あなたはレココレ読者のひとりだ あなたは今、人生の重大な岐路に立たされている もうあとには戻れないだろう
あなたの心拍数は上がり、あなたの脈拍はドックドックと波うっている なにせあなたは今、レココレ９月号に
挿入されていたハガキを切りとって、ぜひマイビートルズベスト20曲を決定してみようと、自分自身に固く誓った
ところだからだ ふーっとあなたは溜息をつく 候補は211曲もあるのか 数字をハガキに記入していくのかと、
ひとりごとをいってみる あなたはまず考える 俺にとってのビートルズとはなんなのだろうか？と ビートルズが
存在していないもうひとつの俺の人生というものがあったとして、そいつははたしてハツピーに暮らしていけてるのだろう
かと、考えてみる 幸か不幸か現実世界に生きている俺という存在は、もうビートルズを知ってしまった存在だ いな、知り
すぎてしまった存在だともいえる たまにあなたは通りすがりの赤の他人に「あなたはビートルズを知っていますか？」と
訊いてみたい衝動にかられる 妄想の中であなたは、赤の他人に「知りませんよ」と答えられて、ほっとする
そう、この現実世界には、ビートルズを知りすぎてしまった不幸というものが確実に存在するのだ ビートルズさえ
知らなければいったいどれだけの時間を、それ以外の何かに費やすことが出来ただろうか？ ああいう恋や、こういう
恋とかも、体験できていたかもしれないではないか？ そのへんについて記述すると、部厚い哲学書でも上梓できそうだ
あなたは〝知りすぎてしまった恥辱〟という言葉を頭に浮かべ、頬をそめた （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ あなたは今、人生の重大な局面に立たされている なんとビートルズの211曲の中から
マイベスト20曲を選ばなければいけない人生を、あなたが選択したからだ ここ最近、あなたはそのことばかり考えて、
昼の仕事もなかなか手につかないほどだ 今日、得意先回りの接待中にヘマをやり、帰社したあなたは部長に、猛烈な叱責を
受けた それもこれもすべては、近日中にマイビートルズベスト20曲を、選らばなければいけないという強迫観念が、
あなたの自律神経を失調させているからだ Ｙシャツのネクタイをゆるめたあなたは、会社の帰りにいきつけのＢＡＲ
〝玉枝〟に寄る カウンター席に腰かけたあなたは、冷たいおしぼりで顔をぬぐいながら、ママに訊く 「ねえ、ママは昔
ビートルズなんか聴いた人なの？」中年太りで着物姿のおかみさんのような〝玉枝〟のママは、水割りを作りながら答える
「ええ、聴いたわよ 人並みにはね」 ママがビートルズを知っていると知ったあなたは、これで少しは会話が出来るなと
安堵する 「ママはたとえば、どんな歌が好きなの？」「カラオケで歌うなら島倉千代子の〝人生いろいろ〟とかよ」
「ちがうよママ、ビートルズソングの中でだよ」「あら、なんだ うーん、そうね トゥモロウ・ネバー・ノウズとか
アイアム・ザ・ウォルラスあたりかしら」いきなりのストレートパンチだ あなたは着物姿のおかみさん風ママの唇から
とほうもない２曲のタイトルが出て来たので、思わずカウンター席からすべり落ちそうになる あなたはママに訊く
「ねえママ、それ本気でいってるの？」「もちろん本気よ」 今夜、このＢＡＲ〝玉枝〟の夜は、そうとう深い深淵を
のぞくところまでいきそうだよなと、あなたはスコッチの水割りをイッキにあおった （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ マイビートルズベスト20曲を選ばなければいけないという強迫観念にとらわれたあなたが、
会社帰りにふらりと立ち寄ったＢＡＲ〝玉枝〟のママが、意外とビートルズに詳しいことを知り、あなたの心の奥の深い所で、
警戒心が芽生えたところだ それはママの唇から出た２曲が、トゥモローネバー＆ウォルラスだったということであり、結局
このママも〝ジョン派〟だったということかという危惧だ どちらかといえば〝ジョン＆ポール中立派〟のあなたは、これまでの
人生の様々な場面で、〝ジョン派〟の人たちと無意味なバトルをくり返して来たことを、苦い気持ちで想い出す ここのママとは
そんなバトルはしたくないなと思いつつ、あなたは何気に話題をそれからそらし、スコッチの水割りを６杯ほど飲みほした
それでもついあなたは、話題をビートルズに戻してしまった 「ところでママさ、今オレ、ビートルズのマイベスト20曲を選ぼうと
してるんだけど、ママにとってのビートルズのベスト３曲は何なの？」セーラムライトの煙を肺の奥の奥までゆっくりと吸いこんだ
着物姿のママは、ニコリとしてこう言った 「そうね、デッカオーディションの〝サーチン〟と、ＢＢＣラジオの〝クララベラ〟
それにアンソロ１の中のジョージの〝ユー・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ〟かしら」 またまや意表をつくマニアックな答えだ
あなたはスコッチの酔いのせいもあり、クラクラと目まいがしてしまう 「くらくらクララベラか ママ、それも本気で
いってるの？」「当たり前じゃない、私の中では石川さゆりの〝天城越え〟と〝ハッピネス・イズ・ア・ワームガン〟は
ヘビイな歌ということで、同次元同系列の歌なのよ、縁戚関係の歌とでもいってもいいと思うわ どちらも情念の肉欲が
カルマの深淵からギラリと涌き出ているという点ではね ふふふ」 そういってママは、鬼火のような流し目をあなたに
くれた もはやカウンター席で酔いつぶれるあなたは、ママにとってカゴの中の鳥も同じことだ （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ あなたは今、ＢＡＲ〝玉枝〟のカウンター席で、へべれけに酔ってうつぶせている ママの
あやしい手の平があなたの背中をやさしくさすり、「ターさん、もう酔っちゃったの こんなになっちゃって」とかなんとか
いって、その手の平があなたの股間にのびてこようとして来たその時だ あなたはびくんと頭をもたげて我に返る
「あ、ママごめん オレもう帰るわ また来るね」 あなたは急いでアタッシュケースを右手に持ち、店の外へ出た 外は熱帯夜だ
あのまま店にいたら、やがてあなたはノルウェー製の家具なんかがあるママのマンションか何かに拉致されて、たっぷりと
精のすべてを、ママに吸いつくされていたことだろう やれやれとあなたは思う これもすべてはマイビートルズのベスト20曲を
選べと命令して来たレココレのせいだとあなたは思う 小腹がすいたなと思ったあなたは、やがてとんこつラーメンの屋台をみつけ、
「おじさん、まだいいですか？」とかいって、その丸イスに座る 「とんこつラーメンでいいのかい？」頑固一徹、星一徹のような
屋台の親父は、あなたの返事を待つまでもなくラーメンをつくり始めた あなたは考える このおっさんも若い頃に、ビートルズ
なんか聴いたのだろうか？と やがて親父があなたに訊く「兄さんどうしたんだ、何か悩みでもあるのかい？」あなたは勇気を
もって訊いてみた 「いや、親父さんも昔、ビートルズなんか聴いた人なのかなぁなんて、つい考えちゃって」「聴いたも何も
兄さん、よく訊いてくれたね！私はこう見えても、昔ビートルズの日本武道館いきましたよ！ ワッハッハ」本当ですか？と
あなたは一瞬感動するが、今までの人生の中で、このような嘘をつく人間をたくさん見てきたあなたは、素直に信じられないでいる
あなたは親父に訊く「親父さんにとって、ジョンレノンが最高の頃って、いつごろだと思いますか？」屋台の親父は答えた
「ああよくぞ訊いてくれた、ジョンが最高だった頃は、トニーシェルダンのバックをやってレコーディングした〝エイント・シー・
スウィート〟の頃だと思うね！それからあとのジョンは、下降線の一途だよ！ワッハッハ」 またもやマニアックな答えだ
あなたは目まいをおぼえて、とんこつラーメンをひとくちすすった （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ あなたは今、その昔ビートルズの日本武道館を見たという親父の屋台で
とんこつラーメンを食べているところだ 本当にこの親父は武道館を見たのかという疑念を払拭するために、
あなたは親父にカマをかけてみた「親父さんが見たビートルズの武道館で〝レイン〟って曲はやったのかな？」
親父は平然と答える「もちろんやったとも、〝レイン〟は確か〝ペイパーバックライター〟のＢ面だったよなぁ
レコードじゃただのうるさいワケわからん騒音だったけど、武道館で聴いた時には、ずいぶん流麗なメロディー
な歌だったんだと、感心したもんだよ あれはいいね ワッハッハ」この時点で、この親父はイッちゃってる人なんだ
ということがあなたにも分かりかけてきたのだが、もう少しこの親父が聴いた日本武道館での〝レイン〟の話を
あなたは聞いてみたい気にもなってきた とんこつラーメンのスープをすすりながら訊く「親父さんが見た
ビートルズの日本武道館で〝レイン〟は何曲目にやったの？」親父は待ってましたといわんばかりに、立て板に
水のごとく喋りはじめる「あれは確か１曲目だったね ＥＨエリックがそれでは皆さんなんたらかんたらとかいって
引っこんだあと、すぐにビートルズが出てきてチューニングを始めたのさ それが終わったあと、ポールがマイクに
向かうと日本語でこう言った〝今日は１曲目にいつものロックンロールミュージックでなく、特別な１曲を
やりたいと思います ＯＫ？ リンゴーーーーーーッ！〟そしてリンゴのドラムがいきなり バン！バン！と
武道館にとどろくや、ポールのユニゾンベースがうねうねとそれに乗っかってきたってわけさ この感じ、兄さん
分かるかな？ 武道館の観客はみんなア然としたさ そしてサングラスをかけたまんまのレノン御大が歌いはじめ
たのよ イッツァ～レ～～インカ～ム♪ってね わたしゃ、もうシビレたのなんのって こればっかりはリアルタイム
経験者しか味わえない、マジ鳥肌ものの感動だったね ワッハッハ」 あなたはこの親父、頭平気かと思いながらも、
親父が今言ったシーンを頭に浮かべて想像すると、なんともはや素晴らしいシーンではないかという気も起きてきて
感動してきたから不思議だ 日本武道館でたった一度だけ演じられた幻の〝レイン〟！ あなたはクラクラしてきた頭を
ふりふり「親父さん、いい話をありがとう いくら？」といって、席を立った （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ ビートルズのマイベスト20曲を選んで、ハガキに記して投函しろとレココレに命令された
あなたは、それが原因で自律神経失調症にかかったまま、夜の街を彷徨している 夜の街の夜の闇は、心の闇にも直結する
あなたは俺がビートルズの20曲のうち、まだそのうちの１曲も選びきれないでいるのは、心の闇に原因があるのではと疑念を
もつ 心の闇の何かのヒダヒダが、絶対にあなたの心の中のビートルズナンバーを、阻害しているはずなのだ そう確信した
あなたは時計を見る ＢＡＲ〝玉枝〟で飲んだくれ、屋台でとんこつラーメンを食べ終えたにもかかわらず、時間はまだ夜の
10時にもなっていない この得体の知れない心のモヤモヤはなんなんだ？ あなたはファッションか何かで一本ぬいて
帰ろうと決意する そうすれば頭のほうもスッキリとして、マイビートルズの20曲も、スラスラと選びきることが出来るに
ちがいない そのの領収書をレココレに回したら、代金はレココレが支払ってくれるであろうか？ 俺をここまで
追いつめた原因は、レココレがつくったのだからな しかし一介の読者がそこまで要求するのも、無謀な話だよなと
あなたは自戒する あなたは通りがかりのタクシーを停めて乗りこんだ 「新宿歌舞伎町お願いします」 運転手はうんとも
すんともいわずに走り始めた この運転手もビートルズを知っているであろうかとあなたは考えるが、またまた屋台の親父
との会話のようなものがくり返されるのは勘弁だなと、あなたは自重する しかしうっかり、こう訊いてしまった
「最近、新聞のタクシーって走ってますか？」「え、何のことですお客さん」「1967年頃には走ってたといわれる、新聞の
タクシーですよ」「どこの国の話です？」「イギリスかどっかかな」 運転手は危ない人間を乗せちまったのかなと、
そっとバックミラーをのぞきこむ そこには不敵に微笑むあなたがいるのだ （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ タクシーから降りたったあなたの目の前には今、新宿歌舞伎町歓楽街のネオンサインが
縦横無尽にキラキラと輝いている キレイだなと、あなたは思う まるで自分より背の高いセロファンの花々が、目の前いっぱい
咲き乱れているような情景だなと、あなたは感動する そのセロファンの花々の谷間の間をあなたは彷徨する なぜ俺には
スラスラとマイビートルズベスト20曲が選べないのだろうかと自問しながら それははたして本当に俺の心の闇のせいなのか？
ふらふらとさまよい歩くあなたの回りには今、新宿歌舞伎町のやsラ、オカマにネカマ、けばい姉ちゃん婆ちゃん
ギャルその他酔狂人何百人が、入り乱れているような状況だ とある路地裏の角を曲がった時、あなたは突然声をかけられた
「ねえお兄さん、遊んでいかない？」 万華鏡のような目をした女の子だ 下着のような黒のキャミソール１枚の彼女は
目力いっぱいに力をこめて、あなたを見つめる 万華鏡光線にやられたあなたはもうふらふらとなって、こうつぶやくしかない
「キミの源氏名は、当然ルーシーというんだろう？ 間違ってもヨーコとかなんかじゃないよな？」「うふっ お客さんが
ルーシーと呼びたいならそれでもいいわ お安くしとくわよ 私についてきてね うふふのふ」さかりのついたオス犬と化した
あなたはもう、ルーシーの黒のキャミソール１枚の姿に導かれて、歌舞伎町の闇の奥の奥のすすけたビルの地下１階にたどりつく
そこであなたを待ち受けていたのは〝セクシー貞子〟と〝樹里亜〟という、どう見ても年配にしか見えない２名の年増の女性
だったのだが、私ははて、この先何を書こうとしているのか？ まあいい すべてはレココレのせいなのだからな
当然、可愛くて若い黒のキャミソールのルーシーちゃんはただの案内人だったのであり、あなたの本番の相手をするのは
百戦練磨、年配年増のセクシーサダコと、ジュリアになるわけであった あなたはもうここから逃げられない （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ あなたは目ざめると同時に、にぶい頭痛を感じた ここは何処だと思う 薄ぼんやりと
した明かりの中で見る限り、どうやらここは連れこみ安ホテルの一室のようだ 昨夜新宿歌舞伎町に着いてからの、そのあとの
記憶がごっそりと抜け落ちているようだ なんてことだとあなたは思う 時計を見ればもう午前の十時半、会社もはじまって
いる時間ではないか とりあえずあなたはケータイを手にとり、会社に電話する 「もしもし、Ｙと申しますが本日休ませて
いただきたいのですが」出たのは課長だ「何で？」「ビ、ビートルズのマイベスト20曲を、き、決めるためです」「それが休む
理由になるとでも思うのかね？」 迷わずあなたはそこでケータイを切った こんなバカ課長に説明したところで、了承をうる
ことなど、まず不可能というものだろう 俺の今までの人生の中で、ビートルズが占める位置というものは、それはもうほとんど
全てというものだ 俺からビートルズを奪いとったとしたら、いったいそこに何が残るというのだろうか？ ビートルズビートルズ
ビートルズ それが今日までの俺の人生のすべてだった その俺が、俺自身の本当のマイビートルズベスト20曲を選ばなければ
いけない大切な日だというのに、あの課長は、それでも会社に出て来いとでも言うつもりだったのか？ まったく人智不能の
怖ろしい奴だと思う あなたはそこでケータイの電源も切った そして昨夜のことを、少しでも思い出してみようと、痛む頭を
フル回転させた そうだ、あの天使のようなルーシーちゃんに導かれて到達した地点が地獄の三丁目、魔窟の巣窟だったのだ
そこで確か俺は、〝セクシー貞子〟と〝樹里亜〟という年増の女に紹介されたのだ ガラスのネクタイを着けたちんぴらの
ポーターのような男が、俺にこう聞いたっけな 「どちらの女性をご指名なさいますか？」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ とりあえず、この安ホテルを出ようと思う 今日中にビートルズマイベスト20曲を選ぶことが
はたして出来るであろうか？ 外はグッデイサンシャインだ 陽射しがまぶしい 昨夜あなたは結局、インド風衣裳にニセモノくささを
感じさせた年配の〝セクシー貞子〟より、まだ品のありそうなオバさんの〝樹里亜〟を選択して、この安ホテルにしけこんだのだ
朝が来る 心が痛む 彼女はもうあなたを必要としていないのに あなたにはまだ彼女が必要だ 彼女の心変わりが信じられない
そのような歌詞と歌の旋律が、なぜか唐突に、あなたの脳裏をかけめぐる 午前十一時前後の新宿歌舞伎町は、うだる暑さと人々の
喧騒で、アジアのどこかタイやバンコクにいるような錯覚を、あなたに覚えさせる その後ホテルにしけこんだ〝樹里亜〟とあなたとは
無事まぐわえたのだろうか？ 結論から先にいおう あなたは勃たなかったのだ 〝樹里亜〟とのこんな会話を、あなたは覚えている
「ごめんなさいね、やっぱしこんなオバさんじゃダメなのかしら？」「いや、そんなことはないよ ボクのいうことの言葉に、半分も
意味なんかはないと思うけど、こうやって抱き合っていただけるだけでいいんですよ あなたの弾力あるこの大きなが、
なんか母親を連想させてくれて ああ、心地よい」「そういっていただけると、オバさんもうれしいわ」 そして、なぜかあなたはそこで
涙があふれてきた 止まらない おっおっおっ 嗚咽が押さえきれない 「ど、どうしたのよ あなた？」 「い、いや ほ、ほっといて
ください うっうっうっ」 アイムクラインの涙のウォルラスと化したあなたは、止まらないその涙の中で、こう考えていたのだ
俺の一生とはいったいなんだったんだろうか？ ビートルズただひとすじの人生だったよなぁ 俺からビートルズを差し引いたら、
何も残らないじゃないか！ それなのに簡単にベスト20曲も選べないなんて！ うっうっうっ 〝樹里亜〟はそんなあなたの背中を
やさしく抱きしめてこう囁く 「泣きたいだけ充分に泣きなさい なぜかあなたに、バンジョーの弾き方を教えてあげたくなったわ
不思議なことね」 「あ、ありがとう お母さん うっうっう 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 今日までの人生のほぼすべてをビートルズに捧げてきたあなたにとって、ビートルズが
この世に残してくれた公式録音曲は、すべてが甲乙つけがたいベストなものだ その中から、順位をつけてベスト20曲を選べと
レココレから恫喝されたように感じたあなたは今、自立神経失調症患者となって炎天下真夏午前の新宿歌舞伎町をさまよっている
昨夜、一本ぬけば頭もスッキリとして、なんとかベスト20曲を選べるだろうと思っていたあなたの目論見は、無残にも雲散霧消と
化したわけだ 今朝あなたが安ホテルで目覚めた時、すでに昨夜の慈母観音のごとくのオバさん娼婦〝樹里亜〟は、あなたの隣に
いなかった 鳥は飛んでいってしまったということだ あなたははたして〝樹里亜〟から、バンジョーの弾き方を教えてもらったの
であろうか？ そこから先のあなたの記憶は、涙の泉に閉ざされてしまっている 悲しみの泉、喜びの波という歌詞が、あなたの
脳裏をよぎる それにしてもうだるような暑さだ あなたは朦朧として湯気でも出てきそうな頭を冷やすため、目の前のゲーム
センターにしけこんだ ゴーンゴーンゴーン 重厚で壮麗なる鐘の音が、ゲーセンに飛びこんだあなたの全身に襲いかかった
マザーーーーーーーーーーーーーッ！ ユーーーハドミーーッ なんと新宿歌舞伎町の午前のゲーセンの中で、ジョンレノンの
「マザー」が始まったところではないか あなたは呆然自失となる 2008年８月真夏の新宿歌舞伎町のゲーセンの中に鳴り響く
「マザー」ほど、優柔不断で不条理で実存主義的な展開はないだろうよと、あなたは目まいする こんな場所に「マザー」を流す
有線放送会社も許せないが、「マザー」をバックにゲームに興じている目の前のお客、こいつら全員許せないなと、あなたは
思う しかしどうすればいい？ あなたにはダガーナイフなどの持ち合わせはない やがてジョンが「母さんいかないで！
父さん帰ってきて！」と悲痛に叫びはじめた ゲーセンの店内には無数のピコピコ音と意味不明な爆発音その他が爆裂していて、
それらを圧倒するようなごう音で、ジョンの悲痛な叫びがとどろいているのだ あなたは膝まずいて祈りたくなってきた
ハレラマハレクリシュナよ やがて曲は「ホールドオン」に変わった そこであなたは気ずく これは有線放送などではなく
この店の誰かがアルバム〝ジョンの魂〟をかけているのだということに ゲーセンの中で〝ジョンの魂〟などをかけていい
ものなのだろうか？ あまりにも作者のジョンを侮蔑している あなたの怒りは騰点に達した あなたはそう広くもない
ゲーセン店内の中央で、カギをじゃらつかせていた老店員にかけよってこう訊いた 「お前が〝ジョンの魂〟をかけている
張本人なのか！」見るからにドキュンで元ヤンキー、族あがりという風貌の店員は、ニヤリとしてあなたにこう言った
「あんたは何者なんだい？ ゲーセン店内で〝ジョンの魂〟をかけちゃいけないって法律でもあるのかい？」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ あなたは一歩、前ににじり寄る 「お前がなんといおうと、新宿歌舞伎町のゲーセン
なんかで〝ジョンの魂〟をかける行為なんてものは、ビートルズファンを代表して、俺が許さないんだよ！」「ははは、
お客さんこそ、何か本質を取り違えているのじゃありませんかね？それとも私がこう見ての通り、元ヤンキーで族あがり
なもんだから、そんな人間は〝ジョンの魂〟を聴いてはいけないとでもおっしゃるのかい？」「黙れ黙れ黙れ、百歩譲って
お前がドキュン丸出しじゃなかったとしても、ゲーセンで〝ジョンの魂〟を無限リピートでかけ続ける行為なんてものは
神をもジョンレノンをもボウトクしてるって言ってんだよ！」「ははは、笑わせてくれるねお客さん そもそも神なんて
ものは、苦痛の尺度をはかる概念みたいなものだと歌っているのはジョンレノンそのものじゃなかったのかい！あんたが
どう思おうが勝手だがね、私はむしろゲーセンに集まるようなお客さんにこそが〝ジョンの魂〟を聴いてほしいと思って
かけ続けているんだけどね！何か間違っているかい？」「むむむのむ」あなたは目の前のドキュン店員が〝私〟などという
高等言葉を使い、知的を自称する自分こそが〝俺〟などという下等言葉を使っていることに狼狽する 元ヤンキー店員は
続ける「ゲーセンなんてものは何処にも行き場のない孤独な魂の持ち主たちが集まる場所だっていう根本概念が、そもそも
あんたには欠落してるんだな！あんたはいいとこのお坊ちゃんなんだろう？生まれてから一度もお金の苦労などしたことなく
親が与えてくれた小遣いか何かでビートルズの全アルバム全アイテムをそろえて、ビートルマニアを気取っているボンボン
じゃないのかい？私からいわせればね、そんなボンボンこそが一番〝ジョンの魂〟など聴く資格のない人間なんだよ！」
あなたは一瞬、足元が地盤沈下を起こして、どこかへ落下してゆくような目まいを覚える （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ ゲーセン店内には今「アイファンドアウト」が大爆音で鳴り響いている 元ヤンキー店員は
続ける 「なんで黙ってるんだいあんた、反論できないのかよ？どうやら今私が言ったことが図星みたいだな ふっ、プチプル
階級出身のビートルマニア坊やが、労働者階級出身の真のビートルマニアに説教たれるなんざ、千年早いと思うね」あなたは一度
頭を猛烈にぶるるんと振ってみせる 何かが間違っていると思うのだが、それをうまく言葉にして言い表すことが出来ないおのれの
はがゆさに身震いしたのだ あなたはやっとクチを開くと、これだけは言った「では、お前さんが新宿歌舞伎町の真の労働者階級
の英雄でもあり、ヤンキーあがりのくせに博学のビートルマニアでもあると、言いきれるんだな？」「おおせのとおり、2008年８月
下旬現在、日本国中のビートルマニアはレコードコレクターズ９月号に添付されていた一枚のハガキを、肌身離さず一日中持ち歩いて
いるはずだ いつでもマイベスト20曲を書きこめるようにな ほら、これが何よりの証拠だよ」そういうと元ヤンキー店員はポケット
からハガキを取り出した 裏をめくって、もうそこにはすべての数字が書きこまれているのを見てみろといわんばかりに、あなたの
目の前に突き出した 「おおっ！」 あなたはまだ一曲も書きこめていないというのに、すでにこの男はすべてを書きこんでいるでは
ないか！ 負けたと、あなたは思う 「ほら、今度はあんたがハガキを見せる番だよ、出してみな」 あなたはズボンのうしろポッケ
から、ヨレヨレになってる白紙のレココレハガキを取り出す 「ははは、まだ１曲も書きこめていないじゃないか！そんなんでよくも
私に喧嘩など売ってこれたもんだ！ひとつあんたに質問しよう、真の労働者階級の英雄になるには何を会得すればいいと、レノン先生
は歌っておられたのかな？」「わ、分からない 思い出せないな、ああ・・・」「ふっ 殺人をしたあとに笑顔を浮かべられるか
どうかだとレノン先生は歌っておられるのさ、ここは重要だぜ よく覚えておきな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 今や〝愛と平和〟のイメージが一般的なジョンレノンが、労働者階級の英雄に
なりたければ殺人者の笑顔を学ぶべきだと歌っている事実は、もっと広く知られてしかるべきなのではとあなたは思うが
それを目の前のこんなゲーセン店長から教えさとられたことに、わずかな反発も覚える 元ヤンキー店長は続ける
「1970年前後のジョンとヨーコが、どんな世界的なカップルを目ざしていたか、あんたはご存知かい？ それはな
サルトルとヴォーボワール、もしくはヘンリーミラーとホキ徳田が青写真なんだよ 俺は元ヤンキーで族あがり、
高校中退、今や中年になってこんなゲーセンの雇われ店長をしているビートルマニアだが、たぶん親のスネカジリで
二三流の大学しか出ていないあんたには、こんなことはワケ分からんことだろう？ サルトルの〝嘔吐〟ぐらいは
読んでおくべきなんだよ 〝ジョンの魂〟を語る前にな それにヨーコをけなしたりバカにする前に、ヴォーボワールの
〝第二の性〟あたりも読んでおくべきだな 私に論戦を挑むなら、そのぐらいの知識は用意しといてくれよ」
ゲーセン店内には「ウェルウェルウェル」が大爆音で流れている 「わ、分かったよ お前がこのゲーセンの店長で
ある限り、ここで流れる音楽は〝ジョンの魂〟一本やりで、それはまったく正しいということなんだな？」「当たり前
だよあんた、このゲームセンターの名前をご存知ないのかい？」「教えてくれ」「新宿歌舞伎町マインドゲームスセンタ
ーっていうのさ 分かったらあんた、そのレココレのハガキを貸してみな」「ちょっと待て、それはこのゲーセンが
ヌートピア国際国家と直結してるってことなのか？」「ふふふ、それはまだあんたに教えられないな」茫然とするあなたの
レココレハガキを奪い取った元ヤンキー店長は、それを目の前でビリビリと破りはじめてしまう （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ マインドゲームスセンターの店長の手によって、ビリビリに引き裂かれてしまった
あなたのレココレハガキは、無残にもあなたの足元に散らばって、落ちた 「な、何をするんだっ 弁償してもらうぞ！」
店長はヌートピア国際人の不敵な笑みを浮かべてこう言った 「何も知らずに私にケンカを売ってきたあんたはね、もう
１冊レココレ９月号を買う義務があるんだよ！授業料だと思ってあきらめなさい 心を入れ変えてまっさらなハガキから
一から出直すのが、あんたにはお似合いだ 分かったら、さっさと出ていきな！」店内には「ゴッド」のサビのくり返し
部分が、大爆音で流れている 「ちっくしょー」よもや炎天下の新宿歌舞伎町の避暑のために立ち寄ったゲーセン店内で、
こんな展開が待っていたとは予想もしていなかったあなたは、地団太を踏むしかない 足元がもつれてたたらを踏んで
こけそうになるのを必死でふんばる オマケにレココレハガキまで失ってしまうとは！ これは神のイタズラだろうか？
それとも絶対俺にはビートルズのベスト20曲なんぞ決めさせないという、大きな秘密結社か何かの陰謀なのであろうか？
あなたは言う 「分かった 歌舞伎町の本屋でレココレ９月号と、サルトルの〝嘔吐〟を買うことにしよう 最後に
ひとつだけ教えてくれ 店長のハガキに記してあるビートルズベスト20曲のうち、ベスト１はいったいなんなのさ」
「〝ユーライクミートゥーマッチ〟だよ」「ジョンの歌じゃないのか？」「単純に私はこの歌が好きなんでね ハハハ」
「よし、お前の１位を俺の20位にしてやるよ！ アバヨ！」 あなたは啖呵をきってさっさと表へと出た
外は炎天下だ ふらつく足取りであなたはつぶやく「これでやっと俺の20位が、決まったわけだな くそっ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ なんの因果か知るよしもないが、あなたは今
夢遊病患者のような朦朧とした精神状態で、炎天下白昼の新宿歌舞伎町をさまよっている
そもそもの原因はレココレがあなたに、ビートルズのマイベスト20曲をハガキに書いて送れと
命令したのが発端なのであり、それ以来自立神経失調症となったあなたは会社に出る気力も
なくして、新宿歌舞伎町を彷徨しているわけだ 昨夜から今朝までに出会った様々な人達の表情や
文言が今、走馬燈のごとくあなたの脳裏を旋廻している ＢＡＲ〝玉枝〟のママが「アイアムザ
ウォルラス」と言った時のあの狡猾な目つき、日本武道館で〝レイン〟を見たというとんこつ屋台親父
がしてみせたあの少年のような夢見る瞳、万華鏡の目をした女の子の黒のキャミソールが目の前を逃げて
ゆく、たどりついた魔の巣窟でオバさん娼婦〝樹里亜〟がいってくれた「なぜかあなたにバンジョーの
弾き方を教えてあげたくなってきたわ」、マインドゲームスセンターの店長がしてみせたヌートピア
国際讃歌人的皮肉な嘲笑と説教等すべてが今ひとつのうねりの固まりのようなものとなり、さすらうあなたの
耳元でオホホ、イヒヒ、アハハ！と咆哮しているようだ たまらない 彷徨しながら咆哮されているあなたは
とある十字路でアフリカ系黒人の呼び込みに声をかけられる 「オニイサン、遊ンデイキマセンカ イイ娘
イルヨ イイ娘とネ」あなたは答える「それどころじゃないんだ、まずレココレ９月号を買いなおさなくちゃ
ハガキが必要なんだ すいませんがこのへんに本屋はありませんか？」「オー、本屋デスカ 本屋でデキマスカ？」
本屋でが出来たらそれはそれで便利だと思いながら、あなたはまた一歩、歩をすすめた （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ とにかく歌舞伎町で本屋を捜さなければ、早くレココレ９月号を再入手しなければと
ひたすらあせるあなたが歌舞伎町をうろうろさすらううちに迷いこんだその先は、コマ劇場脇の通称〝ビデオ村〟という
特殊な地域だ いつしか憔悴して疲れはてたあなたが立ち止まるとそこは異界、あなたの周りにはすべてＤＶＤ，ＤＶＤ，
ＤＶＤ，ＤＶＤの看板がひしめき合っている あなたは強烈なデジャブ感に立ち往生する 「なんだ、ＤＶＤ屋ばかりじゃ
ないか・・・」とつぶやきながらー そう、それはつげ義春氏の名作〝ねじ式〟の主人公が、眼医者の看板だらけの町を
さすらい疲れ「なんだ、眼医者ばかりじゃないか・・・」とつぶやくその状況と、まったく同一だった なんで本屋が
一軒もないのに、こんなにＤＶＤ屋ばかりがあるんだとあなたは憤る 新宿区区長は一体何を考えているんだと思う
あなたは目の前にある無数のＤＶＤ，ＤＶＤの看板をうつろな表情で見上げる すると一軒の店の看板のＤＶＤという
文字の下に〝本もあります〟という表示を見つけ、その店に入ってみた 店内には無数の裸体の女性の写真が壁全体を
埋めつくし、各写真の下には数字やアルファベットが記されている 六畳半ほどの店内の奥のカウンターに座っていた
店員だろう男があなたに詰問した 「お客さん初めてかい？気に入ったのあったら下の数字書いて渡してくんな 今は
サービス期間中だ、14枚１万円でいいよ！」 あなたには何がなんだか理解出来ない 「あの、そうじゃなくて、本を
買いに来たんですけど」「本？お兄さん、もう本の時代なんかじゃないよ！今どき裏本なんか置いたってコストばっかり
かかってね まったく売れやしないんだ お兄さんＤＶＤプレイヤー持ってないの？」 あなたはちょっと頭がグラス
オニオン化しかかってくる 「ボクが捜している本はレコードコレクターズ９月号というものなんですけど・・・」
ヤーさんくずれの店員は、うさんくさそうな目つきであなたをねめつけた （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 新宿歌舞伎町の森の奥の深い裏ＤＶＤ街の迷宮に迷いこんでしまったあなたは今、
そのうちの一軒の店に飛びこんで、ヤーさんくずれの店員と対峙しているところだ 「ひょっとして兄さんが捜して
いるレコードなんとかっていう雑誌はこれのことかい？」そういうと男はドサリと３冊のレココレをカウンターの
平台に置いた それはなんとまあ〝赤の時代〟の７月号と〝青の時代〟の８月号、そして〝ソロの時代〟の９月号で
あったのだ あなたは驚愕する「なんでこんな場所に、そろいもそろって赤青ソロのレココレ３冊があるのですか？」
「兄さんクチが悪いね、こんな場所はないだろう？裏ＤＶＤ屋を馬鹿にしてるのかい？何をかくそう、俺もビートルズで
人生の歯車が狂っちまった人間のひとりなのさ ははは ビートルズにはまって、はまりまくって、あげくの果てが現在
こうして裏ＤＶＤ屋の雇われ従業員てことなのさ ま、こんなこと兄さんにグチってもせんないことだな わはは 何かい、
兄さんももう、引き返せないほどドップリとビートルズワールドにはまりこんでるってクチなのかい？」 あなたは心臓の
鼓動が秒速、早まるのを感じる こんなところにもビートルズマニアは存在していたのだ あなたは男に訊いてみる「ど、どうして
ビートルズが人生の歯車を狂わせるのですか？あ、あなたの場合を、き、きかせててほしい」「はっはっは そんな質問をする時点で
兄さんの人生も、そうとうビートルズに犯されまくってるなと感じるね 兄さん、よく考えてみな ビートルズが存在しない世界を
想像してごらん？ イマジンじゃないけどよ はてしない自由をそこに感じないか？ ビートルズにはまりまくるってことはよ
結局ビートルズという重く巨大な足枷を自分の足首にくくりつけて、そこから一歩も動き出せなくなるってことなんだよな 実際
俺はある日気づいたよ アイファンドアウトってことだ わはは」 この男はいったい何がいいたいのだと、あなたは思う（つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん、まあ聞いてくれ 俺はもう50台も真ん中にさしかかる年令だけどよ
中学生の時にラジオから流れてきたビートルズにガツンとやられてギターをはじめたのさ そしてまあビートルズを
目指してバンドを組んだり解散したり田舎で結構うだうだやっていたもんだよ 大学入学を機に上京してな、まあ
三流の大学だけど 時は学生運動まっさかりの60年代後半ゲバルトシーズンてとこさ 俺はここ東京でもビートルズを
目指してグループサウンズもどきのバンドに参加したり、自分で結成してみたり、まあ色々とあった青春時代だった
わけだな今思えば そのうち俺のいたバンドがレコード会社のプロデューサーの目にとまって契約なんかもしてね
ちっぽけな芸能事務所の飼い殺しなんかにされたりしたよ そんなことをずいぶんとグダグダしてるうちに、気が
ついたらあっという間に40才ぐらいになっていたっけ そのへんで俺は目が覚めた 俺の人生はなんだったんだろう？
てね 俺みたいな人間はたくさんいるんじやないかな？ ビートルズが夢を見させてくれたといえば聞こえはいいけどよ
当たり前のことだけど、誰もがビートルズになれるわけじゃないんだよな あげくのはてが現在こうして裏ＤＶＤ屋の
やとわれ従業員て身分さ ビートルズが俺の人生を狂わせたというべきか、ビートルズに感電してハマッたまんま
人生をあっというまに棒にふった俺が馬鹿なのか それでもビートルズへの思いは断ち切れず、今だにこんな赤、青、
ソロのレココレ三冊なんか買って見ている俺は、なんて目でたい奴なんだと、自分でも思うけどね わはは」
あなたはこの男、ただたんに自分に音楽の才能がなかったことを、ビートルズのせいにしているんじゃないのかと思う
しかしこのような男が、日本国内に10万人ぐらいは存在しているんじゃないかと瞬時に思ったのも事実だ
そのつてでいえば、誰にでも気軽に夢を見させたビートルズは、まことに不幸なことをしたものだとも思う （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 裏ＤＶＤ屋の中年従業員の告白に、あなたはただただ呆然と立ちつくすのみだ 男は千年の
知己を得たとでもいうように、立て板に怒涛の雷雨の如くのひとり語りをやりはじめた それはドストエフスキーの小説に
登場してくる 躁鬱病患者のようだ もうこの小説は作者の意図と計画を離れて、作中人物が勝手に動いて発言しはじめている
よって文句がある人は無視して読まなければいいだけの話だ 黙殺してくれればありがたい では物語を進めよう いっておくが
これは大長編小説になるぞ 10月にランキング増刊号が発売されても、まだまだ続けているからな わっはっはのは
裏ＤＶＤ屋の男はつづける「まあ俺の人生はそういうことでビートルズによって棒にふっちまったわけだけど、後悔しているか？
って聞かれたら、それほど後悔もしていないと答えるしかないんだよなこれが 現実にこうして今でも、こんな赤青ソロのレココレ
三冊を買って楽しく読んでるのも事実だしね 俺の人生を台無しにしてくれたジョンとポールは憎めても、愛嬌たっぷりのリンゴ
スターまでは憎むことは出来ないものな わはは しかしなんだよね なんでこの世界にビートルズなんてものが存在しているの
かっていうと、根源はホモのブライアンエプスタインにたどりつくよな、お兄さん エプスタインの強力なホモ根性という尽力が
なかったら、いっくら才能があったといってもジョンとポールも世の中に出て来ることは不可能だったろう エプスタインを
メロメロにさせたのは粗野で男気たっぷりのジョンレノンだったんだろうか？ ものの話だとそうらしいな ビートルズで大成功
したあとジョンとエプスタイン二人でどこか旅行いったとか書いてあったものな 世界中のビートルズファンは、32才で死んじ
まったこの大ホモ、エブスタイン大先生の存在を常に忘れちゃいけないと思うね え、何だって？そんな話より俺がレココレ
ハガキの１位に何を選んだのか知りたいってか？ それは兄さん、当然〝のっぽのサリー〟か〝バッドボーイ〟だよ しかし
なんだね、なんでレココレは〝マギーメイ〟を候補曲からはずしてるんだい？」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「と思ったら〝マギーメイ〟は207曲目にランクインされているな 俺の見間違いだったか
わはは しかしこれ全部で211曲って少ないと思わないか、お兄さんよ 公式録音曲はすべてで214曲と記憶してるんだがね
ドイツ語の２曲とあともう一曲は何が割愛されているんだこれ？ まあいいか でもよ1965年にリアルタイムで聴いた
〝のっぽのサリー〟の衝撃といったらあんた、1977年にピストルズ聴いた時の百万倍以上の衝撃はあったんだぜこれは
なんたって日本はまだ舟木一夫の〝高校三年生〟の時代だからな 何、舟木一夫なんて知らないってか？ まいったね
1965年の日本で聴いたリアルの〝スロウダウン〟もヤバかったな お兄さんの世代だとヘビイメタルかデスメタルってか
その一千万倍以上のインパクトはあったもんだよ 1966年の日本公演前にシングル〝ペイパーバックライター〟が出たんだけど
そのＢ面の〝レイン〟の破壊力というか騒音力なんてものは、当時の日本のリアルタイムで理解できた人間なんてひとりもいな
かったからな俺の周りを見回してもだ このＢ面はなかったことにしようってなもんだ 愛すべき〝シーラブズユー〟の
ビートルズとは天と地も離れていたからな 俺も正直あん時は〝これ、歌か？〟って思ったもんだよ こん時でも日本はまだ
加山雄三とマイク真紀の〝バラが咲いた〟の時代だからな 〝レイン〟以上にまったく理解不能だったのが1968年の頭頃に日本で
発売されたシングル〝ハローグッドバイ〟のＢ面の〝アイアムザウォルラス〟だったっけ こん時はホントにもうビートルズも
マジ気が狂っちまったものかと心配しちまったもんだぜ おっとその前にシングル〝ストロベリーフィールズフォーエバー〟と
アルバム〝サージェントペッパー〟があったっけな 当時の日本でリアルタイムにこんなの理解できていたのは砂粒の一握りも
いなかったと俺は断言するよお兄さん この頃でも日本は美空ひばりの〝柔〟の時代だからな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「なあ兄さんよ、話は突然変わるけどよ このレココレ青の時代の〝ヘイジュード〟14位
てのは、さすがの俺もカチンときたね、ホンマ なんつーかこの〝ヘイジュード〟が生まれたきっかけってのは、離婚問題の
渦中にあったシンシアをなぐさめるために、ポールがシンシア宅に向かう車中で、頭の出だしが浮かんで来たってのが有名な話だよな
その時はジョンとシンシアの息子ジュリアンを元気づける歌で〝ヘイジュリアン〟とかいう出だしだったそうな しかしだよ
だからってこの歌がジュリアンに向けての歌だってのは、大きなおかど違いだと俺は思うね 赤の時代の45位で評論家の安田が
ほめてた片岡義男の文庫版ビートルズ詩集の〝ヘイジュード〟訳をじっくり読めば一目瞭然だけど、この歌は結局ポールの
集合無意識がジョンにこういってるわけなんだよな 〝ヘイジョン、君はこれから俺達と別れて平和運動家のシンボルとなって
いくんだよ 君はそういう運命の星のもとに生まれて来たんだ 別れは悲しいことだけど悲しくない歌にしよう そのためには
ジョン、君にはヨーコが必要なんだよ だからさっさと目の前のヨーコを手に入れちまえよ そしたらすべてはうまくいくさ
君とヨーコの平和運動は人類の歴史に残ることになる ジョン、ヨーコを自分のものにしてさっさと始めるんだ 世界は
君たち二人の平和運動を待っているんだぜ さあ始めろよ すべてはよくなっていくんだから 〟ってな ポール自身
にも分からない無意識世界の霊的領域が、ポールにこの歌を書かせたんだろう 片岡訳の〝君は彼女をみつけたのだから
手に入れたらいいのだ／一緒におこなう人を君は待っていたのだから／君は彼女を手に入れる運命にあるのだ／彼女を
自分の中にとりこんでしまえば、そのとたんによくなっていきはじめるのだ／君は充分にふさわしいのだよ、動きだす
ための力は君の中にある〟とかの部分がそれなわけだよな かっかっか 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「お兄さん、この話は知ってるか？ ジョンが20才の誕生日に親戚の歯医者から、今でいえば
百万円の現金をお祝いでもらった時のことだ まあ、そんな親戚がいる時点でジョンは労働者階級じゃなく中流階級出身なんだけどね
そこらへんは目をつぶろう 両親には恵まれなかったんだからな さて、ジョンはその百万円をどう使おうかと考えたとき、その頃
18才のポールとふたりでフランスのパリにいって、全部使いきっちまおうと思いたったんだ ふつうの男なら、彼女のシンシアと旅行
でもしようって思うわな しかしジョンとポールの絆というか関係ってのは、その時点でそれ以上にスペシャルなものだったんだろう
ふたりはジョージにも内緒で、さっさとパリ旅行としゃれこんだのさ あとで知ったジョージは愕然としたそうだ さて、そのパリでだ
20才のジョンと18才のポールはパリのノミの市で、まあお祭りの大きな縁日みたいな所をぶらぶらと観光したのさ するとはじっこの方に
タロット占いの小屋があって〝英語でも見れます〟という看板をみつけるや、迷うことなく二人は入ったのさ そして訊いたんだ 〝ボク達
英国でバンド活動してるんですけど、成功しますでしょうか？〟とね するとその占い師、つまんない顔しながらタロットカードをきって
並べ変えるや、ポツリとこう言った 〝あなたたちのバンドは世界でも例をみないほど、大成功するでしょう しかしそのためには犠牲が
必要と出ています〟ポールが訊く〝犠牲とは？〟占い師は言った〝あなたたちふたりのうち、どちらかが40才で命を失うことになるでしょう
今この場で、どちらの方が命を捧げるか決めてくださいと、カードには出ています〟ジョンが大笑いして言った〝ハハハこりゃいいや 俺で
いいよ！バンドで大成功できるんなら命だってキンタマだって捧げてあげますよ！ワハハ〟〝では、あなたにしましょう このことは他言
しますと無効になります いいですか？ 他言しなければ、あなたたちのバンドは地球規模まれにみる大成功を味わうことになるでしょう〟
ふたりは料金を払って、そのタロット小屋を出たのさ 大笑いしながらね （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「タロット小屋を出たふたりは大笑いしながら有頂天さ 今の占いの結果を知れただけでも
ふたりでパリ旅行に来たかいがあったってもんだ ポールが大笑いしてジョンにいう 〝ジョン、いいのかよ？大成功するのは
いいけど、お前あと20年しか生きられないんだぞ、ワハハ〟奇形人間のジェスチャーをして、ジョンがおどける 〝かまうもんか！
好きな音楽で大成功できるんなら、30才で死んだってかまわねえや！ だいたいあんな占い当たるわけねーだろ！ まあ当たって
ほしいのはヤマヤマだけどね、ワッハッハのハ！〟そしてふたりは 〝大成功！大成功！〟と叫びながら、肩を組んでパリの街を
闊歩したってわけだ 時は流れて1976年のニューヨーク、ウィングスのツアーでアメリカに来たポールは、もうその頃隠遁して
主夫生活を送っていたダコタハウスのジョンをアポなしで訪れた 16年前のあの占いが気がかりだったのだ ジョンは怒る
〝もうリバプール時代のガキの時代じゃないんだぜ！ 無断アポなしで訪ねてくるなんて、やめてくれよ！ そもそもあんな占い
当たりっこねーじゃねーかよ！ 俺の命があと４年だって？ 笑わせるんじゃねーよ！〟ポールは言う〝しかし俺たちのバンドが
世界規模で大成功するってのは、当たったじゃないか？ 俺はジョンが引退して主夫生活に入ったのは、あと４年の命を人間らしく
過ごすためなのかなと思ってたよ〟ジョンの顔がひきつる 〝いいからもう帰ってくれポール！そして二度と無断でダコタハウスに
来てくれるな！ 俺はこう見えても主夫生活で忙しいんだよ！ さあ、さっさと帰ってくれ！〟ポールは叫ぶ〝ジョン！俺は本当に
心配してんだぜ！ 今からでも遅くない、あの占い師を捜し出して、なんとかならないか相談してみようじゃないか！〟〝うるせー！
さっさと帰りやがれ！俺が引退して主夫生活に入ったのは、あの占いにヒビッてなんかじゃねーや！よし、ポール お前に宣言して
やるぞ！俺は４年後の40才になったら音楽界に復帰してみせる！そしてワールドツアーに出てやるんだ！そしてあんな占いの約束なんて
ぶっ飛ばしてやるんだ！分かったら、さっさと帰りやがれ！〟 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 裏ＤＶＤ屋の中年従業員の独白にあなたは驚愕するだけだ あなたは訊く「ではジョンレノンは
自分が40才で死ぬということを、知っていたとでもいうのか？」「もちろんさ、兄さんよ 冷静に考えてみな 25才で富も名声もある
ポピュラーロック歌手がだよ ふつう〝彼女は死後の世界を知ってるっていうんだ、頼むから俺にそんな話は聞かせないでくれ〟なんて
歌を、自分で書いて歌うかい？ 日本公演の前にすでにもう、こうしてジョンは死後の世界の恐怖について歌ってんだからな シーセッド
のことだけどよ 1964年ぐらいまではあんな占いのことなどすっかり忘れて、がむしゃらに突っ走って来たジョンもだ 1965年ぐらいに
なるとじわりと恐怖が押し寄せて来たんだろうな なにせ人類未踏の大成功を収めてよ、誰も経験したことのないスターダムの真っ只中に
いてもだ 常にあのタロット占いの真実がジョンの深層心理にはりついていたんだからな 〝明日はどうなるか分からない〟だとか
〝俺の木には誰もいない〟だとか〝俺も彼もあんたもあいつも結局薬局みんな一緒〟だとかよ その恐怖を払拭するために、ジョンは
自作曲を哲学的抽象的方面にシフトせざるをえなかったんだと思うわ あげくはあと10何年の命ならと、ヨーコと前人未踏の平和運動に邁進
することになるんだな フルチンのオールヌードになったりしたのも、40才までの命と分かっていたからのことなのさ ミックジャガーがよ、
ボブディランがよ、ペニスまでさらす根性あると思うかい？ ジョンは堂々とそれをやってのけたんだからな 捨て身の覚悟があってのこと
なのさ 死の直前にもローリングストーン誌の表紙でオールヌードになって着服のヨーコにからんでみせたっけ あれもあの占いに対する何か
捨て身の挑戦みたいなもんだったんだろうな 殺せるもんなら殺してみやがれ、俺はスッポンポンでまだまだこうして生きぬいてやるぜ、みたい
なね すべてを知ってるのはポールだけだったのさ ジョン20才の誕生祝いの、あのふたりだけのパリ旅行のノミの市のタロット占いー
知ってたからこそポールは、ジョージとリンゴが拒絶した〝ジョンとヨーコのバラード〟にも、ドラムとベースで参加したんだろうな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ あなたはもう、裏ＤＶＤ屋中年従業員の独白を聞きつづけるだけだ 「ジョンもポールも兄さんよ、
結局最後まであのタロット占い師のいう〝他言したら無効〟という約束を守り通したわけなんだが、一度だけこの秘密の約束を世間に
公表したら、いったい俺達どうなるのかなという誘惑にかられたことがあるんだな そりゃあ誘惑にかられるわな 成功する前に他言
したら、成功できないってことでチャンチャンお終いだけど、現に世界的に大成功を収めちまった現在ならいったいそれどうなるの？と
思ったわけだ ポールがジョンにいう〝そりゃ、やっぱりまずいよ 何か不吉なことが起こるんじゃないの それともその時点で
俺達の大成功がチャラになっちまうか、こんなことはいいにくいんだけどジョンごめん、ジョンの命がもっていかれるような、そんな
気がするよ 俺にはね〟ジョンがいう〝しかし俺はもうホント、この成功って奴が最近、何もかもうんざりしてきちまってるんだな
先日のフィリピンのマルコスの件だってそうだよ 俺はもうツアーも我慢の限界だけど、あれほど渇望していた大成功ってもんが
こんなに空虚でカラッポなもんだとは思わなかった あのタロット占い師の件をあらいざらい世間に公表して、どんなアクションが
起こるのか試してみたい気分だぜハハ〟ポールが止める〝ジョン、それだけはやめてくれよ この部屋にだって盗聴器が仕掛けられてる
可能性もあるんだぜ 絶対不吉なことが起こるよ、間違いない〟ジョンは深く溜息をつく〝分かったよ、ポール〟 この会話は
フィリピンの件で分かるように、1966年７月中旬のものなのさ それからすぐに何が起こったと思う？ そう、全米を揺るがしたジョンの
キリスト発言問題だ 全米のあちこちでビートルズボイコット集会が行われて、レコードやグッズ関係が集会で焼かれるという自体に
なったのさ ジョンのそもそもの発言はその年の３月に行われたイギリスでのインタビュー記事だったが、その時には何の問題も
なかったのに、４ヵ月後のアメリカで突如問題になったわけだ ポールは真っ青になる〝ほら、いわんこっちゃない ジョン！〟（つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「いいかい兄さん、ポールとふたりだけで行った、無名時代のパリ旅行のタロット占いの秘密を
世間に公表してみようかと相談しただけで、キリスト発言問題なんてのが火を吹いちまったもんだから、さすがのジョンもこの時は
完全にぶるっちまったのさ 1966年の８月ってのは、そういう意味で特異な月なんだよな 〝ビートルズのメンバーを殺してやる〟
という脅迫状は届くは、その月の29日のキャンドルスティックパークで永遠にツアーとサヨナラするハメになるわでさ しかし不屈の
ジョンはあの占いはホンモノだったのかとぶるっても、タダでは起きなかったんだよな その月の11日のキリスト発言釈明会見で
俺個人はベトナム戦争には反対なんだと堂々とぶちあげたんだからな エプスタインも真っ青さ ベトナム戦争についてはいっさい
発言するなという暗黙の密約が破棄されたんだからな その一週間後の17日のトロントの会見でジョンは、俺は徴兵忌避にも賛成
なんだよと言い切ったんだからな あと15年の命なら、好きなことを堂々と喋っちまえと開きなおったんだろうよ 逆にいえばさ
いくら暗殺予告の脅迫状が届こうが、あと15年はない体なんだからなと、悟ったのかもしれないな その気持ちが少しあとの
〝ヤーブルース〟に結実するのさ 〝朝には死にたい、夜には死にたい 大好きなロックンロールでさえ憎らしいよ、まったく
俺はさっさと死んじまいたい〟とね いくら死にたくっても、40才まではないんだからな 考えてみればよ 25才の青年が
〝人生なんてとても短い〟なんて歌詞を、すらっと書けるもんかね？ 知ってて書いてたんだよジョンは、何もかもね 〝恋を
抱きしめよう〟なんてイカした邦題がついたあの歌の中でさぁ そういえば〝シーセッドシーセッド〟にポールが参加してない
って、兄さん知ってたか？ あの歌はベースもコーラスもジョージがやってるのさ そこのところポールの自伝の〝メニーイヤ
ーズフロムナウ〟にぼかして書いてるけど、極論すれば知ってるポールとしてはだ 死後の恐怖を歌うジョンに、恐れを感じて
逃げ出したんだよな そのことをジョンはあとで〝ダーティマック（汚ねえマッカートニー）〟と揶揄したのさ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「1968年の12月によ ジョンはローリングストーンズのテレビ番組〝ロックンロールサーカス〟に出たよな
その時、キースリチャーズやエリッククラプトンと組んだ即席バンドの名前が〝ダーティマック（汚ねえマッカートニー）〟というのは、あながち
さえない冗談とかではないんだよな なにせそこでかました楽曲が、死にたいくせに40才まではないジレンマを歌った神曲〝ヤーブルース〟
だったんだからな その中の一説〝俺がない理由は、お前が一番分かってるはずだ〟というのはズバリ、ポールに向けて歌われてんのさ
もう少し意訳すると〝俺はもう死んだも同然だけど、その理由はお前が一番分かってるんだろ？〟に、なるのかな あの無名時代のふたりだけの
パリ旅行時、タロット占い師が〝さあ、どちらの方が40才で亡くなりますか、早く決めてくださいね〟といった時、決してポールは〝じゃぁ俺で
いいよ〟とは、言う雰囲気ではなかったものな 俺、つまり いつもおっちょこちょいのジョンが〝俺でいいや〟というのを、計算ずくで
待ちかまえていたふしがあったものな それらやなんかをすべてひっくるめて、ジョンは〝ヤーブルース〟の即席バンド名を〝ダーティマック
（汚ねえマッカートニー）〟としたのさ ポールにいわせれば、ポールにも言い分はあるだろう 兄さんよ 俺は中年メタボのビートルマニアで、
暗記しているほどなんだが、のちのポールの語り自伝〝メニーイヤーズフロムナウ〟のところどころに、この真実を示唆する記述がポツンポツン
とあるんだよな まず日本版の113ページに、ジョンとふたりだけのパリ旅行で、ちゃんとノミの市に行ったと語ってるし、384ページの
〝シーセッドシーセッド〟のところでは、あのベースはジョージで俺は参加してない、確か〝ファックユー〟と怒鳴ってスタジオを飛び出した
はずだと語っているしね まさかジョンが死後の世界の恐怖の歌など書いてくるなど、夢にも思わなかったんだろうよ アルバム〝リボルバー〟
の録音最初の歌が〝空虚〟で、のちのトゥモローネバーノウズね 一番最後の録音曲がこの〝シーセッド〟ってのも、何かを暗示してくれて
るよな、兄さん 〝シーセッド〟の録音が終わって一週間後に、ビートルズは日本の土を踏んだのさ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 傾向と対策の作者である私も、本日増刊号を入手した 『なんでもベスト10』というのが面白かった
では物語を進めよう 中年メタボの裏ＤＶＤ屋従業員のビートルマニアは語り続ける 「ツアーをやめてレコーディングアーティストへと
変貌してゆくビートルズは、まず1966年の11月に次のシングルＡ面候補曲としての〝ストロベリーフィールズフォーエバー〟の録音に
とりかかったわけなんだが、そのシングルのＢ面候補曲として最初にポールが用意してきたのが〝ホェンアイム・64〟だったんだよな
それにはジョンもカチンと来た ジョンはアビーロードスタジオの屋上にポールを呼び出して襟首をつかむが早いか、こう叫んだんだな
〝おいポール！ 何が64才になったらだよっ！ 40才で死んじまう俺の立場になってみろっ！ 俺へのあてつけなのかっ！ ふざける
んじゃねーよ！〟〝お、落ち着いてくれジョン あ、あの曲は俺が16才の時に書いた歌なんだよ け、決してあてつけなんかじゃない
わ、分かったから 俺もストロベリーフィールズのような故郷を題材にした歌を、い、一週間以内に書きあげてくるから、そ、その
歌をストロベリーのＢ面にしよう はあはあ あ、あと提案があるんだ お、俺を、一度死んだことにしてくれないか？〟
〝お前を死んだことに？〟〝そ、そうだよジョン 俺も色々考えたんだけど、今のビートルズの世界的大成功は、40才で死ぬことになる
ジョンの命と引き換えになってるってことは俺にしか分かっていないことだけど、その前にあのタロット小屋にいたもう一人、つまり
俺の方が先に死んじまったら、ひょっとしてジョンは40才でも死なずに長生きできるかもしれないじゃないか お、俺だってジョンに
申し訳ないと思ってる 俺がジョンの身代わりになれるとしたら、喜んでそうなりたいよ だ、だからこれから4,5年かけてポールは
すでに死んでいて、今のポールは替え玉のニセ者だってことを、徐々に世間に流布していけたらと思うんだ〟〝それ本気でいってる
のか、ポール？〟〝ああ モチロン本気だよ な、なんなら今録音してるストロベリーの最後らへんに、テープの逆回転で、俺がポールを
埋葬したとでも、吹きこんでくれないか ポールは1966年の11月に死んだことにしていいよ〟 ジョンは真剣にポールを見つめる
〝本当にそれでいいのか？〟 ポールが真剣にうなずく 〝もちろんだとも〟
これがポール死亡説偽装事件の、すべてのはじまりなんだよな 」 （つづく）
もてなかっただけ
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さんよ、それからポールの涙ぐましい努力が、始まったってわけさ 何しろ自ら進んで
一度俺を死んだことにしてくれと、ジョンに申し出たんだからな サージェントペパーのアルバム裏ジャケではひとりだけ背中を
見せて後姿だったり、マジカルミステリーツアーのテレビ映画のラストシーンでは、白スーツにひとりだけ黒バラをつけてみたり
したりしてよ しかし〝ポール死亡説〟でなんといっても圧巻なのは、ポール自らが発案してデザインを決めたアビーロードの
アルバムジャケ写真に尽きるよな 先頭歩く白スーツ姿のジョンが教会牧師、二番手黒スーツのリンゴが葬儀屋、三番手の裸足で
目をとじているポールがそのものズバリの棺の中の死体、四番手ジーンズ上下姿のジョージが墓堀り人夫ってんだから、まったく
アッパレなことさ おまけにすぐそこに止めてあるフォルクスワーゲンのナンバープレートが〝IF 28〟（もし本物のポールが
生きてたら28才さ）ってんだから、用意周到もここに極めらりって感じだよな つまりこれ、全部絵コンテの段階からポールが
指示を出してたんだよな 各メンバーの服装からなにもかも含めてさ ポールの狙い通りに、世間は今生きてるポールは別人じゃ
ないのかと騒ぎはじめたもんだ 勿論、自分の命が40才以上生きられるかもしれないと思いはじめたジョンも協力はしたさ ストロ
ベリーのラストでちゃんと〝俺がポールを埋葬した〟と喋っているし、アイムソータイアードのラストでは〝さみしいさみしい、
ポールが死んじまったよ〟とつぶやいているし、マジカルの表ジャケで死を意味する黒ウォルラスのぬいぐるみを着こんでたのは
ポールだったんだよとグラスオニオンの中で歌っているし、アディインザライフの中の車の事故で死んだ男こそポールなんだと
どこかでほのめかしていたし、カムトゥゲザーの中の1＋1＋1＝3ってのも、今現存しているビートルズのオリメンは３人だって
ことを強調してたんだから何をかいわんやってことなのさ はっはっは 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「まあそのなんだな、兄さんよ ポールが提案したこの〝ポール死亡説・流布作戦〟に積極加担
協力しながらもだよ ジョンはやっぱし、心のどこかでこう思ってたんだよな 〝こんな子供だましのことで、俺の命が40才以上生き
のびられるなんてことは絶対にないよな それならなんで俺はこのビートルズってバンドを世界的に大成功させた代償として、
40才で死ななきゃならないんだ？ 俺が生まれてきた意味っていったい何なんだ？ こんなくだらないポップ世界の王者になるため
だけの人生だったのか？ ポップビジネスの頂点に立って分かったことはだよ こんなものはすべて薄っぺらで空虚だってことだけだ
全部がまやかしだよ ちっくしょう 俺は俺自身の生と死の神秘の謎を絶対に解き明かしてみせるぞ それにはいったいどうしたら
いいんだ？ ええ？ 誰か教えてくれよ、こん畜生！ 〟とね そんなジョン目の前に、うってつけのようにジョージがもってきたのが
インドの神秘ってわけさ カルマ、転生輪廻、生まれ変わりの神秘、永遠の輪廻、それからの解脱、絶対宇宙の存在意義と太陽系
銀河系それらすべてを含む霊界護送船団の神秘的運動と存在意義、阿頼耶識（あらやしき）エトセトラ、エトセトラ・・・
結局ジョンは、自身の生と死の謎の神秘を解き明かすために、一時期ジョージ以上にインド思想にのめりこんでいくことになるんだよな
こうなった時のジョンを、もはやポールですら、エプスタインですら止めることは出来ない ましてやその時の妻シンシアでさえもね
結局ジョンはビートルズ全員を道ずれにして、インドへの修行の道にのめりこんでいくことになるんだな 世間一般的にはこの時の
バンゴア行きからのインド修行の道は、ジョージ主導と勘違いしているようだが、何をかくそうすべての主導者はジョンだったのさ
のめりこむ時にはとことんのめりこむ、ジョンレノンの本領発揮こそが、ビートルズ全員インド修行の発端であったのさ 結局
1968年の２月から、リンゴが２週間、ボールが１ヶ月、ジョンとジョージが２ヶ月もの間、インドのリシケシュに滞在することに
なったんだよな ひっひっひ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さんよ、方位学というのをご存知か？ 40才近くになった晩年のジョンレノンはよ オノヨーコ
御用達、超セレブ最高級タロット占い師が占ったその方位学の予想どおりに、ひとりであちこち旅をさせられたっていうじゃねえか？
ひとりで無理矢理、香港旅行にいかされたっていうのは、有名な話だよな その方向に出向けばいいことが起こるか、運が開ける
っていうのが方位学ってわけだ 逆にその方向に出向くと運が停滞したり、悪いことが起こるっていうのが鬼門だよな
話を元に戻そう さっき俺はよ ジョンとポール、二人だけの無名時代のパリ旅行のことを、ジョン20才の誕生日の記念のお祝い
っていったけど、実際はジョン21才の誕生日のお祝いなんだよな なにせ二人のパリ旅行は1961年の９月下旬から10月上旬
だったんだからさ その当時の西洋ではよ、20才の記念よりも21才の記念を重く見てたんだろうな、成人式という意味でさ
親戚の歯医者の叔母さんから、現在でいえば百万円近い金額をプレゼントされたジョンはよ、ポールとふたりきりでそれを
全部散財しちまえって思ったわけだ ポールの語り自伝〝メニーイヤーズフロムナウ〟ではよ 最初二人はヒッチハイクで
フランス経由スペインまで行っちまおうぜというのがそもそもの計画だったんだよな 勿論ジョージやピートベストにも
内緒にでだ それでヒッチハイクでフランスまで来ちまったら、旧友のユルゲンフォルマーなんかと偶然再会しちまって
スペインまで行くことなんか、どうでもよくなったというわけだ この時、この時点、21才のジョンレノンの心理を分析
してみようか 〝ケッ、俺はもう21才かよ いいかげんジジイじゃねえか くそったれ いつまでこんな先が見えない
音楽生活を続けなきゃいけないんだろうな？ 運がよくデビューする奴はよ、10代後半でさっさとデビューできてるはずだぜ
俺のこれからお先は真っ暗なのか？ ２ヶ月前にはトニーシェルダンのバックでレコーディングしたレコードがよ
ドイツで発売されたけど、泣かず飛ばずだったしな ケッ ホント俺、これから先どうなっちまうんだ？ ちっくしょう
よしっ この百万円、今年の４月から無理矢理ギターを止めさせてベースを弾かせることにしたポールの野郎と、旅行でもして
全部使っちまおう まさか俺、あいつがあんなに嬉々としてベーシストに転向してくれるなんて、夢にも思っていなかったものな
ましてやベースを弾きながら同時に歌やコーラスもこなせるなんて、あいつも影で血のにじむような努力をしたんだろうよ
よし決めた！ そのポールの恩に報いるためにも、この百万円は全部ポールとのヒッチハイク旅行で使いきっちまおう！
それしかねーよな！〟 なんともはや彼女のシンシアのことなど、みじんも考え及びもつかない21才のマッチョなジョンだ
しかしこのパリ旅行がだよ ジョンとポールのその時点の方位学的には、最高絶好調的な方位学だったんだろうな
からかい半分で入ったノミの市のタロット占いで〝40才の死と大成功〟を予言されたせいもあったかもしんないけどさ
なんせそのパリ旅行の丁度一ヵ月後の1961年の11月９日に、ブライアンエプスタインが、キャバーンクラブのビートルズを
見にやって来たっていうんだからな そこからすべての扉が開きはじめたってわけさ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ あなたは久々にクチを開く「方位学的にその無名時代のパリ旅行こそが、ビートルズの大成功の
すべての根源、源（みなもと）、発端だったとでもいうのか？」「モチロンさ その1961年９月10月のパリという方位こそが、目に
見えない何かの幸運の扉をこじあけたんだろうな だからこそ、その一月後に27才でホモのブライアンエブスタインが、キャバーン
クラブを訪れたのさ まさかそのブライアン自身もその時は、自分の命もあと６年だなんて夢にも思っていなかっただろうな
キャバーンクラブを訪れたこそこそが、それから６年、疾風怒濤ブライアンホモ人生、死へのゴールまでの一直線人生のスタート
地点だったっていうんだからな 目に見えない宇宙の神様は、随分と粋なはからいをしたもんさ あと６年の命のホモの男を
利用して、のちの世界的遺産 ザ・ビートルズという音楽グループをこの世に顕現せしめたんだからな 突きつめればよ
あと６年の命のブライアンというホモ男と、あと19年の命を約束させられたジョンレノンという男を利用して、目に見えない
宇宙のどこかのこの神様は、音楽でラブ＆ピースの思想を、この地球という惑星にまんべんなく定着させることに成功したとも
言えるんだよな そのホモのブライアンと、暴力と平和のジョンレノンのとなりに、天使のようなポールマッカートニーを
配置したことが、これまた粋なはからいなんだよな まあ天使といってもそれは外観だけで、ポール自身もかなりの努力と
苦労の人間なんだけどね いつかの目だたないポールのインタビューでこんなのがあったっけ 〝1961年時点でさ、ベース
ギターを弾きながら同時に歌をうたうことについてさ この地球上で俺ほど努力練習した人間はいないんじゃないのかと
思ったね その点だけは自負はあるよ〟てのがな その努力を知ってるからこそ、まもなく21才の若きジョンはポールだけを
誘って、ふたりだけのヒッチハイクパリ旅行に向かったんだろうな 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 裏ＤＶＤ屋従業員中年ビートルマニアの長広舌に洗脳され、幻惑されつつあるあなたは今、男が
口走った〝どこかの宇宙の神様〟という言葉に、本能的に反発心を覚えて反撃を開始する 「どこかに存在する宇宙の神様ってのが
この地球という惑星にビートルズを送りこんだとしたなら、1961年の10月にジョンとポールがパリを訪れた方位学なんてのは、まるで
どうでもいいことになってきませんか？ そんな方位学があってもなくても、その宇宙の神様ってのはこの地球という惑星に、あなたが
いうラブ＆ピースの思想を音楽によって定着させるために、ビートルズというバンドを誕生させたのではないですか？」「はっはっは、
お兄さんもまだまだ若いね 神様って言葉に謀反心を触発されたとみえるね 図星だろ？ まあ若いうちはそれで当然なんだけどな
中年という年代に突入してよ ずいぶん時間も空費してあれこれ冷静に考えてみるとよ やっぱし目に見えない、この宇宙を支配
管理する大きな力というか、エネルギーみたいなものを肯定せざるをえなくなるものなんだよな はっはっは そのエーテルのような
意志と知能と支配力をもつ今だ解明されない宇宙エネルギーのようなものを神と名づけただけであって、そうムキになっては
困るのよココロよね、わっはっは ではお答えしよう 1961年の10月にジョンとポールがふたりだけでパリを訪れなくっても
その一月後にブライアンエプスタインははたしてキャバーンクラブを訪れたのかと問われたら、答えはノーとしかいいようがないんだな
お兄さんもあるでしょ 背中のここらへんがなんか重苦しくって痛いなって時に、足の裏のこのへんを押すとその痛みが消えて
全快したなんてことがさ つまり背中のここをつかさどるツボが、足の裏のここだってことなんだよな 方位学ってのはその足の裏の
ツボみたいなもんで、無名時代のジョンとポールが訪れたパリという方位のツボこそが、ビートルズ大成功の序幕を開始させる
ツボだったのさ ここのツボをジョンとポールがタッチした、押したからこそお兄さんの嫌いなどこかの宇宙の神様はＧＯサインを
出されて、その一月後にホモのエプスタインをキャバーンクラブに送ったのさ 極論すれば今年で活動35年のローリングストーンズが
今だにこの地球上でロックし続けて俺達を楽しませてくれるのも、ジョンとポールがそのパリという街のツボを1961年の10月に
押したからだともいえるんだよな これはもう完全に風が吹けばオケヤが儲かるの論法に他ならないんだけどよ ジョンとポールが
パリのノミの市でタロット占い師に大成功を約束された 一月後にブライアンエプスタイン登場 さっそくエプスタイン２ヵ月後の
デッカオーディションを確約してくる パリ旅行から３ヵ月後の1962年1月1日にデッカオーディション決行 結果は落ちるが
この時の録音テープがあったればこそ、このテープをサンプルレコード化しようとエプスタインが動いた過程で、このテープが
ジョージマーチンの耳にとまることになる ジョージマーチンとエブスタインとビートルズの そしてイッキにスターダムへ
そしてデッカオーディションでビートルズを落としたバカディレクターが、さんざんへこんで能無し呼ばわりされてると聞くや、
なんとやさしいジョージハリスンが、このヘボディレクターに紹介してあげたのがローリングストーンズだったっていうんだからな
「彼らをデビューさせてあげなよ、きっと成功すると思うよ」ってね つまりエプスタインがデッカオーディションを取りつけて
いなかったら、この世にビートルズもストーンズもなかったってわけだよね 突きつめればジョンとポールがパリという街のツボを
押さなければ、ビートルズもストーンズもなかったってことだ ツボを押さなかったらどこかの宇宙の神様も、ビートルズとは
また別な何かを顕現実像化して、この地球上にラブ＆ピースの思想を定着させただろうと思うよ 代替者なんてものはいくらでも
いるものなのさ 運を開くツポを押した選ばれし者たちこそが、宇宙の神様のマイベイビーになれるってことだよな
分かったかい、お兄さんよ わっはっは 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん、確かジョンがベースギターをやることについてどう思うかという質問に答えて
〝俺にベースギターを弾けなんていうのは、っていうのと同じことだよな〟という有名なセリフは御存知だろ？ さように
ジョンにとっては死までもを意味するようなベースギターを楽々と弾きこなして、リードボーカル＆コーラスまで安々とこなして
しまうポールのことを、その点に限りジョンはずーっと畏敬（いけい）の目で見ていたのは事実のはずさ まるで宇宙人か
何かを見るような目でポールのことを見ていたと思う ま、元はそいつが年下のダチ公だとしてもだ ちょっとこいつのこの面には
かなわねえなと思っていたはずさ 後年ジョンはポールについて〝あいつはビートルズで成功していなくても、偉い発明家か
大臣にでもなって、世の中に出ていた人間だよ〟と発言しているほどだしね ポールはポールでこれまた２才年上のジョンのことを
〝見る前に跳ぶ〟的な人間として、ずーっと畏敬の目で見ていたのも事実なのさ 畏敬の目と畏敬の目で見合う男同士が、ソング
ライティングチームとして組み、お互いを高め合っていったわけだから、これ以上に理想な形はおいそれとないわな 話を1961年
10月のふたりだけのヒッチハイク、パリ旅行に戻そうか なぜ今までこの無名時代のパリ旅行に誰も着目してこなかったのか、俺は
不思議でならないよホント 世界中に数千万人存在するというビートルズ研究家どもは、いったい何をしていたというのかね？
このふたりだけのヒッチハイク旅行を、ロードムービーのような映画にでもしたら、非常に面白いもんが出来ると思うけど、
ビートルズ好きのスピルバーグあたりに映画化してほしいもんだよな あの〝バックビート〟よりはイケたやつが出来ると思うぜ
もちろんクライマックスはパリのノミの市、タロット小屋のシーンさ 犠牲が必要です、どちらかが40才で死ななければいけませんと
いわれて、陽気に〝俺でいいよ、それ俺でいい！〟と笑い飛ばすジョン 小屋を出て〝大成功、大成功！〟と大声で連呼しながら
肩を組合い、パリの街を闊歩する無名時代のジョンとポール この時点で21才になったばかしのジョンと19才のポール この年代の
年の差２年というのは大きいわな 本当にもうそれは、兄貴と弟って感じだっと思うわ （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「なあ、兄さんよ 俺と兄さんが会話をしているこの物語世界は2008年8月のまんまで停滞している
ままだけどよ 現実世界はもうとっくに11月下旬になっちまってて、この物語のタイトルにもなってる増刊号なんてのは、とっくの昔に
発売されちまってんだよな わっはっはっは 〝ビートルズ名曲ベスト100〟なんてタイトルがついてるらしい ま、それとは別に最近
現実世界のほうで興味深いビートルズ関連の本が2冊発売されたな ひとつはジョンの元愛人メイバンが著者の〝ロストウィークエンド〟
の日本語版 ほとんどメイバンが写したジョンの写真がメインな本だけど、ここでヒゲをつけたポールとツーショットの写真が見れるって
わけだ ジョンとポールの生涯最後のツーショット写真 もっと後年ダコタアパート内で写したツーショット写真があるのかもしれないが、
今のところはこの本の写真が最後といっていいだろう もう一冊のほうは中山康樹氏が講談社現代新書から出した〝ビートルズの謎〟だ
俺がこの本で一番興味をもったのは、ほとんど最後の部分 アルバム〝アビーロード〟の録音時、突然涙をためながらポールがスタジオを
飛び出して来たと思うや、スタジオから歩いて5分の自宅にそのまま帰っちまって、ひきこもっちまったというもの しばらくするとジョンが
ダッシュで飛び出して来て、急いでポールの家にかけこむや、鍵をかけられたまんまのドアをドンドン叩いたり、塀によじ登るはして
〝ポール、この野郎！ スタジオに戻ってこいよ！ ジョージもリンゴも待ってんだぞ！〟と必死に叫びまくったというもの その現場を
アビーロードスタジオの前とポールの自宅前にたむろしていた女性ファン達が目撃していたんだな おまけに写真までとっていた ポールの
自宅前で狼狽しているジョンの写真が証拠として掲載されてるよ これは1996年の英国モジョ誌で初めてスクープされた事件らしいが
著者の中山氏はこういう当時表面に出なかった謎の事件を謎は謎のままに本書を閉じているが、何をかくそう俺はこの事件の真実までも
すべて知っているのさ ではそれを、語ることにしようか 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん、アルバム〝アビーロード〟の録音はよ 1969年の7月と8月の2ヶ月でほぼ完了され
たんだよな 7月1日に自動車事故でケガをしたジョンとヨーコはよ、7月の9日からレコーディングに参加したわけだけど、そのさい
医者から安静をいいわたされたヨーコのベッドをスタジオに持ちこむという、異常な事態となったわけだ 片時もヨーコと
離れていたくないというジョンのエゴがそれを強行したわけだけど、もはやポールもジョージマーチンでさえも、それを
黙認許可せざるをえない、異様なオーラをふたりは発していたんだな つまりアビーロードの録音中ずっと、ヨーコのベッドが
スタジオの中にあったわけだ ポールが涙をためながらスタジオを飛び出したその日も、もちろんスタジオの中にはデーンと
大きなスペースをとって、ヨーコのベッドが鎮座ましましてたってわけだよな おまけに寝そべってるヨーコの口元には
ヨーコ専用のマイクまで用意されていて、あれこれとジョンに用をいいつけたり、ビートルズの演奏に注文をつけたりしてたって
いうんだから、まったく恐れいっちゃうよね ジョージとジョンが、この件で殴り合い寸前のケンカまでしそこなったのも
ビートルズの黒歴史だよな その日ジョージとリンゴはまだ到着しておらず、ポールはスタンウェイピアノに向かって
何度も何度もひとり〝オーダーリン〟を復唱していたのさ ここ数日、ポールはこの歌に取り組んでいて、早朝早くアビーロード
スタジオに現れるや、単身この歌を歌える状態のノドをキープするために、〝オーダーリン〟を歌いこんでいたんだよな
その日、そんなポールをベッドの上でいちゃいちゃしながら、ジョンとヨーコは白けた目で見つめていたのさ そろそろ
コカイン中毒になりかけていたジョンは、もはや正気ではなかったのかもしれない その日32回目の〝オーダーリン〟を
弾き語りし始めたポールに、ジョンはこういったんだな 〝おいポール、もういいよ そのオーダーリンっての、俺に歌わせて
くんねーかな！ お前の数千倍うまく歌える自身があるぜっ！ なあ、ヨーコちゃんよ！ ワッハッハッハッ！〟
ポールはそんなジョンを完全に黙殺して、32回目の〝オーダーリン〟を歌いはじめたのさ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん、ポールがそんな状況の中で、その日32回目のオーダーリンの一回目のサビの部分を
切々と歌い終えた時のことさ ヨーコ専用のマイクからこんな声がスタジオ中に鳴り響いたんだな〝ダメ、いやよジョン そんなとこ
さわっちゃダメだったら いけないわ、かんにんして ここはスタジオの中なのよ オホホホホッ〟〝ダメだったら、ジョン！〟
バーーーーーーーーーーン！ いきなり不協和音を叩き出して、ポールは弾き語りをやめたのさ そしてゆっくりとスタジオのはじに
そなえつけられたヨーコのベッドをにらみつけたんだな そこにはベッドのシーツにくるまって、重なったままのジョンとヨーコが
逆に不敵な笑みをうかべてポールをにらみ返していたのさ ま、時が止まったって感じだよな ジョンがクチを開く〝なんか文句あん
のかよ、ポール？ あん？〟 気持ちが爆発しそうになったポールは、一度深く深呼吸をしてから、そしてゆっくりと語りはじめたんだ
よな 〝ジョン、このオーダーリンって歌は君がいうとおり、君向きの歌だし、君が歌ったほうがいいのかもしれない 俺が歌うより
そのほうがたぶん、ずっといいものが出来るだろう それは俺も認めるよ しかしだジョン この歌は俺が歌うしかないんだ この
歌を思い浮かんだ最初のきっかけを教えてあげようか？ 去年の暮れあたりに俺は夢を見たのさ 丁度君とヨーコがスッポンポンの
アルバムジャケットのトゥーバージンズを発表して、世間の度肝をぬいてた直後の頃だったと思う その夢の中でだジョン 俺は君に
サヨナラをいわれたんだ 俺はもういつビートルズを脱退してもかまわないよ、ポールって 夢の中の君は俺にいったんだよな
朝起きて俺は冷静でいられなかった きっとこれは予知夢というものになるはずだとね そして俺は絶望的な気分で、もうろうと
ピアノの前に座ったのさ その時この歌のサビの部分が自然と出て来たんだ もう俺は必要ないのだと君にいわれた時、俺はめちゃく
ちゃで泣いてしまった もう俺は必要ないのだと君にいわれた時、俺はめちゃくちゃで死んでしまった♪ の部分がね
だからジョン この歌は俺が歌うしかないのさ この歌はひとりぼっちの俺の歌なんだよ〟」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん ポールが静かに鬼気迫る口調で〝オーダーリンはひとりぼっちの俺の歌なんだよ〟と
いった時、さすがのジョンも少しひるんだんだが、すかさずこういい返したんだな〝へん、何がひとりぼっちだい 今のお前には
リンダって嫁さんがいるじゃねえか？〟そうよそうよとヨーコもうなずいてる ポールは悲しすぎてもうあきれたとでもいうように
首を二、三度横にふったかと思うと、静かに語りはじめたのさ〝なあジョンよ、そもそも俺と君との絆の間には、女なんて関係
なかっただろ？ 俺は君とふたりだけで過ごした時間のことは、すべて覚えているよ ウールトン教会で初めて会った日のことから
ホントにもう全てさ ギターのチューニングの仕方さえ知らなかった二才年上の君に、それを教えてあげたあの日のことも鮮明に
覚えてる 年上の人間にモノを教えることが出来るなんてと、ずいぶん誇りに思ったものさ それからナークツインズと名乗って
ふたりで歌い歩いたあの日のことなんかも覚えてる 俺のいとこの店で歌ったときは、確か観客は三人だったっけ なぜだかこの頃
思い出すのは、ビートルズとして成功するより前の君との想い出ばかりなのさ どうしてなんだと考えた そして得た結論がこうさ
これは臨終を前に覚悟した人間が、自分が一番若く楽しかった日のことだけを思い出すのと、まるで同じことだとね はっきりいおう
ジョン、俺はビートルズとして成功しなくてもよかったんじゃないのかって最近思うようになってきたんだよ そしたら一生君と
楽しく音楽をやって、友人でいられたのかもしれないのになぁってさ〟 ポールの大きな瞳から涙のしずくがしたたり落ちるのを、
ジョンはア然と見つめ続ける おえつしながらもポールは続ける 〝特に最近思い出すのは、君とふたりだけでヒッチハイク旅行した
あの二週間のパリのことさ 今になって思うとあの日々こそが、俺の人生で一番幸せな時だったと思うよ〟 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん ポールがおえつしながらもだ、俺はビートルズとして成功しなくてもよかったんだ
それより一生ただ君と友達でいたかったんだよといった時、さすがのジョンもヨーコとたわむれるのを中断して、一瞬マジな顔に
なったんだよな しかし次にポールが〝あの二週間のパリの日々こそ、俺にとって生涯最高の日々だったのさ〟といったときは、
何かこう、少し胸に来るものがあったらしく、ポールにこう言い返したのさ 〝ふん、あのパリの日々かい あの占いの通りだとしたら
俺の命もあと12年なんだろうし、きっとその通りに俺は40才で死ぬことになるんだろうな じっさい俺達はあの占いどおりに
世界的大成功を手にしちまったんだし、そうだよな あのパリの占いの丁度一ヵ月後に、ブライアンエプスタインが
キャバーンクラブに現れた時は、まったくもうびっくらこいたもんだけどよ 筋書きというか運命みたいなものは、そう設定されて
いるんだろうな だとしたらだよポール 残された12年という時間の中で俺に何が出来ると思う？ あの占い小屋にいたのは俺とお前の
ふたりだけだ あの占いの真実性はお前が一番良く分かっているはずだ まさか俺が死ぬことになる40才の1980年まで、
ビートルズを続けるべきだとでもいうのか？ ケッ、まっぴら御免だね お前には感謝してるよ 元々ギタリスト志望のお前に
無理矢理ベースギターをもたせたことも悪いと思ってる お前がベースをやってくれてなかったら、絶対にビートルズなんて
ものは成功していなかったと、今でも思ってるよ その感謝の意味もこめて俺は21才の誕生日の記念旅行にお前を誘ったわけだが
あんな占い小屋にかかわっちまったおかげで、俺もお前も今じゃこうして億万長者のスーパースターってわけだ おいポール君よ
億万長者の俺とお前がだ、億万長者のふかふかの札束のベッドで横になっている時にだ ベトナムで何が起こっているか
考えたことはあるか？ サイゴンで何が起こっているか、考えたことはあるか？ 俺は〝平和〟を売りこむセールスマンになることに
決めたのさ！ こうなっちまった俺のことを、もう誰も止めることは出来ないんだぜ！〟
ポールは鍵盤の前にうつぶせながら、ただ涙を流すほか、なかったのさ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん ジョンがベトナムとサイゴンという単語を本気でポールに叫んだ時、ポールは
泣きながらも、もう絶対にジョンとのこの溝（みぞ）は、うめられないなと確信したんだよな 鍵盤にしばらくうつぶせっていた
ボールはよ ゆっくり顔をあげると静かにこう言いだしたんだ ジョンとヨーコには背中を向けたまんまでさ
「分かってたよジョン、いつか俺達の友情が終わるこんな日が来るんじゃないのかなってさ 俺は一日でもそれを先に
のばしたかっただけさ いやもういいよジョン、最後の俺のお願いだ 今レコーディングしているこのアルバムが
たぶんビートルズの最後のアルバムになることは目に見えている 俺は数日前からそのことばかりをずっと考えていた
そしてビートルズの最後にふさわしい〝ジ・エンド〟という壮大無限な叙事詩のような歌を書いてみたいと思うように
なったんだ しかしだ 何度努力しても、結局出来なかったのさ 君との楽しい想い出ばかりが、脳裏をよぎってね・・・
ううっ 笑ってくれよジョン 結局出来たのは、こんなちんけな短い〝ジ・エンド〟という小曲さ
これから歌ってみるよ まあ聴いてくれ」 そしてポールは初めてジョンに〝ジ・エンド〟を聴くかせてみせたのさ
〝結局最後には～ 君が受ける愛は～ 君が与えた愛と～ 同等になるということなのさ～ ♪〟
ジョンは顔をしかめる 〝最後〟という歌の中のこの短い詩の中で、ポールはいったいこの俺に何が言いたいのか？と
ポールは歌い終えてひと息つくと、ふりむいてそんなジョンと視線を合わせたのさ そこでしばらく時間が止まったんだな
涙でぐしゃぐしゃになって泣き笑いのような顔になったポーが、ゆっくりとこう言ったのさ
〝なあジョン、俺達の最後にふさわしい歌だと思わないか？〟ってな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん ポールが初めてジョンに〝ジ・エンド〟を聴かせたシーンは、ま、こんな感じだったん
だよな ジョンは一瞬そんな泣き笑いのポールの顔を強く凝視したかと思うと、うーんとうなって目を閉じ、ヨーコのとなりにバタリと
寝そべっちまったのさ 二三分沈黙の時が流れてヨーコが〝どうしたのよ、あなた〟ってジョンのことをゆさぶったんだな
するとジョンがベッドに寝そべったまま、スタジオの天井にでも語りかけるように、静かにこういったのさ 〝なあポール
俺も今録音しているこのアルバムが、ビートルズの最後のアルバムになるということは、うすうす承知しているよ こればかりは
もう仕方のないことだよな そこでひとつ提案がある ゴホン 俺の命もあと12年だ 12年後の1980年に、俺はいったいはどんな
死に方をするのだろうかと、最近よく考えることがあるんだ たぶんケネディや先日のキング牧師のように、射殺されちまうんだ
ろうなというのが、一番大きい可能性だと思う そこでだ 俺は12年後に俺を打つ犯人にむけて、このビートルズの最後の録音になる
アルバムの冒頭でだ ちょっとそいつを挑発してやろうと思うんだが、いいアイデアだと思わないか？ この前書いたカムトゥゲザーの
冒頭にだ 今世間ではやってるゾンビーズの〝二人のシーズン〟のような手拍子と溜息を入れてさ 〝ショットミー〟（俺を撃て）
（俺を撃ってみろよ）と俺が何度も囁くのさ ハハハ まったくいかしてると思わないか？ このアイデアを採用してくれるなら
今お前が歌ってくれた、そのちんけなジエンドって歌をアルバムの一番最後にもってきてもいいぜ あと俺のビコーズとマスタード、
アイウォンチューを無条件でアルバムに入れるって確約してくれたらな ハハハ〟 ポールは泣き笑いの顔をゆがめながら
ジョンにこう言ったのさ 〝それ本気でいってるのかい？〟 するとジョンが大声で天井に向けて叫んだのさ 〝さっさと俺の
ことを撃ち殺してみろよ！この野郎！〟 ヘロインの禁断症状でも起きたのか、ジョンの体がぶるぶると震えだす ヨーコが
そんなジョンを抱きしめて、耳元でこう囁いたのさ 〝しっかりしてジョン、私がついてる限り、12年後にあなたを決して
死なせたりしないわ！〟 ポールは呆然とそんな二人を見守るしかなかったのさ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん そこでポールが息をのんだのは、ふたつの事実を知ってしまったことに対する
驚愕だったんだな ひとつはジョンの禁断症状を初めて目にしたことで、やはりジョンはヘロインの常用者だったのかという
驚きと、もうひとつは二人だけの秘密、ジョンが1980年に亡くなってしまうという真実を、ヨーコにもうしゃべっちまってたのか
という驚きだったんだな 禁断症状でぶるぶる震えるジョンをしっかりと抱きしめながら、ヨーコがそんなポールをキッと
にらみつけ、こう言ったのさ〝そうよポール、私がついてる限り、絶対にジョンを死なせたりしないからね！ 12年後だろうが
20年後だろうが、絶対に私がジョンを守ってみせるわ！ああっ、私のジョン！〟そういってヨーコはジョンの口元にあふれ出た
あぶくのようなヨダレをハンカチでぬぐい始めたのさ 2,3分後、禁断症状から正気に戻りはじめたジョンは、首をブルブルと
ふって上半身を起こすと、となりのヨーコに〝もう大丈夫だよ〟とでもいうように一度キスをして、びっくりしているポールと
対峙したんだな そしてゆっくりと、今やシンボルとなっているその丸メガネをはずすや、素顔になってポールにこう言ったのさ
〝ポール、これが本当の俺なんだよ〟 生涯の友人が今、ヘロイン中毒の平和運動家へと変貌してしまった真実を直視して、
もうあの二人だけのパリの占いの真実を、ヨーコに知らせてしまったことなどは、もはやどうでもいいことだよなと、ポールは
頭を切り替えるしかなかったのさ そしてジョンに向けてこう言ったんだ 〝面白いよ、実に面白い カムトゥゲザーの
イントロはそうしよう 俺を撃て、俺を撃ってみろよと、君が何度も囁くのがいい カッコいいベースのフレーズを考えて
強力にそれをバックアップしてみせるよ そのかわりといってはなんだけど、さっき聴かせた俺のジ・エンドという歌で、君にも
協力してほしいことがあるんだ ちんけな短い歌だけど、ビートルズのラストを飾る歌にしたい そこでだ ビートルズ全員の
ソロワークスを、ファン全員に聴かせて大団円にしたいというのはどうだろう？ まずリンゴのドラムソロ、そしてジョン、
ジョージ、俺の順番で、いや順番なんかどうでもいいんだけど、ひとりひとりが最後に、華麗なリードギターをかましてみせるって
アイデアはどうだろうか？ 君もそこで思い切りソロギターをかき鳴らしてほしいんだ ぜひお願いしたい 〟
すると間髪入れずジョンはこういったのさ 〝俺をもうそんな幼稚なおままごとに、つき合わせないでくれよ！ 俺はお前の
そういったところが大嫌いなんだよ！ 今この瞬間にも、ベトナムじゃ阿鼻叫喚の地獄絵が展開されてるっていうのになっ！〟
もうポールも我慢の限界を超えたのさ すっくと立ち上がるや、ジョンとヨーコを指差してこう叫んだ
〝分かったよ！俺はもうやめた！この時点でビートルズをやめた！もうビートルズの最後のアルバムなんてのも必要ない！
俺はもう出ていくよ！永遠にサヨナラだ！〟 そしてダッシュでスタジオを飛び出しちまったのさ
あとは〝モジョ〟と〝ビートルズの謎〟に記されている通りってわけなのさ （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さんよ ポールがスタジオを飛び出しちまった詳細はよ
今のべたとおりなんだが、そのジョンとポールのやりとりをよ コントロールルームのスピーカーで
静かに聞いていたジョージマーチンがよ ポールが出ていっちまったあと、すぐにマイクを通して
スタジオ内のジョンに向けて冷静にこう語りかけたんだな 〝ジョンよ、今の君の対応はあまりに
ひどいんじゃないか こんなことを君にいうと、また君に校長先生のようだと馬鹿にされそうだが
ポールに対する君の態度はあんまりだと思うよ こんなことが続くようじゃ今録音してるアルバム
なんてのも計画倒れになるしかないと思う 私はプロデュースを降ろさしてもらうよ 以上〟
プチンとマイクの切れる音が静かなスタジオに響くや、ジョンはガバッと起きあがり、こう
叫んだんだな 〝待ってくれジョージマーチン！ 俺が悪かった、言い過ぎたんだ！
今すぐポールを連れ戻してくるから！ しばしのチャンスを与えてくれ！ これがホントの
平和のチャンスを与えてくれってやつだ！〟 そしてジョンもダッシュでスタジオを飛び出すや
アビーロードスタジオから徒歩十分の、ポールの自宅にかけつけたんだよな
そして固く閉ざされたドアをガンガンと叩きまくり〝おいポール、出て来い！出て来いよ！〟と
何度も叫ぶんだが、結局その日ポールは出てこなかったのさ 次の日もスタジオに現れなかったという
ジョンはポールの家の塀の上までよじのぼり叫んだそうだが、ポールの心の扉を開けることは
出来なかったんだな その３日後、ポールはジョンのところに電話して、俺のいくつかの提案を
全部承認してくれるなら、スタジオに戻ってもいいよと告げたんだよな 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さんよ、ポールがアルバムアビーロードに参加する条件として、ジョンに突きつけた条件が以下の通りなのさ
①Ｂ面ラストは俺の小曲〝ジ・エンド〟として、その前に各メンバーがきっちりと情熱的なソロ演奏をすること もちろんジョンも含むだ
②その大団円にもっていくためにはアルバムＢ面全体を、壮大なメドレー形式でつなげてみせること 未発表曲の断片でそれは出来るはずだ
③Ａ面トップはジョンの〝カムトゥゲザー〟として、アルバム冒頭でジョンが未来の狙撃者に対して〝ショットミー（俺を撃ってみろよ）〟と
何度も挑発すること それによって未来の狙撃者が動揺して、ジョンが40才以上も生きられる可能性があるかもしれないから
④継続して〝昔のポールは死んでいて、今のポールは別人のポールだ説〟を流布するために、アルバムジャケットを分かりやすくそうすること
ジョンが白スーツの牧師、リンゴが黒スーツの葬儀屋、俺ポールが裸足で目をつむり死体となり、Ｇジャン上下のジョージが墓堀り人夫
となること そしてアルバム発表後は大々的に〝ポール死亡説〟を流布すること すべてはジョンに長生きしてもらいたいがための
宣伝活動になることと俺は信じる 俺はスコットランドの農場にでも、その期間隠れていることにする
⑤俺とジョンは今までジョージを不遇に遇しすぎた 最後くらいジョージに花をもたせよう 今度のアルバムからはジョージの〝サムシング〟を
シングルのＡ面で切ること Ｂ面は〝ショットミー（俺を撃ってみろよ！）〟の〝カムトゥゲザー〟がいいだろう
アルバムＢ面は壮大なメドレー形式にしてラストの〝ジ・エンド〟になだれこむわけだが、そのＢ面トップにジョージの
〝ヒアカムズザサン〟をもってくること あとその後の未完成の小曲のメドレー形式のアレンジは、俺とジョージマーチンに
全部まかせること 俺の頭の中にあるこのオペラ的な展開は、前人未踏の歴史的なロックアルバムの一歩となるはずと信ずる
サージェントペパーを超えるこのアルバムをもってして、ビートルズは自然消滅しよう
というものだったのさ ジョンもそれを承認して、ポールはやっと、スタジオに復帰したのさ 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「なあ兄さんよ 俺がこれまでべらべらしゃべってきたことはみんな、結局は1961年10月の
ジョンとポールのふたりだけのフランス・パリ旅行の、タロット占いの真実が発端だということなんだよな その占い通りに
若くして大成功してしまったポールはよ、その成功と引き換えに、やがてジョンが40才で死ぬ運命にあることという現実に、
生涯悩まされつづけることになったのさ まあ生涯といっても現実にジョンが亡くなっちまった1980年の12月までなんだけどさ
占い通りにジョンが亡くなった時のポールの公式第一声は「くだらないことだ」だったよな あまりに動揺して、そうとしか
いいようがなかったんだろう ビートルズが成功してからのポールはだからよ あらゆるジョンのわがまま、勝手気まま、
横柄さを許してやって、そんなジョンを陰に日なたに支えてやってきたんだよな このへんのジョンに対するポールの
貢献さはまったく無視されてるとみるね なにしろビートルズの大成功は、やがて40才で死ななければならないジョンの
人生と引き換えになっているということを知っている唯一の人間が、自分しかいないんだからな ハウドゥユースリープで
さんざんコケにされ馬鹿にされても、羊のかわりにブタの写真を添付されてもさ、ポールは反論もしないでジッと耐えて
いたんだからけなげなもんだよな ヨーコをスタジオに連れこみはじめた時も、グッと我慢して耐えたばかりか、
ヨーコの即行アバンギャルド前衛音楽のバックに合わせて、ベースさえ弾いてみせたんだよな 自分は長生きできるという
負い目がよ、ジョンに対してポールを卑屈にさせたんだよな さて、これらをふまえた上でだ いよいよ1980年１月の
ポール成田空港発覚逮捕事件の真実について、いよいよ語る時が来たようだよな ふふふ 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「なあ兄さんよ ほぼひと月ぶりだよな その間俺は風邪にやられて寝こんだり、長期間の
アクセス禁止のまきぞえをくらってカキコメなかったりして、踏んだり蹴ったりの状態だったのさ 俺はどこまで語っていたん
だっけな？ しかしまあ兄さん 俺は昭和25年生まれの、もうすぐ60才にもなろうとするとっつぁんだけどよ 俺が中学生
ぐらいの頃に西暦2000年ていったらよ、そりゃあもう、こう宇宙のはてのはて、アクロスザユニバースって感じだったんだけどよ
現実世界は今やとっくの昔に2009年ってんだからな 〝2001年宇宙の旅〟の2001年を軽くこう飛び越えてるなんて、俺はそれが
今だに信じられねえんだよ ローリングストーズがサージェントペパーの後追いで出したサタニックマジェスティーズの中によ、
2000光年の彼方にと2000マンて歌が入ってたけどよ、リアルタイムにそれらを聴いてた俺らの年代にとっちゃよ 西暦2000年の
向こう側なんて、ホントもうまるでそんな感覚だったんだよな 小学生の頃の俺にさ、2009年はどうなってるって訊いてみたらよ
そんなＳＦ世界みたいなことなんて、さっぱり分からないって答えてるな そんなＳＦ世界の中を今、俺も兄さんも生きてるって
わけなのさ まあなんで俺がこんなしんみりとした話をしてるのかというとさ つい最近俺は〝レボリューション１〟の11分にも
およぶフルバージョンを聴くことができてね、さすが2009年、長生きしてればこんなものも聴ける時代になっちまってんだなぁと
感慨にふけったわけよ マークルイソンのレコーディングセッションの日本語版166～168ページの記述そのまんまの展開だったな
後半がまんまレボリューション９に転化されてるなんて、こうしてホンモノを聴かない限りさ、絶対理解できないって感じだよな
いずれヘルタースケルターの27分バージョンなんてのも、途中でジャズ風セッションになってるつーんだけどよ、聴ける日が
来んだろうよな その日まで俺が生きていられるっかってのが問題だけどよ ワッハッハ シェアスタジアムのホンモノの
サウンドボードを聴いた時も感激したけどよ 今回もそれにまさるよな 今回は久しぶりなんで閑話休題
次回からまた続きを語ることにするとしようか 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「なあ兄さんよ またまたほぼひと月ぶりだよな まったくまたまた一ヶ月近くアクセス禁止の
まきぞえなんか喰らっちまって、書きこみできなかってわけなのさ いっとくけどよ >>591はニセモノだぜ なんで俺が
松村と小林の確執なんか、語らなきゃいけないってんだ？ 小林の小説はよく出来てると思うよ ミートザビートルズと
イエスタデイワンスモアってやつだったよな？ その昔俺も読んださ 特にビートルズが日本のホテルのバーか何かでよ、隠密に
演奏したってシーンなんか、グッと来たもんだぜ そんな長老小林御大に、いちいち重箱のスミほじくるよーな難癖つけてた
松村のケツの穴のが小せえって思ったもんだぜ 奴は今でも「難民収容所の子供たち」なんて自作の歌をうたってんのかい？
まあいいや 別になんでも 俺はこうして歌舞伎町の裏通りの裏ＤＶＤ屋の雇われ店長ってわけだ
ついでにいっとくがよ 俺は弁護士の小倉ってのとは、まったくの別人だからな 小倉もいい迷惑だろうよ
わけ分かんなくなっちまったなぁ いったい俺は兄さんによ、どこまで語ってたんだっけな？
ほぼ二ヶ月近く、アク禁のまきぞえで書きこみ出来なかったんだらな！ 姉妹作の「長編・絶対敵」も
ずーっとお休み状態だったからな まったくわけわからねえや
そうそう1980年1月のポール成田空港逮捕事件の真実を語るところだったっけ？
まあ、ビートルズのデジタルリマスターも決まったことだし、ゆっくり語ることにしようか 」（つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ「久しぶりだね、兄さんよ 最近小学館が出した翻訳本〝ビートルズ非公式の真実〟ってやつは
久々のヒットだね 日本版前文をピーターバカランさんが書いてるけれど、ホンモノの前文はあのハンターデイビスってのも
キてるよね まあ最近、改訂版全1冊五千円で出たマークルイソンの〝ビートルズ全記録〟よりも、読みごたえがあるってもんだ
当然俺は1961年10月、ジョンとポールふたりだけのパリ旅行のところと、「シーセッドシーセッド」にポールは参加していないって
ところはチェックしてみたさ 〝非公式の真実〟のほうはちゃんとポールは参加してないと、ポール自身の談話が転用されてたね
まあしかしなんだね 東京は明日も雨だって？ これで４日連続じゃねえのかよ 雨だとわざわざ新宿歌舞伎町まで出向いて裏ＤＶＤ
買おうってお客さんの客足も落ちちゃうんだよね それでなくてもこっちはいつパクられるかも分からないって立場でキョどってん
だからよ おてんとさんもなんとかしてほしいもんだわな よし、兄さんそろそろ本題に入ろうか
1979年の晩秋のある日のことだ ポールはひとりでふらりとよ、ニューヨークのダコタアパートのジョンを訪ねたってわけさ
その年の6月にウィングスの新メンバーと〝バックトゥジエッグ〟を発表したポールはよ 12月にロンドンで開かれるカンボジアジア
難民救済コンサートに、ジョンも出てもらえないかと、頼みにいくつもりだったんだよな というのは表のタテマエであって
ポールの本音はよ 来年40才で死ぬことになるはずのジョンの心がまえというか、身辺整理状況というか、その前に本当に
いつか激昂して話したとおり、ニューアルバムを１枚発表して世界ツアーに出るつもりなのか、それなら何か俺に手伝えることはないか
なんてことを、膝つけあって談判したくなったってところなんだよな ポールはいつものようにダコタの警備員をすいすいとやりすごして
ジョンとヨーコの部屋のドアの前に立つと、チャイムを押したのさ ピンポ～ン♪ インタフォンからジョンの声 「誰！」
ポールは〝本当にジョン、来年逝っちまうのかよ？〟と複雑な気持ちで返答したのさ
「はるばるロンドンからカンボジア難民を救済に来た、ナークツインズのもうひとりだよ 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ドアをゆっくりと開けたジョンは、何年ぶりかにポールと対峙したのさ そして静かにこう言う
「ちょうどいい、ヨーコもショーンも買い物で外に出ている ひとりで昔を懐かしんでたところなのさ」 複雑な微笑みをもらしてポールが言う
「いよいよ来年だよなジョン、今さらだけどどうにかならないものかと思って・・・」「まあいい、それはゆっくり話そう 入ってくれ」
「お邪魔するよ」 ポールが今までジョンがくつろいでいたであろう迷路の奥のようなリビングルームに入ると、四角いリビングテーブルの上には
日本製の湯のみ茶碗と、アルバムリボルバーのＬＰジャケットが無雑作に置かれていた ソファーに深々と腰かけたポールはさっそくリボルバーの
ジャケを手に取る 「今聴いてたのかい、これ？」 ポールとはナナメ横に位置するソファーに腰かけたジョンは答える
「ああ、かれこれ13年も前の芸術作品とは思えないよな、これはよ」 そしてステレオ装置のターンテーブルの針をもちあげると、ある一曲に針を落とした
部屋に流れ出したのはシーセッドシーセッドだ ポールはゴクリとつばをのみこむ あの娘は言う、死んだあとの世界を私は知ってるのよ
死んだあとの世界を死んだあとの世界のことを私は知ってるのよ 俺は言う、そんな話はやめてくれそんな話は俺を生まれてこなかったような気分に
させるから そんな話はやめてくれ ああ ジョンはジタンに火をつけると、深々と一服吸ってこう言った 「確かこの歌でベースを弾いてるのは
ジョージだったよな？」 いやな想い出を思い出したようにポールが答える 「ああ」 ジョンはたたみかけるようにこう聞いた
さっきもぼんやりとひとりで考えてたんだけど、なんでポールはこの曲の時に、怒ってスタジオを飛び出しちまったんだっけ？」
またわざとらしい質問をするなと思いながらもポールは答える 「それは今日ここを訪ねた目的とも合致するから、正直に答えるよ」
そして深く溜息をついて言った 「ジョン、よもや忘れているわけじゃないだろ？ 1961年10月ふたりだけのパリ旅行
ノミの市のあのタロット占いのこと」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールが「ノミの市のあのタロット占いのこと」といった時、ジョンのみけんがピクリと動いたのを、
ポールは見逃さなかった 「ジョン、君があの日スタジオで初めてシーセッドシーセッドをアコギバージョンで聴かせてくれた時、俺は
足元の地盤がこうなんていうのかな、ぽっかりと喪失したような感じがしたのさ ビートルズの大成功の頂点に君臨していた時期だったと思う
なのに君は、死後の世界の恐怖なんて題材を、書きあげてもってきたわけだ 俺は目まいを覚えたよ そもそもこのビートルズの大成功は
君が40才で死ぬことと引き換えにもたらされたものなんだからな ゲーテのファウストのようだ と、その時点で分かっていたのは俺と君だけ
だったはずさ それをふまえてあえてこんな歌を書いてきたジョンは、俺に何がいいたいのだろうと考えたら、もう俺はベースのフレーズを
考えてるどころじゃなくなってしまった あの日俺はくそったれとでもつぶやいて、スタジオを飛び出したと思う 心臓がドキドキしたまんま
帰宅した俺は、この胸に大きくポッカリとあいた喪失感のような穴を、なんでうめればいいのかと真剣に考えた できれば俺がかわりに40才で
死んであげたい気分だった しかしあのタロット小屋の中で、俺でいいよと答えてしまったのは、若き日のマッチョなジョン、君だ
この喪失感の穴をなんでうめればいいのかと落ちこんでるうちに、フィッシングアホールなんて歌のアイデアが浮かんできたのは、唯一の
なぐさめだったな 俺のかわりにベースを録音してくれたジョージには、感謝してるよ だからリボルバーにジョージの曲が３曲も入るのも
俺はＯＫしたのさ ジョージの曲をＡ面一曲目にもってくることもね 」 そこまでひと息に語ってみせたポールは、手にしていた
リボルバーのアルバムジャケットを、静かにリビングテーブルの上に戻した ジョンは深くジタンを一服吸いこむと、息をとめた
そして一分ほど沈黙すると、ゆっくりと煙をのみこんでしまった 「こうすると、ガンジャの神様、マリファナって気分になれるよな ハハ」
そのうつろな笑いが、ポールの胸をえぐる （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝「それで今日お前がここに来たのは何かい、来年40才で死ぬことになる俺の心がまえでも、探りに
来たのかい？」 一本目のジタンをもみけすや、すかさず二本目のジタンにジョンは火をつけた 「そういえばお前のバックトゥジエッグ
てやつ、この前聴かせてもらったよ ロケストラとかいうのには大笑いしたな あれピートタウンゼントも参加してんだっけ？」
「してるよ」「よくあいつが、しらふで参加したもんだよな」「ピートはベロンベロンに酔っぱらってたよ ギターのチューニング合わせ
だけでも、あれだけの大所帯、まとめるのは大変だったな」「あれはジョージマーチンのプロデュースだったっけ？」
「いや、ジョージマーチンにロケストラのアイディアを提案したら却下されてね 仕方ないんで、俺とクリストーマスでプロデュースした
んだ」「きっとジョージマーチンも馬鹿らしいと思ったんだろうな そのロケストラをお前、今度のカンボジア難民救済コンサートで
再現するって噂にきいたけど、本気でやる気なのか？」「本気だとも」 相変わらずだなと思いながら、ジョンはジタンの煙を天井めがけて
ふーーーっと吹いた ポールが気弱にいう「できれば、それにジョンも参加してくれたらいいななんて、思ってんだけどね」
ふっ 鼻で笑い飛ばしたジョンは、すかさず話題を変えた 「そういえば今年の２月にジョージが出したアルバム、あれ、お前は聴いたか？
ジョージって、もちろん俺たちの弟分、ハリスン君のことだぜ」「ああ聴いたよ、慈愛の輝きとかいうタイトルが、日本ではついてるそうだよ」
「なんだそれ？なんでお前が、そんな日本の情報なんて知ってんの？」「日本人の偏執的なビートルマニアがいてね、手紙やファックスで
色々と日本のビートル情報を、逐一俺に伝えてくれるんだよ まったく黄色いサルが余計なことをしやがるもんだ」 遠まわしに日本人の
オノヨーコをも風刺してみせたポールは、10年前のレットイットビーセッションのころと、まったく変わってねえなと、ジョンは思う
そしてチクリと刺す 「おっと今のは、俺のグランマザー、ヨーコへの当てつけかい？」「そうじゃないよ、ハハ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ジョンはつづける 「まああれだ、その今年ジョージが出した慈愛の輝きってやつ、あれジョージの
オールシングスマストパスより良かったんじゃねーのか？ 神様神様いってないところも俺は気にいったよ しかしだ、あいつが出した
自伝豪華本アイミーマインだっけか ありゃいったいなんなんだ？ 自伝って名うってるくせによ、俺の名前が一行も出て来てねーんだぜ
俺は今でも覚えてる シンシアと俺が学生時代、これからよろしくいい気分って感じでデイトしてる時、必ずあいつが金魚のふんみたいに
現れては、俺達ふたりのことをストーカーのように追いまわしていたんだからな あいつのせいでこっちの性欲に何回ストッパーがかかった
ことか やることしか考えてない、あのガキの年頃のときのことだぜ 小僧のあいつが憎たらしい悪魔みたいに思えてきたもんさ
この件に関しては、シンシアだって今だにジョージを恨んでるはずさ どこいってもあいつがついてくるから仕方なく、３人で見たくもない
映画とか見てたんだぜ まったく思い出しても笑っちゃうよな そりゃ年下でもギターはあいつのほうがうまかった その点をさしひいてもだ
自伝豪華本アイミーマインには、自分の人生に影響を与えた人々なんてずらっとどーしようもないミュージシャンとかが記述されてるけどよ
俺とお前の名前が含まれてないのはなぜだ？ お前の場合は一時ジョージと犬猿の仲だったから仕方ないにしてもだ、俺はあいつの作詞に
ずいぶん手をかしてやったもんだぜ 休暇のときだ 昼でも夜でもかまわず電話をかけてきては、俺に作詞作曲のアイデアなんかをきいてた
からな 俺も人がいいもんだから、自作でうんうん悩んでる時もひとまずそれは置いといてだ、ジョージの野郎の作品に手助けしたよ
ドントバザーミーもアイニードユーもタックスマンも一部は俺が書いたようなもんだからな そんなことにはいっさいふれてないこの豪華
自伝本、完全にジョンレノン様は抹殺されちまってるよ お前がジョージに抹殺されてんのは理解できるけどよ 俺がこの本で抹殺されてん
のは、ちよっとふに落ちねえな シラをきってるジョージに、ひとこといいたい気分さ 」
「ジョンレノンともあろう偉人が、そんなことをくよくよ気にしてんのかい？」 そういってポールはクスクス笑う （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ジョンは立ちあがるといった 「よしポール、今日はとことん語り明かそうじゃないか 日本の玄米茶を入れるけど
お飲みになるかい？」「いただくよ」 ジョンがキッチンにひっこむと、ポールはやれやれと思う しかし、あの占いどおりに、来年ジョンがいっちまう
としたら、こうやってジョンと同じ空気を吸って、同じ一分一秒を過ごすこと、それじ自体が、たいへん貴重なものなのではないかと思い、襟を正した
しばらくすると、ジヨンがトレイに湯のみ茶碗をふたつ乗せて戻って来た 「まあジョージの豪華本アイミーマインの件は、俺のほうから何度か
ジョージに国際電話をして、真意をうかがおうと思ってんだけど、あいつ、いつも居留守使ってるっぽいんだよな このままあの占いどおりに
俺が来年、狙撃でもされて死んだとすると、あいつとことん後悔すると思うぜ 俺が生きてるうちに、なんとか言ってこいっつーんだよな ワハハ」
ポールは笑っていいのかどうか、笑顔が固まる 「そうそう1961年10月のフランスパリのノミの市のあのタロット小屋の占い師の件、一回俺が
それをすべて世間にさらけ出しちまおうと画策したとき、ジョンのキリスト発言問題なんてのが全米で巻き起こって、びびっちまったもんだけどよ
俺はもう一度あの占い師に会いに、パリのノミの市にひとりでいった話は、お前に話したことあったっけ？」「いや、それは初めて聞くね」
「俺たちがツアーをやめて、俺が単独で映画に出たじゃん？ 髪を切ってメガネをかけて、リチャードレスターの〝私の戦争〟ってやつだ
撮影は西ドイツで行ってたんだけど、休日の一日、俺はひとりで近いからと、フランスのパリまでいったんだよな 1966年の9月16日の
ことだと思う（小学館・ビートルズ非公式の真実・124ページ参照） 髪も短くメガネってことで、パリのノミの市をひとりでぶらつく俺に
誰も気づかなかったんだよな ま、正確にはひとりの少女が俺に気づいたそぶりをしてみせたけどさ！ 俺は学生時代に戻ったような気分
だった ノミの市ではバスにも乗り、喫茶店にもひとりで入り、長い間やっていなかったことを全部やった そしてとうとうあの占い師を
見つけ出して、会うことに成功したんだよ！」「そ、その話は、は、はじめて 聞くな」 話が思わぬ方向にいったので、ポールはきょどる
「何をかくそう、その会見こそが、ストロベリーフィールズフォーエバー誕生の、発端なのさ 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールがきく 「もう遠い記憶で、どこかあやふやなんだけど、あの占い師は男だったっけ、女だったっけ？」
「ふっ 俺もそのへんの記憶がどうもあやふやで、1966年当時、ノミの市で奴を見つけ出すまでは、そこらへんが気がかりだったのさ 1961年当時
やっこさんは、頭にターバン巻きつけてたもんな つまらなそうにこう予言を口述した時の表情が、消え入りそうなほどおぼろげだったことしか
頭になかったよ 結局奴は男だったさ もう60才になりかかろうとしているアラブ系の男だった しかもゲイだ 笑っちゃうよなポール、
俺の運命を決定づけた謎のタロット占い師もゲイなら、俺をスターダムに押しあげた、敏腕マネージャーもゲイだっつーんだからな 世界を
動かしてるのは、偉大なるゲイパワーかって、畏怖しちまいそうな気にもなっちまうよな ハハハ！」「それで、どうやってその占い師を
見つけ出せたんだい？」「ノミの市をしきってる役所の係りにどうでいい理由をつけて、お願いしたのさ もちろん俺が、大ビートルズの
ジョンレノンだと告白してね おまけにこれはプライバシーの領域だから、他言禁止だぞと、きっちり釘をさしてね ゴホン 1961年のこと
だから、当時1966年からして、５年前の市の記録ということになる それなら残っているかもしれませんよといって、係りの人はちゃんと、
占い師の氏名と、当時の現住所を教えてくれたよ」「そこを、訪ねていったのかい？」「もちろん、奴はパリの場末の小汚いアパルトメントの
一室に、当時も住んでいた タロット占い稼業は、半分もう引退しているような身分だった 嘘かホントか、年金で暮らしてるとか
いってたかな 俺のことを覚えていますか あなたの予言通りに、世界一のロックバンドになっちまった、ビートルズの現リーダー
ジョンレノンですよといったら、これまたつまらなそうに、覚えているよと返してきたな」 そしてジョンは、日本の玄米茶を、グイッと
いっきに飲みほすと続けた 「奴はこういったのさ 40才で死ぬことになるあなたにいうことは三つしかない あなたが存在している
現実は現実ではなく、あなたの木には誰もいない、それが高いか低いかは別にしても、そしてあなたが育った境遇は限りなく孤児に近い、
あなたの家の近くにはイチゴ畑という孤児院が見える、そしてそれは永遠だ、以上ー そして、目をつぶっちまったのさ」〟 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ジョンはつづける 「目を閉じたまま、だんまりを決めこんじまった奴に俺はいったさ なんで
目を閉じたままなんだい？とね すると奴の返事がこうさ 〝目を閉じたままのほうが、生きるのが楽だとは思わないか？〟だと ふっ
俺はひとつだけ、訊いてみた これをいったら玉子が先か、ニワトリが先かみたいなことになりかねないけど、1961年10月9日のあの日にだ
俺があんたの占い小屋を訪ねていなければ、ビートルズの大成功なんてものは、なかったのか？とね 奴はすかさず当たり前じゃないかと
ほざいたよ そしてこうつづけたんだ 〝あなたは、最近といっても今年のことだが、チベット死者の書にインスパイアされて、何か
歌か、本でも書いたとみえるね 私には見える そんなあなたにだから、理解できると信じて、もう少しあなたのこれから先のカルマに
ついて、救いとなるヒントを教えてしんぜよう 40才でこの世を去ることに変わりはないが、あなたは西洋と東洋の初の架け橋となるだろう
特にこれから、インドと日本が、あなたの心の安らぎに寄与するであろうということが、私には見える あなたは、そのどちらにも、
深くのめりこまずにはいられなくなるはずだ しかしインドのほうには、科学と電気が邪魔をすると、出ている 日本のほうは
あなたがこの世のカルマを解脱して、天上界に召されるまで、縁がありつづけるだろう これが私の忠告だ〟とね その時点で25才の俺は
呆然と立ちつくすしかなかった 今考えれば、日本のことは当然ヨーコのことだろう そしてインドのほう 科学と電気が邪魔をするって
いったのは、マジック・アレックスのことだ マハリシがミア・ファローの妹を強姦しそこなったなんて、デマをながしたのは、
マジック・アレックスのくそったれの奴だったんだからな！ 若かった俺はまんまと奴の策略にのせられて、マハリシを罵倒して
さっさとインドを引きあげちまった！ おまけにセクシーサディなんて歌まで、書いちまったくらいだからな！ アレックスの目的は
ただひとつ！ 自分がインドにあきたってこと！ さっさとロンドンに帰りたくなったこと！ 奴の金ずるである俺も一緒に、
ロンドンに連れ帰ること！ それだったんだからな！ 本当に、マハリシにはすまないことをしたと、今でも思ってる」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ジョンはつづける 「そのマジック・アレツクスといい、アレン・クラインといい、アーサー・ヤノフといい、
ジェリー・ルービンといい、フィル・スペクターといい、俺はホントに、こういういかがわしい連中に、コロッとダマされちまうんだよな！
近ずいてきたのは、全部あいつらからの方さ！ 俺は来る者はこばまず、去る者は追わずの姿勢で、これまでずっと、やってきたもんだからな！
おっと、世間一般的常識、認識の中では、俺のワイフのオノ・ヨーコも、その中に含まれるってか？ ワッハッハ！ でもよ、こん中で唯一まとも
だったのは、アーサー・ヤノフぐらいだったぜ 奴には感謝してる 人間の根源的な、原始的絶叫とやらを、俺に叩きこんでくれたからな
〝マザー〟なんて名曲が生まれたのも、奴のおかげといってもいいさ ふっ 今頃どこで何してるやら そういえば思い出した！ マジック・アレックス
の奴が、俺たちの前からシッポを巻いてトンズラしたのは、1969年のはじめあたりだったっけか？ アップルビルの地下スタジオに、124チャンネルの
ミキシングコンソールをつくってみせますからとかいって、工事途中で蒸発しちまったのはよ！ やっと世間は８チャンネルが常識となりつつあった
あの時代に、124チャンネルとはね！ ジョージ・マーチンは鼻で笑って、最初から相手にしてなかったみたいだけど 俺たち、といっても特に俺なん
だが、あのバカを信じてたもんな まったくよ あの野郎は、俺とお前の株式会社アップル設立アメリカ記者会見の席にも、堂々とついてきたもんだ
よな？ そうそう、俺は一度あいつがなんだか怪しいと思って、奴の厚顔の仮面を、ひっぺがそうとしたことがある 奴がイギリスの俺の邸宅に
居候していた頃のことさ ヨーコと俺が〝トゥーバージンズ〟の録音を終えて、さあこれからスッポンポンの写真を自動タイマーで撮ろうかとしていた
夜明けのことだ 奴がふらりと、部屋に入ってきたんだよな 俺は奴にいった 〝インドでマハリシがミア・ファローの妹に手を出したってのは、
お前のでっちあげなんだろ？〟とね 奴の顔色がみるみる変わって、ぶるぶると震えだした そこで俺は、いったのさ 〝返事はいい、お前に
罰ゲームを与える これから俺とヨーコがスッポンポンになって写真を撮る お前もつき合え お前もスツポンポンになって、フリチンになるんだよ
分かったか〟とね 奴はしぶしぶオールヌードになって、撮影に加わったのさ だから、スッポンポンの元の写真には、全裸の３人が
おさまってるってわけ！ ハッハッハ あの写真、何処いっちまったっけかな？ 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ジョンはつづける「話が飛んじまったけど、1966年９月のタロット占い師との会見はよ そんな感じで幕を
とじたんだよな 別れぎわ、最後に奴はこういったっけ 〝のこり14年と少しの生涯、悔いのないように、過ごすことですな〟とね 俺もいって
やったさ おっさんこそ、せいぜい長生きしてくれよってな その時点で、人類の芸能史上、史上最大の成功を収めてた大ビートルズの創設者と
しての俺がだ 残り14年の人生をいかに生くべきか〝私の戦争〟の退屈な撮影の待ち時間の最中、俺はそればっかり考えていた 生ギターを
かかえては、奴がいったいくつかの言葉を、ぶつぶつとつぶやきながらね これは現実世界ではない、俺の木には誰もいない、俺の本当の姿は
孤児も同然で、昔近所にあった孤児院イチゴ畑の院生と同じことだ、そしてそれは永遠にくり返されるカルマ、永遠輪廻のカルマの車輪の両輪と
同じことだ、とね おかげでストロベリーフィールズフォーエバーなんて歌がよ、あの映画の撮影中にポロッと誕生しちまったわけだ ということはだ
この歌から俺は覚醒の世界に、突入しはじめたってことだよな 大ビートルズの第二章が、この歌からスタートしたといってもいい ちょうど
ツアーはもうやめたと宣言したところだし、俺たちのスタジオワークの時代が、華々しく幕あけた頃だ 時期的にはそういうことになる
のちにジョージが、ハリスンのほうだぜ 選曲した究極の〝赤盤青盤ベスト〟の青盤の１曲目がこの歌だったってのも、なんか出来すぎた話だよな
そこで時代の大波というか、空気もガラッと反転しちまったように変わっちまったんだからな サイケデリック時代とフラワーパワーの到来ってわけだ
それらを率先してた俺が今こんなこというのもなんだけどよ、今思うとすべてが少し、出来すぎてたって感もいなめないんだよな、これが
だって俺たちはそのムーブメントの最先端、つまり時代のペースメーカーたりえたわけだけどよ それがなんなんだつまり、チベット死者の書からの歌
トゥモローネバーノウズじゃないけれどよ 1967年頭のストロベリーフィールズとペニーレインの時点ではよ、1970年のレットイットビー発売、
そして解散なんて図式はよ、とうてい想像すらも出来ていなかったもんな どうしてああなっちまったのか、今の俺にも分からない ビートルズという
なんか巨大なシステム自体が、何かこの宇宙の何者かの手によって、コントロールされてたような気もするよ」
それを受けて、ポールがゴホンと咳払いした （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ジョンはつづける「俺があと14年の生涯をいかに生くべきかという、覚醒の時代に突入したことが
ビートルズの青の時代の始まりであり、サイケデリック時代の到来となったわけだが、そのとたんに俺はパタリと、歌が書けなくなって
しまったんだよな それまで容易にすらすらと、自動書記のように湧きでてきてた創造の泉の源泉が、ぷっつりと枯渇しちまったのさ
原因は何故だか分からない 俺の守護霊がその時点で、入れ替わったのかもしれない もっと高度な守護霊様にさ その格上の高度な守護霊様は
創造のミューズの女神様と、おりあいでも悪かったんだろう そしていよいよビートルズは、ポール、君の時代の到来となったわけだ
俺と入れ替わるように、君の創造力というか創作力が、火を吹きはじめたというわけさ あの〝愛こそはすべて〟以後、ほとんどの
シングルのＡ面を、君の天才力がうめることになる オカマのエプスタインがいっちまってからは、ビートルズの運営、主導、統率権も
俺の手から君の手に、すべて移動しちまったってわけだ 俺はそれでもかまわないと思った 俺は俺個人の残り14年の人生を、いかに
生くべきかという模索の時代に、突入したわけだからな 実質世間全般は、後期ビートルズのリーダーはポール・マッカートニーだと
認識していたことだろう 俺は俺個人の人生の探索に乗り出したところだから、丁度それは願ったりかなったりの展開だった次第さ
俺が遊んでても、君がサージェントペパーやマジカルミステリーを勝手に企画運営してくれて、おまけに〝ヘイジュード〟なんて
ウルトラメガヒットまで書きあげてくれたもんだから、ビートルズは常に時代のトップで、い続けられたわけだからな
それは最後の〝レットイットビー〟と〝アビーロード〟まで続くわけなんだけど、メルシーポーク その点はポール、俺は君に
感謝しても、しきれないくらいの気持ちはあるさ エヘン 1967年、あそこの時点で、もしも君の創作力まで枯渇しちまってたら、
ビートルズはあの時点で、終わっていただろう それは確実なことだよな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールが久々にクチを開く 「ジョン、君がこうやって、面と向かって俺のことをほめてくれるなんて
まあその、珍しいことだよな ハハ 恐れおおくて、恐縮しちまうよ でもさぁ、今君が後期のビートルズにおける俺の貢献度を、さんざん
ほめたたえてくれたわけだけど、ジョージが選曲した青盤の方のベストを見れば分かる そこに入ってる、俺のオリジナルソングの発想の
源（みなもと）はさぁ すべてジョン、君だったんだ 君だったんだよ 今だからこそ、はっきり言える 君がいなかったら俺の曲作りの
才能なんてものはさ、まさにその後のウィングスのアルバムを聴けば分かる、みたいなものさ ハハ こんなこと、自分でいうのもなんだけどね
青盤の曲目を思い出してみよう まず俺の歌は〝ペニーレイン〟だっけ これは当然、君の〝ストロベリーフィールズ〟に対抗して書いた
歌だから、君がいてくれたからこそ書けた歌だ 次に〝サージェントペパー〟と〝友達の助けがあれば〟だけど、まずは〝サージェントペパー〟
はっきりいうよ この歌の構想が初めてめばえたのは、リボルバーセッション中のことだ 君がスタジオにもちこんでくる次々なる不可思議な
曲を料理してゆくうちに、それは〝トゥモローネバーノウズ〟や〝アイムオンリースリーピング〟のような歌のことだけど、俺はこう思った
これはもう、かってのビートルズの歌ではないな、とー それならバンド名を変えて、その革新的な新しいバンド名を、アルバムタイトルに
冠（かんむり）しちまえば、いいんじゃないかとね それがそもそも、他のバンドになりきってしまおうという発想のスタートだったのさ
リンゴに捧げた〝友達の助けがあれば〟これもジョン、君の助けがあってこそ、俺は今までこうやってスターになることもできたし、
大好きな音楽でメシを食うことも出来たという、感謝の思いが、この歌の発想の原点だったのさ ええと、そして次は〝ハローグッドバイ〟か
これはそもそもこの頃から、俺と君の意見が真反対に衝突しはじめてきた、まだこの頃は可愛い衝突だったけどね 俺がイエスといえば
さっそく君がいう その意見にはノーだとね ハハ それを歌にしたものなのさ そして次は、〝フールオンザヒル〟か 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「〝フールオンザヒル〟について話そうか これはアルバム、サージェント
ペパーのレコーディング中の頃だ まだ俺がＬＳＤに手をつけていなくて、君とジョージがどっぷりとその世界にハマっていた頃の
ことさ ジョン、覚えてる？ 君は休憩時間になるとよく、アビーロードスタジオの屋上にあがって、星空の下、ＬＳＤをキメていた
もんだよね ジョージマーチンに気をつかってさ 俺はその時間にこう思ったものさ またジョンは屋上という名の丘の上にこもって、
素晴らしい瞑想（めいそう）でも見てるのかなってさ でもそれが素晴らしいトリップなら良いけれど、もしもバットトリップになった
としたらどうなる？屋上の柵をこえて地上に転落でもしたら？ それこそ、屋上という名の丘の上の愚か者じゃないか でもグット
トリップだとしたら、奴の目にはきっと、回る地球なんかが見えてるんだろうな、それはたぶん最高な瞬間なんだろうとね これが
〝フールオンザヒル〟の着想のおおもとのヒントとなったのさ 丘の上の愚か者、それはジョン、君のことだったんだぜ ハッハ
と、次は〝マジカルミステリーツアー〟か これはだ そして俺も君たちに遅れて、やっとＬＳＤの体験者となったわけだ そしたら
脳内が爆発さ まさにマジカルミステリーな出来事だった さあ、みんなで一緒にイキましょーって、気分になっちまったのさ
トリップをツアーに変えただけ それをまんま歌にしたのが、これだってわけ 元をたどれば、しきりに俺にＬＳＤをすすめたジョン、
やはり君がいたからこそ、この歌も誕生したんだよな ハハ そして、青盤の次の俺の曲は〝レディマドンナ〟か」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「〝レディマドンナ〟のイチバン最初の発想の源は、ずばり君のワイフの
オノヨーコその人さ 最初、彼女はいきなり俺の心の扉の中に土足であがりこんで来たかと思うと、巨額の寄付金を求めてきたものだった
わけのわからない次のアート展のために、これこれしかじかの金額が必要だから、ぜひご援助お願いしますというわけさ なぜ彼女が、
ジョン、君を訪れる前に俺のことを訪れたのか、それは謎なわけだけどさ、俺は考えたね 俺は彼女になんか義理でもあるのか？とね
次に考えたのが、彼女にとってお金というものは、まさしく天からでもふってくるものかということだった 家賃なんかはどうしてんだ？
とも思ったもんさ 俺が拒否すると、今度は彼女、泣き落としと来たもんだ 私にはミルクも飲ませなきゃならない子供もいるんですとさ
そんなの俺に関係ないじゃない それで俺はいったのさ 前衛アート関係だったら、我らのリーダー、ジョンレノンの方が、理解をしめす
かもしれないとね すると彼女はさっそく、君のことをストーカーしはじめたんだよな 彼女が我が家をひきあげたあと、俺は考えた
彼女はさ、いったい借金なしで、どーやって暮らしているのかな？とね そしてさっそく、澱（おり）のように心の底にたまったこの
ヘドロのようなものをはき出すためにさ、俺はピアノの前にすわって、強烈なブギウギピアノを弾きはじめたわけ そして今の気持ちを
そのブギウギピアノにのせて歌ってみたら、なんと〝レディマドンナ〟か完成してたのよ そんなもんなんだよね 歌が生まれる瞬間
なんてのはさ えーっと それで青盤の次の俺の歌は、〝ヘイジュード〟か これはもう説明不要でしょ ジョン、君の離婚劇がなかったら、
そもそも20世紀最大のこの名曲は、生まれていなかったんだからね まさしく、ヘイ・ジュリアン、元気を出せよってことが
いいたかった最重要項目さ えへん そしていよいよ次は、〝バックインザUSSR〟かー 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「〝バックインザUSSR〟の発想の源はそう、インドだよな ジョン、君が夕食のあとの
リラックスタイムにさ、みんなでなごやかにすごしていた時のことだ 生ギターをかかえて、〝ああ、俺はもうインドに飽きちまった、空気も
食べ物ももう何もかもうんざりさ、死にてえくらいに、アメリカに帰りたいよ、ホントまいったね〟とかいって、チャックベリーの〝バックインザ
USA〟を弾きはじめて歌い出したのを、覚えてる？ 拍手喝采をあびて君の独演が終わったあとに、それを受けて俺が、ちょうど生ギターを
かかえていたもんだから、即行でその場でひらめいた〝バックインザUSSR〟なんていうデタラメソングを歌いはじめたんだ そしたら同席して
いたドノバンとマイクラブが大笑いしてさ、その歌に即行のビーチボーイズ風コーラスをつけてくれたもんだから、その場にいた全員が
大爆笑となったわけ 俺としては君のお株を奪っちまったかなと、その場で冷や汗もんだったけどね 君を見たら、君も大笑いしてくれていたから
ひと安心ってもんさ その場はジョークの歌としてひらめいた唄だけど、帰国したら絶対カタチにしてやろうと思ったもんだよね でも結局
歌詞とメロディーは、インドにいるうちに完成しちまったんだけどね 完成版をアコギ一本で、ドノバンに聴かせた記憶があるな 遠い昔の
リシケシュの森の中での、寓話のような思い出話だよな これはジョン、覚えてる？」 ジョンはソファーに深くもたれた身のまま、両手で
頭を組み、どこか遠くを見つめるような目をして「ああ」と答えた ポールはつづける 「次の俺の青盤の歌は、ええと、公式発表で君が
イチバン嫌ってる、俺のマイベイビー〝オブラディオブラダ〟か これも最初は、インドだったんだよな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「〝バックインザUSSR〟の発想の源はそう、インドだよな ジョン、君が夕食のあとの
リラックスタイムにさ、みんなでなごやかにすごしていた時のことだ 生ギターをかかえて、〝ああ、俺はもうインドに飽きちまった、空気も
食べ物ももう何もかもうんざりさ、死にてえくらいに、アメリカに帰りたいよ、ホントまいったね〟とかいって、チャックベリーの〝バックインザ
USA〟を弾きはじめて歌い出したのを、覚えてる？ 拍手喝采をあびて君の独演が終わったあとに、それを受けて俺が、ちょうど生ギターを
かかえていたもんだから、即行でその場でひらめいた〝バックインザUSSR〟なんていうデタラメソングを歌いはじめたんだ そしたら同席して
いたドノバンとマイクラブが大笑いしてさ、その歌に即行のビーチボーイズ風コーラスをつけてくれたもんだから、その場にいた全員が
大爆笑となったわけ 俺としては君のお株を奪っちまったかなと、その場で冷や汗もんだったけどね 君を見たら、君も大笑いしてくれていたから
ひと安心ってもんさ その場はジョークの歌としてひらめいた唄だけど、帰国したら絶対カタチにしてやろうと思ったもんだよね でも結局
歌詞とメロディーは、インドにいるうちに完成しちまったんだけどね 完成版をアコギ一本で、ドノバンに聴かせた記憶があるな 遠い昔の
リシケシュの森の中での、寓話のような思い出話だよな これはジョン、覚えてる？」 ジョンはソファーに深くもたれた身のまま、両手で
頭を組み、どこか遠くを見つめるような目をして「ああ」と答えた ポールはつづける 「次の俺の青盤の歌は、ええと、公式発表で君が
イチバン嫌ってる、俺のマイベイビー〝オブラディオブラダ〟か これも最初は、インドだったんだよな」 （つづく）
辛いスレだな・・・
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「なぜ君がそんなに〝オブラディオブラダ〟のことを嫌うのか、それを知ってるのはまあ
張本人の俺ぐらいなもんなんだけどさ ジョン、これってなんか、おかしいよね？ 目をとじれば、インドでのあの日々が、昨日のことのように
まさにホント、まざまざと思い出すことができるのにさ 暑くて寝苦しい夜の、リシケシュの森の中での、あのバンガローの日々 君はある日
〝ヤーブルース〟という歌を書きあげて、得意になっていたっけね 生ギターをかかえては、そればっかし歌いはじめるもんだから、まわりの
人間は君のことを〝インドの自殺人間〟と呼びはじめる始末だった なぜなら君がギターを手にすると、必ず〝〟朝に～は～ 死～に～た～い～♪
夕に～は～ 死～に～た～い～♪〟と、そればっかりだったからね インドに〝生きる意味〟を探索しに来た君が、生きるどころか、まさに
〝死を渇望〟する名曲を書きあげちまったとは、なんともはや皮肉なもんだと、俺は思ったもんだった でもジョンが〝ヤーブルース〟を歌って
聴かせてくれるたんびに、俺はジョン、それはちょっと違うんじゃない？って気がしてくるのも、リアリーだったんだよ そしてある日、
君の対面で生ギターをかかえていた俺がさ 〝人生は～ やっぱし～ 続いて～ いくもん なんだ～よ～♪ 自殺反対！オブラディオブラダ～♪〟
って、人生を謳歌する歌をうたい始めたもんだから、君は思い切り、顔をしかめてみせたよね 顔をしかめながらも、好奇心旺盛の君はこう訊いた
〝そのオブラディなんとかって、どういう意味なの？〟 俺は答えたよね 確かアフリカ系民族のどこかの部族の呪文のような言葉で、
ライフゴーズオンと同じ、人生は続いていくもんだって意味なんだよ、ジョンとね なんでお前が、そんな呪文を知ってるの？って、
君は訊きかえした 俺は答えた そう、アルバム〝リボルバー〟のことを、まだ仮タイトルでみんなが〝アブラカダブラ〟と呼んでた時のことさ、
俺はそれに類する呪文のような響きをする、面白い単語が他にもないものかと、色々な人間にたずねてまわってた時期があってね
その頃に収穫した単語だったんだよとね 君は確か、つまらなそうに〝ふーん〟とか、いってたっけな ハハ」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「〝バックインザUSSR〟の発想の源はそう、インドだよな ジョン、君が夕食のあとの
リラックスタイムにさ、みんなでなごやかにすごしていた時のことだ 生ギターをかかえて、〝ああ、俺はもうインドに飽きちまった、空気も
食べ物ももう何もかもうんざりさ、死にてえくらいに、アメリカに帰りたいよ、ホントまいったね〟とかいって、チャックベリーの〝バックインザ
USA〟を弾きはじめて歌い出したのを、覚えてる？ 拍手喝采をあびて君の独演が終わったあとに、それを受けて俺が、ちょうど生ギターを
かかえていたもんだから、即行でその場でひらめいた〝バックインザUSSR〟なんていうデタラメソングを歌いはじめたんだ そしたら同席して
いたドノバンとマイクラブが大笑いしてさ、その歌に即行のビーチボーイズ風コーラスをつけてくれたもんだから、その場にいた全員が
大爆笑となったわけ 俺としては君のお株を奪っちまったかなと、その場で冷や汗もんだったけどね 君を見たら、君も大笑いしてくれていたから
ひと安心ってもんさ その場はジョークの歌としてひらめいた唄だけど、帰国したら絶対カタチにしてやろうと思ったもんだよね でも結局
歌詞とメロディーは、インドにいるうちに完成しちまったんだけどね 完成版をアコギ一本で、ドノバンに聴かせた記憶があるな 遠い昔の
リシケシュの森の中での、寓話のような思い出話だよな これはジョン、覚えてる？」 ジョンはソファーに深くもたれた身のまま、両手で
頭を組み、どこか遠くを見つめるような目をして「ああ」と答えた ポールはつづける 「次の俺の青盤の歌は、ええと、公式発表で君が
イチバン嫌ってる、俺のマイベイビー〝オブラディオブラダ〟か これも最初は、インドだったんだよな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「〝レディマドンナ〟のイチバン最初の発想の源は、ずばり君のワイフの
オノヨーコその人さ 最初、彼女はいきなり俺の心の扉の中に土足であがりこんで来たかと思うと、巨額の寄付金を求めてきたものだった
わけのわからない次のアート展のために、これこれしかじかの金額が必要だから、ぜひご援助お願いしますというわけさ なぜ彼女が、
ジョン、君を訪れる前に俺のことを訪れたのか、それは謎なわけだけどさ、俺は考えたね 俺は彼女になんか義理でもあるのか？とね
次に考えたのが、彼女にとってお金というものは、まさしく天からでもふってくるものかということだった 家賃なんかはどうしてんだ？
とも思ったもんさ 俺が拒否すると、今度は彼女、泣き落としと来たもんだ 私にはミルクも飲ませなきゃならない子供もいるんですとさ
そんなの俺に関係ないじゃない それで俺はいったのさ 前衛アート関係だったら、我らのリーダー、ジョンレノンの方が、理解をしめす
かもしれないとね すると彼女はさっそく、君のことをストーカーしはじめたんだよな 彼女が我が家をひきあげたあと、俺は考えた
彼女はさ、いったい借金なしで、どーやって暮らしているのかな？とね そしてさっそく、澱（おり）のように心の底にたまったこの
ヘドロのようなものをはき出すためにさ、俺はピアノの前にすわって、強烈なブギウギピアノを弾きはじめたわけ そして今の気持ちを
そのブギウギピアノにのせて歌ってみたら、なんと〝レディマドンナ〟か完成してたのよ そんなもんなんだよね 歌が生まれる瞬間
なんてのはさ えーっと それで青盤の次の俺の歌は、〝ヘイジュード〟か これはもう説明不要でしょ ジョン、君の離婚劇がなかったら、
そもそも20世紀最大のこの名曲は、生まれていなかったんだからね まさしく、ヘイ・ジュリアン、元気を出せよってことが
いいたかった最重要項目さ えへん そしていよいよ次は、〝バックインザUSSR〟かー 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「兄さん、ポールがそんな状況の中で、その日32回目のオーダーリンの一回目のサビの部分を
切々と歌い終えた時のことさ ヨーコ専用のマイクからこんな声がスタジオ中に鳴り響いたんだな〝ダメ、いやよジョン そんなとこ
さわっちゃダメだったら いけないわ、かんにんして ここはスタジオの中なのよ オホホホホッ〟〝ダメだったら、ジョン！〟
バーーーーーーーーーーン！ いきなり不協和音を叩き出して、ポールは弾き語りをやめたのさ そしてゆっくりとスタジオのはじに
そなえつけられたヨーコのベッドをにらみつけたんだな そこにはベッドのシーツにくるまって、重なったままのジョンとヨーコが
逆に不敵な笑みをうかべてポールをにらみ返していたのさ ま、時が止まったって感じだよな ジョンがクチを開く〝なんか文句あん
のかよ、ポール？ あん？〟 気持ちが爆発しそうになったポールは、一度深く深呼吸をしてから、そしてゆっくりと語りはじめたんだ
よな 〝ジョン、このオーダーリンって歌は君がいうとおり、君向きの歌だし、君が歌ったほうがいいのかもしれない 俺が歌うより
そのほうがたぶん、ずっといいものが出来るだろう それは俺も認めるよ しかしだジョン この歌は俺が歌うしかないんだ この
歌を思い浮かんだ最初のきっかけを教えてあげようか？ 去年の暮れあたりに俺は夢を見たのさ 丁度君とヨーコがスッポンポンの
アルバムジャケットのトゥーバージンズを発表して、世間の度肝をぬいてた直後の頃だったと思う その夢の中でだジョン 俺は君に
サヨナラをいわれたんだ 俺はもういつビートルズを脱退してもかまわないよ、ポールって 夢の中の君は俺にいったんだよな
朝起きて俺は冷静でいられなかった きっとこれは予知夢というものになるはずだとね そして俺は絶望的な気分で、もうろうと
ピアノの前に座ったのさ その時この歌のサビの部分が自然と出て来たんだ もう俺は必要ないのだと君にいわれた時、俺はめちゃく
ちゃで泣いてしまった もう俺は必要ないのだと君にいわれた時、俺はめちゃくちゃで死んでしまった♪ の部分がね
だからジョン この歌は俺が歌うしかないのさ この歌はひとりぼっちの俺の歌なんだよ〟」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ「久しぶりだね、兄さんよ 最近小学館が出した翻訳本〝ビートルズ非公式の真実〟ってやつは
久々のヒットだね 日本版前文をピーターバカランさんが書いてるけれど、ホンモノの前文はあのハンターデイビスってのも
キてるよね まあ最近、改訂版全1冊五千円で出たマークルイソンの〝ビートルズ全記録〟よりも、読みごたえがあるってもんだ
当然俺は1961年10月、ジョンとポールふたりだけのパリ旅行のところと、「シーセッドシーセッド」にポールは参加していないって
ところはチェックしてみたさ 〝非公式の真実〟のほうはちゃんとポールは参加してないと、ポール自身の談話が転用されてたね
まあしかしなんだね 東京は明日も雨だって？ これで４日連続じゃねえのかよ 雨だとわざわざ新宿歌舞伎町まで出向いて裏ＤＶＤ
買おうってお客さんの客足も落ちちゃうんだよね それでなくてもこっちはいつパクられるかも分からないって立場でキョどってん
だからよ おてんとさんもなんとかしてほしいもんだわな よし、兄さんそろそろ本題に入ろうか
1979年の晩秋のある日のことだ ポールはひとりでふらりとよ、ニューヨークのダコタアパートのジョンを訪ねたってわけさ
その年の6月にウィングスの新メンバーと〝バックトゥジエッグ〟を発表したポールはよ 12月にロンドンで開かれるカンボジアジア
難民救済コンサートに、ジョンも出てもらえないかと、頼みにいくつもりだったんだよな というのは表のタテマエであって
ポールの本音はよ 来年40才で死ぬことになるはずのジョンの心がまえというか、身辺整理状況というか、その前に本当に
いつか激昂して話したとおり、ニューアルバムを１枚発表して世界ツアーに出るつもりなのか、それなら何か俺に手伝えることはないか
なんてことを、膝つけあって談判したくなったってところなんだよな ポールはいつものようにダコタの警備員をすいすいとやりすごして
ジョンとヨーコの部屋のドアの前に立つと、チャイムを押したのさ ピンポ～ン♪ インタフォンからジョンの声 「誰！」
ポールは〝本当にジョン、来年逝っちまうのかよ？〟と複雑な気持ちで返答したのさ
「はるばるロンドンからカンボジア難民を救済に来た、ナークツインズのもうひとりだよ 」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 裏ＤＶＤ屋の中年従業員の独白にあなたは驚愕するだけだ あなたは訊く「ではジョンレノンは
自分が40才で死ぬということを、知っていたとでもいうのか？」「もちろんさ、兄さんよ 冷静に考えてみな 25才で富も名声もある
ポピュラーロック歌手がだよ ふつう〝彼女は死後の世界を知ってるっていうんだ、頼むから俺にそんな話は聞かせないでくれ〟なんて
歌を、自分で書いて歌うかい？ 日本公演の前にすでにもう、こうしてジョンは死後の世界の恐怖について歌ってんだからな シーセッド
のことだけどよ 1964年ぐらいまではあんな占いのことなどすっかり忘れて、がむしゃらに突っ走って来たジョンもだ 1965年ぐらいに
なるとじわりと恐怖が押し寄せて来たんだろうな なにせ人類未踏の大成功を収めてよ、誰も経験したことのないスターダムの真っ只中に
いてもだ 常にあのタロット占いの真実がジョンの深層心理にはりついていたんだからな 〝明日はどうなるか分からない〟だとか
〝俺の木には誰もいない〟だとか〝俺も彼もあんたもあいつも結局薬局みんな一緒〟だとかよ その恐怖を払拭するために、ジョンは
自作曲を哲学的抽象的方面にシフトせざるをえなかったんだと思うわ あげくはあと10何年の命ならと、ヨーコと前人未踏の平和運動に邁進
することになるんだな フルチンのオールヌードになったりしたのも、40才までの命と分かっていたからのことなのさ ミックジャガーがよ、
ボブディランがよ、ペニスまでさらす根性あると思うかい？ ジョンは堂々とそれをやってのけたんだからな 捨て身の覚悟があってのこと
なのさ 死の直前にもローリングストーン誌の表紙でオールヌードになって着服のヨーコにからんでみせたっけ あれもあの占いに対する何か
捨て身の挑戦みたいなもんだったんだろうな 殺せるもんなら殺してみやがれ、俺はスッポンポンでまだまだこうして生きぬいてやるぜ、みたい
なね すべてを知ってるのはポールだけだったのさ ジョン20才の誕生祝いの、あのふたりだけのパリ旅行のノミの市のタロット占いー
知ってたからこそポールは、ジョージとリンゴが拒絶した〝ジョンとヨーコのバラード〟にも、ドラムとベースで参加したんだろうな」 （つづく）
あなたはレココレ読者のひとりだ 「なあ兄さんよ ほぼひと月ぶりだよな その間俺は風邪にやられて寝こんだり、長期間の
アクセス禁止のまきぞえをくらってカキコメなかったりして、踏んだり蹴ったりの状態だったのさ 俺はどこまで語っていたん
だっけな？ しかしまあ兄さん 俺は昭和25年生まれの、もうすぐ60才にもなろうとするとっつぁんだけどよ 俺が中学生
ぐらいの頃に西暦2000年ていったらよ、そりゃあもう、こう宇宙のはてのはて、アクロスザユニバースって感じだったんだけどよ
現実世界は今やとっくの昔に2009年ってんだからな 〝2001年宇宙の旅〟の2001年を軽くこう飛び越えてるなんて、俺はそれが
今だに信じられねえんだよ ローリングストーズがサージェントペパーの後追いで出したサタニックマジェスティーズの中によ、
2000光年の彼方にと2000マンて歌が入ってたけどよ、リアルタイムにそれらを聴いてた俺らの年代にとっちゃよ 西暦2000年の
向こう側なんて、ホントもうまるでそんな感覚だったんだよな 小学生の頃の俺にさ、2009年はどうなってるって訊いてみたらよ
そんなＳＦ世界みたいなことなんて、さっぱり分からないって答えてるな そんなＳＦ世界の中を今、俺も兄さんも生きてるって
わけなのさ まあなんで俺がこんなしんみりとした話をしてるのかというとさ つい最近俺は〝レボリューション１〟の11分にも
およぶフルバージョンを聴くことができてね、さすが2009年、長生きしてればこんなものも聴ける時代になっちまってんだなぁと
感慨にふけったわけよ マークルイソンのレコーディングセッションの日本語版166～168ページの記述そのまんまの展開だったな
後半がまんまレボリューション９に転化されてるなんて、こうしてホンモノを聴かない限りさ、絶対理解できないって感じだよな
いずれヘルタースケルターの27分バージョンなんてのも、途中でジャズ風セッションになってるつーんだけどよ、聴ける日が
来んだろうよな その日まで俺が生きていられるっかってのが問題だけどよ ワッハッハ シェアスタジアムのホンモノの
サウンドボードを聴いた時も感激したけどよ 今回もそれにまさるよな 今回は久しぶりなんで閑話休題
次回からまた続きを語ることにするとしようか 」 （つづく）
※傾向と対策は次、64からです。
ビートルズを知りすぎた不幸って言うのは確かにあるかも・・
会社で部長に怒られたのは気の毒だったね又、明日頑張ればいいさ☆
トゥモローとせいうちが好きなBAR玉枝さんのお店１度行ってみたいね♪
武道館でレイン演奏したってのは本当なのか！？まぁ嘘だと思うけど気になったｗ
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける 「つまり、君のブルージーな厭世観まるだしの名曲〝ヤーブルース〟の対極に位置する
この楽天的で陽気なカリプソ＆レゲエの〝オブラディオブラダ〟を、君が超嫌うのは、もっともな話なんだよね、ジョン それが俺のもつ本質
でもあり、〝ヤーブルース〟こそ、君の素晴らしい本質の一面でもあるのだからね だから磁石のＮ極とＳ極のように、俺たちは惹かれ合ってん
だからさ うーん、うまくいえないけど〝ヤーブルース〟と〝オブラディ〟の関係は、〝ウィキャンワークイットアウト（恋を抱きしめよう）〟
が、イチバン近い関係のような気がする そんなに深刻に考えずに〝うまくゆくはずさ〟と楽天的に歌っちゃう俺に対して、ジョン、君がサビで
書いてきた〝人生なんて、とても短いんだから、争うなんて罪深いことだよ〟というシニカルな視線、それだよね 公式発表では君が、目の上の
タンコブのように嫌ってる、この〝オブラディオブラダ〟だけど、ジョン ふふっ 俺は君がこの歌を愛してるってことも、もちろん知ってるん
だよね 俺が生ギターバージョンで、何テイクもこの〝オブラディ〟に悪戦苦闘していた日々、それを横で見ていた君がさ ある日べろんべろんに
酔っばらったふりをして、スタジオに入って来たじゃない？ そして君は叫んだ 〝おい、ポール！ お前が苦戦しているそのアブラカタブラっての、
ピアノでやればいいんだよっ！ よく聴きな！ こんな感じにだよ！〟 そして君はあのホンキートンクなピアノのイントロを痛烈に叩き出しては
いつものラリルレレノン調の替え歌まじりで〝オブラディオブラダ〟を歌い出したよね？ 君のハナモゲラ語がさえにさえて、俺は涙が出るほど
笑いころげたもんだけど、ジョン 君のその道化師の仮面の下から、俺は愛を感じたのも事実なのさ どうしても〝オブラディ〟に、ピアノという
発想は、俺には浮かばなかった なんでか知らないけど、生ギターサウンドに固執してたんだよな それを君が一気に打破してくれたんだ
酔っぱらったふりでもしなきゃ、あの頃の緊張感たっぷりの俺達の関係上、つまりいつもヨーコがいたからね 君は俺を助けられなかったってわけさ
それを知ってるのは、たぶん俺とリンゴぐらいかな ハハ 」 （つづく）
オブラディオブラダってレゲエなの？本物のレゲエとは
リズムが全然違うと思うけど。。普通の８ビートですよね
ポリスとかは上手くカリプソレゲエのリズムを取り入れてロックしてたけど
警察なんてボブマーリーのポスト世代だろが
世間がレゲエを周知するずっと以前にあのピアノの裏打ちバッキングをやった意義だよ、重要なのは
ああ、アレはレゲエのリズムだったんだと後世が解釈した。当時の本人たちがどれほど自覚的だったかは疑問だが
こっちの傾向と対策を早く終わらせてくれよ
続きが気になる
要は期待してるってこと
あなたはレココレ読者のひとりだ 〝ポールはつづける「これは今だから俺もいえることさ あれから10年以上の月日が流れてるしね
君の〝オブラディオブラダ〟に対する一連の発言は、〝可愛さあまって憎さ百倍〟これに尽きると思うな あの歌を決定づけたホンキー
トンクピアノの生みの親はジョン、君自身なんだからね 〝オブラディ〟は、君のマイベイビーでもあるんだぜ ラストの〝サンキュー〟
っていう道化師仮面のジョンの声、俺はあの君のおどけた声が、永遠にレコード盤の溝（みぞ）に記録されたってことだけで、大満足なのさ
ごほん ええと、そしてあと青盤にのこる俺の歌は３曲か 〝ゲットバック〟に〝レットイットビー〟、〝ロングアンドワインディングロード〟
タネ明かしをするまでもなく、ジョジョは君のことさ ジョジョ、昔いたところに戻ろうぜ！ そこを歌うたんびに俺はわざと、君のほうに
顔を向けたもんだよ 君は俺の視線を、一度もまともに受けとめようとしてくれなかったけどね はは オカマのロレッタマーチンは、
プロデュースを降りたジョージマーチンのことをからかう意味もあったけど、自分を女だと思ってた男ということで、俺たちを世に出してくれた
偉大なるマネージャー、ブライアンエプスタインのこともダブルミーニングでかけてみせたのさ そう、そしてロレッタマーチン
オマエも昔自分がいたところに戻るべきなんだ！とね ふっ 自分で自分の歌の意味なんかを説明するのは、まったくへんてりんな話なんだ
けどね 特に君のような洞察力の鋭い人間を前にしちゃ、なんか面接試験の口頭試問を受けてるような気分さ まったくだ ブライアン
エプスタインとジョージマーチンがいたあの素晴らしい昔のところへ、今こそもう一度帰ろうジョン、というのが〝ゲットバック〟の主旨
そのものだったのさ 君は当然、百も承知で受け入れてくれたんだよな ハハハ これはシングル向きだなとも、いってくれたしね」
そこまで黙って天井を向きながら聞いていたジョンは、一服深くジタンの煙を吸引すると、ガラスの大ぶりな灰皿で、荒々しく
それをもみ消した （つづく）
他人のことを バカバカいってたら
自分の運がどんどん逃げていくんだよ
どんどん逃げていく自分の運 さみしい人生
小倉博バカw
他人のことを バカバカいってたら
自分の運がどんどん逃げていくんだよ
どんどん逃げていく自分の運 さみしい人生
小倉博バカw
他人のことを バカバカいってたら
自分の運がどんどん逃げていくんだよ
どんどん逃げていく自分の運 さみしい人生
小倉博バカw
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1251723400/
書かないなら、俺が続きを来週書こうか？
ホンモノの小倉博さんよ
あなたの写真まで さらして
あなたのことを誹謗中傷している
>>529-531
こいつのことを、法的に処罰できるぜ
匿名をいいことに
こんな行為をくり返す輩は
あなたの弁護士の力を 利用して
さっさと、処罰したほうがいいぜ
ネットの、いい判例になるはずだ
早く 警察に通報しろよ
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アハハハハハハハ。
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