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2012年3月ポケモン60: ピカチュウの人生5<小説リレー・進化> (977)
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ピカチュウの人生5<小説リレー・進化>
- 1 :
- 全世界のポケモンの支配を企むピカチュウを主人公とした小説を書くスレのその5
※続きを書く前に前スレ・過去スレ・議論所・保管サイトをしっかり読み、
過去からの流れと設定、キャラの性格と口調等はしっかり掴んでおきましょう。
※小ネタ歓迎。絵も歓迎。
※荒らしはスルーが基本。書き手が降臨するまでまったり待とう。
※基本的にsage進行推奨
前スレ
ピカチュウの人生4<小説リレー・進化>
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/poke/1243265269/l50
過去スレ
ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化>
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/
ピカチュウの人生2<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1168594628/l50
ピカチュウの人生<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1163338618/l50
関連過去スレ
ピカチュウの人生議論スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1165628880/l50
避難所&議論所
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/otaku/11567/#1
携帯版まとめ
http://novel.motekawa.jp/pikatyulife
保管サイト
http://park.geocities.jp/pokepoke0830/pikatyulife.html
まとめwiki
http://www21.atwiki.jp/pikatyuunozinsei/
- 2 :
- 「ではミュウツー達は、そのコガネシティという所に居るのか?」
「でも、百貨店やラジオ塔やリニア線路……って、どう考えても人間の多い街ですよ?
地下通路にしたって、恐らくは人間が通行する為に作られたものでしょう?」
俺の言葉に、ロズレイドが異を唱える。
確かに、カントーで言えばタマムシやヤマブキ、シンオウで言えばコトブキやトバリのような、
人間が言うところの、都会的で拓けた場所には違いない。
「ミュウツーだけならともかく、そんな所に人質も含め、大勢のポケモンが隠れていられるでしょうか?
エレキブルさん達がギンガ団の跡地を利用しているのとは訳が違うんですから」
「ふむ……ならば、お前はこれをどう捉える?」
「そうですね……」
暫し沈黙した後、おもむろにロズレイドは考えを述べた。
「時間的に見て……例えテレポートを使ったとしても、そんな即座に移動できるとは思えません。
もしかしたら、我々が見た風景は……ミュウツーの記憶の中の景色かもしれません」
「奴の記憶?」
「飽くまで僕の推測ですが、ミュウツーは……過去にジョウトへ行った事があるのではないでしょうか。
いくら強者とは言え、自分が全く知らない場所では、戦闘において優位に立つ事は難しい筈です。
既に奴らは何らかの策を講じた上で、我々を誘き寄せようとしているのだと思います」
「ならば、コガネシティの風景を見せたのも、奴の罠だというのか」
「そこまでは分かりませんが、僕達にとって厄介な場所である事は、まず間違いないでしょう」
「ヒューヒュー! ちったあ戦略家らしくなってきたじゃねーか。ロゼちゃんてば冴えてるぅ〜!」
マニューラに囃し立てられ、ロズレイドは急に照れたように頭を掻く。
「まあ、それはいいとしてだニャ……」
ゴホン、と咳払いをし、今度はペルシアンが二匹の間にどっかりと割って入る。
一体こいつらは、いちいち何をしておるのだ?
- 3 :
- 552 名前: 名無しさん、君に決めた! [sage] 投稿日: 2010/09/30(木) 01:25:44 ID:???0
「そのジョウトまで、一体どうやって行くつもりニャ? アンタなら何か知ってるかニャ?」
ペルシアンがそう言って向き直ると、フン、と鼻を鳴らし、小馬鹿にした様にデルビルは答える。
「ああ、当たり前だろ。大まかに言や、手段は三つだ。まず、例のリニアだが……」
「待て。そんなものにポケモンが乗れる訳なかろう」
「せっかちな野郎だな! 最後まで聞けよ!」
俺が口を挟むと、デルビルはムッとしたように吠え立てた。そう言う貴様こそ、実に短気な野郎だ。
「ポケモンどころか、今は人間だって乗れやしねえよ。仲――いや、誰かが発電所に忍びこんで
何やらやらかしたせいで、リニアへの送電が止まっちまってる。ま、当分は運行できねえだろうな」
「……やけに詳しいな」
ドスを効かせつつジロリと睨むと、デルビルはギョッとしたように身を竦ませた。
まあ、これまでの態度や言動からして、こやつの正体について薄々感付いてはいるが……
今は配下の手前、黙っていてやる事にする。
「……次に陸路だが……こいつは容易な事じゃねえ。あの山のおかげで、人間様だって立ち往生だ」
気を取り直したように言葉を続け、デルビルは首を西の方へ向けた。
その遥か彼方に、雲を突くような高峰が霞んで見える。
「あれはシロガネ山だニャ。この国で一番高い山、と言われているニャー。
あの辺は強いポケモンが多いし、伝説の火の鳥が住んでいる、とも言われているニャ」
だからこそ、迂闊に鳥達も近付けられない、とペルシアンは言う。
「それを越えて行くんだ、余程のツワモノか、丸っきりの馬鹿じゃなきゃ無理ってもんだぜ。
となると、残るのは海路だ。クチバシティからアサギシティまで、定期便の船が出ている筈だ」
無論、俺達がその船に乗れる訳はないが、シンオウに使いを出せば船足は確保できる。
だがフローゼル達は、ジョウトの海……いや、そこに住む海の神とやらを、異常なまでに恐れていた。
- 4 :
- 553 名前: 名無しさん、君に決めた! [sage] 投稿日: 2010/09/30(木) 01:28:29 ID:???0
海に暮らす者達は、特に迷信にはうるさいという。
たとえ脅しを掛けたところで、奴らが首を縦に振らなければどうにも仕様がない。
「まあ、他はともかく……海なら、ボクにもちょっと当てがあるのニャ」
俺が考えあぐねていると、ペルシアンが文字通り、助け舟を出してきた。
「当てだと? 海にまでお前の仲間がいるのか?」
「そうニャ。昔、セキチクシティにサファリパークがあった事は知ってるかニャ?」
「何とはなく聞いた事はあるが……それがどうした?」
「今は別の施設に改装したとかで、住処を追われて逃げ出したポケモンが大勢いるニャ。
その連中の主格だったストライクから聞いた話ニャんだが……」
話をまとめると……
その剣豪として名高いストライクは、或るポケモンと勝負する為、遥々シンオウに使いを出したらしい。
だが、待てど暮らせどそのポケモンも使いも一向に現れず、その間にサファリも閉鎖されてしまった為、
他のサファリのポケモンと共にペルシアン達の世話を受け、セキチクシティの周辺を根城にしていた。
そんな折、付近の海岸線を回遊していた水ポケモンの中に、そいつらを乗せてシンオウから来た、と言う
若いホエルオーが見つかり、現在は彼の庇護下にあるという。
「奴らは今頃、セキチク近くの海岸に居る筈だから、詳しく話してみるといいニャ。
それにしても……オスとオスの約束を反故にするニャんて、無礼なポケモンもいたもんだニャー。
シンオウって事は、ひょっとしてアンタらにも関わりがある奴だったりするのかニャ?」
そう言われても、俺達にはとんと心当たりが……
……いや、何か……
すっきりキレイさっぱり、スカッと爽快に忘れている事があるような気もするが……
- 5 :
- 朝方か昼頃くらいまでに続き投下するよ
- 6 :
- >>1乙
落ちてたのか。この時期、まだ油断できないなあw
>>5
楽しみにしています。
- 7 :
- これだけ思い出そうと頭を捻っても搾り粕程も記憶の一片が出てこないということは、
俺にとってどうでもいい事だったのだろう。頭に入る記憶の容量というのは、
目に見えずとも限りが有る貴重ものだと俺は思う。今まで食べたパンの数や、
踏み付けた雑草の数を一々記憶していたらあっと言う間にごちゃごちゃになって、
必要なものが引き出しにくくなってしまう。俺達ポケモンが何か良い技を閃いた時、
トレーナー共は必要ない技を一、二のポカン――あの衝撃は今でも身震いする――と
忘れさせてから覚えさせるだろう。誰だってそうする。俺だってそうする。
「ボーッとして、どうしたニャ? やっぱり知ってるヤツなのかニャ」
ペルシアンに声を掛けられ、はっとして俺は引き戻される。
「いや、まったく知らぬな」
「ふぅん、その様子じゃ、ホントに知らないみたいだニャ。ま、ボクも関係ない、しかもオスのポケモンなんて
正直どうでもいいんだけれど、ストライクのヤツ未だに根に持ってて、会うたびに探せ探せうるさいんだニャー。
ミュウツーのことで大変で、あまり鳥も割けないから困っててニャ」
何よりタダ働きさせようってのが一番気が乗らない所ニャ、ぼそりとペルシアンは呟く。
今、こいつの魂胆がちらりと尻尾を覗かせた気がする。助け舟だと思っていたものが、
実は何か曰く付きの船では無いかつついて確認した方が良さそうだ。
「それで、俺達に押し付けようというのか」
「その通りだニャ。シンオウから来たと知ればストライクもアンタらに船足の条件として捜索を頼んで、
ボクは面倒からオサラ――」ペルシアンはしまったと口を塞いだ。
……思った通りだ。セキチク行きもどうやらおいそれと乗っていい話じゃないらしい。
余計な厄介事を背負わされるのは好ましくない。もう一度考える余地がありそうだ。
- 8 :
-
陸も空も行けない、残るは海。とはいえ、その海だって安全だという保証は無い。
海の神というのがやはりどうも引っ掛かる。火の無い所には煙は立たぬ。
地方間を繋ぐ定期船があるくらいなのだから、カントーの南の海路は人間の往来が活発だというのは事実だろう。
「でも他にどうするんだニャ? 鳥は出せないし、人間の船は乗れないし、リニアだって止まってるニャ」
無理矢理鳥を出させても、ロズレイドがロゼリアだった時と違いムウマージだけで運べなくなった以上、
運ぶ鳥の数も増やさねばならず、以前より人目に付きやすくなる。船は乗れない、止まったリニアなど問題外……
いや、まて――
「リニアの線路というのは、カントーまでどのように繋がっているのだ?」
俺はデルビルに尋ねてみる。
「コガネの中央から東へ向かってほぼ真っ直ぐ、ヤマブキにある駅まで直通なハズだが。それがどうした?」
「うむ。ロズレイド、ジョウト地方とカントー地方の地図を繋げて並べてみてくれないか」
「あ、はい」
ロズレイドは自身の道具袋から二枚の地図を取り出し、広げて並べる。
俺はコガネの位置をデルビルから聞き、その中心からヤマブキまで指で真っ直ぐなぞってみた。
「真直ぐ通っているなら線路はトキワの付近にも通っている筈だが、それらしきものを見かけたことは無いぞ」
再びデルビルに目をやる。
「そりゃそうだ、その辺りの線路は地下を通っているからな。人間様の力をナメんなよ」
「どこまで地下が続くのだ?」
「あー、確かシロガネ山脈の内部を通り抜けて、ジョウトの三十番道路と三十二番道路の間くらいからまた地上に――」
そこまで言って、デルビルは合点がいったという顔をする。
- 9 :
- 「へへ、なるほどなぁ。リニアが止まっていることを逆に利用するってか。嫌いじゃねえぜ、そういうの」
ニヤリとデルビルはほくそ笑んだ。不法侵入、人間にとって犯罪であろう行為にまったく躊躇の無い反応からして、
真っ当に生きてきた人間ではあるまい。こいつの正体をより一層確信する。が、今はその過去を存分に利用させてもらおう。
「発電所のトラブルはいつまで続きそうな気がする? あくまで予想でいい。お前は感が良さそうだからな」
「そうだな、大事なパーツを盗まれたらしいから、犯人が見つかって隠し場所が分かるまでどうしようもねえだろ。
あの辺の管轄の警察は結構無能らしくてな。昔、ハナダで泥棒に入っ、入られた家のすぐ裏に犯人が隠れていても、
変なガキの邪魔が入るまでは見つからなかったって聞いたことがある。犯人が自首でもしねえ限り、
どんなに早くても一週間以上は見つからねえよ」
――途中、休み休み歩いたとしても送電再開まで十分な猶予がありそうだな。
「見込んだ通り、良い見立てだ。では駅と線路の警備や管理体制はどうなっていると思う?」
「ああ、前に忍び込んだことがあるイタズラ好きな友人がいたが、ザルもいいとこだったらしいぜ。
止まっちまって誰も利用しない今、夜なんてがらがらだろうさ。原因が発電所にあるって分かりきっている以上、
整備の連中もすることが無くて暇こいてるだろうぜ。送電が解決しだいすぐにでも運転を再開したいだろうから、
内部を厳重に閉鎖してるなんてこともないだろう。もしあっても破ろうと思えば破れる程度のものだろうさ」
煽てにまんまとのり、べらべらと得意げにデルビルは喋りだす。
「ふむ。どうやら船足はもう必要なさそうだな。まさか人間に近年掘られて出来た人工の地下トンネルに伝説の何やらが
住み着いているなどあるまい。ストライクの件は引き続きお前の方でよろしく取り計らってもらおうか、ペルシアン」
ちぇっ、とペルシアンが諦めるように舌打ちするのが聞こえた。ミミロップ達にも特に異論は無さそうだ。
「決行は夜。ヤマブキの駅から線路内へと忍び込み、地下からジョウトを目指す。
空、海、陸は十分に経験している。今度は地下を味わってみるのも中々におつな物ではないか」
- 10 :
- 乙
その考えは無かった…。
- 11 :
- 念のため保守しとく
- 12 :
- 明日明後日にでも続き書く
- 13 :
- 保守
- 14 :
- 一応、保守
- 15 :
- うごメモ三話目まで公開されてたね
先の展開が分かっても漫画で見るのって新鮮で良いw
- 16 :
- 保守
朝ぐらいまでには続き投下する
- 17 :
- 空はまだ明るく、日が沈むまで少し時間がありそうだ。出発の準備をするがてら、
今のうちに日の光を堪能しておこう。これからしばらくの間、太陽を拝めないのだから。
「何も出来ないのが、くやしい……。どうか、レッド君を……」
洞穴を立とうとする俺達に、エーフィは懇願する。
「受けた恩には報いる。必ずやお前の主を救い出そう。それまで養生せよ、エーフィ」マントを翻し、俺は言った。
「まっかせて! あんな奴らすぐにぶっ飛ばして、取り返してくるわ」ミミロップは力強くぐっと指を立てる。
「あの人には僕達も何度も助けられました。今度は僕達の番ですね」ロズレイドが確と頷く。
「もしものことがあっても、マージのおともだちにして、つれもどしてきてあげるよー」くすくすとムウマージは笑う。
「ピカチュウ達がいれば、大丈夫。ボクの時みたいに助けてくれるから、ね?」にこりとアブソルは微笑んでみせた。
「ありがとう、君達……」
目を潤ませ、エーフィは震える声で言った。
「ジョウトには俺も連れて行け。俺もあの化物共を、その傍にいるであろうフーディンの野郎を追わなきゃならねえ」
洞穴を出た所で、デルビルは俺に告げる。俺は何も答えず、じろりと訝しむ視線をデルビルに向けた。
「俺を連れて行けばきっと役に立つぞ。お前ら、ジョウトのことはほとんど何も知らねえんだろ?
だが、俺は何度も行った事があるからお前らよりは確実に詳しい。人目につかない裏道も色々知ってる」
「お前とあのフーディンは仲間だったのだろう。また手を結ばんとも限らん」
「冗談じゃねえ、あんなイカれた奴のところにほいほいついて行ったら、これ以上体に何をされるか分かったもんじゃない。
奴に会ったら思い切り締め上げて、人間に戻る方法を吐き出させるんだ」
- 18 :
- デルビルは自分の体を見回し、脇腹に向けてすんすんと鼻を鳴らして身震いする。
「うえっ、今でも自分の置かれている状況が信じられねえよ。こんな獣臭い体で、一生過ごすなんて耐え切れねえ。
クソ不味い砂利みてえな餌を盗み食うのももうごめんだ。人間だった時に食ってた“餌”もたかが知れてたが――
毎日のように食ってた安弁当、人間だった時は飽き飽きしてたが、今じゃあんなもんでも恋しく思えるぜ……」
はあ、とデルビルは深々と息を吐く。
「あんたが臭うのはどうせ不潔にしてるせいだし、今も昔もろくなもの食べられないのはうだつが上がらないせいでしょ」
軽蔑の視線を向けながらミミロップは辛辣に言い放つ。
「う、うるせえ! ちくしょう、俺の手持ちだったポケモン共もこんな生意気なこと言ってやがったのかな……」
ぶつくさとデルビルは呟く。
「構っていられん。行くぞ、お前達」はーい、とミミロップ達は応えた。
「おい! 俺は無理やりでもついて行くからな!」
「勝手にしろ。足手纏いとなれば即刻見捨てて置いて行く」
「意地でも喰らい付いて行ってやるさ……! 失うものなんざ何もねえんだ、なりふりかまわねえぞ」
ぐるぐると唸るようにしながらデルビルは言った。
利用できるところまで利用して、妙な素振りを見せたら容赦なく討てばいい。どうせ元はポケモンにとって、
いや、人間にとっても害悪でしかなかった部類の輩だ。情けをかける余地は無い。
「頼れる愉快なお仲間が出来たみてぇで良かったじゃねーか。怪我しないように精々気をつけて行ってきな」
皮肉めいた様子でマニューラは手をひらひらさせる。
「ええ! そんな、マニューラさんも一緒に来てくれるんじゃないんですか?」
ロズレイドが驚いたように言う。
- 19 :
- 「いつそんなこと言ったよ。成り行きでツルんだまま話を聞いてはいたが、オレはただコイツに会うために来ただけだからな」
爪でペルシアンを示し、マニューラはつれなく答えた。ペルシアンは暫しきょとんとしていたが、
ロズレイドの落胆した顔を見て、にんまりと笑う。
「カントーの事は今まで通りボクに任せておくニャー。後、マニュちゃんの面倒もニャ、ロズレイドくぅん。にゃははは!」
勝ち誇ったように高笑いを上げながら、ペルシアンはマニューラの肩を抱き寄せた。
瞬間、マニューラの眉間にぴしりと皺が寄るが、堪える様にぴくぴくと引き攣った笑顔を浮かべる。
ぶるぶると今にも振り上げそうに震わせている拳からは、薄っすらと白い冷気が漂っている。
当のロズレイドはまるで心に思い切り破壊光線でも打ち込まれた様な表情を浮かべて固まっており、
もう何も聞こえていないし見えていないようだ。心なしかやつれている様にさえ見える。
ミミロップは「あちゃー」と頭を抱え、蚊帳の外の俺とアブソルとムウマージ、ついでにデルビルは呆気に取られていた。
本当に何なのだ、こいつらは。まあ、これからは余計な心労の一匹がついてこなくなってくれるのだ。
一応、俺にとってはめでたしとしよう。――一度出来てしまった腐れた縁は、中々途切れぬという。
嫌な予感は尽きぬが……やめておこう。
すっかりと日も落ちた暗い町外れ、街灯の明かりを避けながら俺達は駆け抜けていった。
「あ、あれが、ヤマブキ駅、だ」ぜえぜえと息を切らして走りながら、デルビルは言った。
示された先には、アーチ状の屋根をした大きな建物が見える。肝心のリニアが停止している為か、
最低限の明かりしか灯されておらず、駅の周囲だけ町から切り離されてしまっているかのように暗く寂しい。
俺達は駅の裏手から近づき、適当な窓を見つけてそっと中の様子を窺った。広い内部は非常灯以外の電気が
落とされていて薄暗く、人間は見当たらない。いや、たった一人、奥に一箇所だけ明かりの点いた部屋――
事務所というものだろうか――に、駅員らしき制服を着た人間の姿を見つけた。どうせ誰も来やしないと思っているのだろう、
駅員は席にだらしなく腰掛け、暇そうに煙草を吹かしながら手元の雑誌らしきものをぱらぱらと捲っている。
- 20 :
- 保守
- 21 :
- 保守
- 22 :
- ピカチュウ一向がNと対立する理由がみつかんねぇw
- 23 :
- むしろ半分プラズマ団に支配されかかった世界観にして、Nがピカチュウの支配に反対するくらいかな?
支配に反対なポケモンもいるはずだし。
- 24 :
- プラズマ団はともかく、Nはシリーズ中でも異色の存在だからなあw
まあ、いずれはイッシュに行くとしてもかなり先の話になりそうだし、おいおい考えていけばいいんじゃね?
何か良い案があれば、避難所&議論所のスレに上げとけばいいし。
- 25 :
- 明日か明後日にでも続き書くぜ
いっそ最初の内ピカチュウ達はNとプラズマ団に加担してしまってもいいんじゃないかw
最終的には例の城でゲーチスの本性見てN同様離れると
まあ、レッドやゴールド(HGSSだとヒビキ?)辺り見てポケモンと人間の関係についてのピカチュウの考えも
今よりもっと変わっていくことになるかもしれないし、まだあまりに先過ぎて決めようも無いなw
- 26 :
- 保守しとく
- 27 :
- ほしゅ
- 28 :
- 保守
- 29 :
- 半日に一回くらい保守レスしておけばスレの位置が下層でも大丈夫かね?
スレ立てが活発になるであろう週末や祝日は注意しないとな
- 30 :
- 一応レスしてれば大丈夫のはず……とは言いつつも、あんまり最下層近くだと不安になってくるなw
ヤバいようなら深夜にでも一旦上げといた方がいいかもしれん。
- 31 :
- この時期は下手に上げるのも怖いw
もう少し様子見ておくか
- 32 :
- 保守
- 33 :
- 「宿直かね、ご苦労さんだな」
窓を覗き込みながら、デルビルは嘲笑うように呟いた。
地下の線路に下りるには、まずあの大きな窓口付きの事務所に隣接して設置されている、
妙なゲートのような機械――改札機というらしい――の間を通り抜けて行かなければならないようだ。
俺一人ならば軽々と掻い潜っていけるだろうが、人間の子ども程の図体を持つ奴数名が
何度もぞろぞろ行ったら、幾らあの不精そうな駅員とはいえ気配に気付くだろう。
どうにかして、しばらくの間あの場から駅員をどかしたい。
「やっちまうのか」
声を潜めてデルビルが尋ねる。
「いらぬ騒ぎが起こる。人間といえど敵意の無い者に大きな危害を加えるつもりは無い」
「甘ちゃんだな。そんなんで悪の組織のボスやってんのか」
デルビルが鼻で笑うが、無視した。俺は貴様らのような見境の無い悪とは違う。
さて、どうしたものか。一旦、窓から身を隠し、ミミロップ達にも意見を募ってみる。
「誘き寄せて後ろから、こうガツーンと」
チョップする真似をしながらミミロップが言った。
「普通の人間は我らよりずっと脆い。力加減を間違えたらどうするのだ」
「マージの、あやしいひかりはー?」
ムウマージが異次元の色彩ともいうべき人魂のようなものをふよふよと浮かばせる。
「悪くはないが、いざ正気づかれてしまった後に光の正体がポケモンの仕業と思われかねん。
ただのいたずらと片付けられればよいが、発電所でいざこざが起きたばかりだ。
その犯人と関連付けられて、線路内まで捜査の手が伸ばされるかもしれん」
- 34 :
- もっと目にも耳にも感知されないような、それでいてなるべく穏便に事を済ます方法は……。
考えあぐねながら、俺はちらりとロズレイドを見やった。いつもこういった話し合いの時は決まって
積極的に参加してくるというのに、どこか上の空でぼうっとしている。
マニューラと離れてからずっとこの有様だ。握られた弱みをばらされやしないか、
気が気じゃないといったところなのだろうか。まったく、離れていても厄介な黒猫だ。
あの不敵な笑みと口から覗く鋭い牙を思い出す度、俺も苛立ちか、何かのトラウマなのか、
はたまた猫を嫌う鼠の血の性か、頭がずんと重くなり、耳の特に左耳の先がずきずき疼くようになった。
ギラティナの領域からシンオウに帰還してからだろうか。ああ、もう、考えるのはやめだ。
とにかく、ロズレイドにずっとこんな調子でいられるわけにはいかん。そういえば、
草ポケモンの中には眠りを引き起こす花粉を作りだせる者がいると聞いたことがある。
粉ならばそっと漂わせるに限れば目に殆ど映らんし、音もないだろう。
泊り込みの勤務に疲れてついうたた寝……よくありそうな話ではないか。
「おい、ロズレイド、眠り粉を作ることは出来ぬのか?」
聞こえなかったのか、ロズレイドの返答は無い。
「ロズレイド、眠り粉だ、ね、む、り、ご、な」
声の調子を少し強めてもう一度俺は言った。ようやく声が届いたのか、ロズレイドはぴくと反応する。
「あ……はい、粉ですね、粉……」
ぼんやりした様子で、ロズレイドは葉っぱを一枚取り出し、その上に手の薔薇から花粉をさらさらと出した。
手渡された葉っぱに包まれた花粉を、俺は訝しんで見る。……色が見るからに毒々しい。
念のため少量を近くの雑草にかけてみると、たちまち雑草は茶色く枯れ果てた。見守っていたミミロップ達も、
ひっ、と驚いて飛び退く。俺は慌てて小さな穴を掘り、慎重に葉っぱごと花粉を埋め立てた。
- 35 :
- 「毒の粉ではないか、馬鹿者!しっかりしてくれ……どうにかならぬか、ミミロップ」
ミミロップだけはロズレイドとペルシアンとマニューラの妙なやり取りに理解を示しているようだった。
何か立ち直らせるきっかけを得てくれるやもしれぬ。
「うーん、そうね……。皆はちょっと待ってて。ロゼちゃんは、こっち」
そう言うと、ミミロップはロズレイドの手を引いて俺達から少し離れ、何やらごにょごにょと話し出した。
内容は聞き取れぬが、ミミロップの話に相槌を打つ度、ロズレイドの顔には活力が戻っていっているようだった。
少ししてミミロップはこちらにOKサインを出し、しっかりとした足取りのロズレイドと共に戻ってくる。
「もう大丈夫なのか?」
「はい。ご迷惑をかけてすみませんでした。僕はもう平気です」
きりっと表情を引き締めて、ロズレイドは応えた。
「ならば早速……」
「眠り粉でしたね。必ずや作り上げて見せます、少々お待ちを……!」
随分と気合の入った様子で、ロズレイドは目を閉じて手に力を込めて花の中身を混ぜ合わせるように震わせる。
しばらくして、「出来た!」とロズレイドは声を上げ、くわっと目を見開いた。
「さあ、どうぞ。今宵の僕の眠り粉は、インドぞうをも二秒かからずころりと眠らせられると自負できる出来栄えです」
ロズレイドは自信満々で葉っぱに包んだ花粉を手渡してきた。
「そ、そうか、ご苦労……」
少し気圧されながら俺は受け取る。
「参りましょう!ミュウツー達を打ち倒し、ジョウトにも僕達の名を轟かせるんです!」
意気揚々とロズレイドは宣言する。『ばっちり活躍して、見返してやるんだ』微かに呟くのも聞こえた。
- 36 :
- やる気を出してくれたのはいいが、あまりの変わり様に不気味とすら感じざるを得ない。
「……一体何を吹き込んだ」
俺はそっとミミロップに聞いてみる。
「別にー。似たような茨の道を行こうとしている仲間に、先輩としてちょっとアドバイスしただけ」
「茨の道……? 何だ、どういう意味だ?」
「いーの!早くいってよ、もう」
急に不機嫌になって、ミミロップは俺の背中をどんと押した。……分けが分からぬ。
・
俺は一足先に単独で駅内部へと忍び込むと、息と足音を潜めて駅員のいる部屋まで近寄り、
窓口の下に潜り込んだ。物音を立てぬように気を払いながら、ゆっくりと道具袋から眠り粉の包みを取り出し、
そっと封を開ける。細かい粒子が立ち昇る包みを開け放しの窓の方へと掲げ、フッと息を吹きかけて送り込んだ。
素早くマントで口と鼻を覆い、待つこと数秒。部屋の中からくしゃみの音が一度響き、すぐに大きないびきへと変わった。
なるほど、インドぞうもいちころと自負するだけある。感心しながら、余った粉を大事に包み直して道具袋にしまった。
もう一度くらいなら使えそうだ。いざという時に使わせてもらおう。
俺は部屋を覗き込み、机に突っ伏して眠り込んでいる駅員の姿を確認してから、外から様子を見守っている仲間達に
『来い』と手で指示を出した。
「中々の手際だな。なあ、アンタ、俺が人間に戻ったら組まねえか?いい生活ができると思うぜ、へへへ」
駆け寄ってきたデルビルが愉快そうに声をかけてくる。
「お断りだ」
すげなく一蹴し、俺は見張る者がいなくなった改札機を堂々と乗り越えた。さあ、地下に降りる階段を探して向かおう。
- 37 :
- 保守
- 38 :
- 保守
- 39 :
- hosyu
- 40 :
- GJ保守
- 41 :
- 明日明後日にでも続き書く
- 42 :
- ほしゅ
- 43 :
- 保守
- 44 :
- 保守
- 45 :
- 保守しておく
- 46 :
- 保守
- 47 :
- 最下層だったんだなw危ない危ない
- 48 :
- 保守
- 49 :
- 保守
- 50 :
- 保守
- 51 :
- ほしゅ
- 52 :
- さほど探すまでもなく、改札から少し左奥に歩いた先に幅の広い階段の下り口を見つけ、
俺達は下りていった。
「クソ、今まで生きてきて、階段がこんなにも不便だと思ったことはなかったぜ……」
少し離れた最後尾、よたよたと段を下りながらデルビルはぼやく。
まったく、一々うるさい奴め。
「置いていかれたくなければ、つべこべ言わずにさっさと来い」
一足先に下り切った俺は苛々と段上を見上げながら言った。
「う、うるせ、こんな慣れない四足で早く下りるなんて無――」
言葉の途中で足を踏み外し、デルビルはごろごろと階段を転げ落ちてきた。
「う、ぐぐ……ちきしょう。こんな体、もう嫌……」
やれやれ、先が思いやられる。俺は鼻で溜め息をついた。
普段であれば人間がわらわらと騒がしく群れているであろうリニアのホームも、
今は俺達の他には虫一匹の気配も無い。地上に比べ地下の空気はどんよりと淀んで重く感じられ、
元より心許無かった非常灯の光が殊更に弱々しくなって見えた。俺達は線路伝いにホームを歩いていき、
最端まで来た所で落下防止に設けられた柵を乗り越えて線路へと降り立った。
延々と続く地下トンネルのような線路の奥は色濃い闇に沈んでおり、遠い間隔で点々と針先でつついて
出来たようなか細い光がぼんやりと浮かんでいるのが辛うじて見えるだけだ。
「……何だか、嫌な感じ」
近くの壁にそっと触れ、ミミロップが呟く。
「同じ真っ暗でも、イワヤマトンネルとはちょっと違うね」
興味深そうにしながらも、少し不安そうにアブソルは言った。
確かに、自然に開いた洞穴と違い、寸分の狂いも無く均整がとれた人工の通路は無機質でどこか冷たく、
より一層不気味に思えた。だが、こんなところで怖気づいて立ち止まってはいられない。
ミュウツーの目論見を止められなければ、この闇より暗く冷徹な未来が待っているのだから。
「暗闇とはいえ一本道、迷うことは無いと思うが、全員なるべく離れないように行くぞ」
意を決し、俺達は暗闇へと踏み込んでいった。
- 53 :
- 時は少し遡り、六番道路。
「やれやれだニャー」
ピカチュウ達を体よく送り出して、ペルシアンは大きな欠伸をしてぐいっと体を伸ばした。
「さてさて、余計な邪魔者もいなくなったことだし……早速二匹でお話しようかニャー、マニュちゃん」
浮き浮きした様子でペルシアンはマニューラの方を振り向く。
「そーだな……」
気だるく答えてマニューラは寄りかかっていた木からゆらりと身を起こし、頭の後ろに組んでいた手を解く。
瞬間、爪を剥き出し、間髪入れずペルシアンの喉元目掛け突き出す。
しかし、既にそこにペルシアンの姿は無く、爪先はぴたりと宙で止まった。
「……危ないニャ、いきなり何するニャ」
頭上の木からの声に、マニューラはフンと鼻を鳴らして爪を収めてから顔を上げる。
「また気配も無く……やっぱ何か妙な力を持ってやがんな。なーに、本当に突き刺すつもりは無かったさ。
違和感の正体を確かめたくなってな。ついでにオレに気安くべたべた触ったら危ねーぞって忠告だ」
「手厳しいニャー」
あっけらかんと答えるマニューラに、ペルシアンはしょんぼりと溜め息をついた。
「――んで、ボクに何を聞きたいんだニャ? こんなじゃれ合いの為に残ったんじゃないってのは、
分かりきってるニャ。ボウヤ達の前じゃしにくいような、血生臭い部類の話ってとこかニャ」
飄々とした態度を一変させ、ペルシアンは鋭い眼差しでマニューラを見下ろす。
- 54 :
- 「話が早いじゃねーか」
マニューラは口端に冷たく歪んだ笑みを浮かべ、睨み返した。
「いい目だニャ。アンタからは同じ臭いを感じていたニャ。何か大切なものを奪われて、
憎くて憎くて地の果てまで追い詰めてでも始末してやりたい奴がいる……余計な恩は三日で忘れられても、
恨みだけは決して忘れないのニャ。猫ってのはまったく因果なもんだニャ」
「ヘッ、全くだね」
「その焦がれる相手の身形を言うニャ。敵と手段は違えど、同じ道を行く同志への手向けニャ。
まったくのロハで知ってることを洗いざらい話してやるニャ」
「……隻眼、真鍮色のバンギラス」
腹の底から煮えくり返るものを堪えるように表情を強張らせ、マニューラは答えた。
それを聞き、ペルシアンは少し意外そうな顔をする。
「知ってんだな……?」
「ああ、うん、同じ奴の行方を捜しに来たのが前にもいたから驚いてニャ。他のお客の事はあまり話せないけど」
「その奴らの中に、青っぽい毛並みをした年増の猫がいなかったか?」
「年増って言うほどでもなかったと思うけど……知り合いかニャ?」
「まーな。腐れ縁とすら言いたくもねえ、昔からの厄介さ。何を企んでやがるのか知らねーが、
バンギラスが生き延びてやがるとオレに告げ口に来やがったのも、あの年増だからな」
- 55 :
- hosyu
- 56 :
- 保守
- 57 :
- 保守
- 58 :
- 乙
明日か明後日にでも続き書くよ
- 59 :
- ほしゅ
- 60 :
- 保守
- 61 :
- まだまだ保守るよ
- 62 :
- 金銀主人公の名前はゴールドかヒビキどっちにするんだ?
ライバルはシルバー以外に公式名無いよな?
- 63 :
- シンオウ編みたいに、最後まで主人公の名前(コウキ)が出てこない可能性もあるがw
個人的にはヒビキの方が好きだが、取り敢えず……「金帽子」は確定だと思うw
- 64 :
- ピカチュウからの帽子呼ばわりは確定かw
どうしても名前が出る場面では、本名はヒビキだけど、チャンピオンのレッドに憧れて、
色に因んだニックネームのゴールドを名乗ってるってのもいいかな
- 65 :
- DPt(コウキ)→(シンオウの)赤帽子
赤緑・LGFR(レッド)→赤帽子・レッド
金銀・HGSS(ヒビキorゴールド)→金帽子
RSE(ユウキ)→白頭巾
BW(トウヤ)→紅白帽
って感じかw
- 66 :
- ユウキのは頭巾というかニット帽的を少しずり下げてる感じじゃないか?
頭巾と書くとどうも忍者や坊さんが被る奴や、防災頭巾辺りを連想してしまうw
ピカチュウがニット帽を知ってるかは分からんが
- 67 :
- 苦々しげな語り口からして、何だか二匹の仲は宜しくない様だ。ペルシアンは察し、
板挟みにされては厄介だとそれ以上の言及は避けることにした。
「他のお客の話はこれくらいにして、アンタが追ってる本命の事だけどニャ」
ペルシアンがそう切り出すと、マニューラは一言一句聞き逃すまいと食い入るようにして、
注意深くその口の動きを見張る。
「奴を初めて見たのは今から二年前、そろそろ三年になるのかニャ。ヤマブキにあるシルフビルが
ロケット団って悪党共に占拠された日、あの化物はボクの居た地下道の天井を突き破って落ちて来たのニャ」
幾多もの鮮血を浴びてきたのだと想起させる赤錆びた真鍮色の山のごとく巨大な体躯。
片方の目は縦に大きく抉られていながらも目蓋の下からは只ならぬ気が滲み出、
開いている方の目からはほんの一瞥程度に視線が掠っただけだというのに心臓が握り潰されそうな程の
威圧を感じた、当時の記憶を話しながらペルシアンはぶるりと身を震わせた。
「そんな一度見たら忘れられないようなキョーレツにアブなそーな奴だったから、ボクも気になっててニャ。
それとなく行き先を調べていたのニャ。また偶然にでも鉢合わせたら嫌だからニャ。
アンタ、奴に相当な恨みがありそうなのは分かるけれど、ちょっと相手が悪すぎるんじゃないかニャ。
……もしもボクがアンタや、特に例のお客と同じ立場だったとしたら、直接挑むような真似はしないニャ。
やるなら、まず代わりの捨て駒を見繕ってから――」
「御託はいい。さっさと行き先を言え」
鋭い氷片が体すれすれを過ぎ去って木に突き立ったのを横目で見、ペルシアンは仕方なさそうに息を吐く。
- 68 :
- 「……残念ながらもうカントーにはいないようニャ。カントーとジョウトの間に立塞がるのは、
高く険しいシロガネの山脈だけじゃあないニャ。生息する強力なポケモン達、その中でも特に厄介な鋼の怪鳥
エアームド共が多く住み着く鋭い茨の森が、長城のように広く張り巡らされていたのニャ。
余程のツワモノ且つイカれてる奴でなきゃ近づきもしない堅牢な茨の城塞に、何者かが真っ向から
馬鹿でかい穴を開け、ひしゃげた鉄屑の山を築いて越えて行ったのが丁度ニ、三年ばかり前……」
間違いねぇ、マニューラは小さく呟いて、目を鋭く細めた。
「世話になったな」
礼を言って、マニューラは背を向け歩み出した。
「あっちに行ってからの当てはあるのかニャ?」
「ジョウトの事なら多少は知ってる。心配しねーでもすぐに見つけ出して、始末してやるさ」
マニューラはひらひらと後ろ手に手を振り、去って行こうとする。
「あー、そうだ」
その間際、何か不意に思い出したように声を上げ、マニューラが立ち止まる。
「どうしたニャ」
「もし、まず無いとは思うが、シンオウから来る奴が居ても、余計な事は言うんじゃねーぞ。
特にクソ――ドンカラスの野郎にはな」
- 69 :
- 保守
- 70 :
- GJ!
明日か明後日にでも続きを書きたいです。
- 71 :
- 保守
- 72 :
- hosyu
- 73 :
- 保守
- 74 :
- 保守
- 75 :
- ・
再び、ハクタイの森の洋館――
ちびちびと酒杯を嘗めていたドンカラスの目が、ふと壁の一画に留まる。
いつかマニューラが刻み込んだ、稲妻の形――ピカチュウの紋章。
――いつの日か、俺より強いピカチュウが現れたなら、この紋章を贈って欲しい――
ドンカラスの脳裏に、未だ忘れ得ぬ恩人の最期の言葉が蘇る。
『約束は果たしやしたぜ……ボスのような男が掲げるんなら、何も文句はねえでやんしょ』
それが引き金のように、次々と過去の記憶が走馬灯のように思い起こされていく。
『でもよう、時々思うんだが……いや、馬鹿げた空想かもしれねえが、全く有り得ねえ話じゃねえ。
ひよっとしたら……ボスは、あの……』
その時、食堂のドアが大きく開き、ドンカラスはハッと我に返った。
「ん? 糞ネコ共はどうしたんでやんすか? あっしの奢りだって伝えたんでやしょ?」
エンペルトが一匹だけで戻ってきたのを見て、ドンカラスは訝しんだ。
「うん、それが……早々にキッサキに帰るって、みんな出て行ってしまったポ……んだ」
「…………そうでやすか……」
ドンカラスは深く溜息を吐いた。
「こんな事は初めてじゃないかな。ドン……一体、カントーにどんな因縁があるんだ?」
エンペルトは傍に腰掛け、空になったドンカラスの杯に酒を注ぐ。
「あっ……い、いや、別にいいんだ。こ、これは、単なる僕の好奇心だポチャ!」
ドンカラスが黙然としているのを見て、エンペルトは慌てて取り成した。
だが、ドンカラスは何かを決したように一気に盃を空け、重い口を開き始める。
「なあ、あっしが……いや、あっしとあの糞ネコが、シンオウの生まれじゃねえ流れ者だった、
って、おめえさんに話した事ぁありやしたかねえ?」
「え……?」
「……これは、単なる酔っ払いの、単なる過去の戯言だと思って聞いてくれりゃ結構でやす。
もうどのくれえ昔になるか……あの頃、あっしはまだ、一介のケチなヤミカラスでやんした――」
- 76 :
- ・
テンガン山へと向かう、ハクタイシティの外れ――
辺りに誰も居ない事を確かめ、三匹のニューラは揃って大きく息を吐いた。
「はあ〜……ヒヤヒヤしたっつーの……」
「いつバレるかと気が気じゃなかったぜ、ギャハハハ!」
「まあ、何とか誤魔化せたみたいだし……もういいんじゃない?」
「ひゃはは〜! ……にゅ〜ん」
途端にマニューラの形がグニョグニョと崩れ、紫色の軟体に姿を変えた。
「しっかしよぉ、何だって俺らがしなくていい苦労をしなきゃなんねーんだっつーの!」
「マニューラの奴、言い出したら聞かねえからな、ギャハハ!」
「まったく、急にカントーに行くなんて、一体どういうつもりなのよ……あ、もしかして……
ああ見えて、やっぱり薔薇の王子様に惹かれるお年頃だったりするのかしら?」
「……何言ってんのか全っ然訳わっかんねーっつーの」
「ないない、奴に限ってそれは絶対ない! ギャハハハハハ!!」
笑いながら彼らが再び歩き出そうとした時、メタモンがメスニューラの尻尾を引っ張る。
「にゅにゅ〜ん」
「ちょっと! 何すんのよ! ……あら? 何それ?」
メタモンはニューラ達に、何やらボロ布に包まれた物を差し出した。
結び目の間に、マニューラが書いたと思われる、手紙らしき紙切れが挟まっている。
「何だこりゃ……相変わらず汚ねー字だっつーの」
ブツクサ言いながら、オスニューラは手紙を開いた。
『いつもテメーらには世話掛けて済まねえな。こいつはちょっとした礼ってやつだ。
万が一、オレが戻ってこれねえ時にゃ、テメーらのうちの誰かが使いやがれ。
くれぐれも、糞カラスやピザデブ共とケンカなんかすんじゃねーぞ。
こわいこわ〜いピカチュウさま〜にカミナリ落とされっからな。
そんじゃ、あばよテメーら。達者でな。
強くて優しくて美しくて可愛くて格好よくて理知的なマニューラちゃんより』
- 77 :
- 「ったく、ざーけやがって。しかしまあ、あいつが礼なんて、珍しい事もあるっつーの」
「何が入ってんだ? 食いもんか? ギャハハ!」
「ちょ……ちょっと……そんなんじゃないわよ……こ、これ……!」
包みを開けていたメスニューラの声が震え、心成しか顔が蒼ざめている。
覗き込んだオスニューラ達の表情も、みるみるうちに強張っていく。
それは、滑らかに研ぎ澄まされ、尖った切先が銀色に光る――
するどいツメ――本来なら、相手の急所を狙い易くする戦闘道具の類いである。
だが、彼らニューラ族にとっては、進化に関わる重要な代物でもあった。
おいそれと入手できる物ではない故に、そこには特別な意味が伴っていた。
「ど、どーゆー事だっつーの?!」
「そんなの決まってんじゃない! あたし達のうちの誰かが、マニューラの後を継げってワケ!」
「じゃあ何か?! あいつは……最初からそんなつもりで……ギャ…ハ……」
「ち……畜生ぉ!!!」
オスニューラは怒り立ったように、包みを引っ掴んで地面へ投げ付けた。
「あいつはいっつもそうだっつーの!! 肝心な事は何一つ言いやがらねえ!!
はん! 俺ぁゴメンだね! こんなもん、おめーらの勝手にしやがれっつーの!!」
「ギャヒー! 冗談じゃねえ! 俺だって勘弁して欲しいぜ!!」
「あたしだってお断りよ! こんな他人のお情けで強くなったって意味ないじゃない!!」
一頻り憤り、喚いた後――三匹の間に、長い長い沈黙が続く。
- 78 :
- ――
「……とにかく、だ……このツメの事だけは、仲間連中にも内緒だっつーの……」
やがて、漸く落ち着きを取り戻したニューラ達は、ボツボツと当面の事を話し始める。
「まだ、帰ってこねー、と決まったワケじゃないかんな。ギャハ」
「ノコノコ戻ってきたら、そん時にでも突っ返してやればいいわ。でも……
どんなロクデナシが嗅ぎ付けるとも限らないから、巣には持って帰れないわね」
「じゃあ、どっかに隠しとくかっつーの」
「ヘタな場所じゃあ、すぐ見つかっちまうぜ、ギャハハ!」
その時、ふとメスニューラの目に、街外れに佇む、古びた竜の石像が映った。
その巨大な姿は、まるで月に向かって咆哮するかのように見える。
「あ、そうだ!」
何かを思い付いたかのように、メスニューラは包みを拾い上げ、石像へと走り出した。
「おいおい、どこ行くんだっつーの?」
「ボーマンダ……ディアルガ様に預かって貰うのよ!」
メスニューラは軽々と台座に飛び乗った。
「ああ〜ん、元の神々しいお姿も、ス・テ・キ」
暫しウットリと眺めた後……
石像の上へ駆け上がり、その大きく開いた口の中に、奥深く包みを押し込んだ。
「ディアルガ様、しばらくお願いね。早く帰ってくるよう……あのバカを守ってやって頂戴」
メスニューラは石像の耳元に囁くと、一気に下へ飛び降りた。
黒い三匹の影と、それを追い掛ける一匹の影が、テンガン山の山中へと消えていく。
それを見たのか見なかったのか、月の明かりか雲の加減か……
一瞬、石像の目に、白い光が宿ったように見えた。
- 79 :
- GJ!
明日明後日にでも続き書く
- 80 :
- 保守
- 81 :
- hosyu
- 82 :
- 保守
- 83 :
- 保守っとく
- 84 :
- 保守
- 85 :
- ほしゅ
- 86 :
- 保守
- 87 :
- 濃厚な闇が包む地下を、俺達は黙々と歩を進めていった。代わり映えの無い一寸先も不明瞭な
暗闇を延々と歩いていると、耳に届いてくる周りの者達の足音も何だかくぐもって聞こえてきて、
足裏に感じる冷たいコンクリートの感触もどこか曖昧になり、手足がどこにあるのかすら茫漠としてきて、
本当に今この場に俺の体はあるのか、実は意識だけが本体を置いてけぼりにして歩いてきてしまった
のではないか等と妙な錯覚と妄想に捉われてしまう。
いよいよもって変になってしまいそうな寸での所で正気を繋ぎ止めてくれる唯一の救いは、
トンネルの壁に定期的に備え付けられている非常灯だ。例えその光が風前の灯火の如く弱々しく、
一つ一つが離れた間隔でしか用意されいないとしても、まだ辛うじて自分の体がここに存在していて、
着実に前へと進んでいるのだと知らせてくれる。
どのくらいの間、そうやって歩き続けたのだろう。地上はそろそろ空が白み始めた頃だろうか。
こんな地下トンネルの中ではまったく窺い知る事は出来ない。
「ねー、ちょっと休まない? ちょっと疲れてきたんだけど」
気だるげなミミロップの声が暗闇に響く。それを皮切りに、他の者達も口々に疲労を訴え出した。
ペルシアンの所から殆ど休まず歩き通しだ、無理もないか。俺も少々疲れた。
「そうだな。次の電灯の下で少し休憩するとしよう」
前方の電灯を示し、俺は言った。
ようやく電灯の下まで辿り着き、俺は立ち止まって全員の点呼を取る。ミミロップ、ロズレイド、
ムウマージ、アブソル、デルビル、俺を含めて計六匹、ちゃんと揃っているようだ。
無いよりはまし程度の薄暗い明かりながら、自分自身や他の者達の姿をぼんやりとでも目で
確認できるというのは、大分気分的に楽になる。俺は安堵の息をつき、近場の壁に背を預けて座ろうと
したところで、急にミミロップがぴくりと耳を反応させて動きを止めた。
「誰か、後ろから来てる」
「なに?」
ミミロップはその場にしゃがみ、床に手を触れた。
「えーと、数は一人、いや、一匹……?」
集中した様子で目を閉じ、ミミロップは呟く。
- 88 :
- 不可解な行動ながら、冗談や何かでやっているようには思えない。
「一体、何をやっているのだ?」
直接声をかけるのも何か躊躇い、俺はロズレイドに小さく尋ねてみる。
「しっ。波動を読んでいるんですよ」
そういえば、俺がいない間に何やら修行をして来たといっていた。その成果がこれか。
「何だかちょっと、黒くて冷たい嫌なものも少し感じる……気、恨みの類かな? 気をつけた方がいいかも」
ミミロップはすくと立ち上がり、俺達が今まで来た暗闇の方に向かって構えを取った。
「……アブソル、下がっていろ」
「う、うん」
俺はアブソルを後方にやり、頬に電気を集める。ロズレイドも手の花から毒針を伸ばし、
ムウマージも目を吊り上げてローブの裾を揺らめかせ始めた。その横でこっそり自分も安全な背後に
逃れようとしているデルビルをとっ捕まえて前線に引き戻し、俺達は暗闇を注意深く見張る。
じっくりと耳を澄ましてみれば、確かに微かな何かの足音が聞こえてきた。足音はどんどんと強まり、
闇の中に浮かぶ光る二つの眼がすぐそこまで近づいてきているのが確認できる。俺達は息を呑み、
姿が薄明かりに晒されるのを待った。暗がりの奥から現れたのは――。
「何だ、オメーら。まだこんな所で^ラしてやがったのか」
その正体に、俺達は気が抜けたように息を吐き、構えを解く。
「ま、マニューラさんっ! どうして!」
素っ頓狂な声を上げ、ロズレイドは飛び付きそうな程に喜び勇んだ様子でマニューラに駆け寄っていった。
- 89 :
- 「いよう、ロゼ。なんだ、行く時は捨てられた犬みてーな面してたくせに、もう元気じゃねーかよ」
マニューラは飼い犬を撫でる様にぐしゃぐしゃとロズレイドの頭を撫でる。
……最早、師弟というより主人とペットだな。
「おっかしーなー、嫌なものを感じ取ったような気がするんだけど……修行不足?」
ミミロップは首を捻り、ぼそりと呟く。
俺は心の底から溜め息が漏れた。やはり、またマニューラが付き纏ってきた。どうしてこう予感というものは
ろくでもない物に限って当たってしまうのだろうか。
「今度はどういうつもりだ」
聞いてもろくな答えが返ってこないとはわかりつつ、半ば形式的に俺は尋ねる。
「オレもジョウトに用事が出来た、それだけだ」
予想の範疇にぴたりと収まる、おざなりな答えが返ってきた。
「勝手にするがいい。俺達はここでしばらく休んでから行く」
俺は投げ遣りに言い、壁際に座った。
「そーそー、敵に備えて体力は大事に温存しなきゃーな。オレも飛ばしてきて疲れたし、ご一緒させてもらおうか」
くく、と挑発的に笑い、マニューラはどかりと座り込んだ。
「……もう好きにしろ」
- 90 :
- ほしゅ
- 91 :
- 保守るよ
- 92 :
- 保守
- 93 :
- 放送日時が異なるので、今日ベストウィッシュを見ました。そして色々と衝撃を受けました。
当たり前だけど、人生のピカチュウとアニメのピカチュウはだいぶ違うなぁ…と、感じました。
- 94 :
- そら違うわなw
アニメピカに近いのは、やはりレッド手持ちのピカチュウだろうな
- 95 :
- アニメピカも初代アニメ最初期の頃は結構意地の悪い性格をしていた気がするw
明日か明後日にでも続き書くよ
- 96 :
- hosyu
- 97 :
- 保守
- 98 :
- 激保沖
隣欄鶴 絹牌響臍
勲堤墓 杏虐炎留菓家
豊脈箋 腓冥柳縁剣味鋳仮美鈴
溺暴朗 趣奔申畑球尿周塚裕踵正超頬鋭顎
流皸矢 弟誕埼砂愛怪野鉄稀唇車瀬写雷尻栗谷余嫌黒
倅要礁 脈射揖楽督脂暑堺駐鞆冷麺絆舎卵所岡情若億非歌貌
印眉担髟胱島森崩膏首婆丸股誠紫強逆実寂幽鮫
轟踝史膨仁樹塀越拡曇雨取膜悟勝市伸
鏡皆間板忍薫幻弦恋呂映久駄
差最腋使鼠心退瑠俺
法草線皺喰船
南埃六語助闇
知勇第飛肘岳
拇摘酎隣鼓浜平
痛応臑疣羽念絵形
鬚息麟品道銅歩簡
- 99 :
- 保守
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