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2012年2月エロパロ338: 変身ヒロインとラブラブなSS (795) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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変身ヒロインとラブラブなSS


1 :10/06/29 〜 最終レス :12/02/10
陵辱するだけじゃなく、変身ヒロインとイチャつきましょう。
前スレ
ttp://www.unkar.org/read/yomi.bbspink.com/eroparo/1244050981
(前スレから)エロゲなら
超昂天使エスカレイヤー
超昂閃忍ハルカ
まじかるカナン
魔界天使ジブリールシリーズ
ステルラエクテス
あたり
文字媒体だと二次元ドリーム文庫で
ラヴパラ
マヴカレ魔法少女!
なんかがある
とのこと

2 :
ヒロインから力ずくで逆レイプされるってアリ?

3 :
有りじゃない?
あんまりに痴女ぶりが酷いのは好みじゃないけど
私見だけど力づくで男を搾って性の消耗品扱いにするようなヒロインはスーパーガールでエロパロが適当な気がする

4 :
ベタかもしれんけどさ、
「敗北して一般人に犯されるヒロイン」のシチュってあるよね。
あれの応用っぽく考えたんだけど、
男の子に『このヒロインを犯さなければお前(男の子)をすぞ』って悪党が
脅しても、「好きな娘がいるからイヤだ!」と言い切り、されそうなところを
躊躇いながらも「私とこの人がセックスすればいいんですね」と
ヒロインが行動する。
陵辱スレなら、悪党と男の子が裏で組んでた、となるけど、
このスレだったら、ホントに一途な少年に逆レイプになると思う。

5 :
で、逆レイプのどこにラブラブがあんのよ?

6 :
ないな。
これは半分>>2のせいだ。いきなり話題がそっちへいったんだから。
しかしもう半分は前スレ同様ネタのなさだと思う。
みんな頭ではシチュぐらいは浮かぶだろうから、カキコして欲しい。
>>4のネタを使うなら
「ヒロインを犯してしまったことに罪悪感を抱いた少年が
 名前とか住所とか喋って「罰するのなら罰してくれ」とまで
 言って、ヒロインの方から少年に関心、恋心を持つ」ぐらいか?

7 :
「あなたと、ひとつに…」とか言って男と融合合体して変身(変身後の意識は女メイン)
あと男の精液または性欲をエネルギーにする淫魔系の女戦士
う〜ん……

8 :
運動苦手で内気な読書少女が変身して格闘タイプのイケイケ魔法少女に。戦いの後は恋人か意中の男のとこに押しかけてえっちとか、
ロリロリな妹が変身してムチムチお姉さんになって想いを寄せるお兄ちゃんと…とかしか思い浮かばないなあ
前にあった異形に変身する度に不安になって恋人を求めるっていうのがすごく見たい。

9 :
変身ヒロインたるもの変身前と後ではある程度のギャップが欲しいとこだな
性格的に逆転…
気弱が強き、おてんばが淑やかで華麗ってのがありがちだな
それで最初の頃は憧れていた自分になれる事に酔って、いい気になって活躍をしていくのだが、
いつしか世間に流れる風評と本来の自分の姿に乖離を感じて悩むようになったり。
その不安が憧れのクラスメートの男子が変身した自分のファンだと声高に語るのをきっかけに爆発して、
それならば彼の憧れる自分を自分の手で汚す…とかで痴女化とか
もしくは自分を見いだせなくなったヒロインが、あえてすっぴんに変身コスの姿で彼に告白して
結ばれて抱かれる事で偽りの自分を振り切るとか

10 :
クリィミーマミの「バイバイミラクル」は、いい正体バレ話だった

11 :
彼女が変身ヒロインだと知ったらやっぱコスチュームでのエロをせがむのは当然だよな
戦う時には凛々しい彼女が素直に快楽に身を任せている姿なんぞ見た日にゃあ
ちょっと意地悪な気持ちになって「随分エッチな正義の味方様だなwww」とか軽い言葉責めもするだろうな

12 :
triangleから出たエロゲーのエグゼクタースクリプトってのには、なかなか良い変身ヒロインとのラブエロがある……らしいぜ

13 :
変身後の姿に男が惚れちゃうけど
正体知らないから変身前の姿と遭遇して
「○○(←変身後)と比べりゃおまえはホントかわいくねえな」とか言っちゃうの希望

14 :
フレッシュプリキュアとかそんな感じだったな
キュアビーチの幼なじみが本人とは知らずに恋の悩みとか相談してた

15 :
>>11
好きだからこそ彼氏の要求に応えるようになる…ってのは調教や陵辱での開発とはまた違ったエロさがあるよな
この要求に応えるようになるってとこに単なる和姦で結ばれただけではないアブノーマル的なものが漂ってくる訳で
エスクードのプリマヴェールは陵辱主体なんだけどそこら辺のエロさも上手く取り入れられていた
だからこそ変身ヒロインゲーの開祖たりえたと思う

16 :
さくっと書いてみたんだけどこんなものでいいのかな
 
 連休初日の空は綺麗に晴れ、雲ひとつ無い青一色だった。
 初夏の日差しが降り注ぐ商店街は、買い物客や休日をエンジョイしようとする人々で溢れかえっていた。
 「しかしあっちーな。どこかで涼むか?」
 その人ごみの中、梅小路 三郎は額の汗をぬぐいながら、空を見上げた。
 頭は短い丸坊主、うっすら焼けた肌は野球部員を髣髴とさせ、事実彼は市内の学校に通う高校球児である。
「……ううん、大丈夫」
 その隣で、遠慮がちに答えるのは打木 希。
 三郎より頭一つ分低く、小柄で痩せぎすな彼女は今時の高校生にしては珍しく染めていない綺麗な黒髪だった。
 背中の中ほどまであるその黒髪を後ろで二つに分け、三つ編みにしている彼女は眼鏡をかけていることもあって、
真面目な、もうひとつ言えば地味な印象をたたえていた。「イメチェンすれば絶対モテるよー、あんた」とは彼女の友達、
秋那の弁だが、彼女の内気で人見知りする性格がそれをためらわせていた。
 教室では休み時間に静かに本を読んだり予習復習に勤しみ、友達とおしゃべりに興ずることはあまりない。
 爪弾きにされているわけではないのだが、その性格が災いして友達は少なく、せいぜい隣の彼三郎か、
希とは正反対、茶髪にピアスでスカートも短い、教師陣の覚えもあまりよろしくない秋那くらいであった。
 正確には三郎は友達ではなく、そう呼べるのは秋那だけである。
 なぜなら三郎は、希の大切な恋人、彼氏であったからだ。
 その繋がりを現すように、三郎の右手と希の左手は、指を絡ませて握り合う、所謂恋人繋ぎでしっかりと結ばれていた。
 馴れ初めは希が今通う高校の受験の日、帰りに駅で乗るべき電車がどのホームに到着するか分からずオロオロしていたところを、
三郎に助けられたというものだった。
 意外にも三郎は鉄道マニアであり、地元であるこの駅は撮影などでよく訪れるので、何時にどの列車がどこのホームに到着するか、
全て頭に入っていたのだ。
 それから希に恋心が生まれ、友達の××の助けもあってすったもんだの末、晴れて彼氏彼女の関係になったのだった。
 「本当に大丈夫なのか?ショッピングモールまでもう少し歩くぞ?」
 「うん…大丈夫だよ」
 気遣う三郎の顔が眩しく見えて、希は思わず俯いてしまう。でもその頬にはほんのり朱が差して、
彼女ははにかみながらも嬉しそうだった。
 そんな希を見て三郎も何か急にこっ恥ずかしくなり、そ、そうか、なんてぎこちない返事になってしまう。
 
 繋いだ手にも、ほんのちょっと力が入る二人。その時だった。

17 :
 
 「おーっほっほっほ!さあ出ていらっしゃい、マジカルファイター!!」
 アーケードの屋根の上。青空をバックに通りを見下ろす二つの影。
 「今日こそこのダーククイーン様が、メッタメタのギッタギタにして差し上げますわ!!」
 ブロンドの長い髪。むっちりとした胸と尻。それらは肌の露出度が高い黒色のボンテージに包まれ、
ヒールの高い同色のブーツと相まって、名乗った通り、夜の女王(プレイ的な意味で)を思い起こさせる。
 もっともここは真昼間のアーケード街で、いじめられたい紳士が集う怪しげな倶楽部でもなんでもない。
 「ほらっ、この雌豚!お前も無様に啼いてマジカルファイターを呼び寄せなさいっ!」
 そういって、ダーククイーンと名乗ったお姉様が紐をぐい、と思いっきり引き寄せると、その先には赤い首輪があり、
その首輪は傍らに立つもう一人の少女の首につけられていた。
 「あんっ!!お、お姉様ぁぁ…」
 その少女も、先ほどの女王、ダーククイーンと同じようなデザインのボンテージに身を包んでいた。
 しかし露出はさらに高めで、ほとんど下着、もしくはビキニと言って差し支えない。背もクイーンより頭一つ低く、
顔も幼い。髪は鮮やかな桃色のショートカットで、小ぶりな胸と肉付きの薄い腰周りと相まって、中学生を思わせる。
 そんな異常な格好の上に、少女の体中にしっかりとまきついて、食い込む黒い紐。彼女は所謂「亀甲縛り」で縛られ、
自由に手を動かす事もできないのだった。
 
 休日の商店街で突如始まった女同士の公開SMプレイに、道行く人々も唖然としている。
 「また出やがったのかよあいつ…」
 「さ、三郎君…その…」
 うんざりするようにつぶやく三郎。
 それに対して、希は何か言いたそうな、それでいてどうしようかと、困ったようにオロオロしていた。
 「どうする、闘う?」
 「え、えっと、でも、その」
 希は困り果てていた。
 確かに自分には、あのSM女王と戦える力がある。
 でもせっかくのデートを不意にしたくない。三郎君に可愛い水着を選んでもらうはずだったのに…
 どうすればいいか分からず、困り果てた上にちょっぴり泣き出しそうになる希。それを見た三郎はなんだか急に愛おしくなり、
 往来の真ん中にも関わらず希をぎゅっと抱きしめてしまう。
 「泣くなよ、希」
 「三郎、訓点…」
 「闘うっていうなら、俺待ってるから」
 「で、でも、その……」
 「でも、約束してくれ。闘ってもいいから、無茶して怪我だけはしないでくれって」
 三郎の言葉に、希も感極まって思わず抱き返す。
 「ありがとう、三郎君……」
 「…じゃ、変身する?」
 「……うん」
 恥ずかしそうに頷く希に、三郎はどくんと心臓が高鳴って、反射的に顔を背けてしまった。
 初々しいカップルである。

18 :
 
 「ここなら、いいよな?建物の影だから誰にも見られないし」
 「…うん」
 二人はアーケード街を少し歩き、路地裏に入って探す事1分、都合の良い場所はすぐに見つかった。
 商店の建物と建物の間、薄暗い隙間。
 じめじめした場所だったが、贅沢は言っていられない。
 「じゃあ、変身、するね?」
 そういって、希が肩から提げる小さなポシェットから取り出したのは、銀色に輝くメリケンサック。右手の指にそれを通し、
ぎゅっと握った拳を天に突き出して、彼女は叫ぶ。
 「マジカルファイター!!リングイン!!」
 瞬間、白い光が辺りに爆発した。眩しさに思わず、三郎は目を瞑る。
 白い光の中で、希の変化が始まった。
 「ん、あ…っ」
 彼女が着ていた白いワンピースが、光の砂粒になってさらさらと消えていく。ワンピースだけでなく、
その下の淡い桃色のショーツやキャミソールも消えて、一糸纏わぬ姿になる。
 「あんっ」
 三つ編みのお下げも髪留めが切れて、長い髪がばさりと広がる。
 「はぁ……んあああっ」
 小ぶりでなだらかな胸が内側から膨らみ始め、それと呼応するように手足もするすると伸びてゆく。尻も少し肉付き、
長い髪は逆に縮み始めた。
 「あ、ああ、あんっ!」
 手足と腰周りの成長はすぐに止んだ。大きくなったにせよ今だ小ぶりな尻の柔肉は適度に引き締まり、
すらりと伸びた脚と共に健康的な色気を漂わせる。
 胸の成長は今だ止まらずに、年齢相応から少し大きめに育っていく。
 「う、うう、うああああ……」
 髪は肩口からさらに短いショートカットに。さらに色が変わり、透き通るような青色に染まっていく。声も顔つきも作り代わり、
気弱な少女は負けん気の強い目を光らせる、男の子のようなやんちゃな雰囲気を含んだものに。
 その瞳も、ルビーのような透明感を持った赤色に変色する。
 「う、うお、うおおおおおおおっ」
 変化した体を反らし、雄叫びを上げる彼女。次いで周囲を回っていた光の粒が、彼女の足、腰、胸に集まって、
一瞬の閃光の後コスチュームに変化する。
 「マジカルファイタアアアアアアアアアアッ!!見・参っ!!」
 

19 :

 そして希は、変身を終えた。
 大きく回し蹴る動作をすると揺れる豊かな胸は、フリフリな飾りのついたタンクトップとジャケットに覆われて、
同じような装飾のスカートの下で、黒いスパッツが見える。
 青く短い髪と負けん気の強そうな顔つきは、変身前よりボーイッシュな印象を抱かせる。
 パンプスも変身によってスニーカーのようなものに変わり、それらは全て髪色と同じ青を基調としたデザインで、
お腹や腕の健康的な肌色を露出させているのと共に、初夏にふさわしい涼しげなイメージだ。
 「おおー、見事なもんだ。今の季節は涼しそうだなー」
 光の奔流が収束すると目の前の恋人は変身が終わっており、三郎はぱちぱちと拍手しながら感嘆した。
 「いやー、でも肌出てるから焼けちゃうんだよなぁこれ」
 それに満更でもなさそうな希、いや、マジカルファイター。それでもお肌のダメージは気になるようだ。
 魔法少女も女の子なのである。
 「長袖モードとかないのか?」
 「冬でもこれだぜ?多分ないだろーなー」
 さすがに冬は寒そうだ。コートでも買ってやるか、と三郎はぼんやり思った。
 「さて、ちゃっちゃといってあのアホをぶっ飛ばしてくるぜ」
 「おう、気をつけてな」
 飛び出していこうとしたマジカルファイターは、急に振り返ると、つかつかと三郎のところへ歩み寄る。
 「ん?どうした?」
 「…その、忘れ物したからな」
 忘れ物、何のことだろうと三郎が思っていると、急に彼女の顔が近くなり。
 「んっ…」
 彼女にキスされていることに気付いたのは、少し後になってからだった。変身してもまだ彼より背が低いマジカルファイターは、
かかとを少し浮かせ爪先立ちして、三郎と「忘れ物」を交わす。
 「……じゃ、行って来るぜっ」
 やっぱり少し恥ずかしかったようである。踵を返して勢いよく跳び、魔法の力か何かで増幅されていると思われるほどの跳躍力で、
彼女は商店の屋根に飛び乗った。
 その時一瞬だけ見えた彼女の頬は、真っ赤に染まっていたを三郎は確かに見ていた。
 「ったく、自分でも恥ずかしいならやるなよ…」
 そう呟く三郎の頬も緩んでいたのは言うまでも無い。

20 :
おわり。
上のレスにあった性格変化で書いてみた。

21 :
ぐー、ぐーだぐー

22 :
先駆者GJ

23 :
路地裏までしけこんどいてキスだけとかw
立ちファックするまで許さないよw

24 :
あげGJ

25 :
このスレ復活したのか
何はともあれ超期待

26 :
変身っていうか、アメコミ的な感じでもOK?

27 :
ネクロシティの夜は、明るくて暗い。無数の電燈が生み出す輝きは、人の心の闇を浮き彫りにするのだ。
ジョン・テラーも、その闇に呑まれた男の一人だった。
ジョンは、たまに強盗もやるが、一番得意な遊びは娼婦しだった。わざわざ娼館に行かなくとも、夜中道を歩いていれば、すぐに声がかかる。
そして、自分の腕を引き、路地裏か安ホテルに連れて行こうとする馬鹿な女を見て、どんなプレイをしようかと心で涎を垂らす………
そんなことを、ジョンはかれこれ八回もやっていた。
警察は、血眼になって連続人犯をさがしているが、連中にできるのは地べたを這いずり回って時間と金をドブに投げ捨てることだけだ。
歩道に立つジョンの傍を、パトカーが行き過ぎる。運転手は、ジョンをちらりとも見なかった。
あんな連中が、どうしてこの俺を捕まえられる?
ジョンはくっくっと喉を鳴らしながら、今夜の獲物を探し始めた………
「ジョン・テラー、ダナ」
人間の根源にある恐怖心を直打ちするくぐもった声が、夜気を貫く。振り返ったジョンの目に飛び込んできたのは、異形の男だった。
擦り切れてボロボロの、薄汚れたトレンチコート。袖や裾には、鋼鉄の指と爪先が覗く。
顔は、呼吸孔が六つ空いただけの、金属製の仮面に覆われている。ホッケーマスクに似ていたが、百倍は無表情で不気味だ。
その二つの要素だけでも、並人であれば関わりを避け、足早にその場を立ち去るに違いない。
しかし。ジョン・テラーが目を見開き、瘧にかかったかのように全身を振動させているのは、男の頭の上に乗っている物を見たからだった。
赤黒い、丸い鍔の帽子。それは、この街に住む全ての犯罪者にとって、の象徴だった。
ジョンは、よろよろと後ずさった。
「お前は……レッドキャップ!?」
肯定するように、男は高らかな靴音を鳴らした。
このネクロシティには、クライムハンターと呼ばれる者が多く存在する。警察に代わり、夜を駆け、犯罪者たちを狩り立てる。
その中でも、最凶最悪で知られるのが、このレッドキャップという男だった。
別に、超能力や魔法の類を使う訳ではない。
ただ、他のクライムハンター達が犯罪者を生かしたまま警察に突き出すのに対し、レッドキャップはその場でしてしまう。
命乞いも、言い訳も、彼には無意味な戯言にしか過ぎない。彼にとって意味がある音は、犯罪者が上げる断末魔の叫びだけなのだ。
夜の街に新たな獲物を求めて繰り出してきたのは、お互い様のようだ。

28 :
「ココハ、ドブミテエナ臭イガスル街ダ」
鉄の声。
レッドキャップが進んだ分、ジョンが下がる。
「ダガ、コンナ街デモ、娼婦ヲスノハ犯罪ダゼ、ジョン」
「人しはお前もだろう、レッドキャップ! 一体何人した!?」
挑発するような言葉とは裏腹に、ジョンの声は裏返っていた。
彼は人しだが、油断していたところを縛り付けて嬲りしにしてきただけで、別段格闘技の心得があるわけではない。
愛用のジャックナイフも、この状況では耳掻きにもならないだろう。
ジョンの脳裏には、前に偶然目にした、レッドキャップの獲物の遺体が浮かんでいた。られたのは……たしかエースカードとかいう、トランプを元にした犯罪で有名だった奴だ。
道化めいた衣装を纏うその男の全身には銃創が無数に刻まれ、首は無残にも引き千切られていた。
遺体を回収する警官達でさえ、顔を顰めていたものだ………自分も、あんな風に?
「ぐあっ!」
轟く銃声。両膝に走る激痛。
ジョンは血を流しながら倒れた。両膝に一つずつ、銃創が刻まれている。
空の薬莢が落ちる音が、両膝の灼熱とは正反対に冷たく響く。
赤く染まる視界に映るレッドキャップの左手には、何時の間にか黒光る拳銃が握られていた。
傷口から溢れ出す血がズボンを濡らし、生地が肌に貼り付いて気色悪い。
だが、もうすぐそんなことを気にする必要のない世界に連れて行かれるようだ。
レッドキャップは、開拓時代のガンマンのように銃口から棚引く硝煙を吐息で追い払うと、右腕をトレンチコートの中に突っ込み、薪割り用の柄の短い斧を取り出した。薪以外の物も、よく割れそうだ。
が、くっきりとした輪郭を持って迫ってくる。
「ひっ……はっ……!」
ジョンは、首を切られた鶏のように両腕を振り回した。しかし両膝の痛みに邪魔をされ、長続きはしなかった。
泣きながら、思いつく限りの神に祈ったが、天使の類が舞い降りてくることはなかった。
当然だ。天使には人鬼よりももっと、他に救うべき者が山ほどいる。
代わりに、ジョンに差し向けられたのは、赤い帽子の悪魔だった。目の前までやってきたレッドキャップが、斧をゆっくりと振り上げる。
「オマエノ血デ、俺ノ帽子ハモット赤クナル」

29 :
斧の刃と、夜空に輝く三日月が重なった。そこに落ちてくる………小柄な人影。
びゅん、という風の唸り。レッドキャップが後方に飛ぶ。
鉄仮面の中から、苛立たしげな舌打ち。レッドキャップとジョンの間に、一人の少女が割り込んでいた。
スレンダーな肢体を覆う、肌にぴったりと貼りつくボディスーツ。全体は青いが、胸から股間にかけて白い部分がある。
両手足には黒い手袋とブーツ。手には、彼女の身長ほどはある鉄棍が握られている。
背には青いマント。どこか、鳥の翼のようにも見える。
「スワロー! マタ、俺ノ邪魔ヲシニ来タカ!」
レッドキャップが怒鳴り声を上げる。スワローと呼ばれた少女は、それをどこ吹く風と受け流し、ジョンを振り返った。
「これに懲りたら、もう悪いことはやめるんだね」
顔の輪郭はほっそりとしていて、艶やかな黒いシャギーカットの一房は、煌めく青に染まっている。
顔の上半分は黒いアイガードにほとんど隠されてはいるが、くりくりとした大きな目と、ほのかな桜色の唇だけで、彼女が相当の美少女であることが窺える。
膝の痛みもレッドキャップへの恐怖も一瞬忘れ、ジョンは我知らずごくりと喉を鳴らした。獲物にするには、もったいない女だ。
「……まあ、十中八九刑になると思うけど」
そう言い捨てて、スワローはレッドキャップに向き直った。
鉄根を回し、腰を低く構える。
「だからといって、キミが闇に葬っていいわけじゃないよ。ちゃんと、法で裁くべきだ」
「ソンナ呑気ナコトヲ言ッテイルカラ、コノ街カラ犯罪ガ無クナラナインダ。ドケ、スワロー。ソイツノ無残ナ体ヲ拝メバ、悪党ドモモ少シハ大人シクナルダロウ」
レッドキャップがスワローに銃口を向ける。二人の間の空気が、ナイフで切り取れそうなほど張り詰めていく。
「そんな勝手は、ボクが許さない」
ジョンは、自分の命運を決める戦いを最後まで見届けたかったが、それは叶わなかった。失血のショックで、気絶したからだ。
次に目覚めた時、ジョンは監獄の中にいた。彼は刑が執行されるその日まで、赤い帽子の男の悪夢に悩まされ続けた。

30 :
三話構成の第一話
あんまりエロくならないかもしれないけど、枯れ木も山の賑わいということで。

31 :
今読んでGJ
読みながら、
まさかこのホッケーマスクの中身が美少女?
まさかこのジョンとスワローが恋仲に?
とか思って吹きそうになったw
多分だけどレッドキャップ×スワローなんだよね?
続きに期待

32 :
最近、体の調子が悪い気がする。悪党どもをしていないせいだろうか。
給水塔の頂上に腰かけ、夜のネクロシティを睨みつけながら、レッドキャップは考えた。
それ以外に、原因が思い当たらなかった。
彼はタバコを吸わないし、酒も飲まない。一日三食、栄養をちゃんと考えて食べている。
他の連中のように、スーパーパワーを持たないレッドキャップにとって、トレンチコートの中に隠した武器と、それを操る体は大切だ。
ただいまの時刻、午後十時五分。悪党どもが、昼間の間に研いで置いた牙を解き放つ頃。
病に倒れ、連中をのさばらせておく訳にはいかない。
レッドキャップは、何時か必ずやって来る終わりの瞬間まで、悪党どもを狩り立てるつもりだった。
…………それなのに。
「アノクソ女、コトゴトク邪魔シヤガッテ」
ここ最近、レッドキャップの頭を締めているのは、あのスワローと名乗るクライムハンターだった。
新参者のくせに、自分の邪魔をする嫌な奴。
今までにも、分かったような面をぶら下げてレッドキャップに説教をしてきたクライムハンター達がいたが、少し脅しただけで尻尾を丸めて逃げ帰った。
そのたびに、悪魔だの狂ってるだのと罵られたが、ふん。褒め言葉にしか聞こえない。
だが、スワローはそういう連中とは違い、レッドキャップを口汚く罵らないし、逃げもしなかった。
ただ、真正面から彼と向き合う。忌々しいほどに、まっすぐな瞳で、だ。
すると、胸の中で何かがざわついて、どうにも仕事をする気分じゃなくなってくる。
そうなったら、もうこちらの負けだ。これまでどんな犯罪者にも負けなかったレッドキャップが、情けないことに連敗している。
始末するわけにもいかない。スワローは邪魔者だが、悪党ではない。
レッドキャップがすのは、悪党のみ。自らに定めた、絶対に破ってはいけないルールだ。
「………イイ加減、覗キ見ハ止セ。金ヲ取ルゾ」
苛立ちを隠しもせず、レッドキャップは背後を振り返った。
夜気のみが立ち込める、無人の空間。そこに、突如として人影が出現する。
白地に赤いラインが走るライダースーツ。ばんと突き出した胸、くびれた腰、緩やかな曲線を描く臀部が、これでもかというほど「女」を強調する。
腰まで届く長髪は雪のように白く、肌も同じ色の中、真紅の瞳が異彩を放つ。女の、きっと形の良い口元は、グレーのフェイスマスクで覆われていた。
それだけなら、夜を駆ける者………クライムハンターとしては、別段異様ではない。レッドキャップと比べれば、大人しいくらいだ。
だが、彼女の耳が毛皮に覆われた三角形で、臀部から金色に輝く尾が九本も生えているとなると、話が違ってくる。

33 :
「ナインテール、バケ狐メ。俺ニ何ノ用ダ?」
「ふふ。用という程ではないがね」
艶やかな声で応じると、ナインテールはレッドキャップに近寄り、片膝を突くと、彼の体に一本の尾を優しく絡めた。彼女なりの、親愛の表現だ。
柔らかな毛皮の感触。香水とは違う、心を融かす甘やかな香り。
並みの男なら、これだけでナインテールの虜になるだろう。だが、レッドキャップは並みの男ではなかった。
「ヤメロ、暑苦シイ。用ガ無イナラ消エロ」
「相変わらずつれないな。私が尻尾を許す男は、そういないぞ?」
ナインテールは大仰に肩を竦めると、尻尾を引っ込め、レッドキャップの隣に腰を下ろした。
それなりに長い付き合いになるが、レッドキャップが彼女について知っていることは少なかった。
まず一つ、ナインテールは人間ではない。レッドキャップが化け狐と呼んだように、彼女は妖怪変化の類で、尾と耳は本物だし奇妙な術も使う。
来歴は知らないが、何時の間にやらこのネクロシティに住みつき、クライムハンターとして活動していた。
しかし、市民を守るとか、悪を許せないとかいう正義感に燃えている様子はなく、凶悪な犯罪者との戦いを、ゲームのように楽しんでいるようだった。
その点でいえば、レッドキャップと同じくらい危険な人物であるかも知れない。
「ところで、最近スワローとかいう小娘に頭を悩まされているようだが」
ナインテールが口端に妖艶な笑みを寄せると、レッドキャップは仮面の中で顔を顰めた。
おしゃべりなクソ野郎がいるのか、仕事を邪魔されている場面を見られたか。
何にしろ、この女にからかわれる種をばら撒いてしまったのは具合が悪い。
「オマエニ何カ言ワレルヨウナコトジャアナイ」
「心配するな。もうじき、悩みの種が消えると伝えにきたんだ。数日前に脱獄した、『ワイルドイーヴル』という連中は知っているな?」
レッドキャップは頷いた。彼は、そいつらを今夜の獲物と決めて夜の街に出て来たのだ。
マンハンター。
元は森に住み、狩猟で生計を立てていた男で、何時からかコンクリートジャングルで人間を狩るようになった。
ビーストフェイス。
何がどうなって生まれたのか、半人半獣の怪物。人の知能と獣の身体能力を併せ持つ面倒な奴だ。
スカベンジャー。
自作したハゲワシ型の飛行スーツを身に纏う男。元は有能な技術者だったようだが、それを人のために使うことに飽きたらしい。
デッドアイビー。
一言で表すならば、植物怪人。不老不を目指した科学者のなれの果ては、蔦に覆われた怪物だった。
与えられた力を犯罪に生かすことに決めた連中がチームを組み、さらに手に負えなくなったのは『ワイルドイーヴル』だ。
何ヶ月か前に、スワローの手によって全員監獄にぶち込まれたのだが、それで懲りるような奴らではなかった。
レッドキャップは、檻の中を血の海にするような真似はしない。だが、わざわざ安全な場所から出てきた獲物を見逃すほど、優しくもなかった。
その時、レッドキャップの頭の中で、コインががちゃりと音を立てて穴に落ちた。
「スワローニ、意趣返シヲ?」
脱獄囚がシャバに出てすることはただ一つ。自分を監獄に入れた者への、報復である。
ナインテールはさらに笑みを深めた。
「今さっき、アイビーの奴が蔦で燕を捕えるところを見たぞ。今晩中に、カタはつくと………行くのか?」
答えず、レッドキャップはナインテールを置き去りに、給水塔から飛び降りた。

34 :
路地裏でひっそりと息づく小さなバー、オアシス。
サラリーマンだった店主が、退職金と、それまでの貯金を使って建てた店だった………が。
今宵より先、オアシスが労働者の乾いた心を体を潤すことも、店主が帰って来ることも、二度とない。
オアシスの店内には、現在四人の人間がいた。
その内の三人は、『ワイルドイーヴル』と呼ばれる悪党で、もう一人は、スワローを名乗る少女だった。
だが、仲良く酒を飲み交わしているわけではない。
店主のいなくなったカウンターに腰かけ、酒瓶をらっぱ飲みしているのは『ワイルドイーヴル』の三人だけで、スワローは丸テーブルの上に大の字となっていた。
手足は緑色の蔦でテーブルの脚に縛り付けられ、口には猿轡がされている。
必にもがけど、テーブルが揺れるだけで拘束は解けず、叫びが店の外に漏れることはなかった。
「いい加減観念するんだな、スワロー。まな板の上の鯉は、後は捌かれるだけだ」
顔のほとんどを髪が変質した蔦の中に隠すデッドアイビーが、空になった酒瓶を床に放り捨てながら言った。
スワローが縛り付けられているのとは別のテーブルで、生のチキンを齧っていたビーストフェイスが、下品な笑みを浮かべる。
「ひひ、処女は譲るぞ、アイビー。その代わり、尻の穴はおいらがもらっていいよな?」
「俺は生意気な口に咥えさせてやる。脱獄して初めての女になるからな。窒息しないといいが」
ハゲワシの衣装を纏うスカベンジャーが舌舐めずりをする。三人は、スワローをどう嬲るかで盛り上がっていた。
スワローのせいで、一時は臭い飯を食うはめになったのだ。その恨みは、ちょっとやそっとで晴れるものではない。
「マンハンターの奴、遅いな。体の片づけにどれだけかかるんだ」
「ひひ、あいつ、スワローの剥製が欲しいと言ってたぞ。どうする?」
「体を晒し物にした後で、警察の奴らが来る前に回収すればいいだろ」
スカベンジャーが受け、デッドアイビーが喉を鳴らす。
「じゃあ、丁寧に扱わないとなぁ。くっくっくっ」
悪魔の笑声が、狭いバーの中を木霊する。白い壁には、飛び散った店主の血が付着していた。
もがき続けるスワローの目からは、何時しか涙が流れていた。革のアイガードでも吸収し切れず、細い川となってテーブルを濡らす。
目の前で善良な市民がされたのに、何もできない自分への怒り。そして、これから始まる地獄の宴に対する恐怖。
様々な感情が、堪え切れず目を通って溢れだす。
それを肴に、三人の酒宴がより一層盛り上がりを増した。
その時。
施錠された樫の扉が、独特のリズムで叩かれる。デッドアイビーが舌打ちとともに顔を上げた。
「マンハンターめ、やっと帰って来たか。おい、開けてやれ」
残る二人が顔を見合わせる。結局、スカベンジャーが重い腰を上げた。
扉は、催促するように叩かれ続けている。
「ったく、待ってたのはこっちなんだぜ。今開けるよ!」
スカベンジャーが乱暴に鍵を開けると、軋んだ音を立てて扉が開いた。
その隙間から拳銃を握った腕がにゅっと伸び、次の瞬間、スカベンジャーの頭を吹き飛ばした。
少し軽くなったスカベンジャーの体が、背中から床に倒れる。デッドアイビーとビーストフェイスの顔から、薄笑いが消えた。
扉が完全に開き、店の外に広がる暗闇から、一人の男が姿を現した。
赤い帽子、鉄仮面、トレンチコート。右手には斧、左手には拳銃。
レッドキャップだ。

35 :
「パーティーヲヤルナラ、俺モ誘ッテクレヨ。コウ見エテ、場ヲ盛リ上ゲルノハ得意ナンダゼ」
硬い靴音を響かせ、レッドキャップが店の中に足を踏み入れる。
一番手はビーストフェイスだった。脚部の筋力を爆発させ、砲弾のようにレッドキャップに飛び掛かる。
「しゃああっ!」
ナイフの鋭さの爪と牙。それらがレッドキャップの鉄仮面に届く前に、鋼鉄のブーツの靴底がビーストフェイスの腹に突き刺さった。
電光石火の蹴り。ぱきぽきという無数の鉛筆が折れるような音は、どうやら半人半獣の肋骨が何本か砕けたものらしい。
内臓も破裂したか、激しく吐血するビーストフェイスに向け、レッドキャップは右手の斧を振り出した。
毛深い右腕が、ロケットのように天井に飛ぶ。断面から噴き出す血飛沫は、噴射剤さながらだった。
きゃいんきゃいんと負け犬の鳴き声を引き連れ、ビーストフェイスが後退する……と見せかけて、テーブルに縛り付けられたスワローを人質に取ろうとしたが、その作戦は銃弾が彼の心臓を肉片に変えるまでしか続かなかった。
「〜〜〜〜っ!!」
顔面に血を浴びて、スワローが声にならない悲鳴を上げる。それを無視し、斧に血振りをくれたレッドキャップの首に、緑色の蔦が巻き付いた。
蔦の反対側には、カウンターの向こうに立つデッドアイビーがいた。
「貴様っ、なぜ扉の合図を知っていた!?」
「マンハンターガ、ゴミ捨テヲシテイタンデネ。手伝ッテヤッタラ、オ礼ニ教エテクレタノサ」
マンハンターが帰って来ない時点で、額面通りの受け取っていい言葉ではなかった。
デッドアイビーは目に怒りを灯し、さらに三本の蔦を伸ばしてレッドキャップを攻撃しようとした。
しかし、それより早くレッドキャップの拳銃が火を噴き、カウンターに置いてあった酒瓶を粉々に砕いた。
その破片のいくつかが、デッドアイビーの顔面を直撃する。
「うっ!」
破片が目に入ったか、デッドアイビーが一瞬怯む。レッドキャップは緩んだ蔦を振り払うと、拳銃を乱射。
デッドアイビーの背後にある酒棚の瓶がほぼ全て割れ、中身が滝のように植物怪人に降りかかる。
当然、全部酒だ。混乱から立ち直ったデッドアイビーは、自らが置かれた状況を理解し、恐怖することになった。
酒は燃えやすく、デッドアイビーは植物を体に生やしている。そこに何かを加えるとすれば、答えは一つだ。
レッドキャップは空いたテーブルに斧を置くと、トレンチコートのポケットから使い捨てのライターを取り出した。
「俺ハ煙草ヲ吸ワナイガ、ライターダケハイツモ持ッテル。何故カ分カルカ?」
鋼鉄の親指がドラムを回転させると、ぼっと音を立てて小さな火が点いた。デッドアイビーが引き攣った悲鳴を上げる。
「コウイウ、オ楽シミガアルカラサ」
「や、やめろぉ!」
制止の声も空しく、ライターはレッドキャップの手を離れ、デッドアイビーを大きな火の玉に変えた。
苦悶の絶叫をBGMに、レッドキャップはくるりと踊るように一回転。テーブルに置いた斧を回収し、スワローに歩み寄った。
「ヨオ、イイ格好シテルナ」
レッドキャップは嘲るように言ってから、斧の刃を使って蔦を切り、スワローの猿轡を外してやった。
札付きの悪としてその名を知られた『ワイルドイーヴル』をたったの十数分で始末しておきながら、動きに疲れはまったく見られなかった。
スワローは、しばらくテーブルの上に腰かけたまま呆としていたが、やがてその顔がくしゃりと歪み、
「うぇっ……うぇええええっ……うええええええ……!」
まるで、母親とはぐれた子供のように泣き出し始めた。そこにいるのは、凛として悪党の前に立ちはだかるクライムハンター・スワローではなく、一人の少女だった。
仕事道具をトレンチコートの中にしまい込んだレッドキャップは、しばらく迷っていたが、深いため息をつくと、泣きじゃくるスワローを抱きかかえ、そのまま店を出た。
後に残されたのは、三つの惨体だけだった。ネクロシティの夜は、少しだけ静かになった。

36 :
第二話。
ヒロインが空気なのはご愛嬌。次はいよいよHシーン。

37 :
乙 このスレ的な山場は次回のようだから感想はその時にでも

38 :
ヘルボーイと白鳥のジュンで脳内変換された
なんかカプコンの格ゲーみたいな事になってるw

39 :
>>36
GJ
レッドキャップ結構年配っぽいね

40 :
>36
こんな場末のスレで、アツい話に出逢えるたぁな……長生きするもんだぜ。
しかし、レッドキャップというキャラの立ち方が凄いな。
TRPGキャラの参考にさせて頂きたい。

41 :
本当なら、スワローのアジトなり家なりに連れて行くべきなのだろうが、残念なことにレッドキャップはその場所を知らなかった。
スワローは未だに嗚咽を漏らしていて、尋ねて答えが返ってくるような状態ではない。
同じ理由で、道端に捨てていくのも不安だ。泣き濡れた女のクライムハンターなんて、悪党どもの格好のエサじゃあないか。
そんなわけで、レッドキャップは仕方なく、スワローを自分のアジトに招くことにした。
街角の、なんてことはない三階建ての古びたビル。正面の入口は意図的に閉鎖しているため、屋上から中に入る。
このビルは元々、『アウトサイダーズ』という悪党のチームのアジトで、ちょうどクライムハンターとしての活動拠点を欲しがっていたレッドキャップは、彼らを始末して奪い取ったのだ。
そのため、壁とは言わず床とは言わず掃除しきれなかった血が撥ねているが、彼は気にせずそのまま使っている。
三階は、悪党から押収した様々な機械や、狩りに使う装備の保管庫。二階が生活用、一階はトレーニングルームとなっている。
このビルの他にも、このネクロシティにはいざという時の隠れ家が幾つも存在している。
「女ヲ連レ込ムノハ、コレガ初メテダナ……クソッ」
レッドキャップはぼやきながら階段を降り、二階の生活用の部屋に入った。
リノリウムの床、コンクリートが剥き出しの壁。家具は、クローゼットやタンスにコートハンガー、ソファにベッド、テレビや冷蔵庫に洗濯機など、必要最低限の品のみ。
レッドキャップは、家具屋でインテリアを選ぶよりも、ガンショップで悪党の頭を吹き飛ばせるような銃を探す方が好きだった。
部屋の奥にはキッチンと、シャワールームに続く扉がある。
この二つはかなり重要である。栄養ある食事も熱いシャワーも、次の狩りに励むための活性剤となる。
しかし、スワローがいる間はおあずけだ。
「ドッコラショ、ット」
スワローをパイプベッドに寝かせる。彼女はもう泣いてはいなかったが、目にはまだ涙が溜まっていた。
レッドキャップはベッドを離れ、トレンチコートを脱ぎコートハンガーに掛けた。中身が重いので、傾かないように気をつけて。
レッドキャップは用心深いので、黒いTシャツの上に、鋼鉄製のボディプロテクターを装備している。胸に腹、肩まで守ってくれる優れ物だ。
同じく鋼鉄製のガントレットを腕から外し、丸いステンレステーブルの上に置く。当然かなり重いが、それくらいで音を上げるような家具は置いていない。
キッチンに入り、冷蔵庫を漁る。僅かな食糧――その内、買い出しに行かなければ――の他には、ミネラルウォーターの詰まったペットボトルしかなかった。
生憎、コーヒーや紅茶、あるいはココアなどという洒落た物は、レッドキャップの口には合わない。
レッドキャップはベッドに戻り、スワローにペットボトルを渡した。彼女が黙したまま受けると、自分はソファにどかりと腰を下ろした。
「運ガ良カッタナ。野良犬ニ噛マレル前ニ、天ノ助ケガ来テ」
レッドキャップは皮肉交じりの言葉を飛ばしたが、スワローは「うん……ありがとう」と気のない声を返すだけで、突っかかって来るような気配はない。
鉄仮面の内側に響く舌打ち。スワローの衣装を着ているくせに、今の彼女は、ただのレイプされかかった少女だ。
それが、レッドキャップには気に入らない。こんな奴に、自分の仕事を邪魔されていたのかと思うと腹が立つ。
あの真っ直ぐな瞳は、一体どこに落として来たんだ?

42 :
「コレデ分カッタダロウ。アアイウゴミ共ヲ半端ニ生カシテオクト、ロクナ目二合ワナイト。モウ、俺ノ邪魔ハシナイナ?」
スワローは答えず、ミネラルウォーターを一口飲んだ。嚥下した水が喉を通り、胃に落ちるのを待ち、少女は首をレッドキャップにねじ向けた。
「なんでレッドキャップは、クライムハンターになったの?」
思ってもみない問い掛けである。レッドキャップは、頭から帽子を落としそうになった。
「ソンナコトヲ聞イテドウスル。カウンセラーノ真似事デモスルカ?」
「………ボクもわかんない。なんとなく、気になっただけ」
なんとなく、か。レッドキャップは呻いた。
なんとなくという割には、スワローの瞳には真剣な輝きが宿っている。少なくとも、今までの泣き顔よりはスワローらしい瞳だ。
レッドキャップは鉄仮面の中で目を閉じ、黙考した。
クライムハンターとしての活動を始めてから、かなりの年月が経つ。だが、動機を尋ねられたのは、思えばこれが初めてではないか。
わざわざ語るようなことではないが、同時に隠すことでもない。
この世とは言わず、この街であれば、実にありふれた話なのだから。
「ドコカラ、話スベキカ」
レッドキャップは、おもむろに帽子を脱ぎ、鉄仮面を外した。現れた素顔を見て、スワローは息を呑んだ。
年齢は、二十代も半ばだろうか。顔立ちにこれといった特徴はなく、帽子に押さえつけられていたためくしゃくしゃになった栗色の髪も、鳶色の瞳も、別に珍しいものではない。
帽子と仮面を脱ぐところを見なければ、誰も彼がレッドキャップであると信じないだろう………眉間を中心に、火傷が放射状に広がり、口の両端に引き裂かれたような傷跡が無ければ。
スワローの視線を浴びても、レッドキャップは眉一つ動かさなかった。
「これくらいで驚いてるようじゃ、俺の服の下は見れねえよ」
レッドキャップはくっくっと喉を鳴らした。仮面を外したため、声はもうくぐもっていなかった。
スワローはしばらくの間、言葉を失っていたが、やがて固唾を飲む音が聞こえると、再び口を動かした。
「それが……その傷が、クライムハンターになった理由?」
「………そうなる、な」
レッドキャップはソファの背もたれに体重をかけ、天井を見た。『アウトサイダーズ』をした時に飛び散った血がこびり付いている。
ちょうどいい。
血塗られた過去は、血を見て語るのが一番だ。
後のレッドキャップ、クライド・シーン――これは、スワローには内緒だ――は、正義感溢れる少年だった。
美しく優しい母と、人望ある刑事の父を誇りとし、自分も何時か刑事となって街の平和を守るのだと、輝かしい将来を疑いもしていなかった。
………全てが変わってしまった夜のことを、レッドキャップは今もよく覚えている。
あれは、クライド少年が十歳の誕生日を迎えた日の夜だった。窓ガラスが割れる音とともに、一人の男が家に入ってきた。
男は、起き抜けで無防備な父の手足を拳銃で撃って動きを封じると、無力なクライドを椅子に縛り付け、彼の前で母を犯した。
当時のクライドには、一体何をしているのかまだ分からなかったが、父が泣き叫ぶ声が聞こえたので、何か酷いことなのだろう、と思った。
それだけで済めば、まだ良かった。しかし、男の残虐な精神は強姦だけでは満足できず、母の手と足を縄で縛ると、持参した斧で爪先から微塵切りを始めた。
母の細い喉から発しているとは思えない、耳を劈く悲鳴。
泣きながら笑う父の、地獄に落とされた男のような顔。
それらを聞いて、見て、仰け反る男のけたたましい笑声。
その時のクライド少年がどうしていたのか、レッドキャップは思い出せなかった。

43 :
腹から下を肉片にされたところで母が絶命すると、次はクライドの晩だった。男は、母を早くし過ぎたことを悔いており、次の獲物はじっくりといたぶるつもりだった。
まあ、生きたまま切り刻まれた母に比べたら、顔に硫酸を垂らされるくらい何ともない………叫ばずにはいられなかったが。失明しなかったのは奇跡に近い。
次に、男はぶつぶつと何事かを呟き始めた父を元気づけるために笑えとクライドに命じた。
だが、顔を焼かれた直後である。笑うどころか、泣くことさえできない。
それに腹を立てた男は、台所から包丁を持ってくると、刃をクライドの口端に当て、ステーキを切るように引いた。もう片方にも同じことをした。
クライドのそれまでの人生の中で、一番血が出た瞬間だった。今度は、叫ぶことさえできなかった。
それから一時間かけて、男はクライドを拷問し続けた。気絶しては痛みに起こされ、クライドは地獄というものを正しく理解した。
やがて空腹を覚えた男は、再び台所に向かった。
残されたクライドに押し寄せる激痛。堪え切れずもがくと、彼を椅子に縛り付けていた縄が容易に切れた。
クライドの顔を焼いた硫酸が、数滴、縄に落ちたのだ。
自由の身となったクライドは、もはや見る影もない父を尻目に、母をめた斧を手に取ると、忍び足で台所に向かった。
冷蔵庫の中身に気を取られている男の頭を割るのは、十歳児でも簡単だった。
パトカーが駆けつけたのは、太陽が東の果てから昇り始めた頃だった。
「………親父が病院の屋上からで飛び降りたって聞いたのは、入院して三日経ってからだったな。看護婦達が、廊下で話してたよ。手足を撃たれてたのに、どうやって階段登ったんだろうな?」
目の前で最愛の妻を切り刻まれて、正気でいられる男など存在しない。父は狂気というなの車に乗り込み、辛過ぎる現実から永久に逃れた。
クライドの全身に刻まれた様々な傷は、およそ五ヵ月で癒えたが、傷口は永久に残るだろうと医者に宣告された。
彼がしたあの男の正体が、生前、父が逮捕した強姦人犯であるということを知ったのも、たしかその頃だった。模範囚として監獄から出て、今度は猟奇人としてんだのだ。
退院したクライドは、母方と父方の親類をたらい回しにされた。相手が相手とはいえ、人一人している上に、全身に醜い傷跡がある子供を、誰が欲しがるだろうか。
やがて、クライドは孤児院に預けられたが、一週間後に脱走し、行方を眩ませた。父の同僚からもらった、父の形見の白い帽子だけを持って。
それから、さらに十年後。二十歳になったクライド青年は、白い帽子に鉄仮面、トレンチコートを身につけ、クライムハンターとなってネクロシティに戻ってきた。
彼の初めての仕事の相手は、『ナットガイ・ギャング』と呼ばれる連中だった。元々はただの暴走族だったが、他の勢力と争う内に、ガソリンスタンドを襲って燃料を奪った後、火を点けて爆破するといった凶暴さを備えるようになった。
クライドは『ナットガイ・ギャング』の移動経路を調べ、待ち伏せをすると、重機関銃を乱射して彼らが駆るバイクを鉄屑に変えた。
空中に投げ出され、アスファルトに叩きつけられ、半分はそれでんだ。生き残った者達も、クライドの斧で頭をナッツのように割られ、脳漿を道端にぶちまけた。
ふと思いついたクライドは、体の首を切断し、流れ出した血に被っていた白い帽子を浸した。帽子は、見る間に赤黒く染まった。
そして、残りった血を使い、道路に大きく文を書いた。
『赤い帽子(Red Cap)には気をつけろ』と。
クライド青年はそこでに、代わりにレッドキャップが生まれた。
気をつけた悪党も、気をつけなかった悪党も、みんな平等にされた。

44 :
「どんな悪党でも、勝手にっちゃいけねえ。正しいよ、スワロー。法律でもそう決まってるからな」
レッドキャップは、キッチンの水道の水で働かせすぎた喉を潤しながら言った。スワローは、泣きも怒りもせず、ただ聞き入っていた。
「でも………さないと、俺は、俺を救うことができない。………泣き声が、聞こえるんだ」
レッドキャップは目を閉じた。暗闇の中に、椅子に縛り付けられた少年がいる。
彼は泣いていた。
なぜ、父と母がななければならなかったのか。なぜ、自分がこんな目に合わなければならなかったのか。
今この瞬間にも、頭のイカれた悪党が、誰かを傷つけている。自分と同じ子供達を量産している。
それが悔しくて、悲しくて、泣いているのだ。
監獄にぶち込むだけでは生温い。神に許しを請いながら、サタンと契約できる奴らだ。
せ。二度と、誰にも手出しができないように。
せ。もう、誰も泣かせないために。
全ての悪に、血の代償を求めろ。全ての悪を根絶やしにした時……クライド少年はきっと、泣き止んでくれるだろう。
レッドキャップは、水をまた少し口に含んだ。スワローは手の中のペットボトルに視線を落とし、俯いていた。
彼女はそこに、自身の過去を覗き見ているようだった。
「………ボクの父さんと母さんも、ボクが小さい頃、物盗りにされたんだ」
そう呟いたスワローに、レッドキャップは別段驚かなかった。
ただ正義に燃えているだけなら、普通は警察官や消防士になるだろう。クライムハンターの道を選ぶには、普通とは違うプラスが必要なのだ。
「それで、クライムハンターになって……だけどやっぱり、すのはいけないと思う」
「そうか」
「ボクの両親をした奴はまだ捕まってないけど、どこかで誰かにされるより、日の当たる場所で、法律で裁かれてほしい。そうじゃないと、ボクの中で、決着がつかないんだ。………ごめん、ボクこそ勝手だよね」
「……お前は、それでいい」
「え?」
スワローが、無意識だろうがやたら可愛らしく小首を傾げたので、レッドキャップは間近にあっても気付かれないほど、小さく吹き出した。
レッドキャップの話を自分なりに飲み込んだ上でその答えが出せるなら、それは強さだ。
スワローは、やはり、間違いなく強い少女だった。
それからおよそ一時間近く、部屋に沈黙が降り注いだ。緊張ではなく、弛緩、だったろうか。
手持無沙汰に耐えかねたレッドキャップが、斧の手入れでもしようかと、ソファから腰を上げようとした時、スワローが吐息混じりに言葉を紡いだ。
何故か、やけに熱ぼったい。
「あの、さ」
「何だ?」
レッドキャップが怪訝な顔で尋ねると、スワローは大きく息を吸い、そして吐いてから答えた。
「………ボクと、エッチ、してみない?」
いや、処女だと何かと不便そうだし、キミとならいいかな、とスワローは赤い顔でぶつぶつ呟いていたが、愕然とするレッドキャップの耳にはほとんど届いていなかった。

45 :
次回はエロだとキッパリ言ったばかりだったのに………スマン、ありゃウソだった。
マジでごめんなさい。エロパロ的にはどうでもいいことばっか書いて
次回は本当にHシーンなので勘弁してください

46 :
ちょうどダークナイト見たばかりだったからジョーカー思い出した
>>45
キャラの背景がしっかりしてる方が感情移入できるからむしろ御褒美
前戯は大事だからな!

47 :
禿同

48 :
普通に面白いからたちが悪いぞwww

49 :
まったく、これは一体何の冗談だ?
ベッドの上に寝転がり、自分の動きをじっと待っているスワローを見下ろしながら、レッドキャップは思った。
この世のどんな神が気まぐれを起こせば、あのスワローが自分に「抱いてくれ」などと頼む?
彼女の顔は真剣そのもので、とてもふざけているようには思えない。しかし、レッドキャップは念のため尋ねた。
「本当に、いいんだな?」
「何度も言わせないでよ。………恥ずかしいんだから」
そう言って、スワローはぷいと横を向いてしまう。その動作は、レッドキャップの胸の中をくすぐったくしたが、さてどうしたものやら。
レッドキャップは、童貞である。
彼の青春は、悪への復讐の前準備に費やされた。体を鍛え、戦い方を覚えるのに必で、異性への興味が入り込む隙もない。
現在にしても、女を組み敷いて腰を振るよりも、悪党の腹の上に馬乗りになって拳の雨を降らせる方が楽しそうだと思える。
第一、この傷だらけの顔では、女を買ったとしても気味悪がられ、拒まれるに違いない。
スワローのような、よほど物好きな女でなければ。
そんな訳で、今まで女というものを知らずに生きてきたレッドキャップではあるが、
(美しいな)
頬をほんのり朱に染め、ベッドに寝そべるスワローを見て、レッドキャップは素直にそう思った。
開きの大きい、黒目がちな瞳。それを整える、細いながらにはっきりとした眉。
鼻は小さく愛らしく、固く閉じられた口元に浮かぶ気品。以前から感じていたが、彼女はどうも上流層の出らしい。
目元は黒いフェイスガードに隠されているが、スワローの魅力を損なう要素にはなりえない。
青と白のボディスーツを纏う肢体も、少しばかり肉付きが薄いのを除けば、世の男の垂涎を確実に集める一品だった。
「………ボク、おっぱいちっちゃいし、お尻も大きくないから、触ってもつまんない……かも」
品定めをするような視線に気づき、スワローはふてくされたように頬を膨らませた。レッドキャップは無言で首を横に振る。
むしろ、血塗られた男にはもったいないと、レッドキャップの方が自虐的にならなければならないくらいだ。
それを口でスワローに伝えられるほど、彼は口が上手くない。そうでなくとも、この場でもっともふさわしいのはボディランゲージである。
レッドキャップはベッドに上がり、スワローに覆い被さる形で四つん這いになった。男の体重で、ベッドのスプリングがぎしぎしと軋む。
この後に及んでも、レッドキャップはボディアーマーと鋼鉄のブーツを身に着けていた。それでも、シャワーを浴びる時以外は常に装備一式を手放さない彼にとって、他人の前で初めて見せるもっとも無防備な姿だった。
スワローが、きゅっと身を固くするのがわかった。上と下、男と女の視線が絡み合う。
「……痛くしたら、怒るからね?」
「気を付ける」

50 :
さて、最初はどうするんだったか。レッドキャップは頭の中の僅かな知識を掻き集めて考えた。
たしか、彼がよくす強姦魔のように、いきなり挿入するのではなく、先に胸などを触って慣らすのだ。
レッドキャップは視線を下げた。
スワローの呼吸に合わせて僅かに揺れ動く小振りな乳房が、汚されたことなどないことを表して驕慢に上を向いている。
レッドキャップは右手を使い、慎重に右の乳房を掴んだ。小振り、とは言ったが、なんとか揉むことができる程度のボリュームはある。
ゴムに似た素材のスーツが、レッドキャップの手に貼り付いた。クライムハンターとして鍛えているだけあり、指を内側に向かって動かすと、負けじと押し返してくる乳肉の弾力が楽しい。
レッドキャップは我知らず子供に戻り、子供にはふさわしくない遊びに興じた。
「んっ、く、くすぐったいよ」
スワローが身を捩る。痛みはないようだが。
「気持よくはないか?」
「わかんない………ひゃっ!?」
出し抜けに、スワローが甘い声を上げる。見れば、レッドキャップの指の間で、麦粒ほどの乳首が精いっぱいに膨らんでいる。
試しに、押し潰すようにして乳房ごと揉み込んでみると、ふわあっ、とスワローは大きく喘いだ。確実に、痛みを示すものではない。
スーツ越しでこれなら、直に触ったらどうなるのだろう。興味が湧いたレッドキャップは、早速スワローのスーツを脱がしにかかったが、やり方が分からない。
焦れたレッドキャップは、右手の指を揃え、手刀の形にすると、一閃。
ちょうど、乳首を覆っていた辺りの生地が、横一文字に引き裂かれた。薄桃に色づく蕾が外気に触れると同時に、解き放たれる汗の香。
シャワーも浴びていないことを思い出したスワローが、耳まで赤くしてレッドキャップの下で暴れ出す。
「ちょ、ちょっと! なんで破っちゃうのさ!?」
「脱がせにくいスーツを着ているお前が悪い」
「ううっ、これじゃレイプされてるみたいだよ……」
スワローがそんな泣きごとを言っていられたのも、レッドキャップが彼女の右の乳首を口に含むまでだった。
スワローの半開きになった唇から湿った声が漏れ出すのを聞いて、レッドキャップは自分の攻め方の正しさと、もう一つどうでもいいことを知った。
こいつの胸は、ふやけたソルトピーナッツみたいな味がするな。
レッドキャップは自分の唾の味しかしなくなるまでスワローの蕾をしゃぶり、余った手で左の乳肉をやわやわと揉んだ。
スワローは、胸への集中攻撃から逃れるように身を捻ったり、レッドキャップの背中をぺしぺしと叩いたが、それらの反応は男の気をよくするだけだった。
やがて口が疲れてくると、レッドキャップはようやくスワローの胸から離れた。薄桃色だった筈の乳首は唾液でずるりと輝いて、今にも破裂してしまいそうな真紅に染まっている。
レッドキャップは舌を休ませながら、もう片方も同じようにしてやればいいかな、と考えた。
「………ん」
レッドキャップは眉間に皺を寄せ、ひくひくと焼けただれた鼻を動かした。どこからか、饐えたような臭いがする。
彼の嗅覚は、犬ほどではないにしろ敏感だ。時には、それが命を救うこともある。
レッドキャップは臭いの元を追って視線を下げた。下げて、下げて……スワローの股間に辿り着く。
やっ、とスワローは反射的に肌が露出した大腿を閉じたが、レッドキャップは力づくで広げた。
内腿は湿って輝いていたが、根元付近はスーツの青が黒くなっており、股間を覆う白い部分は灰色に変色していた。
鼻を近づけてみれば、なるほど。糊のような、鼻腔にねっとりと絡みつくような臭いを放っている。
人差し指でそっと触れてみると、銀の糸が伸びて千切れた。

51 :
「すげえな。こんなに、汁が出るものなのか?」
レッドキャップは、あくまで好奇心から聞いたのだが、スワローはそれを言葉責めの類と受け取ったらしい。
男の頭に、容赦のないチョップ。
「し、知るもんか! レッドキャップが、おっぱい舐めるからいけないんだっ!」
「つまり、今度はこっちを弄れってわけか」
レッドキャップは右手をスワローの下腹の辺りに当てると、そのまま上に擦り上げた。スーツの生地がずれ、股間の中心に、ぴっちりと閉じた筋のようなものが現れる。
これが、俗に言う秘裂というやつか。クソったれの強姦魔達と長く付き合ってきたおかげで、もっと下品な呼び方も知っているが、わざわざ口に出すこともないだろう。
レッドキャップが無言で左手の人差し指を押し付けると、スーツがぐちゅぐちゅと音を立てて濡れた肉の中にめり込んだ。
「っ! きゃわぁっ!?」
仰け反り、白い喉を晒すスワロー。肉付きの薄い尻が、スタンガンでも喰らったかのように痙攣する。
勢いで人差し指の根元まで挿し込んでしまったが、酷く狭くて、熱い。まるで半固形化した出来たてのシチューだ。
先程は容易に切れたスーツだが、強度はそれなりにあるらしく、レッドキャップの人差し指で主の膣内に埋め込まれても、破ける様子はなかった。生意気なやつだ。
「ふわ……スーツごと、なんて………やっ、指曲げちゃ、ひっ掻いたらだめぇっ!」
人差し指に、膣内の熱が人差し指にきつく絡む。軽く捻ると、粘液がじゅくじゅくと染み出してきた。
スワローがブーツの踵で男の背中を叩き始めたが、レッドキャップの指は止まらない。それどころか、スペースにまだ少し余裕があると感じるや、人差し指を挿したまま、今度は中指を膣内にずぶりと押し込んだ。
「あひぃっ」
喉奥から絞り出された声とともに、レッドキャップの背中を攻撃していたスワローの足が止まる。それなりの効果はあったようだ。
穴の中に巻き込まれたスーツが、元に戻ろうと二本の指を押し返そうとするが、処女であることを示して、異物をきつく締め上げる肉壁がそれを許さない。
それをいいことに、レッドキャップは人差し指と中指をV字に広げ、内部の拡張を試みた。
まだ少し固い気もするが、それまでの前戯が効いたらしく、上の唇のように涎を垂らしながらぱくりと開く。
先ほどよりも、臭い―――雌の香り―――が濃くなっているようだった。
擦られるのとはまた別種の感覚にどう反応したのか。スワローはレッドキャップに頭突きを喰らわせた。
ごち、と一瞬火花が散る。倒れはしなかったものの、勢いで指が抜けてしまった。
「……今、斧を持ってたら、それでやり返してたぞ」
「うっさい! ボクのここ、さんざんいじくり回して! ……トロトロにしたくせに……」
怒っているのか恥ずかしいのか、両方か。スワローは今にも噛み付かんばかりである。
レッドキャップがふと視線を下向けると、スワローのスーツの股間部がびろりと伸びていて、口内から吐き出された舌のようにシーツを汚していた。
頃合い、だろうか。レッドキャップはスーツの股間を覆う部分を掴むと、一気に引き裂いた。
露出した三角地帯は、スーツのそれとは違う、雪のように繊細な白をしていた。恥毛は薄く黒く、半開きになった縦割れの赤貝からは、白濁した汁がどくどくと流れ出ている。
というか、
「まさか、いつも下着つけてないのか」
レッドキャップは呆れたような声を出した。
「だって……このスーツだとパンツとかブラジャーが浮かび上がって、恥ずかしいし……」
「お前、本当はレイプ願望があるんじゃないだろうな。あの時、もう少し助けるの待った方がよかったか?」
「そ、そんなことないもん!」

52 :
これからお互いに初体験というには、確実にムードが足りない。しかし、体の方は素直という点でも、お互い様のようだった。
レッドキャップがズボンのチャックを下ろし、ズボンを下げると、抑えられていたペニスが腹をも打たんばかりの勢いで飛び出した。
それを見たスワローが一瞬、呼吸を止める。
血管の蔦が巻き付いた、肉の大樹。先端の亀頭は、煌めくように赤かった。
大きいのか小さいのか、誰かと比べたことはないが、スワローの思考を停止させる程度ではあったようだ。
これから自分の体を貫く槍をじっと見詰めて、呆としている。

53 :

「怖いか?」
「――――え、あ……平気、だと思う、たぶん……」
「保証はできないが、優しくする」
「………うん」
レッドキャップはスワローの淫裂に亀頭をあてがうと、そのまま一気に押し込んだ。その方が楽と、誰かから聞いた気がする。
ぶじゅっ、と粘液が弾ける音。
ぷちっ、と押し留めようとした何かを引き千切る音。
こつん、と先端が最奥に届くと、スワローは破瓜の痛みに悲鳴を上げた。
「ぐぅっ、あああっ! 痛っ、痛いよぉっ!」
愛液とは違う液体が、幹を撫でる感触があった。スワローは奥歯を食い縛って頭を振り、両手両足をばたつかせる。
レッドキャップも呻いた。スワローが無意識に下腹に力を入れているため、膣内が窄まり、レッドキャップのペニスをがっちりと締め付けている。
このまま動いて、溜まっている物を放出したい。本能がそうしろと命じる傍らで、理性がこう囁く。
――――お前も、あの男のようにはなりたくあるまい?
運命の夜、泣き叫ぶ母を犯してした、あの男の顔が目に浮かぶ。十年以上も前のことだが、傷口は今も血を流し続けていた。
胸に走る疼痛を抑え、レッドキャップはズボンのポケットからカプセル錠を一粒取り出し、自分の口の中に放り込んだ。
そして、ベッドの片隅に転がっていたペットボトルを拾い上げ、ミネラルウォーターを口に含むと、唇をスワローの唇に押し付け、口移しでカプセルを飲ませた。
「んむっ!? んっ、んぅ……ん……」
スワローは少しの間、驚いていたが、やがて眦がとろりと下がる。レッドキャップは、向こうもこれがファーストキスかな、と思ったが、先に処女を奪っておいて今さらだった。
やがて、ちゅっと音を立てて二人の唇が離れる。
「はあっ……何、飲ませたの?」
「鎮痛剤だ。撃たれた時とかに使う、即効性のやつだが……少しはマシになるだろ」
「……………うん、ちょっと楽になってきた」
それでもまた疼きはするか、スワローは手袋に包まれた両手を胸の前で交差させ、ゆっくりと息を吐いた。
一房に青いメッシュがかかった黒髪は乱れに乱れ、目元をアイガードで隠した顔は、涙と涎でぐちゃぐちゃになっている。普段の凛としたスワローを知っているレッドキャップは、何故だか妙に興奮している自分を見つけた。
そういえば、膣内に突っ込んだまま放置しているペニスも、そろそろ我慢の限界が近い。
レッドキャップは腰を引き、ペニスを半ばまで抜いてみた。すると、スワローにがしっと肩を掴まれる。

54 :
「どうした。まだ痛いか?」
「違っ、こ、今度はぁ……か、感じちゃうんだよぉ……」
スワローはボディアーマー越しにレッドキャップの胸板に鼻面を擦り付け、くぅんと子犬のように鳴き始めた。
レッドキャップは飲ませた薬は、あくまで鎮痛剤であり、催淫剤の類ではない。
痛みを和らげただけで、こうも反応が違うものなのか。それとも、スワローがアレなだけなのか。
何にせよ、もう遠慮しなくていいということだ。レッドキャップは思い切り腰を前に突き出した。
「ひゃあっ、お願い、待ってよぉ!」
スワローがいやいやと首を横に振るが、それはレッドキャップの獣を刺激するだけだった。
「もう観念しろ。……動くぞ」
そう言って、レッドキャップはスワローの脚を両脇に抱えると、本格的に抽送を始めた。
ぱんぱんと肉と肉がぶつかる音が響く度、愛液の飛沫がベッドを汚す度、快楽の痺れがレッドキャップの背筋を駆け上がる。
スワローの腹の中で肉槍が跳ね回り、膣肉を乱暴に掻き分けた。
「レッ、ドキャッ、ふきゅっ、ボクの……気持ち、いいの?」
「ああ、最高だ」
「えへへ、何だかうれしいな……ああうっ!」
穴の天井をごりごりと亀頭で削られ、スワローは艶声を上げた。瞳には、淫らな輝き。
「ひいぃっ、もっと、もっと欲しいよぉっ! もっとぉ!」
「……俺も、お前を、スワローをもっと滅茶苦茶にしたい」
二人のクライムハンターは、今や二匹の獣と化していた。求め確かめ合うため、前後に左右に腰をぐりぐりとねじ動かす。
少女の肉穴は掻き回され、無数の泡が爆ぜるような性感を噴き出していた。男の槍も、少しでも相手に快感を与え、自らも貪ろうと乱れ突きを放つ。
互いに、限界は近かった。
「もっ、駄目っ、来ちゃうぅっ!」
「くうっ……!」
動きは、自然と速く激しくなった。別れが近いことを悟ったかのように、膣壁がペニスを甘噛みする。
尿道を灼熱が駆け上がるのを感じ、レッドキャップは先端を最奥に叩きつけ、動きを止める。
数秒後、スワローの内部で、高温の粘液が爆裂した。
「うあっ、ひああああああああっ!」

55 :

「………」
「何を怒ってやがる」
「………人鬼、強姦魔、レイパー」
「人鬼の称号は甘んじて受け入れるが、残りは知ったことか」
「ボクのスーツ、びりびりのぐちゃぐちゃにしちゃうし……マスクはかろうじて無事だったけど」
「さっきも言ったが、脱がせにくいスーツを着てる方が悪い。服も貸してやっただろ。男物だが」
「約束したのに、痛くするし」
「保証はしないと言った筈だ」
「………中に、出しちゃうし」
「………それは悪かったよ」
レッドキャップが窓の外に目をやると、夜闇に大分白が混じっていた。夜明けが近いのだろう。
思う存分、情を交わした二人はシャワーを浴びて汗やら精液やらを洗い流し、服を着替え、ソファに隣り合って座っていた。
ベッドは、もはや人が寝れるような状態ではなくなっていた。少なくとも、レッドキャップがどう洗濯しようか頭を悩ませるくらいには。
「というかな、お嬢さん。お前が誘ってきたってことを忘れるな」
「そうだけどさ……赤ちゃんできたら、どうしよう……」
先ほどからやたら不機嫌なスワローに、レッドキャップは溜息をついた。
女とは、みんなこんなに面倒なものなのか。だとすれば、断じて結婚などすまい。
ふと気付くと、こっちを向いたスワローが目を閉じ、んー、と唇を突き出していた。
「何の真似だ?」
「ファーストキスの、やりなおし。してくれたら、全部許す」
本当に、女ってやつは面倒だ。俺は絶対に結婚なんかしないぞ。
レッドキャップは眉間に皺を寄せ………スワローと唇を重ねた。

56 :
というわけで、スワロー編は終了です。付き合っていただいて超感謝。

57 :
乙!レッドキャップもスワローも好感持てて楽しめた
ところで、「編」?
まさかレッドキャップの一代記が始まるのかw 超期待する

58 :
>>56
これは良い
スワローは割とテンプレな感じの小娘に無難に仕上がっているだけなんだが、レッドキャップのキャラが良いな
なんかそれまでの硬派な感じがハーフボイルドに崩れてオチがついている。
そういう意味ではそこまで無理なく運んでいけたスワローのキャラはこれで正解なんだね。

59 :
レッドキャップに関してはもうちょい引っ張ってこうかなって思ってたり。気に入ってくれたならこっちもうれしい
ついでに非エロで仮面ライダー響鬼のパロ投下します

60 :
「やあ少年、おはよう」
僕が河原で朝食の支度をしていると、テントの中から響子さんが顔を出した。大柄な女性だが、ぼさぼさの黒髪と平時から細い目が、威圧感よりも穏やかさを発している。
「もう少しかかりますから、まだ寝てていいですよ」
「うんにゃ、体操して体ほぐさなきゃ……ふわあ」
そう言って、あくびをぷかり。響子さんがのそのそとテントから出てきた。
酷い格好である。
ファスナーが半分下りた赤いパーカーからは、まるでメロンかスイカのようなボリュームの胸を包むスポーツブラが覗いているし、紫のジャージズボンは盛大にずれていて、今にもパンティが見えそうだった。
毎度のことではあるけれど、僕はすぐに目を反らした。
響子さんは、驚くほど自分の身嗜みに頓着しない。三日以上も着たきり雀は当たり前で、髪も僕がいちいち言わなければ床屋にもいかない始末。
二十代も後半になって、未だに浮いた話を聞かないのはその所為だろう。
確実に、美人と呼ばれる人種ではあるのだが。
「あー……少年」
「なんですか?」
鍋の中の味噌汁を掻き混ぜる僕に、響子さんが川縁で屈伸しながら聞いてきた。
「ごめん、今回のターゲットはなんだっけ?ド忘れしちゃった」
「大ムカデですね。近くの住民にも被害が出てますし、今日中に始末できたらいいんですが」
「んん、あんまり隠れるタイプじゃないから、すぐに見つかると思うんだけどね」
僕は考えることもなく答えた。
日本にはたくさんの妖怪がいて、人間に害を成す、という事実を知っている人はあまり多くない。
僕がそれを知ったのも、ほんの数年前のことだった。
蠅や蚊を退治するために虫剤があるように、妖怪を退治する「鬼」と呼ばれる人々がいる。
特殊な修行によって、神通力を得た人間の総称だ。響子さんは、その「鬼」の一人であり、僕は彼女の弟子だった。
人柄もよく、他の「鬼」からの信頼も厚く、僕自身も彼女を慕っているのだが、たった一つだけ不満があった。
「………ところで、響子さん」
「うん?」
味噌汁の匂いに釣られて寄って来た響子さんに、僕は思い切って言ってみた。
「いい加減、僕のこと少年って呼ぶの、やめてくれませんか?」

61 :
少し刺々しくなってしまったが、掴んで口の中に戻せはしない。
響子さんは目を丸くしていた。僕がこんなことを言うとは思わなかったのだろう。
以前から感じていたことだが、彼女は僕を男性と認識していない。
そうでなければ、狭いテントの中で人を抱き枕にしてぐーすか寝たりしないだろうし、食べかけのアイスに横合いからかぶりついて「間接キスだねー」なんてしないはずだ。
この間なんて、僕が洗濯機に汚れた衣服を放り込んでると、「あ、これも洗っといて」と脱ぎ立てのパンティやブラジャーを投げ渡してきたし。
…………いや、ご褒美かも知れないけど。
僕はたしかに未熟者で、「鬼」に変身するどころか、響子さんと腕相撲をしても一秒で負ける。
しかし、それとちゃんとした男性として認識してもらいたいという感情は、まったくの別物だ。
硬直する響子さんの瞳を見詰め、僕ははっきりとした声で言った。
「響子さんは、僕のことをどう思って………」
その時、河を隔てた向こうにある森が、確実に揺れた。
響子さんは無論、僕も反射的に姿勢を低くして構える。
―――キシャアアアアアアアッ
およそ、この世のどんな生き物も発しえない咆哮。とは、この世ならざる者の咆哮。
………大ムカデだ。
僕も、時と場合は心得ている。火を消し、傍に置いてあったサポート用の道具が詰まったトランクを手に取る。
響子さんは瞳を閉じ、深呼吸。刹那の精神統一。
次の瞬間、彼女の全身が紫の霊火に包まれた。
「はあっ!」
気合一閃、炎が散る。中から現れた現れたのは、一体の「鬼」。
パーカーやジャージは燃え尽き、露出した肌は、日輪の照射を受けて輝く紫紺に染まっていた。
全身の筋肉のうねりは、まるで彫刻刀で彫られたが如く。豊かな胸や、股間、両手足は、赤い骨のような装甲に覆われている。
顔の造形は、響子さんのそれと全く変わっていないが、赤い隈取りのような模様が浮かんでいて、額からは二本の角が伸びている。
先刻までの響子さんとは違う、猛々しい雰囲気。「鬼」としての彼女の名を、焼鬼。
当代きっての妖怪退治人だ。
「行くよ、少年!」
「はいっ」
阿吽の呼吸。たった数年、されど数年だ。
僕と焼鬼さんは、大ムカデがいるであろう森に向かって駆け出した。
その時、
「…………好きな人の名前を呼ぶのは、けっこう恥ずかしいんだぞ」
と、前を行く焼鬼さんが呟いた気がしたが、きっと妄想の産物だろう。

62 :
投下終了。前も電王で書いたけど、仮面ライダー系はやりやすいな。

63 :
響鬼ネタ…こう言うのもいいですね。
本名で呼ぶ事を許可していると言うのは何かまた違う感じがしますし。
少しガサツなヒロインと弟子兼彼氏(笑)のその後も定番なれど気になります。
せめてDCD編みたいな別れは勘弁…?

64 :
上手いな

65 :
清めの鬼の筋肉描写が良い

66 :
規制食らって投下できない…

67 :
安心しろ、変身ヒロインが戻ってくるまで俺達がスレ落ちを食い止める!

68 :
これまでにも何度も規制にやる気を挫かれてるので…
http://heroinelove.seesaa.net/
勝手ですがまとめサイトを作らせていただきました

69 :
おおー乙
このまとめって前スレの作品も貼られるんだろうか?

70 :
貼っていいなら貼るよ

71 :
貼ってもいいんじゃないかな
こういう作品があるって例示は多い方がいいだろうし

72 :
>>68
いつの間にか保管庫更新乙
完全にお任せにしてて悪いんだけど
前スレには「続・鉄壁処女バージンダー」もあるよ

73 :
 うちの大学にはミスなんちゃらを開く風習はないが、もし開いたら雪菜(せつな)さんがダントツだろう。
 そう疑いなく思えるのは、ほろ酔いでご機嫌になっているからだけではあるまい。
 雪菜さんにはそれほどの不思議な魅力がある。しかし「まず出ないだろう」というのもファンの総意に違いない。
 色白で、長身で、細身で、クールビューティーの言葉がよく似合う雪菜さん。
 入学したてのころから何かと噂の的となり、たちまち学内で知らぬ人間はいなくなった、と言われている。
 何にせよ彼女の氷のような美貌に惹かれる一人でしかなかった僕は、いつも遠巻きから見ているだけだった。
 今日も、行き着けの飲み屋の一隅から、離れたカウンターで飲んでいる雪菜さんを眺めている。
「やっぱ……雪菜さん、いいよなあ」
「ああ。指先まで細くて白くて……綺麗だ」
 雪菜さんの染みひとつない色白な柔肌は、細部に至るまで、男女問わず大層な評判である。
 並んで飲んでいる僕ら三人も、グラスに添えられた雪菜さんの指に目を奪われていた。
 僕らは飲み仲間であり、特に雪菜さんを眺めながら飲むときは(なぜか)いつも一緒に座っている。
 ……個人的に文句があるとすれば、他の二人には既に『彼女』なるものが在るということだ。
「そりゃいるけどさ。雪菜さんは別腹だよ」
「ああ。美人を目で追っちまうのは男の習性だからな」
 わかるようで、釈然としない。
「お前こそ、卑屈になってないでプラスに考えろよ」
「ああ。独り身ってことは、堂々と雪菜さんを口説けるってことだぞ」
 別にそんな高望みはしていない。
 大学で民俗学を取り、その中でも妖怪をメインに研究している僕に、女の子受けするトークをする自信など皆無。
 ならばせめて、酒の肴に美人さんを、と洒落込むのが身に適った贅沢というものだ。
「……慎ましい、というか」
「ああ。根性も甲斐性もないやつだな」
 なんなんだ、お前ら。とにかく、僕はまだ彼女はいらん。論文もあるし。
 ……。
 彼女。彼女、ねえ。
 実を言うと、心当たりがなくもないのだが。

74 :
 それは、半年ほど前の、大学からの帰りが遅くなったとある夜の出来事。
 僕は夜道で、よくわからない『何か』を発見してしまった。
 闇夜に淡く輝く、地べたに横たわる謎の物体。
 見なかったことにするという道もあるが、自分の家(アパート)の前にあるのでは、それも不可能だ。
 覚悟を決め、恐る恐る近づき、だいたいのシルエットがわかると一気に駆け寄る。これ、人だ。
 その謎の光の正体は、闇夜に映える白い肌。肌の白さに見合う、美しい女性だった。
「……なんだこれは」
 行き倒れ、というだけで既に穏やかではないが、もっと危険なのは彼女の格好である。
 やたら透明感のあるビキニに、白い毛皮のマフラーを一枚巻いただけという過激な状態。
 あと見につけているものといったら、ハイヒールと、ポニーテールにするための髪留めくらい。
 ビキニもハイヒールも、ガラスというよりは、氷か水晶で出来ているようだ。
 なぜ、僕の家(アパート)の前で、露出狂が倒れている。
 や、露出狂はともかく。人が倒れているんだ、助けないと。
 これは必要な措置だ、不可抗力だと念仏のように唱えながら彼女に触れると、
「冷たっ!?」
 んでる……そう直感するほど、彼女の肌は白く、冷たかった。
 だが、次の瞬間に唸り声をあげたのを見て、誤解とわかる。動いているんだから、生きてるはずだ。
 少しだけ安心したが……これからどうすればいいんだ。
 警察に通報? 大声をあげる? この場で起こしてみる?
「……ええと」
 ニア 家も近いし、せっかくだから……

75 :
「あ、起きましたか」
 あれから小一時間、彼女が目覚めるのは意外に早かった。
 しばらく、きょとんとした顔をしていた彼女だったが、不意に手許の毛布でバッと体を包む。
「いッ……いやいや何もしてませんよ! むしろあなた最初からそんな格好だったじゃないか!」
「そ、そうでした……すみません、でも、やはり恥ずかしいので」
 じゃあそんな格好するなよ、と言ってやりたかったが、事情があるかもしれないのでぐっと堪えた。
 堪えるついでに、頭も冷やす。受け答えからすると、この人は単なる可哀相な露出狂とは言い切れないようだ。
 むしろ、親しみやすい程度のほどよい気品を感じられる。
「あの……私のこと、誰にも言わないでください。お願いします、何でもしますから!」
「何でもって……」
 戸惑う僕に、彼女はずいと近寄る。もうほとんど圧し掛かられている。ひんやりする、気持ちいい。
 彼女の目に、僕はどれだけ鬼畜な人間として映っているのだろうか。ちょっと残念な気分になる。
「何でもするんですね?」
「は……はい」
「それじゃ、もう行き倒れるのはやめてください」
 彼女は、またきょとん顔を向けてきた。
「行き倒れるような危ないことをしてるなら、もうしないでください」
「え……」
「あとは、早いところ元気になってお家に帰ってください。ちょっと注文が多くなりましたけど、頼みます」
「あ、ええと……はい……」
 なぜかしゅんとしてしまった彼女を見ていられなくなり、僕は意識して笑った。
「とりあえず、警察にもどこにも連絡はしてません。これからも誰にも言いませんから、安心してください」
「……」
 もっと堅くなってしまった。なぜだ、僕の笑顔はそんなにお粗末なのか。
「あ、ええと……と、とりあえず今日はもう遅いですし、危ないし、良かったらそのまま寝てください」
「あなたは……?」
「トイレに篭って書き物でもしてます。用があったら、呼んでください」
 その後、論文を書きながら不覚にも寝落ちしてしまい、目が覚めてトイレから出るとと彼女はいなくなっていた。
 一応、「お世話になりました」という書置きが残っていたのはちょっとした救いだ、と思う。
 あっさり帰しておいて難だが、その日以来、僕はその子のことが忘れられない。
 まあ、あんな格好されちゃあ忘れろという方が無理か。一応、約束は守って誰も話してはいないけど。

76 :
 さて、話は現在に戻る。
 その日、僕は論文に一区切りがついたので、ひとりでゆっくり飲もうと飲み屋に向かっていた。
 僕は打ち合わせというのが得意でなく、飲み屋で一緒に飲む時も、たまたま居合わせたからということが多い。
 だから今日は自分しか知らない(と、思っている)穴場に行くつもりだった。
 だから、店の前で雪菜さんに声を掛けられたときは、心底驚いた。
「先輩とは、ぜひ一度お話がしたかったんです」
 いったい何が始まるんです?
 自分だけのテリトリーと思っていた飲み屋で、雪菜さんを前に、僕はガチガチに固まっている。
「え、ええと、僕のことを知ってるんですか?」
「妖怪学の名物学生だって、有名ですよ」
 いや有名だなんて雪菜さんほどでは――というか、やはりそんなありがたくない評判か。
 妖怪学なんて学問はないと思うのだが。僕の師事する教授が勝手に言い張っているだけで。
 それはいいんだ。そんなことより。
「ところで、お話というのは……」
「それは……ま、まずは飲みましょう。何にしますか?」
 なし崩しに飲み比べが始まり、ひとつだけわかったのは、雪菜さんが噂通りの人ではないということ。
 クールビューティーというと、お高くとまっているというようなマイナスイメージがつきがちだ。
 実際、僕もそんな風に思っていたのだが、雪菜さんには高飛車なところなど全く感じられない。
 お嬢「様」というよりは、お嬢「さん」といった感じの人となりで、親しみやすくて感じが良い。
「先輩。彼女さんは、いますか?」
 むせる。
「だ、大丈夫ですか!?」
 むせた原因が酒だったため、アルコールの匂いが喉に染み付いて余計にむせる。
 雪菜さんは申し訳ないことに、背中をさすってくれている。
「大丈夫です……でも、何でそんなことを?」
「気になったからです」
「もっと言えば――先輩が、前々から私のことを見ていらしたからです」
 バレてら。
 やべ、しまった、まずい、断罪される。
 見ているだけでいい、なんて思い上がりもいいところだった。
 あ、でも僕だけじゃない。見てるのは僕だけじゃないぞ、何人か名前出して道連れにしてやる。
 そもそもたくさんいる中でどうして僕だけが呼び出しを受ける。
 いったい何が始まるんです?
「先輩は、私のことをどこまでご存知ですか」
 もう僕はダメかもわからん。

77 :
 その後は、まるで面接試験のような一問一答となった。あまりに悲惨なので割愛したい。
 ちょっと夜風に当たると言って、表に出ることができた。この隙に、体勢を立て直さなくては。
 いやちょっと待て、直してどうするんだ。言い逃れをすればいいのか。
「いっそ本当に逃げるか」
 それはまずい。僕はまだ飲み代を払っていないし、黙って帰るのも心苦しい。
 どうしたものかと困っていると、突然、声をかけられた。
「お晩っス」
 なんだ、こいつは。
 緩そうな口調、目深に被りすぎて顔を隠す野球帽。見るからに怪しい。
 見ず知らずの僕に声をかけてくるとは、二次会を終えた酔っ払いだろうか。
「実は、人を探しているんスけどねぇ」
 ちゃんと用事があったようだ。
「まあ、一言でいえば『痴女』だね。色白で、ビキニマフラーなんつー変態なカッコしてる女」
 心当たりがあり過ぎて生きるのが辛い。
「……知らないな、そんな人」
 だが、正直に答えてやることもあるまい。相手がここまで怪しい人物であるなら、尚更だ。
 返答を聞いた彼は、深く被った帽子のつばを上げる。そこから覗く顔に、僕は息を呑んだ。
 突き出た口元が異様に捻じ曲がっている。まるで、縁日のお面で売っている――
「ひょっとこ」
「その名で呼ぶんじゃねェ!俺はよォ――『火男』だ!」
 ひょっとこ、改め火男は、地面に叩きつけるように息吹く。
 目の前が、爆煙で真っ暗になった。
 僕は命からがら逃げ出したが、体が思うように動かず、なかなか前に進めない。
 路地裏に駆け込んだところで、足がもつれて派手に転んでしまった。
「先輩!?」
 騒ぎを聞きつけたのか、駆け寄ってきた彼女に抱き起こされる。こんな状況でも、嬉しいものは嬉しい。
 僕の頬を撫でる彼女の表情は、とても痛ましい。そのとき、視界の端に近づいてくる火男を見た。
「雪菜さん、あいつは危ない……僕はいいから、逃げてくれ」
 体のあちこちを打撲したのもそうだが、煙を吸ったせいで頭がぼんやりする。
 このままでは、何をするにしたって足手まといだ。彼女だけの方が行動しやすくなる。
 僕の言葉を聞き届けた彼女は、しかしそうはせず、睫毛の長い目蓋を静かに閉じた。
「知らねぇなんて嘘つくからだっつの」
 吐き捨てた火男に、雪菜さんが氷のような非難の目を向ける。
 何だか、雪菜さんの服が凍り付いていっているように見えるが……幻覚だろうか。
「――許しません」

78 :
 どこからか、冷風が吹き込んできた。季節じゃないのに、粉雪まで吹雪いている。
 雪菜さんを包み込む風。僕はその風の中に、白狐の姿を見た気がした。
 風に巻かれた彼女の服は、パキン、と音を立てて粉々に砕け散った。
 氷のかけらが舞い、彼女を隠す。風が止むと、そこにいたのは――『雪菜さん』ではなかった。
 黒髪から変色した白銀の髪は、雪の結晶を模した髪留めで一つに括られている。
 涼しげな目許を彩る瞳の色は、限りなく透明に近いブルー。
 肌も色白を通り越して、霜が降りているのかと見まがうほどに真っ白だ。
 その身を包むのは、やたら透明度の高いビキニ。白い肌によく似合う。
 締まった足首から下を包むのは、やはり透き通ったハイヒール。
 そして彼女を包んでいた風が、白い毛皮のマフラーへと変化し、首筋に巻きついた。
「……君は」
 雪菜さん――いや、いつぞやの行き倒れ女は、僕に視線をよこして一度だけ頷いた。
 クールだが、優しい目つき。だが目の前の敵をキッと見据え直すと、瞬間、冷たく言い放つ。
「今までは見逃して来ましたが、今日こそは覚悟していただきます」
 雪菜さんの両手両脚に、粒やかな光がまとわりつく。まさか、ダイヤモンドダストか。
 何も知らないが、『空気』でわかる。これは、彼女が本気を出したという証拠だ。

79 :
「チッ、氷の技なんざ効くかってんだよ!」
 啖呵と共に吐き出された炎が、雪菜さんを襲う。だが炎は冷気に弾かれ、四散した。
 それを掻き分けるように彼女が飛び出す。手には、一瞬で作り出した細長いつららを槍のように携えて。
 マフラーをなびかせながら、意外なほど俊敏な動作で駆け回る雪菜さん。
 電柱を使った三角跳び、塀を使った壁面走り、やりたい放題だ。
 そして彼女の通った後には、ダイヤモンドダストの輝きが撒き散らされる。
「ウロチョロしやがってぇ……!」
 一方、僕は戦いの行方とは別のところで気が気でなかった。
 槍を振るうたびに腋の下がちらついたり。キックを放つときの開脚で内腿まで見えたり。
 ブレーキをかけるときにお尻を突き出すなど、際どいポーズも多い。
 それを言うなら、まずビキニの中身が透けて見えそうな時点でアレだが。
「いい加減、ストーカーはやめてください! あなたとのお付き合いはお断りしたでしょう」
「妖怪の出来損ないのくせに生意気なんだよ。俺の方が強ェんだから、俺のモンになりやがれ!」
 妖怪、だって?
「……強いかどうか、ちゃんと周りを見てから言ってます?」
「な、何ィィィィィッ!?」
 彼女は、考えなしに動き回っていたわけではなかった。
 撒き散らしていった冷気は、彼女の合図で氷の鎖や檻へと変わり、火男の動きを完全に封じていた。
「このオッ、露出狂があああああああああああ!」
「好きで、こんな格好してるんじゃありません!」
 慌てて溶かそうとする火男だが、そのアクションの分だけ、雪菜さんにリードを許す。
 冷気を結集、凝縮させて人の頭ほどの氷塊を作り出すと、彼女はそれを両手で掴み、振り上げる。
「これで、頭を冷やしてください!」
 火男の頭に叩き落とされた氷塊は、その勢いを物語るようにたちまち砕け散った。
 ふぎゅっ、という奇妙な悲鳴とともに火男は崩れ落ちる。しばらく痙攣していたが、やがて動かなくなった。
「……んだ?」
「いいえ、生きています。丈夫な妖怪ですから」
 雪菜さんの髪や肌の色はいつもの様子に戻っていた。裸身は、マフラーが変化した毛皮のコートが覆い隠す。
「先輩、お疲れさまでした」
 意識を失う前に、最後に見たものが雪菜さんの笑顔だった。
 それはとても素晴らしいことだ、と、僕は最後まで場違いなことを思っていた。

80 :

 ――何とか、無事に運んで来れた。
 背中に負ぶった青年のアパートに辿りつき、雪菜はほっと胸を撫で下ろす。
 それにしても、傷だらけの男を、毛皮のコート一枚で運ぶ女という組み合わせ。
 すぐ通報とはいかずとも、面倒なことにはなるだろう。誰とも会わなくて、良かった。
 青年の服をはだけさせ、布団の上に寝かせる。体のあちこちが、赤く変色していた。
 彼は打撲と思っていたようだが、これは火傷だ。幸い、焦げ目のようなひどい痕はないが。
 命に別状はないと思うが、早めに冷やすに越したことはない。
 冷やすとして、もとはといえば妖怪の起こした火。妖力を伴った治療の方が良いかもしれない。
「……だったら」
 コートをマフラーに変え、再び『雪女モード』となる。
「先輩。今度は、私が」
 彼の腹に跨るように、腰を下ろす雪菜。深呼吸して心を落ち着けると、その身を倒す。
 冷気を帯びた白い肌を、火傷した箇所に押し付けるように、彼と体を重ねた。
「んん……っ!」
 火傷の熱さが、文字通りに身を焦がす。思わず身を捩る、その度に肌が擦れ合って、別の熱が生まれるのがわかる。
 雪菜は、かつてないほどに欲情していた。だが、それも仕方のないことと言える。
 彼女にとって、男性と身を寄せ合うこと自体が初めてのことなのだ。その上、相手は――
「先輩……」
 あの晩、彼は本当に何もしなかったというのに自分ときたら……雪菜は、自分を惨めに思う。
 先輩は、今まで彼女のことを言いふらしたことなどなかった。
 それどころか、事情も知らなかったというのに、火男相手に命がけで約束を守ってくれた。
(そんな人を私は、疑って、ずっと監視してきたんだ)
 気がつけば、雪菜は青年の股間に手をかけていた。
 細く、しなやかな指先で、ペニスをつつき、挟み、擦る。
 意識を失っていても、生理的に反応しているのだろうか。青年の男性器はムクムクと立ち上がる。
 自分でやったこととはいえ、雪菜は息を飲む。
「こんなに、なっちゃうんだ……」
 入学早々に流された噂のおかげで、彼女に言い寄ってくる男はいなかった。
 唯一の相手がよりにもよってあの火男だったせいで、彼女からそういう働きをかける気も起きなかった。
 だから、勃起した男のシンボルをこんなに間近を見ることももちろん初めてで。
 その初めての相手が先輩であることを嬉しく思う。反面、このような形になったことを申し訳なく思う雪菜だった。

81 :
「先輩、ごめんなさい……」
 雪菜は、彼の素性をほとんど知らない。恋人はいないと思うが、男女が逆でも強姦は強姦だ。
 謝罪の言葉を口にしつつも、彼女はもう止まらない。
(これは樹氷、樹氷、樹氷……)
 男性経験がなくとも、熱を帯びていることは確実にわかる。
 心頭滅却すれば何とやら。そそり立つ樹氷に、キスをしたこともない唇を近づける。
「あっ」
 いくら樹氷と思い込もうと、熱いものは熱い。
 男性器の熱さに躊躇い、まずはちろちろと表面を舐める。溢れ出した唾液が、ペニスの脈を伝う。
「うっ」
 今度声をあげたのは、青年の方だった。
 雪女の体液は冷たい。体の最も敏感な部分にそれを浴びせられた故の呻き声だろう。
(もう起きちゃう?)
 その焦りが、雪菜を走らせた。
 小さな口を恐る恐る開き、身震いしそうな冷たい吐息を繰り返しながらペニスの真上に持っていく。
 まずは亀頭を咥え込み、そこから徐々に、口の中へと含んでいく。
「んぶ……っ」
 いかに樹氷と思おうと、熱い。ただでさえ、熱に敏感な雪女モードに、この熱さはきつすぎる。
 それでも、やがて彼女の舌は、ゆっくりと動き始める。
(先輩……先輩、先輩っ)
 舌を絡めるだけでなく、唇や、頭も動き出す。
 男性経験がまるでない雪菜にフェラチオの詳しい知識などあるはずもない。
 故に、非常に拙いものになっているが、それがいいとう者もいるのだろう。生憎、相手は気絶中だが。
(どうしよう、もうやめなきゃ)
 頭の中の、どこか冷静な自分はそれをわかっている。
 だが、その冷静さが介入する余地のないほど、雪菜は快楽に溺れていた。
(じゃないと、私、わたし――)
 口の中で、先輩のペニスが脈を打つ。
 雪菜の中を、熱い精が迸った。
「とけちゃうぅぅぅぅぅ!」

82 :

「あの……たいへんお見苦しいところを、お見せしました」
 もとの姿に戻った雪菜さんは、僕の目前で土下座していた。
 服は、女性にはあんまりかもしれないがジャージを貸した。裸にコート一枚でいられるのは具合が悪い。
 場所は……どうやって来たのかの過程は気絶していたので覚えていないが、僕のアパート。
「い、いや、見苦しいだなんてそんな」
「いいえ、あんな、あんな――あんなに露出の激しい格好を……お恥ずかしい」
 微妙に誤魔化しを感じたが、確かに、普段の清楚な彼女からは想像もつかない。ビキニにマフラーだなんて。
 今の今まで同一人物と気づかなかったのも、そのギャップのせいだろう。
 そういった意味では、生で見ることのできた僕は相当な儲けものをした。
 当分は夜のお供には困らな――いや、下世話なことは考えないようにしておこう。
「趣味、なんですか?」
「ち、ちがうんです! あれは、あの衣装でないと、力を充分に使えないから仕方なくっ……!」
「力……っていうと、つららを作ったり、ものを凍らせたアレだよな。あれ、どういうことなの?」
 雪菜さんは、一瞬だけ目をぎゅっと瞑ると、僕と真っ直ぐに目を合わせて言った。
「私、雪女の血が流れているんです。四分の一だけですが」
 四分の一。クウォーター。
 一般的には、祖父母のどちらかが外国人、という場合に使う表現。
 それが彼女の場合は――
「ゆき、おんな」
 雪菜さんは、こくりと頷いた。

83 :
「私はその力を使って、自分の身の周りで妖怪が悪さをしたら、自衛の場合も含めて懲らしめているんです」
「はあ……」
「あの火男には、少し前から付回されていまして……あ、別に彼とは何もないんですよ?」
「ひい……」
「先輩に助けて頂いた晩も、妖怪を追い払ったまでは良かったのですが、その場で気絶してしまいまして」
「ふう……」
「あのときはありがとうございました。『変身』も解除できないままで、危ないところでした」
「へえ……」
 僕がまともな言葉を失っていると、彼女の肩越しに白い子狐が顔を出す。その頭を、彼女はそっと撫でた。
「この子はゴン。祖母から分け与えてもらった妖力の、化身なんです」
「ほお……あ、こいつさっき、マフラーになったりコートになったりしてたけど……大丈夫なの?」
「ええ大丈夫です。普通の狐では、ありませんから」
 くすり、と雪菜さんは笑う。こんな状況でも見惚れてしまうのだから、やっぱり彼女は素敵だ。
 彼女がさきほど振るった力の大部分は、普段はゴンとして独立させているらしい。
 いざ必要になったときは、僕の前でしたような『変身』で引き出し、自分のものとするのだという。
「よくわかっていただけないかもしれませんが……」
「うん、よくわからない。でも、そういうものなんだね」
 雪菜さんは目を丸くして、「すごいですね」と言った。何だ、僕はそんなに変なことを言ったか?
 すると彼女は打って変わって、顔を俯かせながら訥々と語り出した。
「あの、先輩は妖怪に詳しく、とても情熱を持って研究なさっていると聞きました」
「はあ……それで?」
「それで、私のことを熱心に見つめているのは、私があの夜の雪女だと感づかれたからかと……」
「えっ」
「えっ」
「……いや、全然、知りませんでした。予想だにもしなかった。アレが雪女っていう発想もなかった」
「やっぱり」と、恥ずかしそうに俯く雪菜さん。
「先輩に正体を知られたと、勝手に勘違いしていました……申し訳ありません」
 申し訳ないなんてとんでもないんだが、それでもやっぱりちょっとは残念だ。
 僕という個人に純粋に興味を持っていたわけではなかったのか。
「でも、結果的ですが先輩は私の素性を知ってしまわれましたね」
「あ、そうなるのか……そういえば、素性を知るとどうなるんだ?」
「はい。私の、雪女の一族の掟に縛られていただくことになります。大したことではないのですが」
 掟、というと。
「この先、先輩が私の正体を言いふらしたりすれば、先輩の命を奪わなければなりません」
 ひ。
「――私としても、それは望むところではありません。よろしくお願いしますね?」
 ……冷えるわー。

84 :
 僕が隠すことなく戦慄していると、またしても彼女がくすりと笑う。
「最初は、そう警告するつもりでしたが、先輩がそんなことをする方ではないということはよくわかりました」
「そ、それはどうも」
「ですから……今日は、別の形で、約束を交わしていただこうかと」
 それはいったいどういうことですか、と尋ねる前に。
 彼女は、唇を差し出していた。
 突然のことでフリーズしてしまう僕。雪菜さんは不安そうに眉根を寄せる。
「……だめ、でしょうか」
「いや、ダメというか、展開についていけないというか、こういうの初めてというか」
「私も、初めてでした……」
 途端に赤くなって、顔を背けてしまう。
「僕は雪菜さんの正体を知っているとはいえ、それだけだ。そういうことをする資格は、ないと思う」
「……先輩は、考え事をしていらっしゃることが多いので、お気づきでないかもしれませんが」
 確かに、ぼーっとしていることが多い、とはよく言われる。
「私も、先輩のことはずっと見ていました」
「…………いやでもそれは、正体がばれたと思って見張っていたからで」
「きっかけはそうです。でも、見続けるうちに、誠実で素敵な方ということがわかりました」
「それからは、好きで見ていました」
 一瞬、いやしばらく経っても、何を言われたのかわからなかった。二度目の衝撃。
 ……落ち着くんだ、今のは言葉のあやで「好き」と出てきただけで、直接言われたわけじゃない。
 そうだこういうときは深呼吸だ。どっかで見た、腹の形が変わるほどの激しい深呼吸を――
「……もうッ」
 痺れを切らしたのか、目をぎゅっと瞑った雪菜さんが勢いよく迫ってくる。
 え、ちょ、待っ――
 僕の初めてのチュウは、合意の上とは言え強引に奪われる形となった。
 あと額と歯が痛かった。が、それはお互い様か。
(終)

85 :
以上。
あまりにも暑いので雪女と戯れる話を書きたかったのに
書きあがってみたらエッチ分微少でワロタ ……スミマセン。

86 :

いいねえウブな雪女

87 :
GJ

88 :
うお、今更気づいたが保管庫の仕事速いw

89 :
>>85
GJ
タイトルが令嬢じゃなくて冷嬢な訳か…上手いな

90 :
Nornはそろそろ変身ヒロイン物のラブラブ物を出すべき

91 :
 何だかんだで、僕と雪菜さんは交際を始めた。
 いつもの飲み仲間二人にも話したところ、最初は袋叩きにされたが今では良い相談役になってくれている。
 また袋叩きに遭いたくなかったら、交際していることは言いふらすな、とも教えられた。
 なるほど、じゃあ今の状況は絶対に口外してはならないことらしい。
 大学から帰り、玄関のドアを開けると、クーラーでキンキンに冷えた空気が押し寄せる。
 そして冷蔵庫の前には、首からタオルをさげて、麦茶を手にする雪菜さん。きっと水風呂に入っていたのだろう。
 思いがけず目の当たりにしてしまった、クールビューティーなスレンダーボディに喉が鳴る。
「ひ」
 ひゃわわわ、と言葉にならない声を出しながら、雪菜さんは冷蔵庫に頭を突っ込む。
「ちょ、それは無理だって!」
 まさに頭隠して尻隠さず。むしろ突き出す形になってさっきより際どいです。
「の、ノックぐらいしてくれたっていいじゃないですかぁ!」
「自分ンちに入るのにそれはないだろう……」
 現在、僕の部屋には、雪菜さんが住み着いている。
 なぜ、こんなことになっているのかというと。
 呼び鈴が鳴り、玄関のドアを開けると、半べその雪菜さんが立っていたのは昨晩のこと。
「クーラーが……壊れました」
 簡潔に状況を伝えると、雪菜さんは僕にもたれかかるように倒れ込んできた。これは危険だ。
 とりあえず手っ取り早く冷やすため、風呂に水を溜めて冷蔵庫から引っ張り出した氷を投入。
 最後は雪菜さんを……と、流石に放り込むわけにはいかないか。
「脱がせてください……」
 何を言っているんですか雪菜さん。
 が、これを彼女の怠慢と断じてはいけない。彼女は四分の一とはいえ雪女、本当に動けないのかも。
 不可抗力、不可抗力、と呪文を唱えながら、薄目で作業する。彼女のシャツをゆっくりと捲り上げていく。
 その途中、何かに引っかかった。何か、なんてぼかしても仕方ない。白状しよう、胸だ。おっぱいだ。
「……雪菜さん、バンザイして」
 ここは一気に引き抜くしかない。作業時間を縮めてリスクを減らすのだ。
 かなりの抵抗が予想され……ん、あれ? 簡単にすっぽ抜けた。そうか、つまり、胸が。
「そんなに大きくな「バカぁ!」
 まあ……スレンダーというのは得てしてそういうものだ。
 説得とも慰めともつかない言葉を披露する間もなく、僕はノックアウトされた。
 なので「ああそういや、火男と戦ったときも揺れてなかったな」と遠慮なく失礼なコメントをさせていただいた。
 そのあと、雪菜さんが自力で風呂に入っていったのを見届けた僕は、どっと疲れてすぐ寝てしまった。

92 :
 それで、今朝から大学に用事のあった僕は雪菜さんを残して出かけていたわけだが。
 午前中はずっとこの調子だったようだ。クーラーはフル稼働、水風呂は……さすがに入れ直したろう。
「クーラーかけっぱなしっていうのはなあ……」
 地球にも家計にも優しくない。
「すみません……」
「あ、いや、命に関わる問題だから仕方ないよ」
 理解を示したつもりだが、雪菜さんはしゅんとしてしまう。
 気を遣ったつもりで気を遣わせてしまったか。とはいえ家以外で涼める場所といえば……。
「うーん……じゃあ、図書館にでも行くか」
 すると雪菜さんは、今度は突然もじもじし始める。
「と、図書館デート、ですか?」
「……」
「……」
「雪菜さん、図書館は遊ぶところじゃないです」
「……はい、知ってます……」
 自動ドアが割れると、中から流れ出てきた冷風が僕らの体を通り抜ける。
 さすが図書館、クーラーが行き渡っていて涼しい。
「じゃ、僕は論文の資料探してるんで。適当に涼んでいてください」
「あ……」
「雪菜さん、何か?」
「いえ、何でもありません。では、私はロビーにいますね」
「……」
 一人になった。ちょっとほっとしてしまう自分がいることに、落ち込んでしまいそうだ。
 付き合うことになり、成り行きで同居まですることになったが、彼女とはまだ距離がある気がする。
 その距離感を、同居が続くうちにどうにかできればいいのだけれど……見通しがまるでつかない。
 雪菜さんへの接し方に問題があるのだろうか。
 妖怪(ただし四分の一)ということで気を遣ってはいるが、遠ざけているつもりはない。
 それが間違っているとするなら――
「お、この記事使えそうだ」
 まあいいや、後で考えよう。

93 :
 僕がロビーに戻ると、もう雪菜さんはいなかった。携帯には「先に帰ります」という旨の着信が。
「待たせすぎたかな……」
 もう夕暮れ。一人で来ているわけではなかったのに、少々熱中してしまったかもしれない。
 ついこの間までこれが当たり前だったから、気が利かなかった……酷い言い訳だな。
 僕は打ち合わせも待ち合わせも苦手だが、遂に改善するときが来たか。
「……」
 でも、また今度からにしよう。具体的に何をするべきなのかわからん。
 ドアを開ける――前にノックをする。同じ失敗は二度繰り返さない。
 はあい、と返事。つまり、入ってもいいということだろう。僕は今度こそドアを開けた。
 やはり押し寄せてくるクーラーのキンキンな空気。
 そして部屋の中心で、床に直接寝そべるのは、雪菜さん。
 裸ではないが、下着。色は意外にも黒で、色白な肌とのコントラストが素敵である。
 特に、黒い下着が白いお尻の肉に食い込んでいる感じが、健康的なエロスを醸して――
 と、そこで寝返りをうった雪菜さんと目が合った。これは、にかけの目だ。
「おかえりなさい、先輩」
「……雪菜さん」
「はい?」
「とりあえず、大の字で寝るのやめて」
「……」
「両手両脚をぴっちり揃えればいいってことではなく」
 クールビューティーの評判がひっくり返るほどお茶目だなこの人。
 僕は噂がすべてではないことをもう知っているが、他のファンが見たら凄い衝撃だろう。
 と、その光景があまりにも衝撃的で見逃していたが、テーブルの上には食卓が整っていた。
「雪菜さん、料理を?」
 献立からすると、コンロを使ったらしい。それでへばってしまったのか。
 きっと何か役に立とうとして無茶をしたのだろう。申し訳なく思うと同時に、こうも思ってしまう。
「……火男相手にはあんなに強かったのになあ」
「あのときは……頭がいっぱいで、熱がっている場合じゃありませんでしたから」
 そんなに苦戦していたようには見えなかったが、本人が言うならそうなのだろう。
「……」
「どうしたの?」
「何でもありません」
 夕食はありがたく頂いた。ちょっと焼き加減が足りなかったりするのは、ご愛嬌。
 そして、僕は居間で、雪菜さんは水風呂に浸かりながらでの就寝となった……溺れないよな?

94 :
 ……暑苦しい。寝苦しい。
 明け方に目が覚めた、と思ったらまだ一時。布団に入ってから小一時間しか経っていない。
「あー……」
 クーラーの付けっぱなしは体に悪いから、窓でも開けようか……そう思っていると。
「あの……添い寝、しましょうか?」
 水風呂で寝ているはずの雪菜さんが、僕を覗き込んでいた。
 ポカン、としていると、雪菜さんは真っ赤になって背中を向けてしまった。
「い、言ってみただけです! お気になさらずっ」
 無理です。
 一度意識すると、雪菜さんを抱きしめて寝たい、涼みたい、と欲求が湧き上がって二重苦に。
「雪菜さん」
 ぴく、と反応する白い背中。
「……寝るときも雪女モードなの?」
 後姿からでも、彼女が落胆しているのがわかった。
 自分でも情けなく思うが、何で変身しているのか気になったのも本当だ。
「夏の間だけ、です。それも癖にならないように、とても我慢できないときに限っていますが」
「癖にならないようにって?」
「私は……できるだけ、人間でいたいんです。妖怪の力に、慣れたくない」
 僕は何も言わない。
 気にすることないよ、等々の曖昧なことを言うわけにはいかなかった。
 ずっと自分自身の問題として向き合ってきた雪菜さんの言うことに、余計な口出しをする必要はない。
「……本当は、『雪女だから』って気遣われるのも嫌だった?」
 なのに、そんなことを洩らしてしまったのは、彼女を傷つけてしまったのかと不安になったからだ。
「そんなことありません! 先輩が優しい方なのは知ってます……でも、だから迷惑をかけたくなくて」
 何が迷惑だというのか。僕は彼女に気など遣わず、ただの人間同然に扱えば良かったのか。
 それは違う、と心が訴える。たとえ彼女が望んでいたとしても、それは押し付けだ。
 しかし――優しさが、迷惑と思われるのなら。いっそのこと。
「雪菜さん、添い寝してください」
 名を呼ばれ、求められた彼女は、弾かれたように顔を上げる。
「暑くて眠れないから、僕に妖怪の力を利用させてください。それでイーブンだ」
 それが正しいかはわからないが、お互いに手っ取り早く納得できるんじゃないか、と思った。

95 :
 僕は正座して、同じように正座した雪菜さんと向き合っている。まるでお見合いだ。
 ここまで来て、添い寝がただ寝るだけ、だなんてさすがの僕でも思わない。僕らは、全裸だった。
 雪菜さんも『変身』して髪は銀に肌は白に変色しているが、氷のビキニも毛皮マフラーも外している。
「先輩。私、初めてです」
「僕だって初めてだ」
 だから、前戯のやり方なんて知識もまるでない。
 とりあえず、意外に小ぶりと判明した彼女の胸に手を伸ばす。
 指先にひんやりとして柔らかい感触。これは、いつまでも弄っていられるほど気持ちいいが。
(これからどうすりゃいいんだろう……)
 そんな不安が顔に出てしまっていたのか、雪菜さんから助け舟を出された。
「あの……先輩の、したいようにしてください」
「いや、でもそれじゃ君に悪いし……」
「いいんです。私は一度、好きにしちゃったし」
 うん? どういうことだ。
「実はこの間、先輩が気絶している間に……ごめんなさい」
「いや、うん……結果的にこうなってるから、謝らなくていいと思う」
 遠慮の必要がなくなった。でも、それで決心がついたかというと、どこか違う。
 こんなときまで、僕は僕だ。つい、雪菜さんに「本当にいいの?」と訊いてしまう。
「――さっき、どうして変身しているのか、お尋ねになりましたよね」
「あ、ああ」
「本当は私、こうなることを期待して……それならと思って、変身したんです」
「それは、どうして?」
「先輩は、私の正体を知った上で受け入れてくださった人です。だから、」
「だから、雪女としての私を抱いて欲しい」
「……ごめんなさい。わがまま、ですね」
「うん。やっと、わがままをきいてあげられる」
 彼女との距離感の理由がわかった気がする。僕らの間には、わがままや甘えがなかったんだ。
 雪菜さんは、正体を明かしたときのように、目を丸くして僕を見た。
「……やっぱり、先輩はすごいです」
 それから、互いの瞳を覗き込むように、互いに引かれ合うように、唇を重ねた。
 改めて味わってみると、雪菜さんの唇は冷たい。変身しているからかもしれないが、本当に氷のようだ。
 しかし氷と違うのは、とても柔らかいということ。溶けないアイスクリーム、といったところか。
「んむっ」
 舌を絡められて、雪菜さんは一瞬目を開けた。潤んでいた瞳から、涙が一筋流れ落ちる。
 まさか、溶けちゃってるんじゃないよな?
 尻込みして舌を引っ込めると、今度は雪菜さんの方から僕に侵入してきた。
 冷たい粘液が、僕の口の中を席巻する。息が続かなくなってきたので、口を離して深呼吸。
「スースーする」
 空気に触れた感触を正直に言うと、彼女は自分のしたことを恥じらうように目を逸らした。

96 :
 僕は童貞で、だから女性の前で自分の男性器を晒すなんて、初めてのことだ。
 いきなりギンギンであることを恥じるべきなのか、誇るべきなのか。それすらもわからない。
 雪菜さんは息を飲み、唾を飲み、そしてゆっくり頷く。それを合図に、僕は彼女を組み敷いた。
「樹氷、樹氷、樹氷……」
 雪菜さんが謎の呪文を唱えた。ああ、僕のアレを見立てて言ってるのか。
 なら、僕から見た雪菜さんの割れ目はクレバスだ。
「……よし。じゃあ、いくよ」
 そろそろと落ちてきた樹氷は、大地に開いたクレバスの淵に接触する。
 割れ目の幅を広げようとするかのように、樹氷は緩急をつけて動き始めた。
 大地が震え、揺れは樹氷にも伝わる。溢れ出した湧き水が、迎え入れる準備ができたことを知らせる。
 樹氷は少しずつ入り口を探るように移動し、ついに。
 ――そのまま、僕は雪菜さんの一番深いところにまで潜っていった。
「……ッ!」
 シーツを掴む。しわが大きくなる。吐息がかかる。ちょっと身震いする。
 初めてということは、処女膜を破ってしまったわけで。噂によると相当痛いらしいが、大丈夫だろうか。
「熱いです、先輩……ジンジンします」
 何とか続行はできそうだ。となると、問題は、僕の方か。
 彼女が深淵で熱さを感じているように、僕は芯まで凍えるような冷たさを感じていた。
 うっかりしていると歯の根が合わなくなりそうかも。
「先輩……だいじょうぶ、ですか?」
「え?」
「私、雪女だから……ふ、普通じゃないから、先輩、気持ちよくないかも……」
「冷たいよ」と、僕は正直に答えた。「冷たくて、気持ちいい」
 女性経験のない僕だが、冷たさを感じるなんて普通ではないことはさすがにわかる。
 でも、それがどうした。
「僕は普通のセックスがしたかったんじゃない。雪菜さんとしたかったんだ」

97 :
「先輩……!」
 背中にぞくっとする冷たさを感じて、彼女の両腕が僕を抱擁したのだとわかる。
 きっと、心臓が弱かったら彼女の相手はできないな。
 そんなことを思いながら、腰周りを挟み込む彼女の両脚も甘んじて受け入れた。
 体中のあちこちで冷たさを感じながら、僕は拙く上下運動を始めた。
「くっ……んんっ」
 正直にいって、この動作は好きじゃない。今、好きじゃなくなった。
 自分の体を彼女に打ちつける形になるので、痛いんじゃないか、重いんじゃないかと気になってしまう。
「……だいじょうぶです、からっ。そんな顔、しないで……っ」
 僕がバカだった。気遣ったつもりが、逆に気遣われていては世話がない。
 ごめん雪菜さん。ちょっとの間だけ、欲望に正直になる。
「ひあっ!? ああっ! あんっ……きゃふっ!」
 僕の動きが激しくなるにつれ、雪菜さんの声も大きくなっていく。
 冷熱というまったく逆の感触を味わっている二人だが、二人で同じことをしているのだと実感する。
 さて、大変だ。雪菜さんが離そうとしないのをいいことに、僕は男としての征服欲に駆られている。
「いいです、先輩っ」
 喘ぎ声の合間に聞こえてくる、雪菜さんの言葉。
「私のこと、とかしてぇ……っ!」
 お望み通りに、なんて気障に返す余裕はなく。
「あ……ひああああああああああ……っ!」
 クレバスに迷い込んだ僕は、その最奥で、果てた。
 雪菜さん。何年か経ったら、君の考え方だって変わるかもしれない。
 だから僕は、今の君がいいよ、とは絶対に言わない。君を縛らないように。
 その代わり、今の君がいいよ、といつでも思うことにする。君を受け入れられるように。
 ごめん、僕はそう簡単には変われないみたいだ。

98 :
 翌朝、台所に雪菜さんが立っていた。変身して。
「あ、おはようございます」
「おはよう……」
 復活が早いなあ。僕はまだボーっとしているというのに。しかも、もう10時か。
 そういえば何だか寒気がする。まさか、風邪を引いたんじゃないだろうな?
 まあ、引いたら引いたで、発覚したときに言えばいいや。
「またコンロ使ってるけど、大丈夫?」
「はい。今度は変身してますから、ちゃんと火を通してみせます!」
 意気込んでるなあ……。
「自分の部屋のクーラーが直ったと連絡がきたので、置き土産にと思いまして。取り付けは午後だそうです」
 そうか。ということは、なし崩しで始まった同居も今日で終わりか。案外早かった。
 ……いや、やることは全部やってしまった気がするが、うん。
「ところで雪菜さん」
「はい、なんでしょう」
「いくら氷のビキニ着てるとはいえ、その格好は――」
「コスチュームだから恥ずかしくありません」
 うそつけ。「露出狂」と言われたときは全力で否定していたのに。
 そういえば「好きでしてるわけじゃない」とも言っていたから、誰かに押し付けられたのか。
 適当なところで、妖力を分けてもらったという彼女のおばあさんとか。
「……当たりです。先輩、すごい」
 おばあさま、赤の他人の僕が言うのも難ですが。どう考えても孫娘に着せる衣装ではないと思います。
「祖母は『見せても恥ずかしくない体なんだから、出し惜しみせずに見せてやるといい』と」
「雪菜さんは恥ずかしくないんですか」
「恥ずかしいです! でも――」
 ポニーテールを揺らして、振り向いた彼女はとびきりの笑顔だった。
「先輩が相手なら、もう恥ずかしくありません」
「もっと恥ずかしいことしちゃったしね」
 そう言うと、下ネタは免疫がないのかもうこっちを向いてはくれなかった。
(さっそく、妖怪の力を気軽に利用してくれているのか)
 まあ――気楽に考えてくれるようになったのなら、良しとしようか。
 僕はテーブルにつきながら、裸エプロンにも見える雪菜さんの後姿を横目で見ていた。
(終)

99 :
以上。
相変わらず暑いから、雪女と戯れる話にリベンジした。
変身ヒロインというより妖怪モノっぽくなったかもしれん。

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