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あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part307


1 :
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part306
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1327821877/
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/
     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

2 :
スレ立て乙です。

3 :
>>1

4 :
代理投下行きます
第七十九話
 砕けよ絶望! 希望の光、その名はセブン!!
 
 ウルトラセブン
 一角超獣 バキシム 登場!
 
 
 ひとつ問おう、君は困っている人、苦しんでいる人を見たらどうするだろう?
 たとえば、道端で倒れているお年寄りを見たとして、君はその人を助けるか、それとも無視するか?
 いや、君ならきっとその人に駆け寄って、「大丈夫ですか?」と話しかけるに違いない。
 それが、人間。優しさという、かけがえのない魂を持つ存在なのだ。そしてそれは、ウルトラマンも変わりない。
 だからこそ! そんな人々の助けを求める声がある限り、光の戦士はどんな世界でも必ず応えてくれる。
 
 ヤプールの化身・超獣バキシムの卑劣な作戦によって最大の危機に陥ったウルトラマンA。
 バキシムは、エネルギー切れに陥ったエースの前で、公開処刑も同然にベアトリスたちを攻撃してきた。
 ミサイルの炎と爆風に叩かれ、打ちのめされる彼女たち。さらにバキシムは非道にも、ベアトリスを虫けらのように踏みにじろうとする。
 だが、絶望も悲劇も、もう彼女たちには必要ない。
 誇るべき弟と、その愛する人々のために、彼はついにやってきた!
 
「エースよ、弟よ。あきらめてはいけない」
 
 ウルトラマンAの耳に飛び込んできた懐かしい声。
 それはかつて誰よりも多く人類のために血と汗と涙を流し、戦い抜いた真の勇者のもの。
〔ええ、希望は決して失われることはないんですよね!〕
 忘れもしない、エースが困難な戦いの中でくじけそうになったときも、厳しくも力強い言葉で励ましを送ってくれたその人のことを。
〔北斗さん! どうしたんですか? 誰が来たっていうんです!〕
〔そうよ! もうなにがなんだかわからない! いいかげんにしてっ!〕
 才人とルイズが戸惑った声をあげる。
 しかし、エースにはわかっていた。以前、ワルドがエボリュウ細胞を撒こうとしたときに教えてくれたときから、どんな方法かは
わからないが、あの人がこの世界に来ていることを。
〔心配はいらない。それよりも、才人くんを休ませてやらなくては危険だ。大丈夫、私たちの役割は果たし終えた〕
 変身を解き、ウルトラマンAは空気に溶け込むように消えていく。
 そして、突如戦場に踊りこんできた一頭の馬と、その背にまたがるテンガロンハットをかぶった男。彼はたずなをさばき、猛烈な
スピードでベアトリスの元に駆けつけていく。
 
「ハイヤーっ!」
 
 走る馬は、傷ついた体で呆然と見守っているミシェルやエーコたちの目の前で、恐れる気配など微塵もなくバキシムの足元へと
飛び込んでいく。すでにバキシムの足は無慈悲なプレス機となって目の前だ!
 だが、馬上で駆る男は体を乗り出すと、ベアトリスに向かって手を伸ばした。
「つかまれ!」
 次の瞬間、バキシムの足が地面を叩き、砂埃が舞い上がる。バキシムの体重は七万八千トンであり、踏まれれば人間など
形も残りはしない。ミシェルたち、エーコたちは瞬きする暇すら惜しんで粉塵を凝視した。

5 :
まさか……最悪の予感が彼女たちのあいだを駆け巡る。しかし、もうもうと立ち上る砂煙の中から飛び出してくる馬の背には、
男の腕にしっかりと抱きしめられたベアトリスの姿があったのだ。
「姫さま!」
 エーコたちのもとに馬は駆け寄り、男とベアトリスはその背から降りた。すぐさまエーコたちが走りよってきて、男はベアトリスを
地面に下ろすと、まだ腰が抜けた様子の彼女に優しげに言った。
「立てるかい?」
「は、はい……あ、あなたは!」
 下ろされたベアトリスは、その男の顔を見てはっとした。同時に、エーコたちやミシェルも驚きを隠せないように、男の顔を見る。
「ふ、風来坊……」
 そう、彼はこれまで何度もベアトリスの前に現れては、そのつど助けてくれたあの謎の風来坊だったのだ。
 ミシェルが選んで買い求めたテンガロンハットをかぶり、皮のジャケットに身を包んだ彼は、前と少しも変わらない温厚そうな
笑みを浮かべてそこにいる。まるで、超獣がいることなど忘れてしまいそうな、その落ち着いて穏やかな空気は、真の仇に
いきり立っていたセトラたち姉妹の理性をも取り戻させた。
 そうして、彼は驚いているベアトリスの頭を優しくなでると、穏やかに微笑んで言った。
「よくがんばったな。さあ、あとは私にまかせるといい」
「あ、あなたはいったい……?」
 ベアトリスは前々から気になっていたことを尋ねた。この風来坊は、どこにでもいるような風体のくせに、絶対現れるはずも
ないときにばかり現れてくる。その度に見せる常人離れした雰囲気と、ヤプールの手下とさえ戦える力……
 あなたはいったい何者なのだ? ベアトリスだけでなく、ミシェルやエーコたちも風来坊に視線を向けると、彼はいたずらっぽげな
笑みを浮かべて、いつものように陽気な口調で答えた。
「僕はモロボシ・ダン、ご覧のとおりの……ただの風来坊さ」
「ダン……さん」
 ベアトリスはぽつりと、はじめて知った風来坊の名前をつぶやいた。
 風来坊……ダンは、うれしそうにもう一度微笑んだ。そうして、くるりと振り返るとバキシムに向かってゆっくりと歩き出した。
 危ない! なにをするんだとミシェルたちから怒声が飛んだ。けれど彼は少しも動揺することなく、事態を飲み込めずに
立ち尽くしているバキシムの前まで行った。
 そして、テンガロンハットをおもむろに脱ぐと、バキシムを強い視線で見上げたのである。
「久しぶりだな、ヤプール」
「き、貴様は! なぜだ、なぜ貴様がこの世界にいるのだ!」
 風来坊の顔を見たとき、バキシムから大きな動揺の声が響いた。ヤプールは個であって群の生命体、バキシムは単一の
超獣であると同時に、その意識や記憶はヤプール全体と共用されているのだ。
 だが、なぜヤプールがただひとりの男に、ここまで恐れた様子を見せるのか。呆然として見守るベアトリスたちの視線を
背中に受けながら、風来坊はバキシムを睨みつけて、奴の問いかけを跳ね返した。
「そんなことはどうでもいい。しかし、貴様の悪巧みもここまでだ」
「そうか、これまで頻発した不可解な妨害の数々は、貴様がやっていたのだな!」
「それは違う。私はただ、彼女たちの心に宿る勇気を信じて、ほんの少し後押ししただけさ」
 そう言うと、ダンは振り返ってベアトリスたちを見つめた。

6 :
バキシムの氷のような冷たさとはまったく違う、温和で穏やかなまなざしがベアトリスからミシェルやエーコ、姉妹たち全員を
一人ずつ見つめては離れていく。彼は誰の顔にも、もう絶望や憎悪の影はないことを確かめると満足げにうなずき、バキシムを
見上げて決然と言い放った。
「彼女たちは、貴様が与えた絶望を乗り越えた。貴様の負けだ、引くがいいヤプール。それでもなお悪あがきをするというのであれば、
私が相手になろう」
「うぬぬぬ、おのれぇ……貴様さえいなければ、なにもかもうまくいったものを! 許さん、こうなれば貴様もここで始末してくれるわ!」
 ダンの忠告に逆にいきりたち、バキシムは雄たけびをあげて迫ってきた。
 やはりヤプールは話の通じる相手ではなかったか……ダンはテンガロンハットを胸元に持つと、一瞬祈るような姿勢を見せた。
 ミサイルの照準をすべてあわせるバキシム。本気の一斉射撃が当たれば人間など一瞬で蒸発してしまうに違いない。
ミシェルやベアトリスたちの必死の叫びが響き渡る。
「危ない! 逃げてぇぇっ!」
 だが、風来坊は微笑を浮かべるとテンガロンハットをベアトリスに向かって、フリスビーのように放った。
「心配はいらない。君たちに呪いを与え続けた悪魔は、私が倒す」
 風に乗ってテンガロンハットがベアトリスの手の中に飛び込んで受け止められる。
 何度も見た、いつもと変わらない風来坊の優しい笑顔。だが次の瞬間、彼の顔は戦いを決意した戦士の表情に変わり、
その手にはテンガロンハットに代わって、赤いゴーグル・ウルトラアイが握られていた。
 バキシムから放たれる十数発のミサイルの雨! だが、ダンはウルトラアイを眼前にかざすと、掛け声とともに着眼した!
 
「デュワッ!」
 
 その瞬間、ウルトラアイから火花のような閃光がほとばしり、ダンの姿が変わっていく。
 銀の兜のような頭部には鋭く輝くオレンジ色の眼、肉体も瞬時に太陽のように赤く染まった精悍なボディへと生まれ変わる。
 そして、ミサイルの炎などをものともせずに跳ね飛ばし、彼は一瞬のうちに身長四十メートルもの巨人へと変身を果たしたのだ!
 
「ジュワッ!」
 
 左腕を縮め、右腕を伸ばしたファイティングポーズをとり、赤い巨人はバキシムを睨みつける。
 ベアトリスやミシェルたちは、目の前で起こった信じられない奇跡に言葉もない。だが、ひとつだけわかることがあった。
「ダンさんが……ウルトラマン」
 姿形は違えども、赤い巨人はウルトラマンAと同じ澄んだ力強いオーラを感じた。彼は自分たちをかばうように背を向けて、
一部の隙もなくバキシムと対峙している。その構えと闘志は、ボーグ星人と対峙したときのダンとまったく同じもの。
 ウルトラマンは人間? いや、人間がウルトラマン? 戸惑いを隠せないベアトリスたち。

7 :
しかし、彼はその真意を言葉で与えてはくれない。
 光は闇を照らしてこそ存在を語る! 対して、闇も光を飲み込もうと牙をむいて、憎き敵の名を呼んで襲い掛かってくる!
 
「おのれぇ! とうとう現れたなウルトラセブン!」
「ゆくぞ! ヤプール」
 
 逆上するバキシム、すなわち邪悪なる闇の化身を前にウルトラセブンは勇敢に立ち向かう。
 そう、彼の名はセブン。モロボシ・ダンの名を借りて、数々の侵略者の魔手から地球を守り抜いてきた最強のヒーローだ!
 互いに引かれあうように激突するセブンとバキシム、バキシムの鋭いスパイクのついた腕の攻撃をかいくぐり、セブンの
パンチが炸裂する!
「ダアァッ!」
 首元にめりこんだセブンの拳が、バキシムの芋虫だったころの面影を色濃く残す胴体に、クレーターのようなへこみを
一瞬にして生み出して跳ね飛ばす。俊敏さとパワフルさを併せ持つセブンのウルトラパワーの前には、七万八千トンの
重量すらものの数ではない。
「デァッ!」
 たまらず苦悶の叫びをあげて後退するバキシムに、セブンの眼が隙を見逃すことはない。
 組み付いてボディに膝蹴りを与え、後頭部に鋭い一撃を加える。
 速い! そして重い! たった数発の攻撃だというのに、バキシムは大きな悲鳴をあげてのけぞった。
「いいぞ! がんばれセブン!」
 離れたところから戦いを見守っていた才人が、握りこぶしを大きく掲げて歓声をあげた。テレパシーの使いすぎで消耗しきり、
ルイズにひざまくらしてもらってやっと体を起こしているが、そんなうらやましい状況すらまったく無視して、子供に戻ったように叫びまくる。
 そうだ、ウルトラマンAの言っていた希望とはセブンのことだったのだ。もはや、恐れるものなどあるはずがない!
 鋭い切れ味のウルトラチョップがバキシムの喉元に水平に当たり、そのままボクサーのように連続パンチの応酬だ!
「デヤァッ!」
 一撃ならまだしも、数え切れないほどの攻撃を一度に叩き込まれては超獣の頑強なボディもたまったものではないはずだ。
 まさに、青い悪魔に立ち向かう正義の赤い暴風。
 が、バキシムもまだまだ負けたわけではない。緑色の眼はらんらんと輝き、反撃の機会をうかがっていた。
 なめるな! セブン!
 そう言わんばかりに金切り声にも似た咆哮をあげ、バキシムは巨大な鳥のくちばしのような口を大きく開いてセブンに食らいついてきた。
「グワァァッ!」
 バキシムの牙はセブンの左腕に食いつき、全身の力でセブンは大きく振り回された。
 そしてそのまま振り回した勢いで放り投げ、セブンは廃倉庫のひとつに背中から投げつけられて粉塵があがった。
 さすが……ヤプールの怨念を一身に背負って出てきただけのことはある。ウルトラ戦士に対する反抗心は並ではない。
 バキシムの背部の結晶状の突起物が赤く輝き、両腕の間に赤黒く輝く火炎球が形成され始めた。
「あれはっ!」
 才人は懐からGUYSメモリーディスプレイを取り出してレンズをバキシムに向けた。あれは、エースと戦った初代バキシムにはなく、
メビウスと戦った二代目バキシムが備えていた新兵器。

8 :
C

9 :
「バキシクラッシャーだ!」
 高圧の破壊熱線が放たれ、セブンに襲い掛かる。
 危ない! セブン!
 だが、セブンはバキシクラッシャーのエネルギーチャージの一瞬の隙に体勢を立て直し、命中直前に前転で熱線を回避した。
 危機一髪……しかし熱線の威力はすさまじく、廃倉庫は大爆発を起こして吹き飛んだ。
 やはり火力はあなどれない。セブンは用心深く構えを取り、バキシムを見据えるが、バキシムは距離をとればこちらのものだと
両腕のミサイル発射口から無尽蔵に放たれるバルカン連打で攻撃をかけてきた。
「ダアッ!」
 セブンはすばやく身をよじってミサイルをかわす。一発一発の威力はたいしたことなくても、動きを止めれば蜂の巣にされてしまうだろう。
 身軽なセブンを相手に、バキシムのミサイルは目標を捕らえきれず、外れたミサイルで周辺は火の海に変わっていく。ここが無人の
廃棄区画でなければ大惨事になっていたことは必至だ。
 しかし、セブンを捕らえられないことに業を煮やしたバキシムは、卑怯者の常套手段とばかりに照準をベアトリスたちに向けて
ミサイルを放ってきた。
「ひっ!」
 先ほどまでの嬲る目的とは違い、す目的で放たれたミサイルは火の尾を吹いてベアトリスやエーコたちを襲った。むろん、
彼女たちを狙えばセブンが助けに入るのを読んでの仕業だが、駆け込んできたセブンはさらに早くバリヤーを張り巡らせた。
『ウルトラバリヤー!』
 胸の前でクロスさせた腕を左右に開いて作り出す光のカーテン状のバリヤーは、向かってきたミサイルをすべて受け止めて跳ね返した。
 貴様のような奴の考えなど、最初からお見通しだ! 数々の凶悪宇宙人と戦ってきたセブンは、バキシムの卑怯な戦法などは
想定の範囲内だったのだ。
 セブンはバリヤーを張ったまま振り返り、ベアトリスたちを見下ろした。彼女たちは、エーコたちがベアトリスをかばい、姉妹たちは
セトラやエフィがキュメイラやディアンナをかばい、彼女たちはより年下の子をかばいあっている。その様子は、復讐に狂って
いたころの残忍な気配はすでにない。
 獣から人間に戻った彼女たちの姿を見て、セブンは確信する。
「見たかヤプールよ。お前がどんなに絶望と憎悪を与えようとも、人間の心から光が消え去ることはないのだ!」
「ほざけセブン! まだ終ってはいないぞ。貴様さえいなくなれば、それですべて終わりだ」
「まだわかっていないようだな。人の光があり続ける限り、私は決して負けはしない!」
 バキシムの弾幕をものともせずにバリヤーで跳ね返しつつ、セブンの反撃が始まる。
「デヤッ!」
 セブンが精神を集中させて念を放つと、セブンに向かっていたミサイルが空中で静止した。
 さらに、念波はミサイルをくるりと反転させると、その方向をバキシムに向けて撃ち返した。
『ウルトラサイコキネシス!』
 押し返したミサイルの雨が放ったバキシムに次々と命中し、バキシムは自ら作り出したミサイルによって打ちのめされる。
 兄弟最強を誇るセブンのウルトラ念力、過去にも幾度となくセブンの窮地を救ってきたこの力も日々進歩しているのだ。
 ミサイルを撃つ手を止めたバキシムに、セブンはすかさず間合いを詰めて攻撃をかける。ダッシュからのキックがバキシムを吹っ飛ばした。
「ダーッ!」
 台風に負けた巨木のように地響きをあげて倒れるバキシム。セブンはボディに飛び乗って、パンチの連打、連打、連打!
 圧巻の連続攻撃がバキシムに吸い込まれ、さらにもがいて起き上がってきたバキシムに、もうミサイルを撃たせる隙は
与えまいと打撃を加える。

10 :
しかしバキシムは接近戦も決して弱くない。巨体はそれだけでも強力な武器となり、巨大な槍のような硬質の尻尾が
セブンを大きく張り飛ばし、巨体そのものを武器としてのしかかり攻撃を仕掛けてきた。
「ヘアッ!」
 寸前、セブンは転がってバキシムののしかかりを回避した。もしこの直撃を受けていたとしたら、いかなセブンでも
大ダメージは免れなかっただろう。
 しかし、バキシムのレーダーアイはセブンが体勢を立て直すために一瞬だけ背中を見せたタイミングを見逃さなかった。
セブンの背中に向けて、バキシムの最大の武器である頭部の角ミサイルが放たれる。完全にふいを打った発射であるために、
セブンはまだこれに気づいていない。
 そのときだった。
「後ろよ! 危なーい!」
 セブンの耳に響いた十数人の声が危機を知らせた。反射的に身をよじり、角ミサイルは刹那の僅差でセブンを掠めて
飛び去っていき、外れて方向転換をしようとしてるところへセブンは右腕を引き、左腕を水平に胸に当てたポーズで、
もっとも得意とする光線を額のビームランプから放った!
『エメリウム光線!』
 緑色の反磁力線に撃墜され、大爆発を起こす角ミサイル。ほかのミサイルと違って、このミサイルは単発で次はない。
 そしてセブンは自らの危機を救ってくれた、ベアトリスたちを見下ろしてうなずくしぐさを見せた。
「え……あ、もしかして」
 彼女たちは、言葉にこそされなかったが、セブンが自分たちに礼を言ったのだということがわかった。すると、胸のうちに
不思議な自信と暖かさが生まれてくる。そうだ、自分たちはちっぽけでも、ウルトラマンの大きな助けになることもできる。
そう理解したとき、彼女たちはそろって大きな声で叫んでいた。
「がんばれーっ! ウルトラセブーン!」
「負けないで、必ず勝って!」
「あたしたちがついてるぞぉ!」
「セブーン!」
 声を張り上げ、笑顔で手を振って応援する。それは地球で幾度となくウルトラ兄弟を支え続けた地球人類と同じ光景だった。
 これで負けるわけが、負けられるわけがない。
 切り札を失ったバキシムに、セブンの怒涛の攻撃が再開された。
 
 ウルトラパンチ、ウルトラチョップ、回し蹴りにウルトラスィング。レオを鍛えたセブンの宇宙格闘術がバキシムを追い詰めていく。
 
 が、卑怯なヤプールは形勢が不利で覆しがたいと見るや、空を割って亜空間ゲートを作り上げた。
「セブンめぇぇぇ! やむをえんバキシム、ここはいったん引け! 体勢を立て直して出直すのだぁ!」
 アルビオンのときと同じく、ヤプールはバキシムを逃がす気だった。亜空間ゲートに向けてバキシムは後退していく。
 けれども、今さらになって逃げ出すなどと虫のいいことを許すわけにはいかない。ここで取り逃せば、いずれ奴の手によって
エーコたち同様の犠牲者が生み出されるのに違いないからだ。

11 :
 セブンは逃げようとしているバキシムに対して、左手の先から緑色の光線を放った。
『ラインビーム!』
 光線は光のロープとなってバキシムの首に巻きつき、引き戻す。以前神戸でモロボシ・ダンとして牧場を経営していたときに
とった杵柄、ロープの扱いはお手の物だ。
 セブンの渾身の力でバキシムは逃げ込もうしていた亜空間ゲートから離されていく。
「放せ! おのれ放さないかぁ!」
「逃がしはしない。お前が、人々を不幸にしようと考え続ける限り、決してこの手は放さんぞ!」
 未来を守ろうというセブンの強い意志がバキシムを縛って逃さない。ウルトラパワーでなぎ倒し、倒れたバキシムの巨体を
それ以上のパワーで持ち上げて、ウルトラリフターで頭上高くへ抱えあげた。
「デュワァァァッ!」
 十万トンの腕力を誇るセブンのパワーを持ってすれば、超獣有数の大重量を持つバキシムも紙の丸太のようだ。
 圧巻の光景に、ベアトリスたちは手に汗を握って見上げている。
「す、すごい……!」
 飛行能力を持たないバキシムはセブンを見下ろしながらも何もできない。
 お前のために傷つけられた、大勢の人間の痛みを知れ! セブンは怒りを込めてバキシムを放り投げた!
『岩石落とし!』
 頭の上の高さから地面に叩きつけられ、バキシムは自らの重量が敵になって大きなダメージを受けた。
 強い、本当に強い! セブンの猛攻に、ベアトリスやエーコたち姉妹は胸のすく思いを味わっていた。自分たちの大切なものを
散々もてあそんでくれたヤプールの手先が手も足も出ずに叩きのめされている。
 そう、正義は絶対に悪には負けない。なぜならば、真の正義は決して悪に屈せずに、あきらめることはない。だからこそ、
不可能を可能にする道も見えるし、負けることはないのだ。そのことを学び、心に思いやりの光を取り戻した姉妹たちには
希望の輝きがまぶしいくらいに見えている。
 
 セトラが、エフィが、キュメイラとディアンナが、イーリヤが笑顔を浮かべ、ユウリとティーナもこぶしを高く掲げて叫んでいた。
 エーコ、ビーコ、シーコもベアトリスと手を取り合い、彼女たちを見守るミシェルたちも瞳に強い輝きを宿している。
 
 もはや、ヤプールの卑劣な企みは完全に破れさった。二度と彼女たちの顔が憎悪と絶望に染まることはないだろう。
 バキシムよ、ヤプールよ、人間をなめるな。
 
 

12 :
よろめきながら、それでも起き上がってきたバキシムは、最後のあがきとばかりにミサイルの全発射口をセブンに向けた。
 レーダーアイを通してセブンを睨むバキシムに宿るものは、セブンとは真逆の怨念と執念。負の方向へと極めた感情の力。
 だからこそ、ウルトラ戦士は負けるわけにはいかないのだ。
 今まさにミサイルを放とうとするバキシムに対し、セブンは腰を落として奴を見据えると、頭上に持つ宇宙最強の剣を投げ放った!
 
『アイスラッガー!』
 
 兄弟の中でもセブンだけが持つ宇宙ブーメラン。数々の凶悪宇宙人たちの野望を断ち切ってきたセブン必の刃が、
白熱化しつつバキシムへと迫る。
 受けてみろ! ウルトラセブンの正義の一刀を。
 アイスラッガーはバキシムのミサイルを正面から爆砕しつつ突進し、愕然とするバキシムの、その首を一撃の下に切り飛ばした!
「ば、馬鹿な……ちくしょぉぉ……っ!」
 胴体から欠落し、ありうべからざる光景を最期に転がり落ちていくバキシムの首。
 しかし、それは自業自得というものだ。アルビオンからここまで、貴様が撒き散らしてきた悲しみの数々はつぐなわねばならない。
 首が落ちてなお、執念深く腕を下ろさないバキシムの胴体へと、セブンは腕をL字に組んでとどめの光線を叩きつけた。
 
『ワイドショット!』
 
 白色に輝くウルトラセブン最強の光線がバキシムの胴体を木っ端微塵に打ち砕き、首も炎の中へと飲み込み去る。
 終わった……ヤプールの手先として暗躍し続け、ハルケギニアを混乱させてきた悪魔は、ついに滅び去ったのだ。
「い、やったぁーっ!!」
 大勝利に、ベアトリスと姉妹たちのうちから大きな歓声があがった。
 ベアトリスとエーコたちは輪になって抱き合い、ユウリやティーナはガッツポーズをきめ、セトラやエフィたち年長組でさえも
子供のように喜んでいる。
 ようやくこれで、彼女たちにまとわりついていたヤプールの影は一掃された。もはや誰も、彼女たちをしばることはない。
 ありがとうウルトラセブン! ほんとうにありがとう。
 手を振る彼女たちの熱いまなざしに満足し、セブンは彼女たちを見下ろしてゆっくりとうなずいた。
 空は晴れ、バキシムの絶命によってヤプールも異次元に逃げ帰って、青空は冬雲をちりばめせて美しく広がっている。

13 :
セブンは大空を見上げ、大地を蹴って飛び立った。
「デュワッ!」
 空を舞い、赤い勇姿はどんどん小さくなっていく。
 ベアトリスたちはその背へ向けて叫ぶ。
「待ってセブン! いえダンさん、わたしたちまだちゃんとお礼もしてないのに!」
 風来坊から受けた恩、それは計り知れなく返しても返しきれる大きさではない。
 でもセブン、ダンはそんなものは求めていなかった。彼女たちに笑顔が戻れば、彼女たちの幸せが幸せになる者が幸せになれば、
それ以上のものは必要ない。
 手を振る人たちに見送られ、ウルトラセブンは去っていった。
 
 
 そしてしばらく……戦い終わった瓦礫の倉庫街の一角で、才人とルイズは馬に乗った風来坊ことモロボシ・ダンと会っていた。
「ウルトラセブン、危ないところをありがとうございました」
「私はたいしたことはしていない。重要だったのは君たちのがんばりのほうさ。それと、この姿のときは私はセブンじゃない。
モロボシ・ダンと呼んでくれ」
「はい! ダンさん、お、俺、ずっとあなたにあこがれてました。どうして、あなたがこの世界に来てるんですか?」
 才人は興奮に震える声で尋ねた。ともかくも、それが一番知りたい。ハルケギニアと向こうの宇宙のあいだには、容易には
越える事の出来ない空間の壁が横たわっているというのに、セブンはどうやってヤプールにも気取られずに来れたのか?
 すると、ダンは当然それを尋ねられると思っていたらしく、微笑を浮かべると明朗に答えた。
「なに、種も仕掛けもない単純な話さ。私は昨日今日来たんじゃなくて、行き来できる機会があったときに普通に来ていたんだよ」
 それは、今からおよそ一ヶ月ほど前にさかのぼる。
 当時、地球ではGUYSの手によりハルケギニアへの次元通路を作ろうとしていたのを覚えているだろうか。
 その計画を察知したヤプールが送り込んできた大怪獣軍団を迎え撃った、我らのウルトラ兄弟。
 しかしそれだけの激戦にあって、ただひとりだけ姿を見せなかったのがセブンだった。それは、彼は戦いが始まる前に、
ウルトラ兄弟のリーダーであるゾフィーから、ある密命を受けていたからだったのだ。
「セブン、これから我々は地球を襲う怪獣軍団と戦い、しかる後に別宇宙へと旅立つ。しかしヤプールがまだどんな隠し球を
持っているかわからん以上、ゲートを開けても全員が無事に渡りきれるとは限らない。そこで、お前は我々に先立って少しでも
ゲートが開いたら潜り抜け、万一のことがあったら向こうの世界でエースを助けてやってくれ」
 結果として、ゾフィーの危惧は現実のものとなった。
「私はゾフィーの指示に従い、怪獣軍団との戦いには加わらずに、わずかに空いたゲートをミクロ化して潜り抜けてきた。
それから先は、君たちも知ってのとおりだよ」
「じゃあなんで、おれたちに名乗り出てくれなかったんですか?」
「敵をあざむくにはまず味方からという。私がいきなり君たちと行動をともにすれば、ヤプールは警戒して隙を見せないだろう。
それに、私もまずは一人の人間としてこの世界がどんなものか見てみたかった。想像していたとおり、すばらしい世界だった」
 ダンは満面の笑みを浮かべ、ルイズも「ありがとう」と笑顔に応えた。
 ハルケギニアも地球となんら変わりない。心を持った人々が泣き、笑い、憎み、愛し合いながら懸命に生きている。それらは
いびつで不恰好で矛盾に満ちているかもしれないが、宇宙のどこよりも可能性にあふれた美しくてかけがえのない世界だと
信じているのだ。
 この世界は、守るべき価値がある。そう語るダンに、才人とルイズはうれしそうに笑顔を返した。

14 :
「それじゃあ、これからはおれたちといっしょに戦ってもらえるんですね!」
「いや、残念だがそれはまだできない」
「えっ! ど、どうしてですか!?」
 思いもかけないダンの言葉に、才人とルイズは驚いた。セブンがともに戦ってくれるなら、これほど頼もしい味方はいないが、
どうしてだというのだろうか。
「君たちも知っての通り、我々M78星雲のウルトラ戦士はこの星の太陽の放つ光線の波長には適応できない。メビウスや
ヒカリのような特殊なアイテムがあれば別だが、おいそれと用意できるものでもないのでな」
「そうか! エースはだからおれたちと合体したんだった」
「そのとおり、この世界でウルトラマンとして戦うには、我々はどうしてもこの世界の人間の力を借りなくてはならない。
さっきは非常用に光の国から持ち込んだ予備のプラズマエネルギーを使ったのだが、それはもうなくなってしまった」
 ダンはそう言うと袖をめくり、手首にはめたブレスレットを見せた。
「それは、ウルトラブレスレット……?」
 形状は似ていた。しかし、そこにひとつはめられているひし形の宝石は黒く濁っていて、一目で使い物にならなくなっているのはわかった。
「これはウルトラコンバーターの改良品で、変身に必要なエネルギーを一度分だけ蓄えておくことができる。しかし、まだまだ
開発中の未完成品でな、将来的には三回分ほどまでプラズマエネルギーを充填するのを目指しているが、用意が間に合ったのは
試作品のこの一つ分だけだった」
 才人とルイズは、ダンがセブンとして活動しなかったのはそれも理由だと思い当たった。たった一度しか変身できないのでは、
おおっぴらに姿を現して動けるはずもない。
「その大切な一回を、わたしたちのために……」
 変身できるかどうかの大切さを身を持って知っているルイズは、惜しげもなくその一回を使って平然と笑っているダンに
大きなものを感じて胸が熱くなった。
「気にすることはない。君たちの熱い思いで生まれた奇跡の重さに比べたら、このくらい比べるにも値しないさ」
 変身できないことには慣れていると、ダンは気落ちした様子など欠片も感じさせずに笑った。そしてダンは懐から一丁の
銃を取り出すと、才人に投げてよこした。
「これは君のものだろう。返しておこう」
「よっ! こ、こいつはガッツブラスターじゃないか!」
 才人は目を見張った。それは以前、地球に帰る機会があったときに持ち帰ってもらっていたエネルギー切れのガッツブラスターだった。
けれど、前に使い込んで汚れていたのはピカピカになり、まるで新品のようになって才人の手の中に納まっている。
「GUYSのリュウ隊長からの預かり物だ。君専用にと、エネルギーパッケージをトライガーショットと共用できるように改造したらしいぞ」
 ダンはさらに、GUYSのマークの印刷された小箱を才人に投げ渡した。中身は予備のエネルギーパッケージと、見たことのない
パーツがいくつか入っている。説明書きも同封されていて、才人はなんとなく面白そうな予感がして、それを大切にしまいこんだ。
「ありがとうございます。大切に使います!」
 プレゼントから伝わってくる無言の期待感に、才人はこころよい緊張感を覚えていた。向こうも暇ではないだろうに、わざわざ
愛銃を使えるようにして送り返してくれた。このガッツブラスターを使って、守るべき人を守りぬけというリュウ隊長の叫びが
聞こえてくるようだ。それに、こいつをこの世界に残していってくれたアスカ・シンにいつか会って、返すためにも絶対に無駄に
することはできない。

15 :
才人への贈り物をすませたダンは満足そうに微笑んだ。手綱を引くと、馬の背を才人たちに向けていく。
「さて、それではそろそろ私は失礼することにするよ」
「えっ! も、もう行っちゃうんですか!?」
「ここでの私の役割はもうない。それに、私はまだメビウスのように振舞うのは気恥ずかしいのでね。彼女たちには
よろしく言っておいてくれないか?」
 見ると、遠くからミシェルたち銃士隊や、エーコたち姉妹が駆けてくるのが見えた。ベアトリスはサリュアに背負われていて、
聞こえないけれどなにかを叫んでいるようだ。探しているものは、いうまでもないだろう。
「では、エースによろしく頼むよ」
「ま、待ってください。どこへ行かれるんですか!」
「さてね、俺は風来坊だ。どこに行くかは風次第……だが、恐らく遠からざる未来にまた会うことになるだろう。私が命を託すに
ふさわしい誰かとめぐり合えたとき、そのときこそ共に戦おう!」
「はいっ!」
 二人は力強く答えた。ダンの力を求めている人は、この世界のどこかに必ずいるだろう。その旅立ちをさまたげてはいけない。
「はっ!」
 馬の腹に蹴りを入れて、ダンは駆けて去っていく。
 あっというまに小さくなっていき、その精悍な姿に才人は心からのあこがれと尊敬を込めて手を振り続けた。
 やがてベアトリスたちが追いついてくると、才人たちの背中に焦った声が響いてきた。
「ちょ、ちょっとあなたたち! あの方は!」
「……行っちまったよ。もう追いかけても遅いぜ」
 才人は遠くを見る眼を動かさずに答えた。馬の姿はもう豆粒のように小さくなっており、すぐに見えなくなるだろう。
「なんてこと! せめて一言くらい直接お礼したかったのに! なんで止めてくれなかったのよ」
「止められねえよ。あの人には、まだまだやることがあるんだ」
「そうね、戦士の旅立ちを邪魔しちゃいけないわ……見なさいよ、あの後姿を。最高にかっこういいじゃない」
 ルイズも才人に全面的に同意してつぶやいた。悔しいが、己の仕事を成し遂げて威風堂々と去っていく、あの背中ほど
大きく偉大なものをかつて自分は知らない。この遠さのように、まだ全然追いつけないけれど、大人になるからにはああいう
背中のできる人間になりたいものだ。
 才人とルイズの横に足を止めて、ベアトリスたちも去り行くダンを見送った。
 さようなら風来坊、いえモロボシ・ダン、あなたのことは決して忘れない。
 いつしか、ベアトリスやエーコたち姉妹の目には涙が浮かび、千切れんばかりに手を振って叫んでいた。
「ありがとうダンさん! わたし、エーコたちと本当の友達になれたよーっ!」
「あなたから教えられたことは一生忘れない! 本当にありがとう!」
「わたし、またこんな幸せな気持ちになれるなんて……ううん!」
「わたしたち、きっともっとずーっと幸せになってみせるから、がんばるからねーっ!」
 彼女たちだけでなく、セトラからティーナまでの姉妹も泣き笑いながら手を振っている。
 ありがとう、ウルトラセブン、わたしたちにまた生きる希望を与えてくれて。

16 :
 金色の髪や水色の髪が風にゆれ、片眼鏡が陽光にきらめき、怒鳴り声やはしゃぎ声がこだまする。
 彼女たちはもう悪魔ではない。ひとりひとりが立派な人間だ。そして、その自信はあの偉大で大きな目標となる背中を
覚えている限り揺らぐことはないだろう。そう、太陽がある限り地上が光を失うことはないように。
 そのとき、一陣の風が吹き、ベアトリスの持っていたテンガロンハットを吹き飛ばした。帽子は風に乗り、見る見る空の
かなたへと飛んでいく。
 だけども、不思議と誰もそれを追おうとはしなかった。きっと、この風はあの人のもとへと吹いていくのだろうから。
 悪魔の書いた筋書きをハッピーエンドに変えて、降りる幕とともに消え行く飛び入り役者を、悲劇のヒロインとなるはずだった
主演俳優たちは見送る。
 その幸せそうな姿を優しい笑顔で見て、ミシェルは才人の横顔にダンと同じものを感じていた。
「サイト……あの心の中の世界で、わたしたちを導いてくれて、ずっと守っていてくれた、あの優しい気配は……いや」
 それ以上は言うまいと、ミシェルは首を振った。真実がどうあれ、それは今言うべきことではない、むしろ秘すべきことだ。
 でも、才人もいつかダンのように大きな背中を持つ男になるなら、自分もその隣に立てるような立派な人間になりたいと思うのだった。
 
 
 風だけを友に、モロボシ・ダンは去っていく。
 馬のひずめの音が高く鳴り、街はもう遠く小さい。
 そこへ、風に乗って吸い込まれるように飛んできたテンガロンハットを受け止めて、ダンは馬を止めると振り返って言った。
「行くがいい若者たちよ。まだ誰も行ったことのないはるかな地平まで、君たちならどんな困難でも乗り越えていけるだろう」
 たとえ遠く離れても、風はベアトリスたちの希望に満ちた声を届けてくれた。もう心配はいらない、悪魔がどんな魔手を
伸ばしてきても、彼女たちはそれを跳ね返せるくらいに強く成長した。
 そしてダンは、自分が地球と同じくこの星の人間が好きになった自分を感じていた。
「俺が命を託すに値する人間か……フフッ、案外本当に早く君たちとは再会することになるかもしれないな」
 思わせぶりな笑みを浮かべ、ダンは風を切る。
 あとは、エースが命を託したあの少年たちにまかせよう。再び馬を駆り、モロボシ・ダンはいずこへかと続く道を走り去った。
 
 
 明日、東方号は発進する。
 
 
 続く

17 :
東方号再建編、いえベアトリスとエーコたちの物語、いかがでしたでしょうか。
ウルトラセブンの登場をもっての完結、作者としても感無量を覚えました。
本来はこの半分くらいの長さで締めるつもりでしたのですが、書いてるうちにベアトリスやエーコたちのキャラ性が膨れてきて
いつの間にか10話以上も費やす羽目に。アイデアは湧いても、それを短くまとめるのはまだまだ苦手で、どうもお付き合いいただき、
ありがとうございました。
 
なお、実を言うと最初のプロットではセトラたち十人姉妹のうち半分はバキシムにされてしまって、生き残ったエーコたちが
墓前で強く生きていくことを誓って終わるという、やや鬱の残るエンドを考えてました。
が、書いてる途中で……あれ、でもそれだとセブンが役立たずじゃね? と気づいて全員生存に切り替えました。
でも、なんとかきれいに締めることができてよかったです。作者の魔の手を逃れてハッピーエンドを掴んだ十姉妹の強運には
負けたと思いつつも、作品の展開すらねじまげてしまうウルトラセブンはやっぱりすごい!
次回からは、いよいよ東方への出発です。ガリアは解決してませんが、原作についに追いついてしまいました。
ここからはテンポを上げて、一話ごとにぐっと進めるように書きます。
代理終了。途中本文長すぎと言われたのでこちらで分割させてもらいました。

18 :
>>1とウルトラの人乙

19 :
代理の人&ウルトラの人の乙です!

20 :
あれ?
てっきりバキシマム来ると思ってたのに

21 :
ゲームのみの怪獣は難しいんじゃない

22 :
お久しぶりです
空いてるようなので50分ぐらいから投下します

23 :
 
 逃げるように祝宴の場を後にしたルイズを追って、エリスは薄暗い廊下の中を走っていた。
 やがて彼女は通路の半ば、開いた窓から月の光が差し込むその場所で目的の相手を見つけ出す。
 肩を落とし、俯かせた顔に何度も手をやり、しゃくりあげる。
 月光に照らされて淡く光るピンクブロンドの髪が酷く幻想的で、酷く儚かった。
「……ルイズさん」
 声をかけて、そっと肩に手を触れる。
 するとルイズはびくりと身体を震わせ僅かにエリスを振り向いた。
 顔を上げないまま、眼を合わせない彼女の手を引いて、エリスは宛がわれた部屋へと歩き出す。
 一言も言葉を交わさないまままるで幼子を引くように連れ立って部屋へと戻り、二人でベッドに腰を下ろした。
 同時にルイズは崩れ落ちるようにエリスにもたれかかり、胸に顔をうずめる。
 服をぎゅっと掴んでくる震えた彼女の手を取り、空いたもう片方の手でエリスはルイズの髪を撫でた。
「……どうして。どうしてあの人達は笑ってるの? 明日死んでしまうのに、なんで笑えるの?」
「……」
 嗚咽と共に吐き出したルイズの台詞に、エリスは答える事ができなかった。
「ウェールズ様もそう。あの手紙にはきっと……絶対、姫様から亡命して欲しいって書いてたはずよ」
「……そうですね。私もそう思います」
 それはエリスも気が付いていた。
 彼女もルイズと同様にアンリエッタの表情とウェールズの表情を見ていたのだ。
 するとルイズはエリスの服を握る手の力を強め、吐き出すように言う。
「姫様が……好きな人が逃げてっていってるのに、どうしてあの人は死を選ぶのよ!」
 ここにはいない誰かに訴えるように彼女は叫び、涙に崩れた顔を上げてエリスを見つめる。
「大事な人が生きてって言ってるのに! わたしも生きてって言ったのに! わたしが! わたし、が……っ!」
 感情のままに叫ぶルイズだったが、不意に言葉を途切れさせた。
 何かを言いたそうに、しかしその言葉を口に出す事ができず、ルイズは苦しそうに顔を歪める。
 どうしても口に出せないその言葉がなんなのか、エリスはわかっていた。
「……ルイズさんが協力するって言ったのに?」
「!!」
 エリスの漏らした言葉に、ルイズの顔が強張る。
 何かに耐えるように唇を噛み、しかし歯の根が合わずにカチカチと音が鳴る。
 震えだしたルイズの身体を支えるようにエリスが抱きとめると、ルイズは鳶色の瞳からぼろぼろと涙を零して呻いた。
「……わたし、もういや。こんな国嫌い」
 ルイズは祝宴に立会い、異様なほど盛り上がる彼等を見て心底嫌になった。
 ウェールズを始めとしてあの城にいる全員が、自分の事しか考えていない。
 残された人たちのことなんて全く考えていない。
 そんな彼等の姿を見ていられなかった。
「帰りたい。トリステインに帰りたい……」
 ――でも。
 ルイズは苦悶に満ちた声で囁く。
 身体を震わせて、瞳を恐怖に彩らせ、まるで縋るようにエリスを見つめて、言う。
「わたしなら、あの人たちを助けられる……」

24 :
 
 ハルケギニアには虚無と呼ばれる伝説の系統があるという。
 始祖ブリミルはその虚無を用いて奇跡を起こしたという。
 そして、その虚無を現代に担う者がいるという。
 奇跡が起こらねば彼等を救えぬのならば、奇跡を起こせば良い。
 それが自分には、できるのだ。
 だが、ウェールズによって突きつけられた現実にルイズは震えることしかできなかった。
 彼がその話を聞き入れず部屋を辞した時、正直な話をすれば、安心さえもしてしまったのだ。
 そして祝宴に集った死を覚悟する彼等を見て、彼女は気付いてしまった。
 ――このまま何もせずにいれば、彼等は死んでしまうのだ、と。
 ――このまま何もせずにいるという事は、彼等を見捨てるという事なのだ、と。 
 何故なら、自分には彼等を救う『奇跡』があるのだから。
 自分は彼等の命の天秤をその手に握っているのだ。
 自分の決断と行動によって、多くの人達の命運を左右する。
 貴族として民の上に立ち生きる以上そういう事もあるのだと知ってはいた。
 知ってはいた。
 しかし、それは本当に"知っていた"だけだった。
 故国トリステインのため、王女アンリエッタのため、貴族としての誇りのためならば、それも辞さないという覚悟はあった。
 覚悟はあった。
 あった、と。そう"思っていた"だけだった。
 心の裡に築いていた誇りも覚悟も、何もかもが崩れてしまった。
「わたし、どうしたらいいの? どうすればいいの?」
 怯えた表情で訴えてくるルイズに、エリスは静かに問う。
「ルイズさんは、どうしたいんですか?」
「……助けたい。助けたいわ。わたしはウェールズ様を助けたい。あの人達も。でも……でも」
 それ以上言葉を続ける事ができない。
 あの時言われたウェールズの言葉と、そして――自分の言葉が楔になって声を紡ぐ事を許さない。
 声を出せない代わりに、身体が一層強く震えた。
 エリスはそんなルイズを優しく抱きしめ、囁くように呟く。
「……ごめんなさい。私には、答えられません」
「……!」
 エリスの耳元でルイズが息を呑む音が聞こえた。
 おそらくは突き放されたと思ったのだろう、僅かに強張ったルイズの身体をしかしエリスは抱きしめたまま、言葉を続ける。
「私ならどうするか、というのなら考えてることはあります。どちらを選んでもつらいのはわかってます。
 だけど……今回それを決めるのも、それをやるのもルイズさんですから、私からは言えません。
 ……ただ、一つだけ。ルイズさんは一人じゃないんです」
 エリスの言葉に、硬直し震えるだけだったルイズの身体が僅かに揺れた。
 紫苑の髪の少女は、ピンクブロンドの髪を優しく撫でながら、言う。
「ルイズさんには使い魔の私がいます。柊先輩だっています。だから、全てを一人で抱え込む事なんてないんです。
 "全て"を代わりに背負う事はできないけど、一緒に背負って支える事ならできます。
 ……一緒に一人前になろうって、言ってくれましたよね?」
「エリス……」
 身体の震えは止まらなかったが、ほんの僅かに心に刺さる痛みが薄れたような気がした。
 ルイズはエリスから身を離すと、涙を拭いながら呟く。
「あなた……普段は全然頼りなさそうなのに、なんでこういう時だけ強いの?」
 学院のような箱庭――戦争に直面した今ではそう感じる――にいる時はありきたりの人間に見えるのに、何故かこういう状況でも怖気づく事がない。
 それがルイズには不思議でたまらなかった。

25 :
 
 するとエリスは少しだけ物憂げな表情を見せると、僅かに口の端を歪めて返した。
「前にも少し言いましたけど、私も元は柊先輩と同じウィザードで……『色々』ありましたから。私の時も、そうやって柊先輩や他の人達に助けてもらったんです」
 表情だけは微笑だったが、それを語る彼女の口調はどこか自嘲を含んでいるようにも見えた。
 しかしそれを追及する余裕のないルイズは、先程のように取り乱しはしないものの顔を俯け、苦しそうに眉を寄せた。
 エリスのおかげで僅かに楽にはなったが、それでも決断をできるほど心の整理がついていない。
 お互いに言葉のないまま部屋に沈黙が下りた。
 それを破ったのはエリスでもルイズでもなく、扉から響くノックの音だった。
 顔を強張らせたルイズを手で制し、エリスは一人そちらに向かう。
 扉を開くとその向こうにいたのは、手にワインとグラスを持ったワルドだった。
「失礼。ルイズはいるかな?」
「あ、はい。いますけど――」
 言ってエリスはベッドの上で不安そうにしているルイズに目をやり、
「ごめんなさい。気分が優れないようですから……」
「そうか……しかし、それなら僕としては尚更放っておけない。話をさせてもらいたいのだが」
「ですけど――」
「……いいわ、エリス」
 まだちゃんと落ち着いて話はできないだろうとエリスは断ろうとしたのだが、それを遮ったのは他ならぬルイズだった。
 思わずエリスが目を向けると、彼女は目尻を拭って大きく深呼吸し、エリスに向かって声をかける。
「なんとか落ち着いたから。ありがとう」
 そう言われてしまってはエリスとしては拒絶することはできない。
 ワルドを部屋の中に入れると、エリスはおずおずとワルドに尋ねた。
「あの、私も同席しても?」
「む……それは、構わないが……」
 するとワルドはほんの少し難しい表情をした後、申し訳なさそうに手にしていたグラスを持ち上げて見せた。
「この通り、グラスを二つしか持って来ていないんだ。それに、他人の前で傷心の婚約者を慰めたりするのは、その……正直、照れる」
「あっ……ご、ごめんなさい!」
 はっとしてエリスは口に手を当て顔を赤らめ、それを聞いたルイズも思わず目を丸くしてやはり頬を染める。
 そんな二人の様子を見てワルドは所在なさげに苦笑を浮かべ、エリスに言った。
「いや、気にしなくていい。まあそういう訳だから、席を外してくれると助かる」
「は、はい、わかりました」
 エリスは慌てて一礼すると、最後にルイズを一度だけ見やってから部屋を後にした。
 ワルドがエリスが退室するのを見届けてから振り返ると、目の合ったルイズが僅かに頬を染めて視線を反らす。
 彼女は今更のように自分が座っているのがベッドだと気付くと、慌てた仕草で立ち上がった。
 部屋に置かれている小さなテーブルの方へと促し、二人で向かい合うように椅子に座る。
 このような場所であるのでテーブルも椅子もこじんまりとしていたが、流石にエリスの時のようにベッドで話す訳にもいかない。
 ワルドは持ってきたグラスにワインを注ぎ、杯を合わせる気分でない事を察したのだろう、ただ無言でルイズを促す。
 口を付けたワインの味は全くわからなかったが、喉と身体を潤す水分はルイズに僅かな安堵をもたらした。
「……迷っているようだね」
 ワインを半分ほど飲み干したのを見計らってワルドがそう切り出すと、ルイズはグラスをテーブルに置いて顔を俯けた。
「無理もない話だ。多くの人の命がかかっているのだからね」
 ワルドの言葉にルイズは何も返せず、グラスに残ったワインを見つめる事しかできなかった。
 改めて持ち上がったその話題でルイズの中に再び恐れが浮かび、それを誤魔化すようにワインを一気に飲み干した。
 やはり味はわからない。おそらく酔えもしないだろう。
 ただ、飲むたびに頭の中に何かが沁み込む感じがして、思考はともかく身体は酔ってくれているのだろうと感じた。
 できるのならばこのまま酔いつぶれてしまいたい。そうすれば――

26 :
 
「……」
 ルイズが空になったグラスを差し出すと、ワルドが新たにワインを注ぐ。
 二杯目を一気に全て開けてしまうと、不意に彼が口を開いた。
「……王子殿下とのやりとりを聞くに、キミはまだ虚無を扱える訳ではないのだろう?」
「そう……ね」
 胡乱な様子でルイズが答えると、ワルドは得心したかのように頷き、言った。
「思うに、君が迷っているのはそのせいではないのかな」
「……!」
 その言葉にルイズは思わず目を見開く。
 彼女の視線を受けてワルドはまるで諭すかのように続けた。
「貴族……メイジならば魔法が使える。魔法という確固たる力を宿すゆえに、貴族は誇りを持ち杖を振るう。
 稀代のメイジと呼ばれた君の父上もそうだし、小なりとはいえ僕もそうだった。
 だからきっと君も、力に目覚めさえすれば迷いは消えるはずだ。君の気高い精神に相応しい、虚無に目覚めれば」
 それは、その通りかもしれない。
 実際そういうワルド自身はその力によって衛士隊の隊長という地位にまで上り詰めたのだ。
 そしてエリスも、元は柊と同じウィザードだと言っていた。
 それはつまり柊と同じような力を持っていたのだろう。きっとだからこそ彼女はこういう時でも揺るがないのだ。
 対して自分はどうなのだろう。
 力のない自分ではフーケを捕まえる事もできなかったし、この任務でも柊から置き去りにすらされている。
 ウェールズを翻意させる事もできなかった。
 もしも自分に力があって、それらを自らの手で成しえていたとしたら、果たして今のように迷っていただろうか。
 ……それはわからない。
 何故ならそれは無意味な仮定でしかなく、今あるのは自分に力がないという事実だけだったから。
「でも……ウェールズ様はそれを許して下さらなかったわ」
 その機会すら与えられなかった事に僅かな消沈を覚えてルイズが呟くと、ワルドは優しく笑みを浮かべる。
 そして彼は懐から何かを取り出すと、恭しい動作でそれをテーブルの上に置く。
 それは、どこか古ぼけたオルゴールと青い宝石が嵌められた指輪だった。
 ルイズの顔が驚愕に歪む。
「み、水のルビー? なんで貴方が……」
「あの男から取り返した。これは君が持つべきものだ。始祖の秘宝は虚無の担い手たる君こそ持つに相応しい。そうだろう?」
 酷く優しい調子で語るワルドの言葉に、しかしルイズは心の奥底から何か冷たいモノが這い上がってくるような錯覚を感じた。
 そして一緒に置かれたオルゴールに視線が注がれる。
 始祖の秘宝は自分に相応しい、と彼が言うのなら、その彼が一緒に取り出したこのオルゴールは。
 あの時。
 ウェールズがルイズの訴えを拒絶した時。
 彼は『何』を渡すわけにはいかないと言っていた――?

27 :
 
「どう、して……こんな、モノを」
 ルイズは声が震えるのを止められなかった。
 しかしワルドは様子は全く変わらない。変わらないのが、逆に底知れない恐ろしさを感じさせた。
 彼は僅かに身を乗り出し、震えるルイズの手を取った。まるで幼い頃、いじけていた自分を迎えに来た時のように。
「怖いのかい、ルイズ」
 振りほどいてしまいたかったが、身体が動かなかった。
 恐怖に身が竦んでいた、というのもあるが、何故か振りほどきたいという一方で彼の囁きに耳を傾けている自分がいる。
 そして彼は、あの頃と同じようにルイズに言った。
「大丈夫、僕がついているよ」
 心の奥にまで沁み込むようなその声に、ルイズの力が抜ける。
 鳶色の瞳に僅かな光を漂わせ、彼女はワルドを見つめた。
「恐れる必要など何もないんだ。何故なら君には僕がいる。僕が君を護ろう。
 君に降りかかる苦難も罪も"全て"僕が引き受けよう。僕はそのために研鑽を積み力を得たのだから」
「……全て?」
「そう、全てだ。
 恐れる必要などない。君を恐れさせる苦痛や災禍は全て僕が引き受けよう。
 迷う必要などない。君が選んだことで流れる怨嗟や血は全て僕が浴びよう。
 だから君は誇り高いまま、穢れなき聖女のまま、手にした杖で神の奇跡を振るえばいい」
 紡がれる言の葉が酷く心地よかった。
 彼の声がまるで清流のように身体の隅々まで、心の中にまで沁み込んで来る。
 身を任せてしまえばこのまま眠ってしまいそうな居心地の良さ。
 ルイズは陶酔したかのような声で、ぼんやりと呟いた。
「本当……本当に?」
「本当だとも。だから僕と共に行こう。君があるに相応しい場所に。君が歩むに相応しい道へ。……僕と共に」
「……ワルドさま」
 ワルドの言葉にルイズは嬉しそうに微笑を浮かべた。
 そして彼はルイズの手を引き、恭しくその指に水のルビーを嵌めた。
 まるで新郎が新婦にエンゲージリングを嵌める様子に見えて、ルイズはかつてぼんやりと夢見ていた光景と重ねて知らず頬を赤らめた。
 とても幸せな気分だった。
 ただ、どこか心の片隅でそんな彼女を見つめている自分がいる――そんな気がする。
 それが一体なんなのかわからないまま、ルイズはワルドの差し出した秘宝――始祖のオルゴールを手にした。
 ※ ※ ※

28 :
 
 王党派達の最後の晩餐は日付が変わる頃になってようやく半ばを過ぎ、熱狂も下り坂に差し掛かっていた。
 喧騒や歓声が次第に夜の静寂へと変わりつつある中、薄暗い廊下を一人の女が歩く。
 窓から落ちる月の光が、深く被ったフードから僅かに零れた翡翠色の髪を照らした。
 女は曲がり角に辿り着くと一旦足を止めてその先の様子を窺い、再び歩を進める。
 だらしなく寝入った兵士達の隙間を通り過ぎ、彼女は人目を憚るように階段を上り上階に向かう。
 もう少しで仮の天守のある最上階まで辿り着こうとした、その時だった。
「失礼」
 と、不意に声をかけられて女は大きく肩を揺らした。
 数瞬の間の後、彼女がゆっくりと振り返ると、そこには薄闇の中に映える金髪の青年――ウェールズがいた。
「この先は我々王党派の重鎮達が休む部屋だ。申し訳ないが、大使殿の連れとはいえそれ以上立ち入るのはご遠慮願いたい」
「……」
「ミス・ロングビル……で、よろしいか?」
 ウェールズは尋ねたが、女は答えない。
 後ろ手に沈黙を保ったままの彼女をしばし見やった後、彼はどこか芝居がかった仕草で肩を竦めて苦笑を浮かべた。
「本来なら衛兵達が護っていてここまで来れないはずのだが、彼等は"何故か"ことごとく寝入っていてね。いくら無礼講とはいえ羽目を外しすぎているようだ」
 フードから覗く女の口元が僅かに歪んだ。
 表情を隠されてもなおそれとわかる険悪な気配に、しかしウェールズは臆する事なく言葉を放つ。
「地下の港で一度目にしたが、ちゃんと話をするのはこれで初めてか。……顔を拝見しても?」
「……」
 すると僅かな逡巡の後、女――ロングビルはフードを取り払い眼鏡越しにウェールズをはっきりと見据えた。
 お互いに言葉もなくしばしの間視線を交わす。
 やがてウェールズは大きく息を吐いて、懐かしそうに語りかけた。
「最後に会ったのは五年くらい前……モード公の誕生会だったかな。久しぶりだね、マチルダ」
「――気付いてたのか」
「噴飯ものだが、港で見た時は気付かなかった。ヒイラギにサウスゴータで会ったと聞かなければきっと思い出せなかったし、ここにもいなかったろうな」
「……余計な事を」
 マチルダは不快そうに顔を歪め吐き捨てた。
 彼女にとってこの城にいる貴族たちは全く無縁の人間達ではなかったし、少なからず面識のある者もいた。
 しかし、そんな彼等も誰一人としてマチルダの事には気付かなかったのだ。
 姿を晒すのを控えていた、というのもあるが、何より四年近くも前に姿を消した少女の事など覚えているはずもない。
 まして自らの滅びを目前にしているのだ、よほど親密でなければ気に留めることさえないし――彼女にとってそのような相手などもはや存在しない。

29 :
 
「何故ここに――とは聞くまでもないか」
「答えるまでもないだろう? それで、どうするんだい? そこらに衛兵を隠してるのか?」
 マチルダは鼻を鳴らして壁に手を当てた。
 後ろ手に隠していた杖を握り締めて、ウェールズに向ける。
 すると彼は首を左右に振って、手を差し出した。
「衛兵はいない。そして陛下に――父に会いたいのなら、杖を渡してくれ。それが条件だ」
「……何?」
 ウェールズはいぶかしむように見つめてくるマチルダにしかし物怖じせず、空いた手に握る杖を見せると彼女に向かって語りかける。
「今君に王を討たれる訳にはいかない。話をするだけで禍根が絶てるなどとは思わないが、これが僕にできる精一杯の譲歩だ」
「……お前達の事情なんて知った事じゃないね」
「ならば、遺憾ながら僕は――私は陛下の臣として君をここで捕らえなければならなくなるな」
 僅かに表情に陰りを見せてウェールズが言う。
 お互いに杖と視線を向け合ったまま、場に沈黙が下りた。
 ただ、応酬した言葉とは裏腹にその静寂の中に剣呑な気配はほとんどなかった。
 ウェールズにとっては不本意な状況であるのでともかくとして、相対するマチルダの側さえもそうなのが彼にとっては少々不可解だった。
 反応に窮してウェールズが様子を窺っていると、不意にマチルダが軽く失笑を漏らした。
 眉を潜めた彼の前で、更に彼女は自ら持つ杖を下ろし、そして床に放り投げる。
 床に落ちた杖がからからと乾いた音を立てた。
「……マチルダ?」
「これが条件なんだろう? さっさとアイツに会わせな」
 どこか他人事のように彼女はそう言い、その場から離れて壁に背を預け、大きく息を吐く。
 意外な反応ではあったが、マチルダがこうして条件を呑んだ以上否応はない。
 ウェールズは床に落ちた杖を拾い上げると、彼女を促して歩き始めた。
 二人はややあって王の寝所まで辿り着き、部屋の前に控えた衛兵達を下がらせる。
 その際に衛兵達は王子の同伴とはいえマチルダの入室にあたり身体検査を要求したのだが、彼女はそれをあっさりと受け入れ――そして何も不審な物は持っていないと判明したのだ。
 廊下の両端に移動した衛兵を見届けながら、ウェールズは疑念が更に強くなったのを感じる。
 マチルダがこの場に来たのは、言うまでもなくサウスゴータの無念を晴らすためだろう。
 にも拘らず彼女は自ら杖を手放し、そしてナイフなり銃なりの得物も所持していない。
 何らかのマジックアイテムの類も、やはり持ってはいなかった。
 徒手やそれに類する小物では到底メイジを相手取ることはできまい――少なくとも彼女の所作は相手取れる域ではない。
 つまり、ウェールズの知識の及ぶ限りで彼女が王を害する事は不可能なのだ。
 しかし当のマチルダはそれを気にする風もなく、それだけにウェールズは彼女の意図を測りかねていた。
「……どうした? 会わせてくれるんじゃないのかい?」
「……ああ、わかった」
 そう約束した以上反故にする事もできず、ウェールズは覚悟を決めて扉をノックした。

30 :
しえん

31 :
 
 仮にも王の寝所だけはあり、その部屋は城の中でも最も広い間取りがあった。
 薄暗い室内の最奥、ベッドの脇の灯火に照らされ、老王は身を横たえ何かの書物に目を落としていた。
「……父上。少々よろしいですか」
 静寂を破らぬようウェールズが静かに語りかけると、ようやく来訪者に気付いたかのようにアルビオン王――ジェームズは顔を上げた。
「ウェールズか。どうしたのだ? もう朕には彼等の相手ができる気力はないぞ」
 晩餐の余韻が残っているのだろう、少し上擦った声で言ったジェームズ王に、ウェールズは少し間を置いて答える。
「……。実は、父上にお引き合わせしたい方がいるのです」
「ほう?」
 王は片眉を僅かに持ち上げ、ウェールズの隣にいるマチルダに目をやった。
 彼女は伏せていた頭を上げ、平静な表情を崩さぬよう強く歯を食いしばって父母の怨敵を正面から見据える。
 薄暗がりの中、多少距離もあるので顔はわかるまい――否、例え至近で顔を見られても王は彼女の事は気付かないだろう。
 やはりと言うべきか、ジェームズ王はややあって首を傾げながらウェールズへと問いかけた。
「知らぬ顔だが、よもやそなたの良人という訳ではなかろうな?」
「違います。彼女の名はマチルダ・オブ・サウスゴータ――旧サウスゴータ伯の子女にございます」
「……」
 努めて感情を抑えた声でウェールズがそう言うと、ジェームズ王は僅かに目を細めた。
 場に痛いほどの沈黙が下りる。
 時間が止まったかのように誰一人微動だにせず、どれほどの時間が経ったかもわからないぐらいの静寂の後、老王が小さく呟いた。
「……そうか。サウスゴータの」
 その囁きに押されるようにマチルダがジェームズ王に向かって一歩を踏み出した。
 ウェールズが思わず彼女を止めようと手を出しかけたが、
「よい」
 当のジェームズ王がそれを制した。
 ゆっくりと王へと近づいていくマチルダの背を見ながら、ウェールズは懐の杖に手を伸ばす。
 マチルダは丁度王とウェールズの中間ほどの場所で立ち止まると、酷く冷めた翠色の瞳でジェームズ王を見やり、口を開いた。
「……何か言いたい事はあるか?」
 問うた声にジェームズ王は沈黙を返した。
 マチルダから目を背け、どこか遠くを見るような目線で天井を見上げ、そして息を吐く。
「……ないな。語るべき事などないし、言うべき事もない。それで時が返り事実が変わる事などない以上、何の意味もない」
「――っ」
 マチルダの肩が揺れた。
 僅かに顔を落とし、拳を握り締める。
 後ろからそれを窺っていたウェールズが僅かに杖を握る手に力を込めた。
 しかし――不意にマチルダが嘆息し、次いで天井を仰いだ。
「……どこまでも忌々しい奴だね。謝罪の一つでも聞かせてくれれば――遠慮なくしてやれたのに」
「マチルダ……?」
 やはり彼女の意図が掴めず、ウェールズはその場に立ち尽くす事しかできなかった。
 マチルダはまるで糸が切れたかのようにその場に座り込み、再び大きく息を吐いた。
「マチルダ。君は……」
 ウェールズは崩れ落ちた彼女に歩み寄り、肩に手を添える。
 彼女は翡翠の髪を苛立たしげに掻き、しかし彼の手を払う事なく自嘲じみた声を上げた。
「何か勘違いしてるようだから、教えとくよ。あたしがここに来たのは――『けじめ』をつけるためだよ」

32 :
私怨

33 :
 
 ――アルビオン王家が憎いか、と問われれば、それは言われるまでもなく憎いと答えるだろう。
 それは当然だろう。奴等のせいで家名は地に落ち、父も母も親しい人も死んだのだから。
 無念を果たしたいか、と問われれば、それは言われるまでもなく果たしたいと答えただろう。
 少なくとも、それが起こった当時はそう思っていたし、そのために生き延びて裏稼業にも身をやつしたのだ。
 そのまま復讐心を抱き続けていられたなら、おそらく彼女は問答などする事もなくアルビオン王もその前に立ち塞がったウェールズもまとめてくびりしていたはずだ。
 しかし、彼女はそうならなかった。
 彼女は沢山のものを失ったが――唯一残ったものがあったのだ。
 彼女の父母が、そしてその父母と親しいモード公がその命に代えて守ったハーフエルフの少女、ティファニア。
 正直な事を言えば、あの一件が起きた当時マチルダは彼女が疎ましかった。
 何故なら彼女とその母親のエルフこそが、マチルダが陥った状況の元凶なのだから。
 しかしマチルダと同じく総てを失ったティファニアは彼女に縋るしかなく、マチルダも両親の忘れ形見に等しい彼女を捨て置くことはできなかった。
 当初は疎ましさ憎らしさを隠してうわべだけで養っていたが、単純な彼女はそれをまともに受け取って姉として慕うようになった。
 最初はそんな彼女を内心馬鹿にもしていたが……いつしかそんな風に馬鹿にするのが馬鹿らしくなってしまっていた。
 そうやってティファニアとの生活が変化していくのに伴って、王家に対する感情も僅かに変化していった。
 勿論、憎悪が消えてしまった訳ではない。許してやろうと思う事などありえない。
 しかし、かつては確かに抱いていたはずの『何が何でも復讐してやろう』という激情が薄れていたのだ。
 内乱が起きると噂され、そして叛乱勢――レコン・キスタが優勢になり王家の打倒が現実味を帯びてきても、何故かそれに乗ろうという気にはならなかった。
 その理由がはっきりとわかったのはつい最近。
 魔法学院の一件をしくじってからサイトに助けられ、ティファニアに自分の事情を知られた時だった。
 酷く取り乱し泣きじゃくって自分に縋りつくティファニアの姿が、いつかの自分と重なった。
 ……その時、気付いたのだ。
 いつの間にか、生きるための目的が変わっていた事に。
 マチルダがこの場に来たのは、あの時に気付いた自分の心境を確かめるためだ。
 家を貶め父母をした張本人であるアルビオン王を目の当たりにして、果たしてその時自分は何を考え何をするのか。
 それを確かめるために彼女は柊達に同行してきたのだ。
 そして実際にその王を目前にして――やはりと言うべきなのだろうか、思っていたほど怒りも憎悪も感じなかった。
 端的に言えば、そう……"どうでもよかった"。
 憎むべき老王が言った通り、もはや今更なのだ。
 復讐を果たしたところで家の名誉が戻る訳でも両親が蘇る訳でもない。
 むしろ今更ながらに謝罪して許しを請い、自分が喪ったそれらを本当に『過ち』にされてしまう方が侮辱というべきだ。
 もしジェームズ王がそうしていたらそれこそ何が何でもしてやろうと思っていたが、そうはならなかった。
 それがほんの少しだけ、悔しかった。

34 :
 
 マチルダは添えてきたウェールズの手を取り、彼の助けを借りて立ち上がる。
 両の手で少し乱れた髪を一度梳いて整えると、大きく深呼吸して再びジェームズ王を見据えた。
「お前の事はもう忘れる。だが、お前は死ぬ最期の瞬間まで決して忘れるな。お前があたし達にしたことを」
「……よかろう。ただ、朕はそなた達の事に限らず、己の成したことを忘れたことは一度たりともないがな」
 ジェームズ王は晩餐の時に見せた枯木のような印象とは程遠い、毅然とした表情でマチルダにそう返す。
 そんな父の姿を見てウェールズは僅かに目を見張った。
 それは奇しくも件のモード公の事件を境に見られなくなった、かつてのアルビオン王ジェームズ本来のものだったのだ。
 堂々とした王の態度を見やってマチルダは不快そうに舌を打った。
 もはや復讐の事はどうでもいいが、ここまで来たのなら意趣返しをして少しでも溜飲を下げねば物足りない。
「……だったら、覚えているか? お前が追い落としたモード公には忘れ形見がいた事を」
「……!」
 そこで初めて、ジェームズ王の表情がほんの少し崩れた。
 しかしむしろ大きく反応したのは、同伴しているウェールズだった。
「忘れ形見? まさか、子がいたのか?」
「……知らなかったのかい?」
「エルフと通じていることは知っていた。だが、子がいたとは聞いていない。僕の……従妹?」
 エルフが関わる事はともかくとして、子を成していた事だけは厳重に秘匿していたのだろう。
 絶句したウェールズをよそにマチルダがジェームズ王に目をやると、彼もまたウェールズほどではないにせよ表情を険しくしてマチルダを見つめていた。
「……生き延びておったのか」
「生きてるよ。なんなら遺言でも伝えてやろうか? あたしに言う事はなくとも、姪には言う事があるんじゃないか?」
 マチルダが皮肉気に笑ってそう言ってやると、ジェームズ王はほんの少しの沈黙の後彼女と同じような顔で口角を歪める。
「ないな。あれはもはや"わし"とは何の関わりもない。切り捨てたわしに言葉をかける資格なぞなかろう」
「そうだね。あの子はもう『あたしの家族』だ。お前に口出しされるいわれなんてない」
 ジェームズから王としてではなく血縁者としての台詞を吐かせた事に、マチルダは胸がすくような気持ちでそう断言した。
 そして彼女が話は終わりとばかりに踵を返し、部屋を後にしようとする。
 しかしその背中に向かってジェームズ王が声を投げかけた。 
「――待て」 
 マチルダが肩越しに振り返ると、ジェームズ王は瞑目して大きく息を吐いた。
 そして彼は目を瞑ったまま、今だ立ち竦むウェールズに言う。
「ウェールズよ」
「……はい」
「そなたは明日、そこのマチルダと共に城を出て、件の娘に会いに行け」
「……は?」
「わしからはもう何も言う事はないが、そなたならば従兄として何がしか言う事もあろう」
「な――」
 ほんの数瞬、ウェールズは父王が言った言葉を理解できずに呆然と瞬きをするだけだった。
 マチルダもまた驚きも露に目を見開いたが、やはり反応する事ができなかった。
 やがて父の言葉をようやく脳が理解すると、ウェールズは表情を歪めて父王へと一歩踏み寄った。
「何を言っておられるのか! 今はそのような事に気をかけている時ではないでしょう!」
 モード公の一件に関してウェールズは父に対して少なからず思うところがあった。
 マチルダを条件付とはいえ父に会わせたのも、彼女に対する後ろ暗さがあったからなのかもしれない。
 その上でたった今知らされた、一件の当事者であり血縁である従妹の存在。
 確かに会ってみたくはある。可能ならば話をしてみたいと思う。
 だが、それはもはや遅すぎるのだ。
「私には王家の者として陣頭に立つ責務があるのです! それをないがしろにして私事に――」
 不意にウェールズは言葉を切り、はっとして目を見開いた。
 唐突過ぎる父王の言いようが、ウェールズの中にある事実を思い出させたのだ。

35 :
 
「……父上。よもや、アンリエッタの手紙を真に受けたのではないでしょうな」
 ウェールズは声を低くし、唸るようにして父へと問いかけた。
 そう、ジェームズ王は先行してニューカッスルに入場した柊から手紙を預かり、その内容を目にしているのだ。
 そこに書かれていた、姪であるアンリエッタの訴えも含めて。
「……」
 ジェームズ王は答えなかった。
 だが、否定しない以上それは肯定しているも同然だった。
「この期に及んで情の言葉など聞きたくはない! 王として自らの弟を手にかけ、マチルダの家族を手にかけておきながら、今になって姪のためなどと!!
 王ならば王らしく、そのつとめを全うして見せろ!!」
 ウェールズは怒気も露に床を蹴りつけ、声を荒らげる。
 モード公の一件に対して思うところはあったが、国の歴史と誇りを担う王家である以上父の行為を半ば受け入れていたのだ。
 だがその歴史と誇りを反故にしたかのような父のいいように、沈めていたものが噴出してしまった。
 ウェールズの射すような視線を正面から受け止めたジェームズ王は、しかし顔色一つ変える事なく笑みを浮かべ皺を深めた。
「王とはもとよりそのようなものであろうが。それにな、ウェールズ。そなたは根本的に勘違いをしておる」
「何を!」
「わしは王としてのつとめをないがしろになどしてはおらん。かの娘に会いに行くのはそなたであって、わしではない。
 そして、城に残り陣頭に立つ責務は王たるわしのつとめであり、そなたのものではない。
 ……杖もろくに振れぬほど耄碌しておるが、冠を譲った覚えはないぞ」
「……っ!」
 あくまで静かなジェームズ王の言葉にウェールズは言葉を詰まらせた。
 とっさに返す言葉が思い浮かばず、唇を噛みわずかに視線を彷徨わせる。
「しかし、私とてれっきとした王家の一人には違いありますまい! ならば――」
「この期に及んで小賢しいの。『惚れた女のために死なせろ』ぐらいは言えんのか?」
「な!」
 ジェームズ王がウェールズの声を遮り、くつくつと笑いながら漏らすと、ウェールズは顔を羞恥に染めた。
 思わず食って掛かろうとしたウェールズを更に手で制し、父王は笑みをおさめて言葉を続けた。
「――よかろう。ならばそなたに王家の責務をくれてやる。
 かの娘と会った後、イーグル号とマリー・ガラント号にて落ち延びた避難民と合流しトリステインに向かえ。
 そしてアルビオン最後の大使として彼等の処遇を差配せよ」

36 :
 
「!!」
 ウェールズの表情が凍りついた。
 大きく目を見開き、しかし二の句が告げられない彼に、ジェームズ王はふんと鼻を鳴らして語りかけた。
「そなたは彼等を城から脱出させるだけで満足しておるようだが、落ち延びた彼等は一体どこに行けというのだ? 貴族派が牛耳ることになるこの国には戻る事など叶わず、しかし最後まで我等に付き従った臣民では諸国も良い顔をすまい。
 ここで名誉の戦死を遂げられれば後の事などどうでもよいか?」
「それ、は……そのような事は」
「……この国の大多数の民にとって我等はもはや必要ないのであろう。しかし、少なくともこの城に留まっておる者達は我等を必要としてくれている民だ。
 ならば我等は我等の民に安寧を約束する事もまた王として……王家としての責務であろう。違うか?」
「……」
 ウェールズは答えられなかった。
 答え自体はわかりきっているが、それを答えてしまえばもはや本懐を遂げる事はできなくなってしまう。
 ――否。
 本懐というのならば、こうして迷ってしまった時点で、そのいずれもが等しく本懐なのだ。
「答えよ、ウェールズ」
 まるで背を押すように問いかける父王の声に、ウェールズは表情を苦悶に歪めて瞑目した。
 しばしの沈黙。
 そして彼は、答えた。
「……反論のしようもございませぬ。守るべき民あってこその国であり王家ならば、彼等を守る事が何より果たすべき責務でありましょう」
 頭を垂れ、搾り出すようにウェールズは言う。
 その言葉を聞いたジェームズ王は満足そうに頷き、力が抜けたように嘆息するとベッドに背を深く預ける。
「大使のつとめを果たした頃には、もはやアルビオン王家は消滅しておるだろう。その後は王太子としてではなく、ウェールズ・テューダー個人として好きに身を振るが良い」
「……父上」
「死ぬ事で守るべきを守るのもよかろう。生きる事で更なる災厄を呼び込む事もあろう。
 しかしな、ウェールズ。そなたも男なら、愛するものがおるのなら、そういったものも総て含めて守りきり、そして死んでみせよ。
 娘を守りきって死んだ我が弟のように……娘を守りきって死んだサウスゴータの者のようにな」
 諭すようなジェームズ王の言葉にウェールズは胸をつまらせ、頭を垂れる。
 後ろに控えたままのマチルダも眉根を寄せて俯き、目を閉じる。髪で隠れたその瞳から、雫が零れた。
 水を打ったような静寂の中、ジェームズ王は最後に告げる。
「王命である」
 あくまで王としての命令という『理由』を取り繕う父親に、ウェールズは一人の人間として己の不甲斐なさを痛感する。
 故に彼は恭しく跪き、一人の人間として……息子として父親に答えた。
 ――御意、と。

37 :
今回は以上。
エリスがどうするか、はもう考えてあるんですがここで言うと誘導じみてしまうので次の機会に
そしてルイズとワルドはお互いに運が良かった
以前にも同じような事はやりましたが、今回はかなり露骨に描写したのでワルドが何やってるかはわかるかもしれません
でも実は今回のメインは後半。爺覚醒イベントもといマチルダさんのタイタス昇華とウェールズ生存フラグ
柊達の先行ルートは半ば今回のための仕込みだったりします。勿論サイト関連もあるんですけど
おマチさんは三巻の描写を見る限り既にそれなりに割り切ってる感じ。アニエスやタバサと違う点はやはり「拠り所」でしょう
次回は在りし日を思い出した超☆アルビオン王ジェームズが無双して奇跡の大逆転です(うそ)
ここまで代理

38 :
乙!乙!乙!!
初めて夜闇の魔法使い読んだけど、なんか面白そう続きが気になる
最初から読んでみます
代理の人も乙でした

39 :
胸が熱くなった。
こんなにかっこいいジェームズ王は初めて見た気がする。

40 :
ジジイかっけえええええ
乙です!
やっぱりワルドだったかぁオルゴール。指輪どうやって取ったんだろ

41 :
初めて生投下見たけど乙と言わざるを得ない
ずっと待ってました

42 :
otu
そういや、BLAME!のって12話まであった気がするんだけど、まとめられてないだけ?

43 :
>>21
一角紅蓮超獣バキシマム
せめて大怪獣バトルにでも出てきてくれてたらねえ。EXゴモラは出たのに

44 :
爺さんかっけぇ。
NWの方投下お疲れ様です

45 :
夜闇の魔法使いの人、投下おつかれさまでした。
これからも頑張ってくださいね。
さて、こんばんは皆さん。無重力巫女の人です。
今月は執筆に関して色々とトラブルに見舞われましたが、それはまた後ほど…
では、特になにもなければ20時45分から投下を開始します。

46 :
トリステイン魔法学院の女子寮塔にあるルイズの部屋――
今日は珍しくも、午前から来客者がいた。部屋の主が不在にもかかわらず。
「…久しぶりに顔を合わせた、って言ったほうがいいのかしら?」
部屋の主の使い魔である霊夢の言葉に、来客者であるタバサはコクリとうなずく。
それを見た霊夢は、相変わらず口数の少ないやつだと心の中で呟いた。
以前春のフーケ騒ぎで助けてもらったこともあるが、それを差し置いて少しだけ不気味に感じていた。
まるで人形のように色を浮かべぬ表情に、ボー…っと宙でもみているかのような虚ろな瞳。
普通の人間ならばまず、彼女に対して距離を置こうとするだろう。
それほどまでにタバサの体から出ている雰囲気は異様なほど不気味なものであった。
しかし、霊夢だけはまた違った気配をタバサの体から感じ取っていた。
(何かしらこれ…他人が距離を置こうとするから自分もそうしようって感じがするわ…)
霊夢が何も言わずまたタバサも無言のままでいると、インテリジェンスソードのデルフが二人の傍にいる魔理沙に話しかけてきた。
『マリサ、あの二人何であんなに黙りこくってるんだ?』
「さぁ?私には見当つかないぜ」
デルフの言葉に、魔理沙はただ肩をすくめる事しかできなかった。
タバサが部屋に入ってきてからすでに一分近くたっており、お互い睨み合ったままだ。
もっとも。『睨み合っている』というより『見つめ合っている』という表現がお似合いだろう。
まるで蛇と蛙が広い原っぱで偶然にも顔を合わせてしまったときのように、両者動けずにいた。
しかしその『見つめ合い』は、魔理沙という第三者の視線が入ることによって終わった。
ふと横からの視線と声に、霊夢はハッとした表情を浮かべると魔理沙の方へ顔を向けた。
「…ん、どうしたのよ魔理沙?私の顔に何かついてるの」
「え?いや、別に…ただ、ちょっとお前の様子がおかしかったからな…」
突然霊夢に声をかけられた魔理沙は若干驚きながらも、そう言葉を返した。
霊夢はそれに対してふ〜んとだけ呟いて肩をすくめると、魔理沙に話しかけた。
「で、話の続きに戻るけど…タバサがアタシ達を学院に帰してくれたのよね?」
霊夢が何を知りたがっているのかわかっている魔理沙は「そうだぜ」と返し、事の詳細を話し始めた。

時間は遡り、魔理沙の一撃でキメラを葬ってから数十分後の出来事――――
あの後、近くの草むらから自分の杖を見つけたルイズは眠っている霊夢の傍に腰を下ろしている。
魔理沙の方はというとようやく一段落ついたのかルイズ達から少し離れた時地べたに座り、空を見つめていた。

47 :
幾つもの星が見えつつある空と共に暗くなっていく森の中。
辺りに注意しながらも、毒で倒れた霊夢の様子を見ていたルイズが、魔理沙に話しかけてきた。
「ねぇ、魔理沙…」
「お?……どうしたんだよルイズ、なんか顔色がわるいぜ?」
ミニ八卦炉を持って地べたに座っていた魔理沙はルイズの方へ顔を向ける。
魔理沙の言葉どおり、ルイズの顔は真っ青に染まっていた。
まるで家の戸締まりを忘れたまま外へ出て、後になってからそれに気づいたときのような表情であった。
一体何事かと思いすぐさま魔理沙が傍に寄ると、ルイズかこんな質問をしてきた。
「私、ちょっと思ったんだけどね?…ここから学院まで、どうやって帰れば良いのかしら?」
「はぁ?」
予想もしていなかった質問の内容に、魔理沙は目を丸くする。
「何言ってんだよルイズ。心配しなくても、私の箒はこの上にあるからそれに跨って帰ればいいだろう」
そう言って魔理沙は、自分たちが滑り落ちてきた傾斜面を指さした。
斜面を上った先には山道があり、そこにキメラの不意打ちで落とした魔理沙の箒とデルフがある。
幸い斜面自体も緩やかだし、多少服が汚れるかもしれないが登れないこともない。
一体何を心配する必要があるんだ?そう言おうとしたとき、魔理沙の言葉を予知したかのようにルイズが言った。
「そりゃ私はあんたと一緒に箒を使えばいいけど……―霊夢はどうするのよ」
「――――あ」
その言葉を聞き、魔理沙はハッとした表情を浮かべた倒れている霊夢の方へ目を向ける。
数時間前、倒したと思っていたキメラからの不意打ちを受けた霊夢の体には毒が残っていた。
今は大分マシになったのか呼吸はそれ程荒くもなく、スースーと眠っている。
そんな彼女を起こして飛ばそうとするのは、危険かもしれないとルイズは判断していた。
「参ったな…霊夢の事だから大丈夫かと思っていたんだが」
「大丈夫じゃないでしょう!大丈夫じゃ!」
霊夢の事をよく知っているであろう魔理沙の発言に、ルイズはすかさず突っ込みを入れた。
その後、二人はどうしようかと暗くなっていく森の中で考えたが一向に良い案は思い浮かばない。
太陽は時間の経過とともにどんどん沈み、刻一刻と夜が迫ってきていた。
遠くの山からは狼のものであろう遠吠えも聞こえ始めてきた頃―――予期せぬ助け舟がやって来た。
「ねぇ…何か聞こえない?」
最初に気づいたのは、魔理沙よりも緊張していたルイズであった。
彼女の言葉に何かと思った魔理沙が耳を傾けてみると、それは確かに聞こえてきた。
―――ッサ… ―……ッサ
「…何だ?…確かに聞こえてくるな」
それは最初、小さすぎて何の音なのかルイズと魔理沙にはまったくわからなかった。
しかし音の正体はこちらに近づいてくるのか、だんだんと大きくなっていく。

48 :
――バッサ…バッサ…
音を聞くことに集中していた二人は、その音が何の音なのかわかってきた。
「ん、こりゃアレか?何かが羽ばたく音だぜ。コウモリみたいにこう…バッサバッサって」
魔理沙はそういって両手を横に広げてパタパタと軽く振り、羽ばたく動作をしてみせた。
それを見たルイズはこんな危機的状況の中で何をしてるのかと思いつつ、言葉を返そうとした。
「羽ばたく音ですって?それだと大きすぎるんじゃ――あ!」
しかし、言い終える前に気がついた。この「羽ばたく音」の正体か何なのか。
それに気がついたルイズは思わず大声を上げてしまい、近くにいる魔理沙が驚いた。
「うわっ!びっくりした…何だよいきなり」
体を小さくのけぞらした魔理沙がそうい言うと、ルイズは体を震わせながらしゃべり始める。
こころなしかその声も大きく震えており、先ほどよりも不安感が募っていた。
「やばいわ…」
「?…やばいって…何がやばいんだよ」
「私、この音が何なのか知ってるわ」
「マジで?じゃあ何の音なのか教えてくれよ」
魔理沙の促しにルイズは冷や汗を流しながら、それに答えた。
「ドラゴンの羽音よ…」
「どらごん?」
ルイズの口から出た思わぬ答えに、魔理沙はキョトンとした。
「ドラゴン…っていうと、あの羽が生えた馬鹿でかいトカゲの事だろ?」
魔理沙は、ここハルケギニアに来てから図鑑(文字は読めない)や学院いる生徒たちの使い魔としてドラゴンを何度か見ているのである。
最初見たときは驚いていたがすぐにおとなしいとわかり、今ではそれを良いことに近くまで寄って観察なんかをしていた。
「えぇそうよ…こんなに大きい羽音を出すのはそれくらいしかいないもの」
まず最初にそう言ってから、ルイズはこんな事を話し出した。
「ドラゴンは基本肉食よ。普段獲物を襲うときは勢いをつけながらも高度を下げて、獲物を鋭い口の牙を咥え込むの…」
こうグワッと!と言いつつルイズは左手を空から襲い掛かってくる竜の頭に、右手を地上にいる獲物として見立てた。
魔理沙はそれに適当な相槌を打ちつつも、時折暗くなっていく空を見つめて警戒している。
「で、今から話すのは森林地帯を餌場にしているドラゴンなんかが行う飛び方の一つについてなんだけどね…」
ルイズはそこでいったん区切ると、一呼吸置いて説明を再開した。
「空から獲物を見つけてもすぐには突っ込まないのよ。突っ込んだら大木ひしめく森林に突っ込むわけだから」
「なぁルイズ、ちょっと…いいかな?」
ふと何かに気づいた魔理沙が呼びかけるも、説明するのに夢中なルイズは尚も続ける。
先ほど聞こえてきた羽音は、かなり大きくなっていた。
「だからね、獲物を見つけたらゆっくりと高度を下げていくのよ…丁度船に積んだ風石の量を減らしていくように」
「おーい、ちょっと…聞こえてる?」
魔理沙は尚も呼びかけるのだが、完全にスイッチが入った彼女を止めることは出来ない。
やがて羽音は当たり一帯に響き始めるとともに、上のほうからバキボキと枝が折れる音も聞こえてきた。
「そして獲物が動きを止めた瞬間、すぐ近くに着地して―「うわっ!!出たぁ!」―――え?」
言い終える前に突如耳に入ってきた魔理沙の叫び声で我に返ったルイズは、後ろを振り返る。
その瞬間、木々の間を縫うようにして何かがこちらにやってきた。

49 :
しえん

50 :

そこにいたのは――青い皮膚を持つ大きなトカゲ…かと一瞬だけ思った。
しかしトカゲにしてはどこかおかしいとすぐに感じる。
何故なら、あれほど大きく成長するトカゲなどトリステインには生息しないし、第一手足が長すぎるのだ。
ほかの動物で例えれば、犬くらいの長さだと思ってくれればいいだろう。
これは、高山や渓谷で巣作りと繁殖を行う一部の幻獣に見られる身体的特徴だ。
そして何よりも特徴的なのは、背中に生えた一対の大きな羽。
コウモリのように薄い皮膜で覆われたそれは、森の中ではコンパクトに折りたたまれている。
頭部事態はトカゲと似ており、頭には一対の小さな角が生えている。
そして口の隙間から―――ありとあらゆるものを噛み、裂き、砕くことが出来るであろう鋭利な歯が見えていた。
そして、これらの特徴がすべて当てはまる幻獣は一種だけであろう。
この世界では天災の一つとして恐れられ、戦争となれば歩兵千人分もの力となる幻獣――風竜だ。
「――――………………ッキャアァアァアァァァァアアアァァ!!」
魔理沙より数秒送れて何が現れたのか理解したルイズは、大きな悲鳴を上げた。
それと同時に青い風竜も長い手足を器用に動かして前進し、ルイズたちに詰め寄ってくる。
ドスンドスンと足音を立てて進むその姿は、まさに怪獣そのものだ。
「くそっ、霊夢を連れて下がってろ!」
魔理沙は急いでニ八卦炉を目の前の風竜に向けると、ルイズ指示をとばして魔力を八卦炉に込め始める。
先ほどのキメラとは違いす気がないので、威嚇射撃として放とうとした。
風竜も何かくると感じたのか、その場でぴたりと足を止めた。
まさにこの状況は一触即発。どちらが先に動いても、戦いは免れないかもしれない。
だがそんな時、風竜の背中から少女の声が聞こえてきた。
「どうしたの。こんな森の中で…」
抑揚はないがしっかりとした発言ができる少女の声に、二人は目を丸くした。
「えっうそ…人…ということは」
魔理沙の驚いた声に、ルイズは今になって気がついた―この風竜に見覚えがあることに。
「あんた…まさか…シルフィード?」
その言葉に風竜――シルフィードが「きゅい」っと鳴くと、声の主が誰なのかもわかった。
ルイズより低い身長に、身の丈より大きい端くれだった杖。
赤縁メガネに蒼い瞳にそと同じ色のショートヘアー。
ルイズと魔理沙…そしてその時は眠っていた霊も知っていた。彼女が誰なのかを。

「…つまり、山で秘薬の材料を取っていたタバサと一緒に帰ってきた。というワケね」
そこまで話を聞いた霊夢の言葉に、魔理沙は「そうそう!」と相槌をうちながらタバサの肩を叩いた。
まるで付き合いの長い友人のように肩を叩かているタバサはというと、相変わらずの無表情である。
「タバサとシルフィードのおかげで暗い森の中を歩かずに済んだし命―ってほどでもない…がまぁ、恩人は恩人だよ」
「うん…まぁ、確かに恩人と言えばそう言えるわ。まぁ有難うと言っておくわ」
一部自分の言葉を訂正しつつ、魔理沙はまるで自分のことのようにタバサを褒め称える。
霊夢はそんな二人の温度差に生ぬるい視線を浴びせつつ、タバサに歯切れの悪い賛辞を呈した。
そして三人(正確には二人)が暫し無言でいると、我慢できないといわんばかりに霊夢が喋った。

51 :
「で、話は変わるけど…何の用事でココにきたのかしら?部屋の主は今留守にしてるんだけど…」
やや直球な彼女の質問に、タバサは思い出したかのようにポンと手を叩き、ゴソゴソと懐を探り始める。
そしてすぐに、テーブルに置いてあるティーカップほどの大きさがある濃い緑色の土瓶を霊夢に差し出した。
霊夢はその瓶を見て怪訝な表情を浮かべ、タバサに質問をすることにした。
「…?何よコレ」
「体に良いお茶…どうぞ」
簡潔すぎる問いの答えを聞いて、霊夢は渋々と手のひらを前に差し出す。
タバサはその手に持っていた瓶を霊夢の手のひらに置くと、霊夢と魔理沙に向けてこう言った。
「…どうぞ、お大事に」
あまり感情のこもっていない声でそう言うと、ペコリと頭を下げて踵を返して廊下の方へと出ていった。
カツコツと廊下の床に響くローファーの靴音が聞こえてくると、部屋にいた魔理沙は上半身だけを廊下に出してタバサに手を振った。
「また何かあったらいつでも来ていいぜー!なくても来ていいんだぜー!」
廊下中に響く魔理沙の大声にタバサは振り向くことも手を振ることもなく、ただその背中を向けて踊り場の方へと歩いて行った。
魔理沙には見えない、小さ過ぎる彼女にはあまりにも似合わない゛何か゛がある背中を。
「風のようにやってきて、風のように去ったわね」
タバサに手を振っている魔理沙の背中を見つめながら、霊夢はポツリと呟く。
あまりにも早すぎる珍しい来客者のお帰りに、霊夢は半ば呆然としていた。
もしかして先ほどの事はすべて幻なのかと思ってしまうが、それは無いなと心の中で否定する。
彼女の体から感じた気配は今もハッキリと覚えているし、浮かべていた表情もすぐに思い出すことができる。
そしてこの部屋に先ほどまでいた来客者の背中に手をふる同居人の姿と――掌の上にある茶葉が入った土瓶。
これらの証拠がある限り、タバサという少女がこの部屋訪れたという真実は絶対に揺るぎはしない。
「最初会ったときは気にしてなかったけど、今見るとスゴイ変わってたわね。アイツ…」
霊夢は無表情なタバサの顔を思い出して呟くとその顔に笑みを浮かべ、土瓶をテーブルの上に置いた。
コトン、という…鈍いながらもしっかりとした音が、主の居ない部屋の中に響く。
「さてと…健康になるのはいいことだし、さっそくこ試してみようかしら?」
これから体験するであろう未知なる味を想像しながら、霊夢は椅子に座った。
彼女は知らなかった。中に入っている茶葉の原料である植物がどんなものなのかを。
それをお茶にして飲むことはおろか、生で食べる人すら少ないといわれるシロモノだということを…。

52 :
さてと、以上で52話の投下は終わりです。
今月も無事に投下できましたが…いやはや大変でした。
六年近く使っていたデスクトップパソコンが、今月の半ばで去しました。
一応大切なデータとかは外付けのHDDに入れていたものの、不覚にもそこに入れていなかった二月の投下分が消失…
急いでヤ○ダ電○へと駆け込んでノートパソコンを購入…書き直し、無事に投下までできました。
皆さんも、大切なデータなどは外付けのディスクやUSBメモリに入れておきましょう。
もちろんCDやフロッピーでもいいですけどね。
それでは、長くなりましたがこれで。ノシ

53 :
乙。PC災難だったな。俺も液晶が割れてデータ回収に手間取った
経験があるがあれは泣ける。憶えてる限りで再現しようとしても
ノってる状態で書いた物以上の文はなかなか出てこないしな

54 :
乙です。

55 :
夜闇の人&代理の人、乙
柊がこの場に居たら中の人が狂喜乱舞! くらいカッコイイよ爺さん!
>>40
全開「ルイズを手ぶらで返すつもりか?」って言って没収してたろ

56 :
無重力さん乙ー。PCェ…
>>55
おおっと、手紙と混同してたや。

57 :
韓国軍と米軍と自衛隊と旧日本軍を召喚にする。

58 :
夜闇の人乙です!
やばい、こんなにイカしたジェームズ初めて見た・・・まじかっけー涙腺うるんだわ。
無重力巫女の人乙です!
PCが去されたということでお悔やみ申し上げます・・・そういえばタバサタイプのキャラって東方にはいないよねと。

59 :
>>42
まだ前スレ落ちてないから確認しよふ

60 :
夜闇きたー
ワルドといいジェームズといいオッサン共がいい味出してますなあ
無重力の人も乙です
お茶好きの霊夢なら案外ハシバミ茶もイケる……ってことはなさそうだw

61 :
デュープリズムゼロ八話来てたー!乙乙

62 :
召喚にしたのは草加少佐でした。

63 :
もしもルイズが魔女を召喚したら

64 :
マージョ様?

65 :
気の良いオカマキャラってあんまり召喚されないよな。
ARMSのマッチョさんくらい?

66 :
>>63
ベルセルクのフローラおばあちゃまならルイズを魔女っ娘にしてくれるかもしれんな

67 :
キメリエスとかもそうじゃないかね

68 :
デュープリズムゼロ八話乙
俺も規制ではれないわ

69 :
>>63
「五年三組魔法組」のベルバラから
魔法の七つ道具の入ったバッグを貰うとか

70 :
高槻ママから2丁拳銃と忍術を学ぶとか

71 :
金正日が召喚されました…が、召喚直後寿命で死にました

72 :
一時期作者が癌でっちまいそうだったみたいだけど
今は大丈夫なのかな?原作完結して欲しいけど...

73 :
あまり書きたくないんだけど若くてガンになって何度も繰り返し治療してる人ってほとんど助からない

74 :
13:05から第3話を投下します。

75 :
「ぜろ☆すた ポケットきゃらくた〜ず 第3話」
『おじゃましまーす』
 ケバキーア街に行った次の日、こなた達4人とカトレア・ギーシュ・マリコルヌはタバサの家を訪問した。
「ありがとう、タバサちゃん。協力してくれて〜」
「……うん……いや……力になれるかわからないけど……」
 そう言いつつ一同を招き入れたタバサに、ロングビルはカトレアが肩から下げている鞄から顔を出して、
「ええと……、私達出て大丈夫でしょうか……。今日お家の方は……」
 と問いかけた。
「……今日はみんな出かけてるから大丈夫……」
「そっか、なら安心ね……。じゃあ早速話し合いをしようと思うんだけど、とりあえず……」
 テーブル上でそうタバサに声をかけたルイズは周囲を見回し、
「あの3人は何しに来たか全然分かってないわね……」
「おおおっ、何という特典映像!!」
「流石コナタ、わかってるな♪」
「マルコメ、GJ!」
 と持参したアニメを再生している遠見の鏡にかじりついているこなた・マリコルヌ・ギーシュに、呆れた視線を向けた。

76 :
「えっと、そんな訳で……、小さくなった理由は私達でもわからない訳なのよね……」
 コルクの蓋に座ったルイズの説明に、かすかに表情を曇らせたカトレア。だが、
「おおー、このシーン修正されてる!?」
「あの地域だけの放送バージョンだな!」
「ファン心をわかってるね〜♪」
 重くなった雰囲気をぶち壊すように歓声を上げたこなた・ギーシュ・マリコルヌに、思わず顔を引きつらせる。
「ちょっとあんたらねえ……。せっかく来てるんなら真面目に考えなさいよ!」
「ん? 考えるって何を?」
 ルイズからの指摘に、ギーシュの頭部に座っていたこなたが振り返った。
「は? そりゃ元の大きさに戻る方法でしょ」
「ん〜、つまりルイズは小さいのが嫌だと?」
「当たり前でしょ! てゆーか、あんた昨日ミス・ロングビルを戻すって言ってたじゃない」
「いや〜、そうなんだけどね〜」
 そこまで言って、こなたはタバサにちらりと視線を向ける。
「………」
 タバサはこなたに訝しげな視線を返したが、
「『大きくなる方法』があったら、既に試してる……。そんな結論が出ちゃってねえ」
 こなたのそんな発言に胸を押さえてぴくりと反応するのだった。
「まったく……、コナタ達はここへ何しに来たのよ……」
 呆れた表情のルイズの傍らではカトレアがタバサに尋ねている。
「どうしたの?」
「……な……何でもない……」
「ルイズ、見て見て〜」
「ん?」
 突然聞こえてきたキュルケの声にルイズが視線を向けると、
「シルフィードがね〜、こんなに大きいの〜♪」
 とキュルケがシルフィードの背中に乗って満面の笑顔になっていた。
「あれはあれで何しに来たんだか……」
「ミス・ツェルプシュトー、楽しそうですね」
 するとギーシュが何かを思いついたようにルイズの方に振り返る。
「あっ、あのさ、僕思ったんだけど、ルイズの家なら教会にも顔が聞くんだろ?」
「あ〜、うん、たぶんそうだけど……」
「お祓いで何とかならないか?」
「そんな都合のいい話聞いた事無いって……」
 ルイズが呆れた視線を向けるとこなたも、
「そうそう、神頼みで大きくなるならもう試してるよね♪」
 こなたの言葉にタバサは再度ぴくりと反応し、
「あんたには罰が当たってほしいわ……」
 とルイズが今度はこなたに呆れた視線を向けた。

77 :
「一応わからない中でも言える事は……、事が起こるには必ずきっかけが存在する訳でして。一昨日の晩、私達は共に過ごし共に小さくなっています。という事は、4人に共通する何かがあるはずです。
ミス・ヴァリエールの家で目覚めた時にはもう小さくなっていましたけれど、眠ったのはほぼ同時。つまりおそらく眠る前に4人がしていた事や起きた事の中にポイントがあるはずです。それを突き止めれば、解決策も見えてくると思います」
「う〜ん……。でもあの時、特に変わった事なんて何もしてませんよ?」
 少々考えていたルイズだったが、特に心当たりは思いつかなかった。
「そうなると、やはり部屋主に異変があったか聞くのがいいのですが……」
「部屋主……」
 そう呟いたルイズの背後では、部屋主・こなたがコルクの蓋に乗って楽しげに滑っていた。
 即座にルイズは蓋を取り上げ頭上に振り上げる。
「あんた何してるの……?」
「カ……、カーリングを少々……」
「いっぺん死んでみる……?」
「コルクの蓋はよく滑る……」
 ルイズの堪忍袋の緒が切れた。海ほど広くないルイズの心はここらが我慢の限界だった。
「コナタ! あんたさっきからうろちょろして! もっと真剣に考えなさいよ! ケバキーア街でもあんたが勝手な行動するから面倒な事になったんじゃない! もし発見したのが知り合いじゃなかったら、私達今ここにいないかもしれないのわかってるの!?」
 ルイズに強い口調で叱責されしばらく呆然と彼女を眺めていたこなただったが、
「あ、名シーン」
 と遠見の鏡に視線を向けた。
 怒りに震えるルイズにマリコルヌが、
「まあまあルイズ、僕にナイスアイディアが♪」
 と声をかけ、
「コナタコナタ♪」
 次にそうこなたを呼び寄せた。
「ん?」
 1分後、こなたの姿は瓶の中にあった。
「……マルコメ……、これは何かな?」
「瓶だね♪ ミニミニコナタの自由を奪うには最適なアイテムだな。この中で少しおとなしくしてなよ♪」
 そう言いつつマリコルヌは瓶の蓋をしっかり締める。
「ちょ、マルコメ、裏切り者! っていうか空気穴! 空気穴が無いって、マルコメーっ!!」
「マリコルヌ結構やるわね」

78 :
「で、本当に何も気付いた事は無いのね? 部屋主!」
「ありませんよ〜♪ これーっぽっちも〜」
 改めて尋ねたルイズに、こなたは親指・人差し指で小さな隙間を作って答えた。
 彼女の頭上では、マリコルヌが金槌・錐で蓋に空気穴を開けている。
「……そう、コナタがわからないんじゃあね……」
「私も時々見てますけど、特には……」
 そう言ったカトレアの様子をしばらく見ていたタバサだったが、
「……あ……あの……何か私……ごめんなさい……」
 と申し訳無さそうに言った。
「え?」
「……協力するって言ったのに……何も思いつかなくて……」
「そんな事無いですよ、ミス・タバサ」
「そうよ。一緒に考えてくれてるだけでも十分有難いものよ」
 タバサの言葉をロングビル・ルイズが否定するとカトレアも、
「そうだよ、タバサちゃん! タバサちゃんは凄く良くしてくれてるよ!! タバサちゃんは自分から手伝ってくれてるし、話し合う場所も用意してくれたし、そ、それに、それに……、昨日私が具合悪かった時に見つけてくれたの……凄く嬉しかった。
タバサちゃんは、もうたくさん助けになってくれてるんだよ」
「ミス・カトレア……」
 見つめ合い2人の世界に浸っているカトレア・タバサの周囲がまるできらめいているかのように、ルイズ・ロングビルには見えた。
(あ、あれ、何か真面目そうに見えて話は全然進んでないように見えるんだけど……。あれ?)
 その時、ルイズはキュルケが今まで沈黙していた事に気付く。
「……あ。ねえキュルケ、あんたさっきから何も言ってないけど……、何か気付いた事とかあったら言ってよ? ……キュルケ?」
 しかしそう言って視線を向けた先に、キュルケの姿は無かった。
「えっと……、キュルケは?」
「あれ? さっきまでそこで寝てたけど……。シルフィードもいないな」
「コナタ、知らない?」
「うんにゃ。いいんじゃないの、少しくらいどっか行ってても」
「そうはいかないわよ。この姿じゃ普段普通な事が結構危険なんだから」
 ルイズ・こなたのやり取りにロングビルも、不安げな表情になる。
「心配ですね……」
「うーん」
「シルフィードちゃんも一緒なら安心じゃないかな?」
「……シルフィードはおとなしくてい子だから……たぶん……大丈……」
 そう言いかけてタバサはギーシュの、
(え? おとなしい? 僕結構襲われてるよ……? 左手とか左手以上とか……)
 とでも言いたげな視線に言葉を止めた。

79 :
「とにかくミス・ツェルプシュトーを探しましょうか」
「そ、そうね。悪いんだけど私達も連れてってもらえる?」
「……あ……はい……」
「僕もちょっと手伝うよ」
「シルフィードを見つければいいんだな?」
「心当たりの場所とかはあるのですか?」
「……よくいる場所なら幾つか……」
 と言って一行は部屋から出ていった。
 1人瓶の中に残されたこなたは、
「何かわかんないけど出てっちゃった。キュルケには悪いけど、チャンスだね。さ〜、ちょっと遠見の鏡遠いけど、これでゆっくりアニメが見られ**」
 と言いかけて遠見の鏡の方に向き直り、ラベルが鏡の方に向けられている事に気付いて愕然とする。
「どわーっ! ラ、ラベルが鏡の方に!? これじゃ見られないじゃん!! ひょっとしてマルコメ、わかってやってる!?」

80 :
(……あれ? 頭が……。なんか頭が引っ張られてる感じがする〜)
 そんな事を考えつつキュルケは目を覚ました。
 すると周囲に広がる庭の風景が上下逆転している事に気付いて声を上げる。
「はうっ!? わっ、シルフィード、ここって……え、外? えっと……、どこ行くの……? みんなは?」
 そう問いかけたもののまったく反応を返さず、シルフィードはキュルケをくわえたまま庭を行く。
「……はう〜、どこに行くんだろ〜……きゃうっ!?」
 目に涙を溜めつつ呟いていたところ、突然シルフィードに放されて落下した。
「はうう……、頭打った〜……。ここは?」
 頭を押さえてうずくまっていたキュルケが顔を上げた途端、目の前に巨大なアリが出現した。
「きゃああああ!!」
 悲鳴を上げて跳び退くキュルケの目の前で、アリはシルフィードに踏み潰された。
「あああ、ありがとう、シルフィード。っていうか、ここどこなのかなあ……?」
 その言葉が届いたのか上を見上げたシルフィードに倣い、キュルケもそちらに視線を向ける。
 そこには彼女の身長の数倍の丈がある花が一面に伸びていた。
「わっ、わーっ、凄〜いっ! お花畑だ〜!! タバサの家ってこんなに広いお花畑があるんだ〜。……! あ……、これって凄く広いように見えるけど……、実は普通の花壇でお花畑に見えるのはあたしの体が小さいからなのかな……?
……でも、凄く……綺麗♪ ありがとう、シルフィード。こんないいもの見せてくれて。せっかくだからみんなにも見てもらおうよ♪」
 そう言って振り返ったキュルケの視線の先では、シルフィードが何やら穴を掘っていた。
「? シルフィー……ド? え? あの……、え? え?」
 そしてシルフィードはおもむろにキュルケに接近し、口を大きく開け……。

81 :
「どっ、どうしたの、キュルケ!?」
 しばらく後、居間に服が土まみれになったキュルケが運び込まれてきた。
「ねえ、キュルケってどこにいたの?」
「タバサちゃんが……」
「……シルフィードが凄く気に入ったみたいで……花壇に首だけ出した状態で埋められてて……」
(風竜の習性か!)
「小さくなったのが少し嬉しかったのに酷いよ〜」
「顔以外が泥だらけだ……」
「じゃあ着替えが必要だね」
 泣き声を上げるキュルケの姿を見てそう言ったギーシュ・マリコルヌだったが、
「でも、今私達が着られる服は……」
「あ、そっか……」
「小さくなった服もそれしか無いんですよね……」
「そうね……」
 そんな会話をしているロングビル・カトレア・ルイズの傍に寄ってきたギーシュは視線をテーブルに合わせ、
「わー、眼鏡も小さいなー」
「ええ、不思議ですよね」
「見てもいいですか?」
 と尋ねた後ロングビルから眼鏡を受け取った。
 するとそこにこなたが、
「体小さいと逆に字が大きくなるから、そのままでいいんじゃない?」
「うふふ、そうかもしれませんね。確かに周りの物全てが大きくなる訳ですから、これだと眼鏡無しでも字が読めますね」
 笑みを浮かべて瓶に貼られたラベルを眺めていたロングビルだったが、突然何かを感じて目を見開いた。

82 :
 次の瞬間、白煙と共にロングビルの体は元の大きさに戻った。
『………』
 しばらく呆然とロングビルを眺めていた一同だったが、
「……は、はあああ!? ミス・ロングビル、何で元に戻ったんですかー!?」
「え? あ、あら?」
 あまりの出来事にルイズは絶叫し、ロングビルも狼狽のあまり呆然とする以外不可能だった。
「あ……、め、眼鏡も……」
「わ……」
 するとギーシュも、自分が手にしている眼鏡も元の大きさに戻っている事に気付いて口をぽかんと開けた。
「あ、あの、どうやって元に戻ったのですか!?」
「あ……、え……、えっと……」
 しばらく口ごもっていたロングビルが出した言葉は……、
「さあ?」
 その言葉に一同の後頭部に大粒の汗が浮かんだ。
 一方こなたはロングビルが元に戻った時に瓶ごと弾き飛ばされ、床の上でひっくり返っていたのだった……。

83 :
以上投下終了です。

84 :
おつっす

85 :
>>83


86 :
Dies iraeの概念・法則をついでに召喚・・・
話作り辛そうだな・・・

87 :
カトレアが病死したカリーヌが
「ハルケギニアなんか石ころの世界にしてやる〜」
と、魔女化したら

88 :
>>83
乙でした。

89 :
特殊刑事を召喚にする。

90 :
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世
10. Dies irae
11. WAR OF GENESIS シヴァンシミター、クリムゾンクルセイド
SS誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって

91 :
>>63
コスモス荘のピエール召喚とな!?

92 :
言い出しっぺの法則

93 :
>>91
それは……魔女じゃない。
 マ ゾ だ !

94 :
>>91
ルイズのお仕置きがご褒美にしかならないな
で、ルイズの虚無は自分の血でゴーレム操ったりするのかい?

95 :
>>65
「ゼロのルイズがオカマを召喚したぞ!」
「トリステインマーガクイン? ジョーダンじゃないわよぅ!」
こんな具合か?

96 :
虚無の使い魔はみんなオカマ
そして黒幕は教皇ではなくスカロン

97 :
いやしかしスカロン店長はアレで娘がいるわけで・・・・つまり
店長「待て、それは誤解だ、私はバイだ。」
こうか

98 :
多重クロスでオカマを召還しまくり。
マクロスFの敏腕操舵士。
グレンラガンの技術者。
クレしんのカンフー三人組。
ワンピースのバレーダンサー。
・・・絶対まとまるわけがないw

99 :
海パン刑事を召喚にして才人と一緒に戦う。

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