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2012年4月創作発表129: 【ひぐらし】こちらスネーク 雛見沢村に潜入した6 (238) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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【ひぐらし】こちらスネーク 雛見沢村に潜入した6


1 :10/10/03 〜 最終レス :12/04/07
■MGSのスネークが雛見沢に来たら……という二次創作(ネタ)スレだ。
単発TIPS・短編・長編構わず投稿してくれ。
※同人ゲーム板より移転致しました。
テンプレは>>2-4
■過去ログ■
(初代〜4スレ目は同人ゲーム板です)
こちらスネーク 雛見沢村に潜入した
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1144941095/
こちらスネーク 雛見沢村に潜入した2
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1175824936/
こちらスネーク雛見沢に潜入した3
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1194857842/
【ひぐらし】こちらスネーク雛見沢村に潜入した4
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1210075518/l50
■まとめwiki■
ttp://www29.atwiki.jp/sne_hina
■したらば■
※ネタバレ注意!
こちらスネーク、雛見沢に潜入した職人様用掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10902/
(職人様用掲示板とありますが、ネタバレおkな人は職人じゃなくても大丈夫です)
【本編ストーリーについて】
※本編はキャラ予約制のリレー方式なので、誰でも好きなように続きを書けます。
※続きを書きたい職人さんは「○○と○○予約します(○=キャラ名)」と宣言して下さい。
※登場が未定、または回想シーンのみなどのキャラには( )をつけて下さい。
例:スネーク、梨花、(羽入)予約します」
※( )付きのキャラ以外、予約を重複させないで下さい。
例:A「スネーク+部活メンバー予約します」
  B「スネーク、オセロット、忍者予約します」 と予約が重なった場合は、早い者順となりAの方の予約が優先されます。
※他の職人の展開によって予約して執筆していた分が使えなくなった場合、「予約を破棄します」と宣言して下さい。
※本編職人が、予約した日から、二週間以上も続きを更新しない場合、あるいは予約解除の宣言がない場合、
自動的に予約が解除されます。 その場合、再び募集となります。
※本編職人さんは必ずトリップを付けて下さい。第三者による脱退宣言の成り済ましを防ぐ為です。

2 :
■「スネークと圭一達が球技で対決」する話を書いて欲しい等、要望を書き込むと、職人さんが興味を持って書いてくれるかも?
創作のヒントにもなるのでどんどん書き込んでOK
■本編以外の短編・長編について■
※「他人の作品」の続きを勝手に書かない。どうしても書きたい場合は作者さんに許可を申請して下さい。
※「他人の作品」の設定を借りた外伝は許可。
一応「○○の設定を借りました」と一言付けたほうが良いかも。
※「他人の作品」の設定を一部借りて(スネークが教師として潜入など)新しく長編・短編を書く事も許可。
※職人さんはトリップを着けることをお勧めします。トリップについては下記を。
■トリップについて■
名前欄に、ダイヤのマークと数字とローマ字の羅列を表示させて簡単に本人(自分)を証明するシステムです。
書き込む際の名前欄に、@#A(@に名乗りたい名前を、Aは自分が覚えやすい文字)を入力して書き込むと、#が◆に変わり、Aは数字とローマ字の羅列に変換されます。
【例】
オヤシロ様#メタルギア

書き込むと……

オヤシロ様◆s7Li6JIQiW
※注意※
上記のAの文字は、毎回トリップを着ける為のパスワードです。
他人に教えたりしないで下さい。
第三者にバレてしまった場合は、違う文字を入力して下さい。
■荒らし、基地外など■
荒らしは絶対スルー。
荒らしはかまってもらいたいだけなのです。煽りもだめ。
荒らしに反応するあなたも荒らしかも?
基地外を見かけたらNG登録推奨。
★現在、本編ストーリーの続きを書いてくれる職人さんを募集中です。
今までのストーリーはテンプレ内にまとめwikiがあるので参考にして下さい。
★現在【CQC体育編】と【ダンボール人事件】を書いてくれる職人さんを募集中です。
▼【CQC体育編】は、スネークが雛見沢分校の教師として潜入中という本編設定を借りています。
スネークが体育の授業で生徒達や圭一達にCQC(軍事式近接格闘術?)を教えるというネタです。
特にそれ以外決まっていないので、後は職人さんが自由に題名(○○し編とか)や内容を考えて構いません。
▼【ダンボール人事件】はスネークが雛見沢校の教師として潜入中という本編設定を借りています。
雛見沢で、ダンボールに詰められた死体が発見され、ダンボールの持ち主であるスネークに容疑(重要参考人?)が掛かります。
死体が発見された日にはスネークは行方不明になっていて、更に疑わしい状況のようです。
それ以外は何も決まっていないので、後は職人さんが自由に題名(○○し編とか)内容を考えて構いません。

3 :
┌─────┐    .┌────────┐     .┌──────┐
│ 書き込む .│名前:│            .│E-mail:│sage      │
└─────┘   . └────────┘     .└──────┘
                            ._____
                          ./  /   ./|
                          | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . .l_
                         /|スネーク   .|/ ./<ガサッ・・・
                          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄o
                                     ○
                             (大丈夫だ・・・メル欄にsage)
                         (と入れておけば誰にも見つからない・・・)
                           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

4 :
>>1おつん
途中で消えたね前スレは…

5 :
Q&A
オリスクないの?
・2007年頃、デザフェまでうpされましたが流れました。 その後、本編職人氏が新規にちょくちょく作っています。
ttp://hangyodori.hp.infoseek.co.jp/の「アップロード掲示板」から探してダウンロードしてください。
現在、6月17日まで収録されています。
書きたいけど、時系列とか展開とかワカンネ
・したらば(職人様向け掲示板)にGO
つttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10902/
投下したいけど規制されたor感想言いたいけど規制中
・「職人様向け掲示板」とありますが、したらば(ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10902/)内の
「【規制中専用】投下・感想スレ」に書き込んで下さい。
このスレッド以外には、先の展開のネタバレが書き込まれているので閲覧には注意して下さい。
また、(本編)職人が規制中の時に作品が投下されている可能性があるので、
その時は規制されていない方に代理投下をお願いします。
知恵先生の扱いはどうなるの?
・元ネタ(月姫)知らない人でも分かる程度に、ほどほどに。
(現時点では傍観者という設定です)
なんでオセロットとかリキッドが一緒に存在するの?リキッドは死んだんじゃないの?
これってMGS2の前なの? 後なの? つうか鷹野達は(ry
・読み進めれば分かります、今後の展開を待っていてください。
「歪んだ世界」という設定ですので、wikiにある矛盾したSS等は「繋がらないカケラ」扱いとなります。

6 :
テンプレ以上。
>>1を修正します
■過去ログ■
(初代〜4スレ目は同人ゲーム板です)
こちらスネーク 雛見沢村に潜入した
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1144941095/
こちらスネーク 雛見沢村に潜入した2
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1175824936/
こちらスネーク雛見沢に潜入した3
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1194857842/
【ひぐらし】こちらスネーク雛見沢村に潜入した4
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gameama/1210075518/
【ひぐらし】こちらスネーク 雛見沢村に潜入した6
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1286116792/

7 :
いちおつ

8 :
大変遅くなって申し訳ありません。
2ch側の不備で前スレが消えたとはいえ、すぐに対策を取らなかった私にも非があります。
したらばに投下するなり何なり出来たはずですが、ずるずると引きずって来てしまいました……。
それでも待っていてくれた皆さんに感謝と謝罪の気持ちを込めて投下します。
連投規制がかかったらぶつ切りになってしまうかもしれませんが、ご了承下さい。

9 :
 研究区は、居住区と様子が異なっていた。
 居住区は無骨な作りであったのに対し、研究区は診療所や病院のように清潔な作りとなっている。
 ただ、巡回兵がいる事は同じだった。
 人の気配は、居住区の時より多い。おそらく、この時間帯でも「研究」をしているから、研究者達がいるのだろう。
 場所は変われど、潜入の基本には変わりがない。
 慎重に、かつ何が起きても素早く対応出来るように、俺はゆっくりと進み始めた。
 ◇
 いくつかの通路を曲がり、部屋を横切り、広間を抜けると、エレベーターがあった。
 あれで下まで行けそうだ。一旦中層で降り、武器を手に入れ、それから開発区に向かう。
 今後の方針を決めた所で、俺は地面を蹴って走り出した。
 足音に気づいた兵士が振り返る。それとほぼ同時に兵士の首もとをつかみ、地面へと叩きつけた。
 兵士はぐったりとして動かなくなった。体を引き摺って、物陰に隠す。弾倉をいくつか頂戴した。
 エレベーター前には、見張りがいなかった。広間にいるのはこの兵士だけだったようだ。
 若干不審に思いつつ、エレベーターに近寄る。トラップやセンサー類、監視カメラの類は見あたらない。
 ――これまで、どの階でもエレベーター付近には見張りがいた。
 だがここには誰もいないし、何も無い。……嫌な予感がする。
 辺りに気を配りながら、ボタンを押す。普段通りなら、少し待てばエレベーターが到着する――はずだった。
 エレベーターが動いていない。動いている気配がしない、と言った方がいいのだろうか。
 何度かボタンを押したが、作動音すら聞こえなかった。
 ……以前、シャドーモセス島でも似た状況があったな。
 ため息をついて、エレベーターから離れた。
 とにかく、別ルートを探そう。
 任務に苦難は付きものだ。最初から上手く行くわけではない。
 気持ちを切り替え、別の通路に向かおうとした所で通信が入った。

10 :
『ようスネーク。調子はどうだ?』
 「桜花」の「父親」であるディープスロートからだった。
『……まずまずだな。今、研究区に入った所だが、エレベーターが作動しなかった』
『作動しない……? 変だな。そこのエレベーターは設定を弄っていないんだけどな』
『そういうこともある。出来れば別ルートを教えてくれると助かるのだが』
 それならお安い御用さ、と彼は快諾し、口頭でルートの説明を始めた。
 少し離れた所に階段があるらしい。
 普段はあまり使われていなく、敵と鉢合わせる可能性も低いそうだ。
『それでも、警備が全くされていないって訳じゃないけどな。ただ、これだけ広いと人手が足りなくなる。
だから監視カメラやらセンサーやら、そういった類のものはあるだろうな』
『そのぐらいなら問題は無い』
『それと警備が強化されているとしたら、サイファーが飛んでいるかもしれない。気をつけろよ。
あと……、……まあさすがに“アレ”は無いか』
『……何の話だ?』
『確か開発中の、人間の思考を搭載したAI兵器がいくつかあるらしいが……完成したかどうかも分からないし、
していたとしても、誰も使わないような階段に配備はされないさ。今の話は忘れてくれ』
 忘れてくれ、と言われても記憶に留めておくべき事柄だろう。
 AI兵器がどの程度の脅威になるか分からないが、用心するに越したことは無い。
『お前は今何をしている?』
『ちょっと上の方に用事があってね。無事会えればすぐ終わるさ』
『誰かを捜しているのか?』
『まあ、そんな所だ。あんたには……関係あると言えばあるが、今は関係無いって事にしておいてくれ』
 ……相変わらず、何を考えているか読めない奴だ。そもそも、この男は正体すら未だに分かっていない。
 これ以上聞いても無駄だと判断し、ディープスロートから聞いたルートを頭にたたき込んで、階段へ向かうことにした。
 階数は決して短くない。
 時間がかかりそうだが、……今は子供達の無事を信じつつ、一歩一歩着実に進むしか無かった。

11 :
 ◇
 ――人が、斃れていく。
 ある者は手足を切り落とされて。
 ある者は銃弾を全身に浴びて。
 ……ある者は、何が原因で斃れたのか分からないほどに、ぐちゃぐちゃになって。
 むせ返るような血の臭い。怒号と悲鳴。銃声。
 ……今日の昼頃から遭遇しっぱなしの、こんな異常事態の連続に…………私の感覚は、すっかり麻痺していた。
 私と悟史くんを捕まえている奴らが何を目的として、戦っているのか。
 奴らを相手にしている兵士たちは何を守ろうをして、戦っているのか。
 私はそれすらも知らないのに……、目の前の惨劇を、見ているしかない。
 今確実に分かるのは、私がいる場所が鬼ヶ淵沼の地下にある、謎の施設だと言うこと。
 それと、……私の背中にいるのは、間違いなく彼――悟史くんだと言うこと。
 ……この場所では、生と死が隣り合わせだと言うこと。
 それぐらいしか、分からなかった。
「……クリア。……くすくす、みんなお疲れ様。…………先に進むよ」
 さっきの女の人が、兵士たちに声をかける。彼女が持っている鉈は赤く染まっていた。
 ……いつの間にか戦いは終わっていたらしい。
 座り込んでいた私は、無理矢理立たせられる。銃を突きつけられ、また歩かされることになった。
 その様子をみて、彼女はまた――くすりと笑った気がした。
 さっきの光景がフラッシュバックする。
 私の首を絞めている悟史くん。
 銀色の閃光。月明かり。嘲笑っていた彼女。
 ぐるぐる、ぐるぐると、さっきの光景が頭の中でまわる。
 ――されちゃっても、知らないからね。
「…………っ!!」

12 :
 背筋に寒気が走り、担いでいた悟史くんを落としてしまいそうになった。
 兵士達は私の様子を見て、「何をしている」と銃で小突いた。
 崩れ落ちかけた膝に力を込めて、私は何とか立ち上がることが出来た。
 ――しかし、一度頭に浮かんだ不安は拭えなかった。
 さっきの女の人の言葉。悟史くんの行動。
 ……悟史くんは、私を――そうとしている?
 そうだったらどうしようと思って、動悸が激しくなり、全身に汗がにじんでくる。
 喉と手首のかゆみが、いっそう強くなる。
 ……もしかしたら、悟史くんはまだ園崎家のことを恨んでいて。
 私をずっとずっと目の敵にしていて……、それで私をそうとしたの?
 悟史くんに正気が無いように見えるのは、……私の思い過ごしで、………悟史くんは、私をす機会を伺っているの?
 だからさっきは、……二人きりになれて、周りには誰もいなくて……チャンスだったから、私を絞めそうとした…?
 ……私は、自分をそうとしている人を、必死で守っている……?
 それが滑稽に見えるから、あの人は、私達を見て笑って――――。
 ――違う! 悟史くんは、そんな事は思ってない!
 首を強く左右に振る。
 ……私が、悟史くんを疑うなんて。最低の事だ、と思った。
 こんなどうしようもない状況で、よりにもよって私が悟史くんを信じないならば……私は、何も信じることが出来ず、疑心暗鬼に取り憑かれてしまうだろう。
 ……悟史くんの様子がおかしいのは、おそらく奴らのせいだ。悟史くんが望んで、こうなった訳じゃない。
 さっきの行動だって…………、きっとそうだ。あんなに優しかった悟史くんが、進んで手を染めるようなことはしない。
 それに。
 私が彼を信じなかったとしたら、誰が彼を信じるんだろう?
 リキッドって奴もマチェットっていう人もオセロットも、悟史くんを道具か何かのようにしか見ていない。
 悟史くんは道具じゃない。……私が必ず守りぬく。そして、……一緒に沙都子の所に帰るんだ。
 その時は、……みんなで笑いあえるかな。
 沙都子は喜んで兄の帰りを迎えて、……悟史くんも正気に戻って、はにかんで。
 『約束を守ってくれてありがとう、詩音。…………ただいま』って、言ってくれるかな。
 ……その未来を見たいから。悟史くんと沙都子にも、見せてあげたいから。
 私は戦う。絶対に、助かってみせる。
 悟史くんを疑うなんて事……、二度とするもんか!

13 :
とりあえず以上です。
あと2、3回投下したら、話がぐぐっと大きく動きます(予定です)。
無線ばかりのスネークパートにも終わりを告げられるはず……!
今後、規制等の理由が無い限り、無断で一週間以上スレを空けることを無くします。
一週間本編による書き込みが無かったら、したらばの規制中専用のスレをご確認下さい。
そこにも書き込みが無かったら、「何やってるんだゴルァ」と急かして下さって構いません。
長い間投下出来なくて、本当にすみませんでした。
完結に向かって努力・精進して行きますので、これからもよろしくお願いします。ノシ

14 :
>>13
うぉおおお乙でした〜
これからもがんばって下さいな。

15 :
>>13
復活オメノシ
もう消えたかと半ば諦めてました

16 :
こっちにスレ経ってたのか
随分続いてるんだな。いつの間にかリレーになってるし。
スネークがシエルにビビりまくってた辺りで止まってたな

17 :
 私達は、研究区と呼ばれる場所に侵入した。
 ジョニーの報告からして、ここら辺にスネークがいる可能性が高い。
 手分けして、今まで以上に慎重に探さなければいけない。
 もう一回、戦力が均等になるようにくじを引いて、二手に分かれて探すことにした。
 今度は、富竹と入江も一緒にくじを引いてもらった。
 二人の用事はもう済んだらしく、入江たちが襲われたこともあったので、合流することになった。
 「はいはーい! くじは引けたかな? それじゃチームごとに別れよう!」
 魅音の号令で、今度は三チームに分かれる。
 “みんみんぜみ”は、レナ、羽入、ジョニー。
 “つくつくぼうし”は、圭一、沙都子、入江、赤坂。
 “ひぐらし”は、魅音、私、富竹という構成になった。
 さっきまであった“あぶらぜみ”の名前はなぜか使われなかった。
 そういえば、先ほどチーム決めをする時、赤坂と魅音が何か話していた。
 ……“あぶらぜみ”に何かあったのかもしれない。ゲン担ぎ、ということでその名前を避けたのかもしれない。
 兵士と山狗の警護については、以前と同じだ。
 何名かは負傷してしまって戦えないけれど、さっきよりまとまって行動しているので、戦力には問題がないと思う。
 ……結構上手に分かれたな、と思う。
 “みんみんぜみ”は足りない戦力を、地の利があって知識が豊富なジョニーが補っている。そしてこのチームには兵士達が一番多くついていた。
 “つくつくぼうし”は赤坂が道を切り開き、沙都子が後方を守る。圭一は敵の説得も出来るし、入江は怪我の治療が可能だ。
 “ひぐらし”は本隊だし、何せ魅音がいる。富竹はああ見えて銃の扱いに長けているから、しっかり守ってくれるだろう。
 これはくじの運が良かったからこうなったのか、それともゲーム大会の時のように魅音が自分で割り振ったのか。
 まぁ、どっちでもいいか。頼もしい仲間に恵まれた、と思っておこう。
 ……仲間、か。
 向こうがこっちをどの程度信用しているか分からないけど、スネークは私達のとって大切な仲間だ。
 近くにいるだろうから、早く合流して、彼の力になってあげたい。
 ――この時の私は、彼の“敵”の事をよく知らなかったから、そんな事を思っていた。

18 :
 
「……ん? ここはひょっとして……」
 チームに分かれてしばらくした後。
 魅音が、ある部屋の前で立ち止まる。既に周りの敵は殲滅していた。
「魅ぃ、どうしたのですか?」
「ここ、敵さんが使ってる通信施設っぽくてね。何か頂戴できるものは無いかなー、と」
「……僕も行くよ」
 魅音がドアノブを捻り、慎重に扉を開ける。中には誰もいなかった。
 彼女が言った通り、中には通信設備らしきものがあった。複雑そうで、よく仕組みが分からない。
 富竹も慎重に辺りを見渡していた。……ひょっとしたら、番犬と連絡を取ろうとしているのかもしれない。
 魅音がつかつかと設備に近づく。そして、おもむろに装置を弄り始めた。
「使えそうなのですか?」
「多分ね。なにかいい情報が手に入るかもしれないから、ちょっと調べてみるかねぇ」
 そう言いつつも、何せ複雑な機械だから、扱いが難しそうだった。
 どこかの無線を傍受したり、モニターにどこぞの監視カメラの映像が映ったり消えたりと、せわしない変化が続いていた。
 しかし、どれも有力な情報では無かった。
魅音は額にしわを寄せて頑張っていたが、埒があかないと思ったのか、突然叫び始めた。
「……あーもう! なんでこんなややこしいのさ――――あれ?」
 ぷつん。全てのモニターが、唐突に消えた。
 同じく唐突に、「通信中」を示すランプがつき、またどこかと無線が繋がった。
 通信相手が、声を発する。
『……誰だ?』
 ――その声は、ここにいる誰もが探している人の声だった。
 私より早く、魅音が無線機に飛びついて応答する。
「スネーク!? スネークだよね?」
『その声……魅音か!? どうして無線が――』
「ああ良かった! やっと見つかった! おじさん達、ず〜〜〜っとスネークのこと探してたんだよ!
部活メンバーは勿論、監督に富竹さんに赤坂さんって人も、みんなでここに来たんだからさ!」
『どうして来――』
「そうそう、今はちょっと別行動している人もいるけど、梨花ちゃんはここにいるから変わるね」
 魅音はスネークに喋る隙を一切与えず、一方的にまくし立てて、無線機を私に押しつけた。
 いったい何が起こってこうなったのかよく分からなかったけど、私はとりあえず無線機を受け取った。

19 :
「……スネーク、なのですか?」
『……そうだ』
 確かに、私達がずっと探していた彼だった。
「無事で何よりなのです」
『そっちも平気か?』
「圭一が山狗や兵士をこっちに引き込んだので、戦力は何とかなっていますです」
『山狗……敵を味方にしたのか……』
 彼は驚きを隠せない様子だった。圭一の戦い方に舌を巻いたらしい。
 ……私だって、こういう戦い方があったんだ、と初めて知って驚いている。
「それと、スネークが知っている人は皆無事です」
 勿論、沙都子も助けました。と言った。
『……そうか、良かった』
 心から安心した、と分かるような声だった。
 もっと話したいこともあるけど、それは会ってからにしよう。
 そう思ったので、魅音に無線機を渡した。
「今どこにいるの?」
『地下に向かう階段だ。敵はいないが、長くなりそうだ』
「って事は……研究区かな。どの辺りに向かってる?」
『中層だ。今は――』
「それならちょうどいいや。おじさん達も、研究区に来たばかりだから、たぶん追いつけるね!
なら中層で会おう! 居住区入り口と同じように、広間があるらしいからさ、そこで合流しよう。
あ、あとこっちも無線機を持って行くから、また連絡するね。いきなり圭ちゃんとかから、無線が来ても驚かないでよー」
『おい、こっちの話も――』
「善は急げ、って言うでしょ。エレベーターで特急で向かうから大丈夫だって!」
『待て、エレベーターは』
「じゃあ、研究区中層の広間でね!」
 ぶつり。魅音が無線のスイッチを切った。
 それと同時に、先ほど消えたモニターなどが再び付き、この部屋に来た時と同じ状態に戻った。
 魅音が振り返り、得意げな笑みを浮かべた。
「よーし、スネークを発見したことだし、目的地決定! 各チームに連絡して、研究区中層広間でスネークと一緒に集まろう!」
「それにしても魅音ちゃん、凄いね。スネークさんと無線を繋げちゃうなんて」
「あ、あはははは! おおおじさんの手にかかれば、何だって出来るからねぇ!」
「……ボクには偶然、スネークに繋がったように思えたのです」
 魅音の様子からして、そうとしか思えなかった。
 どっちにせよ、さっきの声は本人だ。目的地も決まった事だし、これでようやくスネークと会える。
 彼の目的がここで果たせられれば、私の歪んだ運命も打破出来る。
 ようやく、先に進む希望の光が見えた。
 魅音が他のチームに連絡し、富竹が通信設備を弄り始めているのを見ながら、私は心強さのようなものを感じていた。

20 :
以上です。
今週中(ぐらい)に私がもう一度投下しますが、
来週の投下は◆k7GDmgD5wQ氏に一任することになると思います。ノシ

21 :
乙です

22 :
乙なのです

23 :
ざり、ざりと耳障りな音を立てた無線機から、声が聞こえる。
『もしもーし、こちら“ひぐらし”、聞こえてるー?』
明るいその声は、我らが部活の部長、魅音のものだ。
だから、俺もそれに明るく返すことにする。
『つくつくぼーし、つくつくぼーし』
俺たちのコードネームである“つくつくぼうし”を、できるだけリアルに表現してみた。
即座に聞こえた、魅音の溜息。
『あのさぁ圭ちゃん、それ、すっごくつまんない』
『くは、マジか』
実に残念そうに悔しがってみせる。
『まあそんだけ余裕があるならそっちは大丈夫ってことかな……。あのさ、圭ちゃん達にも知らせときたいことがあるんだ』
『何だよ?』
『うん、ついさっきだけどね、スネークと連絡が取れたんだ』
『えっ? マジか!』
これには素直に驚いた。
『うん、スネークも無事だね。おじさん達より少し先にいるみたい』
『そっか……、じゃあ、もうすぐ会えるな』
『うん、みんなで無事にスネークのとこまで行くよ』
『ああ、モチのロンだぜ!』
形だけだった明るさが、心のそこから変わっていく。
スネークに会える。
それだけのことだが、それ以上ない勇気と希望に変わった。
『それとさ……、圭ちゃん、今どこらへん?』
魅音が俺達の位置を訪ねた。
『えっと……ちょっと待ってくれよ、監督、地図見せてくれよ』
フロアのマップを持っている監督に、そう言って、俺は監督から地図を受け渡される。
『えーっと、このまま少し行くと、エレベーターがあるな』
『そっか、なら圭ちゃん達が一番乗りかな。もう少し降りるとね、研究区の中層に着くんだ。そこに広間があるんだよ。そこでスネークと合流しようと思う』
『わかった。じゃあ俺達がそこまで行って、先に皆を待っておくぜ』
『無理はしないでよ圭ちゃん。相手は戦闘のプロだからね。赤坂さんだって不覚をとったらやられかねないんだから』
『わかってるさ魅音……、常に状況を把握し、冷静に判断するってんだろ。部活で散々叩き込まれてるからな、油断はしないぜ』
『圭ちゃんがあっさりそう言うから心配になるんだよ……』
『なにー! 信用されてないのか俺!?』
『あれ? 今ごろ気付いた?』
笑いあい、ふざけあいながら、俺達は通信を終えた。
そして、魅音から聞いたことを、俺は沙都子や監督、赤坂さんに話す。
「エレベーター、ねぇ……」
沙都子が片目を瞑って、考え込むようにそう言った。
「ああ、そこまで行けば広場まではもうすぐだからな、こうなりゃ俺達が一番槍だ――」
「ちょっと待ってくださいませ圭一さん、そんな簡単にエレベーターまで行くのは自行為だと思いますわ」
沙都子が俺にストップをかける。その言葉に俺は少し前につんのめった。
「な、なんでだよ沙都子、せっかく人がやる気だしてるのによ」
「やる気をだして突っ込むのは飛んで火に入る夏の虫ですわ。……圭一さん、これだけ広いフロアなんですのよ。そこにこれ見よがしに中枢に向かうルート……どう考えても罠を張られると思いません?」
「……う」
確かに、よく考えれば沙都子の言うことは正しく聞こえる。
「そうですね。……それに、私達はこの場所のことをよく知りませんから、慎重に動くにこしたことはありませんね」
監督が沙都子の意見に同意した。
「しかし、これから別のルートを探すとなると、少し手間がかかるな……」
赤坂さんは、沙都子の意見には乗らず、ルート変更のリスクを懸念しているようだ。
「た、確かにな、沙都子の言うことは一理あるぜ」
俺はここで、ルート変更の案を握りつぶすことにした。
いや、危険だなんてことはわかってるんだけど、一番乗りして魅音の鼻を明かしてやりたいという単純な勝負心だ。
「でもな、赤坂さんの言うとおり、別のルートを探している間に敵に見つかることだってあるぜ。それなら、最短距離を通って目的地に向かうことのほうがリスクは少ないと思うぜ」
「だからといってあからさまに怪しいエレベーターを使うことはどうかと思いますけど……」
「沙都子、そんならエレベーターにはすぐ乗らなくたっていいだろ? エレベーターに仕掛けがないかどうか調べてから乗ってもいいじゃねーか」
「うーん、なんか虎穴に入るような気がしてならないんですけど……」
ま、調べてから決めても遅くはありませんわね、と、沙都子はしぶしぶ俺の意見に折れた。
これで、行き先は決定した。
俺達は、何が待ち受けるか分からない地獄の入口へ向けて、足を向けることにした。

24 :
……えー、すいませんいきなり投下。
本編氏の投下の穴埋要請を受け、ちょいちょい小出しで参加いたします。

25 :
投下きてたー 乙です

26 :
乙〜

27 :


28 :
「……全く、何だったんだ」
 いきなり魅音から通信が来たかと思えば、こっちの話も聞かずほぼ一方的に喋って、何やら魅音達を合流する事になってしまった。
 彼らがここに来ている事は知ってたといえ、何というかもう、呆れるしか無い。
 ……本当に今回の任務は「厄介」だ。思わず頭を抱える。
 あなたを助けに来たのかしらね、と言っていた桜花の言葉を思い出す。
 気持ちはありがたいが……、一体、これからどうなるんだ。
 危険だから来るなという話は、もう彼らには通じないだろう。
 梨花の話だと、圭一が山狗や兵士を味方に付けたらしい。民心獲得工作、と言った所だろうか。
 敵地潜入、なおかつ複数で任務を遂行する場合の心得をわきまえているとは、中々彼らも侮れない。
 子供達だけでなく、大人もたくさんついているだろうから、……きっと大丈夫だろう。
 こっちはこっちで進むしかない。
 武器を手に入れる為、かつ魅音達と合流する為に、また一段、一段と階段を下り始めた。
 既に、目的地は近づいていた。

 研究区中層に侵入。
 男子トイレを見つけ出し、鏡を外す。IDカードを入手した。
 一連の作業は水が流れるように行えたので、特に問題は生じなかった。
 近くの資料室の様子を窺い、覗き窓から中を覗き、ディープスロートが用意した武器がある部屋かどうか確認する。
 しばらくして、窓の端の方に「OK」と書かれている部屋を発見した。
 ドアの横にある端末に、IDカードを通す。
 施錠を示す赤いランプが緑のランプに切り替わり、鍵が開く音がした。ビンゴだ。
 部屋に潜り込む。入ってからすぐ、内側から扉をロックした。
 中央にあるテーブルに、武器らしきものが置いてある。
 歩み寄って何が置かれているかを確認した。
 ――正直、あまり期待はしていなかったのだが、かなりの物を手に入れられた。
 一番最初に目に付いたものは、M4だった。
 手に取り、動作を確認してみる。驚くほどに手に馴染んだ。
 色々とカスタマイズが出来るようなので、必要に応じて使ってみよう。
 他には、チャフグレネード、スタングレネード、グレネードが3つずつと、M4の弾倉があった。
 それと、ここの施設の地図も置いてあった。これはかなり助かる。
 地図を広げ、現在地を割り出す。魅音が言っていた広間と思われる場所はそう遠く無かった。
 ……十分だ。十分過ぎるほどの、収穫だった。
 ここにはもう用は無い。子供達と合流しに行こう――と思い、扉の方へと向かった。
 ――外に、複数の人の気配がある。
 今出るのはまずい。壁に耳を押しつけ、外の様子を窺うことにした。

29 :

「例の侵入者はどこだ?」
「もうここの区画に入ってきているらしい。上の方がやられたって報告があった」
「そりゃまずいな……。俺が聞いた話だと、連中は容赦なく兵士をして回ってるとか――」
 ……「容赦なく」兵士をして回る、だと?
 魅音達ではありえない。だとしたら誰が――、……まさか、フォックスが?
「ちょっと待てよ、“侵入者”ってのは子供連れの訳分からない集団の事じゃないのか?」
「……いや、どこかの戦闘部隊だろ?」
「単独潜入の工作員って話は?」
「……ったく、何でこんなに情報が錯綜してるんだ。どれも嘘とは思えないし、一体ここで何が起きてるんだ――」
 “子供連れの訳分からない集団”とは魅音達のことだろう。
 “単独潜入の工作員”は、俺か、ここに来ているとしたらフォックスのことだ。
 ならば――“戦闘部隊”とは?
「おい。何をしている」
 別の声が会話に加わった。兵士達が慌てて姿勢を正す気配があった。
 どうやら彼らの上司が来たらしい。
「侵入者排除も大切だが、我々には他にも任務がある。小此木隊長にどやされるぞ、早く雛を探せ!」 
「はっ!」
 足音が遠ざかっていく。
 ――しばらくして、何も聞こえなくなってから外に出た。
 先ほど手に入れた情報を整理すると……どうも嫌な予感がする。
 「ここの兵士を皆しにしている」「侵入者は戦闘部隊」。
 それは、魅音達やフォックスではあり得なかった。
 ……この雛見沢には――奴がいる。
 そいつは、ここに来ていても何らおかしくはない。
 ――シャドーモセス島で戦い、そして目の前で死に、もう二度と会うまいと思っていた、――兄弟は。
「……リキッドか」
 奴が部下を引き連れているとするならば、それは「戦闘部隊」に他ならない。
 それこそ何の躊躇もなく、自らの目的を達成するため、敵を排除するだろう。
 その考えに至って、……背筋に寒気が走った。
 子供達が危ない。
 いくら大人がついているとはいえ、戦える人数は限られている。
 もし、銃口が彼らに向けられるようなことがあったならば――。
 入手したM4を持ち直し、深呼吸をした。
 ……先へ急ごう。
 今は、それしか出来ない。
 ――“雛”を探せ、という会話も気にはなったが、この時はまだ何の事か分からなかった。

30 :
酉がなんかおかしいけど本編です。以上です。
終盤の盛り上がりが来るまでは、ちまちま投下します。ノシ

31 :
……また変なトリップになってしまった。これで直ったはず。
投下ペースが遅くて申し訳ないですが、力の及ぶ限り続けていきたいと思っております。
よろしければおつきあい下さいませ。ノシ

32 :
おつおつですおー。
細かくて失礼、2行目、
> いきなり魅音から通信が来たかと思えば、・・・何やら魅音達を合流する事になってしまった。
なにやら魅音達「と」ですかね。
しょっぱななのでおもわず目についてしまいましたごめんなさいw

33 :
乙なのですよ☆

34 :
完結まで頑張って
オリスク見て楽しみにしてるんだ

35 :
 私と羽入ちゃん、そしてジョニーさんと、山狗や兵士の人達からなるチーム、“みんみんぜみ”。
 部活メンバーは少ないけど、戦える人は多いし、……それに、羽入ちゃんと一緒になれた。
 羽入ちゃんとスネーク先生は、お祭りの時しか喋っていないはずだけど、羽入ちゃんはこうして私たちと一緒に来てくれている。
 それは、羽入ちゃんもスネーク先生もみんなも、“仲間”だから、だと思う。
 ……これは、とっても嬉しいこと。私たちには、こんなにもたくさんの仲間がいるんだから。
 仲間が力を合わせれば、たとえこんな場所でも、怖いものはない。
「……でも、スネーク先生見つからないねー」
「そうなのです。……こっちに人が来た形跡が無いのです。あぅ」
 先生は絶対にここに来ているし、さっき、先生が来ていたらしき証拠もあった。
 けど、入れ違っているのか、スネーク先生がどんどん先に進んでいるのか、中々会えない。
 ……それは、寂しいことだった。
「こちらみんみんぜみ。どうした、リーダー?」
 ジョニーさんが通信を傍受し、無線機に向かって話し始める。
 「リーダー」って言ってたから、魅ぃちゃんと連絡をとってるみたいだ。
「…………、…………それは本当か!? ……なら良かった!」
 彼の声のトーンがあがる。何かいい報告があったらしい。
「こちらは異常なし。有益な情報は手に入れてないが、負傷者もいない。…………分かった。後で合流しよう」
 通信を終えて、こちらを振り返った。
 何の話をしていたのか、私は早速尋ねることにした。
「何があったんですか?」
「スネークと連絡が取れたらしい」
「「本当(なの)ですか!?」」
 私と羽入ちゃんの声が被さる。
 さっき、魅ぃちゃんが敵の通信機器をいじっていたら、スネーク先生と無線が通じた、らしい。
 敵が使ってるものから何でスネーク先生に通じるんだろう、とは思ったけど、魅ぃちゃんは先生と合流の約束もしたみたいだった。
「もう少し下に降りると、研究区の中層に出る。そこには大きめの広間があるんだ。そこでスネークと合流するらしい」
「それじゃあ、私たちの目的地は、決まったね」
「下へ向けてれっつごー! なのです!」
「早速向かうとするか。……と言っても、この辺からは下に降りられないな。一旦来た道を引き返そう」
 ジョニーさんがそう言って、みんなが頷いた。
 二度手間になっちゃったけど、仕方が無い。引き返すと言っても、私たちは確実に前に進んでいる。
 ――やっとスネーク先生に会える。
 そう思っていると、羽入ちゃんが話しかけてきた。
「レナ、なんだか嬉しそうなのです」
「あれほどみんなで探していたスネーク先生に、ようやく会えるからね。レナたちと先生が力を合わせれば無敵だよ」
 羽入ちゃんは微笑んだ。
「……それに、ね。ここでこんなこと言うのは変かもしれないけど、羽入ちゃんと一緒にいれて、嬉しいって思ってる」
「……僕と? あぅあぅ、どうしてなのですか?」
 少し困惑した様子で、尋ねてきた。
「んー……、レナの勘違いかもしれないけど、…………羽入ちゃん、ずっと前から一緒だったような気がしたんだ。
お祭りの時、初対面って感じがしなかったもの。だから、『やっと一緒に遊べるんだ』って思って……」
 言葉にしてみて、少し変だな、って自分で思った。
 羽入ちゃんは梨花ちゃんの遠い親戚で、今までは遠くに暮らしていたはず。
 雛見沢に遊びに来ていたのかもしれないけど、……そうじゃなくて、……もっともっと前から、私たちのことを、少し離れたところから見ていたような気がした。
 ……でも、何だか変だよね。私は首を振って、自分の言葉を否定した。

36 :

「あまり気にしないで。どうしてこう思ったのか……、自分でもよく分からないの。……あはは、ちょっとおかしいよね」
「……そんな事はないのです。……レナ、ありがとうなのです」
「……?? お礼を言われることなのかな、かな」
 なぜだかお礼を言われて、ちょっと戸惑った。
「確かに僕は、綿流しのお祭りの時に、レナや魅音、圭一、沙都子、詩音、……そしてスネークと、『初めて』会いました。
でも、……ずっと、…………ずっとずっと前から、僕も、みんなと一緒に遊びたかったのです。レナはきっと、そんな僕の気持ちに気づいてくれたのです。
だから、初めて会ったような気がしなかったのだと思いますよ。……僕だって同じなのです。みんなとは昔からの友達だったような気がしています」
 どこか遠い所を見つめながら、感慨深いように喋る。
「……みんなが僕を受け入れてくれて、とても感謝しています。さっきだって、弱音を吐いたのに、みんなは突き放したりせず励ましてくれました。
僕も、レナ達と一緒にいれて嬉しいのです。……ありがとう、レナ」
 羽入ちゃんがまた、にっこりと微笑んだ。
「どういたしまして、なんだよ。……私たちは仲間なんだから、羽入ちゃんが傷つくようなことはしないよ。
私たちにとっては、当たり前のことなんだから。そんなに遠慮しないでね」
「ぁぅぁぅ、ありがとうなのです」
 ちょうどその時、付近の偵察に行っていた人達が戻ってきた。
 さっき通ってきた道だから、この辺りには敵はいないらしい。
 ……なら、進もう。
「じゃあ、行こうか」
「はい、なのです!」
 決意を新たに、“仲間”たちと共に、一歩前へ踏み出した。

37 :
以上です。
>>32
指摘どうもです。誤字脱字は遠慮せずにどんどん言って下さると助かります。
>>34
そんなこと言われると、おじさんはりきっちゃうよ?
……しかしオリスクは最近あまり進められてないです。
とりあえず、ある程度の所まで本編をとにかく進めます。ノシ

38 :
お久しぶりです、メサルギアです、新しくスレ発見したので続き書きます
朝になり俺は梨花に言われたとおりに入江に話した
「そうですが、学校の先生でしたか」
「ああ、昨日は少し混乱してた」
「しかし体もたいしたもんですねあれだけの怪我も完治してるようですから退院してもいいでしょう」
「ああ、ありがとう先生」俺は診療所を出て真っ先に梨花の家に向かうと家の前に20代後半の男が立っていた
「ん?」彼は梨花の家に用があるのだろうか、うろうろしていた
「おい!」俺は声かけるやいなや構え俺に向かってきた
(山犬部隊か)俺も構え、彼の攻撃が来る
「お前は誰だ?東京の一員か?」彼が攻撃しながら俺に問う
「違う」彼の攻撃をいなし、CQCで彼を飛ばすが彼もきれいに着地し、俺に向かってきた
「次の質問だ、お前は何故攻撃してこない」
「俺はお前と戦うつもりで着たんじゃない」
「そうよ赤坂、朝から喧嘩とは穏やかじゃないわ」玄関から梨花が眠い顔をしていた
「梨花こいつは?」
「おはようスネ、デイビット先生、この人は私たちの味方よ」
「先生?その割には動きが素人じゃない」
「先生としての当然のスキルだ」
「・・・まるで歴戦の兵士」
「君の体術もな」
「二人とも余計な詮索はしないで、それにこれ以上やると私も怒るわよ」
赤坂も彼女の言葉を聞いて構えを説いた
「じゃあ、朝御飯にしましょう」
「梨花誰ですの?」玄関から2人の少女がでてきた
「すまない、起こしたようだね?」
「またあなたですの赤坂?」金髪の少女はあきれた顔であくびをした
「梨花、もう一人の外人さんは誰なのですか?」もう一人の少女はおそらく羽入だろう、未来での面影がある
「紹介するのです、新しい先生なのですよ」相変わらずの早変わりだ、スパイになれるな
「デイビットだ」
「外人の先生なんて初めてなので、朝御飯に呼んだのですよ」
「今ちょうどできたところなのです」
「じゃあ、みんなで食べるのです」これが日本の朝食か、食べるのは良いが・・・これがうわさに聞く箸か
「どうしたのですかスネ、デイビット先生」
「おおかた箸の使い方が分からんのだろう」
「赤坂そんな喧嘩腰で話したらだめなのです」
「すまない」
「デイビット先生、フォークどうぞですわ」
「すまない」俺はうわさに聞く味噌スープから飲んでみた
「デイビット先生のお口に合いますかしら?」
「・・・旨すぎる!!」
続く
TIPS帰ってきた雷電@
「ジャック聞こえる?」俺は次世代強化骨格の為に実験室にいた
「ああ、聞こえるよローズ」
「では始めるわよ、まずベルトにそこに置いてあるゼクターを腰につけて」
「これか」カブトムシのような物を着けた
『マスクドフォーム』
「うお!」全身に鎧のような物が体に装着された
「これが新しい強化骨格か」
「いいえ、ジャックこれには新しい機能があるの、一度角の上げて」
『キャストオフ!!』全身の鎧が無くなり体が自由になった
『チェンジビートル!!』
「これが次世代強化骨格か」
「では実験スタート」
「まだあるのか?」
「もちろん、これから本番よ、腰のボタンを押して」
『クロックアップ』
「うお!」世界が遅く感じる、否、俺が早くなっているのか
「実験は成功のようね」
「これが俺の新しい力か」

39 :
皆さん乙なのですよ

40 :
連絡がぎりぎりになってしまいましたが、投下が遅れます。申し訳ありません。

41 :
了解、待ってまっせ

42 :
保守。

43 :
保守る

44 :
ただ今長期規制中なので、代理の人にレスを頼んでいます。
したらばにTIPSを投下させて頂きました。
どなたか手が空いていらっしゃったら代理投下お願いします。
また、今後しばらくはしたらばに投下することになると思いますので、ご了承下さい。

45 :
保守

46 :
したらばから本編の代理投下
--------------------------
TIPS:「終末に向けて」
 星が瞬き、満月が辺りを照らしている夜中。一台の車が、路肩に止まっていた。
 車内には女がおり、彼女は車載電話の受話器を手にし、どこかに電話をしていた。
「野村です。…………ええ、そちらの状況は知っていますよ。……ふふふ、ですから念の為にもう一つ、作戦を考えたんじゃありませんの。
施設に踏み込まれるなんて予想外でしたけど、……所詮は地下でのこと。地上では誰も、この事態に気づいていませんわ。
…………ふふふふ、その通り、逆もそうですわね。地下からは、地上の様子は分かりません。施設の連絡網はこちらの手中にありますわよね。
なら、この事を知っているのは我々だけになります。たとえ知ろうとしても、我々が制御している限り知る事はできないでしょう。
…………ええ。確かに彼女なら通信出来るでしょうが、妨害しなくても構いません。そのうち私に泣きついてくるでしょうね。
どう足掻こうとしても、たった一人では何も出来ませんわ。だから力ある者に頼ろうとし、部下をこき使おうとする。……ふふ、全てが無駄ですけどね。
……その後は、作戦通りにお願いします。必ず捕まえて下さいね。
…………、――ええ、勿論です。それではよろしくお願いします。また連絡します」
 女は受話器を置き、一呼吸をするとまた別の所へと電話を掛けた。
「渡辺です。…………はい。こちらは順調です。多少予定が狂いましたが、結果的には問題はありません。
現地作戦は間もなく決行いたします。…………はい。筋書き通りに行う予定です。彼らの協力のおかげで、警察を押さえ込むだけの武力もあります。
勿論作戦終了後には、奥野・千葉派、旧小泉派らは発言力を大きく失うでしょう。あとは我々の時代です。
…………ご心配無く。アルファベットプロジェクトの抜本的見直しも行われ、くだらないことに使われていたカネは中国へ回すことになります。
……仰る通りですわね。確かに彼らは強大な力を持っていますが、米国を牛耳っている輩と協力するよりは、中国と手を組んだ方が遙かに良いでしょうね。
これからは中国の権益も増していき、益々中国との協力が必要とされるでしょう。
先の長い話ですが――、我々の目的を達成するためには、不本意ですが彼らの協力も必要です。
その為の第一歩じゃありませんの。…………ええ、ですから今直ぐに――」
 女はそこで言葉を切って、口元に笑みを浮かべてから、告げた。

「――滅菌作戦を、実行します。」

47 :
投下乙
しかし、銀様もどきめ…

48 :
――居住区の、地図上ではほぼ中央に位置する、巨大エレベーター。主に物資の運搬、人員の移動に利用され、この施設が建造されてから1秒たりとも稼動が絶えたことがない。
そのエレベーターには、この重厚な鉄扉に似つかわしくない、少年と少女が立っていた。
「……ここか」
圭一が呟く。
「なんとか、到着しましたわね」
沙都子が、一息つくように、言う。
「ああ。このエレベーターで移動すれば、スネークのとこまですぐだぜ」
にか、と笑って圭一は希望を口にする。
「ドアが開いたら蜂の巣……なんてことにならないといいのですけど」
沙都子が当然のように起こりうる、待ち伏せの危険を口にする。
「わかってるって……だからこうしてエレベーターの中が見えるところから確認しようってんだろ」
エレベーターの前の通路には、遮蔽物となるようなものはなく、誰であっても、敵がいれば的になることは目に見えていた。
そこを、圭一と沙都子――大人より体躯の小さい子供達が、他の仲間達の目となり、危険を確認しようと志願したのだった。
当然、大人達は反対した。特に入江は二人の無謀ともいえる案に強く首を横に振った。
しかし、二人は入江に対して、笑顔で答えた。
「大丈夫だって監督。俺達は死にに行くわけじゃない。スネークに会いに行くんだ」
「で、でも、なにも二人がそんな危険な目に遭わなくても」
「監督、ここにいる以上、危険なんてどこにでもありますわ。それに、エレベーターの中がどうなっているかだけ確認するだけですもの。……ちょっとは怖
いですけど、大丈夫ですわ」
「でも……」
入江の表情は悲観的なものだったが。
「入江先生……彼らを信じてみましょう」
仲間になった兵士の一人が、圭一達の意見を押す。
「万が一のことがあっても、この子達は俺達が守りますよ」
別な兵士が、その言葉に同意する。
「あ、貴方達……」
入江の吃驚したような顔に、圭一と沙都子が、くす、と笑った。
「入江先生。私も圭一君と、沙都子ちゃんを信じてみます」
赤坂が言うと、そこで、ようやく入江も納得したように、頷いた。

49 :
「これを渡しておくぞ」
兵士の一人が、沙都子に双眼鏡のような機械を渡した。
「これは?」
「ソナー探知機の一種だ。動くものがあれば反応する」
「中に誰かいれば、分かるというわけですわね」
「ああ、だが気をつけろ。機械は決して万能じゃない」
「まさか、見えないやつが乗ってるわけじゃあるまいし」
圭一のふざけたような言葉に、微かに、入江が眉をひそめた。
「……見えない、敵……?」
「じゃあ行ってくるぜ! 監督! 赤坂さん!」
圭一が元気よく走り出す。
その後を、沙都子と二人の兵士が追う。
入江がこのとき、“あの老人”のことを思い出していれば、……きっと、この後の結果は、違っていたのかも、しれない。
エレベーターのスイッチを、圭一が押す。
沙都子は、ソナー探知機の画面を見つめる。
兵士達は、少し離れた位置――しかし、万が一の時は、二人を庇える位置に伏せ、銃口をエレベーターの中に向ける。
「……沙都子、探知機はどうだ?」
「エレベーターが動いているから、その反応だけですわ」
「く〜、緊張すんなぁ」
「反応がどんどん大きくなってる……エレベーターが近づいてきてるのですわ」
「長げーなー。どんだけ遠いんだよ」
「相当広い施設のようですから……深さも相当ですわね」
やがて、エレベーターが上がってくる機械音は、圭一の耳にも聞こえ始め。
沙都子は緊張と不安を紛らわせるように、圭一の手を握った。
そして、低く鈍重な音を響かせながら、エレベーターは停止し、その奇怪な化け物を連想させるように、口を開いた。
……エレベーターの中は、がらんの、空洞そのものだった。

50 :
ちょうちょい投下2回目……遅すぎるわ。
しかもまだ続きあるし。
いやー凡ミスでパソ壊しちゃって、復旧手間取っちゃたんです。本編氏、ごめんなさい。
次回ももう少し早く上げたいです。努力します。

51 :
乙です

52 :
新年明けまして保守。

53 :
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
オリスクを更新致しました。「スネークキャプチャー作戦」まで収録しています。
ttp://www.rupan.net/uploader/download/1294655485.zip
pass:sunehina
よろしかったらダウンロードして下さいませ。

54 :
ID不正とかいわれたお(´・ω・`)

55 :
>>54
すみません、こっちのミスみたいです。
別のあぷろだに上げ直しました↓
ttp://www1.axfc.net/uploader/Ne/so/99414
pass:sunehina
こちらからどうぞ。

56 :
ちょw 
オリスクまであんのかよw 面白いんじゃねここw

57 :
>>55
ちょっと質問。
もしかしてまたジャンプモード上手く組めてない?
前にうpしたバージョンで組み方怪しかったけど
(シナリオが複数になる場合にジャンプモードで使うサンプルが勘違いして間違ってる)
システム組んだ時に渡したキャプ画像を見返せば分かるだろうと
場当たり的な対処で様子見したんだけど

58 :
「……あ、あれ?」
 あまりにも拍子抜けに、がらんとした空間を見た圭一が、気落ちした声を漏らした。
「エレベーターの中には……誰もいませんでしたわね」
 沙都子も、ほっとしたように言う。
「なんだよ、緊張して損したぜ」
 脱力した圭一が、がくっと肩を落とし、残念そうに言った。
「待ってくださいませ圭一さん。人がいないといって、何もトラップが仕掛けられていないとは限りませんわ」
 そう言うと、沙都子はエレベーターの中を凝視する。どんなに細い糸でも見落とすまいと、トラップを熟知した沙都子がエレーベーターの中を見通した。
「……ど、どうだ沙都子?」
 圭一が尋ねると、エレーベーターの中をチェックした沙都子が、ふぅ、と息を漏らした。
「ワイヤーや釣り糸などはありませんし、連動した爆発物やブービートラップの類もありませんわ。……ま、要するに何もないってことですわね」
「そ……そっか。なーんだ。心配して損したぜ!」
 にやっと笑った圭一が、元気を取り戻す。
「何もないってんならさっさと入って移動しようぜ! おーい! みん――」
 後ろを振り向いて全員に呼びかけようと圭一が手を上げた。
 その時だった。
 沙都子と――、圭一の体が、浮いた。いや、それは大きな、うねり。そして、振動。
 フロアの壁が軋んで、今にも崩れそうな――それほどの、地響きだった。
「なっ?!」
 圭一がよろめく。
 沙都子も、尻餅をついて倒れた。
 おそらくは――震度5以上の直下型地震を思わせるその地響き――は、暫くの間続き……そして、ようやく止まった。
「い、いつつ……」
 圭一がよろめいてついた膝をさすりながら立ち上がった。
「なんだよ、こんな時に地震なんて……エレーベーター動くかな?」
 そう、ぶつくさ零しながら、エレベーターに近づこうとした。
 その圭一の襟元を、不意に、誰かが掴む。倒すように引っ張られ、圭一も尻を強く打った。
 沙都子が圭一を乱暴に、物陰に引きずりこんだのだ。
「な、なにすんだ沙都子……」
 圭一が自分の尻をさすりながら、沙都子を見る。
 沙都子は、片手を高く上げ、指を奇妙な形に曲げる。それを見て、圭一もようやく理解した。
 ここに来る前に、皆で決めた簡単なサイン。
“敵がいる”
 そのサインは、それを意味していた。
 すぐさま離れていた兵士達が、遮蔽物に隠れ、臨戦態勢をとる。
「……今、見えましたの」
「え……見えたって、何が?」
 沙都子が呟くように言った言葉を、圭一は反復した。
「地震……起きましたわよね」
「あ、……ああ」
「あのとき、私はよろめいて倒れて、そのとき、エレベーターの中を見たんですの」
「ん? エレベーターって……」
 あの、誰もいないエレーベーターに、何が。
「埃が舞って……見えましたの。ぼんやりと、人影が、5つ……」
「人影……? 人影って、じゃ、じゃあ、あの中には、人がいるってのか?! 5人も?!」
「気付くのが遅すぎる!」
 誰もいなかったはずのエレベーターから、突如怒声が聞こえた。
「圭一! 沙都子! 逃げろ!」
 すぐさま、離れていた兵士達が駆け寄り、エレベーターの中に向かって発砲する。
「いや、全員!」
 見えない敵達の、悪意と意が、銃声と共にばら撒かれる。
「圭一さん! 逃げますわよ!」
「……あ、あ、ああ!」
 見えない、敵。それが、回避不能の最大のトラップだった。
 まるで土の中に巣を作る蜘蛛の真上にいる虫のように、愕然とした気分で、圭一はそこから逃げようと懸命に足を動かす。
 逃げ場のないような、絶望的な逃走劇――、そんな映画があったようなことを、圭一は恐怖と共に思い出していた。

59 :
新年とっくに明けまして投下しました。
……遅い。
しかもまだ終わらなくて本編氏にタッチ交代できない。
なんてこったい。

60 :
乙です
エレベーターネタなつかすぃぃぃぃ

61 :
元本編氏、乙ですー
今のうちに書きためておくので、大丈夫ですよ。
>>57
……仰る通りです、はい。
オリスクに触ったのが久しぶりだから忘れてた、って言うのもあります。
あの画像をどうやら誤解しているみたいなので、もう一度サンプル下さると助かります。

62 :
>>61
えーっと、遅レスでスマンです
申し訳ないですが既にサンプルとか無いです
改めて作れないことも無いですが手に余裕がないので
直に取り掛かれません
なので今後の展開を考えるならselect命令に戻すとか
自分で理解できる構造に組み直したほうが早いかもしれません

63 :
 100メートル走の記録に、これほど不満を持ったことは無いと、圭一は思った。
 走っても走っても、その先にゴールなんて見えない。――しかし、止まったら、命を奪われる。
 顔も、姿も見えない――だが確実にそこにある、意に。
「あうっ!」
 沙都子が悲鳴を上げる。敵の放った銃弾が、沙都子の持っていた探知機を弾き飛ばした。
「さ、沙都子?!」
 圭一が沙都子の手を見た。傷は――無い。
「だ、大丈夫ですわ! それよりも今は!」
 ――そうだ。
 逃げなければ。
「逃げろ!」
 沙都子を案じた圭一を庇うように、兵士が前に立つ。見えない敵に向かって闇雲に銃弾を浴びせる。――が。
 銃声が聞こえた。
 いや、それは自分たちの頭の上で、耳騒しく、ばん、ばんと言っている――音ではなかった。
 もっと自分の頭の近く――その、すぐ、そばで、何か柔らかなものが、刺されて、穿たれたような。
 ぐっ――。
 そう、人の呻き声を聞いた。
 圭一が見上げる。彼らを守るべく盾になった兵士の両足が、真っ赤に染まっている。
 そのまま、彼は倒れた。
 錆臭い匂いを間近に嗅いで、圭一は自分が呼吸が上手く出来ていないことに、気付く。
 呼吸だけじゃない。
 心臓の鼓動もおかしい。
 血液が逆流している気がする。
 瞳孔も変だ。前がよく見えない。
 ――おかしい。
 変だ。
 なんだよ、これ。
 ――嫌だ。酷く、嫌だ。
 死ぬのは――――――嫌だ。
「圭一さん!」
 はっと、圭一は我に返る。沙都子が圭一の手を無理やり引っ張って、前に連れて行こうとしている。
「さ、沙都子?」
「しっかりしてくださいませ圭一さん! 今、私達にできることはなんですの!? 考えてくださいませ!」
 できること。――それは、逃げることだ。
 生き延びることだ。
 それだけしか、できない。
 しかし。
 撃鉄の、上がる音がした。
 圭一達のすぐ、傍で。
 見えない誰かが。圭一達に向けて。
 でも見えなくとも、その悪意は。
 確かに――嗤っていたのだと、圭一は感じた。
「がああっ!」
 不意に、両足を撃たれた兵士が、銃を乱射する。圭一も感じた悪意の方向へ向けて、圭一と沙都子を守るため、動かない足とおびただしい出血を意に介さず、兵士は持てる力全てを両腕に込め、銃を撃った。
「逃げろぉ! お前たちぃーー!」
 銃を撃ちながら、なおも少年達を逃がそうと、もがく。
「け、圭一さん!」
 沙都子が、叫ぶ。
「あ、ああ! 逃げるぞ沙都子!」
 なりふり構わず、少年たちは逃げる。自分の首に触れかかった死神の鎌から逃れるべく。
 そうして、また走り出した少年達の背後で、銃声が、止んだ。
 血まみれの兵士が、両腕を撃ち抜かれ、今度こそ命の糸が切れたように、崩れ落ちる。
 だが、圭一達は、幸か、不幸か――その光景を見ることは無かった。
 駆け寄った赤坂が、二人の腕を掴み、そのまま血まみれの通路から二人を引き離す。
 そのまま、どう走ったのか――、二人が心臓の鼓動が張り裂けそうになってしゃがんだころには。
 居住区の一室で、見えない敵に背中が震々と震えっぱなしで。
「おいガキども! 取引だ! こいつらされたくなかったらさっさと出て来い!」
 血まみれの兵士――彼らを守るため身を挺した兵士達が、通路の中央で折り重なるように倒れていた。

64 :
ちょっとずつ投下。
まとまって出せないので、小出し小出しで。
新聞の小説ってのも、大変だろうなぁと要らぬ心配をしてみるw

65 :
 ――最悪だと、入江は思った。
 敵の罠に、自分達がまんまと嵌ってしまったこともだが――それ以上に、入江が危惧していた事態が起きてしまったからだ。
 死の恐怖と共に引き起こされる、致命的な病――雛見沢症候群。それが今、少年達を蝕んでいるということに。
 必死になって逃げ、敵の目から逃れられたかも分からないこの状況――居住区の一室で、ひたすら縮まって震えている圭一の様子が、彼に雛見沢症候群――5段階の症状で分類し、L3段階の中期症状――が現れていた。
 過度の不安から与えられた精神へのダメージが、深刻な状態まで飛躍することが、雛見沢症候群の致命的な毒だ。
 それが、あの一瞬――目の前で、既知の人間がされかけた光景――で、一気に発症レベルまで引き上げられたのだ。
 死の恐怖。
 入江も過去の雛見沢症候群の研究結果から、発症要因として無視できないものであると知っていたはずなのに。
 これから向かう場所は、戦場そのものであるという認識が薄かったのか。
 それとも、まるで映画を見るような気軽さでこれからの結末を見物しに来たとでもいうのか。
 ――私は、馬鹿だ。
 悔やんでも始まらないことではあるが――入江は悔やまずには、いられなかった。
「しっかりしてくださいませ圭一さん! この状況をなんとかしないと、わたくし達も、あの人達も危ないですわ!」
 沙都子が動揺の収まらない圭一を鼓舞する。この中では雛見沢症候群が発症する危険性が一番高い彼女が気丈に周囲を気遣っている。入江の見立てでも、沙都子に発症の形跡は見られなかった。
「沙都子ちゃん、こんな時ですが、今日は注射は……?」
 入江が沙都子に質問する。沙都子は入江の言葉の真意が汲み取れないまでも、ここに来る前に、注射を打ったことを述べた。
「あれが最後の一本でしたけど……持ち歩いて壊すと大変ですし」
 入江は内心で、沙都子の行動に納得した。雛見沢症候群の治療薬であるC120を投与して間もないからこそ、あのような危機的な状況でも沙都子は平常心を保てたのだと。
 もし彼女が投薬を行っていなかったら、圭一以上の発症を引き起こしていたかもしれない。
(やはり、C120を早急に確保しないと……)
 入江は、医務室で薬品を確保できなかったことを悔やんだ。そして、今になって思い返す――診療所にも、C120の瓶が一本も無かったことを。
 誰かが、薬品を持ち去ったのだ。それは雛見沢症候群のことを知っている。そして、その治療薬の価値を。
 一体、誰が。そう考えた時、一番最初に思い浮かんだのが。
(……鷹野さんか)
 鷹野三四。
 彼女なら、入江以外にあの治療薬の価値を知っている。彼女が診療所のC120を根こそぎ持ち去ったのだとしたら――納得できる。
(しかし、一体、何のために?)
 そう、鷹野がC120を持ち去る動機が不明だ。そこだけがすっぽり抜け落ちてしまっている。
 ただの治療薬にしか過ぎないあの薬を持ち去る理由はなんなのか。
 入江はその答えに気がつかない。
 気が、つけない。
 そして、時間は入江に長考を許さなかった。

66 :
「……取引、か」
 赤坂が呟く。敵は言った。――取引、だと。
「全く割りに合わない取引ですね。向こうの取引材料はこちらの味方の命。対するこっちの取引材料は自分達の命です。出て行ったらされると分かっていて、出て行くと思っているのでしょうか?」
 入江が相手の言葉に苦言を呈す。確かに、取引にすらならない――脅迫だ。
 出て行けばこちらがされる。
 しかし行かなければあの二人が死ぬ。
 どちらか選べの選択肢。どちらをとっても地獄行き。
「だけど……見捨てられるか?」
 赤坂が言った。それは、この場にいる全員に対して問いかけねばならない言葉だった。
「見捨てる……? 俺達が、自分を盾にしてまで守ってくれた人達を、見捨てていいのかよ!」
 動揺を振り払い、圭一が激昂する。それは人として、当然の感情だ。
 しかし、激昂は時に判断を鈍らせる。
 それを赤坂は知っている。
「私だってそうだよ。見捨てられない。見捨てられるわけがない。しかし……相手は姿が見えない。しかも複数人だ。闇雲に戦っても、撃ちされるのは目に見えている」
「だからって!」
「圭一君落ち着いてください! 感情に任せては、判断を誤ります」
 入江にそう、諭されて、圭一はしぶしぶ座る。その顔からは、不安は消えているようだったが、入江は注意深く様子を見た。
「敵は私達の想像を超えた技術を持っている。それを封じない限り、こちらからは手が出せない」
 赤坂の分析は正しい。
「そして私達には、時間的な猶予もありません。相手は私達にすぐにでも出てくることを要求しています。それに、撃たれた彼らも、あと数分以内に手当てしなければ、失血死の可能性も……」
 言いかけて、入江はハッとした。これ以上、子供達を不安にさせることを口に出してはいけないのに。
「……な、なんだよ監督! それじゃなおさらすぐにでも助けに行かなきゃならないじゃねぇか!」
 圭一が今すぐにでも飛び出さんばかりの勢いになる。
「け、圭一君、落ち着いて……」
「落ち着いていられるかよ! すぐにでも助けなきゃ――」
 圭一の肩を入江が掴んで止める。しかし圭一は弾丸のように外に飛び出そうとしている。
 その圭一の焦りを打ち消したのは。
「要は見えればいいのでしょう?」
 ――沙都子が、まるで天啓のように、言った。
「まったく、圭一さんも少しは落ち着いてくださいませ。あと数分以内にあの嫌味な連中を黙らせて、監督があの人達を手当てすれば万事解決でございましょう? だったら――方法はありますわ」
 無邪気な子供の笑みは、この場にいた男達を唖然とさせる。
「ほ、本当か沙都子?!」
「ええ。ただ、赤坂さんには危険な目に遭ってもらいますけど……それでよろしいかしら?」
「勿論だ。見えるなら、拳が当てられる。それなら――危険でもやるよ」
「決まり、ですわね。さあ圭一さん、準備いたしましょう。私達を、部活の部員を舐めたことを――そして私達の仲間を痛めつけたことを」
 存分に後悔してもらいますわ。と、沙都子が言ったのだった。

67 :
ちょこっと投下。
やっと反撃開始。
ペース配分、考え無しでゴメンネ。

68 :
いやっほう!これぞ部活!
本作読んでる時と同じような鳥肌たったよw

69 :
「出てきますかね?」
 見えない男の声が、通路に響く。
「出てこなくともいい。こちらからいぶり出すまでだ」
 別の声が、次の行動を口に出す。
 やはりこの男達は――姿が見えないから、声で判断しただけだが――圭一達を生かすつもりなど毛頭無いのだ。
「兎狩りですか。そりゃ面白い」
 くくく、と低く嗤う。
「山猫が山狗に取って代わって兎を噛み千切る……。前の仕事に比べれば遣り甲斐がありますんね」
 雛見沢弁を口に出した男の声が弾む。
 この男達は――、元は小此木率いる山狗部隊の精鋭達だった。
 しかし、愛国者が送り込んだ部隊に仕事を奪われ、本来の任務が行えず、鬱憤が溜まっていたのだが――、オセロットと小此木が共闘体制に入ったことにより、彼らはオセロットの傘下――“山猫部隊”に組み込まれたのだった。
 そして、彼らは驚くべき兵器を与えられた。
 “ステルス迷彩”――人間の肉眼から、己の姿を消し去る、魔法の装置。
 敵に姿を捉えられないことがどれほど優位か。そして敵の姿が見えないことがどれほど脅威か。彼らは知っている。
 この男達は、戦争の経験者であり、また戮の識者でもある。
 秘密裏に海外の紛争地域に侵入し、人とは、戦闘とはどのようなものかを肌で知ってきた者達だ。
 そう、少年達が知る、彼と同じ――戦争という環境に適応して生きる“グリーンカラー”なのだ。
「……これ以上待っても無駄だ。奴らは逃げたようだ……賢明だな」
 拳銃のスライドが引き絞られる。敵は少年達が負傷した兵士を置いて逃げたのだと判断した。
 戦争を経験した者なら、その判断は当然だと思うだろう。
 負傷者は荷物にもならない。不要物そのものなのだから。
 銃口を兵士の頭に向ける。
 瀕死の兵士達は呻くこともできずに、最後を迎えようとしていた。
「子供の戯言に付き合ったことを恨め。……まあ、裏切者にはふさわしい末期だな」
 そして引き金に力を込め。
「待てよ!」
 前方から、叫ぶ声がした。男達がそちらを見ると――、逃げたと思っていた少年――前原圭一が、そこに立っていた。
 その顔は走ってきたからか、真っ赤になっていた。
 息も乱れている。
 転んで怪我をしたのか――右足首には、包帯が巻かれていた。
「取引だ! その人達を放せ!」
 圭一が、再び叫んだ。
 圭一の行動に驚いたのか、見えない場所から、ほう、と声が漏れた。
「おいガキ、お前一人か? 他の奴らはどうした!」
 別な方向から、怒鳴り声が響く。
「途中ではぐれたからな……わかんねえよ。俺はお前らが出て来いと言ったから出てきた! さあ、その人達を放せ!」
 突然の破裂音。そして圭一の足元の床が、突然割れて弾けた。
 拳銃射撃による威嚇を、敵の一人が行った。
「いきがってんじゃねえぞガキ。俺達は、お前を蜂の巣にだってできるんだ。人にものを言う態度が違うだろうが!」
 男のがなり声が圭一に浴びせられる。しかし圭一は、銃声に一瞬たじろぎはしたものの、すぐに余裕ぶった表情を作った。
「へっ……姿が見えないからどんな精鋭部隊かと思ったけどよ……脅し文句が町のゴロツキと同じじゃお笑い草だぜ」
「いうじゃねえかよガキ……、鉛弾一発食らってみるか?」
 再び弾を装填する音が聞こえたが、別な方向から、待て、と声がかかる。
「命知らずなガキだな……。安心しろ、俺達はお前を拘束して連れて来いと言われている。お前を傷つけることはしない。大人しく投降しろ」
「投降……? その人達を助けてくれたら応じる。その人達を手当させてくれ」
 圭一の取引は、兵士達の命を助ける代わりに、自分が人質になろうというものだった。

70 :
だが。
「駄目だ。こいつらは裏切者だ。生かしておくわけにはいかない」
「何だと?! お前ら、この人達を助けたいなら出て来いって言ったじゃねぇか!」
 圭一の声が、怒りを露にする。
「ああ〜、そうだな。確かにさなかったぜ。お前が出てくるまではな」
 愉快そうに不快な笑い声が響く。
「て、てめえら……」
「これ以上ガキの戯言に付き合う気はない。……拘束しろ」
 見えない男達の手が圭一に近づく。
「待て」
 突然、男達のリーダー格の声が、圭一に近づいた手を止める。
「何を企んでいる?」
 圭一は声がした方向をただ睨むばかりだったが。
「それは、どういうことです?」
 別の声が、理解できずに問う。
「このガキが、何の考えも無く、ただでここに来るような奴か?」
 敵の間に緊張の糸が張る。子供と油断していた意識は、瞬時に隙間無く周囲を見渡す。
「このガキが一人でここに来た……、と、思うことこそが罠だ。このガキは……囮だよ。本命は、そこだ!」
 銃声が通路を埋めた。
 破裂音、摩擦音、耳障りな破壊音がひとしきり聞こえた後、硝煙臭が残った向こうに、見えたものがあった。
 圭一達の下に人知れず近づいていた――ダンボール箱。
 それは蜂の巣のように無数に穴が空き、その底部からは、赤い染みが広がっていた。
「あ、……ああ!」
 圭一が愕然とした表情になる。
「このガキが俺達の注意を引き、その間に仲間が近づこうとしていたんだろうが……所詮、子供だましのトリックだ」
 犬死だな、と声が言った。
「な、なんてことをしやがる! お前ら、なんでそんな簡単に人をせるんだよ!」
「ああ? 誰にもの言ってんだよガキ。俺たちはなあ、人すのが仕事なんだよ! プロなんだ! そんな俺達に楯突いたお前が悪いんだろうが!」
「プロってなんだ?! 人すのにプロもアマもあるかよ! 人をすってのは、誰かが絶対悲しむことだろ! お前ら、そんなことも考えたことないのかよ!」
 圭一の叫びに、返ってきたのは――笑い声。
「だからガキなんだよ。いいか、世の中は死ぬ人間がいる。す人間とされる人間がいるんだ。さなかったら死ぬんだよ! ここはそういうところで、俺達はそういう人間なんだ!」
「そこまでにしておけ」
 冷静な声が諌めた。
「ガキを拘束。残りは拘束ないし射だ。予定通りに運べ」
 圭一の腕を誰かが再び掴もうと動いた。
 その時、圭一の表情が――、変わった。
「……人すのが、あんた達の仕事なんだな」
「ああ? だからそう言ってんじゃ――」
「す人間とされる人間がいる――そうだったよな? どんな人でもして、そうじゃなかったら死ぬんだろ。ここはそういうところで、あんた達はそういう人間なんだろ?」
 不気味なほど無表情で、口先だけの少年とは思えない雰囲気が、そこにあった。
「な、何言ってやがる……?」
「ここがそういうところだから、あんた達は仕方なくそうしているのかと思ったけど、……そうじゃねえよな。あんた達がそうしているから、ここはそういう場所になっちまってるんだよな」
 だから。
「たった今から――、ここはそういう場所じゃなくなる」
「何ぃ?」
 見えない男達の間に――僅かな、動揺。
「誰も死ななくて、誰もしあわなくていいように、たった今から、俺達がここの仕組みを変えてやるって言ってんだよ!」
 突然。
 あの――穴だらけで、赤色に染まったダンボール箱が、動いた。

71 :
その動きは速く、撃たれた人間が出せる速度では、到底ない。
「何だと?!」
「撃てえ!」
 再び、銃撃がダンボールに向かう。その勢いに、被されていたダンボールが、剥がれた。
 その中にいたのは――いや、その中には、入っていただけだった。
 荷物を運ぶ台車。その下にはラジコンカーが括りつけられている。台車の上に乗っているのは、幾層にも重なったバケツと――、その前に積まれていたのは、ホールトマトの缶詰。
 さっきの赤い液体の正体が、これだ。
 そして、台車は勢い良く男達のいるであろう方向へ突っ込む。
 その台車の上に置かれている、バケツの中に詰まっていたのは。
「スタングレネード?!」
 信管が起動し、大量の閃光が敵の視界を遮ぎった。
 その瞬間、圭一は大きく右足を上げ、床を踏んだ。
 その場所は、沙都子が仕掛けたトラップがあった場所。
 スネア・トラップの一種だったが――踏んだ者を一瞬でフロアのはるか彼方まで引っ張っていくものだった。
 圭一は、ワイヤーで足を傷つけないように包帯で保護した右足でトラップを起動させ、倒れていた兵士達もろとも危険区域から脱出した。
 そして、その圭一が去った場所に、引っ張られて運び込まれたものがあった。
 圭一の腰に括りつけられていた釣り糸と、その糸がつながったロープに結ばれていた――大量の小麦粉。
 それが、圭一が移動したと同時に見えない男達のところまで引っ張られ、大量の小麦粉をあたりにぶちまけた。
 この事実と、この危険性に最もいち早く気付いた男は、エレベーターに乗って下に逃げようと翻ったが――、頭蓋が割れるような衝撃を受けて、意識が途絶えた。
 白い世界が、見えなかったはずの男たちを、浮かびあがらせていたのだった。
「な、なんだとぉ!?」
「いや、まったく――いや、ようやくか。ようやくこれで――君達を殴り飛ばせる」
 あの嘲笑で圭一をあざ笑った男は、戦うこともできず、赤坂の拳を受けた。
「人をすプロか。そんなもんになれて幸せなのか、お前ら」
「な……なんだとぉ?! 手前、知ったような口聞いてんじゃねぇ! 俺達はなぁ、その辺の人も撃ったことがねえ奴らとは違うんだ!」
「そうか、そりゃよかったな」
 容赦の無い。そして無駄の無い赤坂の一撃は、プロを自覚していた男達を、その誇りごと打ち砕く。
「――給料、幾らだ」
 何気ないその言葉を、男達は顔面を打ち抜かれた痛みと共に、永遠に覚えることになる。

72 :
投下ー。
もうちょっとだけ続くんじゃ。

73 :
名言ktkr

74 :
よだれあふれまくりんぐな展開にwktk
大好きです

75 :
赤坂の拳は、まさに一撃必だった。
 打ち込んだ拳は五発。
 倒れた者も五人。
 初弾から躊躇無く打ち込んだその拳は、まさに無音の徹鋼弾だと形容するにふさわしいものだ。
 しかし、赤坂は知っている。
 この戦いは、決して自分一人では勝てないものだったことを。
 この戦いで、自分が一番危険な場所にいたことは事実だと、赤坂は自覚している。
 小麦粉が舞うこの白い世界は、確かに想像を遥かに超えた兵器を無力にしたが、その場所は一歩間違えば火の海になっていてもおかしくない場所だったか
らだ。
 敵の誰かが、命を顧みず――または半ば自棄的に銃を撃っていたら――粉塵爆発を起こしていた。それを相手も知っていた。
 撃ったら自分たちも炎に飲まれると、理解していたからだ。
 その結果、相手は何も出来ず、赤坂の拳を喰らってくれたのだが。
「ここまで計算の上か、あの子は」
 赤坂はこの作戦を立案した、北条沙都子に、頼もしさと同時に――薄く、恐怖心を覚えた。
「どうやら、終わりましたわね」
 沙都子が粉だらけになった通路にひょっこりと姿を出す。その手には居住区で拝借したラジコンカーのリモコンが握られていた。
 相手の絶対的優位――その自尊心をくすぐることから、相手の慢心を誘う。沙都子が立てた作戦は、そこから始まった。
 姿が見えない相手が、何故声を発して取引などと言ったか。
 それは、自分達が相手より上回っていると思っているからに他ならない。
 なら、そこを存分に――刺激してやればいい。
 圭一が味方の兵士達を助けるため、そして相手と交渉という名の油断を誘うため――敵の前に立った。
 そして相手と会話しながら、ある程度、相手の位置を赤坂に知らせる。
 相手から声を出させれば、どのあたりにいるか、おおよそ見当がついた。
 そして圭一以外に仲間が来ていると思わせるために、細工した台車にダンボールを被せたものを用意し、沙都子がそれをそろそろと敵に向かわせる。
 ホールトマトを入れていたのも、相手が撃ってくることを予想していたからだ。
 そして、後は――敵がまんまと罠にはまってくれるのを待っていた。
 その結果は……言うまでもないだろう。
「へへーっ! どうだ沙都子! 俺の演技もなかなかだったろ!」
 圭一がフロアの随分向こうから戻ってきた。今ごろは向こうで、入江が兵士達の治療を行っているだろう。
「どこがですの? あのダンボールが撃たれたときのリアクションなんか、本当、大根役者でしてよ」
 沙都子の酷評に圭一のテンションが下がる。
「ひでえや沙都子、俺結構頑張ったのによ」
「ま、それでもこうやって敵も倒すことができましたし、結果オーライですわ」
 子供達の間に笑顔が戻った。赤坂は分からなかったが、圭一は雛見沢症候群の発症が沈静化していたのだ。
「おっと……、そうだ」
 圭一が気絶した兵士の体をまさぐる。そうやって取り出したのは。

76 :
「へへ、多分、これだぜ」
 そう言って、沙都子と赤坂に、奇妙な形の装置を見せた。
「何ですの圭一さん、その機械は?」
 沙都子の質問に答える代わりに、圭一がその装置のスイッチらしきところに指をあてる。
「この装置が、多分、こいつらが使っていた透明人間になれる機械だぜ! だからこうやってスイッチを押せば――」
 圭一がスイッチを押す。
 ……しかし、何も起こらない。
「あ、あれ? おっかしいな……」
 かちかちとスイッチを何度も押すが、機械は全く作動しない。
「壊れたんじゃありませんの?」
「えー、マジかよー。せっかくいいもの手に入れたと思ったのによー」
 圭一が、がくっ、と肩を落とした。
「まあ、壊れたなら仕方ありませんわね」
「くっそー、まだだ! 5台もあるんだから1台くらい……」
 圭一は何度も装置を試す。取替えながら全て試すが……作動はしなかった。
「ち、ちきしょー!」
「よくよく考えたら、圭一さんにこんな機械持たせたほうが恐ろしいことになりそうな気がしてきましたわ……壊れて正解ですわね」
 沙都子は直感でそう感じていたが、圭一はこの機械があれば、体育の前の着替えの時、女子だらけの教室の中に一人残ってもバレないぞと思っていた。
 いや、ああいうとこってさ、男にとっちゃ聖域だろ? いっぺんくらい見てみたいじゃん? 近くにあって遠い桃源郷ってすげえ浪漫じゃね?
「圭一さん……口にでてますわよ」
 沙都子の視線が、凄い痛かった。
「いよいよだな」
 圭一が武者震いする膝を抑えながら、エレベーターの振動に耐える。
 ここにいるのは圭一、沙都子と赤坂、そして入江の4人。
 負傷した兵士は傷が深く、居住区で待機することとなった。
「敵の中枢に入ることになる。これまでよりも警備は厳重だろう。皆、気を引き締めていこう」
 赤坂が注意を促す。
「大丈夫さ赤坂さん。もう俺達は油断しない。もう仲間を傷つけさせない。どんなことがあっても、俺達は負けないぜ!」
「圭一さんの言うとおりですわ。わたくし達はチームですもの。全員で困難に立ち向かえば、負けることなんて決してありませんわ」
 少年達の言葉に、赤坂も、入江も心に勇気が湧いてくるの感じた。
 どこまでも続く奈落への蜘蛛の糸にぶら下がった繭のように、エレベーターは静かに降りていく。
 この勇気が蝋燭の灯火のように頼りなくなるまで。

77 :
以上投下。
ここまででエレベーター戦終了。
蛇足TIPSを今後は予定。

78 :
おつおつです
> 初弾から躊躇無く打ち込んだその拳は、まさに無音の徹鋼弾だと形容するにふさわしいものだ。
徹甲弾 ですな

79 :
TIPS「魔法の限界」
 ――通信機のコール音が響く。
『こちらスネーク』
『よう、無事かスネーク?』
『……ディープスロート、お前か』
 俺の協力者である、謎の人物――ディープスロートからの通信だった。
『スネーク、今はどのあたりだ?』
『研究区の中層だ。もうすぐ中央付近に着く』
『そうか……スネーク、エレベーターに寄る用事はあるか?』
『急になんだ? エレベーターは動かないはずだ』
『動くようになったんだよ』
『本当か?』
『ああ。……そのエレベーターの床下に配電盤があるんだが、そこに武器を多少隠しておいた。よかったら使ってくれ』
『そりゃ助かる。……しかし、どうして急にエレベーターが動いたんだ?』
 当然の疑問だった。
『簡単な話さ……。中に入っていた奴が止めていたのさ』
『中に……? まさか?』
『ああ、ステルスだよ』
 ステルス迷彩だと?
『ステルス迷彩か……厄介だな』
『どうしたスネーク。まさか伝説の兵士があんな子供騙しを怖がるのか?』
『サーモグラフでもあれば別だが……肉眼では捉えられないというのは一筋縄ではいかない』
『おいおい、しっかりしてくれよスネーク。ステルスなんてこの中じゃ既存の兵器だぜ』
『なんだと? 他にもステルス迷彩を装備した兵士がいるというのか?』
『そうだな……まあ、ざっと300基』
『なっ……。300だと』
 300人ものステルス兵士がいるというのか?!
『心配するなスネーク。もうステルスは使い物になりゃしない』
『どういうことだ?』
『ステルス迷彩は俺が壊しておいたのさ……まあ持ち出された分もあったが、いま残りの5基も回収した。もうステルスを使える奴はいないはずだ』
『壊しただと……300基も、お前一人でか?』
『なに、手榴弾を投げるより簡単な仕事だ。……ボタン一つで済んだからな』
『ますます分からん。一体どうやった?』
『まあ待て。少し説明させろよ。……今のステルス迷彩は高性能過ぎるんだ。ステルスは本来、機械の中心に特殊な電磁場を発生させ光を屈折させる。
その電磁場は同じような電磁場があった場合、お互いに干渉しあってステルス効果を打ち消してしまうものだったんだがな。その弱点を克服したんだよ』
『つまり、さらに高性能になったと?』
『ああ、そのとおりだ。だが、いつの時代も便利になった分だけ厄介な問題を抱えることになるんだ』
『それは?』
『まずは……そうだな、単純にコストの問題……エネルギー問題だな。高性能になった分、バッテリーも消費するんだ。だから、ステルスは使わないものは全部充電することになっている』
『単純に使える時間が限られているということか』
『とんでもない。ステルスの稼働時間はフル活用でも24時間……1日はもつ』
『なに? それじゃ、性能が上がってるじゃないか』
『だからそう言っているだろう』
『ステルス自体の性能もアップし、使用時間も伸びたなら、弱点などないんじゃないか?』
『いやいや、スネーク。問題はここからだ。いいか? 単純に性能がアップしたからこそ、それによる弊害も生まれたんだよ』

80 :
『何だって?』
『ステルスの効果は電磁波により生み出される……が、これは今までは複数の装置が近くにあった場合、お互い干渉しあって打ち消してしまうんだ。
そもそもステルスの効果を生み出す電磁波は力場を形成する力が弱い。ちょっとした障害物にぶつかっただけで電磁波が消失するものだったんだ』
 俺はかつて使っていたステルス装置の効果を思い出す。確かに人にぶつかっただけで消えてしまうものだったはずだ。
『しかし、その弱点は克服したと言ったな』
『そうさ。いまここで使われている迷彩は、単純に効果を発揮したら、ちょっとした障害物くらいじゃ力場を邪魔されることなんか無くなった。それに、複数人が同時に使用しても電磁波の位相を自動的にチューンするんだ』
『つまり、電磁波同士の干渉が無い』
『ああ、そうだ。……だが、それこそがこの最新式のステルスの弱点でね。同時に複数の電磁波を感知すれば自動的に位相を変え、区別する。それはつまり、別な形でお互いに干渉しているといえる。
……さて、ここで問題だスネーク。もし、密集するほど近い場所で同時に300基ものステルス迷彩が起動し、さらにその全てがお互いの位相を変えるよう演算を繰り返したとしたら――どうなると思う?』
『お前、まさか』
『そういうことだスネーク。パソコンにとって円周率の無限の計算ほどCPUに負担をかけるものは無い。答えのない計算を延々と行った挙句――高性能な兵器は全部ショートして使い物にならなくなったのさ』
『とんでもないことを考える奴だ』
『いや、これは俺のアイディアじゃない……俺の“娘”さ』
『桜花……彼女か』
『ま、俺個人じゃステルス迷彩を管理するシステムにハッキングすることはできなかったからな。そして、残りのこの5基を壊せば、これでステルスは全部無くなる』
『壊すのか? 使えそうだが』
『こいつは銃と違ってIDチップが組み込まれているものとは違う。作成された段階でID登録され、こいつのID変更は敵の中枢にあるネットワークに介入しないと無理だ。どうやってもこいつをすぐ使えるようにはできないのさ』
『そいつは残念だ』
『機械は決して万能じゃない。こんなものがなくても、あんたなら何とかするだろう。期待しているぜ、スネーク』
『わかった』
 彼との通信を切り、俺は先に向かう。
 だが、俺は姿が見えない敵以上の脅威に、もうすぐ出会うことになることを。
 どこかで――感づいていたのかもしれない。

81 :
以上TIPSまで投下終了。あとは本編氏にタッチ交代。
そして>78のとおり、また誤字だよ。いつまで経っても直んないね。ごめんね。
脳内変換よろしくです。

82 :
 魅音の持っている無線機が音を立てた。
『こちら“つくつくぼうし”、聞こえるか?』
『はいはーい、こちら“ひぐらし”。聞こえてるよー』
 無線機から聞こえてきた圭一の声に対し、魅音は明るく応じる。
『今、エレベーターの中にいる。もう少しで例の広間に着くと思うぜ』
『やっぱり圭ちゃん達が一番乗りか。じゃあどこかに隠れつつ待っててね――って、乗るまでに結構時間かかってない?』
 魅音の疑問に対し、圭一の声のトーンが若干下がる。
『……待ち伏せされてたんだ。エレベーターの中に、5人も……』
『あちゃー……。でも無事で何よりだよ』
 “無事”という言葉に対し、圭一は素直に喜べないようだった。
『俺と沙都子、監督と赤坂さんは大丈夫だったけどさ……、仲間になってくれた兵士の人達が、深手を負っちまった』
 「相手は戦闘のプロだからね」って言う魅音の言葉を実感したさ、と圭一が言う。
『俺も迂闊だったかもしれないけど、魅音達も気をつけた方がいいぜ』
『おじさん達なら大丈夫さ。圭ちゃんの心配には及ばないねぇ』
『いや、そうじゃなくてさ。待ち伏せしてた敵の兵士が、その――透明人間だったんだ』
『はぁ? 何それ?』
 予想外の答えに、魅音は素っ頓狂な声をあげた。
『信じられないかもしれないけど、本当だったんだ! 沙都子のトラップで小麦粉をぶちまけて、何とか見えるようになったから勝てたけど――』
 ――それが無かったら危なかった、と。
 うーむ、と魅音は難しい表情をした。
『その、透明になれる仕組みってのは何さ? 透明マントでも羽織ってるの?』
『いや、何かよく分からない装置みたいなのが、そいつらの体に付いてた。壊れちゃったみたいだから再利用は出来ないけど』
『うーん……厄介だねえ。赤外線ゴーグルがあれば見えそうだけど、持ってないから探すしか無いかぁ……』
 とにかく教えてくれてありがとう、気をつけるね、と魅音は礼を言う。
 ――だが、もうこの施設にあるステルス迷彩は全て無効になった事を、彼女は知らない。
『圭ちゃんも元気出しなよ。確実に前に進んでいるんだから、安心しなって!』
『大丈夫、もうそんなに落ち込んでねーよ』
『本当? 内心びびってるんじゃないの?』
『びびって無いさ! お前こそ「怖いよー助けてー」とか言って泣きついて来るなよ』
 それだけ軽口が叩けるなら大丈夫だねぇ、と魅音は笑った。
 後で会おう、と約束し、無線は切れた。

83 :
「おじさん達も急ごっか。早くスネークに会いに行こう」
 魅音は振り返って、私達にそう言った。
「でも、『急いては事をし損じる』って言うからね。気をつけよう」
 富竹がそんな魅音を軽く諫めた。……私から見れば、富竹は少し慎重すぎる気がする。
「ボク達ならきっと大丈夫なのですよ。魅ぃも富竹も、銃の扱いが上手いですし」
「そりゃそうさ! おじさんを舐めてもらっちゃ困るよ〜? ヘリの操縦だって出来るんだからねぇ!」
「いやぁ、魅音ちゃんは本当に凄いよ、あはは……」
 魅音が胸を張り、富竹はよく分からない笑いで誤魔化すのだった。
 さてと、と魅音が話題を切り替る。
「とにかく下に向かおうか。さっきの通信室の所で、結構時間取っちゃったしね」
 スネークと無線が通じた、あの部屋。
 敵の施設の設備からスネークに無線が通じるぐらいだから、もっと有効活用は出来ないものかと、魅音は徹底的に調べていた。
 けれど、他に得られる物は何も無かった。
 富竹も番犬部隊への連絡を試みていたが、やはり通じなかったみたいだ。
「集合は研究区中層の広間だったね。そこの階段からも近いみたいだ。進もうか」
 富竹が地図を見て、そう言った。
「よし。“ひぐらし”チームは順風満帆、このまま快調に突っ切るぞー!」
「ふぁいと、おー、なのです!」
 ――この時。私達はただの、無力な子供に過ぎないって事を。
 どこかで、忘れていてしまったのかもしれない。

84 :
以上です。
……風邪でぶっ倒れてました。インフルエンザじゃないのに38度の熱ってどうよ。
しかも寝ている時にL5を発症する夢を見ました。
ある程度書きためているのですが、しばらくは小出しにいきます。
>>62
こちらこそ亀レスで申し訳無いです。
自分で組み直すほどNスクを使いこなせていないので、
どうにか弄りつつ現状このままでいきます。
駄目そうでしたらselect命令にするかもしれません。助言ありがとうございました。

85 :
っと失礼。元本編氏乙&ありがとうございました!

86 :
本編氏乙。頑張ってくだされー。

87 :
「敵がいる!」
「制圧しろ!」
 発砲音が連続する。敵も勿論反撃をしてくる。
「くそっ! 裏切り者めっ!」
「応戦しろ!」
 悪意と敵意がぶつかりあい、渦を巻く。
 兵士達は前線で戦い、戦えない者は――後方で身を潜めているしか無い。
 レナと羽入が、そうだった。
「みんな、大丈夫でしょうか……」
「信じよう。きっと大丈夫だ、って」
 二人はただ物陰に隠れ、息を潜めていた。
 彼女達には、敵と戦うだけの力も武器も無い。
 前線に居ても足手まといになってしまうことを、本人達もよく自覚していた。
「撃て撃て!」
「グレネードだ!」
 その前線では、相変わらず戦いが繰り広げられている。
 後方に隠れている者は、そこから聞こえてくる声や音から戦況を想像するしか無い。
 怒号。悲鳴。銃声。爆発音。それらがいくつも重なり合う。
 しばらくすると、それらが止み、辺りは静まりかえった。
 やがて、足音が後方へと近づいてくる。
 少しだけ顔を覗かせた二人に、その人物は言った。
「クリアした。もう出て来ていいぞ」
 ジョニーはそう言うと、レナと羽入に安堵の顔が広がった。
 通路の先を見ると、敵だった兵士は投降し、拘束されていた。
「みんな無事なのですか?」
 羽入がジョニーに尋ねる。
「ああ……何とかな。ちょっと怪我した奴もいるけど」
 心配するな、とジョニーは言う。
 ――銃撃戦になった以上、ある程度の怪我は避けられない。
 血なまぐさい所はなるべく見せたくないと、ジョニーは思っているのだが、それも難しかった。
 ――だから、敵側の兵士が死んだ場合でも、その死体を隠してから子供達に合図を出すのだった。
 勿論、ジョニー達は積極的にしにかかるような事はしていない。
 しかし、手段を問わず“制圧”するのと、非傷武器が少ないのに傷つけずさずで制圧するのとは、後者の方がはるかに難しい。
 たった一人で、敵を傷つけずに潜入している「伝説の男」の凄さを、ジョニーは改めて実感していた。
「さっき連絡があった。“つくつくぼうし”が広間付近に到着したらしい。俺達も急ごう」
「広間はもう目と鼻の先なんですよね?」
 レナが言う。彼女達も、もう研究区へと潜入していた。
「ああ。この先を抜ければすぐだ。あと一息で皆と合流出来る」
「なら行きましょうです。スネークもきっと待っているのですよ」
「よし。……準備も出来たみたいだし、行くか」
 再び、“みんみんぜみ”は移動を始めた。
 その先にあるものは、希望なのだと、信じ切って――。

88 :
以上です。……また短いですが。
これで“ひぐらし”も“みんみんぜみ“も“つくつくぼうし”も移動完了です。
次か次の次ぐらいが山場になります。ノシ

89 :
わくてかしながら読んでます^^

90 :
 かつん、かつん、と一人分の足音が響く。
 ――ようやく、魅音が指定した“広間”らしき場所にたどり着いた。
 見た目的には一階と二階からなる構成になっていて、二階に当たる空間には何本かの空中通路が渡されていた。
 天井は高く、また吹き抜けとなっており、上からの見通しはかなり良い。
 勿論、数名の巡回兵がいた。
 下で下手に動くと兵士に見つかる。逆に上の吹き抜け部分なら、下から見つかる危険性は低くなる。
 ならば上に行こう。
 近くにあった階段を、足音と気配をしつつ上る。
 階段が終わるところにいた兵士のすぐ後ろまで迫り、M4を首筋に叩きつけた。
 兵士はぐうの音も出さずに倒れた。
 ……上に来たからと言っても見つからない保証は無い。
 慎重に空中通路に足を踏み入れる。すると、下の方からから複数の足音がした。
 先ほど手に入れたばかりのM4を構えつつ、振り返る。
 しかし、そこにいたのは、敵ではなかった。
「スネーク!!」
「お前ら……」
 予想よりはるかに早い合流に、驚きを隠せなかった。
 そこにあったのは、見慣れた顔ぶれ。なのに、どこか懐かしく感じた。
 下の広間には圭一、魅音、レナ、梨花、沙都子、羽入ら子供達と、入江、富竹、赤坂までもが揃っていた。
 圭一が説得して仲間に引きずり込んだという、山狗や兵士達の姿もある。
 皆、それぞれが、明確な意思を持って、こちらを見上げていた。
「やっと会えたね、スネーク」
 魅音の声が朗々と響く。
「……一体、何しに来たんだ」
 予想はしていたし、分かっていたつもりだったが、聞かずにはいられなかった。
「決まってるだろ、スネーク」
 圭一が、歯を見せて笑う。
「あんたを、助けに来たんだ!!」

91 :
 
「それは――、どうかな?」
 唐突に、不気味な、しかししわがれた声が響いた。
 その声に、スネークが咄嗟に反応した。
「みんな逃げろ!」
「いや! 誰も動くな!」
 多数の人間の足音。
 一階にいる圭一達は、背後も前も、完全に兵士達の壁で、文字通り四方八方が塞がれた。
 銃を突きつけられ、彼らの中から困惑とも悲鳴ともつかない声があがる。
 そのどよめきやざわめきが、しん、と静まる。
 緊張が広がる空間が静寂に包まれた後で。
 ひとりの人物が、舞台に姿を現した。
 スネークがいる通路のもう一本向こう側に、彼はいた。
 靴に付いている拍車の音を鳴らしながら、その人物は、通路の中央へと移動する。
 一階の状況には見向きもせず、視線をスネークの方に向けた。
 彼とスネークの、目が合った。

「久しぶりだな。ソリッド・スネーク」

 その人物は――、紛れもなく、リボルバー・オセロットだった。

92 :
以上です。
まだまだ続きます。ノシ

93 :
乙です
ついに来たかオセロット

94 :
メタルギアそのものは未プレイだけど楽しみだ

95 :
 鬼ヶ淵沼の側にある地下施設。
 雛見沢には不釣り合いなほど巨大なその施設の中心部。
 その広間には――完全に包囲された“侵入者達”と、圧倒的に優位な兵士達がいた。
 そして、今、この場の状況全てを掌握している人物が一人。彼は空中通路から全てを見下ろしていた。
「……残念だったな。お前達の行動は全て見通していた」
 彼――リボルバー・オセロットは表情を変えずに告げる。
「オセロット……!!」
 彼に一番近いところにいる蛇は、してやられたとばかりに歯ぎしりをした。
 一瞬のうちに、彼を含めて助けに来たはずの子供達も、危機に陥ってしまったのだ。
 悔しいはずが、無かった。
 だが、このとき、スネークよりも悔しさを感じていたのは。
「ち、畜生!」
 圭一はきつく拳を握りしめた。握った拳が白く色が変わり、食い込んだ爪が皮を破ろうというほどに。
 スネークを助けに来たはずなのに、自分たちの軽率な行動で一気に窮地に立たされてしまった。
 後悔、焦燥、そのような感情を、ここにいるほとんどの人間が抱いていた。
 ――しかし、羽入と梨花は、違う事を気にしていた。
「り、梨花……!!」
 羽入が小声で梨花に呼びかける。
 梨花は――答えることはなかったが、彼女の視線はオセロットに釘付けになっていた。
「――あいつだ」
 歪んでしまったカケラ。ノイズ混じりの記憶。雛見沢には本来いないはずの外国人。
 悟史を連れ去ったのもオセロットで、鷹野の仲間だと名乗ったと、梨花は聞いていた。
 そして、様子からして、彼がスネークの敵であることも、梨花は察した。
 ――ばらばらだったカケラが、繋がった。
「あいつが、私を――私達を、この歪んだ運命に閉じ込めているんだ」
 確かな証拠は無かったが、この状況、彼の行動、梨花の内側からざわめく“何か”がそれを物語っていた。
 犯人を見つけた、と確証した梨花は、自分達に突きつけられている銃口を無視し、一歩前に出て叫んだ。

96 :
「オセロット! あんたは鷹野と手を組んで、私を――雛見沢のみんなをして、何をしようって言うの!?
ここで何の研究をしていたの!? 教えなさいっ!」
 山猫の視線が、初めて足下へと向けられた。
 彼女の叫びに対し、オセロットは。
「さあ、な」
 ただそう答えただけだった。
 畳みかけるようにして、今度はスネークが口を開く。
「ここの風土病を利用して、細菌兵器を作っていたのか? 核の代わりにメタルギアに取り付ければ、他国にとって十分な脅威になりうる」
「そんな事が……、まさか」
 「東京」の一員である入江が首を振る。
 スネークの言葉を否定しつつも、可能性としてはゼロではないため、彼の顔は蒼白となっていた。
 同じく、「東京」の監査役である富竹は無言だったが、唇を噛みしめて、オセロットの様子を窺っていた。
 オセロットはそんな二人の様子を気にせずに答える。
「細菌兵器か。確かに、一部の連中はそれを必要としていた。実際に開発もされていた」
「ちょっと待てよ……、その、細菌兵器って、一体何のことだ?」
 事情を知らない少年の当然の疑問に、入江が口を開きかけた。しかし、圭一の疑問に答えたのは、羽入だった。
「恐らく、その兵器というのは、人を雛見沢症候群に強制的に感染させ、末期発症を引き起こさせるものだと思います。
……末期発症に陥った人間は、雛見沢への強い帰巣本能を抱き、極度の被害妄想に陥り、周囲への強い猜疑心を募らせ――そして」
 羽入はそこで一度言葉を切った。
「誰も信じられなくなり、周囲を攻撃し、最後には――喉を掻きむしって死にます」
「……ほう?」
 オセロットは少し驚いたような顔をしてみせた。
 羽入のような子供が症候群についての知識を持っていて、さらに細菌兵器の中身を言い当てたことが意外だったようだ。
「そんな病気がここにあったとはな……。ここに来た時に皆注射を受けていたけど、それも関係あったのかな……?」
 ジョニーが言う。
 彼の言う通り、雛見沢症候群の存在は、一部の兵士にしか知らされていなかった。
 ジョニーは注射が苦手なため、それを受けなかったが――それが雛見沢症候群に関係あるものだという事は、彼にも容易に想像がついた。
「雛見沢症候群は、普通に暮らしていれば問題はないものです。……しかし、一度末期発症してしまうと、さっき言ったような現象が起こってしまいます。
落ち着くことも希にありますが……、兵器にした以上、それが不可能となっているはずです」
 羽入の説明は的確だった。それは入江の表情が、羽入の説明を肯定していたことからも明白だった。
「周りを攻撃して自分も死ぬって……、そ、そんなものを兵器に利用したってのかよ……!」
 SFホラーのような説明に、圭一は唇が震えるのを感じていた。
「雛見沢症候群は空気感染するからね。……詳しくは分からないけど、細菌をミサイルにでも入れれば『兵器』になるんじゃないかしら?
ありえない話じゃないわ」
 梨花が圭一とは対照的に、冷静に「兵器」を分析する。
「そんな恐ろしいものをここで開発していたって言うんですの? 信じられませんわ……」
 沙都子にとっても、今日まで普通に暮らしていた雛見沢の地下で、恐ろしいものが作られているとは、夢にも思わなかっただろう。
「……私も同感よ、沙都子。雛見沢症候群の研究は、診療所の中だけで行われていたとばかり思ってたけど、こんな所で悪用されていたとはね」
 梨花が苦々しく吐き捨てた。研究の第一人者――だったはずの入江は、ただ、ありえない、と呟いていた。

97 :
「『一部の連中は』と言ったな、オセロット。ということは、その細菌兵器だけが目的では無いのか?」
 スネークはこういった状況に慣れているようで、あくまでも冷静だった。
「その通り。あんなものはどうでもいいのだ。本来の目的は――別にある」
「別に……?」
 スネークが訝しむ。同じく、圭一達も疑問に思った。
 ここで開発されていたという、恐ろしい細菌兵器。
 それだけで十分な脅威に思えたのに、それが「どうでもいい」と。
「人をし合わせてしまうミサイルがどうでもいい、って言うなら、……本当の目的は、もっと恐ろしい事なの?」
 当然湧き出る疑問を、レナが呟く。
「……そうかも知れないよ。私には想像が付かないけどね」
 魅音も、あまりにも非常識な説明に、動揺しながらも、冷静であろうとしていた。
 背後で言い合う子供達の声を聞いていたスネークが、オセロットに問い返す。
「そうだとするなら、真の目的とやらは何だ? わざわざここで研究をしていたという事は、雛見沢と関係があるんだろう?」
「そうだ。我々は――、雛見沢症候群に目をつけた」
 オセロットが通路を歩き出す。
 まるで、役者が観客に台詞を聞かせるかのように、芝居がかった様子で。
「雛見沢症候群の寄生虫は空気感染し、人の脳に巣くう。脳という高等な器官に侵入するにも関わらず、『感染した』との自覚が無い。
さらにL2以下の感染者――大抵の人間は、何も症状が出ない。これはあまり類例を見ない、特異な風土病だ」
 通路の端までいった所で、オセロットは一旦立ち止まった。
「L3からL5までの感染者に見られる症状――リンパ節の痒み、極度の疑心暗鬼や被害妄想は、その寄生虫の産物と言える」
 オセロットは再び歩き出した。
「それはつまり――、人間が寄生虫によって操られている、という事ではないか?」
「……寄生虫に操られている?」
 訳が分からない、というようにスネークは言った。
「我々は症候群の解明に全力をかけた。……その結果、ある程度寄生虫の行動を制御出来るようになった。
――『我々が寄生虫を操れるようになった』と言えば分かりやすいかな?」
「操るって……、まさか」
 梨花が感じたことは、スネークも薄々分かったようだった。
 彼らの想像を裏付けるように、オセロットは語る。
「我々が寄生虫を操り、寄生虫は人間を操る」
 つまり、と続ける。
 オセロットが、蛇の正面で立ち止まった。
「我々は、一人の人間を操ることが出来るようになった、という事だ」

98 :
「……う、嘘だろそんなの!」
「実験も成功している。嘘ではない」
 この場にいる人間は知らないことだが、悟史がオセロットに「操られた」ようになっていたのは、そのためだった。
 山猫は尚も話し続ける。
「この寄生虫がミサイルで何千万とばらまかれ、さらにそれを、全世界の主要都市に撃ち込んだらどうなる?
……そう、感染はやがて広がり、パンデミックを起こし――、全ての人間が、寄生虫によって支配されることになる」
 雛見沢症候群は、一部の人間にしか知られていない病気だ。
 感染が拡大した所で――食い止める手立てが無い。
 ましてや、雛見沢の住人ですら症候群の存在に気づいていないというのに、他国の人々がこれを止められるだろうか?
「つまり、だ。――我々は、全人類を操れるということだ。“寄生虫による脳支配”。それこそが、この地にメタルギアを作った真の目的だったのだよ。
この地から“祟り”を引き起こし、人々の“意識”を“支配”する――戦略的核兵器とは違う、C3システムを確率するために、な」
 ――寄生虫によって全てを操られ、自分の意思を無くした人間達が織りなす社会。それを生み出すために作られた兵器。
 核兵器は“通信”“指揮”“管制”の3つのシステムで制御されている。その仕組みがC3システムと呼ばれていた。
 このメタルギアは、核兵器に代わる細菌ミサイルによって“祟り”でもって人間の“意識”を“支配”するシステムを確立していた。
 核兵器と名称が同じだが、内容は異なる“C3システム”。
 それが発動すれば。
 言葉も。文化も。
 思想も、宗教も。イデオロギーも。
 全てが、寄生虫によって支配されてしまう。
 操られた人間が織りなす社会。そこに君臨する、何か――とてつもなく巨大な組織。
 ひょっとすると、人々は自分が操られていることに気づかないかもしれない。
 自分の脳に入り込んだ寄生虫と共に生き、行動を支配され、そのまま死んでいく。
 そうした光景を思い浮かべて、蛇は、身震いをした。
「ミサイルは完成している。……そしてメタルギアも、だ。――全てが我々の支配下になる」
 山猫は、芝居がかった様子を見せながらも、こうした恐ろしい事を淡々と述べた。
 その様子はいたって正気だった。――だからこそ、蛇には狂って見えた。
 ――オセロットは、ただの兵士では無い。
 ――背後にある組織も、「東京」とは比べものにならないほどの物だ。
 ――シャドーモセス事件から生き延び、メタルギアのデータを世界中に流したのも、全てこいつの計算の上だった。
 スネークは、そう確信を得た。
 聞かされた衝撃的な“目的”に――、誰もが、言葉を失った。

99 :
以上です。もう少し続きます。ノシ

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