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2013年05月ニュー速VIP+90: 寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 (480) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。


1 :2013/05/07 〜 最終レス :2013/05/14
「自分の人生には、何円くらいの価値があるか?」
そんな質問をされたことがあったな。
確か、小学四年生の道徳の授業だったか。
大半の生徒は、きょろきょろ周りを見ながら、
最終的には、数千万から数億という結論を出してさ。
「お金では買えない」って考えを譲らない生徒もいたね。
大人に聞いても、似たような答えが返ってくるだろうな。
少なくとも俺は、実際に寿命を売るその日までは、
自分の人生は二、三億くらいの価値があると思ってた。
だから十年か二十年くらい寿命を売って数千万得て、
残りの人生を楽に生きるのが利口だと考えてたんだよ。
幸せな六十年とそうでもない八十年だったら、
前者の方が絶対いいに決まってるからな。
査定結果を見た時はひっくり返りそうになったぜ。
どうやら俺の一生、百万円にも満たないらしいんだよ。

2 :
人生楽しい人は売る必要ないし、今すぐ死にしたければ全部売れば良い。
人生の価値なんて関係ないのだよ

3 :
1年1万なら100年売っても100万だものな

4 :
二十歳の七月くらいの時の話なんだが、
その頃、俺はとにかく金に困ってた。
白米とみそ汁以外のものを口にしてなくてさ、
数日前、ウェイターのバイト中に三回ぶっ倒れて、
そろそろ栄養のあるものを食べないとまずいと思った。
金になるものといったら、家具、数十枚のCD、
それに数百冊の蔵書の他には考えられなかったな。
ほとんど中古品で、たいした価値はないんだが、
それでも一か月の食費くらいにはなるかと思って、
できるだけ新品に近付けようと入念に掃除して、
行きつけの古書店や楽器屋に売りに行ったわけだ。

5 :
げんふうけいっぽい

6 :
私は来世の寿命を売った

7 :
古書店の爺さんは、俺が本を大量に売りにきたのを見て、
「一体何があったんだ?」って心配してくれた。
普段はそっけない爺さんだったから、意外だったな。
「紙はおいしくありませんからね」って俺が遠回しに答えると、
爺さんは心底同情したような目で俺を見つめた。
でも金はくれなかったな。向こうも貧乏だから仕方ないけど。
はした金を受け取って店を出ようとすると、
爺さんは「なあ、ひとつ話がある」と俺を引きとめた。
金くれんのかなーと思って「はい?」と戻ると、
言われたんだよ、「寿命、売る気ねえか?」って。

8 :
老いの恐怖でついにボケちまったかと思いつつ、
俺は話半分に爺さんの説明を聞くことにした。
つまりは、こういうことらしい。
ここからそう離れていないとこにあるビルに、
寿命の買い取りを行っている店が入ってるらしい。
そこでは時間や健康さえも売れるんだが、
寿命は特に高値で取引されてるんだそうだ。
爺さんは震える手で地図と電話番号まで書いてくれたが、
俺でなくたって、そんな話、爺さんの願望が作り上げた
空想に過ぎないって思ってしまうだろう。
ちょっとかわいそうに思ったね。死ぬの怖えんだろうな、って。

9 :
みてる

10 :
年取ると死ぬの怖くなくなるのかな
こうぇえよぉ。。。

11 :
だが結局、俺はそのビルに向かうことになった。
CDも本も家具も、まったく金にならなかったからだ。
寿命を売るなんて話を信じたわけじゃない。
しかし、俺はこういう可能性を考えたんだよ。
爺さんや兄ちゃんが言っていたことは何かの比喩で、
実はものすごく割のいいバイトがあるんじゃないかって。
寿命を縮めるようなリスクを負う代わりに、
一か月で百万くらい稼げたりするとか、そういうの。
ところが、うす暗い階段を上がってドアを開け、
目が合った店員らしき女が、俺の顔を見るなり
「時間ですか? 健康ですか? 寿命ですか?」
なんて言ってくるもんだから、笑っちゃうよな。

12 :
一連の出来事で神経がまいっていたのか、
俺はもう考えるのが面倒になって、「寿命」と答えた。
「二時間ほどお時間をいただきます」と女は言い、
すでに両手はPCのキーボードをかたかた叩いていた。
おいおい、人の価値って二時間程度で分かっちゃうのかよ?
俺はあらためて店内を見回した。
なんていうんだろうな、眼鏡のない眼鏡屋、
宝石のない宝石店みたいな空間とでもいうか。
でも俺の目に見えないだけで、本当はそこら中に
寿命とか健康とか時間が飾ってあるのかもしれない。
なんてな。いつまでこの笑えない冗談は続くんだ?

13 :
駅前の広場に行って、煙草に火を点け、
最後の一本を時間をかけて味わった。
煙草もそろそろやめなきゃな、と思う。
金食い虫だし、健康にもよくねえからな。
近くで鳩に餌をやっている老人がいたんだが、
それで食欲が湧いてしまう自分が情けなかったな。
もうちょっとで鳩と一緒に地面をつっつくとこだったぞ。
寿命、高く売れるといいなあ、と思った。
駅で時間を潰した後、俺は少し早めに店に戻り、
ソファでうたた寝しながら査定結果が出るのを待った。
二十分ほどして、俺の名前が呼ばれた。
妙だよな。俺、一度も名乗った覚えはないんだよ。

14 :
SSか

15 :
査定結果を見て、俺は変な声をあげちまった。
一年につき一万円? 余命三十年?
ブックオフだってもう少しまともな値段をつけるぞ。
カメか何かの結果と取り違えたんじゃないのか?
でも、そこには確かに俺の名前が書いてある。
「これ、何を基準に決められてるんですか?」
俺はそう言いつつ査定表を女店員に見せた。
「色々です」と彼女は面倒そうに答えた。
「幸福度とか、実現度とか、貢献度とか、色々」
多分、こういう質問に飽き飽きしているんだろうな。

16 :
女店員はシステムの詳細を教えてくれた。
本当は教えちゃいけないらしいんだが、
あんまりにも俺がしつこかったんだろうな。
特にショッキングだった情報は、一万円というのが、
寿命一年あたりの最低買取価格だったってこと。
ようするに、俺の人生は限りなく無価値に近いってことだ。
幸せになれず、また誰一人幸せにできず、
何一つ達成できず、何一つ得られないらしい。
「問題がなければ、こちらにサインをお願いします」
女店員がしびれを切らしたように言うが、
これを見て問題がないって言うやつがいたら、
そいつは脳の病院に行った方がいいと思うぜ。
だがその頃には俺の感覚は麻痺しちまっててさ、
自分の物や時間を安売りするのに慣れ過ぎてた。
で、ヤケになって、こう答えちまったんだ。
「三か月だけ残して、あとは全部売ります」

17 :
パチンコの騒音って周波数どれくらいとかある?
dbじゃなくてhzで

18 :
三十万入った封筒を持って、俺は店を出た。
引きつった感じの笑いがこみあげてきたな。
何が悲しいって、俺の寿命の安さの理由、
俺自身、なんとなく分かる気がするんだよ。
だがそれについては考えたくなかったから、
帰り道に酒屋によって大量にビールを買いこんで、
俺はそれを飲みながら夜道をゆっくり歩いた。
酒なんて飲むのは本当に久しぶりだったね。
だからすっかりアルコール耐性もなくなってて、
俺は帰宅して二時間後には吐いてた。
余命三か月、最低のスタートを切ったわけだ。

19 :
誤爆すまん
みてるぞ

20 :
ありがとう

21 :
おもしろい
みてるよー

22 :
眠りにつけたのは朝四時くらいだったなんだが、
こういう日に限って、幸せな夢を見ちまうんだよな。
小学生の頃の夢だった。なんでもない夏休みの夢。
親の車で、幼馴染とキャンプにいった時の夢。
ああ、泣いたね。寝ながら泣いてたね。
無慈悲に幸福な夢から俺を救出したのは、呼び鈴の音だった。
無視し続けてると、俺の名を呼ぶ声がした。
ドアを開けると、見慣れない女が立っていた。
なんか条件反射的に喜んじまったけど、
その目つきを見て、俺は思い出した。
そいつは俺の寿命の査定をした女だったんだ。
「今日から監視員を務めさせていただくミヤギです」
そう言うと、ミヤギと名乗る女は俺に軽く会釈した。
監視員。そういえば、そんな話もあったっけ。
二日酔いの頭で昨日の記憶を探りつつ、
俺はトイレに駆け込んでもう一回吐いた。

23 :
げっそりした気分でトイレから出ると、
監視員がドアの正面に立っていた。
最前席で聞きたかったのかな、俺の吐く音。
うがいをして水をコップ三杯飲みほすと、
俺は再びベッドに戻って横になった。
「昨日も説明しましたけど」と横でミヤギが言う、
「あなたの余命は一年を切りましたので、
今日からは常時、監視がつくことになります」
「その話、後じゃ駄目か?」と俺はミヤギをにらんだ。
ミヤギは「わかりました。じゃあ、後で」と言うと、
部屋のすみっこに行って、三角座りをした。
以後、ミヤギはそこから俺を定点観測し続けることになる。
似たような経験のある人には分かると思うが、
これをやられると生活のペースはすっかり狂う。
ほら、人に見られてるとできないことって沢山あるだろ?

24 :
寿命が一年を切った客には監視員が付くってのは、
確かにあらかじめ聞いていた話ではあったんだ。
ミヤギの説明によると、寿命が半年を切った客が、
ヤケになって問題を起こすことがあまりに多いから、
それを未然に防ぐために監視員が導入されたそうだ。
もし俺が他人に多大な迷惑をかけそうになったら、
監視員が本部に連絡して、俺の寿命を尽きさせるらしい。
トラヴィス・ビックルにはなれないってこった。
ただ、最後の三日間だけは、監視員も外れて、
純粋な自分の時間を満喫できるそうだ。
統計的に、そこまでくると人は悪さをしなくなるとか。

25 :
こういうのってラノベ作家志望みたいな奴が書いてんの?

26 :
三角座りってかわいい

27 :
夕方には、吐き気も頭痛も消えていた。
俺はようやく物をまともに考えられるようになってきた。
昨日、衝動的に寿命の大半を売ったことについては、
自分でも意外なほど後悔していなかったな。
むしろ、三か月も残さなきゃよかった、とさえ思った。
監視されっ放しの三か月なんてごめんだからな。
三日くらいしかいらなかったんじゃないのか?
さて。自分の価値の低さを今さら悩んでも仕方ない。
問題は、これから何をするかだろう。三か月で。
俺はルーズリーフを一枚取り出し、ペンを手に取り、
そこに「やりたいことリスト」を作成した。
いよいよそれらしくなってきたな。

28 :
やりたいことリスト。たとえば、こんな感じだ。
 ・幼馴染に会って礼を言う
 ・親友と会って馬鹿話をする
 ・なるべく多くの時間を家族と過ごす
 ・知人全員に向けて遺書を書く
 ・大学には行かない
 ・アルバイトにも行かない
まあ、全体的に平凡な発想だ。
誰に書かせても似たような感じになるだろうな。

29 :
トイレのトラブル8000円♪

30 :
10000÷365÷24=1.1
時給1円か

31 :
コンビニのバイトで700倍生きられる!

32 :
いつの間にか真後ろにミヤギがいて、
俺の書いたリストを眺めていた。
「それ、やめた方がいいですよ」
一つ目の項目を指差して、彼女は言った。
”幼馴染に会って礼を言う”。
「なぜ?」と俺はミヤギに訊ねた。
――幼馴染について、ちょっと説明するか。
夢にも出てきたその子と俺は、四歳からの仲でさ。
彼女が転校するまでは、どこにいくにも一緒だったんだ。

33 :
中学に入って新しい環境に馴染めず、
クラスで孤立した俺に唯一毎日話しかけきて、
「どうしたの?」って聞いてくれたのも幼馴染だった。
離れ離れになった後も、辛いことがあったとき、
俺が思い浮かべるのは幼馴染のことだった。
彼女がいなきゃ、今の俺は無かっただろうな。
まあ、無いなら無いでいいんだけどな。
とにかく俺は彼女に感謝していたんだ。
ここ数年まったく連絡はとっていなかったが、
もし彼女に何かあったら、真っ先に駆けつけようと思ってた。
どんな形でもいいから、彼女に恩返ししたいと思ってたんだ。

34 :
「その幼馴染さんですけど」とミヤギは告げる。
「十七歳で出産してるんです。で、高校を退学。
十八歳で結婚しますが、十九歳で離婚してます。
二十歳の現在は、一人で子育てしてますね。
ちなみに二年後、首吊り自Rることになってます。
いま会いにいくと、多分『お金貸せ』とか言われますよ。
あなたのこと、ほとんど覚えてませんし」

35 :
俺がどんな反応を示したかって?
そりゃ、がっつり傷ついたさ。がっつりな。
一番大切な記憶を台無しにされたんだからな。
情けない話なんだが、二十歳になっても、
俺の根っこの部分はどこまでもピュアと言うか
ナイーヴというかセンシティヴというか、
ようするに子供の頃から成長していなかったんだな。
何かが変わったり、何かが終わっていく、
そういうことが、いまだに耐えらないんだよ。
成人男性のくせにカナリヤ並に敏感なんだ。

36 :
それでも俺は極力気にしていないふりをして、
「ふうん」と言いながら煙草に火を点けた。
三本くらい吸うと、体調が悪いせいか、
嫌な感じに頭が痛くなってきてたな。
でも吸い続けた。色んなことを忘れるために。
ミヤギは部屋のすみに戻っていった。
で、ノートにさらさらと何かを書いてたな。
気が付くと、いつの間にか日が落ちていた。
俺は自分の書いたリストに目を落とし、
幼馴染の項に取り消し線を引いた。
それからもう一度リストをじっくり眺めて、
電話を手に取り、ゆっくりボタンを押した。

37 :
自分の寿命を売りたいなんて奴の時間にはそもそも価値がないって
事なんじゃねーの?

38 :
『どうしたの? 珍しいね、あんたからかけてくるなんて』
お袋の声を聞くのは、本当に久しぶりだった。
バイトと勉強が忙しくて電話をする暇がなかったからな。
「急で悪いけど、今から実家に帰っていいかな」。
俺はお袋にそう聞くつもりだったんだ。
で、家族の無償の愛とやらに包まれながら、
余生を穏やかに過ごそうと思ってたんだよ。
だが、こっちが何か言う前に、お袋はべらべらと喋り出した。
それは俺の二つ下の、弟の話だった。
お袋はことあるごとにあいつの話をしたがるんだよ。
というのも俺の弟、ちょっとした有名人なんだ。
野球をするために生まれてきたような男でさ、
一年の時から甲子園で投げてるんだよ。
テレビにもしょっちゅう出てるんだ。自慢の弟さ。

39 :
弟の相変わらずの大活躍については勿論のこと、
お袋は、弟が連れてきた恋人の話までし始めた。
「とにかく美人なのよ」とお袋は二十回くらい言った。
「同じ人間とは思えないほど美人でね、その上性格も……」
まるでもう孫ができましたみたいな話ぶりでさ。
俺の話なんて全く聞こうとはしてねえんだよな。
実家に帰ろうという気持ちは、段々としぼんでいった。
最近では、その弟の素敵な恋人さんってのを、
しょっちゅう家に招いて夕食を一緒にするらしい。
その場に俺が混ざるのを想像しただけで死にたくなったね。
俺は適当なところで電話を切った。実家に帰るのは、やめた。

40 :
みてますよ

41 :
今日は何をしても駄目な日なんだ、と俺は決めつけた。
好きなことでもして気分を紛らそうじゃないか。
それで明日になったら、また何をするか考えよう。
というわけで、欲望の赴くままに過ごそうと決めた俺だったが、
その上で、どうしても邪魔になるやつが部屋のすみにいるんだよな。
「私のことはいないと思ってくださって結構ですよ」
俺の気持ちを察したのか、ミヤギはそう言う。
だが、本人がいくらそう言っても、気になるものは気になる。
自分で言うのもなんだが、俺はかなり神経質なんだ。
同世代の女の子に見られてるのを意識しだすと、
行動のひとつひとつがおかしくなるんだよ。
「自然体っぽい格好よさ」を出そうとしちまうんだな。
気付くと髪を触ってるんだ。完全に自意識過剰だ。

42 :
こういうことたまに考えちゃうんだよなぁ
自分の生きている価値というかなんと言うか

43 :
しばらくは、手元に残ってた本の中でも一番難解な
「フィネガンズ・ウェイク」を読んで格好つけてた。
当然、内容はさっぱり頭に入ってこなかった。
余命三ヶ月だってのに、何をやってるんだろな。
読書に飽きた俺は近所のスーパーに行って、
グラス付きのウイスキーと氷を買った。
ミヤギも菓子パンやら何やらを買いこんでた。
それを見た俺は、なんか幸せな錯覚に陥ってさ。
実を言うと、俺には昔から憧れがあったんだよ。
同居してる子と部屋着のままスーパーに行って、
食材とかお酒を買って帰ってくる、って行為に。
羨ましいなー、って思いながらいつも見てた。
だから、たとえ監視が目的だろうと、若い女の子と
夜中のスーパーで買物するってのは楽しかったんだ。
むなしい幸せだろ? でも本当だから仕方ない。

44 :
家に帰って、ウイスキーをちびちび飲んでいるうちに、
俺は久しぶりに良い気分になってきた。
こういうとき、アルコールってのは偉大だな。
部屋のすみでノートに何かを書いているミヤギに
俺は近づき、「一緒に飲まない?」と誘ってみた。
「結構です。仕事中なので」
ミヤギはノートから顔も上げずに断った。
「それ、何書いてんだ?」と俺は聞いた。
「行動観察記録です。あなたの」
「そうか。いま俺は、酔っ払ってるよ」
「そうでしょうね。そう見えます」
ミヤギはめんどくさそうにうなずいた。
実際めんくせーんだろうな、俺。

45 :
完全に酔いが回った俺は、なんだか自分が
悲劇の主人公になったような気がしてきた。
で、落胆の反動っていうか、双極性っていうかさ。
急にポジティブになったんだよ。
得体のしれない活力が溢れてきたわけ。
俺はミヤギに向かって、高らかに宣言した。
「俺は、この三十万円で、何かを変えてみせる」
「はあ」とミヤギは興味なさそうに言った。
「たった三十万円だろうと、これは俺の命だ。
三百万や三億より価値のある三十万にしてやる」
俺としては、かなり格好良いことを言ったつもりだったね。

46 :
でもミヤギはしらけっぱなしだった。「皆、同じことを言うんですよ」
「どういうことだ?」と俺は聞いた。
「死を前にした人は、皆、極端なことを言うようになるんです。
……でもですよ、クスノキさん。よーく考えてください」
ミヤギは感情のない目で俺を見すえて言った。
「三十年で何一つ成し遂げられないような人が、
たった三か月で何を変えられるっていうんですか?」
「……やってみなきゃわかんないさ」と俺は言い返したが、
実際、彼女の言ってることは、どこまでも正しいんだよな。

47 :
俺の昔住んでたちょっと変わった村の祭の話をする(最初)
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1343446115/l50
俺の昔住んでたちょっと変わった村の祭の話をする
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1343449389/
幼少から続いてる恐ろしい体験を話す
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1367249744/
今日、夢で子供の頃に戻って1年半過ごしてきた
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1367750550/
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
←new
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1367899553/

48 :
俺はそこであることに気付いて、ミヤギに聞いた。
「なあ、あんた、もしかして、この先三十年かけて
俺の人生に起こるはずだったこと、全部知ってんのか?」
「大体は知ってますよ。もう意味のないことですけどね」
「俺に取っちゃ相変わらず有意味だよ。教えてくれ」
「そうですねえ」とミヤギは足を崩しながら言う。
「まず一つ言えるのは、あなたが売った三十年の中で、
あなたが誰かに好かれることはありません」
「それって悲しいことだよな」と俺は他人事のように言った。

49 :
「あなたは誰のことも好きになることができず、
そんなあなたを周りの人間が好きになるはずもなく、
相互作用でどんどんあなたと他人の距離は開いて、
最終的に、あなたは世界に愛想を尽かされるんです」
ミヤギはそこでちらっと俺の目を見た。
「『それでも、いつかいいことがあるかもしれない』。
そんな言葉を胸にあなたは五十歳まで生き続けますが、
結局、何一つ得られないまま、一人で死んでいきます。
最後まで、『ここは俺の場所じゃない』って嘆きながら」
「それって悲しいことだよな」と俺は機械的に繰り返した。
でも内心、やっぱりしっかり傷ついていた。
ただ、かなり納得できる話でもあったな。

50 :
さらにミヤギが続けた話によれば、
俺は四十歳でバイク事故を起こすらしい。
その事故で顔の半分を失い、歩けなくなるとか。
かなり気のめいる話だったが、一方で、
それを経験する前にRることを考えると、
案外俺はラッキーなのかもしれないと思った。
そうなんだよな、半ば期待する余地があるから、
五十年も無意味な人生を送ったりしちまうんだ。
完全に良いことが何もないって分かってれば、
逆に何の未練もなくRるってもんだ。

51 :
俺は気を紛らそうとして、テレビをつけた。
番組ではスポーツ特集をやっているらしかった。
まずいと思ってチャンネルを変えようとした頃には、
弟の顔と名前がしっかり画面上に出ていた。
俺は反射的にグラスを投げつけてたね。
テレビが倒れて床に落ち、グラスの破片が飛び散る。
俺はふっと我に返り、ミヤギの方を見る。
彼女は明らかに警戒した様子で俺のことを見ている。
「弟なんだよ」と俺は努めて明るく言ったんだが、
それが逆に本格的にイカれてる人っぽくて笑えたな。
「……弟さんのこと、あんまり好きじゃないんですね?」
ミヤギは軽蔑するような調子で言った。
「あんまりね」と俺はうなずいた。
隣の部屋から壁を殴る音がした。

52 :
割れたグラスを片付けたりなんかしていると、
俺の酔いはまずい感じに醒めてきた。
このまま完全にアルコールが抜ければ、
最悪の精神状態になるのが目に見えてた。
だから俺はある人に電話をかけたんだ。
思うに、これもまた最悪の選択だったな。
俺ってやつは、自分で自分の人生を
悪い方向に転がすことにかけては一流なんだ。
電話の相手は、高校の頃の一番の友人だった。
数か月間一度も連絡をとってなかったのに、
「今から会えないか」なんて無茶なことを言う俺に、
友人は「今からそっちにいくよ」と快く応じてくれた。
その時は、ちょっと救われた気でいたな。
まだ俺のことを気に掛けてくれている人がいるんだ、って思った。

53 :
この上なく情けない話なんだけどさ、
友人と会うにあたって、俺にはちょっとした下心があった。
このミヤギって子、見てくれはそれなりなんだよ。
愛想はないけど、ふるまいがかわいいんだ。
その子が俺の後ろをずっとついてくるわけ。
そりゃ、それが監視員の仕事だからな。
でさ、スーパーを歩いてる最中、俺は思ったんだよ。
周りには、俺たち恋人同士に見えてるんじゃないか、って。
むしろそれ以外の何に見えるって言うんだろうな?
俺は、友人がそういった勘違いをしてくれることを期待してたんだ。
かわいい子を連れてることを自慢したかったのさ。
聞いてる方が恥ずかしくなるような動機だろ?
だが俺にとっては切実だったんだ。

54 :
レストランのテーブルにつくと、ミヤギは俺の隣に座った。
俺は満足して、早く友人が来ないかとうずうずしてたね。
時計を見る。ちょっと着くのが早すぎたらしい。
友人が来るまでコーヒーでも飲んで待つことにした。
ウェイトレスが来ると、俺は自分の注文を言った後、
ミヤギに向かって、「あんたはいいのか?」と聞いた。
すると彼女は気まずそうな顔をした。
「……あの、最初に言いませんでしたっけ?」
「何を?」と俺は聞きかえした。
「私、あなた以外には見えてないんですよ。
声も聞こえてないし、触っても気付かないんです」
ミヤギはウェイトレスの脇腹を突っついた。たしかに、無反応だった。

55 :
俺は目線を上げてウェイトレスの顔を見た。
「うわあ……」って目で俺のことを見てたね。
これはやっちまったな、と思った。
しばらく恥ずかしさで顔が真っ赤だった。
こうなると、友人に女の子を自慢するという
ささやかな夢も叶わなくなったわけだ。
二重にも三重にも惨めだったな。
俺の場合、寿命や健康や時間なんかより、
惨めさを売った方がよっぽど金になりそうだ。
もう帰っちまおうかとも思ったけど、
そこにちょうど友人が現れちまったんだ。
俺たちは大袈裟に再会の喜びを分かち合った。
半分ヤケだったな。もう正直どうでもよかったんだよ。

56 :
高校時代、俺たちは不満の塊だった。
ことあるごとに二人でマクドナルドに居座って、
何時間でも愚痴を言い合ったもんだった。
多分、当時の俺たちが本当に言いたかったのは、
「幸せになりてえなあ」の一言だったんだろう。
でもそれを口にするのが怖くて、俺たちは、
何時間も呪詛を吐いてうさ晴らししてたんだ。
しかし、久しぶりに顔を合わせた友人は、
たしかに愚痴こそ言うものの、あの頃とは
何かが根本的に変わってしまっていた。
なんていうか、それは現実的で妥当な愚痴なんだな。
あの頃の理不尽で非現実的で的外れな愚痴とは違う。
今の彼が口にするのは、バイト先の愚痴とか、
彼女の愚痴とか、そういうのなんだ。

57 :
俺は耐えられなくなってきてさ。
友人の話は露骨な自慢話になっていくし、
隣ではミヤギがぼそぼそ俺に話しかけてくる。
俺は二人に同時に話しかけられるのが大嫌いで、
そういうことをされると、頭が破裂しそうになるんだ。
で、あっさりと限界を迎えた。
まあ、ただでさえ余裕がなかったのもあったんだろうな。
気が付くと、俺はミヤギに「黙ってろ!」って怒鳴ってたんだ。
店内が静まり返ったな。数秒後、一気に血の気が引いて行った。
友人に何か言われる前に、俺は金を置いて席を立った。
いよいよ精神異常者みたいになってきてたな。
こりゃ三十万しかもらえないわけだ。

58 :
俺は夜道を歩いて帰った。酔いはすっかり醒め、
体調は悪いくせに、目は冴えまくっていた。
ちっとも眠れそうになくて、俺はテレビを見ようと思ったが、
そういえば自分でグラスをぶつけて破壊したんだった。
幸い音だけは出るみたいだったから、
俺はそれを巨大で不親切なラジオだと思うことにした。
缶ビールを開けて、プリッツをつまみに飲む。
ミヤギは俺の観察記録を書いているようだった。
俺のレストランでの愚行について書いてるんだろうな。

59 :
読んでる
精神にくるなこれ

60 :
「なあ、さっきは怒鳴って悪かった」と俺は言った。
「確かに、あんたの言う通りだったんだ。
俺は適当な嘘でもついて、さっさと店を出るべきだった」
「そうですね」とミヤギはこっちを見ずに答えた。
「それを書き終えたら、一緒に飲まないか?」
「飲んで欲しいんですか?」と彼女は聞きかえしてきた。
「そりゃもうな。寂しいから」と正直に答えると、
「悪いですけど、仕事中なんで無理です」と断られた。
じゃあ最初からそう言えよって話だよな。
夜が明けてきて、小鳥のさえずりが聞こえ始める。
ミヤギは一分寝て五分起きるみたいなサイクルで
俺のことを監視しているようだった。
なんつうか、タフだよな。俺にはとてもできそうもない。

61 :
夕暮れになって、俺は目を覚ました。
にわかには信じられないかもしれないが、
もともと俺はかなり真面目な性格なんだ。
十二時に寝て六時に起きるのが基本でさ。
夕焼けに照らされて目覚めるってのは、新鮮な感じだった。
部屋のすみを見ると、ミヤギは変わらずそこにいた。
いつの間にかシャワーを浴びたらしく、
近くを通った時にせっけんの匂いがした。
同じ俺の部屋なのに、ミヤギのいる周辺だけは
まったく異質の空間みたいな感じがしたな。
俺は例のリストを眺め、今日は遺書を書くことに決めた。
近所の商店で便箋を買ってくると、俺は万年筆を手に取った。

62 :
手紙なんて書くのは久しぶりだな、と思った。
最後にまともな手紙を書いたのはいつだろう?
俺は記憶を探る。おそらくそれは、小六の夏。
あの夏、クラスの皆でタイムカプセルを埋めたんだ。
銀色の球形のカプセルに、当時の宝物ひとつと、
未来の自分への手紙を入れたんだよな。
皆、一生懸命書いてたな。案外面白いんだよ、あれ。
二十歳になったらそれを掘り出そうって決めてたけど、
今のところ、何の連絡もきていなかった。
俺だけに連絡がきてないってことも考えられるが、
十中八九、係のやつが忘れちまったんだろう。

63 :
そこで俺は思ったんだよ。どうせ誰も掘り出さないなら、
俺一人でタイムカプセルを掘り出してやろう、ってさ。
そういうノスタルジックでロマンチックで、
甘い感傷に浸らせてくれるものを俺は求めていた。
夜中になると、俺は電車で小学校に向かった。
スコップを納屋から拝借してくると、
俺は体育館の裏に行って、穴を掘りはじめた。
すぐに見つかるもんだと思ってたんだけど、
案外埋めた場所って覚えてないもんでさ。
ミヤギは、穴を掘り続ける俺を、
近くに座ってぼうっと眺めてた。
なんとも奇妙な光景だっただろうな。

64 :
結局タイムカプセルが見つかったのは、
穴を掘りはじめてから三時間後くらいで、
その頃にはスコップを握る両手はマメだらけ、
身体は汗まみれ、靴は泥だらけだった。
街灯の下に行って、俺はタイムカプセルを開けた。
自分の手紙だけ取りだそうと思ってたんだが、
ここまで苦労したんだし、いっそのこと、
全部に目を通しちまおうって俺は考えた。
顔も覚えてないようなクラスメイトの手紙を開く。
その瞬間まで俺は完全に忘れてたんだが、
手紙には、最後に、こういう欄があったんだよ。
「一番のお友達は誰ですか」っていう欄がさ。

65 :
これまでの流れからいって予想はつくけど、
そこに俺の名前を書いてる奴は、一人もいなかった。
なるほどね、と俺は妙に納得してしまった。
一番輝いて見えた小学時代さえ、この有様だ。
ただ、ひとつだけ救いはあった。
例の幼馴染だけどさ、あの子だけは、
「一番のお友達」にこそ指名しなかったけど、
手紙の文中で俺の名前を出してくれてたんだ。
いや、これを救いと捉えるのも相当むなしい話だが。
自分の手紙と幼馴染の手紙だけ抜きとると、
俺はタイムカプセルを元あった場所に埋め直した。
去り際、ミヤギがタイムカプセルを埋めた場所の上に立って、
地面を足でとんとんと均していたことを覚えてる。

66 :
終電は数時間前に駅を通過していた。
俺は駅の硬い椅子に寝そべって始発を待った。
異様に明るいし虫も多くて、寝るには最悪の環境だったな。
一方、ミヤギは全然平気そうでさ。
スケッチブックを取りだして、構内の様子を描いていた。
仕事の一環かな、と考えながら俺は眠りについた。
始発の数時間前に目を覚ました俺は、
外に出て自販機でアイスコーヒーを買った。
変な場所で寝たせいで、体中があちこち痛んだ。
まだ辺りは薄暗かった。
構内に戻ると、ミヤギが伸びをしていた。
なんか、人間らしい一面をようやく見た気がしたな。
ああ、この子も伸びとかするんだ、って感心した。

67 :
おもしろい

68 :
仕事始まるまで粘って見てる

69 :
どうもです

70 :
感心ついでに、俺の中に、妙な感情が芽生えた。
余命三ヶ月っていう状況のせいかもしれない。
たび重なる失望のせいかもしれないし、
連続した緊張、疲労や痛みのせいかもしれない。
起きたばかりで寝ぼけてたのかもしれないし、
単にミヤギという子が好みだったからかもしれない。
まあ何でもいい。とにかくその時、不意に俺は、
ミヤギに「酷いこと」をしてやりたくなったんだ。
自暴自棄の手本って感じだよな。どうしようもない。

71 :
ミヤギに詰め寄って、俺は聞いた。「なあ監視員さん」
「なんでしょうか」とミヤギは顔をあげた。
「たとえば今ここで、俺があんたに乱暴なんかしたら、
本部とやらが俺をRまで、どれくらいかかる?」
彼女は特に驚かなかった。さめた目で俺を見て、
「一時間もかからないでしょうね」とだけ答えた。
「じゃあ、数十分は自由にできるってわけか?」
そう俺が聞くと、彼女は俺から目を逸らして、
「誰もそんなこと言ってませんよ」と言った。
しばらく沈黙が続いた。
不思議なことに、ミヤギは逃げ出そうとはしなかった。
ただじーっと、自分を膝を見つめてた。

72 :
「……危険な仕事なんだな」
そう言って、俺はミヤギの二つ隣に座った。
彼女は俺から目を逸らしたまま、
「ご理解いただけたようで何よりです」と言った。
俺の神経の昂りはすっかり収まっていた。
ミヤギの諦めきったような目を見ていたら、
こっちまで悲しくなってきたんだよ。
「俺みたいなやつ、少なくないんだろう?
死を前にして頭をおかしくしちまって、
監視員に怒りの矛先を向けるようなやつ」
ミヤギは首をゆっくり振った。
「あなたは、どちらかと言えば楽なケースですよ。
もっと極端な行動に出る人、たくさんいましたから」

73 :
1年100万なら20年ぐらい売りたいな

74 :
>>1
日給1万の仕事1日分がお前の1年かw

75 :
「……何で、そんな危ない仕事を、
あんたみたいな若い子がやってるんだ?」
俺がそう聞くと、ミヤギはぽつぽつと話し始めた。
話によると、彼女には借金があるらしかった。
原因は彼女の母親にあるのだという。
なんでも、たいした人生でもないくせに、
借金までして寿命を買いあさったらしい。
それなのに病気であっさり死んでしまって、
そのツケをこの子が払うことになったんだとか。
清々しいくらい胸糞悪い話だったな。

76 :
「借金ですが、私の寿命を全部売って、
ようやく返しきれるかどうかって額なんです。
あとちょっとで勝手に寿命を売られるところだったんですが、
諦めかけた時、この監視員の仕事を紹介されたんですよ。
この仕事、大変ですが、稼ぎはすごくいいんです。
このまま続けていれば、私が五十歳になる頃には、
全額返しきれてるんじゃないかと思います」
”五十歳になる頃には”、か。
これもまた、げんなりさせられる話だった。
彼女はまるでそれを救いのように話してたが、
自分が何かしたわけでもないのに、あと数十年、
俺みたいなやつの相手をし続けなきゃいけないわけだろ?

77 :
(´;ω;`)ウッ…

78 :
「そんな人生、全部売っちまえばいいじゃねえか。
五十まで生き残れる保証なんてないんだろ?」
俺がそう言うと、彼女は少し困ったような顔をした。
「たしかに、実際、監視員の仕事をしてる中で
監視対象に殺されてる人も、たくさんいますね。
でも……ほら、簡単には割り切れませんよ。
いつかいいことあるかもしれないじゃないですか」
「そう言ってて、五十年間何一つ得られないまま
死んでいった男のことを、俺は一人知ってるぜ」
「それ、私も知ってます」とミヤギはちょっとだけ微笑んだ。
なんだか嬉しかったな。俺の冗談で彼女が笑ってくれたことが。

79 :
何の感動もない

80 :
あぼーん

81 :
しにがみばらっどおもいだした

82 :
始発電車に乗り、スーツや制服に囲まれた中、
俺は周りの目も気にせずミヤギに話しかけた。
「タイムカプセルの中でさ、『一番のお友達』に
俺を選んでくれてる人はいなかったけど、
それでもやっぱり幼馴染のあの子だけは、
俺の名前を手紙の中で出してくれてたんだよ」
もちろん、周りにはミヤギの姿が見えていないから、
ひとりごとを言っているように見える。完全に不審者だ。
ミヤギは心配そうな顔で言う。
「あの、皆見てますよ。変な人だと思われてますよ」
「いいよ。思わせとけよ。実際、変な人なんだから。
……それでさ、あらためて駅で考えたんだけど、
やっぱり俺にとっては、たとえどんなに変わり果てようと、
幼馴染のあの子は、俺の人生そのものなんだよ」

83 :
「それで、どうしようっていうんですか?」
「最後に一度だけ、彼女に会って話がしたい。
そしてさ、俺に人生を与えてくれた恩返しに、
俺の寿命を売って得た三十万を、彼女に渡したいんだ。
多分あんたは反対するだろうけど、別にいいだろ、
俺の寿命を売って稼いだ俺の金なんだから」
「……そこまで言うなら、別に反対しませんよ。
でも電車内で話すのは、もうやめましょう。
見てるこっちが恥ずかしいですよ」
とは言いつつも、ミヤギは妙に楽しそうだった。
家には帰らず、俺はそのまま街へ向かった。
トーストとゆで卵をコーヒーで胃に流し込むと、
俺は深呼吸して、幼馴染に電話をかけた。

84 :
はよはよ

85 :
>>1が作家になったら本買ってしまうと思う

86 :
漫画でも良いし小説でも良いし、兎に角買って読みたい本になりそうだな

87 :
wktk

88 :
p2、●持ちのスマホ回線などが書き込めなくなってるな

89 :
夜だったら会える、と幼馴染は言ってくれた。
好都合だった。こちらも色々と準備があるからな。
俺はミヤギの手を取って、ぶんぶん振りながら歩いた。
道行く人には一人でそうやってるように見えただろうけど、
俺は気分がハイになってたから、どうでもよかった。
ミヤギは困ったような顔で俺に引っ張られるままにしてたな。
まず美容室へ向かい、二時間後に予約を入れた俺は、
ショップに行って服と靴を買い、その場で着替えた。
新品の服を買うのなんて数年ぶりだった。
新しい服に着替えて髪を切った俺の姿は、
なんだか俺じゃない誰かみたいだった。
ミヤギもまったく同じ感想をくれた。
「なんか、まるで別の人みたいですね」
正直言って嬉しかったな。俺、悪くないじゃん!

90 :
え?書けるよ

91 :
待ち合わせまで暇だったから、俺はミヤギに頼んで、
幼馴染と会ったときの予行演習をすることにした。
昨日友人と会った時のレストランに入り、訓練を始める。
正面に座ったミヤギに向かって俺は微笑み、
「どうだミヤギ、感じ良く見えるか?」と聞く。
周りから見れば、壁に向かって微笑みかける変人だ。
ミヤギはサンドイッチをもそもそ食べながら答える。
「んー、ちょっと笑顔がこわばってますね。
普段笑わないから、表情筋が弱ってるんですよ」
「そうか。なら、夜までに鍛え上げてみせるさ」
俺は何度も笑ったり真顔になったりを繰り返す。
「……あなた、なんていうか、おもしろいですね」
「ああ。魅力的だろ? 惚れないように気をつけろよ?」
「気を付けます。しかし、浮き沈みの激しい人ですね」
実際、かなり浮かれてたんだよ、その時は。

92 :
電話してから幼馴染に会うまで
大体八時間くらい間があったんけど、
俺には二十七時間くらいに感じられたね。
五秒に一回くらい腕時計を見てた気がする。
ぎりぎりまで俺は、ミヤギで訓練してた。
どうすりゃ相手に良い印象を与えられるか、
カフェのすみで、二人で試行錯誤してたな。
――そうして、ついに待ち合わせの時間が来た。
待ち合わせ場所にやってきてくれた幼馴染を見て、
俺はその外見や口調の変化にとまどいつつも、
笑い方や仕草が変わっていないのに気づいて、
それだけで、本当に電話してよかったと思った。
「ひさしぶり」と彼女は言った。「元気にしてた?」
「元気にしてたよ、そっちは?」と俺は答えたが、
余命三か月の俺が元気だって言うのも笑えるよな。

93 :
外見にそれなりに金をかけたおかげか、
幼馴染は俺のことを気に入ってくれたみたいだった。
「ずいぶん変わったね」と言いながらべたべたしてくる。
なんていうかさ、いける感じの雰囲気だったんだよ。
訓練の成果と、未来を知ってるがゆえの余裕もあって、
俺はかなりの好印象を幼馴染に与えることに成功してた。
しかし俺ってやつはさ、本当に物事を
台無しにしないと気が済まないらしいんだよな。
近況を語りたがる幼馴染の話をさえぎって、
何と俺は、寿命を売った件について話し始めたんだよ。
「あのさ、俺、余命三か月しかないんだよ」って
同情を引くような調子で語りはじめたんだ。

94 :
心のどこかで俺は、この幼馴染なら、
俺の話を真面目に聞いてくれる、俺に深く同情し、
慰めてくれるって信じてたんだろうな。
でも話が始まって五分とたたずに、
幼馴染は退屈そうな反応を示し出した。
馬鹿にしたような顔で、「ふーん?」とか言うのな。
もちろん間違ってるのは俺で、悪いのは俺なんだ。
俺だって突然、寿命を買い取る店がどうだの
監視員がこうだの言われても、信じないだろう。
大笑いされなかっただけマシだと思う。
幼馴染は「ちょっと失礼」と言って立ち上がった。
トイレにでも行くんだろう、と俺は思ってた。
その直後に、注文した料理が二人分届いた。
俺は早く続きを話したくて仕方なかったな。
でも幼馴染は戻ってこなかった。
料理が冷めるまで待ったけど、戻ってこなかった。
また俺は”やっちまった”わけだ。

95 :
俺は冷めたパスタをゆっくり食べた。
しばらくすると、ミヤギが正面に座って、
幼馴染の分のパスタをぱくぱく食べ始めた。
「冷めてもおいしいですね」とミヤギは言った。
俺は何も言わなかった。
店を出ると、俺は駅前の橋に向かった。
そしてそこで、幼馴染に渡すはずだった
三十万円の入った封筒を胸から取り出し、
道行く人に、一枚ずつ配って歩いた。
「やめましょうよ、こんなこと」とミヤギが言う。
「別に人に迷惑はかけてないだろ」と俺は返す。
どいつもこいつも、渡されたのが金だと分かると、
薄っぺらい礼を言うか、怪訝そうな顔をした。
断る奴もたくさんいたし、もっとよこせと言う奴もいた。

96 :
三十万はあっという間になくなった。
俺は勢い余って、財布の金にまで手を出した。
きっと俺は、誰かに構って欲しかったんだろうな。
「何かあったんですか?」とか聞いて欲しかったんだろう。
三十三万円配り終えると、俺は道の真ん中で立ち尽くした。
道行く人が不快そうに俺のことを眺めていた。
タクシー代も残っていなかったので、
俺は建物の陰になっているベンチで寝た。
真上に傾いた街灯があって、しょっちゅう点滅していた。
ミヤギも正面のベンチで寝るようだった。
女の子にひどいことさせんてなあ。
「先に帰っていいんだぞ?」
俺がミヤギにそう言うと、彼女は首をふった。
「そしたらあなた、自殺とかしそうですから」

97 :
眠りにつくまで、俺は真上に広がる星空を眺めていた。
最近、夜空を見る機会が増えた。七月の月は、綺麗だ。
俺が見逃していただけで、五月も六月もそうだったのかもしれない。
俺はいつものように、眠りにつく前の習慣を始めた。
頭の中に、いちばんいい景色を思い浮かべる。
俺が本来住みたかった世界について、一から考える。
五歳くらいから、ずっとやってる習慣だった。
ひょっとしたら、この少女的な習慣が原因で、
俺はこの世界に馴染めなくなったのかもな。

98 :
六時ごろに目を覚まして、俺は歩いてアパートまで帰った。
街の外れでは朝市をやっていて、早朝から騒がしかった。
四時間くらい歩いて、ようやくアパートについた。
一昨日の件もあって、両腕両足が悲鳴を上げてたな。
もっと安らかに生きることはできないのかね、俺は。
シャワーを浴びて着替えると、寝なおした。
ベッドだけは俺を裏切らない。俺はベッドが大好きだ。
さすがのミヤギもそれなりに疲れたらしく、
監視もほどほどに、すぐシャワーを浴びて、
部屋のすみっこでうつらうつらしていた。

99 :
机の上には、書きかけの遺書があった。
だが、続きを書くのは何だか馬鹿らしかった。
誰も俺の言葉なんて気にしちゃいないんだ。
会いたい人もいないし、そうなると、
いよいよすることがなくなってしまった。
散財しようにも金は昨日配りきってしまったし。
「何か他に好きなことはないんですか?」
ミヤギは俺にを励ますように、そう訊ねた。
「やりたかったけど、我慢してたこととか」
そこで割と真剣に考えてみたんだけど、
俺、どうやら好きなことがあんまりないらしい。
あれ、今まで何を楽しみに生きたんだっけ?

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