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2013年05月創作発表17: 薔薇乙女の奇妙な冒険6 (271)
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薔薇乙女の奇妙な冒険6
- 1 :2013/02/18 〜 最終レス :2013/05/02
- 前スレ 薔薇乙女の奇妙な冒険5 http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1355319016/
まとめ http://slpy.blog65.fc2.com/?tag=%A5%ED%A1%BC%A5%BC%A5%F3%A5%E1%A5%A4%A5%C7%A5%F3
* *
* +
.ィ/~~~' 、
、_/ /  ̄`ヽ}
n@ i(从_从))n 「薔薇乙女の奇妙な冒険6スレ目〜!!」
(ヨヽ|| ^ω^ノ E)
+ Y iミ''介ミi Y
(( /,ノ入ヽゝ)) *
ζ ` '-tッァ-'´ ζ
___. ┌- 、,. -┐
く/',二二ヽ> く|_,.ヘ_|>
|l |ノノイハ)) ((从ヘリ从))、
|l |リ^ω^ノl ((ミi!^ω^ノミ 「いぇーいっ!」
ノl |(l_介」).| ⊂!{.∞}(つ
≦ノ`ヽノヘ≧ (ムi,,!ム)
ミく二二二〉ミ レし
- 2 :
- 主な登場人物
水銀燈
強い賢い美しいと三拍子揃った頼れる長女。しかし二言目には憎まれ口を叩く困ったちゃん。
金糸雀
賢い馬鹿。欲望には弱いがナイスな次女。
翠星石
桜田家の三馬鹿の一人。丁寧口調だが口は悪い。
蒼星石
薔薇乙女一の常識人。薀蓄大好き。マスター大好き。でも空気は読まない。
真紅
桜田家の三馬鹿の一人。薔薇乙女一の問題児。美しく、誇り高く、そしてフリーダム。
雛苺
桜田家の三馬鹿の一人。言葉をよく言い間違える。
雪華綺晶
姉達のものを何でも欲しがる癖がある末っ子。趣味は悉く陰湿。
ブサ綺晶
雪華綺晶子飼いの傀儡人形達。大きさや形にバリエーションがある。
薔薇水晶
槐が作り上げたパチモンメイデン。しかし単純な強さと性格の良さは本家以上。
- 3 :
- 主な登場人物
桜田ジュン
三馬鹿の面倒を見る苦労人。
桜田のり
三馬鹿に加えジュンのことも見守る真の苦労人。
柏葉巴
ジュンのことは嫌いではないが、もっと自信を持ってほしいと思っている。
柿崎めぐ
ジュンのことはどうでもいいが、からかうと面白いと思っている。
草笛みつ
金糸雀を溺愛しているが、あまりに金糸雀がアホの子の時はついていけないこともある。
結菱一葉
薔薇屋敷の主人。最近、お菓子作りが趣味。
結菱二葉
薔薇屋敷の幽霊。最近、お菓子を作っている兄の鼻をくすぐるのが趣味。
オディール・フォッセー
薔薇屋敷のメイド。薔薇屋敷で住み込みのメイドをしている。
鳥海皆人
桜田ジュンに憧れる同級生。だが傍目には彼が桜田ジュンに劣る要素は一つもない。
槐
自称ローゼンの弟子。鳥海皆人とは仲が良い。
ラプラスの魔
雪華綺晶とつるむ事もあるが、基本的には裏方でなんやかんやと企んでいる。
ボス猫
桜田家の近所一帯を支配するボス的存在な猫。雛苺の友達。
ビッグジュン
隣の世界のもう一人のジュン。たまに人手が足りない時に真紅にむりやり連れてこられる。
苗床の人達
雪華綺晶のエネルギー源として捕らえられ寝ている人達。苗床はわりと快適らしい。
- 4 :
- 用語
庭師連盟
nのフィールド内の夢の庭師たちの共同体。
東果重工
nのフィールド内のマッドな技術集団。私設武装組織まである。
ネクロポリタン美術館
nのフィールド内で美術品の幽霊を収集している集団。
渡し守の集い
nのフィールド内の水域を管理している集団。
メメントリオン
主に記憶の海に生息するクリオネ型の妖怪。食事として呪いを消化(浄化)、吸収する。
ヤドカリのように他の物体を鎧として身に纏う。鎧となる対象は船や学校などさまざま。
野薔薇
ローゼンメイデンを模して作られた出来損ない達。nのフィールドの各所に潜む。
製作者、制作年代はバラバラであるが、その多くが孤独と狂気に蝕まれている。
ロゼリオン
何らかの要因でメメントリオンと野薔薇が結びつき混ざりあった存在。
- 5 :
- 【桜田ジュンの成長『力の菜園』】
真紅「ふぅ……」
ジュン「物憂げな溜息なんてついてどうした真紅?」
真紅「ああ、ジュン。実はね……いえ、やっぱりいいわ」
ジュン「?」
真紅「気にしないでちょうだい」
ジュン「おいおいおいおいおいおいおい〜。なんだよ? 余計に気になるだろ?
悩み事なら相談に乗るぞ。ほら、このお兄さんに何でも言ってみなさい」
真紅「……欲しいモノがあるの」
ジュン「ふーん、高価なものか? 珍しいものか?」
真紅「私が欲しいモノ、それは……『自由』」
- 6 :
- ジュン「……」
真紅「何? イボイノシシがケツの穴にツララを突っ込まれたような顔をして?」
ジュン「あのな、お前ほどフリーダムな存在はそうはいないぞ」
真紅「ふ、私の自由度なんて微々たるもの。せいぜい座敷犬レベルよ」
ジュン「相当に自由じゃねぇか。それでも今の暮らしぶりに不満があるってのか」
真紅「まあ、言いかえればそういうことになってしまうわね」
ジュン「何が不満なんだよ」
真紅「……特に大きな不満はないけど、小さな不満も積もれば山となり
それらを書き溜めたノートがついに3冊目になりました」
ジュン「うぉい! そんなに溜め込む前に少しは言ってくれ!
大体、小さな不満ってのも具体的にどういう感じのだよ?」
真紅「例えば、私は毎日ウナギが食べたい」
ジュン「……」
真紅「けど、ジュンやのりはケチだから食べさせてくれない。
これ以上の不自由があって!? ジュン!?」
ジュン「……」
真紅「ジュン?」
ジュン「えーと、そういうことをノート3冊も書きまくってるの?」
真紅「ええ、そうよ」
ジュン「……」
真紅「わざわざ私に、隠していた不満を吐露させたのだから
今日ぐらいはウナギを食べさせてね、ジュン」
ジュン(うーん、殴りたい)
- 7 :
- 雛苺「真紅! 真紅ーーーー!」トテテテテ
真紅「むっ!? 雛苺? ようやく戻ってきたわね!」
ジュン「戻ってきた?」
真紅「槐のところにおつかいに行かせていたのよ。
私が注文していた品が用意できたと連絡があったから」
ジュン「自分で行けよ……」
雛苺「はぁはぁはぁ、真紅ぅ! ヒナ、無事にブツを運んできたのよー!」
真紅「大丈夫? 誰にも後を尾けられたりしていない? 私の言ったとおり
帰る途中で急にUターンしてみたり、同じ道路をぐるぐる回ってみたりした?」
雛苺「……う、うん! ちゃんとそうしたの」
ジュン(ちゃんと、やってないな……)
真紅「それで約束のブツは?」
雛苺「これよ!」ササッ
ジュン「……DVD? 何かの映画かアニメか」
真紅「間違いないようね。これこそ幻の探偵犬くんくん深夜版の一つ!」
ジュン「……深夜版?」
真紅「今ではとても放送できないような内容や企画が盛りだくさん。
くんくんフリークの間では、もはや黒歴史とすら化している代物よ」
ジュン「そんなのがあっただなんて聞いたことないな」
雛苺「でもでも槐せんせーと薔薇水晶が、そう言っていたの!」
真紅「これを見ずして、真のくんくんファンは名乗れないわ」
ジュン「そこまで言われると気になるな……」
雛苺「ヒナもー、ヒナも見るのーー!!」
真紅「ダメよ、ジュンと雛苺にはまだ早い」
雛苺「えええっ!? おつかいにまで行ったのにー!」
ジュン「なんだよ、一人占めするなよ」
真紅「二人のためを思って言ってるのに。ならば仕方がない、後悔しても知らないわよ」
ジュン「勿体ぶるな。後悔するわけないだろ」
雛苺「そうよ!」
真紅「その言葉、忘れないことね。それじゃDVDを再生するわ」
- 8 :
- TV『♪チャラチャ〜〜 ♪チャラチャラララ〜〜(OP音楽)』
雛苺「始まったわ!」
ジュン「チープな音楽だな」
真紅「これこそ深夜版の醍醐味よ……」
TV『くんくん探偵のッ!! ホモ野獣から逃げきったら10万円!!』ドジャーン
ジュン「えっ!?」
雛苺「ほもやじゅー?」
真紅「……」ドキドキ
TV『探偵事務所が経営難に陥ったくんくん探偵は、背に腹はかえられず……』
ジュン「お、おい真紅! これっ!?」
真紅「しっ! ジュン!! 今は『見る』ことだけに……
いえ! 『観る』ことだけに集中しなさい!!」
ジュン「!?」
雛苺「わくわく」
- 9 :
- §一時間後
TV『それじゃあ、みんな来週も! よろし〜くんくんっ!!』
ジュン「……」
雛苺「わぁい! くんくんは深夜版でもかっこよかったのよー!」
真紅「ええ、素敵だわ……くんくん」
ジュン「……」
真紅「ちょっと、ジュン! 貴方にも特別にDVDを
見せたのだから、何か感想を言いなさいよ!」
ジュン「え、ああ、うん……。すごく良かった。かなり大感動」
真紅「どんなところが?」
ジュン「最後までホモ野獣から逃げきって終わったところとか」
雛苺「うぃ! くんくんが10万円もらえてよかったのよ!」
真紅「そうね。槐に頼み込んで手配してもらっただけはあった」
ジュン(こりゃ色んな意味で黒歴史になるわ)
- 10 :
- 翠星石「真紅! 真紅ーーー!」スタタタタ
ジュン「うん? 今度は翠星石か?」
真紅「あら、翠星石? 蒼星石のところに遊びに行っていたのかと思ってた。
くんくん探偵はもう先に見ちゃったわよ」
雛苺「うぃ! くんくん探偵カッコよかったのよ!
落ち葉の中に隠れてたんだけどお尻だけ出てて
ほもやじゅーにそれが見つかって迫られた時に……」
翠星石「おおーっと! ネタバレはよすですよチビ苺!!
翠星石だって後から見るんですから! それよりも!」
ジュン「それよりも?」
翠星石「翠星石の畑の作物が、ついに収穫時ですぅ!」
真紅「なんですって?」
ジュン「え? 翠星石の畑って……? 庭の隅に作ったアレか?」
翠星石「他に何があると言うのですか?」
ジュン「だってあそこは、もうほったらかしすぎて雑草生え放題で
グッチャグッチャの状態じゃあ……」
翠星石「あのですねぇ、翠星石は世話をしていなかったのではないです。
敢えて手を入れずにいただけなのですぅ」
真紅「そうよジュン。私も最近になって知ったのだけど
荒れ果てさせていたのは、わざとだそうよ」
ジュン「?」
翠星石「論より証拠、ま、とくと見るがいいでーす」
- 11 :
- §桜田家の庭の隅・翠星石の菜園
ジュン「うーん、やはりごちゃごちゃしとる。背の高いススキみたいな
雑草ばかりじゃないか。何が収穫期なんだよ、何が」
雛苺「ヒナよりも背が高い草なのよね」
真紅「見た目で判断してはいけなくてよジュン、雛苺」
翠星石「真紅の言うとおりでーす。ま、ちょっとそこで見ているですよ」ズボッ
ジュン「ん? 雑草の中に手を突っ込んで何を?」
翠星石「あれ? 確かこの辺りにさっきは……」ゴソゴソ
真紅「……」
翠星石「お! 掴んだです! あったですよ!」ポキッ
雛苺「ああ! 翠星石の手にキュウリが握られているわ!
マジックなのー! ミラクルなのよー!!」
ジュン「なんだと!? 雑草しかない、この小さな家庭菜園にキュウリが!?
nのフィールドに繋がっている四次元畑だとでも言うのか!?」
翠星石「い〜んや! これは正真正銘ただのキュウリです。
薔薇乙女関連の不思議パワーなんぞ何も使ってないです」
真紅「ええ、これは現実の自然のキュウリね」
ジュン「本当かよ」
翠星石「疑うのも無理はねーですが、これは自然農法というやり方ですぅ」
ジュン「しぜん……」
雛苺「のーほー?」
翠星石「基本的な作業としては最初に苗や種をまくだけ。あとは自然の
成り行きに任せるという、なんともナチュラルな農法なんですよ。
雑草で隠れているですがキュウリがこの奥に生えているです」
ジュン「ナチュラルと言うか、アバウトと言うか」
雛苺「ワイルドなのー!」
真紅「私も最初に翠星石から説明を聞いた時には驚いたものよ」
雛苺「肥料もお水もあげないのにキュウリができるの?」
翠星石「肥料なら、ホレ、雑草が枯れたりしたのが勝手に肥料になるですし
お水は何度か雨が降ればそれで充分ですう」
ジュン「そんなのでマジにキュウリができたら
世の農家さんは馬鹿みたいじゃないか」
翠星石「ま、この方法は商業ベースにはなかなか応用しづらいですね。
なんてったってローコストローリターンですから」
真紅「自然任せな分、収穫量はとても少ないそうよジュン」
- 12 :
- ジュン「そうなのか、しかしそれじゃあ味も悪いんじゃ?」
翠星石「まあ、そういうことは食ってみてから言えです」ズイッ
ジュン「わ、分かったよ……て、イテテ! 随分トゲトゲしてるな、このキュウリ」
翠星石「それがキュウリ本来の姿です。ほれ、早く食え、さっさと食えです」
雛苺「ヒナも! ヒナもー!」
翠星石「はいはい。もう一本取ってやるから、ちょっと待ってろですチビ苺」
雛苺「わぁい!」
ジュン「うおっ!? なんだこれ、味が濃いな!?」バリッ
雛苺「エキスもたっぷりなのよー!」ポリポリ
翠星石「ふふふ、過酷な環境下で『俺、頑張んねーとマジやべぇ!』と
思ったキュウリは栄養や水分を張り切って溜めこむのです。
まあ、キュウリ自体のサイズも小さくなってしまうですが」
真紅「商売としての農業にはとことん向かないわね」
翠星石「時間も無駄にかかるですし、失敗率も高いですからね。
長いことやって、翠星石もようやくここまでできるようになったです」
ジュン「うーん、驚いた。蒼星石からたまに
株分けしてもらったハーブを瞬殺させていたくせに」
翠星石「蒼星石のハーブも自然農法でいけるかと思ったのですが
既に生態サイクルができあがってる畑に
途中で入植させたのがまずかったですね。反省ですぅ」
雛苺「翠星石がちゃんと庭師をやっていただなんて
ヒナ、翠星石の事を見直したのよー!」
翠星石「おーほっほっほっほ! もっと見直せです!
尊敬しろです! 崇めろです! 今日という日を国民の祝日にしろですぅ!」
ジュン「いやはや、翠星石は翠星石で、ちゃんと考えてやっていたんだな」
真紅「ただ単に、できるだけ自分が楽なやり方を
追及している内にこうなったようにも思えるけど」
翠星石「そ、そんなことはねーですよ! 翠星石には翠星石の
やり方が、蒼星石には蒼星石のやり方があるのです!」
ジュン「いつも蒼星石とお揃いが好きな翠星石が、そういうことを言うとは……」
雛苺「うぃ! どういうキョンシーの変化なのよ?」
真紅「それを言うなら、心境の変化よ雛苺」
- 13 :
- 翠星石「蒼星石は……アリスゲームを通して、自分から
変化していくことを選んだのです。なのに翠星石だけが
変わらないことに固執していては、なんにもならないです」
真紅「……」
翠星石「やることは変わろうとも、私も進んでいく。
そうすれば同じ歩幅で蒼星石と歩くことができるです」
ジュン「翠星石……」
翠星石「それに蒼星石はちょっと過保護なところもあるですからね!
翠星石はビシバシとスパルタ乙女でいくですよ!」
真紅「蒼星石を過保護にしていたのは貴女だというのにね翠星石」
翠星石「そ、それは言ってくれるなです真紅。ともかく!
植物には自然本来の生きようとする力がある!
それを信じて見守るのが、翠星石の庭師道ですぅ!」
雛苺「すごいのー! かっこいいのよー翠星石!」
翠星石「ふ、惚れてもいいんですよ? チビ苺。
そして、蒼星石は自分の畑に『女教皇の菜園』だなんて気取った名前を
付けていたですが、あっちが『女教皇』なら、こっちは『力の菜園』ですぅ!」
雛苺「ちから?」
翠星石「自然の力、それをそのままに表現させるのが
翠星石のコンセプトです! 力こそパワーですよ!」
ジュン「うーむ、しかし、なんだってこんなに急に
自然農法だ、本来の生きる力だ、なんてのをやり始めた?」
翠星石「急にじゃねーですよ。昔からやっていたですってば」
真紅「でも何かキッカケと言うか、『これはいける』と思ったから
失敗続きでもここまでやってこれたんでしょ? それはどういう理由?」
翠星石「……」
雛苺「翠星石?」
ジュン「どうした? 急に黙り込んで」
- 14 :
- 翠星石(うーん、翠星石がここまでやってこれたのは
ジュンの心の樹が自らの力で、まとわりつく周りの草を
押しのけて成長していくのを傍で見て、実感したからですが)
ジュン「おーい? ほらほら、どうしたぁ? ゼンマイが切れたか?」
翠星石(……蒼星石はジュンのために周りの草を切ろうとしたけれど
翠星石はそれを止めたです。ジュンを信じていたから)
真紅「かなり考えこんでいるわね。私、そんなに難しい質問したかしら」
翠星石(しかし、それをそのまんま言えるほどの度胸が
まだ翠星石には備わってねーですぅ……)
ジュン「もしもーし!? 寝てんのか? おーい」
翠星石(我ながら、自分の思い切りの無さが恨めしいですねぇ)
ジュン「ノックしてもしも〜し」トントン
翠星石「がーっ!! 乙女の頭を気安く小突くなですチビ人間!!」
ジュン「起きてるじゃないか。で、答えはなんだよ」
翠星石「え?」
ジュン「『え?』じゃない。真紅の質問に対する、こ・た・え!」
翠星石「う、うるせーです! テメーらで勝手に想像しやがれですぅ!」
雛苺「急に怒って、どうしたのよ翠星石ぃ?」
- 15 :
- 真紅「話は変わるけど収穫期なのはキュウリだけ?
私がお願いしていた茶葉は?」
翠星石「お、そうでしたそうでした。真紅の茶葉も収穫期なのですよ」
ジュン「え? 茶葉までここで育てていたのか?」
翠星石「今度はnのフィールド由来ので、特殊なアッザム茶ですがね」
雛苺「アッサムティー?」
真紅「いいえアッザムよ」
ジュン「マ・クベやキシリア少将が乗ってた?」
真紅「名前は同じだけど、そっちじゃない」
翠星石「ちょーっと待ってろです真紅。キュウリのついでに、今とるですから」ガサゴソ
真紅「お願いね翠星石」
翠星石「よし、出来栄えはこんな感じですけど、真紅の目で最終チェックをしてくれです」サッ
真紅「ふむ、どれどれ?」
ジュン「うわ? なんだこの葉っぱ? 虫食いだらけで
変なブツブツまでできてるじゃないか」
雛苺「しぜんのーほーだと、虫さんもいっぱいいるのよね」
ジュン「失敗しやすいわけだ」
真紅「ふむ、申し分ないわ翠星石。これならいい紅茶ができそう」
翠星石「そうですか。では収穫を続けるでーす」ガサゴソ
ジュン「えええ!? 何言ってんだ真紅! そんな茶葉で?
虫が食べる葉っぱは農薬がついていないから
いいんだと言う人もいるけど、これはちょっとボロボロすぎる」
真紅「そうね」
ジュン「だろ? 変に膨らんだり曲がったりもしている
虫のせいで病気になってるんじゃないのか?」
真紅「だが、それがいい」
雛苺「うぃ?」
真紅「このアッザム茶は確かに害虫にあちこち食べられてしまっている」
翠星石「犯人は一般的な農業害虫であるヨコバイやアザミウマですね」
ジュン「それのどこがいいんだ?」
- 16 :
- 真紅「アッザム茶はこれらの虫からの食害を受けると
葉の中である物質が産生される。それが虫に対抗するためなのか
あるいは傷ついた体を治すためなのかはまだはっきりと分からない」
雛苺「う……ゆゆ……?」プスプス
ジュン「あまり難しいことは言うなよ。雛苺の頭から煙が出はじめたぞ」
真紅「そして、この物質こそがアッザム茶に特有の高貴な香りを産むの」
ジュン「へー。流石はnのフィールド、変わった植物がいるもんだ」
真紅「別にnのフィールドに限った話じゃあないわ」
雛苺「うみゅ?」
真紅「紅茶のシャンパンとも呼ばれるダージリン。
その特有のマスカテルフレーバーも茶葉が虫の食害を受けることで
生まれる。原理は今、私が説明したのと全く同じ」
ジュン「えええっ!? ダージリンって虫食いの茶葉からできていたのか!?」
真紅「虫食いじゃない茶葉からできているのもあるけどね。
しかし、それらはマスカテルフレーバーが無いことから
等級としては劣るものとされているのよ」
ジュン「虫食いの方が高級なのか……」
雛苺「何だかよく分からないけど、真紅は何でもよく知っているのよー!」
真紅「翠星石の言うような自然のまんまってのとは、また違うけど
虫食いだからといってそれを忌避するのはよくない。
虫食いには虫食いの、虫食いじゃないのには、またそれの良さがある」
ジュン「……真紅がまともなこと言っている。また雪が降らなければいいけど」
真紅「だからジュン。貴方もそう人生に悲観せず前向きに生きてちょうだい」
ジュン「ああ、……って! どういう意味だよ、こら」
真紅「貴方が思ったとおりの意味よ。この間だって
飲食店で支払いのお釣り受け取る時に手が触れたレジ係の娘が
目の前でアルコールスプレーで手指消毒始めたのを見たぐらいで
半日ほど寝込んでいたじゃない。どうせ、ただの衛生規則なのに」
ジュン(うーん、やっぱり殴りたい)
- 17 :
- 翠星石「ふー、やれやれ収穫終了ですぅ」ガサガサ
雛苺「もう終わりなの?」
ジュン「キュウリは10本もないし、茶葉もそれだけか?」
翠星石「家庭菜園は狭いですし、自然農法だとこんなモンです」
真紅「御苦労さま翠星石。以降の茶葉の処理は私がするわ」
翠星石「それじゃ、ここで茶葉は渡しておくですね真紅」
真紅「だんけしぇーん」
翠星石「こっちの獲れたてのキュウリは皆で味わうですぅ」
雛苺「わぁい! ヒナもっと食べたいと思ってたのよ!」
ジュン「あ、そうだハチミツかけてメロンの味になるかどうか
試してみようぜ! 以前から一度やってみたかったんだ!」
真紅「なッッ!?」
翠星石「ハチミツですとッ!?」
ジュン「え? な、なんだよ?」
翠星石「自然農法で得られた上等なキュウリにハチミツをブチ撒けるという発想……!」
真紅「汚らわしいッッッ!!」
ジュン「え? ええっ?」
真紅「消え失せいッッ!!」ドゴォ
ジュン「ぐはーっ!?」
雛苺「真紅の鬼ボディブローが、ジュンのみぞおちに入ったの!!」
ジュン「が……は……」ゲロゲロ
翠星石「やれやれ、ゲロ吐いて気絶したですか。
ちったあ成長したかと見直していたですのに」
真紅「いいえ翠星石。ジュンは確かに成長している」
翠星石「?」
- 18 :
- 真紅「今のパンチはかつて水銀燈の顔面に叩き込んだのと
遜色のない威力でジュンのどてっ腹にぶち込んだ」
雛苺「ふぉおお! かなりの本気でやったのよね真紅!?」
真紅「昔のジュンだったら体中の穴という穴から血と糞尿を
撒き散らして悶絶するほどのダメージを受けていたはず」
翠星石「おおお……」
真紅「けれども今のジュンは、それをゲロって倒れる程度で済んだ!
確実に心身ともに壮健かつ頑強に成長している証拠よ!!」
翠星石「そ、そいつぁスゲーですぅ!!」
ジュン「……」ぴくぴく
真紅「素晴らしいわジュン。この街に来て、貴方に会えて本当に良かったと思える」
雛苺「誰にでも自慢できるヒナ達のマスターなのーっ!」
翠星石「カッコいいですよ……ジュン!」
ジュン「……」ぐったり
雛苺「それじゃヒナは早速トモエに
ジュンがカッコよかったところをお話に行ってくるわ」スタタ
真紅「私は茶葉を掃除して乾燥させなくちゃ……」いそいそ
翠星石「そういうことならキュウリを今に食べるのはやめて
ボス猿に献上してくるです。夕食のサラダにしてもらうです」
- 19 :
- §真紅達がいなくなってから5分後
ジュン「……」しーん
金糸雀「ふっふっふ! 草の陰から隠密乙女の登場かしら!」ガササッ
ピチカート「!」ガサッ
金糸雀「……恐るべし桜田ジュン、恐るべし桜田家の薔薇乙女。
引きこもり坊やが真紅の拳に耐えられるほどのタフネスを得ていたとは。
そして、この荒れ果てた家庭菜園にそのような意味があったとは」
ピチカート「……」コクコク
金糸雀「さらにあれほどジュンを誉めちぎりながら、介抱もせずに放置とは」
ジュン「……」ぐったり
金糸雀「きっとあの三人はジュンのことを信頼しているのね。
この放置プレイはその信頼の強さの証。ジュンのを信じているからこそ放置ッ!」
ピチカート「!」
金糸雀「けーれーどっ! 最も恐るべきは翠星石達に
最初から最後までその存在を感じさせなかった……
隠密の極意を心得た、このカナかしら〜! オホホホホ」
ピチカート「!!」
金糸雀「え? なに? ピチカート?」
ピチカート「ッ!」
金糸雀「ッ!? お、オデコにナメクジがついているですってッ!?
きゃ、きゃーっ! きゃーきゃーっ!! と、取って! 取ってーーーーーぇ!!」
ピチカート「……」ブンブン
金糸雀「ひぃいいいい! た、助けてー! みっちゃーーーん!」ドタタタ
ジュン「ぐぇあ」ギュムッ←走り回る金糸雀に踏まれた
- 20 :
- §桜田家・リビング
翠星石「おいーっす真紅。キュウリはのりに『いかがわしく』上納してきたですぅ」
真紅「それを言うなら『うやうやしく』じゃなくて? 翠星石」
翠星石「どっちでも同じような意味ですよ。それはそうと
茶葉の細かいゴミとか埃を取る掃除を手伝うです」
真紅「あら、悪いわね。それじゃ、お願いするわ」
翠星石「へーい。ところで……」
真紅「何?」
翠星石「庭の草陰にずっといたカナチビは、なんだったんですかね?」
真紅「さあ? 出て来られると邪魔だから無視してたけど……」
§柏葉家
雛苺「それでねージュンはねー! ゲロゲロってなってね!
バターンと倒れたの! でも、すっごくカッコよかったのよ」
巴「そ、そうなんだ……」
桜田ジュンの成長『力の菜園』 終
- 21 :
- 乙
くんくん探偵幻になりすぎw
- 22 :
- 乙
紅い子と翠の子が何かかっこよくて前回の汚名返上かと思ったけどすぐに株は暴落するんだろうなw
- 23 :
- 乙
文字媒体だからわからないけど案外ジュンムキムキになってきてたりしてなw
- 24 :
- 1レス分だけでもカナがマジプリティ過ぎて生きるのが辛い
- 25 :
- 翠の子が乙女力を上げようと小細工を
- 26 :
- >>21-25
いつも感想ありがとうございます。
かっこよくて思いやりのあるのが本来の三馬鹿なんです。
あと前スレの最後を素敵なAAで埋めてくれた方にも感謝。
- 27 :
- 【桜田ジュンの家族計画】
真紅「ジュン、ちょっといい?」
ジュン「ん?」
真紅「そのパソコンで……通販で調べてもらいたいものがあるの」
ジュン「欲しいものでもあるのか? ダメだぞ、あまり高いものは」
真紅「いいから、とにかく探しなさい」
ジュン「はいはい。で、何を調べるんだ?」
真紅「私が黒と言えば黒くなる白い紙よ」
ジュン「はぁ?」
真紅「私が黒と言えば黒くなる。それはつまり絶対的権力の象徴……」
ジュン「えぇと、色が変わる紙ってことでいいのかな?
それだったらいろいろあるぞ。温度で変わるのとか。
水に入れると絵が浮かんでくるようなやつまで」
真紅「ちょっとジュン、私の言葉をちゃんと聞いていたの?」
ジュン「へ?」
- 28 :
- 真紅「耳くそ詰まってるようなら、耳掃除してあげましょうか?
今なら超絶美少女真紅ちゃんの膝枕つき」
ジュン「遠慮する。お前らって耳掃除に電動ドリル使うじゃねーか」
真紅「いいじゃない、耳の穴も広がって便利なのよアレ」
ジュン「人間はもれなく血が出るの」
真紅「ああ、そう。とにかく私が欲しいのは、私の声で色が変わる紙よ」
ジュン「音声認識する紙は流石にない。声を発した時の吐息の温かさで
なんとか色を変えるように仕向けるってのはどうだ?」
真紅「なんで、そんなロシアの自称超能力者みたいな真似をしなくちゃならないの」
ジュン「じゃあ、あきらめろ。真紅の要望通りのものはない」
真紅「何よ! 貴方の調べ方が足りないんじゃないの!?
もっと気合を入れて探しなさいよ! ほらっほらっ!!」カチカチッ
ジュン「あ、こら!? 勝手にマウスを握るな! そしてどさくさまぎれに
僕のフォルダ内でjpgで検索をかけようとするな!!」
真紅「ほほう、やましいものがあるようねジュン!
見つけた画像は全てメールに添付して適当な人に送ってやるわ!」
ジュン「やめんかい!」ドタバタ
真紅「やめないわ!」ドタバタ
翠星石「おおーい! いつまでも、じゃれあってるなですよ真紅にチビ人間。
こちとらチビ苺の耳掃除中なんですぅ。手元が狂ったらどうするですか」ギャリギャリ
雛苺「この電動ドリルの轟音と震動がドキドキするのよね」
真紅「いいからマウスを私によこしなさい……」グイッ
ジュン「こ、こら! そんなに引っ張ったら」
すぽーん
真紅「あ!」
ジュン「げっ! マウスが吹っ飛んだ! 危ない翠星石!!」
翠星石「へっ? あわわっ、マウスが手にぶつかったですぅ!?」ボコッ
雛苺「にょわわわわわわわっ!」ギャリギャリギャリギャリ
- 29 :
- ジュン「うわあああああ! 雛苺の耳で電動ドリルが踊ってるーーーーっ!」
真紅「あらジュン、詩人ね」
ジュン「感心しとる場合かーーーっ! 大惨事だろ!! おい、雛苺!?」
雛苺「うにゅにゅ、耳の穴がぐわんぐわんしてるのよ」スポッ
ジュン「へ、平気なのか?」
雛苺「うん、ちょっとえぐれたところはベリーベルに直してもらうの」
翠星石「やれやれ、人間だったら血と脳漿が飛び散るスプラッタでしたよ?」
ジュン「人間は電動ドリルを耳につっこまない」
真紅「そうなんだ」
ジュン「しっかしもう真紅が暴れたせいでマウス以外にもケーブルや
コードがぐちゃぐちゃじゃないか、整理整頓しないと」
真紅「ふ、それは私のせいではない。熱力学第二法則すなわちエントロピー増大の法則
要するに大宇宙の真理よ。そして整理整頓とはその真理に背く行為」
ジュン「はいはい」サッサッ
真紅「悪いことは言わない、真理に刃向かうようなまねはよしなさい。
腕や脚、いいえ下手すると体全部を持っていかれるわよ」
ジュン「何もしてなくとも、お前はさっき僕の鼓膜を持ってこうとしただろ」
真紅「いいえ。ツチ、キヌタ、アブミ、耳の三連星をいただくつもりだったわ」
ジュン「鼓膜は再生するけど、耳小骨は取り返しがつかなくなるからやめて。
ほらほら、遊びたいなら翠星石や雛苺たちと一緒にな? な?」
真紅「……」すごすご
翠星石「おーおー、チビ人間に追われちまったですか真紅」
真紅「……」
雛苺「泣いちゃダメなのよ」
真紅「泣いてはいない。けれども少しまずいことになった」
翠星石「?」
- 30 :
- ジュン「ええと……、やっぱこれはこっちに……」
雛苺「みょわわ、ジュンがマルチタップのコンセントの並び順から見直しているのよ!」
真紅「ええ。ジュンは突然の風に吹かれて、整理整頓に夢中になっている。
このままでは部屋中の掃除&プチ模様替えが始まることは想像に難くない」
翠星石「そういうことですか。確かにやばい感じですね」
雛苺「年末もお掃除頑張ったのに、また働かされたりするのは嫌なのよ……」
真紅「よし、ジュンがその気になる前に逃げましょう」
雛苺「うぃ」
翠星石「翠星石も全面的に賛成ですぅ、それでは抜き足」そろそろ
真紅「差し足……」こそこそ
雛苺「ちどり足……」フラフラ
真紅「ッ!? そこは忍び足の間違いよ雛苺!」
翠星石「そんな足取りじゃまともに進めな……ッ!?」
雛苺「いみゃあああああっ」ドンガラガッシャーン
ジュン「な、なんだなんだ!? どうした!?」
真紅「雛苺が部屋の棚に突っ込んでしまったのよ、ジュン!」
ジュン「何やってんだお前らは! こっちが整えているそばから散らかしやがって!」
翠星石「じ、事故ですぅ! 翠星石達は静かに退室しようと……」
雛苺「うにゅにゅにゅ。目が回っちゃったの」ピヨピヨ
ジュン「ああもう! そっちは自分達で責任もって片付けろよ!」
真紅「えぇ〜っ?」
ジュン「ええ〜っじゃない! 自分たちのケツぐらい自分で拭け」
翠星石「何を言ってるですかチビ人間。薔薇乙女はウンコしねーですぅ」
雛苺「ヒナ、ウンコしないの〜」
ジュン「ものの例えだよバカヤロウ」
- 31 :
- 真紅「やれやれだわ。仕方ない、倒れた棚を元通り起こして
こぼれ落ちたものを戻していきましょう」
雛苺「棚を起こすのは真紅にお願いね」
翠星石「ですね。時間巻き戻せば楽勝ですよ」
真紅「はいはい」ポォオオ
翠星石「この調子で散らばった玩具や本も時間巻き戻しで……」
ジュン「だぁ〜めぇ〜!」ヌッ
雛苺「うにゅっ!? ジュン?」
翠星石「な、何がダメだと言うのですか!? 直ればいいじゃないですか! 直れば!」
ジュン「散らばったものの半分以上はガラクタだ。
いい機会だから残すのと捨てるのを仕分けろ」
真紅「何を言うのよ! これらは全て私達の思い出という名の宝石達!」
翠星石「そうですそうです! どれ一つとして捨てていい物などないのです!」
雛苺「そうよ! ヒナたちの思い出を貧しくする権利はジュンにはないわ!」
ジュン「ああそうかい。それじゃあ、この変な形の石は何だ?」
真紅「それはムエカッチュアーが蹴り殺したオオアリクイから取れた胃石よ」
翠星石「大変に珍しい価値ある代物ですよ?
まあ、チビ人間の節穴じゃ分からないのも無理はないですが」
雛苺「ラプラスの魔が500円で売ってくれたの〜」
ジュン「なんで小さなアリが主食の動物が、胃石なんて持ってるんだよ」
翠星石「だから珍しいんですぅ」
ジュン「……じゃ、こっちの壊れたメガネは?」
真紅「まあ呆れた! 貴方がこの壊れたメガネのことを忘れるだなんて!」
ジュン「?」
- 32 :
- 真紅「そう、あれは私が水銀燈の姦計にはまり
鞄に閉じ込められたまま火にくべられた時のこと……」
ジュン「……」
真紅「貴方は火の中から私を救い出してくれた。
鞄の中から出られない私を力ずくで取り出すために
火傷を負うのも、メガネが熱で割れることも意に介さず……」
ジュン「そんな碇ゲンドウのような武勇伝を勝手に捏造するな」
真紅「とぼけないで! 貴方の手には今もまだ名誉の火傷がっ!」
ジュン「ねぇよ、ホラ!」つる〜ん
雛苺「つるつるでキレイなおててなのよねジュン」
翠星石「男にしとくにゃモッタイねーです。吉良吉彰ならRモンですね」
真紅「……失礼、今のはもう一人のジュンの話だった」
ジュン「あいつ、メガネしてないだろ」
真紅「ビッグジュンじゃないわ。ホモジュンの世界での話よ」
ジュン「勝手に隣の世界まで増やすな。しかもかなり悪質そうな」
真紅「ジュンには隣の世界のことでも
私達や彼らにとってはかけがえのない一つの世界なのよ!」
雛苺「そのかけがえのない思い出を捨てろだなんてジュンはひどいのよ!」
翠星石「そうです! 鬼ですよ、このクズ、カス、ゴミ、ホモ、ザザムシ!」
ジュン「ううく……、分かったよ。もう捨てるなとは言わん。だが原状復帰はしてくれ」
翠星石「はーいですぅ」
真紅「あ、でも考えてみればこれだけは要らないわ。
ジュンの言うとおり処分してしまいましょう」
ジュン「ん?」
雛苺「うぃ! これもう音が鳴らないオルゴールなのよね」
翠星石「おっと、これは確かに完全なるゴミですね。さっさと捨てるですぅ」
ジュン「それ、僕がプレゼントしたヤツじゃあ……」
真紅「あらそう? でも壊れればゴミよ、ジャンクよ。もはや利用価値はない。
無駄にスペースを取られるだけ、でしょ? 整理整頓が大好きなジュン君」
ジュン「いやいやいや! だったらさっきの壊れたメガネは!?
と言うか直せるでしょ!? お得意の時間巻き戻しでさぁ!!」
真紅「今日はもう、赤玉出ました」
- 33 :
- ジュン「なら明日直せ」
真紅「明日は……なんて言うか、めんどくさいし」
翠星石「めんどくさいのならしょうがねーですね」
雛苺「うぃ、めんどくさいに勝てる人形は存在しないのよ」
ジュン「お前らってやつは……。もういい、ならそのオルゴールは返せ。僕が自分で直す」
翠星石「お? 直してどうするです? また翠星石達にくれるのですか?」
ジュン「いいや、柏葉にプレゼントする。あいつならお前達よりもモノを大事にしてくれそうだ」
真紅「へ〜」ニヤニヤ
ジュン「……なんだよ」
雛苺「どうせなら新品を買ってあげたほうがトモエは喜ぶのよ」
翠星石「まあまあ、そう言ってやるなですよチビ苺。根性なしのチビ人間は
これぐらいの理由がなけりゃ惚れた女にプレゼントもできねーのですぅ」
ジュン「お、おい! 何言ってやがる翠星石!」
真紅「そういうことなら善は急げとも言うし、トモエに電話しましょう」
ジュン「ッ!?」
翠星石「ですね。この程度のオルゴール、チビ人間なら鼻くそほじりながらでも直せるですよ」
雛苺「わぁい! それじゃヒナがトモエにモシモシするのー」
真紅「いいわよ。ただし、私の言うとおりに電話なさい」
雛苺「なんてぇ?」
真紅「今日、パパとママいないんだけど、家に来ない? ……とね」
雛苺「らじゃーなのよー」スタタタ
ジュン「ま、待て雛苺! と言うか何だ、その誘い方は! 変な漫画の見すぎじゃないのか!?」
真紅「別に間違っちゃいないでしょ、パパママ不在は。ついでに今はのりも不在」
翠星石「さ、真紅。翠星石達も空気を読んで家から出ていくですよ」
ジュン「やめんかい! ともかく雛苺を止めなきゃ……」
- 34 :
- 巴「こんにちは、桜田君」ゼェゼェ
雛苺「えへへ、ヒナはちゃんとトモエを呼んだのよ」
ジュン「ええええええええっーーーー!? 早すぎねー!?」
巴「大切な贈り物があると聞いて、走ってきたの」ハァハァ
翠星石「ぬううっ!? チャンスと見れば電光石火! 恐るべき通い妻精神ですぅ」
真紅「しかし好都合。ほら、ジュン! 早くオルゴールを」
ジュン「いや、まだ直せていない……」
翠星石「肝心な時に役に立たん男ですね」
巴「桜田君……?」
ジュン「あ、すまない柏葉。何も説明しなくて。実は、かくかくしかじか」
巴「そう、オルゴールを……」
ジュン「い、今さらだけどやっぱり悪いよな。一度真紅達にあげたものを
しかも壊れたものを修理したやつなんか」
巴「ううん、嬉しい。だってそれは桜田君が
手を加えた……半分は桜田君が作ったオルゴールになるってことでしょ?」
ジュン「う、いや、それはちょっと言いすぎじゃないかな……と」
翠星石「くんくん」クンカクンカ
巴「な、何? 翠星石ちゃん?」
翠星石「ちょっち汗くせーですよケンドーカシワバ」
雛苺「走ってきたからなのよね」
真紅「よければお風呂で汗を流したら? どうせジュンの修理待ちなんだし」
ジュン「!?」
真紅「こんなこともあろうかとお風呂を沸かしておいてよかった」
ジュン「いつの間に……」
雛苺「だったらヒナも! ヒナも久しぶりにトモエといっしょにお風呂に入るぅ!」
巴「ええと、それじゃあ、お言葉に甘えても? 桜田君?」
ジュン「……まあ、柏葉さえ良ければ」
真紅「安心なさいトモエ。ジュンには覗きをするような度胸は無い」
翠星石「仮にそうしようとしても、翠星石達がちゃんとここで
チビ人間がオルゴール修理に専念するよう見張っているですから」
巴「うふふ、それじゃお願いね。桜田君、真紅ちゃん、翠星石ちゃん。それじゃ雛苺、行こっか」
雛苺「わぁい!」
- 35 :
- §15分後・桜田ジュンの部屋
ジュン「ここをこうして……」←オルゴール修理中
翠星石「やい、チビ人間」
ジュン「あん? 今、集中しているんだから話しかけるなよ」
翠星石「覗きには行かねーのですか?」
ジュン「行かねーよ。と言うか、行かせないって自分達でも言ってただろうが」
真紅「あれは言葉の綾よ。今、ここで覗きに行かないような奴は男じゃない。
行くべきところは行くのが兵(つはもの)よ」
翠星石「翠星石達の事なら気にするなです。今から5分ほど目にゴミが入るですから」
真紅「ああっ!? 急に目にゴミが!? 何も見えない! 私は何も見えないわ!」
翠星石「翠星石もですぅ! 視界が完全なる闇に支配されているですよー」
ジュン「下手な小芝居はやめい。覗きなんかしないってんだろう」
翠星石「ぬうう! チビ人間はそれでも男ですか!? チンポついてんですか!?」
ジュン「伏字を使わんかい」
真紅「やれやれだわ。貴方がここまでタマナシヘナチンだったとは。
いいでしょう、ここは私が大サービスで
ジュンのためにトモエの生パンツを今から盗んでくる」
翠星石「おお、マスターのために自らの手を
汚すことも厭わないとは! 真紅はドールの鑑ですぅ」
ジュン「……おい!」
翠星石「あ、今の『手を汚す』ってのは決してケンドーカシワバの
パンツが汚いとか、そういうことじゃなくてですね……」
ジュン「そういう意味で怒鳴ってるんじゃあない!」
真紅「そうよ翠星石。ジュンは汚れている方が興奮す……」
ジュン「違うっつってんだろ。いい加減にしろよ二人とも。
大体、パンツが無くなったら柏葉すげぇ困っちゃうじゃないか」
真紅「代わりに、のりのパンツを置いてくるから大丈夫よ」
翠星石「知能犯ですね真紅。これならケンドーカシワバも
パンツが盗まれたことに気付かないですよ」
ジュン「んなわけないだろ」
- 36 :
- 巴「ありがとうね桜田君。いいお湯だったわ」スタスタ
雛苺「ヒナもトモエもキレイキレイになったのよー!」トコトコ
ジュン「あ、ああ。どういたしまして」ドキッ
翠星石「むむっ! もう出てきやがったですか!」
真紅「ちっ! ジュンがチンタラしてるから……」
ジュン「悪いんだけど、まだオルゴールは直ってなくて……」
巴「うん。いつまででも待つから気にしないで。
それに、これからヒナの髪の毛をセットしてあげなくちゃいけないし」
雛苺「トモエ! トモエ〜! 早くクルクルしてぇ〜」
巴「ええ雛苺。今すぐに、するからね」
真紅「ならば、この真紅ちゃんがウチワで
火照った柏葉巴の体を優しくあおいであげるわ」パタパタ
巴「そこまでしてもらわなくても大丈夫よ、真紅ちゃん」
真紅「いやいや、可愛い妹の髪の毛をセットしていただけるんですもの。これぐらいは当然」
雛苺「優しいのよね真紅」
ジュン「……どういう風の吹きまわしだよ、真紅は」
翠星石「こういう風の吹きまわしですぅ」パタパタ
ジュン「? 翠星石まで、そんな中途半端な位置でウチワをあおいでどうした?」
翠星石「真紅がトモエに当てた風をここで経由してチビ人間にまで送り届けているのですよ」
ジュン「……?」
翠星石「どうですぅ? 若い女子中学生の湯上りの風味がそこまで届いているですかぁ?
存分に嗅ぐがいいです。一種のアロマテラピーですよ、アロマ」
ジュン「そのオッサンじみた発想と行動を今すぐ止めろ。今すぐだ」
- 37 :
- 翠星石「ぬうう! 何故!? 何故、翠星石達の心ばかりの協力を拒み続けるのですか!?
次は風呂の残り湯でお茶を淹れてやろうと思っていたですのに!!」
ジュン「そんなアブノーマルな協力を頼んだ覚えはない!」
翠星石「何をのどかな。ノートにドレスの絵を描いたまま
うっかり提出するような人間がノーマルを気取るなですよ。
大丈夫です、チビ人間が変態なことはみんな知っているですから」
雛苺「トモエも知ってるのよねー! ジュンは変態さんなのよー」
巴「え? うん、そうね」
ジュン「肯定しないで! 柏葉!!」
真紅「……ジュン」
ジュン「何だよ? もう何もしなくていいからな真紅達は」
真紅「ええ、奥手のジュンに対して私達ができることはもう無いと悟った。
ただ、それでも私たちが最後にしてあげられるのは……」
ジュン「?」
真紅「私達がお邪魔になったらメガネを外してちょうだい。それを合図に
私達は部屋から出ていき、ここを貴方達二人っきりだけの空間に……」
ジュン「……」かちゃっ
真紅「早っ!? もう外すの!?」
ジュン「おう、これで出ていくんだろ? 行けよ! ほら、早く」
真紅「うぐぐ、仕方ない! 行くわよ翠星石、雛苺!」
翠星石「了解ですぅ」
雛苺「え〜っ!? ヒナはまだ髪の毛が……」
翠星石「そんなの翠星石がちゃんとやってやるですから。ほら」グイッ
巴「あっ、あと少しなのに」
真紅「トモエはジュンと一緒の時間を大切にしてあげてちょうだい」
巴「真紅ちゃん……?」
翠星石「チビ人間!」
ジュン「……なんだよ」
翠星石「ガンバ!」ぐっ
ジュン「何がだよ!!」
- 38 :
- §桜田家・一階・リビング
真紅「うぅ〜む、この真上がジュンの部屋のはず……」ペタペタ
雛苺「真紅、虫みたいに天井に張り付いてるの、すごいのよね。どうやってるの?」
翠星石「あれは驚異的な手の指の力と足の指の力で
天井や壁の僅かなでっぱりを掴んでいるのですぅ。つまり力技ですね」
真紅「ええい、何も聞こえないわ! 耳くそは電動ドリルで
綺麗に取り払って、私の聴力は研ぎ澄まされていると言うのに」ペタペタ
翠星石「ガラスのコップを使った聞き耳じゃあ
天井と床の厚さは流石にキツイですよ真紅」
真紅「ジュンとトモエの秘め事! 何としても盗聴して録音する!!
そうでなければ部屋を退出した意味がない!」
翠星石「それなら大丈夫です。チビ人間の部屋に『ひそひ草』を置いてきたですから」
雛苺「ひそひそう?」
翠星石「まあ、植物の携帯電話と思ってくれれば結構です。
二つあればそのひそひ草同士で通話可能。盗聴にも使えるという
何ともスンバらしいアイテムです。しかも見た目はただの草」
真紅「そんなものを貴女が持っていただなんて」
翠星石「持っていたというか、例の雛苺が激突した棚からこぼれ落ちたのを見て
持っていたことを思い出したんですがね。
で、こっちのがチビ人間の部屋の音声傍受用のひそひ草ですぅ」
雛苺「こ、これでジュンとトモエのラブラブトークが聞こえるのよね!」ドキドキ
真紅「むふぅ〜。想像するだけで鼻血が出てきたわ」ボタボタ
翠星石「落ち着けです真紅。と言うか鼻血とか出るんですか私達?」
真紅「聞きましょ。早いとこ聞きましょ」
翠星石「だから落ち着けですってば。通信をONにすると
こっちの音まで向こうに聞こえるですから、静かに……」
- 39 :
- §桜田家・階段
巴「ありがとう、桜田君。これ大事にするね」テクテク
ジュン「ああ、本当にごめんな。わざわざ呼び寄せておいて、こんな……」スタスタ
翠星石「ほああああっーーー!? もう部屋から出てきているですとー!?」ダバッ
真紅「えええっ!? どういうこと!?」ガバッ
ジュン「どういうこともクソも、お前らが邪魔しなけりゃオルゴールぐらい、すぐに直せたんだよ」
巴「ええ、サンタナが銃を分解するよりも滑らかな動きで修理してくれたわ桜田君」
翠星石「いやいやいや、もっと他にやるべきことがあるはずですよね!?」
ジュン「ねえよ」
巴「それじゃ雛苺。髪の毛のセットの続きをするから、こっちにおいで」
雛苺「わぁい」トテテ
翠星石「あ、こら! このクソドチビ……!」
- 40 :
- 真紅「くっ! な、なんてこと! 私達の楽しい家族計画が……」ガクッ
ジュン「なぁにが家族計画だ。いやらしいことばかり考えやがって」
翠星石「いやらしいとは何ですか! 翠星石達の遠大な計画は
所詮、短い時の流れしか生きられないチビ人間に理解できないだけですぅ」
ジュン「遠大な計画ぅ?」
真紅「ええ、マスター同士の間で子供を作らせて
その子供を理想的な下僕へと育て上げ、私達の新たなマスターとする」
翠星石「生まれてくる子供はローゼンメイデンのマスターとしての素質十分!
今までにないパワァが翠星石達にもたらされること必至!
受け継がれる血統なんてのもジョジョみたいでカッコEですぅ!」
ジュン「……」
真紅「白薔薇がマスター戦略として質より量を選んでいる現在。それに対抗するために
やや時間がかかってでも、量より質を高める方を私達は選んだというわけよ」
翠星石「翠星石と真紅とチビ苺の三体分ですから
子供も三人ぐらい作ってほしいと思っているです」
- 41 :
- 真紅「折角、あの手この手でジュンとトモエを二人っきりにしたのに
子供ができないだなんて……」
翠星石「うーん、相性が悪いんですかねぇ。
ポケモンでもペアの相性が悪いと卵は見つからないですし」
真紅「相手を変えてみる? 柿崎めぐやみっちゃんさんに」
翠星石「水銀燈とこの生き損ないは虚弱ですし
子供に体質が遺伝すると嫌ですから、みっちゃんさんにするです」
真紅「けれど、みっちゃんさんもメガネなのよねぇ。
親世代がダブルメガネだと子供も視力弱いわよ多分」
翠星石「この際、視力が弱くなる分は目を瞑るです」
ジュン「……」
真紅「そういうわけだからジュン、頑張って頂戴ね」
翠星石「何も心配するこたぁねーですよ。こう見えて翠星石達は
ダビスタやウィニングポストでちゃんと事前勉強したですから」
ジュン「……」
真紅「ジュン?」
ジュン「もはや、呆れすぎて何も言えねぇ」
雛苺「えっとねー、ヒナはねぇ!
トモエの子供や孫ともずっとずっと仲良くしていたいのよ〜」
巴「うふふ、そうね。そうなってくれると私も嬉しいわ」
桜田ジュンの家族計画(立案者;真紅) 『未完』
- 42 :
- 乙
黒くなる白い紙を使ってどんなロクでもないことをしたかったのか気になる
- 43 :
- ケンドーカシワバがかわいいけど段々変態が感染ってきたな
- 44 :
- >>42-43
感想サンクスです。巴も巴でどこかおかしい子なのです。
- 45 :
- 【薔薇乙女のうた『雛祭りは爆発だ』】
真紅「祭りじゃ祭りじゃーー!」
翠星石「どけどけい! どけどけーいですぅ!
チビ苺……じゃなかった、雛苺様のお通りですよ!!」
雛苺「うぃ、苦しゅうないのよ真紅、翠星石」のっしのし
ジュン「……たく、狭い部屋で何やってんだか」
真紅「ちょっとジュン。頭が高いわよ」
翠星石「今日が何の日だかちゃんと分かっているのですか?」
ジュン「こち亀の両さんの誕生日だな」
雛苺「ノン! それはそのとおりだけど違うのよ! 今日は雛祭り!
つまりヒナのためのお祭りの日なのよー!!」
真紅「ええ、この世に生きとし生けるもの全てが雛苺のために尽くす日だわ」
ジュン「あぁ、はいはい。そうでござんしたね」
- 46 :
- 真紅「なんだか反抗的な態度ね。雛祭りの日は雛苺に絶対服従。それが世界の選択よ」
ジュン「なんじゃいそれは。しかし、よく翠星石も雛苺に服従だなんて……」
翠星石「ふ、たまにはチビ苺を立ててやる日もあるのですよ。
さて雛苺様、喉が渇いてやいないですか?」
雛苺「そう言われれば……」
真紅「お腹も減ったりしてない雛苺?」
雛苺「そんな気もするのよね」
翠星石「おらおらチビ人間。祭りの主役様が飲み物と食べ物をご所望ですぅ!
きっちりちゃっかり光の速さでご奉仕しろです」
ジュン「なんで僕が!? 翠星石達がお菓子でも何でも用意してあげればいいだろ?」
真紅「ふ、私達は雛苺の命令を周囲に下知する御傍係よ」
ジュン「ッ!? 何かおかしいと思っていたが……
要は雛苺を祭り上げておいて自分たちは摂関的な美味しいポジションに!」
真紅「詮索はよしなさいジュン。それよりも早くお菓子とジュースを!」
翠星石「そうですそうです! それと翠星石達は毒見役という
重要な仕事もあるですから、ちゃんと3人分持って来いですよ」
ジュン「くっ……。しょうがないなぁもう」
- 47 :
- 雛苺「それで今日のお祭りの予定はぁ?」バクバク
翠星石「これより薔薇乙女関係者のもとを巡るです。
今のチビ人間のように雛苺様を一時楽しませるため
無茶ブリをしたり、何かをねだったりして遊ぶですぅ」ムシャムシャ
真紅「何という素晴らしきノープラン。想像するだけでも楽しいわ」モグモグ
ジュン「まぁた、ロクでもないことを企みやがって」
翠星石「チビ人間」
ジュン「あん?」
翠星石「今、献上された菓子が非常に美味にて雛苺様は
大変満足であられおあそばせますですよ」
ジュン「はいはい、そりゃどうも」
真紅「そこでジュンには特別にヒナ神輿の一端を担ぐ栄誉を与える」
ジュン「は?」
- 48 :
- 桜田家前
のり「あ、ジュン君もやっぱり担ぐのね! こっちはもう準備万端よ」
___
_/ \ \_
/___))___\
| |!!! !!!| | |!!! !!! !!!| |
| |;;;; ;;;;| | |;;;; ;;;; ;;;;| |
| |;;;; ;;;;| | |;;;; ;;;; ;;;;| |
ロ二二ロ二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二l
ジュン「なんじゃこれはーーーっ!?」
真紅「先にも言ったでしょ。MI☆KO☆SHIよ」
翠星石「この日のために真紅が一生懸命にDIYで拵えたのですぅ」
のり「すごいわよねー真紅ちゃん。こりゃ担ぎ甲斐あるわぁ」
ジュン「いやいやいやいや! なんで姉ちゃんは普通に担ぎ手を受け容れてるの!?」
のり「だって雛祭りだもの! ヒナちゃんを盛り上げていかなくちゃ!」
雛苺「うぃ。のりは雛祭りをよく分かってるの」
ジュン「雛祭りに御神輿持ち出した時点で、かなり間違った方向へ進んでいると思うんだが」
真紅「四の五の言わない! さて神輿の前は私と翠星石が担ぐから
後ろはメガネ姉弟が担ぎなさい」
翠星石「さ、すぐ出発するです。雛苺様、神輿にお乗りあそばせくださいませです」
雛苺「うぃ」スタッ
- 49 :
- §大通り
真紅「わっしょい!」
翠星石「わっしょい!」
のり「わっしょい!」
ジュン「……」
雛苺「うみゅ〜? ジュンだけ元気がないのよ?
ちゃんとみんなと一緒に『わっしょい』って言わなくちゃ」
ジュン「は、恥ずかしすぎるだろ! さっきからすれ違う人たちに『何だアレ?』って
冷たい目で見られ続けているんだぞ! 担いでいるだけもう限界……ウプッ」
翠星石「おいおいチビ人間。これしきの事でゲロ吐くなですよ」
真紅「そうよ。全校集会で晒し者にされたのに比べれば屁でもないでしょ?」
のり「ジュン君ファイト!」
ジュン「ええい、無責任な奴らめ……」
雛苺「よぉーし、それじゃあスピードアップをお願いしちゃうの!
早く第一の目的地であるトモエのお家へGO! なのよ!!」
翠星石「了解ですぅ。それ駆け足!」
真紅「えいほっ」
のり「えいほっ」
ジュン「……はぁ」
- 50 :
- §柏葉家前
真紅「よし到着ね」
ジュン「やっと神輿から解放される……」
翠星石「ちょっとチビ人間! 勝手に力を抜くなですよ!
これからちゃんと路肩に神輿を寄せるんですから! 真紅の指示に従えです」
ジュン「?」
真紅「再発進しやすいようにバックで駐車するわ。はい、メガネ二人はゆっくり後退」
ジュン「わ、分かったよ」
のり「はーい。ゆっくりね」
真紅「オーライ、オーライ。はい、ストップー!」
翠星石「おおお、道路と完全に平行に位置して止まったですよ!」
雛苺「真紅は神輿の前を担ぎながらなのに、よく後ろの状況が分かるのよね」
真紅「ふ、私の空間認識能力はニュータイプ並みよ。
ワゴンRの車庫入れもバックミラー確認だけで十分できる」
- 51 :
- §柏葉巴の部屋
巴「いらっしゃい雛苺、それに皆さんも」
雛苺「わぁい! トゥ・モ・エーーー!!」だきっ
のり「あらあらうふふ、本当にヒナちゃんはトモエちゃんのことが大好きね」
ジュン「そんなに柏葉が好きならこの家の子になればいいんだよ」
真紅「それはダメよ。雛苺は私の下僕なんだから」
雛苺「ねぇトモエ! 今日は雛祭りよ! ヒナの日よ!」
巴「そうね……」
翠星石「あああっ!? 大変ですぅ」ドタバタ
ジュン「翠星石?」
翠星石「こ、こっちを見てみろですよ!
超豪華な雛人形セットが飾られているですぅ」
雛苺「ッッ!?」
ジュン「お、昔から柏葉の家にあるやつだな。久しぶりだな、これ見るのも」
のり「うん、やっぱり立派よね」
巴「はい。母がそのまた母から受け継いできたものでして……」
雛苺「あやややや!? な、なんでなのよトモエ!?
ヒナというものがありながら『別のおひな様なんか』を飾っちゃうのはひどいの!!
トモエはヒナが要らないのよ!?」
巴「ヒナ……」
ジュン「はいはい落ち着け雛苺。このお雛様は柏葉が子供のころから
毎年毎年飾り続けてきたものだ。残念ながら、この場合
お前のほうが新参者ということになる」
雛苺「うぇ!?」
巴「桜田君?」
ジュン「雛苺が来る前からこのお雛様は柏葉のことを見守り続けてきたんだ。
柏葉だけじゃない、そのお母さんも、そのまたお母さんも。分かるな? 雛苺」
雛苺「うゆゆ」
- 52 :
- ジュン「同じ人形なら敬意を払え」
雛苺「そ、そうだわ。ヒナよりも、このおひな様の方が先輩なのよね。
なのにヒナ、わがままを言ってごめんなさいなのよ、トモエ」
巴「ううん、いいのよ雛苺。このお雛様はとっても大切なものだけど
それと同じくらいに雛苺も私にとって大切なお人形……」
雛苺「トモエ〜〜〜」うるうる
巴「それでね、雛苺をこの雛段に飾ってあげることはできないから
その代わりというわけじゃあないんだけど、これを作ってみたの」
のり「素敵! 雛段と同じ、朱色のちりめん座布団ね!!」
雛苺「ト、トモエ!!」
翠星石「ほっほーう、なるほどなるほど。
これでなら一人でもお雛様の気分が味わえるですね」
真紅「やるじゃない柏葉巴」
巴「さっそく座ってみて、ヒナ」
雛苺「うんっ!」
- 53 :
- のり「……ねえねえジュン君」ひそひそ
ジュン「ん?」
のり「さっきのヒナちゃんの説得、凄かったわよ!
ぐずりだしたたヒナちゃんには話を聞いてもらうだけでも難しいのに」
ジュン「別に、慣れだよ。雛苺だって何も知らないアホってわけじゃないんだ。
ちゃんと筋道を立てて説明すれば分かってくれるさ」
のり「……なんだかんだで、ヒナちゃんを一番分かってるのは
お姉ちゃんやトモエちゃんじゃなくて、ジュン君かもね」
ジュン「そ、そんなことあるわけないだろ」
- 54 :
- 雛苺「わぁい! ブカブカなのよ!!」
巴「ぶかぶか?」
雛苺「うみゃっ! 間違えたの! ブカブカじゃなくて、ムカムカでもなくて
スカスカ……じゃない、プカプカ……?」
真紅「ひょっとしてフカフカ?」
雛苺「そ、そうよ! フカフカなの! 今、言おうとしていたところなんだから、本当よトモエ!」
巴「うふふ、そうね……」
雛苺「ああんっ! その目はヒナのことを信じてない目なのよ!
やぁだ〜〜! トゥモエーーー! ヒナを信じてぇえええ」
巴「信じてるわよヒナ。そうだ、甘酒を持ってくるから、みんなで飲みましょう」
のり「あら、悪いわねトモエちゃん。気を遣ってもらっちゃって」
巴「いいえ、みんなで飲んだほうが美味しいですし。では、少しだけ待っててください」
- 55 :
- 真紅「柏葉巴が退室したわね」
翠星石「したですね」
真紅「よし! 家探しを始めるのだわだわ!」
ジュン「な!? 勝手に他人の部屋を荒らす気か!?」
真紅「このようなチャンスは二度となくてよジュン!
パンツの一つや二つ、戦利品として持ち帰りたいでしょ!?」
翠星石「チャンスは最大限に活かすのが翠星石達の主義ですぅ」
ジュン「何を言ってるんだお前たちは! 姉ちゃんからも止めるように言ってくれよ!」
のり「あの、ジュン君。女の子のパンツがどうしても欲しいのなら
お姉ちゃんに相談してね。よそ様のところから盗むよりは……私の」
ジュン「違うっつっとろーに! そ、そうだ! 雛苺! 雛苺は反対だろ!
大好きな柏葉のパンツが……」
雛苺「ジュ、ジュン……」
ジュン「?」
雛苺「トモエがもう戻ってきているのよ……」
ジュン「え?」クルッ
巴「……」ずお〜ん
ジュン「ゲッ!? 柏葉! いつから、そこに!?」
巴「桜田君が『大好きな柏葉のパンツが』って言ったところから」
ジュン「よりによって最悪のタイミングーーーー!?」
巴「……どうぞ皆さん。甘酒です」
のり「ありがとう巴ちゃん」
雛苺「わ、わぁい」
真紅「き、聞いてちょうだい柏葉巴!!」
巴「?」
翠星石「翠星石達はパンツ泥棒だなんてしたくなかったですぅ!!
でも、チビ人間が『お前らなら指紋つかないから窃盗には最適だろ?』と」
真紅「そう! 犯罪教唆よ! 桜田家に居候の身の私達としては肩身も狭く
このような不埒で下品極まりない命令にも、泣く泣く従うほか……」
ジュン「ッ!?」
巴「桜田君……?」
ジュン「違う違う違う! 違うって! そうだ! 姉ちゃんと雛苺なら
真紅達が嘘をついているってことを証言でき……」
- 56 :
- のり「あらら〜、なんだかフワフワしていい気持ち〜〜〜」
雛苺「お部屋がグルグル回っているのよ〜〜」ポワポワ
ジュン「この短時間ですでに出来上がってらっしゃるーー!?」
巴「……」じとっ
ジュン「違うって、いやほんとマジで!」
巴「うん。私、桜田君のこと信じてるから」じとっ
ジュン(くっ! 目は完全に座ってやがる)
真紅「まあまあジュン。出来心だったんだからしょうがないわよ。
ここは一つ、私がお酌してあげるから気を取り直しなさいな」トクトク
ジュン「出来心でもないっつーのに」
雛苺「あまままっまままっまままっま!! けはぁっ! きゃははは!」
翠星石「おうおう、チビ苺のヤツ笑い上戸ですねぇ」
巴「笑い上戸なんだ、これで……」
のり「ほらほら、トモエちゃんも飲んで飲んで!」
巴「は、はい。飲んでます、のりさん」
のり「やぁだもう! のりさんだなんて他人行儀じゃなくていいの!
お義姉さんと呼んでくれちゃっていいんだから!!」
ジュン「何言ってんだよ、そこの酔っ払い」
翠星石「チビ人間こそ早く飲めですよ。真紅の次は翠星石が注ぐんですから」
ジュン「いいよ、僕はそんなに甘酒好きじゃないし」
翠星石「なんですとー!? この翠星石の酒が飲めねーというのですか!!」
ジュン「うるっさいなぁ、もう……。分かった、飲むよ。飲む飲む」ゴクゴク
巴「どう? 桜田君、美味しい?」
ジュン「ん、結構イケるなこれ。思ったよりサッパリしているというか
あんまりアルコール臭くないと言うか、どこか懐かしい感じがすると言うか……」
翠星石「へいへい! 飲んだのならさっさと翠星石の盃を受けるですぅ」
ジュン「はいはい……」
真紅「……」グビグビ
ジュン「しかし、本当に飲みやすい。なんかもっとドロドロした感じじゃなかったか? 甘酒って」
巴「これ、酒粕を使ってない甘酒なのよ。だから、アルコールも入ってないし」
ジュン「え?」
真紅「やっぱり」グビグビ
- 57 :
- 翠星石「うはははははは! いーい気持ちですぅ! ほらチビ苺もじゃんじゃん飲めですぅ」
雛苺「うぃーーー! 一気飲みなのよーー!」
のり「きゃーっ! ヒナちゃんカッコいいー!」
ジュン「アルコール入ってないのに甘『酒』?」
真紅「ソフトドリンクみたいなものよ。ノンアルコール甘酒は昔からちゃんとあった。
それも、飲酒問題だとかが大きく取り上げられるよりも前からね」
巴「そのとおりよ真紅ちゃん。甘酒は健康飲料としても優れているの。
医療に使われる点滴と主要成分がほぼ同じだから『飲む点滴』とまで言われている」
ジュン「飲む点滴……」
真紅「ジュンが懐かしがるのも道理ね。
柿崎めぐに踏まれて入院していた時は点滴生活だったし」
雛苺「えへへー、次は翠星石の番よーー!」
翠星石「どんとこいです! 浴びるように飲んじゃるです」
のり「やっちゃえ! やっちゃえ! 翠星石ちゃーん!」
ジュン「ノンアルコールなのに何であの人たちは酔っぱらってんの?」
真紅「思い込み……ね」
ジュン「思い込みだけでよくもまあ、あそこまで」
真紅「世の中には思い込みでカタツムリになる人までいるから」
巴「ヘビーウェザーね」
- 58 :
- 真紅「さて、貴女達。いつまでもプラセボ酔っ払いしてないで帰るわよ」
雛苺「えええ〜、もう〜〜〜?」
真紅「いつまでも雛祭りをやっていると婚期が遅れると言われているのよ。
このまま柏葉巴の婚活を邪魔したいのならそれでもいいけど」
ジュン「おいおい、真紅……」
翠星石「ぬおっ!? そいつぁどえれぇハードラックですね。
チビ人間と通い妻の間にはとっとと三匹ぐらいガキを作ってもらわねば
将来の翠星石達がマスターいなくなっちまって路頭に迷うですぅ」
ジュン「まだ、そんなことを言ってんのか」
雛苺「うにゅにゅ、トモエが結婚できなくなっちゃったらヒナも困るのよ。
だからヒナも帰るわ。ありがとう、楽しかったのよトモエ〜」
巴「こっちこそ。またいつでも遊びに来てもいいのよ、ヒナ」
雛苺「うんっ!」
のり「ええ〜、お姉ちゃんはまだまだ大丈夫よぉ。
ジュン君が一人前になるまでは結婚しないんだからぁ〜っ!」
ジュン「酔った勢いとはいえ、結構重たいセリフを吐かないで」
- 59 :
- §柏葉家前
真紅「あああ〜〜〜〜っ!」
ジュン「あれ? 神輿が無くなってる?」
真紅「無い! 無いッ!! 無いィッ!!」
翠星石「♪ないないない 恋じゃない」フリフリフリ
のり「♪ないないない 愛じゃない」フリフリフリ
雛苺「♪ないないない デモ止まらない〜」フリフリ
ジュン「歌ってる場合じゃないだろ。しかも雛苺、デモはデモでもデモクラシーじゃないぞ」
真紅「み、神輿がなくなっているのだわ! 確かにここに置いておいたのに!!」
ジュン「……ひょっとして路駐でレッカー移動されたか?」
真紅「いいえ、神輿は車両扱いではないはず……でも」
翠星石「でも?」
真紅「担いで練り歩くためには事前にお役所とかに届ける必要があったかもしれない」
ジュン「マジかよ。こんな個人用の神輿ぐらい大目に見てくれてもいいだろうに」
真紅「ふ、あまりにも私の作った神輿がそれっぽいがゆえに起きた悲劇ね。
ああ、真紅ちゃんは自分の工作の才能が憎いのだわだわ!」
ジュン「好きなだけ言ってろ」
翠星石「でも、お役所仕事だったら、こういう移動された後には
張り紙でもされてるんじゃあねーですか」
のり「そう言えばそうねぇ」
雛苺「ただ単に盗まれただけじゃないのよ? 真紅」
真紅「ぬ、盗み!? なんという破廉恥な真似を! どこのどいつよ!
そんなことをする泥棒猫……ドロボーキャットは!!」
ジュン「柏葉のパンツを盗もうとしていたくせに……」
真紅「しかし、まあ盗まれたのであれば、それはそれで構わない」
翠星石「なぜです!?」
のり「まさか使い終わった後に捨てる手間が省けた……とか?」
真紅「馬鹿言わないで。使い終わっても再び材木にバラせば新たな工作ができるわよ」
雛苺「なら、何が構わないのよ?」
真紅「盗まれた時のために泥棒を懲らしめる仕掛けをしておいた」
ジュン「仕掛け?」
- 60 :
- §とある空き地
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ロ二二ロ二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二l
金糸雀「もらっちゃった! もらっちゃったかしら! 真紅の神輿をもらっちゃったかしら」
水銀燈「あんたねぇ、これはれっきとした窃盗よ」
金糸雀「今さら何を言うのかしら。泥棒は水銀燈の得意技じゃないかしら。
今回だってなんだかんだでカナと一緒に神輿強奪に手を貸してくれたじゃない」
水銀燈「そ、それは……」
金糸雀「分かってる分かってるかしら。カナだってちゃんとこの神輿を調べ終わったら
真紅に返すつもりよ。それなら泥棒にもならないでしょ?」
水銀燈「じゃあ、なんでさっき『もらっちゃった』とか言ってたのよ?」
金糸雀「水銀燈お姉ちゃんの真似」
水銀燈「……!」ザワッ
金糸雀「お、怒らないで! ほ、ほら早く真紅のDIYテクニックを解析しなくちゃ。
カナたちが生まれたあと、しばらく過ごしていた『始まりの部屋』……
あそこで一番お父様の作品を眺めていじくって勉強していたのは真紅」
水銀燈「……」
金糸雀「つまり真紅の作る物は姉妹の中で最もお父様の影響を受けていると言えるかしら。
思い返せば即席で屋台を作ったり(※1)、船を修理したり(※2)と真紅は工作が随分と上手よ」
※1 桜田ジュンの逃走『どきどき授業審判』 http://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-4483.html
※2 真紅と記憶の海の屠る稲妻 http://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-4644.html 参照
水銀燈「あんたが冬眠ごっこやったり、双子の庭師がおままごとやっている間に
あの子がそんな殊勝なことをしていたとはねぇ。確かに本はよく読んでいたようだけど」
金糸雀「まあ、あれは単に性格の違いとも言えるかしら。
でもアリスゲームだなんて宿命が待っているのであれば、カナだって勉強ぐらい……」
水銀燈「はいはい、勉強できない子がよくするいいわけねソレ」
金糸雀「そういう水銀燈だって特に何も積み上げてないニート生活だったかしら」
水銀燈「に、ニートとは何よ!!」
- 61 :
- 金糸雀「兎も角、素直に真紅に頭を下げて教えを乞うのはカナも水銀燈も嫌だから
こうして二人して犯罪行為に手を染めているのかしら。
手際よく、さっさと神輿からお父様の技術的なあれやこれやを掴みましょ」
水銀燈「あんたのその目論見どおりいけばいいんだけど。
既に真紅が知っていることを私達が盗まなくちゃならないとは、情けないわねぇ」
金糸雀「そうとも一概には言えないかしら水銀燈。情報ってのはだれが持つかで
その価値が変わるこもがあるのよ。例え、真紅が知っている技術でも
そこに隠されたお父様のメッセージを読み取れるのは水銀燈だけかもしれない」
水銀燈「おだてるのが上手ね」
金糸雀「あああっ! こ、これは!!」
水銀燈「っ? どうかした? 金糸雀?」
金糸雀「す、素晴らしい技術かしら。この神輿には釘がほとんど使われていない!」
水銀燈「はぁ?」
金糸雀「材木に凹凸を作り、それの組み合わせで強度を持たせてある。
釘を使わないことで材料費を節約し、また解体や組み換えもしやすい」
水銀燈「それがお父様の技術?」
金糸雀「かもしれない。けど、どちらかというとこれは日本古来の技術の影響が強いかしら」
水銀燈「お父様が日本人かもってこと? 面白いわねぇ。私達の名前もどことなく日本風だし」
金糸雀「それは短絡的に過ぎるわ、この神輿には妙に近代科学の技術も見られる。
真紅がこの時代で独自に習得した技術をも盛り込んでいるみたいね」
水銀燈「何よそれ。だったら結局この神輿から得るものはないってことじゃない」
金糸雀「もう、水銀燈は本当に短気かしら。そこを見極めるのが乙女の頭脳のみせどころよ」
水銀燈「……」
金糸雀「けど、釘を敢えて使わないようにしているのに
近代科学的なメカメカしい配線やコードがあるだなんてなんだかチグハグな神輿ね」
水銀燈「何か分かった? 金糸雀?」
金糸雀「だから水銀燈はせっかちすぎるかしら。……て、アレ?」
水銀燈「?」
- 62 :
- 金糸雀「怪しげな押しボタンを発見かしら!!」
水銀燈「なんですって!?」
金糸雀「はっ! そうか! そういうことだったのね!!」
水銀燈「何を勝手に納得してるのよ金糸雀!」
金糸雀「釘を使わず、再構築が容易な設計。そして一部にはメカっぽい構造と
謎の配線コード。これらの符号が示すものはただ一つ!」
水銀燈「……?」
金糸雀「ずばり! このボタンを押せば神輿は変形してロボットに! 人形になるのかしら!」
水銀燈「ええええっ!?」
金糸雀「なるほど。これこそがお父様の残した技術ね。やはり次世代アリスは可変型かしら」
水銀燈「可変型て……」
金糸雀「変形こそ男のロマン。やはりお父様もなんだかんだ言って男なのかしら。
アリスゲームだってバトル街道ど真んR」
水銀燈「と言うか、本当にボタン一つで神輿が人形に変形するわけ?」
金糸雀「ま、それは押せば分かることよ。カナの目に狂いはない。ポチッとな」
- 63 :
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´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´
- 64 :
- ジュン「な、なんだ!? 爆発!? 何かがどこかで爆発したぞ!」
真紅「あ、対泥棒用トラップの自爆ボタンが押されたようね」
のり「じ、自爆ボタンですってぇ!?」
真紅「ええ。盗んだ不届き者の興味を惹くようなデザインにしておいたの。
何も知らずに、それを押そうものなら……ドカン! というわけ」
翠星石「ちょっ! 冗談じゃねーですよ! ちょっとしたキノコ雲までできてるじゃねーですか!」
ジュン「あんな危ないものを担がせていたのかお前は!!」
真紅「大丈夫よ。『始まりの部屋』で習得した技術をもとに、さらには現代科学をも
ちょろっとかじった、この真紅様が設計したものだもの。ボタンさえ押さなければ安全」
雛苺「ほぉおおおおおお! そうだとしても体の震えが止まらないの。
ヒナ、アレの上ではしゃいでいたのよね……」
- 65 :
- ジュン「ドロボーは大丈夫なんだろうな?」
真紅「爆発は派手だけど殺傷力は無い。ま、少し黒焦げになる程度でしょ。
実のところの主目的は私の技術が流出することを防ぐことにある」
ジュン「あ、そう……」
雛苺「うにゅにゅ、でもね見方を変えれば大きなボンボリみたいで綺麗なのよね」
翠星石「♪明かりをつけましょボンボリに〜ってことですか」
真紅「そうね。雛祭りの歌詞どおりとも言える。優雅だわ」
のり「ものすごい火薬の匂いが立ち込めるボンボリだけどね……」
ジュン「♪明かりをつけましょ爆弾に〜って替え歌があるけど、そっちの方がピッタリだ」
- 66 :
- §爆心地
r──<⌒ ヽ
イ∠ュ.: : : :.、: : ヽ ̄i ̄ト、 す、水銀燈……生きてる?
{弋九: : : : : : ヽ: : }「 ̄`ヽ{
ケ二ア: : : : : : j :}: :ハー、 「
T]三{ : : : : : : /.:/ : ヽj
___rュ 乂 ]へヾ.: :__ノ 、 ノ
ヽr┘__ト、 }三f´ ̄ ∨!_
_ノ f´ ∨ f´ ,ィ^「 `lー 、
} /  ̄ --/`ヾノ ̄ ̄  ̄ TTヽ
_ノ / ,-┴---‐'ヽ_ {_ { | | \__
`Y { / | \ノ | | く
| !l / | | | __>
厶 ヽ┬‐'´ | ノ ノ | ヽ
 ̄ ̄ ト __//レ─┴、f⌒ト、
人_`ー──'二──イ ∨^!/⌒ヽ
|  ̄ ̄ ̄ r‐'′ ─、 \{:::{:::::::{
乂___ _>┬〈:::{::::::::{ `i:::::::::ヽ
| へ {─‐┴、ヽ|:::::::::ヽ 乂:::::::ノ
レ′ `ー′ `ヾ::::::::::::)
- 67 :
- r. rェ
,ィニ,ヽ:::.
rv _, -‐¬{人_ 入 `ト、.,__ ……なんとか
`7 ィ T:个〒'ドメ、\⌒
`´::ゝノ::.ハ::.∨::.:_{:.Y´::
_/:/ _〕::.に)::.:._):::
_/::.::./_/::./::.ヘヘ:く_::::
<( _{_,>イ::.::.::.::.ト、::ノ::.::.ヽ:\-ヘ
/::.::.:./::.::.::.::.::|了 ̄}::.::.::ヽノ::.::ゝ-、
∠ -‐ '7::.:_」L::.:/ r<_ハ::.:_儿::「 ̄ ̄`
/::.::.::T「 く、人__!ヽ}::.¨}「::ヘ:::. rュ
∠フ 厶イ´ ̄`ーi::千‐|::.ト√廴::.:ヘ:::.
l::.:|: |::.|::::::  ̄`
|::.l |::.|::: rゃ
(ーァ |'´:} 「ヽ!::
└ ' `-′ _rっ
薔薇乙女のうた『雛祭りは爆発だ』 終
- 68 :
- 乙
今までありそうでなかった爆発オチw
- 69 :
- 乙
以前似た理由で雛苺が泣いてたような…
あと神輿なのにサブが出てこないとか
- 70 :
- 今までの展開に最新話を絡めて伏線だった事にしてしまう能力
- 71 :
- 感想ありがとうございます。
>>68
真紅さんは料理でも爆弾でも作るものは大体黒焦げになります。
>>69
雛苺は話せば分かる子だけども、記憶力は良くないので
毎回説明してあげないと泣きます。
サブの存在は忘れてました。
>>70
蒼星石も工作が得意なのは始まりの部屋で学んだからということにしちゃいましょう。
今月は多忙のため、若干創作のペースが遅れます。申し訳ない。
- 72 :
- 乙
三月は忙しい時期だから気にすんな
つーか今までがハイペース過ぎたんだw多い時で週二更新だっけ?
とりあえず落ち着いたらまた書いてくれればいいよ
別に書くのは義務じゃないんだし忙し過ぎて体壊さないようにな
- 73 :
- 乙&保守
楽しみに待っているけど無理なさらずに
- 74 :
- >>72-73
心配してくれてダンケシェーン。
やる気も元気もあるけど、時間だけがないという状況です。
体調的には、このスレのことを考えている方が調子いいぐらい。
- 75 :
- 【翠星石は花粉症に憧れる】
ジュン「へーっくしょい!」
真紅「ハッチョン!」
雛苺「あっちゅむっ!」
翠星石「おやおやぁ? 三人して風邪ですか? ゲズントハイト(お大事に)ですぅ〜」
ジュン「違う。これは風邪じゃない。花粉症だな」ズズ
真紅「私も」グスグス
雛苺「ヒナもよ」グシグシ
翠星石「花粉症〜〜っ!? 肉体的にも精神的にも虚弱なチビ人間はまだしも
『薔薇』乙女が『花粉』症ですと!? 笑えねェ冗談です」
- 76 :
- 真紅「そんなこと言ったって……ヘップチ!!」
雛苺「くしゃみが止まらないのヨックシ!!」
ジュン「薬も飲んだのに全然おさまらない。目も耳の穴まで痒い……」シパシパ
真紅「もう我慢の限界だわ! 雛苺、あれをやるわよ!! 洗面器を持ってきて」
雛苺「うぃ! ヒナも今、そうしようと思っていたところなの!」スタタタ
ジュン「アレ?」
雛苺「持ってきたわ、真紅」トテテ
真紅「ダンケ。それじゃ翠星石、洗面器の中に
スィドリームの甘くてて冷えたお水を張ってちょうだい」
翠星石「ほぁ?」
真紅「いいから、早く」
翠星石「わ、分かったですよ。健やかに伸びやかにっとくら」ジョロジョロ
真紅「よし、まず私のからお願いするわ雛苺」
雛苺「うぃ! その後は交代で真紅がヒナのを洗ってね」
ジュン「?」
真紅「よっと」スポッ
ジュン「あ!? 自分の目玉をとりやがったコイツ!!」
真紅「はい、よろしくね雛苺。優しく洗ってちょうだい」ポイッ
雛苺「了解よ」パシッ
ジュン「放り投げるなよ自分の目玉を……」
雛苺「うぃ〜! スィドリームのお水で綺麗に洗うの〜」ジャブジャブ
翠星石「ぬぅ! 翠星石渾身の清水を目玉洗浄に使われるとは……」
雛苺「目玉を洗うにはスィドリームのお水に限るのよ」ジャブジャブ
真紅「ええ、仕上がりの爽快感が違うわ、爽快感が。
都市圏の水道水はカルキ臭くて、とてもとても……」
ジュン「そんなことないだろ。水道局の人だって努力してんだぞ」
- 77 :
- 雛苺「はい、真紅! お目目のお掃除が完了なの!
次はヒナのお目目を洗ってなのよね!!」
真紅「任せてちょうだい。あ、そうだ! ジュンの目玉も洗いましょうか?」
ジュン「人間は目玉の取ったり付けたりを簡単にできないの」
真紅「不便な生き物ね。ならば鼻うがいはどう? スィドリームの甘露なら
鼻の奥に入っても痛くない、むせたりなんかもしなくてよ」
ジュン「マジで? そりゃ凄い。よし翠星石、僕にもスィドリームの水を一丁!」
翠星石「うぬぬ……スィドリームをこんな事で働かせる破目になるとは」
雛苺「真紅ぅ〜、早く早く〜〜、ヒナのお目目を洗って〜〜」スポッ
真紅「はいはい。分かっているわ」
- 78 :
- §小一時間後
雛苺「洗ってもらってスッキリしたけど、すぐまた痒くなってきたの〜」グシュグシュ
ジュン「……だな。ずっと洗ったり、うがいし続けるわけにもいかないし」ズビズビ
真紅「最早、自分の目玉を舐めるぐらいしか方法はないわね(※)」ベロベロ
※真紅さんは訓練の末、舌を伸ばして自分の目玉を掃除することができるようになった。
(真紅と記憶の海の屠る稲妻 http://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-4644.html参照)
ジュン「それ乙女的にも人間的にもアウトだから二度とするなって言っただろ」
真紅「今日だけは勘弁してちょうだい。花粉の飛散量がマジで異常よ。
鼻の穴も舐めて掃除したいぐらいなんだから」
翠星石「鼻の穴まで舌でほじくったら、新アニメには
もう出ることができねーと思っとけです真紅……」
- 79 :
- ジュン「へぇーっくしょ!」
真紅「はぶちっ!!」
雛苺「あっぷちゅ!」
翠星石「……」
ジュン「びへっきし!」
真紅「なむるっ!!」
雛苺「ちゃんぷらっ!」
翠星石「うーん、三人だけ仲良くクシャミのユニゾンで楽しそうですぅ」
ジュン「全然楽しくねーよ」
真紅「花粉症になった者にしか、この辛さは分からないわ」
雛苺「なんとかは風邪ひかないって言うけど、花粉症にもならないのよね」
翠星石「なんですとー!? チビ苺のくせにナマイキです!
翠星石だって本気出せば花粉症の一つや二つ……!」
ジュン「おいおい」
翠星石「……と意気込んだものの、どうやったら花粉症になれるですか?」
ジュン「知るかそんなもの。なろうと思ってなったりできるものじゃあない」
真紅「気がついた時には既に花粉症になってしまっているものよ。ある日突然に」
翠星石「うーむ、まるで新手のスタンド攻撃か、恋心みたいなもんですね。
とは言え、桜田家の面々は知恵が足りないですから
ここは薔薇乙女の知恵袋に相談しに行ってくるですぅ。ではサラバ!」
雛苺「うにゅにゅ!? どこ行っちゃうのよ翠星石〜?」
ジュン「くっ! 嫌な予感しかいないから何としても取り押さえたいところだが」
真紅「この室内ですら花粉症に苦しんでいる私達が
翠星石を追って外出するだなんて自殺行為だわ……!」
- 80 :
- §薔薇屋敷
金糸雀「なるほどなるほどかしら〜! それで翠星石は
薔薇乙女の『知恵』袋であるカナを頼りに来たのね!
うむうむ、感心な妹かしら! 愛い奴じゃ近う寄れ」
翠星石「……なわけーねーだろーがですカナチビ。
翠星石は蒼星石を訪ねに来たんですよ? なんでお前がここにいるです?」
蒼星石「いるのは金糸雀だけじゃないよ。めぐさんと水銀燈と雪華綺晶もいる」
めぐ「いぇーい! 久しぶり翠星石ちゃん! どう? スィドリーム元気ぃ?」
水銀燈「……」
雪華綺晶「……」
翠星石「おおぅ!? なんだか珍しい顔ぶれですねぇ」
一葉「お茶会だよ」
翠星石「お茶会ぃ? この翠星石に何の断りもなくですか蒼星石?
水銀燈や白薔薇を誘っておいて翠星石には連絡せずに!?」
蒼星石「君に言わなかったのは悪いと思う。
けど、僕は基本的に真紅派閥じゃなくて水銀燈派閥だから」
翠星石「ぐっ!? そういや昔そんなことを言っていたですが
マジな発言だったのですか……」
めぐ「心強いわよね、水銀燈」
水銀燈「私は別に蒼星石にそんなことを頼んだ覚えはない」
雪華綺晶「まあまあ、青薔薇のお姉様なりにパワーバランスを考えてのことですよ」
水銀燈「桜田家にどれだけドールズが集中しようが相手は私一人で充分。
むしろ蒼星石が桜田家について、ようやくバランスは保たれるんじゃなくて?」
翠星石「うぬぬ、相変わらず無駄に自信たっぷりな御人ですね。
と言うですか、金糸雀と白薔薇もここにいるということは
てめぇらも水銀燈派閥ですか?」
金糸雀「カナは独立勢力よ。真紅派閥に対するスパイだけじゃなく
今日は水銀燈勢力のスパイに来たのかしら!」
水銀燈「ペラペラと何でも大声で喋るアンタのようなスパイがいるか」
雪華綺晶「私は柿崎めぐと一心同体ですので」
翠星石「むぅ……。カナチビはともかくとして
真紅やチビ苺が小さな世界で馬鹿やっている間に
外界ではいろいろと動きがあったのですね」
一葉「そう深く考えることはあるまい翠星石。
みんな本心では仲良くしていきたいだけだよ」
蒼星石「マスター……」
水銀燈「ちょっとぉ! 話を変な方向に持っていかないでよ、じいさん」
- 81 :
- 蒼星石「……で、話を元に戻すけど翠星石は花粉症になりたいんだって?」
翠星石「そのとおりですぅ。チビ人間と一緒にくしゃみのコーラスを奏でたいです」
一葉「花粉症になんてならない方がいいに決まっているのだがな。
私とて重症ではないが、今日の花粉には少し参っているところだ」
水銀燈「花粉ごときに悩まされるだなんて、人間も随分と退化したものねぇ」
めぐ「真紅ちゃんや雛苺ちゃんまで花粉症になっているというのが少し気になるけど」
雪華綺晶「ローゼンメイデンは高性能な人形ですからね。
もしくはマスターである桜田ジュンとのシンクロ率が高いせいで
花粉症まで共有してしまったとか……」
金糸雀「翠星石だけ花粉症じゃないってのは、マスターに対する愛情が足りないせいだと?」
翠星石「失礼な推論を立てるなです白薔薇にカナチビ。
それはそうと蒼星石、なんかスッゲー勢いで人を花粉症にさせる
花粉を出しちゃう植物とか育てていたりしないですか?」
蒼星石「ない」
翠星石「ぬうう! 肝心な時に役に立たない妹です!」
めぐ「翠星石ちゃん! 考え直しましょうよ!」
翠星石「うん? 急に声を荒げてどうしたですか生き損ない?」
めぐ「花粉症は立派な病気よ。それに好き好んでなりたいだなんて」
翠星石「……」
めぐ「あなた、病気になるってことがどういうことだか本当に分かってるの!?」
水銀燈「めぐが言うと説得力あるようで、ないのよね……」
金糸雀「あ、そう言えばめぐが元気になったのは雪華綺晶のお陰かしら。
だったら逆に雪華綺晶なら翠星石を病気にできるんじゃなくて?」
雪華綺晶「確かに。できないことはないですね」
翠星石「お! マジですか?」
雪華綺晶「しかし、花粉症だけを狙うのは不可能です。
『心臓がいたみ』『指がはれ』『せき』がとまらなくなる病気になら
今すぐにでも、することが可能ですが」
蒼星石「ジョースター卿やダリオ・ブランドーと同じ症状だね」
めぐ「あれって病気じゃなくて中毒だったんじゃあ……」
翠星石「ど、どっちにしろ遠慮するです。花粉症以外はノーサンキューですよ」
- 82 :
- 蒼星石「どうしてもと言うのなら、花粉を集めてモリモリ食べるというのはどうだい?
この方法で花粉症になれる可能性は高くないと思うけど……」
一葉「食べる? 花粉を?」
蒼星石「ええ、花粉症発症のメカニズムの詳細は不明ですが、個人の体内にある
閾値(いきち)以上の花粉に晒されると発症するという説があります」
めぐ「いきち? 血液より花粉の量が多くなるってこと?」
蒼星石「生き血じゃなくて閾値。ある反応を起こさせる最低限量の刺激のことだ。
これが個々人で違うから、花粉症になる人とならない人がいる。
そしてこの花粉の刺激は蓄積するそうだから、自らの閾値を越えた時に
その人の花粉症が始まってしまう。だから突然、発症したように見える」
翠星石「へぇー、へぇー」
蒼星石「さいわい、ここの庭園にはいろいろと花が咲き始めてきている。
花粉集めには苦労しないはずだ」
一葉「ただでさえ、スギ花粉もバンバン飛び回っているしな」
翠星石「よーし、それじゃあ皆で花粉集めですよー!!」
水銀燈「あ・の・ね! 何で私達がアンタのしょーもない願望のために
働き蜂みたいなことをしなくちゃいけないのよ!
やるんだったらアンタ一人でやりなさい」
翠星石「妹には優しくしてくれですよぉ、お姉ちゃん」
水銀燈「こういう時ばっかり姉扱いしないでちょうだい。
大体ね、今、私達は神聖なお茶会の最中よ。それをぶった切って
翠星石アンタが乱入してきたことをも忘れたの?」
めぐ「あ、水銀燈ったら蒼星石の誘いにいやいや来た感じだったのに
本音ではこのお茶会を大切なものだと思ってたのね」
水銀燈「ッッ!」
雪華綺晶「……くすくす」
- 83 :
- 翠星石「しゃーねーです。水銀燈は手伝ってくれないとしても
カナチビや蒼星石は手伝ってくれるですよねー?」
蒼星石「断る」
金糸雀「カナも」
翠星石「なんとぉーーー!?」
蒼星石「マスターも重度ではないと言え花粉症だ。
そんな花粉集めなんかをして僕が花粉まみれになったらマスターに迷惑がかかる」
金糸雀「カナもみっちゃんに迷惑はかけられないかしら」
翠星石「ぐぎぎぎぎぎ……」
雪華綺晶「翠のお姉様」
翠星石「あん? なんですか白薔薇? お前だけは手伝ってくれるとでも?」
雪華綺晶「いえ、私もこのお茶会の方が大事です。たとえ狂った茶会だとしても。
しかし、お姉様の力にもなりたい。よって、ブサ綺晶をお貸ししますわ」
ブサ綺晶達『ききっ! うきき!』ゾロゾロ
めぐ「あら懐かしい子達が一杯」
水銀燈「ちっ。どっからでも際限なく湧くわね。まるで害虫よ」
ブサ綺晶達『きききー』ワラワラ
翠星石「ぬおっ! まとわりつくなです! す、翠星石はお前達には
あまりいい想い出がないのですよ!! 気絶してる時に勝手に運ばれたりだとか」
雪華綺晶「ならば、この機に親交を深めるのもよろしいかと……」
水銀燈「花粉集めの働き蜂としては最適じゃなぁい、女王様?」
翠星石「く……」
蒼星石「過去の遺恨さえ忘れれば、これ以上の協力者はないと思うよ翠星石」
金糸雀「蒼星石もこう言ってるかしら」
翠星石「わ、分かったです。よーし、こうなったらとことんやるですよブサ綺晶ども!
言っとくですが翠星石はスパルタですからね!
白薔薇のように甘やかしはしないですよ! では花粉採集に行くですぅ」
ブサ綺晶達『きーっ!』ゾロゾロ
- 84 :
- 水銀燈「やれやれ、ようやく厄介払いができたわね。
これでお茶会が再開できる……」
めぐ「けど、ちょっと不安よね。ちゃんとブサちゃん達を統率できるのかしら翠星石ちゃん」
雪華綺晶「ま、その時はその時ですわ」
金糸雀「わりと無責任かしら雪華綺晶」
水銀燈「末妹はいつでも無責任よ」
蒼星石「それはそうと、お茶が冷めてしまったね。淹れなおしてこよう」
一葉「私も手伝うよ蒼星石」
- 85 :
- §薔薇屋敷の庭園
ブサ綺晶「ききっ」
翠星石「おおっ!? 早くも花粉団子を一つ持ってきたですか!
やるですねぇ〜。チビ苺よりも有能ですよ!! では早速」モシャモシャ
ブサ綺晶「……ききぃ?」
翠星石「うんうん、まあ、それなりには美味ですが口の中がパッサパサになるですよ。
そして花粉団子一つぐらいでは花粉症になる兆候すらなしですね。
おらおら、もっと沢山の馳走を用意せいですぅ!」
ブサ綺晶「きっ!」シュタタタ
- 86 :
- §お茶会
蒼星石「そこで僕はラプラスの魔にこう言ってやったんだ。
『そのローザミスティカは僕が彼女にあげたものですよ』ってね」
めぐ「え〜本当!? すごーい! なかなか言えることじゃないわよぉ!」
水銀燈「……」
雪華綺晶「耳が痛いですわね黒薔薇のお姉さま」
水銀燈「うるさい」
- 87 :
- §薔薇屋敷の庭園
翠星石「もぎゅもぎゅ……。うん、これはスミレの花粉団子ですね?
どうです? 今度は当たってるんじゃあないですか?」
ブサ綺晶「きーききっ!」
翠星石「ふっふっふ、驚くほどのことじゃあねーですよ。まろみが違うです、まろみが」
ブサ綺晶「ききき」
翠星石「次はそっちの団子の正体を当ててみろ?
ほっほー、この翠星石の舌を試そうというのですか? 小癪な」パクッ
ブサ綺晶「どきどき……」
翠星石「ん? んんー? この複雑怪奇な苦み……そしてジャリジャリとした舌触り!?
噛むたびに漏れ出る汚水にも似た悪臭!
なんですかこれはブサ綺晶! 本当に花粉ですか?」
ブサ綺晶「きー!」
翠星石「PM2.5と黄砂の詰め合わせぇ!? 何を食わせとるですかテメーは!!」ブハッ
ブサ綺晶「ききーっ!」ションボリ
翠星石「まったくもう! ただでさえ花粉ばっか食べてて
口の中がパサパサ祭りなのに、さらに余計に喉が渇いてきたです」
ブサ綺晶「き?」
翠星石「あん? スィドリーム? スィドリームは真紅やチビ人間にこき使われたせいで
今は水不足ですよ。ですからブサ綺晶、今度は花粉だけでなく蜜とかも集めろです」
ブサ綺晶「きっ! ききき〜」
翠星石「ん? 自分たちのアストラルを花粉と混ぜ合わせることで
さらに喉ごし爽やかな疑似ロイヤルゼリーも作れる……ですと?
どーして、そういうことをサッサと言わないですか!」
ブサ綺晶「きき」
翠星石「なになに? 花粉をブサ綺晶である自分達が食べて消化して吐き出すものだから
絵的にゲロっぽくて問題がある? なーんだ、そんなことですか」
ブサ綺晶「?」
翠星石「水銀燈や生き損ないならともかく、翠星石はゲロの申し子である
桜田ジュンのドールですぅ。故にゲロにもさして抵抗はないですから
じゃんじゃん花粉を食べてゲロイヤルゼリーを作れですよ」
ブサ綺晶「きーっ」
翠星石「ふっふっふ。疑似とは言えロイヤルゼリーですか、なんだかとってもリッチな予感です」
- 88 :
- §数時間後
水銀燈「それで私はそこで真紅にこう言ってやったのよ。
『アンタはそうして精米しているのがお似合よぉ』ってね」
金糸雀「HAHAHAHA! サイッコーかしら水銀燈」
雪華綺晶「まさに黒薔薇のお姉様のブラックジョーク炸裂ですわ」
蒼星石「その時の真紅の顔が目に浮かぶようだ」
めぐ「ねぇ、だんだんと外が暗くなってきたけど翠星石ちゃんは大丈夫かしら?」
一葉「うん? そう言われれば……」
蒼星石「特に大きな騒ぎ声とかも聞こえなかったから
問題なく花粉を集められていたんじゃないのかな?」
水銀燈「途中で飽きて、もう帰っちゃったんじゃない?」
一葉「まさか」
- 89 :
- ???「おぉ〜い」ズシーンズシーン
蒼星石「? 庭園の方から誰か来る」
金糸雀「と言うか、あの声は翠星石かしら」
???「全然花粉症にならねーですよぉ〜〜」ズシーンズシーン
雪華綺晶「この地響きは一体……?」
翠星石「ぐぇっぷ! もう花粉は食えねーですぅ」ズシーン
めぐ「でかっ!? 二まわり……いや、十倍くらい大きくなってるじゃない翠星石ちゃん!」
金糸雀「マツコデラックスかと思ったかしら」
ブサ綺晶達『きーっ! ききき!』
蒼星石「なになに? 自分達が集めた花粉やロイヤルゼリーを
ひたすら食べ続けていたら、ここまで巨大化した!?」
翠星石「いやはや花粉のパサパサとゼリーのとろみは実によく合うです」ズシーン
水銀燈「なんてこと……ほとんど女王蜂と同じ食生活じゃない」
蒼星石「女王蜂と働き蜂の違いはロイヤルゼリーを食べたか否かだけだと言うが
薔薇乙女でもロイヤルゼリーを食べると女王化するのか……?」
雪華綺晶「ではひょっとして、この豊満な姿こそがアリス?」
一葉「単に食べすぎなだけではないのか」
翠星石「と言うですか、ここまで体を張ったのにクシャミどころか
鼻水の一滴すら出ないですよ」
蒼星石「翠星石の花粉に対する閾値は随分と高いようだ」
めぐ「残念だったわね翠星石ちゃん。花粉症になれなくて」
翠星石「なんだかもうお腹がいっぱいになりすぎて
花粉症なんか、どーでもよくなったですぅ。今日はもう帰るです。
ブサ綺晶達もよく働いてくれてサンキューですよ」
ブサ綺晶達『うききっ』
翠星石「それでは御機嫌よう……て!? 鞄が飛ばねーです!?」ズシッ
水銀燈「重量オーバーよ」
雪華綺晶「歩いて帰らないと駄目ですわね」
- 90 :
- §そんなこんなで徒歩で帰宅
翠星石「たーだいまっですぅ!」デップリ
ジュン「このやろ! 体中に花粉つけまくって帰ってくるんじゃねーよ!!
ただでさえ、ヒラヒラした衣装で微粒子を纏いやすいってのに!!」ベプシュ
真紅「少しは体をはたいてから家に上がりなさい!!」クシュッ
雛苺「何かの嫌がらせなのー!?」ブチュッ
翠星石「おうおう、この巨大化したクイーン翠星石様の
メタモルフォーゼっぷりよりも目に見えない微粒子の方に大騒ぎするたぁ
本当に視野も肝っ玉も小せぇ奴らですぅ」
ジュン「やかましい!」
翠星石「……ゲェーーップス」もわ〜ん
真紅「ゲップ!?」
翠星石「おっと、これは失礼。乙女としたことが人前でゲップだなんて恥ずかしいですね」
ジュン「はーくしょっ! へぶしょっ!」
真紅「へっぷちょん! びひっきしょん!」
雛苺「あっちゅん! こ、これただのゲップじゃないのよ!?」
翠星石「……しこたま花粉を食ったですからね。ゲップも花粉100%ですよ」
ジュン「いっきし! ほんと、お前ふざけんなよ! はっぷしょ!」
真紅「ほとんど、歩く花粉タンク、いえ、花粉の総合商社じゃない!! ぴっきし!」
翠星石「ふぅ……。翠星石はただ、チビ人間達と花粉症を
共有したかっただけですのに、ここまで裏目に出るとは。憂鬱ですぅ」
雛苺「あっくちゅ! 翠星石よりもヒナ達の方がユーウツなのよーー!!」
この後も翠星石は三日三晩、事あるごとに花粉を放出し続け
桜田家の面々に非常にうっとうしがられたそうな。
翠星石は花粉症に憧れる 【了】
- 91 :
- なんかナチスの吸血鬼みたいな事言ってる…
- 92 :
- 乙
真紅チャンって握力で精米できるのかな…
- 93 :
- 乙
キメラアント思い出した…
- 94 :
- >>91-93
毎度感想サンクスです。真紅ちゃんは素手で精米もできますし、焼きおにぎりもできます。
- 95 :
- 【薔薇乙女の四月馬鹿】
翠星石「♪ドールに生まれたぁ〜この命ぃ〜」
真紅&雛苺「♪だわわわー」
翠星石「♪アリスへ咲かせてみせましょう〜」
真紅&雛苺「♪だわわわー」
翠星石「♪アリスを目指せよ〜ローゼンメイデ〜〜ン!」
真紅&雛苺「♪だわわわー」
翠星石「♪アリスを目指せよ〜ローゼンメイデ〜〜ン!」
真紅&雛苺「♪だわわわー」
翠星石「♪アリスを目指せよ〜ローゼンメイデ〜〜ン!」
真紅&雛苺「♪だわわわー」
- 96 :
- 翠星石「♪アリスを目指せよ〜ローゼンメイデ〜〜ン!」
真紅&雛苺「♪だわわわっわー」
ジュン「うーるーさーいーぞーっ! 馬鹿ども。僕の部屋内でカラオケするなと
いつもいつも言ってるだろうが。それに大体、何だその歌は」
翠星石「新アニメのOP曲ですぅ」
ジュン「嘘つけ。シャキッとコーンの丸パクリのくせしやがって。
提供企業ははごろもフーズ一択か」
真紅「ちなみに『だわわわー』の部分は私と雛苺だけじゃなく
翠星石以外の姉妹全員でコーラスの予定だから」
ジュン「いらんわ、そんな情報は」
雛苺「怒ってばっかりじゃダメダメなのよジュン。
今日は折角ポカポカの良いお天気なのに〜」
真紅「ええ。水も温みまくり、桜は咲きまくり、ツクシは顔を出しまくり
露出狂は陰部を露出しまくる。まさに春到来だわだわ」
翠星石「春ッ!! 浮かれずにはいられないです!」ウズウズ
ジュン「はいはい。元気を持て余してるんなら、お外で遊びましょうね」グイグイ
雛苺「いや〜ん、ヒナ達を追い出さないでなのよジュ〜ン〜」
- 97 :
- 真紅「さて、茶番はこれぐらいにしておいて今日はエイプリルフールです」
ジュン「何もかも全てが茶番だろうが」
翠星石「まあまあ。折角のイベントなんですから楽しもうぜですぅ」
雛苺「うぃ! オオカミ少年の魂をなぐさめなくちゃなのよ!」
ジュン「は?」
真紅「へ?」
翠星石「……」
雛苺「うゆゆ? ヒナおかしなこと言ったかしら?」
ジュン「オオカミ少年の魂を慰めるってどういうこったよ?」
雛苺「えええっ!? ウソばっかりついていたせいで
オオカミに食べられちゃった少年を偲んで
みんなでウソをつく日なのよね! エイプリルフールってのは!?」
真紅「何をバカなこと言ってるのよ」
ジュン「そんな来歴はないぞ。四月馬鹿には」
雛苺「そ、そんなぁ!? だって翠星石が……」
真紅「翠星石が?」
翠星石「ぬぁーはっはっはっは! 見事に騙されたですねチビ苺!
これがエイプリルフールの粗大ゴミですよ!!
がーはっはっはははははは!!」
ジュン「出たな、翠星石の馬鹿笑い。あと粗大ゴミじゃなくて醍醐味」
雛苺「ウ、ウソだったの……ッ!?」
真紅「エイプリルフールの起源ははっきりしていないそうよ雛苺」
雛苺「うみゅ……、で、でも翠星石がヒナにエイプリルフールが
オオカミ少年のための日だって説明してくれたのは昨日よ!
反則なのよね翠星石!」
翠星石「むむむっ……」
ジュン「こいつの場合、毎日がエイプリルフールだからな」
真紅「しかし、フライングはいけないわよ翠星石」
ジュン「けど、そういうしょうもないウソに騙されるのは雛苺ぐらいだけだ」
雛苺「うぇっ!?」
翠星石「余裕ですねぇチビ人間。そういうことなら是が非でも
翠星石達のウソでヒィヒィ言わせてやるですぅ」
ジュン「へいへい、なんぼでも好きなだけウソをつけばいいさ。
騙されることが分かっていて、ウソに引っかかるやつがいるかよ」
- 98 :
- §小一時間後
ジュン「……」
真紅「……」
雛苺「みょわわわ……さっきからずっとみんな黙りっぱなしで
不穏な不人気が流れ続けているのよね」
翠星石「それを言うなら雰囲気ですチビ苺。
これはですね、お互いの機を伺っているのですよ。
サムライ同士が間合いを詰めているようなものです」
雛苺「うにゅう?」
翠星石「不用意に行動を起こして中途半端な嘘をしかけたら
返り討ちにあってしまうのですよ。それが分かっているからこそ
みな迂闊に動けんのですぅ」
雛苺「な、なるほどなのよー!」
ジュン「なあ真紅?」
真紅「!」
翠星石「むむ、チビ人間の方から仕掛けてきたですよ!」
雛苺「みょわわわ……」
ジュン「知ってたか? 今度の劇場版探偵犬くんくんで
くんくん探偵が殉職するらしいぞ」
真紅「っ!?」
翠星石「マジですか!?」
雛苺「じゅんしょく?」
翠星石「死ぬってことですぅ!!」
雛苺「うぇええ!? くんくん探偵死んじゃうのー!?」
ジュン(ぷぷぷっ、こんな見え見えのに引っかかるとは単純な奴らよのー)
真紅「ジュン……」
ジュン「うん?」
真紅「よく知っていたわねジュン。
確かに、くんくん探偵は今度の映画で三度目の殉職をするわ」
ジュン「は……?」
真紅「一度目の殉職時には、異星人のクローン再生装置で復活。
二度目の殉職時には、隣の並行世界から来たくんくん探偵と交代。
そして三度目の殉職となる本映画では
どのような復活劇を果たすのかが最大の見どころなのよ」
ジュン「ッ!? う、嘘だろ真紅!?」
- 99 :
- .┌───┐
ィ/~~| ドッキリ ! !|
、_/ / ̄└─┬─┘
n@.ii(从_从))│
(ヨヽ|| ^ω^ ノ E) はい、もちろん嘘です。
+ Y iミ''介ミi Y
(( /,ノ入ヽゝ)) *
ζ ` '-tッァ-'´ ζ
ジュン「……っ!」
翠星石「ぬおっ!? 流石は真紅! チビ人間の嘘を返す刀でバッサリ!」
雛苺「カウンターなのよね!!」
真紅「この私とホラ吹き勝負をしようだなんて10年と532時間早いのだわ」
ジュン「くっ……」
真紅「それはそうとエイプリルフールは楽しむべきもの。
嘘の付き合いだなんてのも、やや不毛よね。
今日は特別に私がお茶を淹れるから
一時休戦として、こっちでお話でもしましょう……」ジョロジョロ
ジュン「なんで、ここは台所でもないのに
ジョロジョロとお湯の出る音がしてるんだよ?」
真紅「知らなかったの? スィドリームが甘露を出せるように
ホーリエも本気出せばお湯を出すことができるのよ」
ホーリエ「……」ふよふよ
ジュン「本当か? ホーリエ?」
ホーリエ「……」スッキリ
ジュン「おい! ホーリエのやつ、すっきりしてるぞ!!
何を出させたんだ、何を!?」
真紅「ちっ!」
ジュン「そうそう連続で騙されてたまるか!」
雛苺「真紅がフリチンなの!」
翠星石「フリチンじゃなくて撃沈。と言うか、ホーリエに何を出させたですか奴は」
真紅「ふふ、それは秘密よ」
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