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社会福祉公社技術部さくら板支所 第4分室 (105) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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社会福祉公社技術部さくら板支所 第4分室


1 :2012/10/01 〜 最終レス :2013/09/16
さくらちゃんに何となく似ているリコが大活躍したり
知世ちゃんに何となく似ているアンジェが大変な事になる
GUNSLINGER GIRL のスレです
◇前スレ◇
社会福祉公社技術部さくら板支所 第3分室
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/sakura/1289669136/l50
◇保管庫、サブ掲示板◇
社会福祉公社技術部保管庫
ttp://wiki.livedoor.jp/gunslingergirl_ss/
アクセス規制を受けた方のための本スレ転載用スレッド
ttp://wiki.livedoor.jp/gunslingergirl_ss/bbs/911/l50
* 1レスは30行、2048バイトまで書き込めます
* sage進行でお願いします

2 :
>ガンスリンガー・ガール達に(;´Д`)ハァハァするスレです。
>(;´Д`)ハァハァと言いながら実質のSSスレ
だったらいいな
2chスレで投稿された名無しさんの作品で
「無断転載倉庫」に掲載されていないSSを”発掘”して保全も。
他サイトからの転載は執筆者の許可を貰いましょう。

3 :
今は亡きこんなスレをリスペクトしてるみたいです
「ガンスリンガー・ガール」ハァハァスレ @+1(漫画キャラクター板)
ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1099215397/
「ガンスリンガー・ガール」ハァハァスレ @+2(漫画キャラクター板)
ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1145293079/
「ガンスリンガー・ガール」ハァハァスレ @+3(漫画キャラクター板)
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1170134431/
ガンスリンガーガールスレ(エロパロ&文章創作板)
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1063912806
ガンスリンガーガール 2人目の義体(エロパロ&文章創作板)
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1099669994
ガンスリンガーガール 3人目の義体(エロパロ&文章創作板)
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1115286133
ガンスリンガーガール 4人目の義体(エロパロ&文章創作板)
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178375722/
ガンスリンガーガール 5人目の義体(エロパロ&文章創作板)
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191260180/
社会福祉公社技術部さくら板支所 (CCさくら板)
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/sakura/1198349410/l50
社会福祉公社技術部さくら板支所 第2分室 (CCさくら板)
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/sakura/1231771865/l50
社会福祉公社技術部さくら板支所 第3分室(CCさくら板)
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/sakura/1289669136/l50

4 :
◇関連スレ◇
相田裕「GUNSLINGER GIRL」#98(漫画板)
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/comic/13478015...
GUNSLINGER GIRL ガンスリンガー・ガール 58挺目(懐アニ平成板)
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/ranimeh/132974...
GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO- part41(アニメ2板)
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/anime2/12954053...
GUNSLINGER GIRL inサバゲ板 陸挺目(サバゲー板)
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/gun/1251748690/
▼ ガンスリンガー・ガールでエロパロ 3 ▼ (エロパロ板) *21歳以上*
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1278604450/l50

5 :
◇関連サイト◇
JEWEL BOX (相田裕公式サイト)
ttp://www.remus.dti.ne.jp/~jewelbox/
電撃大王
ttp://daioh.dengeki.com/
TVA「GUNSLINGER GIRL」公式サイト
ttp://www.gunslingergirl.com/
北米版アニメ(1期)公式サイト
ttp://www.gunslingergirl.tv/index.htm
ゲーム公式サイト
ttp://www.dimps.co.jp/gunslingergirl/index.html
GUNSLINGER GIRL DB
ttp://tunes.sakura.ne.jp/gsg/
MEDIA GUN DATA BASE
ttp://mgdb.himitsukichi.com/pukiwiki/?MEDIAGUN%20DATABASE
ONE MORE DAY
ttp://page.freett.com/onemoreday/index.htm
ガンスリ板@萌えBBS
ttp://moebbs.net/test/subject.cgi?next=gunslingergirl&page=2
雑談inガンスリ板
ttp://moebbs.net/test/read.cgi/gunslingergirl/1066456383/l50
GunslingerGirl ガンスリンガー・ガールSS書きの控え室 2
ttp://moebbs.net/test/read.cgi/gunslingergirl/1095225218/l50

6 :
監督の浅香守生つながりであるとも言えるわけですが
二期の監督の真野玲もカードキャプターさくらの演出スタッフだしね

7 :
◇海外SSサイト◇
fanfiction.net
ttp://www.fanfiction.net/
fanfiction.net・GunslingerGirl作品検索ページ
ttp://www.fanfiction.net/anime/Gunslinger_Girl/
*和訳職人絶賛募集中。
 訳文を投稿する際は作者さんの許可を貰いましょう。

8 :
コミック派もいるので、最終巻が発売されるまでは
“ネタバレ有SSは投下前に注意書き”をよろしくおねがいします

9 :
ここは保守しなくても落ちないの?

10 :
大丈夫なんじゃないかなあ。
さくら板はのんびりしてるから落ちにくいってのが
SSスレ立てるのに選んだ理由だったみたいだしね。

11 :
「今年はアンジェに何を着せようかな〜」
プリシッラはいつも陽気だ。
アンジェの状況は決してよくない。
次の大ケガは、きっと命取りになる。
それは誰もがわかっている事なのに。
何も知らない顔をして、楽しそうにハロウィンの準備をしている。
こうしていると、課員が少なかったころの会話を思い出す。
「なんで義体って女の子なんだろうな」
「女のほうが痛みに強いらしいぞ。
男は出産したら痛みで死ぬとか雑誌に書いてあった。
しかもな、快感も女のほうがすごくて男が女並みに感じたらやっぱり死ぬとか…」
その会話はプリシッラの振り下ろしたファイルの角で打ち切られた。
でもな。
やっぱり女は強い。
俺もマルコーさんの立場なら今頃逃げてる。
俺のケンカを止めるため、アンジェが腕にナイフを刺してしまった時。
滴る血より、躊躇せず腕で止めた、あの動きが恐ろしかった。
馬鹿ばっかりと言われた俺の部隊にそんな奴はいなかった。
馬鹿だからこそ、人間臭い奴らばかりで、死を恐れないなんて優秀な兵士はいなかった。
そして飛ばされて戻ってきて、アンジェの記憶障害を目の当たりにした。
ケガの治療は記憶障害を起こしやすくする、それぐらいは俺でも知ってる。
俺のせいだと思った。
あの時ナイフが刺さらなければ、アンジェは…

12 :

それ以来アンジェの顔を見ると、どうしても後ろめたかった。
だから義体たちに季節のイベントを、とプリシッラが張り切っていても輪に入れずに来た。
でも、それでいいのか?
馬鹿な俺だけど、逃げるのは嫌いだ。
だから、今回だけは。
「俺も菓子配る役ならやるよ。
母ちゃんが自慢のお手製カントッチョ配りたくても俺の村は貧乏でさ、子持ちは街に出ちゃうから。
送ってもらって義体に配ろうぜ」」
「お、馬鹿ジョルジョにしてはいい事いうじゃない。
じゃ、ジョルジョにも仮装させよう。
ジョルジョはゾンビね」
アンジェには白雪姫だ赤ずきんだと言っていたくせに、俺にはゾンビか。
「もうちょっと小奇麗なのにしろよ…
ジョルジョのゾンビがお菓子配ってたんじゃ食欲が失せる」
こんな時にだけ、昔のようにマルコーさんが口をはさむ。
まぁいいか。
アンジェが喜んでくれるなら。
The end

13 :
お久しぶりです。
ハロウィンネタです。
こっちに投下でよかったのでしょうか?
主人公がまさかのジョルジョです…
何かネタふりがあれば、また「いつもの蘇芳」じゃない感じの話も書いてみたいですね。

14 :


サブタイトルに「幕間劇」って入れたアンソロジーとか合同誌があればなあ。。。。

15 :
フォトンベルトの事でしょうか?これしか頭に思い浮かびません。
本当か嘘かは知りませんが、地球滅亡では無く、気象大変動が起こると聞いた事があります。
ずーと異常気象(例えば日本では冬もだんだん暖かくなり、秋は短く夏が長い。)が続いていますが、これらがザッと変わり、夏と冬だけになるのが2012年だと言われています。
その時、シベリアは温帯になり、北極点がカナダに移ると言われています。
宗教では、人は、神の子と言います。
なぜかというと、人は元は、神の世界にいました。
ところが、脳に誘惑されて、脳の世界に入ってしまいました。
そして迷い苦しんでいます。
しかしやっと、苦しみから解放される時がきました。
いよいよ2012年、人は、脳を分離して、神の世界にもどります。人類の幸福時代の始まりです。
今日のおじゃる丸は「みどり鬼の糸電話」です。みどり鬼はあかねとの恋に落ちてアカネ
の虜になっています。今日はアカネとみどり鬼との恋愛物語で
幼児には不向きです保護者も怒りチャンネルを変えてしまいました。このようなとんでもな
い放送は控えないといけません。フジテレビの超問題作「赤
い糸」にNHK教育テレビは大きく貢献していたことがわかります。赤い糸は大コケでしたから
NHK教育テレビへのもども番組を利用した「おかあさんと
いっしょ ぐーチョコランタン」やおじゃる丸への非難は相当なものがありますね。
愛の告白と番組内容が大きなエロで「赤い糸」の宣伝番組だったの
ですNHKは全くこんな有害放送をして高額な受信料を取るNHKは許せません。

16 :
第3分室落ちたねって書きに来たらもうこっちに引っ越してたのか。
>>13
ハロウィンネタ投下おつです

17 :
ジョゼッタ組のMAD作ってみた。
ジョゼさんが黒い(?)のでラブラブなジョゼッタがお好きな方はご注意を。
ジョゼッタは好きなんだがシリアスにするとどうしても幸せっぽくならないorz
きれいな石の恋人 "febbre alta" - Henrietta e Gioseffo -
http://youtu.be/Se4VwtGQsdE

18 :
最終巻、ついに出たね

19 :
PC規制中なのでどなたかサブ掲示板からの転載をお願いします

20 :
http://wiki.livedoor.jp/gunslingergirl_ss/
タイトルとか作者の手がかりを教えてもらわないと

21 :
140.【コート】 - 12/12/19 15:18:31 - ID:o7LXxaCN3Q
   【コート】

 軍施設での訓練の帰り。広い駐車場を少女は担当官と並んで歩いていた。
すっかり暗くなった冬の舗装路に靴音を響かせながら、男は傍らの少女に話しかける。
「今夜は流星群の極大期だそうだな」
「そうなんですか」
「ああ。夜中にかけて西の空を中心に見られるらしい」
 言いながら足を止め、男は夜空を振り仰ぐ。少女も担当官に倣って視線を上げる。
駐車場の周囲には照明が灯っているが、それでも見上げた空にはぽつぽつと星明かりが見て取れた。
「   やはり公社の演習場の方が良く見えたな」
「そうですね」
 少し前、少女は彼に引率を頼んで仲間と共に流星雨の観測をしたことがあった。
担当官は彼女が天文に興味を持ったとみたのだろう。これまで彼がそんなことを言い出したことはなかったのだから。
実際のところ、観測会を提案したのは彼女の仲間であり、彼女自身が特に強く星に興味を持っているわけではない。
だから以前の彼女ならば、物事の表面を見ただけの儀礼的で浅はかな御機嫌取りだと
担当官のそんな言動には苛立ちを覚えたものだった。
「トリエラ」
「はい?」
 名を呼ばれ振り返った少女の肩がぬくもりを伴った布地で覆われた。
かすかな煙草の匂いと共にそれが担当官の着ていたコートであることに気付き、少女はまばたきする。

22 :
141.【コート】 - 12/12/19 15:23:43 - ID:o7LXxaCN3Q
「冷えるから着ていなさい。流れ星はすぐに見られるものじゃない」
「大丈夫です、私もコートは着ているんですから。あなたこそ、マフラーだけでは風邪をひきますよ」
「僕はいい。風邪をひいたら薬を飲めばそれですむ」
 だが君は、と男が続けることはなかった。けれども男が言外に危惧している内容を、少女もまた理解していた。
義体である彼女は条件付けにも身体の調整にも多くの薬物を使用されている。
男の行動は少女に不要な薬物を摂取させないための不器用な気遣いだ。
――もっとも、彼女がそんな風に考えられるようになったのは比較的最近のことだが。
 男は視線をそらすようにまた上空を見やった。
スーツの上に大き目のマフラーを巻いただけのその姿はナポリで目にしたものと同じだ。
一年に一度くらい、男の御機嫌取りに腹の立たない日があってもいいだろう。
あの時はそんなことを考えた。
それが、次第に腹の立たない回数が増えてきている。むしろ嬉しくさえ感じている。
そんな自身の変化を少女は自覚していた。
 少女は男の視線の先を追い澄んだ冬の夜空を見上げた。またたく星々の光はまばらだが美しい。
黒い闇間をすっ、と一条の光が通り過ぎた。あ、と同時に声が上がる。
「今、流れたな」
「ええ」
 空を見上げたまま言葉を交わす。二人の人影は白い吐息をけぶらせながら、しばし冬の静寂に佇む。
 流れ星に願いを掛けるほどロマンチストではない、と少女は思う。
それでも男の傍らに並び立ち同じ光景を見つめているこの時間は、仲間との流星雨観測とどこか違う感じがする。
冷たく静かな夜気の中、コートの暖かさだけではないぬくもりが少女の胸を心地よく満たしていた。

<< Das Ende >>

23 :
>>20
申し訳ない、次回は気を付けます。転載ありがとうございました。

24 :
…アイーダが担当との打ち合わせに作成した年表のコピーが欲しい(切実

25 :
>>24
原画展に行ってメモって来るんだ
自分は最終巻のSSはもう少し消化してからでないと書きようがないなー
年末年始でどなたか何か投下してくれるんじゃないかと期待

26 :
最終日はジャンケン大会があるんだな。

ガンスリは電撃大王不定期連載でも外伝とかやってくれたら嬉しい。
他の”1期生”だけじゃなくてフランコ・フランカとか五共和国派の視点があれば面白そう

27 :
「Memoria」の展示内容纏めて同人誌にならんのかのう?

28 :
最終日行って見てきたけど、クローチェ事件を0年として+5年で鐘楼事件なんだな。
−5年でピーノが拾われていて、始まりは−8年くらいでジャンさんが軍大学に入ってクローチェ家の爺さんがなくなったときだったか。
ジャン18歳ジョゼ15歳エンリカ5歳でエンリカとジャンさんの年齢差すげえと思ってしまった。
年表は大まかな出来事をメモったけど話の中心の四年目あたりは
出来事がすごくあって、把握できなかった。

29 :
おおお!!!ありがたや
ミラノ以外の五共和国派の内訳とかあったりした?

30 :
Boun Capodanno !
今年もよろしゅう
>>29
>ミラノ以外の五共和国派の内訳
そういうのはなかった気がする。自分も大まかにメモっただけだけど

31 :
漫画板で話題になった際は、北イタリアの人口200万に満たない特別自治州を除いた
エミリア=ロマーニャ州ボローニャ
ヴェネト州ヴェネツィア
ロンバルディア州ミラノ
ピエモンテ州トリノ
リグーリア州ジェノヴァ
で五共和国派じゃないか?と考えていたが、マフィアが台頭してこない
パダーニャの南限はフィレンツェかローマあたりかもしれんとか
連載中は色々妄想してたなあ。

32 :
私が何故か好きなヴァッレ・ダオスタは特別州と言うことは小さすぎて
お呼びでないのか、特別自治権を持ってて「オラぁ関係ねぇ」なのか・・・。

33 :
二期アニメか、原作だったか?
”2期生”登場の頃にパダーニャについての説明では
5つの州の連合体じゃなくてイタリア本土と島々を5つに分けて統治する
地方分権みたいな感じで、現実の北部同盟に合わせたような内容だったと覚えている。

34 :
アオスタの山ん中の人らは自分らのことフランス人とか思ってそうだな

35 :
俺は馬鹿だった。
俺は賢いつもりになっていた。

同じミスを二回するのは馬鹿だ。
他人のミスに学べないのは馬鹿だ。
仕事ではそう教わってきた。

そして、命さえあれば取り返せないミスはない、と親父は言った。
最悪のミスってのはうっかり死んじまう事だと。

だから、俺はラウーロにはならないようにしようと思った。
ヤツの逆を行こうとした。

エルザは狂いそうな程ラウーロを愛してた。
ビーチェは別に俺を愛してなかった。

エルザは死を義体なりに重く考えた、だから心中は最終手段として意味があった。
ビーチェは死の意味すら分かっていない、リコ並みに。

エルザは五共和国派との争いではなく、個人的感情のため死んだ。
ビーチェは鐘楼の戦いに大きく貢献し、トリエラをはじめ沢山の命を救って死んだ。

だが、今となっては俺が正しかったとは思えなくなった。

狂う程人を愛したり憎んだり、死を恐れたり死が怖くない程の何かを見つけたり。
それが人間だ。

俺は、ビーチェから人間である事を奪った。
エルザは馬鹿で無駄で腹が立つぐらい、人間だった。

二人とも表情は乏しかったが、エルザはラウーロの写真と銃にこだわってた。
ビーチェにはそんなもんはなかった。

36 :
義体が人間でも辛いだけかもしれない。
でも、俺が人間である事を奪っていい筈はなかったんだ。
いくらそれでビーチェが楽になるとしても。
医者の安楽死だって医者が患者に聞かずにやったら犯罪だ。

こんなもん、読まなきゃ良かった。
俺がした事はビーチェを人間からロボットに変える行為だって事を、何十年も前の人間が暴いてやがる。
あの野郎…逝く前に小説なんか渡しやがって、こんな重荷を俺に託してたのか。
クソッタレ。



本に挟まれた、しわくちゃの荒れた文字のメモ。
多分、日記帳の1ページ。
私は「エルザ」は知らないけれど、この人の辛さはなんとなくわかる気がする。

この本は、アイザック・アシモフの「われはロボット」。
ロボット三原則の載った有名な作品。
三原則…人間の命令に従う、人を殺さない、自殺しない。
人に命令されても人を殺しちゃいけないってところは条件付けとは違う。
でも、どこかが条件づけに似ているかもしれない。
そして…このメモの筆者はおそらく、ベルナルドさん、ビーチェの担当官だった人。

37 :
本の中も、メモとは明らかに違う筆跡の書き込みだらけだ。
「自殺は人間らしさなのか」とか、「死の恐怖や痛みへの以外の自己を守る動機付けは何か?」とか。
小説の中身は宇宙とロボットが満載の典型的なSF。
小説より、書き込みに私は引き込まれた。

「封印されたトラウマを、その事件の小道具が蘇らせ得るなら、クラエスとの《約束》にも小道具が有効か?」

クラエス?
この本の本来の持ち主はクラエスに深く関わる人物だったのだろうか。

「おい、ペトラ、何を読んでるんだ?
こんないい天気なのに」
「サンドロ、この本、書き込みだらけだよ。
クラエスに関係ある今は生きてない誰かが、ベルナルドさんに託した本みたい」
「クラエスに関係ある今は生きてない誰かってそりゃあ…」
「サンドロ、知ってるの?」
「知らない事になってる」
「聞いたら困る?」
「ああ、困る」
「じゃあ、キスしてくれたら聞かない」
「お前なぁ…」

38 :
ベルナルドさん。
ビーチェは幸せだったと思うよ。
こんなにあなたに思われていたんだから。
愛は分からなくても、なんとなく温かさは感じてたはず。
最期、ビーチェはトリエラを守った。
それは命令じゃないよね、トリエラも義体だもの。
温かさを知らなかったら、そんな事できなかった。
だから、大丈夫。
そんなに自分を責めないで。


クラエスを大切に思い、ベルナルドさんにこの本を託した誰かへ。
今、私はサンドロを愛してます。
私は死にたくないけど、サンドロのためなら死も怖くない。
サンドロの命令に逆らう事も、サンドロにクソッタレって叫ぶ事もできます。
幸せです。
だから、安心してください。

あなたのクラエスも、ピアノとハーブと読書を愛して、それらがあるこの船を愛してます。
船の暮らしを守るため私の分まで実験に協力してくれてます。
私はもう実験に協力できない体で、あなたのクラエスの負担を増やしてしまってごめんなさい。
クラエスを、義体を、愛してくれてありがとう。

39 :
この手紙は、いつか、誰か読むのかな。
案外サンドロだったりしてね。
ねぇ、サンドロ。
私はサンドロを愛してるよ。
今幸せだから、私は幽霊にはなれないね。
それじゃあ死んじゃったらもうサンドロの側にはいられないね。
行き先は天国か地獄かわかんないけど、とにかくどっちかに行っちゃう。
だから、また誰かを愛して。
恋でも恋じゃなくてもいいから。
それが私の新しい幸せになるんだよ。


下にはヘタクソな落書き。
ロングヘアの女の隣で、女の子を肩車する男。
まさか、俺とロッサーナとビアンカじゃないだろうな?
お前、本当絵がヘタクソだな…いつか的に貼ってたジャコモも酷かったもんな。
こんな本の間に遺言なんか遺しやがって。
俺は小説はあんまり読まないんだよ、知ってるだろうが。
仕事で映画マニアをやる事になってよかったよ。
たまにはあの「クソッタレ」上司にも感謝してやらないとな。

俺も元気だよ。
恋人はいないけどさ…その、息子っtつーか弟みたいなヤツはいるかな。
アイツがジークフリートをやる時は、お前の写真も連れていってやるからな。
待ってろよ。

40 :
作が最終回を迎えた今、私の作品に需要はあるのかどうか…
私なりに考えていた最終回を原作に沿う形に書き直したのがこちらです。
本当は、もっとベルナルドを掘り下げたいし、ネタもないわけじゃないのですが、いくらなんでもベルナルド主役は需要がないだろうと控えてます…

マンガの場面転換を意識した語り手の変更をやってみましたが、難しいですね。
一応順にベルナルド、ぺトラ、サンドロで、本に書き込んだのはラバロです。
かなり気合入れて書いたのですが、いかがでしょうか…

41 :
需要はあるよ。まだあるんだよ。
少なくとも自分はまだガンスリのSSは読みたいよ。
最初一体誰かと思ったけど、ベルナルドなのね。
で、ベルナルドが読んでいた本は元はラバロさんの持ち物の本なのか。
なんかペトラを経てサンドロまで繋がりが感じられて良かったよ。

42 :
結局、大尉殿がいつ・どうやって
クラエスの条件付けを上書きしたのか
わからずじまいだったなあ。。。。

43 :
投下おつです。これからゆっくり読ませていただきます。
諸事情でまだ保管作業に入れそうにありません。
年度が変わればなんとか時間が取れると思いますが
もし可能でしたら自力保管していただけると大変助かります。

書きたい話はあるんだよー。ただ重い話は書いてて辛いし
明るい話だと上滑りしてからまわっちゃうし、
何書いていいのか分かんなくなっちゃってるのもあるかな。
あと仕事と花粉がツライorz

44 :
以前、上がってたヴァニラアイスの話みたいにビーチェは掘り下げれば結構面白そうなのに。。。。

45 :
GSiM@SGシリーズで何か書けないだろうか?

46 :
>GSiM@SGシリーズ
なんでトリエラだけないんだ

47 :
…ああ、そういえば確かにトリエラだけいませんね。

48 :
今更だけど今年は復活祭早かったんだね
イタリアのイースターエッグ(ウオーヴォ・ディ・パスクア)は
ヘルメットくらい大きいチョコレート製で中におもちゃが入ってると聞いたんだが
エッタだったら一日で食べちゃうんだろうなw

49 :
Pasqua
キリストの復活を祝う祭りで春分後最初の満月の後の日曜日

ナタレ以外でトリエラがテディベア貰うイベントだな

50 :
イースターエッグの中にくまが入ってるのか…

51 :
たぶんこの上にあるのがイースターの特大チョコエッグ。
正面の羊のケーキ(?)の目がコワイ。
http://www.flickr.com/photos/babeledunnit/444916811/
…食べきれるのコレ?
トリエラは年少組に分配しそうな気がする。
クラエスは砕いてお菓子の材料にして上手に消費。

52 :
規制中のためサブ掲示板からの転載をお願いします。
http://wiki.livedoor.jp/gunslingergirl_ss/bbs/911/l50
【ロシアンルーレット】 >>145-146 の2レス
鳥昼とジャンリコと2課のゆかいな仲間たちのバカ話です。
少し長めなので連投規制除けのため2回に分けて投下させていただきます。
申し訳ありませんがどなたかよろしくお願いいたします。

53 :
144.【】1/9 - 13/04/26 00:20:06 - ID:RA9NTAFNBQ
【ロシアンルーレット】

 午後の作戦二課に淹れたてのエスプレッソの香りが広がった。
イタリア人にしては忙しすぎる職場に所属している社会福祉公社の面々だが、
人生を豊かにする三大要素を放棄するつもりは無く、
たちまち大容量のエスプレッソメーカーの周りに手の空いた人間が集まる。
「あ、お茶請けにこれどーぞ」
 チョコレートやビスケットが並ぶ小さなテーブルに、愛の堕天使が大きめの菓子箱を載せた。
「なんだこれ?」
「ふっふっふ。新商品の“ロシアンルーレット・タルト”だよ〜んっ」
「はあ? ロシアンルーレットぉ?」
 明るいプリシッラの声にわらわらと物見高い課員たちが集まってくる。
「20個の内1つだけが激辛タルトなのさ。一個ずつ取っていって」
「なんでそういうキワモノを買ってくるんだよ」
「いーじゃないの。確率は20分の1なんだから大したことないでしょ。
誰が一番運が悪いか、さあさ運試し、運試し!」
 うえ〜っと嫌そうな顔をしながらも手を伸ばす同僚たちに、
あらら意外と付き合い良いなあとプリシッラは内心驚く。
元々、作戦2課はあちらこちらの組織から貧乏くじを引かされて弾き出された
あぶれ者の集団である。運の悪さには誰もが心当たりがあるわけで、
イタリア人の国民性であるオーバーアクションを差し引いても、
嫌そうな顔には結構本気が混じっているだろうことは想像に難くない。
それでも皆が菓子箱に手を伸ばすのは、まあプリシッラの人徳と言うものであろう。
 もっとも参加者たちにも多少の計算はあった。
彼女が言うように確率はそれほど高いものではないし、
それになんと言っても運無し者ぞろいの作戦2課でも極めつけに運の悪そうな人間が
その場にいたからである。

54 :
145.【】1/9 - 13/04/26 00:21:03 - ID:RA9NTAFNBQ
【ロシアンルーレット】

 午後の作戦二課に淹れたてのエスプレッソの香りが広がった。
イタリア人にしては忙しすぎる職場に所属している社会福祉公社の面々だが、
人生を豊かにする三大要素を放棄するつもりは無く、
たちまち大容量のエスプレッソメーカーの周りに手の空いた人間が集まる。
「あ、お茶請けにこれどーぞ」
 チョコレートやビスケットが並ぶ小さなテーブルに、愛の堕天使が大きめの菓子箱を載せた。
「なんだこれ?」
「ふっふっふ。新商品の“ロシアンルーレット・タルト”だよ〜んっ」
「はあ? ロシアンルーレットぉ?」
 明るいプリシッラの声にわらわらと物見高い課員たちが集まってくる。
「20個の内1つだけが激辛タルトなのさ。一個ずつ取っていって」
「なんでそういうキワモノを買ってくるんだよ」
「いーじゃないの。確率は20分の1なんだから大したことないでしょ。
誰が一番運が悪いか、さあさ運試し、運試し!」
 うえ〜っと嫌そうな顔をしながらも手を伸ばす同僚たちに、
あらら意外と付き合い良いなあとプリシッラは内心驚く。
元々、作戦2課はあちらこちらの組織から貧乏くじを引かされて弾き出された
あぶれ者の集団である。運の悪さには誰もが心当たりがあるわけで、
イタリア人の国民性であるオーバーアクションを差し引いても、
嫌そうな顔には結構本気が混じっているだろうことは想像に難くない。
それでも皆が菓子箱に手を伸ばすのは、まあプリシッラの人徳と言うものであろう。
 もっとも参加者たちにも多少の計算はあった。
彼女が言うように確率はそれほど高いものではないし、
それになんと言っても運無し者ぞろいの作戦2課でも極めつけに運の悪そうな人間が
その場にいたからである。

55 :
146.【】2/9 - 13/04/26 00:23:13 - ID:RA9NTAFNBQ
それぞれが手にしたタルトを口に放り込めば、果たせるかな課室の一角から鈍い悲鳴が上がる。
「うぐっ!?」
 振り返った皆の視線の先には、口元を押さえ長身を折り曲げて悶絶するドイツ人の姿。
 ――あ、やっぱり。
気の毒にと苦笑する者、遠慮なく爆笑する者。
反応は様々だったが、抱いた感想は薄情なことに概ね同じである。
お約束な人だなあと半ば呆れながらも、菓子を用意した人間は責任上笑ってばかりもいられない。
「大丈夫ですかぁ、ヒルシャーさん?」
「Danke...!」
 愛の堕天使が差し出した水を受け取ったドイツ人が、咳き込みながら思わず母国語で礼を言う。
普段ほとんど訛のないイタリア語で話すヒルシャーだが、さすがにその余裕はないらしい。
手渡されたグラスの水を一気に飲み干し、男はいささか情ない表情で溜め息をつく。
どうやら辛いものは得意ではないようだ。
「………すごい味だな」
「いやあ、期待通りのいいリアクションでしたねえ」
 あははーと悪気のない笑いで答えるプリシッラに、男は苦笑いである。
「次回があるなら、今度は当たり外れの無いものの方がありがたいんだが」
「それじゃあ、今度はお詫びに『ジオリッティ』で一番人気のチョコラータをご馳走しますよ」
 100年以上の歴史を持つジェラテリア(アイスクリーム屋)の名前を出され、
ヒルシャーは顔をしかめた。
「それは僕よりもトリエラに食べさせてやってくれ。甘いものは苦手なんだ」
「担当官が好き嫌いしてちゃ駄目じゃないですか〜」
 生真面目なドイツ人をからかいながらも次の休みには義体の少女たちに
アイスクリームを買ってくることを約束し、
その日の小休憩は大変和やかな雰囲気でお開きとなった。
――しかし、このささやかなレクリエーションが後日阿鼻叫喚を巻き起こそうとは、
この時は誰も予想しなかったのである。

56 :
転載ありがとうございました。
お手数をおかけして申し訳ありませんが後半もお願いいたします。
http://wiki.livedoor.jp/gunslingergirl_ss/bbs/911/l50
【ロシアンルーレット】(【】3/9〜【】9/9) >>149-155 の7レスです。

57 :
149.【】 3/9 - 13/04/26 22:41:16 - ID:RA9NTAFNBQ

「こんにちは、プリシッラさん」
「あ、トリエラ。ヒルシャーさんだったら今資料室に行ってるよ〜。呼んできてあげようか?」
 明るく軽く元気よく。いつもの調子で応えた愛の堕天使に、
ツインテールの優等生は礼儀正しくそれを遮る。
「いえ、いいんです。今日はプリシッラさんと二課の皆さんに差し入れを持ってきたんですから」
「へ?差し入れ?」
「どうぞ。クラエス特製の “ロシアンルーレット・クッキー” です」
「――はい?」
 妙に既視感を覚える少女の台詞にプリシッラの本能が黄色信号を点滅させた。
少女が差し出した小さなバスケットには直径4センチ程のきっちりと積み上げた赤いクッキーが20枚。
 ―――なんだかステキにヤバイ予感がするんですけど?
「あの、なんかスゴイ赤いんだけど…これ、ナニが入ってるのか…な…?」
「唐辛子ですよ。ハバネロとかいう種類だそうです」
 ――ハバネロ。東洋の島国では『暴君ハバネロ』の異名を取る、激辛の誉れ高き唐辛子。
「昨日は随分と楽しいお茶会だったと担当官に聞きましたから、私たちも真似してみようかと。
でも全く同じパターンでは芸がないですから、ひとひねりしてみました。
20枚のうち19枚がハバネロクッキーで、一枚だけ辛くないパプリカクッキーが入っています。
どうぞ一個ずつ取っていってください。誰が一番運がいいのか、運試しですよ」 
 ひねらなくていい、ひねらなくていい。
自分がタルトを勧めた時のセリフを変化球で返されて、愛の堕天使は引きつった笑いを浮かべる。
 勿論、義体は公社の人間に危害を加えないように条件付けされているのだから、
この真っ赤なクッキーも生命の危機に立たされるようなシロモノではないだろう。――そのはずだ。
 しかし相手は義体一条件付けの緩いトリエラである。
『クラエス特製』と言ってもおそらくトリエラ自身も手伝ったであろうし、
その際このクッキーの肝であるところのハバネロの量が彼女によって決められたとすれば、
結構スゴイ事になっている可能性は高い。

58 :
150.【】4/9 - 13/04/26 22:43:15 - ID:RA9NTAFNBQ
 なんとかして危険を回避しようと、愛の堕天使はお愛想笑いのまま人差し指を立てて優等生に指摘する。
「ええと、でもトリエラ、そしたらヒルシャーさんにもその激辛クッキーが当たる可能性があるじゃん?
昨日に続けて辛いお菓子って、ヒルシャーさんが気の毒じゃないかなあ」
「大丈夫です。ヒルシャーさんの分は私が代わりに食べますから」
 きっぱりと答えるトリエラ。
担当官の身代わりは義体の本領。とは言え、担当官に反抗的なことで有名だった彼女が、
わざわざこんな手間ひまかけてヒルシャーの仇を討ちにくるとは。
乙女心って変わるものよねとからかってやりたい所だが、
ちょっとこの場でそれを口にするのは命が惜しい。
「自分にだけ分かるように目印がつけてあるんじゃねぇの?」
 度胸の使い所を間違えているジョルジョが疑わしげにそう言えば、
少女はにこりともせずに生真面目に答える。
「そんな卑怯な真似はしませんよ。私は皆さんが選んだ後で、最後の一個をいただきます。
それなら公平でしょう」
 相打ち上等。少女の背後に立ち昇る不穏なオーラに課員たちは思わずたじろぐ。
「えーと俺は課長に報告に行くから……」
「オレも資料取りに行かなくちゃ……」
「ではどうぞ最初に選んでください」
「う……」
 下手な言い訳で逃げ出そうとしたアマデオとアルフォンソは、
目の前に突き出されたバスケットに進路を塞がれる。
助けを求めて周囲を見回すが、無論援軍はない。
 何で俺らがこんな目に。
昨日彼女の担当官の有様にひとかけらの同情もなく笑い転げていた己の行動を棚に上げ、
二人は哀れっぽく真っ赤なクッキーを見やる。天を仰いで十字を切ると
それぞれ一枚を手に取り思い切って口の中に放り込んだ。
ぼりぼりぼり…不気味に静まり返った課室にクッキーを噛み砕く音が響く。

59 :
151.【】5/9 - 13/04/26 22:44:24 - ID:RA9NTAFNBQ
「……なんだこれ、以外と辛くな―――」
 陽気なイタリア男たちがほっとしたように言いかけた、その途端。 
「辛ッ!!? つか痛ェっ!!」
「水!水、水っっ!!!」
 たちまち響く阿鼻叫喚。周囲の課員はいっそう青ざめる。
「これもらうぞプリシッラ!」
「あっ、まだそれ熱い……」
「〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
 近場にあった熱いコーヒーをあおったアマデオは声にならない悲鳴を上げて廊下に飛び出し、
給湯室へ向かって瞬く間に走り去る。
アルフォンソが手にした自分のマグカップのコーヒーは幸いそれほど熱いものではなかったが、
口内の消火活動には到底不十分な量であり、こちらもやはり同僚の後を追って課室から駆け出す。
「……………」
「……………」
 己の未来予想図を目の当たりにした課員たちの沈黙に、トリエラは挑戦的な笑みを浮かべた。
「―――さあ、皆さんもどうぞ」

 その後の光景はおおむね先行の二人に倣うものだった。
青い顔をした課員が一人また一人と恐怖の焼き菓子におそれおののく手を伸ばし
――冷静になってみればこんなゲームに付き合う義務はないはずなのだが、
なんだかんだ言っても皆彼女の担当官に対する多少の罪悪感は持ち合わせているため、
有無を言わさぬ義体の迫力に呑まれてつい手を出してしまうのである――
口に入れた途端に真っ赤になると給湯室に向かってすばらしい俊足を披露する。
辛い物は好物だと豪語していた連中はさすがに踏みとどまったものの、
発汗量と水分摂取量が増加しているのは明白だ。

60 :
152.【】6/9 - 13/04/26 22:45:59 - ID:RA9NTAFNBQ
 そんな次々に課員が飛び出していくオフィスの出入り口から、ドスの効いた低い声が聞こえた。
「何の騒ぎだ」
「!ジャンさん!」
 鬼のリーダーの登場に、トリエラも含めた全員に緊張がはしる。
「ジャンさんも一つどうすか、トリエラの差し入れです!」
 すかさずクッキーを勧めるジョルジョ。
一枚でも枚数を減らして自分の分担を回避しようという思惑か、
冷厳冷徹なリーダーのポーカーフェイスを崩してやろうという危険な遊び心か、
はたまたやんちゃの過ぎる義体に対する教育的指導を誘発しようという計算か。
どれにせよ傍迷惑なこの行動に『やめろこの馬鹿!』と同僚たちの声なき絶叫が上がる。
 じろりと赤いクッキーを一瞥したジャンは、しかしこれに対して予想外の対応をみせた。
担当官の後ろから興味深々でバスケットを覗き込んでいるショートカットの少女に顎をしゃくり、一言。
「いらん。リコ、俺の分を食べておけ」
「はい」
 嬉しそうに返事をする純真無垢なフラテッロ。
無関係な友人に被害が及ぶことに危機を覚えたトリエラが止める暇も有らばこそ。
ひょいと一番上に乗っていたクッキーを取り上げて口に入れ、ぽりぽりと健康的な咀嚼音が響く。
 ―――が。
 その後は何事も起らない。
周囲の大人たちが無言で見つめる中、ごくんと口の中のものを飲み込んで
ごちそうさまでしたと礼儀正しく挨拶をした年下の友人に、トリエラがおそるおそる問いかけた。 
「……辛くない?リコ」
「うん、ぜんぜん。でもなんだか変わった味だね」
「あー、うん…多分パプリカの味……」
「そうなんだ」
 野菜のクッキーって身体に良さそうだね、と幸運の女神に愛された少女は無邪気に笑う。
どうやら通りすがり様子を見に来ただけだったらしいリーダーは、自分のデスクには向かわず
リコが食べ終わると「行くぞ」と短く声を掛けてまたオフィスを出て行った。

61 :
153.【】7/9 - 13/04/26 22:47:16 - ID:RA9NTAFNBQ
 あとに残されたのはハズレ確定のクッキー数枚と呆然とした表情の課員たち。
「…………さあ。どうぞ、残りを召し上がってください」
 相打ちを覚悟したトリエラの目はすわっている。
背筋につつーっと流れる冷たい汗を自覚しながら愛の堕天使は必死の抵抗を試みる。
「い、いやぁ、今ので一番運がいいのか分かったじゃん。あとはもう食べなくてもさ――」
「たまたまリコが辛いものが得意なだけだったのかもしれませんし、
本当に当たりのクッキーが一枚だけなのか、全員食べてみないと確証は得られないでしょう」
 それにここで食べずに済ませたらすでに食べ終わった方から後々恨まれますよ、と言われ
ついにプリシッラは観念した。なにしろこの騒動の発端であるジョーク菓子を買ってきた本人なのだ。
トリエラの言うとおり、食べなければ後が怖い。
「……あんたも同罪でしょ」
「……分かったよ」
 唯一の希望をリーダーとそのフラテッロに振ってしまったジョルジョを堕天使が睨んで促せば、
自分だけが泣きを見てたまるかと傍迷惑男は残りの課員に強制的に赤いクッキーを配布する。
ほどなく危険物が全員に行き渡り、一同は情けなさそうに顔を見合わせると
せーのでそれを口に放り込んで一気に咀嚼し嚥下した。
「〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
 涙目になって口元を抑える大人たちの様子に、恐怖のゲームの企画者である二つ髪の少女は
担当官の仇を討ち果たしたことを満足げに確認すると、もはや厳かともいえる仕草で
宣言どおり最後にひとつ残った赤い暴君の潜む焼き菓子に手を伸ばした。

62 :
154.【】8/9 - 13/04/26 22:48:34 - ID:RA9NTAFNBQ
――と、突然背後からスーツ姿の腕が現れ、褐色の指がクッキーをつまむ前にそれをさらい上げる。
驚いて振り返った少女の鼻先には見慣れたダブルのスーツ。
あわてた少女が警告の叫びを上げようとしたその瞬間。
「――げほごほっっ!!?」
 盛大にむせ込んだ担当官の姿に少女が悲鳴を上げた。
「ヒルシャーさんっ!?」
「……だ、大丈夫だ。ほとんど噛まずに飲み込んだから」
 昨日の経験を生かして最小限のダメージでやりすごしたらしいドイツ人は、
持参していた水のペットボトルを一気にあおる。
「どうしてあなたがそれを食べるんですか!?」
「君の健康管理は担当官である僕の役目だ。“たとえ実害はないにしても”
無用な刺激物を摂取しようとするのを見過ごすわけにはいかないだろう」
 年下のパートナーをかばってのセリフだろうが、辛味成分の刺激でガラガラになっている声で
言っても説得力がない。案の定、それを聞いた少女の悲鳴が怒声に変わる。
「それを言うなら担当官の安全を図るのは義体の役目でしょう!
これでは何のために自由時間を削りリスクを負ったのか…まるっきり無意味です!」
担当官の身に危険が及ぶほど唐辛子を盛ったのかよ!と声に出さずに突っ込んでいる
激辛クッキーの被害者に対する牽制も含め、げほげほむせながらもヒルシャーは果敢に
義体の説得を試みる。
「だから実害はないと言っているだろう!僕が危険な目にあったわけでもないのだから、
君が役目を果たせなかった事にはならない!」
 しかしながら相手は優秀なくせに一度感情的になると判断力が低下しまくる不器用娘である。
今回もヒートアップした彼女に担当官の意図は伝わらず、スーツの裾をぎゅぎゅっと握りしめ
青い瞳の縁に涙を一粒盛り上がらせる。
「あなたはいつもそうやって……もういいです!!」
「トリエラ!待ちなさい!!」
 暴風のごとく走り去る少女と後を追う担当官。
派手な痴話喧嘩、もとい兄妹喧嘩を繰り広げたお騒がせフラテッロが課室を去れば、
後には取り残された課員が唖然として立ち尽くすばかり。

63 :
155.【】9/9 - 13/04/26 22:50:22 - ID:RA9NTAFNBQ
「…………」
「…………」
「………あ〜…えーと……おつかれ?」
 あははーと乾いた笑いで周囲を見回した愛の堕天使に、恨みがましい目つきの面々がうなる。
「……後でおごれよプリシッラ」
「……は〜い」
 ジョーク菓子なんか買うんじゃなかった。三日後に振り込まれる予定の今月の給料が
瞬く間に消えてゆく様を想像し、プリシッラはため息をつく。
「あ〜、でもまさかあそこでリコに持っていかれるとは思わなかったな〜〜。
まぁおかげでジャンさんの雷が落ちずにすんで助かったけどさ」
「結局一番運がいいのは、強運のフラテッロを持ってるジャンさんってことか」
 ジョルジョの言葉に納得しかけたプリシッラだったが、そこではたと首をひねる。
「あれ?でもさ、昨日参加してなかったジャンさんの分をリコが食べたって事は、
誰か一人食べないですんだって事だよね?」
「ああ?……そう言やそうだな。けど今課室にいる人間は全員食ったぜ。誰が食わなかったんだ?」
 辺りを見回した視線の先に、タイミングよろしくオフィスのドアをくぐった大柄な女性の姿が。
「ただいま。ああもう、トリノまで列車で往復とか勘弁してほしいわ」
「オリガ!!」
 
 その後、自分のあずかり知らぬところで同僚の恨みを買ってしまったロシア人は、プリシッラとともに、
しばらくの間これをネタに呑み代をせびり倒されることになるのであった。

<< だすえんで >>

64 :
乙辛w

甘いものに限らず食べ物のSSだと公社の課員も絡めやすくて良いね。。。。

65 :
転載ありがとうございました。

レスどうもです。
一人か二人のキャラのSSもいいんですが、大人数でドタバタ劇も楽しいんですよねー。
そしてクラエス先生万能説。多趣味な彼女のお陰で義体の日常生活の幅が広がって助かります。

66 :
トリエラもヒルシャーさんも可愛い・・・
何だろうね、辛い物の話なのにすごい甘々な気分ですよー

67 :
>>66
ありがとうございますー。しばらくはのほほん路線で気楽にいこうかと。

そんなわけで鳥昼親子っプルで春祭りSS投下。携帯ゆえ細切れですみません。
ネタを仕入れにドイツ祭りへ行ったら人多杉。

68 :
【春祭り】
昼「トリエラ、今日はそこの広場でフリューリングス・フェスト(春祭り)をやっているらしい。
  行ってみないか」
鳥「はい?ドイツのお祭りですか?」
昼「ああ。フリューリングス・フェストはオクトーバー・フェストの妹とも呼ばれていて、
  春の訪れを祝う家族向けのお祭りだ。移動式の観覧車や回転木馬も来るにぎやかなものだよ」
鳥「はあ……(子供じゃあるまいし回転木馬とか言われてもなあ。リコなら喜びそうだけど)
  まあ担当官のお好きなように」

69 :
《アトラクション》
昼「―――来てみたはいいがすごい人だな。それに遊具はどこだ?」
鳥「そばに遊園地があるから省略したんじゃないですか?」
昼「……合理的だな。ああだが幾つかアトラクションはあるようだ。
  あの透明なボールの中に入って水の上を歩くのは面白そうじゃないか?
  君も行っておいでトリエラ。楽しんでくるといい」
鳥「う、まあ担当官がそうおっしゃるのな―――やっぱりいいです。子供のための遊具ですし」
昼「対象年齢は15歳までと書いてある。お祭りなんだ、少しくらい羽目を外したって大丈夫だよ」
鳥「いえ、いいです」
昼「何故なんだ、最初はちょっと乗り気だったじゃないか。遠慮しなくても……」
鳥「いいです!食事に行きましょう!(体重制限に引っかかるから乗れないなんて…言えるわけないわよ!)」

70 :
《買い物》
鳥「ビールカウンターに人が群がってますね。『ここでしか飲めない』『本場ドイツから直輸入』とか
  看板が出てますよ。飲みたいならどうぞ行ってきてください。その間に食料を調達してきますから」
昼「いや、ビールは魅力的だが今日はいいよ。ビールが目的なのはオクトーバー・フェストの方だし、
  第一君が飲めないのに僕だけ行っても仕方ない」
鳥「そんな一々気を遣わなくてもいいですよ。(この人はもう…(照)」
昼「それに昼食抜きできているんだ。食欲を満たすのが優先だろう。――しかしどこの売り場も一杯だな」
鳥「それじゃあ手分けして買いに行きましょう。先に買い終わった方が合流することにして」
昼「分かった。僕はフラムクーヘン(=サワークリームを塗った薄焼きピザのようなもの)を買ってこよう。
  春祭りには付き物のお菓子だからな。(リンゴやバナナを乗せたものなら女の子は好きだろう)」
鳥「では私はヴルストの盛り合わせとザワークラウトを買ってきますね」

71 :
鳥「ヒルシャーさん、買ってきました」
昼「ああ、お帰りトリエラ。すまないがフラムクーヘンはもう少し待ってくれ。
  まったく、ドイツやヤーパンなら整列して待っているだろうに、どうしてこう平気で割り込んでくるんだ」
鳥「ああ…あなたはこういうのは苦手そうですよね。じゃあこれを持っていてください。
  私が買ってきますから」
昼「え?」
  (人込みをひょいひょいすり抜けて行くトリエラ)
鳥「―――はい。買ってきましたよ」
昼「さすがだな……。そうだ、君ならビールカウンターの人込みも平気かもしれないぞ。
  子供に酒は売ってくれないだろうが髪をおろしてサングラスをかければ――」
鳥「…詰め物にできるようなものがないから無理でしょうね!さあ!食事にしましょう!」
昼「??あ、ああ……」

72 :
《座席取り》
昼「……これだけ座席があるのに空き席がないというのはどういうことなんだ」
鳥「すさまじい人出ですよね。もうそこら辺の芝生に座ってしまいませんか」
昼「そうだな。トリエラ、料理は持っているから僕のポケットからハンカチを出して敷いてくれ」
鳥「あ、はい」
昼「ありがとう。じゃあ君はそこに座りなさい」
鳥「え?ヒルシャーさんは」
昼「僕は直に座るからいい」
鳥「そんな、地味だけど良いスーツじゃないですかそれ」
昼「いいから。クリーニングに出せば済む話だ」
鳥「だめですよ、私のハンカチを敷きますからそこに座ってください」
昼「とんでもない、君のきれいなハンカチに座る訳にはいかないよ」
鳥「それなら私が私のハンカチに座ります!(すとん、と自分のハンカチに腰掛けるトリエラ。
  促すようにヒルシャーを見上げる)―――食事を、しませんか?」
昼「……そうしよう」
 こうして春のぽかぽか陽気の中、違和感なく親子連れに混ざって食事をする鳥昼組でありました。

《だすえんで》

73 :
>>69 ラスト一行訂正
× 鳥「いいです!食事に行きましょう!
○ 鳥「いいです!先へ行きましょう!

74 :
pink板にエロなし鳥昼小話を投下しました。

75 :
…エロ無しならそのまま投下すればええがな

76 :
すみません、書き方が悪かったです。
エロ行為はないけど微エロトークがあるのでpink板に投下しました。
あとエロは苦手だけどピンクジョーク程度ならOKって人もいたので、
そういう話の時はこっちにも投下報告をしてます。
安価も出しといた方がいいかな。pinkの>>478です。
ついでに>>465にイースターバニー、>>470>>473に下ネタジンクスの小話も投下されてます。

77 :
是非ともURLで誘導ぷりーず!

78 :
あれ、まだエロパロスレ知らない人もいたのか。ここですよー↓
ttp://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1278604450/l50

79 :
サンクス!
エロパロスレは覚えてたけど
暫く周回ルートから外れてたから
pink板と言われても咄嗟にわからなかった。

80 :
>>79
こちら以上に過疎ってましたもんねあっち。分かりにくい報告で申し訳なかったです。
全年齢板にエロパロスレって書き込むのが何となく気が引けたもんで。
そんなわけでpink板の>>484にキスの日とカメの日の小話が来てますよー。
そんな日があるなんて知らんかったわ。

81 :
今日は父の日なわけだが
エルザ・ラウーロ組って商社マンの親子ってことになってたんだよね
父の日イベントなんか・・・やらないだろうなあ

82 :
…。。。。
イタリアに乳の日なんかあったかな。
しかし、どんな話なら書いて良いんだ?

83 :
イタリアの父の日は3月19日らしい
母の日は日本と同じ5月の第2日曜日らしいけど

84 :
>>83
おおう、そうなのか。知らなかった。ありがとう。
ちょっと調べてみたらローマでは父の日にビニェ・ディ・サン・ジュゼッペって
カスタードの入った揚げシュークリーム?を食べるらしいね。
>>82
クラエスが父の日にお菓子作りとか?
地域ごとにお菓子は違うらしいが、ラバロ大尉はどこ出身なんだろう。

85 :
地元ならフィレンツェじゃないの?
橋でジャンから勧誘されてる場面あるし。
ドイツ製品愛好してるから、もっと北寄りかもしれんけど。

86 :
イタリアだと父の日は3月19日で聖ヨセフ(キリストの父ちゃん)なんだね。
地方によって呼び方は違うみたいですけど。
北イタリア → frittelle di San Giuseppe (フリッテッレ ディ サン ジュゼッペ)
中部イタリア → Bigne' (ビニェ)
ナポリ → Zeppole di San Giuseppe (ゼッポレ ディ サン ジュゼッペ)

外側の生地をオーブン焼きにしたものと外側の生地を油で揚げたものの二種類がある模様。
見た目だけじゃなく作り方も沖縄のお菓子、サーターアンダギーに似てると思われ。

87 :
サーターアンダギー食べたくなった。シュー生地で作ったドーナツを揚げるのかね。
調理方法的にはビニェはシュー生地、フリッテレはフライ、ゼッポレは揚げパンかな。
でもごっちゃになっててみんな揚げてあるとか書いてあったけどw
フィレンツェやトスカーナはfrittelle di rizo(フリッテレ・ディ・リゾ)を食べるらしい。
ミルクで炊いた米の団子を揚げて蜂蜜を絡めるて…どんなだ?
カテリーナとかピーノはこっちか。
ナポリとかシチリアのゼッポレは本来ピザ生地を揚げたものだけど、
ゼッポレ・ディ・サン ジュセッペはイースト入れてドーナツにしちゃう模様。
ミミとかソフィアとか…駄目だ、エンリカの貧乏人ピザ発言が頭から離れんw

88 :
そもそもクラエス、イタリア人じゃないからラバロ大尉に作り方を教わる側かもしれんなあ。。。。

89 :
>>87
「おじさん、作ったんだ食べてよ」とフリッテレ・ディ・リゾをクリスティアーノに差し出すピノッキオとか
亡き父との思い出とか思い出しながら、ピノッキオに作り方教えたりするカテリーナってとこかー
「もう食べれない」って逃げ腰のマリオ・ボッシを
にこにこ笑顔で多量のゼッポレ・ディ・サン ジュセッペ持って追っかけまわすミミというのもいいかもしれない
ソフィアもゼッポレ・ディ・サン ジュセッペを多量に作りそうなイメージがあるな
引き攣りながら「ひ…ひとついただこうか」と手を伸ばすクローチェ検事。「あら美味しそうじゃない?」とカーラさん
もぐもぐ食べてるエンリカ「私も手伝ったのよ、ジョゼ兄様も食べて食べて」
「エンリカも手伝ったんだ?美味しいよ(にっこり)しかし…ソフィアさん、たくさん作られたんですね(汗)」なジョゼ
「いくらなんでも作りすぎだろう(ひそひそ)」なジャン……とかとか?

90 :
>>89
なにそれかわいいw

91 :
庭に天敵が現れたので。氷殺が効くらしいので買って来ねば。
ジャンリコとジョゼッタのバカ話なんだけど意外と鳥昼話でもあったりなかったり。

92 :
【行動チェック】

 過ごしやすい初夏の陽気から一気に温度が上がり、
公社の中庭の青葉もその濃さを増している。
木陰で涼をとりながら物騒な案件について話す僕とジャンの前では、
対照的に二人のフラテッロが草花の間で蝶とたわむれている。
「ねえリコ、花冠を作るから、花をつむのを手伝ってくれない?」
「うん、いいよ」
 花束の茎を絡めて編み始めたヘンリエッタに応え、リコも花を摘みだす。
バッタがいるだのカマキリが出ただの脱線しつつも
せっせとクローバーを集めていたリコが、また声を上げる。
「あれ、この虫なんだろう」
 ―――と、いきなりジャンの姿が消えた。
 ごん。
 鈍い音がした方を見れば高速の右フックを決めたジャンの姿と
尻もちをついて目をぱちくりさせているリコ。
いつもながら義体を殴って平気だとかどんだけ鉄拳なんだよ。
両手を口元に当て驚愕の視線で見上げるヘンリエッタを気にもとめず、
こぶしを握ったままジャンはおどろおどろしい声音で言う。
「……カメムシを素手でつまむ奴があるか」

93 :
 よくよくよく目を凝らしてみれば、さっきまでリコがしゃがみこんでいた草むらに
のこのこ歩く五角形の小さな昆虫が。
おいおいこの距離であれに気付くとか兄さん視力も義体並か。
と言うか僕としゃべりながらどこまでリコの行動をチェックしてるんだこの人。
「カメムシは不用意に触ると悪臭の液を出す。触るな。臭いがつく」
「はい。すみません、ジャンさん」
 こんな下らんことで皮膚交換なんぞしたら許さんぞとか言ってるし。
いやいや、それはないから。ヒルシャー並にいらん心配だから。
ああでも考えてみれば、義体の行動チェック率は意外と兄さんとヒルシャーって
いい勝負なんだよなあ。
言葉数が少なくて行動が直接的(暴力的)なのと、
いらん言葉数が多くて行動が婉曲的なのの差だけで。 
コワい兄とウザい兄とどっちがましなのかって言えば僕はどっちもご免だけど。
 短い説教が終わると兄さんは何事もなかったように僕の隣に戻ってきた。
リコも何事もなかったように花を摘み始める。もちろんカメムシには触らないようにして。
やや呆然としていたヘンリエッタも気を取り直して花冠を編み始め、
僕も平然とさっきの話の続きを始める。
 カメムシ枝に這い、なべて世はこともなし、だ。
眺めやった夏の午後の草むらでは、神の知ろしめし青空の下
そよ風が少女たちの髪を揺らしていた。

<< ら・ふぃーね >>

94 :
ジャンさんの身体能力に惚れそうw
自分の行動に迷いがないって点では、ジャンさんとヒルシャーさんは似たもの同士なのかもですねぃ

95 :
>>94
いつの間にかひと月経ってた…レスありがとうございましたw
ジャンさんとヒルシャーさんは真逆に見えて似た者同士な気がします。
人に言われたら双方本気で嫌がりそうだけど。

暑中お見舞い申し上げます。結構真剣に身の危険を感じたので
鳥昼、ジャンリコ、ジョゼッタで夏の危険について書いてみた。

96 :
【心配顔】

 体温表と見まがうような最高気温予報が並ぶ夏の盛り。
今日も今日とて公社の野外訓練場では担当官らによる義体の指導が行われ、
ハーフパンツとTシャツ姿の少女たちが小銃を抱えながらの持久走に励んでいる。
雲間を狙って始められた持久走だったが、涼を感じるには到底不十分な生ぬるい風が
いつの間にやら貴重な遮光物を空から連れ去ってしまっていた。
普段ならば成人男性にも劣らないハイスピードで走る彼女たちだが、
炎天下の元さすがにペースが落ちてきている。
 気象条件が変わったのだから予定よりも早めに切り上げた方が良いのではないか、
と心配性のドイツ人がリーダーに進言しようかと考え始めた時、
グランドでどさりと重い音がした。
 乾いた土埃が舞い上がったそこには一人の少女が倒れている。
「リコ!」
 倒れた少女の名を呼んだ声に混ざった彼女の担当官の声音に、ドイツ人は一瞬違和感を感じる。
だが仲間を振り返った自分のパートナーがよろめいた瞬間、それはきれいに頭から消え去った。
「トリエラ!!」
 猛然と駆け寄ったヒルシャーの横で、続いてもう一人の義体が土の上にくずおれる。
「ヘンリエッタ?!」
 ドイツ人の反応にやや呆れていた彼女のフラテッロも、慌ててグランドに走り寄った。
担当官らのリーダーも足音荒く大股で少女らに近づいてくる。
大人たちがそれぞれの義体を抱き上げれば、のぼせた顔の少女たちが担当官の顔を見上げた。

97 :
「……ジャンさん」
 ホワイトアウトから復帰した視界に入った一瞬の担当官の表情に、リコは嬉しくなって微笑んだ。
ジャンさん、心配そうな顔をしてた。
「自分の体調も見極められなくてどうする」と怒られたけど、
義体なのに担当官が心配してくれるなんて幸せだな。
「……ヒルシャーさん」
 立ちくらみから回復した視線を真剣に覗き込んできた担当官の表情に、トリエラはきまりが悪くてうつむいた。
ヒルシャーさんに、心配そうな顔をさせちゃった。
「僕がもっと早くにやめさせていれば」と嘆かれたけど、
義体なのに担当官に心配させるなんて情けないな。
「……ジョゼさん」
 倒れたふりから起こされてそっと開けた目の端に認めた担当官の表情に、ヘンリエッタは安心してはにかんだ。
ジョゼさん、心配そうな顔をしてくれた。
「倒れるほど無理をしちゃいけないよ」と諭されたけど、
義体なのに担当官の心配を試すなんておかしいかな?

 こうして訓練は切り上げとなり、その後担当官らは熱中症対策に追われ、
少女たちは三者三様の表情のまま水分補給のお茶会となったそうである。

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98 :
暑い…ネタはあるのに何にも書けん…
エッタの水着はビキニだと思うんだ
ぺトラはパレオの付いたやつ
トリエラはスパッツ姿を拝みたい

99 :
エルザは兄貴がシブチンだからスク水しか買ってもらえないに違いない。

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