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2013年04月アニキャラ総合106: 【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 第26章【クロスSS】 (265)
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【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 第26章【クロスSS】
- 1 :2013/02/09 〜 最終レス :2013/04/05
- ●前スレ
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1342922318/
●保管庫
ゲッタークロスオーバーSS倉庫
ttp://wikiwiki.jp/gettercross/
●避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12795/1293605807/
- 2 :
- < /´ ヽ、ヽ、ヽ >>2ゲット――――――
/´ 、 ll ヽ ヽ これほど叛逆し甲斐のある相手もいねーな
,/ lトリ|ヽ、 | | そう思うだろ?あんたも!!
// lト 、 ヽヽヽ l
// l | ヽ ヽ. \ \ l! _/ >>1 OK!!!あんたのその叛逆この俺が引き受けた!!!
//〃l | l! l ! , 〉l \_,/ 二ノノ >>3 断罪のシェルブリット!!
// ! ! | l l 〃 |、〃 /,イヒン ミ >>4 こんなものでオレの叛逆は止まらないぜ
.〈〈 | |l l l l |! ヽ》 〃 `ー'´/、 // >>5 いくら温厚なこのオレでも激しくむかつくぜっ!!?
ヽ\ヽ lヽト ヽ l| l| |! l ソ // ー-‐'´ /' >>6 その澄まし面歪ませてやる!!!
\ン〉 ヽ ヽヽ | リ ヽ-‐'" `ヾ、 >>7 ゴチャゴチャとうるせえんだよ!!
/ \二_ へゝ十‐- ! >>8 三枚羽発動!!!高速のオオ!シェルブリットオオオッッッ!!!!
〈 \ ヽ\_二ー- ノ /| >>9 で…>>9ってなんだ?食えるのか?
ヽ、 ヽ ヽ、`ヽ、 ̄ 、_ _/ / >>10 いいから喧嘩をはじめようぜ俺とアンタの喧嘩をよ!!!
\ヽ、_二ニ=-‐ -=二-‐ノ >>11 俺はお前をボコる!!ただそれだけだ!!!
`ー=ニ二_ヽ、 ー- ̄ / >>12 吠えろよ 俺のハイブリット!!!
彡 ミ`ヽ、 / >>13-1001 野郎に見せつけろこの俺の自慢の拳をォッ!!!
/// l |、\ `ー-‐'´
// / | l ヽ
/ / l
- 3 :
- 乙ナァァァァサァァァァンシャイン!!
- 4 :
- だからゲッター線侵食以外の話は http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/rcomic/1341519207 でしてもらいたいんだとあれほど
- 5 :
- リアエントより>>1乙!
ゲッターの話ばかりしてちゃ胸焼けしてしまって体に悪いぜ、合間…合間にクロスを語るんだ
上にカズマさんがいる訳だが、進化の言葉s.cry.edはやはりゲッター線の発露なのか!?言霊というのか…そういったものでゲッター線の力を得る方法というか
- 6 :
- 恐竜が絶滅したのはカズマさんのせいだしな、そりゃあもう恐竜帝国との間に死闘が
- 7 :
- 確かに漫画版じゃ恐竜絶滅したのカズマのせいだったwwww
漫画版スクライドじゃ最後は宇宙に進出してたから、ひょっとしたらゲッペラー艦隊と鉢合わせするかも。
- 8 :
- あかん、ゲッター艦隊が激動のハイブリット×100億で見開きで壊滅しそうだ
- 9 :
- よくわからん進化合戦になるんじゃねえの?
- 10 :
- お久しぶりです、
「真ゲッターの竜馬がパトレイバーに乗るようです」の再開です。
恥ずかしながら、どこまでUPしたか忘れてしまいまして、
とりあえず保管庫に記載していない、第六章からスタートしていきたいと思います。
第六章 GETTER ROBO
「ひでぇもんだ……」
黒いレイバーとの一戦から数時間後、第二小隊の格納庫にて――。
バラバラに「惨殺」された、もとはイングラム3号機だった構成品を視て周りながら、榊が
つぶやいた。
今まで無敵といってもよかった竜馬に操られる3号機が、特車二課史上最悪の痛恨撃を受け
て帰ってきたのだ。
むろん、被害を被ったのは3号機のみならず、1号機は片腕損壊、2号機はいつもの通り頭
部大破といった有様だが、それは整備班の努力で何とかなるレベルだ。しかし、竜馬の機は違う。
さながら、だるま落としでもされたかのように、頭・胴・脚が綺麗三つに切断されているの
である。力で叩きつぶしたのでないことは、凹凸のない切断面も物語っており、3号機を斬った
敵の得物が、常識では考えられない程の鋭利さを有していることが伺えた。
シゲがその切断面を軍手で撫でながら、榊が言ったのと同じ言葉をつぶやく。
「……ダメですね。背骨をばっさりやられちまってますから、ユニットごと交換しないと、ど
うにもなりません」
「ここまでやられりゃ素人でも解る。シゲ、チェックリスト作っておけ。明朝一番でメーカー
に修理へ出すぞ」
「了解! でも、竜馬ちゃんをここまでメタクソにできるのに、1号機と2号機は無事、って
わけでも無いですけど、一応自力で動ける程度だっていうのは……やっぱり遊ばれたんですかね」
シゲが悔しそうにいう。
イングラムの性能を、最大限に引き出している竜馬が手も足も出せなかった、ということは
相手になった黒いレイバーは、今までの常識を空の彼方へぶっ飛ばしてしまうほどの化物であ
るという事に他ならない。
いや、むしろ、本当にレイバーがやったことなのか? という疑問さえ付きまとう。
今現在の技術で造られるレイバーがどんなに高性能だったとしても、イングラムとて最新鋭
の機体だ。しかも操縦員のうち一人は、その持てる性能全てを発揮させられる実力者であり、
残る二人も厳しい訓練を積んでいる。
そのイングラム三台を、単騎で相手取ったうえ、壊滅に追い込む事ができるなど、常識以前
にレイバーが持っている威力の範疇とは言い難い。
- 11 :
- そもそもレイバーというのは、その名が示す通りに労働者……すなわち、新世代の重機たる
側面が強く、武器としての価値は二次的なものに過ぎないのだ。
つまり陸戦兵器として捉えたときのレイバーは、決して戦車のような代物ではなく、あくまで
「戦う事もできる重機」であり、後方支援を司るものに過ぎなかった。
それだけに、黒いレイバーの暴れぶりは、特に技術者の目には信じがたいものがある。
だが、
「気にくわねぇが、それが真実だろうな」
ふらり、と格納庫に現れた竜馬がいった。
いつになく物静かだったが、瞳にだけは闘志とも憎悪ともつかぬ炎が燃え上がって、見る者
すべてを萎縮させてしまいそうな光を放っていた。
さしもの榊も、サングラスがなければ思わず眼を反らしてしまいそうな迫力だったが「なに
をくそ、こんな若造に」と勇気を奮い立たせる。
シゲなどは、すでに脂汗が全身に吹き出ているのが見てとれるのだ、ここで整備班長が怖じ
気づいたら示しが付かないではないか。
「……よう、竜の字。ずいぶん派手にやられて来たじゃねえか」
「今度ばかりはな」
「珍しく殊勝な態度だな」
「榊、聞きたいことがあるんだけどよ」
「褒めた矢先にてめえは、班長と呼びやがれクソガキ! ……で、なんだ」
「レイバーってのは、空飛ぶような物じゃねえよな?」
「あたりめぇだ。飛行機やヘリが空飛ぶのは、それなりの理屈があって飛んでんだ。どこの世
にレイバー飛ばそうって発想するバカがいやがる」
「なるほどな。とすりゃ、レイバーで無理にやろうとしても、せいぜい大ジャンプするぐらい
が関の山ってところなわけか」
「ま、無理矢理やればそうなるだろうな」
「そうかい。そんだけ聞けりゃあ御の字だ、ありがとよ」
「待ちな、なんでそんな事を訊く?」
「……信じる信じないはあんたの勝手だが、今度の敵は空を飛んで逃げたんだよ」
呆気にとられる榊とシゲ、山田を初めとする整備員諸氏を尻目に、竜馬はキャットウォーク
の上に上がっていった。
そういえば、誰も彼が大型拳銃で撃たれたことを気にしていない。
もはや竜馬が頑丈であることには、隊内の信頼があるのだろう。
そんな彼は、キャットウォーク上の第二小隊オフィスを通過して、隊長室へと歩を進めてい
ったのだった。
ガラス張りになったオフィス内から野明たちの視線が注がれたが、それには片手をあげるだ
けで応じた。
応じるだけ、竜馬もマイルドになったものだといえよう。
- 12 :
- 竜馬は隊長室へ到達すると、ドシドシとノックをしてから、応答を待たずにドアを開けた。
中には後藤と南雲、それに熊耳が居たが、全視線がばばっと侵入者へと集中する。
竜馬の姿をみとめた南雲が、彼の性と階級を叫びながら席を立ったが、ギロリと向けられた
視線に射貫かれると、そのまま着席してしまう。
凡人が目力で勝てる相手ではない。人の姿をした魔獣なわけだから、いわば狼に対峙した犬
のようなものといえる。
どうどう、と後藤が南雲の背後にまわって背を撫でた。その光景は、すくみきった愛犬と、
それをなだめる飼い主のようだった。
「……で、どうした流よ。熊耳のことについてだったら、さっき言った通りだ」
後藤が言ったのは、例の熊耳がエコノミーを強奪してしまった件である。この警察官にある
まじき超不祥事は、しかし彼女自身の口から後藤へと告白された。
その一言を聞いたとき、さすがの後藤も一瞬へたり込んだのだが、ふとエコノミーの周辺に
居た篠原重工社員が、遊馬にとっては実の家族も同然の、実山家の人間だったことを思い返し
て策略を打った。
遊馬の家庭環境を利用したのだ。
というのも、遊馬の父である篠原重工社長、篠原一馬は経営者として有能であるが、家庭人
としては最悪の部類に入る人種であり、遊馬にとっての父親として機能をほとんど果たしてい
ない。本人がどう思っているかどうかは別として、だが……。
その代わりとなったのが、篠原重工の前進、篠原製作所の時代から経営者の片腕として技術
者を勤める実山剛という男で、現在八王子の工場長である。
レイバーショーに来ていたのは、その息子にあたる実山高志という人物で、彼が遊馬にとっ
ては義理の兄のような相手であると、後藤はどこかからか耳にしていた。
……ここまで書けばもうお解りかと思われるが、要するに事件の一部始終を目撃した実山高
志の口封じを、遊馬へ「お願い」という名の命令をしたのである。
跳ねっ返りの遊馬の性格を考えれば、普段なら後藤の命令といえど突っぱねた可能性が高い
が、黒いレイバーの登場と、熊耳の豹変、そして3号機を完膚無きまでに破壊された竜馬が漂
わせている、並々ならぬ殺気という三点に何か因果を感じたらしい。
勘が良いというのかも知れないが、ともかく遊馬は、後藤の指示へ素直に従った。
つまり熊耳の暴走は、篠原社員と特車二課隊員の、極一部しか知らない秘密になったのだ。
その結果、熊耳は事件後数時間が経過した今なおもって、何食わぬ顔で隊長室に在室できて
いるのであった。
篠原重工にとっては少なくない損失だったろうが、特車二課にしてみれば、エコノミーの役
立たずぶりをアピールできた上、警察上層部にも篠原重工上層部にも、今後のパトレイバーに
関しては、イングラム以上の性能を持った機体が必要である、と知らしめる事ができたのだか
ら、ある意味もうけものといえよう。
3号機の大破は、手痛いダメージではあったが。
「俺が来たのは、そのことについてじゃねえ」
- 13 :
- 「そうなのか。じゃ、何なんだ」
「あんたらには話しておこうと思ってな。あの、黒いレイバー……いや、機体だが」
「なにか、心あたりがあるのか?」
「あるなんてもんじゃねえよ。あれは、レイバーじゃねえ。姿形こそは異なるが、あの飛び方
、あの無茶苦茶な武器の出し方。間違いなく、ゲッターロボだ」
「あの黒いレイ、いや、黒いヤツが、流の話にずっとあったゲッターなのか。しかし、たしか
ゲッターってのはもっとデカイんじゃなかったか? ビルぐらいに」
「今まで俺が見てきたゲッターはな。だが、レイバーサイズに合わせて縮尺したゲッターを造
ることも、技術的には不可能じゃない。もちろん、性能はだいぶ下がっちまうだろうが、それ
でもレイバーなんざメじゃねえぐらいの戦闘力は発揮できるぜ。
負けた事の言い訳するつもりはねえが、俺の3号機が手も足も出なかったのが、何よりもの
証拠だ。空まで飛んだしな」
「なるほど……確かに一理ある。と、いう事は我々と敵対している組織に、君の世界の技術を
もった人間が関与している可能性が高いわけだ」
「そうなる。だが……」
竜馬は、以前に武蔵の亡霊と会った時の事を思いだしていた。武蔵は、この地にインベーダー
が紛れ込んでいると言い放ち、それらを打倒するための人間をゲッター線が選んだのだと、
この状況を説明していた。
自身は警察官としてこの地へ降り立ち、そしてもう一人。神隼人――天才的な頭脳と常軌を
逸したセンスを持ち、早乙女博士以外で唯一、ゲッターの開発をやってのける男。
インベーダーを倒すためにゲッターロボは必要不可欠だ。それを造るためにやってきたと考
えるのは容易だが、ではなぜ竜馬と敵対する組織に所属しているのか?
竜馬は、武蔵は気の良い友人として信用しているが、隼人は同じ友であっても、状況次第で
はいつ寝首を掻きに来てもおかしくはない、油断のならない相手と認識している。
そうでなくても、元居た世界では、殺人の罪を押しつけられるという裏切りをされているの
だ。
全面的に信用するわけにはいかなかった。
ただひとつ確実なのは、隼人がこの世界でゲッターロボを造っている、ということだ。それ
はレイバーショーで出現した黒いレイバーを見ても明らかで、さらに、先日のブロッケンとの
戦闘でも隼人は竜馬と闘っている。ここから、彼が地球防衛軍と関わりを持っていることは確
かといえよう。
しかし、だ。
地球防衛軍などは、しょせんはテロリストという、自らのイデオロギーを暴力で示さんとす
る集団に過ぎない。隼人にとってみれば、過去に同じ事をやっていたから、水は合うのかもし
れないが、現在の彼にとって価値あるものではないはずだった。
この世界でゲッターを造り、インベーダーを倒そうと思っているのなら、もっと巨大で、
もっと資金や人員に融通の効く組織に身を置かねば、とてもやっていられないはずなのだ。
- 14 :
- そこまで考えて、竜馬はふと簡単な図式を思い出す。
テロリストがただの暴力装置だとするなら、それそのものの思考能力は低く、なればこそ、
それを使用することで利益を得る組織・人間が居て、それこそが真の暴力装置に他ならない、
ということを。
その正体は時として大企業であったり、政府であったりさえもする……という真実を。
では現在、地球防衛軍を駒として、利益を得ているのは誰か? 環境保護の名の下、
バビロン・プロジェクトを妨害することで、利益を得ている連中は果たして何なのか。
アカに洗脳された連中か、それとも白人の手先どもか。
いや、そもそも、環境保護の云々がただの建前であったとしたら?
現在レイバー業界において懸念されている事項は、バビロン・プロジェクト終了にともなう
国内需要の減少である。レイバーは一台で様々な仕事をまかなえる、いわば「スーパー重機」
だが、大規模工事でない限り、現場には普通の重機があれば十分である、とする考え方もいま
だ根強いのだ。
それを先延ばしにするために、誰かが自作自演をやらせている可能性も考えられた。
そういえば、隼人の乗っていたレイバーはブロッケンという、ドイツ製の数少ない軍事用レ
イバーだったが、当時はロールアウト直後の、まっさらな新品だったと刑事たちから聞き及ん
でいる。
いくら隼人とはいえ、ただのテロリストが、そんなものの提供をおいそれと受けられるか?
中国やロシアといった水面下での敵国から来たものならまだしも、ドイツである。
また、そのブロッケンを造っているのはシャフトだ。
シャフトはいわゆるグローバル企業では無く、多国籍企業であり、同じ名の企業でも置かれ
ている国ごとに別会社である……というのが表の顔だ。
とはいえ、シャフト同士である事に変わりはない。
もし、隼人がシャフトに関連していたとすれば、SEEからブロッケンを密輸し、先の事件を
引き起こすなど朝飯前であろうし、それらで得たデータを基に、レイバー的なゲッターロボを
造るにしても、研究機関から工場に至るまで、動きやすいだろう。
なにしろシャフトは、世界の主要国家に本社を置く、多国籍企業なのだから。
ここまでの考えをまとめれば、地球防衛軍を煽動しているのがシャフトグループで、そこへ
隼人が乗っかっていると結論づけることもできた。
荒唐無稽な推論に過ぎないといえばそれまでだが、そもそもシャフトはレイバー産業におい
ては、新参も新参のはずなのに、妙に高性能なレイバーを世に送り出してくる。
ひょっとすれば人々が預かり知らぬ世の中の裏側で、様々な組織同士が、繋がりあっている
のかもしれなかった。
「後藤さんよ。これは《俺たち》の事だから、今まで黙っていたが……こうなったからには説
明しておくぜ」
「隠さなきゃならん事が多くて大変だな、お前さんは」
「余計なお世話だ。俺は以前、ブロッケンの搭乗員と取っ組み合って、その正体を見た。そい
つは俺の居たのとほぼ近い世界から来た人間だ。名は神隼人! 元ゲッター2パイロットよ」
- 15 :
- 「……おいおい、そんな重要な事をいきなり言われてもだね。なぜ今まで黙っていた、ってい
うのは今言ったか」
「ここに居る連中は知っての事だが、俺と隼人は異世界の人間だ。ヤツが動いているなら日本
の警察なんぞにどうこうできはしねぇ。知らない方がスムーズに行くと思っただけさ。
だが、これを言ったのは裏付けがとれたからでもある。俺と熊耳は、レイバーショー会場で
車から銃撃を受けたが、その連中っていうのがな……隼人と、俺を撃ちやがった丸眼鏡と、もう一人」
くるり、と竜馬の眼が熊耳のそれを重なった。
するとそれまで所在なさげに部屋の隅にいた熊耳が、顔をあげる。
「……リチャード・王。香港における、『地球防衛軍』のスポンサーと目される男です」
「なるほど。つまり、神隼人と地球防衛軍は繋がっとる、と言う訳だな? しかし、それほどの
人間が頼るにしてはちょっとばかり、規模が小さすぎやしないか」
「おう。それは俺も考えていたぜ。だがよ、ブロッケンってのがシャフト製だったろ?」
竜馬は一区切りして、先述の黒幕がシャフトにある、という推論を後藤をはじめ、この場に
いる人間全員に説明しはじめる。
どこかから、すきま風が躍り込んで来る。と、まるでそれに反応したかのごとく、置かれて
いたダルマストーブ上のやかんが、警笛を鳴らした。
やがて話を聞き終わると、後藤がタバコを吸いたげに唇を動かすのだった。
「……なるほど、面白い話じゃないの」
「信じる、信じないはてめぇらの勝手だがな」
「いや。俺も薄々は感じていたんだ。なにせ、一回目のブロッケンからおかしかった。奴ら、
あれほどのレイバーを密輸しておいて、何故わざわざ二課と対決するのが目的のような態度を
とる? 腕組みして待ってたんだよ、アイツは。しかも三回とも、第一小隊が不在のときに出
てきた」
「後藤さんは、犯人が第二小隊が目当てだったと言うの?」
「というよりも、イングラムが目当てだったと考えると、つじつまが合う。ご存じの通り、現時点
では最新鋭のレイバーであり、戦い方次第では、警察仕様のまま軍事用レイバーを撃退する
ことも出来るほどの性能だ。その稼働データには相当の価値がある」
「その学習データが、あの黒いレイバー……じゃなくて、ゲッターロボに活かされたわけ?
でも、流巡査の話では、レイバーとは文字通り次元が違う技術で構成されている機械だったよ
うに思えるわ。役に立つのかしら」
「逆だな。隼人にとっちゃ、レイバーは原始的といえど未知のメカだ。とりあえずその最新鋭
と戦って性能の限界値を知りたかったんだろう。俺が思うに、あの黒いヤツはレイバーに、
ゲッターの技術をブチ込むための、プロトタイプか何かに過ぎねぇ。
ひょっとすると性能は据え置きのまま、レイバーサイズのゲッターを造ろうとしているのかも
しれないぜ。ゲッターはでかすぎるんでな。目立たずにやるには、レイバーに偽装するのが
一番手っ取り早いはずだ」
- 16 :
- 「そうか……ところで流よ、その隼人って男の顔はどんな感じなんだ? 写真か何か持ってないか」
「ヤツの写真なんか持ち歩く趣味はねぇが、似顔絵ぐらいなら描けるぜ」
言って、竜馬は警察手帳を取り出すと、余白部分に隼人の顔を書き込んでいく。
尚、ここのところ続発している警察官不祥事(特車二課含む)は警察官の匿名性に問題があ
るとして、その対策に、二〇〇二年度からはバッジケース化した新手帳が支給される予定である。
「警察手帳を雑に扱うのは関心せんなぁ」
「あんたに言われたかねぇよ……ホラ、これが隼人だ」
言って、ずい、と印籠のように見せつけると、どれどれと残る南雲と熊耳の二人も、のぞき
込みにくる。そこには、竜馬以上に目つき鋭く、そして竜馬とは真逆の冷徹さを感じさせる男
の顔があった。
「……意外な人間に、意外な才能があるものね」
「絵がうまいのね流くん。私とは大違いだわ」
「ほんと。こりゃ画家でもやってけるんじゃないかね、と。ふぅん、これが神隼人か」
後藤が思慮のため頭をわずかに垂れた時だった。ドンドン、と隊長室の扉を叩く音が室内へ
へと響いた。
「申し訳ありません! 泉、篠原巡査であります!」
「入れ」
後藤が言うと、どわぉ、と二人が入室してきた。相変わらず、学生気分が抜けないような二
人である。
「どうしたんだ」
「い、いえ、お茶をもってまいりました」
「二人がかりでか」
竜馬が突っ込むと、野明と遊馬が盆を持って満面の笑顔のまま、脂汗を流し始めた。
野次馬に来たければ、もう少しまともなウソをつけば良さそうなものを、そうできないのは、
二人の良いところであり悪いところでもある。
「い、いや、竜馬さんならいっぱい飲むかなぁって。多めに、ほら……って、あれ? なんで
手帳なんか見せつけてんの?」
「ちょっと、気になる人物がいるもんでな。そうだお前ら、ビッグサイトでこんな人相したやつを見なかったか」
ずずい、と手帳を後藤たちから入り口方面へ回すと、隼人の凶悪な顔つきが、野明と遊馬へ
向けられた。
だが二人がそれに示した反応は、怯えるでもなく、竜馬の絵心に驚くでもなく、知り合いを
発見したときの表情だった。竜馬の眉がぴくりと動く。
- 17 :
- 「あれ……これって、あの人だよね。ねぇ遊馬」
「ああ、そうだな。これ神さんだ」
「何っ見たのか!? どこでだっ!!」
神という響きを耳にした瞬間、竜馬が二人へ食ってかかる。ひぇぇ、とヒグマに相対した釣
り人のようにおののく野明と遊馬に、しかし竜馬は容赦せずに詰問するのだった。
「答えろ。どこで隼人を、この男を見た」
「え、えと、一回目は都内のゲーセンで……二回目は、ビッグサイトの時に。あの、ほら、竜
馬さんと熊耳さんが一緒に休憩所に来たでしょ。その直前に」
「くそっ。やはりヤツだったのか!」
ぐわり、と竜馬は手帳をフロアに叩き付けようとする。だが直前で思い直したのか、隼人の
顔を描いたページを破って後藤に手渡すと、制服のポケットの中に無造作に仕舞い込んだ。
その様を見て、後藤がしみじみ、
「流も大人になったもんだねぇ」
と、つぶやく。
「うるせぇ!」
案の定、罵倒が返ってきた。
「おい、野明!」
「はひっ!?」
「お前、隼人はシャフトの社員だとか言っていたな!?」
「う、うん。言った……です」
「よし! 話が繋がったじゃねえか。野明と遊馬は隼人に二度会い、そして俺はブロッケンか
ら降りた所と、熊耳を銃撃した車に乗っている所を目撃したんだ。
隊長さんよ、こんだけ証拠があがってりゃシャフトにガサイレできるぜ」
「うん、松井さんたちに連絡は入れておこう。が……ちと、尻尾をつかむには弱いなぁ」
「なんでだよ」
「確たる証拠が無いんだよ、目撃証言ばかりで。それに話を聞いていると、その神隼人って男は、
そうとうのやり手だ。ヘタをするとシャフトに勤務していても《逆幽霊社員》をやっている可能性だって考えられる」
「逆幽霊社員?」
「要するに在籍はしていないかもよ、ってことさ。どうも神隼人ってのは、金儲けとか、自分
の生活のために働いているんじゃなさそうだ。流を見ているとよく解るよ。つくづく度し難い
けどな」
後藤はたばこを探して制服をまさぐるが、ふと隊長室は禁煙だったことを思い出して、懐に
つっこんだ手を所在なさげに取り出した。
一同に、しばしの沈黙が流れる。だが長くは続かなかった。
熊耳がふと、なにかをひらめいたようなのだ。
- 18 :
- 「待って。ねえ流くん、あなたモンタージュも描けるかしら」
「ん? ああ、やって出来ねぇこともないが」
「それならリチャード・王の似顔絵も描いてもらえない?」
「……なるほど、隼人本人は無理でも芋づる式を狙うって手はあったな。だがよ、香港で『地
球防衛軍』の資金源だったってほどの奴なら、警視庁にもファイルぐらい来てるだろ。そっか
ら写真引っ張ってきた方が、早いんじゃねえか?」
「写真、残ってないのよ。神隼人ほどでは無いにせよ、素性の解らない犯人なの。それで……
私が研修に出ていた時代の、香港警察もとうとう逮捕ができなかった」
「なんだと?」
竜馬に当然の疑問がわき上がる。
ここまで聞いていれば、誰でも「それなら何故、一介の巡査部長に過ぎない熊耳が、その顔
を知っているのだ」という疑問をもつのが普通だ。
だが、後藤と南雲はそのことについて、特に頭をかしげたりはしていない。そういえば熊耳
巡査部長は「島流し先」とまで揶揄される特車二課には、不釣り合いなほど優秀な人材である
が……。
ここで勘の良い遊馬が、あっと口をぽかり開ける。なにかに気づいたらしい。
野明の左肩を、己が上腕でつつくとサッと敬礼をつくって姿勢を正し「あ、では自分たちは
業務に戻りますので!」と言ってから、強引に野明の細い腕を掴んで退出しようとする。
「泉、篠原、待て」
「えっ」
「まあいいから、ここにいなさいって」
「は、はあ……それなら」
一息置いてから、後藤はふと熊耳に目配せをする。
その目は「どうかな?」と聞いているようだったが、やがて熊耳は決心したかのようにして
一歩、部屋の中を進む。
「第二小隊の皆には、知っておいてもらった方が良いでしょう。私は研修時代当時、リチャー
ド・王と個人的な付き合いがありました。もちろん、その正体を知ったのは彼が私の前から姿
を消した後、だったのだけれど」
「そ、そうだったん……ですか……」
「そういう訳で、私はリチャード・王の顔を判別できます。整形されていないのも、先日の事
で証明できる。泉さん、篠原さん。あなたたちがビッグサイトで会ったシャフト社員、たしか
複数人だったわね」
「あ、はい。でも……リチャードとか、王って名前の人はいませんでしたよ。なあ野明」
- 19 :
- 「うん。私たちが会ったのは、その神隼人って人と、内海さんって人です。
それと一人、小さい子を連れてるんですよ。アラブ系っぽい、肌が浅黒くて、変な関西弁で
しゃべる。名前はなんだけっけな……なんかメカザウルスみたいな名前の……そうそうバドと
か言ったっけ。これがまた無茶苦茶ゲームのうまい子で」
「内海、か……面白いね、仕事中に子供なんて連れてくる社員っていうのは」
「内海ってのはひょっとすると偽名かもしれねぇな、神隼人と一緒にいたとすれば、リチャー
ド・王であるという可能性は高いぜ」
「そうね。だからリチャード・王の似顔絵に、その内海という社員の顔が一致すれば……」
熊耳の眼に光が宿る。竜馬は、それを受けて再度ペンと手帳を手に取るのだった。どうやら
お互い、因縁の相方持ちなようだ。
熊耳は「リチャード・王の身体的特徴を語っていく。
身長およそ一七五センチ。あごが四角で、着用する眼鏡もおなじく四角いフレームの古臭い
もの。顔じたいが笑ったようなつくり……。
竜馬は熊耳からの証言を基に、彼女への確認を繰返しながら、モンタージュ画を仕上げてい
く。そのペンさばきも見事なもので、普段、横暴を具現化したような姿とは似ても似つかぬ、
静かに、集中した態度で、描き上げてゆく。
そういえば、武道家の中には芸術を敬愛する人間が少なくないが、竜馬もまた、そういった
人種のひとりなのかもしれなかった。
「む。出来たぜ。こんなもんでいいか、熊耳」
「……ええ、完璧よ、まるで写真みたいだわ。皆、見てみてくれる?」
熊耳が手帳を受け取り、竜馬製のモンタージュ画を公開する。
そこにあったものは、
「これ……内海さんだ。間違いないよ」
野明の断言であった。
つづく
- 20 :
- 久々に乙
パトレイバー映画版見ようかな
- 21 :
- こりゃあ乙だぜぇ
しかしこれだとグリフォン?との殴り合いが相当不利だな
- 22 :
- クロスオーバーで作品間の技術の交流でパワーアップは結構あるけど
- 23 :
- すまん途中で送ってしまった。
クロスオーバーで作品間の技術の交流でパワーアップは結構あるけど
味方側より相手側の方が強化されまくる乗ってあんまりないな。
- 24 :
- ゲッターの技術で一番役に立つのはゲッター線のエネルギー関連だろうな
ただ、TV版の設定じゃないとのちのち面倒なことになるだろうけど
- 25 :
- 一番大事なのは搭乗者の知恵と勇気よ
…と無理やり話を繋いでみる
- 26 :
- ゲッターの新作OVAとかでればSSふえるかな?
新ですらもうけっこう前のものだし……
- 27 :
- チェンゲの號って不思議ちゃんなとこや戦闘になれば叫ぶこと除けばぶっちゃけキリコ曹長にしか見えないのは俺だけか?
- 28 :
- やはりゲッター線とトランスフォーマーの交差、または石川賢版トランスフォーマーが実現していれば……
- 29 :
- >>27
髪型が似ているからな。
>>28
向こうの人の反応が怖いよ
- 30 :
- ゲッター線とオールスパークが混ざりあってえらいことになりそうだ。
そしてユニクロンはラ=グースと同存在に…
- 31 :
- アメコミは連載が続いて話のスケールが大きくなりがちだからな
日本でも…………カードを取り扱うのに超絶スケールのアニメがあったけどね
- 32 :
- 最近のバトル物の各人物の能力が悪いとは言わないけど複雑で名前が無駄に懲りすぎてワケが分からない。
ラ・グースのデスト・サイキックとか虚空斬破かシンプルながら強そうで名前が覚えやすくていいな
- 33 :
- 九龍覇剣虚空斬破も十分凝ってる名前だと思うがな
シャインスパークいいよね……
- 34 :
- ストナーサンシャインも良いな。
- 35 :
- 個人的にテイルズの技で
震天裂空斬光旋風滅砕神罰割殺撃
が一番懲りすぎな名前だと思う。
まあ、ネタ混ざりの技だけどね
- 36 :
- >>35
あれ二周目移行やとある武器装備すると失敗するんだよなw
- 37 :
- のちのシリーズでその技がまた使うやつが出てくるんだよな
そいつの場合、「漢なら背中で語れ」ってビーム出すやつだからネタ度が…………
その技が「マリクビーム」(マリクは使うやつの名前)でドストレートなネーミングで…………
- 38 :
- これはアレかいテイルズ×ゲッターの流れかい
斧使いとなると……後は解るな?
- 39 :
- ぶるあぁぁぁ!!
- 40 :
- そういえばOVAゲッターの竜馬の中の人がテイルズの新作に新キャラで出てたね。
- 41 :
- 最近見た数作の萌え漫画にマフラーキャラの萌えキャラが数人いたけど
竜馬も一応マフラーキャラだから…………萌えキャラ?
- 42 :
- いやそのりくつはおかしい(AA略)
- 43 :
- じゃあ、サービスシーンがあった弁慶は萌えキャラではないと…………残念だ
- 44 :
- まあ、ゲッターは
チラリ(断面図)もポロリ(脳)もあるからな
- 45 :
- 萌えの概念にゲッター線浴びせたヤツ今すぐ出てこい
- 46 :
- 大いなる意思「ゲッター線を浴びせたのは私だが、それがどうかしたか?」
- 47 :
- つまりワカメちゃんのパンツがいつも見えるのはいつでもゲッター1になるための布石だったんだよ!
- 48 :
- ゲッターザウルスのことも忘れないで挙げてください
- 49 :
- それだとブルマもスク水もみんなゲッター1じゃないかッ!!
く、くるってやがる
やはりゲッター線の信奉者はこの宇宙から抹殺せねば
- 50 :
- 全て委ねろ…ゲッターをゲッター線を受け入れよ…
- 51 :
- うーん、新のゲッター線が何でわざわざ地獄の未来を竜馬に見せたのか考えてたけど
もしかすると竜馬(というか「ゲッターロボ」の進化)が聖ドラゴンで止まるの
避けてその先に進ませるためじゃないと思えてきた
- 52 :
- 「現時点で『ゲッターロボサーガ』の流れを一言でまとめるなら、まあ順調に迷走中と言えるでしょう。
やはり真ゲッター及びゲッターエンペラーが強すぎるのが災いして、『ゲッターロボ號』以降は如何にゲッターを超えるかが話のメインとなっています。
それはそれで面白いんですが、問題はせっかく登場したゲッターアークが全く活かされていないことです。
当初は巨大アックス、サンダーボンバー等の素晴らしいスペックで真ゲッターを超えるかと期待されたアークですが、
最終的にはエンペラーの取り巻きゲッターから“アークの戦闘値では敵に叩きのめされる”と言われてしまう体たらく。
やはり話の都合とはいえエンペラー時空にアークを放り込んでしまったのはまずかったんじゃないかなぁ。
おそらく本来の予定では、真ゲッタードラゴンやバグが登場してパワーバランスがまたグチャグチャになる予定だったんでしょうけど。
(それは恐竜帝国のゲッターザウルスも同様。 全体的な扱いと言ったらもう。好きなんだけどね)」
「この状況を打破するにはやっぱりエンペラーに対抗できる存在が必要なんだろうと思います。
何かこう小学生みたいな単純にして斬新な発想でガツンとブレイクスルーできないものですかね。ブラックエンペラーとか」
というのはゲッターロボアーク完結?時の誰かの評価でしたが……
ついでに火星に行ったまま長年放置されまくっている真ゲッターと操縦者一同の事もゲッターザウルス共々に
忘れないであげて下さい、みなさん。賢先生も一体あれからどうする予定だったのだろうかと不安をつい。
- 53 :
- それはこのスレとて同様よ
ゲッターがあまりに強大なのでみな苦心してるような気がするぜ
- 54 :
- インスピレーションで書いている気がするから
多分、本人も書いてみるまでわからんかもな
デビルマンのごうちゃんもそうだったみたいだし
ダイの大冒険やドカベンも書いていたら思っていた展開と違う方向になっちゃうらしいし
- 55 :
- 来季はロボアニメが多そうだけどゲッターと相性が良さそうなものあるかな
- 56 :
- 流れ切ってすまないが、極道兵器見てたけど将造って異能生存体レベルのしぶとさだよな。
身体能力が異常に強くて大怪我はしても即死級の攻撃は全て回避してるし。
銃弾のあられの中に突撃しても、かする程度とかどうみてもおかしい
- 57 :
- 例のドラえもん作品が完結して踏ん切りついたので約二年ぶりに続き投稿したいと思います。
- 58 :
- 「ここだよ」
三人がついたのは一軒家。それも築うん十年くらいの木造住宅。
その横にある工房のような小屋へ向かうと三人の男、奥には老人と思われる人物、入口付近には二人の若い男、一人はロングでタオルを頭に巻き、一人は坊主の厳つく髭をこく生やした男が材木を扱って手慣れた手つきで工作している。
歩はその真剣である三人に心を奪われていた矢先、彼らは彼女の存在に気づき視線を注がせたが本人はビクッと血の気が引いた。
「ただいま!」
歩の後ろから未来が出現、彼らにその笑顔を見せつけた。
すると奥の老人は未来の声に反応し振り向いた。
「おまえら、休憩じゃ」
二人の男は否や、目を輝かせて一目散に未来の元へ駆け出した。
「「ミキーーっ!!」」
二人は彼女に抱きつくが本人は嫌がる様子がない所を見ると、随分と顔見知りのようである。
「ミキのじーちゃんは指物師なんだ」
直人が歩にそう説明した。
「さ、さしも……?」
「タンスとか、家具を作る職人さんのこと……」
どうやらこの老人は未来の祖父のようである。
「直人は一番若いお弟子さんなんだよ!」
「もーーこいつミキが来るってきーて朝からソワソワしてなぁ、仕事が手につかねーから迎えに行かせたのよ!」
「ち、ちげえよ!!親方が手ぇ離せねーからオレが!!」
坊主の男に茶化されて顔を真っ赤にする直人。
するとミキの祖父が頭の手ぬぐいを取ると笑顔で未来を迎えた。
「よう来たな」
――歩はここで自己紹介し、やっとこの未来の実家に迎えられた……。
――その昼。昼食を取るが、全員の食いっぷりが凄まじい。未来でさえ、来る前に駅弁を食べたのにテーブルに出されたご馳走を、一気に平らげたのであった。
「相変わらず食べるのは大好きじゃのう、ミキは!!」
彼女の豪快っぷりに大笑いする祖父。一方、歩は逆にそれを見てるだけで腹が満腹であった。
- 59 :
- 「……ミキ、弁当食べるよね」
「うん」
平然と答える彼女だが……。
「トウモロコシ嫌い」
「……」
歩の何も入っていない皿にトウモロコシの粒を移し始めたのであった。
「勝兄、水くせーな。手酌なんてしてんじゃねえよ」
坊主の男の元へ行き、媒酌する未来。その姿にこの勝兄と呼ばれる彼は感動し涙を流し始めたのだ。
「大きくなったなぁ、ミキっ。昔はこーんなちーちゃかったのに……」
「勝兄……」
だが彼は彼女のある身体の部分に目を透した。
「Rもなぁ!」
「はァ!!?」
やはり彼女の豊潤な胸の膨らみが一番目立つのであった。しかし、瞬間祖父からギラリとした視線が向けられた時、勝兄の背中に寒気が襲った。
――その午後、仕事が一段落し、未来は家の子供を集めて庭で遊んでいた。
その様子を祖父達と歩は縁側付近で出されたスイカの一切れを口にしていた。
- 60 :
- 「もしかして……ミキのお父さんも職人さんなんですか?」
歩がそう訪ねると近くでタバコを吸っていた勝兄が笑顔であるがどこかもの哀しい表情をしていた。
「貫之さんは……指物師にはなりたくねえって出てっちゃったからなぁ」
それを聞いて一瞬口が止まる歩。
(なんかマズイこときいちゃったかなあ……)
使った皿の片付けをしに台所へ向かうとそこには直人が昼食の食器を洗っている最中であった。
――彼女も彼の隣に行き、手伝い始める。
互いに無言の中、歩の口が開き――。
「……すごいなあ……中学卒業してすぐ弟子入りなんて……」
直人は歩の方へ振り向いた。
「あたしは……なにをやったらいいか……わかんない。今は何も決められない……」
――すると。
「カッコイイと思った」
今度は直人が口を開いた――。
「じーちゃんの……親方の作る家具と、物を作る姿勢が……」
彼は年少の頃の、真剣に作業する未来の祖父の姿を見学する自分を思い出していた。
「親方には何度も断られたけど……俺は好きなことで食っていきたい」
……今のご時世、それだけでは生活していけない時代。彼はそれほどまでにこの『指物師』という職業に特別な思い入れがあるのである。
歩は彼の本音を聞いて考えこむ――。
「ミキはどうなんだろう……」
「わかんねえけど……、ある程度安定してて収入の多い仕事に就きたいんじゃねーかな?お父さんのこともあるし……」
……未来の父親は病弱(心臓病)で寝たきりが多く、彼女の収入でやっと生活していける状況である。
(それで……勉強もあんなにがんばってるのかな……)
台所の窓越しに映る未来はこの会話は全く聞こえてないだろう。
- 61 :
- 「ここを離れるときもなんにも言わずにお父さんについていった……“ここに残りたい”なんて、一言も言わなかった」
歩は彼女にもの哀しい視線を送っていた。
――故郷みたいなモンかな――
――その夜、どうやら近くの神社で小さいながらも祭りがあるらしく、近所の人達が浴衣姿でその神社へ向かっていく。
歩と未来だけは別行動で二人だけ逆側の田んぼ道へ歩いていく――。
(……ミキはいろんなものを背負ってるんだ)
道案内する彼女の後ろからそう思う歩。だが、実はあの男のこともそう思っていた。
(流君も……相当過酷な人生を送ってきたらしいけど、流君の場合は別に気にしてないようだし。けどミキはどうなんだろう……)
暗い山道に入り、辺りを見渡す彼女達。何を探しているのかと言うと、ここに来る前に約束した蛍の群れを歩に見せることである。
「いないなあ……」
光がなく蛍の一匹すらいない状況。やはり来る時期が遅かったのか……。
「確かこの辺なんだよね、大群見たの……」
だが突然、彼女は何かを思い立ったのか一気に駆け出した。
「そう、こっちだ!!」
歩も必死についていく。
「ここ抜けるとねっ、ホタルがぶわっーーて……」
しかし二人が見たのは真っ暗闇の田んぼを見渡せる丘であった。蛍のほの字も全く見つからない。
「……やっぱり時期過ぎちゃったのかな……」
二人は残念そうに丘から下りていく。
(……あたし、考えたけとなかった。ミキといつか離れてしまうことを)
闇の消えていくようにうっすらとなった未来に――。
「ミ……」
その時、歩は足を滑らせて転んでしまう。振り向くとそこには小川があり、左腕を濡らしてしまった。
- 62 :
- 未来は慌てて彼女の元に駆け寄り、手を貸して起き上がらせた。
「ぬれちゃった……」
左手、『あの傷』を隠したリストバンドをつけてある。
彼女はリストバンドを外すとそこには生々しいリストカットの後が。
二人はしばらくそれを見つめるも歩はその小川に左手を手を入れてつけた。
「……痛むの?」
気をかける未来だが、首を横にふる歩。
「おまじない。今は切りたいって思わないんだ、全然。」
一瞬、会話が止まるが再び歩ね口を開く。
「でもまた切りたくなるときが来るかもしれない、先のことなんかわかんないから……」
歩はこれまで歩んだ全ての記憶を遡っていた。親友との友情が崩壊した中学の終わりから、高校に入り、愛海達による過酷ないじめを受けたこと。しかし、未来や薗田、そして竜馬という頼もしい人間と出会えたことも。
「……これからどんなにつらいことがあってもそのときに……自分に負けないように……」
歩は涙を浮かべていた。
「ミキや流君がいなくても大丈夫なように……」
それを聞いた未来は何を感じたのだろう――彼女は固まっていた。
だが次の瞬間、パアッと周りが一気に明るくなった。
それは山を見ると花火が上がっているのがよく分かる。そう言えば今日は祭りだ。
「……始まったんだ、祭りが」
「……行こう」
「……でもホタルは……」
「……いいの、探してくれて嬉しかった……」
歩は彼女に満面の笑みを見せたのであった。
「……また来ようよ。来年でも、再来年でも!」
未来はそんな彼女に優しく微笑むと仲良く繋いで祭りのある神社へ駆け出していった。
「行こう!」
- 63 :
- ――その上空。三人組の着物を来た謎の人間と一匹の馬が宙に浮きながら、歩と未来を黙って見つめているが彼らは一体……。
「乱王、彼女達は……」
髪を縛った女の子が馬に乗りながら、前に浮いている男に尋ねた。
「ああっ。椎葉歩、羽鳥未来……彼女達はゲッターという重い運命によって更なる苦しみを味わうだろう……」
「だが、それは人類にとって進化するための試練と言ってもよい、彼女達は人間の中でも選ばれた人間だ――」
馬の手綱を握ると大男も意味深しげな発言をした。
「見守ろうじゃないか。彼女達がこれからどう歩み、未来を切り開くのかを――。特に椎葉歩、彼女は近い未来で自分がゲッター線との関係に一番身近であると気づくことになる――」
彼らはその場から姿を消してしまったが一体何者なのだろうか――。
- 64 :
- 今回はこれで終わりですが随時出来上がりしだい投稿していきたいと思うのでおたのしみに!
- 65 :
- 誤字がありました
第35話A
「ミキ、弁当食べるよね」×
「ミキ、弁当食べたよね」○
第35話C
(……あたし、考えたけと……×
(……あたし、考えたこと……○
- 66 :
- おお、古強者のご帰還だ、乙です
しかしながらいつ見てもすげー組み合わせだ
- 67 :
- 乙。
春休みになれば増えるかな
- 68 :
- 絶望的な世界観にゲッターという超強力な力が来たかと思ったらなにかやばいもの連れてきたってんかいが好きな俺は
ちょっとしたドSなのだろうか?
マブラヴやストパンの世界とか結構ヤバイ設定だし
- 69 :
- ゲッターが来た所でぜんぜん事態が好転しないような…
- 70 :
- BETAにインベーダーがくっついたり。
ネウロイの正体が鬼と似たようなものだったや神と同じような上位存在が来たり。
そんな予感しかしないような気がするんだよな
- 71 :
- 正直、他作品とクロスしてまで同作品とのバトルを引き摺るのは余程うまくやらないと元作品だけでやれと思ってしまう
- 72 :
- スパロボみたいにシンプルかつ王道なクロスのほうが好き
邂逅→勘違い→共闘→激闘(ココら辺でゲッターが加わったことでクロス先の展開が微動してオリジナルに行くのが望ましい)
→死闘(協力してラスボスするもよし。ラスボスは原作通りクロス先に任せて、裏でひと仕事するもよし)
→最後はハッピーエンドで握手でもしてゲッター世界に帰るもよし、方法を探すもよし
基本的にクロス先の原作をなぞりつつ、ゲッターが現れたことによる差異が表現出来てれば満足
クロス元→ゲッターなら石川要素全開でも面白いけど、ゲッター→クロス元なんだからクロス元を立てないとね
- 73 :
- クロスと言えばライフの作者が復活したな
いじめ問題に竜馬投入するとどんな波乱が巻き起こるのか楽しみなのは俺だけかな?
- 74 :
- >>72
裏で動きそうなのはコーウェン、スティンガー、清明あたりはできそう。
特に清明の場合は敵の幹部として潜入して混じっていそうな気がする。
ただ、清明は決してラスボスには向かないようなタイプな気がする。
- 75 :
- 岩鬼将造vsルドル・フォン・シュトロハイム
- 76 :
- 敷島博士は大戦中の年齢考えれば若くても20ぐらいだろうしな。
どっかで関わっていたとかありそうだわ。
昔ストパンとか第二次大戦を扱う世界観の世界では若き頃の平行世界の敷島の活躍が…………
あんなのが何人もいてたまるか…………
- 77 :
- シュトロハイムっつーかナチは石川作品と相性バッチシよ
ヴァジュラぶん回す伍長閣下や吸血鬼製造計画、月の裏の第四帝国エトセトラ…
- 78 :
- ぶっちゃけ、ナチはなにやっていてもOKって空気が創作界では漂っているからな。
- 79 :
- もう続きできたので投稿します。今回は原作に沿ったままの話なのであまり面白くないと思いますがご了承下さい。
- 80 :
- 神社へ辿り着けばそこは神輿を担ぐ男達、縁日の屋台が灯りが道を飛び出してズラリと並ぶ、とても小さいとは言い切れない規模であった。
「おせーよミキ!」
振り向くと直人が射的ゲームの屋台の側で待ち構えていた。
「約束通り、リベンジ戦や」
――未来と直人は射的用のコルク銃を持ち構え、互いに息を潜める。
そして狙いを定め、ゆっくりと引金を引いた。
「おおっ!!」
見物客達は歓声を上げた。彼女の定めた的……一番難しい奥の台に置かれた香水瓶のようなモノを一撃で当てて、落としたのだから。
しかし、直人も負けず次々と賞品を上手に当て落としていく。
その勝負の結果は果たして……。
「10対9でミキの勝ち!!」
「くっそ〜〜っ」
未来の完勝であった。彼はその場で悔しがっている。
「すごいねミキ!!」
袋に入りきらないくらいに詰め込んだ戦利品を持ち、歩は感激している。
「ミキはこの町のスナイパーなんだ」
「まだまだ!こんなの軽い腕ならしよ」
- 81 :
- すると周りの見物客からも次々と挑戦者が名乗りでてきたのであった。
「ミキ、ワシと一度勝負してくれんか!」
「オレもオレも!!」
老若男女問わず、顔見知りの人達から次々と申し込まれるが逃げることなく、
「かかってきなさい?」
――そして次々に押し寄せる見物客と挑戦者。
歩はそれに翻弄されて、場外に出てしまう。
次々に挑戦者と射的対決し、そして勝ち抜く未来は満面な笑みであった。そしてよくやったと誉める直人。
その仲の良い二人を見ている歩は笑顔であったが……。
「アユムっ、やってみなよアユムも!!」
後ろへ振り向くも、彼女の姿はどこにもなかった。
歩のいた場所には休憩用に置かれた木の机に先程捕った賞品が放置されているだけであった。
「…………」
一瞬、硬直した彼女だったが、すぐに鬼気迫る表情で歩を探しにその場を後にした。
「ミキ!!」
直人も驚き、すぐに未来へ追いかけたのであった。
- 82 :
- ……一方、歩は別の場所でぶらついていた。すると、
「アユムちゃん、アユムちゃん!!」
「あっ!」
聞き慣れた男の声の方へ振り向くと、そこに勝兄達がたこ焼き屋台のテキ屋をしているのを見た。
「食っていきなよ!」
向かうと、近くの椅子に座らされて、たこ焼きや焼きそば、イカ焼き、果てにはドリンクやビールまでもが彼女の目の前にどっさり置かれた。
「ビール飲む?お好み焼きもあるゼ!」
「えっ、でも……」
「いんだいんだ、サービスサービス!!」
気前のいい彼らは次々と屋台の食べ物を歩へ持ち運んでくる。
「……」
その膨大な量に彼女は目が点となった。
「あっ、こんなに食えねーか。ミキじゃねーもんな」
張り切りすぎて照れる勝兄達を笑顔で答える歩だが、
「なにしとんじゃい!」
突然、何かで頭を叩かれる歩。振り向くとそこに、酷く息を切らし、水風船を持った未来と直人が立っていた。
「み……」
「……あんたがいなくなったからびっくりして……」
彼女のその様子を見ると凄く心配していた様子だ。
- 83 :
- 「ごめん……。ちょっとひとりで、お店とか見てすぐ戻ろうかなと思って……」
「……黙っていなくなんないで」
少し冷めた空気と化してしまう。未来はなぜか勝兄の元へ向かう。
「ノドかわいた」
近くにあった、水の入ったコップに手を出してイッキ飲みする未来。
「気にすんなよ」
落ち込む歩に気をかける直人。
「……なんか焦げ臭くねえか?」
異臭に気づいた全員が辺りを見渡すと……。
「!!!」
なんと未来が突然、着火道具を使って屋台の綱を燃やしているではないか。
「ふふ……」
クスッと笑う彼女に何が起こったのか……。
「ミキ!?」
「ああっ、カラッポだよ焼酎!!」
近くに置いてあった焼酎瓶一升が丸ごと空である。ということは……。
「やばい離れろ!!危険物を与えるなァ!!」
勝兄が近くの皆に避難を呼びかけたが、時すでに遅し。
《パーン!》
頭に空の焼酎瓶が叩きつけられてその場で倒れふせてしまう勝兄。その後ろには未来が顔を真っ赤にして割れた瓶を持って妖麗の笑みを浮かべていた。
「おまえりゃうるちゃいでちゅよ〜っ♪」
- 84 :
- いつもと雰囲気が違う未来にその場にいる全員が唖然とした。
しかしそこからが彼女のやりたい放題。ところ構わず走り回り他の屋台を襲撃してメチャクチャにするわ、再び酒ビンを丸ごと飲み干すわ……全員で彼女を止めようとするがすばしっこくなかなか捕まえられない。
――未来は凄い酒乱であった。
横で彼女の意外な一面を目の当たりにした歩は腹を抱えて爆笑していた。
「アユムちゃんも飲みまちゅかあ?」
後ろから抱きつく酔っ払った未来の息は酒気が凄かった。
――だが、
「え」
後ろによろついた時、崖があり彼女は足を滑らせて落ちてしまうが歩も道連れに二人とも落下した。
「キャー―ッ!!」
二人は勢いよく転げ落ちていく――。
「――イテテ……」
真下の地面に転がる。痛みはあるがどうやら浅かったらしく歩自身はケガはなかった。
「ミキ!?」
歩は前で倒れている彼女の安否を確認する。
だが暢気に寝ているだけのようであり、思わず吹き出してしまった。
「ちょっとミキ、起きて!」
彼女を起こそうと腕を掴んだ時、今度は未来自身が歩の腕を掴んだ。
- 85 :
- 「……さびしいこと言わないでくだちゃい……」
その時の彼女の顔は悲しそうな眼をしていた。
「アユムちゃんは……わたしがいなくても大丈夫になんてならなくてもいいでちゅ」
その時の彼女はまるで親から離れられない子供のような瞳をしていた。
「いなくならないで……」
(ミキ……っ?)
そのままうずくまり、震え出してしまう。歩は急に心がキュウと引き締まるような感覚に襲われた。
「ミ……!」
だが……。
《う、げーーーっ!!》
「だ、大丈夫ミキ!!?」
飲みすぎて、その場で粗暴してしまう未来。その様子を慌てて介抱する歩。
「あーあ……」
心配に駆けつけた勝兄達と直人。その様子を見て安心か、もしくは疲れたのか大きなため息を吐いた。
……祭りの帰り、酔いつぶれてぐっすり眠る未来を直人が背中におぶっている。隣に歩が並んで家へ帰宅していた。
「絶対覚えてねーぞこいつ」
「……」
……近道である山道を歩く二人――。
「……あたしバカだな……」
彼女はボソッとそう呟いた。
- 86 :
- 「ちょっとヤキモチやいてたんだ。ミキはあたしをここに連れてきてくれたけど、本当はみんなに会いたかったんじゃないかって……直人君やみんなに……」
しかし彼はフッと息を吐いて、彼女にこう言った。
「ホントバカだな」
「……」
「ミキはここにくる前、何度も電話してきた。『ホタルまだいる?まだ見える?』って……」
……未来は歩にここで蛍を見せるために来る日をわざわざ今日にしたのだ。
『……どうしても見せたいの、大切な人だから』と彼に電話で伝えて……。
それを聞いた彼女の顔は赤面した。
「……大切な人なんて言うからドキドキした……女でよかった」
多分、未来に彼氏ができたのだと直人は思っていたのだろう。彼も顔を真っ赤に染めた。
「ふふっ」
突然歩が口を押さえて笑い出す。
だが、次第に彼女の目から大粒の涙が込み上がり……。
(ミキ……ミキ!)
彼女は知ったのだ。その大切な人こそ自分だったと言うことを。
その場で声を出さなくとも号泣する彼女であった。
- 87 :
- ………………
――次の日の午後イチ、一泊二日だった今回の旅行に、ついに別れの時が。
二人の別れを惜しむ勝兄達と家族。
「元気でなあァ〜〜っ、アユムちゃんも!!」
号泣する勝兄。男らしくないが彼らしくていい。
「また来いよミキ!」
一方、家の子供と最後にじゃれ合う未来。
「……ミキ」
直人の呼びかけに応じ、二人だけで互いに何かを話す姿を歩は黙って見つめる……。
その後、彼らと手を振りながら別れ、帰りの駅で切符を買っていた。
「ねえミキ、直人君って……もしかしてミキの……」
「あげないよ、あたしのだから」
……一瞬で固まった歩の姿に未来はクスッと笑った。
「ウソだよ!ただの幼なじみだって!!」
バカ笑いし出す未来に対し、彼女は一本とられたような表情になった。
「…………あっ、そう……」
「今の顔!ウケルんですけど!」
未だに笑い続ける未来に歩も顔を膨らませた。
「ねえ、昨日のこと覚えてんの?」
未来は顎を掴み、考え込む。
「……ビールびんで……頭パーンて……あと覚えてない」
とぼけた表情を取り今度は歩が彼女に向けてニヤリッと笑みを浮かべた。
- 88 :
- 「なんなのよ!!」
「なんでもなーい!」
……二人がそうしている頃、実家では……。
「あと何回、ミキに会えるかのう……」
「親方……?」
作業中、その年季の入った手の平を眺めながらそう呟く未来の祖父。
「なあに言ってんすか!!」
「言ってたでしょーや、ミキの嫁入り道具作るまでワシはRんって!」
勝兄達に諭されて再び作業に移る祖父。そしてそれを見て安心し、再び作業を開始する彼らと直人であった――。
……夜暗くなり、未だ電車の中に乗り続けている二人。
歩は疲れたのか眠っているが、未来は窓際で肘をついて外を眺めていた。
「…………っ!」
突然、何を思い立ったのか未来はちょうど停車した駅につくなり、歩の腕を引き寄せて外へ飛び出そうとした。
「どうしたの、忘れ物!?」
「……うん」
しかしここは本来降りる駅でもないし、戻るにも上りの電車が来るまで時間がかなりある。
しかし、二人は所かまわず電車から降りてしまい、そのまま行ってしまう――。
光がなくなり、闇に包まれると思いきや……。
- 89 :
- 「うわあ……キレイ……」
目の前に映るは巨大な池に見渡す限りの蛍の光。そう、未来はこれに気づき、この駅に降りたのであった。
「……ホタル、アユムのことちゃんと待っててくれたんだね」
「……うん」
柵から身を乗り出して蛍の飛び交う草むらに入り込む歩。
「見せたかったんだ、あんたに!!」
「うん!」
未来も草むらに入り、歩いていく。そして偶然にも近くに飛んできた蛍を歩はスッと包み込むように捕まえると手の平がパアッと明るくなった。
しかし、蛍はすぐにそこから飛び出してどこかへ飛んでいってしまった。
「いなくなっちゃった……」
夜空を見上げる二人。すると、
「……あたしはミキのそばにいるよ、いなくなったりしないよ」
突然、そう伝える歩の言葉に照れているのか戸惑っているのか、彼女はキョトンとなった。
「なんなのよ急に……」
「なんでもない」
歩はニッコリと微笑んだ――。
- 90 :
- ……………
――未来と別れて家に帰り母、文子と顔を合わせる歩。
「ただいま――」
「……あぁ、おかえり」
軽い挨拶を交わす二人。すると文子から突然こんな言葉が。
「そういえばあんた、旅行中に電話あったわよ。薗田くんって人から」
「えっ?」
……………
次の日、町中で二人は学校以来の対面をした。
「…………」
「こんにちわ……」
アウターが緑のシンプルなチェックシャツとインナーが黒の半袖を着込んだ薗田は照れくさそうな顔をしていた。
――そして二人はバスに乗り込む。行き先はどうやら町の美術館らしい。
「薗田君、絵好きなの?」
「……うん、わりと。でも男友達とかはみんな全然キョーミないっつーか……ひとりでもよかったんだけど、なんとなく……」
……美術館へ着くと目的があるのかスタスタと軽快に進んでいく。その後ろを彼女は黙って歩いていく。
(薗田君って、背高かったんだ……)
筋肉隆々もあいまった竜馬よりは流石に小さく思えるが彼女からすれば普通に20センチくらい背の差がある気がした。175センチはありそうである。
- 91 :
- 薗田は突然止まると、目の前に飾られた巨大な絵に心を奪われていた。
「モネの絵だ」
歩は近くにいき、目を凝らしている。
「椎葉さん、目悪いの?」
「あ、うん。ちょっとだけ」
すると薗田は自分のメガネを外すと彼女に渡した。
「この絵は遠くからのほうがいいよ」
「えっ?」
戸惑う歩だが、本人は笑顔である。
「いいよ」
せっかくなのでメガネを借りて着けてみた。
――これは印象派で有名であるフランスの画家、モネの描いた『日傘を差す女』だ――。
歩はやっとはっきり見えたのであった。
「ありがとう!」
堪能し、メガネを返そうとした。
「……ごめん」
顔を降ろして着けてもらおうとしたとき、二人の顔が急接近し……二人は慌てて顔を上げた。
「学校行ってないときよく来てたんだ」
近くのソファーに腰かけて話し合う二人。
「……なんとなく家にもいづらくて……オレの一番落ち着く場所だった」
……彼はかつて、彼女達を拉致した男、狩野アキラによる暴力といじめによって不登校であった――彼にとって、ここだけが唯一の居場所だったのだ。
- 92 :
- 歩は、彼が自分と同じ苦しみを受けていたことを知っていた――。
「ねえ、絵を説明してくれる人がいるんだね?」
後ろへ向いて、その仕事をしている人に注目した。
「……学芸員っていうんだ」
彼はその人に憧れるように目を輝かせて見つめた。
「あーゆー仕事につきたいな、オレ……」
彼は体育会系の人間ではなく芸術系の人間である。優しく微笑みながら眺める彼に歩は感心していた。
「なれるかどうかわからないけど……小さな美術館でもいいんだ」
立ち上がり、再び絵に目を通す熱心な彼に、心が暖かくなる彼女であった――。
……帰り道。歩は薗田にジュースをおごってあげた。
「誘ってくれてありがとう」
二人だけの道、帰りは歩いて帰るようだ。
「みんないろいろ考えてるんだなぁ……将来のこと……」
急にしんみりとなる彼女に薗田は……。
「あると思うよオレは。椎葉さんにしかできないこと、きっとあると思う――」
笑顔でそう言う薗田。歩の目頭がグッと熱くなった――。
「……それでふと思ったんだけどね」
「……?」
「流って……あいつ、将来何になりたいんだろうって……別に大したことじゃないんだけど……」
「流君……?」
――歩達は知らない。竜馬の未来は、並の人間なら本当の絶望としか思えないほどの残酷な未来しかないことを……。
(そう言えば、流君て今何をしてるんだろっ?)
- 93 :
- 今回はここまでです。現時点で原作12巻ラスト付近なんですが、この巻のキャラクター造型が美形過ぎて違和感を感じます。
ちなみに次回は竜馬が久々の登場なんですが……お楽しみに。
- 94 :
- 朝も早くにお疲れちゃん
- 95 :
- 今週はやけにリーダー風を吹かせるじゃないか、え?ライフさんよ
乙ですー
- 96 :
- フルメタル・パニックの続編を見て思ったけど
新兵器や新武装出るとワクワクするな。
敷島博士が○○にいればどんなものになるんだろうとか考えたこともあるな。
- 97 :
- 敷島製だと石川作品のキャラでないと、武器に振り回されて使いこなせなさそうだ。
- 98 :
- むしろ「なんてスバラシイ武器なんだぁ〜!!」で第二第三の敷島博士が
- 99 :
- ロボットアニメには三人の“敷島博士”がいてな…
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