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2012年6月新シャア専用290: 種・種死のキャラがX世界に来たら 風景画16枚目 (228) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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種・種死のキャラがX世界に来たら 風景画16枚目


1 :10/08/26 〜 最終レス :12/05/20
落ちてもまた立つガンダムX系のスレッド
(丸2年ぶりの新すれですが)
このスレはXキャラと種キャラが出会ったらどうなるかを考えるスレです
新シャアでガンダムXについて語るならここでよろしく
現在、SS連載中+職人随時募集中
荒れ防止のため「sage」進行推奨
でも落ちそうになったら上げましょう
これ以上スレ落ちするのあれなので
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー
本編および外伝、他作品の叩きは厳禁
出来るだけ種キャラのみの話にならないように
ここがクロスオーバースレであることを考慮して下さい
スレ違いの話はほどほどに
本編と外伝、A.W.とC.E.両方のファンが楽しめるスレ作りに取り組みましょう
ガンダムクロスオーバーSS倉庫
http://arte.wikiwiki.jp/
X運命まとめサイト 
クロスデスティニー (作品展示・雑談掲示板・絵板他)
http://gx-destiny.x0.com/gx/top.htm
公式サイト
月は出ているか?−機動新世紀ガンダムX Web−
ttp://www.gundam-x.net/
旧シャア板X本スレ
機動新世紀ガンダムX−47
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/x3/1202549889/
まとめサイト GX-P 様
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/
GX-P 「ディスティニー in A.W.0015」(作者トリップ:◆nru729E2n2)
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/DinAW/DinAW.html#ss2a
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/DinAW/DinAW2.html#ss2b
GX-P 「機動新世紀ガンダムXアストレイ」(作者トリップ:◆XGuB22wfJM)
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/DinAW/hoshu.html#ho

2 :
前スレが500kので、第百二十一話を最初から投下しなおします・・・
第百二十一話『得体の知れないものは信用しない』(前編)
 ジャミル達が救出される約18時間前、ガロードは新連邦本部の廊下をフロスト兄弟に両脇を固められ歩いていた。左手に見える窓からは
雪をかぶった山脈が見え、そのふもとには広大な針葉樹の森林が広がっている。ガロードが元々住んでいた北アメリカ大陸では見ることの
できなかった豊かな自然の姿がそこにあった。
 彼と同じ速度で歩くフロスト兄弟は武装をしていない。その気になれば逃げることも可能だろうが、ガロードは動かなかった。現状、
ティファは別室に隔離され、パーラにいたっては基地のどこかに捕らわれている。1人で逃げることなど、彼の中には選択肢として存在しなかった。
「ガロード・ラン、これから君が対面する人物は新連邦の最高責任者だ。粗相の無いようにな。」
「…そんなにすごいやつなのか?」
 シャギアの言葉にガロードは静かに質問する。ブラッドマン卿の名前は以前から知っていた。新連邦政府樹立、エスタルドの解体など、
彼の指揮の元で世界は大きく動いてきた。
「一般人では会うことのできないような人物さ。あの方は、いまや地球の”王”なのだからね。」
 オルバは面白そうに、そしてガロードをあざ笑うように笑みを浮かべる。彼がいかに無力で、小さな存在であるかを認識させるかのようなその口ぶりに、
ガロードは今更反応する気にもならなかった。最優先課題はここをどう脱出し、ジャミルたちと合流するかだ。
しかし今はまだそれを実行に移すべき時ではない。笑みを浮かべたままのオルバを無視しながらガロードは廊下を歩き続けた。
程なくして目的地へと到着する。木でできた両開きの重厚なドアの向こうに新連邦軍の最高司令官がいる、そう考えるとガロードも少しばかり緊張した。
「ガロード・ランを連れて参りました。」
『入れ。』
 聞こえてきた声は低く、すこし掠れていた。年齢は60歳前後だろうか、ジャミルやテクスに比べてかなり年上であることはすぐに見当がついた。
 扉の向こう側に待っていたのは中世貴族が皆で食事を取るために使っていたと思われる装飾の施された長机と、ガロードと反対方向に
座る一人の老人、さらにその傍らに立つ髪の長い男だった。老人の後には大きな窓があり、そこから差し込む光がまるで後光のように映り、
ある種神々しささえ感じられた。まるい頭には髪は生えておらず、鼻の頭には大きな黒子が1つ。体形は樽のようにウエストが広がっており、
一体何を食べたらそんな風な体形に慣れるのか不思議なくらいだ。
「かけたまえ。」
小さくもぎらついた両眼がガロードを目の前の席へと促す。ガロードはそれに従い席に着いた。
「まずは、礼を言わねばなるまいな。革命軍の奇襲作戦を察知して宇宙軍を向かわせたのだが、君達が先にコロニーレーザーを破壊してくれたのだからな。」
「…俺はあんた達のためにやったんじゃない。人がいっぱい死ぬのがいやだからああしたんだ。」
穏やかに話すブラッドマンとは対照的にガロードの声には嫌悪感が混じっていた。
 フリーデンは彼らと敵対していた。ローレライの海の件もエスタルドの件も、彼らが事を起こさなければあんな結果になることもなかったのだ。
 ブラッドマンは彼の心中を気にする様子も無く、穏やかな声で話を続ける。
「それは我々も同じだ。我々は常に”自由”を守るために戦ってきた。最初に攻めてきたのは革命軍だ。諸悪の根源は、常に宇宙にある。」
「でもあんた達だって、地球統一の名目でいろんなところで戦いを起こしたじゃないか?」
「大きな秩序を構築するためには、ほかに方法がなかった。それとも君は、常に小国に正義があるというのかね?」

3 :
第百二十一話『得体の知れないものは信用しない』(中編)
 ブラッドマンの言葉をエスタルドのウイリスが聞いたらどう思うだろう。それでは”新連邦政府に従わなかったエスタルドが悪い”と
言っているように聞こえる。大きな秩序を作るために”多少の犠牲は仕方が無い”という考え方は、ある意味で正しい。だが、目の前で
犠牲になった者達を切り捨てる非情さもかねそろえている。
やっぱ、この手の人間とは反りが合わないな
ガロードは確信した。
 ガロードとブラッドマンの話は続く。彼らはコロニーの情報を求めてきた。そこでガロードは条件としてジャミル達フリーデンのクルーの
解放を要求する。それをあっさり承諾し、さらにティファをこの部屋に呼ぶように指示を出すと、そこで彼らの会話は途切れてしまった。
 新連邦軍の”親玉”を前にして気を許せないという緊張感と、年端も行かない子供を相手に会話をしなければならないことへのわずらわしさが、
2人の会話を途切れさせていた。
 エプロンドレスを身につけた女性が2人の席にコーヒーを置く。ブラッドマンがそれにミルクと砂糖を入れて口をつける一方、ガロードはじっと
ブラッドマンを見つめていた。
「飲まないのかね?」
「ああ、俺コーヒー嫌いだから。」
 ガロードにとってここは敵地、出されるものは信用できないものばかりだ。何が入っているかわかったものではない。
「そうか。まだまだ子供のいうことだな、これの味がわからんというのは。」
「Mr.ブラッドマン。申し訳ありませんが、お薬の時間です。」
 横にいた長髪の男の言葉にうなずくと、ブラッドマンは彼から青と白のカプセルを3錠受け取り、一口に飲み込む。それを見たガロードは今度から
自分からブラッドマンに話しかけた。
「アンタ、どっか体が悪いの?」
「なにぶん私も年だからね。」
「そっか。俺は薬が好きじゃないんだ。物によっては、元々の成分はカビから取るやつとかもあるらしいし。」
 俺はカビの成分なんて飲みたくないと表情を変えぬまま告げると、ブラッドマンはそれを鼻で笑った。
「ギルよ。彼は薬がどういうものかわかっていないらしい。」
「ガロード・ラン、人類はカビや微生物から成分を抽出して精製した薬、抗生物質のおかげでそれまで治療が不可能とされてきた難病を解決してきた。
君はその恩恵を受けて今この場にいるのだよ? そして、中にはそのさらに先の”恩恵”を受けた者たちもいる。」
「恩恵がどうとか、俺は興味ない。ただね。」
 ギルと呼ばれた男に視線だけを移す。すこし癖のある長髪に白い肌に均整の取れた顔立ち。微笑を浮かべているその姿はまさに”聖人”そのものだ。
だが、だからこそ信用できない。
「得体の知れないものは信用しない、ってことさ。」
 ガロードの発言にギルバート・デュランダルは眉間にしわを寄せる。なにか言い返そうとしたところをブラッドマンが左手を上げ、それを制した。
「私は彼を信頼している。今飲んだ薬が毒であることなど、ありはしないよ。」
「…そうかよ。」
 そもそも彼はガロードの忠告を聴く気が無いのだ。このような輩を相手にはなしをしたところで、議論は平行線にしかならない。ガロードはそれ以上
口を開かず、ティファが来るのを待った。

4 :
第百二十一話『得体の知れないものは信用しない』(後編)
「ティファ、アディールを連れて参りました。」
 沈黙を破ったのはティファをつれて戻ってきたオルバだった。彼女はガロードの側に座ると、正面に座るブラッドマンをまっすぐに見つめた。
「ティファ・アディール、君は革命軍最高指導者のザイデル・ラッソと対面したそうではないか。その時の事を詳しく話してくれないか?」
「お断りします。」
 ブラッドマンの頼みを彼女は一蹴する。表情を変えるブラッドマンからガロードに向き直ると、彼女は”感じた”事を口にした。
「ガロード、あの人は約束を守るつもりはありません。」
「…やっぱりそうか。」
「コロニーの指導者はゆがんだ心を持っていました。その人とよく似た空気をこの人に感じます。」
 ガロードはブラッドマンを睨みつける。最初から信用できないと感じていたことが、まさにその通りだった。先ほど彼らはジャミル達を
”政治犯”といっていた。とどのつまりは”国家の敵”、情状酌量の余地など、最初から無かったのだ。
「ティファ、それのゆがんだ心の大本がなんなのか教えてくれ。」
「え?」
「俺は知りたいんだ。世界を動かしている奴らが、心の奥底で何を考えているのかを…!」
「わかったわ。…ガロード、私の力になって。」
「わかった。」
 少年と少女は二人がかりでブラッドマンの心の中に侵入した。
 彼のここにはいろいろな”思い”があった。家族への”思い”、部下への思い、組織への思い、敵である革命軍への思い。それらとは
また別にある、心の奥底に眠るもっと原始的な思い。
“支配欲”
 彼の場合”それ”が特に強かった。自分が頂点でなければならない。従わなければ従わせる。そうでなければ気がすまないのだ。
そして今この世で彼に跪く姿勢を見せていないもの。革命軍、そして以上に従わせるべき存在を彼女は垣間見てしまった。
「D.O.M.E…!」
「!!?」
「月の…D.O.M.E…!!」
 ガタッと席を立ったブラッドマンの表情がゆがんでいたことは、言うまでもなかった。

5 :
久々の更新GJでした!

6 :
otu

7 :
スレ立て、投下乙!
俺、神様信じる!

8 :
よし、どんどん行こう
第百二十二話『仲間の心配をして何が悪いんだよ?』(前編)
「ティファ・アディール! 君は力の使い方を誤った!! もっともそれは、ニュータイプという物の悪い癖なのかもしれんがな。」
 右の拳を長机に叩きつけてブラッドマンは怒りをあらわにする。今まで一度も触れられたことの無い自らの心の奥にある思いを
無遠慮に見られたことに、まだ明かすべきでないその思いを勝手に暴露されたことに彼はかつて無いほどの怒りを覚えていた。
「私は、自分を」
「君達ニュータイプに力があることは認めよう!」
 ティファの言葉をさえぎって彼は自分の考えを続ける。本来支配すべきニュータイプに自分の心の”弱み”を見られたことで、
彼自身気づかないうちに遠慮がなくなっていた。
 周りにシャギアやオルバ、デュランダルがいることを気に留める様子も無く、彼は”新連邦政府最高責任者”としてではなく
”一個人”としての考えを叫んでいた。
「だが、使いこなす術を知らない。だから我々がその道を示そうというのだ!」
「道具になれってことかよ!?」
 ガロードは思わず立ち上がり叫び返す。ニュータイプを”道具”として扱う。そういう考えの下でティファがどれだけつらい目に
あってきたかは一番彼が見て来たことだ。その考えの元で行動するというのであれば、なおさら彼女を新連邦に渡すわけにはいかない。
ガロードの思いは一層強くなった。
「そうだ。ニュータイプが人類の革新なのかどうか、私にはわからん。わかりたいとも思わん。ただ必要なのは、確固たる”力”だ!」
 社会というシステムの中では一個人の品格や徳は見られることはほとんど無い。あくまで必要なものはその人物の”能力”、つまり
”力”だけだ。物事を大局的見地で見るのであれば、上の者が力のある者を使って社会をうまく回していくという考えは”正しい”考え方だ。
しかし、それは人間を”部品”としてしか見ていない。
世界をより良い方向に向けるために“道具”になれ
 デュランダルは彼の考え方がある種自分と通じる所があると感じた一方、今目の前で醜態をさらすブラッドマンの姿が自分と重なって見えていた。
 太陽が西の山脈の縁に隠れ、東の空にオリオンのリゲルが輝き始める頃、レイはパーラが閉じ込められている倉庫の前にいた。左の脇に
折りたたまれた毛布を抱え、腕にはコッペパンと牛パックが入った袋を提げている。今は冬であり、暖房の無い部屋で生活をするにはかなりつらい時期だ。
倉庫に保管されているものは温度管理のいらないものばかりで、当然暖房などの設備は無かった。
「…俺も酔狂な事をする。」
 レイは自分の行動があまりにも珍しいことにガラにも無くため息を漏らした。
 上からはこのような事をしろという指示は出ていない。あくまで彼”個人”としての行動だった。
 なぜこんな事をしているのか。理由は浮かんでこない。理由をひねり出すとすれば、今彼女の置かれている境遇があまりにも”惨め”なため、
同情しているのかもしれない。入り口の南京錠を外しさび付いて動きの悪い扉を開けると、中にこもっていたかび臭い空気が噴出してくる。
中で何の反応が無い事を確認すると、レイは中へ入って後手で扉を閉めた。

9 :
第百二十二話『仲間の心配をして何が悪いんだよ?』(中編)
 と、同時に上から声が聞こえた。
「ダァリャァァァァッ!!」
 レイは左へ大きく一歩踏み出し、上から振ってきた襲撃者をよけると、空いていた右手で腰に携えていたナイフを抜き、上段から
襲撃者の左肩を目指して振り下ろす。グリップで鎖骨の辺りを強打し、さらに痛みでしゃがみこむ”彼女”の左の首筋に幅が広く
ゴツいナイフの切っ先を突きつけた。
「パーラ・シス、まだやるか?」
「ちきしょぉ…。」
 彼に襲い掛かったのは言うまでもなくパーラだった。左腕は痛みで動かすことができない。さらに相手は武器を持ち、こちらに
突きつけている。勝算は無い。
「一つ忠告しておく。上から襲い掛かる方法は悪くは無い。ただ、攻撃の際にいちいち大声を出していては敵に気づかれ、今のように
反撃をもらう。…暗るなら黙って攻撃しろ。」
「わかったよ。んで一体アタシに何のようだ?」
痛む左肩を押さえながら観念した様子のパーラだったが、彼がなぜここに来たか理由を考えた瞬間、両手で自分の体を覆い隠して後に下がり始めた。
「まさか、遂にアタシの体を弄びに来たか!?」
「そんなことは絶対にしないから安心しろ。」
「…あっそ。んなさらりと否定しなくても…。」
「お前こそ、そんな猿のような冗談を言うのは止めにしておけ。俺はやる気は無いが、他の人間はやるかも知れんからな。」
 レイはナイフをしまうと、脇に抱えていた毛布を座り込んでいる彼女のひざの上に放り投げ、その上に食料の入った袋を置いた。渡された
それらを前に、パーラは目をパチクリとさせる。
「夜は冷える。とっととそれを腹に入れて毛布に包まっておけ。」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
 用を済ませたレイが倉庫を後にしようと入り口から半歩踏み出した所でパーラは彼を引き止める。動きを止め振り向きもしない彼にずっと
気になっていた事を言った。
「なぁ、ガロードとティファの状況だけでも教えてくれよ。あいつら大丈夫なんだよな?」
「…少なくとも彼らは、お前よりは良い待遇をされているはずだ。お前こそ、なぜ他者の心配をする? 少なくとも今は彼らよりもお前の
身のほうが危険だぞ?」
 外に出てむき直り、扉の取っ手に手をかけレイはパーラに質問する。ガロードやティファと同様、彼女も革命軍の情報を持った数少ない情報源だ。
そういう意味では利用価値はある。しかし、ガロードたちと違って新連邦側は彼女と交渉のカードを持たない。情報の確保は彼女ではやりづらいのだ。
それを知ってか知らずか、彼女はレイの質問に返答する。
「仲間の心配をして何が悪いんだよ? お前だって、仲間とはぐれたら心配ぐらいするだろ!?」
「…仲間か。そんな物は、今の俺にはいない。」
そうポツリともらすと、レイは扉を閉めた。
仲間の心配をして何が悪い?
 倉庫を離れてもパーラの言葉がレイの脳裏に響いていた。確かに新連邦の中でよく話す者はいる。しかし、それは仕事上の関係であり、本当の意味で
わかりあえた”仲間”ではないと彼は考えていた。彼女はガロード達と苦楽を共にしてきたからこそ、そういうことが言える。しかしレイは違った。
「ミネルバを離れて、ようやくわかった気がするな。…これが、”寂しい”ということか。」
 士官学校時代からずっと行動をともにしてきた仲間と離れ、今彼は自分が守りたいと思う人物を1人で守っている状態だった。信頼の置ける人間が1人いれば、
2人いればと思うときも多々ある。息をつく暇も無い今の状況に、レイもいささか疲れを感じていた。

10 :
第百二十二話『仲間の心配をして何が悪いんだよ?』(後編)
ギルの役に立つ事をする
 その行動理念が彼の思考を狭め、行動の幅をなくし、自らを追い込んでいることにようやく気がついた。この枠を取り払うことができたら、
自分はどれだけ羽ばたくことができるのだろう。しかしギルを放っておくわけにはいかない。
 “変わること”を望む心と”変わらないこと”を望む心の間で、彼は揺れたのだった。
「うぅぅぅ〜〜〜…! 寒ッ…。」
 レイからもらったパンと牛を胃袋に収めたパーラは、毛布に包まって冷たいコンクリート製の床の上で横になっていた。近場にあった
レンガを枕代わりに頭の下に敷いていると、自分が修行僧にでもなったような気分になる。
 今の時間が一体何時なのかはわからないが、倉庫の壁の隙間から入る光が無い以上、既に日が暮れていることは間違いない。
これからさらに気温が下がる。一定の気温に保たれていた宇宙での生活になれていた彼女にとって、今の状況は拷問といっても過言ではなかった。
「くそー、あのキザヤロー…。パンとか牛を持ってくるぐらいだったら、もっと他の物も持って来いよなぁ…!」
寒さで震える体を必死に毛布で覆いながらパーラは捕虜としての待遇に不満を募らせる。銃殺されないだけマシだという考え方をする者もいるが、
彼女はこれが初めての捕虜生活だ。そんな風に考える余裕なども無かった。
コツッ…
ふと、側頭部に何かが当たる。まぶたを開けて目の前に落ちてきたものが小石である事を確認すると、天井のゴミでもおちてきたのだろうと思い
彼女は再びまぶたを下ろし眠ろうと意識を沈めた。
コツッ…!
 と、今度は先ほどよりも強く頭に石が当たる。落ちてきた程度の強さではないように感じ、彼女は上体を起こした。倉庫の天井から冷風と月光が
彼女の上にある事に気づき違和感を覚える。
「月の光…? あッ!!」
 倉庫の屋根を無理やり引き剥がして作った穴から見えたのは、紛れも無くガロードとティファだった。

11 :
乙!

12 :
お!お!乙、連載継続で安心しました
ストーリーは終盤ですか、完走応援しています

13 :
乙!!レイにも救いがありますように

14 :
保守

15 :
保す

16 :
保守

17 :
今回の話を書いていて思ったこと
ビームとミサイルじゃ移動速度が違うからミーティア付きフルバーストしても
同時に命中することはあり得ないのでは?
第百二十三話『戦闘機の戦い方を見せてやる!』(前編)
「この後に及んで逃亡するとはな。」
「彼らの部屋の警備兵、降格だね。」
「いや、左遷だな。」
 シャギアとオルバは顔をしかめつつ格納庫へ向かうため寝室を後にした。
 捕まえていたガロード・ランとティファ・アディールの脱走。彼らが脱走を試みる可能性は十分にあった。そのために部屋の入り口、
さらに捕らえていた棟の周りにも複数の警備兵を配置して万全を期したつもりだった。
しかし、彼らはその二重三重の警備網をすり抜け、さらにGコンを回収し、パーラ・シスともども脱出したのである。
「大佐!」
 後からレイが追いついて声をかける。シャギアは彼の顔を見て、既に状況を察している事を理解した。
「レイ少尉、キラ曹長はどうしている?」
「第8格納庫で現在発進準備中です。」
「第8格納庫? あそこは確か彼が試作型ドートレス・ネオの改修を行っていた所だったね、兄さん。」
「ああ。そしてまた、新たな装備を開発していたはずだ。確か開発コードは”メテオ”。」
 宿舎の玄関で待機していたジープに3人が飛び乗り、機体の保管されている格納庫へむかう。その最中、滑走路に見慣れない
赤い機体が3人の目に止まった。
「あの機体、キラ曹長か?」
赤い機体の中心には黒いフリーダムの姿が見える。両腕に赤い棒状の装備、さらに背面には戦闘機を思わせるような大型飛行用バーニアに
姿勢制御スラスター。対艦専用装備”メテオ”、その姿にレイは見覚えがあった。
「あれはまさか、ミーティアか!?」
「ミーティア?」
レイの聞き慣れない言葉にオルバは思わず聞き返す。レイは顔をゆがめたままそれを説明する。
「あれはフリーダムとジャスティス専用の強化装備です。マルチロックオンシステム搭載、さらにミサイル、大口径ビーム砲、大型サーベルなど
武装は多岐にわたり、連邦軍一個中隊程度ならあっという間に撃退できるほどの性能を持っています。」
「それはまた、とんでもない物を作ったものだな。」
「サイズもアシュタロンよりも大きいね。」
 シャギアとオルバが感心する一方、レイは不安に駆られた。あの装備があれば、今いるこの基地すら簡単に落とすことができるのだ。もし万が一、
彼がこの場で牙をむいたら。
 考えただけで寒気がした。
「けど相手はたかだかMS1機と戦闘機1機、あそこまでの大荷物を持っていく必要は無いと思うけど。」
「試作機だからな。実戦データがほしいのだろう。」
滑走路を離陸し朝焼け広がる東の空へと向かっていくフリーダムの姿にオルバとシャギアはそう感想を漏らす。レイは不安を拭えないままレジェンドの
置かれている格納庫の中へと入っていた。

18 :
第百二十三話『戦闘機の戦い方を見せてやる!』(中編)
『なぁガロード、本当にこっちで良いんだな?』
 パーラは何も映っていないレーダーを見ながら心配そうな表情を浮かべていた。新連邦軍の基地を脱走から2時間、今の所追っ手は無い。
ティファの導きに従い進路を決めたものの、未だ何の変化も無いことにパーラは不安を募らせていた。
「ティファ、こっちで間違いないんだよな?」
「はい、ジャミル達も今こちらに向かっています。私達の新たな仲間を連れて。」
「仲間、か…。その様子だと、俺たちの知ってる連中じゃないみたいだな。」
『てことは、ミネルバじゃないわけか。』
「はい、シンさんたちではありません。」
 ミネルバとは中継衛星で別れて以降連絡を取っていない。こちらはティファを助け出してからすぐに地球に降下したが、あちらは陽動も
かねてあちこちで暴れまわっているのだろう。しばらくしたら地球に降下すると言っていたが、それがいつになるかまでは話していなかった。
「あいつらのことだから大丈夫だとは思うけど…。」
ビビーッ!! ビビーッ!!
『他人の心配より、まずはあたしらの心配をしようぜ。追っ手が来なすった!』
 ダブルエックスのレーダーにもGファルコンのレーダーにも機体はきっちりと映っていた。敵機のデータは最新版に更新済み、追ってきたのは
Gファルコンをワイヤーで絡め取ったあの”フリーダム”だ。しかし先日とは違う点もあった。
「…本当にフリーダムかこれ? 宇宙で会った時とは桁違いに熱量が大きいぞ?」
『あいつに間違いないようだぜ? ただし、追加武装付だけどな。』
 Gファルコンから送られてきた映像を見てガロードとティファは驚きの表情を浮かべた。確かにフリーダムだ。しかしそれは中心部だけの話、
両腕には大口径のビーム砲、さらに背面には大型の飛行ユニット、その両翼にはビーム砲が二門確認できる。推力はおよそGファルコンの2倍程度、
追いつかれるのも時間の問題だ。
「俺たちを追っかけるにしたって、物騒なもの持って来すぎだぞ!」
『2人とも、しっかり歯食いしばっとけよ!』
「へ?」
『ロックオンされた!!』
 操縦桿を握りなおしながらパーラは高度計とレーダーに目を向ける。フリーダムがどんな攻撃を仕掛けてくるかは今の所不明だ。だったらバルカン系、
ビーム砲系、ミサイル系、その全てに対しての対応が必要となってくる。上下左右、さらに前後と三次元的な回避行動が要求された。
「パーラ、ドッキングアウトして応戦を!!」
『んな事してる暇ねぇよ!!』
 パーラの返答とフリーダムの攻撃開始はほぼ同時だった。恐らく飛行ユニットに格納されていたミサイルだろう。左右、さらに上から無数のミサイルが迫ってきた。
 その数40発弱。
『MSに乗ってる奴が、今度は戦闘機モドキだぁ?』
「ぱ、パーラ?」
『こちとらずっとこのGファルコンに乗ってんだ! そんなぬるい攻撃が当たるか!!』
 機体の無茶な回避運動の中でガロードは思わず舌をかみそうになった。ミサイルをギリギリまでひきつけて逆噴射、可能な限り減速しさらに高度を一気に下げる。
それまで眼前にいた目標を追っていたミサイルには目標が消失したように映ったに違いない。大半のミサイルがあらぬ方向へと飛び去り、燃料切れで次々と地表へと落下していく。
目標を見失わなかった一部のミサイルも機首のバルカンで一掃された。
『戦闘機の戦い方を見せてやる!』
 フリーダムが次の行動を見せる前にパーラはGファルコンをフリーダムの後に回りこませる。戦闘機は進行方向、前面に対しての武装は持っている。しかし、これが後面については
ほとんど武装らしいものを積んでいないのだ。”後を取ったら勝ち”戦闘機同士での戦いにおいて例外はない。
『くたばれ!!』
 後を取ったGファルコンは両翼の拡散ビーム砲を発射して眼の前にある2基のメインスラスターを破壊する。爆発と黒煙を上げながら地表へ落下していくフリーダムを尻目に
ガロードは声を上げた。

19 :
第百二十三話『戦闘機の戦い方を見せてやる!』(後編)
「今だパーラ! ドッキングアウト!」
『あいよ!』
 相手の”本体”が出てくることは容易に予想できる。MS戦に備えダブルエックスはGファルコンと分離した。
「ミーティアであんなむちゃくちゃな回避はさすがにできないな…。いや、メテオか。」
 メテオユニットを切り離して上空にいる敵機に向かうジャッジメントフリーダムの中でキラは呟いた。左の操縦桿の脇に取り付けられている
小型モニターには先ほどのGファルコンの動きの記録が完了した事を示す文字が映っている。そもそも宇宙での戦いを想定しているこの大型装備
”メテオ”を地上で使うこと自体が無茶なのだ。だがそれでもなるべく早く実験をしておきたかった。北米大陸にいる”彼ら”を相手にする前に。
「データは取った。本気で行かせてもらうよ。」
 キラの中で何かがはじける。前にも何度も感じたことのある戦闘中に意識がクリアになる感覚。両腰に取り付けられていた実体剣”エッケザックス”
” ナーゲルリング”を両手で引き抜くと機体のスピードを7割まで上げた。
「カリドゥススタンバイ、剣を受け止めた瞬間に一気に撃ち抜く!」
 眼前には既にダブルエックスがいる。双剣を上段から振り下ろすと、ダブルエックスはそれを左に回避してライフルで反撃してきた。
 今回で2回目の戦闘になるが、互いに技量が高いことは把握しているため、腹の探りあいになっている間が否めない。近づいては遠ざかり、一進一退の攻防が続く。
「くそ、このままじゃ…!」
 ガロードは焦っていた。追っ手がフリーダムだけとは考えにくい。自分達が逃げ出した事を考えるとフロスト兄弟が出てくることは間違いないはずだ。
できればさっさと逃げて距離を稼ぎたい所だが、この状況を打開するカードは今の彼には無かった。
「もう少しがんばって。皆が来るから。」
 ティファがジャミル達が近くまで着ている事を教える。だが敵もそこまで来ているのだ。
 敵が先が味方が先か、状況を打開する次の一手は互いにすぐ側まできている”援軍”である。
 パーラも援護をして2機でフリーダムを攻撃することで今の均衡を保っている。今ガロードにできることは援軍が到着するまでの間、この均衡を崩さないように
することだけであった。

20 :
乙!!パーラとGファルコンがかっこいい!!
問題は、カリスはいいとしてジャミルたちの新しい仲間(汗)とキラが再開したら・・・

21 :
あなたに乙を
しっかし、新たな味方wが裏切らないか心配だ

22 :
>>21
まあその心配はいらないだろ。ラクスを(多分)北米に残したまま
裏切るとも思えないし。
むしろ新連邦の方を心配しちゃう。キラを繋ぎ留めておけるのかと。

23 :
ミーティアもどきの登場は今後
ミーティアもどきを兄弟の機体に装備

Let's虐殺タイム
ってな展開があるとか言う話ではないよな?

24 :
兄弟の機体にミーティア付けられんのか?
兄は和田より融通の利かなさそうな羽、弟には邪魔なコト極まりない甲羅があるのに。

25 :
保守

26 :
保守

27 :
議長「ミーティアもどきはレイが使えば問題ない」

28 :
むしろ変形した状態で合体
サテライトランチャー+フルバースト

29 :
腹にくっつくから邪魔じゃないかな、ミーティア

30 :
正確には背後から横っ腹を挟むんだけどな
それでも邪魔

31 :
サテライトフルバーストなんてとんでもないことを・・・ さてミーティア合体はともかく、
今度のガンダム無双3でダブルエックスの参戦が決定したそうです
第百二十四話『アークエンジェルを撃て』(前編)
「このままじゃ埒があかない。」
 両腕のワイヤードビームライフルで攻撃を続けながらキラは呟いた。フリーダムが2本の実体剣で接近戦を挑んでも、
ダブルエックスは後退して射撃戦に持ち込む。接近戦を避ける姿勢は明らかだ。状況は膠着していた。
「なら、これでどうだ!」
 鍔迫り合いになった時に使う予定だったカリドゥスをビームライフルの合間に出力を半分に下げて織り交ぜる。出力を下げたと言っても、
元々通常のビーム砲の4倍強の出力を持つ火器だ。命中すればただではすまない。
 だがダブルエックスはそれを難なく回避する。ジャッジメントフリーダムの元となった機体”ストライクフリーダム”のデータはシンから譲り受け、
機体データベースに登録済みだ。武装がわかっていれば対応すること難しいことではない。それに、腹部にビーム砲を持つ機体とは既に何度も戦ってきた。
ヴァサーゴの持つメガソニック砲に比べれば拡散、収束といった幅広い使われ方がされていない以上、彼からすれば”固定式の高出力ビーム砲”でしかなかった。
だったら対応は簡単だ。砲門のある”正面”に位置取りをしなければ良い。
 ダブルエックスはフリーダムの左右へランダムなパターンで移動を繰り返しながら攻撃を続ける。接近しなければ自慢の双剣も役立たず、正面に回らなければ
カリドゥスも脅威ではない。残る警戒すべき武装は背中の羽に格納されたダークブルーの”ドラグーン”のみ。
「向こうが”切り札”を切ったらこっちは負ける。このままじゃ…!」
「ッ! 危ない!!」
 焦る彼の言葉とティファの危険察知はほぼ同時だった。ガロードはそれにすばやく反応し操縦桿を操る。一拍遅れてレーダーが高熱源体の急速接近を知らせた。
レーダーに反応してからでは恐らく機体は飛来する高熱源体の直撃を受けていたに違いない。ティファのおかげで、間一髪でよけることができた。
「クソ、あっちの援軍の方が早かったか…!」
 回避した高熱源体はビームだった。しかも今までに何度も見た記憶がある。あれだけの出力を出せる武装はそう多くは無い。朝焼けに染まる空に現れたのは
予想通りヴァサーゴとアシュタロン、さらにレジェンドに20機のドートレス・ネオだった。
 戦力差は明らかに敵側が上、勝率は限りなく”0”に近くなってしまった。
『キラ曹長、どうにか足止めはできたようだな。』
「申し訳ありません。足止め”しか”できませんでした。」
『彼らが一流のパイロットなのは僕らも知っている。君はよくやったよ。』
『ああ、だから我々も手加減をしない。』
『ここが彼らの墓場になる。』
全機が一斉にダブルエックスとGファルコンに襲い掛かる。フロスト兄弟の隙の無い連携にレジェンド、フリーダムの援護射撃、さらにドートレス・ネオの物量。
攻勢を受ける側に回ったガロード達には、ビームが叩きつける雨の様に思えた。
「クソ、このままじゃ…!」
ビビーッ!  ビビーッ!
 シールドを構えて後退するダブルエックスの後方に別の熱源を感知する。識別不明、熱量から戦艦クラスの物体であることはわかったが、
それ以上のことは分からなかった。
さらにMSの発進も感知。機体識別を見て、ガロードは目を見開いた。
「こ、これは!?」
「間に合いました。」

32 :
第百二十四話『アークエンジェルを撃て』(中編)
 ティファが安堵の表情を浮かべる。24対2では勝機は限りなく”0”に近い。しかし、共に戦った事のある仲間がいるならば話は別だ。
GXにエアマスター、ベルティゴにジャスティス、さらに戦艦上に現れたレオパルドの機体名を見てガロードは思わず叫んだ。
「みんな!!」
『無事かガロード!?』
『お久しぶりですね。』
『ちゃんとティファをつれてきたんだろうな!?』
『はいはい、今は眼の前の敵に集中しましょうね。』
『了解、一気に蹴散らす!』
ジャミル、カリス、ウイッツ、ロアビィ、アスランがそれぞれ言葉をかける。皆の変わらない姿にガロードは喜びと安堵を感じた。
「みんな無事なんだな!?」
『ああ。それからカリスが強力な助っ人を連れてきた。』
 GXの後方からさらに1機の白いガンダムが姿を現す。今までに見たことのないタイプのガンダムから通信を受けると、メインディスプレイに
紫色のパイロットスーツを着込んだ30歳前後の男が姿を現した。
『ネオ・ノアロークだ、よろしくな。んでこれが俺たちの母艦、強襲機動特装艦”アークエンジェル”だ。』
『アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。はじめまして、ガロード君、ティファさん。』
 戦艦からの通信を開くと、右側のモニターにネオと同年代と思しき女性が映る。黒髪にきつめの口紅。その女艦長は普通の生活の中では
到底身につくことの無い”威厳”のようなものが彼女から感じられた。
 無論、それはジャミルのそれより小さなものではあったが。
『積もる話は後だ、今は眼の前の敵を叩く!』
「了解!」
24対2から24対7+αへ。数の上ではこちらの不利は変わっていない。しかし、フリーデンのMS乗り達が集まれば戦力は2機なら4倍、
3機なら8倍になる。戦闘が始まって数分、シャギア達に同行していたドートレス・ネオ部隊は瞬く間にその数を減らしていった。
「クッ…!」
『兄さん!』
「やはり彼らが集まると脅威以外の何物でもないな…。ここは引くぞ。」
『了解…。』
 シャギアは残る機体に撤退命令を下す。殿を務めるレジェンドとフリーダムを残し、ドートレス・ネオ部隊は撤退を開始した。
と、フリーダムのコックピット内で電子音が響く。通信を呼びかける時のアラーム音だ。回線はプライベート回線、相手はレジェンドに乗るレイ・ザ・バレル。
「こちらフリーダム。」
『キラ・ヤマト、お前はあの戦艦を知っているはずだ。』
「うん、知ってる。」
『ここで貴様に言っておく。俺はお前が一体どういう考えでこの場にいるかは知らん。知りたいとも思わん。だが、俺はいまだにお前を信用していない。』
「信用を勝ち得たとは思ってないよ。君にも、議長にも。」
『なら、信用を勝ち取って見せろ。』
「どうやって?」
『アークエンジェルを撃て。』
 ピクリと、キラの指が動いた。ディスプレイの向こう側のレイも表情は変わらない。互いにどうとも判断することのできない表情で互いを見据えた。
「それで、判断できるの?」
『少なくとも敵対意志があることは伝えてもらわねばならない。』
「了解。」
 キラはドラグーンを開放した。

33 :
第百二十四話『アークエンジェルを撃て』(後編)
 突如フリーダムの放ったドラグーンにガロード達は身構えた。
「あいつ、切り札を出しやがった!」
『各機散開して迎撃! あれを1人で複数相手する必要は無い、1機ずつ確実に撃破しろ!!』
 ジャミルの声に各々が別々の方向へと散開する。それまでアークエンジェルの前面に展開していた各機がレオパルドを残して全て
艦の前方から離れたのだ。これを見逃すキラではなかった。
「さよなら。」
 それを待っていたキラは既にロックオンしていたカドリゥスを発射する。先ほどのダブルエックスとの戦闘時に使ったような出力調整版ではない。
一撃でブリッジを破壊するための一撃だ。
 もしこれを察知してドラグーンの迎撃を行わなかったとしても、結果は同じであっただろう。何せドラグーンもカドリゥスも、最初からブリッジを
狙っていたのだ。ドラグーンによって蜂の巣になるか、カドリゥスによって風穴を開けられるか。ただそれだけの違いでしかなかった。
 ブリッジの面々はフリーダムからビームが発射されたことに愕然とした。ノイマンは舵を持ったまま、ミリアリアはフリーダムに必死に呼びかけながら、
チャンドラは頭を抱え、マリューは自分の判断を誤った事を後悔しながら最後の瞬間が来るのを待った。
 だが、それを止めるために必死に動いた男がいた。
「アークエンジェルは!」
 ネオの乗るストライクがカドリゥスの射線上に入りシールドを構える。ストライクのシールドはABCコーティングされているのだ。防ぐことができるはずだ。
いや、防がなければならない。そんな気持ちに彼は駆られた。
「やらせん!!!」
 シールドに着弾すると、機体が激しく振動する。シールドはあまりに出力の高いビームに変形し、徐々に原型を保てなってきている。それは機体も同じで
精悍としたストライクの頭部が徐々に熱によってゆがみはじめる。
「絶対に…!」
 脳裏によぎるものがあった。以前もこんなことがあった気がする。そう、こうやってストライクを駆り、アークエンジェルを守った記憶が。なぜか、
理由は簡単だ。あそこには守りたい物が、守りたい人がいるからだ。
「やらせるかぁぁぁぁっ!!!」
 ビームを受けきるとシールドとそれを持っていた左腕が爆砕する。それと同時に機体はアークエンジェルの甲板へと落下した。頭部は半分以上焼けただれ、
左肩の付け根はビームによる高熱で中の配線まで完全に融解してしまっている。
「…今回は、命からがらどっちも守れたようだな。」
 コックピットのモニターには何も映し出されていない。しかしネオ、いやムウは自身が何を守ったかはっきりと理解したのだった。

34 :
GJ!
ムウの記憶が戻ったか。
ストライク、よく頑張った!

35 :
「不可能を可能にする漢」の帰還ですな!
ムウGJ!
GX氏GJ!

36 :
漢になれるかはこっからだろ、ネオ時代と向き合わなければ本編と同じ只のオスで終わる

37 :
何話か前にステラのことやシンのこと回想してたっけ
どっかできちんと向き合うのではないかと

38 :
ようやく更新できた
第百二十五話『果たさなきゃならない義務がある』(前編)
「キラ曹長が敵を1機落としたか。」
『でもフリーデンの機体じゃないからね。パイロットの腕も、たいしたこと無かったんじゃないかな?』
「かもしれんな。」
 ダブルエックスの撃墜に失敗したシャギアたちは基地への帰路についていた。ヴァサーゴ、アシュタロン、レジェンド、そしてフリーダム。
4機のガンダムと10機のドートレス・ネオ。計14機のMSが空を行く様は地表から眺めると中々に壮観だ。
しかし彼らは今回の出撃で何の成果を得ることもできなかった。北米大陸の反抗勢力、通称”バルチャー連合”が飛行可能な大型戦艦を
保有しているという情報は既に新連邦軍内部でも知れ渡っている。今回の接触でそれが確認できたことは成果に値するが、ダブルエックスを取り逃がし、
挙句バルチャー連合に合流されてしまったことは明らかに失態だった。
『シャギア大佐、申し訳ありませんでした。』
「いや、君が敵の数を減らしたことは評価に値する。何せ、あちら側の旗機であるガンダムを落としたのだ。これでバルチャー連合の指揮が下がることは間違いない。」
『彼らの戦力は前大戦時の遺品がほとんどだ。いくら数をそろえても、こっちの最新鋭機バリエントやガディール、ドートレス・ネオの敵じゃないよ。』
 申し訳なさそうに目を伏せるキラにシャギアとオルバは穏やかな口調で言葉を返した。少なくとも報告書に記載する内容で良い内容が増えたことは間違いない。
それに、彼が戦艦のブリッジを何のためらいも無く破壊しようとした事のほうがシャギアにとっては安心材料だった。
あのローレライの海の時のように勝手な行動を資格なっただけマシ、という所か。
シャギアはそう思いつつその言葉を口には出さなかった。あの時は敵機の撃墜命令を出していたにもかかわらず、彼はそれに従わなかった。その後更生施設”ケルベロスの檻”で
どのような教育を受けたかは知らないが、今はきちんと命令を聞き、敵を撃墜するようになっている。それはあの頃を知る彼からすれば大きな変化であった。
しかし気になる点もあった。彼が”本心”で彼らに協力しているかどうかだ。
今のキラ・ヤマトの行動に悪い点は無い。それまでが悪い点を抱え込んでいたからこそ、逆にそれがあまりにも少ない状態であることにシャギアは違和感を覚えていた。
まぁ良い。我々兄弟は真に世界に認められるべき存在だ。この程度の小物を御せなくては話しにならない。
 シャギアはそう思い直し、眼前に迫った基地へと機体を進めた。

39 :
第百二十五話『果たさなきゃならない義務がある』(中編)
 一方無事合流を果たしたガロード達は強襲機動特装艦アークエンジェルの格納庫で再会の喜びを分かち合っていた。
格納庫の一角でわいわいと騒ぐ者達がいる一方で、困ったように頭をかく人物もいた。
「こりゃ、完全にオシャカだなぁ…。」
 コジロー・マードック、アークエンジェルのメカニック主任を任されている古株の乗組員の1人である。眼の前には左腕を失い、
頭部のほとんどを融解させたストライクが無残な姿で置かれている。アークエンジェルのブリッジを守った名誉の負傷。
できることならば修復したいが、状態がひどすぎてとてもそれをできるような状態ではなかった。
「やっぱ、修理は無理か?」
「一佐や代表がどれだけお願いしても、今の資材では修復できませんよ。頭、左腕、さらに胴体、外装はほとんどダメです。」
「…そうか。ま、今回はよくもってくれたよ。」
 機体をここまで損傷させた張本人であるネオもバツの悪そうな表情を見せる。機体の損傷具合はコックピットにいてはわからないのだ。
いくらセンサーで異常を感知しても、実際はもっとひどい損傷である場合はよくある事だ。
「申し訳ないですけど、一佐には違う機体に乗ってもらうしかありませんな。」
「…わかった。んじゃ、なんに乗るかは考えておくよ。」
「お願いしますね。…ん? 今回は?」
どこか納得に行かない表情にマードックを格納庫に残しネオはその場を後にする。ノーマルスーツを着たままヘルメットを片手に
向かった先は彼の自室、ではなかった。
「さて…。一応、話だけはしておかなきゃな…。」
 目的地を目の前にして疲れた肩やら首やらを動かす。すこしでもリラックスするためか、それとも自分の不安を和らげるためか。
自分でも判断する事は簡単ではなかった。
 眼の前には士官クラスに割り当てられた部屋、部屋の主はアークエンジェル艦長マリュー・ラミアス。彼がこうやってここに来るのは初めてではない。
依然訪れた時にはもう1人別の仲間がいた。名前はナタル・バジルール。アークエンジェルの元副艦長、そしてもうこの世にいない人物だ。
「なんか、改めてくると緊張しちまうもんだな。」
 “以前”はここに来ることに何のためらいも無かった。”先日”までは来たとしても何の気持ちもわかなかっただろう。だが”今”は違う。
この部屋の主との関係を思い出すとそんなことは言っていられなかった。
 大きく気を吐いて扉の操作パネルを押そうとする。パネルに指が触れる寸前、彼の手は動きを止める。脳裏に4人の少年少女の姿が浮かんだのだ。
「…悪りィ、マリュー。俺はまだ、ムウ・ラ・フラガには戻れないわ。」
 自分は今、眼の前の”幸福”に手を伸ばそうとしていた。こんな”死”がすぐ側にある生活の中で”幸福”をつかむことは誰にでもできる簡単なことではない。
たとえそれをつかんでも誰も彼を咎める事はしないだろう。
しかし、彼は多くの”命”の上で今を生きている。死んでいった仲間達や、死なせてしまった部下達。年端もいかない子供たちを戦わせ、死なせ、約束を破った自分が、
自分だけ穏やかな生活を手に入れることが果たして良いことなのだろうか。
「おれはまだネオ・ロアノークとして、やらなきゃいけないことがある。果たさなきゃならない義務がある。」
 誰も彼の考えを咎めた訳ではない。彼に意見したわけでもない。
しかし彼は、自分に十字架を科した。本来存在しないはずの人間”ネオ・ロアノーク”が最後にすべきこと、それが終わって初めて彼が”彼自身”の戻ることが
許されるのだと。
 最愛の人には会わず、ただ自身の心にのみ誓いを立てたのだった。

40 :
第百二十五話『果たさなきゃならない義務がある』(後編)
「そうか、シンは今宇宙にいるのか。」
「ああ、元々あのミネルバのクルーだって話しだし、元の鞘に戻っただけの話だけだ。」
 アークエンジェルのブリーフィングルームに集合した一同の前でガロードは自分が宇宙で見てきたものを話した。クラウド9のこと、
新型MSクラウダのこと、ジャミルの宿命のライバルランスローのこと、そしてわずかな間とはいえ行動を共にしたミネルバのこと。
 ジャミルたちは静かに彼の話しを聴いた。
「しっかし、まさかあの馬鹿が宇宙にまでいっているとはなぁ…。」
「シャトルにつかまって宇宙に出るなんて、俺たちの感覚からするとちょっと信じられないね。」
シンが宇宙に出た方法を聞いてウイッツとロアビィはあきれたように肩をすくめる。宇宙に上ったことのあるジャミルやアスランからしても
シンのやり方は正気の沙汰ではないため、彼らも顔を縦に振った。
「最悪、摩擦熱でシャトルごと消し炭になっていただろう。」
「まぁ、シンらしいと言えばシンらしいが。」
「ねぇねぇ、そのミネルバって艦と通信できないモンなの? だって今宇宙にいるんだったら、地球に降りてもらってバルチャー連合に
協力してもらえないかしら?」
 横からトニヤがガロードに質問する。ミネルバの性能はアークエンジェルのデータベースにあった情報から見て、かなりの重装艦だ。
アークエンジェルとミネルバ、この2艦が艦を並べることができたならば、それだけでかなり士気が高揚するはずだ。
「うーん、多分無理。今あいつらがどこにいるかわからないし…。」
「だが、我々が彼らと接触するのは、案外すぐかもしれん。」
「? 何でだよ?」
 ジャミルの言葉にガロードが反応する。ティファを取り戻したことで、フリーデンの面々には宇宙に上がる理由が無いのだ。それなのに
なぜそんな事を言うのか、ガロード以外のクルーも不思議そうな表情を浮かべた。
「革命軍はダリア作戦を失敗したおかげで奇襲手段が無くなった。反対に新連邦軍はこれから戦力を増強し、それらを宇宙へと上げるだろう。」
「また、15年前のような戦争が起こる可能性があるということですか?」
「今の段階でも、互いに銃を抜いていると言って良い。開戦はそう遠くはないはずだ。」
 サラの不安にジャミルもうなずく。それを聞いた一堂は一様に表情を暗くした。その空気を察してか、ジャミルはみなに向き直った。
「だがすぐにコロニー落としをするようなことにはならないだろう。それぐらいの時間は残されている。」
「ふむ、モカの配合が多めだな。私なら、もう少し量を減らしてキリマンジャロを入れる。」
「なるほど、アンタも中々”通”な様だな。」
ブリーフィングルームを出たジャミルとテクスにバルドフェルドはここの所一番好きは配合のコーヒーを振舞った。配合の割合を見抜いたテクスに
バルドフェルドが感心しコーヒー談義に花を咲かす一方で、ジャミルは会話に参加せずただコーヒーのカップの中を覗き込んでいた。
「あんたは、この配合気に入ったかい?」
「…すまない、今はそんな事を話す気分になれない。」
「やはり開戦が心配か?」
テクスの言葉にジャミルは答えない。それを2人は”YES”と取った。
「…あんたの話は聞いている。確かに前大戦の最終局面で直接的な引き金を引いたのはあんたかもしれんが、所詮末端の兵士がしたことだ。深く
考える必要はないと思うが?」
「あの戦争を経験しているからこそ、なのかもしれん。」
外は夜空を流れる雲の間から月が顔を覗かせている。それだけを見ればこの世界のどこかで戦争が起ころうとしていること自体ウソのようだ。
「私が当時垣間見た未来は、そんなものではなかった。」
「開戦を止めたいか?」
「わからない。だがそれを止めることが、あの戦争を体験し、今を生きる私の責務なのかもしれん。」
 ジャミルは一気にカップの中のコーヒーを飲み干したのだった。

41 :
新作乙!
やはり虎とドクターが一緒になると、話はそっちに行くかw

42 :
TVの方は論外としてだ、
幾多の二次において自分の行動に責任を取ろうとするネオの図というのはやたらとカッコイイ。
ムウとしての記憶が戻らないままそうするだけでも大したものなのに、
戻ってなお言い逃れる事なくネオの所行まで背負い込み落とし前をつけようとするパターンなんか
最高に燃えるものがある。
今回の場合もいい方向に大化けしそうで楽しみだけど、しかし概して
そういうきれいになったムネオの死亡率って限りなく高いんだよなあorz

43 :
GJ、そういえば死に損ないって死亡フラグだったっけ。生きてー、ネオ

44 :
Xの話をまとめなきゃ・・・
運命キャラのまとめもしなきゃ・・・
改変した奴らの行く末も書かなきゃ・・・
エンディングテーマソングはあいつに何を・・・
プチッ
ああぁぁぁぁあぁぁやることがおおすぎる!!
あたまがバカになるぅぅぅぅッ!!
そんなときに書いたやつですので、お目汚しでごめんなさい。
今回は”幕間”。本編の、あくまで何気ないワンシーン(?)です

45 :
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチュアリ』(前編)
 コズッミック・イラ70、強襲機動特装艦”アークエンジェル”は誕生した。幾多の戦場で勝利し、戦後軍人たちの間で
”不沈艦”と呼ばれることとなる。それから3年、改修されたアークエンジェルはそれまで行動可能だった宇宙、
空に加え海中での航行もかつどうできるようになった。宇宙を駆け、空を舞い、海を行く。この艦は今や行けぬ場所など
無いと言っても過言ではないだろう。
 だがこの艦の改修箇所はそれだけではない。一般的には”風呂”と呼ばれるそれは、艦の動力部で発生する余熱を利用して
湯を作り、乗組員の体の体調・衛生管理のために使われている。
 “風呂”がある戦艦がほかにないわけではない。ただこの艦の風呂が特殊な点は、その風呂を露天風呂風にアレンジしたことだ。
本物の岩をわざわざ中に運び込み、セメントで隙間を埋め、さらに見た目はほとんど竹と見分けのつかないプラスチック製の柵で
男湯と女湯を分けるという念の入れようである。
 一体誰がこれを作ろうと言い出したかは定かではない。しかしそれがある以上、活用せねば本当に無駄になってしまう。
 そんなわけで、ユーラシアの北側の大地を進むアークエンジェルでは今日もその風呂、通称”天使湯”に入ろうと衣類と
風呂道具一式を持った面々が集まっていた。
 立ち込める湯煙の向こうに少女が1人、バスタオルで胸から臀部まで隠した状態で周りを見回していた。普段は腰下までとどく
艶やかな長い髪を持つ彼女だが、それは今丁寧に後頭部でまとめられており、日焼けしていない白い新雪のようなうなじが
あらわになっている。いつもピンク色の長袖シャツの下に隠れて見えない肩のラインやその背中には未だ子供と大人の中間にいる
”少女”独特の青臭さと女性らしさの”共存”があった。
 ほっそりとした体つきの彼女は女性が持つ胸部のふくらみも小さめで、バスタオルで隠した先端の突起が今にも見えそうな
ところまで下がっている。自分でも多少気にしているのか、ずれ落ちるバスタオルを直しながら彼女、ティファ・アディールは静かに
湯船へと近づいていった。
 時刻は夜の10時過ぎ、他に湯船につかる者はいなかった。と言うのも、この天使湯を体験していない人間は現在乗艦している
メンバーで3人しかいない。ガロード・ラン、パーラ・シス、そしてティファ・アディール。彼等が最後の合流組みであり、
もっとも長く風呂やらシャワーやらと無縁の生活をしていたのだ。宇宙にいてはろくに体を洗うことができず、新連邦軍に
捕らえられてからはそんな事をさせてはもらえなかった。
 ティファとて一端の女の子なのだ。身だしなみには気をつけたいと思う。特に思いを寄せるガロードの前では。
 その事を知っている(フリーデンのクルーの間ではガロ×ティファは周知の事実だが)フリーデンの副官サラ・タイレルが
彼女にこの天使湯の事を教え、入浴を勧めたのである。彼女の情報どおり、混雑のピークが過ぎた温泉はただ静かに湯気が上がる
水面があるだけだった。
一通り体をお湯で清め、右足から水面に波が立たないよう静かに体を沈めていく。あまり筋肉のふくらみも無く、また女性としての
ふくよかさも発展途上の白い肢体を、お湯は足の指先、土踏まず、かかととくるぶし、さらに脹脛、ひざ、太ももと順々に受けいれていく。
誰にも自分から見せた事の無いその肢体が湯船につかりきると、湯船の縁にある平らな石に頭を乗せ、しばらくの間そのぬくもりに身をゆだねた。

46 :
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチュアリ』(中編)
「ねぇサラ、ティファ知らない?」
「ティファ? 何かあったの?」
 女性陣に与えられたベッドエリアで就寝の準備を進めていたサラはトニヤの声に振り返った。化粧を完全に落として素顔になった
彼女は普段の副官としての顔ではなく年相応の女性に戻っている。唇のルージュの無い彼女は普段よりも表情が柔らかく感じられた。
「今パーラとエニルとで話してたんだけどさ、ここってお風呂あるじゃない。だから、ちょっちみんなで”裸の付き合い”をしようと思って。」
「とか何とかいって、昨日私にしたみたいに彼女をからかうつもりじゃないでしょうね?」
「あ、ひどーい。私だっていつもあんなじゃないわよ。ただ、サラがあまりにも”いじめてオーラ”を出してたからついついね。」
「私はそんな物出していません! もう…。水着が豹柄だからって、あなたまで肉食獣にならなくても良いのに…。」
「大丈夫、ティファはかわいいかわいい白いウサギさんだから。あ、ウサミミつけるとかわいいかも。」
「格好の得物じゃないの…。」
「ウサギはかまってあげないと寂しくて死んじゃうのよ?」
トニヤの表現にサラはあきれたように肩を落とすものの、彼女の考えも一理あると納得する。ティファと関係が強いのはガロード、
ジャミル、テクスの3人で、女同士であつまって話しをしたことは両手で数えるほどあっただろうかという程度だ。彼女の隣には
ガロードがいて、ティファ”だけ”でいることが少ない。今更だが、これは彼女の事を良く知るチャンスになるかもしれない。
「…まぁ良いわ。私もいく。」
「でもティファは?」
「ティファは先に入ってるわ。」
「そうなんだ。…よし、今夜はウサギ2羽だ。」
「何か言った?」
「ん〜ん、なんでもない。」
 “天使湯”と書かれた暖簾の前に4人の女がいる。トニヤ・マームにサラ・タイレル、そしてエニル・エルにパーラ・シス。
趣味も性格も違う彼女達に共通するものは脇に着替えと石鹸、シャンプーなどのボディケア用具一式を持っているという点だ。
「あたし温泉って初めてなんだよなぁ。」
「宇宙には無かったの? 宇宙温泉。」
「…んな物ないって。んじゃさっそく、地球でのお楽しみ1件クリアだ!」
 厳密に言えばこの天使湯もお湯を沸かしているだけなので天然の温泉ではないのだが、パーラはうれしそうにその暖簾を
くぐっていく。後に続くエニルとトニヤはアイコンタクトをかわした。
得物は2人? それとも3人?
目標は2人、できれば3人ね
 2人のその様子に明らかに何か打ち合わせをしたように感じたサラは、2人に聞こえないように小さく息を吐く。何か事件が
起こることはほぼ間違いない。その被害をどれだけ抑えられるかは自分にかかっているのだ。
 やる気の折れそうな心にそう言い聞かせてサラは暖簾をくぐった。
 ………十中八九巻き添えになることに頭を抱えながら。

47 :
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチュアリ』(後編)
「ムムム…!」
「な、なんだよ?」
 シャツを脱いで水色の下着だけになったパーラの後で同じ黒いレースの下着姿のトニヤが険しい表情になっていた。17歳のトニヤに
15歳のパーラ、二つ年下であるパーラの半裸体にトニヤから注がれる視線は真剣であり、敵視の眼差しだった。
「あんた、なんでこんなにお尻キュって引き締まってるのよ!」
「わッ! ちょっと待て、尻にさわるな!」
「スポーツしてた人の筋肉でガチガチになったお尻じゃなくて、小さくまとまって、やわらかさはむしろ私のよりもやわらかいじゃない!? 
何をどうやったらこんな美尻ができるのよ!」
 トニヤは中腰の体勢で彼女の臀部を下着の上から撫で回し、小さく実の詰まった肉の感触をゆっくりと確かめていく。彼女は宇宙での生活が
長いためか、トニヤやエニルと違って肉が柔らかい。未だ同性ですら触らせたことの無い肉をまだ知り合って間もない年上の女にいじられることに
パーラは顔から火が出るほど恥ずかしかった。
 また撫で回すトニヤの姿もまた見るものの目をくぎづけにする。褐色の肌に黒のレースから覗く腹部や背中の皮膚はしなやかに躍動し、うっすらと
肩甲骨や肋骨が浮き彫りになるその上半身は、健康的でありながらひどく大人の女の匂いを醸し出す。
「でも、胸の大きさは私達と多差ないのよね。」
「わ、お前まで!? やめろって!!」
「そうなのよ。そこがわかんないのよねぇ…。宇宙で生活するとスタイルが良くなるってホントなのかしら?」
 臀部に注意がいっていたおかげで前が無防備になっている。それを見たエニルはすかさず前から彼女の両方のふくらみをすくい上げる様に
左右それぞれの手で覆った。
「つか、お前はバスタオルぐらい巻けよ!」
「良いじゃない。この練り上げられた肢体を隠す必要なんて、私は感じていないわ。」
下の下着のみ装着しただけで自身自慢の肉饅バストを見せびらかすかのような半裸状態のエニルはパーラの色気の感じられないスポーツブラの中へ
手をいれ、房の質感や重量をゆっくりと確かめるようにいじる。
「や、やめろって…!」
「感度良好…、男に好かれる体しているわ。」
「…いい、加減にしろぉっ!!」
 羞恥心の限界に達したパーラは両手でエニルを押しのけ、後ろのトニヤの手を振り払いロッカーに背をあずけて身構える。この体勢ならば後方からの攻撃も無く、
前方からの攻撃のみの集中できる。戦闘機乗りは後ろから追いかけることは好きだが、追いかけられることは嫌いだった。
「お前ら、一体何を考えてんだ!!」
「あちゃー、逃げられちゃったか。」
「良いじゃない。”前菜”としては十分でしょ。」
「…そうね。じゃあ”メインディッシュ”、いくわよ。」
トニヤとエニルは彼女への関心が失せたらしく、最後の着衣を外してバスタオルを巻くとさっさと浴室へと入っていた。あまりの急展開ぶりにパーラが呆然としていると、
サラがぽんと彼女の肩を叩いた。
「良かったわね。あの程度で済んで。」
「あの程度って、あんたも何かされたのか?」
「昨日、ね。あれこれ口ではいえないような事をされたわ…。」
「何されたんだ…?」
 昨日された事を思い出して頭を抱えるサラとげんなりとした表情のパーラ、2人はそろって大きなため息をついたのだった。

48 :
支援

49 :
>>1
インフォシークのサイト消滅してますな

50 :
ちなみに新サイトは
http://coronatus.sakura.ne.jp/GX-P/
ね。

51 :
>45-47
うん…まぁ、とりあえずGJ…
しかしなんだってあの二人は、こうもダメ人間ぽくなるんだかw

52 :
めめめ、メインディッシュはまだですかな?

53 :
保守

54 :
もしいまの時代にXが放映されていたら
サラとかトニヤとかもネタに同人誌が出てるんだろうなぁ・・・
とか今回の話を読んで思った

55 :
>54
ダグオンの方に女性は持っていかれると思う。
あまりX擁護に出ないけどアレはアレでOVA出るほどの人気があった。

56 :
しかもエヴァ熱も冷めて無かったしな

57 :
Xの同人誌なんて2つしか見たこと無いなぁ・・・
それはさておき幕間投下。とりあえず次回からは本編に戻ります
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチェアリ』完結版(前編)
 湯船に体を沈めてから5分弱。ティファの体は良い頃合に温まっていた。皮膚の下に存在する多数の毛細血管は熱によって拡張され、
白い陶磁器の様だった彼女の皮膚を淡い桜色に染める。頬もすこし紅潮し、湯の気持ちよさに彼女の表情も穏やかで緩んだものになっていた。
 と、彼女は脱衣所に人の気配を察知する。数は4人、誰かはすぐに”感じる”ことができた。
「サラさん達?」
 彼女にとって良いお姉さんであるトニヤとサラ、トニヤの友人であるエニル、そして宇宙でティファ救出に一役買ってくれたパーラ。
彼女達が風呂場に来ることは聞いていなかったが、別段それに不快感はない。しかし、気になったのはトニヤとエニルだ。
 彼女達に”感じた”それは、一言で言うなら”いたずら心”だ。しかも自分に向けられた。
「お、いたいた。」
「湯加減はどう? ティファ。」
 髪をタオルで無理やり頭部に纏め上げ、胸から太ももの付け根までバスタオルで隠したトニヤと、頭に巻いているヘアバンドを外し、
トニヤと同じようにバスタオルを巻いたエニルが彼女の前に現れる。身長があり、なおかつスタイルの良い2人がこのように並び立つと、
ティファには眼の前に2人の女神が光臨したように感じられた。
 2人はおもむろにバスタオルを外して湯船の縁に置くと、ティファを挟むようにしてお湯に体を沈めた。両側を固められたティファは
2人を交互に見ると、戸惑ったように視線を下に落とし、頬を赤らめる。
「ん? どうしたの?」
「い、いえべつに…。」
「たいしたことじゃないなら、ちゃんと言いなさいよ。別に私達はそれで怒る様なことはしないから。」
エニルはティファに発言を促す。視線を泳がせてどうしようか迷うティファを見ていたトニヤはプっとふきだした。彼女の視線を追っていて、
何を見ていたか見当がついたのだろう。トニヤからすればたいしたことではないこと、でもティファからすれば重要なこと。
それはすなわち”身体的特徴”だった。
「トニヤ?」
「ゴ、ゴメン。ティファが何言いたいかわかっちゃったからさ、おかしくて…。」
「…へぇ。それは、本人の口から直接聞きたいわね。」
 ティファの左隣に座るエニルはそっと彼女と体を密着させる。それによりティファの左腕にはエニルの発育しきった豊かな房が押し付けられ、
なまめかしくかたちを変形させる。その弾力、質感がティファにとっては未知の感触だったらしく、思わずエニルの顔と胸を視線が何度も往復した。
「うんうん。ぜひ、本人の口から聞きたいわよね?」
 それを見た右隣に座るトニヤは、エニルと同じように体を密着させこちらも同じようにたわわに実ったそれを押し付ける。左を見ればエニルの
白いプリン、左を見ればトニヤの褐色のゼリー。両方を見比べながらティファはどうして良いかわからず右往左往した。
「ねぇティファ。あんたは今何を見比べたの?」
「え、えーと…。」
「私とトニヤ、あなたが交互に見比べているものは何かしら?」
「い、…いえ、その…。」
2人はさらに彼女との体の密着度を上げていく。それまで上半身だけだった密着部が太ももを摺り寄せ、それぞれ浮き出た骨盤の縁を押し付け彼女の
横っ腹に密着させる。完全に肉布団にはまれたティファはただただ状況が好転する事を待つことしかできない。
そして、トニヤとエニルはそれを許さなかった。

58 :
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチェアリ』完結版(中編)
「ティ〜ファ〜? どこを見比べたの〜?」
「素直に白状しないなら、あれこれして変な声出させちゃうわ。」
 彼女達の密着度が上昇する中で、既にティファの太ももはトニヤたちの支配下に有った。普段ロングスカートの中に隠れて
見ることのできない太もも。それをトニヤとエニルは指先で軽くなでる。初めは静かな湖面に小さな波を作るような繊細なタッチで、
それが徐々に指から手まで触れる範囲が広がり、最後には手全体を使って撫で回すようになっていた。
「や、やめてください…。」
「い・や♡」
「だ・め♡」
 ティファの静止の声を無視し、トニヤとエニルの攻勢は更なるステップへと上がる。それはつまり、今まで以上に彼女が知らない
未知の域へと駆け上がる事を意味する。”そういう事”に対する知識を持たない彼女には、これ以上何をされるかわからず涙目になっていた。
 しかし、トニヤとエニルの攻勢はここでストップする。彼女達も来るであろうとわかっていた乱入者によって、彼女達の手は止まった。
「2人とも! いい加減にしなさい!」
 大声で二人を止めたサラの姿が、ティファにはこの時ばかりはガロード以上の救世主に見えたのだった。
「まったく、やりすぎよ二人とも!」
「だって〜、ティファが可愛かったんだもん。」
「無垢な物ほど、穢してみたいと思わない?」
 ティファ、パーラ、サラ、エニル、トニヤが円になって湯船につかる。サラは先ほどの件を叱責する一方で、トニヤは舌を出して笑顔で謝罪の
言葉を口にし、エニルはフフッと妖艶な笑みを浮かべた。はっきりいって、二人からはぜんぜん反省の色は見えなかった。
「あんたら、それじゃただのスケベ親父だぞ。サテリコンの中にもいたけどさ。」
「あ、やっぱりいるんだ。そういう奴。」
「あったり前じゃん。こういうこと言うのは何だけど、サテリコンの仲間には女少なかったんだぜ? そりゃ男どもがあれこれやってるのいやでも目に付くって。」
 肩をすくめながらパーラはサテリコン時代の苦労話をあれこれと話し始める。それをみなが真剣に聞く中、ティファはパーラの胴体に揺れる二つの
半玉の桃に目が向いていた。
 視線に気づいたパーラはすばやく両手でそれを隠し、逃げるように体をひねった。
「あ、あんまりじろじろ見るなよ。お前だって、同じものがついてるだろ?」
「あ、いや、その…。」
「なんだかんだいって、やっぱり気にしているのね。」
トニヤはティファの両肩に手を回し、ニコニコしながら自分の方へ引き寄せる。先ほどのような露骨な密着ではなく、あくまで年上者としての動きで。とりあえず
サラからの制止の声は無かった。
「ティファ。胸をおっきくする方法、知りたい?」
「え!?」
「ティファだったら、絶対にできる方法なんだけど。」
「トニヤ。」
「大丈夫大丈夫。ここではできないし、何より私達じゃ絶対にできないから。」
 トニヤはサラに右手の人差し指を立ててチッ、チッ、チッ、と左右に振る。彼女の考えるやり方が検討もつかないサラはいぶかしげに首をひねった。
「彼女にできるけど私達にできない方法? そんなのあるわけ無いじゃない。」
「ぜんぜん簡単よ。ティファ、ガロードの揉んでもらいなさい。」
 トニヤの発言にティファ、サラ、パーラは固まった。
 一方発言したトニヤは得意顔を浮かべた。

59 :
ディスティニー in AW 幕間『湯船という名のサンクチェアリ』完結版(後編)
「え、ええ? なんだよそれ?」
「だぁから、ティファはガロードのこと好きでしょ?」
「は、はい。」
「だったら、好きな人に揉んでもらって、いっぱい女性ホルモン出して、女性らしい体を手に入れるのよ!」
ぐっと手に力を入れる彼女を横目に見ながら、サラはあきれて大きくため息を漏らす。そもそも、揉んで大きくなるというのなら
個人差(個体差)など存在しないはずだ。
揉まれただけ大きくなるなどありえない。
「まったく、何を言い出すかと思えば…。」
「あ、サラ信用してないわね?」
「当たり前でしょう。それで胸が大きくなるというのなら、世の中胸の大きさで悩むことなくなるじゃないの。」
「よしわかった。じゃあ実験しましょう。」
「実験?」
「そう実験。サラを実験台にして。」
「…えぇッ!?」
 サラが立ち上がるよりも早く、エニルがサラを後ろから羽交い絞めにする。腕を押さえられ、体の前面を隠すことができなくなった
彼女は顔を真っ赤にした。
「ちょ、ちょっと!」
「もんどう♡」
「むよう♡」
「きゃ、ちょっと、やめt( ゜ロ ゜;) 男湯に誰かいたら!!」
「大丈夫よ! だれもいないから!!」
 デザートにとりかかった2人によって、サラはあられもない声を風呂場に響かせる。年下組みのティファとパーラはその様子を、
目を覆いながらもしっかりとその姿を網膜に焼き付けたのだった。
 一方男湯では、サラのリアルな声を聞いている人物達がいた。
「…まったく、若いって良いな。」
「………。」
 湯船の中で体を伸ばすフリーデンの年長組み。ジャミルとテクス。2人はティファがトニヤとエニルに攻められている時からずっと、
その生のサウンドがリアルタイムで聞こえていたのである。
 2人とも真顔で何を考えているかは皆目見当がつかないが、未だに浴室を後にする様子は無かった。
「あいつらがああいう話題で盛り上がっているのは私も初めて聞いた。」
「…私もだ。」
「あんな話題で盛り上がるのも、若いうちだけさ。」
「これも”若さゆえの過ち”というわけか…。」
彼らは女湯聞こえる普段聞くことのできない声に今しばらく耳を傾けることにしたのだった。

60 :
GJ!
こういう時、真面目なキャラは損だよね。
サラよ、健やかにあれ……。

61 :
GJ!
しかし、ジャミルとテクスよ。あんたらガキじゃあるめぇし、聞こえないフリしとけよw

62 :
まとめサイトがインフォシークだったせいか見れなくなってる

63 :
>>62
ちょっと前に移転した。
こっちが正しいURLだよ
http://coronatus.sakura.ne.jp/GX-P/

64 :
>>63
X本スレだとちゃんと行けるからおかしいなと思ったらそういうことかw

65 :
>>61
つうかテクスはともかく女湯の様子を正しく理解してるジャミルなんかジャミルじゃないやいw
ジャミルなら
「何で風呂場に果物だのゼリーだのプリンだの持ち込んでいるのだ?」
と本気の真顔で尋ねてるはずだw

66 :
知識としてだけだろwだから動じないのさw

67 :
保守

68 :
保守が見えた

69 :
ティファの胸は果物にたとえるとなんなのだろう・・・?
そんなに大きい方ではないはずだし

70 :
ティファの胸・・・ 解答あえてするなら、小皿? 小さめの茶碗?
まぁそんな感じでしょう。
と、次話投下
第百二十六話『”始まりの場所”なんだ』(前編)
 北アメリカ大陸にあるバルチャー連合の基地に身を寄せてから三日、フリーデンのクルー達はあてがわれた宿舎で穏やかな時間を
過ごしていた。新連邦軍と宇宙革命軍が開戦の準備を着々と進めているという情報が入る一方で、彼らはこれからどう行動を
取るべきなのかそれぞれに迷っていた。
 “戦争が起こること”に対して不快感を示すものは数多くいる。それは15年前にあの悲惨な戦争を経験し、それから今まで
生き抜くことができた人々にとっては当然の考えだ。
 しかし、バルチャー連合の上層部の中には”自ら戦争を止めよう”とする者はいなかった。そもそも彼らにとって、当面の敵は
自分達の勢力圏を脅かす新連邦軍のみであり、宇宙革命軍が宇宙で何をやろうと、関心を向ける必要が無かったのだ。少なくとも、
自分達に直接的な被害が出るような事態にならない限りは。
 だが、そんなバルチャー連合の中で自ら行動を起こそうとする一派が現れた。リーダーの名前はラクス・クライン。バルチャー連合に
参加して一番期間が短く、なおかつバルチャー連合のリーダー格中一番年下の少女である。ルックス、スタイル、そしてその美声に
注目が集まる一方で、彼女達一派通称”クライン派”の行動を非難する声は水面下では多く聞かれた。
 理由は単純だ。他のリーダー格の者よりも年下で、なおかつ言動、行動は過激な面が多いためである。”戦争をやめさせるために戦う”と
声を上げるのは良いが、実際彼女達が持つ手札では何もすることができないのだ。戦力も戦艦エターナルとアークエンジェルの2隻のみ。
政治的な交渉のパイプも持たず、力不足が否めなかった。
“思いだけでも、力だけでもダメ”と以前誰かが言っていたなと思いつつラクスはため息を漏らすと、自室の窓の外に広がる青い空に目を向けた。
と、その視界を赤いMSが横切る。目でそれを追うと、赤いガンダムがなにやら背中に大きな装備をして空を飛んでいた。地上ではそれを眺める
ガロードたちの姿があった。
「なんだか楽しそうですわね…。」
 自分とあまり年齢の離れていない彼らがなにやらはしゃいでいる姿を見ていると、自然に頬が緩んだ。
「確かに楽しそうではあるが、今はそんな事を話している場合じゃないだろう?」
「宇宙革命軍が動きを見せた。これでまた、戦争に一歩近づいた。」
 だが同室していたカガリとアスランは渋い表情だった。彼女と再会し、ジャミル達への紹介は済んでいる。今は彼女の自室に集まって互いの情報の
交換を進めていたところであった。その最中にもたらされた情報、それが”宇宙革命軍が月に向かって進軍を開始した”というものだった。
 彼等が月に到着するのは遅くとも一週間後、それにあわせて新連邦軍も動きを見せるはずだ。アスランの言ったとおり、世界は再び戦争への道を歩もうとしていた。
「宇宙革命軍と新連邦、ザフトと地球連合。私達の世界もこの世界も宇宙と地球はこんなにもいがみ合っているのでしょう?」
「俺たちの世界ではコーディネイターとナチュラルの確執があった。こっちの世界ではニュータイプに対しての捉え方、価値観の違いがある。」
「私からすれば、正直ニュータイプがいっぱい居たからと言って、ケンカする必要は無いと思うけどな。」
「カガリはそれで良いかもしれないが、ザイデルやブラッドマンはそうは行かないのだろう。」
 それぞれの指導者の名前を出してアスランは肩をすくめた。ザイデルはニュータイプを”スペースノイドは全てニュータイプであり、人類の革新”としているのに対し、
ブラッドマンは”オールドタイプに従うべき存在”としている。それぞれの言い分はわからなくもない。しかし、よそ者の彼女達にはどちらも”間違い”に聞こえた。
「人は分かり合えるはずなのに、どうして他者を完全に排除しようとするのでしょう…?」
 窓の向こうに見える滑走路でふざけあうガロード達の光景は平和そのものだ。しかし、その一方で世界の悪意は確かに増殖を続けていたのだった。

71 :
第百二十六話『”始まりの場所”なんだ』(中編)
 シンはその時眠っていた。眠っているはずだった。ルナマリアと交替で休息を取っている彼は、時計では標準時0時の1時間前に
ベッドに入った。そこまでは覚えている。しかし、彼は今宇宙にいた。
「ここは…?」
 パイロットスーツに身をつつみ、ディスティニーのコックピットに座っている。眼下には月面、そして巨大なパラボナアンテナが見えていた。
「あれは…?」
どこかで見たことのあるような巨大なアンテナ、その周辺に設置されたかなりの数の太陽電池パネル。ざっと数えて30枚以上の
それらからはそれぞれ中央部にそびえるパラボナアンテナにその送電ケーブルが延びている。
計器に目をむけ現在の位置を確認する。ポイント2004。高度を下げ、アンテナ施設に近づくにつれてポイントは徐々に数値を変化させていく。
施設に着地して再び位置を確認する。
 ポイント1996。確かに計器はそう数値を示していた。
Pi!  Pi!  Pi!  Pi!
 ベッドの上に備え付けられた時計からアラームが響く。それまでの静寂を破る機械的な音にシンは重たいまぶたを開いた。今いるのは
自室のベッドの上、ディスティニーのコックピットではない。
「夢…、か。」
 寝癖でぐちゃぐちゃになった髪を手で整えながらシンはもう一方の空いた手でアラームをストップさせる。時刻は就寝してから約6時間半、
十分な時間眠っていた。それと同時に、先ほどの夢がやけに鮮明に頭に残っていた。
「まったく、夢の中までディスティニーに乗ってるなんて…。やっぱりストレス溜まってるのかなぁ…。」
 服を着替えザフトの赤い軍服に袖を通す。交代の時間まであと2時間弱、別に急ぐ必要があったわけではなかったが、シンはすばやく準備を
終えると部屋を後にした。
「施設全体の状況把握率は現在52%…。思ったよりもはかどってないわね。」
「ここは旧連邦のトップシークレットですからね。」
「それだけセキュリティーがきびしいってことか…。」
 タリア、アビー、アーサーはブリッジのメインモニターに映るさまざまなデータを見ながら状況の推移を見守っていた。
ダリア作戦を阻止してサイレントランを続けていたミネルバは、一昨日旧連邦が建設したマイクロウェーブ送電施設の第1宇宙港に入港した。
今は施設内部の調査と艦、及びMSの整備に人員を割いている。
幸いなことに送電施設の設備はそのほとんどが稼動可能な状態にあったため、艦の外装の修理やMSの整備などは順調に進んでいた。
 その一方で施設内の調査は難航していた。何よりセキュリティーが厳しく、ドア一枚のロックを解除するにも1〜2時間はかかってしまう。
タリアの口から出た施設全体の状況把握率52%のうち、40%が外に太陽電池パネルなどの外部の施設だ。中枢部などは未だに拝めていなかった。
「でもなんだか気味が悪くないですか?」
「? どういうことだ?」
「だって、施設内部のセキュリティーはこんなに厳しいんですよ? だったら、外のセキュリティーだって同等のレベルのものが配備されていないと
おかしいじゃないですか。」
 アビーの指摘した点はタリアも気になっていた点だった。中のシステムは確かにまだ生きている。だからこそセキュリティーが働いているのだが、
なぜ”内部”は働いていて”外部”は働いていないのか。長年太陽風や放射線にさらされたといっても、元々それを想定して作られているのだ。
生半可なことで故障などするはずも無い。
 まるで”招き入れられた”かのように入港したものの、その後”まだ入ってはならない”とばかりに基地内部のシステムが働く。これが単なるシステムの仕業なのか?
 タリアには何かしらの”意志”が介在しているように感じられてならなかった。

72 :
第百二十六話『”始まりの場所”なんだ』(後編)
「…我々の事を味方と認識しているわけは…」
「無いわね。」
「無いですね。」
「…ですよね。」
限りなく0%に近い意見をタリアとアビーがばっさりと切り捨てると、不用意な発言だったとアーサーは肩を落としたのだった。
「あ、シーン!」
「お勤めご苦労さん。なんか変わったことは?」
「ないない、基地周辺はいろいろ見てまわったけど、どこもただの月面よ。」
 格納庫に着いたシンをルナマリアはミネラルウォーターの入ったボトルを投げて出迎える。それを受け取ったシンはボトルの
先端から伸びる吸引用のチューブに口をつけつつ、彼女が見てまわった基地周りの状況を聞いた。
外は見渡す限り何も無い無とクレーターの世界。今回彼女が見てまわった中では敵の接近してきた様子も無く、新たな発見は何も無かったという。
「しっかし、月面の地図はあっちもこっちも同じのなのね。なんだかそれも不思議だわ。」
「なぁルナ。」
「ん?」
「ポイント2004と1996って、お前見に行った?」
「何言ってるのよ。ポイント2100から1900まではこの基地の敷地じゃないの。」
「あ、…そっか。」
 電子パネルに表示された地図上では2100から1900までは確かに基地の端と端になっている。それを確認すると、シンはポイント2004と
1996を地図から探した。そして、ようやくそれに気づいた。
「…そっか、そういうことか。」
「? シン?」
「ここが、こここそが、”始まりの場所”なんだ。」
シンは”こちら側”に来る時に大きなパラボナアンテナを確認している。そして、ポイント2004と1996は基地中央にそびえる
マイクロウェーブ照射用の大型アンテナの端と端を指していたのだった。

73 :
更新乙

74 :
遅くなりましたが、GJです。

75 :
・・・これは、帰還エンドフラグか?

76 :
テレたまが追いつきます

77 :
保守はいります

78 :
PCが年末年始2度にわたりクラッシュ・・・
それはさておき、あけおめ
もう一踏ん張りお付き合いください。
今回はちょっとオリジナルな内容が先行してますが郷了承を・・・
第百二十七話『”力”とは一体なんだ?』(前編)
 定期偵察の時間になった為、シンはディスティニーで出撃した。第一宇宙港のすぐ近くにある第八ゲート、ゲート入り口から
見える月面の風景はシンが最後に”あちら側”で見た物となんら変わりなかった。見上げればとても数えきることのできない
ほどの星々、そしてその中でひときわ白く輝く太陽と青い地球。生物の本来存在し得ないそこはただ静かにそこに存在するだけであった。
「さて、現在地は…。」
 月面に機体を着地させると、シンは操作パネルを操作して左側のモニターに現在の位置を表示させる。クレータの位置は宇宙の
ゴミが月に衝突するたびに変化するため当てにはできない。位置の算出は地球同様、緯度と経度で算出されている。
「この基地は地球に見える側のほぼ中心か…。」
 月の自転は一回転につき一ヶ月、さらに公転周期も一ヶ月。常に同じ側が地球側に向いていることになり、月の裏側は普段地球の
人々には見えない。それを利用し、”あちら側”ではレクイエムなどというとんでもない大量破壊兵器が作られた。
 無論、このマイクロウェーブ送電施設から供給されるエネルギーで発射させるサテライトキャノンも立派な大量破壊兵器なのだが、
少なくともシンはそれが無差別に使われた所を見たことが無かった。
 シンはそんな事を考えつつ、機体を偵察軌道へ乗せる。レーダーに反応無し、前大戦時の遺品と思われるMSや戦艦の残骸などが
多数ある一方で、動くものは一つも見当たらなかった。
「…でも、この基地は十五年間本当にただ放置されていたのか? 宇宙にはイエーガーたちだっているのに…。」
 ここはいろいろなパーツを回収でき、拠点としても利用価値は高い。少なくとも前大戦で疲弊した地球同様、物資の少ない宇宙では
ここはこの上ない”餌場”と言っても良いはずである。しかしなぜ、今までこうも無傷でいられたのか?
 その存在そのものが発見されていないのか? それとも発見されても近づけなかったのか? はたまた既に何者かの支配下にあり、
ミネルバが彼らによって基地に招きいれられたのか?
シンはどこか得体の知れない何かが自分たちの周りで行動を起こしているようで、自分達が大変な状況に置かれているのではないかと
心配を募らせたのだった。

79 :
第百二十七話『”力”とは一体なんだ?』(中編)
「君達の意見には、賛成できないな。」
 バルチャー連合のリーダーであるルーファスはクッションの効いたソファーの背もたれにその長身を預けながらラクスに返答した。
今彼等がいるのはルーファスの執務室、ラクスは革命軍が動きを見せたことに対して、自分たちも何かしら行動を起こすべきだと主張したのだ。
 返答を聞いたラクスは動きを見せない。横に控えているネオとマリューも同様だった。彼は左耳からたれた自身の長い黒髪をかきあげ、
両手で手遊びをしながら目の前に立つ彼女達の様子を伺う。
「…なぜです?」
「前々から散々話したとおり、我々の敵は新連邦政府だけだ。」
「しかし、また戦争が起これば15年前の悲劇が繰り返されるかもしれないのですよ?」
「だろうな。」
「あなたは、それで良いのですか?」
「…ラクス嬢、今の北アメリカ大陸をどう見る?」
 ルーファスはラクスの質問に質問で返答する。ラクス、ネオ、マリューが表情を変えるのを見て、ルーファスは手を上げて彼らを制した。
「まてまて、別に君達の質問に答えないわけじゃない。まぁ聞いてくれ。私は今の北アメリカは戦前よりもずっと混沌とした状態だと思っている。
経済の中心地だった大陸の東西の海岸はコロニー落としの時に発生した津波でオシャカ、内陸部も砂漠化して見る影も無い。それがようやく治まって、
この大陸に“秩序”が戻り始めているんだ。」
 ルーファスの話は続く。戦後の動乱の中で彼が感じたものは”秩序”の重要性だった。無法地帯と化したそこでは老若男女、けが人病人問わず
1人の人間としか見られない。つまり、“人”が“獣”に “退行”してしまう世界なのだ。それまであった決まりごとも法律も何の意味も持たない。
ただ強いものだけが生き残る、そんな世界である。
「この二、三年でこの大陸もようやく人が人として暮らせるだけの環境が整ってきた。それはこの大陸の人間が築き上げた血と汗と涙と努力の結晶だ。
俺はそれを新連邦政府なんていうよそ者にかき回されたくないんだよ。」
「…なるほど。南インド諸島をみつけたコロンブス来訪のあと、南北アメリカ大陸の先住民達の生活が滅茶苦茶にされたときの二の舞はゴメンということか。」
「ああ。」
「しかし、それで良いのですか? あなた方は、周りの人々が苦しんでいる時に手を差し伸べようとはしないと? 本気でそういうおつもりなのですか?」
「違うなラクス嬢。手を差し伸べようとしないのではない。」
 ルーファスは真剣な眼差しでじっとラクスを見つめる。その瞳からは彼の切実な気持ちが感じれらた。
「守りたくても、今の我々では他を守ることができないんだ。仮に守ったとして、疲弊して本丸であるこの北アメリカを守れなかったら、本末転倒なんだよ。」
 自分達は既に守りたいものがあり、そのため働いている。今はまだ、他に回す余裕が無いのだと、彼は言った。
「あなた方のすべての力を私たちに貸してくれとは言いません、少しでいいのです。お力をお貸ししていただけないでしょうか? 」
「…力か。ラクス嬢、君達の言う”力”とは一体なんだ? この場合はMSなどの戦力のことと俺は解釈したが?」
 ルーファスはゆっくりと体を背もたれから起こすと、下からラクスを見上げる。その視線に好みの女性を見定める時のようないやらしさは存在しない。
あくまで彼女という人間を見定めるために彼は彼女を見つめた。
「力とは、誰もが持っている”何かを実現しようとする力”です。」
「…ずいぶんと漠然としているな。」
 小さくため息をつくと、彼は席を立ち真後ろにある大きな窓に向き直る。窓の向こうには晴れ渡った夜の空に大きな満月、そして窓の内側には彼の顔が映った。
齢三十三歳でこの所帯の大きな組織のリーダーをやっているのだ。顔にはその苦労がしわとなり年輪のように刻まれている。
「“力”を表す言葉はいろいろある。腕力、脚力、筋力、知力、魅力、権力、経済力、組織力、支配力、統率力、武力、政治力! 俺がぱっと頭に浮かんだ物だけでも
これだけある。時間をかければもっといっぱい探し出すことができるだろう。ここで聞かせてもらうが、君たちが持っているその力とは、具体的にいったいどんな力なんだ?」
 ラクスたちに目を戻して彼は問うた。ラクスは動かず、マリューとネオはそれぞれ考えるように首を傾げたり、天井を見つめたりした。すぐに返答が返ってこないことに
ルーファスはさらに言葉を続ける。

80 :
第百二十七話『”力”とは一体なんだ?』(後編)
「君たちはどうやって新連邦と革命軍の戦争を止める? 政治力、パイプ役を使っての政治的な和平か? 経済力、平和を金で買うか?
武力、ご自慢のガンダム部隊での武力による鎮圧か? 魅力、君の得意とする歌で戦場のすべての人間を感動させて戦いをやめさせる気か?」
「私達は戦場にいるすべての人の心に、平和を望む”心”があると信じています。その心を動かすのです。」
「どうやって? そんな形もなく、動くかどうかわからないものに君たちは賭ける気なのか? 私にはその考えは理解できないな。」
ルーファスは彼女の言葉を鼻で笑うと、肩をすくめる。今まで別段動きを見せなかったマリューとネオは彼の行動に彼女たちは表情をゆがめた。
「おいあんた、結局何が言いたんだよ?」
「具体的にどうやって戦争を終わらせるかがわからないのでは、こちらとしては協力できないと言ってるんだ。さっきも言ったが、こちらは大所帯だ。
彼らをそんな何のプランもない作戦に参加させるわけにもいかない。それでは単純に、彼らに“死んでこい”といっているようなものだよ!!」
 彼の口調は、それまでの話の中で一番強かった。
 “戦う”ということは彼も否定しない。彼自身、そうやって北アメリカ大陸の平和を“勝ち取って”来たのだ。方法を否定するつもりはさらさらない。
しかし、それも正面からただぶつかればいいというわけでもないのだ。勝利へのシナリオがない限り、彼は絶対に動かないと心に決めている。それが、
今の地位を勝ち取るに至ってもっとも必要だった彼の“力”であった。
「…プランを提示すれば、協力していただけるのですか?」
「考えんでもない。しかし新連邦軍と宇宙革命軍の両軍を相手にするとなると、我々の持つ戦力だけでは逆立ちしても勝てん。」
「私たちの目的はあくまで戦争をやめさせることです。両軍を倒すことではありません。」
「…まったく、“思い”だけは一人前だな。」
 彼は頭をかきながら自分の執務用の机に入れられた大きないすに腰掛けると、改めてラクスに言った。
「とにかく、そんな闇雲な行為に我々は協力できない。さらに言うならば、君たちが自分たちで勝手にやるというのであれば、止めたりはしない。話は以上だ。」
「ルーファスさん、結局彼らの協力要請を蹴ったんですか?」
「…ああ。」
 秘書の言葉にルーファスはじっと外の月を見ながら答えた。地球に一番近い天体。そこに向って新連邦軍も宇宙革命軍も部隊を進軍させている。
また世界を二分する大きな戦争になることはほぼ間違いないだろう。それを嫌悪する気持ちは確かにあるし、できることならとめたいとも思う。
しかし、今の自分たちの力ではどうにもならないことはよくわかっていた。
「彼ら、どうしますかね。」
「あいつらは馬鹿だ。」
 ルーファスはラクス達のことをそう断言した。彼がこういうことを言うことが珍しかったらしく、秘書は少し驚いた様子で顔を上げた。
「珍しいですね、あなたがそこまで言い切るなんて。」
「ああ。頭の中で“思い”だけが先行して行動が追いついていないんだよ。だが、馬鹿の行動は予想がつかない。もしかすると…。」
「もしかすると?」
「もしかすると、“思い”が “力”に変わるかもしれん。」
 コーヒーメーカーでコーヒーを作る秘書を見ながらルーファスは肩をすくめたのだった。

81 :
>>78-80
新年OO(おめでとうございます&乙)。
オリキャラのルーファス反連邦代表(仮)もなかなか求心力のある人物だという
ものは察せられるかと思います。
まあここでラクスがルーファス氏を説得したところで肝心の反連邦組織の議会は
紛紛糾糾してろくに統一行動を取れたものではなかったと思いますが。
なにしろ新連邦の分析では組織の結成自体予想外で、カリスが「所詮は反新連邦だけの組織」
と言うくらいまとまりが無いくらいだし。

82 :
新年早々乙です。

83 :
そろそろ保守を

84 :
保守ドモです。それでは張り切って次の話を投下します
第百二十八話『“復活の白き箱舟”です』(前篇)
 ティファは今自分が夢を見ているのだと確信した。昨日、彼女の人生の中で最高の出来事があった。そしてその興奮とぬくもりを
感じながら床についたこところまでは覚えている。
 しかし、今いる場所は彼女のベッドの上でも、そもそも地球ですらなかった。
 そこは光と闇しか存在しない空間で、彼女は前方に向かって真っすぐに進んでいる。時折光の点が彼女の進行方向からあらわれては
彼女の上下左右を通り過ぎていく。一番近いものとして例を挙げるならば“宇宙”か。何もない空間でありながらはるか彼方には
人間など比べ物にならないほど巨大なものが確かに存在する世界。
 彼女は自分の持つ“力”のおかげで普通の人間が見ることのないような“夢”を見ることが多々あるが、今回のような夢を見たことは
一度もなかった。
 と、前方の空間からティファは“声”を感じた。“声”は本来聞くものであって感じるものではないが、今回はこちらが適切な
表現だろう。何せ、彼女は相手の声を自分の耳で聞いてはいないのだ。彼女が“力”を持っていなかったら、おそらく“彼”の声を
聞くこともなかったに違いない。“力”と“力”で会話する。つまり相手も“ニュータイプ”ということだ。
 声を聞いてしばらくすると、彼女の前にバレーボール程度の大きさの光の球が現れた。それはティファの前までくると、
改めて彼女に呼び掛ける。人の形を成さない“人”に呼ばれ、ティファは驚きを覚えた。
「あなたは誰?」
 彼女の問いにその光の球が答える。彼の“名”を聞くと更なる驚きが彼女を襲い、そして納得させた。ああ、なるほど。
この人がブラッドマンやザイデルが言っていた人、“ファーストニュータイプ”と呼ばれる存在“D.O.M.E”なのだと。
D.O.M.Eは彼女に言った。
“月へ来てほしい“
「月へ?」
 彼女の聞き返す声に反応し、周りの空間が目のくらむような光に包まれる。光が消えると、彼女は巨大な岩の塊の前にいた。
直径が何kmになるかなど皆目見当もつかない。その岩の塊が月だということを理解するまで少し時間が必要だった。
それが月だと理解する決め手になったのは月のほぼ中央に見えたある施設だ。実際に見たことは一度もない。しかし、彼女は
その施設と密接な関係を持っている。ガロードと出会って間もないころに一度だけアクセスした場所、すべての始まりの場所であり、
答えを内包するゴール。
 マイクロウェーブ送電施設、それがその場所の名前だった。
 彼女が目を覚ますと、一同は安心したように大きく息を吐いた。
そこはバルチャー連合に間借りしているフリーデンクルーに割り当てられた医務室で、彼女の寝かされているベッドの周りにはガロードや
ジャミル、テクスといったいつもの面々が顔をそろえている。ガロードにいたっては彼女のことをよほど心配していたらしく、眼尻には涙が見えた。
ガロードったら、と呆れ3割喜び7割で彼女は彼の心配する声にこたえると、視線をジャミルに向けた。
「お願いがあります。」
「お願い?」
「私を、月へ連れて行ってください。」
「月へ?」
ティファは大きくうなずいた。

85 :
第百二十八話『“復活の白き箱舟”です』(中篇)
「なるほど、それでわたくし達に白羽の矢が立ったのですね。」
「無理を言っていることは重々承知している。しかし、我々はどうしても月へ行かなければならない。」
 ジャミルはバルチャー連合内で宇宙に上がることができると考えられる勢力の代表と会談した。勢力の名は通称“クライン派”、
フリーデンのクルーを救出したアークエンジェルもこの会派に属している。
 代表者となっているラクス・クラインという18歳の少女は、まっすぐに彼のサングラスの奥に隠れた瞳を見つめる。その視線を
受けながらジャミルは静かに彼女の返答を待った。
「なぜわたくし達なのか、理由を聞かせていただけますか?」
「あなた方がルーファス殿に月での戦いをやめさせる為に部隊を派遣すべきと進言したことは既に聞いている。つまり、あなた方は
宇宙で行動可能なMS、戦艦の所在を知っている。…あるいは、持っているということになる。」
 MSは調整をさえすれば宇宙での行動も可能になるが、戦艦はそうはいかない。今は亡きフリーデンを宇宙で使ったならば、
おそらくすぐに艦内の空気が宇宙空間へ漏れだしクルー全員が窒息するか、推進力を持たないために立往生をするに違いない。
 15年前に宇宙に上がった経験のあるジャミルはそれを知っていた。そして、窓の外に見えるアークエンジェルがその諸々の問題を
すべてクリアしていることも。
「確かにアークエンジェルは宇宙でも行動可能です。しかし…。」
「私はかつてニュータイプと呼ばれた。」
 口ごもるラクスの次の言葉を予想してか、ジャミルは彼女の言葉を遮った。彼女の言いたいことは容易に予想がつく。
そして、それは彼も賛成する事柄であった。
「私が当時垣間見た未来には、戦争などなかった。そして前大戦の体験者としても、今の状況を見逃すわけにはいかない。」
「…協力していただけるのですね?」
「それはお互い様だ。」
「わかりました。ではさっそくあなた方にやっていただきたいことがあるのですが。」
 ラクスは胸の前で両手を合わせ、今回ジャミル達の協力を得られたことを神に感謝するように目を閉じると、さっそく次の
段階の話を始めた。月での戦闘は避けられないことが間違いない以上、悠長に構えている時間はない。ジャミルもそのまま話を続ける。
「なんだ?」
「今アークエンジェルの整備主任であるマードックさんが地下の第6格納庫に置かれていた前大戦の“遺産”を整備中です。皆さんの
メカニックの手を貸していただければ、月へ行く日程が早まるのですが…。」
「それは構わない。後ほど部下を向かわせよう。」
「ありがとうございます。」
「それで、その“遺産”というのは一体何なのですか?」
 後ろで控えていたサラにラクスは二コリとほほ笑むと、右の人差し指を立てて口の前に持って行った。
「今回の作戦はルーファスさんには内緒ですよ。」
「代表に報告しなくていいのか? この基地の遺産なのだろう?」
「報告したら止められますから。ちなみにマードックさん達が現在進行中の作戦名は、“復活の白き箱舟”です。」
「箱舟?」
「ちょっと気取った言い方ですけどね。要は汎用戦艦の奪取です。」
ラクスはジャミル達に作戦の内容を、声をひそめて話し始めた。

86 :
第百二十八話『“復活の白き箱舟”です』(後篇)
 ジャミルとラクスの会談から4日が過ぎた。正確には会談終了から3日と13時間、現在時刻は午前4時という時間である。
周りは夜の闇に包まれており、動き回るものはまばらな人間など時刻だ。
だがそんな時間でありながら活動している面々がいた。ろくに手入れされていないぼさぼさの中年男と野球帽を反対向きに
かぶった少年、そのほかにも多く人間が音をたてないようにこそこそと作業を行っている。
「戦艦の大気圏脱出用ブースターの準備はこれでOKだ。あとは電装系の最終チェックと、MSの搬入だな。」
「ありがとう。あとは自分たちでできるから、あんたらは自分の艦に戻りなよ。」
「おう。しかし、お前は大した奴だな。」
「見た目は子供でも、腕とアイデアは一流だぜ?」
「ハハ、違いない。」
 マードックはキッドのセリフに思わず笑みが漏れた。相手は13歳の彼からすると甥っ子ぐらいの年しかないのに腕は彼と同等、
いやそれ以上かもしれない。自分も負けてられないと新たに気合を入れなおし、マードックは自分の艦へと走って行った。
「さて、こっちも急いでMS積み込むぞ!」
『ウィースっ!!』
ロココやナインなど、キッドが従えるメカマン軍団が小さいながらも力強い返事をする。出発は夜明け、残り時間が少ないからと言って
焦ることもなく、彼らは仕事をこなしていった。
 一方その頃、アークエンジェルとエターナルも着々と発進準備を進めていた。ジャンクパーツからでっち上げた即席のブースターの
確認作業を行うブリッジではそれぞれ今回発進する艦同士を通信で逐一情報の交換を行う。
「エターナルはあと1時間半ほどで準備が終わります。」
『アークエンジェルも1時間かからない程度には。』
『我々はあと2時間はかかる。』
「でしたら、先陣はマリューさん達でお願いいたします。」
『わかりました。』
『了解した。しかし、本当にいいのか? 勝手に戦艦を持ち出して。』
「ルーファスさんはわたくし達に言いました。」
 メインスクリーンに映るジャミルとマリューを前に、艦長席に座るラクスはクスリと笑う。全く問題ないと言いたげな表情にジャミルもマリューも閉口した。
「君たちの作戦は受け入れることはできない。そして、君たちが勝手に行動するのであれば、我々もそれを止めないと。」
『つまり、最初から彼は黙認するつもりだったと?』
「あの方も心の中では戦争を止めたかったのかもしれません。しかし、今の立場があるから自分で動くことができなかった。」
 ルーファスはラクス達に今の北アメリカ大陸の状況を教える際に本当に熱く語っていた。彼の平和を思う気持ちにウソがあるとは思えない。
しかし、組織の長である彼が動けばそれは組織で動くことでなり、バルチャー連合が動けば当然新連邦も動きを見せる。そんなリスクがありすぎる策をとるよりも、
まずは現状を維持することを彼は選んだにすぎないのだ。
 そしてラクスもその選択を否定はしない。
『本人にその真意を聞く時間は、残されていないようね…。』
『もし仮にそうであれば、我々はこの作戦を何としても成功させねばならない。ルーファス殿の思いを我々は託されたも同然だ。』
「そうですわね。行きましょう、戦争によって互いに傷つけあい、未来を閉ざさないために。」
 東の空が朝焼けに染まり、山の峰から白い太陽がようやく顔を見せ始めたころ、3隻の戦艦が宇宙へ向けて発進した。1隻目は大天使を表す“アークエンジェル”、
2隻目は永遠の平和という願いを込められた“エターナル”、そして最後の3隻目は答えを求めてさすらう自由の箱舟“フリーデン”であった。

87 :
乙!

88 :
新作キター

89 :
保守入ります!!

90 :
GX氏乙。
ついでに業務連絡、GX-P管理人様へ
第百二十二話が収録されていません、至急ご確認を。

91 :
保守

92 :
>>90
> 375 名前: ◆AWGx990A9U 投稿日: 2011/01/26(水) 20:45:54
> プロバが規制くらってるのでこちらで
>
> 風景画スレの90さんご指摘ありがとうございました
勝手にコピペったけどまずかったかしら

93 :
最近まともな感想ってないのか…?
まぁ作者の描写にケチ付けるとかいう話じゃなくて
具体的にどこが良かったくらいは書いてもいいんじゃないかと…

94 :
誰がどう言おうと、もう少しでこの物語も終わりです…。
長かったなぁ… 感傷に浸るのは後にしよう
第百二十九話『真実はあるのだろうか…?』(前編)
「総力を挙げて、ゆがんだオールドタイプ共に鉄槌を下せ!!」
「ニュータイプ主義者どもに、真の正義を知らしめるのだ!!」
ザイデルとブラッドマン、それぞれの総大将の掛け声の下、月面基地をめぐる戦いは幕を挙げた。15年まえにも同じように
それぞれの思いを胸に行われた“戦争”という行為。母なる地球にあれだけのダメージを与えても、15年という長い時間をかけても、
人は変わることができないのだろうか。
「戦火の中に、真実はあるのだろうか…?」
 ランスローの目には2人の総大将の大義よりも、目の前に広がる地獄のような光景のほうが胸に響いた。
 革命軍が来るよりも早く月面のマイクロウェーブ送電施設へたどりついたミネルバ一行は、上空で繰り広げられる戦いを静かに見守っていた。
「アビー、戦況は?」
「今はまだ拮抗しています。両軍のMS、戦艦の数はほぼ同数。ただ革命軍は荷粒子反応弾なども使用しているため、火力では革命軍が有利です。」
「そう…。」
タリアはアビーの言葉にサテリコンの基地を破壊された時の光景が思い出された。
 と同時に疑問が浮かぶ。サテリコンの当時の目的はダリア作戦の阻止であった。なら彼らの最終目標は一体何だったのか。
 現ザイデル政権の打倒か、自らの独立か。彼女の知る限り、彼らはそんなことを考えるような人たちではない。となれば考えられるものは一つしかない。
“戦争のない未来”を作ること。それが戦争を体験し、つらい思いをしてきた彼らの切なる願いだ。
「彼らの思いは、天に届くのかしら…。」
 戦争で消えていく命、それを彼女は知っている。ならば2人の指導者のために多くの人たちが本当に戦う必要があるのだろうか。タリアの胸中には
ザイデルとブラッドマンに対する強い憤りがこみ上げてきていた。
「しかし、我々はこれからどうすれば…?」
「アーサーそんな声を出さない。士気が下がるわ。」
「す、すいません。」
「…基地の防衛システムが先日革命軍に対して作動した以上、ここは今のところ安全と判断します。今は、上空の戦いを静観しましょう。」
 アーサー同様、今後の見通しが立たない現状にタリアも不安な気持ちはある。だが今はまだ動くべき時ではない。勝負の時までのあとわずかな時間を
彼らはじっと待つのだった。

95 :
第百二十九話『真実はあるのだろうか…?』(中編)
 ビームスパイクがクラウダの強固な胴体をとらえる。だがスパイク自体の持つ推力ではクラウダの幾重にも重ねられた装甲を
貫くことはできない。
「ならば!」
レジェンドは胴体に打ち込まれた楔の尻を蹴り上げ、無理やり貫かせた。
 これで4機。革命軍の新型は動きがよく、また防御力も高い。だが武装はライフルとビームカッターしか持っていないため、
ソリドゥス・フルゴールを持つレジェンドを相手にするには役不足だった。
『良い動きだ、レイ少尉。』
「は、ありがとうございます。」
『私とオルバは先行する。君は周囲の敵の掃討を頼む。』
「了解しました。」
 飛び去るヴァサーゴとアシュタロンを見送ると、レイは周囲に展開する敵機の数と位置を確認する。前後、上下、左右すべてが
戦いに支配された世界。戦士としての自分がいるべき場所。
 かつての“自分”もこの場所で生き、そして死んでいった。彼は自分という存在に絶望し、世界に絶望し、人間に絶望していた。
自分は長く生きることは叶わない。おまけに自然の摂理とはかけ離れた方法でこの世に生を受け、誰からも愛されることなく、
誰からも望まれない人間だった。
 それがかつての“自分”だ。
 ドラグーンを展開して左上前方にいたジェニス舞台を一掃する。敵を倒すことに戸惑いもためらいもない。自分はかつての
“自分”とは違う。守りたいと思う者があり、その為に行動し、満足している。
 たとえその守りたいと思う対象から“ありがとう”の言葉をもらうことがなくても、その対象が別の何かを見ていたとしても、
彼はそれでよかった。
 不意に、頭に不快な感覚が走る。かつての“自分”がまだ生きていか頃、何度か感じたことのある感覚。かつての“自分”の物ではない。
もっと攻撃的で、強い敵意をはらんでいる。
「これは、何者だ?」
 それを感じた方向に目を向けると、戦場に一条の光が伸びているところを見つけた。戦場を縦断するその光、この場にいるすべての人間が
その先に目を向けたに違いない。知っているのだ。その光が何なのか、この後何が起こるのか。
 光の先にガンダムダブルエックスを見つけ、傍らにアークエンジェルとエターナルの反応を確認したことは言うまでもなかった。
「ムラサメ隊はアスハの譲ちゃんの援護を! 俺は先行する!」
『一佐はどちらへ?』
「ああ、ちょっと知り合いに挨拶してくる!」
 そう言ってネオは黄色く塗装されたムラサメを新連邦軍が展開する宙域へと向けた。目的は一つ、どうしても確認したいことがあったからだ。
 ダブルエックスから転送してもらったデータのおかげで、革命軍のMSのデータも新連邦軍のMSのデータもほぼ最新の状態だ。機体識別に
アンノウンの文字はない。
 しかしそのデータ上には無いものでネオは動いていた。頭に響く不快な感覚、ずいぶん前から感じていて、最近は全く感じていなかった感覚だ。
 この感覚は忘れない。忘れたくても忘れることのできないものであった。
「まさか、あのクソ野郎がこっちに…?」
 そんな不安が頭をよぎる。彼の知る限り、彼の言う“クソ野郎”は2年前に跡形もなく消えたはずである。その“クソ野郎”が生きているとなれば、
彼は確認せずにはいられなかった。
「…死にぞこないは、俺も同じだが…。」
 レーダーの機影よりも自分の感覚を優先して彼は機体を進める。どの道機体を着ただけではパイロットが誰なのかわかりはしない。よほどのエースか、
運命の糸が繋がっていない限りは。
「見つけた!」
 この不快感を発する相手は間違いなく眼前にいる灰色の機体に乗っている。この強まる不快感、間違いなくあの“クソ野郎”だ。
「ラウ・ル・クルーゼ!」

96 :
第百二十九話『真実はあるのだろうか…?』(後編)
「ラウ・ル・クルーゼ!」
 因縁の相手の名を叫びながらネオは操縦桿を操る。ムラサメはビームサーベルを右手に構え、灰色のドーム型バックパックの機体に
切りかかった。相手は左手のビームシールドを展開して攻撃を受け止めると、音声回線を開いてネオに叫んだ。
『何者だ!?』
「俺を忘れたか? お前の因縁の相手だぜクルーゼ!!」
『俺は、ラウじゃない!!』
 ビームシールドを使ってムラサメをはじき返すと、ライフルでけん制して距離をとってにらみ合った。不快感の発信源は奴だ。
彼も間違いないと確信した。
「ラウじゃない? じゃあおまえは誰なんだ!?」
『俺はレイ・ザ・バレル、ラウ同様、うつろな存在であることは間違いないが、俺はあの人とは違う!!』
「…おまえも親父のクローンかよ!」
 一定の距離を保ったまま両機は戦場を移動する。2人の戦いに割って入ってくる者はいない。二人だけの戦いがそこにはあった。
「貴様はフラガ家の人間か!」
『俺はネオ・ロアノーク、ムウ・ラ・フラガじゃねぇ!!』
「なら、もう何も言わん。俺はおまえを倒す。それだけだ。」
『やれるものならやってみな!!』
 2機のMSは互いをただの強敵として認識し、戦いを再開する。血のつながりも不幸な宿縁も今は関係ない。敵を倒す、彼らの間に
残った言葉は実にシンプルでわかりやすい物だった。
「ダブルエックスは月面基地へ向かいます!」
「機関最大、フリーデン、アークエンジェル、エターナルはこのまま月を目指します。」
「了解!!」
宇宙戦艦の操縦は今回が初めてで、しかも先日マニュアルを覚えたばかりのシンゴはとても初めてとは思えない見事な操艦で
フリーデンを月面へと向かわせる。
前も後ろも敵しかいない。ならば、前を向いて進むしかなかった。
『フリーデン、一度補給に戻る!』
 レオパルドのロアビィから通信が入る。先頭に入ってすでにかなりの時間が過ぎている。いくら機体がよくても、燃料や
弾薬がなければただのガラクタでしかない。
 サラはレオパルドが抜けた穴をパーラとカリスにカバーするように指示を出す。官庁不在で艦が沈んだなんて話をしなくて
済むようにするために彼女は必死だった。
「シンゴ、艦の損傷率が上がってる、操艦でかわせる分はできるだけかわして! MS隊は艦の前方に展開、後方の敵は
アークエンジェルとエターナルに任せます!」
「了解、荒っぽくいきますよ!」
『エアマスター先行する! パーラBパーツよこせ! 機動性とミサイルで敵を蹴散らす!!』
『わかった!』
 そして彼らも必死だった。戦場にいるものすべてが必死だった。
 15年前から人間は、この有り余るエネルギーを他者を倒すために使ってきた。生物として余裕があるから人間はおかしなことをする。
余裕がなければそんなことを考えず、ただ目の前のことに集中するのだ。
 しかし余裕があったからこそここまで進化できたともいえる。余裕がなければ周りを見渡すことができない。見渡して、自分と比べて、
やる気を出す者もいる。もちろん自分よりもすぐ他者を頼るものも、またそれをねたんだり、自分の力のなさに落胆したりする者もいるだろう。
 10人の人間が存在すれば10通りの考え方があるのだ。しかし彼らは他者の考えを認めようとせず、それを悪とし、亡き者にしようとする。
 “人類の革新”なんて言葉に彼らは今も踊らされている。自分の話で彼らはその鎖から解放されるのだろうか?
 その問いに答える者はいない。全ての始まりを知っていても未来はわからない。予知できても変わることはよくある話だ。
 D・O・M・Eはそうひとりつぶやいたのだった。

97 :
今回はランスローの台詞か、GJ
そして投下乙
二波乱ほど残ってそうですな、楽しみにしてやす

98 :
乙!

99 :
乙です。
にしても…アニメですら、まともに取り扱われず、スパロボでもRにしか出なかったGファルと合体したエアマスBをココで出してくれるとは、なんつー俺得。

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