔法を使ってまで、敵に気づかれることがないように努めた。なのに、
地雷を設置して逃げようとしたとたん、それまで悠然と前進を続けていた騎士人形が突然機敏に動き出して襲ってきたのだ。
気づかれていないと思っていた水精霊騎士隊と銃士隊はとっさの対応が遅れた。
「散開しろ! バラバラになって逃げるんだ」
 眼前まで迫った巨大な敵に対して、なんとかできた対応はそれだけだった。もうあと数秒あればミシェルの経験ならば
効率のよい命令を出せたろうが、迫り来る騎士人形の動きはあまりに速過ぎて個々に逃れるのが精一杯であった。
が、それも一時の時間稼ぎにしかならず、騎士人形たちは手に持った巨大な剣を振るって森の木々ごと隠れようとしていた
皆をなぎはらったのだ。

86 :
 響き渡る絶叫、飛び散る木々の破片と木の葉、雨のように降ってくる舞い上げられた土。それは火薬を伴わない砲撃であり、
何百台もの重機が暴走したに等しい、人工の暴風雨であった。
 むろん、その渦中にある人間はひとたまりもない。人間の脆弱な肉体は鉄木の散弾には耐えられず、もろくも倒されていく。
そんな仲間たちの危機に、ひと呼吸遅れたがルクシャナが助けに入った。
「まったく、誰かヘマしたのかしら。仕方ないわね、木々の枝よ、敵を」
 自然そのものに訴えかけるルクシャナの精霊魔法により、森の木々の枝が伸びてヨルムンガントの前に立ちふさがろうとした。
しかし、トライアングルクラスのゴーレムでも数秒は足止めできるはずの強度を持たせてあるはずの枝のバリケードは、なんと
騎士人形に触れる直前で、見えない壁にぶつかったかのようにはじかれてしまったのだ。
「あれは、カウンター! しまった、鎧にそんなものを!」
 ルクシャナは眼前の光景から、すぐさま今の現象が、外敵の攻撃から身を守るエルフの魔法・カウンターだと見抜いた。
想定が浅かった、あの魔法は一見しただけでは存在がわからないが、相手がエルフの技術を使っているのなら当然考えに
入れておくべきだった。そして、あの騎士人形にかかっているカウンターが叔父ビダーシャルの置き土産だとすると、自分の
魔法のレベルでは打ち破ることは不可能だ。
「叔父さまのバカっ! ああっ!」
 動揺して、視界の外にいた別の騎士人形がこちらに手持ちの大砲を向けているのに気づくのが遅れた。至近弾となった
砲弾の炸裂に巻き込まれて、数十メートルを一気に吹き飛ばされて倒される。彼女自身もカウンターを張って守ったが、
受け流すには威力がありすぎて、投げ込まれた茂みの中で意識を失わないのがやっとだった。
 連携などもはとりようがなく、どこに誰がいて、誰がやられたのかもわからないままに逃げ惑い、ひとり、またひとりと
倒されていく。それでも、彼らは絶対的に追い詰められながらも、なんとか敵を仕掛けた地雷に誘い込もうと体をひきづった。
しかし、騎士人形は地雷のありかを完全に把握しているように地雷を避け、あまつさえ剣を使ってすべてを自爆させてしまったのだ。
「そ、そんなバカな……どうして」
 わけがわからなかった。埋設した地雷はざっと四十個ほど、もちろん事前にバレないように細心の注意を払ったのに、
どうしてひとつ残らずありかがわかるのだ? やつらは本物の悪魔なのか? 少年のひとりは、伏せていた地面ごと
吹っ飛ばされたあげくに木に叩きつけられて気を失う寸前にそう思った。
 
 こうして、時間を稼ごうとした銃士隊と水精霊騎士隊の作戦はあっけなく崩壊した。
 ヨルムンガントはすべて無傷で、シェフィールドもかすり傷も負っていない。そのシェフィールドは、目障りな伏兵どもを
全滅させたのを確認すると、先行していたサラマンドラを止めさせ、ヨルムンガントの足元を見回してほくそ笑んだ。
「他愛ない。このヨルムンガントに生身で挑む勇気だけは褒めてあげるけど、死に急いだだけだったわね。でもまあ、
予定を上回りすぎるくらいに退屈だった進撃のいい気分転換にはなったわ。そのお礼に、少しだけ長生きさせてあげるわ。
ロマリアももう目前だし、休憩がてら私の遊び道具としてね」
 そう言うと、シェフィールドは倒れた人間たちの中から正確に指揮をとっていたふたりを見極めて、ヨルムンガントに
拾い上げさせた。むろん、そのふたり、ギーシュとミシェルにはもう逃れるだけの力は残されてはいなかった。
 
 それが、彼らを襲った理不尽のすべてだった。 

87 :
 全滅し、戦闘能力を完全に喪失した銃士隊と水精霊騎士隊。無傷なものはひとりもおらず、それも数分後には
全員戦死に変わるかもしれない絶望的な状況。起死回生の策は、なかった……
”こんなところで、終わるのか……”
 魔法力も体力も尽きた。いやそれ以前に、傷ついた体は土に吸いつけられているかのように地面から起き上がれず、
かろうじて動かせる視線には公開処刑も同然に痛めつけられる彼らのリーダーの姿が映るばかりだ。
 まさに死を待つ敗残者のみじめさ。それをあざ笑い、シェフィールドは全員に聞こえるように自慢げな様子で語った。
「くふふふ、苦しいでしょう、悔しいでしょうね。けど、このままなにも知らずに死んでいくのは哀れすぎるから、ひとつだけ
教えておいてあげるわ。どうして、完璧に隠れ潜んでいたつもりのあなたたちの居場所が私に筒抜けだったのか? 
あなたたち、この騎士人形、ヨルムンガントを少々できのいいだけのゴーレムだと侮っていたでしょう? 残念ながら、
ヨルムンガントは戦いに負けないためにあらゆる技巧をこらしてあるわ。例えば、私のこのモノクル」
 シェフィールドの外してみせた片眼鏡、それは一見なんの変哲もないアクセサリーのように見えたが、よく見ると
レンズに複数の映像が同時に映りこんでいるのがかすかに見て取れた。
「このモノクルを通して、ヨルムンガントの視界はすべて私も共有することができるのよ。それも、ただ映し出すだけなんて
単純なものじゃなくて、一体ごとに通常の視界から、生き物の体温に反応するもの、動く物だけを映し出すもの、魔法力の
反応を投影するものと様々に分かれているわ。これらを駆使すれば、どんなにうまく隠れても無駄というわけ。わかった? 
あなたたちは最初からエピローグの決まったピエロのダンスを踊っていたというわけ」
「貴様ぁ、人を使って遊んでいたのか。これは戦争なんだぞ、人が死んでいるんだぞ」
 自分たちの命がたとえではなく本当にゲームの駒として弄ばれていたことにギーシュは憤った。
 ここに来るまでにも、重傷を負って運ばれていく兵隊や村人、白い布をかぶせられて動かない人たちを見てきた。
彼らにもひとりひとり人生があっただろうに、それを他人の身勝手で奪われて、しかも奪われたものはもう戻らない。
 通り過ぎるときの悲痛な泣き声と怨嗟の声、戦争だから仕方ないとそのときは割り切ったつもりでいたが、この女の
残忍さには怒りを抑えることができない。しかし、返ってきたのは嘲笑だった。
「くふふふ、そうよ戦争よ。戦争だから、敵はRの、当たり前のことでしょ? けど、それだけじゃつまらないから、
少しでも楽しく演出してみようと思ったの。その気なら、あの怪獣にまかせて全員一気に焼きRこともできたのよ。
わかった? この私の慈悲深さを」
 悔しげに視線を動かすと、距離にして数キロメートル。シェフィールドの視界から離れない範囲で、うなり声をあげて
待機しているサラマンドラが見えた。周辺からは黒煙と炎が見え、口に銜えた大砲を無造作に吐き出したところを見ると
待ち伏せしていた別のロマリアの部隊を壊滅させたらしい。
「それなりの精鋭だったらしいけど、相手が悪いことを理解もできない馬鹿だったわ。あんなのはもうつぶし飽きてたから、
少しは頭を使ってきたあなたたちは楽しませてもらったわ。それと、ヨルムンガントのテストになってお礼を言いたいくらいだけど、
あなたたちが悪いのよ。竜の尾を踏んだら食べられても焼かれてもそれは自業自得というものなの」

88 :
「え、偉そうに、汚い侵略者のくせに、ぐあぁぁっ!」
「口の減らない小僧ね。命乞いしたほうがまだ長生きできるチャンスがあるのがわからないのかしら? 頭の悪い子は
嫌いなのよっ!」
 ギーシュを握るヨルムンガントの力が上がった。人間の骨格が耐え切れる限界を超えた圧力が加えられて、
生命の危機へと迫るレベルへと近づいていき、悲鳴が断末魔と化すにいたって、ついに耐え切れずにミシェルが叫んだ。
「やめろっ! そんなバカを痛めつけてなにが楽しい。この悪趣味な撫女、人形だよりで弱い者にしか手を出せないのか!」
「フン、そうして私を怒らせてこいつを助けようという魂胆なんでしょう。あいにくその手は乗らないわよ。私の受けた命令は
この国の人間を、少しでも苦しめた上で残らず始末すること、それが至上であり大前提なのよ」
「どこまでもクズが。いや、本当のクズはお前の主人のガリア王だ。無能王なんて蔑称なんて生ぬるい、下水の犬畜生にも
劣る悪趣味の権化、豚小屋の中では飽き足らずに外の世界にまで意地汚く食い散らかしにきたか!」
 その瞬間、それまで愉快そうに哄笑していたシェフィールドの顔色が変わった。
「なんですって……?」
 蟻を踏み潰して遊ぶ子供のようだった瞳が鋭く尖り、声に重々しさが加わる。
 熱狂が冷め、別の狂気が空気に充満していくのを皆は感じた。シェフィールドの眼差しがギーシュから離れ、同時に
ヨルムンガントの手が緩んで、彼の体が零れ落ちていく。
「ギーシュ! くっ」
 たまたま近くにいた水精霊騎士隊員のひとりが『レビテーション』をかけ、彼は寸前で大地の女神とのキスを回避した。
そのまま、どうにか引き寄せて治癒の魔法をかける。モンモランシーのような専門の使い手と違って、よくて痛みを
和らげる程度しかないが、それでもショック死だけは免れることができる。
「大丈夫か?」
「ああ、レディの手にかかって死ぬならそれもと思ったが、どうやらそうもいかないらしい。ぼくはつくづくいいところで運がない」
「それだけ減らず口が叩ければじゅうぶんだ。骨をつぶされる前でよかったよ。今、痛み止めを」
「ま、待て、ぼくはどうでもいい。それより、副長どのが危ない。ぼくでもあの女のすさまじい殺気を感じた。こ、殺されるぞ!」
 ギーシュの引きつった声は、的中率九十九パーセントの予言だった。いまや、シェフィールドの意識の中に遊びは残っておらず、
強烈な怒りと憎悪が支配していた。
「よくも言ったわね。ゴミの分際で、よくもジョゼフ様を侮辱してくれたわね。このゴミがぁぁぁっ!」
 シェフィールドの怒号。同時に、彼女の額が不気味に輝き、ヨルムンガントの手がミシェルの体を激しく握り締めた。
「うがあぁぁぁぁっ!!」
「許さない。嬲り殺してやるつもりだったけど、もう容赦はしない! 望みどおり、まずお前から血祭りにあげてやる。
ただし簡単には死なさない。生きていることが嫌になるくらいの苦痛を与えて、身も心も壊してから地獄に落としてやる!」
「ぎゃあぁぁっ!」
 いきなり骨が数本一気に砕ける鈍い音が響いた。さらに吐血し、銃士隊の制服が紅く染まる。
 殺される。ギーシュのときのような遊びではない。今、この瞬間に命を奪おうとしている。ヨルムンガントの力で本気で
締め上げたら、人間など跡形もない。いやそれどころか、自分の体が壊れていくほどの痛みを直に注ぎ込まれたら、
シェフィールドの言うとおり、体より先に心が壊されてしまう。

89 :
「ふ、副長ぉぉっ!」
「よ、せ……く、来るな」
「へえ、もう全身の骨がガタガタでしょうに、まだ正気を保っていられるとはやるわね。でも、その精神力の強さが
かえってお前を苦しめることになるのよ。さあ、もっと強く締め上げてやるよ」
「が、があぁぁっ!」
 ミシェルを握り締めているヨルムンガントの手から鮮血が滴って地面に落ちる。その凄惨すぎる光景と悲鳴に、
少年たちの中には嘔吐を耐え切れない者も現れたが、数人の少年と銃士隊員は勇敢だった。かなわないと知りつつ、
肉弾も同然にヨルムンガントに挑んでいったのだ。
「でえぇぇぇぇやぁ!」
「クズどもが、慌てなくてもお前たちも生かしてはおかないわよ」
 足を降るだけで、ヨルムンガントに向かってきた人間たちは全滅した。ものの数秒で動ける者はいなくなり、虐殺は
屍山血河へと転落を早める。
 ヨルムンガントに倒されたうめき声、まだ生きてはいるものの、一思いに息の根を止められたほうがまだ幸せかもしれない。
生き残れたとしても、仲間たちが虐殺されるのを見ながら、最後は生きたまま踏み潰されるしかない。立ち上がれる者はなく、
わずかに力を残していたルクシャナも、身を潜めながら己の無力をかみ締めるしかできない。
「せめて私に、叔父さまのような力があれば。大いなる意志よ、もう人間の神でもなんでもいい。こんな終わり方なんてあんまりよ!」
 はじめて彼女は人間のために祈った。研究欲第一で仲間意識の希薄だった彼女に芽生え始めた、本人もまだ自覚していない
変化の発露がここで……だが、それも無意味に終わるかもしれない。屍に変わってしまえば、どんな人間も同じなのだから。
どんな可能性も、その人間がRば途絶える。それがどういう意味を持つかわからない者だけが、命を奪うことを楽しむ。
 シェフィールドは主人を侮辱された怒りのままに嗜虐の喜びに身をゆだね、ミシェルは自分の世界が急速に暗くなっていくのを感じた。
「さあて、ただの人間の割には持ったほうだけど、そろそろ楽にしてあげましょうか」
「サ、サイ……がはっ」
「んん? 恋人の名前かい? けど残念。もう喉が血であふれてしゃべることもできまい。さあ、ジョゼフ様を侮辱したむくいだ。
体中の穴という穴から内臓を吹き出して、R!」
 ヨルムンガントに憎悪を込めた魔力が送り込まれ、ミシェルの全身の骨が言葉の代わりに断末魔をあげる。シェフィールドは
高笑いをあげ、お前を殺した後は仲間たちも皆同じようにして、森の木に磔にしてさらしてやると叫ぶ。そしてそれを誰も
止めることはできない。
 狂気の祭り、そこに捧げられた生け贄は自らの血と肉を捧げなければならない。悲鳴を賛美歌とする邪神の宴、
最高潮を迎え、悲劇という名の顎がミシェルの魂をも飲み込もうと牙をむき、弱弱しくも鼓動する心臓をついに噛み潰そうとする。
 
 だがそのとき、一閃の雷が水平に大気を切り裂き、白い矢となってヨルムンガントの胸に突き刺さった。

90 :
「なっ、に!?」
 シェフィールドは、網膜を焼いた閃光に戸惑って思わず目を覆った。
 なんだ今の光は!? まだ伏兵が? 一瞬雷が見えたところからライトニング系の魔法攻撃か? しかしヨルムンガントの
魔法探知装置に反応はなかったぞ。
 混乱しかけながらもシェフィールドは事態を把握しようと自分の周りを確認した。大丈夫、自分の体に異常はない。
ヨルムンガントは? いや心配ないはずだ。エルフのカウンター魔法に加え、ガリアの冶金技術の粋を集めて作った
高硬度の鎧を身にまとったヨルムンガントには、たとえスクウェアクラスの魔法が直撃したとしても耐えられるように
作ってあるはずだ。
 が、シェフィールドの鼻に焦げ臭いがたなびいてきたかと思った瞬間、彼女の乗っているヨルムンガントがぐらりと揺らいだ。
 
「なに!?」
 
 とっさに飛び上がり、別のヨルムンガントの肩に着地するシェフィールド。と、同時にコントロールを失ったヨルムンガントの手から
血だるまのミシェルが零れ落ちる。
「危ない!」
 あの状態で地面に叩きつけられたら即死だ。そのとき、唯一わずかに余力を残していたルクシャナが、全力で浮遊の魔法をかけた。
「大気の精霊よ。お願い!」
 距離がある。残った力も少ない。だが、この魔法だけは絶対に成功させねばとルクシャナは力を込めた。
 ミシェルの体が地面との衝突寸前で浮き上がり、ヨルムンガントは大地に叩きつけられる。その胸の装甲は溶けて内部は
焼け焦げており、シェフィールドは息を呑む。そしてその隙を突き、ミシェルはそのまま宙をすべってルクシャナの隠れている
場所へと連れてこられた。
「う、お前……」
「しゃべらないで、私の治癒魔法はあんまり強くないの。うぐっ、よくこれであなた生きてるわね」
「はは、痛いのには慣れてるからな……しかし、今のは、いったい」
「ふふ、どうやらあなたのはっぱが効いたんじゃない? ほら、あの坊や、ずいぶん派手に登場のようよ」
「ああ……なにせ、わたしの見込んだ男だからな」
 喉を詰まらせていた血を吐き出してミシェルはつぶやいた。と同時に、安心感とともに体の痛みが消えていくのを感じた。
”もう大丈夫だ……あいつが来てくれたなら、きっと。どんな手を使ったかしれないが、あいつは、みんなをいつも守ってくれたから”
 だから最後まで希望は捨てない。どんな絶望があっても、それを打ち砕く希望は必ずある。世界は、自分なんかが思ってるより
ずっと広くて未知の可能性に溢れている。それを、あいつが教えてくれたんだから。
 
 ヨルムンガントを一撃で倒し、地に引き倒した稲妻。それはハルケギニアの常識を超え、尽きかけていた若者たちの命脈を保った。
 しかし、無から奇跡が生まれることはない。奇跡が起こる場所には、必ず人の姿がある。

91 :
 破壊されたヨルムンガントから視線を流し、シェフィールドは犯人の姿を探し求めた。
 そしてそれは見つかった。破壊されたヨルムンガントから続く焼け焦げた木々の先、小高い丘を通る街道に、そいつらは
こちらを見下ろすように布陣していたのだ。
「な、なんだ、あれは?」
 シェフィールドだけでない、ギーシュたちや銃士隊も目を丸くした。
 それは、あまりにも彼らの常識からかけ離れた車両であった。すべてが金属で作られ、その上部についた腕部の先には
巨大な皿のようなものがこちらを向いている。
 なんなんだあれは? 敵か? 味方か? だがその疑問は、先頭車の運転席に座ったふたりを見つけて、少年たちの
歓呼の声で証明された。
「サイト!」
「ルイズ!」
 間違いない。ロマリアに残っていたあのふたりだった。あのふたりが、なにがなんだかわからないが、とにかくすごそうなものを
持って駆けつけてきてくれたんだと彼らはその場で無条件で信じ、それはまったく間違っていなかった。
 一体減じ、九体になった巨大ゴーレムの群れに向かってパラポラを向ける四両のメーサー殺獣光線車。日本人が怪獣の
猛威に立ち向かうために生み出したかつての超兵器がついに到着し、その窓から自らの敵たちを見据えるルイズと才人のふたりは、
すでに戦うことを覚悟した目をむいていた。
「命中よサイト! すごい! すごいわこの武器。でも、みんなひどくやられてる。急がないと」
「わかってる……悪いみんな、おれがつまらねぇことで迷ったばっかりに……」
 才人は、あと一歩遅かったらと背中に冷たいものを感じた。ロマリアからここまで、可能な限りの強行軍を続けてやっとたどり着けた。
ハルケギニアの道は当然アスファルトなど敷かれていないが、昭和四十年代の日本の道路を想定して走破性能を決めている
六六式メーサー車は悪路にも強い。
 ディーゼル音を響かせ、街道を地響きと砂煙をあげて進撃するメーサー部隊には、ロマリア軍も道を開けて呆然として見送っていた。
 そして、たどり着いた戦場。そこでおこなわれていた惨劇を見て、才人のなにかが切れた。
「シェフィールド、ようやく面をおがめたな。よくも、よくもおれの仲間たちをやってくれたな。今日だけは、おれも正義の味方でいるつもりはねえぞ!」
 才人は本気で怒っていた。躊躇したがために皆を危険にさらしてしまった自分のふがいなさへ、これまでにも非道を繰り返し、
今また自分の大切な人たちを傷つけたシェフィールドへの怒りが混ざり合い、一気に溶岩に変わって噴き出した。
「メーサー砲、全車一斉攻撃用意! 一号車有人操作、二号車から四号車は自動照準射撃。ルイズ、あのガラクタ人形ども、
ひとつ残らずぶち壊すぞ!」
「ええ! 存分にやりなさい。あの女に、一方的にやられる怖さを思い知らせてやるのよ」
 機械音をあげて、四両のメーサー殺獣光線車が、そのパラボラをヨルムンガントへ向けて照準する。才人だけではなく、ルイズも
ここへ来るまでにメーサー車のマニュアルを才人に教えられながら読み込んでいた。
 今、この場に限れば四両のメーサー車はその力をフルに発揮することができる。その力を見せるときは今だ。
 
 一方、シェフィールドは眼前に現れた、見たこともない兵器の群れに困惑させられていた。
「私のヨルムンガントを、ただの一撃で、だと? あそこまで、たっぷり二リーグ以上は離れているはず。あれは、トリステインの
虚無? いったい、なにをしでかした!」
 得意の絶頂で、想定外の横槍を入れられたことでさしものシェフィールドも動揺を隠しえなかった。

92 :
 倒されたヨルムンガントは、先住魔法のカウンターと強固な鎧のおかげで最大の戦列艦の艦砲にも耐えられるように作ってあるはずだ。
ましてや魔法など、エルフの先住はおろか、計算上では虚無の魔法でも跳ね返すことができるはずなのに、どうしてだ? あれはなんだ? 
あんなものがロマリアにあるなんて聞いていないぞ。まさか、あの男……
 しかし、シェフィールドの困惑はメーサー車部隊の放つ機械音で中断を余儀なくさせられた。パラボナが動き、そのすべてがこちらに
向けられる。むろん、シェフィールドに科学的な知識などはないが、彼女は直感的に背筋に冷たいものを感じた。
「う、なんだ? なにをしようとしている? いや、あれがなんであれ、たかが四両しかない。それに引き換え、こちらはまだ
九体のヨルムンガントがいる。なんだかわからないが、大砲の一門も積んでいない、あんな車に負けるわけはない!」
 シェフィールドは意図して不安を無視することに決めた。見たことも聞いたこともない敵の正体など、考えてもわかるわけはない。
ヨルムンガントがやられてしまったのは事実だが、まだこちらの戦力はじゅうぶんだ。なにかする前に数で押しつぶしてやる!
 
 だが、焦ったシェフィールドは勝負を急ぎすぎていた。彼女の前に現れたのは、一時期地球最強と呼んでも過言ではなかった
対怪獣兵器なのだ。
 メーサー砲の照準モニターに映ったヨルムンガントに向けて、才人はついに喉から声を絞り出して叫んだ。
「全車、攻撃開始!」
 その瞬間、メーサー砲のパラポラが白熱光に包まれ、中央部から収束された稲妻状の光線がいっせいに放たれた。
四条の白色の雷のクインテット、それは空気を焦がす電子音を奏でながら先頭を走っていたヨルムンガントの胸や腹に
それぞれ直撃し、いずれも鎧もカウンターも関係なく爆砕してしまったのだ。
 白煙をあげて崩れ落ちるヨルムンガント。光線が命中した箇所は焼け焦げて、もうヨルムンガントは動けない。
 勝利の笑みを浮かべる才人とルイズ。そして破壊されたヨルムンガンドを見て、絶望の淵にいた水精霊騎士隊と
銃士隊の胸には希望の灯が赤々と燃え滾ってきた。
「すげえ! サイトの奴、稲妻を吐き出す箱なんて、とんでもねえもの持ってきやがったぜ」
「あいつには、いつもながら驚かされるな。よしみんな、今のうちに移動するぞ。軽傷の者は重体の者を助けて後退だ。
うかうかしてると巻き添えを食らうぞ」
 大急ぎではじまった撤退。しかし彼らの心に敗北感はなかった。反省すべき点は多いが、後悔していても始まらない。
自分たちはやれる限りのことをした。あとは才人を信じてまかせるのみだ。
 対してシェフィールドは、今度こそ信じられなかった。
「なんなのよ、あの雷は! こ、このヨルムンガントを」
 圧倒的な破壊力、これがメーサー殺獣光線車の放つ収束マイクロ波の威力であった。マイクロ波、一言で説明すれば
電子レンジでものを温めるのに使われているものと思ってもらえればいいが、それを格段に強力にしたものである。
照射された収束マイクロ波の光線は、対象に命中すると分子を超振動させて水分を一瞬で沸騰させ、焼き尽くす。
 ただし、分子運動に働きかける特性上、水分を含まない金属や無機物に対しては効果が軽減してしまうのだが、
ヨルムンガントはゴーレムであってロボットではなかったのが災いした。鎧の下の本体には、機動力を上げるために
擬似的な生体部品が使われており、それには当然大量の水分が含まれている。 

93 :
 つまり、ヨルムンガントに照射されたメーサーは、その高出力でカウンターと鎧を貫通し、本体を瞬間過熱して焼き殺したのだ。
 この殺傷力はすさまじく、普通の生物の何倍もの生命力を誇る怪獣の細胞すら焼き尽くすことができる。まさしく自衛隊の
切り札なのだ。
 シェフィールドは不幸にもそのことを知らなかった。メーサー車が、対怪獣用兵器だと知っていたら、ヨルムンガントでは
正面対決は無理だと判断しただろう。が、あいにく才人はそこまで懇切丁寧に事前説明してやるようなサービス精神はなかった。
 あっというまに四体を撃破され、手持ちの戦力が半減してしまったシェフィールドは、今度こそ危機感を強くした。
「くうっ……馬鹿なっ」
 残念だが、敵の兵器の威力はヨルムンガントの耐久力をはるかに上回っているようだ。やられたヨルムンガントは
完全に破壊され、二度と使用はできそうもない。次の攻撃を受けたらひとたまりもない。次の、次の指令はどうする!?
「そうだ、散れば。散開して、あの兵器の照準を混乱させればいいのよ!」
 とっさにシェフィールドは、砲兵を相手にする際の戦法をとることにした。ヨルムンガントの瞬発力はほぼ人間のそれに
相当する。普段はその防御力にものをいわせて回避はほとんどおこなわないが、やろうと思えば左右に素早く跳躍するとことが
可能なのだ。巨人の体躯に素早さを加えれば、大砲などでは照準が追いつかない。そして戸惑っているところに一体でも
接近できれば、あとはこちらのものだとシェフィールドは自分の策に自信を持った。
 ただし、シェフィールドの基準にしたハルケギニアの砲兵と、メーサー車の射撃性能には大きすぎる開きがあった。
 散開し、明らかに照準を外しにきたヨルムンガントたちを見て、才人は慌てるでもなくほくそ笑んでいた。
「ボケが、そんなトロさで逃げられるとでも思ったか。みんなの痛み、のしつけて返してやるぜ!」
 すでに各メーサー車には次のターゲットがセットされている。この状態になってしまうと、あとはロックされた目標へと
自動追尾による攻撃が継続されるのだ。コンピューターによるオート制御、ハルケギニアの人間では想像のしようもない。
 しかも、それだけではない。メーサー車の利点はもうひとつ。それは、放射を継続しながら敵を追えるという点だ。
 シェフィールドは、ヨルムンガントを散開させて、これで一気にやられることはないだろうとほっと息をついた。しかし、
次の瞬間には自分の甘さを思い知らされた。メーサー車はパラボラから光線を放ち続けたまま放射機を旋回させ、
逃げるヨルムンガントに追い撃ちをかけてきたのだ。
「稲妻が、追ってくる!?」
 森の木々を焼き切りながらメーサーが追尾してくる。ヨルムンガントは必死で走るが、あっというまに追いつかれて、
肩を撃たれ、足を撃たれ、倒れこんだところに集中攻撃を受けて破壊されていった。
 シェフィールドの誤算、それは狙いをつけてから撃ってくる”点”の攻撃なら回避のしようもあるが、撃ちながら狙ってくる”線”の
攻撃は容易には避けられないということを知らなかったことだ。メーサー車は素早く動き回れる怪獣を撃てるよう想定して
開発され、唯一の実戦投入となった怪獣との戦いでは、人間並みに素早く動き回るそいつを逃がさずに一方的に打ちのめす
だけの射撃性能を見せているのである。
 しかし、メーサーを放射したまま怪獣を追尾するには並大抵ではまかなえないほどの電力が必要となる。そのため、
メーサー車の心臓部には原子炉が搭載されており、小型発電所とさえ言っていい。その大電力にまかせて長時間
放たれるメーサーの威力は、通常の光線砲を大きく上回るのだ。

94 :
 森の中に倒れこんでのた打ち回るヨルムンガントを容赦なく焼き尽くしていくメーサー砲部隊。四両のメーサー車が
再びそれぞれ一機ずつのヨルムンガントをくず鉄と土くれに変え、ここに三分と経たずしてシェフィールドのヨルムンガント
部隊は壊滅した。
「お、おのれ。おのれおのれっ! バケモノたちめ」
 自分とジョゼフのために勝利の美酒を運ぶはずだった人造の巨人兵たちは、その靴底で蹂躙してきたロマリア軍と
同じように、圧倒的な力によって抵抗することもできずにねじ伏せられた。残ったのは、自分が乗っている一体のみで、
シェフィールドはその一体とともに森の中に伏せて隠れ、時間を稼ぐことしかできなかった。
「この私が、こんな屈辱を……おのれ、おのれえっ」
 全力を出したつもりでも、まだ相手を過少評価していたことをシェフィールドは思い知らされていた。
 悔しいが、敵の秘密兵器はヨルムンガントなど歯牙にもかけないくらい強力らしい。あんなものがあることが
わかっていたら……いや、勝負を焦って突貫してしまったのは自分だ。最初の一体を一撃で倒されたときに警戒して
後退していたら、追撃を受けたとしても数体は残ったかもしれない……いいや、それこそ後知恵だ。終わった後なら
なんとでも言える。問題は、どうやってあの化け物たちを倒すかだ。
 思えば最初にロマリアを攻めるよう進言したのは自分だ。なのにこの醜態では、自分がジョゼフさまの顔に泥を塗ってしまう。
敵にあんな兵器があるのでは、ロマリア占領など不可能だ。まだどれだけあるかわからないが、両用艦隊で空襲を試みても
上空にたどり着く前に全艦撃沈されてしまうのが関の山だろう。
「だがせめて、あの鉄の箱だけは破壊しなくては……ジョゼフさま、私にお力を」
 これだけはと、肌身離さず持っているジョゼフの肖像画を見つめてシェフィールドは決意した。
 自分に残った手札は、ヨルムンガントが一体に、近空にいる両用艦隊。これをそのままぶっつけても、全滅させられるのは
火を見るより明らかだ。特に両用艦隊はロマリア侵攻の要、絶対に消耗するわけにはいかない。
「ならば、理不尽なバケモノには理不尽な怪物を当ててやる。できれば、私だけの力でジョゼフさまに勝利を献上したかったが、
もはや是非もない」
 シェフィールドは最後の切り札を投入することに決めた。
 怪獣サラマンドラが雄たけびをあげて、ヨルムンガントの倍以上の巨体で森を圧しながら進んでくる。
 対し、才人も勝利ムードをぬぐい捨てて、緊張した面持ちで照準機の中の巨体を睨んでいた。
「来たなサラマンドラ。ようやく本命がご到着ってわけだ」
「サイト、この車の火力で、あいつを倒せるの?」
 ルイズが、引きつった声を出す才人に不安げに尋ねた。
「わからねえな。ただの怪獣ならともかく、あいつは特別だ。気を抜くと、死ぬぜ」
 サラマンドラがいかにやっかいな怪獣かは、頭に叩き込んであるつもりだ。初代はUGM、二代目はGUYSを相手に猛威を
振るい、一筋縄ではいかない相手だということは重々承知している。
 一番確実な方法は、ウルトラマンAに変身することだが、ウルトラリングは光らず、またキリエルとの夜以来、ルイズにも
才人にもエースの声は聞こえなくなっていた。
”きっと、今のおれじゃあウルトラマンになる資格がないってことなんだろうな。違いない……今のおれはとんでもない
ヘタレに成り下がっちまった。ごめん北斗さん、今のおれには正義がなんなのかわからなくなっちまった。だからおれは、
今日だけは利己的に戦ってやる。おれの仲間を傷つけたシェフィールド、全力でてめえは叩き潰してやる”
 自分の痛みなら我慢もできる。しかし大切な人を傷つけられる痛みは耐えられるものではない。
 死神にさらわれかけたミシェルを見たときに才人の胸を芽生えた、焼かれるような、熱すぎる思い。とても押さえつけられるものではない。
 また、ルイズも、激情にとらわれた才人の危うさを感じて彼に寄り添う。
「サイト、落ち着いて。あんたひとりだけの戦いじゃないのよ」
「わかってる、わかってるよ……くそっ、死なないでくれよミシェルさん。みんなの仇は、おれが討つ!」
 出口の見えない暗い迷宮をがむしゃらに走る才人。戦う意義を見失って、それでも戦うその先に真実の出口はあるのだろうか。
 
 メーサー殺獣光線車vs怪獣サラマンドラ。
 才人vsシェフィールド。
 ハルケギニアの明日を賭け、避けられない戦いの火蓋が、今切って落とされる。
 
 
 続く

95 :
以上です。メーサー車vsヨルムンガントのバトル編、お楽しみいただけたでしょうか。
この話のために×メカゴジラほかいろいろ見直してみましたが、やはり東宝映画の超兵器は最高のデザインと演出です。
語りだしたらきりがないですが、こうして得られたノウハウがウルトラシリーズも支えていたんですね。
 
本作のメーサー車は昭和シリーズの六六式をベースにしていますが、演出や展開の都合でvsシリーズをやや混ぜているところもあります。
そのため、やや似て非なるものと見てもいいでしょう。
才人が扱えることに関しては、GUYSの勉強の成果ということでお願いしますね。いやほんと。
 
では次回、決着です。トリコの映画も見てきてパワーももらったし、がんばって書くぞっ!

96 :
乙。
ウルトラマンらしくはないけれど、人としては当然の怒りだわな。
シェフィールドはここではどうなるんだろ。
外道には外道なりの死に方がお似合いだと思うが・・・。

97 :
ウルトラマンの人、乙ですー
最近、人が少なくて寂しいのう

98 :
原作者が亡くなって勢いが落ちた気がする

99 :
お前ら
精神を加速させろ

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