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2012年5月新シャア専用99: もしも刹那がエヴァの主人公だったら第弐話 (281) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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もしも刹那がエヴァの主人公だったら第弐話


1 :10/01/11 〜 最終レス :12/05/14

刹那・F・セイエイ「エヴァ初号機、刹那・F・セイエイ、目標を殲滅する!」
・テンプレ
刹那がEVAの主人公だったらというIFネタ、00とエヴァのクロスネタのスレです。
基本sage進行 。落ち過ぎたらageて
荒らし、アンチはスルー
次スレは>>980あたり
・前スレ
もしも刹那がエヴァの主人公だったら
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1247303298/l50
・SSの保管先: ガンダムクロスオーバーSS倉庫
ttp://arte.wikiwiki.jp/
その他→一番下に作品が置いてあります。
場所が変わる場合もあるので見つからなかったらログ参照
ネタ師、新人職人、雑談、考察歓迎

2 :
       ∧  ∧
       |1/ |1/
     / ̄ ̄ ̄`ヽ、
    /        ヽ
   /  ⌒  ⌒    |驚愕の展開に、ムーミンも驚きを隠せないようです。
   | (●) (●) U |
   /          |
  /           |
 {            |
  ヽ、       ノ  |
   ``ー――‐''"   |
    /          |
   |          | |
   .|        |  | |
   .|        し,,ノ |
   !、          /
    ヽ、         / 、
     ヽ、  、   /ヽ.ヽ、
       |  |   |   ヽ.ヽ、
      (__(__|     ヽ、ニ三

3 :
という事で半年ルールにより落ちたので立てました。正直焦りましたorz
それと、即死判定から逃れる為に予告していた解説レス今から投下します。
新スレ一発目から投下失礼します。

4 :
刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
EVA-00設定解説
第一回『世界情勢と各組織について』
まず、開設コーナーに関して。
本来小説で説明しろ!と言う部類の文章なのですがそれやると
説明台詞と地の文での説明が長過ぎ
物語をやりたいのか作った設定を説明したいのか解らなくなるので
物語部分のウェイトを減らす為に別個で解説シリーズを設ける事にしました。
一部物語の展開前に開示されている情報もありますし
後から物語で説明する台詞もありますがご了承下さい。
では、今回は第一回という事でざくっと世界についてのお話を。
ココは00準拠の設定が濃い目に反映されています。
原作EVAでは殆ど世界情勢に触れなかったのでそのまま導入しました。
既に閑話窮題(シンジ編1)や本編でグラハムやスメラギさんが言っている様に
AEU、人革連、ユニオンが全部あって勿論、各自一基ずつ軌道エレベーターを所有しています。
ユニオンの経済特区として日本は入っています。で、00世界よりは緊張状態にはありません。
CBがあっちこっちでテロもやらなければ、イオリアが全世界に
喧嘩も売っていないので程よい冷戦状態にあります(今のところは)。
なんでかというと大体の三勢力の首脳クラスは殆ど使徒の話を知っている上に
この世界でも勿論セカンドインパクトが起きているのでその混乱を平定する為に
軍は使われており、お互いにドンパチ遣ってる余裕はあんましありません。
むしろ、小競り合いに全力掛け過ぎて使徒の対応をNERVに丸投げしている形です。
それ以外の地域。主に中東は相変らずと言う感じです。
石油枯渇はない(本家でもいつの間にか無くなってました)のですが
セカンドインパクトの混乱がまだ尾を引いてます。
実際、原作EVAでも民族紛争や戦争が結構起こっていましたのでそこら辺は程よく被ります。
後、やっぱり軌道エレベーターの恩恵が受けられません。
刹那が巻き込まれた紛争も殆ど原作通りですがココらへんは物語で追々。

5 :
NERVに関しては3勢力全てに支部があり、技術徴用もされています。
そして、バックアップと言うか陰で操っているのは
ゼーレともれなく、監視者(コーナー家など)もついてきます。やったね!
彼らは『人類補完委員会』と言う形で一つの会合を参加しており
NERVの方針や処理を話し合ったりしています。
ゼーレとNERVの関係は一緒ですがそれとは別に監視者の勢力もあります。
監視者達はEVAのより現実的な運用
要するに”使徒を全部倒した後の世界”の事を考えています。
終末思想的なゼーレとあくまで人類の存続に拘る監視者は
『使徒を倒す』『人類に革新をもたらす』と言う共通目的で一緒になっています。
EVAなどの原作EVA技術はゼーレ供給
GNドライヴなどは監視者の側の技術者が提供しており
両方を享受しているNERVの技術力がやばい事になっています。
イオリアは両組織がまだ一つだった頃の代表(キールのポジ)で
『人類補完計画』と『来るべき対話』について両案を纏めています。
要するに考え方というか、死海文書の解釈の方針で派閥、宗派が出来たと考えて下さい。
で、NERV本部ですが酷く人材不足です。
赤木博士とミサトさんの脱落、シンジ、レイが出れない事情、零号機の実験失敗で
全体的に技術が遅れており、監視者(GNドライヴやヴェーダ)の技術の占有率も高いです。
単純なイメージで言えば、原作のNERVに比べて半分近くまで技術力はダウンしています。
その減った半分を監視者側の人材、技術etcで補っている形ですね。
詳しいことはまた別の日に改めて解説します。
後、原作EVAではダミー組織だったマルドゥーク機関ですが今回はばっちり存在します。
細かい事はおいおい登場しますがそのおかげでNERV本部も含めてEVAパイロットや技術者の派遣や
採用が制限されているのでトウジの様な現地徴用が難しくなっています。
その代わり、あっちこっちで00世界の登場人物が
NERVと軍を出たり入ったりがあって人間関係所属がカオスになってます。
そこら辺もまとまり次第、物語とは別に解説コーナーで纏めようと思います。
今回は大体こんな感じで。次回解説は『この世界の技術について』
本編投下はまた来週以降、纏まり次第予告します。
ちょっと刹那の心理パートを入れたら長くなってるのでバランス調整中。
その後解説コーナー二回目投下予定です。では、投下失礼しました。

6 :
>>1乙がエヴァンゲリオンだ!

7 :
ゲンドウ=リボンズ
冬月=アレハンドロ
これなら俺は楽しめる

8 :
土壇場で「後は任せましたよ。アレハンドロ様」なリボンズはアリといえばアリか?

9 :
支援age

10 :
半年ルールで落っこちてたのか。
寝腐さんスレ立て乙。
ついでにあげ。

11 :
GJ、GJ
それはいいが、ここ30レスルールとかなかったっけ?

12 :
なんか面白そうなことやってるな少し期待してるぜ

13 :
>>1スレ立てとそして投下乙
>>11三ヵ月ルールじゃなかったっけ?

14 :
このスレ見たことないけどカヲルとかは味方なの?

15 :
>カヲル君
職人が一人居て、それではまだ未登場
前スレでは刹那と性格あわなそうってネタがあった
貞本版では大分冷めた性格だったからとか

16 :
>>15
なるほど

声優ネタで何かやろうと思ったけど職人が一人ならやめといた方がいいかな
カヲルの中身をネタにすると冷めた感じとは真逆になるだろうからさ

17 :
>>16
いやいやいやいや、むしろ遠慮しないでやっちゃって下さいorz
こっちは設定重いし、作成速度遅いんで手軽に楽しめるネタとかは大歓迎ですよ

18 :
>>13
俺もちょいちょいルールがかわるから、わけわかめになってる。
ともかく、レス数は増やしておくに限るかと。

19 :
ただの通りすがりだが落ちるルールについて
20レス未満で2週間レスがない場合
980レス以上で24時間レスがない場合
以上

20 :
そうかじゃあ20いったし落ちはしないな

21 :
サンクス!
で、これで規定は守れた訳だな。
例のウイルス型使途との攻防ではないが、2秒余裕あれば言い訳かw

22 :
本日九時、閑話窮題「死の天使 中編」投下予定です。
前編は此方
ttp://arte.wikiwiki.jp/?EVAcrossOO_%BF%B2%C9%E5%A2%A1PRhLx3NK8g%BB%E1_EX_2%CF%C3
話を繋げる為に一部00にもEVAにも出てないキャラが出張ってます
詳細元ネタはあまり気にせず、よくあるマッド爺位の認識でOKですので

23 :
という事で投下開始します。ちょっと今回長めです

24 :
刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
    閑話窮題「死の天使・中編」
―4年前人革連のとある研究所にて
             ”双子は何処だ!”
 時は第四使徒襲来より四年前、人類革命連盟の数多くの地域でこの言葉が踊っていた。
 ありとあらゆる人種の双子が政府から買い上げられた。
 召集された双子は何処ともわからぬ施設に収監されていった。
 それに便乗し双子である事を隠したり、故意に双子と偽って富を得ようとする者まで現れる始末。
 だが、そこは人員は畑で取れるといわれている人革連。
 まさにその力をフル活用した研究がこの場所では行なわれていた。薬物投与に精神操作etc。
 人道、人権などという言葉は既に忘れ去られたアーティファクトの様に此処に居る誰もが狂っていた。
 そんな狂気のゆりかごの中で皮肉めいた口調のままぶつぶつと文句を言い合っている集団。
 アジア系とロシア系の科学者らしき格好の人物達が不満を吐き散らしながら廊下を闊歩している。
「あのドイツ人がまた双子で実験をするそうだ」
「あんな気狂いに我々の超兵研究の予算が持っていかれているとなるとやりきれないモノだよ」
「なぁに、あんなやり方ではその内ヘマをするのが眼に見えている。
 エヴァを動かすのに最適なのは我々の超兵だ」
「口だけで動かせりゃ苦労しねぇーよヴァーカ」
「ふん、あのドイツ人の子飼か。生意気な口を利く」
 それを立ち塞がる様な位置で仁王立ちになっている少年が1人。
 青い髪に独特の白い生地に黄色いラインの入ったスーツを身に纏っている。
 ぴたりっと吸い付くそのデザインは筋肉の隆起を如実に表していた。
 大人数人など叩き伏せるには充分な程の肉体とそれに伴った自信溢れる表情を見せ付けている。
 その少年の言葉に不機嫌さをあらわにする集団。流石に殴りかかる様なモノは居なかったが
 指を指してやんややんやと罵りあいが始まった。男達は口々に理論だった批判を展開した。
 やれ、途中から入ってきた新参者がだのあれはヨーロッパのスパイだの皮肉と妬み
 様々な負の感情が混ざった罵詈雑言をその少年に向けている。
 少年は面倒そうに足を組み、耳を小指で穿り返しながらも
 一通り反論が終わった科学者達を睨み返す。その視線だけで一瞬怖気づく集団。
「ったく、男らしくねぇなさっきからぐちぐちと。手前らの超兵なんざ
 ろくに成果が上げられなかったのが、内のDrが何とか使える様にしてやったんじゃねぇーか」
「ハプティズム兄弟は我々の研究成果だ! それをあの男が横から」
「あぁん? シンクロ率を飛躍的に上げたのは何処の誰のおかげだ?
 そもそも、あいつ等の単独(シングル)での研究成果なんて俺達より下じゃねぇーか」
「なっ……知った風な口を!」
「貴様などあのドイツ人が居なければ此処にも居場所が無いモノを!」
「ミハエル!」

25 :
 少年の言葉に研究者達はネジ巻きを忘れた玩具の様にぴたりっと静止した後、わなわなと拳を振るわせる。
 最初は子供のからかい程度に感じていた研究者達もある人物の名前を自ら挙げて罵声を返す。
 青い髪の少年ははき捨てる様に言葉を返していく。
 一触即発の雰囲気の中、今にも殴りかかりそうな態度の少年を見つけた
 褐色肌の青年は少年の名前を呼び、静止を促す。
 研究者達のため息と安堵に近い声が漏れる中、ミハエルと呼ばれた少年は
 罰の悪そうな顔を向ける。それを見て科学者達はその褐色肌の青年へと矛先を一斉に向ける。
 その青年もまた独特の白いスーツを纏っていた。
 此方もやはり筋骨隆々と言った感じでミハエルよりも威勢と危なっかしさは無いが
 それでも目の前のもやしと肉饅頭の群れを一蹴するには充分に見えた。
「すいません。うちの弟が生意気な事を。ほら、ミハエルも頭を下げろ!」
「だってこいつらDrの事を!」
「いいから! 本当に申し訳ありません」
「育ちが知れるぞ、ヨハン・トリニティ!」
「狂犬には首輪をしっかり付けておきたまえ!」
「何処の馬の骨かも解らんから親の顔も見れんな!」
「全くだ! 躾けがなっとらん!」
「んだぁとごるぁっ!」
「ミハエル! もう行くぞ!」
 ヨハン・トリニティと呼ばれた褐色肌の青年は大人の対応を見せる。
 それに気を良くしたのか、大人気なさを体を張って表現していた研究者達も
 散々に捨て台詞を吐き散らして去っていく。
 その負け惜しみに釣られたのか怒鳴り声で怒りを露にするミハエルの手を引っ張って行くヨハン。
 ミハエルは途中でヨハンの手を振り解いてずかずかと不機嫌そうに歩調を合わせていた。
 最近のミハエルが苛立ちを隠せず、だれかれ構わず噛み付いているのをヨハンは知っていた。
 こうやって注意するのも今週で何度目になるか数え切れない程の頻度。
 ミハエルのあからさまな態度の変化に兄であるヨハンは手を焼いていた。
「ミハエル。今日は何があったんだ? Drの悪口で怒るほど好いてたとは思えんが」
「兄貴も知ってるだろ。今日もDrはあの双子の実験に掛かりきりだ。
 俺やネーナもようやく適正年齢になってシンクロの兆候が見えたっつーのによ!」
「また、そのことか? 仕方ないだろ。俺が年齢的に上がってしまった事もあるし
 いよいよヨーロッパでソロでのシンクロの成功が見えつつある。
 Drとしてはどうしても双子(ダブル)でのシンクロを成功させたい様だし」
「だけどよ、兄貴! あの二人だって年齢ギリギリ。
 そろそろ上がっちまう年だ。だっつぅーのに俺やネーナを差し置いて!」

26 :
 トリニティと名を冠するDrヨーゼフ・メンゲレの人体実験成果ミハエル・トリニティ。
 彼の苛立ちは実にシンプルだった。彼等はEVAを動かす為に生きていると同義。
 しかし、肝心の起動実験に関してはかなり長い期間お預けを喰らっていた。
 4年前、ドイツ支部から転属し、設備も実験成果も乏しい人革連所属の此方の支部へと移った。
 当初、左遷に近かったが待遇ではあり、不安も大きかった。
 だが、ヨハン・トリニティによる実験成功と革連の作り出した”超兵”と呼ばれる
 強化兵の起動実験への修正の評価は彼の予算にも顕著に見られた。
 順番的にも成果的にも、既に成果を上げているトリニティの次候補である自分や
 妹のネーナが優先的に起動実験に割り当てられる筈。
 研究機関に勤める誰もがそう思っていたが、見事に予想を裏切られる形となっていた。
 その当たり前だと思っていた展望と現実のギャップがミハエルを苛付かせていたいた。
 ヨハンはその弟の態度に自分の無力さを感じていながらも何とか宥めようとする。
 幾ら実験での成果を上げたとしても、起動出来なかった事が
 弟と妹への期待と感心を奪ってしまった事への自責の念は
 その研究所に所属する人間の想像より遥かに重く圧し掛かっていたのだった。
「心配するな。Drはちゃんと考えているよ。今度出向が決まったんだ」
「な? 兄貴だけかよ?」
「ああ、ゼーレ直轄のダミープラグとかいう奴の研究機関だそうだ。
 開発が大分難航してるらしいからな。実験と研究成果が活かせるらしい」
 それでもヨハンはそういった顔を見せる事はなかった。長兄としての責任感か。
 否、正確には兄だの妹だのと言う序列も名義的なものである実験成果ではあるのだが
 社会適合を目指した精神の変化なのかもしれない。
 ヨハンはミハエルにもネーナにも一度もそういった不安要素を見せる事は無かった。
 今もこうやってヨハンはミハエルを宥める為に両肩に手を添えて親の様に諭している。 
 物語的な視点で見れば、明らかに兄がよい判断をされていないのはミハエルにも解る。
 恐らく、ヨハンもそれは感じられているだろう。
 だが、それでも心乱している事が良いことにならないという共通認識の構築にヨハンは勤め
 それもミハエルも渋々受け入れるという形になっていた。
 不服だと顔にでかでかと書いているミハエルの表情を見てもヨハンは言葉を続けていく。
「良いか、ミハエル? 俺が此処を出るとなるとネーナを護ってやれるのはお前だけだ
 ”何かあったらお前がどうにかするんだぞ?”」
「あ、ああ」
「今日みたいに嫌でも頭を下げなきゃならん事が多いかも知れない。
 いや、それだけですまない事だって起きうる。だが、ネーナにとって支えはお前だけだ。
 ミハエル、この意味が解るな?」
「兄貴……もういっそ」
「Drへの義理立てはコレで済ませた事になっている。だから、お前達は上手くやれ」

27 :
 数ヶ月後、実験中の事故によりヨハン・トリニティは死亡したと書類上報告される。
 2年後、ミハエル・トリニティをダミープラグ研究施設への出向が決まる。
 それを知った当人が暴れ、警備隊との乱闘に発展。
 同実験成果ネーナ・トリニティと共に脱走を試みるが捕縛され
 その時に受けた傷が原因で意識昏倒。
 その後、病院へと運ばれるが翌日に死亡と書類上報告される。
 両名とも信仰宗教を持たなかった為葬儀は行なわれなかった。
 同年ネーナ・トリニティはEVA起動実験に成功し
 現在も人革連施設内で実験が続けられいると報告されている。
 また、人類で始めてEVAへのシンクロを成功させたのは
 AEU空軍所属の一人の少女である事をネーナ・トリニティは意図的に知らされてない。
― 同時刻、NERV北京支部EVA起動実験場
「Drメンゲレ」
「何かね! 私は今、いそが――」
「ネルフ本部より冬月副司令がご到着されました」
「なっ! 早く通したまえ!」
「わしを気にせず、作業を進めてくれたまえ」
「ようこそ、プロフェッサーコウゾウ・フユツキ」
 手術マスクで顔を隠す男が陣頭指揮を取り、データを打ち込まれる音が狭い制御室の中で響いている。
 目の前には巨人の姿……否、それは人と呼べるかどうかも怪しいものであった。
 手も途中までしかなく、下半身は丸ごと無い。まるで牛の精肉途中の様な形で吊るされている肉塊。
 それに何本もコードがつながれており、十字架の様な台に巨体を括り付けられていた。
 巨大な水槽に浮かぶそれはホルマリン漬けを彷彿とさせ、不気味な印象を与えている。
 自動ドアが開けば、二人の警護兵に挟まれる様な形で老人が1人入ってきた。
 最初警護兵の声を掛けられた男は不機嫌そうに声を荒げたが、続く名前には声色を変えて
 諸手を上げて歓迎するという言葉を体で表現するかの様に老人を中へと通していった。
「まさか、NERV本部の副司令殿が着て頂けるとは恐悦至極。研究者冥利に尽きます」
「本来は赤木博士や司令自ら来たかったのだが人革連は中々人の出入りが厳しい様でね。
 まぁ、視察という仰々しい形ですまないと思っているよ」
「はははっ。まぁ、ソレもまた人革連らしさと言う奴ですよ。私も最初は戸惑いました」
 冬月と呼ばれた老人は促されると僅かに頭を下げた後
 禍々しい肉塊を見上げながらそのマスクの男へと声を掛ける。
 マスクの男Drメンゲレは笑い飛ばしているがこれは皮肉であった。
 専門知識を持つ司令や赤木博士では見ただけで何か技術や情報を盗まれるかもしれない。
 そんな器の小さい懐疑心、この男の隠遁めいた性質、人革連の方針全てが合致した所為で
 兎角、此処の情報は本部へと届く事は少なかった。今回の視察が承認されるのも時間が掛かっていたし
 冬月も冬月で恐らく自分一人ならどうとでも言いくるめられると思っている評価を感じ取っていた。

28 :
「しかし、大事な実験日を覗きに来た様で申し訳ないよ」
「お気に為さらず。何せ、プロフェッサーは歴史の目撃者になります。
 今日この日を持って人類が初めてエヴァを起動させる日のね!」
「そうかね? まぁ、確かに驚嘆に値するよ。エヴァ仮設伍号機。
 聞こえは良いが、AEUがしぶしぶ人革連に差し出した不良品。
 いや、肉の残骸から此処までやるとはね」
「指定の材料が無ければ出来ないのが三流。あり合わせと既存の方法で何とかするのが二流。
 自分で材料から方法まで作ってこそ一流ですよ」
 嬉々とした表情はマスク越しにでも解るほどだった。それで漸く冬月にも合点がいった。
 この男には復讐心の様なモノが原動力なのだと。学会や以前のNERVドイツ支部での成果も
 否定されていた男がそれらを見返す為、そして見せ付けて認めさせる為。
 この男の話し口調の節々から垣間見える居丈高な態度は
 それらの巨大な自尊心から来るのだろう。今回も冬月が本部から探りに着たのではない。
 自分からこれを見せてやっているのだと言うつもりなのだ。
 ユニオン、AEU、そして人革連といがみ合う陣営からバランスを考えて
 与えたお為ごかしだったこの廃棄物に何か心情的肩入れをしているのかも知れないと
 安易な推理が冬月の頭を過ぎっていた。その思考を中断させる声がオペレーターの1人から上がる。
「ハプティズム兄弟、準備出来ました」
「Dr何時でもいけます」
「おーい、準備出来たぞー」
「宜しい。では、ハプティズム兄弟によるエヴァ仮設伍号機の起動実験を開始する」
「はいっ!」
「おぅっ!」
「今回はA-1からE-4までだ」
 準備完了の合図と共にDrメンゲレの指揮でオペレーターのコンソールを叩く音が一斉に始まる。
 専門用語のやり取りによる指示の応答が飛び交う中
 通信画面から顔を出したのは頭にパッチとコードを何個もつないだ少年二人だった。
 やや緑がかった黒髪の少年二人。肌が微妙に浅黒いなど
 他にも特徴はあったが冬月の視界に入った彼等の印象は瓜二つと言う言葉だった。
 まるで合わせ鏡に映りこんだかの様なその容姿のにかよりに目を疑い
 クローンではないかと錯覚するほどであった。映像と声が二人ともずれていた事から
 漸く二人が全く違う個体だと言う事に気付かされる。
 1人は大人しそうな雰囲気で丁寧な口調で通信を返し
 もう1人は子供の様な粗雑で乱暴な態度とふてぶてしさを持っており、性格は全く似ていない。
 冬月は目の前に居る男がかねてから言い続けていた一つの理論と目の前の状況が附合していった。
「双子(ダブル)の理論か……Drメンゲレ。
 私は正直な話、人革連の出すデータをあまり信用していない。本当にそれは可能なのかね?」
「ええ。そもそも、単独(シングル)でのエヴァのシンクロは非常に不安定だ。
 一対一でエヴァと対峙しお互いにそれを摺り合わせるには才能と資質が問われる」
「それを解消するのが双子(ダブル)と言うのかね?」

29 :
 冬月の言葉にメンゲレはその言葉を待っていたと言わんばかりに目を大きく見開いていた。
 それはこの男が長年に渡って独自の研究路線を推し進めていたEVAとのシンクロ方法の事である。
 正式な名義ではないのだが一卵性双生児を用いた用法である事から
 双子(ダブル)と言う名称が浸透しつつあった。逆にそれに釣られる形で
 一人でシンクロ実験を行なう事が後付で単独(シングル)と呼ばれる様になっていた。
 無論、好き勝手にしている様に聞こえているが実際にそれなりの成果を出している。
 パイロットを二人も揃える事と選別に時間が掛かる事から日本のNERV本部では行なう事が無く
 もっぱら機体の技術で一歩で遅れていたAEUや人革連で行なわれていた手法であり
 この男がその理論の第一人者であった。
「その通り! 一対一がダメなら二対一にすればよい。
 まず、双子による人間同士のシンクロをさせ”エヴァを人間に合わせさせる”」
「理論は解る。郡れる生物は数の多い方へ流れ、多数の風潮に従う傾向にある。
 今までの単独による個と個の対峙から個と郡による個の迎合を促すだったかね?」
「ええ。何も人間がわざわざ合わせる必要は無い。二つの同一性から世界はそれが標準だと思わせ
 エヴァ自ら歩み寄らせる事に成功すれば、後は一卵性の双子に訓練と多少の調整でパイロットなぞ
 幾らでも量産する事が可能になる。其方の諺にもありましたな? えーと、人は防壁だったか?」
「人は石垣、人は城、人は堀、なさけは味方、あだは敵なりだな」
「ああ、そう。それでしたな。エヴァも数さえ揃えば、強固な城にもなり強大な敵になりえる」
「ふむ。少し諺の意味が違っているが結論は合っているよ」
 恐らく説明の為に何度も何度も良い続けていた文言なのだろう。
 まるでトークショーの様につらつらと流れ出る言葉に濁りの無い情報の波へと浴びせ掛ける。
 メンゲレとNERV本部の考えは所謂思想の違いに等しかった。
 単独でのシンクロはあくまで実験過程とデータ取り、EVAと言う巨人との対話を促す為であり
 双子のシンクロはパイロット、機体の量産とその後の戦略的運用を視野に入れていた。
 実際にAEUでは先行量産型の弐号機が開発され、それに合わせた軍隊の運用を検討している。
 それらの事態にNERV本部や長々と語りを聞かされている冬月もあまり良い顔をしては居なかった。
 粗悪乱造の懸念もさる事ながら悪用の懸念も充分にあったから。特にユニオンとの軍事力
 技術力の差を埋めたい人革連や優位性を保ちたいAEUの態度は露骨であり
 それに煽られる形でユニオンもNERVへの予算計上は年々増していった。
 そんな懸念をわざと避けるかの様に誤った意味を引き出してメンゲレは低い声で笑っていた。
「ハーモニクス安定! ハプティズム兄弟のシンクロ率、80%を超えました」
「エヴァとの精神回路を開放。エヴァ、同調を始めました!」
「ふふっ、よし、H-3の過程まで進める! 今日こそは起動させるぞ!」
「はい!」
 だが、邪に見えるこの男の理念もその裏に隠れる政治軋轢すらも霞むほどこの現場は純粋に見えいてた。
 否、純粋に邪なのかも知れない。この歪んだ人命軽視の実験ですら
 活気と熱意に押されて爽やかな印象を与えてしまう。たとえ、結果と求めていたモノが何でアレ
 人が集い何かを作り上げると言う現場というのはこう感じさせてしまうのだろうか。
 複雑な心情を吐露出来ないまま、冬月はその現場を見つめていた。
 人間同士のシンクロが高められれば、その回路がEVAへと注がれていく。 
 混濁としつつも整列した思念の激流がEVAの脳内へと駆け巡り、自我を喪失していく。
 二人の双子はまだ落ち着いていたが徐々にその意識の葛藤から眉間に皺を寄せ始める。

30 :
「Dr! エヴァがアレルヤ・ハプティズムとのシンクロに偏り始めました!」
「ちっ、そちらとの精神回路を86%まで絞れ。ハレルヤ! もっと集中しろ!」
「うああっ はれ・・・・・・るや」
「アレルヤ! ちっ、解ってらぁっ!」
「死にたくなければあちらに持っていかれるな」
「くっ、あああっ! うぜぇな! おらぁ、俺達に従いやがれ!」
「映像に変化がありました。モニター開きます!」
 呻き声と怒声が通信越しに聞こえ、葛藤が肌に伝わるほどの迫力が木伝わってくる。
 メインの画面がパイロットのモニターから実験施設内の映像へと切り替わる。
 其処には実にグロテスクな光景が映る。肉塊と呼ぶに等しい巨人が居た。
 四肢も揃っておらず、頭部と胸部から人であることがようやく認識できる。
 僅かにそのくくりつけられた腕が動き肩こりを患っているかの様に首を動かしていく。
 悪夢に魘されているかの様に首筋だけがぐぎぎっと何かから逃れる様な動き。
 前にガッガッときつつきの様に首を前後させてその反動で拘束から逃れようとする。
 その反動で施設が揺れ、空気の振動がガラスを震わせていた。
「ハレルヤとのシンクロ率上昇! 70%を超えました! アレルヤもシンクロ率65%突破!」
「待ちたまえ! そんな高いシンクロ率では」
「よく動くでしょう? むしろ、コレの匙加減が難しいのですよ」
「しかし、エヴァに持っていかれるぞ?」
「その為の双子(ダブル)です。片方が飲み込まれそうになれば、もう片方が引っ張り上げる。
 何より二人ともよく鍛えておりますからなぁ」
「むぅ……」
 冬月の叫びにメンゲレは何を今更と言う感じで一蹴する。
 単独(シングル)と双子(ダブル)のシンクロの問題は別のベクトルにあった。
 双子(ダブル)の場合はシンクロ率の上昇が抑えられない。
 単独(シングル)が30%から60%前後を標準とするのに対し
 双子(ダブル)の場合は平均常に70%以上をキープしている。故にパイロットの消耗も激しい。
 実験をする度に自我と双子同士の存在の垣根が曖昧になっていく。報告書では聞かされていたが
 目の前の現実を目の当たりにすればそれが虚偽の記載ではない事に冬月は衝撃を受けていた。
 冬月にとって人革連の事なので誇張表現程度に感じていた数値が目の前で凄まじい計上されていく。
 暫くパイロットとオペレーター達の悪戦苦闘が続く。EVAとパイロットの綱引きを機械がサポートしていく。
 お互いの落としどころを探しているのだ。双方が干渉せず、共存出来る距離感。
 双子の引力が強過ぎている故にEVAもそれに急速に近付く度に引き離す。
「……起動成功しました! シンクロ率以前70%台をキープしています!」
「でかした!」
「起動させたのか? ……よもやこんな方法で」
「ふはははっ、私は正しかったのだ!」

31 :
 狭い室内が歓声に沸く。各々の故郷の言語、方言が入り混じり動物園の様な様相を呈し
 喜びの声が耳をつんざく。2004年碇ユイによる初号機による初めてのEVA起動実験から
 約10年の時を経て、ようやく人類はEVAの起動に成功させたのだ。
 呻き傷みから逃れる様に暴れていたEVAの動きがぴたりと静止する。
 満たされる充足感にメンゲレは拳を握り締めて勝利を宣言し
 それに呼応するかの様にオペレーター達の喝采の拍手の音が耳をつんざく。
「……! アレルヤのシンクロ率上昇!」
「ふん、まだあがなうか……小賢しい。アレルヤへの精神回路70%まで縮小!」
「くっ、うぜぇな! とっとという事聞きやがれ!」
「まさか、フェイント?!  ハレルヤシンクロ率が急上昇抑えられません!」
「なんだと!?」
「ハレルヤ! どうしたの!?」
 オペレーターの声と同時に双子のパイロットの内一人が苦しそうに嗚咽を漏らしていく。
 歓喜に沸いていた現場の空気は一変する。
 情報の集積と現状の確認にその場の人間全てが動いていた。
 モニターに映るのはまるでSF映画のワンシーンの様な惨状だった。
 角砂糖を珈琲に落としたかの様にじわりじわりとハレルヤの体が融けていく。
 着ていた試作のプラグスーツは指先、足先から徐々に立体感を失っていく。
 まるで空気の抜けた風船の様にハレルヤと呼ばれた少年の存在が徐々に欠けていった。
「パイロットが融けている? 彼を持っていこうというのか? やはり、この方法では」
「……ちっ。コイツでもダメか」
「は、ハレルヤ! ……渡さない! お前なんかにハレルヤは渡さない!!!」
 もう一人のアレルヤと呼ばれた少年の咆哮の様な叫びが木霊する。
 それとほぼ同時、一斉に計器が狂い始め、モニターの映像はそこで一旦途切れてしまった。
                                    「死の天使・後編」へ続く

32 :
以上です。なんか、番外編に出るキャラは
毎回死亡フラグを建てたり、実際死んだりするのは気の所為です、多分。
次はまた、設定レスを一回はさんだと、本編もしくはシンジ編後編どっちか完成した方を出す予定です。
また、長くなりそうなので2〜3週間後位の予定。ではでは、投下失礼しました。

33 :
アレルヤァァァァ!ハレルヤアアアアアアアアア!
過去編の死亡率はぱねえと思いつつ、GJです。
トリニティは早くもネーナ一人とか厳しい環境ですな。
しかし、ユニオンより人革連よりAEUが先に初シンクロ成功とは、
一体誰が成し得たのでしょうか…?
先が気になりますね。

34 :
>>16は結局辞退してしまったのだろうか?
結構楽しみにしてたんだが

35 :
っと、規制激しいみたいですねorz
えーと、明後日頃辺りにまた、設定レスとちょっと落書き投下予定です。
それと、一話に関して誤字と設定ミスが見つかり修正しましたorz
また、Wikiもコメントが出来る様に設定してしました。
もとい、新しく補完して下さった分は既に対応して貰っていました。
えーと、そういうコメントへのレスもこっちでして大丈夫ですかね?
何か話題になればと思うのですがどでしょう?
と言う訳でお邪魔しました。

36 :
すいません。此方の私事で少し投下の目処がつかなくなってますorz
申し訳ありません。目処が着き次第また予告レスします

37 :
やっと規制解除された、寝癖さん乙です
ハレルヤがアレルヤの脳内に吸収されちゃうフラグでしょうか・・・
今後の展開が楽しみです
無理しないでくださいね、気長に待ってます

38 :
寝癖ちがうぞw

39 :
やべぇ、>>37じゃないが、初めて>>38の指摘で気付いたわwww

40 :
>>37
のせいで、寝腐さんの髪型イメージが寝癖に固定されてしまったw
それは兎も角寝腐さん乙。

41 :
なんか俺も書きたくなってきた…
刹那以外00の人でないし設定変わるけどね…
あー…だけど規制厳しいし一つの板に職人二人もいたらややこしいか?

42 :
>>41
いやいや、普通に大歓迎だぞ?
スレに職人が何人もいる状態のスレしか殆ど生き残ってない位だ
場合によってはどこか経由して代理貼りとかも頼めるだろうし
書きたいと思った時が書き時だぜ

43 :
そうなのか
だけどストーリーがあんまり変化してないんだよな
それでもいいなら一話投下したいんだが構いませんかな?
名前はそんとき付けるってことで

44 :
>>43
バッチコーイ!
男は度胸なんでも試してみるもんさ(女だったらすまん)

45 :
保守

46 :
規制って…何なんだ…
日曜の昼ぐらいにゲリラ投稿するけどいいよね?
答えは聞いてない!

47 :
きにするな、俺は気にしない

48 :
遅いが、またこのスレの住人になれて嬉しいな
というわけで、一応保守

49 :
よし、眠りながら書いてたのを載せてみる
あんま展開かわらないから見なくてもいいかもしれん

50 :
『特別非常事態宣言発令されたため、現在、全ての通信回線は不通となっております』
「………」
1人の少年が公衆電話の前で佇んでいる。
髪は黒く、ボサボサしており、肌は少し日焼けしている。
服装は学校で見かける夏服の上に赤いマフラーを首に巻いているという、何とも奇妙な格好だ。
その少年、刹那・F・セイエイは何度も同じ言葉を繰り返す受話器を戻した。
「……待ち合わせ時間を完全にオーバー。葛城ミサトは未だ確認できず」
腕時計を見ながら確認する。
数日前、自分の父親から届いたメッセージによれば写真に写る人物『葛城ミサト』と自分は既にこの場で合流しているはずだ。
しかし、未だに葛城ミサトは現れず、セミの声が聞こえるばかりだ。
「現状では待ち合わせは不可能と断定…生命保護を最優先とし、シェルターに避難する…」
周りを見渡す。
坂道の道路、自動販売機、街路樹、別にどこでも見かけるような見渡しのいい通り。
それを見てると、ふと何かが見えた。
「……?」
少女が1人歩いていた。
空のような青い髪、白磁のような白い肌、血の色をそのままにしたような赤い瞳をした少女が。
「………」
別に少女自体には不明な点はない。
強いてあげるなら、青を基調としたセーラー服を着ている点ぐらいだ。
だが、刹那は彼女に何故か奇妙なものを感じた。
例えるならこれは…既視感?いや…懐かしさ?
そう思って見ていると地面が音を立てた。
「…!?」
大きな音。それもズシンズシンと巨人が大地を歩くかのような音が辺りに響いた。
そして、バラバラという聞きなれた音も。
「これは…?」
ふと頭をあげる。
「なっ……!?」
巨人がいた。

51 :
―――――――――――――――第3新東京市 直上 「使徒、襲来」―――――――――――――――――――――――――
黒い巨体に仮面のような白い顔、細長い腕を持ち、胴体には赤い球体。
巨人。それ以外の何者でもない。
それを取り囲むヘリコプターの数々。
ヘリコプターが数十にも及ぶミサイルを巨人に向かって発射した。
「…!!」
刹那は反射的に身を低くし、店の影に隠れる。
身を隠した瞬間、大きな爆発音が辺りに響く。
「チィッ…」
刹那が第一に考えたのは「ミサイルが」とか「あの怪物は」という類のものではなかった。
「あの少女はどうなった?」だった。
なぜ、あの少女をそこまで気にかけるのかは刹那自身も分からない。
それでも、あの巨人に対する爆発の余波で少女が怪我をしなかったのか、と確認しようとした。
「なっ…」
その少女は先ほど自分が見た通りからは姿を消していた。
避難したのか?数秒で坂を上って?幻か?あれほど鮮明な?
少しの間、混乱したが巨人の事を思い出してハッとする。
再び上を見た。
「……何!?」
巨人は健在していた。それも全くの無傷で。
経験上、ミサイルの威力を熟知している刹那にとって直上の状況は驚きのものだった。
ヘリは完全に弾を撃ちつくした状態で巨人の周りを囲んでいる。
刹那の本能の鐘がなった。
再び店の影に体を隠れさせる。
何かの発射音が聞こえた後、先ほどのミサイルの爆発音と比べ物にならない爆発音、そして熱風が体を叩き付けた。
「ぐぅぅ…!!」
余りに大きな熱風に体が少し浮いた。
もし店の影に隠れなかったら少し吹き飛ばされていたかもしれない。
そう思わせるほどの熱風だった。
その時、急に通りに車がやってきた。
「刹那・F・セイエイくんね!ゴメン、お待たせ!」
「アンタは…!」
サングラスをかけた若い女性が車の扉を開けて顔を覗かせた。
「私はミサト!葛城ミサト!あなたを迎えにきたの!乗って!」

52 :
刹那とミサトが車でジオフロントに向かう間、刹那はミサトから話を聞いていた。
「ネルフ……」
「そう。国連直属の非公開組織よ」
刹那はミサトから渡されたネルフの資料に目を落とす。
「碇ゲンドウはそこで働いているのか」
「え…そ、そうよ。お父さんの仕事について何か知ってる?」
刹那の父親に対する呼び方にミサトは驚きつつ、雑談を続けようとする。
しかし、
「いや。ゲンドウから職務は機密事項だと言われたので聞いていない」
「……そっか」
刹那のあまりに感情の伴わない言葉に話が続けにくかった。
2人の間にしばしの沈黙が流れる。
「………」
「………」
「………」
「……ねぇ」
「なんだ」
(き、気まずい…!!)
ミサトは悟る。この空気、この感じ。
この子は間違いなく自身の上司である碇ゲンドウの実子だと。
書類上では彼は碇ゲンドウの養子にあたる。
しかし、間違いなくこれは実子だ。性格的な意味で。
ミサトはさっきから気になってる事を聞いてみる。
「刹那くんってさ、お父さんを名前で呼ぶのね」
「………?」
「偽名なんでしょ、『刹那・F・セイエイ』って。お父さんが付けてくれたの?」
「……ああ」
ふいにミサトから投げられた質問に刹那は訳が分からないまま頷く。
「お父さんの事、苦手?」
「…………」
「……」
再びしばしの沈黙。だが、今度は刹那が沈黙を破った。
「分からないな」
「え?」
「俺のこの、ゲンドウに対する感情が好きというものか、嫌いというものかが分からない」
「…そうなんだ」
「ただ…」
「?」
刹那はミサトの方に顔を向ける。
「俺は碇ゲンドウの命令には従おうと思っている。どんなものでも。自分の意思で」
「刹那くん……」
刹那は最後の2つを特に強調してミサトに言い放った。
その目には何か強いものが秘められているようにミサトは感じた。
「そっか。お父さんが好きなのね…うらやましいかも…」
そうミサトが言ったと同時に、車がジオフロントに到着した。

53 :
「予定時刻を20分もオーバーしてる。何をやっていたの?」
エレベーターでミサトが言う『見せたいもの』の方まで向かう中、
途中でエレベータに乗ってきた白衣を着た金髪と黒眉の女性がミサトに声をかけた。
「ゲッ…リツコ…」
「あんまり遅いんで迎えにきちゃった」
「ごっみーん!許してーん!」
「はぁ…」
ミサトの悪びれない態度に金髪の女性はため息をつく。
それを見ていた刹那に金髪の女性も気づいたようだ。
「彼が例の子?」
「そう。刹那・F・セイエイくんよ」
紹介されたと同時に、刹那は軽い会釈をする。
あら、と軽い声を出した後、金髪の女性も軽い会釈をしながら自己紹介をし始めた。
「赤木リツコよ。よろしくね、刹那・F・セイエイくん」
「…あぁ」
エレベーターが到着した。
エレベーターが到着した通路は暗かった。
なんとか歩き回れる程度の明るさはあるものの、目が慣れるには時間が要りそうだ。
「着いたわ」
リツコの言葉に刹那は反応する。
正面に何も見えないが、巨大な何かの存在を感じる。
自分は何を見せられるというのだろうか。
「刹那くん、これが貴方に見せたかったものよ」
ミサトがそう言った瞬間に周りの照明が入った。
その瞬間、目の前の物が目に入る。
これは――――――
「これは汎用型ヒト型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン、その初号…刹那くん?」
リツコが正式名称を説明しようとする前に刹那の様子に気づいた。
「え?」
ミサトも刹那の今までに無い様子に気づいた。
刹那は眼前の巨人の前で立ち尽くしていた。
紫の鎧を纏い、角、口、目を持つ巨人の前で。
「………ぐっ」
巨人は何も語らない。
少年は小さく呻く。
少年の中に何かがフラッシュバックする。
大きな、光を纏った女性の姿が…
「ぐぁぁぁぁ……」
再び少年は小さく呻く。
白き巨人はそれを見つめている。
何も言わずに、動かずに、ただ見つめている。
見つめて見つめてみつめてみつめてみつめてみつメテ―――
「刹那くん!」
「っ!!」

54 :
刹那はしゃがみこんでる自分、そしてその自分の背中に手を当て、自分を見つめるミサトに気づいた。
「……俺は…」
「大丈夫?具合が悪いの?」
「…心配ない」
心配するミサトの手を払い、立ち上がって意思を示す。
「刹那くん、話を続けたいけどいいかしら?」
「ちょっと!さっきのこの子の状態を見なかったの!?無理に決まってるでしょ!」
「私達には時間が無いのよ!今でも彼らがここに攻めてくるかもしれないの!具合が悪いじゃ済まされないわ!」
リツコが話を進めようとした瞬間、ミサトが反論するがリツコに一喝される。
だが、話が見えてこない。これではまるで…
「よく来たな」
「っ!!」
1人の男の声が聞こえた。
上を向くと黒い服と眼鏡をかけた黒髪の男が立っていた。
刹那はその男の名を呼ぶ。
「碇ゲンドウ……」
「久しぶりだな」
「あぁ」
刹那はただジッとゲンドウを見る。
ゲンドウはその様子を見てフッと微笑んだ。
「刹那、お前がやらなければならない事、分かるな?」
「…!」
その言葉で刹那は自分が何故、ゲンドウに連れてこられたのか、何故エヴァンゲリオンを見せられたかを瞬時に理解する。
そして、何故、リツコやミサトがそれを説明しなかったのかも。
「戦え」
「分かった」
刹那は頷く。
ゲンドウが言ったその一言で自分が納得したからだ。
「さっきの巨人と戦え」とゲンドウが言うなら戦う。
少なくとも自分の意思で。あの時とは違うと。
「…本当にあっさりと納得したわね、彼」
リツコがボソリと呟く。
「赤木リツコ。操縦方法と機体能力、装備について教えてくれ」
いきなりフルネームで話を振られたリツコだが、さして驚く事無く答える。
「緊急配備されたから装備はプログレッシブナイフのみ。操縦方法は…」
「構わん。このまま乗せろ」
リツコが軽い説明を行おうとしたがゲンドウがそれを拒否した。
「っ!碇指令!?」
ミサトの反論とも取れる声をゲンドウは流し、刹那を見る。
「刹那、乗るなら早く乗れ」
「……了解」
「なっ……!」
ゲンドウの言葉に刹那は肯定の意を示し、リツコの方へ向かう。
「碇指令!今、彼を失うのは得策ではありません!せめて操縦方法だけでも…」
「問題ない。全て奴に任せておけ」
ゲンドウはそう言ってその場を去った。

55 :
『停止信号プラグ、排出終了』
『了解。エントリープラグ挿入。脊髄伝達システムを開放、接続準備』
様々なアナウンスが刹那の耳元で鳴る。
現在、刹那はマフラーを外した姿でエヴァンゲリオンのコクピット、エントリープラグの中に入っていた。
「考える…」
刹那はコクピットの操縦桿を握る。
赤木リツコは自分に考えるだけで動くと言っていた。
それだけ。考えるだけで動かせる。だが、そこからは自分で何とかしなければならない。
『エントリープラグ、注水』
「これは・・・!?」
エントリープラグ内に謎の液体が注水される。
『大丈夫よ。LCLが肺に直接、酸素を取り込んでくれるから』
「LCL………」
エントリープラグの中がLCLで満たされる。
大量の水の中で呼吸するのは少し慣れなかった。
『発進準備』
『第一次接続開始』
『第一ロックボルト解除、アンビカルブリッジ、移動開始』
『第二ロックボルト解除、第一拘束具除去。同じく第二拘束具を除去』
『第一番から十五番までの安全装置を解除』
初号機をロックしていた全てのシステムが外れ、わずかに初号機が揺れる。
『現在、初号機の状況はフリー』
『内部電源充電完了。内部電圧異常なし』
初号機が射出口に向けて動き始める。
『エヴァ初号機、射出口へ』
初号機が射出口へ到達。リフトにセットされる。
リフトの上にある数多の扉が全て開き始めた。
『発進!』

56 :
ミサトの声と共にリフトが初号機を乗せて加速し始めた。
「……っ!!」
リフトのスピードにより、刹那の体にGが体を打つ。
それは大きなものではないものの、初めてGに打たれる体には少々堪えたようだ。
そのまま一気に外に出る。
外はいつの間にか夜だった。
そして目の前には…あの巨人が。
『最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!』
リフトの安全装置が解除され、エヴァ初号機は完全にフリーの状態で使徒の前に立ちはだかった。
「………」
刹那は目の前にいる使徒を見る。
仮面が2つになっている。
大きなダメージでも受けたのだろうか、わずかだが血らしきものが流れているのも見えた。
『刹那くん、今は歩くことだけを考えて』
赤木リツコの声が聞こえる。
刹那は赤木リツコの声を反芻する。
「考えるだけで…いい…」
『そうよ。考えるだけで…えっ!?』
リツコは刹那が素直に歩き始めるものだと思ったが違った。
いきなり初号機は使徒に向かって走り始めたのだ。
『何を考えてるの!?いきなり走るなんて危険だわ!』
刹那はミサトの声を無視して使徒を殴ろうとし始めた。
だが、突然謎の壁に阻まれる。
「チィ……っ!!」

57 :
「駄目です!使徒はATフィールドを展開!使徒にダメージはありません!」
作戦室ではマヤがさきほどの使徒の状態を伝える。
ATフィールド。使徒が、エヴァが、そして人が持つ他者と分かつ心の壁。
何人も侵されぬ聖なる領域。使徒が通常兵器のほとんどを無力化していたのは、この力である。
「くっ…駄目か…」
ミサトは拳を止められた初号機を見て悔しそうに呟く。
「でも、驚いたわ…初めて乗ったのに、シンクロ率も30を超えてるし、いきなり使徒に向かって走り始めるなんて…」
リツコは目の前の出来事にかなり驚いていた。
動き自体は遅いものの、刹那のエヴァは使徒に向かって走り、そして殴った。
エヴァの操作は考えるだけでいい…確かにそうだ。
だが、考えるといっても体を動かすイメージをすぐに出せといわれて出せる人間などそうはいない。
ましてや死ぬかもしれないという極限の緊張状態の中なら尚更だ。
それを初めて乗った人間が、いきなり動けといわれて躊躇せず走る動作を展開するのは、リツコとしては信じがたいものだった。
「彼は一体・・・」
リツコは手元にある刹那・F・セイエイの資料を覗き込む。
そこには「経歴抹消済み」と大きな文字で書かれていた。
「刹那くん!」
ミサトが大きな声をあげた。
刹那は自分の拳が謎の壁に阻まれたと認識し、戸惑った。
その隙に使徒がエヴァの腕を掴み始めた。
「っ!!」
突然、刹那の左腕に大きな激痛が走る。
「ぐあああ!!」
『刹那くん!』
ミサトの声が聞こえる。
「ぐっ・・・!」
刹那は左腕の激痛を無視し、使徒に右足の蹴りをいれようとする。
だが、それもATフィールドに阻まれる。
「くっ・・・」
その時、ビキッという声が聞こえた。
エヴァの左腕が折られた。激痛が刹那に走った。
「がああああああああ!!」
『刹那くん!折られたのはエヴァの腕なのよ!あなたの腕じゃないの!』
ミサトが大声で声を送るが、刹那に届かない。
そのまま使徒は刹那の頭を掴んだ。
「っ!!」
『刹那くん!避けて!』
残った右腕で使徒の左腕を握るが突然、頭に衝撃が走った。

58 :
使徒の左腕から出た、光の杭の様な物は、何発も初号機に打ち込まれた後、ビルまで初号機を吹き飛ばした。
「刹那くん!」
「頭部破損!損害不明!」
「制御神経が次々と断線していきます!」
「パイロット反応ありません!生死不明!」
「初号機、完全に沈黙しました!」
次々と挙げられる報告からミサトはこれ以上は無理だ、と判断する。
「作戦中止!パイロットの保護を最優先!プラグを強制射出して!」
だが・・・
「駄目です!完全に制御不能です!」
「何ですって!」
頭部が壊れた影響か、エントリープラグは排出不可能となっていた。
その間にも使徒は初号機に忍び寄る。
ミサトの頭に最悪の光景が浮かんだ…その時。
「ウオオォォォォォォ……」
獣が、吼えた。
初号機が目に怪しい光を灯し、立ち上がった。
「エヴァ・・・再起動・・・そんな…動けるはずありません!」
信じられないという表情でマヤがミサトに報告する。
その時、再び初号機が口を開けて吼えた。
「ウオオオォォォォォォォ……」
初号機が飛び上がる。
その動きは速く、明らかに先ほどまでとは比べ物にならない動きだった。
「シンクロ率は!?」
リツコが我に返って訊ねる。
「以前、マイナスです!」
「まさか・・・暴走!?」
日向の答えからミサトは1つの結論を出す。
エヴァによる暴走。
エヴァはただの機械ではない、魂を持つ器なのだ。
故にエヴァは意識を持ち、パイロットとシンクロすることにより凄まじい力を発揮する。
逆にシンクロ率が低い場合、それでも動くのはパイロットの意思ではない。エヴァの意思。
つまりは、暴走。
それを別の場所で見ていた2人は呟く。
「勝ったな…」
「あぁ・・・」

59 :
飛び上がった初号機に向かって、使徒はビームのような物を放つ。
だが、暴走した初号機は体を空中で捻ってビームを全てかわした。
「初めてエヴァに乗ったのに…あんな複雑な動きはできるはずないわ!」
リツコが声をあげる。
地面に着地した初号機は使徒に向かって駆け出した。
しかし、使徒に触れるかという直前で、再びATフィールドに阻まれる。
「使徒、ATフィールドを展開!」
「・・・駄目か!」
だが、暴走した初号機も別の動きを見せていた。
「初号機もATフィールドを展開!相違空間でATフィールドを中和していきます!」
初号機がATフィールドを侵食。そして、わずかに穴が開いた部分に手をいれ、ATフィールドを無理矢理こじ開けた。
「凄い・・・」
誰に言うわけでもなく呟くミサトの言葉。
その間にもエヴァは行動していた。
使徒の腕をお返しとばかりにへし折り、胸の赤い球体を殴り続けていた。
だが、その時、誰もが予想もしなかった事態が起こる。
『う・・・く・・・』
通信から音声が入った。
「パイロットに反応が!」
日向は報せるまでも無く、ミサトは通信で呼びかけていた。
「刹那くん!」
『こ…これは…!?』
モニターが映らないことによりプラグの中の様子は分からないが、刹那が今の状況で混乱しているのは間違いない。
「刹那くん!今は・・・」
「使徒に反応!」
「!?」
再び日向の報告でモニターを見る。
すると使徒が急に球体となって初号機を包み込んでいた。
「自爆する気!?」
『!!』
刹那の方も事態がわずかだが飲み込めたようだ。
「使徒に高エネルギー反応!」
「刹那くん!」

60 :
エントリープラグで意識が戻った刹那は混乱していた。
(これは・・・なんだ?なぜ、勝手に手足が動いている?なぜ使徒は俺の下に倒れている?なぜ・・・おれは・・・)
そう思っていると使徒が急に自分を包み込んだ。
「!!」
辺りが真っ暗になる。
死。
頭の中に1つの言葉が過ぎった。
(死ぬ?死ぬのか?何も出来ぬまま・・・何も返せぬまま・・・)
様々な思いが一瞬のうちに刹那に駆け巡る。
そして、走馬灯が駆け巡る。
戦争によって様々な物が朽ち果てた街。
そこで佇む幼い自分。それに手を差し伸べる女性―――
「死ぬか・・・」
まだ自分は何も返せてない。何もやっていない。
少なくともまだ、ない。
「死ぬものかぁぁぁぁぁぁ!!」
少年は雄たけびを上げた。
使徒が爆発した。
第3新東京市に天まで届くかというほどの、高い炎の柱が上がる。
その炎の柱は、数秒経つまで消えず、その間、ネルフの作戦本部は静寂を保っていた。
「使徒・・・殲滅を確認しました・・・」
「エヴァは!?」
ミサトの問いを聞き、焦るように日向が反応を探す。
だが、モニターでは既にエヴァの様子が捉えられていた。
悠然と立つ、エヴァ初号機の姿が。
「あれが・・・エヴァの本当の姿・・・」
再び、ミサトが呟いた。
「パイロットの生存、確認しました!」
青葉の報せを聞き、ハッとする。
「刹那くんとの回線、つないで!}
「回線繋いでます!」
「刹那くん!」
ミサトは刹那に呼びかけるが、刹那の方からは返答ではなく、呟きが聞こえていた。
『俺は生きている・・・生きているんだ・・・生きているんだ・・・』
「・・・刹那くん?」
『俺は・・・俺が・・・』
その声は小さく、そしてはっきりと
『俺が・・・エヴァンゲリオンだ・・・』
ネルフ施設に静かに響いた。

61 :
一応終わりだがヤバイwwww
載せてて思ったけど長いしつまんないwwwww
一話で10レスも使っちゃったよwww
こんな駄文でよければ感想まってますw

62 :
乙。結構良かったと思うよ。
最後のセリフは、絶対言ってくれると信じていた。

63 :

何事もやりとげる事が一番大事だと思うんだ

64 :
>>60
投下乙です。取り合えず、HNに吹かざる終えない
ストレートな話の作りと細かい部分の掛け声等ちゃんと書いてるなぁっと思いました
続き楽しみにしてます。
それと、近々此方もまた、投下復帰予定です
ようやく、つまってた部分が解消及び日常も安定の兆し? 後は流れのままですかね
大体、次投下分はほぼ完成してるので、グラハムの話、次の次の投下が半分位完成したらまた始めます
長らく空いてしまって申し訳ありませんでしたorz

65 :
>>寝腐さん
投下楽しみにしています。
キャラに厳しいというか、殺伐とした世界が好きです。

66 :
投下予告だけでも寂しいので以前の解説レス続き投下します。
刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
EVA-00設定解説
第二回『この世界の技術について』
今回は主に技術面でのお話をします。
まず、第一回でも言った様に2年の使徒襲来の遅れで
諸々のNERV発の技術があっちこっちで使われています。
レイのクローニング技術は再生医療
EVA周りに関してもJ/Aが有人になったりと幅広く使われています。
―各国の技術方針
人革連に関しては技術協力に本腰を入れており
もはや官民共同開発の勢いでがっつりNERVに食い込んでます。
どっちかというと人的資源が豊富なお国柄なので技術の無さを
人員と磨り潰し強化と人権無視の強引な手法で何とかしている感じでしょうか。
何より、データや情報を捏造、秘匿して、眠れる獅子を演出しているので正確なところはつかめないのが現状です。
ユニオンは監視者の技術よりになっておりGNドライヴ装備のEVAは殆どがユニオン製です。
基本的にEVAとGNドライヴ技術の運用に注力。
すげーエンジンをすげーロボットに積んですげーはべらせれば無敵じゃね?と言う単純理論で
ビグザムを量産する勢いで兵器開発をしています。
AEUは弐号機の運用を軸に色々と試行錯誤をしているという感じです。
今のところAEU所属のEVAは一機しか持っていないので大事に扱いたいというのが本音。
一応他も製造中ではあるのですが未だに完成しておりません。
EVA単体運用よりはその他兵器のサポートと考えている様で少しユニオンとは方向性が違います。
あくまでEVAは戦車、騎兵の扱い。歩兵あってこその軍隊だろうと言う感じでしょうか。
その代わり、通常兵器へのGNドライヴ搭載は実用化しつつあります。
―EVAの生産について
基本的に現存するEVAは零号機以外ほぼ全部出る予定です。
むしろ、兵器が足りないので色んな所から持ってくる予定。
六号機、八号機はちょっとQの放映を待たないといけないので不明です。
零号機は閑話窮題のシンジ編の結末次第で。一話で零号機と書いてしまいましたが修正してますorz
NERV本部というかユニオン所属のEVAは初号機、参号機、四号機ですね。

67 :
―GNドライヴに関して
オリジナル太陽炉と擬似太陽炉が世界に数基あり、監視者が保有しています。
監視者からNERVに下されている形になるので彼らの顔色も伺わないといけません。
で、GNドライブに関してはGN粒子発生装置兼高性能の電池として扱います。
GNドライヴを積むとEVAの起動時間が飛躍的に延びます。
平気で数時間フル稼働で動ける設定です。
大体コレは本家ガンダム00の非トランザム時の活動時間程度と思ってください。
GNドライヴはオリジナルの方が高出力なので扱いが極めて難しく実験の成功率は低いです。
量産型は出力を抑えている反面、安定性がとても高く量産に向いており、ちょっとずつですが数は増えており
EVA以外にも搭載されています。それらの兵器は後で登場させます。
―EVAの性能について
EVAの性能に関しては初号機と弐号機は原作通りなのですが
初号機は特にシンジ君の才能で持っていた部分があったので今回あまり強くありません。
無論、後でテコ入れは入りますが、性能上は後から出来た方が強いと言う感じになります。
ターンエーの御大将理論ほぼ踏襲。兄より優れた弟は一杯居るよ!
まだ、未登場の機体が多いのでこれは後で別個に纏めようと思います。
―J/Aに関して
上に述べた様にユニオンが何でもかんでも作っちゃう+日本統治なので時田さんもNASAっぽいのに採用されてます。
グラハムが乗ってたのは初期の試験型で、EVAの機構に頼らず、実戦で使える
でっかいGNドライヴ搭載の人型ロボットを作るという名目のみで製作されてる節がありました。
小型化計画も同時に進んでおり、先行量産された小さいJ/Aが軌道エレベーターとかで黙々と作業してます。
NERVの零号機の一件とゼーレが監視者と二分している関係でのびのびと開発が進んでるので
世界が存続すれば、ガンダムのMSとかのポジに近くなるんじゃないでしょうか?
無人で長時間可動するロボットって普通に需要とか使い道多いですし。
ただ、ATフィールドだけは勘弁な!
というわけで今回はこれにて。三回目は話のネタとして読者からのリクエストもしくは
「シンクロについて」にしてみたいと思います。
本編のペースが遅いもんで開示できる情報が少なくてすいませんorz
グラハム偏もなんとか終わりそうなんで来週週末に本編一話分投下する予定です。
では、投下失礼しました。

68 :
>>―J/Aに関して
何故か、軌道エレベーターの作業上で小型J/Aたちがヤンキー座りして煙草吸いながら、
「使徒ってーの? あのATフィールドってのがウザいよなあ」とか愚痴ってるのが
想像された。

69 :
>>68
サンレッドのノリじゃねぇかwww

70 :
むしろ攻殻機動隊のタチコマ?

71 :
スターウォーズのR2-D2みたいに
光と信号だけで会話しそうだ

72 :
さて、ぎりぎりになっちゃいましたが投下始めますorz
なんかタイトルと予告が若干あってないが気にしない!

73 :
刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
    第四話中編「逃げ出せぬ夜」
―第伍使徒襲撃の翌日、NERV直轄の病院の病室にて
 瞼を開ければ其処には見知らぬ天井と言いたい所だが
 現実には何度もお世話になっている施設内の病院だと
 EVA初号機パイロットフェルト・グレイスはおぼろげな意識の中で認識できた。
 目の前にはあの男が立っていた。通信越しにと言わんばかりに
 罵詈雑言と命令を浴びせ掛けてきた男。普段より無精ひげが薄くなっており
 あまり着ているところを見ないびしっと決めたスーツ姿が違和感を感じさせている。
 寄りにもよって一番目を合わせたくない人物とご対面をしてしまった。
「”何故命令違反をした?”と聞いてくれると思っているか?」
「いいえ」
「ま、なら話は早ぇ。さっさと首にして追ん出してやる。
 命令が聞けん奴に持たせる程、手軽な玩具じゃねぇからな、アレは」
「……」
「と言いたい所だがーーーっ! お前は司令のお気に入りだからな。お咎め無しだとよ!
 全く、お役所組織は甘いこった」
 にこやかな怒気の孕む顔で質問される。ソレに答えれば、ふんっとつまらなそうに
 息を漏らし、顔色は怒気を通り越して、愚か者への憐れみに満ちた色合いへとなる。
 怒声を孕んだ重苦しい声にフェルトの心臓は押しつぶされそうになってしまう。
 続けられる言葉の流れからフェルトは自身の解雇が当然だと思っていた。
 それに応えるかの様にアリー・アル・サーシェスは突き放す言葉を発するがすぐに撤回される。
 フェルトはそれに目を僅かに大きくして、うつ伏せていた顔を見上げる。するとアリーの目には
 苛立ちと怒りが孕んだ侮蔑的な視線を向けられ、すぐに顔を反らす。
 苛立紛れに近くにおいてあった、空のゴミ箱が蹴り上げられる音が
 耳に飛び込んできたがそれでも向きあうことは出来なかった。
「何故ですか? 私はあの人と話したこともない」
「前任パイロット絡みのセンチメンタリズムとか言えば、手前もちったぁヤル気は出るか?
 あの顔で似合わねぇけど、中々繊細なんだとよ。アレで」
「あの……私はやっぱり向いてないですよ……ね」
「……あのなぁ? そーいう愚痴や弱音はサイボーグ女に言え。ただな?」

74 :
 フェルトにとって司令の碇ゲンドウと呼ばれる男との接触は殆どない。
 正式採用をされた時も簡単に面通しの様なモノがあっただけで挨拶すらなく
 サングラス越しですら自分を見ていたといえる記憶は一欠けらもなかった。
 それゆえにアリーの台詞には違和感がある。正直、本人としては自信を喪失していた。
 上手く出来ないのは解っていたが、何故自分が今この場に居られるか記憶もない。
 回収されたという記憶すら曖昧で何故か頭にコブが何個も出来ていたり
 打ち身があっちこっちに出来ていたりとろくな目にあっていない。
 なんで自分はこんなに辛い思いをして乗っているんだろう?
 疑念と諦めが支配しているのが見えたのか
 アリーはぐっとフェルトの前髪を掴み顔を覗き込む。
 
「こちとらお守りやりに中東から来てるんじゃねぇ。これでも手前が死なねぇ様に頭使ってんだ。
 査定に響くからな? そこら辺考えてちったぁ行動しな」
「……解りました」
「なら、いい。じゃ、後はサイボーグ女が迎えに来るまで適当に休んどけ。検査は異常なしだ」
 髪をつかまれた痛みに目を瞑り、僅かに呻き声が漏れるが
 そんな小さな音を掻き消す怒鳴り声。手を離す際わざと力を入れてベットへと押し飛ばす。
 無碍に扱う様はフェルトに何か個人的な恨みでもあると思われる様な態度。
 フェルトにはこの温情もアリーの冷酷さも理解の範疇外だ。
 理由はあるのだろうかと以前は考えても居たがそういうのは詮索するのも諦めた。
 そのまま、シーツを引き寄せる様にして蹲って泣く事も我慢して
 僅かに嗚咽を漏らす。アリーはその様子を確認した後、適当に言いつけて踵を返す。
 病室を出てドアを閉めれば、右側から刺々しい視線がアリーを襲う。
 
「わざと? まるで絵に描いた様な外道ね」
「おや、葛城一尉。これは奇遇な」
「露骨過ぎない? 病室がわざわざ隣。その上ドアが開けっぱなしでお説教なんて。
 しかも女の子扱い方を知らない訳でもないでしょーしねぇ? 何が目的?」
「ああ、失礼。病院ではお静かにという奴か。悪ぃな育ちが良くないもんでよ」
「そーいう、レベルには見えないけど?」
 露骨な嫌悪の視線と共にがアリーに侮蔑の言葉が浴びせかかる。
 廊下に出れば、其処には車椅子を転がしている葛城ミサトの姿があった。
 わざとらしいアリーのリアクションにじっと目を細めたまま、皮肉を織り交ぜた言葉を言う。
 車椅子の手すりに頬杖をついて、眉をぴくっと上げながらも問い詰める様な推理の羅列に
 アリーは馬耳東風と言わんばかりに惚けてみせる。かりかりと頭を掻きながらも
 斜め上を見上げている。嘘なのはバレバレだ。しかし、ミサトはそれ故にいらだつ。
 わざとやっているのが解るからだ。バレているのも計算の内。いや、バレてからが本番か。
 まんまと釣られてしまった事実が、ミサトの苛立ちを加熱させていた。

75 :
「まぁ、よかったよかった。再生治療に本腰を入れて貰える様で」
「ええ、おかげ様で郊外の景観豊かな病院から行き成り被災地直下の
 けが人の呻き声溢れる賑やかな病院に転院させてくれてありがとう」
「いえいえ、それ程でも」
「……ちっ。無精ひげといいムダに長い髪といい、忌々しい」
「昔の男と面影でも似てたか?」
「−−−−っ!!」
 話題を変えればちっと舌打ちをしつつもそれに皮肉で応えるミサト。
 謙遜する態度も無く言葉尻は火に油を注げられ、全部逆手に取られている。
 フラストレーションの積もり積もったまま、冷静に対応しようと務めようとするが限界を感じ
 愚痴をもらす。それすらも聞き漏らさずに返してくる。この男の事だ。
 きっと、それらも全て知っているのだろう。兎角、ココまで人を苛立たせる事に対して
 どうしてココまでの才覚を発揮できるのかミサトには理解出来なかった。
 ていうか、純粋にムカつく。恐らく、脚が動くのなら蹴りの一発も入れていただろう。
 その歯がゆさも計算だったりしたらと考えるだけで憤死しそうで
 きりきりと軋ませる歯はエナメルを削り、奥歯を砕く勢いで顎に負担がかけている。
「はぁ。まったく、人使いが荒いわね。NERVは今も昔も」
「”2年間”甘くしてたツケって奴さ。使徒なんて本当に来るかどうかもわからねぇ。
 だから、あんたの予備の補充も適当に過ごされた。その内職場復帰するだろう位でな?
 参号機は動いたし、初号機もそこそこ動けるから大丈夫だろう。四号機だって間に合う筈。
 ところが意外にも早く二匹目が着てそりゃー酷い有様だったもんでね」
「まぁ見たわよ、映像は……今更嫌味?
 お望み通り復職は決めたわよ。ま、明日明後日にって訳じゃないけど」
「それは結構。結構ついでにちょっと一仕事頼みたくてねぇ。ま、サボった分の帳消しツー事で」
「……何やらせよってのよ」
 おまけに散々コケにして、頼ろうとするのだから始末が悪い。
 普通なら交渉決裂は必至だが相手はすでに勝てる算段をつけている。
 多分、嫌われる事すら計算なのだろう。じゃあ、その計算を利用して
 恐らく鬱憤も含めて原動力にするつもりなのはミサとにも解る。
 故にその内容がどれだけのモノか身構えざるおえなかった。
「女を口説くのに使えそうな男紹介して貰えないかね」
「……はぁ?」

76 :
―第五使徒襲撃から一週間後、とあるマンションのエレベーターフロアにて
 沙慈・クロスロードはやや大き目のタッパーを入れた保温パックを片手にマンションの廊下を
 同じクラスの男子相田ケンスケと共に右往左往していた。踏ん切りが付かない様子
 あれやこれやと心配する声にケンスケは大丈夫だってっと励まして一歩一歩進めさせている。
 見るかに挙動不審な彼ら二人には来る理由があった。
 先日の使徒襲撃の一件で使徒を見てしまった三人の内、二人。
 無論、あんな巨大なモノへの目撃者がゼロと言う訳では済まないのだが
 EVAを間近で見た人間と言うのは関係者以外では数少ない。
 それなりの口止め料と厳重注意と言う名の脅迫も受けている。
 3人とも快くその場では受け入れる程度の生存本能が働いてくれたのが幸いだったが
 それでも事態への影響は大きかった。
「ねぇ、大丈夫なの? 知らないマンション入って」
「大丈夫だから。ルイスちゃんからも塞ぎこんだままなんだろ?
ココで動かなきゃ男じゃないぞ、クロスフォード君」
「まぁ、そりゃそうだけど、ほんとにあの助けてくれたクリスさんに辿り着けるの?」
「上手くいけば、多分ね」
「多分って……」
 沙慈は未だに決心が付かないというよりもあまりにも計画性と希望の薄い
 公算にため息を漏らしていた。先日の一件で男子二人を救ってくれた人間。
 通信の関係からクリスと言う女性だとは解ったのだが救助された後は引き離されてしまい
 直接会う事がその後なく二人は自宅に帰されている。
 礼の一つもと思っていたのだが諜報担当の黒服の方々に
 しっかりと伝えておくと実に曖昧で期待値の低い対応をされてしまっている。
 無論、それはそれで致し方ないという事なのだろうが、同じく抜け出した
 ルイス・ハレヴィは違っていた。救助後、目立った外傷は無いという事なのだが
 学校を数日休み、戻ってからも上の空というか酷く学校が居心地が悪そうに見えた。
 それを見かねた二人の行動と言う事だったのだがそもそも、二人には訪ねる宛てすら無かった。
 あの紫色のカラーリングがなされた巨人のパイロットも解らず
 可能性があった刹那には偉く暴力的なお目付け役の存在がちらついているので
 話を聞き出す事も出来ない。そんな中、ケンスケが僅かに残された可能性を
 見出したのがこのマンションであった。
「えーと、こっちだったかな? 多分、合ってる筈。忘れてるなー、僕も」
「で、何処に行くの?」
「ココにさぁ、前にNERVに勤めてた人が住んでたんだよ。
 で、ずっと前に事故で怪我して入院してたんだけど」
「それドレ位前? 別の人がもう入ってるんじゃ?」
「二年前かな? いや、なんか出て行ったと思ったらまだ名義がそのままらしいんだ。
 別の人が入ってるってのは解ってるけど」
「……という事は」
「少なくとも親類、知り合い、もしくはNERVの関係者さんが住んでる筈。
 まぁ、藁をも掴むって奴だね」

77 :
 マンションのエレベーターフロアに設置された案内図を頭に思い浮かべながら
 ケンスケは記憶を手繰り寄せる様にして、沙慈にココへと向かった経緯を話す。
 おおよそ見当のつく内容ではあったがし、後回しにされた選択肢としては妥当。
 まず、相手方が違う部署ならばそもそも、名前も知らないかもしれない。
 空想、想定する内容はきわめて不利なモノしか思い当たらず、足取りも重くなっている。
 若干、目が据わっている様に見えたケンスケの表情の合点がいった。
 一人で突撃するにはあまりにも細い一本橋。確かに分の悪い賭けではある。
 けど、ソレだったら何故と不信が積もってしまう程度に沙慈もいい人ではない訳で 
 ジト目の視線でその説明に対するリアクションを示していた。
「なんで、もっと早く言ってくれなかったの?」
「話したらそれだけ僕に渡してルイスの所行ってだろ?」
「……ん、いや、ボクは」
「はは、僕が同じ立場だったら付きっ切りで居たいと思うからね。
 それに僕も度胸がある方じゃない。誰かとつるまないと此処まで来れないんだよ。情けない事に」
 ケンスケは眼鏡をくいっと軽く上げる。逆光が光るレンズ越しに沙慈の心を見透かしている様だった。
 どきっとする沙慈の視線をさまよわせる中、ケンスケはけれんみと妬みのスパイスの効いた口調で
 罪悪感を煽りつつも自らを卑下してみせる。肩をすくめてそう漏らす相手に沙慈にはこの慎重さと裏腹に
 何が彼を此処まで行動をさせるのかイマイチ理解が出来なかった。先日の一件でもそうだ。
 幾ら兵器や敵の姿を見て見たいとは言ってもわざわざ危険を冒してでも見たいものだろうか?
 ミリタリーマニアらしき事は大よそ解っており、ぼんやりとだがそれらへの好奇心が強いのは解る。
 それは命を賭けるに等しいのかと沙慈の価値観からは理解が出来なかった。
 そんな気まずい雰囲気の中、後ろでポーンっと機械音がなり、エレベーターの扉が開く。
 訝しげに僅かに眉間を寄せる少年の姿に二人は一瞬ぎょっとしていた。
 少年は両手からぶら下げている大きめのスーパーのビニール袋に
 食材やら生活用品やらが詰め込まれている。うつむきがちにエレベーターから降りると
 丁度、ケンスケと沙慈からの視線とかち合う。しばしの沈黙。
 不信感と疑心が無表情な顔から滲み出ていた。
「あ、セイエイ君」
「……また、俺に用ですか? 何も話すことはありません」
「クロスフォード、頼むわ」
「いや、違う違う。たまたま、此処に用があってね。そっちこそここに住んでるの?」
「……関係ありませんから。失礼します」
「そ、そぅ」
「つれないなぁ。ま、仕方ないか」
「……?」
「あ、うん。それじゃボク達も行くから。ごめんね、勘違いさせちゃって」
「いえ、では失礼します」

78 :
 ケンスケは早々と会話を諦めて、沙慈に託した。沙慈はやや、慌て気味に首を横に振りつつも
 手振りを交えて否定をする。当然二人の言語はアラビア語基本英語交じりなので
 日本の男子学生として平均程度の英語能力しかないケンスケにとっては内容はさっぱりだったが
 なんとなく刹那の坦々とした受け答えから察する事は出来た。
 呟くケンスケの言葉には刹那は理解の範疇に及ばなかった為
 一瞬きょとりっとした顔をして僅かに会釈をして、歩を進める。
 最初の数歩、同じ方向を進んで言うと思われる刹那と二人。刹那も同じ方向なのだろうと
 警戒感を弱める事もなく微妙に距離を取る。ケンスケと沙慈も刹那に変に警戒されない様に
 その距離のとり方に合わせて進んでいく。マンションの廊下を黙々と歩く三人。
 刹那がマヤ宅へと着くと再び軽く会釈をした後、キーをポケットから取り出してあけようとした時だった。
「って、えぇっ!?」
「……?」
「どしたの? 急に変な声だして」
「いや、僕達が目指してた家が此処」
「へ? って、それじゃ」
「……では」
「い、いや、その目的地が。って、えぇ? それじゃセイエイってやっぱり?」
 ケンスケの素っ頓狂な声に、刹那も思わず振り返る。
 刹那からすれば、行き成りの奇声に警戒感が一気に高まるが、沙慈も驚いている事から 
 想定していなかった事態だというのは伺えた。沙慈はケンスケの話を聞けば
 想像の補完により、刹那への以前の疑いがほぼ確信的になっていく事実に気付く。
 NERV関係者の家に住んでいるとなれば、その可能性がより濃くなっているだろう。
 そういって、何度も顔と部屋の玄関扉を往復させる沙慈の視線の動きに事情が飲み込めない刹那。
 口が滑っては不味いという本能だけが沈黙を貫き、足早に部屋の中へと逃げる事を選択した瞬間
 玄関扉が勝手に開き、タンクトップとハーフのラフな格好の若い女性が顔を出す。
「刹那君、おかえりなさい。あれ、鍵は渡してた筈だけど……」
「……あ」
「え?」
「ただいま戻った」
「…………………………………………………………何、この空気?」
 伊吹マヤは刹那に初めてのお使いを頼んでいた。
 本来一緒に行けば良いのだが当人の日本に馴染む為の試験的な運用だった。
 無論、それを一人部屋で待つのは気が気ではない訳で
 そわそわとしていた中、玄関から声がすれば出迎える為にドアを開けた。
 ただ、それだけの動機だったのに玄関を開けば少年三人の視線がぶっ刺さってしまう。
 その重苦しい空気は思わず、疑問が口を滑らせるに至った。

79 :
―第伍使徒襲撃、三日後。高校の教室にて
 避難中に頭を打ったという事で数日欠席していたフェルト・グレイスが学校に登校する。
 最初の3時限までの休み時間や朝は数名の女子生徒が入れ替わり立ち代りで
 怪我の心配と非難時の愚痴を残していく。
 やれ、面倒だっただの姿が見えなかったけど、大丈夫だっただのと当たり障りの無い応答。
 誰もフェルト自身が戦っている事など知らないのだ。この学校に居る3人の生徒以外は。
 緊張の走る時間が続いていたが、来たと思えば顔を僅かに上げて視線を少し外す。
 ルイス・ハレヴィが席へと近付いた途端、フェルトの顔がこわばっていく。
 あからさまに話したくない雰囲気は出しているが逃げられないなと思っているのも事実。
 ルイスも正直積極的に話したく無い雰囲気を漂わせていたが
 一度話さなければいけないと思っているのだろう。
「退院おめでとう。ちょっと話を聞きたいんだけど?」
「……う、うん。その」
「話し辛いなら場所変えましょうか」
「……そうして」
 昼休みと言う事で二人は屋上へと向かった。放課後まで待てなかったので手弁当込みだ。
 珍しい組み合わせにクラスの数名ははてなマークを浮かべているがそんなのは些細な事柄で
 沙慈が他の生徒より少し気になった程度だった。廊下の移動中二人の会話はなく
 やや風の強い日、二人の憂鬱な気分など気にも留めない快晴の空は忌々しい程の清清しさであった。
 風で散らばっていく髪を手で抑え逃げる様にしてフェルトはベンチに座る。
 ルイスはそれと向き合う事をせず、フェンス軽く背を預けたままルイスも
 パック飲料にストローをさしている。フェルトが小さくいただきますと呟けば
 ルイスもそれに習い軽く黙祷に近い祈りを捧げた後、白身魚のフライが挟まったパンをかじる。
 
「私にもたんこぶ出来ちゃったわよ。あの後何があったかしらないけど、そっちは大丈夫?」
「う、うん。その平気。ちょっとアザも出来たけど」
「……何時からなの? 確か飛び級だったから私より若い筈だったけど」
「13歳から」
「そんな早くから?」
「私は適正が解ったのが早かったから」
「……脊が低いからとか若い内からってレベルじゃないわよね。
 アレって……何で動いてるか知らないけど……ま、聞いても解んないだろうから聞かないけど」
 二人には年齢さがおよそ3歳程ある。フェルトは優秀という事らしく
 ユニオンに組み込まれた日本において進められていた飛び級制度を適応された一人であった。
 刹那も含めて、年齢層がイマイチ一致していない生徒も多く、基本的に同年代のグループが出来易い。
 故にルイスとフェルトの両名はこうやって学校で話したのは初めてだったりする。
 フェルトの緊張は手に取る様に伝わり
 ルイスにとってもどう話を持っていけば良いか戸惑っており、合間の沈黙は長かった。
 誰に向けてか解らない呟きの様な言葉。トリガーの様な手摺と画面以外よく分からない
 あのコックピットはおぼろげにも覚えていた。ただ、覚えていただけで解ってはいない。 
 そして、多分説明されても半分も理解出来ないのだろうとルイスは自覚していた。

80 :
「なんで、乗ってるのって聞くのは野暮かな」
「私はアレを使いこなさなきゃいけないの」
「適正って奴?」
「それもある……けど」
「けど?」
「お父さんとお母さんの遺志だから。私まで負けちゃいけないから。
 アレを使いこなさないままだと、私のお父さんとお母さんの死が無駄になっちゃうから」
「……そぅ」
 聞くのが恐る恐るだったルイスに察してかフェルトの声は反比例して大きくなり始めた。
 何か自分の中で覚悟めいたモノが宿っているのか
 背筋を伸ばし、言い振りは一介の軍人のソレに近いものがあった。
 ルイスはその言葉を驚きを隠せないまま、視線を逸らしてストローを咥える。
 ちゅぅっと言う音にかき消されなくはっきりと耳に残るフェルトの意思表明。
 言い終えた後、おもむろに昼ごはんのサンドイッチを頬張るフェルトを見つつも
 ルイスは次の言葉を濁していた。気まずい沈黙の時間は空の爽やかさで打ち消される事もなく
 二人の食事が黙々と進んでいった。空気が悪ければ、食事もあまり美味しくない。
 そんな二人の歯がゆさを楽しんでいる様に時間だけが過ぎていく。
「聞きたいことはそれだけ? 後、危ないから、ああいうのは」
「解ってるわよ。私だって馬鹿じゃない」
「……そう」
「もういいわ。ごめんなさい」
「こっちこそ。黙ってなきゃいけない事、抱えさせちゃったから」
「別にグレイスさんは悪い事何もしてないし……ね?」
 最後に何か言いたかったのか語尾に若干の沈黙が混ざった。
 けど、それからは平凡的な労りの言葉へと摩り替わってしまい、その場は解散となる。
 その日から数日ルイス・ハレヴィは上の空だった。
 本人にとっては葛藤の日々であったが誰もその心中は解らなかった。
 本当はもっと聞きたい筈だった。もっと、問い詰めて洗いざらい話させて
 そして、自分が気が掛かりになっている事を確認したかったのだ。
 けど、ルイスにはそれが出来なかった。
 年下の少女が戦場で戦い、苦悶し、罵倒されながらも頑張っていた。
 その苦痛、苦難を目の前で見て、更に命散らす覚悟で臨み続ける事も。
「……なんでよ。なんでそんな必死に……頑張ってるの。
 ちゃんと理由もあるし……それじゃ……聞けないじゃない。
 聞かなきゃいけないのに……あのクラスがアレに乗る為に……集められてるって話とか
 それになんで……なんで……クラスの中で私”だけ”ママが居るのとかっ!」
 ルイスは家に帰れば一人部屋でそう呟き、自問自答しながら惰性の一週間程過ごす。
 言葉は思いはぐるぐると渦巻いて、沈殿して絡み付いて、身動きが取れなかった。
 苛立ちをクッションに乗せてが壁に叩き付けた後、シーツで包まって現実から自身を隔離する。
 その後、ルイス・ハレヴィは暗い雰囲気を払拭するかの様に
 沙慈を引っ張り回す何気ない日常へと戻していった。

81 :
次回予告
 相田ケンスケ。一学生である彼には託された思いがあった。
 なんとかたどり着いた藁も彼の指の間をすり抜けていってしまう現実に贖う。
 二年待ったこの機会を失う事など許せずに声をあげた。
 滑り落ちる藁を必死に手繰り寄せる先の彼に待つ未来はあるのだろうか?
第四話後編「超えられぬ一線」
思ったよりまったりじゃなかったけど、次回こそサービス♪サービス♪
以上で投下終わります。次はまた2〜3週間後で本編とは別のグラハム偏予定
過去話ではないので本編って事でも良いので後編と一緒になるかもしれません
解説レスを間に一回入れられたらなぁと言うスケジュール予定です。
では、投下失礼しました

82 :
折角な日なのでちょっと短編投下。本編とあんまし関係ありません

83 :
  刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
    閑話窮題「暦のワタヌキで嘘を叫んだフール」
―四月一日リボンズ邸にて
「司令に副司令揃ってどういったご要件で?」
「わざわざ、御足労頂かずとも通信なりの手段があったと思いますけど」
「事は急を要しつつ、そちら側と話を詰めなければいけない事案が生じてしまってね」
 いかにもリゾート地と言わんばかりの晴れ晴れとした外の景色に
 だだっ広い部屋におかれた10人くらいがゆったり座れそうなソファー。
 そこに中性的な緑色の単発の少年とややうねッた紫色の髪のどちらともつかないメガネの人物が一人。
 ソレに対峙するは年老いた白髪の老人とサングラスをかけた中年の男。
 いかにも擦れ汚れた大人達と対比すると少年達は実に色素の薄く汚れき印象を与えていた。
 紫の髪をした人物はいかにも暇なんですねと言わんばかりに目を細めて
 其の大人たち二人を見つめていた。そんな視線を何処吹く風といった感じで
 司令碇ゲンドウと副司令冬月コウゾウは真剣な面持ちで勧められた席へと座る。
 そして、懐から一つの書類を取り出す。
「これを」
「要望書ですか? 拝見してよろしいですか?」
「ええ。見て頂ければ話が早い」
 一枚に及ぶ簡素な書類。ボールペンで殴り書きされた文字からそれが
 エヴァ四号機パイロットヒリング・ケアである事が解る。
 その内容で目を通した途端、紫髪でメガネの人物リジェネ・レジェッタは若干イラついた口調で
 ばしっと其の要望書を机に叩きつける。どれどれとソレを見る。
 以下にはこういった内容が書かれていた。
『マルドゥークがやってくれないからこっちで頼むんだけど
 そろそろ、胸位大きくしたいんだけど、なんとかなんない?
 いい加減他の子の発育の良さに対比されるのウザイからさー。なんとかしてよ』
 何度か頭をカリカリとかき、口の中で「あのバカは」と愚痴った言葉を飲み込んでいるリジェネ。
 いかにも不愉快と言うか呆れた表情のまま申し訳なさそうに陳謝を込めて発言する。
「この件ですか。コチラでも何度か言われていたのですが聞き入れないものでね。
 戦闘型において胸などあっても意味が――」
「今、この一件で本部が真っ二つに割れてしまってね」
「…………は?」
 その発言を遮る様に声をあげるのは白髪の老人NERV本部副司令の冬月コウゾウ。
 眉間にシワを寄せてこちらも頭痛の種であることをアピールするかの様に首を横に振る。
 リボンズだけは其の様子をすでに見知っていたかの様に冷め切った表情で見つめていた。
 そういうとリジェネの困惑した表情で視線を泳がせている中、サングラスの中年の男
 NERV本部司令碇ゲンドウは真剣な面持ちでなおかつ、口元を隠したまま語り始める。

84 :
「大事なのはスタイルだ。ヒロインたるにはボンキュッボン。
 たわわに実った果実。それでいて決してデブではない。
 もう、それを目撃した瞬間から顔なんて記憶に残らなくていい。
 野郎どものスケベな視線は右に揺れても左に揺れても縦でも斜めでも
 常にそこに釘付けになれ。それがヒロイン、ヒロインの持つべきボイン。
 ……もといスタイルというものだ。ロリ巨? だがそれが良い!
 と言う訳で四号機パイロットヒリング・ケアに対する処置案として
 大容量豊胸派が私含む男性職員の6割女性職員1割をを占める」
「……はぁ」
 ゲンドウの熱弁にそれを聞かされたリジェネは驚きの後、蔑視を丹念に織り込めた視線を注いでいる。
 何を言っているんだろうかこのまるでダメなおっさんは。むしろ、そんなくだらない事を言いに来たのか。
 多忙な職務を縫ってスケベ理論を? そんな疑念が頭をかけめぐっていた中
 いかにもまだまだ若いなと言わんばかりに冬月が言葉を発する。
 先程の無骨で無機質な感情の吐露とは違った落ち着きのある口調で言葉は紡がれていった。
「わしはそうは思わんのだよ。何でもかんでもでかければ良いという訳ではない。
 トータルバランスと言うものがある。彼女の細身の体に無理矢理大きいモノをつけると言うのは
 いかにもアンバランスで芸がない。業者の発想だ。美しさとは人格とスタイルが合致してこそなる。
 あの白肌の小さい背に無闇に胸という一点のみで評価するのは野蛮だな。
 小さいなりには小さいなりの価値というモノがあるのだよ。むしろ、あの天真爛漫な性格から
 其のささやかによるコンプレックスや恥らい、慎ましやかさが出るのはまた魅力でもある。
 と言う訳でわし含む残り男性3割及び女性職員4割の意見により微増量派で割れていてね。
 NERV初の派閥が出来てしまい、職務に大分影響が出ている」
「…………そうなのですか」
 理路整然として無駄の無い無駄な意見を連ねる冬月にリジェネは完全にあきれ返ってしまう。
 返す言葉もなく、視線を細め口元をひくつかせながらもこめかみを抑え、この現実から逃避を企てる。
 しかし、相手も立場が立場の人間だ。無碍に返すのは些か躊躇われる。
 視線をさまよわせる中、ふと先程から沈黙を貫いていたこの邸宅の主リボンズ・アルマークが視線に入る。
「ちなみに残りの職員は?」
「不潔です!と一蹴されたりだな。全く、わかっておらん」
「…………いや、むしろまともなのは女性職員半分と男性職員1割なのか?」
「いや、それは間違っているよ、二人とも」
「ほぅ」
「では意見を聞かせて貰おうかリボンズ・アルマーク」
 ようやく、言葉を発するリボンズに一抹の期待を寄せるリジェネ。
 後ろから、無言で「変な事いって、これ以上時間伸ばすな」という脳量子波をフルに発している中
 リボンズの口元は笑っていた。終わる。これで話が終わる。
 多分、きっと、いやそうでなければならないこの話題のほかにもっと重要な要件があるはずだ。
 大の大人二人がスケベ理論を語りに来ただけなどというのがあってはならない。
 しかも国を、人類を守るための組織の役職につく2名だ。そうであって欲しいと言う
 僅かな願望が胸中で膨らみつつあった。

85 :
「この時期にわざわざ胸の補強を言い出すと言うことはそれなりの心境の変化というのがあったと言う事さ。
 だが、ボクとしては敢えて苦境を与える意味でも男体化を勧めるべきだと提唱している。
 肉体のコンプレックスなど誰もが通る道だ。安易にいじり回して解決というのではつまらないと思わないかい?
 ココは敢えて男にしてしまうことで悩み苦闘しながらも其の壁を超えるロマンがあるとボクは思うよ。
 この案は以前から提唱しているのだがマルドゥークで理解を得られなくてね」
「リボンズ・アルマーク。まさか君が女性職員残り5割、男性職員1割を締めた男色派とは。
 考慮外と思って敢えて伏せていたというのに」
「……NERVにまともな奴は居ないのか。大丈夫か、この組織」
「わしとしても女装状態の維持はアリかと思ったのだが流石にそれでは一般受けが厳しいと思うのだよ」
「冬月、私の息子まで飽き足らず、まだそんな欲求を。……私は断固反対だ。
 男女は健全に付き合うべきであり、ボインとは母性の象徴。
 それは大きければ大きい程よい。その真理は揺ぐとは思えん」
「それだからオールドタイプなどと言われるのですよ、碇司令、冬月副司令。
 人類の半分は女性で回っている。禁断の花園、戦いに疲れたパイロットに微笑むまいえんじぇる。
 そんな可愛い娘が女の子の筈がない! 少女に母性を求めるなんて歪んだ大人は修正されるべきだ。
 同性故の甘酸っぱい関係に背徳感を感じつつも手を伸ばしてしまう性。世界はそうあるべきだね」
 ―糸色望したーーーーーーーーーーーーっ!
 リジェネの思考回路はオーバーヒート寸前に陥る。圧倒的絶望の前に膝をつきたい気分だった。
 そういえば、前に冗談交じりで言っていたのを思い出す。がこの男、あの頃から本気であったのだろう。
 これ以上複雑にしてどうする。この三つ巴は誰が得をするんだ? 何の利益を産む?
 いや、ナニを産みたいのかリボンズは。……って、くだらん!
 別に戦闘型イノベイターの一人に胸があろうとナニがついてようと、どう戦績に影響するんだ。
 理詰めでどう屁理屈をこねくり回してもその理論が導き出せない。
 やや、力強めにリボンズの肩を握り締めつつも問いかけるリジェネ。
「リボンズ。そっちの方が歪んでると思うんだが気の所為か?
 むしろ、君を修正したいんだが?  許されるならオヤジにもとか言えない位ボッコボコに」
「例の銀髪で鼻歌な彼が間に合わないからボクが主張するしかないんだよ!」
「これは徹底的に話しあう必要があるな」
「ふむ、致し方あるまい」
「受けて立つよ」
「……もう勝手にしてくれ」
 春の暖かさに浮かされた男たちの熱い議論は一昼夜にぶっ続けて行われていたという。
 次回予告
 突然の招待状。四号機パイロットヒリング・ケアの謎の招集から物語は始まる。
 ありえない高さのマンションに数々の警備システムが襲われる旅路。
 ステルス迷彩のメイド部隊との激戦につぐ激戦。
 刹那達はヒリングの部屋へと辿り付き芋煮会が行えるのだろうか?
 そして、チェス盤の様な床に鎮座する巨大な重機の影は一体。
閑話休題「四月馬鹿当日に書いただけあって文章が情け容赦無しね。左様でございますね、お嬢様」
日付を確認しながらもサービス♪サービス♪

86 :
以上。なんか、ほんと思いつきで作ったので色々さーせんでした
では、投下失礼しました。

87 :
ネルフはいつからダメ人間の集まりになったんだw
……あ、ベクトルが違うだけで最初からか

88 :
ユイは美なのに巨好きのゲンドウとはコレいかに

89 :
ゲンドウ「なんとか私があのサイズまでしたんだ」

90 :
保守

91 :
規制とけてないかテスト
解けてたら明日九時にでもなんか投下しますよ

92 :
お久しぶりです。規制……長かったorz
では、間がかなり空いてしまいましたがグラハム編投下始めます。

93 :
―ユニオン軍基地にて
「また、派手にやってくれたね。左腕部大破、あっちこっちもベコベコに凹ませて。
 ま、持って帰ってきてくれた事には感謝するよ、本当に」
「うむ。頑丈さはあると聞いていたが大したものだな、シロウ・時田。やはり軍用はこうではなくてはいかん」
「……お国柄。生まれの気質なのかねぇ。全く」
「ん? 私の知っている日本人は君みたいに遠回しにモノは言わんぞ?」
 基地へと戻ったJ/Aを見てJ/A開発者時田シロウは報告書に書かれていた通りの現実に口元を歪ませる。
 コックピットから降りてくるパイロットに厭味ったらしい視線を送りながらも拍手と共に言葉をぶつけてきた。
 パイロットはそれをいつものことを受け止めているのか全開の笑顔でそれに応える。
 肩をバンバンと叩けば、痛そうに少し目をつむる時田。
 漏らされた言葉にふとパイロットの男は先程まで一緒だった少女を思い返し、否定する。
 そこまで突っ込むのかと言わんばかりにジト目を注ぐ時田はすぐに忌々しく思うことすら馬鹿らしくなった。
 此のパイロットの男が全く悪意なく今までのセリフを吐いているのだと解っているからだ。
「はぁ、しかし聞いたよ。まさか……ね」
「ああ、全くどこの誰がたぶらかしたんだ」
「選ばれた子供達とはいえ、所詮子供という訳か」
 会話を続けながらも時田は整備員の報告を纏めて、メモにとっている。
 改修費用、必要なパーツetc。官製の仕事は常に書類と予算から成り立っている。
 湯水に使えるのはあくまではんこが押された部分だけだ。しかも、J/Aは元々実験用で正式な兵器ではない。
 どう言い訳して予備のパーツと必要なパーツを調達するか。時田の頭の中の電卓と作文用紙がガリガリと働いていた。
 そんな事を尻目にパイロットの男は憂慮する。今回の事態は想定しされていなかった訳ではないが
 それでも今のこの世界において悪手であるのは間違いない。まだ、EVAの配備が進んでいない中
 実験用の機体まで持ち出す事態。何より気がかりが知り合いに居た。
 そんな事を微塵も感じさせないパイロットの男の健気にも感じられる快活さを更に不安に掻き立てられた。
 ハンガーへに現れた一人の男の顔色は当に幽鬼の様であり、目はひどく濁っていた。
「……どうしたビリー? この作戦の間中、ずっと顔色が悪いままだったぞ?」
「ん? ああ、いや。ちょっとね。預かっていた子がちょっと出て行く事になって」
「猫だったか? 全く、大の男が猫で寂しさを紛らわすなど」
「それはお互い様だよ。全く。ああ、そんな事よりMr時田。朗報だ」
「Mrカタギリ、どうしました?」
「コレを見て欲しい」
 親友の心配をよそに乾いてひきつった微笑にパイロットの男は不安で顔で怪訝になる。
 事情を話してもらったが無論、それが本当の理由でない事はわかる。
 話せない何かがあったのだろう。それを踏み込むべきだと思った矢先
 ユニオンの技術者ビリー・カタギリは差し出した書類を片手に強引に話を変えていった。
 時田も心配気な視線を送ってはいたが、パイロットの男ほど親しい関係でも無い自分では
 差し出がましいと思って会話に参加はしていなかった。
 だがが声をかけられてようやく言葉を返しながらも手渡されたじっと渡された書類に視線を流す。

94 :
 しばしの静寂。しかし、すぐにその静寂は破られる。
「……ふむ、ほぅ。おおっ!? こ、これは!!!」
 数秒後、時田の普段あまり聞かされる事の無い大声がJ/Aのハンガーの中でこだました。
刹那・F・セイエイを新世紀ヱヴァンゲリオンの主人公にしてみる
  幕間窮題 「自由と反逆の弧」
 第四使徒が第三新東京市を襲撃をして数ヶ月の事。事態は使徒襲来とは別の事件で起きていた。
 各国の紛争地域に対してゲリラ、住人、駐留軍人全てを壊滅させる事件が連続で行なわれていた。
 犯行方法は何処で手に入れたか解らないがN2兵器の火力で地域ごと消滅させると言う強引な手法。
 おかげで地図から領土争いをしていた多くの街や島が次々消えていった。
 展開していた基地や人員物資も丸ごと吹き飛ばしてしまい草木も残らない消滅してしまう。
 クレーターの出来た荒野の権利に再展開する余力はどの勢力もなく、人が居つかぬ不毛の地域を次々と増やしていく。
 結果的にその地域は平和になったと言う皮肉な事態を迎えていた。
「なんでよりによってあんたなのよ」
「ん? 何かね」
「うざーい。あー、やだやだ。こんな南米のよくわかんない所でしかもこんな似非日本通と一緒だなんて」
「ははは、相変らず手厳しいなアスカは。だが、そろそろレディーとしての慎みを持たないといかんな。
 立派な大和撫子とやらにはなれんぞ?」
「アタシはアタシのままで良いわよ」
「ふむ。その心意気もまたよしとする!」
 世界がひっくり返る様な事態が起きているがマスコミと現地市民と一部過激な思想家以外は冷静だった。
 犯人も犯行に使われた道具もわかっているからだ。故に秘密裏にそれを捕獲せねばならなかった。
 そんな大事件の為とはいえ、不満を隠せない少女式波・アスカ・ラングレーは愚痴を零していた。
 狭いプラグの中で待機すること数時間。輸送飛行機の中で通信で行なう相手には不満を零すばかり。
 その主な内容は今回の作戦に辺り、援軍として連れ添う相手のことだ。
 ユニオン軍所属グラハム・エーカー中尉。アメリカでの大学生活の間、警護をしてくれた人物であるのだが
 アスカの中での評価は既に地に落ちていた。要因は主に性格面において。
 モニター越しに忌々しげに視線を向けているがグラハムはそれに気に掛ける事も無く
 此方は先日の使徒襲来の際に使用されいたJ/Aのコックピット内に収まっている。
 完全に収納されているEVA用に作られた輸送機と違い、J/Aはまるで吊るされているかの様に
 ぶらぶらと垂れ下がっており、バランスを取るのが実に大変そうだった。
「なんでAEU空軍のエースのアタシがユニオンと一緒なのよ。ってか、エヴァは無いの? エヴァは」
「仕方あるまい。エヴァはヴァチカン条約で各勢力3機ずつしか保有出来ない。
 そして、ユニオンの分は全て日本のNERV本部に回しているからね」
「ったく、何やってんのよあんたの所は? そんなもん作ってて肝心のエヴァがお留守なんて」
「ま、幾らエヴァを揃えたところで本部がやられてしまっては終わりだからな」
「……はぁ。まー良いわ。AEUの軍も被害があったみたいだし、ちょっと狼藉者を〆てやらないと」
「おお、仲間のA☆DA☆U☆CHIと言う奴だな! 美しい! 私も武者震いがするぞぉっ!」
「……あんたちょっと黙ってなさい」

95 :
 不満のマシンガンの火線をかいくぐる様に大人のいい繕いでグラハムは話を逸らす。
 それに不満げにしながらも、そんなのは解ってると言わんばかりの語気で言葉を返すアスカ。
 話に出てきたヴァチカン条約。使徒という未知の敵に対し
 EVAと言う巨額の費用を投資してつくられた超兵器は当然の如く
 国家間の軍事バランスにおいても危険視されている。
 故に調停でユニオン、AEU、人革連共に3機を上限とされていた。
 そして、それに伴って開発されたのがJ/A(ジェット・アローン)である。
 EVAの上限とは関係なしに所持する事が可能な巨大な戦略兵器として開発を進めている。
 流石に世界で一番軍事費用に金を掛けているアメリカ合衆国を中心としたユニオンだけの事はあり
 現段階でエヴァ4機を建造していてもまだ足りないらしい様は
 誰の目に見ても明らかであり、それらの行動は勿論、他の勢力と国家から蔑視もされていた。
 
「ま、改修が終わったエヴァ弐号機のお披露目には丁度良いわ。
 日本本部に来た使徒との相手には間に合わなかったし」
「期待させて貰うぞ」
「中尉! 着ました! 」
「宜しい投下準備を進めてくれ。アスカ通信を一時切る。次は空で逢おう」
「はいはい。じゃ、行くわよ! 家出した鳥さんを捕まえないとね!」
 雲が晴れると其処には白い鳥が居た。だが、明らかにサイズがおかしい。
 本来この輸送機が見える鳥など豆粒に等しいサイズだと言うのに
 これははっきりとそのシルエットが見られていた。
 おまけに赤い粒子を振りまいており、まるで出血したまま空を飛んでいるかのように見える。
 コレが上記で述べられた数々の爆撃事件の犯人であった。
 この犯人を開発をしていた人革連は世界の被害が26件、人革連での被害が9件目になってから
 初めて口を割り、急遽捕獲部隊が結成するに至った。
 秘密裏に拿捕、亡命させない為に二勢力以上の連隊を組まされている事を
 グラハムや大人達は聞かされていたがアスカには敢えて伝えられていなかった。
「これより脱走したエヴァ量産型の捕獲作戦を開始します。弐号機投下開始!」
「覚悟しなさいよ! って気持ち悪!! 何あれ! 誰がデザインしたのよ!」
「人革連のセンスは相変らずファンタスティックでオリエンタルだなぁ!」
 ほぼ、オペレーターの言葉と同時にハッチから投下されるエヴァ弐号機。
 両肩にごてごてとしたバーニアの付いた武装空中挺進専用S型装備を搭載し
 上空から舞い降りている。その白い鳥もその機影に気付いたのか振り返り
 手に持っていた大型のライフルで反撃する。その際、ようやくその白い鳥の全容が明らかになった。
 鳥の様な大きな翼に生白いカラーリング。なにより特徴的な鰻の様な頭を持つEVA。
 量産型として試作開発されていたモノであり、アスカが感想を漏らす様に気持ち悪い印象を与えていた。
 うねうねとした生白い筋肉の隆起に赤い唇、その割に滑らかに動く背中についた白い翼などの特徴全てが
 感性に対して嫌悪感を与えている。アスカには不気味であり、吐き気のする存在感がひしひしと感じられいてた。
「ちっ、パレットライフルまでくすねてたの!? こんのぉぉおっ!!」
「そのまま、ATフィールド中和! 高度も下げるんだ!」
「簡単に言って!! やってやろうじゃない!」

96 :
 自由落下をしながらもブースターで軌道を変えつつ、空中戦を繰り広げる両機。
 エヴァの手に持てば普通のライフルなのだがそれでもその大きさは薬きょうが車と同程度のサイズ。
 それをぼろぼろと零しながらもATフィールドの中和距離に至ってなかった為、お互いの射撃を弾き合っていく。
 量産型と違い翼を持たない弐号機の機動性では当てる事もままならなかったが
 奇襲による効果なのか動揺だけは与える事は出来た。とっとと逃げればいいモノを
 ムキになったのか量産型は反撃を銃でけん制する。相手は何かの戦闘機かと思ったのか
 その存在確認と共に驚きを隠せていない様子でもあった。
 そして、反撃と驚きが量産型の動きを鈍らせたのが致命的な結果へと導かれる。
「よし、私がそのまま落とす! 着いて来い、アスカ!」
「ちょっグラハム!? あんた何してんのよ!」
 量産型は更なる驚愕を見る事になる。空からでっかい塊が降ってきたのだ。
 しかも、EVAから見てもそれなり大きい塊。
 J/Aは吊るされていた拘束具を外し、まっすぐに量産型に向かって落ちてくる。
 動きを止めた量産型はそれを回避することも出来ずにATフィールドで受け止める。
 がきぃっと金属の擦れる音もさることながら、”障壁”はあくまで”障壁”であり
 地面に展開出来ていないATフィールドはJ/Aの質量をそのまま発生させている量産型全体に圧し掛からせる。
 速度と重量と飛翔能力の算数が導き出した結果、量産型はそのまま南米のジャングルへとJ/Aと共に落下する。
 途中なんとか羽をばたつかせたおかげで地面への衝突する際の衝撃は和らいだモノの
 自殺行為に等しい突撃にアスカは激昂する。
「ばっかじゃないの! あんた、あのまま激突してたら死んでたわよ!」
「HAHAHA、何とかなったから問題ない! 無理そうならパラシュートをギリギリで開くつもりだったからな!」
 木々をなぎ払い、二つの巨人が落ちたそこへと赤い弐号機がブースターをふかしながら軟着陸をする。
 その間、圧し掛かっていたJ/Aを振り払う様にATフィールドで弾き飛ばし距離を取る。
 何とか再び飛翔する機会をうかがう様にしつつもパレットライフルでのけん制射撃。
 しかし、それは弐号機のATフィールドで弾かれる。量産型はATフィールドの中和を試みた瞬間
 J/Aの拳が丁度中和したスキマを縫ってぶち当てられる。
 純粋な馬力はJ/Aの方が上だったので軽く吹っ飛ぶ量産型。白い肌がぬかるんだ泥で汚れていく。
 それでもJ/Aの突進は止まらない。量産型は圧し掛かる様に覆いかぶさるそれを両手でそれを拒絶する。
 しかし、その押し出された両手をJ/Aは掴み、握り潰す。肉と骨が砕け引き裂ける音がジャングルへ響いた。
 絶叫を響かせる為、量産型の口は拘束具を外れてしまう。
 弐号機はそれを見張っているかの様に、周囲を警戒していた。
 アスカ的にイジメの見張り番の様で情け無い構図なのがかなり腑に落ちない。
 無論その行動にも意味があり、当人達には残念ながらも意味がもたらされてしまった。
「ちっ! おいでなすったわよ!」
「むぅっ! やはり、参番機と弐番機は見張っていたか!」
「くっ……私に覆いかぶさるなんて良い度胸してるわね!」

97 :
 空中から注がれる砲弾の雨。バズーカの弾がJ/Aの背中を襲う。
 空中の砲撃と共にもう一機量産型が急転直下の突撃をしてくる。
 手には両手で今正に振り下ろそうとしているグレイブがある。
 弐号機が肩に搭載されていたニードルガンで砲弾の雨を誘爆させていくが、何発か周囲へと着弾する。
 爆発の衝撃でJ/Aの手の拘束が緩むと腹部へと蹴り上げられ距離を取る。
 弐号機は肩のソケットからナイフを取り出して、そのグレイブを受け止める。
 グレイブとナイフの刃がかち合って火花を散らしていくが
 質量及び空中からの助走によりグレイブが勝ち、鎖骨に軽く刃が食い込む。
 突き入れられた刃にアスカは僅かに呻き声を上げながらもその痛みを払拭するかの様に軽口を叩く。
 
「つぁあっ……3対2ねぇ」
「ま、ハンデには丁度良いと言ったところか! 早く落とさんと帰りの便がやられてしまうぞ!」
「ふん。あんたに担がれて帰るなんて死んでもゴメンね。
 帰りは窓際の席で優雅に遊覧飛行するんだから!」
「その心意気やよし! では、行くぞ!」
 ジャコっと音を立てて折れた刃を押し出して、新しいナイフの刃をグレイブを握る量産型の腕に突き刺す。
 思わず量産型が手を離したと同時に背骨を折りに掛かるかの様に突撃するJ/Aの体当たりに頭を大きく上げる。
 両指を折られた量産型はそれを追撃するかの様にJ/Aへと回し蹴りを浴びせかけようとし
 大きな衝撃音と共にJ/Aも膝を崩しつつもガードに向けた左腕がへしゃげ、バチバチと音を立ててショートさせている。
 弐号機はJ/Aの体当たりを食らって倒れ伏していた量産型の頭を踏みつける。
 突き刺されていたグレイブを手に取り、J/Aの左腕毎蹴り付け、量産型の足にグレイブを突き刺していく。
 再び響く量産型の絶叫。正に泥仕合の様相を呈した乱戦であった。
 ぐちゃぐちゃと周囲の土や木々は掘り返され、周囲の動物達はおびえて逃げ惑う中
 巨人の死闘は続いていくかと思われた。しかし、終了の合図は大きな爆音と衝撃波によりもたらされる。
 遠くで爆発が起きたのだ。それも規模かしらN2爆雷を使用したモノだろう。
 一瞬、全ての計器が狂い、振動が此方の方まで響いていた。
「ちっ、一匹は任務遂行。二匹は足止めだった訳ぇ?」
「む、空中の奴が降りてこないと思ったが……役割分担もしていたと言う事か」
「せめて、手負いの一匹だけでも!」
「止めておけ。この装備と損傷で、空中に居る残り一体と合流した相手と戦うの厳しい」
「……っでも!」
 まるでその爆発がのろしだったかの様に、じりじりと量産型二機は距離を取る。
 逃がす毎とする弐号機にJ/Aは右手でそれを制止させる。
 二量産型は両手と片足をやられた量産型を抱え込む様にして飛翔する。
 程なく空中でもう一機が合流するのがモニターから見えた。
 どんっと拳を握りしめてトリガーへ八つ当たりをする音がアスカの通信から漏れる。
 グラハムはそれでもどかっとコックピット内の椅子にもたれ掛かったまま、頑として譲ろうとしない。
 そんな空気の消火活動にはせ参じたかの様に、通信が飛び込んでくる。
 若いとも老いているとも言えない、年齢の声。
 それと同時にサイレンの音や怒号、爆発音などの修羅場の音が混ざっていた。

98 :
「アスカ、聞こえるか、アスカ! 現状はどうなっている!?」
「……ハッ、マネキン大佐。こちら、式波、グラハム共に無事です。……弐号機は損傷軽微」
「此方も……小破と中破の間と言ったところだ。回収を頼む」
「そうか。こちらはおそらく壱番機と思われる機体からの爆撃で壊滅状態と言った所だ。
 全く、コーラサワーを一時出向させた途端コレだ」
「ちゃんと見張っとかないから。うかうかしてると”あの娘”に取られるわよ、大佐」
「……徒歩でここまで帰るか? 式波」
「あー、ごめんなさい。それは勘弁して大佐」
 怒鳴り声に近い声がアスカの耳をつんざく。一瞬、目を閉じて耳を抑えつつも
 外のノイズとのバランスをとりながらもボリュームを絞る。
 相手は今回の作戦総指揮を取っているAUE軍カティ・マネキン大佐の声はそれで大きかった。
 本来は二機による攻撃による損耗させ、3機を別働隊が捕獲という手筈。
 しかし、相手の判断は更に上を行っていた。劣勢ながらも二機による足止め。
 作戦遂行を優先し、襲撃予測地帯の一つであった製造を行っている地区の消滅。
 人の畑も塵ひとつ残らず、大きなクレーターだけがぽっかりと浮かび
 周囲を警戒していた空軍も被害があった。空戦における戦果は散々だ。
 何せ、空軍は飛ぶのがやっと、バレルロールをしなければ旋回も出来ないと言うのに
 あちらは翼を羽ばたかせ縦横無尽に空を駆ける。ミサイルも効果なく、体当たりで
 紙飛行機の様に大量の税金を注がれたジェットはへし折り
 時間と金を掛けたパイロットを圧る。
 一騎当千。わざわざ他のスペックを削ってまで翼をつけた価値はそこにある。 
 空中で戦う分には量産型は圧倒的な火力と防御力でその場を支配できるのだ。
『テステス。大人達に告ぐ。もう籠には戻らない。この自由な翼は奪わせない。
 私達チルドレンは人形じゃない。そこのチルドレンもこちら側に来る事を願う』 
 衝撃。声の大きさによるものではない。画面に映ったのはEVAに使われる通信回線。
 試作型のプラグスーツのヘルメットと覆面で顔は隠れているがどうみても少年か少女の体系。
 肩から上なので性別の判別は出来ないが、どうみてもEVA内からの通信に見えた。
 そして、発信源は先ほど退散したEVA量産型からと見れる。
 遠隔通信による自演という訳では無さそうだ。何せ画面の端からは移動中の景色が映っている。
 声は変えられていた。ボイスチェンジャーを使った無機質で耳障りな音声が脳にこびりつく。
 それが一斉に通信に割り込んできた。自らの存在を誇示する様に一方的な宣言。
 そして、明らかに最後の台詞はアスカに向けられた言葉だった。

99 :
「なっ……まさか」
「有人だって言うの? ……嘘、人革連の話とちが……量産型は無人じゃなかったの!?」
「……そもそも、人革連の話を信じる方が馬鹿という事か」
「ああ、そういう事だ。今回の行動ではっきり解った。
 人革連の言うダミープラグと模擬作戦プログラムとやらの誤作動ではない。
 誰かがダミープラグのデータ、改ざんに関与して操っている訳でもない」
 話が違った。人革連からはEVAの自動制御システム、別名ダミープラグの暴走という話だった。
 無論、それでは明らかに戦略性が伴わない為、遠隔操作やプログラムに何か仕込んだ
 内通者がいるという見方をユニオンもAEUしていた。何せ、ダミープラグは所詮AIみたいなモノで
 特定パターンを想定した命令し、指揮官が近くにいるだけで幾らでも対処が出来る。
 そう謳って予算をここ数年で伸ばしていた肝いりの技術だ。
 諦めの声がグラハムやマネキンから漏れてくる。殆どない人革連の信用を更に下げられた。
 それに憂いる余裕がある事を双方で確認しているかの様な静寂だった。
 沈黙を経て二人はほぼ同じ結論に達していた。
「誰かが操縦している」
「それ、すなわち」
「”チルドレンの誰かが裏切った”だ。ただでさえ、数が少ないと言うのに何を考えている?」
「私達に人殺しをしろっていうの……べ、別にそん位構わない……けど」
 当たり前だ、有人のチルドレンならすぐバレる。特定はすぐに出来る筈だ。
 だから、それはない。チルドレンは数が限られている。そんな常識を根底から崩す
 量産型からの宣戦布告。相手が化け物とは違う。少年少女で殺し合いをしなければならない事実。
 アスカからの動揺が声に伝わってくる。気丈に上ずった声のまま出された余裕の隠蔽が何よりの証拠だった。
                    幕間 終了。本編へと繋がる

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