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2012年2月エロパロ55: 【何発でも】腹責め専門SS・その9【叩き込め】 (344) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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【何発でも】腹責め専門SS・その9【叩き込め】


1 :11/11/17 〜 最終レス :12/02/11
例えば、
◆強気な優等生娘がスケバングループに拉致されて
  腹を殴られて悶絶したり、
◆格闘娘が手足の自由を奪われて、鍛えぬいた6パックの
  腹を延々と殴られて腹責め拷問されたり、
◆憎い仇の子種を孕まされた女戦士が、切腹して自害したり、
というような、腹パンチから切腹にわたる腹責めシチュSSのスレです。
オリジナル・二次問いません。
小説以外にも、腹責め系のネタなら大歓迎。(プロット投下など)
まとめサイト
ttp://thinker.web.fc2.com/index.html
腹責め専門SS避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2964/1241429062/
前スレ
【何発でも】腹責め専門SS・その8【叩き込め】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303793228/
【何発でも】腹責め専門SS・その7【叩き込め】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1279806388/
【何発でも】腹責め専門SS・その6【叩き込め】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1244442849/
【何発でも】腹責め専門SS・その5【叩き込め】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1229223999/
【ソフトでも】腹責め専門SS・その4【ハードでも】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209903187/
【嘔吐】腹責め専門SS・その3【子宮潰し】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1196431261/
【嘔吐】腹責め専門SS・その2【子宮潰し】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174024879/
腹責め専門SS
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150474532/

2 :
>>1
乙です

3 :
スレを擬人化すれば・・・
腹責めスレは荒らしの執拗な、じわじわ効いてくるボディブローに必に耐えながら
9ラウンドめもまだ立ち上がる健気な健闘美少女ってとこかw

4 :
ほす

5 :
グチュッ
ドボッ
ドムッ
ボグッ
ミシッ

6 :
>>5
もうこれだけで興奮してしまうのが悲しい

7 :
どぼんっ

8 :
ぼちゅん

9 :
需要も供給もないなら、もうスッパリと落とそうぜ…

10 :
ぐふっ
げふっ
あうっ
うぐっ
ぐあっ
あーっ
うううっ…

11 :
腹パ参加した職人のリア充っぷりにファビョった池沼1人でこんな惨状になるのは哀しいが
正直もう落としてもいいと思う
精力的に活動してるのは外部の55氏だけだし、恭子の人はTwitterでもう関わらない発言してるし
ここ無くなって困るのは例の池沼だけだろ?

12 :
ことパンッ!の人はまだ続き書きたいって言ってたし、
恭子の人だってクレカの話投下して支援してくれてたから、
完全に終わった訳ではないと思う。
ただ肝心の住民にまるで盛り上げる気配がない以上、長続きはしないだろうな

13 :
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroanime/1286713698/
こっちでどうぞ

14 :
前スレの女教師の人(女剣士も書いてた)の文章がかなり好きなのだが…
なるべく落としたくないぜ…

15 :
クラスの女の子に腹パンしたら四者面談する羽目になった
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1322631459/
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 14:42:17.72 ID:S/bW5Ili0 [2/33]
http://i.imgur.com/F61oL.jpg
昨日この画像みつけて、実際にクラスの子のお腹殴りたくなって実行した
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 14:43:35.22 ID:S/bW5Ili0 [3/33]
その子とは話したことも殆どない
ただクラスで一番可愛かったから殴る対象に決めただけ
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 14:47:57.48 ID:S/bW5Ili0 [5/33]
>>14
昼休みに先生が呼んでるって廊下に呼びつけて思いっ切り殴りつけた

16 :
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 14:49:11.06 ID:S/bW5Ili0 [6/33]
>>22
そう
全力で一発いれるって決めてた
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 14:54:31.00 ID:S/bW5Ili0 [9/33]
>>37
お腹抑えてずっとうずくまってた
友達に抱きかかえられて保健室につれてかれた
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 15:09:31.75 ID:S/bW5Ili0 [19/33]
>>122
グー
羽毛ぶとんみたいな
嗚咽みたいな声は出してたけどわからない
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 15:10:31.70 ID:S/bW5Ili0 [20/33]
うずくまってたのみて勃起した

17 :
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 15:13:28.63 ID:S/bW5Ili0 [21/33]
>>152
ぶっちゃけよくわからなかったけどうずくまってる姿は凄く興奮した
753 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/30(水) 19:01:26.21 ID:S/bW5Ili0 [33/33]
(多分)女の子の家から電話かかってきて父親が平謝り
あの子の内臓傷ついたらしい
さっき両親が病院行った
俺はくるなということで今家に1人
女の子かわいそす(´・ω・`)

18 :
だからリアルであってもしょうがねーだろつってんのに
二次だから良いんだよ
しかもVIP

19 :
リアルだとかなり簡単に内臓傷つくんだな

20 :
>>14
俺もあれ結構好きだった。
確かに落ちたら寂しいのもあるんだよね。
保守用に今度何か書いてみるわ。

21 :
男→女はあぶないので
女→女が流行る

22 :
ごぽっ

23 :
>>19
昔黒人に二発殴られただけで内臓破裂してんだ日本人男性とかいた気がする
男性でこれだからな

24 :
保守用に投下します。
腹責め描写は少なめです。
長くなったので完結していませんが、続きは改めて投下します。

25 :

 立ち並ぶビルとビルの隙間に、藍色の夜空が染み渡っている街並。
真っ直ぐに伸びた大通りには、だた1つの光さえ灯ってはいない。
あらゆる窓に灯は見える事なく、全ての信号機は停止していた。
この街はんでいる。
時折見える赤い光が、ビルの壁面をぼんやりと照らしては、すぐに消えた。
光に追いかけられるように、人影がビルの林から抜け出してくる。
背後から幾つかの赤光が伸び、流れ星のように尾びれを引くそれが音を立てて地面に落ちると、アルファルトから煙が上がる。
そのうちの1つが、走っていた人影の足元で爆ぜた。
「あっ!」
人影が呟いて、足を絡ませる。
その声、アスファルトに倒れ伏す身体つき、髪型。
女に間違いない。
白いシャツにスカート。
制服を着ているようだ。
若い、少女と思われた。
倒れたまま動かない少女の後ろに、新たな人影が迫る。
頭上で纏めた髪の先端が背中まで伸びた、やはり女と思われた。
身体つきに比べて、足と肩が少し大きい。
そして前に突き出した右腕は細く、足元まで届きそうな程、長い。
奇妙なシルエットのその人物は、右腕を倒れた少女に向けながら、歩み寄って来る。
少女は自分を追って来た相手の姿を確認すると、身を起こした。
途端に赤い光が飛来して、アルファルトが弾ける。
バシッ!
目の前に出来上がった小さな穴から煙が上がるのを見て、少女の動きが止まる。
「大人しくして下さい。その方が痛い思いをしなくて済みます」
シルエットが少女の足元に立つ。
黒髪をリボンでポニーテールにした、やはり女だった。
青白く月明かりに照らされた顔は、涼しげな表情を浮かべている。
整った顔立ちは大人びて見えるが、年の頃は倒れた少女とそう変わらないようにも感じられた。
不思議なシルエットを浮かび上がらせていた原因は、彼女の服装と持ち物にある。

26 :

膝丈の羽織のような紺色の服に、お腹周りをぐるっと囲んだ幅広の帯。
羽織には袖がなく、網目状になった肌着が、開いた胸元と、肩口から手首までを隠していた。
肩と腕、そして脛を覆う硬質の防具。
彼女を見れば、十中八九の人は、くノ一を連想するだろう。
赤い光を放った右腕には、長い銃が構えられている。
いや、よくよく見れば彼女の手がそれを構えているのではなく、彼女の腕が途中から銃その物になっている事が判る。
引き金に掛けられるべき手や指が、銃の中にめり込むように一体化していた。
「貴女には今、イーバが取り付いています」
女は変形した右腕を少女の背中に向けたまま、一瞬たりとも銃口を逸らさない。
「貴女は、誰……? 助けて……」
「私は桐生 香澄(きりゅう かすみ)。よく聞いて。このまま放っておけば、イーバは増殖し、貴女を取り込んでしまう。
だから、私に任せて下さい。私はワケあって、イーバを回収しています」
「イーバ?」
「地球外生命体の事。放っておけばどんどん増殖して、人を侵食してしまうんです」
「侵食されると、どうなるの……?」
恐る恐る、背後から自分に銃を向ける女を、少女が盗み見る。
ポニーテールの女、桐生 香澄は、小さな笑顔を作ると、左手を少女の肩に添えた。
「大丈夫。今ならまだ間に合うから…………」
「……間に合うワケねぇだろうがよっ!!」
「え?」
香澄の両手が真上に跳ね上がる。
バシッ。
虚空に向けて赤い光が放たれた。
倒れていた少女の背中から何かが飛び出して、香澄の両手を頭上に固定したのだ。
シュッシュッシュッ。
水色をした半透明の触手が、少女の制服を突き破って幾つも伸びる。
「シンビーッ! 右手をナイフに……きゃうっ!」
右腕が溶けるように銃から人の腕に形を変えると、ポニーテールをなびかせて、香澄の身体が宙を飛んだ。
道路を飛び越えて、向かいのビルの壁面へと背中から叩き付けられる。
ミシッ!
コンクリートの壁がジグザグにヒビ割れた。
触手に引き寄せられるように、うつ伏せに倒れたままの少女が浮き上がる。
「なァにが間に合うんだよクソアマッ。ワタクシは、まだまだ増殖すんだよ。お前のマテリアルを取り込んでナァッ!!」
少女の身体が香澄の目の前に迫ったかと思うと、無数の触手が一斉に彼女の腹部に潜り込む。
腹部を押さえていた帯があっという間に弾け飛んだ。
はだけた袴から見える網目状の肌着の奥で、縦長の臍と、美しく絞り上げられた腹部周りが、穴だらけになった。
「かはぁっ!」
悲鳴を上げる香澄の口から、キラキラと光る粒子が舞い散った。
何十本もあろうかという触手を背中から生やした少女は、その触手を使って地面から浮き上がっている。
浮いた両足が、香澄の身体をカニ挟みに押さえつけた。

27 :

めくりあがったスカートの真ん中に張り付いたショーツを破って触手が伸び、女の唇をこじ開けて進入する。
中心に少女の形は保ったままなのに、その姿はグロテスクだ。
イソギンチャクみたいに蠕動する触手が、完全に拘束した香澄の腹部を押し潰して、グチュグチュ音を立て始めると、
「ふぐぅっ、ふぐううっ」
太い触手を咥え込まされた香澄の唇から、輝く粒子が零れ落ちる。
触手は喉を鳴らすようにしなって、恐らくはその粒子を吸収していた。
帯に比べて相当に丈夫なのか、網目状の肌着は破れていないものの、その奥にある香澄の腹は強烈なマッサージを食らったみたいに波打ち続けている。
膝丈までの羽織から伸びてオーバーニーソックスに包まれた太腿が、頭上で固定されて動かない両手に代わり、膝をすり合わせるようにして悶える。
「このままテメェの中にいるワタクシもズリュズリュぅっと飲み込んでやるゥゥゥ」
「んーっ! んんーっ!」
一層激しく腹部を弄ってくる触手の攻勢に、手も足も出せない香澄がくぐもった悲鳴を上げた時、彼女の両手が白く光った。
同時に、どこからともなく女の怒声が響き渡る。
「ヒッサァツ! ホムラ爆炎パァンチ!!」
ドッガァァァァン!!
強烈な爆音を鳴り響かせて触手の塊が吹き飛ぶと、香澄の両手を拘束していた触手が爆ぜた。
「ぎゃああああああああっ!!」
中心にある少女が絶叫しながら触手と共に道路を飛び越え、反対側のビルの窓をブチ破る。
「共生戦士 赤銅 焔(しゃくどう ほむら)見ッ参ッ!」
強烈なストレートパンチで触手を殴り飛ばした少女が、薄い胸の前に拳を掲げて見栄を切るその隣で、香澄は地べたに両手をついていた。
「がっ、がはっ! ゲホッ」
吐き出した唾液がキラキラと光っている。
「……バカ焔。また無計画に暴れて……ただで済むと思ってるんですか?」
「なんだよぉ。人に助けて貰ってその言い草はないだろう」
焔は両手を頭の後ろで組んで唇を尖らせる。
香澄のくノ一姿もビル街には似合わなかったが、焔の格好は更にふざけている。
ゴテゴテとして機械めいた鎧を身に着けた姿は、まるでロボットのようだ。
肩から腕の先までと、足先から太腿までを金属光を放つ鎧が覆っている。
それでいて身体の方は、同じ金属で出来ているらしいビキニ姿だった。
ピッタリと身体に張り付いた黒いインナーの上から、薄い胸と小さな腰を、最低限の防具が隠している。
「ヒーローってのは格好よく登場するものなんだよ」
ガチャっと音を立てて、焔は厳つい両手を構えて見せる。
「貴女に助けて貰わなくても、自力で脱出出来ました」
香澄はその場に立ち上がると、焔と同じく両手を目の前に掲げた。
肘から先が、日本刀の刃を形成している。
これを使って頭上の触手を切り裂いていたのだ。
「香澄ちゃんは可愛くねぇなぁ」
「貴女に可愛いと思って貰わなくて結構です」
香澄の両腕は溶けるように形を変え、左手は人の手に、右手は再び銃の形を取る。
「どうして焔は男子に生まれて来なかったのかしらね……。シンビー、服も直して」
網目状の肌着が露出した上半身を羽織が勝手に覆い隠すと、どこからとも無く帯が伸び上がって、香澄の着衣を整える。
まるで服が意思を持っているみたいだった。

28 :

 おかしな夢を見る。
気味の悪い化け物が出てくる夢だ。
それも何度も見る。
多分同じ夢だ。
多分というのは、目覚めてからしばらくすると忘れてしまうため。
幻聴もする。
時々知らない声が知らない言語で喋っているのが聞こえる。
多分男の声。
多分というのは、無機質で性別を判断しずらい声だから。
それにそもそも幻聴だ。
ハッキリ聞こえるわけではない。
それを誰かに相談すると、決まってこう言われる。
「疲れているんだよ」
お箸で突き刺したミートボールを口に運びながら、目の前の友人はさらにこう加えた。
「でも面白いにゃ、悪夢に幻聴。何かの前触れかにゃ」
「私には面白くないよぅ」
唯(ゆい)は不満顔で、手にしたフォークを使い、お弁当箱のレタスを串刺しにする。
「お陰で目覚めも悪いし。すっごい寝汗かくんだよ?」
「まぁ夏だからにゃ。ここは夏らしくオカルト掲示板にでも書き込んで相談してみたらどうにゃ?
きっと当てずっぽうから創作話からホンモノっぽいのまで、色々答えてくれるにゃー」
「だが断るにゃ。怖いの苦手だって知ってるクセに。その方向だけは考えないように考えように頑張って来たのに……」
「無駄な抵抗にゃ。疲れてる以外のアドバイスが欲しいなら、その方向しか有り得んにゃ」
彼女は事も無げに呟いて、パックのジュースをすする。
「うーーー。他にもっと、科学的根拠に基づいた原因は無いものか」
「ウチの知り合いでその方向が大好きな人がいるから、今度紹介してやるにゃ」
「バイトの知り合い?」
何気なく唯が問いかけた途端、この友人はストローですすっていたパックの中身を吹き出した。
「ぶふぅーっ!」
幸い机の上が水浸しになるだけで済んだが、危うく唯の制服まで濡らされる所だ。
「あ、あぶな……」
「ゲホゲホッ……。ム、ムリだ。あの人に猫耳は強烈なまでに似合わない……メイド服すら無理」
そこまでインパクトの強い姿を想像したのか、喋り方が素に戻っている。
「中学時代の先輩だにゃ。よく肝試しに連れてかれたものにゃんだが、お化けが出ても素手で殴りかかって撃退しそうな人だったにゃ。
あれはきっとT先輩になれるにゃ」
「そっち系はもぉいいよぉ。理系な人はいないの?」
「ウチの常連さんで、自称ウルトラハッカーってのならいるにゃ。パソコンやってる位だから、理系なんじゃないかにゃ。
唯にゃんはどっちがいいにゃ?」
どっちも嫌だ。
唯は不機嫌そうな顔つきで、空になったお弁当箱をハンカチで包んだ。
端っこがちょっとだけジュースに濡れていた。

29 :

 月明かりだけが照らすビル街で、2人は道路を挟んで反対側、ショーウィンドウの割れたビルの中に足を踏み入れる。
明かりの無い内部は真っ暗闇で、月の光の届かない部分から先はまるで視界が利かない。
触手の塊と化した少女が吹き飛んで来たせいだろう。
辺りには商品だった筈の衣類が散乱し、棚やマネキンといった大物まで倒れていた。
「何も見えない……。気をつけて進んで下さい」
「お、おう」
香澄は油断無く銃を構え、焔はどこかギクシャクとした動きでそれに続く。
「シンビー。相手の位置は判らない? …………そう。焔の方は?」
囁くように呟いた香澄は何かに耳を傾ける様子を見せるとすぐにため息をつき、続けて焔に尋ねた。
「こっちのは……今、ちょっと……聞くに聞けない」
歯切れの悪い焔の返答に、香澄が振り返る。
間近で焔の顔を覗き込むと、頬が上気しているらしい事が判った。
それを見た香澄の瞳がみるみると据わっていく。
「私の言った通りですね。あんなに一気に力を解放するからです」
「し、仕方ないだろっ。香澄ちゃんを助けるため……だったんだから……くっ」
「そうですか。まぁいいですよ。見ないでいてあげますから、その辺でオナニーして来て下さい」
「ふえっ!? お、おおオナ……とか言うなっ!!」
「じゃあ、焔のマグちゃんに1人でエサを上げて来て下さい」
「そんな言い方しなくたっていいだろぉ。香澄ちゃんだって、こうなる、……はぅ……クセに……あっ、ぁっ!」
たまらず焔はその場にしゃがみ込んだ
ゴツゴツとした鎧に覆われた手の平で、太腿の間をぎゅっと掴んだまま震えている。
ボタボタと床に水滴が落ちる音が、暗闇の中で微かに聞こえて来た。
「もう、見ていられない。後で私がしてあげるから、そこにいて下さい」
呆れた香澄が再びため息をついた。
すると急に焔が立ち上がり、香澄の肩を強く掴む。
「えっ!?」
一瞬だけ、香澄は自分が焔に襲われるのではないかと思った。
彼女の瞳が真剣そのものだったからだ。
焔は掴んだ香澄をその場から押しのける。
「きゃっ」
尻餅をついた香澄が、少女っぽい悲鳴を上げる。
直後、目の前を半透明の水色が突き抜けて、彼女の前髪を揺らした。
そしてそのまま焔を襲う。
「ひゃぐぅっ!」
人の腕ほどの太さがある触手が、ビキニ型の鎧を打ち抜いた。
ビシッと音を立てて陰部を囲った金属にヒビが入り、焔が雷にでも打たれたように肩の鎧をビクンと震わせて吐血したかと思うと、
小さな彼女の身体は宙に舞っている。
焔が股間を強打された。
「焔っ!」
咄嗟に暗闇に向けて銃を乱射した香澄の真横を、次々と凄まじい速度で触手が伸びる。
それは焔の真上で絡んで溶け合い、極太の柱を形成した。

30 :

 男でも抱えきれない太さとなった触手は、浮いた焔の身体目掛けて突進する。
「や、やめろぉ……」
弱々しく焔が叫ぶ。
鎧に覆われていない腹部に触手を受けると、そのまま小さな彼女は地面に激突した。
焔のストレートパンチ以上の爆音を響かせてアスファルトが陥没し、焔の姿が中まで埋もれる。
「ふにゃああああああっ!!」
ぺしゃんこになるまでインナーを圧し潰さた焔は、絶叫と共に体液を吹き上げた。
融合した触手から1本だけ、細い触手が分離したかと思うと、すかさず体液を逆流させる焔の口に潜り込む。
喉の奥まで触手に犯された焔は、嘔吐し始めてしまう。
触手と口の隙間から輝く粒子が零れ落ちていた。
小さな身体を圧迫する事で溢れて来る大量のそれを、触手は吸収しているらしい。
「これ全部マテリアル!? どうしてこんなに大量に」
ビルの中に残った香澄は、次々に襲い掛かってくる触手を相手にしながら、右手の銃と左手の日本刀を使い分けて孤軍奮闘していた。
「ぎゃひぃぃぃっ! 痛いっ、痛いィィィッ」
触手を切り裂き、弾を撃ち込む度に、少女が絶叫を上げている。
しかしそれでも、次々に襲い掛かってくる触手は香澄にとって無限に感じられた。
右から左から、触手は先端で香澄の腹部や陰部を貫こうとする。
特に足元から狙ってくる触手はやっかいだった。
「このっ、エロ触手っ!」
素早いステップで後退しながら鼻先に伸び上がった触手を日本刀で切り裂くと、正面から突っ込んでくる触手を立て続けに撃ち落とす。
香澄や焔にとって、陰部は普通の女性以上の急所だった。
雷撃を受けたように全身が痺れて動けなくなるばかりか、様々な内臓が傷つき、吐血する程のダメージを追ってしまうのだ。
焔は香澄の身代わりとなって、受けてはいけない場所に直撃を受けた。
香澄は手当たり次第に銃を乱射しながら後退し、ビルから外に出ると、背を向けて、頭上に伸びる巨大な触手を仰ぎ見る。
それはアスファルトに開いた穴の中へと伸びて、焔を突き刺していた。
「シンビー。あれを切るから、もっと力を出して」
背後から別の触手が香澄を追いかけている事には気づかずに、香澄が声を出す。
彼女は飛び抜けて太い触手目掛けて思い切りジャンプした。
小さな触手が、香澄を下から追いかけて伸び上がる。
「でやあああああああっ」
気合いと共に振り下ろした左手が、触手を一閃する。
分断した触手の切断面は、もはや香澄の横幅よりも太く、そこから一気に粘液が噴き出したかと思うと、直後にキラキラと美しく輝く液体となって、雨のように香澄へと降り注ぐ。
「ひいいいいいィィィィィィッ!!!」
一際凄惨な悲鳴をビルの中にいる筈の少女が上げ、短くなった触手が当たり構わず暴れ回る。
その直前、香澄の臀部目掛けて突進した触手が、彼女の割れ目を貫いていた。
「ひぎぃぃぃぃぃっ!!」
肛門付近を直撃した触手に乗ったまま、香澄は激しく仰け反った。
全身が電流を浴びたような刺激に痙攣し、濡れた身体から飛沫が舞う。
「げっ、げはぁっ、ウゲェッ」
肺や胃袋が傷ついて、大量の鮮血が口から溢れ出して来る。
身動き出来なくなった香澄は、暴れ回る触手と衝突し、地面を滑るように転がっていった。
「げっ、ゲボッ、ゲボッ……ぐぶぅっ」
一方で触手の圧迫から腹部と口とを開放された焔が、嗚咽を漏らしながら、穴の外へと這い上がる。
無数にあった触手たちは一様にのたうち周り、絶叫し続ける少女の中へと徐々に戻っていった。

31 :

 沈み始めた夕日に照らされながら、唯は校舎を出た。
この所、原因不明の停電が多い。
復旧に時間のかかる事が多く、外灯や信号まで消えてしまうため、万が一に備えて明るいうちに下校となる。
部活動を始めとする放課後の活動は一切禁止。
速やかに下校する事。
校内放送が毎度の台詞で響いている。
しかしこんな時でも千雪(ちゆき)―例の唯の友人だ―は、いそいそとバイトに向かって行った。
きっと今日も停電だろうに、こんな時にお客さんなんて来るのかな?
唯はそう思う。
「どうせ早く終わるんだし、唯もお店に来るといいにゃ。超絶理系のウルトラハッカーを紹介してやるにゃ」
帰り際に、そう千雪は言っていた。
昼休みまで「恐らく理系」だったのが、放課後には理系で確定している。
そのお客さんが今日来るかなんて判らないだろうに、と反論してみたら殆ど毎日来るそうだ。
よっぽど暇なのか、よっぽどお金があるのか。
ウルトラハッカーって儲かる職業なのかな?
考えつつ、店の前までやって来た時には、日も既に暮れていた。
「メイド喫茶 ミーア」
猫耳メイドの喫茶店が彼女のアルバイト先だ。
ミーアが猫の鳴き声を意味するのか、ミーアキャットから来ているのか、唯は時々悩む。
でもミーアキャットって猫じゃないよね?
足元で光る店名の描かれた看板を見ながら、唯はいつもの疑問を思い浮かべる。
店へと続く10段未満の短い階段を上ろうとした所で、バシュンッ、と鋭い音が耳に届いた。
周囲の明かりが一斉に消える。
「ほらね。やっぱり」
唯は口に出してため息をついた。
やっぱり今日も停電だ。
急に辺りが真っ暗になる。
どうしよう。店に入ろうか、帰ろうか。
開かない自動ドアの向こうを見ると、懐中電灯の明かりがチラホラと見え始める。
この中に入っていって千雪を探す程、唯は積極的ではない。
では帰ろうか。
そう思ったが、真っ暗になった通りを見ていると、このまま1人で無事に帰れるのかと、なんとなく恐怖が込み上げて来る。
ぐるぐる悩んでいるうちに、どこからとも無く千雪の声が聞こえた気がした。
少しだけ周囲をウロウロしてみると、
「……あ…………」
小さいが、千雪の声が確かに聞こえる。
唯は耳を澄まして隙間の小道を進んでいく。
「は……ぁ……」
「どう? 気持ちいいでしょ? んむっ……」
路地裏で、人影が絡み合っている。

32 :

見てはいけないものを見てしまった気がして、唯はすぐに目を逸らした。
最近街中でこういった場面が多い。
真っ暗になるのを良い事に、路上でエッチな事をするカップルが増えているそうだ。
停電になると出生率が上がるという噂は本当だという事だろうか。
「すご……すごく……気持ちいい……にゃ」
その場を離れようとした唯は、思わず立ち止まった。
千雪の声だ。
「もっと、良くしてあげてもいいのよ?」
「して……欲しいにゃ……」
どうやら相手も女の子らしい。
互いに密着して、恐らくは口づけを交し合っている。
そして片方が相手の服をまさぐる、衣擦れの音が微かにした。
「ふにゃあっ! す、凄い……凄いにゃ……」
「ふふっ。手の平にポタポタ落ちて来る。ユキちゃんったらお漏らししてるのね」
唯はドキっとした。
ユキというのは千雪がお店で使っている源氏名だ。
「違うっ……にゃ……止まら……ないの……にゃんッ!!」
千雪と思われる人影は、ブルブルと震え出していた。
「うふふ。可愛い……やんっ……反撃、するつもり?」
「ユキがレイを、イカせてあげるのにゃ……」
「いいわよ……勝負してみましょうか? ユキちゃんは3回位イってもいい…………ひゃんっ!」
今度は千雪の相手をしていた人影が震え出す。
「ウ、ウソッ!? な、何コレ……イイッ! な、何をしたの、ユキちゃ…………ヒィッ!!」
「レイにされたのと、同じ事しているだけにゃん」
言葉と裏腹に、千雪の相手は、千雪とは比べ物にならない程にガクガクと、殆ど痙攣しているように見えた。
「ダメッ、そんなっ、ぐりぐりしちゃダメェッ! あっ! あっ、あっ……」
「レイってば、そんなに大きい声出したら誰かに見つかっちゃうにゃ」
「ああっ! だって……そんなっ……ひぐっ! イヤァッ、イッひゃった。イッちゃってるからぁ……。
乳首駄目ぇっ! はああんっ! ユキちゃんの、舌、どうなっ……ひぃぃぃん! 猫みたいに……ザラザラ……ひゃうっ!」
「ユキはずぅっと前から猫なのにゃん」
顔を上げた千雪の影を見た瞬間、唯は足元からゾクっと震え上がった。
真っ黒に塗りつぶされた人影の中で、顔の部分、両の瞳だけが光って見えたのだ。
猫のように。
違う。
あれは千雪じゃない。
似たような声をした誰かだ。
唯はそう思うことにして、2人に背を向ける。
音を立てないように、息を潜めて、ゆっくりと、ゆっくりと、足元の見えない路地裏を戻り始める。
帰ろう。
私は何も、見ていない。

33 :

「来てくれたんだにゃ」
不意に千雪が大きな声を上げて、唯は思わず飛び上がりそうになった。
違う。あれは千雪じゃない。
自分が話しかけられたんじゃない。
心の中でそう念じながら、再び歩き出そうとする。
「こっちに来て、唯も一緒に気持ちいい事するにゃん」
泣きたくなる程に、いつも通りの千雪の声がした。
唯は歯の根が合わなくなる程ガタガタ震えてくる身体を抑えながら振り返り、そして後悔した。
変わらず真っ黒に塗りつぶされた千雪の影。
その中で、ハッキリと光る猫の瞳が、自分を見ている。
「わたしっ!」
何か喋ろうと頑張った挙句、あまりにも不自然な大声が出る。
「今日は……うるとらはっかーに、会いに来たの」
「知ってるにゃん。でも今日はまだ来てないのにゃん。だから来るまで一緒に待つにゃん」
「で、でもホラ。今日も停電だし、来ないかも。また、明日にするよ」
「明日まで一緒に待てばいいにゃん」
千雪の足元で、ドサリと音がする。
気づいてみれば、もう1人いた筈なのに、彼女の声はいつの間にかまったく聞こえて来ない。
唯は最早泣き出す寸前だった。
もし千雪が仕掛けた性質の悪い冗談なら、早く種明かしをして欲しい。
そうでないと、自分は気絶してしまうかもしれない。
それ程に怖かった。
「千雪、もう、許して? 私もう、怖くて泣きそうだよ」
「泣かなくていいにゃん。ユキが優しくしてあげるにゃん」
気のせいか、千雪がだんだんと、少しずつ猫背になった気がする。
時折、手の甲を使って顔をゴシゴシと擦る仕草を見せている気がする。
気のせいか、近づいてくる千雪に、耳が生えている気がする。
千雪の身体が体毛に覆われている気がする。
猫のようにしなやかに飛び上がった千雪が、何メートルも一気に飛んでくるなんて、そんな筈はない。
圧し掛かって、自分を押し倒した千雪の顔が、猫と人の合成のように見えるなんて、ウソだ。
これは千雪じゃない。
「イヤァァァァァァッ!!!」
猫の化け物に捕まった唯は、涙声の切ない絶叫を上げた。

34 :

 「香澄ちゃんっ!?」
陥没したアスファルトの穴から這い上がって来た焔は、遠く倒れた場所に香澄の姿を見つけると、名前を叫んで駆けつけた。
香澄は横になったまま、くったりとして身動きしていない。
焔は香澄の上半身を起こすと、彼女の胸に手を当てて、血の泡が張り付いた口元に耳を寄せる。
間違いなく生きていた。
少し安心して焔は、僅かな白目を見せて気絶している彼女の頬をペチペチと叩き始める。
「しっかりしろ、香澄ちゃん」
すぐに香澄が呻き声を上げ、うっすらと瞼を開いた。
「イーバ、は?」
「えっ。香澄ちゃんが倒したんじゃねぇの?」
「バ……カ焔。私より先に、イーバを……確認……して。早く……しないと、うっ、アイツも再生、しちゃう……」
「判ったっ。後は全部、この焔様に任せときなって」
香澄の頭を下ろして立ち上がると、焔は自分の薄い胸をドンと叩き、小さな身体は跳ねるように駆け出した。
残された香澄は再び地面に倒れたまま、血に塗れた唇を小さく開く。
「ごめんねシンビー。貴方を守るのが私の役目なのに……迂闊、でした。くっ……でも、急いで。焔だけじゃ、頼りないから……」
遠くで香澄が不安になっているとは露知らず、焔は鎧の豪腕で瓦礫を押し退けて、先程のビルの奥へと再び入り込む。
「暗くて見えねぇな。行くぞマグっ、ホムラ灼熱拳っ」
小さな少女が元気に叫ぶと、彼女の両腕を囲む鎧が、熱した鉄のように真っ赤に光り出した。
「そこだっ! 見つけたぜイーバ」
焔の腕が作り出した明かりが辛うじて届く範囲の中に、制服姿の少女がいた。
切られた触手の粘液が飛び散った痕か、二の腕を抱え込むようにして震える彼女の周りは、輝く液溜りが幾つも出来上がっている。
「痛いィ痛いィィィッ。この傷を癒したいィィィッ」
乱れた髪を整えもせず、目を細めて焔を見るその表情は凄惨で、瞳は完全に常軌を逸していた。
急にその姿を見せ付けられれば、普通はどんな人間だって驚くに違いない。
しかし焔にとっては、それも見慣れた光景になりつつあった。
「完全に取り込まれちまってんなぁ。待ってな、この焔様が助けてやるから」
「癒したいィィィ。癒したいィィィならァァァ、お前のマテリアルを寄越せェェェェッ!」
少女の口がぐわっと開き、顔の半分にまで広がった。
大音量に空気が震えて、焔の茶色味を帯びた髪まで揺れる。
それでも焔はたじろがない。
「しゃらくせぇっ。行くぜヒッサァツ! ホムラ灼熱パァ…………アレ?」
恥ずかしげも無く叫んで振り抜こうとした右手が動かない。
焔は振り上げたままの右手に視線を向けた。
いつの間にか触手がギチギチに絡みついている。
角から伸びていたらしい。
「くそっ。まだマテリアルが残ってんのか。こしゃくな野郎めっ」
力任せに引きちぎろうとしたが、上手く行かずに悪態をつく。
関係ないが、相手が女なら、野郎ではなく女郎だろう。

35 :

「そんなら、ホムラ電撃キックで…………」
最初からそうと知っていたとでもいう具合に、シュルシュルと伸びて来た別の触手が足にも絡み付いた。
今度は足も動かせない。
「ぬああああっ。卑怯だぞこのっ、マテルアルお化けっ。正々堂々正面から勝負しろよっ」
「くすくすっ。正面?」
先程までと一転、上品ぶった態度で口元に手を当てて忍び笑いを漏らす少女の背後で、複数の触手が伸び上がる。
「こうかしらァア?」
先端が焔の身体に狙いを定めた。
シュッ!
シュッ!
シュッ!
最初の触手が空を切り裂いたかと思うと、焔の黒いインナーに次々と突き刺さる。
「ふぎぃっ!」
ロックバンドのドラムよろしく、焔の腹部が短く激しい演奏を行うと、意外な程に可愛い悲鳴を上げて、焔は身を捩った。
「がはっ…………くっ、くそう」
触手3本をお腹に咥えたまま、焔は手足を強く手繰り寄せる。
抵抗する触手がピンと張り詰めて、今にも千切れそうになった。
すると、お腹に刺さっていた触手が抜ける。
「正面からァマテリアルゥ。大人しくアナ……ア……アナアナアナタのマテマテマテリアリアリアリアルゥを
ぐちゃぁと吐き出しぐちゅぅっと吸われるがイィヒィィィッ!!」
頭蓋骨が顎からパックリ半分に割れてしまったかのように、少女の口がガバリと開く。
喉の奥で短い触手がイソギンチャクみたいに蠢いていた。
そのグロテスクさに、流石の焔も眉根を寄せて視線を逸らす。
腹から抜けた3本の触手のうち、焔の手足それぞれに2つが絡んで自由を奪った。
どうやら先ほどまでと違って、無限に触手を伸ばす事は出来ないようだ。
「これなら勝てる」
焔は喜び、自信満々に心で叫んだが、根拠は無い。
それは四肢を封じられていなければの話だ。
手足を引っ張られて大の字に拘束された今の焔には、たった1本の触手すら避ける事が出来ないのに、
本気でそうと気づかない能天気さをこの娘は持っている。

36 :

狙いを定めて飛んでくる最後の触手が、身動き出来ない焔のお臍に、容赦なく潜り込んだ。
「ぐふぅっ! よ、よりによってヘソの穴かよ……い、痛えじゃねぇか……がはっ……」
すぐに触手は引っ込んで、力を溜めているのか、焔の目の前で鎌首をもたげる。
「ワタクシは正面からァ、正面からってこうかしらァ、こうかしらァ」
槍のように硬くなった触手の先端が、臍の内部を何度も抉る。
「ぐはッ、ひぐゥっ!」
悲鳴と共に、焔は涎を零し始めた。
身を捩っても、四肢を拘束する触手は外れない。
ドブッ!
グチュッ!
触手少女の目の前に晒された幼い身体は、前のめりに屈む事すら許されない。
内臓が歪んで水分が音を立てていた。
「や、やめろ。こんなに、ヘソばっか、くっ……ふぁっ、はんそく…………ふみィッ!」
「おへそが駄目ならァ……ドコを潰せばァ……ワタクシをズリュっと零すんダゴラァアァアァアッ!!」
今度は鞭のようにしなった触手が、焔の全身を高速でメッタ打ちにする。
「ここかハッ!? ここなのかァアッ!」
「ひみぃぃぃぃイッッ!!」
平たい胸に張り付いた鎧も、小さな陰部を覆い隠す防具も、打ち据えられてヒビが入り、やがて砕けるまで叩かれ続けた。
ビシッ! バシッ!
レオタードみたいな黒のインナー姿になった焔は、ビル内に響き渡る程の高音を奏でる鞭で一撃される激痛に、仰け反り、蹲り、身を捩る。
「げっ、げおお……ふぁっ、はあぁッ! や、やめろっ……ぐふぅっ! やめて……くれ、頼む……」
腹を打たれ、胸を叩かれ、小さな娘は血を吐きながら瞳に涙を滲ませた。
最初は髪を振り乱して悶えていたのが、徐々に動きが小さくなっていき、やがて俯いて血反吐を吐くと、それきり打たれても反応しなくなる。
「んだァ? マテリアルはァ? ワタクシもんだァ?」
両足に絡まっていた触手が外れても、焔の膝は糸の切れた操り人形のように揺れるだけ。
動きを止めていた触手がしなって、鎧の外れた焔の股間でバシンッ! と大きな音を立てる。
焔の腰が震え上がったが、小さな娘は俯いたまま、悲鳴も上げない。
乱れた前髪に隠されて、その顔は見えなかった。
「んだァ。マテリアルはワタクシのものォ」
少女は触手を伸ばし、動かない焔の口に突っ込んだ。
喉の奥まで突き込んで、残りの触手で力の無い腹をぐっと押し上げる。
ゴボォ。
焔の喉が音を立てて体液を逆流させるのを、喉まで入った触手で吸い込んでいく。
「ミッ、ミタサレてくるゥゥゥッ!!」
触手と繋がった少女は自分の両腕を抱きしめて恍惚の表情を浮かべながら、その身を震わせた。

37 :
>>24
GJ

38 :
>>24
嘔吐多めでいいね。口につっこむのがイイGJ

39 :
痛い

40 :
続き楽しみすぎや。GJ!

41 :
>>25の続きを投下します。
今回も完結していません。
ごめんなさい。
吐血、骨折等多少のグロを含みます。
レスしていただいた方々、ありがとうございました。
嬉しかったです。

42 :

 キャッツというミュージカルがあるが、唯はそれを見た事が無い。
しかし舞台の上を飛び跳ねる、人獣の姿を模したメイクには覚えがあった。
今の千雪はそれだ。
全身を毛皮で包み、口元から髭をぴょんと伸ばし、三角形の耳を頭に載せて。
ただ、目の前で縦に光る瞳孔だけは、メイクだけではどうにもならない。
唯に飛び掛って馬乗りになった千雪の服は破れ落ち、中から獣の毛皮が現れていた。
目の前で開いた口から覗く牙は、八重歯というには長すぎる。
顔も腕も、胸もお腹も、太腿もお尻さえも、全てが三毛猫模様になっている。
元々は千雪だった筈の人影は、今や猫の化け物だった。
化け猫は悲鳴を上げ続ける唯のスカートを膝で押し上げながら、ザラザラとした舌で拘束した彼女の頬を舐め上げる。
「しょっぱいにゃ」
化け猫は千雪の声でそう言った。
そしてブラウスに手を掛けて左右に引き千切ると、露わになった真っ白いお腹にも舌を這わせる。
「く……ッ!」
歯を食いしばって耐えながら、唯は身を捩った。
「にゃ? 唯はこんな所にアザがあったのかにゃ」
スカートから姿を現す太股を遠慮なく抱え上げながら、化け猫が言う。
確かに唯の太股の付け根には、内側に大きな痣が出来ていた。
唯自身も、いつ出来たのか覚えが無い。
気付いたのは停電が始まった頃。
あの悪夢を見るようになってからだ。
悪夢。
気味の悪い化け物が出てくる夢。
そうだ。
きっとこれは、いつもの。
目を瞑っていれば、そのうち終わるに違いない。
「ひゃっ……くぅっ!」
ザラザラの舌が下半身を嘗め回してくる感触に、唯は目を見開いた。
本当は判っている。
こんなにハッキリとした感覚を持つ夢など有り得ない。

43 :

 香澄の胎内に住み着いたイーバが自己修復を完了すると、香澄自身の傷ついた内臓や外傷を復元するのは素早かった。
その代償としてイーバが要求するものは、彼女の思考や身体の動きを阻害してしまうものの、
訓練を積んだ香澄にとっては、このレベルの障害ならば問題ない。
口元で乾き始めた血を拭い、すぐに焔の後を追う。
香澄が最初に共生体となって、そのずっと後に焔もそうなった。
焔は香澄に比べてイーバを扱い慣れていない。
そして彼女はとても短絡的だ。
どんな時も冷静に努めようとする香澄にとって理解しがたい存在だったが、嫌いだと言えば嘘になる。
今度のイーバは過去に例の無い強敵と言えた。
信じられない量のマテリアルを内包している。
ヤツが力を取り戻したら最後、2人掛かりでも倒せるか不安だった。
香澄が再びビルに入ろうとした時、イーバに取り付かれた少女の声が聞こえた。
焔は?
右手を銃に変えながら視線を走らせると、少女の触手で両手から吊るされた焔の姿が見えた。
拘束されてしまっている。
触手を断ち切ろうと狙っている間に、触手がムチにようにしなって焔を打つ。
彼女のお尻が震えたのが判る。
腰を打たれているのだとしたら不味い。
そこはイーバ本体がダメージを受けてしまう。
「んだァ。マテリアルはワタクシのものォ」
少女の声が香澄に届いた。
……?
そんな筈はない。
共生している限り、そう簡単には香澄も焔も、そしてあの少女もぬ事はない。
イーバ本体に強いダメージを与えて瀕に追い込まない限り、傷は幾らでも修復される。
逆に言えば、連続して共生部分に強い攻撃を受けたら、は有り得ない事ではない。
イーバがぬより先に、共生している人間が耐えられないだろう。
だから弱点となる陰部へのダメージは生に関わる。
しかし、急所を一撃された焔の口からは、悲鳴が上がらなかった。
ゴボォ。
喉の奥まで触手が潜り込んだのか、膨れ上がった焔の喉仏が音を立てた。
触手少女は焔の腹部を押し上げて、マテリアルを吸収し始めたらしい。
「ミッ、ミタサレてくるゥゥゥッ!!」
少女が恍惚の叫び声を上げると同時に、香澄が発砲した。
「ギャヒィッ!」
一発が少女本体に命中して、焔の両手から触手が離れた。
小さな少女の身体が重い音を立てて崩れ落ちる。
「焔っ! 意識があるなら早くそいつから離れて下さいっ。これ以上マテリアルを吸収させてはダメですっ」
香澄が焔の名を叫びつつ、少女に向けて走り出した。

44 :
「やっ……やめてよぉ……。やめて…………千雪ッ」
両足をジタバタと必に蹴り回して抵抗していると、茶色い革靴の底が、偶然柔らかな毛並みを捉えた。
ぐふっと呻いた化け猫が、蹴られたお腹を抑えて後退する。
それから唯は、自分がこの化け猫を千雪だと認めている事に気が付いた。
「女の子のお腹を蹴るなんて酷いにゃ、唯。唯がそのつもりなら、ユキも力ずくで行くにゃ」
千雪の声で話す化け猫は、指先に伸ばした爪をペロリと舐めた。
その爪は指よりも長い。
いくら猫の爪が出し入れ自由だと言っても、長すぎた。
爪がどこまで鋭利なのかは判らないが、仮に胸を一突きされでもしたら、容易に心臓まで達しそうだ。
「ヤバイヤバイ。ヤバイよヤバイよ、ヤバイよぉ……」
唯は涙目を一度ぎゅっと瞑り、化け猫に背を向けると、路地裏を一目散に駆け出し始める。
「ニャハッ。これは何にゃ。動く物を見るとウズウズするにゃ」
めくれたスカートを戻しつつ、躓きながら、唯は全速力で猫から逃げる。
もともと彼女の運動神経は高い。
目が暗闇になれれば、あっという間に路地裏から抜け出せる。
背後で、光る瞳がスゥっと瞳孔を細めた。
獲物を狙う目つきに変わったのだ。
しなやかで、それでいて力強く、ただの女子高生には絶対に不可能な大ジャンプを、千雪は再びしてみせた。
一つ飛びで目の前に迫った白いブラウスの背中を、右手の爪で袈裟切りにする。
「きゃあああああっ!」
腹の底から大きな悲鳴をあげながら、もんどりうって唯が倒れる。
斬り裂かれたブラウスの内側で、背中を横断するように出来上がった4本の傷口。
そこから血が滲んだ。
「痛い、痛いよ。痛いよぉ…………」
泣き出す唯を眼下に見下ろしながら、千雪の声をした化け猫は爪先についた唯の血をペロリと舐める。
「知らなかったにゃ。ヒトの血って、こんなに美味しかったのにゃ」
ゾクリと沸き上がって来る悪寒に、唯の肩が震えた。
血まみれになって息絶える自分の姿を想像したのだ。
逃げなければ。
震えて力の入らない太股をムチ打って、ほとんど這うように、唯は化け猫から離れようとした。
途端に猫の爪が、唯のスカートを引き千切る。
白くて丸い双丘のうちの片方が顔を出し、4本の細い傷が走った。
「ぎゃうぅっ」
臀部から太股を斬りつけられて、唯がまた地面に倒れ伏す。
傷口は致命傷にならない程度に浅い。
血は滲むけれど、噴き出す程に深くは無い。
なぶられているのだと、唯は気がついた。

45 :

振り返り、足下に立つ化け猫を見上げる。
爪の先に滴る唯の血液を、化け猫は1本1本丁寧に舐めとっていた。
先端から滴った血が一滴、化け猫の胸を濡らす。
ブラジャーも服も身につけていないバストは、大きめな乳房の形がよく判る。
そういえば、千雪も胸が大きかった。
全身を毛並みに覆われていても、女性を強調する身体のラインはハッキリと浮き上がっている。
「涙と血は美味しかったにゃ。にゃんだかもっと、唯の味が知りたくなって来たにゃ。
どんな味かにゃ? きっとレイとは違う味がするんだにゃ」
自分を見下ろして立つ化け猫が、足を蹴り出すのを見て、唯は思わず目を瞑った。
同時に全身を電流が流れるような刺激が走って、ブルブルと震えが来る。
目を開くと、猫の片足は、まだ唯に届いてはいなかった。
だんだんと背を反らす様子が、唯には奇妙にゆっくりと感じられる。
唯を壁に見立てて踏みつけて、そのままバク転しようとしているようだ。
猫らしく足の指が丸く膨らんでいるのも、その1本1本から丸まった爪が僅かに伸びている様子も、やけにハッキリ目に映った。
人間よりも2周りは大きな化け猫の後ろ足が、唯の素肌を目掛けてゆるやかに迫って来る。
あまりにゆったりと感じる光景に拍子抜けした唯は、このスローモーションの世界に魅入られてしまった。
避けようと思えば避けられたかもしれないのに、それを試してみるべき事に思い至らない。
そして気がつけば、お臍のすぐ上に、違和感が押し付けられた。
臍の真上が足の形にムニュリと変形し、直後にお腹全部がボコっと陥没する。
浮いたお尻が再び地面に落ちると、悪寒が背骨を走り抜けた。
「うっ…………げはぁっ!!」
豪快に唾液を吐き出して、唯は始めて自分の身体が、びっくりする位にガクガクと震え上がっている事を自覚した。
身長の何倍もジャンプ可能な猫の後ろ足が、臍の上を思い切り蹴ったのだ。
胃袋までへこんだに違いない。
口元を押さえると、粘着質な唾液が唇に絡みついている。
「げぶっ、がっ……ゲヘェッ!」
口の中に酸っぱい味が広がって、生暖かくて嫌な手触りの流動物が、指の隙間をこぼれて行く。
「ゲエエエエッ!」
背中を丸め、何度かに分けて嘔吐する。
こんなに勢い良くゲロを吐いたのは、17年の人生で初めてだった。
「な、何……コレ」
痛みでもなく、汚物の量にでもなく、自分の中から出てきたものに、唯は呆然とした。
今しがた地面にブチ撒けた汚物が、夜明けの海のようにキラキラと光輝いているではないか。
「おやん? いつから唯はそんなブラにしたのかにゃ?」
化け猫千雪の言葉に、唯はお腹が痛むのを堪えつつ、身を起こした。
更にズタボロになったブラウスの内側に、水色のゼリーみたいな塊が入り込んでいる。
あろう事かそれは、ブラジャーに変わって唯の乳房に張り付いていた。

46 :

「ミタサレながらァァァアアアッ!!」
走りながら香澄は銃を乱射したが、2本の触手が弾丸を高速で叩き落す。
更に香澄を串刺しにしようと2本の触手が飛来して、彼女はそれを日本刀で弾き返した。
刃が最後まで通らなくなっている。
斬られた端から再生しているようだ。
焔のマテリアルを吸収し続けているせいだろう。
「焔っ。早く目を覚まして下さい焔っ!」
焔が自力で逃げられないのならと、彼女の食道に入った触手を引き抜く為に、香澄は乱射を続けながら前に進んだ。
触手達は本体である少女の前に陣取って防御に徹する。
その隙に倒れて動かない焔の隣に屈み込むと、香澄は彼女の口を塞ぐ触手を握り締める。
人の手に戻した左手の中で、水色の半透明な触手は、心臓が鼓動するように脈動していた。
焔の胃液、血液、唾液、それらの全てをマテリアルとして吸い込んで、触手は増殖しているのだ。
片膝をついた状態から、力任せに触手を引っ張り上げようとした香澄の手から、不意に触手がすり抜けてしまう。
香澄の握力が緩んだせいだった。
「あっ……かはッ……」
虚空に向けて目を見開いた彼女の口から、一筋の唾液が零れて線を引いている。
膝丈の羽織は、しゃがむと僅かに下着が顔を出す。
その真ん中目掛けて、触手が1本伸びていた。
香澄が相手にしていた触手は、それで全部では無かったのだ。
「好き好き好き好き好きだらけぇェェェエエッ!」
少女が叫ぶ。
焔のマテリアルを吸収して増殖したソレは、暗闇を利用して彼女の背後を突いていた。
何処までも伸縮する触手であれば、相手の角に回るのは難しくない。
瓦礫の山と化したこの場所も、夜という時間も停電も、全てが少女の味方だった。
急所を突かれて動けなくなった香澄の身体を、触手が股下から持ち上げる。
脱力した両足が浮き上がるにつれ、それを追って何本もの触手の束が、獲物を狙う蛇のように鎌首をもたげた。
香澄の幅広の帯の下、下腹を隠す羽織に液体が染み渡っていく。
「ごめんなさい……シンビー、焔。私……、また失敗してっ…………」
ドスドスドスッ!
力を溜めていた触手が、次々に香澄の帯目掛けて突進した。
帯が千切れ、羽織が千切れ、香澄の腹に、無数の穴が開けられていく。
「がはぁっ!」
小便で内側を濡らした太股をビクビクと痙攣させながら、香澄は血を吐いた。
網目状の下着姿を晒されたポニーテールの少女は、触手に圧し掛かるように前のめりに倒れる。
「ねッ、ねィッ、お前もんでワタクシを寄越せェェェエエッ!」」
焔のマテリアルを吸収した少女の触手は一気に増殖し、宙に浮かされた香澄の身体をなおも突く。

47 :

鳩尾にドボッ。
「ふぐぅっ」
臍にグチュッ。
「ぐへぇッ」
下腹部にグチュッ子宮グチュッ股間グチュッ!
「うぶぅウウウッ!」
乳房グニュウ喉元ドブ乳首ズブゥッ!
「がはぁっ!」
香澄がドロっとした血反吐の塊を吐き出すと、それは地面に落ちる前にキラキラと輝くマテリアルに姿を変えて、触手に吸収される。
全身穴だらけにされて、彼女の目は霞んで来ていた。
すると朦朧としている彼女の膝と手首を触手が縛り、空中に座らせるような格好に上半身を持ち上げる。
「あ……な、にを…………」
お腹をビクビクと痙攣させながら、香澄が呟く。
胸にもお腹にも無数の痣を作っている。
残りの触手は彼女のお尻の下に集結し、真上に狙いを定めた。
香澄が漏らし続けるおしっこに濡れようが、触手は微動だにしない。
そして真下から、彼女の身体を貫いた。
「ぎゃぶううううううううっ!!」
尻肉を突き刺し、全力で陰部を叩きまくる触手攻撃の嵐に、香澄の神経はプツンと切れて、絶叫と共に鮮血を吹き上げる。
股間からすり抜けた触手達は、そのまま突き上がって乳房を滅多打ちにした。
降り注ぐ矢のような真下からの攻撃を終えた触手は、香澄を突き刺したその状態で、彼女の股間が吹き出す尿と、
吐き出された血液が変換したマテリアルを吸収した。
香澄はと言えば、空中で放尿しながら白目を剥いている。
彼女の手足を縛る触手は次に、少女の身体をうつ伏せに大の字に広げた。
無論、他の触手は香澄の下に集結する。
「ナナナナニナニナニニニニヒヒヒヒィィィィッ! 吸収スルヨのヨぉぉおおおおっ!」
「あ……アァ……アッ、アッ…………」
血と涙とに加え、唾液や小便を垂れ流す少女は、自分を狙う触手の群れを見て、何の抵抗も出来ない事にひたすら絶望する。
ぬ。
私きっと、ぬ。
その結論だけが、冷静だった少女の頭の中をぐるぐると駆け巡って一杯にした。

48 :

「やっ、やだぁっ! なにコレっ!」
触るとプニュっとスライムのような手触りのするそれを、唯は乳房から引き剥がそうともがいたが、
強く吸いついていてなかなか離れそうにない。
「何だか知らんがスゴく美味しそうにゃ。ユキが食べてあげるにゃ」
化け猫が大口を開ける。
本当に剥がして貰えるのなら、今の唯にとってそれはありがたい申し出なのだが、
猫の口に生えた鋭い牙では乳房ごと食い千切られてしまいそうだ。
「いやぁっ、もうヤダァッ」
唯はもう、何が何だか判らなくなって、駄々っ子のように泣きながら必に胸の物体を引っ張る。
牙が迫る。
髭が迫る。
化け猫になった千雪の上半身が、毛皮に覆われた大きな胸が、近づいて来る。
その胸に、どこから現れたのか赤い小さな光が吸い込まれた。
途端に豊かな乳房が真横から半分程に潰れたかと、千雪は身体ごと遠くまで吹き飛んだ。
「ミギャアアアアアアアアアアアッ!!」
凄まじい絶叫が、唯の鼓膜を激しく揺さぶる。
何か強い衝撃に胸を突き飛ばされたらしい千雪は、左の乳房を押さえてのたうち回っていた。
呆然とする唯の視界に、誰かの足が入って来る。
オーバーニソックスを履いたその足は、唯の目の前まで来て歩みを止めた。
見上げると、知らない女の人が銃らしき長物を、千雪に向けて構えている。
「2人とも、そのまま大人しくしていて下さい」
若い声で、彼女はそう言った。
膝丈程の短い紺色の服を着て、ポニーテールを黄色のリボンで結んだ女の子。
「貴女は……? 助けて……くれるの?」
年の頃はそう変わらないように思える彼女の格好は、まるでくノ一のようだ。
願いを込めて唯が尋ねた時、くノ一は小さな舌打ちを確かに漏らした。
「私は桐生香澄。ワケあって……、イーバを回収しています」
彼女の言葉の節々に何処か棘が含まれているのを唯は感じた。
何故かは判らないが、彼女はイライラしている。
「イーバって?」
少し躊躇ったが、唯は疑問を口にした。
あんな姿になってしまった千雪や、自分の胸に張り付いた水色のスライムみたいなモノの事かもしれない。
そう思ったのだ。

49 :

「それに触らないでっ!」
突然強い口調で言われて、唯は心底震え上がった。
そして彼女の言うそれが、自分の胸に張り付いたスライムの事だと判ると、慌てて手を離す。
「貴女もそこで動かないで下さい。動けば撃ちます」
唇を噛み締めながら、くノ一が唯の胸元に銃を向けて来る。
両肩を強張らせた唯は、彼女の言葉に従う以外にない。
「は、はい…………」
度重なる異変と恐怖に、いつか失禁してしまうんじゃないかとさえ思いながら、唯は一切の身動きを停止した。
「ユキのオッパイぶったのはオマエかにゃ? 千切れそうな程痛かったニャア。許っさんニャァアアアアッ!!」
怒りに任せた形相の千雪が、香澄という名のくノ一目掛けて飛んでくる。
その速度は凄まじかった。
瞬く間に激昂した化け猫の顔が、口から覗く牙が、香澄と唯の眼前まで迫る。
香澄は慌てて銃口を空中の猫に向けた。
続けざまの発射音が鳴り響いて、赤い光と飛んで来た猫が激突すると、胸と言わず腹と言わず、
その身に大量の穿孔を開けられた猫がその場で墜落する。
ブチ込まれた無数の弾丸は、全て内臓まで達していた。
「ミッギィィィッ! フニャァァァッ!」
背中から地面に落ちた彼女の腹から、めり込んだ弾がポロポロと落ちて行く。
貫通こそしなかったらしいが、ダメージは絶大のようだ。
悲鳴を上げながら腹を押さえてのたうち回っている。
すると、猫の姿が少しずつ変わっていって、顔つきが千雪に戻り始めた。
猫の毛並みが薄れて行くばかりか、不思議な事に彼女の服装がメイド姿になっていく。
「大人しくしていなさい」
香澄は巨乳メイドの足元に立ち、彼女の太腿の間に銃を捩じ込んだかと思うと、躊躇せず弾丸を発射した。
バシッ! という破裂音が紺色のメイド服の中で響く。
「ぎゃあああああごっ……ぶえええええっ!!」
千雪の腰が跳ね上がり、仰け反った彼女は大量の鮮血を吹き上げる。
それは銃弾が千雪の身体を貫通したように、唯の目に映った。
「千雪っ、千雪千雪千雪っ!」
混乱から発狂したように唯は立ち上がりかけてすぐ、躓いた。
足元で地面が煙を吹いている。
「動かないでしますよっ!」
2回発砲した後、香澄はヒステリックな叫び声で唯に警告する。
「全部貴女が悪いのよっ! 例え貴女に罪がなくても、忘れていても、私はっ…………私は、忘れる事が出来ないんですよ?
貴女が、した記憶」

50 :

香澄の手足は四方に向けて拘束されている。
ヒクヒクと痙攣を繰り返すお腹の真下で、数十本にもなった触手が蠢きながら、少女の号令を待っていた。
「んでェ、んでぇ、シンデシンデシンデシネェェエエエッ!」
少女の叫びとともに、球場に詰め掛けた満員の観客が順にウェーブするかの如く、足元の触手から規則正しい突き上げが始まる。
それはいっそ美しい光景にすら見えた。
太股から貫き始めて、隙間無く股間を串刺しにされ、香澄は吐血する。
「ぐぎゃあああっ!」
恥骨だろうが陰唇だろうが包皮と奥のクリトリスだろうが、とにかく全部が突き刺されて、腰の骨が粉々に砕かれた。
イーバがまだ生きてさえいれば肉体も修復されるだろうが、激痛は容赦なく香澄の神経を陵辱する。
気絶する間もなく下腹に届いた触手の波に膀胱と腸と子宮が壊されて、既に破壊された陰部から血が吹き上がった。
「ぎひいいいいいいいいいいっ!」
持ち上がったお尻からマテリアルを排出しながら、香澄はさらに絶叫する。
「ミチルゥゥウウウッ!」
その体液の雨を触手が吸収すると、少女は頬を染め、全身をブルブルと震え上がらせた。
下半身をマテリアル塗れにした香澄が、痙攣しながら泡を吹いている。
オーバーニーはただの布切れとなって所々に張り付き、羽織が千切れて臀部は殆ど肌が露出していた。
「ガハッ……グエエェ…………」
プルプルと痙攣する太股の内側から時折吹き出す尿も、唇から溢れ続ける泡も、零れ落ちる過程でマテリアルに変わる。
触手を動かす少女は、その場で踊るようにくるくると回転し始めた。
「ワタクシはもっとミタサレて、ゾウショクしたいひィィイイイ」
「なん……なの、この……イーバ……」
「ドコからもっと吹き出すのホォォオオオッ」
今度は触手が、香澄の臍の下に集中する。
「ひっ……ダメ……もぅ……」
弱音を吐き出す香澄の声が終わらないうちに、腹部が波打った。
ハードロックのドラム音を奏でながら、網目状の肌着に無数の窪みが出来上がっていく。
どんな素材で出来ているのか、肌に張り付いた下着は決して触手を貫通させる事は無かったが、それが香澄にとって幸いなのかは判らない。
「うぎぃぃぃぃっ!!」
歯を食いしばる香澄を突き上げる触手の一撃一撃に、彼女の背中が振動していく。
内臓が潰れる程に臍が形を変え、肋骨が折れるまで鳩尾が陥没し、乳房が無残な姿に変わり果てるまで、さしたる時間も掛からなかった。
数十本の触手による串刺しの刑が終わると、一転して辺りは、嘘のような静寂に包まれる。
くるくる回り続けていた少女の動きもピタリと止まった。
そして少女の顔の高さまで浮かんだ香澄を、互いの鼻先が触れそうな位置まで近寄って覗き込む。
香澄は再び白目を剥いていて、だらしなく舌を覗かせた半開きの唇から、弱々しい呼吸音が聞こえる。
変形した香澄の腹が蠢いて、グチュッグチュッと水っぽい音を立てるのすら聞き取れた。

51 :

少女はニンマリと粘着質な笑みを浮かべると、右手を振って触手を動かす。
香澄の内部にまで潜り込んだ触手が一斉に抜き取られると、瞼の裏までひっくり返っていた香澄の瞳が戻ってくる。
そしてそのまま信じられない物でも見るように、目の前の少女を凝視している。
彼女は、何かを見て驚いていたのではなかった。
自分の腹部と喉がゴボゴボと大きく鳴動している事に驚愕したのだ。
「うげぇッ」
彼女の頬が一気に膨らみ
「おげええええええええええええええええええええええっ!!」
口から溢れる吐瀉物の勢いは、もはやダムの放流を思わせた。
「キテルゥゥゥゥウウウッ!」
少女は狂喜し、すぐさま焔の口に入れていた触手を抜き去って、香澄の口にブチ込んだ。
水圧に逆らって喉まで入り込む太い触手に対して、香澄は息が出来なくなり、また白目を剥きながらただ吐き続ける。
痙攣する腹部が折れた肋骨を刺激する激痛が、再び彼女を失禁に追い込む。
香澄は無力な自分に対する悔しさと恥ずかしさで、思い切り泣き出した。
「うげええええっ」
完膚なきまでに敗北した。
「うぶぇっ、うぶえっ、ぶげえええっ」
激痛に何度か漏らした。
血もゲロも、沢山吐かされた。
「ぶげえええええっ」
それらは全てマテリアルとなり、相手の力として吸収される。
香澄はぎゅっと目を瞑った。
もう彼女には、何も出来ない。
強い熱風が、香澄の前髪を揺らした。
「ごうっごぶぅっ」
彼女は嘔吐を強制されながらも、力を尽くして瞼を開く。
「全力で行くぜマグッ! ホムラ必! 灼熱パンチィアアアアアアアアッ!!」
目の前で、焔が少女にボディーブローを決めている。
香澄と同じように、殴られている少女もまた、何がおきたか理解していないようだ。
瞬間の空白をおいて、少女の制服が飛び散って木っ端微塵になる。
焔は少女の肩を掴んだまま、右手を腹部に捻じ込んでいた。
「ぐぎゃああああああっ!」
大口を開けた少女が吹き出すマテリアルが顔に張り付いて、反射的に香澄は目を細めた。
彼女の口と喉を塞いでいた触手が力を失ってしなだれると、両手と膝を縛っていた触手も外れる。
身体が床に落ちて、香澄は血反吐を零した。

52 :

「大丈夫かっ、香澄ちゃん!?」
香澄は返事が出来ない。
全身を骨折している彼女にとって、落下の衝撃は吐血する程の苦痛だった。
しかしそれでも、拘束されている事の何万倍マシだろう。
イーバが既に損壊した身体の再生を始めている。
「すまねぇっ。気絶したフリして誘うつもりが、ホントに気絶させられちまって…………」
少女の腹を突き刺して持ち上げたまま、焔は視線だけ香澄に向けていた。
「……バ……カ……ほむ、ら…………」
言い訳より先に止めを刺して下さい。
香澄が続けようとした言葉は、喉を駆け上がる熱い塊に阻害される。
「だからごめんって謝ってるじゃんかよぉ……」
「がはっ」
泣きそうな顔で焔が謝罪している間にも、香澄はまた吐血する。
香澄こそ、バカと言うより先に伝えるべき事を後回しにしている。
「マテェェエエエワタクシハアアアッ!」
胃液を撒き散らしながら少女が叫んだ。
背中の触手が息を吹き返して、焔の上下左右から、胸を、脇腹を、股間を、串刺しにする。
「往生しやがれぃっ! トドメのっ、女陰しだぁっ!!」
しかし今は、焔の方が圧倒的に速かった。
近づいた全ての触手を焼き尽す炎のアッパーカットが、下着姿になった触手少女の股間目掛けて炸裂する。
「ふぎいいっ!!」
火煙を伴って、少女の細身の身体が宙を舞う。
ショーツが張り裂け、彼女の陰部に張り付いた水色の金属が見える。
ミシミシと音を立ててそれにヒビが入ったかと思うと、そのまま砕け散った。
途端に少女が絶叫する。
「ぎゃあああああああああああああああっ!!」
全ての触手が瞬間冷凍されたかの如く硬直する。
そして1つ残らず粉々に吹き飛んだ。
「がはぁっ」
少女の口が、真っ赤な血と黄色い胃液の交じり合った血反吐を吹き上げる。
それはマテリアルに変換されて、雨のように降り注いだ。
そのまま半裸の少女は放物線を描いて落ち、煙を上げて瓦礫に埋もれる。
焔はそれを追いかけると、倒れた彼女の唯一残ったブラジャーごと胸を踏み潰して押さえ付けた。
「イーバめ、ざまぁみやがれ。焔様の力を思い知ったか」
腕を組んで見栄を張る焔の薄い胸と小さな腰には、先程砕かれた筈の防具が復活している。
この背の低い少女は、万全の態勢を取り戻しているらしかった。
「やったぜ香澄ちゃん。イーバを回収出来るか?」
振り返って香澄に声をかける。

53 :

ポニーテールのくノ一は、床に倒れ伏したまま、顔だけを焔に向けた。
まだ動けないようだ。
「シンビー。回収をお願い…………」
半裸の香澄の腰で、白い何かが蠢いた。
少女と色は違ったが、香澄の陰部にも同じような金属が張り付いていた。
それが突然液体のように溶け出して、香澄の太股を伝い、床に零れる。
すると香澄の服装に変化が生じた。
長い髪をポニーテールにしていたリボンが消えて髪が解ける。
網目状の下着の代わりに半袖とスカートのセーラー服が身を包んだ。
液体は、スプリングのようにぴょんぴょんと何度か跳ねながら、香澄の目の前まで移動すると、一旦そこで停止する。
「ワタシの半分を、カスミの中に残しておく。修復も継続して行う」
「シンビーに任せる……。ごめんなさい。私、守りきれなくて」
いつの間にか香澄は顔に眼鏡を掛けている。
長い髪をストレートに伸ばして、眼鏡にセーラー服。
それが彼女本来の姿だった。
「ワタシはワタシを回収出来ればそれで良い。過程は問題でない」
そう語りかけると、白い液体は焔の元まで一気に跳んだ。
少女の胸に足を乗せたまま、焔は彼女を押さえ込んでいる。
「そのまま押さえていてくれ、ホムラ。結合する」
「あい……よっ……。あんまり……時間、掛けるなよ?」
苦しそうな焔の声の後、気絶しているらしい少女の胸に、ボタボタと水滴が垂れ落ちた。
レオタードのような焔の黒いインナーの底に水分が溜まっているらしい。
「エネルギーの欠乏か」
焔の顔は、突然の高熱にやられたみたいに、耳まで真っ赤だ。
熱い吐息が弾んでいる。
「コイツ、今までより、ずっと、強かった。……どうして、なんだ?」
「大量のマテリアルを吸収したせいだろう。制御限界を超えて暴走していた事から、コアは少ない事が予想される」
「一言で……言うと?」
「労力に対しての実りは少ないという事だ。もう下がっていい」
「助かる、ぜ…………はぐっ」
少女の胸から足を引くなり、焔はその場に膝をついた。
小さな防具から溢れ出した液体が床に液溜りを作り始める。
「骨折り損……かよ……ふぁっ、もぉ……ダメ、だ……」
たまらず焔は自分の秘部を両手でぎゅっと握りしめた。
思わず「はうっ」と声が出る。
共生した人間に力を与える代わりに、代償としてイーバが要求するのは、女性の愛液だった。

54 :

力を使えば使う程、イーバは失ったエネルギーを補充しようと、膣内に強力な媚薬を分泌する。
その効果は絶大で、誰もが抵抗すら出来ない。
指の間を擦り抜けて床に零れているのは、全てこの小さな少女が感じた快楽の証。
気を抜けば失神しそうな程に強い絶頂の波が、何度となく焔の細い腰に押し寄せていた。
「これ……ばっかりは……慣れ、ねぇ……ひゃぅっ」
焔は床に額を押し付ける。
強烈な刺激に突き上げたお尻をプルプルと揺らしながら、焔はひたすら波が過ぎ去るまでを耐えた。
「…………いや、待て。予想よりコアが多い」
「な……ん……だ……?」
涙を浮かべながら、焔が顔を上げる。
香澄がシンビーと名づけたイーバには顔も身体も無い。
表情は読めなかったが、言葉から深刻そうな状況が伝わってくる。
「馬鹿な。これだけの処理能力がありながら、マテリアルを制御出来なかったのか。
半分では足りない。頼むホムラ、ワタシを引きずり出してくれ。このままではワタシが吸収されてしまう」
言われた通りに腕を伸ばすと、焔は少女の割れ目に潜り込んでいるシンビーの尻尾を摘んだ。
愛液に濡れた手の平が滑って上手く捕まえられなかったが、力の限りそれを引っ張っる。
秘唇が収縮して更なる絶頂感が腰から湧き上がり、焔は殆ど泣き叫んだ。
「くぅぅあああああああっ!!」
突き上げたままのお尻から、何度か潮を吹き上げながら、白いスライムみたいなイーバを引き千切ると、一気に脱力してその場にへたり込む。
「3分の1が持っていかれた」
「はぐ、あ…………大……丈夫……なの、か?」
激しい吐息を繰り返しつつ、焔が呟く。
収まる事のない衝動が、今も彼女の腰を突き上げているらしい。
「カスミに残した半分と合流し、もう一度仕掛ける」
「香澄、ちゃんは……ふぐぅっ……ヘーキ、なのか?」
「まだ動けないだろうが、致命傷は全て修復した」
倒れたままの香澄の元から飛来した白い液体が、焔の手にある液体と繋がる。
「ホムラの分泌液はカスミと違う味がするな。悪くない」
「ばっ…………し、ねェっ!」
焔が慌てて放り投げた白いイーバは、再び少女の中に潜り込む。
「くそぅ……オレは男となんて手も繋いだ事ねぇんだぞ…………にてぇ」
座り込んだまま身動きすら取れなくなった焔がぼやいた。

55 :
sageミスりました。
ごめんなさい。

56 :
最高だ

57 :
ほむほむ

58 :
おなかの様子を書いてくれてるのがうれしいです GJ!

59 :
保管庫更新希望

60 :
wikiにでもしないと無理な相談だな

61 :
>>55
ナイスなバトル物!
次ぎなるピンチも期待

62 :
 寒さが顔を出し始め、吐く息も白い靄となって眼前に現れる季節。
 俺こと桜葉和喜は、大学の講義を終えて家路に着こうとしていた。
 今日は午前中しか抗議がないので実質午後からは暇になる。
 といっても、家で書かなきゃいけないレポートがあるから悠長に胡坐かいてはいらんないけどな。
 琴花と遊ぶのは勿論の事、ジムにも通わなければならない。
 周囲には暇そうに見られるが、こう見えて意外とプライベートは忙しかったりする。
 こういうのを俗に充実しているっていうんだろうな。
 暇がないっていうのは、それだけ青春を謳歌してる証拠だっていうし、そんな境遇にある自分に不満をいうのは贅沢ってもんだ。
 寒さで首を縮こめ、肩に掛けたトートバックのストラップに右手を添えた俺は、早く家に帰って暖を取りたい一心で足を速める。
 林立するビルと枝が剥き出しになっている街路樹が縦一列に並ぶメインストリート。
 そこをひたすら歩いていた。
「……ん?」
 ふと、雑踏の中を歩く俺に向かって歩いてくる者を見咎めて足を止めた。
 恐らくその人が街の雰囲気に馴染んだ格好であれば、雑踏に紛れて頓着することもなかっただろう。
 だが、『彼女』は人群に混じるには余りにも目立ち過ぎた。
 背中辺りまで垂れる巻き髪に玲瓏という言葉が相応しい艶貌。
 細いながらも綺麗な形を作る眉と涼しげな雰囲気を孕む双眸。
 その瞳の中に宿る眼光は、人を見据えただけで全てを見透かしてしまいそうなほど鋭い。
 鼻梁も高く、薄い唇に掃いたルージュによって一層艶やかさが増していた。
 顔立ちからして東洋人だが、それにしては随分とパーツに控えめな箇所が見つからない。
 それぞれが自己主張するその容姿は、間違いなく男受けする事だろう。
 加えて、彼女が身に纏っている服は黒い旗袍――つまりチャイナドレス。
 刺繍や銀欄で飾られた雅趣薫るそれは、サテン生地を用いたような安物とは違い、れっきとした上質のブロケード地だ。
 銀幕女優もかくやといった容貌に絢爛で優美な雅趣薫る衣装。
 それで目立つなというのが無理な相談である。
 スリットから覗くその脚を覗かせながらミュールの踵でアスファルトを叩く彼女は、俺に近付いてきてからようやく足を止めた。
「不好意思」
 唐突に、この国ではおよそ聞き慣れない言語を俺に向ける。
 プーハオイースー……中国語、しかも発音からして北京語にカテゴライズされる言葉だ。
 えっと……確か直訳するとすいませんって意味だっけか。
 とはいっても「sorry」のほうじゃなく「Excuse me」のほうだけどな。
「あぁ、失礼。つい母国語を出してしまいました」
 思案を巡らせていたゆえに通じていないのかと思った彼女は、今度こそ俺が聞きなれた言葉を発して謝辞を述べる。
 母国語って事は、やっぱ中国の人か。
 にしても日本語上手いな。
「えぇと……すみませんが、JR天城音駅はどちらに行けばいいでしょうか?」
「天城音駅ですか?」
 申し訳なさそうに萎縮しながら発する彼女の質しを、俺はそのまま反芻する。
「はい……こちらの街に引っ越して来てまだ日が浅いため地理が分からず、迷ってしまいまして……」
 困惑と恥じらいを混ぜた表情を浮かべて語る彼女に、俺は駅の方角を指差しながら道順を教えた。
 ここから天城音駅は徒歩六分くらいで着く。
 メインストリートから離れている訳ではないから、目印になる看板や建物を言えば迷うことはない。
 彼女は俺の説明に神妙な面差しで聞き、全ての道順を教え終えると、理解したのか小さく頷いた。

63 :
「ご親切に有り難うございました。これでようやく隣町に行けます」
 安堵を表すように微笑む彼女は、思わず息を呑むほど美麗だった。
 やはりそれは女優が演じるワンシーンであるかのように輝かしく映る。
「いいえ。当然の事しただけですから」
「そういう事を当然と思って出来る方は中々いません。大概は皆、自分の事で精一杯ですからね」
 言いながら、彼女はもう一度微笑みを俺に向ける。
 琴花や以前出会った八重菜が見せる笑みとは違う、大人特有の余裕を表した艶やかな微笑は、モデルと並んでも霞むことない
輝きを放つだろう。
「こうして貴方と知り合えたのも何かの縁だと思います。折角ですから名前を教えていただけませんか?」
「名前ですか? 和喜、桜葉和喜です」
「和喜……ふふっ」
 少し俺の名前を聞いてから、彼女は小さく笑う。
 いきなり何だ?
 人の名前笑うなんて、いくら何でも失礼すぎるだろ。
「何が可笑しいんですか?」
「あぁ、すみません……気を悪くしてしまったのなら謝ります」
 不機嫌な感情をそのまま込めて言葉を紡いだ俺に対し、彼女は慌てて謝罪した。
 しまった……少し大人げなかったか。
 っていうか俺、器ちっさ!
「和と喜び……まさに人の綺麗な部分を象徴する名……良き名だと思いまして、喜悦を隠せずにはいられなかったのです」
 言葉一つ一つを噛み締めるように紡ぎながら、彼女は再び微笑む。
 うぅ……名前で褒められた事なんて一度もないから、何か背中がくすぐったくなってきたな。
「私は卯雛。弥 卯雛(ミィ・マオチュ)といいます」
 ミィ……マオチュ……。
 ピンインだとそういう発音らしい。
 しかし……随分と珍しい名前だな。
「珍しい名前でしょう? そうなんです。祖国ではマオチュなんて名前の女性、中々いませんから?」
 俺の胸中を汲んでか、卯雛はおどけながら笑う。
 何故俺はこうも出会う女に悉く心を読まれるのだろうか?
 サトラレか? サトラレなのか?
 どいつもこいつも千年眼付けてるだろ絶対。
 人の断りもなくマインドスキャンしやがって。
 カオス黒魔術の儀式でマジシャン・オブ・ブラックカオス召喚するぞこの野郎。
「マジックジャマーでキャンセルさせて頂きますね」
 ぐはっ! 召喚できねぇ!!
 俺のデッキの切り札がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!
 まぁ小学校卒業したあと辞めたからどうでもいいんだけどさ、あのカードゲーム。
 それから俺は少し卯雛と話していると、彼女は華僑の娘であることが分かった。
 歳は一九。
 つまり俺の一つ下ってことになる。
 半年前両親の仕事の都合で一家全員が日本に移住し、卯雛は隣町の大学に通う都合で親元を離れて一人暮らしをしているという。
 この街に越してきた理由として、実家に通うより全然近いからだそうだ。
 こっちの言葉が堪能なのは、幼い時からの英才教育で北京語の他に広東語や英語、日本語などの語学を徹底的に
叩き込まれたからだという。
 うーん……しかし、この娘。
 華僑って事は一応お嬢様なんだろうけど……それにしちゃあフランク過ぎやしないか?
 まぁそっちの方が俺としては気楽だからいいんだけどさ。

64 :
「あっ……もうこんな時間ですか」
 ふと、手首に嵌めていた瀟洒な腕時計の文字盤を一瞥してから、卯雛は名残惜しそうにため息を漏らした。
 ベゼルに『BVLGARI』と刻印されていたのを見るに、卯雛が嵌めている時計はブランド物らしい。
 かなり高そうな時計だなぁ……一体いくらするんだ、あれ?
「それでは和喜。また縁がありましたらお逢いしましょう。再見」
 阿呆面のまま腕時計を眺める俺に対し、別れの仕草に小さく手を振る卯雛は、俺が教えた駅の方向へと歩きながら
そのまま雑踏に紛れていった。
 しかしまぁ……今まで逢った事のないタイプの女だったせいか、喋るのに少し気を遣っちまった。
 琴花や八重菜だったら絶対あんな事はないだろう。
 卯雛の背中が完全に見えなくなったのを確認した俺は、暫く忘れていた寒さに身を竦ませる。
 うぅ……本当に寒みぃ……。
 いつまでもここにいたら凍えちまう。
 さっさと帰ろう。
 俺はもう一度トートバッグのストラップをもう一度肩に掛け直してから、改めて足を進めた。
            ×            ×
 墨汁を塗りたくったように辺りを黒で染色された世界は、昼間の喧騒が嘘のように寂莫に満ちていた。
 だが、俺にとってこの静寂はトレーニングをやるには心地いい。
 鋭利な刃の如く身体を痛めつける冷気が肌を擦過する中、俺は日課のロードワークにいそしんでいる。
「はっ、はぁっ、はぁっ、はっ、はっ……」
 呼吸のリズムを一切乱すことなく、俺は一定の歩幅をキープしたまま走る。
 目標距離はおよそ二〇キロ。
 これを毎日こなしているとスパーだろうとジムのトレーニングだろうと息切れを起こさなくなる。
 何より、強健な足腰を作ることが出来るため、パンチを放つ時に身体の軸がぶれなくなるしフットワークもしっかりする。
 まさに走りこみはあらゆる競技において基礎となるものだ。
 頬を伝う一筋の汗をスウェットパーカーの袖で拭い、俺は到着点を目指して走る。
 過剰な電飾によって彩られた猥雑な市街地を抜け、郊外に入った俺はそれまで抑えていたものを解き放つようにペースを上げた。
 自転車ですら登るのが困難な急勾配の坂を駆け抜けた先にあるのは、市が管理している天城音運動公園。
 陸上トラック、サッカー場、テニスコート、果ては球技場などが設えられた場所。 
 そこが俺の目指すゴールだ。
「はぁっ! はぁっ、はっ、はっ! はぁ!!」
 急激にペースを上げたため、速度はもはやランニングのそれではなく、いよいよショートトラックの様相を呈す。
 誘蛾灯や街灯でぼんやりと足元だけを映されていた光景が俺の速度に合わせて加速すると、闇はまるで俺に
向かって迫ってくるように錯覚した。
 どれくらい走っただろうか?
 気が付けば俺は三メートル近くある石柱と口の開かれた鉄門の前まで来ていた。
 そこが俺の到着点として定めた天城音運動公園の入り口である。
 躊躇わず俺はその入り口に滑り込み、舗装された石畳を踏むと走る動作から歩く動作に切り替えた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 一歩一歩石畳の感触を靴裏で確かめるように緩慢に歩き、俺は呼吸を整える。
 ぐぅ……息が切れなくなったとはいえ、さすがに一五キロはしんどい。
 まぁ動作が定まっている分、ジムでやるシャドー二〇セットやスパーフルラウンドよりはマシだな。
 さて、少し休憩するか。
 クールダウンして息を整えた後、今度はさっきのペースより落として走る訳だからな。
 さて、アスファルトを蹴り続けて痛くなった足裏を柔らかな芝生でいたわるとしよう。

65 :
「……ん?」
 普段この時間帯は、訪なう者など殆どいない。
 にも関わらず、俺は人の気配を肌で感じた。
 俺は目を細めて歩く速度を落とし、気配のする方まで歩を進める。
「――あっ」
 小さく漏れた声は驚きの感情から生まれたもの。
 俺の視界が捉えた気配の張本人は、街灯をスポットライトの如く浴びて俺から背を向けていた。
 背中にまで垂れる艶めいた巻き髪に黒い上等な旗袍(チャイナドレス)。
 その上からでもはっきりと分かる細身のシルエットには、見覚えがある。
 いや、昼間あれだけ強烈な印象を与えたんだから忘れるはずもない。
 そこにいたのは今日、俺に駅に行くのはどこに行けばいいのかと聞いてきた少女、卯雛なのだから。
 どうして彼女がこんなところに……?
 疑問を抱いた刹那の間に、彼女が緩慢な動作で俺のほうへと振り向いた。
「晩上好、和喜」
 中国語でこんばんはと告げてから、卯雛は笑む。
 突然のことだったので俺は挨拶を返すタイミングを逃してしまい、言葉を発することが出来なかった。
「もしかして運動ですか? 健全な方ですね、感心感心」
 およそ年下とは思えないほど妖しげで、蠱惑的な表情を向けてくる卯雛。
 まるで食虫植物のようにねっとりとした視線に、背筋が凍るような冷たさを感じた俺は、暫し言葉を発す事が出来なかった。
「卯雛……お前こんなとこで何して――」
 一〇秒後……ようやく言葉を紡ぐ事が出来るようになった俺は、彼女に歩み寄る。
 だが、歩数にして七歩ほど歩いてから、俺は言葉を続ける事が出来なかった。
 何故ならば、卯雛の周囲に人が糸の切れた操り人形のように倒れていたからだ。
 頭から鮮血を流しながら……。
 街灯に照らされていないので数は把握できないが、男女合わせてざっと
二〇人くらいはいると思う。
 その光景を前に、俺は絶句する。
「これは……一体何だよ?」
「あぁ、これですか? 何てことありませんよ。ここにたむろっていた人達に御近所迷惑ですよと注意してあげたら因縁を
付けられたので『矯正』してあげたに過ぎません」
 掠れる声で状況を問う俺に対し、卯雛はまるで茶飲み話でも興じるかのようなリラックスした声で答える。
 何を言ってるんだこいつは?
 疑問に次ぐ疑問で俺の思考は完全に混乱した。
「う……うぅぅぅ……」
 街灯だけが頼りの薄暗い公園――厳密には卯雛の足元で、摩擦音を奏でながら這いずる少女がいた。
 髪をくすんだ茶色に染めている少女は、この近くにある高校が指定している制服に身を纏っている。
 その少女は、恐らく卯雛から逃げようしているのだろう。
 とにかく体裁すらも構わないといった様子で匍匐前進のような姿勢で身を引き摺っている。
「何故逃げるのですか?」
 哀れにも芋虫の如く這う少女に、卯雛は口元を歪めながら近付き――その脇腹を無造作に蹴り飛ばした。
「がはぁっ!?」
 脇腹を蹴られた故に、衝撃が内臓まで浸透した少女は、開かれた口腔から唾液の飛沫を迸らせながら悶絶する。
「貴女は先刻、私が注意したにもかかわらず反抗の態度を示しましたよね? それで痛い目に合ったら逃げるんですか?
 愚かにもほどがありますよ日本人(リーベンレン)」
 さも愉快そうに大笑しながら、苦しみの声を上げる少女を何度も蹴飛ばす卯雛。
 それはまさに冷酷無比と表する他はない。
 暫しの間、その光景を見据えていた俺は、やがて卯雛の方まで歩を進めて彼女の肩を掴む。

66 :
「……もう辞めとけよ」
 幾分か声音を低くして紡がれた俺の言葉に、卯雛は不思議そうな顔をして振り返る。
 その表情は、まるで自分がしている事と悪いとすら思っておらず、何故自分怒られているのか分からない子供のようだった。
「何故止める必要があるのです? 和喜」
「自分より弱い奴嬲って楽しいのか?」
 卯雛の質しに、俺は敢えて質しで答えてやる。
 それを聞いた彼女が、俺に笑みを向けた。
 しかしそれは明らかに友好的な微笑ではなく、侮蔑も露な嘲笑だった。
「楽しいとは思いません。何故ならこの人たちは、路傍の石同然ですから」
 平然と言い放ってから、卯雛は舞台演者よろしく大仰に双手を振るう。
「歩いていて小石を蹴ることなんてよくあることじゃないですか。そんな事にいちいち感情なんて抱きませんよ」
 眼前の阿呆が得意げに嘯いている刹那の間に、俺は無意識にフックを繰り出していた。
 意より先に体が動くのは、人間が普段深層意識で掛けているリミッターが
外れた証拠。
 現に俺は今、かつてないほどの怒りを感じている。
 ……ここまで頭に来たの生まれて初めてだわ。
 感情に任せて放たれた俺の拳撃を、しかし卯雛は後方に跳んで易々と躱す。
「驚きました……まるで剃刀ですね」
 飄然とした卯雛の語調に、俺は両拳を顔面の前まで構えてからステップを踏む。
 ……決めた。こいつに加減はいらねぇ。
 八重菜と闘った時以上の力で殴らせてもらうわ。
「和喜……私は貴方をとても親切な方と思っていましたが……見込み違いでしたね」
「そうか? 安物の眼鏡に叶わなくて残念だったな。今すぐアイバンクで角膜移植してもらう事をお勧めするぜ」
 アホの言葉に対して、業腹の俺は軽口で応じる。
 前にも言ったと思うが、これが俺の流儀だ。
 だが、正直今はそれほど冗談を言っていられない。
 怒りで自分をコントロール出来なくなりかけているからだ。
 とりあえず俺がやるべき事はただ一つ……。
 この小娘を――ぶっ飛ばす。
「意外と好戦的なのですね……長生きは出来ませんよ」
 愚かだといわんばかりに再度憫笑を向けてから、卯雛もまた構えを取る。
 両脚は肩幅よりも少し大きく広げて半身となり、両掌をこちらに向けて胸の前――左掌は胸の前に、右掌は体幹から三〇センチほど
離した位置に突き出した構え……。
 恐らくは拳法だろう。
 よく拳法を套路(型)だけ、形骸だけの闘技と嘲弄する手合いがいる。
 なるほど確かに中国拳法は套路を披露して『この技を喰らえば命を失う』とか『これは実戦拳法』だと居丈高にほざく阿呆がいて、
いざ散打(スパーリング)になれば一発でのされる人間がごまんといる。
 そんなものばかり見せられてきた訳だから、大衆がそう思うのも致し方ない。
 ただしそれは、拳法をかじった人間、酷いのは見よう見まねで拳法をやって自分は達人になったと勘違いした人間が見せる『贋』に過ぎない。
 そういう愚者が目立つからこそ、拳法は胡乱なものとしか見られないのだ。
 『真』の拳法家っていうのは生涯を掛けて修行し、誰の挑戦だろうと逡巡することなく受ける人間をいう。
 でなきゃあ今日まで中国拳法が残ってる事なんて有り得ないし、何より文化大革命で毛沢東が真っ先にゲリラ活動をしていた拳法家を血眼になって見つけ出し、容赦なく抹する事なんてなかっただろうな。
 さて、スタンスを狭くして踵を浮かせた状態のままフットワークを刻む俺に対し、卯雛は両脚をしっかりと芝生につけたまま下半身を安定させている。
 ……スピードならこっちが上を行けるか。
 だが、相手がどんな事しでかしてくるか分からない以上、その考えは早合点だな。
 どうするか……?

67 :
「和喜、私が怖いですか?」
 あれこれと思案を巡らせている俺に、卯雛は不敵な笑みを浮かべて問う。
 本当……見れば見るほど気にいらねぇツラだわ。
「あぁ、こんなに怖いって感じたのは五歳の時に初めて見たグレムリン以来だ」
 安直過ぎる質しに、しかし俺は嘲りをたっぷりと込めた冷笑を向ける。
 ステップを踏んでいる内に余裕が僅かばかり生まれたからか、先刻よりも気の利いた諧謔を言う事が出来た。
 それを聞いた瞬間、卯雛の表情から笑顔が消える。
「……つまり私はあれと同じだと言いたい訳ですか?」
「よく察したな、ご名答だよお嬢様。シュレッダーで細々にされるのと光で骨になるのどっちがいい?」
「せいぜい言えるうちに言っておいて下さい。一分後には豆腐すら噛めなくなっていますから」
 双眸に刃の如く鋭い気を孕ませて睥睨する卯雛に対し、俺は鼻を鳴らして瓢げる。
 意趣返し成功……っと。
 さて、お互いの距離はおよそ三メートル。
 その空間のみが、尋常でないほどの気で張り詰めていた。
 ――鋭い風が吹く。
 それが頬を裂かんばかりに吹きつけ、大気の中でヒステリックな悲鳴を奏でていた。
 鼓膜を震わせるその音が聞こえると同時に、俺は今一度両拳の握りを固める。
 
「……来、小孩子(かかってきなさい、ボウヤ)」
「明白了、小姑娘(分かったよ、メスガキ)」
 中国語で軽口の叩き合いが展開された刹那の間に、俺達は地を蹴った。
 大気の壁が突き破られると同時、互いの身体が肉薄。
 拳が届く致命的な距離に食い込んだ俺は一息の間にジャブ、ストレート、ボディブローとアッパーを左右から迸らせる。
 これまで幾度とないスパーリングで養った膂力とスピードで放たれる基本的な連環は、間違いなく卯雛の顔面、胃袋、顎をピンポイントで狙ったものだ。
 無論、その拳打に虚はない。
 全て実撃だ。
「……フンッ」
 自らの身体に差し迫る連環を、卯雛は相変わらずの冷笑を浮かべながら三才歩という体捌きを用いて躱す。
 結果……俺が駆け引きも小細工も使わずに放ったコンビネーションは卯雛が捌きによって全て空を切る結果に終わった。
「はっ!!」
 側面に回り込んだ卯雛が絹を裂くような声を発するとともに、俺の頬目がけて縦拳を奔らせてきた。
 ――クソッ、やべぇ!!
 今まさに俺は腰の捻りを利かせたアッパーが不発に終わり、拳を引き戻している最中。
 この状況下ではステップを用いて躱す事は不可能といっていい。
 一体どうするか……?
 逡巡する暇も与えないといわんばかりに肉薄する拳。
 俺はそれを横目で捉えながら、身を急激に沈める。
 瞬時に思惟した末、俺が選んだ選択はダッキングで拳撃をやり過ごすという手段だった。
 要した時間、〇コンマ二秒。
 まさに紙一重というに相応しい見切りが、俺を助けてくれた。
 頭上を擦過する卯雛の拳が引き戻されたのを見咎めた俺は改めてバックステップで距離を取り、間合いを仕切り直す。
「先刻の拳、その動き、和喜……貴方は拳闘者ですか?」
 拳撃を打ち終えて構えを直した卯雛が俺に問う。
 街灯から離れたせいか表情までを見る事が出来なかったが、声音から察するに喜悦の感情を含ませているようだ。

68 :
「だからどうしたよ?」
「それならば、手加減はいりませんね」
 少しの間を置いて、卯雛はスタンスを先刻より小さくする。
 ……何をする気だよ?
 疑問を浮かべた一刹那、卯雛の体躯が疾駆した。
 ――弾丸。
 そう比喩しても遜色のない速駆けだった。
 卯雛の体躯を、顔を、視界で捉えた瞬間、俺の全身を悪寒が襲う。
 例えるならそれは、身体中に多足類の蟲が這い回る感覚。
 まさにムカデが脊髄を蠢いているような不快感だった。
 俺が怖気を感じている間に、突き出された卯雛の掌が眼前に広がる。
 それは何ら変哲のない掌打。
 しかし俺にはそれが、名状し難いほど冒涜的なものに見えた。
 何故ここまで恐怖と不快感を感じるのか、それは分からない。
 気が付けば俺は、逃げるような不恰好な体勢で横転して掌打を躱していた。
 繰り出された掌打は先刻放った俺の連撃同様に空を切る。
 ただ一つ異なる点は、俺が白樺の木を背にして立っていた事もあってか、勢いが止まらぬまま樹幹を打ち抜いた事。
 それに伴い聞こえてきた音は、雷鳴のように凄まじいものだった。
 自分の常識を疑いたくなってしまうほど強烈な音。
 それが俺の鼓膜を直撃する。
 思わず息を呑む光景。
 植えられた白樺のすぐ近くの街灯で照らされたその樹幹は、卯雛に打ち抜かれた部分だけ木肌が抉れ、樹幹の一部が卯雛の掌と同じ形状に歪んでいる。
 それを見て俺は、卯雛の放った掌打が何であるかを即座に理解した。
「……鉄砂掌」
「猜対了(正解です)。良く分かりましたね」
 俺の漏らした言葉に、問題が解けた教え子を褒める教師のような口ぶりで卯雛は言った。
 ――鉄砂掌。
 中国拳法の外功、つまり筋肉や皮膚を鋼のように鍛える錬功法の一つであり、その錬功を用いて練られた必の掌打。
 鉄丸や緑豆、砂を入れた木綿の袋を掌打や貫手、手刀で叩いて鍛えられた掌は、まさに凶器となる。
 その一打を喰らえばどうなるかは、想像に難しくない。
 一撃のもとに樹幹を抉る訳だから、功夫も相当なものだろう。
 相変わらず背筋に蟲が這いずり回るようなおぞましさを感じて、俺は身震いする。
 横転して片膝を芝生に着いたまま、俺は構えるのも失念してしまっていた。
 それを見咎めた卯雛が、勝ち誇ったように余裕ある艶笑を浮かべている。
「和喜。これで終わりにしましょう。投了していただければ今なら貴方に怪我をさせることはありません。ですから――」
「笑わせんな」
 つらつらと出てくる言葉を遮って俺は立ち上がり、両拳を構える。
 確かに、さっきの鉄砂掌は本気でビビった。
 あんなもの顔に喰らったら、少なくとも一ヶ月は整形外科にお世話になる事だろう。
 でもな……当たってもない一打を見せられて逃げるほど、俺は堅実賢明かつお利口さんに生きちゃいねぇ。
「エース・オブ・スペードとキングが手札で仲良く並んでんのに、フォールドする馬鹿がどこにいんだよ? レイズさせてもらうぜ」
 恐らく今の俺は、これ以上ないくらいに不敵な笑みを浮かべている事だろう。
 何故こんな人外化生相手に闘おうと思っているのか……?
 卯雛に挑発されたからというのもあるが、もう一つ大きな理由もある。
 それは……闘ってる時に感じる、高揚感。
 スパーリングの時も、八重菜と闘った時にも味わった昂ぶり。
 あの気持ちを味わいたくて、俺はきっと闘っているんだろう。
 ……つくづくバカだよな、俺は。

69 :
「それなら、私もコールとさせてもらいますよ」
 俺の笑みに応じた卯雛もまた、このゲームを降りる気はないようだ。
 相当に自信はあるみたいだな……面白れぇ。
「……ひゅっ」
 僅かに息を吐くと同時、俺はステップを踏んでから再度間合いを詰めて踏み込んだ。
 それを見て卯雛もまた、踏み込みにて生じる力を利用して縦拳を放つ。
 軌道は直線。
 大気を裂いて肉薄する拳撃は今まさに、俺の人中を捉えんとしていた。
 その拳を見据えながら、俺は唇を邪に歪めて急激に身を沈める。
 先刻のダッキングよりもそれはなお低く、殆どしゃがみ込むような姿勢といっていい。
「あっ――!!」
 驚愕で小さな悲鳴を漏らす卯雛の声が鼓膜を震わせる。
 俺の行動が予想だにしなかったのだろう。
 拳打を放ったままの姿勢で卯雛の体躯が固まる。
 その好機を、どうして見過ごそうものか。
 芝生に片膝がつくほど身を低くした状態で俺は腕を畳み、力を抜いたまま肘を卯雛の懐に滑り込ませた。
「ゴヴッ!?」
 肺から酸素を絞り出すような苦しげな声が、驚愕の悲鳴に次いで俺の耳朶に触れる。
 声の主は言うまでもなく卯雛だ。
 今この状況では、そんな苦悶の声が吐き出されるのも無理はないだろう。
 何故なら俺は、卯雛の肋骨部分に肘を突き刺しているのだから。
「ごっ……ごあぁぁぁっっっ……!? あごっ、ぐくぅぅぅぅぅっっ!!」
 ――乾坤一擲。
 博打も同然に放ったそれは、予想以上の痛苦を与えてくれたようだ。
 現に卯雛は、その肘打ちを受けて双眸を見開き、口腔が覗けんばかりに大口を開けている。
「フンッ、コールが裏目に出たな。フラッシュじゃ勝負にはならねぇよ」
 嘲りの含笑を浮かべて言い放つ俺は、その一打を皮切りに体勢を立て直すと卯雛のボディにショベルフックを放った。
 程よく引き締まった腹斜筋に拳を叩き込むと、腹部に拳が貼りついたのかと錯覚するほど深く抉りこむ。
 例えるなら、練ったパン生地に手が埋没していくといえばいいだろうか?
 とかくその感覚が、俺の拳頭部分を支配していた。
「ごぉぉぉぉっっっっ!!!!」
 先刻の余裕が嘘であるかのように、卯雛は唾液の飛沫を口腔から迸らせて叫ぶ。
 相当に苦しいんだろうな。
 殴った箇所の脇腹を抑えながら後退してるし。
 歩数にして四歩。
 それだけ後ずさる卯雛に、俺は加減抜きの前蹴りを放つ。
 前蹴りといえば聞こえはいいが、流石に足技は門外漢である俺のそれは、はっきり言って蹴りという様相を呈していない。
 フォームも見苦しいまでに不恰好なものだが、ランニングとロープスキッピングで鍛えた足腰は、自分でも驚くほどの脚力を発揮していた。
 その前蹴りを鳩尾に受けた卯雛は、驚愕と苦悶をない交ぜにした表情を浮かべて四メートルほど吹っ飛んだ後、大の字に転がる。
「ぐっ……ごほっ、ごほっ!! う゛ぅぅぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
 腹斜筋を拳打で抉られたのみならず、鳩尾を蹴りで突き刺された卯雛は汚らしいえづき声を迸らせる。
 人間にとってのウィークポイントを悉く叩かれたのだから、当然の帰結だ。
 えづき声に次いで、瀕の小動物のような喘鳴を漏らす卯雛。
 それを見据えた後、俺は彼女に歩み寄ると、緩慢な動作――油圧機器にも似た動作で右足を上げる。
「ひっ!!」
 俺がやらんとしている事を察して、卯雛の顔が恐怖に引き攣る。
 いい加減、暗闇に目が慣れたせいか眼下にいる小娘の表情まではっきりと見る事が出来る俺は、敢えて無表情で足を上げたまま動きを止めている。

70 :
「是礼物。收到(プレゼントだ。受け取れ)」
 卯雛に向けて短く呟いてから笑みを向けた瞬間、俺は上げていた足を一気に下ろして卯雛の腹部を踏みつけた。
 粘土を潰した時に聞こえる柔い音が響くと、足底で生ゴムを踏んだような感覚が残る。
 それは、たまらなく心地いいものだった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁァァァァァぁぁぁぁぁぁぁァッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァあぁっぁあぁっぁあぁぁぁぁっぁぁぁ
ァァァァァァァァァァァァァァァァぁァァァァぁぁぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁぁぁっぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 もはや聞き取る事さえ不可能なほど形容し難い叫声。
 喉が張り裂けんばかりに迸るそれは、鷹の嘶きよりもなお鋭い。
 まるでガラスで爪を引っかくような音に酷似していた。
 間髪いれずに、俺はもう一度足を上げてから卯雛の腹を踏み潰す。
 ぐにゅっとした感触がひどく心地いい。
 靴越しでもしっかりと感じられる脂肪の感触は、なかなか痛ぶり甲斐のあるものだった。
「あぎゃっ!! うぎっ……おぉぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!」
 苦しみを絶叫で訴えているのか、卯雛は言葉を発すことなく叫びのみをひたすら振りまく。
「……うぜぇ」
 不快感を隠すことなく言い放つ俺は、再三足を緩やかに上げてから、プレス機の如く腹部を圧する。
 今度は腹全体を踏みつけるのではなく、わざと踵のみに全体重を乗せて胃袋を潰した。
 踏みつけた箇所はちょうど三日月状にべっこりとへこみ、おそらく卯雛の体内では胃袋が名状し難いほど歪み、消化器官もろとも大きな負荷をかけている事だろう。
 内臓が原型を留めず、ぐにゃりと形を変えているのを想像して、俺は存分な喜悦を味わっていた。
「あがぁっ……ぐぐぐぅぅぅぅぅ……ぶぉぉぉうぅぅぅぅ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 さんざん喚き散らした後、息を荒げながら卯雛は双眸から大粒の涙を零している。
 あれだけ拷問めいた責め苦を味わったんだから、無理もないか。
 僅かに開いた唇から漏れ出る吐息。
 汗ばんだ頬に貼り付く巻き髪。
 小刻みに震える肢体。
 杏子飴のように紅潮した頬。
 まるで、情事の後にしか見えない有様だった。
 男に抱かれて充足感を感じているような姿は、見ようによっては女としての理性をかなぐり捨て、本能赴くままの雄に肢体を貪られる雌に見えなくもない。
 これ以上痛めつけたら、卯雛はどんな顔を見せてくれるのだろうか?
 そう考えると俺は、もう自らを自制する事ができなかった。
 卯雛の胃を踏み潰していた右足を一先ず下ろし、俺は旗袍(チャイナドレス)の襟首を掴んで卯雛を引き摺り起こすや否や、鳩尾目がけてボディブローを叩き込む。
「おぶぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!」
 皮膚や筋肉組織を巻き込んで拳を急所に埋没させた結果、卯雛は頬を風船のように膨らませてくぐもった声を上げる。
 耐える余裕すらなかったのか、モロに受けたその拳打に卯雛は相当なダメージを被ったようだ。
 まぁさっきの踏みつけも大分効いただろうからな……。

71 :
 掴んでいた旗袍の襟首を無造作に離してから、俺は卯雛の身体を突き飛ばす。
 卯雛との間に距離が生まれたと同時に、俺は芝生の地面が抉れるほど強く踏み込んで再びショベルフックを放つ。
 やっぱり使い慣れた技はいい。
 脇腹を斜め下から突き上げるような軌道で放つこの技は、ボディアッパーよりも遥かに使いやすい。
 一年間鍛えに鍛えたパンチ力の衝撃は、恐らく肝臓まで到達して卯雛に地獄の苦しみを味あわせている事だろう。
「ごぷっ……おぶぅぅぅぅう……うぶぅるぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っっっっっ!!!!!!」
 卯雛が耳障りな声を響かせると同時に、いよいよ口腔から卵豆腐のような色をした胃液を吐き散らす。
 下を向いていたせいか瀑布のような吐瀉物が芝生に流れ落ち、色素が抜け始めてきた天然芝が汚らしい色に染まった。
「さて、そろそろチェックメイトと行こうぜ。お嬢様」
 口を卯雛の耳に寄せ、秘め事のように囁く俺は彼女の両肩を掴み、瞬時に膝を突き刺した。
 攻撃箇所は腹部というのも考えたが、生憎俺はそんな慈悲を持ち合わせていない。
 刺した場所は……女を象徴する器官、子宮。
 琴花と八重菜ですらも殴られた時に音を上げた場所だ。
 それをただの一発に留まらず、何度も打ち込んだ。
 一発。
 二発。
 三発。
 四発。
 五発。
 六発。
 七発。
 八発。
 九発……。
 最後に蛇足ともいうべき止めの一打を放ち、計一〇発の膝蹴りを子宮に叩き込んだことになる。
「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃィィいっぃぃぃぃぃぃィィィいぃぃぃぃぃぃィィィィィィィィィィィィィィィィィッィいっぃぃぃぃぃぃぃィィィィィィ
いぃぃぃいぃぃぃぃいぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 もう一度、卯雛が金切り声を上げて悶絶する。
 艶貌を鬼女のように歪め、双眸に毛細血管を隆起させながら叫ぶ姿は、令嬢とは思えぬほど無様かつ哀れだった。
 列車が急停止した時に聞こえる鋭い音に似た声。
 俺はそれをもう一度聞きたいという欲求に駆られ、卯雛の下腹部に膝蹴りを再度放つ。
「ぎゃぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!!」
 恥骨と膝蓋骨が衝突した瞬間、硬質で鈍い音がもう一度聞こえてくる。
 それに次いで聞こえてくる卯雛の悲鳴。
 俺は自然と心が満たされていく感じがして仕方なかった。
「がっ……はぁ……はぁ……はぁ……このっ……下司……がっ!」
 肩で息をしながら、卯雛は俺を睨み据えて吐き捨てる。
 へぇ……まだそんな元気があったのか。
 外見に似合わず結構タフだな。
「その下司に嬲られてんのはどこの誰だ? 小姑娘」
 親の仇のように睥睨する卯雛の顔に唾を吐き捨て、俺は右頬をぶん殴る。
「ぐぶっ!!」
 腰の捻りを利かせて体重を乗せ、ありったけの怒りを込めたフックは卯雛を吹き飛ばすほどには充分過ぎるほどの威力を誇っていた。
 さっき当て損ねたからな。
 これで俺の溜飲も少しは下がる。
 けど……これじゃあ満足できないのは当然だよな。
 更なる追撃を加えるため、俺は地を蹴って駆ける。
 疾駆の勢いを味方につけ、最短距離の直線から放つ拳撃。 
 それはとうとう卯雛の前歯をへし折る事に成功した。
 街灯で照らされる卯雛の口から白い塊が吐き出されているのが何よりの証拠だ。

72 :
「がっ……がごぉぉぉぉぉぉぉっっっ……
 歯が折れたのと口腔を切ったせいか、卯雛は口から夥しい量の鮮血をぼたぼたと垂れ流す。
 その姿は言うまでもなくかなり痛々しい。
「ざまぁねぇな」
 鼻を鳴らして一言だけそう紡ぐと、俺は卯雛をもう一度追い詰めて腹部を集中的に殴打する。
 左のボディブローから右のボディフック。
 次いで連撃のストレートを幾度となくストマックに放ち続ける。
 機関銃よろしく迸る連環は悉く卯雛の腹部へと吸い込まれていった。
「ぐぶっ、がっ、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ……」
 反撃する余力さえないのか、もはや卯雛はサンドバッグ同然にされるがまま。
 しかし、不思議と卯雛の双眸にはまだ光が宿っていた。
 へぇ……まだそんな目が出来んのか。
 このお嬢様、どうしてなかなか気骨があるな。
 述懐した刹那、俺の視界に卯雛の掌が入り込んできた。
 もう一度あの掌打を放つ気か……。
 渾身の力を込めた、恐らく最後の悪あがきである鉄砂掌。
 それが俺の鼻先三センチまで迫る。
「……いいアクションだ。今年のラズベリー賞はお前で決まりだよ」
 飄然とした語調を放った後、俺はウィービングで頭部を揺らして卯雛の掌打を綽々と躱した。
「月並みな科白が台本に書かれてっから言わせてもらうぜ……二度も同じ手は喰うかよっ!!」
 高らかに咆哮した俺は、恐らく最後の一打になるであろう拳撃を放つべく
踏み込み、拳を放つ。
 その拳の軌道は――卯雛がファーストコンタクトに放った縦拳と同じ直線。
 言わんや、拳打はストレートである。
 だが、そのストレートに少しばかり『細工』をすれば強烈な技に昇華出来る。
 今まさに卯雛の鳩尾に俺の拳が埋没しようとした一刹那の間に、俺は握り固めた拳に『捻り』を加えた。
「ぐぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」
 あれだけ吐物を吐き散らしたというのに、再び盛大に胃の内容物を鮮血混じりに吐き出す。
 その光景は、俺が放った最後の拳撃――コークスクリューブローが完全に決まった事を示していた。
 柔腹を深々と突き刺す拳頭は捻りを加えたことにより、旗袍と腹部の皮膚を巻き込みながら埋まっていた。
 やがて、俺はゆったりとした挙措で拳を引き抜くと、卯雛は身体をメトロノームのように揺らした後、芝生の上に崩れ落ちた。
「ふぅ……」
 卯雛がもう立ち上がってこないのをしっかりと確認した俺は、構えを解いてから小さく息を吐いた。
 ――少し疲れたな。
 緊張の糸が弛んだせいか、後になって疲労感が一気に押し寄せてくる。
 感情のままに闘ってると本当ロクな事がねぇな……。
「痛っ!!」
 少しばかり休憩しようと考えた瞬間、やにわに両拳から激痛が走った。
 な、何だこの痛みは!?
 慌てて拳を街灯の光に当てて見てみると、俺の両拳はキャッチャーミットのように腫れ上がっていた。
 しまった……普段はバンデージの上に八オンスのグローブ嵌めてるから直接打撃を加えても問題なかったけど、卯雛と闘ってたときはベアナックル(素手)だったじゃねぇか!!
 裸拳であんだけパンチ打てば拳にもダメージが行くのは明々白々だ。
 それに気が付かずにやたら殴ってるとか……どんだけ馬鹿だよ俺?
 はぁ……仕方ねぇ。
 とりあえず少し腫れが引くまで休んでいくとするか。
 っていうか、この公園に来たのはクールダウン目的だったしな。
 丁度いいだろう。

73 :
「……」
 ふと、俺は視線を卯雛の方に向ける。
 彼女は未だに起きる気配がない。
 うーん……どうするか?
 自分で散々嬲っておいて言うのもなんだけど、このまま放置しておくわけにも行かないしなぁ……。
 少しの間、腕を組んで思案を巡らせる。
 一〇秒後……俺は結論を出した後に卯雛の身体を起こして背負うと、そのままゆっくりとベンチに運んでいった。
 何というか……やっぱコイツも軽いんだな。
            ×            ×
 背もたれのない木造りのベンチに卯雛を寝かせると、俺は地べたに胡坐をかいて夜天を仰ぎ見ていた。
 日本はこの季節になると殆ど雨が降らないせいか、夜空はダイヤモンドの破片を散りばめたかのように星が燦然と輝いている。
 この季節になると必ず現れる北斗七星やカシオペア座、オリオン座なども肉眼ではっきりと見えていた。
 そういえば……中国では北斗七星が龍、カシオペア座が鳳凰とか言われてるって説もあったな……ソースはシェンムーだけど。
 暢気な事を考えながら、俺はボーっと星を見続ける。
 やがてそれにも飽きて、今度は卯雛に視線を移す。
「……」
 相変わらず起きる気配は無い。
 まぁ呼吸の音は聞こえるから洒落にならない心配はする必要ない。
 それにしても……昼間出会ったばかりの奴とこんな形で再会する事になるとはなぁ。
 本当、運命ってのは分からないもんだぜ。
「……ん?」
 卯雛の整った艶貌を眺めていた俺だが、唐突に車のエンジン音が聞こえてそちらに視線を移す。
 俺が座ってる位置から五〇メートルほど離れた駐車場エリアに、赤灯を乗せたパンダカラーのスイフトが走ってきた。
 けたたましいサイレンを鳴らしていないのを見るに、どうやらこの公園に巡回に来たようだ。
 お勤めご苦労様……っと。
 心の中で労いの言葉を呟いた瞬間、ふと俺はある事に気が付いた。
 ……あれ? ちょっと待て。
 もしかしなくてもこの状況、かなりヤバくね?
 眼前にはボロ雑巾同然の有様で気を失って仰臥している女の子。
 その女の子と向かい合う形で座る俺。
 もしあのスイフトに乗ってる警察官が降りてこっちまで来たら……。
 もし職質された挙げ句、卯雛の事詰問されたら……あれ、マジヤバくね?
 これから導き出される結論はただ一つ……。
 人間、失格。
 もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
 じゃねーよ!!
 何でこんなところでいきなり人間失格の一文出てくるわけ!?
 俺の頭どうなってんの!?
 って、アホな事やってる場合じゃねぇ。
 このままだと間違いなく『ちょっと署まで任意同行願えますか?』コース確定じゃねーか!!
 何とか……何とかしないと……。
 取り調べ受けて傷害罪で錠嵌められたらそれこそ人生が終わっちまう。
 咄嗟の判断で俺は卯雛の身体をもう一度背負い、その場から脱兎の如く逃げ出した。

74 :
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」
 入り口を抜け、下り坂を駆け下りた俺は、泣きながら獅子同然の咆哮を轟かせてひたすら走る。
 途中、犬を連れて散歩している中年の男が恐怖に顔を引き攣らせながら俺を見ていたが、そんな事関係ない。
 何せこっちは一生が掛かってるんだからな!!
 しかし……逃げたのはいいが、この先どうする?
 このまま家に卯雛を連れ込むわけにもいかないし……。
 っていうかそんなん琴花にバレたらされる。
 それだけは避けなければ。
 どうしたいいか分からず考えあぐねていた俺が視線を巡らせると、上方に巨大な緑十字のマークが見えた。
 暗闇の中でネオンの力を借りて光るそれを見た俺は、その建物がある場所を目的地に定め、闇の中を駆け抜けた。
 そうか……あそこなら怪我人を治療したり看護したりして面倒を見てもらえる。
 我ながら妙案だと思い、俺は疾走するスピードをあと二段速めていった。
            ×            ×
「ふぁ……あぁ〜あっ」
 口腔を全開にして、俺は欠伸をする。
「和喜、だらしないよ」
 そんな俺を見た琴花は、少しばかり呆れの感情を見せながら唇を尖らせて諌める。
 とはいってもなぁ……こんな長閑な休日じゃあ欠伸の一つくらい出してもバチは当たらねぇだろ。
 それにここ最近寝不足だったんだから。
 結局、あのあと卯雛は緊急外来の看護婦さんに押し付けて俺は全速力で帰宅した。
 暫くは足がついて逮捕されんじゃねぇかとびくびくして眠れない日々が続いていたが、二週間経っても何一つ起きなかった。
 でも、あれから警察が逮捕状持って自宅に押し掛けてきた事なんてなかったし、一先ずは安心か。
「大丈夫だよ。誰も見てねぇし、気にする事ないだろ?」
「ボクが気にするんだよ。せっかくのデートなのに、隣歩いてる彼氏が間抜けな欠伸見せてたら女の子は嫌なものなんだよ」
「へいへい、間抜けですいませんねぇ」
 ある日曜日の昼下がり。
 今日は琴花とデートで映画を見る約束をしてある。
 琴花はこの日がずっと待ち遠しくて仕方なかったのか、俺の腕に自分の腕を絡ませてはしゃいでいる。
 全く……最近の中学生はませてるって話を聞いたけど、少なくともこいつは
そんな風には見えない。
 でも、こういう純粋で無邪気なところは俺にとっての癒しでもある。
 年齢こそ兄妹並みに離れてるが、琴花と付き合って良かったと心底思う。
 幸せだな……俺。

75 :
「ねぇ……和喜」
 唐突に、琴花が声を潜めて俺を呼んだ。
「ん? どうした?」
「あそこに立ってる女の人……なんかこっち見てるけど、和喜の知り合い?」
 言いながら琴花が指差す方向を、俺は視線で追った。
 琴花が指した先には……黒い旗袍に身を包み、緩やかに巻いた髪を靡かせた麗人が佇んでいた。
 その姿を見咎めて、俺は瞠目する。
「まっ……卯雛っ!?」
 思わず上げてしまった声は、自分でも滑稽に感じるほど素っ頓狂なものだった。
 銀幕女優と紛う容貌に、モデルと並んでも些かも見劣りしない体型。
 忘れようにも忘れられない女を前にして、俺の身体は完全に固まった。
 そこには、二週間前俺がさんざ殴り倒した令嬢、弥 卯雛が立っているのだから。
 頬や目元に貼られている止血テープや頭に巻かれた包帯を見るに、あの時の闘いで負った傷はまだ癒えていないのかもしれない。
 そういえば、折れた歯は治ったのだろうか?
 などと思案を巡らせていると、卯雛がこちらに向けて歩を進めてきた。
 ま、不味い……。
 もし卯雛があの時の復讐を考えているのなら、今の俺は確実に不利だ。
俺だけなら何とかなるだろうが、隣には琴花がいる。
 もし人質に取られたり、琴花に危害が加わるような事があれば……。
 そう考えると、俺は緊張せずにはいられなかった。
 どうする……?
 琴花と一緒にこの場は逃げるか?
 などと考えている隙に、卯雛は俺の前にまで近付いてきた。
 クソッ……万事休すか?

76 :
「卯雛っ、俺は煮るなり焼くなり好きにしても構わねぇっ!! でもな、この娘だけには手を出す――」
 琴花を庇うようにして前に一歩踏み出した俺は、突然唇に何か柔らかいものが触れて思考が停止した。
 な、何だこれ……?
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!!!」
 俺が不思議な感触に戸惑っていると、琴花の絶叫が耳をつんざく。
 えっ? なになに?
 何が起こってるの?
 しばらくして……ようやく俺の思考が再起動すると、唇に触れた柔らかなものが何であるかを理解した。
 どうやら俺の唇には今、卯雛の唇が触れているようだ。
 つまり……卯雛にキスされてるって事でいいのか?
「……和喜」
 唇を離した卯雛が、俺の名を呼ぶ。
 吐息も熱っぽく、声音もどこか湿り気を帯びていて、潤んだ瞳をこちらに向けながら……。
 それは何つーか……うん、どっからどーみても恋する乙女の顔だった。
 あの、卯雛さん……
 なして私をそんな目で見るのでしょうか?
 しかも周囲がピンク色に染まってますよ貴女。
 ってか瞳の中にハート浮かんでますよ。
「今日から私は貴方を婿とさせてもらいます。異論は認めませんよ」
 聞かされた発言は、思わず耳を疑いたくなるものだった。
 えっ? あの〜すいません……婿って何でせうか?
「それでは和喜、また会いましょう。この次は、私の両親に会って貰いますからね」
 聞きたいことが山ほどあるが、俺がそれを質すよりも早く卯雛は踵を返して
去っていった。
 う〜ん……結局アイツは何だったんだ?
 ってか何がしたかったんだ?
 ダメだ。いくら頭を捻っても分からん。
 あっ、そういえばアイツ、ちゃんと歯治ってたな。
 うん、良かった良かっ――
「か・ず・き」
 ふと、自分の名を呼ばれた俺は何故か背筋がゾクッてなった。
 な、何だこの嫌な予感は……?
 恐る恐る、俺は声のした方を振り返る。
 そこには、俺の彼女である現役中学三年生の伊吹琴花さんが菩薩様のような
笑みを浮かべていた。
 その笑みは、きっとどんな罪を犯した咎人でも寛大な御心で許し、改心させてしまうだろう。
 だが……それは琴花の場合では大きな間違いとなる。
 長年琴花と一緒に過ごしてきた俺は知ってる。
 この笑みを見せた時の琴花は、怒りの臨海が超えている証拠だという事を……。
「琴花っ! ちょ、ちょっと落ち着いて話を聞い――」
「こんの浮気者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」
「ぶぅぇおぉうはぁっ!!」
 荒野を駆け抜けるバイソンですらUターン&敵前逃亡してしまうような咆哮を轟かせた後、俺は琴花の解き放った正拳突きをボディに喰らい、衝突事故もかくやというほど吹き飛ばされる。
 あぁ……すげぇ……。
 人って……空飛べるんだなぁ……。
 放物線を描いて宙を舞う自分をどこかで客観視しながら、俺はそんな事を考えていた。
END

77 :
以上です。有り難うございました。
ことパンッ!は次がラストになります。
来年には完走する予定ですので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

78 :
必に類語辞典とかで言葉調べて格好良い文章書こうとしてるんだろうが、
一々使い方がズレてるせいでかえって頭が悪く見える

79 :
朝からGJなもの見れて歓喜すぎるw
相変わらず描写がすごくて見入ります。
是非とも完走してほしいですね。いつまでも待ってます!

80 :
俺は好きだけどな
ランサー氏や55氏みたいに読みやすいのも好きだけど

81 :
>>77
GJです

82 :
難しい言葉使うだけが文章力じゃない
回りくどい表現無しで情景が浮かぶ文章は「上手い」と思う

83 :
あんまり叩きたくないけど、俺もことパンッ!の人の文章からは禁書目録の作者みたいな無理矢理かっこいい話を作る強引さのようなモノを感じる
でもあんま男の一人称で俺は普通で常識人でついてない奴でったくよーみたいな描写がくどくて独り善がりな空回りを感じる
ゴメンね偉そうに批判して
ただまあ正直な意見の一つって事で

84 :
同意。文才は間違いなくあるんだろうけど、虚飾がブルーチーズ並にくどくて素直に文章に入り込めない。

85 :
逆に55氏は文才はあまり無いだろうけど、難しい表現をしないからスルスル読める感じ

86 :
このジャンルで書いてくれるだけでもありがたいと思わなきゃあ

87 :
興奮した
それだけでGJだよ
マイナス批評しかしないってのは勘違いも甚だしい

88 :
取り合えず馬鹿な俺でも読める
毎日新聞レベルの漢字や熟語までに
していただけるとありがたいよ。
批評どうこうより漢字が読めない

89 :
>>87
ごもっとも
けど俺、男の一人称でこうくどくど語るような奴は生理的に受け付けないんだわ
いわゆるネット小説におけるU1とかスパシンとかに通じる、非常に人を選んで拒否感を催させる文章

90 :
俺は、身の丈に合ってない、そこらで聞き齧ったらしき言葉を得意気に書いてるのが物凄く幼稚に見える。
例えば「気の利いた諧謔」なる表現があるが、諧謔なんて言葉はそれ自体が『気の利いた言い回し』ってニュアンスで用いるもんだ。つまり頭痛が痛いと同レベル。
多分類語辞典に、単に「冗談、皮肉」とだけあったがためのチョイスなんだろうが、普段こうした言葉を使い慣れてる人間は絶対にしないミスだろ。
言葉を知らん小中学生からはカッケーって崇められるかもしれんが、俺みたいなある程度文章読んでるオッサンから見れば失笑物も良い所だ。

91 :
>>89
いいから帰れよ
>>90
ある程度文章読んだオッサン(笑)がなんでこんなところにいるんですか?(笑)

92 :
>>90
コピペ誕生の予感

93 :
>>90
red

94 :
すげーな。このスレ始まって以来、こんだけ感想レスが付く作品初めてだぜ?
ランサーさんや恭子の人より多い。

95 :
腹パ3回目はやらないのかな?

96 :
>>94
そうなの?

97 :
>>95
日付だけは既に公表されてた筈
5月あたりだったかな
ほんとにレス多くて正直真面目に羨ましい

98 :
そーかなー
どこが悪い、だからこうしてはどうか、って的を射た批判なら嬉しいだろうが
「俺ある程度は文章読んでるからwww俺に言わせれば駄目駄目www」みたいな痛い子がいくらいてもなあ

99 :
腹PAとかのイベント行ったら解るが、このスレ見てるって奴は殆どが人生経験薄そうなオヤジやジジイばっかだぜ。
可愛そうな連中なんだよ

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