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2013年01月サブカル202: 動物キャラバトルロワイアル4っぽふさふさ (313) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
好きな事書いて消えるスレ (416)
あなたが選ぶ最強のサブカル人は?! (832)
★★★vintage blythe@サブカル板Part2★★★ (476)
強運モード継続3連目 (332)
【日本】高城剛5【脱出中】 (552)
【高校生】サブカルなティーン【集合】 (206)

動物キャラバトルロワイアル4っぽふさふさ


1 :2010/04/18 〜 最終レス :2012/11/22
動物なキャラでバトロワを
しようっていうスレだにゃ。
キャットファイト?いいえ漢の闘いです!(メスもいるよ)
予約をされる場合の期限は5日。延長は2日まで。
まとめwiki
ttp://www6.atwiki.jp/animalrowa/pages/1.html
したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11497/

2 :
3/5【ぼのぼの】○ぼのぼの/●アライグマ/○クズリの父/●ヒグマの大将/○アライグマの父
2/4【ポケットモンスター】○ピカチュウ/○ニャース/●ミュウツー/●グレッグル
1/3【忍ペンまん丸】○まん丸/● タヌ太郎 /●ツネ次郎
2/3【魔法少女リリカルなのはシリーズ】○ザフィーラ/○ユーノ/● アルフ
1/2【ジョジョの奇妙な冒険】○イギー/●ペット・ショップ
2/2【ケロロ軍曹】○ケロロ軍曹/○ギロロ伍長
0/2【銀牙―流れ星銀―】●銀/●赤カブト
1/2【HUNTER×HUNTER】●メレオロン/○イカルゴ
1/2【ハーメルンのバイオリン弾き】○オカリナ/●オーボウ
2/2【聖剣伝説Legend of Mana】○ラルク/○シエラ
1/1【ダイの大冒険】○クロコダイン
0/1【グラップラー刃牙】●夜叉猿
1/1【ワンピース】○トニートニー・チョッパー
0/1【金色のガッシュ】●ウマゴン
1/1【真・女神転生】○パスカル
1/1【真・女神転生if】○ケットシー
1/1【DQ5】○キラーパンサー
1/1【狼と香辛料】○ホロ
1/1【東方Project】○因幡てゐ
0/1【スーパーマリオシリーズ】●ヨッシー
0/1【クレヨンしんちゃん】●シロ
0/1【ペルソナ3】●コロマル
1/1【大神】○アマテラス
0/1【機動武闘伝Gガンダム】●風雲再起
1/1【十二国記】○楽俊
0/1【もののけ姫】●モロ
1/1【うたわれるもの】○ムックル
1/1【サイボーグクロちゃん】○クロ
1/1【クロノトリガー】○カエル
0/1【MOTHER3】●ボニー
27/47

3 :
予約状況
19日
アライグマの父
22日
まん丸、イカルゴ、クズリの父

4 :

今生き残っている中で最強ってだれだろう

5 :
本人のやる気を別にするとアマ公じゃないか?
筆調べが時間停止且即発動のチートだし
あとはクロコダインが地力と実戦経験で抜き出ている感じ
経験はラルク、シエラも相当だろうけど
あの二人も百歳超えてンじゃなかったっけ?

6 :
気づいたら夜更かし状態orz
ケロロ、オカリナ、キラーパンサー、ケットシー、楽俊
以上のメンバーを予約します。

7 :

織田信長
- 2代織田信高(七男)
- 3代織田高重
- 4代織田一之
- 5代織田信門
- 6代織田信倉(養子)
- 7代織田信直(養子)←←← 大和宇陀松山藩主織田高長の孫(信雄の系統)
- 8代織田長孺
- 9代織田長裕
- 10代織田信真(1842〜?) ←←←明治維新後、写真師になって、その後消息不明
- (11代から14代は不明)←←← 親戚に迷惑をかけるから、あえて16代信義氏が製作配布した家系図では4代不明としたとか(週刊新潮の記事より)
- 15代織田重治(1917〜1995?)←←←1842から1917の間に5人もいる
- 16代織田信義
- 17代信成(次男)←←←信雄の末裔なのに、大徳寺でなく信孝建立の本能寺・信長廟へ行って、信長の声が聞こえたらしい…

織田信成が織田信長の子孫って本当?【2代目】
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/skate/1271421161/


8 :
不安なところがありますので、
したらばの方に仮投下しました。

9 :

復活展開はほかのロワでもあるから問題ないと思う
あるいは死亡直前に寄生されたとか

10 :
(一)
 空に暗雲が立ち込め、風が俄かに勢いを増している。その唸りは魔獣の咆哮のようだ。
 ならば、大きく音を立てて翻る旗は風の爪牙に弄ばれる獲物だろうか。
 旗から視線を戻し、イカルゴは辺りに目を配った。
 屋上から見える風景は、崩れだした空に怯えたように沈んでいる。東には海岸線がはっきりと見えるが、海を渡る西の高架は少し霞んでいた。
 立ち騒ぐ海原を鏡に映したような空の下、砂丘を行く三つの影に目を留める。雨が降り出す前にサッカー場に辿り着ければいいが、この空模様だとぎりぎりだろう。
 降り出せば、臭いや音といった情報が失われてしまう。逃亡者には恵みの雨だろうが、待ち受ける側には雨音は呪詛の呟きようにしか聞こえない。念能力者であれば幾つか対抗策も立てられるが、彼らは違う。
 具現化系の能力者と思わしきザフィーラも、念能力者ではない。
 それどころか、ザフィーラは同じ大地に生きる住人ですらない。
 反芻し、しかしイカルゴは苦笑のようなものを刻んだ。
 彼が述べた、参加者がそれぞれ異世界から集められたという話は易々とは信じ難いものだ。誇大妄想も甚だしいとさえ思う。
 ただし、イカルゴの常識からみればザフィーラの能力には奇妙な点があったことも事実だ。
 念とは自身が元々持ちうるオーラを自在に操る術である。ひいては、どの念能力も使い手のオーラと同等の波長を発している。しかし、ザフィーラの能力である「鋼の軛」からはザフィーラの気配どころか、オーラそのものが“凝”を以てしても見えなかった。
 少なくとも彼の能力は、念とは違う系統のものであることは認めていいだろう。
 奇妙といえば、クロたちに同行しているイッスンにもある。存在自体が不可思議ではあることは置いておくとして、彼のデータがアームターミナルに入っていなかったのだ。
 ザフィーラによると、イッスンはトナカイのデイバッグに入っていたらしい。加えて、彼の名は名簿に載っていない。
 その事実だけ見れば、イッスンは支給品であると判断できるし、否定する理由もない――そのことを告げた時、本人だけは大いに否定していたが。
 生物だから例外なのか。イカルゴに支給されたブリがあれば確証が得られたのだろうが、今寄生している大トカゲに襲われたために紛失してしまっている。
 少し残念だが、だからといってデイバッグを探しに行く危険を冒すほどの価値がある情報とも思えない。
 しかし、わざわざ支給品のデータをアームターミナルに入れているのだから、生物だとかそういう理由で省くとも考えにくい。
 何らかのトラブルによりイッスンは紛れ込んだという仮説はどうだろうか。しかし、それにはイッスンの首に巻かれた糸が邪魔となる。あれが首輪と連動している以上、イッスンもまた、予めこの殺し合いに組み込まれているという証明に他ならない。
 ついでに言えば、その糸のデータもアームターミナルには入っていなかった。
 単なる入力漏れの線はどうか。あり得ないことではない。
 もしくは――キュウビの知らぬ所で投入されたのか。すると、キュウビ側はそれほど統制が取れた体制にはなっていないことになる。
 ただし、イッスンの話によれば、彼らの“世界”の文明レベルは大して高くないようだった。そこから考えると、“異世界”の道具の扱いはキュウビの担当外になっているとしてもおかしくはない。
 これはキュウビに誰かしら“異世界”に精通した協力者がいるということが前提になるが。
 問題は、イッスンがキュウビの思惑の外だった場合に、この件が持つ意味だ。単なる気まぐれやミスなのか。

11 :
それとも――キュウビに知られてはならない何かを期待してのことなのか。
 思わず思考の迷路に没入しそうになり、イカルゴは頭をふった。
 ただでさえ空気が淀んできたせいで、思ったより視界が開けていないのだ。答えのない考察にかまけている暇はない。
 視界は、雨が降り出せば更に悪くなる。雨合羽の類はないし、来訪者の捕捉が遅れることは必至だ。
 円を張るべきがしばし迷うが、やったところで視界以上の範囲を保持し続ける自信はない。イカルゴは溜息をついた。
 それに、監視をするならもっと高所がいい。ここから近いところだと電波塔あたりが妥当か。クロたちが帰ってきてからでも、場所を移動するべきだろう。
「といっても、あいつらが帰ってくるまでここを確保していなくちゃ意味ないよな」
 どこであっても、監視を怠っては地の利は無と化す。
 ただし、このまま続けても監視以上の役割はできそうにないなと、イカルゴは口を曲げた。
 この強風は弾道に大きな支障になる。それにこのまま天候が悪化するのであれば狙撃自体出来なくなる。何しろ精度はあげられず、長大な間合いという狙撃の利点はなくなってしまうのだ。やらない方がいいかもしれない。
 誤って当ててしまえば、自体は酷くややこしいものになってしまう。交渉など、ほぼ不可能だ。
 もっとも、狙撃そのものにどれほどの効果があるのかは疑問が残る。悠々と防いでみせたザフィーラのような存在が他にいないという保証はない。
 とすれば、銃撃はいたずらに存在を知らせるだけに終わるかもしれない。
 しかし、それは表向きの問題だ。
 どうであれ、外敵が来れば撃つしかないのだ。当てるのであれば、少なくとも威嚇ではなく、仕留める覚悟で撃たなくては自らの首を絞めることになる。
 防ぐ能力があるのであれば尚更、殺せるときに殺さなければ自分だけでなくまん丸やクズリらの身が危ない。
 だが――。
「そう思うのは簡単だよな……」
 イカルゴは自嘲気味に呟いた。ラルクを撃てなかったことが嫌でも蘇る。命を奪う引き金は堪らなく重い。そして殺害の業を背負うことが堪らなく恐ろしい。
 果たして撃てるか。自問するも、否定だけが頭を占める。
「キルアたち、どうしてるかな」
 沈んだ表情でイカルゴは独りごちた。
 今回の作戦では、主力こそネテロやモラウといったハンターたちだが、その過程には自分やメレオロンの能力が深く関わっていた。

12 :
しかし、今――。
 自分達はこんなことに参加させられている。
 作戦を延期するほどの余裕はなかった。ならば、自分達なしでキルアたちは王に立ち向かうことになるのだ。
 失敗するとは思わない。だが、非常に不利な状態で遂行しなくてはならないのは確かだ。
 しかしながら、この殺し合いに巻き込まれたことが一方的に不運とも思えなくなっていた。
 それというのも、イカルゴの決意が脆く浅薄な代物であったことがこの地で判明したからだ。作戦のために自分の手を汚すことも厭わないつもりだったのに、結局自分は危険な相手を殺せなかった。
 
 もしあのまま作戦に移行していたら、大切な局面でヘマをやらかしていたかもしれない。そのために計画が瓦解する場合だって有り得る。
 
 自分が思っていた以上に卑怯者だった。
 キルア達にとって、卑怯者の自分が消えたことはマイナスとは言い切れないのだ。
 だが――メレオロンは違う。
 “天上不知唯我独損”で王直属護衛軍の念を封じさせるには彼の能力は不可欠だった。圧倒的な護衛軍を前にして、ナックルは正面から戦わなくてはならない。
 護衛軍と相対した時、おそらく彼は死ぬだろう。共闘するシュートも。もしかしたらキルアまでも。
 その様が容易に想像できるが故に、そのことを考えることさえもとても恐ろしかった。
 しかも、今すぐ帰れたところでメレオロンはもういない。生き残ったのは役立たずの方のキメラアントだ。
「おまえは簡単に死んじゃいけないやつだったんだぞ……」
 いなくなってしまった仲間に、イカルゴはぼそりと語りかけた。
 そのとき、東で煙が上がったのが見えた。
 

(二)
 廊下に敷かれた柔らかい絨毯の感触を楽しみながら、まん丸はクズリの父と共に部屋の中を歩き回っていた。その足取りは軽い。屋敷の探検は辛い記憶を一時的にでもまん丸から目を逸らさせてくれたらしい。
 地階から三階まで、ぐるりと回って来た。
 この屋敷にある部屋は全て豪奢な調度品で占められており、部屋そのものが光り輝いている様だ。しかし、だからといって悪趣味ではない。
 建物の雰囲気は格式高く厳かではあるものの、威圧感はそれほど感じられなかった。幾つも設けられた窓が外の光を適度に取り込んでくれているせいかもしれない。
 クズリの父が、何度目かの感嘆の息を吐いた。
「いやはや、まったくニンゲンっていうのは凄いねえ。こんなものを作ろうだなんて、ワタシは考えもつかないよ」
「ボクもこんな凄いお家は初めてです」

13 :
まん丸はこれまで見て来た部屋のこともざっと思い返してみる。ネンガさまの屋敷よりも確実に大きい。調度品の類も全く違った。木の臭いが感じられないことが、少し気になるが。
 クズリの父が、そうだろうねえと頷いた。
「こんな大きい巣は中々ないよ。ケイムショも今思い出せば凄かったけれど、ここまで飾りはなかったからねえ」
「クロさんは大頭領さんのお家だって言ってましたね」
「よほどの大家族か、用心深いんだろうねえ。ダイトーリョーさんは」
 言いながら、クズリの父は南側の窓から海を見遣っていた。まん丸もつられて窓の外を見た。背伸びして見た鉛色の海は三角の波が立ち、窓枠は風に軋んでいる。
 丁寧に磨かれたガラスには、まん丸とクズリの父の姿が映っていた。クズリの父がひょいとまん丸を見下ろした。
「ところでまん丸くん。なーんか、君とは初対面って気がしないんだよ。ひょっとして、ワタシら似てないかい? 頭身とか輪郭とか」
「……うーん、そうかなあ」
 窓に写る自分とクズリの父をまじまじと見比べる。
 クズリの父には嘴はないし、羽毛もないし、毛色だって違う。
 共通点は目と鼻の穴が二つあることぐらいだと思ったが、まん丸は口にしなかった。
「似てる似てる」
 クズリの父は何処か面白そうに頷いた。後ろで組んでいた腕を解いて、腹をぽりぽりと掻く。
「しかしまあ、子供はウマゴンやぼのぼのくんたちだけじゃなかったんだねえ。こう言ってはなんだけど、ワタシの坊やが連れて来られていなくて本当に良かったよ」
「クズリさんはお父さんなんですね」
「そうだよ。わざわざ父って載っているんだから」
 クズリの父は苦笑のような物を浮かべて、窓から目を逸らした。解いていた腕をもう一度後ろで組み直していた。
「もし坊やがいたら、心中穏やかじゃなかったろうね。まだ、小さくてね。未だに中々二本足で立てないんだよ。他にも色々あってねえ。そんなんじゃダメだぞって口を酸っぱくして言い聞かせているんだけど、難しいようだ。
 まったく可笑しいね。今大変なことに巻き込まれているのはワタシなのに、坊やのことの方が心配なんだよ。まだワタシがいなくちゃダメなんだ」
 内容とは裏腹に、クズリの父は少し嬉しそうに続けている。
 まん丸は相槌を打ちながら、まだ海を見ていた。灰色の海原は綺麗とは言えないが、それでも地上よりは幾分馴染みが深い。それに、どんどん命が理不尽に失われていく大地より海はずっと安全だ。
 ただし、ザフィーラの話では、この海をずっと泳いで行ってもシシカト島にはつかないらしい。不思議に思ったし、理由も訊いたが、結局よく分からなかった。
「――だからねえ、坊やがいたらまん丸くんともこうしてお話していられなかっただろうねえ」

14 :
 少し声の調子が変わった気がして、まん丸はクズリの父を振り仰いだ。しかし、まん丸からは背負ったバイオリンしか見えなかった。
「どうしたんだい?」
 視線に気付いたのか、クズリの父はくるりと体の向きを変えた。その表情はさっきと変わらない飄然としたものであった。まん丸は首を横に振った。
「ううん。なんでもないです」
「そうかい。いやね、アライグマはどうしているかと考えるんだよ。あれはあれなりに子煩悩だから。……しかしまあ、親っていうのは厄介なものだよ。子供の前じゃいつでも恰好よく居たいんだ。もうガタがきているのがばれているのにね」
「うーん。クズリさんは元気に見えます」
「嬉しいことを言ってくれるなあ。でもね、頭薄くなってるんだよ。本当に」
 はははとクズリの父は渇いた笑い声を上げた。そのまま部屋を出て行ったクズリの父を、まん丸は慌ててよたよたとついて行った。
 部屋を出ると、クズリの父が立ち止まっているのが見えた。彼の視線の先を辿ると、ずっと奥まった所に扉がある。
「そういえばあそこはまだだったねえ」
 すたすたと近寄ったクズリの父は取っ手に飛びつくと、全身を使って漸く開けることができた。酷く重い戸が開くと、少しカビ臭い風が轟と飛び出してきた。
「……この巣は、更に地面の下へ続いている、ようだねえ」
 少し荒い息を吐きながらクズリの父が呟いた。扉の先には地下へ続く階段がすぅっと続いている。
 階段の先は薄暗く、正面に立っても先がよく見えない。底の方で小さな非常灯がぼんやりとした灯りを放っているのが分かった。暗がりは底の無い沼のようで、少し怖い気がした。
「行ってみようか?」
「………………うーん」
 だから、クズリの父の申し出にまん丸はすぐに返事が出来なかった。何があるのか興味はあるけれど、あまり行きたくはない。何か怖いものが隠れていそうだし、この風景は地下鉄を連想させる。
「嫌みたいだねえ」
 まん丸の躊躇を見て、クズリの父がぽんとまん丸の頭に手を置いた。
「それじゃあ、ここで待っていなさい。いや、イカルゴのところに戻っていた方がいいかな。ここはワタシひとりで見てくるからね」
 言うが早いか、クズリの父はさっさと階段を下りて行ってしまう。勝手に歩いたら危ないのにとまん丸は慌てて追いだした。

15 :
「一人で行ったらダメ――!」
 まん丸はよたたたと階段を下りていったのだが、途中で足がもつれて転んでしまった。そのままクズリの父を巻き込んで階下まで転がり落ちる。一瞬だけ垣間見えたクズリの父の顔が物凄いことになっていたのが、まん丸は少し怖かった。
 壁にぶつかって、漸く二匹は止まった。
「……あのねえ。暗いんだから気をつけなくちゃダメだぞ。特にまん丸くんは足が短いんだから」
「……ごめんなさい」
 少しきつい口調のクズリの父に、まん丸は小さくなった。クズリの父は嘆息すると、汚れを払いながら立ち上がった。体重が軽かったためか、幸いに二匹とも大した怪我もせずに済んだ。
 クズリの父が扉を押し開ける音がした。途端に光がまん丸を照らす。扉の先の空間は、開閉と同時に自動で灯りが点く仕様らしい。白々としたコンクリートの床にまん丸の影が黒く落ちる。
 クズリは扉を潜っていってしまったが、まん丸はすぐには追わなかった。怒られたせいもあるが、クズリの父が危ないことをしていたのにという、釈然としないものがあったせいかもしれない。
「まん丸くん、いつまでもいじけてないで来てごらん」
 とぼとぼとした歩調で入ったまん丸を、四方をコンクリートで固められた空間が出迎えた。広さは地上の一部屋分ほどのようだ。
 蛍光灯の下に、天井まである棚が両脇に並んでいる。しかし、物自体はあまり収納されていないようだ。木箱が疎らに納められているだけである。
 一番奥にある棚の前でクズリの父が首を捻っていた。その足元にはサッカーボールを二つに割って台に貼り付けたような、半球形の物体が置かれていた。
「まん丸くん、これなんだと思う?」
「割られたボールに見えます」
「……たしかにワタシのヤマアラシデビルがこの洞穴にあったことは不思議ではあるけども重要なのはそれじゃなくて、コレだよコレ」
 クズリの父は棚を指でつんつんと突いた。
「なんでこれだけ物が一杯置かれているんだろうね?」
 確かに、その棚だけ物がぎっちりと納められている。言われてしまうと気になり、まん丸はクズリの父の横で首を捻った。
「他に分ければいいのに。他の棚が寂しそう。ここに集めなきゃダメなのかなあ」
「そうだねえ。まるで物で後ろにある何かを隠しているみたいだ。……まん丸くん、ちょっと一緒にこの棚を押してみようか」
 言われるままに棚に両翼をかけ、クズリの父と一緒に横の方向へ力を掛ける。思ったよりも軽い手ごたえで棚は動いた。ざりざりと耳障りな音を立て、棚は横へずれて行く。どうやら棚に納められている箱は全て空のようだ。
 そして、それまで棚に隠れていた壁が露わになった。果たしてそこには隠し扉があったのである。

16 :
「出て来たー!」
 クズリの父の言った通りだと、まん丸は感嘆の声を上げる。
 鼻高々と言った面持ちで、クズリの父が早速それを押し開けた。先程と同じような、しかしより湿っぽい風が部屋へと入ってくる。
 部屋の明かりは床をほんの少し浮かび上がらせるだけに止まり、大部分は無明の黒に覆われていた。大きな魚の口を覗きこんでいるような感覚に襲われる。
「大きな抜け穴だねえ」
「抜け穴?」
「風が入ってきているからね。何処かに繋がっているはずだよ。プレーリー・ドッグなんかの巣と同じさ」
 クズリの父の声は反響し、やがて闇の中に消えて行く。
「ここはこんなもんでいいだろう。詳しいことはクロたちが帰って来てからだ。それじゃイカルゴの所に戻ろうか」
 その言葉と共に、扉はがちゃりと音を立てて閉じられた。


【G-4/豪邸/一日目/正午】
【イカルゴ@HUNTER×HUNTER】
【状態】健康、ヨッシーに寄生中、蚤育成中、屋上にて待機中
【装備】蚤弾(フリーダム)、キルアのヨーヨー@HUNTER×HUNTER
【道具】デイバッグ(支給品一式(食糧なし)×2、幸せの四葉@聖剣伝説Legend of Mana、シュバルツの覆面@機動武勇伝Gガンダム、ハンティングボウ@銀牙
【思考】
基本:殺し合いから脱出、可能ならキュウビ打倒
1:まん丸、クズリの父と豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ。
2:侵入者はまず足止めの後、対話をする。しかし、状況によっては問答無用で撃つ。
【備考】
※原作25巻、宮殿突入直前からの参戦です。
※イカルゴの考察
・イッスンはキュウビの想定外?
・キュウビには異世界の協力者がいる?
・キュウビ側の統制は取れていないかもしれない

【まん丸@忍ペンまん丸】
【状態】:頭に打撲(小)、決意 、全身にすり傷(小)
【装備】:忍刀@忍ペンまん丸 、折り紙×10枚@忍ペンまん丸、サトルさん@忍ペンまん丸
【道具】:支給品一式、チョコビ(残り4箱)@クレヨンしんちゃん
【思考】
基本:念雅山に帰りたい、殺し合いには乗らない
1:イカルゴ、クズリの父と豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ。
【備考】
※原作終了後からの参戦です。

17 :
【クズリの父@ぼのぼの】
【状態】:全身に擦り傷(小)
【装備】:ハーメルのバイオリン@ハーメルンのバイオリン弾き
【所持品】:支給品一式、グリードアイランドカード(初心、神眼)@HUNTER×HUNTER、グリードアイランドカード(複製)@HUNTER×HUNTER×3
カベホチ@MOTHER3、ダムダム草@ぼのぼの、打岩@グラップラー刃牙
【思考】
基本:殺し合いから脱出
1:まん丸、イカルゴと共に豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ。
2:ぼのぼの、アライグマ、アライグマの父を探す。
【備考】
※ウマゴン、オーボウと情報交換をしました。

※アームターミナルにイッスンのデータは入っていなかったようです。
※豪邸の地階から三階まではホワイトハウスを再現しています。そして地下二階は倉庫となっており、ヤマアラシデビル@ぼのぼのの他にも道具があるかもしれません。
※地下倉庫には抜け道が隠されています。それが何処に続いているかは書かれる方にお任せします。

【ヤマアラシデビル@ぼのぼの】
クズリの父が発明した広範囲無差別攻撃兵器。半球の装置から打ち上げられた大量の棘が上空から地面に降り注ぐ。

18 :
以上で代理投下終了です。

19 :
指摘点の修正をしましたので、
本投下を開始します。

20 :
『…プックルが言っていたことが正しい可能性が出てきたってことだな。ということはやはりキュウビの目的は人間に関するものなのか? だとすると…』
「ラ、ラクシュン殿、何一人で呟いているでありますか? 男はもう死にそうな状態なのでありますよ!」
『おっと、そうだったな。保健所にはおいらから連絡しておく。あと連絡したらおいらもそっちに向かうからさ。ケロロはそれまで怪我人のほうを見ておいてくれないか?』
新たな情報を得て考察を固めようとした楽俊に、ケロロは男の処置についてまくしたてるように尋ねた。
楽俊はほんの少し慌てたような声で返事をした。
「ラクシュン殿…、分かったであります。我輩に任せるでありますよ!」
ケロロはそう言って電話を切ると一目散に男のもとに走って行った。
どこぞのハリネズミのごとく足が8の字を横にした感じで男のもとに舞い戻った。
そして給食室前ケロロの胸中に一つの不安が上がり、自然と足が遅くなっていった。
(気軽に任せるでありますとは言ったものの……我輩にできるでありましょうか…)
応急処置とはいえケロロは治療に不慣れだった。
だが、今この場にはケロロ一人しかいない。
ぼのぼのはてゐを呼びに行かせたのでここにはいない。
そのことを思い出した途端、彼の胸中に後悔の念が湧きあがってきた。
てゐはヒグマの大将を殺した可能性がある。
そんなやつのところに子供を向かわせてしまった。
これは軍人としては失格の答えであろう。
例えるなら、赤ん坊を虎の巣に向かわせるようなものである。
しかし、これは過去に起きたことであるため彼には何もできない。
それ以前に現在ぼのぼのが今どこにいるのか分からない。
もし彼がレーダーのようなものを持っていたら、追いついて連れ戻すこともできただろう。
だが、運の悪いことにそのようなものを持ち合わせてはいない。
それよりも今は男の応急処置をこなさなければならない。
そのどこからともなく湧き出る義務感は彼の足は保健室に導いた。
「あれ?や、やけに道具が少ないでありますな」
保健室で道具を探し始めたケロロは違和感に気がついた。
道具の数が不自然に減っていたからだ。
「誰かがここによって持っていったんでありましょうか?」
そんな独り言をつぶやきながら応急処置に使えそうな道具を選ぶ。

21 :

「あ、あれ?なんでこう都合よく救急セットが置いているでありますか?」
道具を揃え駆け足で給食室に向かったケロロは、足を踏み入れるなり脳内に『?』を浮かべる。
何故かご都合主義な展開の如く治療に使えそうな道具が置いてあったからだ。
「お、落ち着くであります。き、きっと親切な誰かが置いて行ってくれたであります」
そう考えながら男の前に向かっていく。
ちなみにここに治療道具を揃えたのはまごうことなくケロロ自身であるのだが、
彼が『電話をかける』ことで頭がいっぱいになってしまった結果、
この記憶は彼の脳内から忘却の彼方へと飛び去ってしまったのである。
何はともあれ男の前に来たケロロは、男の様子に違和感を覚えた。
どこか影がさし1ミリも動く気配がしない。
まるで人生に燃え尽きたかのようにそこに留まっているだけに見える。
恐る恐る男に近寄りそっと顔を覗き込んだ。
瞳に安らかながらも恐怖でひきつった表情が映りこむ。
まるで心地よい絶望に我が身を委ねているかの如く…。
「あ、あの、大丈夫でありますか?」
その表情に一抹の不安を感じたのかケロロは恐る恐る男に声をかけた。
しかし男は黙したまま、口を開く素振りすら見せない。
「あ、あの〜、我輩の声が聞こえていないでありますk…え?」
その素振りに疑問を感じ、男に触れたケロロはあることに気づいてしまった。
人間の体温にしてはあまりに冷たすぎる。
まるで氷を触ったかのようだった。
生物学的にいえば人間は恒温生物に分類される。
すなわち常に温かさを保っているはずである。
その人間が生きている限り寝ていようが起きていようがいつも保たれているはずである。
その体温が失われているというのはその生命が生きているということを、頭から否定していることに他ならない。
もはや死んでいるのは確定的に明らかと言わざる負えない。
この事態にケロロは顔面蒼白になった。

22 :
(こ、このままだとこれからこっちに来るラクシュン殿たちに知れたら、
我輩が疑われることは間違いないであります。
し、しかしここで迂闊に動くと何と思われるか…。
我輩は…我輩は…)
「我輩は…我輩はなんて愚かな間違いを犯してしまったでありましょうかぁ!」
ケロロの思いはいつの間にか叫びへと変わり、冷蔵庫内部に響きわたる。
「こ、こういうときは慌てず騒がず忍び足、我輩にできることをするであります。」
そういうなりケロロは男の死体を仰向けに寝かせ、あたかも応急処置をしたかの如く治療道具を散らかし始めた。
「これで我輩の責任が少しは軽くなるであります。さて、後は……」
一通りの『偽装』をすませたケロロは次にやるべきことを模索するべく冷蔵庫内をうろうろし始めた。
【C-4/学校 給食室 冷蔵庫内/1日目/午前】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】健康、錯乱(小)
【装備】:ジムのガンプラ@サイボーグクロちゃん
【道具】ガンプラ作成用の道具
【思考】
1:次は何をするべきか…
2:とりあえずギロロと合流したい
3:安全な場所でガンプラを作る
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。

23 :
◇ ◇ ◇
「ふあぁ〜あ、なあ、オカリナ、ちょっといいか?」
「えっと、何でしょうか?」
「この本読んでみないか」
「え?」
やや遅めの朝食を終え、暇を持て余しているとプックルが大欠伸をしながら提案してきた。
プックルの前には分厚い本が置いてある。
「えっと、この本がどうかしたのですか?」
「ああ、放送がかかる前にピカチュウが見てほしいものがあるって言ってただろう」
「えっと、この本がそうなのですか?」
オカリナは戸惑ったような声でプックルに聞き返した。
「ああ、そうだ」
「まさか……たった今思い出したのですか?」
「いや、そういうわけではない。余りに退屈なのでな」
オカリナはジトッとした目でプックルを呆れたように見る。
それに気付いたプックルはまるで子供が親に催促するかのように前足で適当に本を開く。
オカリナはプックルの前に飛んでいき本を読み始める。
同時にプックルも本の挿絵に視線を向ける。

「む、これはどういうことだ?」
「動物だけが住んでいる森?」
プックルが適当に開いたページを読んだオカリナは内容に疑問を感じた。
そこには動物だけがとある森に住む様子が描かれていたからだ。
これだとプックルの考察と矛盾してしまう。
念のため次のページを開いても人間の姿はどこにも描かれていない。
(これって……もしかして……)
断言することはできないが、この内容から考えられる可能性は一つしかない。

24 :
「プックルさん、もしかしてここには人間に関係ない動物もいるのではないのでしょうか?」
「な、そんなはずはない…」
「だって現にこの世界には人間が描かれていないじゃないですか!」
「いや、もうちょっと先を読めば人間が出てくるはずだ」
人間と一切関わりがない動物が参加している可能性もある。
そのことは一緒に本を読んだプックル自身も勘付いているはずだ。
それでも本の内容にどこか納得できていないのかプックルは人間を書き忘れたのだと言い張ろうとしている。
しかし読み進めても人間が出て来ないまま、次の物語に移ってしまう。
「結局出てきませんでしたね」
「…もしかしたらこれ自体が罠かもしれんな」
「罠…ですか?」
「オレ達を混乱させるために嘘を書いた可能性も考えられる」
「あの、そのようなことをする必要があるのですか?」
プックルの突拍子のない考えに首をかしげる。
確かに嘘である可能性もある。
しかし殺し合いをさせるのにわざわざこんな嘘をつく必要があるのだろうか。
そう考えたオカリナはプックルに聞き返す。
「あ…そういえば、ピカチュウは…えっと、確か……『キュウビがこの本を書く理由が思いつかない』って言っていたような気がするな」
―ちなみに『本を書く理由がない』と言ったのはプックルなのだが、彼自身はそのことをすでに忘れていた。
「えっと、キュウビがこの本を…」
「ああ、キュウビぐらいしかこの本を書くやつがいないしな」
「……確かにそれぐらいしか考えられませんね」
「なあ、もう少し読み進めてみないか?」
「そうですね」
プックルは今思い出したという表情で本に関する考察を述べる。
しかしここまで来ても確実と言えるのは『本を書いたのはキュウビ』という一点だけである。
これだけでは分からないことが多すぎるので続きを読もうとした時、2人の耳に再びけたたましい怪音波が襲いかかってきた。
一瞬ぎょっとして音のほうに思わず振り向くと、電話が今すぐ取ってくれと言わんばかりに2人を呼んでいた。

25 :
オカリナは電話のそばに飛んでいき、人間に変身する。
「おい、変身しても大丈夫なのか?」
「ええ…、少し休憩しましたし…、こうでもしないと…えっと、『じゅわき』…を持つことが…出来ませんからね」
しばらく休んでいたもののプックルにはオカリナ自身無理をしているように見えたため、彼は慌てて尋ねた。
しかし、オカリナはそのことを気にしていないかのように、受話器を取る。
それでもプックルは不安そうな顔でオカリナの方を見続けている。
「えっと、どなたでしょうか」
『その声は…オカリナか?』
電話の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「えっと、その声は楽俊さんでしょうか?」
『ああ、そうだ。』
「あ、あの楽俊さん、そんなに慌ててどうしたのですか?」
『さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ』
「え?し、死にそうな男って…どういうことですか?」
焦っているような楽俊の声に首をかしげながらも聞き返す。
すると楽俊は重体の男が発見されたことを伝えてきた。
そのためオカリナは吃驚して即座に尋ね返す。
『学校という建物でケロロとかいう奴が見つけたらしいんだ!』
「学校?ケロロ?」
『まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…』
楽俊の声とともにオカリナも地図を取り出して確認しようとする。
デイバックから地図を取り出そうとした時、ギイという音が聞こえてきた。
振り向くとプックルが体を押し付けるようにして扉を開けている。

26 :
「え?…プックルさん、何してるのですか?」
「何って…怪我人がいると聞いただろう。急がなければ手遅れになる」
「ちょっと待ってください。怪我人がどこにいるのかわかるのですか?」
「あ……」
オカリナが呼びかけるとプックルは怪我人のもとに急ぐように促してきた。
それに対しオカリナは怪我人の場所を訪ねる。
当然聞いていないのだから分からない。
プックルは頬を赤らめながらオカリナのそばに戻ってくる。
恥ずかしい思いをしたためか尻尾も垂れ下がっていた。
そんなプックルの様子に苦笑いしながら楽俊が言っていた場所を地図で確認する。
どうやら目的地はC-4にあるようだ。
このことを確認するために置きっぱなしにしている受話器を持つ。
『おーい、聞こえるか?』
向こうから楽俊がきょとんとした口調で尋ねていた。
「お待たせしました。」
『オカリナ、何があったのか?』
「ええ、実はプックルさんが足早に出かけようとしていたもので…場所も確認しましたので今から向かいます。」
『あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ』
「え、何でしょうか?」
現場に向かおうとすると楽俊は割り込むように呼びとめてきた。
オカリナは受話器を戻そうとした手を一瞬とめて再び耳を当てる。
『ケットシーという奴から聞いたんだが、お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ』
「え、えっと、そのケットシーという方が父と会ったのですか?」
突然父の話題が出てきたため、オカリナは少しうろたえてしまった。
それと共に涙がわずかながら眼の下にたまっていく。
無意識にその涙を拭いながら、確認するように父のことを聞き返す。
『ああ、聞いたのは電話でなんだけど、ケットシーはついさっきおいらと合流して…ぐあっ』
「え、楽俊……さん?な、何かあったのですか?楽俊さーん」

27 :
受話器の向こうから楽俊の呻き声と共に爆発音が響いた。
これらの音を聞いたオカリナは一瞬目を見開き、受話器の向こうにいる楽俊に呼びかけ続けるが返事は返ってこない。
その代わりうっすらとケットシーだと思われる声が聞こえてくる。
オカリナはプックルの口に軽く手を当て静かに聞き耳を立てる。
ケットシーは独り言を発しながら楽俊の周辺を漁っているようだった。
物を放り投げる音がたびたび聞こえてくる。
『しー ゆー あげいんだぁ! アンタの事は 忘れないぜェ!』
やがてこの言葉を最後にケットシーの声が聞こえなくなる。
オカリナは受話器を置き、悲しい表情を浮かべながらしばらく黙りこむ。
「オカリナ、しっかりしろ」
「あ……、すみません。でも、楽俊さんは…もう…」
この様子を見かねたプックルはオカリナに呼び掛ける。
オカリナは我に返ったが楽俊の安否について不安を感じていた。
「それはまだ分からないのではないか?」
「え?」
「命からがらとはいえ逃げ延びた可能性も考えられる。」
「プックルさん……すみません、その可能性もありますね。」
そんなオカリナにプックルはまだ可能性があると述べる。
オカリナは少し考えた後、プックルの述べた可能性に同意した。
「でもどうしましょうか?」
「む、どうかしたのか?」
「楽俊さんが言っていたじゃないですか。大怪我をしている男が見つかったって」
「ああ、そうだったな」
「ここからだとホテルの方が近いみたいですが…大怪我している男がとても気になりますし」
オカリナは魔力の消費を抑えるためカラス形態に戻った後、地図で位置関係を確認する。
その結果ホテルの方が近かったのだが、重症の男が気かがりになっていた。
その時オカリナはある事実を思い出す。

28 :
「そういえば、ピカチュウさんがホテルに向かっていませんでしたか?」
「む、そういえばそうだったな。では、俺たちは学校の方に向かった方がいいということだな」
「ええ、向こうについてからピカチュウと連絡を取れればいいのですが…」
「それは何とかなるだろう。」
「相変わらず大雑把ですね。」
ピカチュウは保護した子犬を送った後、ホテルに向かう手筈になっていた。
そのため後でピカチュウに連絡を取ることで楽俊の安否を確認することにした。
オカリナの大雑把というツッコミに、プックルは頬を膨らませていたが…。

「これだけあれば大丈夫ですね」
「準備はできたみたいだな。では目的地に向かうぞ」
「あ、ちょっと待ってください」
「今度はなんだ?」
「ニャースさん達が来たときのためにメモを残しておこうと思いまして」
「そうだな、できるだけ早く頼む」
治療に使えそうな薬を一通りバッグに入れ、出発しようとした矢先オカリナはプックルを呼びとめる。
ここに来るであろうニャース達に重症の男が見つかったことなどを伝えるためのメモを残すためだ。
嘴で器用にメモを書くオカリナをプックルはまじまじと見ている。
「お待たせしました」
「ああ、なるべく急ぐぞ」
「ええ」
掛け声とともに1羽と1頭は勢いよく保健所を飛び出した。

29 :
【E-2/保健所/1日目/午前】
【チーム:主をもつ魔物達】
【共通思考】
1:首輪を手に入れて、解除法を探す。
2:仲間になれそうな動物を見つけたら仲間に入れる。敵なら倒す。
3:緑ダルマ(ケロロ)に会ったら『ガンプラ』を取り戻す。
4:お城に向かう
5:脱出の手がかりを探す。
【備考】
※互いの知り合い、世界や能力等について情報交換しました。イギー、ニャースとも情報交換しました。
※それぞれが違う世界から呼ばれたと気付きました。
※次元や時空を操る存在(ポケモンや妖精)がキュウビによって捕らえられているかもしれないと考えています。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※その間違えた前提を元にキュウビの呪法が人間に対してつかわれるものだと推測しています。
※『ガンプラ』が強力な武器だと誤解しています。
※ケロロ(名前は知らない)が怪力の持ち主だと誤解しています。敵ではない可能性も知りました。
※『世界の民話』に書かれている物語が異世界で実際に起きた出来事なのではと疑っています。
※楽俊の仮説を知りました。
※帽子のネコが危険な動物だと知りました。
※まん丸、ツネ次郎への伝言を預かりました。
※保健所にメモが残されています。主な内容は以下の通りです。
  ・学校に重症の男がいること
  ・そのため学校に向かったこと
  ・楽俊が何者かに襲われたこと
【キラーパンサー@ドラゴンクエスト5】
【状態】ダメージ(小。治療済)
【装備】炎の爪@DQ5、世界の民話
【道具】:支給品一式×2(キラーパンサー、ケロロ)、不明支給品0?1(武器、治療道具ではない)、きのみセット@ポケットモンスター(クラボのみ、カゴのみ、モモンのみ、チーゴのみ、ナナシのみ、キーのみ)
【思考】
基本:ゲームには載らないが、襲ってくる奴には容赦しない。キュウビは絶対に倒す
1:C-4の学校に向かい重症の男を治療する。
2:C-2付近へ死体の捜索。
3:ピカチュウの知り合いとオーボウを探す
4:お城を調べたい。
※参戦時期はED後です。
※『世界の民話』の内五編の内容を把握しました。
※人間と関係ない参加者もいるのではという仮説を聞きましたが信じようとしていません。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、治療用の薬各種、不明支給品0?2(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す
1:C-4の学校に向かい重症の男を治療する。
2:C-2付近へ首輪の捜索。
3:オーボウと、ピカチュウの知り合いを探す。
4:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。

30 :
◇ ◇ ◇
「うっひゃあー、こんな高い建物始めてミルゼー」
ケットシーは見上げるように建物を見上げていた。
建物の看板には筆文字で『キュービーぐらうどほてる』と書かれている。
「ヒーホー、楽俊のもとにハリーアップ、さもなきゃチャンスが逃げちゃう」
誰が聞いてるのもわからぬ独り言を叫びながら建物――ホテルに入っていく。
豪華なシャンデリアが輝くロビーを颯爽と駆け抜け、
階段を無邪気な子供のように駆け上がっていく。
ここまで生体マグネタイトを得ることに失敗し続けているため
心の中では焦りを募らせていた。
彼の言動からは微塵も想像がつかないわけだが…。
「確かここだったっけなー?」
ケットシーはある部屋の前で立ち止まった。
「ラクシュンは三〇九って言ってたっけなー?」
ドアにつけられているプレートを見ると三〇九と書かれている。
まさにケットシーが呟いた部屋番号と同じだった。
「ビンゴだぜー、よーし」
いたずらを思い浮かべた子供のような笑顔を浮かべながらドアノブを掴み…
「ラクシューン、オイラがゴールインだぜー」
「うわっ、誰だ」
ドアを勢いよく開けてドカドカと入り込んだ。
今の音に吃驚したのか大きいネズミが目を見開きながらケットシーの方に振り向いていた。
「ラクシューン、このケットシーのこと忘れるなんて悪魔より酷すぎるゼー」
「なんだ、ケットシーか。全く脅かすなよな。誰かが襲ってきたと思ったぞ」
「ヒーホー、ごめんちょラクシュン」
「まあいいや、ここまでくんのに疲れてるだろうからしばらく体を休めておけ」
ケットシーはどうせもうすぐ自分の糧になるのになと思いながら、適当に相槌を打った。
そんなことを知らない楽俊は休憩を勧めた為、言葉に甘えてすかさずベッドの上に飛び乗り身を委ねた。
少しの間ふかふかした後、楽俊が見えるように体を捻らせ座る姿勢を取る。

31 :

「その声は…オカリナか?――ああ、そうだ。」
誰かとの会話が耳に入り、楽俊の方を振り向くとどこかに電話をかけていた。
心なしかどこか焦っているような感じがする。
(さっそく大チャーンスが訪れたゼー)
今までの不幸はこの時のためだったといわんばかりに、
楽俊に気づかれないように隠しておいた銃を取り出し照準を彼に合わせる。
そしてトリガーを引く指に力を込め…
「さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ」
楽俊が相手に言った伝言を聞いた途端、あっという間に指の力が抜けた。
死にそうな男、それ即ち生体マグネタイトの摂取に最も適した獲物である。
この偶然得た情報に、思わず頬が緩む。
「学校という建物でケロロが見つけたらしいんだ!――まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…」
そう言いながらふと楽俊はケットシーの方を振り向いた。
突然のことにびっくりして銃を後ろに隠す。
彼のきょとんとした様子からするとケットシーが銃を取り出したのには気づいていないようだ。
楽俊はバッグから地図を取り出しそれを見る。

32 :
「ねぇねぇ、死にそうな男ってどういうコトー?」
「おっと、お前さんには言ってなかったな。えっとだな、お前さんが来る前にそういう話を聞いたんだ。」
ケットシーは地図を見ている楽俊に近づき横から尋ねる。
彼は少し言葉に詰まらせながら質問に答えた。
「ふーん(それがリアルの話ならそいつからもマグネタイト頂き決定ー)」
この返事に手を後ろに回しながらあまり関心がないように相槌を打ちながらも、
他人から見たら腹黒いとしか言いようがないことを頭の中で計画を立てる。
楽俊は地図を見ながら、置きっぱなしにしている受話器を再び掴んでいた。
「おーい、聞こえるか?」
楽俊はきょとんとした口調で尋ねていた。
電話の相手がどこかに行ってしまったらしい。
しかし、相槌を打ち始めたところをみると電話の相手は戻ってきたようだ。
「あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ。――お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ」
(そういやオイラ、ラクシュンにそんなこと言ってたっけなー)
一瞬電話のことを思い出す。
あの時、そして今も殺される運命だろうとは思ってないはずだ。
楽俊が電話に意識を取られている隙に銃を再び楽俊に向け――
「あ、いや、仲間を集めてたら偶然聞いただけなんだけ…ぐあっ」
指に力を込め――弾丸が放たれた。
放たれた弾丸は後ろを気にとめていなかった楽俊をいとも軽々と貫いた。
「ケットシー…これは…どういうことだ……?」
楽俊はケットシーの方に体を向け息だえだえになりながらも問い詰めようとした。
ケットシーは構わずもう一発楽俊の腹に撃ち込む。
この一撃で楽俊は気を失ってしまったようだ。
ケットシーは楽俊に近づくと傷口に手をかざしそこから可能な限りマグネタイトの採取を始める。
受話器から楽俊を呼ぶ声が聞こえるが、ケットシーの耳には入ってこない。

33 :

「あれ?もうこれっぽっちかよー。リトルすぎー、けどまーいーや、ギリギリセーフでマグネタイトをゲットしたことだし、ラクシュンはナニ持ってたのかなー?」
楽俊からはケットシーにとって満足な量のマグネタイトを採取することはできなかった。
しかしここで失敗していたら間違いなく自分は死んでいた。
そう考えると運がいいことには間違いない。
そのことを一人で納得するやいなや、そばに置いてあった楽俊のデイバッグを開け中身の物色を始める。
「ヒーホー、お手軽イージーにオイラの顔が見れるなんて、ポッ」
最初に取り出した手鏡で自分の顔を見て顔を赤らめる。
しばらく覗いたのち、その手鏡を自分のデイバッグに入れ再び中身を漁り始めた。
「オイラと持ってるものが同じかよー、こんなダブりすぎな人生ツッマンネー」
他に入っていたのはカマンベールチーズを除き、ほとんどケットシーが持っているものと同じものしかない。
愚痴を零しながら時計やら筆記用具やらをあちこちに投げていく。
さり気にチーズだけは抜け目なく自分のバッグに入れていたのだが…。
そして、最後に取り出したものは何の変哲もない小瓶だった。
振ってみるとカランカランと音がする。
ケットシーはさっそく蓋をあけ中身を取り出した。
「なんだよー、こんなシケたもんなんてノーサンキューだぜー」
中身を手に取ったケットシーは心底がっかりした。
入っていたものは小さい金属片ただ一つ。
当然ながら武器として使うには無理がある代物だ。
それにこんなものを欲しがるやつなんていないに決まっている。
そう思ったケットシーは無造作に金属片を放り投げた。
その金属片は空中に縦楕円の軌道を描き楽俊の傷口へと落ちていく。
しかしケットシーはすでに楽俊に興味を無くしていたため、気づいていなかった…。
「しー ゆー あげいんだぁ! アンタの事は 忘れないぜェ!」
部屋の外から覗くような形でそう言い残したケットシーは、
学校にいるはずの次なるターゲットに狙いを定め部屋を後にした。
【D-4/ホテル前/1日目/午前】
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(装填弾丸なし)
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、コロナショット@真女神転生if...(14発)、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:C-4の学校に行き重症の男から生体マグネタイトを頂く。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。

34 :
あ、順番が違う
すまん

35 :
「その声は…オカリナか?――ああ、そうだ。」
誰かとの会話が耳に入り、楽俊の方を振り向くとどこかに電話をかけていた。
心なしかどこか焦っているような感じがする。
(さっそく大チャーンスが訪れたゼー)
今までの不幸はこの時のためだったといわんばかりに、
楽俊に気づかれないように隠しておいた銃を取り出し照準を彼に合わせる。
そしてトリガーを引く指に力を込め…
「さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ」
楽俊が相手に言った伝言を聞いた途端、あっという間に指の力が抜けた。
死にそうな男、それ即ち生体マグネタイトの摂取に最も適した獲物である。
この偶然得た情報に、思わず頬が緩む。
「学校という建物でケロロが見つけたらしいんだ!――まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…」
そう言いながらふと楽俊はケットシーの方を振り向いた。
突然のことにびっくりして銃を後ろに隠す。
彼のきょとんとした様子からするとケットシーが銃を取り出したのには気づいていないようだ。
楽俊はバッグから地図を取り出しそれを見る。
「ねぇねぇ、死にそうな男ってどういうコトー?」
「おっと、お前さんには言ってなかったな。えっとだな、お前さんが来る前にそういう話を聞いたんだ。」
ケットシーは地図を見ている楽俊に近づき横から尋ねる。
彼は少し言葉に詰まらせながら質問に答えた。
「ふーん(それがリアルの話ならそいつからもマグネタイト頂き決定ー)」
この返事に手を後ろに回しながらあまり関心がないように相槌を打ちながらも、
他人から見たら腹黒いとしか言いようがないことを頭の中で計画を立てる。
楽俊は地図を見ながら、置きっぱなしにしている受話器を再び掴んでいた。

36 :
「おーい、聞こえるか?」
楽俊はきょとんとした口調で尋ねていた。
電話の相手がどこかに行ってしまったらしい。
しかし、相槌を打ち始めたところをみると電話の相手は戻ってきたようだ。
「あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ。――ケットシーという奴から聞いたんだが、お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ」
(そういやオイラ、ラクシュンにそんなこと言ってたっけなー)
一瞬電話のことを思い出す。
あの時、そして今も殺される運命だろうとは思ってないはずだ。
楽俊が電話に意識を取られている隙に銃を再び楽俊に向け――
「ああ、聞いたのは電話でなんだけど、ケットシーはついさっきおいらと合流して…ぐあっ」
指に力を込め――弾丸が放たれた。
放たれた弾丸は後ろを気にとめていなかった楽俊をいとも軽々と貫いた。
「ケットシー…これは…どういうことだ……?」
楽俊はケットシーの方に体を向け息だえだえになりながらも問い詰めようとした。
ケットシーは構わずもう一発楽俊の腹に撃ち込む。
この一撃で楽俊は気を失ってしまったようだ。
ケットシーは楽俊に近づくと傷口に手をかざしそこから可能な限りマグネタイトの採取を始める。
受話器から楽俊を呼ぶ声が聞こえるが、ケットシーの耳には入ってこない。

37 :

「あれ?もうこれっぽっちかよー。リトルすぎー、けどまーいーや、ギリギリセーフでマグネタイトをゲットしたことだし、ラクシュンはナニ持ってたのかなー?」
楽俊からはケットシーにとって満足な量のマグネタイトを採取することはできなかった。
しかしここで失敗していたら間違いなく自分は死んでいた。
そう考えると運がいいことには間違いない。
そのことを一人で納得するやいなや、そばに置いてあった楽俊のデイバッグを開け中身の物色を始める。
「ヒーホー、お手軽イージーにオイラの顔が見れるなんて、ポッ」
最初に取り出した手鏡で自分の顔を見て顔を赤らめる。
しばらく覗いたのち、その手鏡を自分のデイバッグに入れ再び中身を漁り始めた。
「オイラと持ってるものが同じかよー、こんなダブりすぎな人生ツッマンネー」
他に入っていたのはカマンベールチーズを除き、ほとんどケットシーが持っているものと同じものしかない。
愚痴を零しながら時計やら筆記用具やらをあちこちに投げていく。
さり気にチーズだけは抜け目なく自分のバッグに入れていたのだが…。
そして、最後に取り出したものは何の変哲もない小瓶だった。
振ってみるとカランカランと音がする。
ケットシーはさっそく蓋をあけ中身を取り出した。
「なんだよー、こんなシケたもんなんてノーサンキューだぜー」
中身を手に取ったケットシーは心底がっかりした。
入っていたものは小さい金属片ただ一つ。
当然ながら武器として使うには無理がある代物だ。
それにこんなものを欲しがるやつなんていないに決まっている。
そう思ったケットシーは無造作に金属片を放り投げた。
その金属片は空中に縦楕円の軌道を描き楽俊の傷口へと落ちていく。
しかしケットシーはすでに楽俊に興味を無くしていたため、気づいていなかった…。
「しー ゆー あげいんだぁ! アンタの事は 忘れないぜェ!」
部屋の外から覗くような形でそう言い残したケットシーは、
学校にいるはずの次なるターゲットに狙いを定め部屋を後にした。
【D-4/ホテル前/1日目/午前】
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(装填弾丸なし)
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、コロナショット@真女神転生if...(14発)、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、
      巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
      ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:C-4の学校に行き重症の男からも生体マグネタイトを頂く。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。

38 :
◇ ◇ ◇
「…プックルが言っていたことが正しい可能性が出てきたってことだな。ということはやはりキュウビの目的は人間に関するものなのか? だとすると…」
『ラ、ラクシュン殿、何一人で呟いているでありますか? 男はもう死にそうな状態なのでありますよ!』
「おっと、そうだったな。保健所にはおいらから連絡しておく。あと連絡したらおいらもそっちに向かうからさ。ケロロはそれまで怪我人のほうを見ておいてくれないか?」
新たな情報を得て考察を固めようとするが、ケロロは男の処置についてまくしたてるように尋ねてくる。
そのため考察を一時中断して慌てながら怪我人を診るように伝える。
『ラクシュン殿…、分かったであります。我輩に任せるでありますよ!』
ガチャンという音が向こうから聞こえてくる。
楽俊は一旦受話器を下ろしたあと保健所の番号を入力する。
「ラクシューン、オイラがゴールインだぜー」
「うわっ、誰だ」
突然ドアが勢いよく開く音と共に子供っぽい大声が響き渡った。
吃驚した楽俊は入力していた指を止めドアの方に振り向く。
「ラクシューン、このケットシーのこと忘れるなんて悪魔より酷すぎるゼー」
「なんだ、ケットシーか。全く脅かすなよな。誰かが襲ってきたと思ったぞ」
「ヒーホー、ごめんちょラクシュン」
「まあいいや、ここまでくんのに疲れてるだろうからしばらく体を休めておけ」
部屋に入ってきたのはケットシーだった。
彼曰くここに呼び出されてから不幸の連続だったらしいが、根っからの陽気さはそれを微塵にも感じさせない。
現に彼の謝り方はとてつもなく軽い。
彼らの置かれている立場を考えると『謝る気がないだろ!』と言われても文句は言えない。
しかし温厚な性格の楽俊はそのようなことを気にせずにケットシーに休憩を勧める。
ケットシーがベッドにダイブするのを横目で見ながら、番号の入力をやり直す。

39 :

『えっと、どなたでしょうか?』
しばらく呼び出し音がした後、受話器からオカリナの声が聞こえてくる。
どうやらまだ保健所にいたようだ。
「その声は…オカリナか?」
『えっと、その声は楽俊さんでしょうか?』
「ああ、そうだ。」
オカリナはまだ電話に慣れていない様子だ。
かく言う楽俊もやっと慣れたといったところだったりする。
『あ、あの楽俊さん、そんなに慌ててどうしたのですか?』
「さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ」
『え?し、死にそうな男って…どういうことですか?』
楽俊自身の声が慌てている様子だったため、オカリナの方から聞き返された。
楽俊は重体の男が発見されたことを伝えると、オカリナはうろたえた様子で尋ね返してきた。
「学校という建物でケロロとかいう奴が見つけたらしいんだ!」
『学校?ケロロ?』
「まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…」
ふとケットシーの方を見ると、彼も興味しんしんと言った様子で楽俊を見ていた。
この様子に首をかしげながらも学校の位置を確認するため地図を取り出す。
「ねぇねぇ、死にそうな男ってどういうコトー?」
「おっと、お前さんには言ってなかったな。えっとだな、お前さんが来る前にそういう話を聞いたんだ。」
学校の場所を確認しているとケットシーが突然割り込んでくる。
楽俊は少し言葉に詰まらせながらも質問に答えた。
「ふーん」
ケットシーはそんなものに関心がないといった様子で手を後ろに回しながら相槌を打っている。
学校の場所を確認した楽俊は再び受話器を耳に当てる。
「オカリナ聞こえるか?場所はな。…ん?」
なにやら騒がしい。
受話器の向こうから『何してるのですか?』や『怪我人がどこにいるのかわかるのですか?』というオカリナの声が聞こえてくる。
「おーい、聞こえるか?」
『すみません、お待たせしました。』
「おーい、オカリナ、何かあったのか?」
何度か呼びかけていると再びオカリナが出てくる。
楽俊はなんとなく想像はつくものの何かあったのか尋ねた。

40 :
『ええ、実はプックルさんが足早に出かけようとしていたもので…場所も確認しましたので今から向かいます』
「あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ」
『え、何でしょうか?』
後ろにいるケットシーから得た情報だが、オカリナに伝えるべきことがある。
そのため現場に向かおうとするオカリナを割り込むように呼びとめた。
「ケットシーという奴から聞いたんだが、お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ」
『え、えっと、そのケットシーという方が父と会ったのですか?』
楽俊はケットシーから聞いていたことをオカリナに伝える。
すると、オカリナは確認をとるような感じで聞き返してきた。
「ああ、聞いたのは電話でなんだけど、ケットシーはついさっきおいらと合流して…ぐあっ」
その情報を提供したケットシーと合流したことを伝えようとすると、突然背後から衝撃を受ける。
その衝撃と同時に体中に激痛が走る。
倒れながらもなんとか後ろを見ると、ケットシーが自分に鉄筒を向けている。
ふと下を見ると腹から血が流れている。
「ケットシー…これは…どういうことだ……?」
激痛が走ったのは一瞬だったものの全身の痛みはわずかに残っている。
それでも楽俊はケットシーに問い詰めた。
しかしケットシーは聞く耳を持たずさらに鉄筒から弾丸を放つ。
その弾丸は無情にも楽俊の腹を貫く。
この一撃で再び激痛が楽俊の身体を駆け巡る。
そして強烈な痛みは楽俊を気絶へと追い込む。

41 :

楽俊は暗い闇の中にいた。
意識はあるものの辺り一面は黒で覆われている。
(何も…見えない?……ん?)
急に自分の魂が流れ出す感覚に襲われる。
抵抗しようとするも身体自体が動かない。
その間にも魂は流れ出ていく。
(納得は…できないが……おいらはもう…死んでしまうんだな)
楽俊は自らの死を悟る。
同時にキュウビを倒すどころか、直接闘いを挑むことすら出来なかった自分自身に不満を持つ。
(もう…どうにも……ならねぇな…、頭が……霞んで…)
次第に考える気力も失われていく。
そして彼の意識は深い闇へと落ちる。
どこまでも、どこまでも…。

亡骸を除き誰もいないホテルの一室。
ケットシーが投げた小さな金属片―DG細胞が楽俊の亡骸を侵していく。
生前の人格を消しゴムで消すかの如く彼の脳を浸食する。
やがて亡骸はゆっくりと立ち上がる。
「きいいいぃぃぃりゅりりゅりしいいいぃぃぃ!」
立ち上がると共に魔物はおぞましい産声をあげる。
もはや穏便であった彼の面影は何一つ残ってない。
「殺ス…全テ殺ス」
生前の彼が言うとは思えぬ台詞を発し、魔物と化した楽俊は怪力でドアを壊し犠牲者を探し始めた。

42 :
【D-4/ホテル/1日目/午前】
【楽俊@十二国記】
【状態】:自我崩壊
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考】
基本:見カケタ奴、殺ス
1:誰かを見つけたら問答無用でR
【備考】
※一度死んだあとDG細胞に浸食されたため、自我が崩壊しています。
※DG細胞により戦闘力と再生力が強化されています。強化の程度に関しては次回以降の書き手にお任せします。
※楽俊の基本支給品(食料除く)が部屋中に散らかっています。
【DG細胞@機動武勇伝Gガンダム】
デビルガンダム化したディマリウム合金の一種。
感染すると肉体が強化されるがゾンビ兵と化する。
また死者を復活させることもできるが、
細胞の影響なのか生前と人格が異なる状態となる。
代理投下終了です
ああ、楽俊…
ここでDG細胞か…ケットシーは本当にもうねw

43 :
アライグマの父、代理投下します

44 :
バンッっと威勢の良い音と共に、アライグマの父は足元のスイッチを踏み抜いた。
その音を合図にして、正面の格子がガラガラと引き上げられていく。
上空に漂っている疾飛丸が動き出せない間に、体を丸めてアライグマの父は格子をくぐり抜け、目の前のコースを見渡す。
――やっぱり特に妙なしかけは無えようだな――
レース前に格子の間から見たコースの様子と、実際のコースとのズレが無いことを確認し、続いて軽く後ろを振り返る。
格子は今まさに引き上げ終わる直前で、そのすぐ後ろで疾飛丸が二、三回その身を震わせている。
はやる気持ちを押えきれないのか、その動きはまるで闘牛場の牛が突撃する時に後ろ足で地面をこする仕草にどこか似ていた。
そんなやる気充分の疾飛丸を視界の端に捉えて再びアライグマの父が前を向くのと、
格子が上がりきって疾飛丸の前を遮るものが無くなるのは、ほぼ同じタイミングだった。

アライグマの父が走りだす。
疾飛丸も文字通り飛びだす。
アライグマの父はドタドタと音を立てながら走る。
疾飛丸はスーッと風に流されているように飛ぶ。
アライグマの父は走り続ける。
疾飛丸ももちろん飛び続ける。
アライグマの父が疾飛丸の方に振り向く。その分スピードは遅くなる。
疾飛丸にはアライグマの父は見えている。スピードも遅くはならない。
アライグマの父が疾飛丸に抜かれる。
疾飛丸がアライグマの父を追い抜く。

ちょうどコースの半分を過ぎた時、順位が入れ替わった。

45 :
sien

46 :

疾飛丸が先頭におどり出る。
アライグマの父が後退する。
疾飛丸は変わらぬペースで飛び続ける。
アライグマの父のペースが一段上がる。
疾飛丸からは特に何の音も聞こえない。
アライグマの父の呼吸音が大きくなる。
疾飛丸の表情は変わらない。もとい変えようが無い。
アライグマの父が歯をくいしばる。顔の赤みが増す。
疾飛丸のスピードは最初と変わらない。常に一定のペースで飛ぶ。
アライグマの父が走るスピードを上げる。足音のテンポが短くなる。
疾飛丸がアライグマの父に追いつかれる。それでもスパートをかけたりはしない。
アライグマの父が疾飛丸に追いつく。さらにギアを一段上げ腕をふり腿を上げる。
その結果。
入り口と同じ形のゴールに先に着いたのは、アライグマの父。
三本勝負の一本目を制した格好となった。

47 :
SIREN

48 :
「旦那ア、中々ノ走リップリデシタゼ。トテモ一児ノ父親ニャ見エマセンナ」
「うる、せえ、よ、テメエ、が、^ラ飛んで、やがるから、だ、ろうが!」
「ソリャ最初ハ、アッシノ速サガドンナモンカ相手ニ知ッテオイテモラワント、公平タァ言エヤシマセンシ」
「けっ、妙に、りちぎ、な、紙っペラ、だな、おい」
二本目のコースを目指す途中の階段を登りながら、試合後の感想をぶつけ合う対戦者たち。
勝者であるはずのアライグマの父が息を切らしながら毒づくのに対して、
敗者であるはずの疾飛丸が全く変わらず淀みなく返答している姿を見ていると、どちらが勝者なのか一目では分かりづらい。
ギシ、ギシと先に進む度に木製の階段から音が鳴る。アライグマの父には、その音は安心できる音だ。
彼にとって、今まで見てきたこのユウエンチは訳の分からないものが多すぎる。
やたらと硬く、ざらざらしているのに石ころの一つも見当たらない地面――アスファルト――や、
首が痛くなるほど上を見なければ先端が見えない輪っか――観覧車――や、
それよりもさらに大きく、横にも奥にも広い現在地――キュービー城――。
しかしその中にあるここは、仕組みなどはさっぱり分からずとも木の匂いがする。木の音もある。
近くに居るのはシマリスでもなくアザラシでもなくスナドリネコでもなく、吹けば飛び千切れば破れそうな紙ではあるが。
ただでさえ、空腹と貧血が重なった状況で一心不乱に走り呼吸が荒くなっている所に、
さらに意味の分からない匂いや音を聞かされるよりはこの音はまだマシだ。
そうアライグマの父が息を整えながら内心考えていると、上のほうから光が差してきた。階段の終りが見えたのだ。
「サテ旦那ア、ココガ二本目ノコースデスゼ。スタートハ一本目ト同ジ、ルールモ勝敗ノ付ケ方モ同ジ。違ウノハコースノ中身ダケデサァ」
「おい、中身が違うってのは、どういうこった」
「ソコハ見テノオ楽シミ。実際ニ走ッテミテ感ジテクダセエ」
そう言われ、アライグマの父は格子の間からコースの先を見るが、既に違いが見てとれる。
先程のコースでは確認出来たゴールが見えない。かといって、距離がとても長いわけではない。つまり……
「おい、なんで坂道があんだよコラ」
「タダ走ルダケジャ面白クネエデショウ?」
「答えになってねえぞテメエ!」
アライグマの父が思いっきりガンを飛ばしても、疾飛丸は何処吹く風と言わんばかりに
フヨフヨと移動し、格子の前に立ってその時を待つ。
それを見ていたアライグマの父もはぁ〜、と一際大きなため息をつき、呼吸を整える。
そして、二本目のレースが始まった。

49 :
C¥

50 :
けっ、さっきは出発も一緒だったからな、今回は先に差を広げておかねえと。
にしてもいきなり坂道かよ。
あの紙は飛んでやがるから関係ねえが、こっちは二本の足で登るんだぞこら。
メンドクセえもの拵えやがって……って、もう下りか!
ああくそう、こんなビミョーな坂道なら無くてもいいじゃねえかよ。
大体、何で俺はこんなことしてんだ。
よくよく考えてみりゃあ、腹が空いたから何かしら食い物を探してたのによお。
なんで走り回ってんだおい。
余計に腹が減るだけだろが。
かといって、今後ろを飛んでやがるハズのアイツに負けるのも気に入らねえ。
クソったれ、それもこれも腹が減ってるからだ。
あの丸太に頭ぶつけた時に、食いものが落ちたのがなあ……
あれは俺のもんだろう?誰かが拾って食ってたら承知しねえ。
あの猿だろうがワニだろうが思いっきりケツを蹴っ飛ばしてやる!
多分あの丸太もあの野郎たちがはぁ!?
痛てえ!何だ一体!?
頭?頭をぶつけたのか俺は!
何に?特に何も無いはずだろう?
こりゃあ丸太!?何でこんなところにって……下からかよ!
ああくそう、腹減ってるせいで余計なこと考えてる間に出てきたのか!
それに気がつかず、俺はそのまま激突した、と。
とんだ間抜けじゃねえかおりゃあ。
ああくそ、今度は頭が痛てえ。
畜生、あの野郎先に行きやがった!
待ちやがれ、ふん捕まえてとっちめてやる。
なぁにが「ヨク分カリヤセン」だ。
しっかり丸太の先っぽのちょっと上を飛んでるじゃねえかよ。
どうみても仕掛けを知ってる飛び方だぜありゃ。
っと、アブねえアブねえ。
二度も三度も同じ手に引っかかる訳ねえだろう。
俺が近づくと下からニョッキリというわけか。
仕掛けが分かれば、あとは脇を通りゃ済む話だ。
にしても、あれが直前に出てくる仕掛けで良かったぜ。
足元からあんなのが飛び出てきたら、足や股がエライ目にあっちまう。
特に股に当たってみろ、身動きが取れなくなるに決まってる。
それを考えりゃ、少しはマシなのか。
まぁとっ捕まえてひっぱたくのは変わらねえがな。

51 :
よっしゃあ、あの紙に追いついてきたぜ。
よく見りゃ上のほうにも妙な出っ張りがあるみてえだな。
野郎も一応は速さを出せないようにされてんのか。
そういや最初の場所に鳥もいた気がする。
てコトは、あの猿やワニもここを走ることがあるかもしれねえのか。
アイツらなら格子をぶち壊して、先に進みそうだがなあ。
ん?何だこのゴゴゴゴって音は?
上から聞こえてくるぞ、まさか今度は丸太が降ってくるのか!?
いや違え、上の方で丸太が横に動いてるんだ!
何であんなよく解らんことを……と思ってたらこっちにも来たぜ。
今度はちゃんと前を確認してるからな、さっきのような下手はうたねえ。
せーの、おりゃあ!
へっ、飛び越せば何てことは無いぜ。
つーことは、上のヤツは飛んでいる連中向けの仕掛けか。
色々考えてやがるな、コレを作った奴も。
飛んだり跳ねたり、いちいち面倒くせえ動きをさせやがる。
お、アイツも足止めか。
ざまーみろ、この間に抜き返してやる。
本当ならこの時に怒鳴りつけてやるんだが、流石に息がやばくなってきやがった。
畜生、年は取りたくねえなあ。
足の方はまだ大丈夫だが、息が苦しくなってきてるぜ。
こうやって、丸太を飛んだ、り、屈んでかわし、たりするから、余計に疲れる。
野郎は飛んでいるから疲れねえだろうけどよ。
っと、やっと最後が見えてきたか。
この下のほうの丸太を飛び越えりゃ、この先には何もねえ。俺の勝ちだ。
テンシュカクとやらにある『良い物』は後回しにして、まずは食い物だ。
空きっ腹で血も足りない俺をここまで走り回らせたんだぞ。
たらふく飯を食わなきゃやってらんねえぜ。
あの紙をとっちめるのはその後だ。
さあ飛ぶぞ、いち、にの、さんっ!
………………。
…………。
……。
ああ、そういう事をするのかテメエらは。
最後に上と下、両方の丸太をずらして出してきやがった。
このままじゃ、上の丸太に頭をぶつけちまう。
でも、俺にゃそれを防ぐことは出来ねえ。
こうやって考えてる間にもどんどん近づいてくる。
ああくそ、痛てえんだろうなあ。
せめて歯ぁ食いしばっ!!
クソったれ、やっぱりいってえ!
いてえ!いてえよ!
頭の中でグワングワン響いてるぞ畜生!
しかも上向いて倒れてるからあの野郎が先に行くのが見えやがる!
そんなに見せつけてえのかよコラァ!
覚えてやがれ、只じゃ済まさねえぞあの野郎……

二本目を制したのは疾飛丸。
アライグマの父は、落ち着いて走っていれば勝てたレースだが、後の祭りである。

52 :
「おい、俺はもう帰る」
「旦那ア、キュウビ様の話聞イテ無カッタンデ?」
「そうじゃねえ、このキュービー城から出て行くってんだ!!」
怒り心頭と言わんばかりに眉間に皺を寄せながら宣言するアライグマの父。
顔が赤いのは先程ぶつけただけではあるまい。
「大体よお、なんで俺がこんなに飛んだり跳ねたりしなきゃなんねえんだ!
そういうのはガキがするべきことだろうが!別に獲物を追っかけてるわけでもねえのにこれ以上やってられるかああ!!」
「ソウハ言ッテモ旦那ア、ココジャソウイウ決マリニ……」
アライグマの父のまさかのリタイア宣言に疾飛丸も困惑を隠せない。
彼からすれば、一勝一敗で迎えた三本目を楽しみにしていたところに冷や水を浴びせられた格好である。
「うるせえええ!いいから食い物よこしてさっさと帰らせろ!!」
しかし、アライグマの父がこれから三本目を走ってくれるとは到底思えないのも事実であり、疾飛丸は考える。
このまま三本目を走るように説得するか。
参加賞の食べ物を渡してお引き取り願うか。
いざ考えを比べてみれば、答えを出すのは簡単であった。
「ワカリヤシタ、旦那ガ三本目ヲ走ッテクレソウニナイノハ、アッシモ理解シヤシタ。
今カラ食イ物持ッテクルンデオ待チクダセエ」
「判ったんならとっとと持って来い!」
そうしてしばしの後、参加賞として疾飛丸が持ってきたのは梅干とお粥と炭酸の抜けきったコーラの三つ。
とある世界では試合前に食べるには最適の食事とされている。
アライグマの父も、梅干は論外としてコーラとお粥は文句も言わず全て平らげた。
食事のあとの盛大なゲップが出た所で、疾飛丸が話を切り出す。
「サテ旦那ア、少シ目ヲツブッテクレマセンカネエ」
「あ?何でだよ」
「コレカラ旦那ヲ転送、ツマリ他ノ所ヘ飛バスカラデサア」
「ちょっと待て、いきなりそんなこと言うな」
「オ、準備出来タヨウデ。ソンジャオ達者デ〜」
「ふざけんなああぁぁぁ」
こうしてまたもやアライグマの父は大移動を開始する。
心の準備が整わないうちに転送されるはめになったのは、三本目を楽しみにしていた疾飛丸の腹いせか。
それを確認する術も、自分がどこに行くのかもアライグマの父が知ることは出来ない。
今はただ、空腹が癒えた代わりに頭痛がひどくなっていくのを感じるばかりである

53 :
煙草

54 :
【???/???/一日目/正午】
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血、
【装備】:ディバック
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:積極的に誰かを襲うつもりはない……?
1:ふざけんなああぁぁぁ
2:自分がどこへ行くのか不安。
3:観覧車を自由に動かす方法を探す。
4:息子たちが心配。
5:疾飛丸はあとでシバく。
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※疾飛丸はキュービー城から出られません。また、キュービー城に関すること以外は答えられません。
※疾飛丸との三本勝負で二本先取すると、“良い物”が貰えるようです。また、負けても菓子が貰えるようです。
※レース場のイメージはアライグマの父の主観です。参加者によっては他のことに気付くかも知れません。
※参加賞は梅干とお粥と炭酸の抜けきったコーラ@グラップラー刃牙でした。しかし他の参加者も同じものとは限りません。
※アライグマの父が何処に転送されたかは次回の書き手さんにお任せします。

55 :
代理投下終わりです
原作の雰囲気のまんまの親父だw
確かにこいつは短気だからこうなるよなw
そしてどこへ飛ばされたのやら…

56 :
お二方とも遅ればせながら投下乙です。
>今日も明日も変わるけれど―― 
イカルゴだんだん揺れてきてるな。
でも腹を括らないと、自分どころか仲間すら守れませんよ。
クズリ、メタ的な意味で鋭いw
そして、ホワイトハウスの地下に倉庫ですか。
隠し扉の後ろにだけものを集中させるなんて主催者、
カモフラージュが下手すぎるw

>Raccoon Over The Castle
親父丸太運無さすぎるw
どんだけ丸太喰らってんだこいつはw
堪忍袋の緒が切れレースを放棄した挙句ワープとは…
どこに行くかで命運が分かれるな。

最後になりますが、途中からの代理投下感謝します。

57 :
DG細胞って大丈夫か? ありとあらゆる意味で。
それだけなしにして楽俊を殺したほうがいいと思うんだが。

58 :
Gガンキャラが出た時点で出るとは予想できたことじゃないか
このくらいのやつはほかロワでもあったから大丈夫だろ

59 :
カエルを予約致します。

60 :
ニャース、キラパン、オカリナ、クロコダインを投下します。
長くなってしまったので途中で猿さん喰らう予定です。1
0分以上たって途切れていたらしたらばに投下していますので、代理投下お願いいたします。

61 :

(一)
 外に飛び出した私たちを出迎えたのは唸るような強風だった。その風圧に、私の小さな翼は翻弄されそうになる。慌てて風を掴み直し、私は体勢を立て直した。
 数刻前の穏やかさから一変し、上空の雲は大きな獣の群れのようにうねるように奔っていく。雨が来る。それも、もう間もなく。
 湿り気は翼を重くするものだけど、この不調は天候のせいじゃない。
 羽ばたき一つ一つに身体が軋みを上げるのが分かる。まだまだ若いつもりだったんだけどな。
「飛ぶのが難しいなら背中を貸すか?」
 私の無様な飛行を見たプックルさんが心配そうな声を掛けてくる。普段なら遠慮する所だけど、今回は彼の言葉に甘えよう。
「申し訳ないですけど、お願いできますか」
 調整しながら、私はプックルさんの背中に降り立った。紅色の柔らかな鬣に、私は身を埋めた。この動作だけでも、とても億劫だ。羽を休めた途端に、更に倦怠感が身体を包む。この姿で居る限り寿命で力尽きることはない。
 とはいっても、この疲労は休息や睡眠で回復できる類のものではないから厄介だ。
 それでも飛ばずにいられるだけでも多少楽にはなる。意外なことだけど、軽やかに大地を駆けて行くプックルさんの背中は、中々居心地がいい。ただ、動いていないと嫌な推測に思いを巡らせることになりがちだった。
 まずは楽俊さんのこと。プックルさんの言うとおり、生きている可能性は零じゃない。だけど、あの声は致命的なものを含んでいた。命を多く奪ってきたからこそ、その命が続くか終わるかの判別が可能になってくる。
 勿論外れる場合だってあるし、外れてほしい。だけど、あの状況でケットシーとやらが仕損じる理由もない。時間はたっぷりある。仮にピカチュウさんが全速力でホテルに向かった所で、到底間に合うものでもない。
 もう一つは――。
「人間が出てくるとはな」
 そう……。人間が見つかったことだ。
 それが誰なのかは勿論だけど、この事実は危惧していたキュウビが参加者と縁ある部外者を人質にとっている可能性を示唆している。そうでなくとも、部外者が囚われている可能性は高くなった。
 ただし、発見されたという学校がそうした部外者の収容所とは考えにくい。となると、必要が無くなったから捨てられたと考えた方が自然だと思う。例えば、その縁者である参加者が亡くなったとか。
 この説だと、発見された方が私の知り合いの誰かである線は薄い。
 ただ、重傷ということが気になる。捕まる時に、もしくはそれからも抵抗したために痛めつけられていたのだろう。キュウビが衛生環境等に気を遣うようにも思えないし。もしくは、痛めつけてからから放逐したのか。
 今この時にサイザーさまが苦しんでいるとしたら……。
 勿論。サイザー様は簡単に捕まるような方じゃない。ただ、ハーメルンさんたちを先に捕縛されたら分からない。あの人たちちょっと……いや相当抜けてるし。
 それに加えて、キュウビの力が未知数なのも気にかかる。
 もしもサイザー様を人質に取られ、殺し合いを強要されたら――私は今の方針を貫く自信はない……。
 サイザー様と他の方たちを秤にかけたら、私は迷わずサイザー様をとる。あの子が私のすべてだから。
 キュウビに敵対する行動を選択したのも、あの子が悲しむからだ。
 やっぱり私って魔族なんだなあ。今更だけれど。
 
「話を聞けるぐらいには元気で居て欲しいものだ。うまく運べばキュウビとの直接対決も遠くないかもしれんぞ」
 プックルさんは剛毅に笑う。彼は、自分の主たちが人質に取られているとは考えないのだろうか。
 ……考えないんだろうな。多分。
 彼が楽観的だとか、私の発言を忘れているとか、主を妄信しているとかってだけじゃない。彼は主を持ちながらも自立しているのだ。誰かに一方的に依ることなく。
「なんか少し楽しそうですね」

62 :

 私の口調には少し棘のようなものが含まれていた。
 だけど、プックルさんはそれには気付かなかったようだ。肩越しに振り返った彼の瞳は、曇天の下で活き活きと輝いている。
「そう見えるか? でもまあ、たしかにそうかもな。これまでずっと。主のために戦ってきた。それはお前も同じだろう? だが、こいつは他の何でもない、オレの戦いだ。オレたち、人間に仕えてきたものたちのな。こう……グッとこないか?」
「……いえ、全然」
 胸の内の焦りを悟られないよう、私はわざと連れない風を装った。
 オレたちの戦い。プックルさんの言葉に、私は動揺していた。とはいっても、彼の言葉に感銘を受けたわけじゃない。残念ながら。
 私はキュウビを倒すと彼らに告げた。そこに、生き残りたいという気持ちは微塵も含まれていなかった。そのことに気づいてしまったから。
 それは多分、一度死んでいるせいじゃない。
 サイザー様に危害が及ぶかもしれないからキュウビを倒す。それしか、私にはない。
 私はずっと、あの子にかこつけて生きて来た。あの子のためという鎖で、自分を律していた。そうして世界と関わってきた。あの子のためと、人間を――そして同胞を殺してきた。その果てに、成り行きで人間たちの救世主の一人になろうとさえしていた。
 まったくもって都合のいいことだと思う。軽蔑していたギータやドラムなどの方が余程真摯だった。魔族の立場で、これ以上ないほどに純粋に人間と向き合っていたんだから。
 私に意志などなかった。多分、今も――。
「むぅ。漢心が分からん奴だ。やはり雌雄関係なく睾丸は必要だと思う次第だ」
「そんな汚らわしいもの要りません。邪魔ですし」
 ぼやくプックルさんに、私は苦笑する。
 彼は私とは違う。隷属ではなく、もっと健全で親密な関係を主と築いてきたんだろう。それが少し嫉ましい。
 沈んでいく思考を振り払うために、私は話題を探した。そういえば、プックルさんから本を無理やり預かったんだっけ。ずっと彼が咥えているもんだから、涎で酷いことになってたし。これにしようかな。
「ところで、あの本のことなんですけど、ちょっといいですか?」
 結局、話題は何でもよかったんだけどね。ただ堂々巡りしそうな思考を遮断したかった。それに、先程プックルさんとのあの本について話し合った後からずっと考えていたことがあったのだ。
「……俺の仮説は間違っていないぞ。何せ間違いだという証拠がないからな」
 そんなわけで話に出したのだが、プックルさんは途端にどこか拗ねたような声音になった。まだ自分の仮説に拘泥しているようだ。余程自信があったみたい。
 サンプルの少ない状況で立てた仮説なんだから覆されるのは仕方ないことだと思うんだけど。
 ただ、強面の彼が子供のように意地を張っている様は、少し可愛いと思う。
「多分あれは人間という表現を使っていないだけなんだ。忘れたか? 星を喰う存在の話にも人間は出ていなかったじゃないか。自慢じゃないがオレはすっかり忘れていたぞ!」
 
 何故か胸を張ったような口調で告げてくる。嘆息を一つ溢して、私は翼を軽く振った。
「なんで偉そうなんですか。それに話したいのはそのことじゃありませんよ。あの本の持つ意味です」
「意味? ピカチュウの同じで拘るんだな。今のところ名称をぼかす理由もないし、キュウビがあれを書く理由もない。つまりは存在に意味はない。理由を考えるのも馬鹿馬鹿しい。殺し合いの役に立たん代物だと分かっていることで充分だ。
 何か出来た所で、せいぜいオレのすまーとな仮説を混乱させようとするぐらいだ。その目論見を見事オレは看破したがな」
 そう。プックルさんの言うとおり。本には、殺し合いに関する限りメリットがない。
 そんな無意味なものを製作し、支給する。こんな無駄なことはない。キュウビの遊び心とも考えられるけど、それは余裕がある場合だ。
 この殺し合い自体に不備がないかというと否としか言えない。殺し合いを催す場としては、ここはあまりにも非合理的すぎる。
 遊びを入れる暇があるならば、その前により効率的に殺し合いを進められるようにしようとするのが当然だと思う。
 この殺し合いが呪法――儀式であるならば尚のこと、万全を期して臨むはずだ。ただでさえ幾つもの異世界を渡る大掛かりなものであることだし。

63 :
「そこなんです。もしですが、この本がキュウビの手によるものでないとしたら? そして、無意味に“見せかけたい”のだとしたら、これの存在意義が変わってきませんか?」
 後半部分の彼の妄言は丸っきり無視して私は問い掛けた。こちらの意図を測りかねているのか、プックルさんの速度が少し落ちる。それともツッコミが欲しかったのかな。
「……何が言いたいのか見当もつかんが」
 彼の鳴き声には少し落胆した響きがあった。これは本当に後者だったのかもしれない。まあ、気にしないでおこう。揺れたので、彼の体毛をもう一度しっかりと掴み直す。
「私たちに是を以て何かを伝えたい存在がいるかもしれないってことです。それも、この儀式の行使に深く関わっていて、それでいてキュウビとは別の思惑を持つ存在が。キュウビに仲間がいることが前提の話ではありますけど」
「無意味に見せかけたいというのは、どういう意味だ?」
「木の葉を隠すなら森の中ってことですよ」
 首を傾げたプックルさんに私は言葉を重ねた。彼に支給されていた物品を例に挙げる。
「プックルさんのバッグに入っていた柿の葉ですけど、あれはどうみてもただの葉っぱでしたよね?」
「オレの世界には世界樹の葉と言う反魂の力を持つものがあったし……実は隠された力とかがあるんじゃないかという期待を熱く胸の内に秘めているのだが」
「いやでも、“古本屋・本の虫の老夫婦思い出の品”と説明ありましたし。ていうか、秘めた所でどうなるもんでもないでしょ」
「むぅ……世界樹の葉は売れるんだぞ、250ゴールドで」
「どんだけ安く買い叩かれてるんですか……。物価とかその辺を知りませんけど。ま、それは置いといて。殺し合いの参加者に渡すものとして、あまりにナンセンスだと思いませんか?」
「まあ、な。そういえばあの犬の鞄には笛も入っていたな。余程クジ運がないらしい」
 プックルさんは苦笑したようだ。私からすれば、笛は一概に無力とは言い難いんだけど。ただ、ここで口を挟むとややこしいことになるので黙っておく。
「そうでしょう? わざわざ支給するんですから、殺し合いを効率的に進めるための物品であるべきです。武器とか防具とか。それなのに、こういった物を紛れ込ませるのは無駄がすぎます。しかし、こういった役に立たない代物は他にも沢山支給されているんだとしたら……?」
 しばしの沈黙。鬣越しに流れて行く世界は、淡い赤色だ。やがて意味することが伝わったのか、プックルさんの耳がぴくんと動いた。
「……なるほどな。キュウビ以外の何者かがオレたちに知らせたい何かを、キュウビに気付かれずに入れるためにゴミのような代物を多数投入して誤魔化したと言いたいのか」
「ええ。その何者かの真意は分かりませんし、実際にいるとも限りません。ですが、こう考えれば、あの本の説明は付くと思うんです」
 私は言い切った。
 こう言ってはなんだけど、我ながら相当飛躍した考えだ。気を紛らわすためとはいえ、後で思い返したら赤面するんだろうな。それに付き合わされたプックルさんには申し訳ないけれど、まあ、聞くだけならタダだし。
 と、プックルさんが肩越しに私をちらと見た。内心を見透かされたのか、その目には揶揄するような色がある。
「その本が“森”に相当するのかもしれないぞ?」
「……否定はしませんよ」
「更に加えると、おまえの説はキュウビが殺し合いの効率化など考えていない場合には意味をなさんな」
 
 意外な切り返しに、私は鬣に埋めていた顔を上げた。戯れとはいえ、根本から指摘されるとは思わなかった。
 無意識に、私は嘴をとがらせた。
「確かに、このは殺し合いは非効率的な要素が多すぎます。でも、これは手が回らなかったと考えられるのではないですか? 呪法を行うということは、何かしら事を急ぐ必要があったからでしょう?」

64 :

 私の脳裏には大魔王ケストラー復活のために、そして聖杯のために魔族たちが奔走していた記憶が鮮明に残っている。あれは自らの永遠の命を保つという、切羽詰まった事情があったのだ。
 事が大きくなればなるほど、それで解決せねばならない問題も大きいものだと思うんだけど。
「そいつは、おまえが呪法のための殺し合いを効率的に進めなければならないと信じ込んでいるからだ」
 
 今度は私が困惑する番だった。どう相槌打っていいものか迷う。プックルさんは続けた。
「確かに、あの魔王は呪法のために殺し合ってもらうと言っていた。だが、果たして呪法とこの殺し合いは直接結びつくのか?」
「と、いいますと?」
「殺し合いは呪法に関与しているが、殺し合いそのものが呪法とは限らんってことだ。そもそも、キュウビは呪法と言ったが、そいつをオレたちに告げる必要はないんだ。それが真実だとしてもな。
 殺し合わねば呪法が完成しないのなら、そりゃあ自分から弱点を曝すようなもんじゃないか」
「………………」
「それをわざわざ教えるということは、オレたちにこの殺し合いこそ呪法だと思わせたいという意図があるとも勘ぐれる。または、殺し合いを隠れ蓑に別の何かを進行させているのかもしれん。仮に殺し合いが呪法にとって重要性が低いものとしよう。
 さて、真面目に支給品を整えたりすると思うか?」
「……いいえ。もしくは、無駄に力を入れた遊びを入れてくるかもしれませんね」
 無意味な遊びをギータやオルゴールあたりならやってくるだろう。キュウビがそんな性格とは思えないけど。
「だろう? 効率化なんぞ二の次だ。第一、殺し合いを迅速に進めたいのなら、わざわざこんな広い舞台を用意しないだろ。それこそ闘技場か何か、狭い場所に押し込めてしまえばいいんだ。この舞台の広さでは時間稼ぎにこそなるものの、スムーズな進行など無理だ。
 現にオレたちは半日経つのに四匹の獣にしか直接遭遇していない。
 さて、こうだとしたら本に意味などあると思うか? 一転、無意味になっただろ?
 要するに、まだ分からん部分をあれこれ考えたところで暇つぶしにしかならん。だから、今理由だのなんだのを考えるなんてのは馬鹿馬鹿しいんだ。
 大体、おまえの仮説はキュウビの言動や行動が真実であることが大前提じゃないか。しかも、あいつの話を裏付ける物証も推察するに足る情報もない。土台が泥沼じゃあ、どうしようもない」
 プックルさんはそう言って、少し苛立たしげな吐息をついた。
 ……なるほど。プックルさんはこんな風に殺し合いを見ていたのか。だから、彼と私たちの議論に時たまズレが生じていたのだ。単にその……天然なんだと思っていたんだけど。
 がふぅと、プックルさんが咳払いをしたのが聞こえた。
「あのな。考えても仕方のないことに執着することを、それこそ無駄と言うんだ。どんな結果だろうと、もう起こってしまったんだから俺たちにはどうしようもない。まあ、なんだ……こうでもしないと目を逸らせないなら、付き合いはするがな」
「………………」
 しかも、私のことなんかお見通しと来た。鈍いようで、彼は中々どうして聡いところがある。それとも大雑把な彼に気遣われるほど、陰気な空気を纏っていたのだろうか。なんか……ショックだ。
 無言の私に対し、プックルさんの胡乱気な視線が向けられる。
「どうした?」
「……プックルさんって頭が悪いわけじゃなかったんだなあって。ただ非常識で大概に於いて大雑把なだけだったんですね。驚きです」
「ほう。どんな風にオレを見てたのか後でじっくり話し合う必要があるようだな」
「必要ないです。言ったまんまですし」
「……ないのか」
 半眼になって呻くプックルさんを見て、私は失笑した。不機嫌そうに彼が鼻を鳴らす。
 突然。彼の身体を緊張が伝流のように迸ったのを感じる。体毛が総毛立ち――刹那の後、彼は後方へ飛び退った。
「ちょっと――!?」
 私は非難の声を上げ――それは半ばで途切れた。
 寸前まで身体があった場所を一本の大きな杭が唸りを上げて貫いたのだ。それは着地点の大地を地響きと共に大きく抉り、土塊と粉塵を周囲にばらまいた。杭だと思っていた代物が、寸断された大木だと漸く気付く。

65 :
 
 まったく気付かなかった。自分で思っている以上に衰弱してるってことか。
 プックルさんが怒りも露わに吼えた。脇手の森から大柄な人影が姿を現す。鎧と大きなマントを着込んだ、隻眼の赤い竜人。巨大な剣を担ぐ姿は、私に幻竜王ドラムを思い起こさせた。
 竜人は私たちを舐めるように見、そして隻眼を細める。プックルさんもまた、その竜人を凝視していた。顔見知りなのだろうか。
「丁度よく威勢のよさそうなのが居たもんだな」
 その言葉を背後に置き去りにし、竜人は一気に間合いを詰めてくる。大地を揺らすような踏みこみと共に、担いでいた大剣が一息に振り下ろされた。その際に巻き起こった烈風が、見た目通りの質量を持った業物であることを報せている。
 そして、竜人が殺し合いに乗っていることも。
 
 寸での所でプックルさんは左方へ身を躍らせて避ける。叩き斬られた空気が、旋風となって彼の体毛を掻きまわしていった。着地と同時に小刻みに跳んで、プックルさんは竜人との間合いを取った。
 切っ先は大地を割っていた。竜人の膂力は相当なものだ。
「先に行け。足止めはやってやる」
 竜人から目を離さずにプックルさんが小さく唸る。確かに、ここで時間を取られれば人間は助からないかもしれない。引いては、貴重な情報源が失われてしまう。
 だけど――。
 竜人の放つ威圧感は、私まで息が詰まりそうなほどだ。一人では荷が重い。それはプックルさん自身も分かっている。彼の全身が総毛立ち、尻尾は緊張でぴんと張り詰められているんだから。
 ここで私が変身を解けば、援護が出来る。だけど多分……私の命はない。一度失った命に未練はない。ただ、人質を取られている可能性が幾許かでもあるのなら簡単には捨てられない。
 躊躇っている私に、プックルさんが吼えた。
「頭の悪いメスだなあ。オレに治療が出来ると思ってるのか? それにな、オスの面子ってのは立てるもんなんだぞ」
 髭に緊張を奔らせながら、それでもプックルさんは不敵に笑って見せた。卑怯な私を後押ししてくれている。私の行動を――正当化してくれている。
 竜人が下段の構えから、その巨体には似合わぬ滑らかな動きで迫る。
 ……ありがとう。そして、ごめんなさい。
 目を伏せ、私は彼の背中を蹴った。翼を広げ上空へと羽ばたいた私は、風を掴んで一気に厚い雲の元へと舞い上がる。
 風が私の翼を奪おうと襲い掛かってくる。だけど、負けるわけにはいかない。私は悲鳴を上げる自分の身体に鞭を入れた。
 大地と大気の悲鳴を背中に聞きながら、私は学校へと急ぐ。音はやがて小さくなっていった。


66 :

(二)
 下段から振り抜かれた剣先が蛇のように伸びる。それを身を沈めてやりすごし、プックルは猛然と踏み込んだ。しかし、その途中で頭上に影が落ちたのを見、彼は足を素早く踏みかえて横転する。
 地面越しの振動に、小さく体が跳ねた。
 振り下ろされたのはリザードマンの野太い尻尾だ。鱗と筋肉という天然の装甲に覆われたそれはさながら鉄棍のようだ。現に叩かれた地面は陥没し、砂利が大きく弾ける。
 実質、二刀を振るわれているに等しい。リザードマンは爪先の方向に身体を反転させると同時に、手首を返した刀で地面を薙いだ。落ちかかってきた刃を、プックルは大きく跳躍して躱す。
 荒い息をつきながら、プックルはリザードマンを睨めつけた。気を抜けば竦みそうになる四肢を叱咤し、汗ばむ足裏で大地をしっかりと掴む。この大トカゲは、自分には少々重すぎる食べ物だと認める。頃合いを見て、逃走に移るのが最善だと本能が告げていた。
 逃げ切る自信はある。
 ただし、気がかりなのはニャースたちが自分たちの臭いを追ってくるかもしれないことだった。ニャースらがどんな魔物か知らないが、ピカチュウの話からは闘争に向いた種ではなさそうだ。アマテラスに関しては全く情報がない。
 逃走した後、ニャースたちがリザードマンと遭遇する可能性は高い。とはいえ、どのみちプックル自身にも勝算が薄いのでは心配した所で結果は同じだ。
(気にせずに逃げ、首輪の解除が可能なものを新たに見つけるのも一つの手ではあるが――)
 リザードマンは既に大剣を青眼に構え直していた。リザードマンは無造作に間合いを詰めると、半身を捻った上半身から肩口へ鋭く打ち込んできた。凄まじい迫力を伴った一撃は、周囲の空気を破裂させながらプックルへと迫る。
 それを際まで引き付け、プックルは素早く足を送った。
 逃げ遅れた体毛が一房、剣風の中を舞う。
 プックルの身体は大剣の陰へと入った。プックルは四肢を収縮させると疾風の如く跳びかかる。咆哮と共に前足の魔爪を布の上から叩き込んだ。しかし、あろうことか爪は紫紺の絹布の上を滑ってしまった。分厚い布地に阻まれた爪がしゃしゃと口惜しげな声を上げる。
(くそ……なーんか見覚えがあるような気がしていたと思えば! ついでにあの留め紐も!)
 プックルは忌々しく口吻を歪めた。リザードマンが身に付けているマントは、大魔王との決戦で彼の主が纏っていた代物だ。その柔らかな外見とは裏腹に驚くほどの強度を誇り、耐熱・耐寒効果まで併せ持つ。ほぼ全身を覆う布は、これ以上ないほどの強固な鎧と化すのだ。
 渾身の一撃をいなされ、プックルは一瞬ではあるものの無防備な状態となった。それを見逃すほど、相手は盆暗ではなかったようだ。動きを止められたプックルの背に大剣の切っ先が突き込まれる。身を捩るも――逃れきれない。
 しかし運よく剣先は逸れ、脇腹を掠めるに終わった。それでも衝撃にプックルの身体は弾かれる。零れた血が、色あせた草の上にどす黒い綾を落とした。
 跳ね起きたプックルを迎えたのは漆黒の突風だ。颶風を纏う刀身に、プックルは敢えて飛び込んだ。半歩にも満たぬ動きで身体を捌くと、刃は戸惑うように空を刈った。
 プックルは地面を蹴りあげた。跳躍の勢いを乗せて突きあげた前足をリザードマンの下顎に叩き込む。
 戛と鉛を叩いたような音が響いた。

67 :

 まるで巌を殴ったように、プックルの肩を痺れが突きぬける。多少無理な体勢からだったためか、爪は鱗を削いだだけで下の肉にまでは潜り込まなかった。それでもこの一撃にリザードマンは多少よろめく。
 相手の顎を蹴り、プックルは小さく後方へと跳んだ。リザードマンの左手が空を掴む。それを視界に捉えながら着地したプックルは再度突進した。
(こりゃあ……ひょっとするとひょっとするかもしれんぞ)
 プックルの思考に浮かぶのは、脇腹を掠めたあの突きだ。あれは外してはならない、外すはずのない一撃だった。R離れしたての子供ならいざ知らず、このリザードマンの体捌きは熟練の匂いを漂わせている。
 それなのに彼は刺突を外し、それ以外の斬撃はプックルの動きを追尾しきれない。
 加えて、先の左手もまた、プックルを掴むには微妙に位置がずれていた。
 リザードマンの面相を見やる。彼が身に付けている眼帯には乾き切っていない血のにじみが残っていた。これは相手がこの地で右目を失ったことを物語る。
 つまり――相手は片目での立ち回りに慣れていない。
 と、プックルを迎え撃つ上段からの斬り下ろし。しかし、やはり軌道はプックルを捉えるには僅かにずれている。回避する必要もなく、そのすれ違いざまにプックルはマントからはみ出たリザードマンの足に爪を突き立てた。
 赤い鱗を剥ぎ、その下の肉を僅かにえぐり取る。ぱしと、小さな血の花が咲き、焼かれた傷口から薄く煙が立ち昇った。
 リザードマンが小さく舌打ちしたのを聞く。
 怒りの咆哮の如く薙ぎ払われた尻尾を、プックルは躱さずに気合いの呼気と共に両足を交差させて受け流した。その一合で、懐に入られては満足に迎撃も出来ぬと悟ったか、リザードマンは素早く退いて遠い間合いを取ろうとした。されど、それをプックルは許さない。
 草はらを駈ける雷光の如く、プックルは疾駆する。そして、細かい踏みこみと旋回を重ねて縦横無尽にリザードマンの全身に襲いかかった。迸る雷火のような獣影に対し、体勢を整え切れていないリザードマンの斬撃は虚空を打ち砕くのみ。
 切り裂かれた空気が嘲笑うかのように重々しい唸りを立てる。
 プックルの爪牙は腕や足、尻尾といったマントに覆われていない部分を浅く細かく切り裂いていく。重さを捨てて迅さを重視した攻めであるため、表面しか削れていない。だがしかし――。
(それで構わん!)
 特に執拗に狙ったのは剣を握る右腕だった。幾つも刻まれた浅い傷から流れ出る血が、赤い鱗を艶めかしい朱に塗り潰していた。
 首筋へと放った一撃がマントの留め具を捉え、紫紺の布がはらりと地面に広がる。
 マントの下から現れたのは、所々を砕かれたぼろぼろの鎧だ。その下の鱗は無惨にも鬱血している。
 掬いあげるような剣が迫るのを見、プックルは大きく後ろへ跳んだ。まぐれか、剣筋だけはプックルを両断していた。
 上空へと突きぬけた烈風を噛み砕き、プックルは仕上げと稲妻を放つ。
 青光りする閃光の蛇はリザードマンの右腕に喰らいついた。血と肉が焦げる臭いと共に、大剣が轟を伴って大地に倒れ込んだ。
 常ならば撃たれた所で剣を取り落とすことなどなかっただろう。だが幾重にも重ねられた傷は、霧雨が巌を穿つように少しずつ右腕の感覚を奪っていたのだ。
 稲妻の道筋を辿るように、プックルの身体が金色の風と化した。集中して狭まる視野に昂揚を感じながら、プックルは魔爪を振りかざした。
 爪を突き立てるのは何処でもいい。肉に潜り込ませた上で爪に込められた魔力を解放する。内部より焼かれれば、如何にリザードマンといえども只では済まない。
 血を浴びて光る紅蓮の魔爪は鎧に覆われていない腹部へと吸い込まれ――同じ紅蓮の爪に掴み取られた。リザードマンの左手が、繰り出したプックルの前足をしかと捕縛している。
 リザードマンがにたりと口端を吊り上げたのが見えた。

68 :

「もう――慣れた」
 呟きと同時に、プックルの腹部に右拳が叩きつけられた。半身を抉り取られたかのような衝撃が背中へと突き抜ける。
 体腔で臓腑が断末魔を上げたのを感じながら、プックルの身体を大きく弧を描いて弾きとばされた。受け身も取れずに地面に墜落し、二三回大地を転がる。ごぼりと、プックルの咥内から大量の血塊が溢れ出た。
 足音が近づく。起き上がろうにも身体に力が入らない。それに加えて、右前足がへし曲がっている。殴り飛ばされたときに折れたらしい。プックルがあれだけの手管を弄したのに、相手はたったの一撃でそれを打ち破ってしまった。
 肺が酸素を求めて喘ぐが、せり上がる血塊に阻まれる。咳込むたびに激痛が全身を蝕み、感覚を奪っていく。
 ぽつぽつと雫がプックルの顔に落ちてくる。とうとう空が泣きだしたらしい。
 足音が止まった。目だけを向ければ、大剣を携えたリザードマンが隻眼を歪めてこちらを見下ろしていた。
「中々やるな。名を訊こうか」
「知って……どう、する? 墓、でも建て、るつも……りか……?」
 プックルは僅かに歯を剥いた。この返答にリザードマンは苦笑を浮かべた。それをすぐに掻き消し、大剣を両手で下段に構える。
 激しさを増す雨粒が刀身をより黒く染め上げて行く。
 プックルは忍び寄る死の気配を感じ取りながらも、じっとリザードマンの動作をつぶさに注視した。視界が霞んでいくのは雨のせいだけではない。されど、プックルは静かに足掻いた。目を閉じるのを良しとしなかった。
 もう動くことは叶わない。だが、やれることはまだ、ある。
 下段に構えられていた大剣はゆっくりと流れるように持ちあげられ、八双のような構えに変わっていく。リザードマンがそれまでよりも深く、息を――吸った。
(くら、え……!)
 プックルは残った力を全て爪先へと注ぎ込んだ。
 炎の爪が一瞬だけ眩く輝き、一条の炎が放たれた。雨粒のカーテンを貫きながら、烈火の渦はリザードマンの左目へと迫る――。
「最期まで諦めぬ魂、見事だ!」
 炎は幅広の刀身の上で弾けて消えた。リザードマンは即座に腕を返し、火炎を大剣の腹で受けてのけたのだ。炎の残滓を散らしつつ、刃は再度構えられる。
(しくじ……った――)
 刃唸りを纏い、大剣は振り下ろされた。



69 :

 保健所らしき建物が見えた。強さを増す風に吹き飛ばされぬよう、マントを抑えながらニャースは叢を駆け抜ける。マントの透明化機能を用いているが、草を踏みつけ走ることまでが消えるわけではない。臭いの道筋が消えるわけではない。
 人間はどうでも、獣を誤魔化しきることは難しい代物だ。
 殺し合いに乗った獣が今にも飛びかかってくるのではないか。彼の鼻と耳が周囲に誰も居ないことを報せているにも関わらず、視えぬ恐怖に身を縛られていた。
 頭を占めるのは墓地に置き去りにしてきたアマテラスのことだ。そして、白毛のライコウのような獣のこと――。
 アマテラスは不可思議な技を持っている。充分に勝てるはずだ。だから大丈夫だ。
 そう自分に言い聞かせる。しかし、それを別の思考が両断する。
 それならば、なぜアマテラスは追いついてこないのか。
 滲みだす涙を振り払い、ニャースは這う這うの体で叢から飛び出した。
 入り口の手前でマントを脱ぎ捨て、屋内へと飛び込む。
「オカリナ! プックル! ニャースにゃ! アマ公がっ……」
 助けを求めた声は、がらんとした室内の空気の中で萎んでいった。大声で叫んだにも関わらず、誰も出てくる気配はない。冷えた空気が室内に渦を巻き、何処かへと抜けて行く。
 誰も居ない。ここで落ち合う約束をしたというにも関わらずだ。
(まさか、ここも襲われたにゃか!?)
 その考えに、さぁと血の気が引いていく。しかし、辺りをよく確認してみれば、リノウム張りの床に獣毛が散らばってはいるものの、争ったような痕跡はない。
 ただし、何者かの接近に気付いてここを後にした場合も考え得る。
 尻尾をせわしなく揺らしながら、ニャースは玄関ホールを歩き回った。ふと、受付カウンターに紙きれが乗せられていることに気付いた。
 その紙には綺麗な筆跡で、オカリナとプックルは学校で見つかった人間の男の許に向かったこと、そして楽俊が何者かに襲われたらしいことが書かれていた。
 楽俊が襲われた。その記述に、ニャースは頭を殴られたようなショックを受けた。楽俊には襲われても、それに対処する力はない。一度だけ物理的な衝撃を反射すると言う鏡を持っていたが、それがどれほど役に立つかは知りようがない。
 もし自分が保健所へと向かうなんて考えを起こさなければ、もしくはもっと強く誘っていればこの事態は避けられたかもしれない。白い猛獣に襲われることは変わらないとしても、三者がばらばらになることは回避できた。
 最悪、この地でずっと行動を共にしてきた友人を二人同時に失うことになる。
 そして何より気に障るのは、オカリナたちが襲われた楽俊よりも学校に現れたという人間の男を優先したことだ。脱出に繋がるかもしれない光明を見つけ出したのは楽俊だ。
 ホテルに向かっているはずのピカチュウを信頼したのかもしれない。冷静に間に合わないと判断したのかもしれない。

70 :

 しかし、どうやって彼女らはその情報を知ったのだろうか。考えられるのは、逃げのびた楽俊から直接連絡を受けたか。
 それとも、襲われた現場に居合わせたのか。何か新たな情報を得た楽俊が、オカリナたちに電話でそれを伝えようとする様は容易に想像できる。その最中に楽俊が襲われた。
 どちらにしろ、それを知った時点では手遅れだ。それは分かる。
 だから、まだ事態の終わっていない人間のことを選択するのは理にかなっているとも思う。
 だが、感情が納得しない。待っていてくれても良かったのにと思ってしまう。
 そうであれば、合流した所でアマテラスを援護に行き、ホテルに突入し、そして学校へ向かう。そんな手だって打てたのだ。
 けれども、今のニャースにはここでオカリナたちの帰りを待つか、彼女らを追うことの二つの道しか残されていない。楽俊とアマテラスの両方を一時的にしろ見捨てなければならないのだ。
 かといって、自分が救援にいったところで足手纏いになるのは明白だ。己の無力さに対し、低い唸り声が喉から洩れる。
 ニャースは苛立たしげに床を踏みならし、外へ飛び出した。まだオカリナかプックルのものらしき臭いの道が色濃く残っている。
 出ていって間もないということだ。すぐに追いかければ、合流できるかもしれない。
 ニャースはマントを拾い上げて頭から被ると、臭いを追いかけ始めた。透明化した上で、北へと続く道を只管に走る。傍から見れば、二つの肉球が地面を叩く音だけが路上に響く奇妙な現象に映ることだろう。
 線路を渡り終わった所で、ぽつぽつと雨粒が地面に落ち始めた。降り出す前に合流したかったのにと、ニャースは足を速めた。途中で何らかのトラブルに見舞われて目的地を変更しないとも限らない。
 雨足はどんどん強くなっていく。ニャースは煩わしげに布を内側から払った。
 もともとマントのサイズが大きくて引き摺っていたのだが、それに加えて雨にぬれた布はべたべたとニャースの手足や尻尾に絡みついてくる。幾度かは足を取られ、転びそうにすらなった。
 風に煽られた雨粒が容赦なくニャースの顔面を叩いていく。
 オカリナたちの痕跡はとうに雨に洗い流されてしまっていた。もう、彼女らが学校に向かったのだと信じるしかない。
 北へ進むにつれ、突き立った丸太や大きく割られた地面など、異様な光景が目に付くようになった。
 戦闘の跡――と判別するには戸惑われるぐらいに荒らされている。この破壊をやってのけるような獣がここに居たのだ。これに巻き込まれたのはオカリナたちなのか。破壊者はまだ近くに居るのか。
 思わず立ち止まって周囲を見渡したニャースの目に、大きな影が雨の帳の向こうに佇んでいるのが映る。
 マントの機能が働いていることを再確認して、ニャースは影に用心深く近づいた。リザードのような姿をした、とても大きな獣だ。鎧を着こんでいることから見て、獣というよりも楽俊に近い存在なのだろう。
 獣人はこれまた大きな剣のようなものを突き立てると、地面から何かを拾い上げた。布のようだ。それを打ち広げ、何度か雨の中で振り回しては泥を払っている。
 破壊者は目の前の獣だと、直感がニャースに伝えていた。
(う、迂回せにゃ……東は――ダメにゃから、西の森から……)
 首を西に巡らせた時、ニャースは息をのんだ。獣人から十メートルほど離れた所に何かが転がっている。それは獣の死体のように見えた。
 この破壊の犠牲者か。これがオカリナたちが学校に向かった後に行われたかどうかが問題だった。もしかすれば、そこに転がっているのがオカリナかプックルなのかもしれない。
 布を羽織り直していた獣人が動きを止めた。ゆっくりとニャースの方に目を向けた。存在がばれたのか。だが、今ニャースは透明になっているのだ。下手に動きさえしなければ、気のせいだと思ってくれるはずだ。
 ニャースはじっと息を殺した。ただ視線を向けられているだけなのに、全身に悪寒が奔るのだ。震える足が視界を揺らした。雨とは別に、冷や汗が身体を湿らせていく。

71 :

(ここにはにゃんにもいないにゃ。はよぅ、あっち行け。ぜーんぶ、おみゃあの気のせいにゃから!)
 胸中で、必死に相手が去ってくれることを願った。しかし、その願いに応えたのは飛沫を上げる踏み込みの音だった。傍らの大剣を引き抜いた獣人が、ニャースの方へと一直線に突進してくる。見えていないはずなのに、その足運びに迷いはない。
(にゃ、にゃして――!?)
 ニャースは泡を食って、逃走に移ろうとした。しかし、極度の緊張に痺れた足は言うことを聞かない。無理に動かした足は、あろうことかマントを踏み付け、ニャースは背中から地面に大きく転倒した。
 酷く緩慢に視界の風景が曇天へと変わっていく。雨粒がマントを叩く音だけが、やたら大きく聞こえた。
(そうか! 雨ゃ粒で……!)
 倒れながら、獣人がニャースの位置を正確に把握していた理由に気付いた。宙で雨粒が弾けていれば、誰だって怪しむだろう。気付いた所で、もう無意味だが――。
 目の前を鋼の塊が颶風と共に通り過ぎた。中空にその軌跡が一瞬だけ残るも、すぐに雨粒の幕がそれを覆い隠していく。
 転んだ拍子にニャースはマントの加護から抜け出てしまった。宙から浮き出たように、猫の姿が水溜りに現れた。
 主を失ったことで、マントもその白い姿を雨雲の下に曝した。泥水で見るも無残に汚れてしまっている。拾う間もなく、マントは太い足に踏みつけられて泥の中へと沈んだ。
 ニャースは視線を上げた。
 獣人は振り抜いた剣を頭上に掲げ、その棟に左手を添えていた。ニャースを見下ろす細い虹彩は、雨よりも冷たく彼を貫いていた。抵抗する僅かな意気地すら打ち砕く、覇者の視線だった。
 振り上げられた刃は、ニャースに己の死が不可避であることを如実に語っていた。これは絶対の、王の宣告だ。鋼の上に躍る雨粒の一つ一つがはっきりと見えた。
 しかし、死を前にしているというのに、ニャースの心は酷く静かだった。受け入れざるをえない死は、寧ろ生き物を悟りに近い境地へと至らせるのかもしれない。身体から力が抜け、ただ終わりの時を待つ。
 生きることを諦めたとき、死は恐怖ではなくなるらしい。
「……おみゃあは何で殺し合いに乗ったのにゃ?」
 獣人の視線を真っすぐ見返しながら、ニャースは穏やかに問い掛けた。振り下ろさんと蠢いた獣人の腕がぴたと止まる。
「聞いてどうする? 最後の足掻きを止めはせんが、時間稼ぎなら無駄だと思うぞ」
 応える獣人の声は寧ろ優しかった。大きなマントから覗く鎧はボロボロで、手足や顔には幾つものの新しい傷がある。余程の激戦を重ねて来たらしい。しかし、それらの傷は獣人の風格を微塵も殺いではいない。

72 :

 ニャースは小さく笑みを零す。
「そういうのじゃにゃい。ただ、自分が死ぬ理由ぐらい知っておきたいにゃろ」
 目の前に居る獣人は恐怖に駆られてキュウビの目論見にのるような手合いではない。そんな男が参加者全員と敵対してまで殺し合う理由は何か。
 血を好む戦闘狂であるならば、とっくに刃は振り下ろされているだろう。
 かといって、時間をかけて嬲ることを楽しむ嗜虐趣味にも見えない。獣人の隻眼にあるのは、獰猛でこそあるものの、とても理知的な光だ。
 消去法で、キュウビの齎す賞品が目当てということになる。この覇王のような獣が、数十の命を奪ってまでも叶えたい願いだ。興味がないと言えば嘘になる。
 獣人は苦笑を刻んだ。肩に大剣を乗せ、吐息をつく。
「さっさとこの戯れを終わらせるためだ。ロモスの地にて大事な任務があってな、悠長にもしてられん」
「……早く帰りたいだけ、にゃのか?」
「身も蓋もない言い方をすればそうなるな」
 獣人はもう終わりだとばかりに、大剣を構え直した。
 それを見据えながら、ニャースの思考は再び回転を始めた。
 ただ帰りたいだけ――。
 胸中でもう一度反駁する。
 獣人は誰かを殺してまで叶えたい願いがあったわけではない。元の世界へ戻る最短の手段として、殺し合いに乗ることを選択したのだ。
 ただ帰還することが目的ならば、殺し合いに乗る必要はない。殺し以外の代替案を提示できれば――それを相手に納得させられれば、死を免れられるかもしれない。
 事態を切りける糸口を見つけたことで、ニャースの中で生への渇望が狂おしいまでに燃え上がっていく。
「さて、覚悟は――」
「そ、その首輪! 首輪、外したくはにゃいか!?」
 ニャースは口早に叫んだ。再び動きを妨げられた獣人の目に苛立ちが灯る。それを無視し、ニャースは続けた。相手が動こうとする前に、舌で攻め切る。
「き、キュウビはこれが呪法と言っていたにゃ! たとえ最後の一匹ににゃれたとしても、無事還してくれるとは限らにゃい。いや、むしろ還さない可能性の方が余っ程高いにゃ! こんにゃ殺し合いを強要する奴を信用するにゃんて、これっぽっちも出来にゃい。そうにゃろ!?」
「……還さぬのならば、あの魔王を後悔させてやるだけだ」
「考えが足らん奴だにゃー。反抗すれば、キュウビは首輪を爆発させるだけにゃ。そうにゃれば、おみゃあは大事な任務とやらには戻れにゃいにゃー」
 わざと挑発するような口調で告げる。そうやって自分を鼓舞しなければ、舌が固まってしまいそうだった。膨れ上がる獣人の怒気に竦み上がりながらも、ニャースは言葉を重ねていく。
「く、首輪を付けられている限り、にゃーたちはキュウビと同じ土俵の上で対峙することすらかにゃわない。帰るために殺し合いに乗るのも結構にゃが、そりゃキュウビの掌で踊っているだけ。さっきの剛毅な言葉も、け、獣が檻の中で勇ましく吼えているような、もんにゃ」
「……貴様ならば、この首輪が外せると?」
「外せるだけの技術と知識は持ってるつもりにゃ。首輪に機械の類が使われていることも、幾つかの情報から確信を以て判断できる域にまできているにゃ。
 大体、こ、これから、首輪をどこかで手に入れ、研究所で解析する予定にゃった。巻き込まれた獣たちの中で、こういった技術を扱える奴が他にいると思っているのかにゃ!?」
 幾つか嘘に近い事実を織り込みながら告げる。獣人が獰猛に歯を剥いた。

73 :

「いないとも限らんだろ」
「おみゃーはあの線路を走る車が何ゃにで動いているか、知っているにゃか?」
「……魔法には違いあるまい」
「おみゃーはアホか。ありゃ架線から電力を取り込み、主制御機で電圧を制御された電流をメインエンジンに通して、そこで生まれた動力が歯車を回転させて車軸に力が伝達されることで車輪が動いているんだにゃ。
 そんにゃことも分かってにゃい癖に、にゃーを殺して首輪を外すチャンスをふいにするんかにゃ!?
 にゃーを殺して、キュウビに尻尾振ってご機嫌を取る方がいいんにゃか!」
「………………」
 沈黙を雨音が埋めて行く。愚弄され、獣人の隻眼は憤怒に染まっている。獣人の中で、ニャースは惨たらしく何十回も殺されていることだろう。
 掲げられた両腕は爆発を求め、別種の生き物のように細かく収縮している。いつ両断されてもおかしくない。
 それでも殺意の衝動が抑え込まれているのは、獣人が高い知性と理性を有している証拠だ。ニャースの言葉を吟味し、何が一番己の利益となるかを考えている。
 ニャースは唾を無理やり呑み込んだ。もう一押しで、自分を殺さないだけの価値があると思わせられる。
「首輪が解除出来れば、爆破の心配はにゃくなる。それに首輪を外してやると言われて、嫌がる奴はいにゃいにゃ。生き残った全員の首輪が外されれば、キュウビは何らかの動きを見せる筈にゃ。それが脱出の好機ににゃる」
「………………」
「全員の首輪の解除と、おみゃーが皆殺しを完遂させるのとどっちが早いか分からにゃい。にゃけど――」
「……もういい。分かった」
 
 ニャースの言葉は獣人の苛立った声に遮られた。
 構えられていた大剣がゆっくりと地面に下ろされていく。獣人は深く大きく息を吐いた。
「おまえの命、しばし預けよう」
 殺意を全身に湛えたまま、獣人は苦々しく告げた。その言葉を聞いた途端に緊張が解け、膝の力が抜ける。前足で身体を支えながら、ニャースは声を絞り出した。
「ほ、ほんとか!?」
「ああ。だが、首輪が解除できないようであれば、その場でR」
 獣人の大剣の切っ先がニャースの鼻先に向けられる。禍々しい鉄塊の圧力に息が詰まった。剣先はすぐに除けられたが、ニャースの呼吸が再開されるのには数十秒を要した。
 こんな相手を自分は挑発を口にし、取引を申し出たのか。今更ながら、己の無謀さに怖気がはしる。
 獣人は剣を肩に担ぐと、ニャースに立てと告げた。
「こいつは預かっておく。逃げられちゃ叶わんからな」
 
 獣人は踏みつけていたシルバーケープを拾うと、それを自分のデイバッグへと突っ込んだ。逃がしてくれるのではなかったのだろうかと、ニャースは目を白黒とさせた。

74 :

「……もしかして、おみゃーも来る気か?」
「当然だろう。それとも、同行されては不味いわけでもあるのか? あの強きな発言は、やはり嘘か?」
 そうであるならRと、獣人の刃が語っていた。ニャースはぶんぶんと首を横に振って立ちあがる。
「そのためには自由にできる首輪が必要だな。付いてこい」
 有無を言わさぬ声に、ニャースは黙って従った。獣人が向かった先は、あの死体の許だった。長い犬歯を持つ、大型のペルシアンのような獣が胸部を両断されて絶命している。
 断面からは臓器が毀れ、流れ出た血が泥水と混じって周囲に赤黒い池を作っていた。
 その遺骸に、獣人は大剣を振り下ろした。
 斬ると言うよりも押し潰すと言った方が正しい。肉と骨が爆ぜる音が雨の中に響く。跳ね飛ばされた頭部が泥水の中を転がった。
 獣人がその頭部を拾い上げ、首輪を丁寧に抜いていく。ニャースはというと、膝をついて声もなく嘔吐していた。オカリナらと何事もなく合流していたとしても、似たような光景を目にすることになった筈だが、それでも直視し続けるなど無理だった。
 しかも――あれはオカリナかプックルの可能性だってあるのだ。顔を上げて死体を見る。力なく横たわった下半身には毛皮に包まれた睾丸があった。
(あれは……違うにゃ。オカリナはメスにゃし。あの獣の顔は、プックルというよりもゲレゲレという感じにゃ。だから……薄情者の二匹は無事に――)
 口の中で弁解を呟いていたニャースの許に首輪が放られた。泥水の中に落ちた首輪には小さな肉片と獣毛がこびりついていた。それを見て、出しつくしたはずの胃液が再び喉を焼く。
 その様子を気に掛けることもなく、獣人は大剣についた血脂をマントで拭った。
「道具は揃ったな。一度、オレの連れの所へ戻る。それから研究所とやらに行くぞ」
 反応しないニャースに、獣人がマントを打ち鳴らす。その音に弾かれたようにニャースは身を起こすと、首輪を拾った。
 それを見ることもなく、獣人は踵を返して北の森へと入っていく。ニャースが付いてくるかどうか、確認する素振りすらない。
 本当のところ、他者がどう動こうとあの男には関係がないのだ。意に沿わなければRだけ。それを可能とするだけの力は持っている。今ニャースが逃走すれば、すぐさまあの大剣が飛んできて、ニャースの身体は簡単に打ち砕かれてしまうだろう。
 それに対して、ニャースには獣人の言葉に従うより他に命を繋ぐ術がない。オカリナたちが人間を優先したように、自分もまた命のために結局楽俊らを見捨てるのだ。
 ニャースは顔をしわくちゃにしながら獣人を追い出した。泣いているのか、篠突く雨のせいで自分でも分からない。
 風に惑った雨は隔てなく、全てを洗い流そうとしている。
 首輪が腕の中でぬちゃぬちゃと音を立てて揺れていた。

75 :

【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中〜大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、世界の民話、治療用の薬各種、不明支給品0〜2個(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す……だけどもし――。
1:C-4の学校に向かい重症の男を治療する。
2:そこでニャースとプックルを待つ。
3:オーボウと、ピカチュウの知り合いを探す。
4:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。
※オカリナの考察
・無意味に思えるアイテムを混ぜて、誰かが参加者に何かを知らせようとしているのではないか。
・キュウビ一味は一枚岩ではない。
・縁者を人質にとり、殺し合いを強制してくるのではないか。全員ではないにしても、部外者が拘束されている。
※プックルの反論
・呪法=殺し合いとは限らない
・殺し合いは目くらましかも

【ニャース@ポケットモンスター】
【状態】:健康、疲労(中)、びしょ濡れ
【装備】:キラーパンサーの首輪
【道具】:支給品一式、エルルゥの薬箱@うたわれるもの(1/2ほど消費)、野原ひろしの靴下@クレヨンしんちゃん、麦の入った皮袋@狼と香辛料、アマテラスの支給品一式(食料:ほねっこ)と不明支給品1?3個(確認済)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出
1:クロコダインに従う
2:研究所で首輪の解析
3:アマテラスや楽俊、ついでにオカリナたちが心配
[備考]
※異世界の存在について、疑わしいと思いつつも認識しました。
※キュウビや他の参加者をポケモンだと考えていますが、疑い始めています。
※アマテラスが、ただの白いオオカミに見えています。
※ピカチュウたちと情報交換しました。
※楽俊の仮説を知りました。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※首輪と死体がプックルのものだと気付いていません。


76 :
【クロコダイン@ダイの大冒険】
【状態】:疲労(小)、多数の打撲(中。特に腹部)、右目失明(治療済)、多数の浅い裂傷(小。特に右腕)
【装備】:覇陣@うたわれるもの、王者のマント@ドラゴンクエスト5、クロコダインの鎧(腹部と左肩の装甲破損) 、眼帯(ただの布切れ@ドラゴンクエスト5、ビアンカのリボン@ドラゴンクエスト5)
【所持品】クロコダインの支給品一式、シルバーケープ@魔法少女リリカルなのはシリーズ
【思考】
基本:全参加者の殺害。許されるなら戦いを楽しみたい。でも首輪が解除されたのなら……
1:酒場に戻る
2:研究所へニャースを連れて行き、首輪を解除させる。
3:シエラが今のままならば契約は解消する? それとも悩みを聞いてやる?
4:イギーは今度こそ殺害する
5:シエラとラルクの実力が楽しみ
最終:キュウビの儀式を終わらせ、任務に戻る
【備考】
※クロコダインの参戦時期はハドラーの命を受けてダイを殺しに向かうところからです。
※参加者は全員獣型の魔物だと思っています。
※キュウビを、バーンとは別の勢力の大魔王だと考えています。
※身体能力の制限に気づきました。
※戦闘における距離感を大分取り戻しました。
※しばらくは右腕だけで覇陣を扱うのは難しそうです。
※シルバーケープは泥水で相当汚れていますが、使用に問題はありません。

※D-2の道付近に、三分割されたプックルの死体とデイバッグ{支給品一式×2、柿の葉っぱ@ペルソナ3、きのみセット@ポケットモンスター(クラボのみ、カゴのみ、モモンのみ、チーゴのみ、ナナシのみ、キーのみ)}が落ちています。
炎の爪@ドラゴクエスト5は前足に装着されています。
※D-2の地面は陥没したり丸太が突き刺さっていたりと荒れています。

【柿の葉っぱ@ペルソナ3】
巌戸台駅前商店街にある古本屋「本の虫」の北村老夫妻にとって息子との絆の証ともいえる柿の木の葉っぱ。柿の木は月光館学園の中庭に植えられている。


【キラーパンサー@ドラゴンクエスト5 死亡】
【残り26匹】

77 :
投下乙です
序盤は世界観の違いの出た考察がよく出来ててよかったです
そのまま終わるかなと思ったらキラーさんが…
ニャースも死ぬかと思ったら何とか生きてるがみじめと言うか可哀そうと言うか…

78 :
投下乙
さすがにクロコダインは強いな。
これでまだ複数ある奥の手を使用していないんだよな
残念ながらキラーさんは思い出の品と主人のマントを取り返せず退場か

79 :
「あの鳥は『ペット・ショップ』というのか。確かに危険な奴であっていたようだな」
俺は名簿を読みながら、書かれている性格や経歴をもとに危険かどうか見極めている。
赤カブトは討ち取ったものの名簿を見る限り危険な奴はまだ何人か残っている。
ペット・ショップという深夜頃俺達に襲いかかってきた鳥。
ミュウツーという全ての人間を憎しんでいるミュータントのようなポケモン。
バーンが率いる魔王軍の一員であり、六大軍団の一つ「百獣魔団」の団長であるクロコダイン。
クロという半分機械仕掛け(サイボーグと呼ばれるものらしい)の暴れん坊な猫。
とてつもなく陽気だが時として冷酷な一面を見せるケットシー。
邪竜ティアマットとの契約により他の竜を狩るドラグーン、ラルク。
人間ではなく兎だったようだが『う詐欺』と比喩されるほどの嘘付きである因幡てゐ。
こいつらは危険視ないし警戒しておくことにこしたことはないと判断する。
また他に気になったことは宇宙からきた侵略者と書かれている2人がいたことだろう。
読んだ時一瞬ラヴォスのことが頭をよぎるが、多分関係はないだろう。
手足の生えたダルマと星に巣食う寄生虫は外見だけでも違いすぎる。
しかしそのうち一人は見覚えがある。
俺たちに向かって銃を乱射してきた赤いダルマの宇宙人だ。
名簿によればギロロという名前らしい。
戦闘の知識は豊富なので敵に回すのは避けなければいけないな。
「これで全員か」
『マモナク、C−5ノ駅ニ着クンダベ! オ降リニナル方ハ危険ナノデ、足元ニ気ヲ付ケテ降リルンダベ』
俺や死者を含む全員分の内容を読み終える。
と同時に到着の合図が電車内に響き渡った。
電車を降りると、壁にメモらしきものが貼ってあるのが目に入る。


80 :
「何…だと…」
メモを読んだ俺は驚いた。
そこには剣を持っているカエル男と背の低い紫色のカエル、日本犬の3人組は危険人物かもしれないということが書かれていたからだ。
どう考えても俺や銀、グレッグルのことだとしか思えない。
「なぜこんな事が……まさかあの時のことが…」
考えられる原因はただ一つ、銀がいざこざを起こしたことだろう。
しかし、その直前銀はてゐと2人で何やら会話をしていた。
その時にてゐは銀を怒らせる嘘をついたのだろう。
その後、ギロロが銃で襲いかかってきた。
だから俺はウォータガを目眩ましにして、その隙に銀とグレッグルを連れて逃げだした。
となると、このメモはギロロが俺たちを危険視したまま残したものである可能性が高いということか。
となれば再びギロロに会うことが出来たら、しっかりと話をつけるべきだな。
誤解が解ければきっと心強い味方となってくれよう。
だが、誤解が解けなければ……その時はやるしかない。
このメモを読んだ誰かに誤解されるのを防ぐため、
俺はメモを剥がし駅の中を一通り調べるが、
闘いが起こった痕跡は見られず俺のほかには誰もいない。
ただ律儀にも同じ内容が書かれたメモが何か所かに貼られていたため、
それらのメモも剥がし駅を後にする。

81 :
「これは…地下か。少し調べたほうがよさそうだな」
放送までまだ時間があるので地下を調べるため、俺は縄が切れないように慎重に梯子を降りていく。
下まで降り周囲を見渡すと鍾R洞になっている。
ひんやりとした空気が肌に触れる。
周囲は薄暗いので壁に手をつけ慎重に進んでいく。
下には水が流れているため歩くとジャブジャブ音がする。
「どんどん深くなってるみたいだな」
進めば進むほど少しずつ水位が上がっていく。
最初は靴底程度だったが、踵、足、ふくらはぎ、膝とどんどん水に浸かっていく。
腰が浸かるほどに深くなったところで開けた空間に出てきた。
通路と比べると天井は高くなっており、ヒカリゴケのおかげで周りも明るくなっている。
そのおかげなのか神秘的な雰囲気が漂っている。
「出入り口はここ以外に2つか」
周りを見渡すと通ってきた道以外にも2つの通路がある。
しかし、なぜ鍾R洞がここに…?
考えられるのはここを逃げ道として使用するということぐらいだが…。
見張りが危険人物を見つけた時、ここからだと気づかれずに逃げることが出来る。
それに何らかの拍子にログハウスが火の海に覆われても、恐らくここまで火の手は追ってこない。
やはりここは抜け道と考えるべきだな。
問題は扉が重いということか。
例え気づいていたとしても力がなければ扉を開けることすらできない。
それに他の通路がどこに通じているかも気になるところだが…
「……一旦戻った方がいいな」
放送の時間が近いことを考えひとまず引き返す。
ログハウスに戻り柱時計をみると、間もなく放送の時を告げようとしていた。


82 :
【C-6 ログハウス内/一日目/正午(放送直前)】
【カエル@クロノトリガー】
【状態】:健康、多少の擦り傷、疲労(小)、魔力消費(小)、寂寞感、下半身びしょ濡れ
【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、マントなし
【所持品】:支給品一式、ひのきのぼう@ドラゴンクエスト5、マッスルドリンコ@真・女神転生、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、銀の不明支給品(0〜2、確認済)、
石火矢の弾丸と火薬の予備×9@もののけ姫 、マハラギストーン×3@真・女神転生if、風雲再起の不明支給品(0〜2、確認済)、参加者詳細名簿、ペット・ショップの不明支給品(1〜3、確認済)、
スピーダー@ポケットモンスター×6、グリンガムのムチ@ドラゴンクエスト5、ユーノのメモ
【思考】
基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する
1:放送を聞く。
2:アマテラス、ピカチュウ、ニャースの捜索。
3:ギロロにあったら話をつけて誤解を解く。
4:余裕があれば鍾R洞内を調べる。
5:撃退手段を思いついた後に深夜に見かけた鳥を倒しに行く。
※グレッグルの様子から、ペット・ショップを危険生物と判断しました。
※銀がヒグマの大将を殺したというてゐの言葉を聞きました。
※ツネ次郎と情報交換をしました。
※異世界から参加者は集められたという説を知りました。
※参加者は同一世界の違う時間軸から集められたと考えています。
※天容の笛@忍ペンまん丸、しらたま@ポケットモンスターとパルキア@ポケットモンスターの存在を知りました。
※参加者名簿を読み、ペット・ショップ、ミュウツー、クロコダイン、クロ、ケットシー、因幡てゐ、ラルクを危険ないし要警戒と認識しました。
※ログハウスの下にある鍾R洞は抜け道のようなものと推測しています。
※C-5駅に貼ってあったユーノのメモはカエルが全て回収しています。
※ログハウスは2階建てのようです。また地下に鍾R洞があります。
※鍾R洞内には開けた空間があり、そこに続く通路は3つあります。そのうち1つはログハウスに続いていますが、他の2つがどこに続いているのかは不明です。

83 :
代理投下終了
投下乙です
こっちも地下道登場か
そしてWANTED状態に気付いたカエル
まったくギロロはロクなことしてないなあ
指摘としては、同じ名簿を見たはずのツネ次郎たちがチョッパーを来歴から危険な獣とみている節があるので、
彼に関しても危険と判断し得る解説がなさられているのではないかと思うのですが。

84 :
代理投下乙です
尻に火が付いてることに気が付いたカエル
鎮火出来たらいいんだが…

85 :
投下乙
周りにとりあえずだれもいないみたいだししばらく調査になりそうだな
ところで不明支給品の多さを見て思ったが、赤カブトの支給品は研究所放置だっけ
いまのところ全体でどのくらい不明支給品が残っているんだろ

86 :
不明支給品まとめはwikiにあるよ
ttp://www6.atwiki.jp/animalrowa/pages/155.html

87 :
 静かに、しかし滑るように雲が上空を動いていく。蒼穹に溶け込むような白雲は千切れ飛び、黒く重たい雨雲が段々と勢力を広げようとしていた。
 それを見上げながら、因幡てゐは苦々しげに口を曲げた。雨音というのは、聴力に長けた獣にとっては天敵だ。近づく捕食者の足音、息遣い、筋肉の躍動といった、生き残るために必要な情報が多少なりとも損なわれてしまう。
 雨で役に立たないような耳を持っているわけではないが、少しでも自分が後手に回るような事態は避けたかった。
 てゐは学校へと視線を移す。出来ることならキメラのつばさで行ける場所を増やしたかったのだが、この崩れようでは辿り着く前に降り始めることは十分にあり得る。
 一度校舎に入って、雨をやり過ごすのが賢明だろうか。てゐは肩を竦めて、校庭の隅を通りながら昇降口へと近づいた。
 夜に訪れた時と違い、昼の校舎は古ぼけた佇まいを弱まった日差しの中に曝している。流れる雲の陰が落ちた校庭を、風に煽られた砂煙が駆け抜けて行った。
 昇降口には、彼女の知らない臭いが残っていた。そして、それは入って行ったきり出て来た様子はない。別の出入り口を用いたんでない限り、この臭いの主はまだ校舎の中にいることになる。
 てゐは昇降口の陰に身を滑り込ませると、小さく頭を抱えた。
(どうしよう……)
 てゐは今の所持品に思いを巡らせる。治療薬に毒キノコ、毒薬、離脱用具――そして赤い宝石。どれも身を守るには役に立たないし、攻撃にすら使えない。利便性があるのはキメラのつばさぐらいだ。それでも行くことが出来るのは、学校か町の二か所だけだ。
 もうギロロたちはいないと思われるが、再会する危険は避けたい。ユーノはどうでも、ギロロは前以上に疑念を持っててゐを見る筈だ。格段に動きづらくなる。
 かといって、彼女の妖術は虚仮脅しや目暗ましになっても、実質的な決め手にはならない。そもそも、それが出来るのならば、こんな面倒な行動は選択していない。
(ひとまず、実際に誰かいるのか確認しましょ。いないならそれが一番だし)
 長い耳に手を当て、てゐは耳に神経を集中した。
 風が窓枠を叩く音。それが廊下で反響する音。そして、段々と小さくなる残響。
 あらゆる音の持つ情報は、てゐの頭の中で明確な形を持ち、三次元の空間に配置されていく。
 その空間の中に、明らかに異質な音が存在していた。がちゃがちゃと騒がしく不協和音を奏でる音源が、廊下を移動して行く。
 それ以外に、生物の音はない。音の主は給食室へと向かったようだ。少しだけ逡巡するも、てゐは給食室まで行ってみることにした。距離を保って行動する限り、自分に危険はない。そして、自分はそれが出来る。
(いざとなれば、キメラのつばさを使えばいいことだしね)
 てゐはデイバッグをしっかり抱えると、柔らかく跳ねるような歩調で廊下を音もなく進んでいった。
 移動しながらも、五感の大部分は耳に割いている。その甲斐あって、給食室の音を酷く明瞭に拾うことが出来た。それはまるですぐ隣で耳を欹てているような感覚である。
≪あ、あの、大丈夫でありますか?≫
 少し癖のある男の声だ。その声は、明らかに第三者へと向けられていた。
 他にも生物がいたのかと、呼吸が少し乱れる。しかし、鼓動の音どころか、息遣いすら拾えないのは変だ。一旦足を止めて、てゐは音に集中する。

88 :
≪あ、あの〜、我輩の声が聞こえていないでありますk…え?≫
 突然、男の呼吸が乱れた。変化を感じ取り、てゐは足を速める。給食室は、もう目と鼻の先だ。
 給食室の少し手前に座り込み、てゐは目を閉じた。もう声どころか、心音すら聞きとれる。給食室に居るのは確実に一人だ。
 男の鼓動は早鐘を打つように収縮を繰り返していた。獲物が追い詰められた時のような、緊張と恐怖に縛られた音色――。
(一体、何があったのよ……)
 訝しげにてゐは眉をひそめた。あまりにも急な変化だ。男は、給食室に入り誰かに声を掛けていた。その誰かが本性を現して襲い掛かってきたか。そうだとしても、呼吸が一つなのはおかしい。筋肉や関節が立てる音の癖が一種類なのもおかしい。
 これが聞きとれないようならば、自分はうさぎ失格だ。
 すると、男が大きく息を吸い込んだ。
≪我輩は…我輩はなんて愚かな間違いを犯してしまったでありましょうかぁ!≫
 大声が鼓膜を大きく揺さぶった。何十回と空間を跳ねまわった叫びは、てゐの脳を掻きまわしていく。集中し過ぎていたために、てゐは耳元で爆竹を鳴らされたようなショックを受けた。
 もし立っていたのなら、今頃転倒していたかもしれない。どうにか意識を繋ぎ止め、てゐは呼吸を整えて行く。
 その間も、男は独り言を口にしながら慌ただしく音を響かせていた。
≪こ、こういうときは慌てず騒がず忍び足、我輩にできることをするであります≫
 物を盛大にひっくり返し、それを荒らし回るような音が生みだされていく。
≪これで我輩の責任が少しは軽くなるであります。さて、後は……≫
 そう呟いた男の鼓動は、幾許か落ち着きを取り戻していた。そして男は何処か、狭い空間に入って行ったようだ。
(責、任……? どういうことよ)
 脂汗を浮かべながら、てゐは思考を巡らせる。男は誰かに話しかけていた。しかし、誰かの反応はなく、てゐも聞きとれなかった。
 しかし、その誰かが音を発することなく存在していたのなら――。そんな生き物は存在しない。生きているのであればの話だ。
 その後、男の鼓動は急に落着きを失っていった。そして、先程の絶叫だ。
 ここから推理できることを、順序立てて組みたてて行く。まず、男は給食室で誰かを発見した。その時点で、その誰かは生きていたのだろう。一旦そこで、男は誰かとは別行動をとった。そして戻って来た時には、その誰かは死んでいた。
 健康な者がそう簡単に死ぬことは考えにくい。愚かな間違いという言葉も合致しなくなる。
 別行動中に襲われたか。こう考えると、愚かな行動とは別行動を取ったことと解釈できなくもない。しかし、荒らし回る理由がない。
 ショックで錯乱したか。だが、言動ははっきりしていた。それに、出来ることと荒らし回ることがイコールで結ばれない。
 何より、責任という言葉が当てはまらない。
 ふと、てゐの鼻が刺激臭を嗅ぎ取った。消毒液か何かのような、あまり気持ちのいい臭いではない。それに加えて、もっと別の薬品の香も混じっている。食品を置く場所にはそぐわない臭いだ。
 これらの臭いは男が運び入れたのだ。ここから導き出されるのは、男が発見した誰かを治療しようとしていたということだ。男は何らかの治療を施した後で、席を外した。しかし治療は間違っていて――もしくは手遅れで、発見した誰かは息を引き取っていた。
 助かると思っていた相手が死んでいたのだ。ショックも受けるだろう。
 先程の荒らす音は、自棄を起こしての行動と推測できる。もしくは自分の無力さに腹でもたったか。
 いや、責任という言葉が、この推理でも浮いてしまう。

89 :
(為すべき治療を怠ったのかもね……。一連の行動で責任が軽くなるっていうのが分からないけれど。どうやって責任を軽くしたんだろ。ま、何かしら誤魔化したんでしょうね)
 とはいえ、正直なところ、治療が間違っていたとかはどうでもよかった。
 重要なのは、まず男が殺し合いに乗った存在ではないこと。そして、警戒すべき危険な人物でもなさそうなこと。あの慌てぶりから見るに、どちらかというと小心者だと推測できる。
 これが一番重要なのだが、そんな小心者が誰かを殺してしまった。過失なのだろうが、その事実を隠蔽しようとしている。
 ここから推察できる人物像は、小心者の文明人といったところか。
 その隠したい事実が、第三者に知られてしまったとしたらどんな行動を取るだろう。まず、口封じはない。追いつめればそうなるかもしれないが、逃げ道を用意してやれば悦んでそっちを選択するだろう。
 有利に取引できるかもしれないし、この事実自体が男の悪評を吹聴するのに大いに役に立つ。
(それじゃ接触してみようかしらね。出来るだけ偶然を装って、と)
 てゐは静かに立ち上がると、給食室へと近づいた。開きっぱなしの扉から中を覗き込む。奥にある金属製の扉が開いており、その中から、騒がしい足音が響いて来ていた。
 そして、床には引き締まった体つきの人間の男の死体が寝かされている。その周囲には治療薬と思わしき品々がぶちまけられていた。
 てゐはにやけそうになる頬を噛みしめ、息を深く吸った。
「ねえ、誰かい――きゃ、きゃあああああああああ!?」
 その大声に、扉の向こうの男が盛大にすっ転んだ音が響いた。

【C-4/学校・給食室内/1日目/午前】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】健康、錯乱(小)、動揺
【装備】:ジムのガンプラ@サイボーグクロちゃん
【道具】ガンプラ作成用の道具
【思考】
0:ビックゥゥゥゥゥゥゥウウウウッ!!!!
1:次は何をするべきか…
2:とりあえずギロロと合流したい
3:安全な場所でガンプラを作る
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。

【因幡てゐ@東方project】
[状態]:健康
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、きずぐすり×3@ポケットモンスター、ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ×2@DQ5、
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)、伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き、ニンジン×20
[思考]
基本:参加者の情報を集めて、それを利用して同士討ちさせる。殺し合いに乗っている参加者に対しては協力してもらうか、協力してもらえず、自分より実力が上なら逃げる
1:ケロロを脅して、交渉を有利に進める。
2:参加者に会ったらギロロたちの悪評を広める。
3:ぼのぼのと遭遇したらヒョウヘンダケを渡す。
【備考】
※銀、赤カブト、カエル、グレッグルの情報を得ました。
※銀、カエル、グレッグルは死んだと思っています。

【伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き】
伝説の剣の鍔元に嵌めこむルビー。聖なる存在の魂を吸い込むことが出来る。

90 :
以上で代理投下終了です。
ケロロ、てゐに目を付けられたか…
それにしてもてゐはステルスに
使えそうな情報どんどん集めていくなあw

91 :
投下乙
てゐ怖いな。
あちこちに火種を撒くし危険動物過ぎる

92 :
投下乙です
神視点だから把握できるんだろうがケロロはこれでてゐに利用されたら…本当にいい所がないなw
誤解の火種とかも抱えてるし延焼したら…

93 :
「ふざけんなああぁぁぁ――」
 己の喉から発せられているはずの声が、耳の奥から掻き消されていく。罵声は幾つにも分裂し、風が掠れたような音へと変じて行った。そして訪れたのはまったくの無音である。
 己の息遣い、心音すらも響いてこない――完全なる静寂がアライグマの父を覆い包んだ。
 しかし、アライグマの父から消え失せたのは音ばかりではない。視界を包む彩、地を踏みしめる感触、鼻を濡らす臭い、体毛を揺らす空気のうねり――そして、自分の身体の存在すら感じ取れなくなった。
 何も見えず、何も聞こえず、何も感じられない。外と内を隔てていた壁が取り除かれ、全てが混ざり合っていくようだ。
 剥き出しの意識が虚空に放り出されたような心許なさに、自身を押し潰されそうになる。加えて、その意識をも崩しさるような揺らぎが突如加わった。為す術もなく掻き乱されて、自己が摩耗していくような感覚に震えが奔る。
 だが、それも一瞬のことだった。霧が晴れるようにして、光がアライグマの父の網膜を焼いた。同時に、己と世界を構築していた全ての要素が瞬く間に取り戻されていく。
 五感を取り戻した時――アライグマの父の身体は宙を舞っていた。
「――ふんぬぅ!」
 身を捩って体制を整え、どうにか四肢で床を掴むことに成功する。衝撃が尻尾にまで響き、しばし悶絶することになったが。
 痛みが治まって、アライグマの父は漸く周囲を確認した。
「どこだ、ここ……」
 先程と風景は一変していた。彼がいるのは、最初に集められた空間と似たような広い部屋だった。襖は開け放たれており、欄干の向こうには山々が連なっているのが見える。その反対側の襖はぴたりと閉じられていた。
 天候も急変したようで、回廊から吹き込んでくる雨が床を濡らしている。
 どこか、とてつもなく高い場所に来てしまったらしい。
 茫然とするアライグマの父の髭を、湿った風が撫でて行った。
「何処ッテ、天守閣デスヨォ。旦那ァ」
 憶えのある調子の良い声が耳元から聞こえた。跳び上がるようにして振り向けば、一枚の札がふわふわと燐光を放ちながら浮かんでいる。
「てめえ、なん――」
「イヤネ、アッシ ハ 旦那ヲ ドッカ他所 ニ 転移サセル ツモリ ダッタンデスゼ?」
「そんなら――」
「ダッタンデスガァ、転送途中 デ 横槍ガ 入ッチマッテ。早イ話ガ、アッシ ガ 怒ラレチマイヤシテネ。アヤウク 消サレッチマウ所デシタゼ。勝手ナ戯レデ 旦那ノ ヤル気ヲ殺イジマッタンダカラ、致シ方アリヤセンガネェ」
 けらけらと笑うように、疾飛丸は捲し立てる。それを手で叩き落す様にして遮り、アライグマの父は声を荒げた。
「ンなこと、どうでもいいんだよ! オレは帰るっつったよな!? もうてめえと駆けっこなんざ、やらねえぞ!?」
 口角泡を飛ばすアライグマの父に対し、疾飛丸は小首を傾げるように身体を傾けた。
「ワーッカッテマスヨォ。ダカラネ、旦那ニハ、モウ景品ヲ渡シチマオウッテ話デサァ。ソモソモ早駆ケハ、退屈シテタ アッシノ思イ付キ。コノ城ニ 辿リ着イタ時点デ、旦那ニハ 景品ヲ 手ニスル資格ガ 元々アッタンデスヨ」

94 :
 悪びれた様子もない口調に、アライグマの父のこめかみに青筋が立っていく。要するに、あの競争は無駄だったわけである。もっとごねていれば済んだという話だ。
 もっとも、食べ物には有りつけなかっただろうが。
 とはいえ、何かが貰えるという状況の変化に罵倒は腹の中でみるみると小さくなっていった。舌打ちし、アライグマの父は半眼で疾飛丸を睨む。
「……思い付きのわりにゃ、丸太とか周到に準備していたようだが」
「少シ前マデ 遊ビ場ニ ナッテヤシタカラネエ、此処」
「遊び場……?」
「サテサテ! 時ハ 金ナリ 烏兎怱怱、駟ノ隙ヲ過グルガ若シッテェ言イマスカラネ。トット ト 済マセチマイヤショウ」
 アライグマの父の疑問の声を無視し、疾飛丸は声を張り上げた。先程と打って変わって、疾飛丸の態度には愛想がなくなっているようだ。早駆けに興じない輩には用はないと言わんばかりだ。
「旦那、ツイテ来テ クダセエ」
「いや、持ってこいよ……」
 アライグマの父の言葉を無視し、疾飛丸は閉じられた襖の方へと飛んでいく。彼が近づくと、手も触れていないのに――もっとも、触れる手がないのだが――襖はすすと音を立てて開いた。
 釈然としないまま、アライグマはその後を付いていく。言いなりになるのも腹立たしいが、下に降りる手段をこれから探すのもまた面倒くさい。
 精巧な意匠の施された鴨居を潜ると、その先の部屋は畳の敷き詰められた大広間であった。天井も異常なほど高い。
 その大広間の中央に、大きさの違う二つの葛篭が置かれていた。
「なんじゃこりゃあ……」
 大きい方の葛篭を見上げ、アライグマの父は声を漏らした。高さも幅も三メートル以上あるだろう。ちょっとした岩なら包みこめそうな程だ。
 小さい方の葛篭とて一抱えほどの大きさがあるのだが、もう片方の大きさが甚だしいために酷く小さく見える。
 この葛篭が、キュウビの用意した“良いもの”なのか。訊くと、まさか。と疾飛丸は身体をゆすった。この中に入っているものだと笑う。
「――サテ、旦那。大キイ葛篭 ト 小サイ葛篭。ドチラ ニ 致シマス?」
 二つの葛篭の中間で、疾飛丸がふわふわと浮きながら尋ねて来た。ぽかんと開けていた口を閉じ、アライグマの父はひとつ咳払いをした。夜叉猿たちの話が、より現実味を以て目の前に鎮座している。
 それも二つもあるのだ。アライグマの父は鼻を鳴らした。
「そりゃ、両方に決まって――」
「ソイツァ、駄目デサァ。ドッチ カ シカ、選ベマセンゼ。葛藤ニ 打チ勝ッテ 手ニ入レタ モン ダカラコソ、 有難味 ガ アルッテ モンデス」
「………………。そんじゃ選ぶから、中身教えろよ」
「ソリャア、開ケテ ノ オ楽シミデ。ドッチモ“良イモノ”デスゼ。ソイツァ保証シマサァ」
「………………」

95 :
 顎を擦りながら、アライグマの父は荒々しく息を吐いた。中身が分からないのでは、選ぼうにも選ぶことはできない。疾飛丸の都合に付き合わされたというのに、この仕打ちかと苛立ちが募る。
 視線に怒気を込めて疾飛丸を見やるが、本人は何処吹く風といった調子で、上下に無意味に揺れているだけだ。
 睨みながら唸り、アライグマの父は大きい方の葛篭を選択した。手に入れた後で、すぐに小さい方も盗んでしまえばいい。疾飛丸には手も足もないのだから。
「コッチ デ 宜シインデ?」
 念を押す様に疾飛丸が確認する。それに頷いた途端、小さい方の葛篭が靄に包まれるように掻き消えた。思わず唸るが、相手が普通でないことを失念していた自分が迂闊だった。
 そんなアライグマの父の態度に、不思議そうに疾飛丸が身体を傾ける。アライグマの父は手を振って誤魔化した。
 疾飛丸自身どうでもよかったのか、すぐに大きい方の葛篭に向き直った。
「ソレジャ、御高覧シテ モライヤショウ。コイツガ 旦那ヘノ 贈リ物デサァ!」
 疾飛丸の声と共に蓋が動き、葛篭の四面はぱたぱたと音を立てて倒れ込んだ。
 その中から現れた漆黒の巨人が、片膝をついたまま、その虚ろな眼窩をアライグマの父に向けていた。


【A-2/キュウビー城・天守閣/一日目/正午】
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血
【装備】:ディバック
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:積極的に誰かを襲うつもりはない……?
0:なんじゃ、こりゃあ!?
1:観覧車を自由に動かす方法を探す。
2:息子たちが心配。
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※アライグマの父が選んだ大きい葛篭には【アヴ・カムゥ@うたわれるもの】が入っていました。しかし、別の参加者が大きい葛篭を選んだ場合、同一のものが入っているとは限りません。
※アヴ・カムゥの外見はクンネカムンの一般兵と同様のものです。機体の他に、一般兵装の長刀が一振り付いています。

【アヴ・カムゥ@うたわれるもの】
旧文明の技術がつぎ込まれた、全長5mほどの有人生体兵器。ほぼ全身を分厚い装甲に覆われており、正攻法で倒されることはまずない。
首の後ろの露出部から搭乗する。内部はゲル状の物質に包まれており、搭乗者はゲル状の物質を介して自身と機体を神経レベルで接続し、同化することで操縦できる。
故に機体のダメージは感覚的にではあるが、搭乗者にフィードバックしてしまう欠点がある。
早い話が、どこぞの汎用人型決戦兵器と似たようなもの。
アヴ・カムゥの存在が、最弱種族であるシャクコポル族の独立を成功させ、単一民族国家クンネカムンが三大国家の一つになるまでに勢力を広げさせた。
クンネカムンでは、先代皇の願いを聞き入れたオンヴィタイカヤンによって授けられたと伝えられている。
原作に登場する機体は、ウィツアルネミテアの「分身」との契約によって齎されたものであるためか、契約関係にあるシャクコポル族にしか動かせない。

96 :
以上で代理投下終了です

97 :


98 :
(一)
 かたかたと戸板が乾いた音を立てる。
 クロコダインが帰ってきたのかと、シエラは顔を上げた。そして、億劫そうに視線だけを板戸へと向ける。
 小さな灯りに照らされたその目には光が無く、そこに溜まっていた憔悴の色は身体全身を覆っていた。今にも砕けてしまいそうに、彼女の瞳は儚く揺らいでいる。
 これまでか。と、シエラは皮肉気に口を歪めた。
 約束の刻限までに、己の気持ちに決着を付けることが出来なかった。それどころか、彼女の心は別れた時よりもそぞろで、あちこちがひび割れている。
 獲物を仕留めるどころか、まともに剣を振るえるかどうかも怪しい。
 “足手纏い”のまま、漫然と時間を過ごしてしまった。
 これで、クロコダインとの契約は解消となるだろう。彼の隻眼は失望に歪むだろうか。それを見るのも悪くないように思えた。
 
 しかし、扉はいつまで経っても開けられることはなかった。また戸板が音を立てる。今度は大きく軋みを上げた。
 どうやら風の悪戯であったらしい。落胆とも安堵ともつかない吐息が、シエラの口から毀れる。
 注意を向ければ、外から竜の咆哮のような音が響いてきていた。強い風が出て来たようで、小屋のあちこちで似たような音が奏でられている。ともすれば、それは亡者たちの糾弾の声にも聞こえた。
 愁嘆と、憤怒と、怨嗟と、嘲弄と――幾重にも重なる弾劾の礫は、シエラの心を撃ち砕こうと、彼女を取り巻いている――。
 シエラは首を振って、その幻影を払った。動作に合わせて菫色の髪が、さらさらと躍る。顔を伏せたまま、彼女は奥歯を噛みしめた。
 自虐は心地よい。いくらでも己を、悲劇の登場人物に飾ることが出来る。可哀想な自分を演じれば、そこで思考を停止することが出来る。
 しかし――いい加減にしろと、頭の隅で何者かが唸り声を上げた。
 自分は――堕ちた。美しき白竜に仕えるドラグーン。弟の誇る姉。そのいずれにも、もう戻れない。光はもう、自分の掌から全て毀れ落ちてしまった。
 だから――全てを諦めるのか。
 ラルクを生き残らせることが方便だったとしても、それを方便のままで終わらせるのか。
 
 自虐の愉悦に身を揺蕩わせ、全てに背を向けるのか――奪った命に報いることもなく、己の罪業に背を向け続けて。
 それに甘んじるのならば、外道にすら劣る領分に足を踏み入れることになる。
 何より、これでは己を相棒と呼んだ戦士への侮辱に他ならない。
 
 シエラは勘定台の上に目を滑らせた。クロコダインが置いていった酒瓶に目を止める。その琥珀の肌は、灯りを照り返して艶めかしく輝いていた。
 シエラは立ちあがると、ふらつきそうになる足に力込めながら、酒瓶へと近づいた。
 クロコダインとはただの協力関係ではない。提案こそシエラからではなかったが、彼に誇りを差し出させて契約を交わしたのだ。
 そして、クロコダインは戦士の矜持も捨てて、シエラとの契約を遂行しようとしている。それに応える努力もせずに、ただ自分の首を差し出して自己満足に浸るのか――。
 
 己には、契約を遂行する義務がある。それにはまず、遂行できるまでに調子を戻さなくてはならない。
 シエラは酒瓶を手に取ると、雫が胸毛を濡らすのも構わずに中身を喉へと流し込んだ。

99 :

(二)
 ニャースを出迎えたのは芳しい麹の香だった。小さな仄灯りに照らされる店内は、質量を持った影が犇めいているようで、必要以上に狭く感じさせる。
 渦を巻く芳香の中心に、女が一人、勘定台に凭れかかっていた。乱れた頭髪の中から覗く女の相貌は犬のそれだ。表面に爬虫の皮膚を貼った簡素な鎧を着込んではいる。
 しかし、肌が露出している部分の方が多く、実用性には乏しそうに思えた。露出部は柔らかそうな純白の体毛に覆われている。
 この女が、オーダイルに酷似した獣人の同行者らしい。同じ世界出身なのかどうかは不明だが、この二人の故郷は酷く似通ったものであることは想像に難くない。彼らの前時代的な格好は、事実とてもよく似合っていた。
 獣人の呼び掛けに、女がにゃむにゃむと反応をしているので、昏睡しているわけではないようだ。獣人を待つ間、酒を飲んでいたら、いつの間にか酔いつぶれてしまった――という具合だろう。
 降りしきる雨は、ニャースの背中に音の飛沫を散らしていた。開けっ放しにされた戸口から、ひんやりとした風が忍び込んでくる。
 獣人が担いでいた大剣は外に立て掛けられていることだし、今なら逃げられる気がするのだが、ニャースは実行しようとは思わなかった。どの途、首輪は外さないとならないのだ。それに、今のところは保証されている命を投げ出すのに見合う賭けにも思えなかった。
 逃げることさえ考えなければ、この待ち時間は単に暇なだけである。
 何度目かの身ぶるいをして雨水を飛ばし、ニャースは手近な椅子に腰かけた。勘定台に頬杖をつき、奥の二人を見やる。
 巨体を窮屈そうにしながら、獣人が女を起こしに掛かっている様は何処か滑稽だ。
「アル中の女ゃかぁ」
 なんともなしに呟く。
「まあ、こんなときに酒を呷ってたんにゃから肝が太い奴にゃんだろうけど」
 言いながら、ニャースは腹をぼりぼりと掻いた。
「にゃけど、寝ちゃったら元も子もにゃいよにゃあ。なんちゅーか、緊張感に欠けているというか」
 濡れた体毛が気持ち悪く、何度か身じろぎをする。
 獣人は女に水を飲ませようとしているようだが、上手くいかないらしい。マントからはみ出た尻尾が、苛立たしげに床を叩く。
 それを半眼で見つめながら――。
「女ゃを見る目がにゃいと苦労するにゃー」
「…………ううむ」
 呟きへの応答か、獣人が疲れたように呻いた。そのまま独りごちる。
「確かに、酒を飲んで気を休めろとは言ったが……」
(まあ、リラックスはしてるにゃー。限りなく)
 道中、獣人とはまったく会話を交わさなかったのだが、その分、ゆっくりと考えることが出来た。そのおかげが、自己嫌悪と恐怖に悲鳴を上げていた心は大分落ち着きを取り戻してきていた。
 少なくとも、軽口らしきものを胸中で叩けるくらいには。
「ぬぅ……起きん」

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