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2012年6月イベント企画283: ジャンプレーベルバトルロワイアルPart.4 (565)
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規制解除のみで1000目指すスレ (358)
規制された奴、ここで雑談しようぜwwwww (572)
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全国行動委員会+チャンネル桜 チラシ製作スレ (393)
ドミノ (262)
ジャンプレーベルバトルロワイアルPart.4
- 1 :08/07/27 〜 最終レス :11/05/15
- 集英社の「ジャンプ」の名を持つ雑誌の漫画キャラクターでバトルロワイアルが開催されたら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。
これはあくまで二次創作企画であり、集英社や各作品の作者とは一切関係ありません。
前スレ
ジャンプレーベルバトルロワイアルPart.3
http://etc7.2ch.net/test/read.cgi/event/1215405482/
したらば:ジャンプレーベル・バトルロワイアル
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11413/
まとめwiki
ttp://www6.atwiki.jp/jlcbr/
ロワ会場地図
ttp://www.youlost.mine.nu/html999/img/4628.png
ジャンプロワ毒吐き別館
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1214509118/l50
書き手三行
・投下はイベント企画の本スレへ
・SSへの矛盾や問題点の対応はしたらばへ
・毒吐きはあくまでも毒吐きです、書き手さんは見ないことをお勧めします
読み手三行
・感想はイベント企画の本スレへ
・SSへの矛盾や問題点の指摘はしたらばへ
・毒吐きと言えど特定個人への中傷はアク禁されます
- 2 :
- 参加者
5/5【To LOVEる】結城梨斗/ララ・サタリン・デビルーク/西連寺春菜/天条院沙姫/レン(ルン)・エルシ・ジュエリア
5/5【ONE PIECE】モンキー・D・ルフィ/ロロノア・ゾロ/サンジ/ブルック/アーロン
5/5【銀魂】坂田銀時/沖田総悟/土方十四郎/猿飛あやめ/星海坊主
4/4【るろうに剣心】緋村剣心/相楽左之助/志々雄真実/瀬田宗次郎
4/4【地獄先生ぬ〜べ〜】鵺野鳴介/ゆきめ/玉藻京介/立野広
4/4【GANTZ】玄野計/和泉紫音/加藤勝/小島多恵
3/3【遊戯王】武藤遊戯/海馬瀬人/獏良了
3/3【封神演義】太公望/蘇妲己/聞仲
3/3【魁!男塾】剣桃太郎/雷電/江田島平八
3/3【シャーマンキング】麻倉葉/麻倉ハオ/マリオン・ファウナ
2/2【ジョジョの奇妙な冒険】空条承太郎/吉良吉影
2/2【DEATH NOTE】夜神月/L
2/2【家庭教師ヒットマンREBORN!】山本武/三浦ハル
2/2【魔人探偵脳噛ネウロ】桂木弥子/XI
2/2【HUNTER×HUNTER】クロロ・ルシルフル/ヒソカ
1/1【ドラゴンボール】亀仙人
1/1【天上天下】棗真夜
1/1【シティーハンター】伊集院隼人
1/1【LIAR GAME】神埼直
1/1【NARUTO】うずまきナルト
1/1【TOUGH】鬼龍
55/55
- 3 :
- >>1-2
乙!俺
参加資格作品は前スレでも言われている通りキャラも出揃ったのでいらんだろうと思ったのと
支給品枠の為に欲しいってことは、話を書くのに必要なんだろうと考え
それなら他のことも調べるだろうしこっちにはいらんと判断してコピペしなかった。
投下&感想のみにするならシンプルな方が良いじゃない、容量も抑えられるしさ。
ネタバレ名簿は、一人で判断するのは不味いかと思ってやめといたけど、別に問題はなかったかな?
- 4 :
- >>1
乙
ついでにこれも
ttp://chat.mimora.com/common/chat.mpl?roomnum=912670
- 5 :
- スレ立て乙でした。
別に問題ないかと。
- 6 :
- スレ立て乙です
ところで、みんなにちょっとしたお願いが
wikiの参加者や支給品の紹介ページで、まだ結構埋まってないところが多いんだよ
知ってる作品があれば、少しずつでもいいから書いていってもらえないかな
俺も書けるとこは大体書いたけど、知らない作品も多くて全部は書けないから
手の空いてる人がいたらお願いします
- 7 :
- 他力本願うぜえ
自分でやれよ
知らない作品があるなら買ってこい
- 8 :
- 今支給品のページ見てたら、デスノートの支給品紹介ページで吹いたw
ポテトチップスとリンゴの説明詳しすぎだろw
- 9 :
- 予約来たな
ダッキを見た聞仲の反応が楽しみだ
- 10 :
- tes
- 11 :
- 投下します
- 12 :
- しろ
- 13 :
- 「多恵を探すとしてじゃ、闇雲に動き回っておっては埒があかん」
「あぁ……」
どう見ても小中学生にしか見えない自称仙人『太公望』は決して悪い男ではない。
会ったばかりの俺を助けようとしてくれたのは、紛れもない事実だし、
勇気を持って多恵ちゃんに会いたいと言えば、良しと返事してくれた。
ぶっちゃけ、土方さんのような腕力の強い人と別れてしまったことや、
移動力を無くしてしまった事は痛いと思っているけれど、
コイツはコイツで頼りになるんじゃないかとも思えてくる。
しかし……
これまで、雪女やら魚人やらパトカーやらで気づかなかったけど、
落ち着いて見ると本当に子供だよ。
多恵ちゃんを探さなきゃならないのに、子連れって……
「のう玄野。わしらのおる場所はD-3。多恵がどこにおるかは分からんが……」
いやしかし、この喋り方。とても演技とは思えないんだよなぁ。
それに、雪女は本当だったし魚人ってのもマジっぽいし、大体GANTZだっているわけだし、
今さら仙人がいたところで、おかしくもないか。それに大切な事は、太公望がいい奴か悪い奴かだ。
仮にこいつがただの人間で、ただの小学生だったとして、だからってコイツに>気がないことや、
コイツが命の恩人である事は間違いないわけだ。今の俺にはそれだけで十分だな。
「聞いておるのか玄野。多恵と再会するための策じゃ」
「あぁ……すまない」
- 14 :
- 今、俺と太公望は電波塔一階の管理人室にいる。
すぐにでも多恵ちゃんを捜したい、そんな俺に対して太公望が冷静になれと窘めた結果だ。
コイツが言うには広い島の中、闇雲に探し回っていても危険が増えるだけ。
さらに多恵を見つけた後のことも考えなければ、再会後二人そろって死ぬこともあり得る。
そんな理由で俺は今、彼の話を聞くことになったわけだ。
本来なら、今すぐにでも多恵ちゃんの所にいきたい。でも太公望の言う通りでもあるわけで……
さて、繰り返すがここは電波塔一階の管理人室。
警備員のために用意された部屋は、最低限の機能だけを持っていてとても狭い。
今ここにいる2人は、俺と太公望。
本人の言を信じたとしても、見た目は小学生のコイツと2人でいるから、
まだ何とか入っていられる広さだ。これが、大人2人となってくると、少し窮屈になるだろう。
しかし、この部屋にはその窮屈さを補って余りある性能がある。それは、防犯カメラだ。
電波塔の入り口は、表と裏の2つあり、その2つともに防犯カメラが設置されていて、
その映像をここで確認する事が出来る。しかも入り口が2つあるのだから、
表門から誰かが入ってきた場合は裏から出て、裏から入ってきた場合は、
表から逃げればいい。
その意味で、ここは下手な民家よりも随分と気の休まる施設だった。
- 15 :
- 「玄野よ、多恵のようなか弱き者を見つけたとき、わしは取りあえずここに匿おうと考えておる」
「あぁ、それは俺も同感だ。ちょっと狭いけど」
「命には代えられん。どうせ、長くて9日しかおらんのじゃしな」
「9日?」
「あぁ、9日じゃ。ワポルの言葉を思い出してみい。あやつは6時間ごとに禁止エリアを発表すると言っておった。
それはつまり、1日で4エリア、9日で36エリアが禁止対象になると言う事を意味しておる。少なくともな」
「少なくとも?」
「一度に発表されるエリア数が一つだと、あやつは言っておらん。2,3同時に禁止対象に挙がる事も考えられるじゃろう。
じゃが、どちらにせよ数はハッキリせん。分かるのは、遅くとも9日後には36エリア全てが禁止されると言う事じゃ」
「なるほど……」
まぁ、9日が3日になろうと、このゲームの危険性になんら変わりはなく。
多恵ちゃんを一刻も早く探さなければならない事も同じだ。
「正直言って、9日間でこの島の中、危険人物を避けつつ人探しをするのは困難を極めるじゃろう」
尤もな事だ。何せ、向こうも隠れながら移動しているに違いないのだから。
「そこでじゃ、わしらは少々危険じゃが、この島の特性を生かして人探しをしようと思う」
「特性って……」
「うむ。この島は奇妙な形をしておる。五つの小島が、渡り廊下のようなもので繋がったような奇怪な形じゃ」
「言われてみれば……」
「この島が、どうしてこんな形になったかは分からんが、分からんなりに利用させてもらう」
太公望はずんぐりとした手袋で、渡り廊下を一つ一つ指差していく。
- 16 :
- 「いかなる者であろうとも、移動の際には必ずここを通らねばならん」
「アーロンは魚人だって言ってたけど?」
「揚げ足をとるでない、あれは例外中の例外じゃ。大体、おぬしの探し人はそんな特殊な女なのか?」
「あ、いやごめん……」
「まぁ、そんなわけじゃから、わしらはこの渡り廊下の近くで多恵を待とうと思う」
「なるほどね……」
「じゃが、当然。そうすると危険も多い。わしら自身アーロンのような危険人物が通る場所に身を置く事になるわけじゃからな」
「うーん……でもそれって……」
太公望の指差した渡り廊下は合計11箇所。
確かに、下手に島をめぐるよりは若干マシになるけど、それにしたってもうちょっと動く場所を減らしたいじゃないか。
11じゃ、まだ多すぎる。2人で多恵ちゃんを探すには、ちょっと無謀な数だ。
「少し数が多すぎるんじゃないか」
「確かに、このままじゃとその通り。しかし馬鹿正直に11箇所全てを張る必要はない。
まず、先ほど別れた土方たちが北方を探してくれておる。北半分の捜索はあやつらに任せるんじゃ」
言われてみて、俺は土方さんたちにも多恵のことを伝えておけばよかったと思った。
まったく俺は……仕方ないがここは頷いておこう。
「あぁ」
「次に南半分の渡り廊下から人が通りそうな渡り廊下を考えてみい?」
「それは……やっぱ、街同士を繋ぐ所、かな?」
「その通りじゃ」
「そうすると、北側は土方さんに任せるとして、俺たちが見るべき場所は南側の高層ビル街と城下町を繋ぐ廊下。
そして、東の学校と城を結ぶ廊下、最後に西の学校と高層ビル街を繋ぐ廊下。合計四ヶ所」
「うむ、その通りじゃな。さて、そうなるとじゃ……」
太公望は管理人室の窓のカーテンをそっと開け、そこから見えるツインタワーを指さす。
- 17 :
- 「わしらが目指すのはあの建築物の頂上じゃ」
周囲を一望できる高い建物。地図に記された東京都庁のようなツインタワー。
確かにここならば、この電波塔と同じように防犯設備も充実しているだろうし、
それに渡り廊下はおろか、幹線道路を通る人間だって一望できる。人探しにはうってつけの場所だ。
「むろん、いくらあの塔が展望に適しておると言っても、2人で人探しをするのは余りに無謀じゃ。
じゃからまずは、城下町やあの高い建築物が密集している地帯を回って仲間を捜す」
「あぁ、その中に多恵ちゃんがいれば万事解決だし、居なくても人手が増えれば……」
俺はほんの少しだけさした希望に胸をわくわくさせた。
初めてのミッション、初めての殺し合い、魚人や妖怪やらで驚かされてばかりだけど助かる可能性もある。
その事を改めて実感した。
それにしても、ひょっとしたら、こいつは本当に仙人かもしれない。
一瞬で、多恵ちゃんを探すための手段を考え出すのは、人間の子供にはとても無理だったろう。
やっぱ仙人様は違うって事か。
「現状、この策に問題があるとすれば二つ。一つは2人で実行するには無理がありすぎるという点。
だからこそ、わしらはビルに行く前になんとしても新しい仲間を見つけねばならん」
だからかな、俺にはこの後太公望の言うことが理解できなかった。
「そしてもう一つは、あの建物は頂上まで登れるか、ということじゃ」
「…………は?」
何言ってんだ? 高層ビルだぜ? エレベーターぐらいあるに決まってるだろ。
観光目的を兼ねたビルなら、高層階に展望フロアぐらいあるだろうし、
場合によっては展望階まで直通のエレベーターまである。こいつ、そんな当たり前のことも知らないのか?
- 18 :
- DO氏の予約の適当さときたらww支援
- 19 :
-
- 20 :
-
- 21 :
- 「わしは以前、趙公明との戦いで落ちそうなほど高い階段を経験し……」
「おいおい。いくらなんでもビルにはエレベーターぐらいあるだろ?」
仙人様は頭はいいけど俗世から離れてるってことか?
「お前、ビルも見たことないわけ? さっきから高層ビルのことを建物とか建築物とか言ってるし……」
そういうと太公望から先ほどまでの自信たっぷりの口調が消えていく。
年齢相応の申し訳なさそうな顔と、相変わらずのジジイ口調を組み合わせてこう言った。
「いや、その……すまぬが、一つ申し訳ないことを言うかも知れん」
「何だよ」
「実を言うとじゃな。非常時じゃから聞かなかったんじゃが……」
もしかして、もしかして、こいつ……
「ビルってなんじゃ?」
やっぱり、知らねーーーのかよ!!
「ビルはビルだろ! 地図に書いてある通りじゃネェか。何言ってんだよ!!」
「……玄野にとっては当たり前の事か?」
「いや、俺だけじゃなくて土方さんや三浦にとっても当たり前だと思うけど。
仙人って言うだけあって人間とは離れて暮らしてたって事か?」
「そういう訳ではない。わしは周の軍師として人間たちとも交流が深い」
「んじゃ、何で知らないんだよ。ってか、軍師って……」
「場の空気を読んで言わなかったが、あの『パトカー』や『花火』もわしの知る所ではない」
「はぁ?????」
- 22 :
- 俺には太公望が何を言ってるのか、サッパリ分からなくなってきた。
コイツは一体何者なんだよ。頭がいいのは分かったよ。でも常識知らず過ぎやしないか?
俺たちの何倍も生きてるんじゃなかったのかよ?
「い、いや、百歩譲ってパトカーはまだ分かるぜ。だけどさ、花火は太公望が出して来たもんだろ?」
「うむ……簡単な説明書があったのでな。それで理解したのじゃが、周にも殷にも、そんなものは無かったんじゃ」
「何なんだよ一体……」
「確認しておくが、おぬしは人間じゃな?」
「当たり前だ」
「なるほど……じゃとすると、トンでもない事に巻き込まれたかも知れんのぉ」
「んな事は最初から分かってるって。殺し合いのゲームなんだからさ」
「いや、違う。そんなレベルではない」
どう違うっての。
「おぬしはゆきめを覚えておるか? 自称妖怪の女じゃ」
「もちろん、覚えてるよ。あんな衝撃的なこと忘れられそうにない」
「うむ。細かいことだったので、気にしておらんかったが、あやつは妖怪仙人ではなく、妖怪と言っておった」
「それが?」
「わしは妖怪仙人なら知っておるが、妖怪は知らん」
「単に、妖怪仙人を略して妖怪って言っただけじゃないのか?」
「一般的には、妖怪仙人も普通の仙人も、仙人と呼称するのが習いじゃ」
「マジで細かいな」
「うむ。だから、あの女は妖怪仙人であって、たまたま妖怪と略しただけ、そう解釈する事も出来なくはない。
しかし、この手の細かい文化は意外と深く根付いているものじゃ。それに、妖怪は良いとしても魚人はどう説明する」
「魚人仙人?」
- 23 :
- 「ますます聞いたことがないわ。良いか玄野、わしはこう見えても70年以上生きておる。
人間界も仙人界も、それなりに知っておるんじゃ」
「つまり魚人仙人なんていないってことか」
「その通りじゃ」
「だったら何が言いたいんだよ」
「何と言うか、この世界は奇妙じゃ」
真剣な顔で、太公望は何やら思案している。そりゃ、確かにこの世界はおかしいけど……
「玄野、おぬしは雪女の妖怪や魚人などについて、どれぐらい知っておった?」
「全く知らないよ」
「では、パトカーや花火は?」
「それは両方とも知ってる」
腕を組み、瞳を絞るように閉じながら、太公望は太い指をトントンとさせて考えている。
「なら、この島のことは知っておるか?」
「島自体は知らないけど、ビルとか学校とか、島の施設なら……」
「島の施設は、どれも一般的なものか?」
「いいや、ピラミッドとかモアイとか、普通じゃ見かけない物もあるね」
それだけ聞くと、太公望は絞っていた瞳を大きく見開いた。
「玄野、急いでおる所すまんが、わしに島のことを詳しく教えてくれ」
正直な話、俺は多恵ちゃんのために急ぎたい気持ちで一杯だった。
でも、太公望のまっすぐな瞳を見たら、こいつの話を聞くべきかもって思ったんだ。
◆ ◇ ◆
- 24 :
- 太公望は玄野の話を聞きながら、違和感を覚えた。
いや、玄野が話す世界の高すぎる技術力はどうでもいい。
それは太上老君が見せてくれた未来図(過去?)の文明力を考えれば、決してありえない物ではないからだ。
しかし……
「まず、この島は周囲が直角に曲がってるけど、これは多分元々あった島を埋め立てて作ったからなんだ。
埋立地って言って、俺の国じゃ珍しくない。それと、中にあるのは……」
一つ一つの設備を丁寧に説明していく玄野。
年齢を考えれば、彼自身の説明にも誤りは含まれているだろう。しかし、それは些細な事だ。
真摯に語る彼の姿勢からは、少なくとも『嘘は言ってない』と分かる。
太公望には、それだけで十分だった。
「そしてこれが……多分、軍事用の施設。位置から考えて船の出入りはなく、飛行機が離発着するだけだと思う」
「飛行機?」
「空飛ぶ乗り物の事」
(なるほど、霊獣のようなものかの)
先ほどのパトカーが空を飛ぶようになったと考えれば、もっと正解かもしれない。
「その乗り物は、一回で何人ぐらいの人間を運べるんじゃ?」
「さぁ……そんなしょっちゅう乗らないしな。
でも、これはさっきも言ったけど軍事用の飛行機だから、普通の人はそもそも乗れないぜ」
「ほぉ」
やはり、玄野はまだ15、6歳の子供だ。知らないこともあるらしい。
太公望だって自分が同年代の頃に島の詳細を聞かれても、どこまで答えられた事やら。
崑崙には、●●がありまして……、あそこにおわしますわ……
(無理だのぉ……)
- 25 :
- 「あと……この施設はよく分からないけど、発電所かな……
でも、場所がおかしい気もするし。何かの工場……もっと変だな……」
分からない施設については、分かる者に後で聞けばいい。
玄野の説明はあくまで暫定的なものだ。
「で、これが畑って、言わなくても分かるよな、さすがに」
「まぁな」
太公望は兵農一体の策を周で実施した軍師だ。
当然、農業の事は知っている。さて、その太公望から見て、この島の農業には若干違和感があった。
(ふむ、頭の枷が外れたようじゃ。先ほどまで不透明だったものがハッキリ見えてくるぞ)
太公望の思考は、少しずつだが確実にまとまりつつある。
今度は、玄野の言葉をさえぎり、太公望から質問してみる。
「そして、この『高層ビル』、これは多分50階前後のビルで1フロアあたり数十人から数百人の人間が入れる、じゃったな?」
「あぁ」
「では、質問じゃ。この島には昼間、最も商売が活発な時間帯に、何人ほどの人間が集まっておると思う?」
「そんな事いわれても……」
「高層ビル一つで、かなりの人間がいる、他の設備にもそれなりじゃろう。最も活発になる時間帯、この島には相当な人間がいたはずじゃ」
「確かにそうだけど……」
太公望は手袋をはめた義手で、島の周囲をぐるりと撫で回す。
- 26 :
- 「ならば、この少ない田畑でどうやって、その人間を食べさせるわけじゃ?」
「え、それは……漁業でもやってるんじゃ……、って、ビルがあるわけだから、やっぱり島の外から運んできてるんだと思うけどな」
「どうやってじゃ? 先ほどの説明じゃと、飛行機は民間人には使えない乗り物のはず」
「船だよ、大体、飛行機にそんなたくさん荷物積めないって」
太公望は再び、島の周囲をぐるりと撫で回す。
「気づかんか玄野? 違和感に」
二回。太公望が良く見ろと、言わんばかりに指差した島の外周部。
船が、それも食料や荷物を運ぶ船が来るのなら必ずあるべき物が、その外周部にはない。
「港……、港がないのか?」
「よく気づいたの、その通りじゃ。まぁ、可能性があるとすれば、玄野の知らん南東の施設じゃが……
港である可能性は低いな」
くるりんと輝く目を細めながら、太公望は南東の施設に注意を注ぐ。
この施設は、ゲームのキーとなる施設なのか、それとも単に玄野が知らないだけなのか。
今は確認しようがない。探すべきは施設ではなく、玄野の知人、小島多恵。
施設が気になったとしても、行くのは彼女を探した後だ。
「い、いや、よく考えてみたら、これだけの島に港が一つもないって変だよ。
多分、俺はよく分からないけど、これはきっと港……」
「違うな」
「何で、そう断言できるんだよ!」
違和感は、太公望の中で既に違和感でなくなっている。
それはもう、モヤモヤした言葉にしがたい奇妙な感覚と違い、はっきり他人
と意思共有できるレベルまで高まっている。
- 27 :
- 「玄野よ、この街が所属する本島はどこじゃ?」
「そんなの俺が知るわけないだろ」
「仮に、この島が、『従来の用途』で使われていて、本当に人が住んでいたのなら、
これだけの島じゃ、本島から誰かが毎日来ておったじゃろう」
「だからそうなんだろ? そんで、南東の建物が港でさ……」
「違う。この島に、港はない」
「だから何で?」
「外部からの進入を防ぐためじゃ」
言われた瞬間、玄野はハッとした表情になる。
「外部からの進入……」
「通常のGANTZミッションでは、外部の人間はわしらの存在に気づかないんじゃったな?
じゃから、玄野には分からんかったじゃろう。しかし、これは普段のミッションとは違うところもあるはずじゃ」
「GANTZは、外部からの進入を嫌っている? でも何で、アイツには俺たちを周りの人間から隠す能力があるんだぜ」
「さぁのぉ……だが、その能力が今回もあるかどうかは怪しいとわしは思っておる」
太公望は自身の首輪をトントンと叩きながら、そう呟いた。
刹那、玄野の顔面が蒼ざめていく。普段は、脳内に爆弾。首輪なんてレトロな技術はGANTZの守備範囲外……だったはずだ。
しかし、それが自分の首に実際にはまっている。GANTZが普段やらなくてもいい事をやっている。
理由は一体……
「必要のない外部の人間に対する警戒。必要のない首輪。GANTZの能力は恐らく、100%発揮されておらん」
「ま、まさか……じゃぁ、一体このゲームは何なんだ? GANTZのミッションじゃないってのか?」
「そこまではわしにも分からん。じゃが、GANTZだけを考えていても正解には辿り着けん。それだけは確かじゃ」
そして、太公望は手のひらを広げ、力強く地図を叩く。
- 28 :
- 「あとな、もう一つ重要な事がある。恐らく、この島は作られた島じゃ……それもこのゲームのためにな」
「はあ? 島を……島を作るって、何言ってんだよ」
「わしも自分で何を言っておるのか分からん。
空間宝貝という名の、亜空間を作る道具ならば知っておるが、これほど大規模な空間は作りだせんし……
こんな島は、まっとうなやり方では作れないはずじゃ。少なくとも、今のわしが思いつく範囲ではな」
「だったら何で……っていうか、最初に教えたろ、埋め立てだってさ。この島は埋め立て地なんだよ!」
ふうっと呟いて、太公望は島の周囲を大きくぐるっと取り囲む。
「その埋め立てがおかしいんじゃ」
「埋め立てがおかしいって……」
「よいか玄野、海には深さがある。当然陸地から離れれば離れるほどに深くなる。
埋め立てによって、陸地を増やすのなら、本島近くを埋め立てるはずじゃ。
その方が利便性も増すし、埋め立ても遠洋よりは楽じゃからのう」
「そりゃ、そうだけど……って、いや、違うぞ太公望。
ここは元々本島から離れた群島だったんだよ、それを後から人工的に埋め立てて整形したんだ。それなら筋が通る」
「通らんな。本島近くの群島と、そうでない群島とではわけが違う。
わしは埋め立て地などよく知らんが、ここの島で人が生活するには本島の支援が必要だということなら分かる」
続いて太公望は島中央部の像をくるくると弄ぶ。
「気づかんか? この島には、港以上に重要な何かが欠けている」
「像とセットになるもの?」
「違う、像の周りにあるものじゃ」
「湖、池……まさか……水がないってのか?」
コクリと頷く太公望。
- 29 :
- 「その通りじゃ。雨水などをためておく場所はあるが、ここには生活用水の基本、川がない」
「あるじゃないか、ここにも、こっちも」
無いといわれても、地図上には川らしき細長い水の流れが存在する。
玄野は、それらを一つ一つ指でさしていく。
「それらは川ではない。川とは山から海へ流れるものじゃ。大方、その水たまりは埋め立ての際、島の間に出来ただけじゃろう」
「い、言われてみれば……」
「川が生まれるためには、雨が降るだけではだめじゃ。流水を作る傾斜、水を貯め込む森林、その他数々のものが揃っていて初めて川となる。
むろん、川がなくとも雨だけでそれなりの生活ができる。しかし、この島の規模では不可能じゃ」
「生活維持には、水がめを持った本島との連絡経路が必要」
「うむ」
「つまり、この島で生活することはできない……」
「その通り。誰もこんな島で暮らしていた者などおらんのじゃ」
すべての説明を聞き終えた玄野の顔には、先ほどまで微かに残っていた覇気が一つもなくなっていた。
元々、気力胆力に優れた人間ではない。どちらかといえばインドアな性格が玄野の特徴だ。
そんな彼に、無慈悲な現実が突きつけられる。
「わざわざ島まで用意して、仙人やら魚人やら妖怪やら……いつにも増して過激なミッションじゃねぇかよ」
「……」
「アーロンたちから逃げなきゃいけない、多恵ちゃんを助けなきゃいけない……
それに加えて造られた島からも脱出しなきゃいけない。やること多すぎじゃねーか」
「……」
- 30 :
- 玄野の精神にとって彼がGANTZの任務を知っていることは、きわめて重要だった。
それは本人の与り知らぬところで、玄野の精神を安定に導いていたものでもある。
自分は、他の人と違ってGANTZのミッションに詳しい。他の人が知らない情報を持っている。
そんなことを、自分から自慢するような男でもなければ、自慢が頭に上るような男でもない。
しかしそれでも、彼はただの高校生だ。
情報の優位性は、彼自身も知らないところで、確かに彼の精神を落ち着かせていた。
「玄野よ、やらねばならぬことは確かに多い。じゃが、だからこそ付け入る隙もある」
「付け入る隙って、もう首輪外しただけじゃダメだって、わかってんじゃねーか。
島まで作る相手なんだぞ……それもご丁寧に外部から隔離して」
太公望は首を振る。
「確かに、わしらは外部から隔離され、首輪をつけられておる。
しかし、考えてもみい、もしもお主がGANTZの能力を手に入れたとしたら、同じことをするか?」
「わかんねーよ」
「わしならせん。島も首輪も、GANTZの能力があれば不要じゃ。
こんな面倒くさい事をしておるのは、それなりの理由があるはずなんじゃ」
「それなりの理由って……」
「そこまでは分からん。じゃが、さっきも言ったようにGANTZが自分の能力を100%発揮できなくなっている可能性は高い」
もっとも、これは非常に好意的に見た場合の可能性である。
実際には、単にGANTZが遊んでいるだけ、の可能性が高いぐらいだと太公望は心の中で思っている。
「じゃ、じゃぁ……」
「一見複雑なシステムじゃが、それはつまり、そうしなければわしらを逃してしまう可能性があるからじゃ。
外部からの侵入を嫌うのも、侵入されて困るから以外の何があろう」
- 31 :
- ここでもやはり、進入されて困るから以外に、単に遊んでいるだけが加わる。しかし、それは口には出さない。
太公望の見立てでは、玄野は生きようとする意志が弱い。
ここで、彼に酷い現実ばかりを見せていけば、精神が破綻しかねない。
先ほどの説明の中、玄野は太公望の常識では考えられない説明を一回だけしていた。
間違いではない、嘘でもない。しかし、きわめて非常識。
とても、15,6の男子とは思えない言葉。
──え、それは……漁業でもやってるんじゃ……、って、ビルがあるわけだから、やっぱり島の外から運んできてるんだと思うけどな
自分たちが食べている食料が、どこから来たのか。
どうやって作られているものなのか。家族を養っているものさえ多い年齢でありながら、この答えはない。
少し想像を働かせれば、分かるレベルの内容だったはずだ。
もちろん、原因は彼自身ではなく、彼の住む世界の異常なまでに高い技術水準にあるのだろうが、
それでも、やはり非常識だ。そして、この非常識が何を意味しているかと言うと、玄野が日常的に生死をイメージしていない事。
食が細れば死ぬ。そんな当たり前のことさえ、彼の頭には、日常的にない。
例えるなら、妲己や殷の皇太子たちのように、彼はそんなレベルの人間なのだ。
だから太公望は、玄野を殷洪たちと同じように扱う事を決めた。
少なくとも彼の前では、悲観的な情報を流さない。そう思っている。
- 32 :
- たとえGANTZのミッションをいくらこなそうとも、それは『ミッション』という限られた状況の中での意識。
長い時間経てば、それは次第に薄れていき、日常生活の意識が顔を出す。
そうなってくると、玄野は年の割には、生命に対する感覚の薄い少年になりさがる。
なんとしても、そうなる前に脱出しなければならない。
「普段は脱出できないGANTZのミッションじゃろうが、今回は違う。
これだけ条件がそろっておる。のう玄野、わしらには希望の光がたくさんあるではないか」
「……あ、あぁ」
釈然としない表情で俯く玄野の肩をポンッと叩きながら、
「では、話は終わりじゃ。多恵を探しに行くぞ」
とだけ言って太公望は、一人先に管理人室を一足先に出ていく。
その心には、これから始まるミッションへの言い知れぬ不安があった。
- 33 :
- 【D-3 電波塔一階管理人室 / 一日目 早朝】
【玄野計@GANTZ】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜3)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:ビル街の近くで太公望と共に仲間を集める。多恵達を探す。ツインタワーに
登る。
2:ツインタワー頂上から仲間と協力して多恵を探す(1で見つからなかったと
き)
3:みんなで脱出する。
※参戦時期はゆびわ星人編前です。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
※この島が殺し合いのために用意された舞台だと考えています。
※GANTZの能力が制限されている可能性を考え始めました。
【太公望@封神演義】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 打ち上げ花火五本 未確認(0〜2)(宝貝はない
ようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:仲間を集める。信頼できそうな相手には花火を渡す。多恵達を探す。
2:宝貝が欲しい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
※この島が殺し合いのために用意された舞台だと考えています。
※GANTZの能力が制限されている可能性は半々だと思っています。
- 34 :
- 【D-3 電波塔一階管理人室 / 一日目 早朝】
【玄野計@GANTZ】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0〜3)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:ビル街の近くで太公望と共に仲間を集める。多恵達を探す。ツインタワーに登る。
2:ツインタワー頂上から仲間と協力して多恵を探す(1で見つからなかったとき)
3:みんなで脱出する。
※参戦時期はゆびわ星人編前です。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
※この島が殺し合いのために用意された舞台だと考えています。
※GANTZの能力が制限されている可能性を考え始めました。
【太公望@封神演義】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 打ち上げ花火五本 未確認(0〜2)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:仲間を集める。信頼できそうな相手には花火を渡す。多恵達を探す。
2:宝貝が欲しい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
※この島が殺し合いのために用意された舞台だと考えています。
※GANTZの能力が制限されている可能性は半々だと思っています。
- 35 :
- 投下終了です。
内容が内容なだけに矛盾があったら、すぐに指摘していただけると助かります。
- 36 :
- 投下乙!
考察が進むなあ。建物も色々特定されてきたかな?
GANTZの制限かぁ……その発想はなかった
玄野はイマイチ太公望に信頼されてないか、現代の高校生じゃ仕方ないんだろうが
細かい考察話乙です!
- 37 :
- 地図だけで考察してしまう太公望乙すぎる。
言われて見れば確かに港がないね。
- 38 :
- 投下します
- 39 :
- 汽車の窓から見える風景は、日々政治に心血を注いで疲れきっている心を少なからず癒してくれた。
目の前にはどこまでも続く広大な水平線。
仙道となってから随分と長い時を生きてきたが、じっくりとこれを拝んだのは、そういえば今回が初めてなのではなかろうか。
自分が気づかなかっただけで、世界はまだこんなにも新たな発見に満ち溢れていたのだ。
そう考えると、この体験のなんと衝撃的で感動的なことか。
たとえそれが一時的なことであっても、それでもこの一瞬だけは殷の宰相でも仙道でもない、生まれたままの一人の人間としての自分がいることを感じる。
この位置からは見ることはかなわないが、きっと東の海は朝焼けに染まっていてさぞきれいなのだろう。
できることならばそちらも見てみたいものだ。
時折り大きく揺れる振動に身を委ねながら、聞仲は列車の窓枠に左肘をついたまま、そこからの風景をぼんやりと眺めていた。
生まれて初めて利用した乗り物だが、これがまたなかなか乗り心地がいい。
あとは何かしらの飲み物などといったサービスでもあれば言うことはないのだが。
…………。
(――って、私は一体何をしているのだッ!?)
ふと我に還り、気の抜けた顔を急速に引き締めなおす。
一刻も早く殷に戻らなければならないと決意してからまだ数時間しか経っていない。
だというのに、今はこんなところでなごんでいる場合ではないだろう……
――だがそんな聞仲の気持ちなど知ったことではなく、島を走る唯一のこの汽車はただ己の役目を果たさんと線路上を滑走し続けていた。
- 40 :
- ◆
時は少々遡る。
あれから……突然襲撃してきた十字傷の男と別れてから、聞仲はその男が走り去っていったのとは違った方向へと歩みを進めていた。
特にその判断に深い理由があったわけではない。
強いて言うなら、単純に十字傷の男と再び出会ったら勝てるかどうかわからないためだ。
今の自分はまだそこまで大した力は持っていない。奴を追うよりは別方向へ進んだ方が得策だろう。
それに、好戦的な輩はまず中央を目指し、一方で集団を形成したがる弱者はそこを避けて移動するものだ。
もしその集団と出会ってそれに紛れ込むことができれば、当面は生き残る確率も増える。
……当然、最後まで彼らと手を結んだままでいるつもりはないが。
あくまでもっと強い宝貝が手に入るまでの協定に過ぎない。
充分に戦力を一人で補えるようなれば、もはや用はない。その時は始末してやろう。
故に崖に沿ってゆっくりと北上し、聞仲はとりあえずの目的地として砂漠の町を目指していた。
その途中では誰かと遭遇することもなく、気づけば暗い夜空も次第に明るくなり始めていた。
そして完全に夜が明けるにはもう少しかかるかと思っていたその時……聞仲は自身が歩いていたその先に、奇妙な巨大物を見つけたのだった。
それが何かを理解するのは、古代中国の人間である彼には酷なことだといえる。
「これは……」
最初にそれを見た時、大きな箱を連想した。
ただでさえ大きいのにそれら一個一個が連結しているため巨大な列を成して、地面に敷かれた長い線の上にどっしりと居座っている。
ここにたどり着くまでの間、何のためにこの線が存在しているのか気になってはいたのだが。
赤茶色に塗られた外観に一筋の白い直線が横に走っていて、数え切れないほどの窓がその線のすぐ上で横並びにずらっと取り付けられてある。
そこから中の様子を覗きたかったが、なんとなく子供のようにピョンピョンと飛び跳ねる自分の姿を想像すると、とてもそんな真似はできなかった。
- 41 :
- よく見れば先頭だけ、他のものと比べて随分形が違う。
基本的にこれらの箱は四角形なのだが、先頭のそれは箱の正面から巨大な円柱をぶち込んだような形をしていて、さらに煙突らしきものがにょきっと自己主張しているかのように伸びている。
色もまた、他が赤茶色なのに先頭だけ黒一色だ。
特別仕様だということはわかるが、単にデザイン上の問題だろうか。
一体これはなんだろう。
純粋な疑問に、聞仲はその箱の列へと近づいていく。
この島に送られてきてから様々な見慣れないものを見てきたが、中でもこれは別格だ。
ただの展示物として片付けることは容易だが、それにしては何か違和感があった。
用途はわからないものの、見た目からして何かしらの働きを持っていそうな気がするのだ。
下をよく観察してみると、車輪らしきものまでついている。
まさか人もいないのにこんな大きなものが動き出すわけもないだろうが……
「!」
その時初めて、聞仲はまるで箱に隣接するように……いやむしろ箱の方が隣接しているのだろうが……これまた妙な建物があることに気づいた。
建物とはいっても吹き抜けになっていて、外から中の様子が丸見えだ。
一応天井はあるために雨露は凌げそうだが、こんな造りでは中にいたところで風が入ってくるだろうに。
宴会場というのならまだ話もわかるが、こんな味気ない外観では恐らくそれもないだろう。
「…………」
- 42 :
- 用心しながら回りこんで、建物の中へと入る。
どうやらあまり手入れされていないようで、壁や床といったところどころに埃や錆が目についた。
建物の大きさからある程度予想はしていたものの、そこまで広いわけではなかった。
途中にある階段を上ると、すぐに開けたところへ出ることができ……そこでやっと、聞仲はこの建物の存在意義を理解した。
この建物はいわば、この箱に入るための足がかりのようなものなのだろう。
下からではとても無理そうだったが、ここからなら丁度いい高さに箱の扉が位置しているため、容易に中に入ることができる。
扉は一つの箱につき必ず二つは存在しているようだ。
現在それらは全て無防備に開かれていて、聞仲を中へと誘っているかのように見えた。
何か罠が仕掛けられている可能性も考えて慎重に最後尾の扉から入ってみると、その中身もまた彼を驚かせた。
外面は鉄でできていたものの、中は床も壁も天井も全て木製。
さらに一つにつき二人分が座れる椅子が左右に敷き詰められていて、それは明らかに休息を目的とされていた。
ここは変わった形をしているものの、一種の家のようなものなのか。
実際に暮らしていくには少々狭苦しい気もするが、多くの人間が一緒に住む共同体としてはかなりの利便性がある。
一種のカルチャーショックを覚えながら聞仲はさらに奥へと進んでいく。
――瞬間。
プシュー
「!?」
……ついさっきまで開きっぱなしだったドアが、何か空気が漏れ出るような音がしたかと思うと突然、一斉に閉じられた。
慌てて振り向くが、時既に遅し。
扉は完全に閉められており、押しても引いても決して開くことはない。
まんまと中に閉じ込められてしまった。
- 43 :
- 待ってました支援!
- 44 :
- 「しまった……」
聞仲は己の軽率な判断に歯噛みする。
もう少し注意を払っていればこのような単純な罠に引っかかることもなかったのに、心よりも先に体のほうが動いてしまっていた。
このように密室にしておいて、一体この罠を張った者は何をするつもりだろう。
まさかとは思うが、何か有害な毒の混ざった粉末でも蔓延させるのではなかろうか。
……いや大いに有り得る。これは、危険だ。
(こうなれば一刻も早く、無理矢理にでも脱出しなければ……!)
即決すると、聞仲はデイパックに入れていた打神鞭を取り出した。
多少骨は折れるが、この宝貝から発せられる風の刃ならば扉を切り裂くことも可能だろう。
精神を集中し、この世の全ての大気が打神鞭に集まってくるような感覚をイメージする。
こんなところで死ぬわけにはいかない。最大限まで溜まった風を、扉に向けて一気に放出しようとして……
――そして直後に訪れた唐突な振動によって、聞仲はガクンと体勢を崩して床に倒れたのだった。
「な!?」
最初は地震かと思ったが、その大きな振動は最初の一回だけだった。
なんだか妙な感じがする。
大した負荷ではないが、まるで重力が横向きになって自分に襲い掛かってきているような。
状況を確認しようととりあえず立ち上がり、聞仲は扉の上部にあるガラスから外を見た。
その結果、さらなる混乱が彼を襲うことになる。
――世界が、横に移動していた。
時刻にして朝の五時三十二分。
こうして列車は、その日の活動を開始した。
- 45 :
-
- 46 :
- 聞仲バロスwww支援
- 47 :
-
- 48 :
- ◆
そして現在。
ひとまず落ち着きを取り戻すために、空いている席に座り込んで風景を眺めていた聞仲だが……必要以上に落ち着いてしまった。
どこぞの西洋貴族かぶれでもあるまいし、こんなところで風流にたそがれている場合ではないだろうに。
……まあおかげで、じっくりと思考することはできるようになったのだが。
「さて……」
膝の上に地図を広げて思案する。
この箱は、どういう原理かは不明だが恐らく例の地面を走っている直線上を滑走する仕組みなのだろう。
そしてこのD−1を出発点にして、C−2、F−2の地点に同じように存在する建物の場所で止まる、と。
なかなかに考えられたものだと、聞仲は感心する。
この島では西側の範囲にまでしか広げられていないが、その線をさらに伸ばせば島中をこれ一つで行き来できるようになる。
それになんといっても速さ、そして収容できる人数が段違いだ。
殷にもこれがあれば大幅に移動が楽になり、人の行き来が盛んになって都が栄えるに違いない。
できることならこの技術をそのまま持ち帰りたいところだが……苦渋の決断でそれは諦める。
残念ながら、今はそれよりも『帰ること』そのものを第一に置かなければならない。
(勘違いするな……優先順位を見誤れば、そこで死ぬのだ)
生きて帰らなければ殷の繁栄どころの話ではない。
余計なことは考えるな。それは後の障害につながるだけなのだから。
この箱に対する思考を未練と共に振り払うと、あらためて聞仲は地図を眺める。
自分の左手に広大な海が広がっているということは恐らく、今は北に進んで……つまり地図でいうところのC−2地点へ向かっているのだろう。
ちょうどその側には、当初目的地としていた砂漠の町がある。
この調子ならそこに着くまでにさほど時間はかかるまい。
偶然乗り込んだこの箱だが、それは自分にとって幸運なことだといえた。
- 49 :
- 「紂王様――今しばらくお待ちください。すぐに殷に戻って、あなたを誑かす女狐を誅します故……」
決意を新たにしつつ、殷の父たる彼は列車がC−2にたどり着くその時を、じっと待ち続ける。
◆
――聞仲が最後尾の第十車両に居座っている一方、同時刻の第一車両。
「ひゅーほほほほ! 気分爽快よねぇんLちゃん?」
「そうですか、それはよかったです」
一番前に位置する機関室を除けば、この場所が先頭車両だといえる。
その他に誰も乗客のいない車両の中で、気分上々に高笑いしている女がいた。
窓にしなだれかかるようにして無意味に色っぽく座っている彼女は、女狐の妖怪仙人である妲己。
そこから見える風景を楽しみつつ、デイパックの中から食料を取り出して優雅に朝食をとっている。
設備自体はどの車両も変わらないはずなのに、彼女がいるだけでその席は他よりも豪華に見えた。
この島に集められた目的を理解していないわけではないだろうに、その様子からはまるで殺し合いに参加しているような雰囲気は感じられない。
それは彼女の余裕からくるものか、ただ慢心しているだけなのか。
ただ一つ言えるのは……完全に、旅行気分だということだ。
「ほら、Lちゃんもそんなところに立ってないでこちらにおいでなさいん」
「いえ、すみませんが遠慮しておきます。甘いものもなさそうですしね」
妲己の方を見向きもせず、車両と車両を繋ぐドアの影で見張りを続けている男。
彼女の魅惑の術(テンプテーション)によって洗脳されている、元は世界最高の探偵と評されていた変人、Lだ。
彼らは聞仲がたどり着くよりもさらに前にこの汽車を発見し、既に中に乗り込んでいた。
正直Lとしてはこんな島では列車が動いているとは思えなかったのだが、どうやら古めかしいのは外見だけのようで中身は機械の自動操縦らしい。
この首輪を開発したことといい、あのワポルという男はなかなかの技術力を持っているらしい。
- 50 :
- 支援
- 51 :
- 「…………」
Lは刀を構えたまま、ぴくりとも動かない。
相変わらず彼は猫背気味であるが、その目には一切の油断がない。
何者かが不用意にこの車両に入ってきたら、即座にその手に持った和同一文字で斬りかかることだろう。
――その姿に、妲己は少し不満を覚える。
(つまらないわねん……)
開始当初に簡単に自分の手駒にしたはいいものの、この男はどうにも扱い辛い。
頭脳はたしかに優秀だ。決断力も十分。身体能力ですら、不思議なスーツを着込むことで人間にしてはなかなかのものを持っている。
そんな奴が自分の忠実な部下となり、外敵から護ってくれようとしているのだから機能面だけ見れば申し分ないといえるだろう。
そもそもこうして見張りをしているのも、主人の身の安全を最優先しているからだ。
それはそれで有難いことだとはいえるのだが、妲己としては退屈で退屈でたまらない。
何か話しかけても必要最低限の返事しかして来ず、これでは暇つぶしの相手もろくに務まらない。
まったく、有能すぎるのも困ったものだ。
……そんなことを思っていた矢先、今度は珍しくLの方から妲己に話しかけてきた。
「それにしても、あなたは本当に困った人ですね。もしこの線路上のどこかが禁止エリアに指定されたらどうするつもりですか」
- 52 :
-
- 53 :
-
- 54 :
- どうやら小言……というより愚痴らしい。
誘惑の術にかかっているというのにそんなことを主人に対して堂々と言ってこれるとは、それは彼の意志の強さの表れか……もしくは傾世元禳の威力が弱まっているのか。
ただいずれにしても、退屈しのぎにはなることは確かだ。
「あらん、もしそうなったらLちゃんがわらわを抱えて窓から脱出すればいいじゃなあい?」
「…………」
Lは妲己のその言葉に、人知れずため息をつく。
彼女はまるで危機感を覚えていない様子だ。
いや危険性は十分承知しているのだろうが、それすらも含めて楽しんでいる節がある。
まったく、喰えない御人だ。
沖田総吾を葬った後、後の展開を有利にするためにどこに向かおうか地図を見ながら思案している際に列車に乗ってみたいと言い出したのは妲己だった。
島の西側をぐるりと囲む線路について説明を求められたため、これは列車という、主に人や物資の輸送を目的とした乗り物が通る道筋であると教えたのがそもそもの間違いだったか。
大抵の場合そこは冷房が効いていて涼しいというのが最大の決め手だったらしい。
彼女はすっかりそちらに興味津々で、だいぶ粘ったものの結局押し切られる形となって列車のあるホームへと向かう羽目になってしまった。
その結果、現在のこの状況がある。
「……約束どおり、一周だけですからね」
「ふふっ、エルちゃんったら心配性なんだからん」
妲己は妖しく微笑む。
たとえ敵が襲ってこようとも、それならそれで構わない。
彼女にとって、この島で起こる全ては遊びなのだから。
列車で旅行気分を味わうのも、人をことも……全て等価値の遊び。
- 55 :
- 支援
- 56 :
-
- 57 :
- 支援
- 58 :
- ◆
このような乗客を引き連れて、この島唯一の列車はただ走る。
その先にどんな運命が待ち構えているか、彼自身もまだ知らないままに。
【C−1 列車内・第一車両/一日目 早朝】
【蘇妲己@封神演義】
【装備】: 傾世元禳@封神演義 ナイフ@家庭教師ヒットマンREBORN!
【所持品】:支給品一式 ベルフェゴールのナイフ×9@家庭教師ヒットマンREBORN、不明支給品0〜1個
【状態】:健康
【思考・行動】
1:列車で旅行気分を楽しむ
2:傾世元禳に何らかの制限が掛けられている?
3:他者を利用し身の安全を買う。
※ 誘惑の術の制限について。
誘惑の術が使えるのは8時間に一回。
意思の強い者は抵抗することも可能です。
【L@DEATH NOTE】
【装備】: GANTZスーツ@GANTZ、和道一文字@ONE PIECE
【所持品】:支給品一式 不明支給品0〜1個
【状態】:健康 洗脳
【思考・行動】
1:妲己を守る。
※ GANTZスーツの制限について。
全体的に効果は減っていますが、どのくらい制限されているかは後の書き手に任せます。
- 59 :
- 支援
- 60 :
-
- 61 :
- 【C−1 列車内・第十車両/一日目 早朝】
【聞仲@封神演義】
【装備】:打神鞭@封神演義
【所持品】:支給品一式(不明支給品なし)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:どんな手を使ってでも優勝して殷に戻り、妲己を滅ぼす
2:砂漠の町で手を組める者を探す
3:もっと強力な武器(期待はしていないができれば禁鞭)が欲しい
4:太公望がいたら優先的に
5:十字傷の男(剣心)といった強力な参加者に注意を払う
【備考】
この舞台を空間宝貝でできた亜空間だと思っています
裏の主催者が妲己であると思っています
【汽車について】
見た目は蒸気機関車だが、実際は機械による自動運転
D−1から出発して、C−2、F−2を通っておよそ二時間程度で線路上を一周します
- 62 :
- 稚拙な文章で申し訳ありません……orz
投下終了しました。
汽車などについて、何か不備がありましたら一言お願いします。
- 63 :
- 投下乙ですー
同じ列車内にいながら気付かないとは……w
聞仲とダッキが出会うのはもうちょい先になりそう……ってその向かう先にはTAEが!
しかももう少し進んだら剣心たちが……!
もし全員入り混じったらカオスになりそうだw
- 64 :
- 投下乙!
電車かと思ったら列車か!しかも長い!
こりゃあいいバトルの場所になりそうw
聞仲はステルス、ダッキ・Lは事態を楽しむ危険人物か…
大分スタンスが固まってきたなあ
けど、駅には吸血鬼にしてXショットガンを持つTAEが待ってるんだよなあ
聞仲、ダッキの邂逅もあわせて、一波乱ありそう
ともあれ乙!
- 65 :
- >>62
乙
まさかブンチュウもダッキが同じ汽車に乗ってるとは思わんだろな
これでTAEちゃんが来た日にゃ何が起こるのか…
汽車自体は良いと思うが10両は長すぎるかな
あとはあんた自身の人間性を治してくれれば言う事は無い
- 66 :
- >>65
お互い様だとは思いますけどね^^
- 67 :
- 感想も書かない奴が何を言うかと思えば
- 68 :
- 世界の車窓からwww乙
長寿番組の筆頭ともいえるこのタイトルが、なんか妙に聞仲に似合ってやがる。
その割には、妲己は全く似合ってないような気もするが……
こいつがリラックスしているときって悪巧み感が出っ放しなんだよな。
ともかくも投下乙
- 69 :
- >>62
俺も10両はちょっと長すぎて絡み辛いんじゃないかと思います。
個人的には6両くらいでいいんじゃないかと。
- 70 :
- もう一人くらいダッキの術にかかってほしいな。
ブンチュウがかかったらそれはそれで面白い。
- 71 :
- >>70
かかったとしても八時間たったらLの洗脳解けるからなぁ。
聞仲も原作で抵抗できてるから無理な気がするが、かかったら面白いだろうな。
- 72 :
- 原作で抵抗できている聞仲がかかってしまうと、
テンプテーションは制限どころか強化されていることになるよなw
さすがに不味いだろうw
- 73 :
- 予約ゼロかよ
夏なんだからなんか書け
- 74 :
- 両者とも投下乙
聞仲、太公望ともに新時代の技術にびっくりしたと言う内容のSSで、妙なシンクロを感じてしまいました。
そういえばこの2人は、宝貝がある世界に住んでいても、所詮は3000年前の人物なんですね。そりゃ、列車もビルも知らないわ。
丁寧な描写お疲れ様でした!!
あと、>>62 稚拙な文章なんてとんでもないと思います。
- 75 :
- 結局くつろいでる文中にワロタwww
ダッキとの戦闘に期待
- 76 :
- 感想、意見ありがとうございます。
列車の車両数を減らして6両に修正するということでよろしいでしょうか?
- 77 :
- いいと思います
- 78 :
- よろしいと思います
- 79 :
- 質問していいすか?
えっと支給品についてなんですが、和泉がきちんと『ベレッタM92』と表記してあるのに対して、
海馬は『ベレッタ』とだけしか書かれてないんだけど、これはベレッタのどの銃を指してるんですかね?
ベレッタってのはブランド名であって銃の名前ではないので、これだけ書いてあってもどの銃なのか判断が難しく、
また銃によっては形状、機能、威力、装弾数、弾丸の種類などが違うので、これという銃を指してるなら
作者さんでも誰でも教えていただきたいっす
例えばですね、M1919なんかとM3Pなんかとじゃ書ける展開に雲泥の開きが出てしまうものでね、
物語が進んで有耶無耶になってしまう前に聞いておきたかったわけです
同じような理由でRPGについても補足説明とかあれば是非聞きたいっす
よろしく
- 80 :
- 銃器には詳しくないんでなんとも言えんが
続き書く時に自分で好きに設定したらいいんじゃなかろうか
- 81 :
- 予約キテター
と思ったら破棄か…
残念だ
- 82 :
- 役に立つかどうか分かりませんが、文字サイズの調整が出来るようにしておきました。
wikiまとめサイトで文字サイズを調整したいページのどこかに、
#divid(fontSizeManager){}
と入れておくと、文字サイズの調整ができます。
とりあえず、
http://www6.atwiki.jp/jlcbr/pages/147.html
だけ文字サイズを弄れるようにしておきました。
報告まで
- 83 :
- 乙
- 84 :
- そんなの役に立たねぇよ
そんなので偉そうな顔するな
- 85 :
- 今ちょっとやってみたけど、結構便利そうだね
自分の見やすいように文字サイズ調節できるし
- 86 :
- >>82
超乙
あと動かすとしたら星海は絶対欲しいよな
吹っ飛ばされたまま放送迎えちゃったら流石に変だもんな
- 87 :
- DO氏乙です!!便利そうですね
ここでゲリラ投下してもいいかな?
ただの繋ぎの話ですが・・・
- 88 :
- 結城梨斗、猿飛あやめ、そして西蓮寺春菜…ではなく、XIは先程桜の木の側らで居合わせたあと、此処からまっすぐ行ったところにある街へと歩いていた。
行き先を其処に決めた理由は、単純に人が多く集まりそうだったから。
ではどうしてC・Dエリアにある街ではないのかというと、まるで此処に集まってくれといわんばかりに地図の中心に堂々とのっていて、何となく怪しかったのだ。
「じゃあ西蓮寺はその江田島とかいうやつに襲われかけて誤って川に転落したからそんな格好をしてるってわけか」
「うん。本当にびっくりしたよ」
「でも梨斗、確か春菜ちゃんは何の訓練もしてない普通の子よね?あなたどうやって上がってきたのよ」
「…、それは…支給品にいいものがあって」
苦しい言い訳をしているのは春菜の姿に化けたXI。正体を見破られまいとできるだけ口数を減らしているのだが、梨斗とあやめが次々に会話を展開してくる。
XIは春菜のことを何も知らない。運良く二人から聞き出せたのは、自分が化けた姿がもつ名が、西蓮寺春菜であるということだけ。
今話していることからも、『西蓮寺春菜はいたって普通の女子高生である』という知識が一つ加わった。
そしてまたもう一つだけ、江田島という男が自分にした行為を広めることもできた。
嘘はついていないしXIは何一つ悪いことはしていないし言っていない。
人間というものには先入観だけで決めつけるところがある。梨斗の仲間の姿で梨斗自身に噂を広めれば、次に江田島に遭遇したときにその先入観が働くはずだ。
そうなったところで梨斗が江田島を殺せるとは思わないが、江田島を殺せるくらいの高レベルな人間がそれを知ればきっと…。
(江田島ってやつ、許せねぇな)
- 89 :
-
……そんな梨斗の悩みも、隣に居る春菜が偽者の春菜であることを知ればすぐに消え去っていたに違いない。
あやめは歩きながらハオに言われたことについてひたすら考えていた。
『油断するな。』
梨斗と春菜は仲間である。同時に、自分と春菜も仲間なのである。
もしも梨斗が嘘をついているのであれば春菜と接触した時点で春菜が自分の存在を怪しむに違いない。
だけど春菜は自分に対して何のリアクションも取らずただ梨斗に延々と繰りだされる話に相槌をうっているだけ。
グルになっているのだとしても会話中に自分の話題が出されることはなかった。
嘘をついているのはハオという少年?自分を疑心暗鬼に追いこみ自分の手で梨斗を殺害させようとした?
……いや、でもたしかにハオの言った『猿飛あやめ』と『坂田銀時』という名前が記憶に引っかかっている。
ハオが自分のことを知っていて、同時に梨斗も自分のことを知っているのなら、梨斗がララや春菜の情報を教えてくるときに一緒に伝わっているはず。
いったいどういうことだ?もしも梨斗のいうことが本当なのだとしたら、いったいハオはどこで自分の情報を?もしや全てでたらめだったのか?
『猿飛あやめ』も『坂田銀時』も架空の人物?わからない。それでもやっぱり、『坂田銀時』という名前が気になる。
………何を信じていいのかわからない。となればいちおう、ハオという少年のことも多少警戒していたほうがいいだろう。
それじゃあ梨斗のことは……―
「うお!!」
「へ?」
「あっ」
三者三様の声。
左側を歩いていた梨斗が畑に足を滑らせたとき、慌てて手を伸ばしたところに春菜の手があったのだがすぐに春菜が避けてしまい逃してしまい、替わりに春菜のスカートの裾を掴み、
ビリビリッという布が裂かれる音とともに畑に背中が吸い込まれていくように梨斗が倒れていく瞬間、あやめが梨斗の体を引き寄せた。
「大丈夫?梨斗」
「……あぁ。…ってごめん西蓮寺!!」
「あ、いいよいいよ気にしないで、ちょっと恥ずかしいけど」
大胆なスリットが入ったスカートを見て梨斗が顔を真っ赤にしながら頭を下げるが、春菜は照れ笑いをしつつあっさりと許す。
微笑ましい日常風景のような光景が繰り広げられるなか、あやめの表情は影がかかっているように見えた。
- 90 :
-
- 91 :
- (今の動き、何?)
春菜が梨斗の手を避けた一瞬をあやめは見逃していなかった。
偶然だとかいきなりだったので驚いての行動にしてはどこかキレがあるような動き……。
………ただの梨斗の同級生のはずなんだけど…私の気のせいかしら?
「怪我はない?」
「うん、さっちゃんが助けてくれたから。サンキュ、さっちゃん」
「え、えぇ……」
誰を信じて誰を疑えばいいのか。
こうしてまた、あやめの中に不安の芽が開いた。
【E-5 畑のそば / 一日目 早朝】
【結城梨斗@to loveる】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ワゴム×19@ONE PIECE 他支給品0〜2(未確認)
【状態】:精神的疲労(極小/回復中)、顎から目元までに掛けての切り傷
【思考・行動】
1:さっちゃんのことを春菜に相談する?
2:知り合い、広を探す。
3:記憶喪失については話さないままとりあえず現状維持。記憶喪失を直す方法を探したい。
4:もしも知り合いが居るとしたら皆を守りたい。
5:ゲームからの脱出。
- 92 :
- 支援
- 93 :
- 【猿飛あやめ@銀魂】
【装備】:仕込み傘@銀魂
【所持品】:支給品一式 他支給品0〜2(未確認)
【状態】:健康、記憶喪失 、微かな疑心暗鬼
【思考・行動】
1:誰が本当のことをいっているの?信じていいのは誰?
2:梨斗やその仲間を守る?
3:ゲームからの脱出。
※梨斗の言うことを完璧に信用していたはずですが、ハオの言葉に動揺中。
銀時の名前に強い何かを感じています。
【XI@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:童実野高校の女子制服@遊戯王(スカートにスリットが入ってます) 春菜の髪留め
【所持品】:支給品一式 不明支給品(0〜2)
【状態】:西蓮寺春菜の姿 肋骨損傷(数時間で回復可能)
【思考・行動】
1:この会場の奴らの『中身』を見て、自分の『中身』を見つける。
2:変身能力で混乱を起こす。できれば集団。自力での襲撃も行動範囲内。
※ 参戦時期は、HALUからHALの目を得た直後です
故に、電子ドラッグを使う事ができます。本来はサイの指令を刻み込む、つまり支配下に置くこともできますが、
制限によりその力は使えず、また効果もそれほど大きくなく、
「犯罪への禁忌感を減らす」、要は相手を犯罪に走らせやすくする程度です。
サイはまだその制限を自覚していません。
※ ワポルが定期放送で死亡者の発表について触れなかった為、死亡者発表については知りません。
※ 春菜の名前を知りました
※ 江田島平八を『凄い奴』と認識。
- 94 :
- 以上で投下を終わります。
だいぶ進展させようかと思ったんですがもうちょっとさっちゃんの疑心暗鬼をふくらませておくべきか?と思いただの繋ぎに
放送も違いしいま無理に進行させなくてもいいでしょうし、・・・・ね?
あとネカフェ投下なので予約できず申し訳ないっです。
- 95 :
- おわ!>>88と>>89の間が抜けていた!
………『春菜ちゃん』のかすかな異変にも、本来ならば梨斗も気付いたかもしれない。
が、今はそれよりももっと大事なことがあったのだ。それは当然『さっちゃん』のこと。思えば梨斗は、春菜やララや美柑を守りたいがために、あやめに嘘をついた。
……よくよく考えてみれば、知り合いにあやめを会わせることは自殺行為になるのではないだろうか。
ララであれば、『実は前から俺には護衛がついてて、影から俺を守ってくれてたんだ』、でどうにかごまかせるかもしれないが。
春菜や、家族である美柑にそれが通じるわけがない。春菜も美柑も、『誰かを騙してまで自分の命の安全を買う』だなんてことする性格じゃない。
だから春菜がその疑問をあやめの前で口に出さないよう、出会ってから延々と、言葉を発しつづけているのだ。
だけどずっとこうしているわけにもいかない。となれば春菜には本当のことを言ったほうがいいのだろうか?
>>88と>>89のあいだには↑が入ります。
- 96 :
- 投下乙!
3人がそれぞれ思惑を持っての付き合い状態
『嘘』を挟んだ3人の関係がなんともハラハラします
この静かな緊張関係が崩れるのは……やはり春菜の死が告げられる第1回放送でしょうか
リトにげてー
ともあれ乙!
- 97 :
- 今度は春奈に疑いのフラグが立ったわけか。
こっちは真黒なので疑ってくれても全く構わないのだろうけどwww
- 98 :
- 追加で、指摘になります。
畑のそば、となると地図で見るとD−6だと思うのですが。
E−5近辺に畑が見当たらないと思ったので。
合っているならいいんですけど。
- 99 :
- 投下乙!
順当に疑心暗鬼フラグが育ってるね。
さっちゃん&リトのコンビがどうなっていくか楽しみだ
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